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特許7502069端子付き電線、ワイヤハーネス及び端子付き電線の製造方法
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  • 特許-端子付き電線、ワイヤハーネス及び端子付き電線の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】端子付き電線、ワイヤハーネス及び端子付き電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20240611BHJP
   H01R 4/62 20060101ALI20240611BHJP
   H01R 43/048 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01R4/62 A
H01R43/048 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020067852
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021163732
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】河中 裕文
(72)【発明者】
【氏名】竹下 隼矢
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】生沼 良樹
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-096570(JP,A)
【文献】特開2014-029884(JP,A)
【文献】特開2019-106316(JP,A)
【文献】特開2019-192354(JP,A)
【文献】特開2019-121425(JP,A)
【文献】国際公開第2018/223887(WO,A1)
【文献】特表2020-522872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
H01R 4/62
H01R 43/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子と被覆導線とが接続される端子付き電線であって、
前記被覆導線は、3sq以上の太物であって、複数の素線からなる導線と、前記導線を被覆する被覆部とからなり、
前記端子は、前記導線が圧着される導線圧着部を有し、
前記被覆導線の先端部の前記被覆部が剥離されて前記導線が露出し、
前記被覆導線は、前記導線の少なくとも先端部において、レーザ溶接又はアーク溶接によって少なくとも一部の前記素線が溶融化して一体化され、前記素線同士が溶接一体化された第1素線一体化部と、前記第1素線一体化部と前記被覆部の端部との間の素線束部とを有し、
前記導線圧着部の内面の少なくとも一部にセレーションが設けられ、
少なくとも、前記導線圧着部の先端部から前記導線圧着部の先端側の前記セレーションまでの範囲において、前記第1素線一体化部が前記導線圧着部で圧着されていて、
前記第1素線一体化部の長さをLとすると、前記導線圧着部の先端から少なくともL/2以上の長さの範囲において、前記第1素線一体化部が前記導線圧着部で圧着されていて、
前記第1素線一体化部の端部の一部が、前記導線圧着部の先端側の前記セレーションの一部にかかっていることを特徴とする端子付き電線。
【請求項2】
端子と被覆導線とが接続される端子付き電線であって、
前記被覆導線は、複数の素線からなる導線と、前記導線を被覆する被覆部とからなり、
前記端子は、前記導線が圧着される導線圧着部を有し、
前記被覆導線の先端部の前記被覆部が剥離されて前記導線が露出し、
前記被覆導線は、前記導線の少なくとも先端部において、レーザ溶接又はアーク溶接によって少なくとも一部の前記素線が溶融化して一体化され、前記素線同士が溶接一体化された第1素線一体化部と、前記第1素線一体化部と前記被覆部の端部との間の素線束部とを有し、
前記導線圧着部の内面の少なくとも一部にセレーションが設けられ、
少なくとも、前記導線圧着部の先端部から前記導線圧着部の先端側の前記セレーションまでの範囲において、前記第1素線一体化部が前記導線圧着部で圧着されていて、
前記第1素線一体化部の長さをLとすると、前記導線圧着部の先端から少なくともL/2以上の長さの範囲において、前記第1素線一体化部が前記導線圧着部で圧着されていて、
前記導線圧着部全体において、前記素線束部と前記第1素線一体化部が、略同じ高さで圧着されていることを特徴とする端子付き電線。
【請求項3】
前記被覆導線は、前記第1素線一体化部と前記被覆部の端部との間において、レーザ溶接又はアーク溶接によって少なくとも一部の前記素線が溶融化して一体化され、前記素線同士が溶接一体化された第2素線一体化部を有し、前記導線圧着部の後端部において、前記第2素線一体化部が圧着されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の端子付き電線。
【請求項4】
端子と被覆導線とが接続される端子付き電線であって、
前記被覆導線は、複数の素線からなる導線と、前記導線を被覆する被覆部とからなり、
前記端子は、前記導線が圧着される導線圧着部を有し、
前記被覆導線の先端部の前記被覆部が剥離されて前記導線が露出し、
前記被覆導線は、前記導線の少なくとも先端部において、レーザ溶接又はアーク溶接によって少なくとも一部の前記素線が溶融化して一体化され、前記素線同士が溶接一体化された第1素線一体化部と、前記第1素線一体化部と前記被覆部の端部との間の素線束部とを有し、
前記導線圧着部の内面の少なくとも一部にセレーションが設けられ、
少なくとも、前記導線圧着部の先端部から前記導線圧着部の先端側の前記セレーションまでの範囲において、前記第1素線一体化部が前記導線圧着部で圧着されていて、
前記第1素線一体化部の長さをLとすると、前記導線圧着部の先端から少なくともL/2以上の長さの範囲において、前記第1素線一体化部が前記導線圧着部で圧着されていて、
前記被覆導線は、前記第1素線一体化部と前記被覆部の端部との間において、レーザ溶接又はアーク溶接によって少なくとも一部の前記素線が溶融化して一体化され、前記素線同士が溶接一体化された第2素線一体化部を有し、前記導線圧着部の後端部において、前記第2素線一体化部が圧着されていて、
前記素線束部が、前記第1素線一体化部と前記第2素線一体化部との間に位置し、前記素線束部が、前記導線圧着部の先後端に露出せず、かつ、前記第1素線一体化部と前記素線束部と前記第2素線一体化部とが、略同じ高さで圧着されていることを特徴とする端子付き電線。
【請求項5】
前記導線圧着部の後端から少なくとも1mm以上の長さの範囲において、前記第2素線一体化部が前記導線圧着部で圧着されていることを特徴とする請求項又は請求項に記載の端子付き電線。
【請求項6】
前記導線圧着部の先端から少なくとも1mm以上の長さの範囲において、前記第1素線一体化部が前記導線圧着部で圧着されていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の端子付き電線。
【請求項7】
少なくとも、前記導線圧着部から露出する前記第1素線一体化部が、樹脂で被覆されることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の端子付き電線。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれかに記載の端子付き電線が複数束ねられたことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項9】
複数の素線からなる導線と、前記導線を被覆する被覆部とからなる被覆導線と前記導線が圧着される導線圧着部を有する端子とが接続される端子付き電線の製造方法であって、
前記被覆導線は、前記被覆部の先端から露出する前記導線の少なくとも先端部において、レーザ溶接又はアーク溶接によって少なくとも一部の前記素線が溶融化して一体化され、略球形化した前記素線同士が溶接一体化された第1素線一体化部と、前記第1素線一体化部と前記被覆部の端部との間の素線束部とを有し、
前記導線圧着部の内面の少なくとも一部にセレーションが設けられ、
前記第1素線一体化部の少なくとも一部が前記セレーションにかかり、かつ圧着前の前記第1素線一体化部の最大径部が、前記導線圧着部にかかるように前記第1素線一体化部を配置した状態で、前記導線圧着部で前記導線を圧着し、
前記被覆導線は、前記第1素線一体化部と前記被覆部の端部との間において、レーザ溶接又はアーク溶接によって少なくとも一部の前記素線が溶融化して一体化され、略球形化した前記素線同士が溶接一体化された第2素線一体化部を有し、
前記第2素線一体化部の少なくとも一部が最後端側の前記セレーションにかかり、かつ圧着前の前記第2素線一体化部の最大径部が、前記導線圧着部にかかるように前記第2素線一体化部を配置した状態で、前記導線圧着部で前記導線を、前記第1素線一体化部と前記素線束部と前記第2素線一体化部とが、略同じ高さとなるように圧着することを特徴とする端子付き電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等に用いられる端子付き電線、ワイヤハーネス及び端子付き電線の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被覆電線は、例えば、導体に圧着端子が接続された後、束ねられてワイヤハーネスとなって、自動車等の給電用等として配索される。被覆電線に圧着端子を接続するには、被覆電線の端末部の絶縁被覆を除去して導体を露出させた後、その導体の露出部分を圧着端子の圧着部で圧着する。圧着によって、導体を構成する素線が、圧着端子の圧着部と接して、被覆電線と圧着端子との間の導通を得ることができる。
【0003】
しかし、特に自動車に用いられるワイヤハーネスにおいては、軽量化のためアルミニウム(アルミニウム合金含む)製の素線が使用されることが多い。アルミニウム製の素線の表面には、銅又は銅合金製の素線等と比較して強固な酸化被膜が形成される。このような酸化被膜は、被覆電線と端子との導通性の悪化の要因となる。
【0004】
例えば、被覆電線の導体と圧着端子との接続を行った場合、圧着端子と導体とが互いに直接接する部分は導通を得やすいが、素線同士の接触部分は強く圧縮しなければ、酸化被膜が破壊されず、良好な導通が得られにくい。このような影響は、導体を構成する素線の本数が多くなり、圧着端子と直接接しない素線が多くなると特に顕著になり、圧着部の抵抗値が高くなりやすい。また、太物(大径)の被覆電線の場合には、この問題が顕著となりやすい。ここで、太物とは、自動車に用いる被覆電線の場合、導体が主に3sq以上の太さのものをいう。
【0005】
このような、導体を構成する素線間の抵抗を低減するためには、圧着部を強圧縮して、酸化被膜を破壊する方法が考えられる。しかし、過度の圧縮により素線が切れたり、圧着端子の圧着部が大きく伸びたりするという問題がある。
【0006】
これに対し、素線同士を超音波接合によって接合する方法が提案されている(特許文献1)。しかし、素線同士を超音波接合で接合すると、素線に加えられる圧力によって素線の接合部が大きく伸び、変形してしまう。この結果、圧着端子を接続したときに所定の範囲に導体が収まらずに、圧着部からはみ出したり、良好な圧着形状を得にくかったりするなどの問題が生じるおそれがある。
【0007】
また、同様に、素線同士を半田で接合する方法が提案されている(特許文献2)。しかし、素線同士を半田で接合する場合には、半田のコストがかさむ上に、素線の表面状態によって半田の付着距離にばらつきが生じるといった問題がある。また半田は素線とは別の金属であるため、水分が付着することによって後述する異種金属腐食が生じたり、衝撃によって半田にクラックが入ったり半田が脱落したりするので、十分な耐久性は期待しにくいものであった。
【0008】
また、超音波接合で接合した場合には、接合部の断面形状が略長方形状になり、また半田で接合した場合には、半田付けの状態によって断面形状が楕円形等の不定形状になる。このため、接合部や半田部を端子の圧着部に配置して圧着する際に、圧着部における安定性が悪く、所望の圧着形状に圧着しにくいという問題点もあった。
【0009】
これに対して、素線同士をレーザ溶接やアーク溶接によって接合する方法も提案されている(特許文献3)。素線同士をレーザ溶接やアーク溶接で一体化することで、超音波接合や半田接合と比較して、端子の圧着部に配置した際に、より安定性が良好であり、所望の圧着形状に圧着しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第5428722号公報
【文献】特開2010-225529号公報
【文献】特許第6373077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一方、端子と電線の導体とのそれぞれを構成する金属材料が異種の金属材料である場合において、端子と導体との接続部分に水などの電解液が付着すると、両者の標準電極電位が異なるため、イオン化傾向の大きい金属(卑な金属)と小さい金属(貴な金属)との間に腐食電流が流れる。その結果、卑な金属は金属イオンとなり溶液中に溶解し腐食される。これを異種金属腐食(電食)といい、電解質水溶液中において異種の金属材料を接触させた時に生じる腐食現象である。
【0012】
このため、例えば、アルミニウムが、より貴な金属(たとえば銅など)と電解質水溶液中で長時間にわたり直接接触すると、局部電池が形成され、アルミニウムは液中へ溶けてイオン化する。従って、アルミニウムと銅の接触部に塩水などの電解質水溶液と空気(酸素)が入り込むと、上記アルミニウムの腐食が一層加速されることになる。
【0013】
特に、アルミニウムと銅との標準電極電位差は大きいため、両者の接触部へ、雨天時の走行や洗車などによる水の飛散や結露等が生じると、電気的に卑であるアルミニウム側の腐食が進行する。このため、接続部における電線と端子との接続状態が不安定となり、接触抵抗の増加や線径の減少による電気抵抗の増大、更には断線が生じて電装部品の誤動作、機能停止に至る恐れがある。
【0014】
これに対し、端子後端部をアルミニウム系材料で形成し、端子先端部を銅系材料で形成し、これら端子後端部と端子先端部を接合して、その接合部を絶縁体で封止して構成した接続端子等が提案されている。しかし、この方法では、構造や製造工程が複雑になるという問題がある。
【0015】
一方、前述した特許文献1では、素線の先端がアーク溶接やレーザ溶接で一体化される。しかし、特許文献1においては、圧着部で圧着される部位は、基本的に一体化していない素線部分か、素線一体化部のわずかに一部のみである。すなわち、素線一体化部の大部分は圧着部の外側に位置し、圧着部の端部近傍には、一体化していない素線部分が位置する。このため、電解液や空気(酸素)が素線部分の隙間より、圧着部の内部に浸透しやすくなり、圧着部の内部異種金属接触腐食が生じやすいという問題点がある。
【0016】
例えば、圧着部の先端部において、素線一体化部の一部が圧着されていても、圧着部先端から内部の素線部までの距離が短い。このために、素線一体化部と端子の接合面での腐食が進むと、短期間で内部の素線部分が露出する。このため、現れた素線部分の隙間に、電解液と酸素が急速に浸透し、先述のとおり、導通性が早期に失われる。これに対し、樹脂を被覆して防食性を高めようとすると、その構造や製造工程が複雑になる上、特に3sq以上の太物では、使用樹脂量も多いためコストがかかるという問題があった
【0017】
一方で、発明者らは、特に3sq以上の太物の電線は、3sq未満の電線と比較すると、導体が太く、銅/アルミニウム表面積比が小さいために、腐食が緩やかに進むという知見を得た。このため、コストのかかる樹脂封止を行わなくても、太物の電線については、腐食が遅延することで、導通耐久性が高められると推定される。しかし、太物の電線であっても、従来の端子付き電線では、まだ十分な耐久性が得られているとは言えず、より長期にわたって安定した導通を確保することが可能な端子付き電線が要求されている。
【0018】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、製造コストを抑制し、防食性に優れた端子付き電線等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前述した目的を達するために第1の発明は、端子と被覆導線とが接続される端子付き電線であって、前記被覆導線は、3sq以上の太物であって、複数の素線からなる導線と、前記導線を被覆する被覆部とからなり、前記端子は、前記導線が圧着される導線圧着部を有し、前記被覆導線の先端部の前記被覆部が剥離されて前記導線が露出し、前記被覆導線は、前記導線の少なくとも先端部において、レーザ溶接又はアーク溶接によって少なくとも一部の前記素線が溶融化して一体化され、前記素線同士が溶接一体化された第1素線一体化部と、前記第1素線一体化部と前記被覆部の端部との間の素線束部とを有し、前記導線圧着部の内面の少なくとも一部にセレーションが設けられ、少なくとも、前記導線圧着部の先端部から前記導線圧着部の先端側の前記セレーションまでの範囲において、前記第1素線一体化部が前記導線圧着部で圧着されていて、前記第1素線一体化部の長さをLとすると、前記導線圧着部の先端から少なくともL/2以上の長さの範囲において、前記第1素線一体化部が前記導線圧着部で圧着されていて、前記第1素線一体化部の端部の一部が、前記導線圧着部の先端側の前記セレーションの一部にかかっていることを特徴とする端子付き電線である。
第2の発明は、端子と被覆導線とが接続される端子付き電線であって、前記被覆導線は、複数の素線からなる導線と、前記導線を被覆する被覆部とからなり、前記端子は、前記導線が圧着される導線圧着部を有し、前記被覆導線の先端部の前記被覆部が剥離されて前記導線が露出し、前記被覆導線は、前記導線の少なくとも先端部において、レーザ溶接又はアーク溶接によって少なくとも一部の前記素線が溶融化して一体化され、前記素線同士が溶接一体化された第1素線一体化部と、前記第1素線一体化部と前記被覆部の端部との間の素線束部とを有し、前記導線圧着部の内面の少なくとも一部にセレーションが設けられ、少なくとも、前記導線圧着部の先端部から前記導線圧着部の先端側の前記セレーションまでの範囲において、前記第1素線一体化部が前記導線圧着部で圧着されていて、前記第1素線一体化部の長さをLとすると、前記導線圧着部の先端から少なくともL/2以上の長さの範囲において、前記第1素線一体化部が前記導線圧着部で圧着されていて、前記導線圧着部全体において、前記素線束部と前記第1素線一体化部が、略同じ高さで圧着されていることを特徴とする端子付き電線である。
【0020】
第1又は第2の発明において、前記被覆導線は、前記第1素線一体化部と前記被覆部の端部との間において、レーザ溶接又はアーク溶接によって少なくとも一部の前記素線が溶融化して一体化され、前記素線同士が溶接一体化された第2素線一体化部を有し、前記導線圧着部の後端部において、前記第2素線一体化部が圧着されていてもよい。
【0021】
第3の発明は、端子と被覆導線とが接続される端子付き電線であって、前記被覆導線は、複数の素線からなる導線と、前記導線を被覆する被覆部とからなり、前記端子は、前記導線が圧着される導線圧着部を有し、前記被覆導線の先端部の前記被覆部が剥離されて前記導線が露出し、前記被覆導線は、前記導線の少なくとも先端部において、レーザ溶接又はアーク溶接によって少なくとも一部の前記素線が溶融化して一体化され、前記素線同士が溶接一体化された第1素線一体化部と、前記第1素線一体化部と前記被覆部の端部との間の素線束部とを有し、前記導線圧着部の内面の少なくとも一部にセレーションが設けられ、少なくとも、前記導線圧着部の先端部から前記導線圧着部の先端側の前記セレーションまでの範囲において、前記第1素線一体化部が前記導線圧着部で圧着されていて、前記第1素線一体化部の長さをLとすると、前記導線圧着部の先端から少なくともL/2以上の長さの範囲において、前記第1素線一体化部が前記導線圧着部で圧着されていて、前記被覆導線は、前記第1素線一体化部と前記被覆部の端部との間において、レーザ溶接又はアーク溶接によって少なくとも一部の前記素線が溶融化して一体化され、前記素線同士が溶接一体化された第2素線一体化部を有し、前記導線圧着部の後端部において、前記第2素線一体化部が圧着されていて、前記素線束部が、前記第1素線一体化部と前記第2素線一体化部との間に位置し、前記素線束部が、前記導線圧着部の先後端に露出せず、かつ、前記第1素線一体化部と前記素線束部と前記第2素線一体化部とが、略同じ高さで圧着されていることを特徴とする端子付き電線である
【0022】
この場合、前記導線圧着部の後端から少なくとも1mm以上の長さの範囲において、前記第2素線一体化部が前記導線圧着部で圧着されていることが望ましい。
【0023】
前記導線圧着部の先端から少なくとも1mm以上の長さの範囲において、前記第1素線一体化部が前記導線圧着部で圧着されていることが望ましい。
【0025】
少なくとも、前記導線圧着部から露出する前記第1素線一体化部が、樹脂で被覆されていてもよい。
【0026】
第1の発明によれば、導線の先端部に、素線同士が溶接一体化された第1素線一体化部が形成され、当該部位が、導線圧着部のセレーション(凹凸状の溝/突起)にかかるように圧着されている。このため、圧着時に第1素線一体化部がセレーションに食い込んで端子と導体との導通性が発現される。この結果、導線圧着部の端部から、このセレーションのまでの間には、素線束部が存在せず、第1素線一体化部で満たされているため、セレーションへの水分の到達を遅延させることができ、導通性を長期間保つことができる。
【0027】
また、第1素線一体化部と被覆部の端部との間において、素線同士が溶接一体化された第2素線一体化部を形成し、導線圧着部の後端部において、第2素線一体化部が圧着されることで、導線圧着部の後方からの水分の浸入及び腐食の進行を遅らせることができる。
【0028】
特に、素線束部が、第1素線一体化部と第2素線一体化部との間に位置し、素線束部が、導線圧着部の先後端に露出しないようにすることで、より確実に導通性を長期間保つことができる。
【0029】
また、導線圧着部の後端から少なくとも1mm以上の長さの範囲において、第2素線一体化部が導線圧着部で圧着されていれば、導線圧着部の端部から素線束部までの距離が十分であるため、導通性を長期間保つことができる。
【0030】
同様に、導線圧着部の先端から少なくとも1mm以上の長さの範囲において、第1素線一体化部が導線圧着部で圧着されていれば、導線圧着部の端部から素線束部までの距離が十分であるため、導通性を長期間保つことができる。
【0031】
特に、第1素線一体化部の長さをLとすると、導線圧着部の先端から少なくともL/2以上の長さの範囲において、第1素線一体化部が導線圧着部で圧着されていれば、導線圧着部の端部から素線束部までの距離が十分であるため、導通性を長期間保つことができる。
【0032】
また、導線圧着部から露出する第1素線一体化部を樹脂で被覆することで、より確実に耐食性を高めることができる。この場合でも、従来の端子付き電線と比較して、わずかな樹脂の塗布量でも、十分な効果を得ることができる。
【0033】
の発明は、第1から第3のいずれかの発明にかかる端子付き電線が複数束ねられたことを特徴とするワイヤハーネスである。
【0034】
第2の発明によれば、複数の電線が接合されたワイヤハーネスを得ることができる。
【0035】
の発明は、複数の素線からなる導線と、前記導線を被覆する被覆部とからなる被覆導線と前記導線が圧着される導線圧着部を有する端子とが接続される端子付き電線の製造方法であって、前記被覆導線は、前記被覆部の先端から露出する前記導線の少なくとも先端部において、レーザ溶接又はアーク溶接によって少なくとも一部の前記素線が溶融化して一体化され、略球形化した前記素線同士が溶接一体化された第1素線一体化部と、前記第1素線一体化部と前記被覆部の端部との間の素線束部とを有し、前記導線圧着部の内面の少なくとも一部にセレーションが設けられ、前記第1素線一体化部の少なくとも一部が前記セレーションにかかり、かつ圧着前の前記第1素線一体化部の最大径部が、前記導線圧着部にかかるように前記第1素線一体化部を配置した状態で、前記導線圧着部で前記導線を圧着し、前記被覆導線は、前記第1素線一体化部と前記被覆部の端部との間において、レーザ溶接又はアーク溶接によって少なくとも一部の前記素線が溶融化して一体化され、略球形化した前記素線同士が溶接一体化された第2素線一体化部を有し、前記第2素線一体化部の少なくとも一部が最後端側の前記セレーションにかかり、かつ圧着前の前記第2素線一体化部の最大径部が、前記導線圧着部にかかるように前記第2素線一体化部を配置した状態で、前記導線圧着部で前記導線を、前記第1素線一体化部と前記素線束部と前記第2素線一体化部とが、略同じ高さとなるように圧着することを特徴とする端子付き電線の製造方法である。
【0037】
第3の発明によれば、長期にわたって導通性を確保することが可能な端子付き電線を容易に得ることができる。
【0038】
特に、第1素線一体化部の最大径部が導線圧着部にかかるように第1素線一体化部を配置した状態で、導線圧着部で導線を圧着することで、素線一体化部を導線圧着部と共に確実に圧縮して、圧着後の導体圧着部と素線一体化部との隙間の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、製造コストを抑制し、防食性に優れた端子付き電線等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】端子付き電線10を示す斜視図。
図2】(a)は、端子付き電線10を示す断面図、(b)は(a)の導線圧着部7の先端部近傍の拡大図。
図3】端子付き電線10の分解斜視図。
図4】(a)、(b)は、端子付き電線10の製造工程を示す図。
図5】(a)、(b)は、端子付き電線10の製造工程を示す図。
図6】他の端子付き電線の分解斜視図。
図7】他の端子付き電線の製造工程を示す図。
図8】(a)、(b)は、他の端子付き電線の製造工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、端子付き電線10を示す斜視図であり、図2(a)は断面図である。端子付き電線10は、端子1と被覆導線11が接続されて構成される。
【0042】
被覆導線11は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である導線13と、導線13を被覆する被覆部15からなる。導線13は、例えば、複数の素線が撚り合わせられた撚り線である。被覆導線11の先端は、被覆部15が剥離され、内部の導線13が露出する。
【0043】
端子1は、銅または銅合金製である。端子1は、端子本体3と圧着部5とが連結されて構成される。端子本体3は、丸型端子であってボルト締結部が設けられる。なお、端子本体3は、前端部から雄型端子などが挿入される雌型端子であってもよく、雄型端子の挿入タブであってもよい。
【0044】
端子1の圧着部5は、オープンバレル型であって、圧着前においては、端子1の長手方向に垂直な断面形状が略U字状のバレル形状を有する。端子1の圧着部5は、導線13を圧着する導線圧着部7と、被覆導線11の被覆部15を圧着する被覆圧着部9と、導線圧着部7と被覆圧着部9の間のバレル間部8からなる。
【0045】
すなわち、被覆導線11の被覆部15は、端子1の被覆圧着部9によって圧着され、被覆部15が剥離されて露出する導線13は、導線圧着部7により圧着される。導線圧着部7において、導線13と端子1とが電気的に接続される。なお、被覆部15の端面は、被覆圧着部9と導線圧着部7の間のバレル間部8に位置する。
【0046】
図2(b)は、導線圧着部7の先端部(端子本体3側)近傍の拡大図である。導線圧着部7の内面の少なくとも一部には、周方向に、複数のセレーション19が設けられる。このようにセレーション19を形成することで、導線13を圧着した際に、導線13の表面の酸化被膜を破壊しやすく、また、導線13との接触面積を増加させることができる。
【0047】
被覆部15から露出する導線13の少なくとも先端部には、素線同士が溶接一体化された第1の素線一体化部13aが形成される。また、素線一体化部13aと被覆部15の端部との間には、素線同士が溶接一体化されていない素線束部13bが形成される。すなわち、被覆導線11は、導線13の少なくとも先端部において、素線同士が溶接一体化された第1の素線一体化部13aと、素線一体化部13aと被覆部15の端部との間の素線束部13bとを有する。
【0048】
素線一体化部13aは、例えば、レーザ溶接やアーク溶接によって形成される。この際、レーザ溶接の場合には、導線13の先端部近傍において、導線13の長手方向とは垂直な方向からレーザを照射して、素線が溶融化して一体化される。また、アーク溶接の場合には、導線13の先端側から、導線13の長手方向に平行な向きでアーク放電させて素線が溶融化して一体化される。
【0049】
前述したように導線圧着部7では、導線13が圧着される。この際、導線圧着部7の先端部近傍では、素線一体化部13aの少なくとも一部が圧着される。より詳細には、少なくとも、導線圧着部7の先端部から導線圧着部7の最も先端側のセレーション19までの範囲において、素線一体化部13aが導線圧着部7で圧着される。すなわち、最も先端側のセレーション19に、素線一体化部13aの少なくとも一部がかかった状態で導線13が圧着される。
【0050】
通常、圧着時において、導線13がセレーション19に押し込まれる際に、表面の酸化被膜が破壊されることで、より確実に導線13と導線圧着部7との導通を確保することができる。このため、セレーション19と導線13との接触部の腐食を抑制することが、両者の導通を長期にわたって確保するために必要である。
【0051】
本実施形態では、導線圧着部7の先端から最先端側のセレーション19までの間が、素線一体化部13aで構成される。前述したように、素線同士が一体化されていないと、その隙間等を水分が急速に浸透し、早期に内部まで腐食が進行するが、本実施形態では、導線圧着部7の先端から最先端側のセレーション19までの間で素線同士が一体化されていて素線同士の隙間が存在しない。このため、導線圧着部7の先端部において、仮に導線13と導線圧着部7との接触部で腐食が発生しても、セレーション19まで腐食が進行するのに相当の時間を要する。このため、長期にわたって両者の導通を確保することができる。
【0052】
ここで、導線圧着部7の先端部から、素線一体化部13aの後端部(被覆圧着部9側の端部)までの範囲の長さ(図中A)は、1mm以上であることが望ましい。すなわち、導線圧着部7の先端から少なくとも1mm以上の長さの範囲において、素線一体化部13aが導線圧着部7で圧着されていることが望ましい。
【0053】
また、素線一体化部13aの先端部からの全長(図中L)に対して、素線一体化部13aが導線圧着部7で圧着されている長さ(図中A)は、少なくともL/2以上の長さの範囲であることが望ましい。このように、素線一体化部13aの圧着長さを所定以上長くすることで、導線圧着部7の先端から素線束部13bまでの長さを確保することができ、長期に渡って導線13と導線圧着部7との導通性を確保し、耐久性をより高めることができる。
【0054】
なお、図示したように、導線圧着部7の先端部に、素線一体化部13aの一部が突出していてもよく、又は、素線一体化部13aの全てが導線圧着部7の内部で圧着されていてもよい。また、素線一体化部13aは、最先端側のセレーション19の全体にかかっていなくてもよく、素線一体化部13aの端部の一部が、最先端側のセレーション19の一部にかかっていればよい。また、素線一体化部13aが、複数のセレーション19にかかっていてもよい。
【0055】
なお、全体を素線一体化部13aとしようとすると、表面張力によって全体が球状化してしまい、圧着が困難となる。また、素線束部13bは、素線一体化部13aと比較して変形が容易であるため、素線束部13bを圧着することで、圧着時に導線13が容易に変形して所望の形状で圧着することができる。
【0056】
次に、端子付き電線10の製造方法について説明する。図3は、圧着前の端子1と被覆導線11を示す斜視図である。前述したように、端子1は、被覆導線11と接続されるオープンバレル型の端子である。端子1は、端子本体3と圧着部5とを有し、圧着部5は、導線圧着部7と、被覆圧着部9と、導線圧着部7と被覆圧着部9との間のバレル間部8とからなる。導線圧着部7には、幅方向(周方向)の所定範囲に連続するようにセレーション19が、互いに離間して複数形成される。
【0057】
まず、被覆導線11の先端の所定長さの被覆部15を剥離して、内部の導線13を露出させる。次に、導線13の先端部に素線一体化部13aを形成する。素線一体化部13aは、例えば、レーザ溶接又はアーク溶接で形成される。なお、素線一体化部13aは、素線同士が溶接一体化していればよく、図示したように、完全に球形化していなくてもよい。この際、素線一体化部13aと被覆部15の端部との間が、素線束部13bとなる。
【0058】
次に、図4(a)、図4(b)に示すように、露出した導線13を導線圧着部7の位置に配置し、被覆部15を被覆圧着部9の位置に配置する。すなわち、バレル間部8には、被覆部15の端部が位置する。この際、素線一体化部13aの少なくとも一部が、最先端側のセレーション19にかかるように導線13を導線圧着部7に配置する。また、圧着前の素線一体化部13aの最大径部14(導線13の長手方向に垂直な方向の幅が最も広い部位)が、導線圧着部7の内部に位置するように導線13を導線圧着部7に配置する。
【0059】
このように、素線一体化部13aの一部がセレーション19にかかるようにこの状態で圧着することで、圧着後において、導線圧着部7の先端部から最先端側のセレーション19までの範囲において、確実に素線一体化部13aを配置することができる。
【0060】
また、圧着前の素線一体化部13aの最大径部14が、導線圧着部7の内部に位置するように導線13を導線圧着部7に配置して圧着することで、素線一体化部13aを確実に導線圧着部7で圧着することができる。この際、圧着後の素線一体化部13aと導線圧着部7の間に隙間が生じにくい。
【0061】
例えば、略球形の素線一体化部13aの最大径部14よりも後端部側(素線束部13bとの境界部近傍)のみを圧着しようとすると、圧着時に、素線一体化部13aが導線圧着部7の先端側に逃げるように移動するおそれがある。このため、素線一体化部13aを導線圧着部7の圧縮形状に圧縮変形させることが困難である。このため、圧着後の素線一体化部13aと導線圧着部7の間に隙間が生じやすい。本実施形態では、素線一体化部13aの最大径部14を圧着することで、圧着時に最大径部14が導線圧着部7の先端方向に逃げにくく、確実に素線一体化部13aを導線圧着部7の内部で変形させ、導線圧着部7の圧縮形状に変形させることができる。
【0062】
また、通常、略球形化した素線一体化部13aは、最大径部14が素線一体化部13aの略中央(導線13の長手方向における略中央)に位置する。このため、素線一体化部13aの最大径部14を導線圧着部7で圧着することで、圧着後の素線一体化部13aの長さをLとした際に、導線圧着部7の先端から少なくともL/2以上の長さの範囲において素線一体化部13aを圧着することができる。なお、より好ましくは、圧着前の素線一体化部13aの最大径部14を、最先端側のセレーション19にかかるように素線一体化部13aを導線圧着部7に配置した状態で圧着することが望ましい。
【0063】
この状態で、図5(a)に示すように、導線圧着部7及び被覆圧着部9を圧着する。以上により、端子付き電線10が形成される。また、複数の端子付き電線10を束ねて一体化することで、複数の電線が接合されたワイヤハーネスを得ることができる。
【0064】
なお、前述したように、このままでも、十分に長期にわたって信頼性を確保することはできるが、さらに、図5(b)に示すように、少なくとも、導線圧着部7から露出する素線一体化部13aを樹脂被覆部17で被覆してもよい。樹脂被覆部17は、例えば光硬化樹脂や湿気硬化樹脂等であり、樹脂を塗布後に硬化させることで得ることができる。このようにすることで、さらに耐食性を向上させることができる。
【0065】
なお、本実施形態では、素線一体化部13aを圧着しているため、内部まで腐食が進行するまで時間を要する。このため、従来の端子付き電線に樹脂を被覆して、樹脂のみで耐食性を確保する場合と比較して、ごく少量(薄い)の樹脂被覆部17でも十分に効果的である。また、さらに、バレル間部8に樹脂被覆部17を配置してもよいし、電線先端は樹脂被覆がなく素線一体化のみで、バレル間部8にのみ樹脂被覆しても良い。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によれば、導線13の先端部に、素線一体化部13aが形成され、当該部位が、導線圧着部7のセレーション19にかかるように圧着されているため、セレーション19への腐食の到達を遅延させることができる。この結果、導通性を長期間保つことができる。
【0067】
また、素線一体化部13aと被覆部15の端部との間において、素線同士が溶接一体化されていない素線束部13bが形成され、導線圧着部7で素線束部13bが圧着される。圧着時において、素線束部13bは変形が容易であるため、より確実に導線圧着部7の形状に追従して確実に導線13を圧着することができる。
【0068】
また、導線圧着部7の先端から所定以上の長さの範囲において、素線一体化部13aが導線圧着部7で圧着されているため、導線圧着部7の端部から素線束部13bまでの距離を十分確保することができ、導通性を長期間保つことができる。
【0069】
また、導線圧着部7から露出する素線一体化部13aを樹脂被覆部17で被覆することで、より確実に耐食性を高めることができる。
【0070】
(第2実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図6は、第2の実施形態にかかる端子付き電線の製造方法を示す図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同様の機能を奏する構成については、図1図5と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0071】
第2の実施形態では、第1の実施形態と異なり、被覆部15から露出する導線13において、素線一体化部13a、13cが形成される点で異なる。第2の実施形態では、被覆導線11は、素線一体化部13aと被覆部15の端部との間において、素線同士が溶接一体化された第2の素線一体化部13cを有する。すなわち、素線束部13bが、素線一体化部13aと素線一体化部13cとの間に位置する。なお、素線一体化部13cも素線一体化部13aと同様の方法で形成される。
【0072】
次に、図7に示すように、素線一体化部13aの少なくとも一部が、最先端側のセレーション19にかかるように導線13を導線圧着部7に配置する。また、前述したように、圧着前の素線一体化部13aの最大径部14が、導線圧着部7の内部に位置するように導線13を導線圧着部7に配置する。
【0073】
この際、素線一体化部13cの少なくとも一部が、導線圧着部7にかかるように配置される。なお、望ましくは、素線一体化部13cの少なくとも一部が、最後端側のセレーション19にかかるように導線13が導線圧着部7に配置される。また、圧着前の素線一体化部13cの最大径部14aが、導線圧着部7の内部に位置するように導線13が導線圧着部7に配置されることがより望ましい。
【0074】
すなわち、圧着前の素線一体化部13aと素線一体化部13cの間隔(素線束部13bの長さ)は、導線圧着部7の長さよりも短く、より望ましくは、最先端のセレーション19と最後端のセレーション19の間隔よりも短い。また、さらに望ましくは、圧着前の素線一体化部13aの最大径部14と素線一体化部13cの最大径部14aの間隔は、最先端のセレーション19の先端部から最後端のセレーション19の後端部までの長さよりも短い。
【0075】
この状態で、図8(a)に示すように、導線圧着部7及び被覆圧着部9を圧着する。このため、導線圧着部7の先端部では、素線一体化部13aが圧着され、導線圧着部7の後端部では、素線一体化部13cが圧着され、素線束部13bは、導線圧着部7の先後端には露出しない。なお、導線圧着部7の後端から少なくとも1mm以上の長さの範囲において、素線一体化部13cが導線圧着部7で圧着されていることが望ましい。すなわち、素線一体化部13cも素線一体化部13aと同様の長さの範囲で圧着されていることが望ましい。
【0076】
以上により、端子付き電線10aが形成される。また、この場合でも、図8(b)に示すように、少なくとも、導線圧着部7から露出する素線一体化部13a、13cを樹脂被覆部17で被覆してもよいし、導線圧着部7から露出する素線一体化部13a、13cのいずれか一方にのみ樹脂被覆部17で被覆しても良い。
【0077】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、素線一体化部13cを形成することで、導線圧着部7の先後端において、素線一体化部13a、13cを圧着することができ、素線束部13bが導線圧着部7の外部に露出することを抑制することができる。このため、より確実に耐食性を高めることができる。
【0078】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0079】
例えば、本発明は、特に太物(3sq以上)の被覆電線に効果が大きいが、これよりも細径の被覆電線にも、当然に適用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1………端子
3………端子本体
5………圧着部
7………導線圧着部
8………バレル間部
9………被覆圧着部
10、10a………端子付き電線
11………被覆導線
13………導線
13a、13c………素線一体化部
13b………素線束部
14、14a………最大径部
15………被覆部
17………樹脂被覆部
19………セレーション
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8