IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクノロジーズの特許一覧

<>
  • 特許-試料像観察装置及び方法 図1
  • 特許-試料像観察装置及び方法 図2
  • 特許-試料像観察装置及び方法 図3
  • 特許-試料像観察装置及び方法 図4
  • 特許-試料像観察装置及び方法 図5
  • 特許-試料像観察装置及び方法 図6
  • 特許-試料像観察装置及び方法 図7
  • 特許-試料像観察装置及び方法 図8
  • 特許-試料像観察装置及び方法 図9
  • 特許-試料像観察装置及び方法 図10
  • 特許-試料像観察装置及び方法 図11
  • 特許-試料像観察装置及び方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】試料像観察装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
H01J37/22 502H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023525317
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2021021390
(87)【国際公開番号】W WO2022254698
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】今井 悠太
(72)【発明者】
【氏名】備前 大輔
(72)【発明者】
【氏名】片根 純一
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/016208(WO,A1)
【文献】特開2021-085776(JP,A)
【文献】特開昭63-100362(JP,A)
【文献】特表2019-525408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の観察領域の一部に対して電子線を照射し、電子線照射のない画素を含む画像を復元処理する試料像観察装置であって、
前記試料の観察領域に対する前記電子線の照射条件と前記試料の観察条件との相関を記憶する記憶部と、
前記相関に基づき、前記照射条件を前記観察条件に同期させる制御部と、を備え
前記相関は、観察倍率が高倍率になるに従い、画像中の全画素に対する電子線照射画素の比である照射割合が低くなるような関係であり、
前記制御部は、前記観察倍率の変更に連動して、前記照射割合を変更する、ことを特徴とする試料像観察装置。
【請求項2】
請求項1に記載の試料像観察装置であって、
前記相関には、視野内の観察対象の構造サイズが小さくなった場合、前記照射割合が高くなるような関係が加えられ、
前記制御部は、観察視野の変更に応じて前記照射割合を変更する、ことを特徴とする試料像観察装置。
【請求項3】
試料の観察領域の一部に対して電子線を照射し、電子線照射のない画素を含む画像を復元処理する試料像観察装置を使った試料像観察方法であって、
前記試料像観察装置は、前記試料の観察領域に対する前記電子線の照射条件と前記試料の観察条件との相関を記憶する記憶部と、前記相関に基づき、前記電子線の照射条件を前記観察条件に同期させる制御部と、を備え、
前記相関は、観察倍率が高倍率になるに従い、画像中の全画素に対する電子線照射画素の比である照射割合が低くなるような関係であり、
前記制御部は、前記観察倍率の変更に連動して、前記照射割合を変更する、ことを特徴とする試料像観察方法。
【請求項4】
請求項3に記載の試料像観察方法であって、
前記相関には、視野内の観察対象の構造サイズが小さくなった場合、前記照射割合が高くなるような関係が加えられ、
前記制御部は、観察視野の変更に応じて前記照射割合を変更する、ことを特徴とする試料像観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料像観察装置及び方法に係り、特に低ダメージ観察を実現する試料像観察技術に関する。
【背景技術】
【0002】
走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)は、収束させたプローブ電子
線を試料上に照射及び走査した際に発生する信号電子を検出し、各照射位置の信号強度を照射電子線の走査信号と同期して表示することで、試料表面の走査領域の2次元画像を得るものである。
【0003】
近年、SEM観察対象の生体試料などソフトマテリアルへの広がりや、検査対象である半
導体デバイスの微細化に伴いSEM観察時の電子線照射に伴う試料ダメージを低減した観察
ニーズが高まっている。これに対しSEMにおいて低ダメージ観察を実現する方法の一つに
、圧縮センシング(Compressed Sensing:CS)の概念を応用し、試料の限られた点のみに電子線照射して得られる疎サンプリング像から、計算機処理で元の情報を復元する手法がある。従来の試料の全面を電子線走査する観察法に比べ、結果的に試料に対するドーズ量を削減することが可能となり、全体的なダメージ低減が図れる。
【0004】
このような試料像観察技術に関する先行技術文献としては、例えば特許文献1があり、SEMにおける疎サンプリング像取得および像復元について開示している。特に、疎サンプ
リング像の取得方法としてライン上にランダムホッピングするスキャン手法により、サンプリングを隣接ピクセルのみにすることで1次電子線の偏向器の応答遅れの影響の緩和を
図る手段を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2019-525408
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
疎サンプリング像からの復元において、復元像の像質、特に空間的な解像度は、観察領域である視野全面に対する照射割合に依存して大きく変化する特徴がある。ここで照射割合とは、ある視野でデジタル画像を取得する際に、視野全面に対応する画素数に対して電子線を照射する画素数の比で定義される。即ち、SEMにおける一般的な走査像においては
画像内の全ての画素に密に電子線が照射されているため照射領域100%の画像を取得していることとなる。照射割合に対する復元像質の変化の主な原因は、照射割合によって各照射点間の平均的な距離が変化することによる。疎サンプリング像からの復元は、空間的に間引きされた情報から復元を行っていることと同義であるため、実質的な解像度は各照射点間の平均的な距離に依存する。
【0007】
SEMにおける試料観察に必要な像質は、観察倍率や観察視野に含まれる対象試料の構造
サイズによって変化する。即ち、特定の試料構造を観察する場合、単一の照射割合では、限定された観察倍率や視野でしか十分な像質のもとでドーズ量を低減した観察が行えないことを意味する。
【0008】
一般的にSEM観察においては、まず観察に適切な加速電圧の決定やプローブ電流調整な
どの画像取得条件設定が行われたのち、観察を開始する。観察が開始されると最初に視野探しを行い、続いて注目領域の詳細観察、そして画像撮影といった一連の操作が連続して行われることが普通である。この観察中には、観察倍率変更や視野移動が頻繁になされる。
【0009】
この一連した観察行為の中では、基本的に1次電子線に関わる画像取得条件の変更を行
わないシームレスな観察がなされることが求められる。なぜなら、画像取得条件変更を行った場合にはフォーカス調整や非点補正などを逐一行う必要があり、観察スループットやユーザビリティを著しく損なうことになるからである。これらの要求は、前述した疎サンプリング像からの復元を用いた観察方法を用いる際も同様である。
【0010】
しかし、例えば特許文献1に開示の技術においては、電子線の照射割合または照射パターンは一連の観察中に基本的に変更されることはない。そのため倍率変更や視野移動などの観察条件の変更時において、対象試料の構造観察に十分な解像度を持った復元像の取得が困難となる場合が発生する。
【0011】
本発明の目的は、上述した試料像観察技術における課題を解決し、観察条件の変更に関わらず復元像質を一定に保つことにより、観察スループットおよびユーザビリティの改善が可能な疎サンプリング像からの像復元を実現する試料像観察装置、及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、例えば、特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例をあげるならば、試料の観察領域の一部に対して電子線を照射し、電子線照射のない画素を含む画像を復元処理する試料像観察装置であって、前記試料の観察領域に対する前記電子線の照射条件と前記試料の観察条件との相関を記憶する記憶部と、前記相関に基づき、前記電子線の照射条件を前記観察条件に同期させる制御部と、を備える試料像観察装置を提供する。
【0013】
また、試料の観察領域の一部に対して電子線を照射し、電子線照射のない画素を含む画像を復元処理する試料像観察装置を使った試料像観察方法であって、
前記試料像観察装置は、前記試料の観察領域に対する前記電子線の照射条件と前記試料の観察条件との相関を記憶する記憶部と、前記相関に基づき、前記電子線の照射条件を前記観察条件に同期させる制御部と、を備え、前記照射条件は、前記試料の構造の大小に基づいて決定する、試料像観察方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、疎サンプリング像からの復元像を得る試料像観察装置において、観察条件の変更に関わらず復元像質を一定に保つことが可能となり、観察スループットおよびユーザビリティの改善効果が得られる。
【0015】
本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1に係る、試料像観察装置の一構成例を示す図。
図2】実施例1に係る、試料像観察装置の制御システムの要部を示す図。
図3】実施例1に係る、観察倍率と照射割合の相関の一例を示す図。
図4】実施例1に係る、観察倍率と照射割合の相関の一例を示す図。
図5】実施例1に係る、照射割合と復元像分解能の相関の一例を示す図。
図6】実施例1に係る、試料像観察装置の試料観察フローの一例を示す図。
図7】実施例1に係る、試料像観察装置の疎サンプリングおよび復元処理フローの一例を示す図。
図8】実施例1に係る、試料像観察装置の疎サンプリングおよび復元処理フローの一例を示す図。
図9】実施例1に係る、試料像観察装置のスキャン設定画面の一例を示す図。
図10】実施例1に係る、試料像観察装置の像復元調整画面の一例を示す図。
図11】実施例1に係る、試料像観察装置の復元条件調整処理フローの一例を示す図。
図12】実施例2に係る、処理フローの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例について説明する。なお、添付図面は本発明の原理に則った具体的な実施例を示しているが、これらは本発明の理解のためのものであり、決して本発明を限定的に解釈するために用いられるものではない。なお、実施例および変形例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【実施例1】
【0018】
実施例1は、試料の観察領域の一部に対して電子線を照射し、電子線照射のない画素を含む画像を復元処理する試料像観察装置であって、試料の観察領域に対する電子線の照射条件である照射位置と試料の観察条件との相関を記憶する記憶部と、この相関に基づき、電子線の照射条件を観察条件に同期させる制御部と、を備える構成の試料像観察装置、及び試料の観察領域の一部に対して電子線を照射し、電子線照射のない画素を含む画像を復元処理する試料像観察装置を使った試料像観察方法であって、試料像観察装置は、試料の観察領域に対する電子線の照射条件と試料の観察条件との相関を記憶する記憶部と、相関に基づき、電子線の照射条件を観察条件に同期させる制御部と、を備え、照射条件は、試料の構造の大小に基づいて決定する、試料像観察方法の実施例である。
【0019】
図1に、本実施例に係る試料像観察装置の一構成例を示す。同図において、走査電子顕微鏡鏡体(SEMカラム)10の内部に設置された電子銃11からの1次電子線であるプロ
ーブ電子線は、コンデンサレンズ12、絞り13を通過し、スキャン偏向器14で偏向され、対物レンズ16を通過し、ステージ18上の試料19表面を走査する。試料19から発生した2次電子である信号電子は検出器20で検出され、その検出信号は制御システム22に送られ、試料19の表面の画像が復元される。なお、SEMカラムは、上記した以外
にレンズ、電極、検出器などの他の構成要素を含んでもよく、上述した構成に限定されない。
【0020】
図2は実施例1に係る、試料像観察装置の制御部である制御システム22の機能構成の要部を示す図である。制御システムは、例えば、汎用のコンピュータを用いて実現されてもよく、コンピュータ上で実行されるプログラムの機能として実現されてもよい。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、メモリなどの記憶
部と、ハードディスクなどの記憶装置を少なくとも備える。制御部の処理は、プログラムコードとしてメモリに格納し、プロセッサが各プログラムコードを実行することによって実現されてもよい。なお、制御部の一部が、専用の回路基板などのハードウェアによって構成されてもよい。
【0021】
同図に示す通り、制御システム22は、バス240に接続された制御装置210、演算装置220、描画装置230などで構成される。制御装置210は、SEMの制御を行う主
制御部211、ビーム制御部212、スキャン制御部213、ステージ制御部214からなる。
【0022】
演算装置220は、1次電子線の照射条件である照射位置及び経路を決定する経路決定部221、相関記憶部222、復元像推定部223からなる。相関記憶部は222試料の観察領域に対する各観察条件と1次電子線の疎サンプリングに関わる照射条件の相関を記
憶している。経路決定部223では、相関記憶部の記憶している相関に基づいて、電子線の照射位置及び経路を決定する。この決定に従い制御装置210で電子線を制御し、疎サンプリング像を得る。復元像推定部223では疎サンプリング像から計算機処理により復元像を推定する。
【0023】
描画装置230は、復元像出力部231、スキャン像出力部232からなり、復元像推定部223が推定した復元像を使って逐次描画を行う。復元像推定部223およびスキャン像出力部232の出力は入出力端末21の表示部に送られる。
【0024】
ここで、相関記憶部222に格納されている相関は、例えば観察倍率と照射割合の対応関係であってもよい。更に、観察試料の情報と組み合わせた依存関係として相関記憶部222に格納されていることが好ましい。この場合の観察試料の情報とは、試料の持つ特徴的な構造のサイズや位置分布や頻度分布に関係した量を用いる。構造サイズとは、試料の構造の大小、例えば、隣り合う構造の間隔、ライン幅、層の厚み、粒子径等の大小を意味する。これら構造サイズや分布の最小値や平均値や統計的分散など、もしくはこれらを組み合わせた演算によって求められる特徴量を用いてもよい。特に、撮像時の視野内に存在する構造に対する試料構造特徴量などの情報が重要となる。
【0025】
また、相関記憶部222に格納されている相関は、例えば試料情報に基づいてあらかじめ定められたものである。もしくは試料情報入力後に計算機処理によって導出されたものを改めて相関記憶部222に格納し用いても良い。
【0026】
図3は相関記憶部222に格納される相関の一例として観察倍率と照射割合の相関の例を示す概念図である。観察倍率による復元像質変化を抑制するため、観察倍率が高倍率になるに従い照射割合は低くなり、観察倍率が低倍率になるに従い照射割合は高くなるような関係を用いる。加えて、この相関は視野内の観察対象となる試料構造に対する依存性を含む形で記述される。例えば試料交換や視野移動によって視野内の観察対象の構造サイズが小さくなった場合、図3の曲線Aから曲線Bへと相関は変化する。これにより、試料に応じた復元像質での観察が可能となる。
【0027】
また、参照される相関は図3に例示するような連続的な曲線ではなく図4に実線で例示するような離散化されたステップ状の相関であっても良い。また、記録されている連続的な相関を参照して照射割合を決定する際に、任意のステップ幅で離散化変換して用いても良い。
【0028】
また、相関記憶部に格納されている相関は、照射割合と復元像分解能の対応関係であっても良い。図5はある特定の観察倍率における照射割合と復元像分解能の相関の例を示す概念図である。あらかじめ照射割合における復元像の分解能との相関を導出しておき記憶しておくことで、観察に必要な分解能に対応する照射割合を決定することが可能となる。なお、照射割合と復元像分解能の相関は、例えば照射点の空間分布に関連する統計量から解析的に導出しても良いし、例えば照射割合毎の疎サンプリング像を取得する実験によって得られた実際の復元像から推定してもよい。
【0029】
これらの相関は相関記憶部222に記憶され、経路決定部221より参照される。経路決定部221は観察倍率や入出力端末21を介して入力された試料情報と相関とを逐次照らし合わせ、電子線の照射位置及び経路を動的に決定する。この時試料情報の入力は試料構造の特徴量を直接数値として入力しても良いし、観察対象の設計データを活用しても良い。また、リファレンスとなる画像を画像解析し特徴量を抽出し入力としても良い。
【0030】
また、疎サンプリングを行う際の1次電子線の照射位置移動は、例えばスキャン偏向器
14を用いて行われる。このスキャン偏向器14は電磁コイルを用いた磁場方式でもよいし、電極を用いた電場方式でもよい。また、通常のラスタスキャンに用いられるスキャン偏向器14とは別に、疎サンプリング用途の偏向器を用いても良い。更に、照射点間の移動時にはブランカ15を用いて1次電子線が試料に照射されないように制御されても良い
。試料ダメージの低減と照射予定位置以外からの信号電子の検出を抑制することが可能となる。
【0031】
図6に本実施例の試料像観察装置による試料観察フローの一例を示した。同図において、試料観察が開始されると(S601)、ステージ18に試料の設置(S602)と、試料情報の入力(S603)、画像取得条件の設定(S604)がなされる。そして、低ドーズ条件か否かのチェック(S605)により、低ドーズ条件の場合(YES)、1次電子線の照射割合、照射位置や移動経路等の照射条件の決定を行う(S606)。決定された照射条件に従って疎な1次電子線照射がなされ(S607)、検出信号による画像復元処理が実行され画像が生成される(S608)。
【0032】
一方、低ドーズ条件で無い場合(NO)、密な1次電子線照射がなされ(S609)検出信号により画像生成される。画像取得条件の変更から電子線照射、画像取得(S610)が繰り返され、全データ取得か否かをチェックし(S611)、全データ取得されると(YES)、1次電子線照射が停止され(S612)、試料の取り出し(S613)で、試料観
察が終了する(S614)。
【0033】
図7に本実施例の疎サンプリングおよび復元処理フローの一例を示した。同図において、疎サンプリングおよび復元処理が開始されると(S701)、照射条件読み込み(S702)後、試料情報の入力部より入力された試料情報が読み込まれ(S703)、続いて初期照射割合が読み込まれる(S704)。観察が開始され(S705)、観察倍率が設定、変更されると(S706)、相関記録部222に記録された、観察倍率と照射割合との相関が参照される(S707)。参照された相関からすでに読み込まれた試料情報に基づいて最適な照射割合を導出する(S708)。
【0034】
そして現在の照射割合と導出した最適値の比較を行い(S709)、最適値と異なる場合(NO)、照射割合の変更(S710)が行われる。一方で、現在の照射割合が最適値であった場合(YES)、照射割合の変更はなされない。確定した照射割合に基づいて照射位置や移動経路が決定され、疎な1次電子線照射(S711)がなされ、検出信号による画像復元処理(S712)により画像が生成され、復元画像が描画装置230により描画される(S713)。
【0035】
この照射割合の変更処理は、観察倍率の変更に連動して逐次即座に行われることが望ましい。ただし、厳密に観察倍率変更と同時である必要はなく、例えば画像の描画時間であるフレームレートごとに照射割合が変更されていても良いし、画像描画が画像全体でなくブロック単位で行われるのならば単位ブロックの描画時間の時間間隔で行われても良い。
【0036】
また、疎な1次電子線照射からの画像復元処理には例えば圧縮センシングの概念を用い
ても良い。その場合、ルールベースのアルゴリズムを用いた処理であっても良いし、学習型のアルゴリズムを用いた処理であってもよく、それらの複数の組み合わせであっても良い。これらの復元アルゴリズムは例えば処理時間や復元像質の観点で選択して用いられても良い。
【0037】
図8に本実施例の試料像観察装置による疎サンプリングおよび復元処理フローの変形例の一例を示した。同図において、疎サンプリングおよび復元処理が開始されると(S801)、照射条件読み込み(S802)後、入力された試料情報が読み込まれ(S803)、続いてあらかじめ設定された初期照射割合が読み込まれる(S804)。
【0038】
観察が開始され(S805)、観察視野が設定、変更されると(S806)、まず既に読み込まれている試料情報から、観察視野位置に対応する試料情報を参照し(S807)視野内の試料構造特徴量が決定される。そして視野移動前後の試料構造特徴量が比較され(S808)、試料構造特徴量が変化している場合(YES)、相関記録部に記録された、観
察倍率と照射割合との相関が参照される(S809)。参照された相関から視野移動後の試料構造特徴量と現在の観察倍率に基づいて最適な照射割合を導出する(S810)。そして現在の照射割合と導出した最適値の比較を行い(S811)、最適値と異なる場合(NO)、照射割合の変更(S812)が行われる。
【0039】
一方で、現在の照射割合が最適値であった場合(YES)、照射割合の変更はなされない。確定した照射割合に基づいて照射位置や移動経路が経路決定部221により決定され、決定に基づいて疎な1次電子線照射がなされ(S813)、検出信号による画像復元処理により画像が生成され(S814)、復元画像が描画される(S815)。また、視野移動前後で視野内の試料構造特徴量が変化しない(S808 No)場合も照射割合の変更はな
されない。
【0040】
図9は本実施例における試料像観察装置のスキャン設定画面の一例を示す図である。同図に示すように入出力端末20の表示部に表示されるスキャン設定画面90を用いて、ユーザはスキャン方法として視野全面を走査する密なスキャンであるラスター、あるいは特定の画素のみに電子線照射する疎なスキャンであるスパースの何れかを選択できる。加えて、スパーススキャンモード時に、照射割合を観察条件変化に伴い動的に変更制御する可変モードと、一定値を保つ固定モードとを選択できる。
【0041】
図10図11は本実施例における復元条件調整処理を説明するための図であり、図10は像復元調整画面の一例を、図11は復元条件調整処理フローの一例を示している。
【0042】
図10の像復元調整画面においては、観察条件パラメータである照射電圧、プローブ電流、フレームレート、撮像倍率を設定可能である。また、像復元調整画面には、疎サンプリング像とその照射割合、および復元像を表示することができる。更に、試料情報の入力部として典型的試料サイズが入力可能となっており、数値の直接入力だけでなくスライダーを動かすことによって変更可能となっている。
【0043】
図11に示す復元条件調整処理フローにおいて、復元条件調整処理が開始されると(S1101)、制御システム21に接続された入出力端末20の表示部に像復元調整画面100が表示され(S1102)、調整が開始される。そして、画面を使ってまず観察条件設定(S1103)がなされる。そして試料情報を自動で入力するかチェックがなされる(S1104)。自動入力でない場合(NO)、調整画面にユーザが試料情報を手動で入力する(S1105)。ここで試料情報とは試料の持つ特徴的な構造のサイズや位置分布や頻度分布に関係した量を入力する。例えば図10に示した調整画面においては典型的試料サイズが試料情報に該当する。入力された試料情報に基づき試料構造特徴量としてパラメータ設定される(S1109)。
【0044】
一方で、試料情報を自動入力する場合(YES)は、試料に密な電子線照射が行われ(S1
106)検出信号から試料構造推定用の画像が取得される(S1107)。そして取得画像の計算機処理により試料構造特徴量が計算され(S1108)、パラメータ設定される(S1109)。ここでの試料構造推定用画像は単一の観察条件で取得された画像であっても良いし、複数の視野や複数の観察倍率で取得した画像を組み合わせて用いても良い。
【0045】
そして設定されたパラメータに基づいて疎サンプリング実行(S1110)、画像復元処理(S1111)がなされ復元結果が描画される(S1112)復元条件調整処理が終了する(S1113)。ユーザは、描画された復元像を見て所望の画質であることを確認する。更なる調整が必要であるときはパラメータを調整し本調整フローを繰り返す。このとき、画面の表示部には復元前の疎サンプリングや照射割合が合わせて表示されることが望ましい。これにより試料への電子線照射状態をユーザが把握することが可能となる。
【0046】
以上説明した実施例1の試料像観察装置、及び試料像観察方法によれば、観察条件に関わらず観察対象の試料構造に則した像質にて、試料ダメージを抑制した高精度観察、分析が可能となる。
【実施例2】
【0047】
実施例2は、実施例1に記載の試料像観察装置を特に半導体回路パターンの検査計測に適応する場合の実施例である。半導体回路パターンの検査計測では試料画像と当該画像取得座標における回路パターンの設計図とを参照し、試料像と設計図との差分より半導体回路パターンの欠陥位置を特定する手法(Die to Database)が広く普及している。本実施
例ではこのDie to Databaseに疎サンプリングおよび復元処理フローを適応する方法につ
いて述べる。
【0048】
図12に本実施例における処理フローの一例を示す。検査を開始(S1201)する際には、制御システム22に接続された入出力端末21から観察対象とする回路パターン設計図を入力する(S1202)。入力された回路パターン設計図は演算装置220に付属
する回路パターン記録部(図示せず)に記録される。次に照射電圧、プローブ電流、フレームレート、観察倍率等の照射条件を読み込む(S1203)。次に、観察したい座標に
ステージ18を移動し、移動後の座標を読み込む(S1204)。そして、試料像観察装
置内における座標と半導体回路パターンの設計図より観察試料の構造を算出する。
【0049】
すなわち、回路パターン設計図において前記座標における回路パターンを参照し、前記照射条件において視野に含まれるパターンサイズを回路パターンから抽出し、試料構造特徴量を計算する(S1205)。そして、計算された試料構造特徴量を設定し(S120
6)、疎サンプリングを実行(S1207)、画像復元処理(S1208)がなされ復元結果が描画される(S1209)。最後に、描画された復元結果を用いて半導体回路パターンに欠陥部が存在するか否かを判別し(S1210)、処理を終了する(S1211)。なお、本実施例において参照される半導体回路パターンの設計図とは、設計図そのもののみに限らない。例えば、回路パターンの配置図やレイアウトを参照しても良いし、これらパターンの配置・設計情報を基に生成された模擬観察像を参照しても良い。また、試料の対象領域が含まれる試料観察像や、同等またはより高い照射割合を有する試料観察像を参照しても良いし、複数の照射条件で取得した複数枚の試料観察像を参照しても良い。
【0050】
以上説明した試料像観察装置及び方法によれば、電子線照射時間の短縮と試料像の画質を両立することが可能となる。また本実施例ではDie to Databaseの用途に関して説明し
たが、本発明はこれに限らず半導体パターンを正確に測る目的で種々の形で適用できる。
【0051】
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したのであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0052】
10 SEMカラム
11 電子源
12 コンデンサレンズ
13 絞り
14 スキャン偏向器
15 ブランカ
16 対物レンズ
17 試料室
18 ステージ
19 試料
20 検出器
21 入出力端末
22 制御システム
210 制御装置
220 演算装置
230 描画装置
240 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12