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特許7502201波長可変光源装置および波長可変レーザ素子の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】波長可変光源装置および波長可変レーザ素子の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/0687 20060101AFI20240611BHJP
   H01S 5/062 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H01S5/0687
H01S5/062
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2020572280
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2020005374
(87)【国際公開番号】W WO2020166615
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2019024949
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 賢宜
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶
【審査官】大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-178283(JP,A)
【文献】特表2014-522105(JP,A)
【文献】特開2019-021791(JP,A)
【文献】国際公開第2018/146749(WO,A1)
【文献】特表2018-502485(JP,A)
【文献】特表2017-535955(JP,A)
【文献】特開2013-179266(JP,A)
【文献】特開2013-089754(JP,A)
【文献】特開2010-040927(JP,A)
【文献】特開2004-047638(JP,A)
【文献】特開2003-283044(JP,A)
【文献】特開2003-283043(JP,A)
【文献】特表2002-503036(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0094017(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0341244(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0223461(US,A1)
【文献】英国特許出願公開第02484731(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0072631(US,A1)
【文献】米国特許第06665321(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0147442(US,A1)
【文献】Dennis Derickson, et al.,“SGDBR single-chip wavelength tunable lasers for swept source OCT”,Proceedings of SPIE,2008年02月28日,Vol.6847,p.68472P-1~68472P-11
【文献】今城正雄、外6名,“SSG DBR-LDの波長制御アルゴリズム”,2002年電子情報通信学会総合大会,2002年03月07日,p.350
【文献】Hiroyuki Ishii, et al.,“Mode Stabilization Method for Superstructure-Grating DBR Lasers”,Journal of Lightwave Technology,1998年03月,Vol.16,No.3,p.433-442
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射スペクトルが波長に対して互いに異なる周期で周期的にピークを有する2つの反射ミラーによって構成されるレーザ共振器と、前記レーザ共振器内に配置された利得部と、電力が供給されることでレーザ発振波長を制御する複数の制御素子と、を備える波長可変レーザ素子と、
演算部と記録部とを備え、前記複数の制御素子に供給する前記電力を制御する制御部と、
を備え、
前記複数の制御素子は、供給される前記電力に基づいて、少なくとも前記2つの反射ミラーの反射スペクトルがピークとなる波長位置を各々設定し、
前記制御部は、現在のレーザ発振波長からターゲット波長までの間の離散的な中間波長で前記波長可変レーザ素子がレーザ発振するために設定される波長対応制御設定値を順次制御目標として前記複数の制御素子を制御し、
隣接する二つの前記中間波長の差が、前記2つの反射ミラーのうちの1つの反射ピーク同士が同じ波長で重なった時の合成反射ピークのスペクトルの半値半幅以下となるように構成されている
ことを特徴とする波長可変光源装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数の制御素子に供給する電力の増減量を時間に対してステップ状に変化させる
ことを特徴とする請求項1に記載の波長可変光源装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記増減量が互いに異なるように前記複数の制御素子に電力を供給する
ことを特徴とする請求項2に記載の波長可変光源装置。
【請求項4】
前記波長対応制御設定値は、前記中間波長に対応して設定された、前記複数の制御素子のそれぞれに供給する駆動電力値である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の波長可変光源装置。
【請求項5】
前記波長可変レーザ素子のレーザ発振波長をモニタするための波長モニタ部を備え、
前記制御部は、制御目標の前記波長対応制御設定値となるように前記複数の制御素子を制御した後、前記波長モニタ部のモニタ結果に基づいて前記レーザ発振波長を検出し、前記レーザ発振波長が前記ターゲット波長に対して所定の範囲内であると判定した場合、前記複数の制御素子の少なくとも1つに供給する駆動電力値を、前記ターゲット波長に対応する駆動電力値に設定する
ことを特徴とする請求項4に記載の波長可変光源装置。
【請求項6】
前記波長可変レーザ素子のレーザ発振波長をモニタするための波長モニタ部を備え、
前記制御部は、制御目標の前記波長対応制御設定値となるように前記複数の制御素子を制御した後、前記波長モニタ部のモニタ結果に基づいて前記レーザ発振波長を検出し、前記レーザ発振波長が前記ターゲット波長に対して所定の範囲内であると判定した場合、検出した前記レーザ発振波長と前記ターゲット波長との差分に基づいて、前記複数の制御素子の少なくとも1つに供給する駆動電力値を設定する
ことを特徴とする請求項4に記載の波長可変光源装置。
【請求項7】
前記波長モニタ部は、透過スペクトルが互いに異なり、かつ波長に対して周期的に変化する2つの光フィルタと、前記波長可変レーザ素子から出力された後に前記2つの光フィルタを透過したレーザ光のそれぞれを受光して第1電流信号を出力する2つの第1光検出部と、前記波長可変レーザ素子から出力された後に波長に依存する損失を略受けないレーザ光を受光して第2電流信号を出力する第2光検出部を備えており、
前記制御部は、前記2つの第1電流信号のそれぞれの前記第2電流信号に対する比のうち、前記ターゲット波長において前記レーザ発振波長の変化に対して変化が大きい方の比に基づいて、前記レーザ光の波長を検出する
ことを特徴とする請求項5または6に記載の波長可変光源装置。
【請求項8】
前記波長可変レーザ素子のレーザ発振波長をモニタするための波長モニタ部を備え、
前記波長モニタ部は、透過スペクトルが互いに異なり、かつ波長に対して周期的に変化する2つの光フィルタと、前記波長可変レーザ素子から出力された後に前記2つの光フィルタを透過したレーザ光のそれぞれを受光して第1電流信号を出力する2つの第1光検出部と、前記波長可変レーザ素子から出力された後に波長に依存する損失を略受けないレーザ光を受光して第2電流信号を出力する第2光検出部を備えており、
前記制御部は、前記2つの第1電流信号のいずれかの前記第2電流信号に対する比に基づいて、前記レーザ光の波長を検出し、
前記波長対応制御設定値は、前記中間波長に対応して設定された、前記2つの第1電流信号のいずれかの前記第2電流信号に対する比である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の波長可変光源装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記2つの第1電流信号のそれぞれの前記第2電流信号に対する比のうち、前記ターゲット波長において前記レーザ発振波長の変化に対して変化が大きい方の比に基づいて、前記レーザ光の波長を検出する
ことを特徴とする請求項8に記載の波長可変光源装置。
【請求項10】
隣接する二つの前記中間波長の差が、前記合成反射ピークと、レーザ共振器の共振器モードとが一致した状態で出力されるレーザ光の発振スペクトルの半値半幅以下となるように構成されている
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一つに記載の波長可変光源装置。
【請求項11】
反射スペクトルが波長に対して互いに異なる周期で周期的にピークを有する2つの反射ミラーによって構成されるレーザ共振器と、前記レーザ共振器内に配置された利得部と、電力が供給されることでレーザ発振波長を制御する複数の制御素子と、を備える波長可変レーザ素子と、
演算部と記録部とを備え、前記複数の制御素子に供給する前記電力を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、現在のレーザ発振波長からターゲット波長までレーザ発振波長を単調変化させるように前記複数の制御素子を制御し、レーザ発振波長を単調変化させる際に、前記2つの反射ミラーの反射ピークの波長のずれが、前記2つの反射ミラーの反射ピークのスペクトルの半値半幅が前記2つの反射ミラーの反射ピークのスペクトルのうちで狭い方の半値半幅以下になるように前記電力を制御する
ことを特徴とする波長可変光源装置。
【請求項12】
前記ずれが、前記2つの反射ミラーのうちの1つの反射ピーク同士が同じ波長で重なった時の合成反射ピークのスペクトルの半値半幅以下となるように構成されている
ことを特徴とする請求項11に記載の波長可変光源装置。
【請求項13】
前記ずれが、前記合成反射ピークと、レーザ共振器の共振器モードとが一致した状態で出力されるレーザ光の発振スペクトルの半値半幅以下となるように構成されている
ことを特徴とする請求項12に記載の波長可変光源装置。
【請求項14】
反射スペクトルが波長に対して互いに異なる周期で周期的にピークを有する2つの反射ミラーによって構成されるレーザ共振器と、前記レーザ共振器内に配置された利得部と、電力が供給されることでレーザ発振波長を制御する複数の制御素子と、を備える波長可変レーザ素子に対して、演算部と記録部とを備える制御部が実行する制御方法であって、
前記複数の制御素子が、供給される前記電力に基づいて、少なくとも前記2つの反射ミラーの反射スペクトルがピークとなる波長位置を各々設定する設定工程と、
現在のレーザ発振波長からターゲット波長までの間の離散的な中間波長で前記波長可変レーザ素子がレーザ発振するために設定される波長対応制御設定値を順次制御目標として前記複数の制御素子を制御する制御工程を含
隣接する二つの前記中間波長の差が、前記2つの反射ミラーのうちの1つの反射ピーク同士が同じ波長で重なった時の合成反射ピークのスペクトルの半値半幅以下となるように構成されている
ことを特徴とする波長可変レーザ素子の制御方法。
【請求項15】
前記制御工程において、前記複数の制御素子に供給する電力の増減量を時間に対してステップ状に変化させる
ことを特徴とする請求項14に記載の波長可変レーザ素子の制御方法。
【請求項16】
前記制御工程において、前記増減量が互いに異なるように前記複数の制御素子に電力を供給する
ことを特徴とする請求項15に記載の波長可変レーザ素子の制御方法。
【請求項17】
前記波長対応制御設定値は、前記中間波長に対応して設定された、前記複数の制御素子のそれぞれに供給する駆動電力値である
ことを特徴とする請求項1416のいずれか一つに記載の波長可変レーザ素子の制御方法。
【請求項18】
制御目標の前記波長対応制御設定値となるように前記複数の制御素子を制御した後、前記レーザ発振波長を検出する波長検出工程をさらに含み、
前記制御工程において、前記レーザ発振波長が前記ターゲット波長に対して所定の範囲内であると判定した場合、前記複数の制御素子の少なくとも1つに供給する駆動電力値を、前記ターゲット波長に対応する駆動電力値に設定する
ことを特徴とする請求項17に記載の波長可変レーザ素子の制御方法。
【請求項19】
制御目標の前記波長対応制御設定値となるように前記複数の制御素子を制御した後、前記レーザ発振波長を検出する波長検出工程をさらに含み、
前記制御工程において、前記レーザ発振波長が前記ターゲット波長に対して所定の範囲内であると判定した場合、検出した前記レーザ発振波長と前記ターゲット波長との差分に基づいて、前記複数の制御素子の少なくとも1つに供給する駆動電力値を設定する
ことを特徴とする請求項17に記載の波長可変レーザ素子の制御方法。
【請求項20】
前記波長可変レーザ素子から出力された後に、透過スペクトルが互いに異なり、かつ波長に対して周期的に変化する2つの光フィルタを透過したレーザ光のそれぞれを受光して2つの第1電流信号を出力する第1電流信号出力工程と、
前記波長可変レーザ素子から出力された後に、前記2つの光フィルタを透過しないレーザ光を受光して第2電流信号を出力する第2電流信号出力工程と、
をさらに含み、
前記波長検出工程において、前記2つの第1電流信号のそれぞれの前記第2電流信号に対する比のうち、前記ターゲット波長において前記レーザ光の波長の変化に対して変化が大きい方の比に基づいて、前記レーザ光の波長を検出する
ことを特徴とする請求項18または19に記載の波長可変レーザ素子の制御方法。
【請求項21】
前記波長可変レーザ素子から出力された後に、透過スペクトルが互いに異なり、かつ波長に対して周期的に変化する2つの光フィルタを透過したレーザ光のそれぞれを受光して2つの第1電流信号を出力する第1電流信号出力工程と、
前記波長可変レーザ素子から出力された後に、前記2つの光フィルタを透過しないレーザ光を受光して第2電流信号を出力する第2電流信号出力工程と、
前記2つの第1電流信号のそれぞれの前記第2電流信号に対する比のうち、前記ターゲット波長において前記レーザ光の波長の変化に対して変化が大きい方の比に基づいて、前記レーザ光の波長を検出する波長検出工程と、
をさらに含み、
前記波長対応制御設定値は、前記中間波長に対応して設定された、前記2つの第1電流信号のいずれかの前記第2電流信号に対する比である
ことを特徴とする請求項1416のいずれか一つに記載の波長可変レーザ素子の制御方法。
【請求項22】
前記波長検出工程において、前記2つの第1電流信号のそれぞれの前記第2電流信号に対する比のうち、前記ターゲット波長において前記レーザ光の波長の変化に対して変化が大きい方の比に基づいて、前記レーザ光の波長を検出する
ことを特徴とする請求項21に記載の波長可変レーザ素子の制御方法。
【請求項23】
前記制御工程において、隣接する二つの前記中間波長の差が、前記2つの反射ミラーのうちの1つの反射ピーク同士が同じ波長で重なった時の合成反射ピークのスペクトルの半値半幅以下になるように前記電力を制御する
ことを特徴とする請求項1422のいずれか一つに記載の波長可変レーザ素子の制御方法。
【請求項24】
前記制御工程において、隣接する二つの前記中間波長の差が、前記合成反射ピークと、レーザ共振器の共振器モードとが一致した状態で出力されるレーザ光の発振スペクトルの半値半幅以下となるように前記電力を制御する
ことを特徴とする請求項23に記載の波長可変レーザ素子の制御方法。
【請求項25】
反射スペクトルが波長に対して互いに異なる周期で周期的にピークを有する2つの反射ミラーによって構成されるレーザ共振器と、前記レーザ共振器内に配置された利得部と、電力が供給されることでレーザ発振波長を制御する複数の制御素子と、を備える波長可変レーザ素子に対して、演算部と記録部とを備える制御部が実行する制御方法であって、
現在のレーザ発振波長からターゲット波長までレーザ発振波長を単調変化させるように前記複数の制御素子を制御する制御工程を含み、
前記制御工程において、レーザ発振波長を単調変化させる際に、前記2つの反射ミラーのうち反射ピークのスペクトルの半値半幅が、前記2つの反射ミラーの反射ピークのスペクトルのうちで狭い方の半値半幅以下のステップで離散的に変化させる
ことを特徴とする波長可変レーザ素子の制御方法。
【請求項26】
前記制御工程において、前記ステップが、前記2つの反射ミラーのうちの1つの反射ピーク同士が同じ波長で重なった時の合成反射ピークのスペクトルの半値半幅以下になるように前記電力を制御する
ことを特徴とする請求項25に記載の波長可変レーザ素子の制御方法。
【請求項27】
前記制御工程において、前記ステップが、前記合成反射ピークと、レーザ共振器の共振器モードとが一致した状態で出力されるレーザ光の発振スペクトルの半値半幅以下となるように前記電力を制御する
ことを特徴とする請求項26に記載の波長可変レーザ素子の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変光源装置および波長可変レーザ素子の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信などに用いられる波長可変レーザ素子において、バーニア効果を利用してレーザ発振波長を可変とする構成が開示されている(特許文献1)。この波長可変レーザ素子では、回折格子やリング共振器などの波長特性可変素子をヒータによって加熱することによって波長特性を変更し、これによってレーザ発振波長を変更する。また、波長可変レーザ素子に半導体光増幅器が集積されている場合もある。
【0003】
一方、波長可変レーザ素子において、レーザ発振波長を調整する技術が開示されている(特許文献2、3)。レーザ発振波長を微調整する技術は、FTF(Fine Tuning Frequency)と呼ばれる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-178283号公報
【文献】特許第6241931号公報
【文献】特許第6382506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特にレーザ光を出力させた状態でレーザ発振波長を微調整する場合には、レーザ発振波長が単調かつ安定的に変化することが望ましく、瞬間的に変化したり、不安定に変化したりすることは好ましくない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、レーザ発振波長を調整する際に、単調かつ安定的に変化させることができる波長可変光源装置および波長可変レーザ素子の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る波長可変光源装置は、反射スペクトルが波長に対して互いに異なる周期で周期的にピークを有する2つの反射ミラーによって構成されるレーザ共振器と、前記レーザ共振器内に配置された利得部と、電力が供給されることでレーザ発振波長を制御する複数の制御素子と、を備える波長可変レーザ素子と、演算部と記録部とを備え、前記複数の制御素子に供給する前記電力を制御する制御部と、を備え、前記複数の制御素子は、供給される前記電力に基づいて、少なくとも前記2つの反射ミラーの反射スペクトルがピークとなる波長位置を各々設定し、前記制御部は、現在のレーザ発振波長からターゲット波長までの間の離散的な中間波長に対応する波長対応制御設定値を順次制御目標として前記複数の制御素子を制御することを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る波長可変光源装置は、前記制御部は、前記複数の制御素子に供給する電力の増減量を時間に対してステップ状に変化させることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る波長可変光源装置は、前記制御部は、前記増減量が互いに異なるように前記複数の制御素子に電力を供給することを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る波長可変光源装置は、前記波長対応制御設定値は、前記中間波長に対応して設定された、前記複数の制御素子のそれぞれに供給する駆動電力値であることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る波長可変光源装置は、前記波長可変レーザ素子のレーザ発振波長をモニタするための波長モニタ部を備え、前記制御部は、制御目標の前記波長対応制御設定値となるように前記複数の制御素子を制御した後、前記波長モニタ部のモニタ結果に基づいて前記レーザ発振波長を検出し、前記レーザ発振波長が前記ターゲット波長に対して所定の範囲内であると判定した場合、前記複数の制御素子の少なくとも1つに供給する駆動電力値を、前記ターゲット波長に対応する駆動電力値に設定することを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る波長可変光源装置は、前記波長可変レーザ素子のレーザ発振波長をモニタするための波長モニタ部を備え、前記制御部は、制御目標の前記波長対応制御設定値となるように前記複数の制御素子を制御した後、前記波長モニタ部のモニタ結果に基づいて前記レーザ発振波長を検出し、前記レーザ発振波長が前記ターゲット波長に対して所定の範囲内であると判定した場合、検出した前記レーザ発振波長と前記ターゲット波長との差分に基づいて、前記複数の制御素子の少なくとも1つに供給する駆動電力値を設定することを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る波長可変光源装置は、前記波長モニタ部は、透過スペクトルが互いに異なり、かつ波長に対して周期的に変化する2つの光フィルタと、前記波長可変レーザ素子から出力された後に前記2つの光フィルタを透過したレーザ光のそれぞれを受光して第1電流信号を出力する2つの第1光検出部と、前記波長可変レーザ素子から出力された後に波長に依存する損失を略受けないレーザ光を受光して第2電流信号を出力する第2光検出部を備えており、前記制御部は、前記2つの第1電流信号のそれぞれの前記第2電流信号に対する比のうち、前記ターゲット波長において前記レーザ発振波長の変化に対して変化が大きい方の比に基づいて、前記レーザ光の波長を検出することを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る波長可変光源装置は、前記波長可変レーザ素子のレーザ発振波長をモニタするための波長モニタ部を備え、前記波長モニタ部は、透過スペクトルが互いに異なり、かつ波長に対して周期的に変化する2つの光フィルタと、前記波長可変レーザ素子から出力された後に前記2つの光フィルタを透過したレーザ光のそれぞれを受光して第1電流信号を出力する2つの第1光検出部と、前記波長可変レーザ素子から出力された後に波長に依存する損失を略受けないレーザ光を受光して第2電流信号を出力する第2光検出部を備えており、前記制御部は、前記2つの第1電流信号のいずれかの前記第2電流信号に対する比に基づいて、前記レーザ光の波長を検出し、前記波長対応制御設定値は、前記中間波長に対応して設定された、前記2つの第1電流信号のいずれかの前記第2電流信号に対する比であることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る波長可変光源装置は、前記制御部は、前記2つの第1電流信号のそれぞれの前記第2電流信号に対する比のうち、前記ターゲット波長において前記レーザ発振波長の変化に対して変化が大きい方の比に基づいて、前記レーザ光の波長を検出することを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る波長可変光源装置は、隣接する二つの前記波長対応制御設定値間の差が、前記2つの反射ミラーのうちの1つの反射ピーク同士が重なった時の合成反射ピークのスペクトルの半値半幅以下になるように前記電力を制御することを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る波長可変光源装置は、隣接する二つの前記波長対応制御設定値間の差が、前記合成反射ピークと、レーザ共振器の共振器モードとが一致した状態で出力されるレーザ光の発振スペクトルの半値半幅以下となるように構成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係る波長可変光源装置は、反射スペクトルが波長に対して互いに異なる周期で周期的にピークを有する2つの反射ミラーによって構成されるレーザ共振器と、前記レーザ共振器内に配置された利得部と、電力が供給されることでレーザ発振波長を制御する複数の制御素子と、を備える波長可変レーザ素子と、演算部と記録部とを備え、前記複数の制御素子に供給する前記電力を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、現在のレーザ発振波長からターゲット波長までレーザ発振波長を単調変化させるように前記複数の制御素子を制御し、レーザ発振波長を単調変化させる際に、前記2つの反射ミラーの反射ピークのずれが、前記2つの反射ミラーの反射ピークの半値半幅が狭い方の半値半幅以下になるように前記電力を制御することを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様に係る波長可変光源装置は、前記ずれが、前記2つの反射ミラーのうちの1つの反射ピーク同士が同じ波長で重なった時の合成反射ピークのスペクトルの半値半幅以下となるように構成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様に係る波長可変光源装置は、前記ずれが、前記合成反射ピークと、レーザ共振器の共振器モードとが一致した状態で出力されるレーザ光の発振スペクトルの半値半幅以下となるように構成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明の一態様に係る波長可変レーザ素子の制御方法は、反射スペクトルが波長に対して互いに異なる周期で周期的にピークを有する2つの反射ミラーによって構成されるレーザ共振器と、前記レーザ共振器内に配置された利得部と、電力が供給されることでレーザ発振波長を制御する複数の制御素子と、を備える波長可変レーザ素子に対して、演算部と記録部とを備える制御部が実行する制御方法であって、前記複数の制御素子が、供給される前記電力に基づいて、少なくとも前記2つの反射ミラーの反射スペクトルがピークとなる波長位置を各々設定する設定工程と、現在のレーザ発振波長からターゲット波長までの間の離散的な中間波長に対応する波長対応制御設定値を順次制御目標として前記複数の制御素子を制御する制御工程を含むことを特徴とする。
【0022】
本発明の一態様に係る波長可変レーザ素子の制御方法は、前記制御工程において、前記複数の制御素子に供給する電力の増減量を時間に対してステップ状に変化させることを特徴とする。
【0023】
本発明の一態様に係る波長可変レーザ素子の制御方法は、前記制御工程において、前記増減量が互いに異なるように前記複数の制御素子に電力を供給することを特徴とする。
【0024】
本発明の一態様に係る波長可変レーザ素子の制御方法は、前記波長対応制御設定値は、前記中間波長に対応して設定された、前記複数の制御素子のそれぞれに供給する駆動電力値であることを特徴とする。
【0025】
本発明の一態様に係る波長可変レーザ素子の制御方法は、制御目標の前記波長対応制御設定値となるように前記複数の制御素子を制御した後、前記レーザ発振波長を検出する波長検出工程をさらに含み、前記制御工程において、前記レーザ発振波長が前記ターゲット波長に対して所定の範囲内であると判定した場合、前記複数の制御素子の少なくとも1つに供給する駆動電力値を、前記ターゲット波長に対応する駆動電力値に設定することを特徴とする。
【0026】
本発明の一態様に係る波長可変レーザ素子の制御方法は、制御目標の前記波長対応制御設定値となるように前記複数の制御素子を制御した後、前記レーザ発振波長を検出する波長検出工程をさらに含み、前記制御工程において、前記レーザ発振波長が前記ターゲット波長に対して所定の範囲内であると判定した場合、検出した前記レーザ発振波長と前記ターゲット波長との差分に基づいて、前記複数の制御素子の少なくとも1つに供給する駆動電力値を設定することを特徴とする。
【0027】
本発明の一態様に係る波長可変レーザ素子の制御方法は、前記波長可変レーザ素子から出力された後に、透過スペクトルが互いに異なり、かつ波長に対して周期的に変化する2つの光フィルタを透過したレーザ光のそれぞれを受光して2つの第1電流信号を出力する第1電流信号出力工程と、前記波長可変レーザ素子から出力された後に、前記2つの光フィルタを透過しないレーザ光を受光して第2電流信号を出力する第2電流信号出力工程と、をさらに含み、前記波長工程において、前記2つの第1電流信号のそれぞれの前記第2電流信号に対する比のうち、前記ターゲット波長において前記レーザ光の波長の変化に対して変化が大きい方の比に基づいて、前記レーザ光の波長を検出することを特徴とする。
【0028】
本発明の一態様に係る波長可変レーザ素子の制御方法は、前記波長可変レーザ素子から出力された後に、透過スペクトルが互いに異なり、かつ波長に対して周期的に変化する2つの光フィルタを透過したレーザ光のそれぞれを受光して2つの第1電流信号を出力する第1電流信号出力工程と、前記波長可変レーザ素子から出力された後に、前記2つの光フィルタを透過しないレーザ光を受光して第2電流信号を出力する第2電流信号出力工程と、前記2つの第1電流信号のそれぞれの前記第2電流信号に対する比のうち、前記ターゲット波長において前記レーザ光の波長の変化に対して変化が大きい方の比に基づいて、前記レーザ光の波長を検出する波長検出工程と、をさらに含み、前記波長対応制御設定値は、前記中間波長に対応して設定された、前記2つの第1電流信号のいずれかの前記第2電流信号に対する比であることを特徴とする。
【0029】
本発明の一態様に係る波長可変レーザ素子の制御方法は、前記波長検出工程において、前記2つの第1電流信号のそれぞれの前記第2電流信号に対する比のうち、前記ターゲット波長において前記レーザ光の波長の変化に対して変化が大きい方の比に基づいて、前記レーザ光の波長を検出することを特徴とする。
【0030】
本発明の一態様に係る波長可変レーザ素子の制御方法は、前記制御工程において、隣接する二つの前記波長対応制御設定値間の差が、前記2つの反射ミラーのうちの1つの反射ピーク同士が同じ波長で重なった時の合成反射ピークのスペクトルの半値半幅以下になるように前記電力を制御することを特徴とする。
【0031】
本発明の一態様に係る波長可変レーザ素子の制御方法は、前記制御工程において、隣接する二つの前記波長対応制御設定値間の差が、前記合成反射ピークと、レーザ共振器の共振器モードとが一致した状態で出力されるレーザ光の発振スペクトルの半値半幅以下となるように前記電力を制御することを特徴とする。
【0032】
本発明の一態様に係る波長可変レーザ素子の制御方法は、反射スペクトルが波長に対して互いに異なる周期で周期的にピークを有する2つの反射ミラーによって構成されるレーザ共振器と、前記レーザ共振器内に配置された利得部と、電力が供給されることでレーザ発振波長を制御する複数の制御素子と、を備える波長可変レーザ素子に対して、演算部と記録部とを備える制御部が実行する制御方法であって、現在のレーザ発振波長からターゲット波長までレーザ発振波長を単調変化させるように前記複数の制御素子を制御する制御工程を含み、前記制御工程において、レーザ発振波長を単調変化させる際に、前記2つの反射ミラーのうち反射ピークの半値半幅が狭い方の半値半幅以下のステップで離散的に変化させることを特徴とする。
【0033】
本発明の一態様に係る波長可変レーザ素子の制御方法は、前記制御工程において、前記ステップが、前記2つの反射ミラーのうちの1つの反射ピーク同士が同じ波長で重なった時の合成反射ピークのスペクトルの半値半幅以下になるように前記電力を制御することを特徴とする。
【0034】
本発明の一態様に係る波長可変レーザ素子の制御方法は、前記制御工程において、前記ステップが、前記合成反射ピークと、レーザ共振器の共振器モードとが一致した状態で出力されるレーザ光の発振スペクトルの半値半幅以下となるように前記電力を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、レーザ発振波長を調整する際に、単調かつ安定的に変化させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、実施形態に係る波長可変光源装置の模式的な構成図である。
図2図2は、レーザ発振波長の調整の説明図である。
図3図3は、DBR電力、RING電力、レーザ発振波長の関係の一例を示す図である。
図4図4は、2つのリング共振器光フィルタによる波長モニタの説明図である。
図5図5は、制御例1におけるヒータ電力の制御の一例を示す図である。
図6図6は、制御例1の制御フローを示す図である。
図7図7は、制御例2におけるヒータ電力の制御の一例を示す図である。
図8図8は、制御例3の制御フローを示す図である。
図9図9は、制御例4の制御フローを示す図である。
図10図10は、制御例5における波長の制御の説明図である。
図11図11は、制御例6の制御フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。
【0038】
(実施形態1)
図1は、実施形態に係る波長可変光源装置の構成図である。この波長可変光源装置100は、波長可変レーザ部10と、制御部20と、を備えている。
【0039】
波長可変レーザ部10は、熱電素子であるペルチェ素子11の上に、波長可変レーザ素子12と、半導体光増幅器13と、平面光波回路(PLC)14と、光検出部15と、温度センサ16とが搭載された構成を有する。
【0040】
波長可変レーザ素子12は、たとえば特許文献1に開示されるバーニア型の波長可変レーザ素子である。波長可変レーザ素子12は、基板121上に、第1反射ミラー122と、利得部123と、第2反射ミラー124とが集積された構成を有する。第1反射ミラー122は、反射スペクトルが波長に対して周期的にピークを有するリング共振器ミラーである。第1反射ミラー122は、リング共振器と、リング共振器と光学的に結合する2つのアームを有する分岐部とを備えている。第2反射ミラー124は、反射スペクトルが波長に対して、第2反射ミラー124とは異なる周期で周期的にピークを有する標本化回折格子(Sampled Grating)を備える分布ブラッグ反射(DBR)ミラーである。第1反射ミラー122、第2反射ミラー124によってレーザ共振器Rが構成される。なお、第1反射ミラー122および第2反射ミラー124の反射ピークは、厳密には光の周波数に対して周期的であるが、波長に対しても略周期的であるので、本明細書では、波長に対して周期的にピークを有すると記載する。利得部123は、レーザ共振器R内に配置されており、駆動電力を供給されることによって光利得を発生する。
【0041】
第1反射ミラー122のリング共振器上には、リング状の第1反射ミラー用ヒータ125が設けられている。第1反射ミラー用ヒータ125は、制御部20から駆動電力を供給されることによって第1反射ミラー122のリング共振器を加熱する。この加熱によって第1反射ミラー122の反射スペクトルが制御される。第1反射ミラー122の一方のアーム上には、位相調整用ヒータ126が設けられている。位相調整用ヒータ126は、制御部20から駆動電力を供給されることによってアームを加熱する。この加熱によってレーザ共振器Rの共振器長が調整される。共振器長を調整することによってレーザ共振器Rの縦モード(共振器モード)の波長を制御できる。第2反射ミラー124上には、第2反射ミラー用ヒータ127が設けられている。第2反射ミラー用ヒータ127は、制御部20から駆動電力を供給されることによって第2反射ミラー124を加熱する。この加熱によって第2反射ミラー124の反射スペクトルが制御される。
【0042】
波長可変レーザ素子12は、第1反射ミラー用ヒータ125、位相調整用ヒータ126、第2反射ミラー用ヒータ127のそれぞれに供給される駆動電力が調整される。これによって、第1反射ミラー122の反射ピークとレーザ共振器Rの共振器モードと第2反射ミラー124の反射ピークとが一致した波長でレーザ発振し、CW(連続波)光であるレーザ光L0を出力する。すなわち、第1反射ミラー用ヒータ125、位相調整用ヒータ126、第2反射ミラー用ヒータ127は、駆動電力が供給されることで波長可変レーザ素子12のレーザ発振波長を制御する複数の制御素子を構成している。
【0043】
半導体光増幅器13は、制御部20から駆動電力を供給されることによってレーザ光L0を光増幅してレーザ光L1として出力する。
【0044】
平面光波回路14と光検出部15とは、波長可変レーザ素子12のレーザ発振波長(レーザ光L0の波長)をモニタするための波長モニタ部17を構成している。
【0045】
平面光波回路14は、空間結合光学系(図示略)により第1反射ミラー122の一方のアームに光学的に結合している。そして、レーザ光L0と同様に波長可変レーザ素子12におけるレーザ発振により発生したレーザ光L2は、アームから平面光波回路14に入力される。なお、レーザ光L2は、レーザ光L0の波長と同一の波長を有する。この平面光波回路14は、光分岐部141と、光導波路142と、リング共振器光フィルタを有する光導波路143と、リング共振器光フィルタを有する光導波路144とを備える。
【0046】
光分岐部141は、入力したレーザ光L2を3つのレーザ光L3~L5に分岐する。そして、光導波路142は、レーザ光L3を光検出部15に導波する。また、光導波路143は、レーザ光L4を光検出部15に導波する。さらに、光導波路144は、レーザ光L5を光検出部15に導波する。
【0047】
ここで、光導波路143、144のリング共振器光フィルタは、透過スペクトルが互いに異なり、かつ波長に対して周期的に変化している。その結果、光導波路143、144は、波長に応じた透過率でレーザ光L4、L5をそれぞれ透過する。一方、レーザ光L3は、波長に略依存しない透過率を有する光導波路142を透過するので、波長に依存する損失を略受けないで光検出部15に到達する。
【0048】
なお、光導波路143、144のリング共振器光フィルタは、たとえば、周期は同じであるが、1周期の1/3~1/5の範囲で互いに位相が異なる透過特性を有する。
【0049】
光検出部15は、PD(Photo Diode)151、152、153を備える。第2光検出部としてのPD151は、光導波路142を透過したレーザ光L3を受光し、受光強度に応じた第2電流信号を出力する。第1光検出部としてのPD152は、光導波路143を透過したレーザ光L4を受光し、受光強度に応じた第1電流信号を出力する。第1光検出部としてのPD153は、光導波路144を透過したレーザ光L5を受光し、受光強度に応じた第1電流信号を出力する。このように、光検出部15は、モニタ結果として第1、第2電流信号を出力する第1電流信号出力工程と第2電流信号出力工程とを行う。
【0050】
温度センサ16は、たとえばサーミスタで構成されている。温度センサ16は、波長可変レーザ素子12の温度を検出する。温度センサ16は、検出した温度の情報を含む検出信号を出力する。
【0051】
ペルチェ素子11は、波長可変レーザ素子12を搭載しており、波長可変レーザ素子12の温度を調整することができる。
【0052】
つぎに、制御部20について説明する。制御部20は、利得部123、第1反射ミラー用ヒータ125、位相調整用ヒータ126、第2反射ミラー用ヒータ127、半導体光増幅器13、ペルチェ素子11に供給する電力を制御する。
【0053】
制御部20は、演算部21と、記録部22と、入力部23と、出力部24と、電力供給部25と、を少なくとも備えている。演算部21は、たとえばCPUを含んでおり、制御のための各種演算処理を行う。記録部22は、演算部21が演算処理を行うために使用する各種プログラムやデータ等が格納されるROMなどの記録部を備えている。また、記録部22は、演算部21が演算処理を行う際の作業スペースや演算部21の演算処理の結果等を記録する等のために使用されるRAMなどの記録部を備えている。
【0054】
入力部23は、波長可変光源装置100の上位装置などからの指示信号や、光検出部15からの2つの第1電流信号および第2電流信号や、温度センサからの検出信号の入力を受け付ける。受け付けた信号に含まれる情報は記録部22に記録される。入力部23はたとえばアナログ-デジタルコンバータ(ADC)を備えている。出力部24は、演算部21が演算処理により生成した指示信号を受け付け、適当な指示信号に変換して電力供給部25に出力する。出力部24は、たとえばデジタル-アナログコンバータ(DAC)を備えている。電力供給部25は、指示信号に基づいて駆動電力を供給するものであり、たとえばDC電源を備えている。
【0055】
制御部20は、波長可変レーザ素子12のレーザ発振波長をフィードバック制御可能に構成されている。本実施形態では、制御部20は、以下のフィードバック制御を行う。光検出部15からの2つの第1電流信号のいずれかの第2電流信号に対する比(以下、適宜PD比と記載する場合がある)を算出する。そして、PD比とレーザ発振波長との対応関係に基づいて、レーザ発振波長を検出する。このような対応関係は実験等によって事前に求められ、記録部22にテーブルデータとして記録されている。制御部20は、PD比が所望のレーザ発振波長に対応するPD比となるように、位相調整用ヒータ126への駆動電力を制御する。これによって波長可変レーザ素子12のレーザ発振波長をフィードバック制御できる。尚、当該PD比に相当するものとして、検出部15からの2つの第1電流信号のいずれかに補正係数を適用した信号に対する、第2電流信号に補正係数を適用した信号の比でもよい。また、当該比に相当する量として、第1電流信号および第2電流信号のいずれか一方に補正係数を適用した信号を用いて比を算出したものでもよい。
【0056】
第1電流信号、第2電流信号に対する補正係数は、実験等によって予め取得され、テーブルデータや関係式などの形式にて記録部22に記憶されており、制御部20が適宜読み出して使用する。補正係数は、たとえば波長可変光源装置100の動作条件や、温度センサ16が検出した温度等に応じて定められていてもよい。また、補正係数は、規格化されたPD比のカーブ(波長弁別カーブ)に当てはめるのに適するように定められていてもよい。第1電流信号、第2電流信号に対する補正係数の適用は、たとえば、加算、減算、乗算、除算のいずれかの演算による適用である。
【0057】
(レーザ発振波長の調整)
つぎに、レーザ発振波長の調整について説明する。図2は、レーザ発振波長の調整の説明図である。上段は、第2反射ミラー124(DBR)の反射スペクトルを示し、中段は、第1反射ミラー122(RING)の反射スペクトルを示し、下段は、共振器モードのスペクトルを示す。
【0058】
供給する駆動電力を調整して第2反射ミラー用ヒータ127(DBRヒータ)を制御すると、その反射スペクトルは実線で示す形状から太矢線で示すように破線で示す形状に波長軸上でシフトする。同様に、第1反射ミラー用ヒータ125(RINGヒータ)を制御すると、その反射スペクトルは実線で示す形状から破線で示す形状に波長軸上でシフトする。同様に、位相調整用ヒータ126(Phaseヒータ)を制御すると、そのスペクトルは実線で示す形状から破線で示す形状に波長軸上でシフトする。
【0059】
実線に示す状態では、第1反射ミラー122の反射ピークとレーザ共振器Rの共振器モードと第2反射ミラー124の反射ピークとが一致した波長λでレーザ発振している。この状態にするためには、DBRヒータおよびRINGヒータは、供給される電力に基づいて、DBR、RINGの反射スペクトルがピークとなる波長位置を各々設定する設定工程が行わる。また、設定工程においては、Phaseヒータは、供給される電力に基づいて、共振器モードがピークとなる波長位置を設定する。各ヒータの制御によって破線に示す状態にすると、第1反射ミラー122の反射ピークとレーザ共振器Rの共振器モードと第2反射ミラー124の反射ピークとが一致する波長を波長λとできるので、レーザ発振波長を波長λに調整できる。各ヒータの制御の際に駆動電力を細かく調整することで、共振器モードと2つの反射ピークとの一致を維持したままレーザ発振波長を微調整できる。なお、各ヒータへの駆動電力は供給する電流によって制御することができる。
【0060】
レーザ発振波長と各ヒータへの駆動電力の関係の一例について説明する。図3は、DBR電力、RING電力、レーザ発振波長の関係の一例を示す図である。DBR電力はDBRヒータに供給される電力である。RING電力はRINGヒータに供給される電力である。図5において、λa1、λa2、・・・、λak、・・・、λb1、λb2、・・・、λbk、・・・、λn1、λn2、・・・、λnk、・・・は、特定のRING電力とDBR電力との組み合わせによって得られるレーザ発振波長を示している。これらの波長は互いに異なる波長である。また、たとえばλa1、λa2、・・・、λak、・・・は互いに近接する波長である。尚、近接する波長とは、λAB(A=a,b,c・・・n、B=1,2,3・・・k)とλA(B±1)との波長の差が、λABとλA‘B(A’≠A)との波長差より小さくなっていることを示している。同様に、λb1、λb2、・・・、λbk、・・・も互いに近接する波長であり、λn1、λn2、・・・、λnk、・・・も互いに近接する波長である。従って、FTFを行う等レーザ発振波長を連続的に変化させたい場合は、たとえば以下のようにすればよい。すなわち、λa1、λa2、・・・、λak、・・・を結んでいる傾斜した破線に沿うように、RING電力とDBR電力との組み合わせを変化させ、かつPhaseヒータに対する電流もそれに応じて変化させればよい。
【0061】
ここで、本実施形態のように、2つのリング共振器フィルタによる波長モニタを行う場合について、図4を参照して説明する。図4はPD比の特性を示している。横軸は光の波長を周波数で表示したものである。
【0062】
実線は光導波路143のリング共振器光フィルタによる特性であり、PD152が出力する第1電流信号の第2電流信号に対するPD比を示している。また、破線は光導波路144のリング共振器光フィルタによる特性であり、PD153が出力する第1電流信号の第2電流信号に対するPD比を示している。2つのPD比のカーブ(波長弁別カーブとも呼ばれる)のうち、レーザ発振波長の変化に対して変化が大きい、すなわちカーブの傾きが大きい方が、波長モニタの精度が高い。したがって、レーザ発振波長に応じてどちらの波長弁別カーブを使用するかを選択することが好ましい。図4に示す丸印は具体的に波長(周波数)の制御ポイント(ロックポイント)を示しており、波長(周波数)に応じて傾きが大きい方のカーブ上にロックポイントが設定される。
【0063】
現在のレーザ発振波長からターゲット波長まで波長を調整する際に、このような波長弁別カーブを用いてフィードバック制御を用いる場合、ターゲット波長まで一気にフィードバック制御を行うと、レーザ発振波長が瞬間的に変化したり、不安定に変化したりする場合がある。また、波長可変レーザ素子の発振波長を本実施例のようにバーニア制御を用いて制御する場合や、現在のレーザ発振波長からターゲット波長まで波長を調整する際に、使用する波長弁別カーブを途中で変更する場合に、レーザ発振波長が不安定に変化するおそれがある。さらに、FTFによりレーザ発振波長が微小に変化する様制御した場合には、このようなレーザ発振波長が不安定に変化する状態でレーザ光を発振してしまう虞がある。
【0064】
そこで、本実施形態では、制御部20は、現在のレーザ発振波長からターゲット波長までの間で離散的に設けられた中間波長に対応する波長対応制御設定値を記録している。そして、レーザ発振波長をターゲット波長に変更する指令を受けると、これらの中間波長に対応する波長対応制御設定値を順次制御目標として各ヒータを制御する制御工程を行う。このとき、たとえばレーザ発振波長を単調変化させる制御を行う。このように、現在のレーザ発振波長からターゲット波長までの間に離散的な中間波長を設定し、これらの中間波長に対応する波長対応制御設定値を設定して、それを順次制御目標とする。これにより、レーザ発振波長を調整する際に、単調かつ安定的に変化させることができる。
【0065】
(制御例1)
以下、制御部20による様々な制御例について説明する。なお、以下の制御例は、いずれも、利得部123および半導体光増幅器13には駆動電力が供給されている状態で行われる。まず、制御例1では、波長対応制御設定値は、現在のレーザ発振波長からターゲット波長までの間の離散的な中間波長に対応して設定された、DBRヒータ、RINGヒータ、Phaseヒータのそれぞれに供給する駆動電力の設定値(駆動電力値)である。
【0066】
図5は、制御例1におけるいずれかのヒータに供給する駆動電力(ヒータ電力)の制御の一例を示す図である。図5では、横軸はレーザ発振波長をターゲット波長に変更する指令を受けてからの時間である。図5に示す例では、ヒータ電力を時間に対してステップ状に変化させている。各ステップでのヒータ電力は、中間波長でレーザ発振するために設定された駆動電力である。このようにステップ状にヒータ電力を変化させるには、たとえば、各ヒータそれぞれに供給する駆動電力値を時間に対して当該ステップ状に変化させることで実現することができる。なお、各ヒータにおけるヒータ電力とレーザ発振波長との関係は、図5のような関係がテーブルデータとして記録部22に記録されており、演算部21が適宜読み出して演算に使用する。図5は或るヒータに対する一例であり、ステップ幅(増加量)などのステップ形状はヒータ間で互いに異なっていてもよい。具体的には、共振器モードと2つの反射ピークとの一致を維持したままレーザ発振波長が変化するように各ヒータ電力が設定されている。
【0067】
なお、各ヒータ電力におけるステップ幅は均等にしてよいが、図5のように最初はステップ幅を大きくし、その後小さくすることが好ましい。これにより、ターゲット波長への変更を完了するまでの時間を短くでき、かつレーザ発振波長がターゲット波長を超えてしまう事態の発生を抑制できるので、単調変化の観点から好ましい。ターゲット波長を超過しないためには、ターゲット波長付近ではステップ幅を小さく設定する必要がある。一方で、ターゲット波長と現在の波長の差分が大きい場合は、ステップ幅を大きくしても超過する懸念がない。よって、ターゲット波長に近づくほどステップ幅を小さくすることは時間短縮につながるのである。
【0068】
以下に、本発明に係るいくつかの制御フローを例示する。尚、これらの制御フローでは、ターゲット波長を出力するために必要なDBRヒータ、RINGヒータ、Phaseヒータの駆動電力は、制御フロー開始前のDBRヒータ、RINGヒータ、Phaseヒータの駆動電力より大きいものとする。
【0069】
図6は、制御例1の制御フローを示す図である。この制御フローは、制御部20がフィードバック制御を行っている状態において、レーザ発振波長を所定の波長(ターゲット波長)に変更する指示信号を受けたときにスタートする。
【0070】
制御部20は、ステップS101において、フィードバック制御を停止する。つづいて、制御部20は、ステップS102において、DBRヒータ、RINGヒータの駆動電力を1ステップ分増加する。より具体的には、DBRヒータ、RINGヒータの駆動電力値を図5における1ステップ分増加させる。当該目標値に対応するDBR電力、RING電力をDBRヒータ、RINGヒータへ供給する。供給を開始した後、各ステップにおいて所定の時間経過を待つ等によって行う。尚、図5における各ステップの駆動電力値は、各々中間波長に対応する値となっている。第1反射ミラー122の1つの反射ピークと、第2反射ミラー124の1つの反射ピークとが、制御開始前のレーザ発振波長から、これと最も近い波長の中間波長に移動する。つづいて、制御部20は、ステップS103において、Phaseヒータの駆動電力を1ステップ分増加する。より具体的には、Phaseヒータの駆動電力値を図5における1ステップ分増加させる。当該目標値に対応するPhase電力をPhaseヒータへ供給する。供給を開始した後、各ステップにおいて所定の時間経過を待つ等によって行う。尚、図5における各ステップの駆動電力値は、各々中間波長に対応する値となっている。これより、共振器モードの1つのピークが、制御開始前のレーザ発振波長から、これと最も近い波長の中間波長に移動する。尚、ステップS102とステップS103とを同時に行なっても良いし、ステップS102より先にステップS103を実行するようにしてもよい。
【0071】
つづいて、制御部20は、ステップS104において、PD比に基づいて波長を検出し、検出した波長がターゲット波長から所定範囲内(ターゲット波長から周波数に換算して±αGHz以内、αは所定の定数であり、例えば1)であるかを判定する。所定範囲内ではない場合(ステップS104、No)は、制御はステップS102に戻り、ステップS102~S104を繰り返す。これによって、第1反射ミラー122の1つの反射ピークと、第2反射ミラー124の1つの反射ピークと、共振器モードの1つのピークとが、隣接する中間波長に順次移動する。一方。所定範囲内である場合(ステップS104、Yes)は、制御はステップS105に進む。
【0072】
つづいて、制御部20は、ステップS105において、フィードバック制御を開始する。つづいて、制御部20は、ステップS106において、PD比に基づいて検出した波長がターゲット波長から所定範囲内(ターゲット波長から周波数に換算して±βGHz以内、βはαより小さい所定の定数であり、例えば0.5)であるかを判定する。所定範囲内ではない場合(ステップS106、No)は、制御はステップS106を繰り返す。所定範囲内である場合(ステップS106、Yes)は、波長が収束したと判断して、フローチャートの実行が終了する。尚、βはαより大きい所定の定数としてもよい。
【0073】
ここで、±αGHzは、その範囲内であればフィードバック制御を開始してもレーザ発振波長が単調かつ安定的に変化することができる値に設定することが好ましい。
【0074】
(制御例2)
つぎに、制御例2について説明する。制御例2では、制御例1と同様に、波長対応制御設定値は、現在のレーザ発振波長からターゲット波長までの間の離散的な中間波長に対応して設定された、DBRヒータ、RINGヒータ、Phaseヒータのそれぞれに供給する駆動電力値である。尚、この制御フローでは、ターゲット波長を出力するために必要なDBRヒータ、RINGヒータ、Phaseヒータの駆動電力は、制御フロー開始前のDBRヒータ、RINGヒータ、Phaseヒータの駆動電力より大きいものとする。
【0075】
図7は、制御例2におけるいずれか2つのヒータに供給するヒータ電力の制御の一例を示す図である。図7では、横軸はレーザ発振波長をターゲット波長に変更する指令を受けてからの時間である。また、実線と破線とは、それぞれ異なるヒータに対するヒータ電力を示している。図7に示す例では、図5と同様にヒータ電力を時間に対してステップ状に変化させている。ただし、破線で示すヒータ電力を供給するヒータは、実線で示すヒータ電力を供給するヒータよりも、電力に対する応答時間が長い要素(第1反射ミラー122または第2反射ミラー124またはレーザ共振器Rの共振器長)に対応するヒータである。このように応答時間が長い要素に対しては、ヒータ電力を早く変更することで、応答時間の遅れを補償できる。
【0076】
制御例2は、制御例1と同様の制御フローで実行することができる。
【0077】
(制御例3)
図8は、制御例3の制御フローを示す図である。この制御フローは、制御部20がフィードバック制御を行っている状態において、レーザ発振波長をターゲット波長に変更する指示信号を受けたときにスタートする。尚、この制御フローでは、ターゲット波長を出力するために必要なDBRヒータ、RINGヒータ、Phaseヒータの駆動電力は、制御フロー開始前のDBRヒータ、RINGヒータ、Phaseヒータの駆動電力より大きいものとする。
【0078】
ステップS201~S204までは、制御例1におけるステップS101~S104と同じである。すなわち、制御部20は、ステップS201において、フィードバック制御を停止する。つづいて、制御部20は、ステップS202において、DBRヒータ、RINGヒータの駆動電力を1ステップ分増加する。より具体的には、DBRヒータ、RINGヒータの駆動電力値を図5における1ステップ分増加させる。当該目標値に対応するDBR電力、RING電力をDBRヒータ、RINGヒータへ供給する。供給を開始した後、各ステップにおいて所定の時間経過を待つ等によって行う。尚、図5における各ステップの駆動電力値は、各々中間波長に対応する値となっている。つづいて、制御部20は、ステップS203において、Phaseヒータの駆動電力を1ステップ分増加する。より具体的には、Phaseヒータの駆動電力値を図5における1ステップ分増加させる。当該目標値に対応するPhase電力をPhaseヒータへ供給する。供給を開始した後、各ステップにおいて所定の時間経過を待つ等によって行う。尚、図5における各ステップの駆動電力値は、各々中間波長に対応する値となっている。尚、ステップS202とステップS203とを同時に行なっても良いし、ステップS202より先にステップS203を実行するようにしてもよい。
【0079】
つづいて、制御部20は、ステップS204において、PD比に基づいて検出した波長がターゲット波長から所定範囲内(ターゲット波長から周波数に換算して±αGHz以内)であるかを判定する。αは所定の定数であり、制御例1におけるαよりも大きい値である。所定範囲内ではない場合(ステップS204、No)は、制御はステップS202に戻る。所定範囲内である場合(ステップS204、Yes)は、制御はステップS205に進む。
【0080】
つづいて、制御部20は、ステップS205において、ターゲット波長に対応するDBRヒータ、RINGヒータの駆動電力に設定し、その設定した電力を各ヒータに供給する。
【0081】
つづいて、制御部20は、ステップS206において、フィードバック制御を開始する。つづいて、制御部20は、ステップS207において、PD比に基づいて検出した波長がターゲット波長から所定範囲内(周波数にして±βGHz以内、βはαより小さい所定の定数)であるかを判定する。所定範囲内ではない場合(ステップS207、No)は、制御はステップS207を繰り返す。所定範囲内である場合(ステップS207、Yes)は、波長が収束したと判断して、フローチャートの実行が終了する。尚、βはαより大きい所定の定数としてもよい。
【0082】
制御例3では、制御例1と比較してS205においてターゲット波長に対応するDBRヒータ、RINGヒータの駆動電力に設定し、その設定した電力を各ヒータに供給するステップが追加されている。制御例1において、αが比較的大きな場合は、スタートからエンドまでの制御を繰返し行った際に、設定した各ヒータの駆動電力、とくにDBRヒータとRINGヒータとの駆動電力に誤差が累積する場合がある。そこで、本制御例3では、検出した波長がターゲット波長から所定範囲内になったら、制御部20は、ターゲット波長に対応するDBRヒータ、RINGヒータの駆動電力に設定する。これにより、累積誤差の問題を解消することができる。なお、ターゲット波長に対応するDBRヒータ、RINGヒータの駆動電力に設定する際には、記録部22に記録されているテーブルデータを参照して設定してもよい。また、検出した波長とターゲット波長との差分に基づいて、その差分だけレーザ発振波長を変化させるために必要な駆動電力の増加量を算出し、その増加量を現在の駆動電力値に加算することによって設定してもよい。なお、本制御例3では、DBRヒータとRINGヒータとの駆動電力を、ターゲット波長に対応する駆動電力に設定しているが、どちらか一方のヒータに対して行ってもよい。この場合、他のヒータに対しては制御例1のような制御を行ってもよい。
【0083】
(制御例4)
図9は、制御例4の制御フローを示す図である。この制御フローは、制御部20がフィードバック制御を行っている状態において、レーザ発振波長をターゲット波長に変更する指示信号を受けたときにスタートする。尚、この制御フローでは、ターゲット波長を出力するために必要なDBRヒータ、RINGヒータ、Phaseヒータの駆動電力は、制御フロー開始前のDBRヒータ、RINGヒータ、Phaseヒータの駆動電力より大きいものとする。
【0084】
ステップS301において、制御部20は、波長を検出する際に使用するPD比として、2つの波長弁別カーブのうちいずれか一方に基づくPD比を選択する。具体的には、制御部20は、2つのPD比のうち、ターゲット波長においてレーザ発振波長の変化に対して変化が大きい方のPD比を選択する。
【0085】
ステップS302~S308までは、制御例3におけるステップS201~S207と同じである。すなわち、制御部20は、ステップS302において、フィードバック制御を停止する。つづいて、制御部20は、ステップS303において、DBRヒータ、RINGヒータの駆動電力を1ステップ分増加する。より具体的には、DBRヒータ、RINGヒータの駆動電力値を図5における1ステップ分増加させる。当該目標値に対応するDBR電力、RING電力をDBRヒータ、RINGヒータへ供給する。供給を開始した後、各ステップにおいて所定の時間経過を待つ等によって行う。尚、図5における各ステップの駆動電力値は、各々中間波長に対応する値となっている。つづいて、制御部20は、ステップS304において、Phaseヒータの駆動電力を1ステップ分増加する。より具体的には、Phaseヒータの駆動電力値を図5における1ステップ分増加させる。当該目標値に対応するPhase電力をPhaseヒータへ供給する。供給を開始した後、各ステップにおいて所定の時間経過を待つ等によって行う。尚、図5における各ステップの駆動電力値は、各々中間波長に対応する値となっている。尚、ステップS303とステップS304とを同時に行なっても良いし、ステップS304より先にステップS303を実行するようにしてもよい。
【0086】
つづいて、制御部20は、ステップS305において、PD比に基づいて検出した波長がターゲット波長から所定範囲内(ターゲット波長から周波数に換算して±αGHz以内)であるかを判定する。αは所定の定数であり、制御例1におけるαよりも大きい値である。所定範囲内ではない場合(ステップS305、No)は、制御はステップS303に戻る。所定範囲内である場合(ステップS305、Yes)は、制御はステップS306に進む。
【0087】
つづいて、制御部20は、ステップS306において、ターゲット波長に対応するDBRヒータ、RINGヒータの駆動電力に設定し、その設定した電力を各ヒータに供給する。
【0088】
つづいて、制御部20は、ステップS307において、フィードバック制御を開始する。つづいて、制御部20は、ステップS308において、PD比に基づいて検出した波長がターゲット波長から所定範囲内(ターゲット波長から周波数に換算して±βGHz以内、βはαより小さい所定の定数)であるかを判定する。所定範囲内ではない場合(ステップS308、No)は、制御はステップS308を繰り返す。所定範囲内である場合(ステップS308、Yes)は、波長が収束したと判断して、フローチャートの実行が終了する。尚、βはαより大きい所定の定数としてもよい。
【0089】
本制御例4では、2つのPD比のうち、ターゲット波長においてレーザ発振波長の変化に対して変化が大きい方のPD比を選択して、波長検出する波長検出工程を行うので、制御の途中で使用するPD比を切り換えない。その結果、制御部20の制御処理が簡易になる。また、ターゲット波長近辺における波長検出精度を高くできる。
【0090】
(制御例5)
制御例5は、上述した制御例1~4、および後述する制御例6に対して適用できる。本制御例5では、レーザ発振波長を単調変化させる際に、第1反射ミラー122の反射ピークと、第2反射ミラー124の反射ピークとのずれが、第1反射ミラー122の反射ピークと第2反射ミラー124の反射ピークとのうち、反射ピークの半値半幅が狭い方の半値半幅以下になるように、DBRヒータ、RINGヒータへ供給する電力を制御し、レーザ発振波長を反射ピークの半値半幅が狭い方の半値半幅以下のステップで離散的に変化させる。
【0091】
図10は、制御例5における波長の制御の説明図である。まず、現在の第2反射ミラー124(DBR)の反射スペクトルが最上段の状態にあり、現在の第1反射ミラー122(RING)の反射スペクトルが状態1にあるとする。このとき、レーザ発振波長はλである。なお、第1反射ミラー122の反射ピークの半値半幅よりも、第2反射ミラー124の反射ピークの半値半幅の方が狭い。
【0092】
RINGの反射スペクトルが状態2のようにずれた場合、レーザ発振波長はλからほぼ変わらず、シングルモード発振状態が維持される。一方、RINGの反射スペクトルが状態3のように大きくずれた場合、DBRの反射ピークのスペクトルとRINGの反射ピークのスペクトルとの重なりが同じ程度の波長λとλが生じる。この2つの波長でレーザ発振するマルチモード発振状態となる場合があり、好ましくない。
【0093】
したがって、第1反射ミラー122の反射ピークと、第2反射ミラー124の反射ピークとのずれが小さくなるようにDBRヒータ、RINGヒータへ供給する電力を制御することが好ましい。特に、第1反射ミラー122の反射ピークと第2反射ミラー124の反射ピークとのうち、反射ピークの半値半幅が狭い方の半値半幅以下になるように制御する。これにより、マルチモード発振状態の発生を抑制でき、かつ反射ピークのスペクトル同士の重なりをある程度大きく維持できるので、発振したレーザ光の光出力の低下を抑制できる。
【0094】
また、隣接する二つの波長対応制御設定値間の差が、第1反射ミラー122の反射ピークと第2反射ミラー124の反射ピークとのうち、反射ピークの半値半幅が狭い方の半値半幅以下となるようにしてもよい。さらには、第1反射ミラー122の複数の反射ピークと、第2反射ミラー124の複数の反射ピークとのうちの1つの反射ピーク同士が同じ波長で重なった時の合成反射ピークのスペクトルの半値半幅以下になるように制御することが好ましい。さらには、隣接する二つの波長対応制御設定値間の差が、第1反射ミラー122の複数の反射ピークと、第2反射ミラー124の複数の反射ピークと、共振器モードとのうちの1つのピーク同士が同じ波長で重なってレーザ発振している状態でのレーザ光L1の発振スペクトルの半値半幅以下になるように制御することが好ましい。具体的には、例えば中間波長の間隔が周波数に換算して1GHz以内、より好ましくは0.5GHz以内とすることが好ましい。第1反射ミラー122の反射ピークと第2反射ミラー124の反射ピークとのずれ、またはレーザ発振波長を離散的に変化させるステップについても同様である。
【0095】
(制御例6)
制御例1~5では、波長対応制御設定値は、現在のレーザ発振波長からターゲット波長までの間の離散的な中間波長に対応して設定された、DBRヒータ、RINGヒータ、Phaseヒータのそれぞれに供給する駆動電力値である。しかしながら、以下に説明する制御例6では、波長対応制御設定値は、中間波長に対応して設定された、2つの第1電流信号のいずれかの第2電流信号に対する比、すなわち2つのPD比のいずれかである。
【0096】
図11は、制御例6の制御フローを示す図である。この制御フローは、制御部20がフィードバック制御を行っている状態において、レーザ発振波長を所定の波長(ターゲット波長)に変更する指示信号を受けたときにスタートする。
【0097】
まず、ステップS401において、制御部20は、DBRヒータ、RINGヒータの駆動電力を1ステップ分増加する。より具体的には、DBRヒータ、RINGヒータの駆動電力値を図5における1ステップ分増加させる。当該目標値に対応するDBR電力、RING電力をDBRヒータ、RINGヒータへ供給する。これにより、第1反射ミラー122の1つの反射ピークと、第2反射ミラー124の1つの反射ピークとが、制御開始前のレーザ発振波長から、これと最も近い波長の中間波長に移動する。
【0098】
つづいて、ステップS402において、制御部20は、ステップS401において行った1ステップ分の駆動電力増加量に対応する波長変化量を示すPD比ターゲット値を計算する。このPD比ターゲット値とは、制御開始前のレーザ発振波長と最も近い波長の中間波長に対応するPD比の値である。
【0099】
つづいて、ステップS403において、制御部20は、ステップS403において算出したPD比ターゲット値を設定する。これによって、PD比ターゲット値となるように、位相調整用ヒータ126への駆動電力を制御するフィードバック制御が行われる。このフィードバック制御によって、制御開始前のレーザ発振波長と最も近い波長の中間波長において、第1反射ミラー122の1つの反射ピークと、第2反射ミラー124の1つの反射ピークと、共振器モードとが一致する。
【0100】
つづいて、ステップS404において、制御部20はフィードバック制御が安定するまで一定の待ち時間だけ待つ処理を行う。なお、この待ち時間はたとえば各ヒータの応答速度に応じて設定することが好ましいが、待ち時間をゼロとしてもよい。
【0101】
つづいて、制御部20は、ステップS405において、設定したPD比ターゲット値が、ターゲット波長に該当するPD比ターゲット値に合致しているかを判定する。合致していない場合(ステップS405、No)は、制御はステップS401に戻り、ステップS401~S405の処理が繰り返し行われる。合致している場合(ステップS405、Yes)は、波長が収束したと判断して、フローチャートの実行が終了する。
【0102】
本制御例6では、フィードバック制御を継続しつつ、DBRヒータ、RINGヒータの駆動電力をステップ状に変化させ、それに応じてPD比ターゲット値を計算、設定する。これによって、環境温度の変化などの外乱があってもレーザ発振波長を安定に変化させることができる。
【0103】
なお、ターゲット波長は、現在のレーザ発振波長よりも長い場合も短い場合もある。したがって、各ヒータに供給する駆動電力は、ターゲット波長と現在のレーザ発振波長との関係と、駆動電力の増減方向とそれによる反射ピークの波長軸上での移動方向との関係に応じて、その増減量を適宜変化させればよい。
【0104】
なお、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各実施形態の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。たとえば、制御例1~4、6における制御開始前の波長と1ステップ目の中間波長との差や、中間波長の1ステップに相当する波長差や、最後の中間波長とターゲット波長との差は、いずれも制御例5で例示した半値半幅以下であることが好ましい。これによって、波長の変更の途中において、マルチモード発振状態の発生を抑制でき、かつ反射ピークのスペクトル同士の重なりをある程度大きく維持できるので、発振したレーザ光の光出力の低下を抑制できる。このため、FTFを好適に実現できる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、例えば、通信用の波長可変レーザ装置に適用して好適なものである。
【符号の説明】
【0106】
10 波長可変レーザ部
11 ペルチェ素子
12 波長可変レーザ素子
13 半導体光増幅器
14 平面光波回路
15 光検出部
16 温度センサ
17 波長モニタ部
20 制御部
21 演算部
22 記録部
23 入力部
24 出力部
25 電力供給部
100 波長可変光源装置
121 基板
122 第1反射ミラー
123 利得部
124 第2反射ミラー
125 第1反射ミラー用ヒータ
126 位相調整用ヒータ
127 第2反射ミラー用ヒータ
141 光分岐部
142、143、144 光導波路
L0、L1、L2、L3、L4、L5 レーザ光
R レーザ共振器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11