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特許7502230端子付き電線、ワイヤハーネス、及び端子付き電線の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】端子付き電線、ワイヤハーネス、及び端子付き電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20240611BHJP
   H01R 4/62 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01R4/62 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021088920
(22)【出願日】2021-05-27
(65)【公開番号】P2022008122
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2020092670
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020201876
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】河中 裕文
(72)【発明者】
【氏名】竹下 隼矢
(72)【発明者】
【氏名】平岩 徹也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏和
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-018815(JP,A)
【文献】特開2015-032543(JP,A)
【文献】特開平07-192835(JP,A)
【文献】特開2013-049070(JP,A)
【文献】特開平09-223412(JP,A)
【文献】特開2013-125739(JP,A)
【文献】特開2014-164839(JP,A)
【文献】特開2012-038454(JP,A)
【文献】特開2016-192347(JP,A)
【文献】特開平06-084547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
H01R 4/62
H01R 43/048
H01B 5/05
H02G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆導線と端子とが電気的に接続される端子付き電線であって、
前記端子は、前記被覆導線の先端の被覆部から露出する導線がその導線の先端が封止されていない状態で圧着される導線圧着部と、前記被覆導線の前記被覆部が圧着される被覆圧着部と、を具備し、
前記導線圧着部の少なくとも一部は、周方向に閉じた管状であり、
前記導線圧着部と前記被覆圧着部の間の少なくとも一部において、先端側に行くにつれてサイズが小さくなる導線位置決め部が形成され、
前記導線位置決め部において、前記被覆部の先端が接触して、前記導線圧着部への前記導線の挿入代が規制され、
前記導線圧着部は、電線保持部と導通部を有し、前記導線圧着部の先端側を前記電線保持部とし、前記導線圧着部の後端側を前記導通部とし、
前記電線保持部における前記導線の圧縮率が、前記導通部における前記導線の圧縮率よりも小さく、
前記被覆導線は、複数の前記導線と、少なくとも1本の抗張力体とを有し、
前記電線保持部では、少なくとも一部が破断している前記導線と前記抗張力体の両方が保持されており、
前記導通部では、前記導線は破断しておらず、
前記導通部における前記導線の電気抵抗が前記電線保持部における前記導線の電気抵抗よりも低い、
ことを特徴とする端子付き電線。
【請求項2】
前記導線圧着部の内面に凹凸が設けられることを特徴とする請求項1記載の端子付き電線。
【請求項3】
前記抗張力体は繊維を含み、
破断した前記導線の隙間に前記抗張力体の繊維の一部が入り込むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の端子付き電線。
【請求項4】
前記被覆導線の長手方向に垂直な断面において、前記抗張力体が前記被覆導線の略中心に位置し、前記導線が前記抗張力体の外周部に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の端子付き電線。
【請求項5】
前記導線が、前記被覆導線の長手方向に撚られていることを特徴とする請求項4記載の端子付き電線。
【請求項6】
前記導線の少なくとも先端部が、外周側から圧縮されているか、または、前記導線の外周から一括してめっき処理が施されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の端子付き電線。
【請求項7】
前記導線の断面積が0.35sq以下であり、前記端子は、断面積が0.35sq以下の前記導線を圧着可能であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の端子付き電線。
【請求項8】
前記導線の断面積が0.3sq以下であり、前記端子は、断面積が0.3sq以下の前記導線を圧着可能であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の端子付き電線。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の端子付き電線を含む、複数の端子付き電線が一体化されたことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の端子付き電線の製造方法であって、
圧着前において、前記導線位置決め部のサイズは、前記被覆部の内径よりも大きく、前記被覆部の外径よりも小さく、
前記被覆部の先端が前記導線位置決め部に接触するまで前記被覆導線の先端を挿入し、前記導線圧着部を圧着することを特徴とする端子付き電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等に用いられる端子付き電線等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、自動車用ワイヤハーネスは、被覆導線の導体に圧着端子が接続された後に束ねられて、自動車等の信号線などとして配索される。一般的な被覆導線と圧着端子は、被覆導線の先端部の被覆が除去され、露出させた導体と導線圧着部とが圧着され、被覆部が被覆圧着部で圧着されて接続される。自動車用ワイヤハーネスはこの導線圧着部の接続強度と被覆圧着部の接続強度の合算で、圧着端子と被覆導線の接続強度の要求を満足させている。
【0003】
ここで、使用される電線が細くなると、電線を構成する導体だけでは強度を保つのが難しいため、抗張力体入りの電線が検討されている。例えば、引張強度が30N程度である導体からなる電線を使用する場合において、自動車用電線で要求される80Nを超える引張強度を確保する為に、抗張力体入りの電線として、金属製や非金属製の抗張力体の外周に導線が螺旋状に巻かれているものが提案されている。このような電線は、導体を段剥きし、抗張力体を露出させてスリーブに挿入し、抗張力体を鋼製クランプで圧着し、さらに接着剤等の硬化性樹脂により一体化するとともに、導体部分をアルミニウム等のクランプで圧着する方法がある(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭61-046827号公報
【文献】特開平8-237839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、特に、自動車分野においては、CASE等の対応により、ECUやセンサ類等が増加し、これに伴い使用する電線本数の増加が著しい。このような中、ワイヤハーネスの線径増大が課題となる。このため、自動車用電線のさらなる細径電線が求められている。例えば、従来の一般的な0.35sq(sq:mmの意味)以下の細径の電線が求められている。
【0006】
しかし、従来の抗張力体入り電線の接続の際には、段剥き作業や、抗張力体の圧着と導線の圧着のそれぞれの圧着工程が必要となる。このため、部品点数も多く、作業工数も増えて、高コストとなる。特に電線の径が細くなると、段剥き自体が困難になる。このように、従来の方法では、製造工程が複雑で困難となるため、加工コストが増加するという問題がある。
【0007】
ここで、導線圧着部が管状であれば、導線を全周から圧縮することができるため、導線の局所的な変形等が抑制される。しかし、電線の径が細くなることで、電線を管状の圧着部へ挿入する作業も困難となる。また、導線が導線圧着部へ配置されているかどうかを確認するのが困難となる。例えば、管状の圧着部に被覆導線を挿入して圧着する場合において、挿入された導線が端子の外側から見えないため導線の圧着位置決めを目視で行うことが難しい。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、導線の位置決めが容易であり、圧着作業性が良好な端子付き電線等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達するために第1の発明は、被覆導線と端子とが電気的に接続される端子付き電線であって、前記端子は、前記被覆導線の先端の被覆部から露出する導線がその導線の先端が封止されていない状態で圧着される導線圧着部と、前記被覆導線の前記被覆部が圧着される被覆圧着部と、を具備し、前記導線圧着部の少なくとも一部は、周方向に閉じた管状であり、前記導線圧着部と前記被覆圧着部の間の少なくとも一部において、先端側に行くにつれてサイズが小さくなる導線位置決め部が形成され、前記導線位置決め部において、前記被覆部の先端が接触して、前記導線圧着部への前記導線の挿入代が規制され、前記導線圧着部は、電線保持部と導通部を有し、前記導線圧着部の先端側を前記電線保持部とし、前記導線圧着部の後端側を前記導通部とし、前記電線保持部における前記導線の圧縮率が、前記導通部における前記導線の圧縮率よりも小さく、前記被覆導線は、複数の前記導線と、少なくとも1本の抗張力体とを有し、前記電線保持部では、少なくとも一部が破断している前記導線と前記抗張力体の両方が保持されており、前記導通部では、前記導線は破断しておらず、前記導通部における前記導線の電気抵抗が前記電線保持部における前記導線の電気抵抗よりも低い、ことを特徴とする端子付き電線である。
【0010】
前記導線圧着部の内面に凹凸が設けられてもよい。
また、前記抗張力体は繊維を含み、破断した前記導線の隙間に前記抗張力体の繊維の一部が入り込むようにしてもよい。
【0011】
前記被覆導線の長手方向に垂直な断面において、前記抗張力体が前記被覆導線の略中心に位置し、前記導線が前記抗張力体の外周部に配置されていてもよい。さらに、前記導線が、前記被覆導線の長手方向に撚られていてもよい。
【0012】
前記導線の少なくとも先端部が、外周側から圧縮されているか、または、前記導線の外周から一括してめっき処理が施されていてもよい。
【0013】
前記導線の断面積が0.35sq以下であり、前記端子は、断面積が0.35sq以下の前記導線を圧着可能であってもよく、さらに前記導線の断面積が0.3sq以下であり、前記端子は、断面積が0.3sq以下の前記導線を圧着可能であってもよい。
【0014】
第1の発明によれば、導線圧着部の少なくとも一部が管状であるため、導線を、全周から確実に圧着することができる。このため、圧着時に、導線へ局所的な応力(変形)が生じることを抑制することができる。また、導線圧着部と被覆圧着部の間において、先端側に行くにつれてサイズが小さくなる導線位置決め部が形成されるため、被覆導線を圧着部へ配置すると、導線位置決め部において、被覆部の先端が接触して、導線圧着部への前記導線の挿入代が規制される。このため目視などで圧着位置を確認する必要がなく、端子への被覆導線の長手方向の位置決めが容易であり、生産工程で圧着位置が安定するとともに生産性が向上する。
【0015】
また、被覆導線が、少なくとも1本の導線と抗張力体とを有することで、抗張力体によって導線の引張強度を確保することができる。この際、導線圧着部で、導線と抗張力体の両方が保持されていれば、高い接続強度を確保することができる。また、従来のように、抗張力体と導線を別々のクランプで接続する必要がないため、部品点数も少なくて済み、接続作業も容易である。
【0016】
また、被覆導線の長手方向に垂直な断面において、中心の抗張力体の外周部に導線が配置されていれば、確実に導線を圧着することができる。この際、抗張力体の外周部に、導線が長手方向に撚られていてもよい。
【0017】
また、導線の先端部が、外周側から圧縮されているか、または、導線の外周から一括してめっき処理が施されているなど、端末処理部が形成されていることで、導線の先端を管状の導線圧着部へ挿入する際に、導線がばらけてしまうことを抑制することができる。
【0018】
また、導線の断面積が0.35sq以下の細径の被覆導線、さらには導線の断面積が0.3sq以下の細径の被覆導線を用いるような場合には、本発明は特に有効である。
【0019】
第2の発明は、第1の発明にかかる端子付き電線を含む、複数の端子付き電線が一体化されたことを特徴とするワイヤハーネスである。
【0020】
第2の発明によれば、細径の電線が複数束ねられたワイヤハーネスを得ることができる。
【0023】
の発明は、第1の発明にかかる端子付き電線の製造方法であって、圧着前において、前記導線位置決め部のサイズは、前記被覆部の内径よりも大きく、前記被覆部の外径よりも小さく、前記被覆部の先端が前記導線位置決め部に接触するまで前記被覆導線の先端を挿入し、前記導線圧着部を圧着することを特徴とする端子付き電線の製造方法である。
【0024】
の発明によれば、導線を確実に導線圧着部で圧着して、端子付き電線を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、導線の位置決めが容易であり、圧着作業性が良好な端子付き電線等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】端子付き電線10を示す斜視図。
図2】端子付き電線10を示す断面図。
図3】(a)から(c)は、電線保持部7aにおける断面図。
図4】圧着前の端子1と被覆導線11を示す図。
図5】(a)は、導線13の先端部を示す図、(b)は、端末処理前の導線13の先端部を示す図、(c)、(d)は、端末処理部19の形態を示す図。
図6】(a)、(b)は、他の端末処理部19の形態を示す図。
図7】(a)、(b)は、導線13を導線圧着部7へ挿入する工程を示す図。
図8】(a)、(b)は圧着部5の圧着工程を示す図。
図9】圧着前の端子1aと被覆導線11を示す図。
図10】(a)、(b)は、導線13を導線圧着部7へ挿入する工程を示す図。
図11】(a)、(b)は、他の被覆導線11の断面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、端子付き電線10を示す斜視図であり、図2は、端子付き電線10の断面図である。端子付き電線10は、端子1と被覆導線11とが電気的に接続されて構成される。
【0028】
被覆導線11は、例えば、銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である導線13と、導線13を被覆する被覆部15からなる。すなわち、被覆導線11は、被覆部15と、その先端から露出する導線13とを具備する。
【0029】
端子1は、例えば銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。端子1には被覆導線11が接続される。端子1は、端子本体3と圧着部5とがトランジション部4を介して連結されて構成される。
【0030】
端子本体3は、所定の形状の板状素材を、断面が矩形の筒体に形成したものである。端子本体3は、内部に、板状素材を矩形の筒体内に折り込んで形成される弾性接触片を有する。端子本体3は、前端部から雄型端子などが挿入されて接続される。なお、以下の説明では、端子本体3が、雄型端子等の挿入タブ(図示省略)の挿入を許容する雌型端子である例を示すが、本発明において、この端子本体3の細部の形状は特に限定されない。例えば、雌型の端子本体3に代えて雄型端子の挿入タブを設けてもよいし、丸型端子のようなボルト締結部を設けても良い。
【0031】
端子1の圧着部5は、被覆導線11と圧着される部位であり、被覆導線11の先端側に被覆部15から露出する導線13を圧着する導線圧着部7と、被覆導線11の被覆部15を圧着する被覆圧着部9とを有する。すなわち、被覆部15が剥離されて露出する導線13が、導線圧着部7により圧着され、導線13と端子1とが電気的に接続される。また、被覆導線11の被覆部15は、端子1の被覆圧着部9によって圧着される。なお、本実施形態では、導線圧着部7と被覆圧着部9は、周方向に閉じた管状(略円筒状)である。
【0032】
なお、導線圧着部7の内面の一部には、幅方向(長手方向に垂直な方向)に、図示を省略したセレーションが設けられてもよい。このようにセレーションを形成することで、導線13を圧着した際に、導線13の表面の酸化膜を破壊しやすく、また、導線13との接触面積を増加させることができる。
【0033】
被覆圧着部9と導線圧着部7との間の少なくとも一部には、先端側(導線圧着部7側)に行くにつれてサイズ(高さ)が小さくなる導線位置決め部8が形成される。導線位置決め部8の内面において、被覆部15の先端が接触して、導線圧着部7への導線13の挿入代が規制されている。なお、導線13の挿入工程については詳細を後述する。
【0034】
導線圧着部7の先端側(端子本体3側)には、導線13の保持力が相対的に強い電線保持部7aが設けられる。また、導線圧着部7の後端側(被覆圧着部9側)には導線13との導通を得るための導通部7bが形成される。すなわち、導線圧着部7は、電線保持部7aと導通部7bとを有する。
【0035】
電線保持部7aにおける導線13の引張強度(接続強度)は、導通部7bにおける導線13の引張強度(接続強度)よりも強い。例えば、電線保持部7aにおける圧縮率(圧縮後の導線13の断面積/圧縮前の導線13の断面積)は、導通部7bにおける圧縮率よりも小さい。すなわち、電線保持部7aにおける圧縮量は、導通部7bにおける圧縮量よりも大きく、電線保持部7aは、強圧着される。
【0036】
このように、電線保持部7aは強圧着されるため、導線13の少なくとも一部が破断していてもよい。導線13の一部が破断することで、電気抵抗は増大するが、破断した導線13の隙間に抗張力体17の繊維の一部等が入り込むことで、導線13の引き抜き抵抗を高めて、接続強度を確保することができる。一方、導通部7bにおいては、電気抵抗を低く保つため、導線13は破断していない。
【0037】
なお、被覆圧着部9における圧縮率(圧縮後の被覆部15における断面積/圧縮前の被覆部15における断面積)は、導通部7bにおける圧縮率よりも小さくてもよい。すなわち、被覆圧着部9における圧縮量は、導通部7bにおける圧縮量よりも大きくてもよい。この場合でも、被覆部15の厚みによって、被覆圧着部9の外径は、導通部7bの外径よりも大きい。なお、電線保持部7aと導通部7bとをスリット等で分離させてもよい。また、電線保持部7aと導通部7bとに分けずに、導線圧着部7を一定の圧縮率で圧着してもよい。
【0038】
図3(a)は、電線保持部7aにおける断面を示す図である。図3(a)に示す例では、導線13が7本の素線からなる。電線保持部7aでは、導線13が略円形に圧縮されて圧着される。なお、電線保持部7aの圧着後の形態は、必ずしも略円形でなくてもよいが、導通部7bの圧着後の断面形状は略円形であることが望ましい。
【0039】
なお、導線13の素線数は特に限定されない。例えば、図3(b)に示すように、素線は16本であってもよい。なお、素線同士は互いに撚り合わせられていることが望ましい。
【0040】
また、被覆導線11は、少なくとも1本の導線13と、抗張力体とが被覆部15で被覆されていてもよい。抗張力体は、引張加重に対して張力を受ける部材である。例えば、図3(c)に示すように、被覆導線11の長手方向に垂直な断面において、少なくとも1本の抗張力体17が被覆導線11の略中心に位置し、複数の導線13が抗張力体17の外周部に配置されていてもよい。この際、抗張力体17の外周に配置されるそれぞれの導線13(素線)が、同一断面積の同一形状の導線13(素線)であってもよい。さらに、抗張力体17の外周部に、導線13が、被覆導線11の長手方向に螺旋状に撚られていてもよい。この場合には、電線保持部7a及び導通部7bでは、導線13と抗張力体17の両方が圧着されて保持される。
【0041】
なお、抗張力体17の配置は、図3(c)に示す例には限られない。例えば、導線13と抗張力体17とを撚り合わせるように配置してもよい。また、抗張力体17を導体で被覆した導線13を複数本撚り合わせてもよい。また、中央の抗張力体17の外周に被覆するように導体を配置してもよい。すなわち、抗張力体入りの被覆導線11の場合には、少なくとも1本の導線と少なくとも1本の抗張力体を有すれば、その断面形態は特に限定されない。なお、抗張力体17は、1本(一体)の抗張力線であってもよく、複数の素線からなってもよい。
【0042】
ここで、導線13の断面積(素線の断面積の総計)は、0.35sq以下であることが望ましく、この場合には、端子1は、断面積が0.35sq以下の導線13を圧着可能であることが望ましい。さらには、導線13の断面積(素線の断面積の総計)は、0.3sq以下であることが望ましく、この場合には、端子1は、断面積が0.3sq以下の導線13を圧着可能であることが望ましい。また、例えば導線13が抗張力体17とともに用いられる場合には、導線13の断面積は0.05sq以下であってもよい。導線13の断面積が小さいほど、本実施形態の効果が大きい。
【0043】
なお、抗張力体17は、鋼線などの金属線であってもよく、樹脂や繊維強化樹脂であってもよい。また、前述したように、抗張力体17としては、単線であってもよく、アラミド繊維などの複数の繊維を束ねたものであってもよい。このような抗張力体17を用いることで、例えば、導線13の断面積は0.05sq以下であっても、電線保持部7aにおける導線の引張強度として、50N以上を確保することができる。
【0044】
次に、端子付き電線10の製造方法について説明する。図4は、圧着前の端子1と被覆導線11を示す斜視図である。前述したように、端子1は、端子本体3と圧着部5とを有する。圧着部5は、周方向に閉じた管状である。導線圧着部7は、例えば、板部材を丸めて端部同士を突き合わせて、長手方向に溶接やロウ付けによって接合してもよく、管状部材を展開して端子1を形成してもよい。
【0045】
まず、前述したように、被覆導線11の先端部の被覆部15を剥離して、先端部の導線13を露出する。次に、図5(a)に示すように、端子1の圧着部5へ挿入する前に、導線13の先端部に端末処理部19を形成してもよい。端末処理部19は、導線13の各素線がばらけないように一体化する処理部である。
【0046】
図5(b)は、端末処理前における導線13の先端部の形態を示す図である。本実施形態では、被覆導線11の先端から見た際に、抗張力体17が略中央に配置され、その外周に導線13が配置される。導線13は複数の素線からなる。なお、本実施形態では、中央に抗張力体17を有する場合について説明するが他の被覆導線でも同様である。
【0047】
このような場合において、図5(c)に示すように、導線13の少なくとも先端部を、外周側から圧縮することで、端末処理部19を形成することができる。このように、導線13の先端部が外周側から圧縮されることで、素線がばらけることが抑制され、管状の圧着部5への挿入が容易である。
【0048】
また、図5(d)に示すように、導線13の少なくとも先端部に、一括してめき処理を施して、めっき層21によって端末処理部19を形成してもよい。このように、導線13の先端部に外周から一括してめっき処理が施されていることで、素線がばらけることが抑制され、管状の圧着部5への挿入が容易である。
【0049】
なお、導線13の外周から一括してめっき処理を施す際に、めっき方法によっては高温になる場合がある。このようなめっき方法によって、導線13を撚った後に一括めっきを行うと、抗張力体17が熱により劣化して、引張強度が低下する恐れがある。
【0050】
このような場合には、図6(a)に示すように、それぞれの導体ごとにめっき層21を形成してから抗張力体17の外周に撚り合わせてもよい。また、図6(b)に示すように、それぞれの導体ごとにめっき層21を形成し、さらに、複数の導体の先端部に外周から一括してめっき処理を施してもよい。この場合、導体ごとのめっきと、一括めっきの種類を変えてもよい。一括めっきを行うことで、導体のばらけを抑制することが可能であるが、導体を束ねて一括してめっき処理を行うと、導体の形状等の影響によって、部分的にめっきの厚い部分や薄い部分が生じてしまう恐れがある。これに対し、事前に導体ごとに下地めっき処置を行うことで、この影響を小さくして、略均一な一括めっきが可能となる。
【0051】
なお、端末処理部19は、圧縮やめっきによる方法には限られず、例えば、導線13の先端を半田処理や溶接処理によって素線のばらけを抑制してもよい。また、外周からの圧縮と一括めっきなどの複数の端末処理を併用してもよい。なお、以下の説明では、端末処理部19の図示を省略する。
【0052】
図7(a)は、圧着部5の後端から被覆導線11を挿入する工程を示す縦方向の断面図である。被覆圧着部9の内径は、被覆部15の外径よりも大きい。また、被覆圧着部9は、導線圧着部7よりも高さが高い。すなわち、被覆圧着部9と導線圧着部7との間には、導線圧着部7に向かって高さが徐々に低くなる導線位置決め部8が形成される。なお、導線位置決め部8は、高さ方向ではなく、幅方向に形成されてもよく、その両方に形成されてもよい。すなわち、導線位置決め部8は、被覆圧着部9に対して、先端側に行くにつれてサイズが小さくなるように形成される。
【0053】
この状態から、図7(b)に示すように、さらに被覆導線11を圧着部5へ挿入すると、被覆部15の先端が、導線位置決め部8に接触する。ここで、圧着前の導線圧着部7の内径は、導線13の外径よりも大きく、被覆部15の外径よりも小さい。すなわち、圧着前において、導線位置決め部8のサイズは、被覆部15の内径(導線13の外径)よりも大きく、被覆部15の外径よりも小さい。このため、被覆部15の先端が、導線位置決め部8の内面に接触する。
【0054】
このように、被覆部15の先端が導線位置決め部8に接触するまで被覆導線11の先端を圧着部5へ挿入すると、導線圧着部7の内部には導線13の露出部が位置し、被覆圧着部9の内部には被覆部15が位置する。この際、導線13の先端が導線圧着部7の先端からはみ出してもよい。このように、導線圧着部7への導線13の挿入代を規制し、導線13を再現性良く確実に導線圧着部7の所定位置へ配置することができる。
【0055】
次に、被覆導線11を圧着部5に配置した端子1を刃型にセットする。図8(a)は、端子付き電線10を製造するための端子圧着刃型の圧着前における上刃型31a、下刃型31b等を示す断面図、図8(b)は、圧着中の圧着部5を示す断面図である。上刃型31a、下刃型31bは、長手方向に延びる略半円柱状の空洞を有する。また、上刃型31aは、管状の被覆圧着部9に対応する形状の被覆圧着刃型34と、管状の導線圧着部7に対応する導線圧着刃型32a、32bとを備える。すなわち、上刃型31a、下刃型31bは、圧着後の圧着部5が、略円形断面となるように形成される。
【0056】
なお、導線圧着刃型32aは、電線保持部7aに対応する刃型であり、導線圧着刃型32bは、導通部7bに対応する刃型である。すなわち、導線圧着刃型32aの径は、導線圧着刃型32bの径よりも小さく、電線保持部7aに対応する部位の上刃型31aと下刃型31bの間隔が、導通部7bに対応する部位の上刃型31aと下刃型31bの間隔よりも狭い。
【0057】
なお、導通部7bは、被覆導線11と端子1との導通性を確保するため、電線保持部7aと比較して相対的に長さが長くてもよい。一方、電線保持部7aは、長さが短くても、確実に導線13もしくは抗張力体17と端子1とが適切な圧力で密着していれば、両者の強度は十分高くなるため、電線保持部7aは、導通部7bと比較して相対的に長さが短くてもよい。
【0058】
図8(b)に示すように、上刃型31aと下刃型31bを噛み合わせて、圧着部5を圧縮すると、導線圧着部7が導線13に圧着され、被覆圧着部9は、被覆部15に圧着される。この際、電線保持部7aが最も径が小さくなり、次いで導通部7bの径が小さく、被覆圧着部9の径が最も大きくなる。以上により、端子付き電線10を得ることができる。さらに、得られた端子付き電線10を含む、複数の端子付き電線が一体化されたワイヤハーネスを得ることができる。
【0059】
なお、前述したように、電線保持部7aの圧縮率は、導通部7bの圧縮率よりも小さく、被覆圧着部9の圧縮率は、導通部7bの圧縮率よりも小さい。ここで、圧着工程前の被覆部15における断面積(被覆圧着部9の外周面に対する内側の全断面積)をA0とし、上刃型31aと下刃型31bによって圧縮された後の被覆圧着部9の内部の断面積をA2とすると、被覆圧着部9の圧縮率=A2/A0(%)である。
【0060】
同様に、圧着工程前の導線13における断面積(抗張力体が含まれる場合には、抗張力体を含む導線13の全断面積)をA1とし、上刃型31aと下刃型31bによって圧縮された後の導通部7b及び電線保持部7aの内部の断面積(抗張力体が含まれる場合には、抗張力体を含む導線13の全断面積)をそれぞれA3、A4とすると、電線保持部7aの圧縮率=A4/A1(%)であり、導通部7bの圧縮率=A3/A1(%)である。なお、導線圧着部7の全体を一定の条件で圧縮する場合には、導線圧着刃型32a、32bの一方のみでよい。
【0061】
なお、抗張力体17は、導線13と比較して強度が高く変形しにくいため、圧縮時には、抗張力体17の断面積は大きく低下せず、主に導線13の変形(断面積減少)が進行する。
【0062】
ここで、抗張力体17が、複数の素線で形成される場合には、各素線が導線13を構成する導体と比較して細かく、抗張力体素線と、抗張力体素線同士の間の隙間を明確に区別することが困難である。このため、圧着前における抗張力体17の断面積としては、導線13で囲まれた抗張力体の領域の面積とする。この場合、圧縮初期には、抗張力体素線の隙間が減少するように抗張力体が変形しながら導線13の変形が進行し、圧縮後期では、抗張力体の断面積の減少はほとんど生じず、導線13の断面減少が主に進行する。このため、圧着後における導線13の圧縮率は、抗張力体17が配置される領域の見かけの圧縮率以下である。なお、圧縮後の導線13と抗張力体17の面積比率は、電線全体の圧縮率により変化する。
【0063】
また、圧縮時における抗張力体素線の移動によって、抗張力体17の外形が凹凸形状となることで、導線13と抗張力体17の接触面積が増え、摩擦力が大きくなる。このため、引張に対して導線13から抗張力体17へ力が伝わりやすくなり、導線13に引張力が付与された際の強度の上昇が見込める。
【0064】
なお、抗張力体17は、導線13と比較して変形量が少ないため、断面積の減少による破断は生じにくい。特に、導線圧着部7が管状であるため、導線13が全周から圧縮され、抗張力体17と導線圧着部7との間に導線13が配置され、抗張力体17と導線圧着部7が接触しないため、抗張力体17が損傷することもない。
【0065】
なお、圧縮時に、抗張力体17を構成する素線の一部が、導線13間に入り込み、抗張力体17の一部が導線圧着部7と接触する場合がある。前述したように、抗張力体17と導線圧着部7は接触しないことが望ましいが、抗張力体17の一部が導線圧着部7とわずかに接触してもよい。例えば、任意の断面において、抗張力体17の総外周長の内、導線圧着部7と接触している抗張力体17の周長が30%以下であれば、抗張力体17の損傷抑制効果を得ることができる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によれば、端子1に導線位置決め部8が設けられるため、圧着部5へ被覆導線11を挿入した際に、導線位置決め部8に被覆部15の先端が突き当たることで、自動的に導線13が圧着するのに相応しい位置に配置される。このため、目視などで、導線13の配置や、圧着位置を確認する必要がなく、導線13を再現性良く確実に導線圧着部7の所定位置へ配置することができる。また、導線圧着部7が管状であるため、導線13の全周360°から確実に圧着することができる。
【0067】
ここで、抗張力体17の周囲に導線13が配置された被覆導線11の導線圧着部7においては、圧着された際に、導線圧着部7の内部には径方向に圧縮応力が作用する。この圧縮応力が小さい場合には、導線13と抗張力体17との接触面における摩擦力が、端子1と導線13との接触面における摩擦力よりも小さくなる。このために、端子付き電線10に引張荷重を与えた場合に、導線13に荷重が集中し、導線13が破断しやすくなる。
【0068】
一方、導線13と抗張力体17との接触面においては滑りが生じ、抗張力体17に圧縮応力が作用せず、抗張力体17は切断することなく抜ける現象が生じ、抗張力体17による引張強度が十分に発現しないおそれがある。上記のような現象を防ぎ、圧着により十分な圧縮応力を得るために、導線13と抗張力体17との間の摩擦力を増大させても良い。例えば、導線圧着部7の内面に凹凸を設けることで、部分的に抗張力体17への圧縮応力を高め、引き抜けを防止することができる。
【0069】
さらには、導線圧着部7が筒状であり、接合部にロウ付け部分がある場合には、硬度の低いロウ付け部は、導線13への圧縮応力が小さくなるため、抗張力体17が引き抜け易くなる。このため、ロウ付け部を除去するか、あるいは、ロウ付け部分がなく、導線圧着部7に形成される接合部の硬さを、導線圧着部7における材料の硬さと同等とすることが望ましい。
【0070】
また、導線13の先端に端末処理部19を形成することで、導線13を導線圧着部7へ挿入する際に、導線13がばらけることを抑制することができる。
【0071】
また、導線圧着部7が、電線保持部7aと導通部7bとを有するため、接続強度を確保するのに適した圧縮率で電線保持部7aを圧着し、導通を確保するのに適した圧縮率で導通部7bを圧着することができる。すなわち、電線保持部7aと導通部7bのそれぞれの圧縮率(圧縮量)を異なるようにすることができるため、各部を目的に適した圧縮率で圧着を行うことができる。
【0072】
より詳細には、導線圧着部7の先端部側(端子本体3側)を電線保持部7aとすることで、より強い圧着を行い、高い接続強度を確保することができる。この際、導線13の一部が破断してもよい。一方、導通部7bは、導線圧着部7の後端部側(被覆部15側)に配置されるため、仮に電線保持部7aにおいて、導線13の一部が破断しても、被覆導線11と端子1との導通を確保することができる。
【0073】
また、通常の端子付き電線の圧着と同様の作業で圧着作業を行うことができるため、作業が容易である。特に、抗張力体17を含む被覆導線11にも適用可能であり、この場合、細径の被覆導線11であっても、高い接続強度を確保することができる。
【0074】
この際、抗張力体17と導線13の両方が一括して電線保持部7aで圧着されるため、抗張力体17と導線13とを別々に圧着する必要がなく、圧着作業も容易である。なお、抗張力体17を含む被覆導線11の場合において、断面の略中央に抗張力体17を配置し、外周に導線13を配置することで、圧着時に端子1と導線13とを確実に圧着し、端子1と導線13とを接触させることができる。
【0075】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図9は、第2の実施形態にかかる端子1aの被覆導線11が圧着される前の斜視図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同様の機能を奏する構成については、図1図8と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0076】
端子1aは、端子1と略同様の構成であるが、圧着部5の形態が異なる。端子1aは、導線圧着部7が管状であり、被覆圧着部9がオープンバレル型である点で異なる。このように、被覆圧着部9は管状ではなくオープンバレル型であってもよい。
【0077】
端子1aでは、被覆圧着部9と導線圧着部7の間に、導線圧着部7側に向かって幅が徐々に狭くなるように導線位置決め部8が形成される。図10(a)は、導線13を被覆圧着部9へ配置した状態を示す図である。この際、被覆圧着部9がオープンバレル型であるため、被覆導線11の導線13を被覆圧着部9の上方から配置することができる。導線13を被覆圧着部9へ配置することで、導線13の位置決め(端子1aの幅方向の位置決め)が可能である。
【0078】
この状態から、図10(b)に示すように、被覆導線11を端子1aの導線圧着部7側へスライドさせることで、導線13を管状の導線圧着部7へ容易に挿入することができる。このように、導線圧着部7に対して、導線13の位置決めが可能であるため、導線圧着部7の圧着前の内径を小さく(導線13の外径に近く)しても、容易に導線13を導線圧着部へ挿入することができる。このようにすることで、端子1aを小型化することができる。
【0079】
また、被覆部15の幅が、導線位置決め部8よりも大きいため、導線13を導線圧着部7へスライドさせて挿入すると、被覆部15の先端が、導線位置決め部8へ突き当たる。このため、導線13の長手方向の位置決めも容易である。この状態で圧着を行うことで、端子付き電線を得ることができる。
【0080】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、被覆圧着部9がオープンバレル型であるため、被覆導線11を圧着部5へ配置するのが容易である。また、被覆圧着部9において被覆導線11の導線圧着部7に対する位置決めが容易であるため、導線圧着部7が管状であっても容易に導線13を導線圧着部7へ挿入することができる。
【0081】
なお、導線圧着部7が、電線保持部7aと導通部7bとに分かれている場合には、導通部7bもオープンバレル型として、電線保持部7aのみを管状としてもよい。このように、導線圧着部7の少なくとも一部が、周方向に閉じた管状であれば、他の部位がオープンバレル型であってもよい。
【実施例
【0082】
各種の端子付き電線をそれぞれ複数個作成し、得られた端子付き電線の導線と導線圧着部との位置関係や挿入作業性等を評価した。
【0083】
(実施例1)
図9に示した端子1aを用いて端子付き電線を作成した。被覆導線としては、図3(b)に示すような断面形状を有し、軟銅線1.25sq/16心のものを用いた。
【0084】
(実施例2)
実施例1に対して、被覆導線として、図3(a)に示すような断面形状を有し、軟銅線0.3sq/7芯のものを用いた。
【0085】
(実施例3)
実施例1に対して、被覆導線として、図3(a)に示すような断面形状を有し、軟銅線0.35sq/7芯のものを用いた。
【0086】
(実施例4)
実施例1に対して、被覆導線として、図3(a)に示すような断面形状を有し、軟銅線0.13sq/7芯のものを用いた。
【0087】
(実施例5)
実施例1に対して、被覆導線として、図3(c)に示すような断面形状を有し、抗張力体の周囲に、断面円形で断面積が同じ軟銅線が12本配置されて、導線と抗張力体の合計の断面積が0.05sqとされたものを用いた。
【0088】
(実施例6)
実施例5に対して、被覆導線の先端部を図5(d)に示すように、一括してめっき層を形成したものを用いた。
【0089】
(実施例7)
図1に示した端子1を用いて端子付き電線を作成した。被覆導線としては、図3(c)に示すような断面形状を有し、抗張力体の周囲に、断面円形で断面積が同じ軟銅線が12本配置されて、導線と抗張力体の合計の断面積が0.05sqとされたものを用いた。
【0090】
(実施例8)
図9に示した端子1aを用いて端子付き電線を作成した。被覆導線としては、図3(a)に示すような断面形状を有し、軟銅線0.13sq/7芯のものを用いた。
【0091】
(実施例9)
実施例8に対して、被覆導線として、図3(c)に示すような断面形状を有し、抗張力体の周囲に、断面円形で断面積が同じ軟銅線が8本配置されて、導線と抗張力体の合計の断面積が0.13sqとされたものを用いた。
【0092】
(実施例10)
実施例8に対して、被覆導線として、図3(a)に示すような断面形状を有し、軟銅線0.08sq/7芯のものを用いた。
【0093】
(実施例11)
実施例8に対して、被覆導線として、図3(c)に示すような断面形状を有し、抗張力体の周囲に、断面円形で断面積が同じ軟銅線が8本配置されて、導線と抗張力体の合計の断面積が0.08sqとされたものを用いた。
【0094】
(実施例12)
実施例11に対して、被覆導線の先端部を図5(d)に示すように、一括してめっき層を形成したものを用いた。
【0095】
(実施例13)
図1に示した端子1を用いて端子付き電線を作成した。被覆導線としては、図3(c)に示すような断面形状を有し、抗張力体の周囲に、断面円形で断面積が同じ軟銅線が8本配置されて、導線と抗張力体の合計の断面積が0.13sqとされたものを用いた。
【0096】
(実施例14)
図1に示した端子1を用いて端子付き電線を作成した。被覆導線としては、図3(c)に示すような断面形状を有し、抗張力体の周囲に、断面円形で断面積が同じ軟銅線が8本配置されて、導線と抗張力体の合計の断面積が0.08sqとされたものを用いた。
【0097】
(比較例1)
圧着部として、導線位置決め部を有しない一定の内径の管状の端子を用い、被覆導線としては、図3(b)に示すような断面形状を有し、軟銅線1.25sq/16心のものを用いた。
【0098】
(比較例2)
比較例1に対して、被覆導線として、図3(a)に示すような断面形状を有し、軟銅線0.3sq/7芯のものを用いた。
【0099】
(比較例3)
比較例1に対して、被覆導線として、図3(a)に示すような断面形状を有し、軟銅線0.13sq/7芯のものを用いた。
【0100】
(比較例4)
比較例1に対して、被覆導線として、図3(c)に示すような断面形状を有し、抗張力体の周囲に、断面円形で断面積が同じ軟銅線が12本配置されて、導線と抗張力体の合計の断面積が0.05sqとされたものを用いた。
【0101】
(比較例5)
比較例4に対して、被覆導線の先端部を図5(d)に示すように、一括してめっき層を形成したものを用いた。
【0102】
実施例1~14は、いずれも、導線を導線圧着部に対して適切な位置に配置して圧着することができた。一方、比較例1~5は、導線の位置合わせが難しく、位置決めに時間を要した。また、導線の配置にばらつきが大きく、導線圧着部に対する導線の位置ばらつきが大きくなった。
【0103】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0104】
例えば、上述した説明では、抗張力体17の外周に、導線13が1層配置された例を示したが、導線13の配置はこれには限定されない。導線13が抗張力体17の外周側に配置されていれば、図16(a)に示すように、抗張力体17の周囲に2層で導線13が配置されてもよく、図16(b)に示すように、抗張力体17の周囲に3層で導線13が配置されてもよい。また、導線13の本数は、導線13自体の導電性や強度などの観点から、抗張力体17に接する層では3本以上あればよく、20本以下が好ましい。例えば、図5図6図11等に図示されるように12本でも14本でもよく、6本や8本などであってもよい。
【符号の説明】
【0105】
1、1a………端子
3………端子本体
4………トランジション部
5………圧着部
7………導線圧着部
7a………電線保持部
7b………導通部
8………導線位置決め部
9………被覆圧着部
10……端子付き電線
11………被覆導線
13………導線
15………被覆部
17………抗張力体
19………端末処理部
21………めっき層
31a………上刃型
31b………下刃型
32a、32b………導線圧着刃型
34………被覆圧着刃型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11