(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】樹脂発泡体への接合対象物の接合構造及び接続方法
(51)【国際特許分類】
F16B 25/00 20060101AFI20240611BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20240611BHJP
B25B 21/00 20060101ALI20240611BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20240611BHJP
E04F 15/02 20060101ALI20240611BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20240611BHJP
B32B 37/00 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
F16B25/00 Z
F16B5/02 E
B25B21/00 H
B25B21/00 540Z
E04F13/08 101B
E04F13/08 101N
E04F15/02 101A
B32B5/18
B32B37/00
(21)【出願番号】P 2021112108
(22)【出願日】2021-07-06
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】土生 晃嗣
(72)【発明者】
【氏名】秀島 有
(72)【発明者】
【氏名】小澤 英史
(72)【発明者】
【氏名】松田 優
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-209006(JP,A)
【文献】特開2017-079987(JP,A)
【文献】特開2005-074306(JP,A)
【文献】登録実用新案第3028921(JP,U)
【文献】特開2016-211137(JP,A)
【文献】国際公開第2013/056802(WO,A1)
【文献】特開2006-034854(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0118332(US,A1)
【文献】特開2019-158008(JP,A)
【文献】特開昭62-024010(JP,A)
【文献】特開2017-072366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 25/00
F16B 5/02
B25B 21/00
E04F 13/08
E04F 15/02
B32B 5/18
B32B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂発泡体への接合対象物の接合構造であって、
前記樹脂発泡体の表面に接合対象物が設置され、前記接合対象物を貫通する固定部材によって、前記接合対象物が前記樹脂発泡体へ固定されており、
前記固定部材は、ねじが形成された軸部と、前記軸部の一方の端部に形成された頭部とを有し、
前記ねじの最大外径が、前記頭部の外径以上であり、
前記軸部の他方の端部近傍には、前記ねじが形成されず、かつ、軸方向に略垂直な断面が縮径されている縮径部が形成されており、当該縮径部の端部の形態が、前記軸部の軸方向に略垂直な平面又は曲面となっていて、
前記ねじが形成されている範囲の前記軸部には径が同一の部分が存在し、径が同一の部分の径よりも前記縮径部の径が小さいことを特徴とする樹脂発泡体への接合対象物の接合構造。
【請求項2】
前記縮径部は、少なくとも一方の方向に対して縮径した偏平形状となっていることを特徴とする請求項
1記載の樹脂発泡体への接合対象物の接合構造。
【請求項3】
前記軸部の、径が同一となっている部分に形成されたねじの外径が全て等しいことを特徴とする請求項1
または請求項
2記載の樹脂発泡体への接合対象物の接合構造。
【請求項4】
前記接合対象物が配置される前記樹脂発泡体の表面は、スキン層が形成されておらず、気泡が露出していることを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれかに記載の樹脂発泡体への接合対象物の接合構造。
【請求項5】
樹脂発泡体への接合対象物の接合方法であって、
筒部と、前記筒部の一端側にフランジ部を有する治具と、
ねじが形成された軸部と、前記軸部の一方の端部に形成された頭部とを有し、前記ねじの最大外径が、前記頭部の外径以上であり、前記軸部の他方の端部の形態が、前記軸部の軸方向に略垂直な平面又は曲面で形成されている固定部材と、を用い、
前記筒部に工具を挿入し、前記治具の前記フランジ部側から前記工具の先端を露出させた状態で、前記治具を前記工具に装着し、
樹脂発泡体の表面に、予め孔が形成されているシート状部材の面ファスナである接合対象物を配置した状態で、前記フランジ部が前記接合対象物と接触するまで、前記工具で、前記固定部材を前記樹脂発泡体へねじ込むことを特徴とする樹脂発泡体への接合対象物の接合方法。
【請求項6】
樹脂発泡体への接合対象物の接合方法であって、
筒部と、前記筒部の一端側にフランジ部を有する治具と、
ねじが形成された軸部と、前記軸部の一方の端部に形成された頭部とを有し、前記ねじの最大外径が、前記頭部の外径以上である固定部材と、を用い、
前記筒部に工具を挿入し、前記治具の前記フランジ部側から前記工具の先端を露出させた状態で、前記治具を前記工具に装着し、
樹脂発泡体の表面に接合対象物を配置した状態で、前記フランジ部が前記接合対象物と接触するまで、前記工具で、前記固定部材を前記樹脂発泡体へねじ込み、
前記固定部材は、
前記軸部の他方の端部近傍には、前記ねじが形成されず、かつ、軸方向に略垂直な断面が縮径されている縮径部が形成されており、当該縮径部の端部の形態が、前記軸部の軸方向に略垂直な平面又は曲面となっていて、
前記ねじが形成されている範囲の前記軸部には径が同一の部分が存在し、径が同一の部分の径よりも前記縮径部の径が小さいことを特徴とする樹脂発泡体への接合対象物の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂発泡体の表面に接合対象物が接合された接続構造及びその接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂発泡体は、柔軟性や軽量性を活かして、例えば、緩衝材、建材、断熱材、消音材等各種産業用品等の素材として使用されている。また、さらに、樹脂発泡体を、災害用マット材や、パーテーション材又は壁面パネル材等の利用方法が提案されている(特許文献)1。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図8は、特許文献1で開示されている、樹脂発泡体100を床材やパーテーション材として利用した災害時等における避難所区画を示す図である。樹脂発泡体100からなるクッション材は、一方の面に、山部および谷部が周期的に形成される。このようにすることで、所定の厚みを確保することができるとともに、保管時には、山部と谷部とを重ね合わせることができるため、コンパクトに保管することができる。なお、樹脂発泡体100としては、所定以上の厚みを有すれば、両面が平坦であってもよい。
【0005】
このような避難所区画を組み立てる際には、複数の樹脂発泡体100同士を連結する必要がある。例えば、特許文献1では、面ファスナによって、樹脂発泡体100同士を接続する方法が提案されている。
【0006】
図9は、
図8のX部の拡大図であり、樹脂発泡体100aと樹脂発泡体100bとを連結した状態を示す図である。一方の樹脂発泡体100aの端部近傍の背面側には、面ファスナ101bが配置される。また、他方の樹脂発泡体100bの一方の側端面には、面ファスナ101bが配置される。このようにすることで、樹脂発泡体100同士(100a、100b)を例えばコの字状に連結することができる。
【0007】
また、面ファスナ101bを樹脂発泡体100aの側端面にも配置しておけば、樹脂発泡体100a、100bを一列に連結することもできる。さらに、両側端面に面ファスナ101a、101bを配置しておけば、複数の樹脂発泡体を積層した状態で、他のテープ状の面ファスナ等によって固定することもできる。
【0008】
このように、面ファスナを使用することで、避難所区画を組み立てる際には、自由に樹脂発泡体同士を連結することができるとともに、使用後は、容易に樹脂発泡体同士をばらすことができる。また、面ファスナによって、例えば積層させた状態の樹脂発泡体を接合することで、安定して樹脂発泡体を保管することもできる。
【0009】
このように、樹脂発泡体に面ファスナのような部材を固定する方法としては、例えば、両面テープを用いる方法がある。しかし、樹脂発泡体の表面は凹凸があるため剥がれやすい。このため、面ファスナ同士を接合した後に剥がす際、面ファスナ同士が剥がれずに、両面テープが剥がれてしまうことがある。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、クッション材等の樹脂発泡体に対して、接合対象物を容易に接合することが可能な樹脂発泡体への接合対象物の接合構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達するために第1の発明は、樹脂発泡体への接合対象物の接合構造であって、前記樹脂発泡体の表面に接合対象物が設置され、前記接合対象物を貫通する固定部材によって、前記接合対象物が前記樹脂発泡体へ固定されており、前記固定部材は、ねじが形成された軸部と、前記軸部の一方の端部に形成された頭部とを有し、前記ねじの最大外径が、前記頭部の外径以上であり、前記軸部の他方の端部近傍には、前記ねじが形成されず、かつ、軸方向に略垂直な断面が縮径されている縮径部が形成されており、当該縮径部の端部の形態が、前記軸部の軸方向に略垂直な平面又は曲面となっていて、前記ねじが形成されている範囲の前記軸部には径が同一の部分が存在し、径が同一の部分の径よりも前記縮径部の径が小さいことを特徴とする樹脂発泡体への接合対象物の接合構造である。
【0012】
第1の発明において、前記縮径部は、少なくとも一方の方向に対して縮径した偏平形状となっていてもよい。
【0013】
第1の発明において、前記軸部の、径が同一となっている部分に形成されたねじの外径が全て等しくてもよい。
【0014】
前記接合対象物が配置される前記樹脂発泡体の表面は、スキン層が形成されておらず、気泡が露出していてもよい。
【0015】
前記ねじの外径が、前記頭部側から先端部に行くにつれて、徐々に小さくなってもよい。
【0016】
第1の発明によれば、ねじが形成された固定部材を用いて接合対象物を樹脂発泡体に固定するため、接合対象物が樹脂発泡体から剥がれることを抑制することができる。この際、一般的なねじ部材と異なり、頭部の径と略同等の径のねじによって、柔軟な樹脂発泡体に対しても、より確実にねじを食い込ませて固定することができるため、固定部材の抜けを抑制することができる。
【0017】
また、軸部の他方の端部の形態が、軸部の軸方向に略垂直な平面又は曲面で形成されていれば、先端がとがっていないため、樹脂発泡体が潰れてしまっても、固定部材の先端が樹脂発泡体の外面につきだしにくく、また、仮に突き出しても、尖っていないためより安全である。
【0018】
また、軸部の他方の端部近傍にねじを形成せず、先端部近傍の軸方向に略垂直な断面を縮径させることで、樹脂発泡体へのねじ込みが容易である。
【0019】
この際、接合対象物が配置される前記樹脂発泡体の表面には、スキン層が形成されておらず、気泡が露出しているようにすることで、固定部材をより容易に樹脂発泡体へねじ込むことが容易である。
【0020】
例えば、樹脂発泡体を製造すると、表面には気泡がほとんどないか、又は内部と比較して気泡が少ない(小さい)スキン層が形成される。このようなスキン層に対しても、固定部材をねじ込むことは可能であるが、樹脂発泡体の切断面であれば、内部の気泡が表面に露出するため、気泡をきっかけとして固定部材をより容易にねじ込むことができる。
【0021】
また、ねじの径を先端側に向かって徐々に小さくなるようにすることで、樹脂発泡体へ、よりねじ込みやすくなる。
【0022】
第2の発明は、樹脂発泡体への接合対象物の接合方法であって、筒部と、前記筒部の一端側にフランジ部を有する治具と、ねじが形成された軸部と、前記軸部の一方の端部に形成された頭部とを有し、前記ねじの最大外径が、前記頭部の外径以上であり、前記軸部の他方の端部の形態が、前記軸部の軸方向に略垂直な平面又は曲面で形成されている固定部材と、を用い、前記筒部に工具を挿入し、前記治具の前記フランジ部側から前記工具の先端を露出させた状態で、前記治具を前記工具に装着し、樹脂発泡体の表面に、予め孔が形成されているシート状部材の面ファスナである接合対象物を配置した状態で、前記フランジ部が前記接合対象物と接触するまで、前記工具で、前記固定部材を前記樹脂発泡体へねじ込むことを特徴とする樹脂発泡体への接合対象物の接合方法である。
第3の発明は、樹脂発泡体への接合対象物の接合方法であって、筒部と、前記筒部の一端側にフランジ部を有する治具と、ねじが形成された軸部と、前記軸部の一方の端部に形成された頭部とを有し、前記ねじの最大外径が、前記頭部の外径以上である固定部材と、を用い、前記筒部に工具を挿入し、前記治具の前記フランジ部側から前記工具の先端を露出させた状態で、前記治具を前記工具に装着し、樹脂発泡体の表面に接合対象物を配置した状態で、前記フランジ部が前記接合対象物と接触するまで、前記工具で、前記固定部材を前記樹脂発泡体へねじ込み、前記固定部材は、前記軸部の他方の端部近傍には、前記ねじが形成されず、かつ、軸方向に略垂直な断面が縮径されている縮径部が形成されており、当該縮径部の端部の形態が、前記軸部の軸方向に略垂直な平面又は曲面となっていて、前記ねじが形成されている範囲の前記軸部には径が同一の部分が存在し、径が同一の部分の径よりも前記縮径部の径が小さいことを特徴とする樹脂発泡体への接合対象物の接合方法である。
【0023】
第2または第3の発明によれば、フランジ部を有する治具を用いることで、樹脂発泡体への固定部材のねじ込み量を容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、クッション材等の樹脂発泡体に対して、接合対象物を容易に接合することが可能な樹脂発泡体への接合対象物の接合構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図3】(a)は、樹脂発泡体への接合対象物の接合方法を示す図、(b)、(c)は、(a)のE部における拡大断面図である。
【
図5】治具25を用いた樹脂発泡体への接合対象物の接合方法を示す図。
【
図6】治具25を用いた樹脂発泡体への接合対象物の接合方法を示す図。
【
図8】樹脂発泡体100を組み立てた構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、固定部材1の斜視図、
図2は側面図である。固定部材1は、主に、頭部3、軸部5等からなる。
【0027】
固定部材1の軸部5の外周には、ねじ9が形成される。また、軸部5の一方の端部側に頭部3が設けられる。頭部3は、ドライバーなどの工具によって回転させる部位である。
【0028】
なお、固定部材1の材質は特に限定されないが、例えば金属製や樹脂製であり、樹脂の場合には、ナイロン66等の硬質樹脂が適用可能である。なお、固定部材1の材質としては、可撓性を有するような軟質の樹脂(ゴム含む)であってもよい。
【0029】
固定部材1は、一般的なビス等と同様の構成であるが、以下の点で異なる。通常のビスは、ねじ部をねじ込んで形成される孔に頭部が埋まらないように、頭部に対してねじ部の外径が小さく設定される。一方、固定部材1は、ねじ9の外径(
図2のB)と、頭部3の外径(
図2のA)が略同じとすることができる。ここで、ねじ9の外径や頭部3の外径は、後述するように固定部材1がねじ込まれた樹脂発泡体を踏んだ際にも大きな違和感を感じないように選定され、例えば、ねじ9の外径と頭部3の外径が略同じであるとは、頭部3の外径に対して、ねじ9の外径(最大径)が±10%以内とすればよい。また、ねじ9の外径(最大径)を、頭部3の外径以上としてもよく、ねじ9の外径(最大径)を、頭部3の外径よりも大きくしてもよい。ねじ9の外径が大きくても、後述するように、樹脂発泡体が大きく変形可能であるため、ねじ込むことが可能である。
【0030】
また、通常のビスは、確実に対象物にねじ込むため、軸部の先端近傍までねじが形成され、軸部の先端が鋭利に形成される。一方、固定部材1は、軸部5の先端部7(頭部3とは逆側の軸部5の端部)の形態が鋭利ではなく、軸部5の軸方向に略垂直な平面又は曲面で形成されている。すなわち、固定部材1を軸方向に対して垂直な方向(側面又は正面)から見ると、先端部7は、軸方向に対して略垂直な直線又は下方に凸形状の曲線となる。
【0031】
また、固定部材1は、軸部5の先端部7においては、ねじ9が形成されておらず、ねじ9が形成されていない先端部7の軸方向に略垂直な断面が偏平形状である。すなわち、先端部7は、少なくとも一方の方向に対して縮径した形状である。
【0032】
例えば、
図2に示す側面図において、先端部7の幅(D)は、ねじ9が形成されている範囲の軸部5の径(C)よりも小さい。なお、
図2と直交する方向から見た図(
図2の左右方向から見た図)では、先端部7の幅と、ねじ9が形成されている範囲の軸部5の径とが略一致する。
【0033】
なお、先端部7を偏平させるのではなく、断面が略円形となるように、全体的に縮径させてもよい。この場合でも、先端部7は鋭利にはならず、直線又は曲線となるように形成される。
【0034】
また、軸部5の先端部7に、縮径部(偏平部含む)を形成した場合でも、軸方向に対して所定の長さの直線部(同一径又は同一幅の部位)が形成されることが望ましい。このようにすることで、固定部材1をねじ込む際に、樹脂発泡体に対してまっすぐねじ込むことができる。
【0035】
次に、樹脂発泡体への接合対象物の接合方法について説明する。
図3(a)は、樹脂発泡体15に対して、接合対象物13を固定部材1で固定する工程を示す図である。
【0036】
樹脂発泡体15は、例えば、ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、又はポリプロピレン樹脂の少なくともいずれか、あるいはこれらの2種以上の混合物であることが望ましい。この際、樹脂発泡体15の発泡倍率は5倍から40倍であることが望ましい。
【0037】
接合対象物13は、例えば面ファスナなどのシート状の部材であり、予め複数の孔21が形成される。この際、樹脂発泡体15には、予め孔を形成置く必要はないが、下穴をあけておいてもよい。まず、樹脂発泡体15の表面に、接合対象物13を配置する。この状態で、孔21に固定部材1の先端部を配置して、工具11によって固定部材1を樹脂発泡体15へねじ込む。
【0038】
図3(b)は、
図3(a)のE部の拡大断面図である。樹脂発泡体15は、前述したように、内部に多数の気泡19が形成される。一方、樹脂発泡体15は、通常の製造工程において、表面にごく薄いスキン層17が形成される。スキン層17は、気泡19が存在しないから、内部と比較して、気泡19が小さく若しくは少ない領域である。
【0039】
固定部材1は、このようなスキン層17を有していても使用可能ではあるが、
図3(c)に示すように、接合対象物13が接続される樹脂発泡体15の表面には、スキン層17が形成されておらず気泡19が露出していることが望ましい。例えば、製造された樹脂発泡体15は、所定のサイズに切断して使用されるが、この切断面には、内部の気泡19が露出するため、この切断面に対して接合対象物13を固定することがより望ましい。
【0040】
前述したように、固定部材1の先端は、鋭利になっていないため、通常のビスのように、先端でビスが挿入される孔の起点を形成することが困難である。これに対し、気泡19が露出していると、固定部材1の先端が露出した気泡19を押し広げ、樹脂発泡体を変形ながら挿入することができるため、固定部材1をより容易にねじ込むことができる。
【0041】
例えば、先端部7には、ねじ9が形成されていないが、先端部7を気泡19に押し込み、樹脂発泡体15を変形させることで、ねじ9を樹脂発泡体15に接触させることができる。この状態で固定部材1をねじ込むことで、先端部7がガイドとして固定部材1のブレを抑制し、まっすぐに固定部材1を樹脂発泡体15へねじ込むことができる。
【0042】
図4は、このようにして形成される、樹脂発泡体への接合対象物の接合構造23を示す図である。すなわち、接合構造23は、樹脂発泡体15の表面に接合対象物13が設置され、接合対象物13を貫通する固定部材1によって、接合対象物13が樹脂発泡体15へ固定されて構成される。
【0043】
以上、本実施の形態によれば、ねじ9を有する固定部材1によって、柔軟な樹脂発泡体15に対して接合対象物13を固定するため、両面テープを用いるような場合と比較して、接合対象物13の剥がれを抑制することができる。また、ねじ9の外径が十分に大きいため、柔軟な樹脂発泡体15に対しても、ねじ9を確実に食い込ませることができる。
【0044】
また、樹脂発泡体15は柔軟であるため、固定部材1がねじ込まれた部位の樹脂発泡体15を変形させると、利用者は、内部の固定部材1の形状を認識可能である。この際、固定部材1の先端部7が鋭利ではないため、利用者が樹脂発泡体15を強く押し込むなどして変形させても、利用者が固定部材1の先端で傷つくことを抑制することができる。例えば、固定部材1が配置された部位の樹脂発泡体15を利用者が踏みつけても安全である。
【0045】
また、接合対象物13が配置される樹脂発泡体15の表面に、スキン層17が形成されておらず、気泡19が露出しているようにすることで、固定部材1の取り付けが容易である。例えば、樹脂発泡体15の切断面に対して固定部材1を使用することで、露出した気泡19に固定部材1の先端部が入り込み、気泡19を押し広げながらねじ込むことができる。
【0046】
また、固定部材1の先端部7が縮径(偏平)していることで、例えば、気泡19に先端部7を食い込ませることができ、より容易に固定部材1を樹脂発泡体15に対して押し込むことができる。
【0047】
なお、柔軟な樹脂発泡体15へ固定部材1をねじ込むため、固定部材1のねじ込み量が把握しにくい。このため、
図5に示すような治具25を用いてもよい。治具25は、筒部27と、筒部27の一端側に形成されたフランジ部29を有する。フランジ部29は、筒部27の径方向に突出する部位である。
【0048】
まず、フランジ部29が形成される側とは逆側の端部から、筒部27に工具11を挿入する。治具25のフランジ部29側から工具11の先端を露出させた状態で、治具25を工具11に装着する。なお、治具25は、完全に工具11に固定されていなくてもよく、治具25のフランジ部29側の先端側への、工具11の先端の露出量がある程度規制できればよい。
【0049】
次に、
図6に示すように、樹脂発泡体15の表面に接合対象物13を配置した状態で、フランジ部29が接合対象物13と接触するまで、工具11で、固定部材1を樹脂発泡体15へねじ込む。フランジ部29が接合対象物13と接触することで、接合対象物13に対して、工具11の先端がそれ以上深くに入り込むことを抑制することができる。
【0050】
このように、フランジ部29によって工具11のねじ込みが規制され、固定部材1が所定以上ねじ込まれると、工具11によるねじ込みが空回りする。このように、工具11による固定部材1のねじ込みが空回りすることで、工具11が過剰に固定部材1を樹脂発泡体15にねじ込んでしまうことを抑制することができる。
【0051】
また、前述した実施形態では、ねじ9の外径が略一定である例を示したが、これには限られない。例えば、
図7に示す固定部材1aのように、ねじ9の外径を、頭部3側から先端部7側にいくにつれて、徐々に小さくなるようにしてもよい。なお、軸部5の径は、先端部7を除き略一定である。このようにすることで、樹脂発泡体15へのねじ込みが容易である。この場合でも、ねじ9の最大外径を、頭部3の外径以上とすることができる。
【0052】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0053】
例えば、本発明において、樹脂発泡体15は、避難所区画に使用されるクッション材には限られない。例えば、装飾用の樹脂発泡体や、風呂マット等であってもよい。
【0054】
また、本発明において、接合対象物13は、面ファスナには限られない。例えば、樹脂発泡体15の表面に、抗菌シートや防護シートなど、他の接合対象物を固定する場合にも適用可能である。また、何らかの表示用のシートなどを接合してもよい。
【0055】
また、接合対象物13も樹脂発泡体であってもよく、この場合、異なる材質の樹脂発泡体を積層させて使用するような場合においても適用可能である。例えば、発泡倍率、硬度又は色などが異なる樹脂発泡体同士を接合する際にも適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1、1a………固定部材
3………頭部
5………軸部
7………先端部
9………ねじ
11………工具
13………接合対象物
15………樹脂発泡体
17………スキン層
19………気泡
21………孔
23………接合構造
25………治具
27………筒部
29………フランジ部
100、100a、100b………樹脂発泡体
101a、101b………面ファスナ