(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
H01S 5/0239 20210101AFI20240611BHJP
【FI】
H01S5/0239
(21)【出願番号】P 2020572217
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2020004780
(87)【国際公開番号】W WO2020166502
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2019023984
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山岡 一樹
(72)【発明者】
【氏名】有賀 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 悠介
【審査官】小濱 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-307872(JP,A)
【文献】特開2009-175176(JP,A)
【文献】特開2008-136178(JP,A)
【文献】実開平02-048914(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光を出力する光機能素子と、
前記第1光が入力され、前記第1光に所定の作用を及ぼして第2光として出力する第1光部品と、
前記第2光が入力され、前記第2光に所定の作用を及ぼして第3光として出力するとともに、前記第2光の入力面において前記第2光から発生した反射光を前記第1光部品に結合しない方向に反射させる第2光部品と、
前記光機能素子、前記第1光部品、および前記第2光部品を収容する筐体と、
前記筐体の内部に設けられ、入力された前記反射光の前記筐体内におけるパワーを減衰させる光減衰部と、
を備
え、
前記第1光部品はレンズであり、
前記第2光部品は光アイソレータであり、
前記光減衰部は、前記筐体の一部に設けられており、前記反射光は散乱、吸収、または透過によって減衰され、
前記第2光のビーム径をLW1とし、前記反射光が前記光減衰部に照射された時、当該反射光の光軸方向における前記ビーム径の長さをLW2とし、前記第2光の光軸と前記反射光の光軸とがなす角度をθとし、前記第2光の光軸と前記第3光の光軸との間の距離をD2とし、前記第2光が前記第2光部品に入力される位置と前記筐体の一部の内部側の面との距離をD3とし、前記筐体の前記一部の内部側の面に前記反射光が入力される位置と、前記第2光が前記第2光部品に入力される位置との、前記筐体の前記一部の内部側の面に平行な方向における距離をD4とし、前記第2光部品の長さをXとし、前記第2光部品の屈折率をnとする場合、次の式(1)、(2)、および(3)
【数1】
を満たすことを特徴とする、光モジュール。
【請求項2】
第1光を出力する光機能素子と、
前記第1光が入力され、前記第1光に所定の作用を及ぼして第2光として出力する第1光部品と、
前記第2光が入力され、前記第2光に所定の作用を及ぼして第3光として出力するとともに、前記第2光の入力面において前記第2光から発生した反射光を前記第1光部品に結合しない方向に反射させる第2光部品と、
一方の表面に前記第1光部品および前記第2光部品を搭載する熱電冷却素子と、
前記光機能素子、前記第1光部品
、前記第2光部品
、および前記熱電冷却素子を収容する筐体と、
前記
熱電冷却素子の前記一方の表面に設けられ、入力された前記反射光の前記筐体内におけるパワーを減衰させる光減衰部と、
を備え
、
前記第1光部品はレンズであり、
前記第2光部品は光アイソレータであることを特徴とする、光モジュール。
【請求項3】
前記筐体は高さが6.5mm以下であることを特徴とする請求項1
または2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記光減衰部は、前記反射光を散乱する樹脂を含むことを特徴とする請求項
1または2に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記樹脂は、粒子径が0.1μm以上500μm以下のフィラー粒子を含むことを特徴とする請求項
4に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記光減衰部は、前記筐体の一部に表面処理を行うことによって形成されているものであることを特徴とする請求項
1に記載の光モジュール。
【請求項7】
前記光減衰部は、前記熱電冷却素子の前記一方の表面の一部に表面処理を行うことによって形成されているものであることを特徴とする請求項2に記載の光モジュール。
【請求項8】
前記光減衰部は、前記筐体の一部に設けられた透光性の窓であることを特徴とする請求項
1に記載の光モジュール。
【請求項9】
前記第1光の光軸と前記反射光の光軸とが成す角度が20度以上であることを特徴とする請求項1~
8のいずれか一つに記載の光モジュール。
【請求項10】
前記第1光部品が前記第2光を出力する位置と前記第2光部品の前記入力面に前記第2光が入力される位置との距離が0.3mm以上であることを特徴とする請求項1~
9のいずれか一つに記載の光モジュール。
【請求項11】
前記第2光の光軸と前記第3光の光軸との距離が300μm以下であることを特徴とする請求項1~
10のいずれか一つに記載の光モジュール。
【請求項12】
前記第1光の波長が900nm以上1650nm以下であることを特徴とする請求項1~
11のいずれか一つに記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光モジュールとして、半導体レーザ素子などの光を出力する光機能素子や、光部品である光アイソレータやレンズなどが、筐体に収容された構成のものが開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
半導体レーザ素子に外部から光が入力されると、半導体レーザ素子の動作が不安定になったり、レーザ光の線幅が広くなり半導体レーザ素子の特性が劣化したりするなどの問題がある。この問題を解決するため、半導体レーザ素子が出力するレーザ光の光路上に光アイソレータを配置し、外部から半導体レーザ素子に光が入力されることを防止する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成では、半導体レーザ素子から出力されたレーザ光の一部が光アイソレータの光入力面で反射されて半導体レーザ素子に入力し、半導体レーザ素子の特性劣化や不安定動作などの問題を引き起こす場合がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、特性劣化や不安定動作が抑制された光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る光モジュールは、第1光を出力する光機能素子と、前記第1光が入力され、前記第1光に所定の作用を及ぼして第2光として出力する第1光部品と、前記第2光が入力され、前記第2光に所定の作用を及ぼして第3光として出力するとともに、前記第2光の入力面において前記第2光から発生した反射光を前記第1光部品に結合しない方向に反射させる第2光部品と、前記光機能素子、前記第1光部品、および前記第2光部品を収容する筐体と、前記筐体の内部に設けられ、入力された前記反射光の前記筐体内におけるパワーを減衰させる光減衰部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記第1光部品はレンズであることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記第2光部品は光アイソレータであることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記筐体は高さが6.5mm以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記光減衰部は、前記筐体の一部に設けられており、前記反射光は散乱または吸収または透過によって減衰されることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記光減衰部は、前記反射光を散乱する樹脂を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記樹脂は、粒子径が0.1μm以上500μm以下のフィラー粒子を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記光減衰部は、前記筐体の一部に表面処理を行うことによって形成されているものであることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記光減衰部は、前記筐体の一部に設けられた透光性の窓であることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記第1光の光軸と前記反射光の光軸とが成す角度が20度以上であることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記第1光部品が前記第2光を出力する位置と前記第2光部品の前記入力面に前記第2光が入力される位置との距離が0.3mm以上であることを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記第2光の光軸と前記第3光の光軸との距離が300μm以下であることを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様に係る光モジュールは、前記第1光の波長が900nm以上1650nm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光モジュールの特性劣化や不安定動作を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る光モジュールの模式的な一部切欠側面図である。
【
図3】
図3は、実施形態2に係る光モジュールの模式的な一部切欠側面図である。
【
図4】
図4は、実施形態3に係る光モジュールの模式的な一部切欠側面図である。
【
図5】
図5は、実施形態4に係る光モジュールの模式的な上面図である。
【
図6】
図6は、実施形態5に係る光モジュールの模式的な上面図である。
【
図7】
図7は、実施形態6に係る光モジュールの模式的な一部切欠側面図である。
【
図8】
図8は、実施形態7に係る光モジュールの模式的な上面図である。
【
図9】
図9は、実施形態8に係る光モジュールの模式的な上面図である。
【
図10】
図10は、実施形態9に係る光モジュールの模式的な一部切欠側面図である。
【
図11】
図11は、実施形態10に係る光モジュールの模式的な一部切欠側面図である。
【
図12】
図12は、光モジュールの製造工程の一例の説明図である。
【
図13】
図13は、光モジュールの製造工程の別の一例の説明図である。
【
図14】
図14は、光モジュールの製造工程のさらに別の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る光モジュールの模式的な一部切欠側面図である。この光モジュール100は、筐体1を備えている。筐体1は、底板部1aと、側壁部1bと、上蓋部1cと、光出力部1dとを備えている。底板部1aは板状の部材である。側壁部1bは、4面を有する枠板状の部材であり、各面は底板部1aと略直交している。上蓋部1cは、底板部1aと対向して配置された板状の部材である。光出力部1dは円管状の部材であり、側壁部1bの1面に設けられている。側壁部1bには透光性の窓が設けられており、筐体1内部から窓および光出力部1dを通って光が通過可能となっている。
【0023】
底板部1aは、銅タングステン(CuW)、銅モリブデン(CuMo)、酸化アルミニウム(Al2O3)などの熱伝導率が高い材料からなる。側壁部1b、上蓋部1c、光出力部1dは、Fe-Ni-Co合金、酸化アルミニウム(Al2O3)などの熱膨張係数が低い材料からなる。なお、筐体1の高さを、底板部1aの筐体1外側の表面から上蓋部1cの筐体1外側の表面までの高さとすると、近年の光モジュールの小型化の要求から、高さは6.5mm以下が好ましい。
【0024】
光モジュール100の内部には、以下のコンポーネントが収容されている:熱電冷却素子(TEC)2、キャリア3、半導体レーザ素子(LD)4、レンズ5、光アイソレータ(ISO)6、レンズ7、導波路素子8である。
【0025】
光モジュール100では、筐体1の内部にこれらのコンポーネントが実装され、上蓋部1cを取り付けて気密封止されて構成されている。
【0026】
光モジュール100は、半導体レーザモジュールとして構成されている。以下、各コンポーネントの構成および機能について説明する。
【0027】
熱電冷却素子2は、底板部1aに固定されている。熱電冷却素子2は、外部から不図示のリードを介して電力を供給されて、電流を流す方向に応じて吸熱または発熱を行う。
【0028】
キャリア3、半導体レーザ素子4、レンズ5、光アイソレータ6、レンズ7、導波路素子8は、熱電冷却素子2に搭載されている。これらのコンポーネントは、熱電冷却素子2に電流を流すことによって所望の温度に制御される。
【0029】
光機能素子である半導体レーザ素子4は、キャリア3に搭載されており、たとえば波長可変レーザ素子である。キャリア3は、サブマウントとも呼ばれ、熱伝導性が高い絶縁性の材料からなり、半導体レーザ素子4が発する熱を熱電冷却素子2に効率良く輸送する。
【0030】
光機能素子である半導体レーザ素子4は、外部から不図示のリードを介して電力を供給されて、第1光としてのレーザ光L1をレンズ5側に出力する。レーザ光L1の波長は、たとえば光通信の波長として好適な900nm以上1650nm以下である。
【0031】
第1光部品であるレンズ5は、キャリア3に搭載されている。レンズ5は、レーザ光L1が入力され、レーザ光L1に屈折率による作用を及ぼしてコリメートし、第2光であるレーザ光L2として出力する。
【0032】
第2光部品である光アイソレータ6は、磁石6aと、磁気光学素子および偏光板からなる光学素子部6bとを備えている。光アイソレータ6は、光学素子部6bの入力面6baにレーザ光L2が入力されて、レーザ光L2に偏光および磁気光学作用を及ぼし、第3光であるレーザ光L3として出力する。光アイソレータ6は、光出力部1d側から進行してきた光の通過を阻止する。これにより、光アイソレータ6は、外部から反射光などが半導体レーザ素子4に入力することを阻止する。
【0033】
光学素子部6bの光軸および入力面6baは、レーザ光L2の光軸に対して傾斜している。これにより、入力面6baにおいてレーザ光L2から発生した反射光RLは、上蓋部1c側に進行する。その結果、光アイソレータ6は、反射光RLを、レンズ5に結合しない方向に反射させる。これにより、反射光RLが半導体レーザ素子4の特性劣化や不安定動作などを引き起こすことが抑制される。なお、入力面6baには反射率を低減するためにARコートが施されており、反射率は5%以下であり、好ましくは2%以下である。
【0034】
反射光RLがレンズ5に結合しないようにするためには、レーザ光L2の光軸と反射光RLの光軸とが成す角度θは、20度以上であることが好ましい。また、レンズ5がレーザ光L2を出力する位置と、入力面6baにレーザ光L2が入力される位置との距離D1は、0.3mm以上であることが好ましく、0.6mm以上であることがより好ましい。角度θが20度、距離D1が0.3mmであれば、光学素子部6bの入力面6baの、傾斜方向での長さが1.0mmの場合に、光アイソレータ6の有効径を0.5mm以上とできる。これにより、レーザ光L2のビーム径LW1が0.5mmの場合には、光アイソレータ6によってレーザ光L2がけられることが防止される。ビーム径LW1は、レーザ光L2のビームプロファイルの1/e2全幅とすることができる。このように、角度θ、距離D1は、入力面6baの傾斜方向での長さに応じて、反射光RLがレンズ5に結合せず、かつ光アイソレータ6によってレーザ光L2がけられないように設定することが好ましい。
【0035】
なお、光学素子部6bの光軸がレーザ光L2の光軸に対して傾斜しているので、レーザ光L2の光軸とレーザ光L3の光軸とが所定の距離D2だけずれることとなる。この距離D2は300μm以下であることが好ましい。
【0036】
なお、半導体レーザ素子4は、レンズ5と対向してレーザ光L1を出力する端面(出力端面)とは反対側の端面(後端面)からも、比較的パワーが弱い後端側レーザ光を出力する。レンズ7は、後端側レーザ光を集光し、導波路素子8に出力する。
【0037】
導波路素子8は、たとえば平面光波回路(PLC)素子であり、波長に対して透過特性が周期的に変化するリングフィルタを備えている。導波路素子8は、後端側レーザ光を2分割し、一方を導波して不図示の第1光検出素子(PD)に出力し、他方を、リングフィルタを透過させて不図示の第2PDに出力する。第1PDおよび第2PDのそれぞれから出力された電流信号は、外部の制御器に出力され、公知技術と同様にレーザ光L1の波長制御に使用される。
【0038】
上蓋部1cの筐体1内部側には、光減衰部9が設けられている。光減衰部9は、反射光RLが入力される位置に設けられており、筐体1内における反射光RLのパワーを減衰させる。これにより、反射光RLがさらに反射して半導体レーザ素子4や第1PDや第2PDに入力され、半導体レーザ素子4の特性劣化や不安定動作などを引き起こしたり、レーザ光L1の波長制御精度の低下を引き起こしたりすることが抑制される。
【0039】
図2を参照して具体的に説明する。入力面6baにレーザ光L2が入力される位置と上蓋部1cの筐体1内部側の面との距離D3は、光アイソレータ6の磁石6aによる磁性が筐体1外のシステムに影響を与えることを防ぐため、あるいは、上蓋部1cと光アイソレータ6の磁石6aが引き合い光アイソレータ6が剥離することを防ぐため等の理由から、1.0mm以上であることが好ましい。また、上蓋部1cの筐体1内部側の面に反射光RLが入力される位置と入力面6baにレーザ光L2が入力される位置との、上蓋部1cの筐体1内部側の面に平行な方向における距離D4は、例えば2.5mm以下であることが好ましい。また、上蓋部1cの筐体1内部側の面に設けられている光減衰部9の光軸方向における長さD5については、反射光RLが上蓋部1cの筐体1内部側の面に照射された時のビーム径の長さ(光軸方向における長さ)LW2以上であることが好ましい。ここで、光軸方向とは、反射されるレーザ光であるレーザ光L2の光軸方向である。この時、長さD5は、上蓋部1cの筐体1内部側の面に反射光RLが入力される位置から、半導体レーザ素子4側の方向および光アイソレータ6側の方向にそれぞれLW2/2以上であることが好ましい。また、角度θが20度、距離D3が1.0mm、長さD5が1.5mmであれば、反射光RLのビーム径(レーザ光L2のビーム径と同じ)LW1が0.5mmの場合に、半導体レーザ素子4の特性劣化や不安定動作などを引き起こしたり、レーザ光L1の波長制御精度の低下を引き起こしたりすることが抑制される。なお、距離D3、距離D4と角度θは、式(1)の関係がある。また、反射光RLのビーム径LW1を用いると、長さLW2は角度θより式(2)で求められる。さらに、光学素子部6bの長X、光学素子部6bの屈折率n、角度θと距離D2は、式(3)の関係がある。
【0040】
【0041】
式(1)、式(2)により、光学素子部6bの長さXが1300μm、光学素子部6bの屈折率nが2.38であるとき、以下の値になる。たとえば、角度θが30度、距離D2が200μmのとき、距離D4は1750μmである。また、角度θが38度、距離D2が250μmのとき、距離D4は1300μmである。また、角度θが45度、距離D2が300μmのとき、距離D4は1000μmである。これらのいずれの場合も、反射光RLに対して効果的な位置に光減衰部9を設けることが可能である。
【0042】
光減衰部9は、上蓋部1cの表面に形成されている。光減衰部9は、樹脂からなり、または樹脂を含んで構成されており、反射光RLを散乱させる。樹脂はたとえばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、熱硬化性ポリイミドなどであり、粒子径が0.1μm以上500μm以下のフィラー粒子を含んでおり、これにより反射光RLを好適に散乱させることができる。フィラー粒子はたとえばカーボンブラックなどの光吸収材からなる。また、フィラー粒子は、酸化チタン(TiO2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、窒化アルミ(AlN)、酸化アルミニウム(Al2O3)などの光散乱材からなっていてもよい。また、光減衰部9は、上蓋部1cの表面に表面処理を行うことによって形成されたものでもよい。たとえば、光減衰部9は、上蓋部1cの表面に粗面処理をして反射光RLを散乱させるように構成したものでもよい。また、光減衰部9は、上蓋部1cの表面に、無電界ニッケルメッキ処理やレイデント(登録商標)処理などの表面処理をして、反射光RLを吸収するように構成したものでもよい。
【0043】
以上説明した様に、実施形態1に係る光モジュール100は、特性劣化や不安定動作が抑制されたものとなる。なお、光機能素子は、半導体レーザ素子に限定されず、たとえば半導体光増幅器や発光ダイオードを用いてもよい。以降の実施形態においても同様である。
【0044】
(実施形態2)
図3は、実施形態2に係る光モジュールの模式的な一部切欠側面図である。この光モジュール100Aは、実施形態1に係る光モジュール100の構成において、光アイソレータ6を光アイソレータ6Aに置き換え、光減衰部9を光減衰部9Aに置き換えた構成を有する。光モジュール100Aにおけるその他の要素については、光モジュール100における対応する要素と同様であるので、説明を省略する。
【0045】
光アイソレータ6Aは、光アイソレータ6の構成において、光学素子部6bの光軸および入力面6baのレーザ光L2の光軸に対する傾斜方向を変更したものである。これにより、反射光RLはレンズ5に結合せずに熱電冷却素子2側に進行する。
【0046】
光減衰部9Aは、熱電冷却素子2の、キャリア3を搭載している側の表面に設けられている。光減衰部9Aは、反射光RLが入力される位置に設けられており、筐体1内における反射光RLのパワーを減衰させる。光減衰部9Aは、光減衰部9と同様に、樹脂や、熱電冷却素子2の表面に表面処理を行うことによって形成されたものであってよい。
【0047】
実施形態2に係る光モジュール100Aは、光モジュール100と同様の作用によって、特性劣化や不安定動作が抑制されたものとなる。
【0048】
(実施形態3)
図4は、実施形態3に係る光モジュールの模式的な一部切欠側面図である。この光モジュール100Bは、実施形態1に係る光モジュール100の構成において、筐体1を筐体1Bに置き換え、光減衰部9を光減衰部9Bに置き換えた構成を有する。光モジュール100Bにおけるその他の要素については、光モジュール100における対応する要素と同様であるので、説明を省略する。
【0049】
筐体1Bは、筐体1の構成において、上蓋部1cを上蓋部1Bcに置き換えた構成を有する。上蓋部1Bcの一部には透光性の窓である光減衰部9Bが嵌設されている。光減衰部9Bはレーザ光L1を透過する材料、たとえばガラスからなる。光減衰部9AにはARコートが施されていることが好ましい。光減衰部9Aは、反射光RLが入力される位置に設けられており、反射光RLを透過させることによって筐体1B内における反射光RLのパワーを減衰させる。これにより、光モジュール100Bは、光モジュール100と同様の作用によって、特性劣化や不安定動作が抑制されたものとなる。
【0050】
(実施形態4)
図5は、実施形態4に係る光モジュールの模式的な上面図である。この光モジュール100Cは、実施形態1に係る光モジュール100の構成において、光アイソレータ6を光アイソレータ6Cに置き換え、光減衰部9を光減衰部9Cに置き換えた構成を有する。光モジュール100Cにおけるその他の要素については、光モジュール100における対応する要素と同様であるので、説明を省略する。なお、キャリア3は図示を省略している。また、説明のため、
図5では上蓋部1cを取り外した状態を図示している。なお、以下の
図6~
図9でも、キャリア3は図示を省略し、上蓋部1cを取り外した状態を図示している。
【0051】
光アイソレータ6Cは、光アイソレータ6の構成において、光学素子部6bの光軸および入力面6baのレーザ光L2の光軸に対する傾斜方向を変更したものである。これにより、反射光RLはレンズ5に結合せずに図面上側の側壁部1b側に進行する。
【0052】
光減衰部9Cは、図面上側の側壁部1bの表面に設けられている。光減衰部9Cは、反射光RLが入力される位置に設けられており、筐体1内における反射光RLのパワーを減衰させる。光減衰部9Cは、光減衰部9と同様に、樹脂や、側壁部1bの表面に表面処理を行うことによって形成されたものであってよい。これにより、光モジュール100Cは、光モジュール100と同様の作用によって、特性劣化や不安定動作が抑制されたものとなる。
【0053】
(実施形態5)
図6は、実施形態5に係る光モジュールの模式的な上面図である。この光モジュール100Dは、実施形態4に係る光モジュール100Cの構成において、光アイソレータ6Cを光アイソレータ6Dに置き換え、光減衰部9Cを光減衰部9Dに置き換えた構成を有する。光モジュール100Dにおけるその他の要素については、光モジュール100における対応する要素と同様であるので、説明を省略する。
【0054】
光アイソレータ6Dは、光アイソレータ6の構成において、光学素子部6bの光軸および入力面6baのレーザ光L2の光軸に対する傾斜方向を変更したものである。これにより、反射光RLはレンズ5に結合せずに図面下側の側壁部1b側に進行する。
【0055】
光減衰部9Dは、図面下側の側壁部1bの表面に設けられている。光減衰部9Dは、反射光RLが入力される位置に設けられており、筐体1内における反射光RLのパワーを減衰させる。光減衰部9Dは、光減衰部9と同様に、樹脂や、側壁部1bの表面に表面処理を行うことによって形成されたものであってよい。これにより、光モジュール100Dは、光モジュール100と同様の作用によって、特性劣化や不安定動作が抑制されたものとなる。
【0056】
(実施形態6)
図7は、実施形態6に係る光モジュールの模式的な上面図である。この光モジュール100Eは、実施形態4に係る光モジュール100Cの構成において、筐体1を筐体1Eに置き換え、光減衰部9Cを光減衰部9Eに置き換えた構成を有する。光モジュール100Eにおけるその他の要素については、光モジュール100Cにおける対応する要素と同様であるので、説明を省略する。
【0057】
筐体1Eは、筐体1Cの構成において、側壁部1bを側壁部1Ebに置き換えた構成を有する。側壁部1Ebの一部には透光性の窓である光減衰部9Eが嵌設されている。光減衰部9Eはレーザ光L1を透過する材料、たとえばガラスからなる。光減衰部9EにはARコートが施されていることが好ましい。光減衰部9Eは、反射光RLが入力される位置に設けられており、反射光RLを透過させることによって筐体1E内における反射光RLのパワーを減衰させる。これにより、光モジュール100Eは、光モジュール100Cと同様の作用によって、特性劣化や不安定動作が抑制されたものとなる。
【0058】
(実施形態7)
図8は、実施形態7に係る光モジュールの模式的な上面図である。この光モジュール100Fは、実施形態4に係る光モジュール100Cの構成において、光アイソレータ6Cをビームスプリッタ10に置き換え、PD11を追加した構成を有する。光モジュール100Fにおけるその他の要素については、光モジュール100における対応する要素と同様であるので、説明を省略する。
【0059】
第2光部品であるビームスプリッタ10は、入力面10aにレーザ光L2が入力されて、レーザ光L2に部分的反射作用を及ぼし、第3光であるレーザ光L3と、レーザ光L4とに分岐して出力する。レーザ光L4はレーザ光L2の一部であり、たとえばレーザ光L2の数%のパワーである。なお、入力面10aには反射率を低減するためにARコートが施されており、反射率は5%以下であり、好ましくは2%以下である。
【0060】
PD11は、筐体1内で熱電冷却素子2に搭載されている。PD11は、レーザ光L4を受光し、電流信号を出力する。電流信号は、外部の制御器に出力され、公知技術と同様にレーザ光L3のパワーモニタに使用される。
【0061】
ビームスプリッタ10の光軸および入力面10aは、レーザ光L2の光軸に対して傾斜している。これにより、入力面10aにおいてレーザ光L2から発生した反射光RLは、レンズ5に結合せずに図面上側の側壁部1b側に進行する。光減衰部9Cは、反射光RLが入力される位置に設けられており、筐体1内における反射光RLのパワーを減衰させる。これにより、光モジュール100Fは、光モジュール100Cと同様の作用によって、特性劣化や不安定動作が抑制されたものとなる。
【0062】
(実施形態8)
図9は、実施形態8に係る光モジュールの模式的な上面図である。この光モジュール100Gは、実施形態7に係る光モジュール100Fの構成において、ビームスプリッタ10の光軸および入力面10aのレーザ光L2の光軸に対する傾斜方向を変更し、かつ光減衰部9Cを光減衰部9Dに置き換えた構成を有する。光モジュール100Gにおけるその他の要素については、光モジュール100Fにおける対応する要素と同様であるので、説明を省略する。
【0063】
光減衰部9Dは、図面下側の側壁部1bの表面に設けられている。光減衰部9Dは、反射光RLが入力される位置に設けられており、筐体1内における反射光RLのパワーを減衰させる。これにより、光モジュール100Gは、光モジュール100Fと同様の作用によって、特性劣化や不安定動作が抑制されたものとなる。
【0064】
(実施形態9)
図10は、実施形態9に係る光モジュールの模式的な一部切欠側面図である。この光モジュール100Hは、実施形態1に係る光モジュール100の構成において、光アイソレータ6をビームスプリッタ10に置き換え、不図示のPDを追加した構成を有する。光モジュール100Hにおけるその他の要素については、光モジュール100における対応する要素と同様であるので、説明を省略する。
【0065】
ビームスプリッタ10は、レーザ光L2の一部を不図示のPDに向けて出力する。ビームスプリッタ10は、その光軸および入力面10aが、レーザ光L2の光軸に対して傾斜している。これにより、入力面10aにおいてレーザ光L2から発生した反射光RLは、レンズ5に結合せず、上蓋部1c側に進行する。光減衰部9は、上蓋部1cにおける筐体1の内部側の表面に設けられている。光減衰部9は、反射光RLが入力される位置に設けられており、筐体1内における反射光RLのパワーを減衰させる。これにより、光モジュール100Hは、光モジュール100と同様の作用によって、特性劣化や不安定動作が抑制されたものとなる。
【0066】
(実施形態10)
図11は、実施形態10に係る光モジュールの模式的な一部切欠側面図である。この光モジュール100Iは、実施形態2に係る光モジュール100Aの構成において、光アイソレータ6Aをビームスプリッタ10に置き換え、不図示のPDを追加した構成を有する。光モジュール100Iにおけるその他の要素については、光モジュール100Aにおける対応する要素と同様であるので、説明を省略する。
【0067】
ビームスプリッタ10は、その光軸および入力面10aが、レーザ光L2の光軸に対して、
図10に示す場合とは反対側に傾斜している。これにより、入力面10aにおいてレーザ光L2から発生した反射光RLは、レンズ5に結合せずに熱電冷却素子2側に進行する。光減衰部9Aは、上蓋部1cにおける筐体1の内部側の表面に設けられている。光減衰部9Aは、反射光RLが入力される位置に設けられており、筐体1内における反射光RLのパワーを減衰させる。これにより、光モジュール100Iは、光モジュール100Aと同様の作用によって、特性劣化や不安定動作が抑制されたものとなる。
【0068】
光減衰部9A~9Eについても、長さD5(
図2における光減衰部9の長さD5に相当)が長さLW2以上であれば、反射光RLが、半導体レーザ素子4の特性劣化や不安定動作などを引き起こしたり、レーザ光L1の波長制御精度の低下を引き起こしたりすることを抑制することができる。光減衰部9A~9Eは、たとえば、樹脂、無電界ニッケルメッキ処理やレイデント処理などの表面処理により反射光RLを吸収するように構成したもの、および反射光RLを透過する材料たとえばガラスからなるもののいずれかであるが、いずれの場合でも、長さD5が長さLW2以上であることが好ましく、加工が容易である。
【0069】
(組み立て方法)
図12、13、14は、上記実施形態に係る光モジュールの製造工程の一例の説明図である。
図12~14に示す製造工程は、いずれも半導体レーザ素子4の位置合わせを行うための工程である。
【0070】
図12に示す例では、筐体1内に半導体レーザ素子4を配置する際に、光軸変換素子OC1を利用する。光軸変換素子OC1は、入力されたレーザ光L2の光軸の位置を、筐体1の幅方向で変換して出力する素子である。このような素子を用いることで、レーザ光L2の光軸位置(高さ方向、幅方向)の精度を検証でき、ビーム品質も確認可能である。具体的には、レーザ光L2を光出力部1dから筐体1の外部に出力させて機器等で観測することによって、レーザ光L2の光軸位置精度やビーム品質を検査できる。これにより、小型かつ高品質な光モジュールの組み立てを実現できる。
【0071】
図13に示す例では、筐体1内に半導体レーザ素子4を配置する際に、光軸変換素子OC2を利用する。光軸変換素子OC2は、入力されたレーザ光L2の光軸の位置を、筐体1の高さ方向で変換して出力する素子である。レーザ光L2を光出力部1dから筐体1の外部に出力させて機器等で観測することによって、レーザ光L2の光軸位置精度やビーム品質を検査できる。これにより、小型かつ高品質な光モジュールの組み立てを実現できる。
【0072】
図14に示す例では、筐体1内に半導体レーザ素子4を配置する際に、光軸変換素子OC3を利用する。光軸変換素子OC3は、入力されたレーザ光L2の光軸の位置を、筐体1の高さ方向で変換して出力する素子であるが、変換されたレーザ光L2の光軸は筐体1の外部の上方に位置する。このようにしてレーザ光L2を筐体1の外部に出力させて機器等で観測することによって、レーザ光L2の光軸位置精度やビーム品質を検査できる。これにより、小型かつ高品質な光モジュールの組み立てを実現できる。
【0073】
なお、光軸変換素子として、入力されたレーザの光軸の位置を変換し、入力された方向とは反対の方向に出力する素子も公知である。このような光軸変換素子を利用すれば、半導体レーザ素子4が光出力部1dとは反対側の側壁部1bに向けてレーザ光L1を出力するように配置される場合にも、そのレーザ光L1を光軸変換素子によって光出力部1dから筐体1の外部に出力させ、検査することができる。
【0074】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、光モジュールに利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1、1B、1C、1E 筐体
1a 底板部
1b、1Eb 側壁部
1c、1Bc 上蓋部
1d 光出力部
2 熱電冷却素子
3 キャリア
4 半導体レーザ素子
5、7 レンズ
6、6A、6C、6D 光アイソレータ
6a 磁石
6b 光学素子部
6ba、10a 入力面
8 導波路素子
9、9A、9B、9C、9D、9E 光減衰部
10 ビームスプリッタ
100、100A、100B、100C、100D、100E、100F、100G、100H、100I 光モジュール
D1、D2 距離
L1、L2、L3、L4 レーザ光
OC1、OC2、OC3 光軸変換素子
RL 反射光
θ 角度