(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】冷却ガス導入装置、塩素バイパス設備、セメントクリンカ製造設備、及びセメントクリンカの製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 7/60 20060101AFI20240611BHJP
C04B 7/47 20060101ALI20240611BHJP
C04B 7/44 20060101ALI20240611BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
C04B7/60
C04B7/47
C04B7/44 101
F27D17/00 104D
(21)【出願番号】P 2020062800
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】追立 修士
(72)【発明者】
【氏名】藤田 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】末益 猛
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-126411(JP,A)
【文献】特開2016-166684(JP,A)
【文献】特開2010-126410(JP,A)
【文献】特開2013-028489(JP,A)
【文献】特開平09-175847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00-7/60
F27D 17/00-99/00
B01D 53/68-53/70
B01D 53/74-53/90
B01D 50/00-50/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素バイパス設備の抽気管の側面の周方向に沿うように冷却ガスを導入する冷却ガス導入装置であって、
前記冷却ガスの導入部における前記冷却ガスの流路が前記冷却ガスの流通方向に沿って複数に区画されており、
前記抽気管への前記冷却ガスの導入位置及び導入量の少なくとも一方を調節可能に構成される調節部を備え、
前記調節部は、複数に区画されて形成される各流路からの前記冷却ガスの導入量を個別に調節する
、冷却ガス導入装置。
【請求項2】
前記調節部は、軸体と、当該軸体に回動又は揺動可能に取り付けられる部材とを有する、請求項
1に記載の冷却ガス導入装置。
【請求項3】
塩素バイパス設備の抽気管の側面の周方向に沿うように冷却ガスを導入する冷却ガス導入装置であって、
前記冷却ガスの導入部に、前記冷却ガスの流路に挿入され、前記流路の絞り部を移動可能に構成される挿入部材を有し、前記挿入部材によって、前記冷却ガスの導入位置及び導入量の少なくとも一方を調節可能に構成される調節部を備える、冷却ガス導入装置。
【請求項4】
前記抽気管、或いは前記抽気管が連通するライジングダクト、セメントキルン及び窯尻から選ばれる少なくとも一つの運転情報を計測する計測部と、前記計測部で計測された運転情報に基づいて、前記調節部に前記冷却ガスの導入位置及び導入量の少なくとも一方を調節する制御信号を出力する制御部と、を有する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の冷却ガス導入装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の冷却ガス導入装置を備える塩素バイパス設備。
【請求項6】
予熱仮焼部と、セメントキルンと、ライジングダクトと、前記ライジングダクト及び/又は前記セメントキルンの窯尻に接続される塩素バイパス設備とを備え、
前記塩素バイパス設備は、請求項1~
4のいずれか一項に記載の冷却ガス導入装置を備える、セメントクリンカ製造設備。
【請求項7】
セメント原料を予熱及び仮焼する予熱仮焼工程と、
予熱及び仮焼された前記セメント原料を焼成して、セメントクリンカを製造する焼成工程と、
塩素バイパス設備の抽気管の側面の周方向に沿うように冷却ガスを導入して、前記抽気管で抽気した抽気ガスを冷却する冷却工程と、を有し、
前記冷却工程では、請求項1~
4のいずれか一項に記載の冷却ガス導入装置を用いて、前記抽気管に前記冷却ガスを導入し前記抽気ガスを冷却する、セメントクリンカの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却ガス導入装置、塩素バイパス設備、セメントクリンカ製造設備、及びセメントクリンカの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントクリンカ製造設備では多種多様の廃棄物が処理されている。近年、廃棄物処理量の増加に伴い、塩素及び硫黄等の揮発成分のセメントキルンへのインプット量が増加している。これらの揮発成分は、製造設備内に付着してコーチングを生成する要因となり、セメントクリンカ製造設備の操業に影響を及ぼす。このため、多くのセメントクリンカ製造設備には揮発成分を低減するために塩素バイパス設備が設置されている。
【0003】
塩素バイパス設備の抽気管におけるダストの堆積及びコーチングを抑制する技術が種々検討されている。例えば、特許文献1では、抽気管の内壁を、冷却用空気の旋回流の逆流によるエアーカーテンで保護するとともに、コーチングの発生を抑制することが提案されている。そして、逆流を調節するため、スライドゲートタイプのような吹込口の入口断面積可変機構を設けることが提案されている。特許文献2では、抽気ダクト内に、上記抽気ガスの下流側から排気ダクト側に向けて抽気ダクトの内壁に沿う気体の旋回流を噴出させることにより抽気ダクト内に堆積するダストを除去するダスト除去ノズルを設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-175847号公報
【文献】特開2010-126410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、スライドゲートの差し込み量により抽気管の内壁を保護する冷却ガスの流速を変えて吹込み位置を変更することは、塩素バイパスの抽気管におけるダストの堆積及びコーチングを抑制するのに有効であると考えられる。しかしながら、特許文献1のようなスライドゲートタイプの機構では、冷却用空気の吹き込み位置の調節の自由度に限度がある。また、特許文献2のように、ダスト除去ノズルを抽気管内に挿入して配置する技術では、ダスト除去ノズル付近にダストが堆積し易くなることが懸念される。
【0006】
そこで、本開示では、抽気管におけるダストの堆積及び付着を低減すること、及び、冷却ガスがセメントキルンに流入することによる熱損失を抑制することによって、塩素バイパス設備の運転を安定化することが可能な冷却ガス導入装置を提供する。また、そのような冷却ガス導入装置を備えることによって、安定的に運転することが可能な塩素バイパス設備及びセメントクリンカ製造設備を提供する。また、安定的にセメントクリンカを製造することが可能なセメントクリンカの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る冷却ガス導入装置は、塩素バイパス設備の抽気管の側面の周方向に沿うように冷却ガスを導入する冷却ガス導入装置であって、冷却ガスの導入部における冷却ガスの流路が冷却ガスの流通方向に沿って複数に区画されており、抽気管への冷却ガスの導入位置及び導入量の少なくとも一方を調節可能に構成される調節部を備える。
【0008】
上記冷却ガス導入装置は、冷却ガスの導入部における冷却ガスの流路が冷却ガスの流通方向に沿って複数に区画されており、冷却ガスの抽気管への導入位置及び導入量の少なくとも一方を調節する調節部を備える。このため、ダストの堆積状況、及び、セメントキルンの運転状況に応じて、抽気管への冷却ガスの導入位置及び導入量の少なくとも一方を調節して、抽気管内のダストの堆積及び付着を低減すること、及び、冷却ガスのキルン流入による熱損失を抑制することが可能となる。したがって、塩素バイパス設備及びセメントクリンカ製造設備の運転を安定化することができる。
【0009】
上記調節部は、複数に区画されて形成される各流路からの冷却ガスの導入量を個別に調節することが好ましい。このように、各流路のからのそれぞれの冷却ガスの導入量を個別に調節すれば、抽気管への冷却ガスの導入位置及び導入量を高精度に調整することができる。したがって、塩素バイパス設備及びセメントクリンカ製造設備の運転をより一層安定化することができる。
【0010】
上記調節部は、軸体と、当該軸体に回動又は揺動可能に取り付けられる部材とを有することが好ましい。これによって、シンプルな構造としながらも、高い精度で抽気管への冷却ガスの導入位置及び導入量を調節することができる。したがって、塩素バイパス設備の運転の一層の安定化を図ることができる。
【0011】
本開示の一側面に係る冷却ガス導入装置は、塩素バイパス設備の抽気管の側面の周方向に沿うように冷却ガスを導入する冷却ガス導入装置であって、冷却ガスの導入部に、冷却ガスの流路に挿入され、流路の絞り部を移動可能に構成される挿入部材を有し、挿入部材によって、冷却ガスの導入位置及び導入量の少なくとも一方を調節可能に構成される調節部を備える。
【0012】
上記冷却ガス導入装置は、冷却ガスの導入位置を調節する調節部を備えることから、ダストの堆積状況、及び、セメントキルンの運転状況に応じて、抽気管への冷却ガスの導入位置を調節することができる。したがって、抽気管内のダストの堆積及び付着を低減すること、及び、冷却ガスのキルン流入による熱損失を抑制することが可能となる。よって、塩素バイパス設備及びセメントクリンカ製造設備の運転を安定化することができる。
【0013】
上記冷却ガス導入装置は、抽気管、或いは抽気管が連通するライジングダクト、セメントキルン及び窯尻から選ばれる少なくとも一つの運転情報を計測する計測部と、計測部で計測された運転情報に基づいて、調節部に冷却ガスの導入位置及び導入量の少なくとも一方を調節する制御信号を出力する制御部と、を有することが好ましい。これによって、塩素バイパス設備及びセメントキルンの運転状況に応じて、抽気管への冷却ガスの導入位置及び導入量を調節することができる。したがって、塩素バイパス設備の運転の一層の安定化を図ることができる。
【0014】
本開示の一側面に係る塩素バイパス設備は、上述のいずれかの冷却ガス導入装置を備える。上記冷却ガス導入装置は、抽気管への冷却ガスの導入位置及び導入量の少なくとも一方を調節可能に構成される調節部を備える。これによって、抽気管のダストの堆積状況、及び、セメントキルンの運転状況に応じて、抽気管への冷却ガスの導入位置及び導入量の少なくとも一方を調節することができる。したがって、抽気管内のダストの堆積及び付着を低減すること、及び、冷却ガスのキルン流入による熱損失を抑制することが可能となる。よって、塩素バイパス設備及びセメントクリンカ製造設備を安定的に運転することができる。
【0015】
本開示の一側面に係るセメントクリンカ製造設備は、予熱仮焼部と、セメントキルンと、ライジングダクトと、ライジングダクト及び/又はセメントキルンの窯尻に接続される塩素バイパス設備とを備え、塩素バイパス設備は、上述のいずれかの冷却ガス導入装置を備える。このセメントクリンカ製造設備は、上述のいずれかの冷却ガス導入装置を備えることから、抽気管のダストの堆積状況、及び、セメントキルンの運転状況に応じて、抽気管への冷却ガスの導入位置及び導入量の少なくとも一方を調節することができる。したがって、抽気管内のダストの堆積及び付着を低減すること、及び、冷却ガスのキルン流入による熱損失を抑制することが可能となる。よって、セメントクリンカ製造設備を安定的に運転することができる。
【0016】
本開示の一側面に係るセメントクリンカの製造方法は、セメント原料を予熱及び仮焼する予熱仮焼工程と、予熱及び仮焼されたセメント原料を焼成して、セメントクリンカを製造する焼成工程と、塩素バイパス設備の抽気管の側面の周方向に沿うように冷却ガスを導入して、抽気管で抽気した抽気ガスを冷却する冷却工程と、を有する。冷却工程では、上述のいずれかの冷却ガス導入装置を用いて、抽気管に冷却ガスを導入し抽気ガスを冷却する。
【0017】
この製造方法では、抽気ガスを冷却する冷却工程において、上述の冷却ガス導入装置を用いる。このため、抽気管のダストの堆積及び付着状況、並びに、セメントキルンの運転状況に応じて、冷却ガスの導入位置又は導入量を調節することができる。したがって、抽気管内のダストの堆積及び付着を低減すること、及び、冷却ガスのキルン流入による熱損失を抑制することが可能となる。したがって、塩素バイパス設備及びセメントクリンカ製造設備の運転を安定化することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、抽気管におけるダストの堆積及び付着を低減すること、及び、冷却ガスがセメントキルンに流入することによる熱損失を抑制することによって、塩素バイパス設備の運転及びセメントクリンカ製造設備の運転を安定化することが可能な冷却ガス導入装置を提供することができる。また、そのような冷却ガス導入装置を備えることによって、安定的に運転することが可能な塩素バイパス設備及びセメントクリンカ製造設備を提供することができる。また、安定的にセメントクリンカを製造することが可能なセメントクリンカの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態に係る塩素バイパス設備の概要を示す図である。
【
図2】抽気管と冷却ガス導入装置の接続部近傍を拡大して示す図である。
【
図6】塩素バイパス設備の別の変形例を示す図である。
【
図8】(A)及び(B)は、塩素バイパス設備に設けられるチャンバの例を示す図である。
【
図9】(A)及び(B)は、塩素バイパス設備に設けられるチャンバの別の例を示す図である。
【
図10】一実施形態に係るセメントクリンカ製造設備を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、場合により図面を参照して、本開示の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0021】
図1は、一実施形態に係る塩素バイパス設備100の概要を示す図である。塩素バイパス設備100はセメントキルン50と窯尻52とライジングダクト51を備えるセメントクリンカ製造設備200に設けられ、セメントクリンカの製造に伴って生じる塩素等の揮発成分を含むキルンガスを抽気してセメントクリンカ製造設備200内の塩素等の揮発成分を低減する。
【0022】
塩素バイパス設備100は、ライジングダクト51及び/又はセメントキルン50の窯尻52から、キルンガスを抽気し、抽気したキルンガスに冷却ガスを混合してキルンガスと冷却ガスを含む抽気ガスを得る抽気管12と、抽気管12からの抽気ガスに含まれる塊状のダストを分離するチャンバ20と、塊状のダストが分離された抽気ガスを揮発性アルカリ塩の融点以下に冷却する熱交換器25と、冷却に伴って析出した、抽気ガスに含まれるダスト(塩素バイパスダスト)を、抽気ガスから分離する集塵器26と、チャンバ20、熱交換器25及び集塵器26を介して、抽気ガスを抽気する吸引ファン28とを備える。抽気管12は、抽気プローブと称されるものであってもよい。吸引ファン28としては、シロッコファン及びターボファンなどの通常の吸引ファンが挙げられる。
【0023】
塩素バイパス設備100は、抽気管12に冷却ガスを導入する冷却ガス導入装置10と、冷却ガス導入装置10に冷却ガスを供給する導入ファン14とを備える。冷却ガスは、常温の空気であってよく、工場等で発生する排気ガスを含むものであってもよい。排気ガスとしては、例えば、セメント製造工場に持ち込まれた下水汚泥等の含水汚泥の受け入れ、貯蔵、発酵時に発生する臭気ガス、吸引ファン28及び他工程の吸引ファンから排出される排出ガス等が挙げられる。
【0024】
抽気管12は、
図1に示されるように、水平方向に対して傾斜していてもよく、水平であってもよい。抽気管12中におけるダストの堆積を抑制する観点から、抽気管12のライジングダクト51(窯尻52)を上流側、チャンバ20側を下流側としたときに、上流側よりも下流側の方が高くなるように傾斜していることが好ましい。これによって、旋回流と重力によって、原料ダストを含むダストをライジングダクト51又は窯尻52に戻すことができる。傾斜角度は、例えば水平面に対して上方に20~70°であってよい。
【0025】
図2は、抽気管12と冷却ガス導入装置10の接続部近傍を拡大して示す図である。キルンガス60は、抽気管12の入口である抽気口12aにおいて、ガス状の揮発成分とともに固形分としてダストを含有する。このダストには、セメントクリンカとなる原料ダストが含まれる場合もある。冷却ガス導入装置10は、円管形状の抽気管12における側面13の接線方向に延在するように抽気管12に接続される。冷却ガス導入装置10から導入される冷却ガス62は、抽気管12の側面13の周方向に沿って導入される。これによって、抽気管12の内壁面上には冷却ガス62の旋回流によるエアーカーテンが形成され、高温のキルンガス60から抽気管12の内壁面を保護する。
【0026】
冷却ガス導入装置10から、抽気管12の側面13の周方向に沿うように導入された冷却ガス62と、抽気口12aから抽気管12に流入したキルンガス60は、混合ガスとなって抽気管12に旋回流SF1,SF2を形成する。旋回流SF1,SF2の旋回軸と円管形状を有する抽気管12の中心軸は略一致する。混合ガスは、抽気管12の内部を旋回しながら抽気管12の長手方向に沿って移動する。
【0027】
冷却ガス導入装置10は、抽気管12に冷却ガス62を導入する導入部11に、冷却ガス62の流通方向に沿って、冷却ガスの流路15を拡げる拡張部16を有する。拡張部16において、流路15は、区画体17によって、冷却ガス62の流通方向に沿って複数に区画されている。区画体17は、区画された各流路15a,15b,15c,15d,15e,15fのそれぞれが、隣り合う流路と隔離可能な部材(例えば板状部材)で構成されてよい。このように流路15を区画体17で複数に区画することによって冷却ガスが整流されるため、旋回流SF1,SF2をより安定させることができる。
【0028】
流路15a,15b,15c,15d,15e,15f(以下、纏めて「15a~15f」と称する。)は、それぞれ、抽気管12への冷却ガス62の導入量を調節する調節部11a,11b,11c,11d,11e,11f(以下、纏めて「11a~11f」と称する。)を有する。調節部11a~11fは、それぞれ独立して冷却ガス62の導入量を調節可能に構成される。これによって、導入部11は、冷却ガス62の導入量を調節できる。また、調節部11a~11fが、流路15a~15fの一部を選択的に全閉とすれば、導入部11は、抽気管12への冷却ガス62の導入位置を調節することもできる。
【0029】
例えば、抽気管12の上流側に位置する流路15a,15b,15cからの冷却ガスの流量が、抽気管12の下流側に位置する流路15d,15e,15fからの冷却ガスの流量よりも多くなるように調節部11a~11fで調節すると、旋回流SF2を強くすることができる。一方、抽気管12の下流側に位置する流路15d,15e,15fからの冷却ガスの流量が、抽気管12の上流側に位置する流路15a,15b,15cからの冷却ガスの流量よりも多くなるように調節部11a~11fで調節すると、旋回流SF1を強くすることができる。
【0030】
例えば、旋回流SF1の方が強く形成されるように冷却ガス62の導入を継続すると、抽気管12の上流側(ライジングダクト51側)にダストが堆積する場合がある。この場合、調節部11a~11fによって、冷却ガス62の導入位置を抽気管12の上流側に変更したり、抽気管12の上流側に位置する流路15a,15b,15cからの冷却ガスの流量を増やしたりすることによって、旋回流SF2を強くすることができる。これによって、抽気管12の上流側に堆積するダストを旋回流SF2で除去することができる。抽気管12の上流側に堆積するダストは、旋回流SF2によって、ライジングダクト51(窯尻52)内に戻してもよいし、抽気管12の下流側に導出されてもよい。
【0031】
抽気管12の上流側、すなわち抽気口12a付近に堆積するダストは、揮発成分よりもセメントクリンカとなる原料ダストの含有量が高い場合もある。このような原料ダストを含むダストをライジングダクト51(窯尻52)内に戻すことによって、塩素バイパスダストの量を低減し、セメントクリンカの収量を高くすることができる。
【0032】
抽気管12内に導入された冷却ガス(又は、冷却ガスとキルンガスの混合ガス)のライジングダクト51(窯尻52)への流入量は少ない方が好ましい。これによって、熱損失を抑制することができる。このため、例えば、セメント原料の変化等の要因によって、キルンガスの発生量が減少し、抽気管12からライジングダクト51(窯尻52)への冷却ガス又は混合ガスの流入量が増加した場合には、調節部11a~11fによって、抽気管12の上流側に位置する流路15a,15b,15cからの冷却ガスの流量を減らし又は導入を停止し、下流側に位置する流路15d,15e,15fからの冷却ガス62の流量を増やす又は導入を開始すればよい。これによって、プレヒータ及び仮焼炉等における熱損失を低減することができる。
【0033】
図3は、冷却ガス導入装置の一例を示す図である。
図3の冷却ガス導入装置10Aは、導入部11Aに冷却ガス62の流通方向に沿って、冷却ガスの流路15を拡げる拡張部16を有する。拡張部16において、流路15は、区画体17によって、冷却ガス62の流通方向に沿って流路15a~15fに区画されている。各流路15a~15fには、それぞれ、調節部11a~11fが設けられている。調節部11a~11fは、軸体30と軸体30に回動又は揺動可能に取り付けられる部材32とをそれぞれ有する。このような調節部11a~11fは、各流路15a~15fからの冷却ガスの導入量をそれぞれ個別に調節することができる。
【0034】
図3では、一部の流路(流路15a~15c)が調節部11a~11cによって閉鎖されており、他部の流路(流路15d~15f)のみが開放されている。この場合、流路15a~15cからは冷却ガス62が供給されず、流路15d~15fのみから冷却ガス62を供給することができる。この状態から、例えば、調節部11a~11fの少なくとも一部を調節し、流路15a~15cの少なくとも一つから冷却ガスの導入を開始したり、流路15d~15fの少なくとも一つからの冷却ガスの導入を停止したりすれば、抽気管12への冷却ガス62の導入位置を調節することができる。このように、導入部11Aは、流路15a~15fとこれらの個別に設けられた調節部11a~11fを有することによって、高い自由度で抽気管12への冷却ガスの導入状態を調節することができる。したがって、塩素バイパス設備100の運転の十分な安定化を図ることができる。
【0035】
調節部11a~11fは、例えば、冷却ガス62の導入量を調節可能な構造を有していてればよい。例えば、ボール弁、ゲート弁、又はバタフライ弁のような通常のバルブで構成されてもよいし、ダンパーで構成されていてもよい。
【0036】
冷却ガス62の流通方向に沿う流路15a~15fの長さLは、各流路15a~15fの幅Dの5倍以上であることが好ましい。これによって、拡張部16によって冷却ガス62の流れが乱れても,流路15a~15fにおいて冷却ガス62の流れを十分に整流することができる。
【0037】
図4は、冷却ガス導入装置の一例を示す図である。
図4の冷却ガス導入装置10Bは、導入部11Aの代わりに、調節部11gを有する導入部11Bを有する点で、
図3の冷却ガス導入装置10Aと異なっている。冷却ガス導入装置10Bの導入部11Bは、拡張部16よりも下流側において、調節部11gを備える。調節部11gは、冷却ガスの流路15の内部に挿入される2つの挿入部材33A,33Bを有する。挿入部材33A,33Bは、例えば、冷却ガス62の流路を絞る邪魔板等の板状部材であってよい。2つの挿入部材33A,33Bは、それぞれ独立に、冷却ガス62の流通方向とは直交する方向に沿ってスライド可能に図示しない支持部によって支持されている。
【0038】
挿入部材33A,33Bが流路15を絞ることによって、挿入部材33A,33Bの間には、絞り部18が形成される。挿入部材33A,33Bを矢印方向(抽気管12の長手方向)に沿ってスライドさせることによって、絞り部18の位置を抽気管12の長手方向に沿って移動させることができる。冷却ガス導入装置10Bの導入部11Bは、このような構造を有する調節部11gを有することによって、抽気管12に導入される冷却ガス62の導入位置を調節することができる。また、調節部11gで絞り部18の幅を変えることによって、冷却ガス62の導入量を調節することもできる。冷却ガス62の導入量の調節と導入位置の調節を併せて行ってもよい。
【0039】
導入部11Bは、抽気管12におけるダストの堆積状況、及び、抽気口12aから流入するキルンガスの量等に応じて、抽気管12への冷却ガス62の導入位置及び導入量を調節することができる。したがって、抽気管12内のダストの堆積及び付着を低減すること、及び、冷却ガスのキルン流入による熱損失を抑制することが可能となる。
【0040】
絞り部18は、調節部11gのように複数の挿入部材で構成されてもよいし、例えば穴が形成された1枚の挿入部材で構成されていてもよい。また、冷却ガス62を抽気管12に大量に導入する必要があるときは、挿入部材33A,33Bは、流路15から完全に抜いてもよい。すなわち、挿入部材33A,33Bは、流路15に挿抜可能に構成されていてよい。また、導入部11Bは、拡張部16を有していなくてもよい。ただし、拡張部16を有することによって、冷却ガス62の抽気管12への導入位置の調節幅を大きくすることができる。
【0041】
上述の冷却ガス導入装置10,10A,10Bの導入部11,11A,11Bにおける調節部11a~11f,11gによる抽気管12への冷却ガス62の導入位置及び導入量の調節は、例えば、抽気管12、或いは抽気管12が連通するライジングダクト51、セメントキルン50又は窯尻52の運転情報を計測する計測部に基づいて行ってよい。例えば、抽気管の運転情報に基づいて、オペレータが導入位置及び/又は導入量の調節を、調節部11a~11gを用いてマニュアルで行ってよく、制御部を用いて自動で行ってもよい。この場合、塩素バイパス設備100は、抽気管12、ライジングダクト51、セメントキルン50及び窯尻52の少なくとも一つの運転情報を計測する計測部を備えることが好ましい。
【0042】
計測部が計測する運転情報としては、温度、圧力、ガス成分、ガス流速、ダスト濃度及び画像等が挙げられる。具体的には、抽気管12内部又は表面の温度、ライジングダクト51又は窯尻52におけるキルンガスの温度、抽気管12内に流入するキルンガスの温度、及び、キルンガス又は抽気ガスの圧力、キルンガス又は抽気ガスのガス成分、キルンガス又は抽気ガスに含まれるダスト濃度、抽気管12の内部の画像等が挙げられる。計測部としては、例えば、温度センサ、圧力センサ、ガス成分センサ、流速センサ、及びカメラ等が挙げられる。
【0043】
塩素バイパス設備100は、計測部で計測された運転情報に基づいて、調節部11a~11f,11gに冷却ガスの導入位置及び/又は導入量を調節する制御信号を出力する制御部を備えてもよい。制御部は、通常のコンピュータシステムであってよく、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び入出力インターフェイスなどを備えてよい。
【0044】
制御部を備えることによって、調節部11a~11gは、冷却ガス62の導入位置及び導入量を自動で制御することができる。例えば、抽気管12の抽気口12a付近の温度T1を計測部で計測し、温度T1が下限を下回った場合には、調節部11a~11f,11gによって冷却ガス62の導入位置を抽気管12の下流側の方に移動する。または、冷却ガス62の導入量を減らす。これによって、冷却ガスがライジングダクト51(窯尻52)に流入することを抑制できる。一方、温度T1が上限を上回った場合には、調節部11a~11gによって冷却ガスの導入位置を抽気管12の上流側の方に変更する。または、冷却ガス62の導入量を増やす。これによって、キルンガスに同伴して抽気管12に持ち込まれるダストの量を低減することができる。
【0045】
図5は、塩素バイパス設備の変形例を示す図である。この変形例は、抽気管12の抽気口12aとは反対側の端部12b側から、抽気管12の内部に旋回流の形成を促進するとともに、抽気管12の長手方向に沿う旋回流の進行方向をガイドする内筒体40が挿入されている点で、上記実施形態とは異なっている。抽気管12の長手方向に沿ってみたときに、内筒体40の先端40aは、キルンガスの抽気管12への入口である抽気口12aと、抽気管12と冷却ガス導入装置10との接続部の間に配置されている。これによって、冷却ガス導入装置10から導入された冷却ガスによって生じた旋回流は、一旦、抽気口12aに向かった後、内筒体40の先端40aから内筒体40内に流入し、内筒体40の下流へと流通する。これによって、抽気管12の内壁及び内筒体40の内壁へのダストの堆積を十分に抑制することができる。
【0046】
単に内筒体40を設けただけでは、抽気口12aまで冷却ガスが十分に行き届かず、ダストが堆積又は付着することがある。しかしながら、冷却ガス導入装置10は、調節部11a~11fを備える。このため、調節部11a~11fで冷却ガスの導入位置及び/又は導入量を調節することによって、抽気口12a付近に付着したダストを除去することができる。また、キルンガスの発生量が減少した場合は、冷却ガスの導入位置を抽気管12の上流側から下流側に変えることによって、冷却ガス(混合ガス)がライジングダクト51(窯尻52)内に流入することを抑制できる。内筒体40に導入された抽気ガス63は、内筒体40の下流に向かって流通する。内筒体40の下流側には、
図1に示すように、チャンバ20、熱交換器25、集塵器26、吸引ファン28が設けられてよい。
【0047】
図5の変形例では、冷却ガス導入装置10を備えていたが、冷却ガス導入装置10は冷却ガス導入装置10Aであってもよく、冷却ガス導入装置10Bであってもよい。
【0048】
図6及び
図7は、塩素バイパス設備の別の変形例を示す図である。
図7は、
図6のVII-VII線断面図である。この変形例では、抽気管12の端部12b側から、抽気管12の内部に旋回流の形成を促進するとともに旋回流の進行方向をガイドする二重管41が挿入されている。二重管41は、第1の管体41Aと、第1の管体41A内に挿入されている第2の管体41Bとを備える。第1の管体41Aは、第2の管体41Bの長手方向に沿ってスライド可能に設けられている。第1の管体41A及び第2の管体41Bは、
図7に示すように、抽気管12と同心となるように設けられている(中心C)。二重管41は、
図5の内筒体40と同様に、抽気管12の内部において旋回流SFの形成を促進するとともに旋回流SFの抽気管12の長手方向に沿う進行方向をガイドする機能を有する。
【0049】
第1の管体41Aを第2の管体41Bに対してスライドさせることによって、第1の管体41Aの先端41aの位置を変えることができる。
【0050】
本変形例の塩素バイパス設備では、調節部11gを有する冷却ガス導入装置10Bを備える。このため、絞り部18を移動させることによって、抽気管12における冷却ガス62の導入位置及び導入量を変えることができる。また、二重管41を備えることから、抽気管12における二重管41の先端位置を可変とすることができる。調節部11gによる冷却ガス62の導入位置及び導入量の調節と併せて二重管41の先端位置も調節できるため、より高い自由度で、旋回流の流動状態を調整することができる。したがって、キルンガスの発生量、及び、ダストの発生量の変化が大きくても、抽気管12の内壁へのダストの堆積及び付着と、ライジングダクト51(窯尻52)内への冷却ガスの流入とを十分に抑制することができる。
【0051】
抽気ガス63は、二重管41の下流に向かって流通する。二重管41の下流側には、
図1に示すように、チャンバ20、熱交換器25、集塵器26、吸引ファン28が設けられてよい。なお、
図6及び
図7の変形例では、冷却ガス導入装置10Bを備えていたが、冷却ガス導入装置10(冷却ガス導入装置10A)であってもよい。
【0052】
図8は、塩素バイパス設備に設けられるチャンバ20の例を示している。
図8(A)はチャンバ20Aの正面図であり、
図8(B)はチャンバ20Aの上面図である。チャンバ20Aは、抽気管12からの抽気ガス63に含まれるダストの少なくとも一部を分離する内部空間を有する本体部21と、本体部21に抽気ガスを導入する導入管22と、本体部21で抽気ガスから分離されたダストを排出するダスト排出管24と、本体部21から抽気ガス63よりもダストが低減された抽気ガス64を導出する導出管23とを備える。
【0053】
チャンバ20Aでは、本体部21と導入管22との接続部に導入口22aが形成され、本体部21と導出管23との接続部に導出口23aが形成されている。
図8(A)及び
図8(B)に示されるように、導入口22aから導入される抽気ガス63の導入方向の延長線(仮想導入線VG)は、導出口23aからずれて、本体部21の内壁に交差している。このような本体部21を有するチャンバ20Aでは、抽気ガス63に含まれるダストを効率よく分離し、導出口23aから導出される抽気ガス64に同伴するダストを十分に低減することができる。仮想導入線VGは、本体部21とダスト排出管24との接続部に形成されるダスト排出口24aからもずれていることが好ましい。これによって、一旦、抽気ガス63から分離されたダストが再び抽気ガス63に混入することを抑制することができる。
【0054】
図9は、塩素バイパス設備に設けられるチャンバの別の例を示している。
図9(A)はチャンバ20Bの正面図であり、
図9(B)はチャンバ20Bの上面図である。チャンバ20Bも、チャンバ20Aと同様に、本体部21、導入管22、ダスト排出管24と、及び導出管23を備える。
図9(A)及び
図9(B)に示されるように、導入口22aから導入される抽気ガス63の導入方向の延長線(仮想導入線VG)は、導出口23aからずれて、本体部21の内壁に交差している。仮想導入線VGは、ダスト排出口24aからもずれている。したがって、チャンバ20Bも、抽気ガス63に含まれるダストを効率よく分離し、導出口23aから導出される抽気ガス64に同伴するダストを十分に低減することができる。
【0055】
なお、チャンバの構成は、
図8及び
図9に例示したものに限定されない。例えば、上述の
図8及び
図9に示す仮想導入線VGは、(A)正面図と(B)上面図のそれぞれにおいて、導出口23a及びダスト排出口24aからずれているが、さらに別の例では、(A)正面図と(B)上面図のどちらか一方において、導出口23a及びダスト排出口24aからずれていてもよい。このような例であっても、抽気ガス63に含まれるダストを効率よく分離することが可能である。また、抽気ガス63から分離されたダストが再び抽気ガス63に混入することも抑制できる。また、本実施形態の塩素バイパス設備100はチャンバ20を備えているが、別の実施形態ではチャンバを備えていなくてもよい。この場合であっても、抽気ガスに含まれるダストは例えば集塵器26で回収することができる。
【0056】
集塵器26は、バグフィルタであってよく、湿式スクラバ等の湿式集塵器であってもよい。また、集塵器26とは別に分級器を集塵器26の上流又は下流に設けてもよい。
【0057】
図10は、一実施形態に係るセメントクリンカ製造設備を示す図である。セメントクリンカ製造設備200は、セメント原料を予熱及び仮焼する予熱仮焼部70と、予熱及び仮焼されたセメント原料を焼成してセメントクリンカを得るセメントキルン50と、セメントキルン50で得られたセメントクリンカを冷却するクリンカクーラ80とを備える。予熱仮焼部70は、4つのサイクロンC1,C2,C3,C4(プレヒータ)と仮焼炉72とを有する。
【0058】
セメントキルン50の窯尻52と予熱仮焼部70の仮焼炉72とは、ライジングダクト51で接続されている。ライジングダクト51と窯尻52の接続部近傍には、セメントキルン50で発生するキルンガスを抽気して、キルンガスに含まれるダストを回収する塩素バイパス設備100の抽気管12が接続されている。抽気管12には、その側面13の周方向に沿うように冷却ガスを導入する冷却ガス導入装置10が設けられている。冷却ガス導入装置10は、導入部11に抽気管12への冷却ガスの導入位置及び/又は導入量を調節する調節部を備える。このような冷却ガス導入装置10を有する塩素バイパス設備100を備えることによって、セメントクリンカ製造設備200内の揮発成分を低減することができる。
【0059】
サイクロンC1とサイクロンC2との接続部から導入されるセメント原料は、サイクロンC1、サイクロンC2、サイクロンC3、ライジングダクト51、仮焼炉72、及びサイクロンC4を流通してセメントキルン50の窯尻52に導入される。セメントキルン50では、予熱及び仮焼されたセメント原料が、窯尻52とは反対側に設けられたバーナ54の燃焼によって加熱されセメントクリンカとなる。得られたセメントクリンカは、クリンカクーラ80で冷却される。クリンカクーラ80によって冷却された後、セメントクリンカが得られる。
【0060】
セメントクリンカ製造設備200は、冷却ガス導入装置10を備えることから、抽気管12のダストの堆積状況、及び、セメントキルン50の運転状況に応じて、抽気管12への冷却ガスの導入位置及び又は導入量を調節することができる。したがって、抽気管12内のダストの堆積及び付着を低減できるとともに、安定的にセメントクリンカ製造設備200を運転することができる。
【0061】
一実施形態に係るセメントクリンカの製造方法は、セメントクリンカ製造設備200を用いて行うことができる。この製造方法は、予熱仮焼部70でセメント原料を予熱及び仮焼する予熱仮焼工程と、予熱及び仮焼されたセメント原料を、窯尻52からセメントキルン50に導入し、セメントクリンカを製造する焼成工程と、塩素バイパス設備100の抽気管12の側面13の周方向に沿うように冷却ガスを導入して、抽気管12で抽気した抽気ガスを冷却する冷却工程と、抽気ガスに含まれるダストを回収する回収工程と、を有する。また、焼成工程で得られたセメントクリンカを、クリンカクーラ80で冷却するクリンカ冷却工程を有してよい。
【0062】
予熱仮焼工程では、セメント原料がサイクロンC1とサイクロンC2の間の流路から導入される。セメント原料は、サイクロンC1、サイクロンC2及びサイクロンC3を流通して予熱される。その後、仮焼炉72に導入され、仮焼される。仮焼炉72には、石炭等の燃料を燃焼するバーナが設けられていてよい。仮焼炉72で仮焼されたセメント原料(仮焼原料)は、サイクロンC4に導入され加熱される。
【0063】
焼成工程では、サイクロンC4で加熱された仮焼原料が窯尻52に導入される。その後、セメントキルン50において焼成されセメントクリンカとなる。冷却工程では、抽気管12の側面13の周方向に沿うように冷却ガスを導入して、抽気管12で抽気した抽気ガスを冷却する。このとき、調節部によって冷却ガスの導入量及び/又は導入位置を調節する。冷却工程では、抽気管12のダストの堆積状況、及び、セメントキルン50の運転状況に応じて、抽気管12への冷却ガスの導入量及び/又は導入位置を調節することができる。したがって、抽気管12内のダストの堆積及び付着を低減できるともに、冷却工程及び焼成工程を安定化させることができる。したがって、安定的にセメントクリンカを製造することができる。
【0064】
冷却工程では、抽気管12、ライジングダクト51、セメントキルン50、又は窯尻52の運転情報に基づいて、冷却ガス導入装置10の導入部11から抽気管12に導入される冷却ガスの導入位置及び/又は導入量を調節してもよい。冷却ガスの導入位置及び/又は導入量は、調節部11a~11fで、複数に区画されて形成される各流路15a~15fの冷却ガスの導入量を個別に調節することによって調節することができる。
【0065】
セメントクリンカ製造設備200の塩素バイパス設備100は、冷却ガス導入装置10に代えて、冷却ガス導入装置10B有していてもよい。この場合、抽気管12における冷却ガスの導入位置及び/又は導入量は、調節部11gで、絞り部18を移動したり、絞り部18の大きさを変えたりすることによって調節することができる。
【0066】
上記製造方法によれば、抽気管12内のダストを効率よく除去できるともに、冷却工程及び焼成工程を安定化させることができる。したがって、安定的にセメントクリンカを製造することができる。上述の塩素バイパス設備100及びセメントクリンカ製造設備200に関する説明内容は、上記製造方法にも適用される。
【0067】
以上、本開示の幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。各実施形態及び各変形例の各構成を組み合わせてもよいし、入れ替えてもよい。また、抽気管12は、窯尻52のみ又はライジングダクト51のみに接続されていてもよいし、2つ以上の抽気管12が、ライジングダクト51と窯尻52のそれぞれに接続されていてもよい。この場合、複数の抽気管12で抽気されたダストを含む抽気ガスは、チャンバで混合されてダストが回収されてもよく、個別のチャンバでダストを低減した後、集塵器で残存するダストが回収されてもよい。また例えば、抽気管12の内径は一定でなくてよく、長手方向に沿って変化してもよい。この場合、抽気管12は、ライジングダクト51(窯尻52)に近接するにつれて内径が小さくなるテーパー部を有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本開示によれば、抽気管におけるダストの堆積及び付着を低減すること、及び、冷却ガスがセメントキルンに流入することによる熱損失を抑制することによって、塩素バイパス設備の運転及びセメントクリンカ製造設備の運転を安定化することが可能な冷却ガス導入装置が提供される。また、そのような冷却ガス導入装置を備えることによって、安定的に運転することが可能な塩素バイパス設備及びセメントクリンカ製造設備が提供される。また、安定的にセメントクリンカを製造することが可能なセメントクリンカの製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0069】
10,10A,10B…冷却ガス導入装置、11,11A,11B…導入部、11a,11b,11c,11d,11e,11f,11g…調節部、12…抽気管、12a…抽気口、12b…端部、13…側面、14…導入ファン、15…流路、15a,15b,15c,15d,15e,15f…流路、16…拡張部、17…区画体、18…絞り部、20,20A,20B…チャンバ、21…本体部、22…導入管、22a…導入口、23…導出管、23a…導出口、24…ダスト排出管、24a…ダスト排出口、25…熱交換器、26…集塵器、28…吸引ファン、30…軸体、32…部材、33A,33B…挿入部材、40…内筒体、40a…先端、41…二重管、41A…第1の管体、41B…第2の管体、41a…先端、50…セメントキルン、51…ライジングダクト、52…窯尻、54…バーナ、60…キルンガス、62…冷却ガス、63,64…抽気ガス、70…予熱仮焼部、72…仮焼炉、80…クリンカクーラ、100…塩素バイパス設備、200…セメントクリンカ製造設備。