(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 6/30 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
G02B6/30
(21)【出願番号】P 2023124896
(22)【出願日】2023-07-31
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】591230295
【氏名又は名称】NTTイノベーティブデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 智浩
(72)【発明者】
【氏名】田中 克也
(72)【発明者】
【氏名】小澤 利幸
(72)【発明者】
【氏名】冨田 大司
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴
【審査官】牧 隆志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/080694(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/235041(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/015197(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/255329(WO,A1)
【文献】特開2020-181024(JP,A)
【文献】特開平11-287926(JP,A)
【文献】国際公開第2008/007701(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/186392(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104880776(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/30
G02B 6/24、6/36
G02B 6/42-6/43
G02B 6/10-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス基板に集積されたシリコンチップと光ファイバの接続部に用いる部品であって、
平板状の上部、並びに前記上部に略垂直な第1の側部および第2の側部と、
前記上部、前記第1の側部、および前記第2の側部により形成された凹部と、
前記凹部内の前記上部の所定の位置に形成された、当該上部に略垂直な押し当て部と
、
前記第2の側部の開口部に載置された前記光ファイバが通る中空部を有するチューブと
を備え、
前記押し当て部は、前記チューブの一部が当接し、前記光ファイバと接触しない位置に形成されている
、部品。
【請求項2】
前記押し当て部は、前記チューブの一部と1箇所で当接するように形成されている、請求項
1に記載の部品。
【請求項3】
前記押し当て部は、前記チューブの一部と2箇所で当接するように形成されている、請求項
1に記載の部品。
【請求項4】
前記チューブの一部と前記2箇所で当接する前記押し当て部は、前記上部側が連結されている、請求項
3に記載の部品。
【請求項5】
前記押し当て部と前記開口部との間に形成された接着剤収容部をさらに備えた、請求項
1に記載の部品。
【請求項6】
前記接着剤収容部は前記押し当て部が形成された面よりも更に切削され形成されている、請求項
5に記載の部品。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の部品を備えた光モジュールであって、
前記デバイス基板と、
前記シリコンチップの表面に形成された導波路と
を備え、
前記シリコンチップの端面において前記導波路と前記光ファイバとが光結合された、光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュールに関し、より詳細には、光デバイスと光ファイバの接続部に用いる部品および当該部品を備えた光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネットワーク内の光送受信モジュールには小型化、低消費電力化、および伝送速度の増大が求められている。小型のシリコンチップ上に光送信回路や光受信回路を集積し、これを増幅器等の電子回路と共にパッケージ化したデジタルコヒーレント用の光モジュール(Coherent Optical SubAssembly:COSA)はそれを実現するデバイスとして期待されている。
【0003】
図1に、従来のCOSA100を示す。
図1(a)は上面方向からの斜視図、
図1(b)は下面方向からの斜視図、
図1(c)はCOSA100の入出力部の下面方向からの斜視図、
図1(d)は断面線Id-IdにおけるCOSA100の入出力部の断面図である。なお、COSA100を構成するデバイス基板10のBGA(ball grid array)側を下面と称している。
【0004】
図1に示すように、COSA100は、シリコンフォトニクス技術を活用した導波路を含むシリコンチップ23を集積したデバイス基板10と、これらを保護するリッド30とを有している。
図1には、シリコンチップ23の表面に形成された導波路と光学的に接続される光ファイバ20も示されている。なお、シリコンチップ23は、導波路が形成された表面がデバイス基板10の下面側を向くように、集積されている。
【0005】
光ファイバ20が、ファイバブロック21を介して、シリコンチップ23の導波路と接続するように、ファイバブロック21は、シリコンチップ23に直接固定されている。
図1(d)に示すように、ファイバブロック21はリッド30に接触することなくリッド30との間にわずかな隙間を有している。
図1において、光ファイバ20は、複数の光ファイバが整列したテープ芯線を示している。光ファイバ20の各芯線の先端は、ファイバブロック21のV溝に沿って配列されている。
図1には、ファイバブロック21のV溝と対向して配置されたファイバ保護樹脂24も示されている。V溝とファイバ保護樹脂24との間に光ファイバ20が固定されている。各芯線の先端は、V溝を通ってファイバブロック21の端面まで延伸している。シリコンチップ23の端面と、ファイバブロック21の端面とが対向して接続固定されている。尚、シリコンチップ23の端面における反射を防止するためにシリコンチップ23に端面付近における導波路の向きは、当該端面に対して垂直にならないように(X方向にならないよう)なっている。光ファイバ20の延伸方向もまた、シリコンチップ23の端面に対して垂直にならないようになっている。
【0006】
図1に示すリッド30は、シリコンチップ23の表面に形成された導波路と光ファイバ20との結合部を保護するための光ファイバ結合部保護部31を有している。
【0007】
図2に、従来の光ファイバ結合部保護部31を示す。
図2(a)は
図1(c)と同様のCOSA100の入出力部の下面方向からの斜視図、
図2(b)は断面線IIb-IIbにおける光ファイバ20の延伸方向の断面図、
図2(c)は光ファイバ結合部保護部31の一部の下面方向の平面図、および
図2(d)は断面線IId-IIdにおける光ファイバ結合部保護部31の一部の断面図である。
【0008】
光ファイバ結合部保護部31は、平板状の上部31a、並びにファイバブロックの周囲3方向に上部31aに略垂直な側部31bおよび側部31cを有する。
図2(a)に示すように、上部31a、側部31b、および側部31cにより形成される空間にファイバブロック21は収容されている。側部31cは、光ファイバ20を通すための開口部を有している。
【0009】
光ファイバ20は延伸方向に垂直な方向の力に弱い。したがって、
図2に示すように、光ファイバ20が直接開口部に接触しないように光ファイバ20を保護するためのチューブ22が備えられている。光ファイバ20は、チューブ22を通ってファイバブロック21に固定される。
【0010】
チューブ22の内径は光ファイバ20の各芯線の直径の合計よりも十分大きい。したがって、チューブ22は光ファイバ20の延伸方向に自在に移動可能である。このため、チューブ22は、移動しないように光ファイバ結合部保護部31に固定される。
【0011】
図3は、
図2(a)の断面線III-IIIにおける側部31cの開口部の断面図である。開口部は、上部32aおよび側部32bを有する。チューブ22は、開口部を通るように配置され、チューブ22と開口部との間に挿入された接着剤40により接着固定されている。
【0012】
図4は、光ファイバ結合部保護部31の側部31cの開口部の下面拡大図である。チューブ22を開口部に接着固定するための接着剤40は、
図4における(1)から(4)の順に注入される。初めに(1)~(2)で示す三角形の先端の位置から側部32bとチューブ22との間に流動性の接着剤40を注入し、チューブ22を仮固定して
図3に示す状態とする。次いで(3)~(4)で示す三角形の先端の位置から接着剤40を追加して、チューブ22の上部および開口部外側に接着剤40を注入しフィレット40aおよび40bを形成する。
図4の破線の四角形はチューブ22の上部32aの反対側のフィレット40aを示し、一点破線の台形はチューブ22の側部31c(32b)の開口部の外側のフィレット40bを示している。光ファイバ20は、チューブ22の内側(中空部)を通って側部31cの開口部の外側から内側に延伸する。チューブ22の中空部から出た光ファイバ20の被覆を除去した部分(側部31cの開口部の外側から内側に位置するむき出しの芯線)が、ファイバブロック21のV溝とファイバ保護樹脂24との間に挟まれた状態で固定される。
【0013】
光モジュールの作製においてファイバブロック21側のチューブ22の先端を位置決めし開口部に固定する工程は、重要な工程である。ファイバブロック21とチューブ22の先端との距離が短すぎると、後工程のリフロー工程での熱の影響で光ファイバ結合部保護部31が膨張収縮しチューブ22の先端が動くことでファイバブロック21に圧力を及ぼすことになる。その結果、シリコンチップ23の表面に形成された導波路と光ファイバ20との結合損失が生じる可能性が高まる。これとは反対に、ファイバブロック21とチューブ22の先端との距離が長すぎると、例えばチューブ22の先端が開口部内に位置する場合は、接着剤40によるチューブ22の固定が不十分で信頼性低下を招く可能性がある。さらに、ファイバブロック21とチューブ22との間のむき出しの光ファイバ20に接着剤40が付着し、あるいはチューブ22の中空部に流れ込んだ接着剤40によりチューブ22と光ファイバ20とが接着し固定され、その後のリフロー工程で発生する光ファイバ結合部保護部31の膨張収縮の応力により、光ファイバ20が破損する可能性もある。
【0014】
これを防止するためには、所定の長さを有するチューブ22の先端を所定の位置に位置決めする必要がある。たとえば、所定の長さ(たとえば、3.6±0.3mm)を有するチューブ22の一方の先端とファイバブロック21との間の間隔が、所定の範囲(たとえば、0.25mmから0.5mm)であるかどうかを確認する必要がある。同時に、チューブ22のもう一方の先端が光ファイバ結合部保護部31の側部31cの開口部の外側の所定の範囲(たとえば、2mm以下)であるかどうかも確認する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そのため、ファイバブロック21側のチューブ22の先端を位置決めする工程、および接着剤40でチューブ22を光ファイバ結合部保護部31の開口部に固定する工程は、顕微鏡下の繊細な作業となり効率が著しく悪かった。
【0016】
本願発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、容易に適切な位置にチューブを接着固定するため光デバイス用の部品および当該部品を備えた光モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一実施形態にかかる部品は、光デバイス基板に集積されたシリコンチップと光ファイバの接続部に用いる部品である。この部品は、平板状の上部、並びに上部に略垂直な第1の側部および第2の側部と、上部、第1の側部、および第2の側部により形成された凹部と、凹部内の上部の所定の位置に形成された、当該上部に略垂直な押し当て部と、第2の側部の開口部に載置された光ファイバが通る中空部を有するチューブとを備え、押し当て部は、チューブの一部が当接し、光ファイバと接触しない位置に形成されている。
【0019】
一実施形態にかかる部品において押し当て部は、チューブの一部と1箇所で当接するように形成されている。
【0020】
一実施形態にかかる部品において押し当て部は、チューブの一部と2箇所で当接するように形成されている。
【0021】
一実施形態にかかる部品においてチューブの一部と2箇所で当接する押し当て部は、上部側が連結されている。
【0022】
一実施形態にかかる部品は、押し当て部と開口部との間に形成された接着剤収容部をさらに備える。
【0023】
一実施形態にかかる部品において接着剤収容部は押し当て部が形成された面よりも更に切削され形成されている。
【0024】
本発明の一実施形態にかかる光モジュールは、前述した部品のいずれかと、光デバイス基板と、シリコンチップの表面に形成された導波路とを備え、シリコンチップの端面において導波路と光ファイバとが光結合されている。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明の一実施形態によれば、光デバイス用の部品の押し当て部により、光デバイス用の部品の予め定められた位置にチューブを容易に接着固定することが可能となる。また、押し当て部を有する光デバイス用の部品を備えた光モジュールを効率よく製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】従来のデジタルコヒーレント用の光モジュール(Coherent Optical SubAssembly:COSA)を示す図であり、(a)は上面方向からの斜視図、(b)は下面方向からの斜視図、(c)はCOSAの入出力部の下面方向からの斜視図、(d)はId-Id断面線におけるCOSAの入出力部の断面図である。
【
図2】従来の光ファイバ結合部保護部を示す図であり、(a)はCOSAの入出力部の下面方向からの斜視図、(b)はIIb-IIb断面線における光ファイバの延伸方向の断面図、(c)は光ファイバ結合部保護部の一部の下面方向の平面図、(d)はIId-IId断面線における光ファイバ結合部保護部の一部の断面図である。
【
図3】
図2のIII-III断面線における従来の光ファイバ結合部保護部の側部の開口部の断面図である。
【
図4】従来の光ファイバ結合部保護部の側部の開口部の上面拡大図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る光モジュール(COSA)の光ファイバ結合部保護部を示す図であり、(a)はCOSAの入出力部の下面方向からの斜視図、(b)はVb-Vb断面線における光ファイバの延伸方向の断面図、(c)は光ファイバ結合部保護部の一部の下面方向の平面図、(d)はVd-Vd断面線における光ファイバ結合部保護部の一部の断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るCOSAの光ファイバ結合部保護部の押し当て部の第1の実施例を示す図であり、(a)は下面方向の平面図、(b)はVIb-VIb断面線における断面図であり、(c)はVIc-VIc断面線における断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るCOSAの光ファイバ結合部保護部の押し当て部の第2の実施例を示す図であり、(a)は下面方向の平面図、(b)はVIIb-VIIb断面線における断面図であり、(c)はVIIc-VIIc断面線における断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るCOSAの光ファイバ結合部保護部の押し当て部の第3の実施例を示す図であり、(a)は下面方向の平面図、(b)は断面図であり、(c)はVIIIc-VIIIc断面線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。同一または類似の符号は同一または類似の要素を示し、繰り返しの説明を調略する場合がある。以下の説明における材料および数値は、例示であり、他の材料および数値を用いて本発明を実施することができる。以下、光デバイスとして、デジタルコヒーレント用の光モジュール(COSA)を例示する。本発明の要旨を逸脱しない範囲で、COSA以外の任意の光デバイスにおいて本発明を実施することができることは言うまでもない。なお、以降の説明においては、光モジュール100においてリッド30側を上方向、デバイス基板10側を下方向として表現する。
【0028】
図5は、本発明の一実施形態に係るCOSAの光ファイバ結合部保護部31を示す図である。光ファイバ結合部保護部31は、
図1を参照して説明したリッド30の一部を構成する。光ファイバ結合部保護部31は、上述したようにシリコンチップ23の表面に形成された導波路と光ファイバ20との結合部を保護する光デバイス用の部品である。光ファイバ結合部保護部31は、シリコンチップ23を集積したデバイス基板10を保護するリッド30と一体形成されていてもよく、個別に形成されていてもよい。
【0029】
保護するリッド30は、金属平板を削り出し加工することによって形成することができる。リッド30と光ファイバ結合部保護部31とを個別に形成する際は、リッド30が金属の場合には光ファイバ結合部保護部31の材料はセラミックや樹脂を用いることもできる。シリコンチップ23を集積したデバイス基板10からの放熱を考慮してリッド30は熱伝導率の高い金属が好ましい。本実施形態においては、光ファイバ結合部保護部31は、金属平板を削り出し加工によりリッド30と一体で形成されるものとする。
【0030】
本実施形態の光ファイバ結合部保護部31もまた、従来の光ファイバ結合部保護部31と同様に、平板状の上部31a、並びにファイバブロックを取り囲むように上部31aに略垂直な側部31bおよび側部31cを有する。
図5(a)に示すように、上部31a、側部31b、および側部31cにより形成される空間(凹部)にファイバブロック21が収容される。ファイバブロック21は上部31aに接することはなく両者の間には隙間がある。側部31cは開口部を有している。開口部は、チューブ22の直径と同程度の開口を有している。また、
図5(d)においては、チューブ22が収納される開口部の光ファイバ20の延伸方向から見た形状を矩形としていが、U字形状としてもよい。さらにチューブ22に相対する開口部側壁は光ファイバ20の延伸方向に平行な面であっても良いし、内側から外側に向かって広がる形状であっても良い。後者の場合、注入した接着剤40が内側の上部31aに漏れ出ることを抑制する効果が高い。
【0031】
図5に示すように、本実施形態の光ファイバ結合部保護部31は、開口部を有する側部31cの近傍に、上部31aに略垂直な押し当て部50が形成されている点で、
図2に示す従来の光ファイバ結合部保護部31と異なる。
【0032】
押し当て部50は、チューブ22の端が予め定められた位置(すなわち、チューブ22の端の適切な位置)となるように形成されている。側部31cの外部から開口部を通じて側部31cの内部にチューブ22を挿入し、チューブ22の少なくとも一部が押し当て部50に突き当たった位置でチューブ22を固定することになる。チューブ22の端が押し当て部50に当接した状態では、チューブ22の端は、側部31cの開口部よりも光ファイバ結合部保護部31の内側に位置し、他端は側部31cの外部に位置することになる。そのため、顕微鏡下で繊細な位置決めを行う必要は無く、短時間で容易に精度の高い位置決めを行うことができる。この状態で接着剤40により側部31cの開口部にチューブ22を接着することで、開口部の厚み全域にチューブ22は固定されるため、上述した接着固定が不十分なことに起因する信頼性低下の問題が解決する。
【0033】
チューブ22の接着の際の余剰な接着剤は開口部と押し当て部50の間の上部31aに落下することになる。落下した接着剤がファイバブロック21と上部31aとの間の隙間に侵入し、ファイバブロック21と上部31aとが固定されてしまうと、リフロー工程の際のリッド30の膨張に伴い、ファイバブロック21とシリコンチップ23との結合部に力が加わり、光軸ずれやファイバブロック21の固定強度を劣化させる恐れがある。そのため、落下した余剰な接着剤がファイバブロック21側へ侵入することを防止することが望ましい。
【0034】
本実施形態においては、切削により押し当て部50を形成する際に、押し当て部50の両端が側部31cと接した状態となるようにしている。これにより、上部31aに押し当て部50と側部31cとによる閉じた領域(以下、接着剤収容部51)を形成している。
図5(d)に示すように、余剰な接着剤が落下する領域を壁で囲うことで落下した接着剤の広がりを防止できる。接着剤収容部51は、押し当て部50と側部31cの開口部との間に形成されている。接着剤収容部51の外壁は、少なくとも押し当て部50と、開口部が形成された領域の側部31cを含んでいる。すなわち、押し当て部50の開口部側の部分とそれに対向する側部31cの開口部の部分は、接着剤収容部51の一部を構成している。
図5(d)では押し当て部50は開口部を囲むように形成され、その両端は側部31cの一部と接している。切削により接着剤収容部51を作製する際に接着剤収容部51の側壁の一部を押し当て部50としたと言い換えることもできる。
【0035】
なお、落下した接着剤が上部31a上を広がり、ファイバブロック21と上部31aとの隙間に侵入することを防止するという観点から、押し当て部50と開口部が形成された領域との間をより深く切削する(上部31aの裏面からの厚みを薄くする)ことで溝を形成し、当該溝が接着剤収容部51の少なくとも一部となるようしてもよい。当該溝については、後述する。
【0036】
接着剤収容部51の構造は例えば以下の例を挙げることができる。側部31cの開口部の厚みH1(上部31aの裏面から開口部の下面までの厚み)は、0.9mmとしている。側部31cの接着剤収容部51の厚みH2(上部31a裏面から接着剤収容部51の下面までの厚み)は、0.6mmとしている。押し当て部50の厚みH3(上部31aの裏面から押し当て部50の先端までの厚み)は、1.15mmとしている。側部31cの凹部の厚みH4(側部31cの下面から開口部の下面までの厚み)は、1.05mmとしている。
【0037】
チューブ22の長さ(光ファイバ20の延伸方向)は2.0mmである。チューブ22の外径は0.9mmである。チューブ22の内径は0.82mmである。チューブ22の厚さは0.04mmである。側部31cの開口部の幅は、1.2mmである。チューブ22と開口部の間隔は0.15mmである。
【0038】
側部31cの開口部の長さL1(光ファイバ20の延伸方向)は1.75mmである。押し当て部50の開口部側の部分と側部31cの開口部との間隔L2(接着剤収容部51の光ファイバ20の延伸方向の間隔)は0.6mmである。押し当て部50の長さL3(光ファイバ20の延伸方向)は0.2~0.3mmである。押し当て部50とファイバブロック21との間隔L4は、0.347mmである。
【0039】
チューブ22の端が押し当て部50に当接した状態では、
図4を参照して説明した態様でチューブ22と側部31cとの隙間に接着剤40を挿入する際に、余剰な接着剤が接着剤収容部51に流れ落ちることになる。押し当て部50まで光ファイバ20はチューブ22で覆われているため、余剰の接着剤40は押し当て部50に到達する前にチューブ22の両側から開口部近傍に落下するため、ファイバブロック21とチューブ22との間のむき出しの光ファイバ20に接着剤40が付着すること、あるいはチューブ22の中空部に接着剤40が流れ込むこと(すなわち、中空部において接着剤40によりチューブ22と光ファイバ20とが接着されること)は、無くなる。
【0040】
このように、本実施形態の光ファイバ結合部保護部31によれば、ファイバブロック21側のチューブ22の先端を位置決めする工程、および接着剤40でチューブ22を光ファイバ結合部保護部31の側部31cの開口部に固定する工程が容易になる。
【0041】
以下、
図6から
図8を参照して実施例1から3に係る光ファイバ結合部保護部31を説明する。
【0042】
(実施例1)
図6は、本発明の一実施形態に係るCOSAの光ファイバ結合部保護部31を示す図である。
図6(a)は光ファイバ結合部保護部31の一部の下面側から見た概略平面図である。
図6(b)はVIb-VIb断面線における光ファイバ結合部保護部31の一部の概略断面図である。
図6(c)はVIc-VIc断面線における断面図である。矩形状の押し当て部50は、光ファイバ結合部保護部31の内側に開口部と離間した位置に、上部31aに略垂直に形成されている。側部31cと押し当て部50との間に接着剤収容部51が形成されている。押し当て部50は、接着剤収容部51の側壁の一部を構成している。
図6(b)に示すように、接着剤収容部51は、図より5(d)に示す例よりも深くなるように(上部31aの上面31TSからの厚みが薄くなるよう)切削されている。
図6では、矩形形状の押し当て部50の幅Wは、開口部の幅と同じにしているが、チューブ22の一部が当接する幅であれば、開口部の幅よりも狭くてよいが、チューブ22の直径よりも広い方が良い。チューブ22から落下した余剰な接着剤が押し当て部50の脇を抜けてファイバブロック21側に広がることを防止するためである。また、幅Wの中心が光ファイバ結合部保護部31の開口部の中心となるように配置しているが、チューブ22の一部が当接する位置であれば、開口部の中心となるように配置する必要はない。
【0043】
押し当て部50と開口部の位置関係の一例は以下の通りである。側部31cの開口部の厚みH1(光ファイバ結合部保護部31の上面31TSから開口部の位置31cBSまでの厚み)は0.9mmであり、押し当て部50の厚みH3(光ファイバ結合部保護部31の上面31TSから押し当て部50の先端50BSまでの厚み)は1.15mmである。したがって、
図6に示すように、側部31cの開口部にチューブ22を挿入する際に、チューブ22の端の一部が押し当て部50に当接して止まる。一方、チューブ22の内径は0.82mmで厚さは0.04mmであり、光ファイバ20は当接部と対向するチューブ22内側を通るため、押し当て部50の先端から十分離れた位置を通過することができる。押し当て部50の厚みH3が大きすぎると、押し当て部50の先端と光ファイバ20が接触する恐れがあるため、押し当て部50の先端はチューブ22の中心程度の高さに位置するのが望ましい。このようにして、ファイバブロック21は、シリコンチップ23の端面に光結合された状態で固定される。
【0044】
チューブ22の端の一部が押し当て部50に当接した状態で、
図4を参照して説明したように接着剤40を用いて、チューブ22を光ファイバ結合部保護部31の開口部に仮固定し、その後にフィレット40aおよび40bを形成する。押し当て部50に当接したチューブ22の端は、予め決められた適切な位置(すなわち、接着剤40の付着を防止できる位置)にあるため、顕微鏡下での位置決めは必要ない。また、チューブ22が押し当て部50に当接した状態では、開口部から押し当て部50までのチューブ22の長さは十分あるので、余剰の接着剤40は押し当て部50に到達することなくチューブ22両側から開口部近傍の接着剤収容部51に流れ落ちるため、接着剤40が光ファイバ20に付着することはない。実施例1の押し当て部50は、光ファイバ20の延伸方向に直交する面が幅広背低の矩形であるが、以下に例示するように他の形状とすることもできる。
【0045】
(実施例2)
図7を参照して、光ファイバ20の延伸方向に直交する面が幅狭背高の矩形の押し当て部50aを説明する。
図6の実施例1の構成は1つの押し当て部50を有するのに対して、実施例2の構成は、2つの柱上の押し当て部50aを有する点で、実施例1の構成と異なる。
図7は、本発明の一実施形態に係るCOSAの光ファイバ結合部保護部31を示す図である。
図7(a)は光ファイバ結合部保護部31の一部の下面側の概略平面図である。
図7(b)はVIIb-VIIb断面線における光ファイバ結合部保護部31の一部の断面図である。
図7(c)はVIIc-VIIc断面線における断面図である。
【0046】
図7に示すように、2つの押し当て部50aは、光ファイバ結合部保護部31の開口部を有する側部31cと離間したデバイス基板10(不図示)側の位置に、光ファイバ結合部保護部31の上部31aに略垂直に形成されている。本実施例2では余剰な接着剤が落下する領域を含む押し当て部50aと開口部との間を切削し上部31aに接着剤収容部51が形成されている。本実施例2では2つの柱上の押し当て部50aは矩形の平板状に切削された部分で連結されており、それらは接着剤収容部51の側壁の一部を構成している。
【0047】
2つの柱上の押し当て部50aの間隔は、チューブ22の断面における水平方向の両端に2つの押し当て部50aの一部が当接するような間隔を有している。2つの押し当て部50aのそれぞれの当接部は開口部からの距離が同じに形成されているため、2か所で当接状態のチューブ22は光ファイバ20と平行に配置されることになる。チューブ22を2か所で押さえることによりチューブ22の傾きを防止できるため、光ファイバ20と平行にチューブ22を配置できる利点がある。このため、チューブ22と光ファイバ20との接触を防止できる。2つの押し当て部50aは同じ幅Waを有するが、互いに異なる幅を有していてもよい。また、2つの押し当て部50aの間隔の中心が光ファイバ結合部保護部31の開口部の中心となるように2つの押し当て部50aを配置している。ただし、チューブ22の一部が2つの押し当て部50aの少なくとも一方に当接する位置であれば、2つ押し当て部50aの間隔の中心が光ファイバ結合部保護部31の開口部の中心とならなくてもよい。また、本実施例2では2つの押し当て部50aの間に連結部を有しているが連結部の形状や大きさは光ファイバ20の接触しなければ矩形に限定されるものではない。連結部が無くても良いが落下接着剤が広がる恐れがある場合は接着剤収容部51の深さを増す必要がある。
【0048】
2つの押し当て部50aの先端50BSはチューブ22の下側(光ファイバ20に近い側)近傍の位置にあり連結部の下面(31aに接していない面)は開口部のH1と同程度の厚みを有している。(本実施例2の一例は次の通りである。側部31cの開口部の厚みH1(光ファイバ結合部保護部31の上面31TSから開口部の位置31cBSまでの厚み)は0.9mmであり、上面31TSから押し当て部50aの先端50aBSまでの厚みH3aは1.8mmである。2つの押し当て部50aの間隔はチューブ22の内径と外径の間程度(0.82mm~0.9mm程度)が適当である。チューブ22は楕円形状のため左右方向に少し伸びるためである。したがって、本実施例2の構造においては、
図7に示すように、側部31cの開口部にチューブ22を挿入する際に、チューブ22の両側部は2つの押し当て部50aに同時に当接して止まる。一方、チューブ22の中空部に挿入された光ファイバ20は、2つの押し当て部50aの間を通過することができる。このようにして、光ファイバ20の先端に固定されたファイバブロック21の端面とシリコンチップ23の端面との間で光結合させることができる。
【0049】
本実施例2においても、実施例1と同様の効果があるが、接着剤収容部本実施例2には、さらに、2つの押し当て部50aにチューブ22を当接させる構成により、当接工程においてチューブ22の配置を光ファイバ20と平行にできる利点があるばかりでなく、1箇所の当接に比べ押し当て工程を容易に精度よく、そして確実性高く行うことができる。
【0050】
(実施例3)
図8を参照して、実施例2の変形形態である実施例3を説明する。
図8(a)は光ファイバ結合部保護部31の一部の下面側の概略平面図である。
図8(b)はVIIIb-VIIIb断面線における光ファイバ結合部保護部31の一部の断面図である。
図8(c)はVIIIc-VIIIc断面線における断面図である。
図8に示すようにL字形状状または鉤状の押し当て部でも良い。上部31aに略垂直な柱状の中央部が押し当て部50aとなり、上部31aに略水平な部分が接着剤収容部51の一部を構成するようにしてもよい。
【0051】
(その他の変形例)
図6の実施例1では押し当て部50の先端50BSを矩形で示したが、押し当て部50は開口部を囲うような形状としてもよい。この場合、落下する接着剤が接着剤収容部51内に落下するような形状とすれば良く、落下した接着剤が広がる恐れはない。
図6の実施例1では押し当て部50aの幅をチューブ22の外径より広くすることで落下する接着剤の広がりを防止できる。この例の変形例として、押し当て部50の幅を側部31bまで拡張して落下する接着剤の広がりを防止の役割を増強してもよい。このとき、拡張する部分は平面でも曲面を有する形状でも良く、中央部(幅Wの部分)と拡張部分の角度は90度から180度までであれば落下接着剤広がり防止の役割を有する。また、
図7および
図8の変形例として柱状の押し当て部50aの幅を側部31bまで拡張して落下する接着剤の広がりを防止の役割を増強してもよい。このとき、拡張する部分は、平面でも曲面を有する形状でも良く、柱状の押し当て部50a(幅Waの部分)と拡張部分の角度は90度から180度までであれば落下接着剤広がり防止の役割を有する。
【符号の説明】
【0052】
100 光モジュール(COSA)
10 デバイス基板
20 光ファイバ
21 ファイバブロック
22 チューブ
23 シリコンチップ
24 ファイバ保護樹脂
30 リッド
31 光ファイバ結合部保護部
31a 上部
31b 側部
31c 開口部を有する側部
32a 上部
32b 側部
40 接着剤
40a、40b フィレット
50、50a 押し当て部
51 接着剤収容部
【要約】
【課題】容易に適切な位置にチューブを接着固定するため光デバイス用の部品および当該部品を備えた光モジュールを提供する。
【解決手段】平板状の上部(31a)、並びに上部に略垂直な第1の側部(31b)および第2の側部(31c)と、上部、第1の側部、および第2の側部により形成された、光ファイバ(20)を保持するファイバブロック(21)を収容する凹部であり、第2の側部が光ファイバを延伸方向に引き出すための開口部を有している、凹部と、を備えたデバイス基板(10)に集積されたシリコンチップ(23)と光ファイバ(20)の接続部に用いる部品において、上部に形成された、当該上部に略垂直な押し当て部(50)であり、光ファイバが通る中空部を有するチューブ(22)の端が当接する、押し当て部とを備えた。
【選択図】
図5