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特許7502611樹脂含浸方法、波長変換モジュールの製造方法及び波長変換モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】樹脂含浸方法、波長変換モジュールの製造方法及び波長変換モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20240612BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240612BHJP
   F21V 9/32 20180101ALI20240612BHJP
【FI】
H01L21/52 E
G02B5/20
F21V9/32
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020072941
(22)【出願日】2020-04-15
(65)【公開番号】P2021170587
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(72)【発明者】
【氏名】国宗 哲平
(72)【発明者】
【氏名】蔵本 雅史
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-027095(JP,A)
【文献】特開2018-154852(JP,A)
【文献】特開平11-354575(JP,A)
【文献】特開2008-258397(JP,A)
【文献】特開2017-196571(JP,A)
【文献】特開2019-207761(JP,A)
【文献】特開2018-190540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 1/00-15/04
G03B17/48-17/55
H01L21/52
H01L21/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質構造の金属焼結体の空隙に樹脂を含浸させる方法であって、
親水性又は疎水性の粒子を含む消泡剤を含む樹脂材料を準備する樹脂材料準備工程と、
前記準備した樹脂材料を減圧することにより脱泡する脱泡工程と、
前記脱泡した樹脂材料を前記金属焼結体の表面に塗布する塗布工程と、
前記金属焼結体と表面に塗布した樹脂材料とを減圧して前記空隙内の気体を排出し、前記空隙に樹脂材料を含浸させる樹脂含浸工程と、
前記樹脂材料を加熱により硬化させる硬化工程と、
を含む樹脂含浸方法。
【請求項2】
前記樹脂材料準備工程において、前記粒子はシリカ粒子である請求項1記載の樹脂含浸方法。
【請求項3】
前記樹脂材料準備工程において、前記樹脂材料はエポキシ樹脂である請求項1又は2に記載の樹脂含浸方法。
【請求項4】
前記塗布工程において、前記多孔質構造の金属焼結体に設けられている前記空隙は、網状に繋がっている請求項1から3のいずれか1つに記載の樹脂含浸方法。
【請求項5】
前記塗布工程において、前記多孔質構造の金属焼結体に設けられている前記空隙は、短手方向の直径が2μm以下の空隙が分散されている請求項1から4のいずれか1つに記載の樹脂含浸方法。
【請求項6】
前記硬化工程後において、前記消泡剤は、前記金属焼結体の中心部に含まれておらず、前記金属焼結体の表面に配置されている請求項1から5のいずれか1つに記載の樹脂含浸方法。
【請求項7】
波長変換部材を接合部材により基体上に接合することを含む波長変換モジュールの製造方法であって、
金属粉体を含む金属ペーストを準備し、前記金属ペーストを前記基体上に塗布する第1塗布工程と、
前記波長変換部材を前記塗布した金属ペースト上に配置する配置工程と、
前記金属ペーストを加熱して金属粉体を焼結させて前記基体と前記波長変換部材とを空隙を含む多孔質構造の金属焼結体により接合する接合工程と、
請求項1から6のいずれか1つに記載の樹脂含浸方法により前記金属焼結体の空隙に樹脂を含浸させる含浸工程と、
を含む波長変換モジュールの製造方法。
【請求項8】
前記第1塗布工程において、前記金属粉体は、0.3μm以上5μm以下のメジアン径を有する銀粉体である請求項7に記載の波長変換モジュールの製造方法。
【請求項9】
前記接合工程において、前記銀粉体を含む金属ペーストを160℃以上300℃以下の温度で加熱して前記銀粉体を焼結させる請求項8に記載の波長変換モジュールの製造方法。
【請求項10】
前記配置工程前において、下面と上面を有する蛍光体板と、前記蛍光体板の下面に設けられたAl2O3膜と、前記Al2O3膜の下面に設けられたAg膜と、を含む波長変換部材を準備する第1波長変換部材準備工程を含み、
前記配置工程において、前記Ag膜を前記基体に対向させて前記波長変換部材を配置する請求項7から9のいずれか1つに記載の波長変換モジュールの製造方法。
【請求項11】
前記配置工程前において、下面と上面を有する蛍光体板と、前記蛍光体板の上面に設けられたSiO2膜と、を含む波長変換部材を準備する第2波長変換部材準備工程を含み、
前記配置工程において、前記波長変換部材の下面を前記基体に対向させて前記波長変換部材を配置する請求項7から10のいずれか1つに記載の波長変換モジュールの製造方法。
【請求項12】
前記第1塗布工程前において、前記基体は基材の上面にAu膜が配置されており、
前記配置工程において、前記Au膜を前記波長変換部材の下面に対向させて前記波長変換部材を配置する請求項7から11のいずれか1つに記載の波長変換モジュールの製造方法。
【請求項13】
前記接合工程前において、前記基材の上面は、前記波長変換部材を実装する実装領域の周りに前記塗布した樹脂材料の実装領域外への流出を防止する環状凹部又は環状凸部を有し、
前記塗布工程において、前記環状凹部又は環状凸部の内側に前記脱泡した樹脂材料を塗布する請求項12に記載の波長変換モジュールの製造方法。
【請求項14】
前記第1塗布工程において、前記金属ペーストには更にスペーサ粒子を含み、前記基体と前記波長変換部材の間の前記金属焼結体の厚さを前記スペーサ粒子の粒径と同じ又は厚くする請求項7から13のいずれか1つに記載の波長変換モジュールの製造方法。
【請求項15】
基体と、前記基体上に設けられた波長変換部材と、前記基体と前記波長変換部材とを接合する接合部材と、を含み、
前記接合部材は、空隙を含む多孔質構造の金属焼結体と、前記金属焼結体の外表面を覆う第1樹脂部と前記空隙に含浸された第2樹脂部とを含む樹脂と、前記樹脂中に分散された粒子を含んでなり、
前記第1樹脂部に分散された前記粒子の密度は、前記第2樹脂部に分散された前記粒子の密度より大きい波長変換モジュール。
【請求項16】
前記第2樹脂部は、実質的に前記粒子を含まない請求項15に記載の波長変換モジュール。
【請求項17】
前記金属焼結体は、前記波長変換部材の側面の少なくとも一部を覆うフィレットを含む、請求項15又は16に記載の波長変換モジュール。
【請求項18】
前記フィレットの表面は、前記第1樹脂部に覆われており、
前記第1樹脂部の厚さは、1μm以上である、請求項17に記載の波長変換モジュール。
【請求項19】
前記金属焼結体は、銀又は銅を含む、請求項15から18のいずれか1つに記載の波長変換モジュール。
【請求項20】
前記基体は、前記波長変換部材を囲む環状の凸部を有する、請求項15から19のいずれか1つに記載の波長変換モジュール。
【請求項21】
前記波長変換部材は、前記基体に対向する下面と上面を有する蛍光体板と前記蛍光体板の上面に設けられたSiO2膜とを含む請求項15から20のいずれか1つに記載の波長変換モジュール。
【請求項22】
前記波長変換部材は、前記基体に対向する下面と上面を有する蛍光体板と、前記蛍光体板の下面に設けられたAl2O3膜と、前記Al2O3膜の下面に設けられたAg膜と、を含む請求項15から21のいずれか1つに記載の波長変換モジュール。
【請求項23】
前記金属焼結体は更にスペーサ粒子を含み、前記基体と前記波長変換部材の間の金属焼結体の厚さは前記スペーサ粒子の粒径と同じ又は厚い請求項15から22のいずれか1つに記載の波長変換モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂含浸方法、波長変換モジュールの製造方法及び波長変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘッドランプ、各種照明機器、レーザープロジェクター等の光源として、例えば、半導体レーザーからの青色光を蛍光体によって波長変換するようにした高出力の光源が広く使用されるようになってきている。この光源において、蛍光体は波長変換に伴い発熱するので、蛍光体における発熱を効率よく排熱することが求められている。特に、半導体レーザーを用いた光源に使用される波長変換装置では、耐久性に優れた波長変換部材を用いかつ波長変換部材における発熱を効率よく排熱することが求められている。
【0003】
これらの要求に応えるために、特許文献1には、波長変換部材としてセラミック蛍光体を用い、該セラミック蛍光体を放熱部材に焼結組織を有する接合部により接合した波長変換装置(波長変換モジュールともいう。)が開示されている。特許文献1によれば、銀、金及び銅の少なくとも1つを含む焼結組織を有する接合部を用いることにより、高い熱伝導性を得ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-207761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、より高出力の光源が求められており、そのような光源に使用される波長変換部材を含む波長変換モジュールにもより高い信頼性が求められるようになってきている。
【0006】
そこで、本開示は、まず、信頼性が高い波長変換モジュールの製造が可能になる樹脂含浸方法を提供することを目的とする。
また、信頼性が高い波長変換モジュールの提供及び波長変換モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る樹脂含浸方法は、多孔質構造の金属焼結体の空隙に樹脂を含浸させる方法であって、親水性又は疎水性の粒子を含む消泡剤を含む樹脂材料を準備する樹脂材料準備工程と、前記準備した樹脂材料を減圧することにより脱泡する脱泡工程と、前記脱泡した樹脂材料を前記金属焼結体の表面に塗布する塗布工程と、前記金属焼結体と表面に塗布した樹脂材料とを減圧して前記空隙内の気体を排出し、前記空隙に樹脂材料を含浸させる樹脂含浸工程と、前記樹脂材料を加熱により硬化させる硬化工程と、を含む。
【0008】
本開示に係る波長変換モジュールの製造方法は、波長変換部材を接合部材により基体上に接合することを含む波長変換モジュールの製造方法であって、金属粉体を含む金属ペーストを準備し、前記金属ペーストを前記基体上に塗布する第1塗布工程と、前記波長変換部材を前記塗布した金属ペースト上に配置する配置工程と、前記金属ペーストを加熱して金属粉体を焼結させて前記基体と前記波長変換部材とを空隙を含む多孔質構造の金属焼結体により接合する接合工程と、前記樹脂含浸方法により前記金属焼結体の空隙に樹脂を含浸させる含浸工程と、を含む。
【0009】
本開示に係る波長変換モジュールは、基体と、前記基体上に設けられた波長変換部材と、前記基体と前記波長変換部材とを接合する接合部材と、を含み、前記接合部材は、空隙を含む多孔質構造の金属焼結体と、前記金属焼結体の外表面を覆う第1樹脂部と前記空隙に含浸された第2樹脂部とを含む樹脂と、前記樹脂中に分散された粒子を含んでなり、前記第1樹脂部に分散された前記粒子の密度は、前記第2樹脂部に分散された前記粒子の密度より大きい。
【発明の効果】
【0010】
以上のように構成された樹脂含浸方法は、信頼性が高い波長変換モジュールの製造が可能になる樹脂含浸方法を提供することを目的とする。
また、信頼性が高い波長変換モジュールの提供及び波長変換モジュールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示に係る樹脂含浸方法の工程フローである。
図2】本開示に係る波長変換モジュールの上面図である。
図3図2に示す波長変換モジュールのA-A線についての断面図である。
図4図3の断面図の一部を拡大して示す断面図である。
図5】本開示に係る波長変換モジュールの製造方法の工程フローである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本開示を実施するための実施形態や実施例を説明する。なお、以下に説明する接続構造体は、本開示の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本開示を以下のものに限定しない。
【0013】
各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態や実施例に分けて示す場合があるが、異なる実施形態や実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせは可能である。後述の実施形態や実施例では、前述と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態や実施例ごとには逐次言及しないものとする。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。
【0014】
以下、本開示に係る実施形態について詳細に説明する。
尚、以下の説明において、樹脂材料表面で気泡が巨大化して破泡したり激しく泡立ったりして破泡することを過剰な泡立ちということがある。
【0015】
実施形態1.
実施形態1に係る樹脂含浸方法は、多孔質構造の金属焼結体の空隙に樹脂を含浸させる方法であって、図1に示すように、
(1)親水性又は疎水性の粒子を含む消泡剤を含む樹脂材料を準備する樹脂材料準備工程S11と、
(2)準備した樹脂材料を減圧することにより脱泡する脱泡工程S12と、
(3)脱泡した樹脂材料を前記金属焼結体の表面に塗布する塗布工程S13と、
(4)金属焼結体と表面に塗布した樹脂材料とを減圧して空隙内の気体を排出し、空隙に樹脂材料を含浸させる樹脂含浸工程S14と、
(5)樹脂材料を加熱により硬化させる硬化工程S15と、
を含む。
【0016】
ここで、本開示でいう、多孔質構造の金属焼結体とは、例えば、金属粉体を含む金属ペーストを焼成して焼結させたものであり、隣接する金属粉が少なくとも一部で融着することにより複数の金属粉が連続して繋がった網目構造の金属部と、融着した部分を除いた隣接する金属粉間の隙間が複数の金属粉間にわたって形成された空隙とを含むものである。したがって、本開示でいう多孔質構造の金属焼結体は、例えば、波長変換モジュールで言えば、波長変換部材と放熱部材の間に空隙が存在する。
また、多孔質材料というと、一般に細孔が非常に多く空いている材料のことをいい、例えば、ミクロポーラス材料、メソポーラス材料、マクロポーラス材料と言われるが、本開示おける金属焼結体は、例えば、焼結前の金属粉体の粒度分布に依存して種々の大きさの空隙を含み得る。さらに、本開示における金属焼結体は、例えば、2つの部材を接合する接合部材として用いる場合には、2つの部材に挟まれた部分にも空隙は存在し、これによってより効果的に熱応力に耐えうる強度を確保できる。
以下、実施形態1に係る樹脂含浸方法について詳細に説明する。
【0017】
(1)樹脂材料準備工程S11
樹脂材料準備工程S11では、親水性又は疎水性の粒子を含む消泡剤を含む樹脂材料を準備する。
ここでは、まず、樹脂材料の主成分である熱硬化性のエポキシ樹脂を準備する。シリコーン樹脂等でも良いが、エポキシ樹脂はガスバリア性が高いので、含浸後に金属焼結体を外気から遮断できるため、より好ましい。熱硬化性のエポキシ樹脂としては、塩素等のハロゲンを含まないものが好ましい。エポキシ樹脂の種類は、脂環式、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等があり、液状品として、各種エポキシ反応性希釈剤を添加してもよい。中でも脂環式エポキシ樹脂が好ましい。脂環式エポキシ樹脂は粘度が低いため充填性に優れているのでボイドが発生しにくい。また、ガラス転移温度を200℃以上まで上げることができ、必要とする耐熱温度に応じたガラス転移温度へ容易に調整できる。
【0018】
また、親水性又は疎水性の粒子を含む消泡剤として、例えば、シリコーンオイル等の媒体に親水性又は疎水性の粒子(粉末)を配合分散させたものを準備する。ここで、媒体としては、シリコーンオイルの他、疎水性の高い界面活性剤を用いることができるが、前者は非水系、後者は水系に向いている抑泡性消泡剤である。本実施形態では、樹脂材料はほとんどが非水系に該当するためシリコーンオイルを用いることが好ましい。また、親水性又は疎水性の粒子としては、親水性シリカ、疎水性シリカ等を用いることができる。消泡剤は、泡の発生を効果的に抑えることができる抑泡性消泡剤と泡を効果的に破泡する破泡性消泡剤があり、抑泡性は液面への気泡到達時に作用する事で液面から外部への気泡の成長を抑制するものでる。一方破泡性は液面から気泡が成長して膨らんだ後に作用し、気泡が割れやすくするものである。破泡性の場合、気泡自体は成長してしまうため、波長変換部材への樹脂材料の飛散や這い上がりの対策にはならない。
【0019】
また、媒体に配合分散させる親水性又は疎水性粒子の平均粒子径は、含浸させる対象物の空隙の大きさと保管時の粒子沈降を考慮して適宜設定されるが、例えば、0.001μm以上20μm以下であり、好ましくは、0.01μm以上10μm以下であり、より好ましくは、0.05μm以上5μm以下である。親水性又は疎水性の粒子の含有量は、例えば、媒体100重量部に対して、例えば、0.001重量部以上10重量部以下、好ましくは、0.01重量部以上5重量部以下、より好ましくは、0.1重量部以上3重量部以下である。
【0020】
以上準備した熱硬化性のエポキシ樹脂に、所定の量の消泡剤を加えて混合することにより、樹脂材料を準備する。消泡剤の含有量は、エポキシ樹脂100重量部に対して、例えば、0.001重量部以上10重量部以下、好ましくは、0.005重量部以上5重量部以下、より好ましくは、0.01重量部以上1重量部以下である。樹脂材料は、例えば、濡れ調整剤や粘度調整剤を含んでいてもよい。
また、樹脂材料は、熱衝撃時のクラック対策のためにフィラーを含んでいてもよく、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを用いることができる。
【0021】
(2)脱泡工程S12
脱泡工程S12では、準備した樹脂材料を塗布前に減圧で保持することにより脱泡する。
例えば、後述の塗布工程S13で、樹脂材料をシリンジに入れて塗布する場合には、シリンジに樹脂材料を充填して塗布前にシリンジごと真空脱泡器に入れて脱泡する。このように減圧して脱泡することにより、樹脂材料の調合時やシリンジへの充填時に含まれた、非常に小さく、浮力が小さいため浮上できない気泡を効率よく脱泡することができる。この脱泡時における真空度は、例えば、10Pa以上10-3Pa以下好ましくは10Pa以上10-2Pa以下より好ましくは10Pa以上10-1Pa以下の範囲に設定する。
また、本実施形態1の樹脂材料は、消泡剤を含んでいるので、脱泡工程S12において減圧した場合であっても大きな泡になって脱泡されることが抑制され、例えば、シリンジからの吹きこぼれを防止できる。
【0022】
(3)塗布工程S13
塗布工程S13では、脱泡した樹脂材料を金属焼結体の表面に塗布する。
塗布する樹脂量は、金属焼結体の空隙全体に充填された場合の樹脂量以上になるように設定される。具体的には、例えば、塗布する樹脂量は、金属焼結体の焼結密度と金属焼結体の全体の体積に基づいて金属焼結体の空隙の体積を求め、当該空隙体積以上となるように設定する。ここで、塗布する樹脂材料は、金属焼結体の空隙に充填することを考慮すると粘度は低い方が好ましいが、粘度を低くすると、以下のような課題がある。例えば、2つの部材を接合する接合部材として金属焼結体を用いる場合には、塗布する金属焼結体の表面は通常水平ではなく傾斜している。このような場合、塗布した樹脂材料は、水平方向に広がりワイヤーパッド等の樹脂材料を塗布するべきではない領域まで達するおそれがある。したがって、塗布した樹脂材料の水平方向への広がりを抑える工夫を凝らすことが好ましい。樹脂材料の水平方向への広がりを抑制する手段については、後述する実施形態において説明する。
【0023】
(4)樹脂含浸工程S14
樹脂含浸工程S14では、金属焼結体と表面に塗布した樹脂材料とを減圧して空隙内の気体を排出し、空隙に樹脂材料を含浸させる。含浸させる際の真空度は、金属焼結体における空隙の体積率及び空隙の大きさに基づき、過剰な泡立ちを抑えつつ空隙全体に樹脂材料が含浸されるように適宜調整するが、例えば、10Pa以上10-3Pa以下好ましくは10Pa以上10-2Pa以下より好ましくは10Pa以上10-1Pa以下の範囲に設定する。樹脂の塗布工程S13でチップ下に残る空気はある程度大きいため、自身の浮力で浮上していくので脱泡工程S12とは異なりある程度は常圧でもチップ下から抜けていくが、完全には抜けきらないため減圧が必要である。樹脂含浸工程S14において、実施形態1の樹脂含浸方法では上述したように、樹脂材料に親水性又は疎水性の粒子を有する消泡剤が含まれているので、樹脂材料を塗布した後に減圧しても空隙内の気体は樹脂材料表面で大きな泡に成長することなく小さい泡として脱泡される。このように、過剰な泡立ちを抑えて空隙内の気体を除去ことが可能になり、樹脂材料の飛散若しくは樹脂材料の不必要な広がりを抑制できる。また、樹脂材料それ自身に含まれている泡は、塗布前に減圧により除去されているので、樹脂材料それ自身に含まれている泡による樹脂材料の泡立ちを抑制できる。尚、消泡剤に含まれていた親水性又は疎水性の粒子(粉末)は、粒子であることから金属焼結体の空隙の中央部には侵入しにくく、また中央部に侵入する必要もない。すなわち、樹脂材料が塗布された金属焼結体の表面近傍に留っていても、その粒子による抑泡機能または破泡機能が金属焼結体の表面近傍において発揮され、樹脂材料の過剰な泡立ちは抑制される。
【0024】
(5)硬化工程S15
硬化工程S15では、空隙内に含浸させた樹脂材料を加熱により硬化させる。
【0025】
以上のように構成された実施形態1に係る樹脂含浸方法は、樹脂材料を塗布前に減圧することにより脱泡する脱泡工程S12を含んでいるので、塗布後の樹脂含浸工程S14において樹脂材料を減圧した場合であっても樹脂材料それ自身に含まれている泡による樹脂材料の過剰な泡立ちは抑制できる。
また、樹脂材料に親水性又は疎水性の粒子を有する消泡剤が含まれているので、樹脂材料を塗布した後に減圧しても空隙内の気体は樹脂材料内で大きな泡に成長することなく小さい泡として脱泡され、樹脂材料の過剰な泡立ちは抑制できる。
したがって、本実施形態1の樹脂含浸方法によれば、塗布した樹脂材料の飛散及び不必要な広がりを抑制しつつ金属焼結体の空隙に樹脂を含浸させることが可能になる。
【0026】
実施形態2.
実施形態2は、実施形態1の樹脂含浸方法を含む製造方法により作製される波長変換モジュールに係り、該波長変換モジュールは、例えば、半導体レーザー等の発光素子からの光を蛍光体によって波長変換して出射する。
以下、図2図4を参照しながら実施形態2の波長変換モジュールについて詳細に説明する。図2は、本開示に係る波長変換モジュールの上面図である。図3は、図2に示す波長変換モジュールのA-A線についての断面図である。図4は、図3の断面図の一部を拡大して示す断面図である。
【0027】
実施形態2の波長変換モジュール100は、基体30と、基体30上に設けられた波長変換部材10と、基体30と波長変換部材10とを接合する接合部材20と、を含む。
【0028】
実施形態2において、基体30は、凹部31aを有する基部31と、凹部31aの内面を含む基部31の上面に設けられた第1金属層32と、第1金属層32上に設けられた第2金属層33と、を含む。
また、波長変換部材10は、蛍光体板11と、蛍光体板11の上面に設けられた反射防止層12と、蛍光体板11の下面に設けられた接合層13と、を含む。
蛍光体板11は、例えば、イットリウムアルミニウムガーネットの焼結体からなるYAG板、ルテチウムアルミニウムアガーネットの焼結体からなるLAG板から構成することができ、好ましくは、YAG板により構成する。
反射防止層12は、例えば、SiO、Nb、TiO、等の金属酸化物または、例えば、SiN、GaN、AlN等の窒化物により構成することができ、好ましくは、SiOにより構成する。
接合層13は、蛍光体板11の下面に設けられた光遮蔽層13aと、光遮蔽層13aの下面に設けられた金属接合層13bと、を含む。光遮蔽層13aは、例えば、Al膜、SiO膜、Nb膜、TiO膜により構成することができ、好ましくは、Al膜により構成する。金属接合層13bは、例えば、Ag膜、Ni膜とAg膜の積層、Ag膜とAu膜の積層、Al膜とAg膜の積層、Au膜、Al膜とAu膜の積層、前記積層で密着性や加熱時のバリア層として任意の金属層を挟んだ積層等により構成することができ、好ましくは、Ag膜により構成する。
【0029】
実施形態2において、基体30と波長変換部材10とは、接合部材20を介して接合される。接合部材20は、空隙を含む多孔質構造の金属焼結体21と、金属焼結体21の外表面を覆う第1樹脂部51と空隙に含浸された第2樹脂部52とを含む樹脂50と、樹脂50中に分散された粒子53を含む。ここで、金属焼結体は、銀又は銅を含むことが好ましく、銀を含むことがより好ましい。また、第1樹脂部51と第2樹脂部52とはいずれも粒子53を含み得る。第2樹脂部52は、金属焼結体21の内部においては粒子53がほとんど含まれておらず、金属焼結体21の外表面付近に粒子53が配置されている。つまり、第2樹脂部52において、金属焼結体21の外表面付近における第2樹脂部52に含まれる粒子53の密度は、金属焼結体21の内部における第2樹脂部52に含まれる粒子53の密度よりも大きい。また、第1樹脂部51に分散された粒子53の密度は、金属焼結体21の内部における第2樹脂部52に分散された粒子53の密度より大きくなっている。
また、この分散された粒子53は、製造時において樹脂50を形成するための樹脂材料の泡が液面に到達した際に泡の表面に作用し、配列を乱す事によって泡表面を不安定化して、液面からの泡の成長を抑制する機能を有するものである。後述するように、粒子53の樹脂部材における泡抑制機能は第1樹脂部51内で発揮されればよく、第2樹脂部52は、実質的に粒子53は含んでいなくてもよい。
【0030】
また、接合部材20において、金属焼結体21は基体30に向かって広がったフィレットを有していてもよく、そのフィレットは波長変換部材10の側面の少なくとも一部を覆っていてもよい。金属焼結体21が波長変換部材10の側面の一部を覆うフィレットを含む場合、そのフィレットの表面は第1樹脂部51に覆われている。フィレット表面の第1樹脂部51の厚さは、1μm以上であることが好ましい。フィレット表面の第1樹脂部51の厚さが十分にあると、外気から金属焼結体が遮断されるため、金属焼結体の硫化や酸化から守る事ができる。フィレット表面の第1樹脂部51の厚みは、例えば断面SEM等で確認する事ができる。
【0031】
金属焼結体21は、接合部材20の厚さを一定以上の厚さにするためのスペーサ粒子を含んでいてもよく、これにより、基体と波長変換部材の間の金属焼結体21、すなわち接合部材20の厚さをスペーサ粒子の粒径と同じ又は厚くできる。スペーサ粒子は、ジルコニア粒子、ガラス粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子により構成することができ、好ましくは、ジルコニア粒子により構成する。スペーサ粒子の粒径は、確保すべき基体と波長変換部材の間隔を考慮して適宜設定されるが、例えば、20μm以上500μm以下の範囲、好ましくは、50μm以上300μm以下の範囲、より好ましくは、100μm以上200μm以下の範囲に設定する。
【0032】
以上のように構成された実施形態2の波長変換モジュール100は、以下詳述する実施形態1の樹脂含浸方法を含む製造方法により製造することによって、波長変換部材10の上面(出射面)が樹脂50を形成する際の樹脂材料による汚染がなく、波長変換効率の高い波長変換モジュールを提供することができる。
また、波長変換モジュール100は、実施形態1の樹脂含浸方法を含む製造方法により製造することによって、樹脂50の表面におけるブリームやブリードの発生を抑えることができ、波長変換モジュールを発光面側から見たときの意匠性が高い波長変換モジュールを提供することができる。
【0033】
以上のように構成された実施形態2の波長変換モジュール100は、凹部31aを形成するための環状の凸部を有するパッケージ構造の基体30を用いて構成した例により説明したが、例えば、基体として板状の基板を用いて構成してもよい。
基体として板状の基板を用いる場合、凹部31aを形成するための環状の凸部に代えて基体(基板)の上面に形成された、凹部31aを形成するための環状の凸部より低い低背構造の環状の凸部あるいは凹部を形成することが好ましい。低背構造の環状の凸部あるいは凹み部は、金属焼結体の厚さより低くてもよい。環状の凸部あるいは凹部があると、樹脂50を形成する際に表面張力によって樹脂50の広がりを止める事ができる。
【0034】
(波長変換モジュール100の製造方法)
波長変換モジュール100の製造方法は、図5に示すように、第1塗布工程S21と、配置工程S22と、接合工程S23と、実施形態1の樹脂含浸方法を含む含浸工程S24と、を含む。
第1塗布工程では、金属粉体を含む金属ペーストを準備し、前記金属ペーストを前記基体上に塗布する。
配置工程では、前記波長変換部材を前記塗布した金属ペースト上に配置する。
接合工程では、金属ペーストを加熱して金属粉体を焼結させて前記基体と前記波長変換部材とを空隙を含む多孔質構造の金属焼結体により接合する。
含浸工程では、実施形態1の樹脂含浸方法により金属焼結体の空隙に樹脂を含浸させる。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0035】
波長変換モジュール100の製造方法では、上述した波長変換部材10と基体30とを準備した後、第1塗布工程から含浸工程を実施する。
【0036】
1.第1塗布工程S21
ここでは、まず、金属粉体を含む金属ペーストを準備する。
(1)金属ペースト準備
以下の説明では、金属粉として銀粒子を使用する場合について説明し、金属ペーストを銀ペーストと称する。
(1-1)銀粒子の準備
準備する銀粒子の形状は特に限定されるものではなく、例えば、略球状であってよく、フレーク状であってもよい。なお、本明細書において、銀粒子が「略球状である」とは、銀粒子の長径aと短径bとの比で定義されるアスペクト比(a/b)が2以下であることを意味し、銀粒子が「フレーク状である」とは、アスペクト比が2より大きいことを意味する。銀粒子の長径aおよび短径bは、SEMによる画像解析により測定することができる。
【0037】
準備する銀粒子は、平均粒子径が、例えば、0.3μm以上、好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは1μm以上であり、さらに好ましくは2μm以上ある。銀粒子は、平均粒径が好ましくは10μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。平均粒径が0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であると、キャッピング剤のような保護膜を銀粒子表面に形成しなくても銀粒子が凝集しないため、保護膜を熱分解する必要がなくなり、低温で焼結することができる。銀粒子の粒径が大きいことにより、銀ペーストの流動性が向上する。このため、同じ流動性(作業性)を有する場合に銀ペーストがより多くの銀粒子を含むことが可能になる。平均粒径が10μm以下であり、より好ましくは5μm以下であると、銀粒子の比表面積が大きくなることによって融点降下現象が発生し、その結果、焼結温度を低くすることができる。銀粒子の粒径は、レーザー回折法により測定することができる。本明細書において、「平均粒径」は、レーザー回折法により測定した体積基準のメジアン径(粒度分布から求めた積算体積頻度が50%の値)を意味する。
【0038】
準備する銀粒子は、好ましくは、粒径が0.3μm未満の銀粒子の含有量が5質量%以下であり、より好ましくは、粒径が0.5μm以下の銀粒子の含有量が15質量%以下である。銀粒子は、粒径が小さくなるにしたがってより低い温度で焼結する傾向にある。特に、ナノサイズの銀粒子は、マイクロサイズの銀粒子よりも低温で焼結する。このため、銀ペースト中のナノサイズの銀粒子の含有量が多いと、低温で焼結が開始してしまい、銀粒子同士が十分に接触していない状態で融着が生じるおそれがある。
【0039】
準備する銀粒子は、その表面に銀の酸化被膜や硫化被膜等が微量に存在していてもよい。銀は貴金属であるため、銀粒子自体は酸化されにくく、非常に安定であるが、ナノ領域で見ると空気中等の硫黄や酸素等を吸着しやすく、銀粒子の表面に薄い被膜が形成される傾向にある。銀粒子における酸化被膜や硫化被膜等の厚みは好ましくは50nm以下、より好ましくは10nm以下である。
【0040】
1-2.銀粒子と有機溶剤との混合
ここでは、準備した銀粒子と分散媒である有機溶剤とを混合する。
さらに銀ペーストは、樹脂等を含んでいてもよい。
混合する際の銀粒子の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは85質量%以上である。混合可能な樹脂は、後述する焼成時の加熱によって分解し、形成される接合体中に残存しないものである。樹脂は、例えば、ポリスチレン(PS)やポリメチルメタクリレート(PMMA)であってよい。銀粒子を分散媒である有機溶剤と混合することにより、銀ペーストを基体の表面に所望の厚さで塗布することが容易になる。ここで使用する有機溶剤は、例えば、1種類の有機溶剤であっても、2種類以上の有機溶剤の混合物であってもよく、例えば、ジオールとエーテルとの混合物を用いることができる。有機溶剤の沸点は、150℃以上250℃以下の範囲であることが好ましい。沸点が150℃以上であると、加熱工程までの間に乾燥してしまうことによる、銀粒子の大気による汚染やチップの脱落を防ぐことができる。沸点が250℃以下であると、加熱工程での揮発速度が速くなり、焼結を促進することができる。
【0041】
銀粒子および分散媒に加えて、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、希釈溶剤等の添加剤や、スペーサ粒子等を混合してもよい。銀ペーストにおける添加剤の含有量は、添加剤の総量が銀ペーストに対して5質量%以下、例えば0.5質量%以上3質量%以下であってよい。特にスペーサ粒子を添加する事で金属ペーストの厚みを再現性良く制御できるようになり、これにより樹脂を安定して含浸できるようになるので好ましい。
尚、以上の説明では、銀粒子を用いて構成した銀ペーストを例に説明したが、本実施形態は、銀ペーストに限定されるものではなく、銀粒子以外の、例えば、銅粒子等の他の金属粒子を用いて構成した金属ペーストであってもよい。
【0042】
(2)準備した金属ペーストを基体上に塗布
ここでは、基体30上に金属ペーストを塗布する。
具体的には、凹部31aの底面上に準備した金属ペーストを塗布する。
金属ペーストの塗布方法は、例えば、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、ディスペンサー印刷法、グラビア印刷法、スタンピング、ディスペンス、スキ-ジ印刷、シルクスクリ-ン印刷、噴霧、刷毛塗り、コーティング法等の公知の方法を適宜採用することができる。金属ペーストの塗布厚みは用途等に応じて適宜設定することができ、例えば1μm以上1000μm以下、好ましくは5μm以上800μm以下、より好ましくは10μm以上500μm以下とすることができる。
【0043】
2.配置工程S22
波長変換部材10を凹部30aの底面上に塗布した金属ペーストの上に載置する。例えば、金属ペーストの上方から載置し、波長変換部材10を凹部30aの底面の間の金属ペーストが所定の厚さになり、好ましくは、波長変換部材10の側面の一部に金属ペーストが這い上がるように、例えば、波長変換部材10を押圧する。
【0044】
3.接合工程S23
接合工程では、金属ペーストを加熱して有機溶剤を除去し、金属粉を融着させることにより金属粉体を焼結させて基体30と波長変換部材10とを空隙を含む多孔質構造の金属焼結体により接合する。
ここでの加熱焼成は、必要に応じて還元雰囲気中で加熱した後、酸化雰囲気中で焼成することもできる。
【0045】
(1)加熱温度
(1-1)還元雰囲気中での加熱
還元雰囲気中での加熱は、上述したように必要に応じて実施されるものであり、任意である。還元雰囲気中での加熱は、金属粉の表面に微量に存在する酸化被膜等を還元により除去するものであり、これにより、金属粉の表面に金属原子を露出させて金属粉表面における金属原子の表面拡散が促進される。そのため、後続の酸化雰囲気中での加熱において、低温で金属粒子の焼結を促進することができる。
【0046】
還元雰囲気中での加熱および後述する酸化雰囲気中での加熱は、別々の装置において行ってよいが、同じ装置で行うことが好ましく、これにより、還元雰囲気中での加熱と酸化雰囲気中での加熱とを同一の装置において連続して実施することができる。還元雰囲気は、ギ酸含有雰囲気または水素含有雰囲気であることが好ましく、例えば、窒素等の不活性ガスにギ酸または水素を混合したものであることが好ましい。還元雰囲気は、より好ましくはギ酸を含み、例えば、窒素等の不活性ガスにギ酸を混合したものであることが好ましい。
【0047】
還元雰囲気中での加熱は、例えば、300℃未満で行い、好ましくは280℃以下であり、より好ましくは260℃以下、更に好ましくは200℃以下である。還元雰囲気中での加熱は、好ましくは150℃以上、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは180℃である。加熱温度が150℃以上、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは180℃以上であると、銀粒子表面に存在する酸化被膜の還元反応の反応速度を速くすることができる。還元雰囲気中での加熱を行うときの圧力は特に限定されるものではなく、例えば大気圧であってよい。
【0048】
(1-2)酸化雰囲気中での焼成
ここでは、酸化雰囲気中での加熱焼成することにより、金属粒子同士を融着させて、金属焼結体を形成する。酸化雰囲気は、好ましくは酸素含有雰囲気であり、より好ましくは大気雰囲気である。酸化雰囲気が酸素含有雰囲気である場合、雰囲気中の酸素濃度は2以上21体積%以下であることが好ましい。雰囲気中の酸素濃度が高いほど、金属粒子表面において金属原子の表面拡散が促進されて、金属粒子同士を融着させやすくなる。酸素濃度が2体積%以上であると、低い加熱温度で融着させることができ、酸素濃度が21体積%以下であると、加熱装置に加圧機構が不要となり、工程コストが低減できる。
【0049】
(2)焼成温度
酸化雰囲気中での焼成温度は、例えば、300℃以下で行い、好ましくは280℃以下であり、より好ましくは260℃以下、更に好ましくは200℃以下である。酸化雰囲気中での焼成の前に、還元雰囲気中での加熱を実施すると、より低温での焼成が可能になる。
酸化雰囲気中での焼成は、好ましくは150℃以上、より好ましくは160℃以上である。焼成温度を150℃以上、より好ましくは160℃以上とすることにより、電気抵抗率が低くかつ熱伝導特性が良好な金属焼結体を形成することができる。
酸化雰囲気中での焼成は、加圧してもよいし、例えば大気圧であってよい。
【0050】
4.含浸工程S24
含浸工程では、実施形態1の樹脂含浸方法にしたがって樹脂を含浸させる。
ここでは、まず、親水性又は疎水性の粒子を含む消泡剤を含む樹脂材料を準備する(樹脂材料準備工程S11)。
【0051】
そして、準備した樹脂材料を塗布前に減圧することにより脱泡する(脱泡工程S12)。例えば、シリンジに樹脂材料を充填して塗布前にシリンジごと真空脱泡器に入れて脱泡する。
次いで、脱泡した樹脂材料を金属焼結体の表面に塗布する(塗布工程S13)。
ここでは、波長変換部材10の外側の凹部31a内、すなわち凹部31aの側面とフィレットの表面の間の領域に、例えば、シリンジにより脱泡後の樹脂材料を塗布する。
【0052】
次に、金属焼結体の表面(フィレットの表面)に塗布した樹脂材料を減圧して空隙内の気体を排出し、空隙に樹脂材料を含浸させる(樹脂含浸工程S14)。
最後に、空隙内に含浸させた樹脂材料を加熱により硬化させる(硬化工程S15)。
以上のようにして、実施形態2の波長変換モジュールは作製される。
【0053】
以上の波長変換モジュールの製造方法によれば、樹脂含浸工程における減圧による過剰な泡立ちを抑えて波長変換部材10の発光面に樹脂材料を這い上がらせることなく樹脂材料を金属焼結体21の空隙に含浸させて樹脂部50を形成することができる。
したがって、該製造方法により作製される波長変換モジュールは、金属焼結体21の空隙に樹脂を含むことにより熱応力耐久性を高くでき、かつ発光面に樹脂材料による汚染がないことにより光取り出し効率の低下を抑制でき、発光効率を高くできる。
【実施例
【0054】
実施例1
実施例1では、以下のようにして、図2に示す波長変換モジュール100を作製した。
基体30の準備
凹部31aを有し、銅からなる基部31に、第1金属層32として、厚さ、2μmのNiメッキ層が設けられ、第2金属層33として、厚さ0.05μmのAuメッキ層が設けられた、基体30を準備した。
【0055】
(2)波長変換部材10の作製
ここでは、まず、蛍光体板11として、厚さ0.2mmのアルミナ一体焼結型のYAG板を準備した。ここで、準備したYAG板は、Y、Al、CeOを含む。
そして、YAG板の下面にAl2O3膜を1μmの厚さにスパッタリングにより成膜し、そのAl膜の上にAg膜を0.5μmの厚さにスパッタリングにより成膜した。
また、YAG板の上面には、SiO膜を0.11μmの厚さにスパッタリングにより成膜することにより複数の波長変換部材10が一体化された波長変換部材板を作製した。
次に、波長変換部材板を、ダイシングで個片化して、5.5mm×5.5mm×0.2mmの波長変換部材10を作製した。
【0056】
(3)金属ペースト準備、塗布、波長変換部材の配置
波長変換部材10と基体30とを接合する金属ペーストとして、銀ペーストを準備した。銀ペーストは、まず有機溶剤である2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(0.852g)とジエチレングリコールモノブチルエーテル(0.213g)および、アニオン性液状界面活性剤(三洋化成工業株式会社製、製品名「ビューライトLCA-H」、ラウレス-5-カルボン酸、25℃で液状、0.150g)を、自転・公転ミキサー(商品名「あわとり錬太郎AR-250」、株式会社シンキー製)にて1分間攪拌、次いで15秒間脱泡のサイクルを1サイクル用いて攪拌し、溶剤混合物を得た。
次に、フレーク状銀粒子(福田金属箔粉工業株式会社製、製品名「AgC-239」、フレーク状、平均粒径(メジアン径)が2.5μm、比表面積が0.7m2/g、粒径0.3μm未満の粒子の含有量は2質量%、粒径0.5μm以下の粒子の含有量は6質量%、13.776g)と、スペーサ粒子として粒径100μmのジルコニア粒子(株式会社ニッカトー製、商品名「YTZボール」、0.009g)を計量して前記溶剤混合物に加えた。得られた混合物を、自転・公転ミキサー(商品名「あわとり錬太郎AR-250」、株式会社シンキー製)にて1分間攪拌および15秒間脱泡のサイクルを、1サイクル用いて攪拌し、(樹脂を含まない) 銀ペーストを得た。
次に、基体30の凹部31aの底面に、準備した銀ペーストを塗布した。
そして、塗布した銀ペーストの上に、波長変換部材10をダイボンダーで配置した。
【0057】
(4)接合
波長変換部材を配置した基体30をオーブンに入れて焼成することにより焼成銀ペーストに含まれる銀粉体を大気中で焼結させて基体30と波長変換部材10接合する。
焼成温度は、0.24℃/minの昇温速度で200℃まで昇温し、200℃で1時間保持して銀粉体を焼結させた。
【0058】
(5)樹脂含浸
まず、含浸樹脂として、エポキシ樹脂セルビーナスW221(株式会社ダイセル社製、2液タイプ、熱硬化型、5.000g)に抑泡型シリコーンオイルコンパウンドタイプ(シリカ粒子を含む)消泡剤KS-66(信越化学工業株式会社製、0.005g、0.1%)を添加することにより樹脂材料を作製した。
【0059】
(6)樹脂材料の塗布前脱泡
準備した樹脂材料を塗布用のシリンジに充填してシリンジごと真空脱泡器で脱泡した。
脱泡は、到達真空度0.67Paの油回転真空ポンプ(アルバック社製、GLD-136C)を用いて30秒の条件で行った。
【0060】
(7)樹脂材料の塗布
脱泡後の樹脂材料が入ったシリンジを用いてエアーディスペンサーで樹脂材料を凹部31a内に塗布した。具体的には、凹部31aの内周壁と波長変換部材の外周側面の間に、樹脂材料を充填することにより、銀焼結体の波長変換部材の周りに形成されたフィレットの表面に樹脂材料を塗布した。
【0061】
(8)樹脂材料の含浸
樹脂材料を塗布した後、波長変換部材10を接合した基体30を、真空脱泡機内で減圧し、銀焼結体の空隙のエアーを抜き、樹脂材料を含浸させた。減圧は、到達真空度0.67Paの油回転真空ポンプ(アルバック社製、GLD-136C)を用いて10分の条件で行った。
【0062】
(9)樹脂硬化
波長変換部材10を接合した基体30全体を、オーブンを用いて大気中で加熱し、樹脂材料を硬化させた。硬化条件は、150℃、1時間とした。
【0063】
以上のようにして作製した実施例1の波長変換モジュールは、接合部材の空隙全体に樹脂を含浸させることができかつ波長変換部材の上面(発光面)に樹脂材料による汚染がなく、効率よく波長変換させることが可能であった。このように信頼性の高い波長変換モジュールを製作することができる。
【0064】
比較例1
消泡剤を含んでいない含浸樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例1の波長変換モジュールを作製した。
比較例1の波長変換モジュールは、波長変換部材の上面(発光面)に樹脂材料による汚染があり、波長変換効率が実施例1の波長変換モジュールに比較して劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本実施形態に係る樹脂含浸方法は、半導体素子やサブマウント基板の固定などに使用することができる。また、波長変換モジュール及びその製造方法は、自動車のヘッドライト、照明器具、プロジェクターなどに利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 波長変換部材
11 蛍光体板
12 反射防止層
13 接合層
13a 光遮蔽層
13b 金属接合層
20 接合部材
21 金属焼結体
30 基体
31 基部
31a 凹部
32 第1金属層
33 第2金属層
50 樹脂
51 第1樹脂部
52 第2樹脂部
53 粒子
100 波長変換モジュール
図1
図2
図3
図4
図5