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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】光学部品の製造方法及び光学部品
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20240612BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20240612BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20240612BHJP
   C09K 11/00 20060101ALI20240612BHJP
   C04B 35/117 20060101ALI20240612BHJP
   C04B 35/80 20060101ALI20240612BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20240612BHJP
【FI】
G02B5/20
C09K11/80
C09K11/02 Z
C09K11/00 C
C04B35/117
C04B35/80 300
H01L33/50
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022035153
(22)【出願日】2022-03-08
(65)【公開番号】P2023130709
(43)【公開日】2023-09-21
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】平井 利幸
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-164376(JP,A)
【文献】特開2019-041044(JP,A)
【文献】特開2020-052234(JP,A)
【文献】特開2019-186300(JP,A)
【文献】特開2022-016603(JP,A)
【文献】特開2011-256371(JP,A)
【文献】米国特許第09287106(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
C09K 11/80
C09K 11/02
C09K 11/00
C04B 35/117
C04B 35/80
H01L 33/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体を含む焼結体と、酸化アルミニウムを含む無機酸化物及び有機系バインダーを含む成形体用組成物と、を準備することと、
前記焼結体の周囲の少なくとも一部を覆うように前記成形体用組成物を配置して成形体とすることと、
前記焼結体と前記成形体を0.5MPa以上200MPa以下の範囲内の加圧された不活性雰囲気中で焼成することと、を含み、
前記成形体と、前記焼結体と、を備える光学部品の製造方法。
【請求項2】
前記焼成することにおいて、前記焼成の温度が1300℃以上1600℃以下の範囲内である、請求項1に記載の光学部品の製造方法。
【請求項3】
前記準備することにおいて、前記成形体用組成物が、前記無機酸化物100質量部に対して、前記有機系バインダー1質量部以上20質量部以下の範囲内で含む、請求項1又は2に記載の光学部品の製造方法。
【請求項4】
前記準備することにおいて、前記成形体用組成物が、分散剤と、溶媒と、を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の光学部品の製造方法。
【請求項5】
前記準備することにおいて、前記成形体用組成物が、前記成形体用組成物の全体量に対して、前記有機系バインダーを1.0質量%以上10.0質量%以下の範囲内、前記分散剤を0.1質量%以上5.0質量%以下の範囲内、前記溶媒を8質量%以上42質量%以下の範囲内で含む、請求項4に記載の光学部品の製造方法。
【請求項6】
前記準備することにおいて、前記成形体用組成物が、前記成形体用組成物の全体量に対して、前記無機酸化物を55質量%以上90質量%以下の範囲内で含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の光学部品の製造方法。
【請求項7】
前記準備することにおいて、前記成形体用組成物が、前記無機酸化物100質量部に対して、黒色顔料を1質量部以下含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の光学部品の製造方法。
【請求項8】
前記準備することにおいて、前記蛍光体が、希土類アルミン酸塩蛍光体を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の光学部品の製造方法。
【請求項9】
前記準備することにおいて、前記焼結体が、上面、下面及び側面を有し、
前記成形体とすることにおいて、前記焼結体の側方を取り囲むように、前記成形体用組成物を配置する、請求項1から8のいずれか1項に記載の光学部品の製造方法。
【請求項10】
蛍光体を含み、上面、下面及び側面を有する焼結体と、
前記焼結体の側方に配置され、酸化アルミニウムを含む無機酸化物及び全有機体炭素を含む成形体と、を備え、
前記成形体の全体量に対して、下記条件で測定した前記全有機体炭素が100質量ppm以上9000質量ppm以下の範囲内であ
前記成形体の明度L値が50以上90以下の範囲内である光学部品。
測定条件
固体試料燃焼装置を用いて前記成形体を燃焼し、全有機体炭素計を用いて前記成形体中の全有機体炭素を測定し、前記成形体の全体量に対する前記有機体炭素の量を測定する。
【請求項11】
前記成形体は、前記焼結体を取り囲むように配置される、請求項10に記載の光学部品。
【請求項12】
前記成形体は、前記焼結体の側面に接する、請求項10又は11に記載の光学部品。
【請求項13】
前記蛍光体が、希土類アルミン酸塩蛍光体を含む、請求項10から12のいずれか1項に記載の光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品の製造方法及び光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
光を透過する透光性の部材と、例えば放熱又は光の反射のために透光性部材とは異なる部材を組み合わせた光学部品がある。
【0003】
特許文献1には、着色ジルコニア焼結体と、透光性ジルコニア焼結体と、を熱間等方圧加圧(HIP)処理して接合させたセラミックス焼結体が開示されている。特許文献2には、光透過性基板の表面の一部に蛍光体膜を設け、蛍光体膜が設けられている部分とは別の部分に放熱部が設けられている光学部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-14471号公報
【文献】国際公開第2017/043121号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光学部品は、透過する光の光束を維持し、透光性部材と透光性部材以外の部分の境界が明確となるように見切りの向上が求められる場合がある。
本実施形態の一態様は、見切りがよい光学部品の製造方法及び光学部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様は、蛍光体を含む焼結体と、酸化アルミニウムを含む無機酸化物及び有機系バインダーを含む成形体用組成物と、を準備することと、前記焼結体の周囲の少なくとも一部を覆うように前記成形体用組成物を配置して成形体とすることと、前記焼結体と前記成形体を0.5MPa以上200MPa以下の範囲内の加圧された不活性雰囲気で焼成することと、を含み、前記成形体と、前記焼結体とを備える光学部品の製造方法である。
【0007】
第2態様は、蛍光体を含み、上面、下面及び側面を有する焼結体と、前記焼結体の側方に配置され、酸化アルミニウムを含む無機酸化物及び全有機体炭素を含む成形体と、を備え、前記全有機体炭素は、成形体の全体量に対して100質量ppm以上9000質量ppm以下の範囲内である光学部品である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、見切りがよい光学部品の製造方法及び光学部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】光学部品の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図2】光学部品の製造方法の一態様を示す概略平面図である。
図3A図2のIIIA-IIIA’線における概略断面図である。
図3B】光学部品の製造方法の一態様を示す概略断面図である。
図3C】光学部品の製造方法の一態様を示す概略断面図である。
図3D】光学部品の製造方法の一態様を示す概略断面図である。
図4】光学部品の製造方法の一態様を示す概略断面図である。
図5】光学部品の一例を示す概略断面図である。
図6A】発光装置の一例を示す概略平面図である。
図6B図6AのVIB―VIB’線における概略断面図を示す。
図7】実施例1に係る光学部品の平面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、光学部品の製造方法及び光学部品を実施形態に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は、以下の光学部品の製造方法及び光学部品に限定されない。なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係は、JIS Z8110に従う。また、本明細書において、セラミックスは、1000℃以下の温度下において、あらゆる無機非金属材料をいう。
【0011】
光学部品の製造方法は、蛍光体を含む焼結体と、酸化アルミニウムを含む無機酸化物及び有機系バインダーを含む成形体用組成物と、を準備することと、焼結体の周囲の少なくとも一部を覆うように成形体用組成物を配置して成形体とすることと、焼結体と成形体を0.5MPa以上200MPa以下の範囲内の加圧された不活性雰囲気中で焼成することと、を含み、成形体と、焼結体と、を備える光学部品が得られる。
【0012】
光学部品の製造方法は、蛍光体を含む焼結体の周囲の一部を覆うように、酸化アルミニウムを含む無機酸化物及び有機系バインダーを含む成形体用組成物を配置して成形体とし、焼結体と成形体を0.5MPa以上200MPa以下の範囲内の加圧された不活性雰囲気で焼成する。このため、成形体中に有機系バインダーに含まれる有機物由来の炭素が含有され、焼結体と成形体が一体となった光学部品が得られる。成形体は、有機系バインダー由来の炭素を含有するため、グレー色となり、焼結体と成形体との色のコントラストにより、焼結体と成形体の境界が明確となり、見切りが向上する。焼結体と成形体の見切りを向上させた光学部品は、エッジの効いた見切りのよい光を放出することができ、光の出力を高めることができる。
【0013】
光学部品は、例えば黒色顔料を含む樹脂を硬化させた硬化部材を備えていないため、焼結体と樹脂の密度が異なり、焼結体と硬化部材の配列間隔によっては、樹脂を硬化させた硬化部材に割れが発生する虞がない。
光学部品は、例えば放熱性を向上させるために黒色に近い色となる多量の黒色顔料が含まれている部材を備えていないため、多量に黒色顔料が含有された部材の密度が低下し、強度が低下する虞がない。また、光学部品は、多量の黒色顔料を含む部材を備えていないため、黒色顔料を多く含む部材が外部の光を吸収しやすく、光学部品から出射される光束が逆に低下する虞がない。
【0014】
図1は、光学部品の製造方法の一例を示すフローチャートである。図1を参照にして、光学部品の製造方法を説明する。光学部品の製造方法は、焼結体と成形体用組成物を準備することS101と、焼結体の周囲に成形体用組成物を配置して成形体とすることS102と、焼結体と成形体を加圧された不活性雰囲気中で焼成することS103と、を含む。
【0015】
光学部品の製造方法は、蛍光体を含む焼結体と、酸化アルミニウムを含む無機酸化物及び有機系バインダーを含む成形体用組成物と、を準備すること、を含む。図1において、光学部品の製造方法における「蛍光体を含む焼結体と、酸化アルミニウムを含む無機酸化物及び有機系バインダーを含む成形体用組成物と、を準備すること」は、「焼結体と成形体用組成物を準備することS101」に相当する。
【0016】
焼結体は、蛍光体を含む。蛍光体は、無機材料からなる蛍光体であることが好ましい。蛍光体は、希土類アルミン酸塩蛍光体を含むことが好ましい。蛍光体は、希土類アルミン酸塩蛍光体とは組成が異なる蛍光体、例えば窒化物蛍光体を含んでいてもよい。
【0017】
希土類アルミン酸塩蛍光体は、下記式(I)で表される組成式に含まれる組成を有する蛍光体が挙げられる。
(R 1-aCe(AlGa12 (I)
(前記式(I)中、Rは、Y、Gd、Lu及びTbからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、a、b及びcは、0<a≦0.22、0≦b≦0.4、0<c≦1.1、0.9≦b+c≦1.1を満たす。)
【0018】
窒化物蛍光体は、下記式(II)で表される組成式に含まれる組成を有する蛍光体、又は、下記式(III)で表される組成式に含まれる組成を有する蛍光体が挙げられる。
Ca(Si,Al)12(O,N)16:Eu (II)
(式(II)中、vは0<v≦2を満たす数である。)
Si12-(m+n)Alm+n16-n:Eu (III)
(式(III)中、Mは、Li、Mg、Ca、Sr、Y及びランタノイド元素(但し、LaとCeを除く。)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、k、m、nは、0<k≦2.0、2.0≦m≦6.0、0≦n≦1.0を満たす数である。)
本明細書において、組成式中、カンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、これら複数の元素のうち少なくとも一種の元素を組成中に含有していることを意味し、複数の元素から二種以上を組み合わせて含んでいてもよい。本明細書において、蛍光体の組成を表す式中、コロン(:)の前は母体結晶を構成する元素及びそのモル比を表し、コロン(:)の後は賦活元素を表す。
【0019】
焼結体は、蛍光体と、蛍光体の組成とは異なる組成を有するセラミックスを含んでいてもよい。焼結体は、蛍光体と、蛍光体の組成とは異なる組成を有するセラミックスと、からなることが好ましい。セラミックスは、光透過性を有するセラミックスであることが好ましい。セラミックスは、酸化アルミニウムを含むことが好ましい。セラミックスは、酸化アルミニウムの他に、酸化イットリウムを含むことが好ましい。セラミックスは、希土類元素を含むアルミン酸塩を含んでいてもよい。セラミックスは、例えばイットリウムアルミニウムガーネットを含む、下記式(IV)で表される組成式に含まれる組成を有する希土類アルミン酸塩、イットリウムアルミニウムペロブスカイト、イットリウムアルミニウムモノクリニック、アルミン酸イットリウムからなる群から選択される少なくとも1種の酸化物を含んでいても良い。焼結体は、蛍光体とは異なる組成を有するセラミックスを1種以上含有してもよく、2種以上含有してもよい。
Al12 (IV)
(前記式(IV)中、Rは、Y、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。)
【0020】
焼結体は、例えば特願2020-205735号、特開2019-135543号公報を参照にして準備してもよい。焼結体は、上面、下面及び側面を有する形状の焼結体を準備することが好ましい。上面、下面及び側面を有する焼結体は、例えば、上面、下面及び4つの側面を有する直方体が挙げられる。焼結体の形状は、湾曲する1つの側面を有する円柱状体でもよい。焼結体の形状は、直方体、立方体、柱状体、錐台状体の種々の形状でもよい。
【0021】
成形体用組成物は、酸化アルミニウムを含む無機酸化物及び有機系バインダーを含む。成形体用組成物は、分散剤と、溶媒と、を含んでいてもよい。成形体用組成物は、さらに黒色顔料を含んでいてもよい。
【0022】
成形体用組成物に含まれる酸化アルミニウムは、粉体状の酸化アルミニウムであってもよい。酸化アルミニウムは、酸化アルミニウムの純度が99.0質量%以上であることが好ましい。酸化アルミニウムの純度が高いと、焼結体と成形体との結合性を高め、光学部品の密度を高めることができる。酸化アルミニウムの純度は、99.50質量%以上であることがより好ましく、99.99質量%以上でもよい。酸化アルミニウムの純度は酸化アルミニウム粒子を800℃で1時間、大気雰囲気で焼成し、焼成後の酸化アルミニウムの質量を焼成前の酸化アルミニウムの質量で除すことによって測定することができる。酸化アルミニウムの純度は、例えば、以下の式によって算出することができる。酸化アルミニウムの純度は、カタログに記載された値を参照にすることもできるが、不純物等が付着し、カタログに記載された値の純度と同じ値ではない場合がある。
酸化アルミニウムの純度(質量%)=(焼成後の酸化アルミニウム粒子の質量÷焼成前の酸化アルミニウム粒子の質量)×100
【0023】
酸化アルミニウムが粒子状である場合、酸化アルミニウム粒子は、中心粒径が0.1μm以上1.3μm以下の範囲内であることが好ましく、0.15μm以上1.2μm以下の範囲内でもよく、0.2μm以上1.0μm以下の範囲でもよい。酸化アルミニウム粒子又は後述する無機酸化物粒子の中心粒径は、レーザー回折粒度分布測定法で測定した粒度分布における累積頻度50%の粒径を用いることができる。酸化アルミニウム粒子又は後述する無機酸化物粒子の中心粒径は、カタログに記載された値を参照にしてもよい。
【0024】
成形体用組成物に含まれる無機酸化物は、酸化イットリウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、及び酸化ルテチウムからなる群から選択される少なくとも1種の酸化アルミニウム以外の無機酸化物を含んでいてもよく、酸化イットリウムを含んでいてもよい。成形体用組成物に含まれる無機酸化物が、酸化アルミニウムと、酸化アルミニウム以外の無機酸化物と、を含んでいると、成形体用組成物からなる成形体と焼結体を焼成するときに、酸化アルミニウムと、酸化アルミニウム以外の無機酸化物とが反応する。例えば無機酸化物が酸化イットリウムである場合、酸化アルミニウムと酸化イットリウムとの反応が進むと、結晶構造がペロブスカイト構造からガーネット構造に変化し体積膨張が起こる。成形体と焼結体を焼成するときに、成形体の体積膨張が起こると、成形体と焼結体がより密着し、クラックの発生を抑制することができる。無機酸化物の純度は、カタログ値で99.9質量%以上(3N以上)であることが好ましく、99.99質量%以上(4N以上)であることがより好ましい。無機酸化物の純度が高いと、焼結体と成形体との結合性を高め、光学部品の密度を高めることができる。酸化アルミニウムと酸化アルミニウム以外の無機酸化物の配合比率は、酸化アルミニウムと酸化アルミニウム以外の無機酸化物の合計量100質量%に対して、酸化アルミニウムが、70質量%以上99質量%以下の範囲内であることが好ましく、75質量%以上98質量%以下の範囲内でもよく、80質量%以上97質量%以下の範囲内でもよい。無機酸化物が粒子状である場合、無機酸化物粒子は、中心粒径が0.01μm以上1.3μm以下の範囲内であることが好ましく、0.02μm以上1.2μm以下の範囲内でもよく、0.05μm以上1.0μm以下の範囲内でもよい。
【0025】
有機系バインダーは、有機物を含んでいればよい。有機物は、ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、セルロース系樹脂及び合成ワックスからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。ビニル系樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂は、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート及びポリメチルメタクリレート等が挙げられる。本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」と「メタクリル」の両方を包含することを意味する。また、アクリロイル基は、ビニル基に含まれず、(メタ)アクリル系樹脂は、ビニル系樹脂に含まれない。有機系バインダーは、水性エマルジョンでもよい。有機系バインダーが水性エマルジョンである場合、有機バインダーの固形分濃度は、35質量%以上45質量%以下の範囲内であることが好ましく、38質量%以上42質量%以下の範囲内でもよい。有機バインダーの固形分濃度は、カタログの値を参照することもできる。
【0026】
成形体用組成物中の有機系バインダーの含有量は、酸化アルミニウムを含む無機酸化物の100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下の範囲内であることが好ましく、1.1質量部以上19質量部以下の範囲内でもよい。成形体用組成物中の有機系バインダーの含有量が、前述の範囲内であると、焼結体の周囲の少なくとも一部を覆うように成形体用組成物を配置して成形体とする際に、焼結体と成形体との隙間の生成を抑制して、焼結体と成形体との密着性を高めた光学部品を得ることができる。成形体用組成物中の有機系バインダーの含有量が、前述の範囲内であると、焼結体と一体となった成形体に有機系バインダー由来の炭素を含有させて成形体をグレー色とすることができ、焼結体と成形体との色のコントラストにより、焼結体と成形体の境界が明確となり、見切りを向上することができる。
【0027】
成形体用組成物は、分散剤が含有されていてもよい。成形体用組成物中に分散剤を含むことによって、成形体用組成物中の酸化アルミニウムの分散性が向上され、密度にむらがなく、焼成により密度の高い成形体を得ることができる。分散剤は、水溶性の分散剤であることが好ましく、アンモニウムを含む分散剤であることが好ましい。分散剤は、ポリアクリル酸アンモニウムを含む分散剤、ポリカルボン酸アンモニウムを含む分散剤が挙げられる。成形体用組成物に分散剤が含まれる場合は、分散剤に含まれる有機物も、成形体に含まれる炭素源となる。
【0028】
成形体用組成物は、溶媒が含有されていてもよい。溶媒は、水、有機溶媒及びその混合物が挙げられる。成形体用組成物が溶媒を含んだスラリーであると、後述するスリップキャスト法(泥漿鋳込み成形法)により、焼結体の周囲に成形体用組成物を配置しやすく、スラリーから成形体を形成しやすい。水は、脱イオン水を用いることができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール等が挙げられる。
【0029】
成形体用組成物は、黒色顔料が含有されていてもよい。成形体用組成物に黒色顔料が含有される場合は、酸化アルミニウムを含む無機酸化物の100質量部に対して、黒色顔料が1質量部以下含まれることが好ましい。成形体用組成物に黒色顔料が含まれる場合は、黒色顔料に含まれる炭素も、成形体に含まれる炭素源となる。成形体用組成物に黒色顔料を含むことによって、有機系バインダー由来の炭素とともに黒色顔料由来の炭素も成形体に含有され、焼結体と成形体との色のコントラストが大きくなり、焼結体と成形体の境界をより明確にして、見切りを向上することができる。黒色顔料は、酸化アルミニウムを含む無機酸化物の100質量部に対して、0.01質量部以上1.0質量部以下の範囲内でもよく、0.05質量部以上でもよく、0.1質量部以上でもよい。黒色顔料は、カーボンブラック等が挙げられる。
【0030】
成形体用組成物は、成形体用組成物の全体量に対して、無機酸化物を55質量%以上90質量%以下の範囲内で含むことが好ましい。成形体用組成物は、成形体用組成物の全体量に対して、有機系バインダーを1.0質量%以上10質量%以下の範囲内、分散剤を0.1質量%以上5.0質量%以下の範囲内、溶媒を8質量%以上42質量%以下の範囲内で含むことが好ましい。成形体用組成物は、全体量に対して無機酸化物を前述の範囲内で含むことにより、成形体用組成物からなる成形体を焼成して、焼成された成形体と焼結体を一体とした光学部品を得ることができる。成形体用組成物は、全体量に対して、有機系バインダーと、分散剤と、溶媒と、を前述の範囲内で含むことにより、焼結体と一体となった成形体に有機系バインダー由来及び分散剤由来の炭素を含有させて成形体をグレー色にすることができ、焼結体と成形体との色のコントラストを大きくして、焼結体と成形体の境界が明確となる見切りを向上することができる。成形体用組成物は、全体量に対して、有機系バインダーと、分散剤と、溶媒と、を前述の範囲内で含むことにより、無機酸化物を含むスラリーとすることができ、焼結体の周囲に成形体用組成物を配置することが容易となる。
【0031】
成形体用組成物は、成形体用組成物の全体量に対して、黒色顔料を0.9質量%以下含んでもよく、黒色顔料を含まなくも良い(0質量%)。成形体用組成物は、成形体用組成物の全体量に対して、黒色顔料を0.1質量%以上含んでもよい。成形体用組成物は、全体量に対して、有機系バインダーと、分散剤と、溶媒と、黒色顔料と、を前述の範囲内で含むことにより、焼結体と一体となった成形体に、有機系バインダー由来、分散剤由来及び黒色顔料由来の炭素を含有させて成形体のグレー色にすることができ、焼結体と成形体の色のコントラストをより大きくして、焼結体と成形体の境界が明確となる見切りを向上することができる。本明細書において、「有機系バインダー由来の炭素」、「分散剤由来の炭素」及び「黒色顔料由来の炭素」を、「成形体用組成物の原料由来の炭素」という場合がある。
【0032】
成形体用組成物は、成形体用組成物の全体量に対して、無機酸化物を60質量%以上85質量%以下の範囲内、有機系バインダーを2質量%以上8質量%以下の範囲内、分散剤を0.5質量%以上3質量%以下の範囲内、溶媒を12質量%以上35質量%以下の範囲内で含んでもよく、黒色顔料を0.9質量%以下含んでもよい。
【0033】
成形体用組成物は、成形体用組成物の全体量に対して、無機酸化物を65質量%以上80質量%以下の範囲内、有機系バインダーを2質量%以上8質量%以下の範囲内、分散剤を0.5質量%以上2質量%以下の範囲内、溶媒を15質量%以上30質量%以下の範囲内で含んでもよく、黒色顔料を0.8質量%以下含んでもよい。
【0034】
成形体用組成物は、酸化アルミニウムを含む無機酸化物、有機系バインダー、必要に応じて分散剤、溶媒、及び黒色顔料を、混合機を用いて混合して得られる。成形体用組成物に、溶媒が含まれる場合には、酸化アルミニウムを含む無機酸化物、有機系バインダー、溶媒、必要に応じて分散剤、及び黒色顔料を、混合機を用いて混合し、成形体用組成物スラリーが得られる。混合機は、工業的に通常に用いられるボールミル、振動ミル、ロールミル、ジェットミル等を用いることができる。成形体用組成物は、例えばメッシュを通過させて湿式ふるいを行ってもよく、脱水、乾燥して乾式ふるいを行ってもよい。また、成形体用組成物スラリーは、撹拌・脱泡装置(例えばマゼルスターK2000、倉敷紡績株式会社製)を用いて、脱泡しながら撹拌してもよい。
【0035】
光学部品の製造方法は、焼結体の周囲の少なくとも一部を覆うように成形体用組成物を配置して成形体とすること、を含む。図1において、光学部品の製造方法における「焼結体の周囲の少なくとも一部を覆うように成形体用組成物を配置して成形体とすること」は、「焼結体の周囲に成形体用組成物を配置して成形体とすることS102」に相当する。成形体用組成物からなる成形体は、スリップキャスト法、乾式成形法を用いて形成してもよい。乾式成形法を用いる場合には、粉体状の成形体用組成物を用いることができる。乾式成形法により成形体を形成する場合は、焼結体を覆うように成形体用組成物を容器に充填し、粉末状の成形体用組成物を押圧して成形体を形成することができる。以下、主にスリップキャスト法により成形体を形成する方法を説明する。
【0036】
光学部品の製造方法において、焼結体の周囲の少なくとも一部を覆うように成形体用組成物を配置して成形体とすることにおいて、焼結体を支持部材に仮止めすること、焼結体の周囲の少なくとも一部を覆うように成形体用組成物を配置すること、枠体と支持部材を除去して成形体とすること、を含んでいてもよい。
【0037】
焼結体が、上面、下面及び側面を有する場合は、支持部材に焼結体を仮止めする。これは、成形体用組成物を焼結体の周囲に配置するときに、焼結体の転倒や配置のずれ抑制することができる
【0038】
図2は、光学部品の製造方法の一態様を示す概略平面図であって、焼結体の周囲の少なくとも一部を覆うように成形体用組成物を配置して成形体とすることの一態様を示す概略平面図である。図2において、焼結体1の周囲の少なくとも一部を覆うように成形体用組成物を配置する前に、焼結体1は、支持部材40上に配置される。説明のために、図2図3Aは、縮尺が異なっている。
【0039】
図3Aは、図2のIIIA-IIIA’線における概略断面図である。焼結体1は、支持部材40に仮止めされてもよい。蛍光体70は、焼結体1に含まれる。支持部材40の上面には、仮止め用の接着剤41が配置され、焼結体1の下面が支持部材40に仮止めされることが好ましい。仮止め用の接着剤41はアクリル系樹脂を含む接着剤を用いることができる。支持部材40は、必ずしも必要ではないが、作業性を考慮して支持部材40を用いてもよい。
【0040】
支持部材の材料は、成形体を形成する方法に応じて適宜選択することができる。スリップキャスト法により成形体を形成する場合には、支持部材は石膏を用いることができる。
【0041】
成形体を形成する際にスリップキャスト法を用いる場合は、支持部材の上面の全面に仮止め用の接着剤を塗布することも可能であるが、支持部材の上面の全面に接着剤を塗布すると、成形体用組成物中の水分が、支持部材である石膏に吸着されずに成形体にクラックが形成する虞がある。そのため、仮止め用の接着剤は、焼結体と支持部材の間のみに設けることが好ましい。仮止め用の接着剤は、アクリル系樹脂を含む接着剤を用いることができる。仮止め用の接着剤は、成形体用組成物に接着剤の成分が混入しないように、成形体用組成物に含有される有機系バインダーに含まれる樹脂と反応し難い樹脂を含むものであることが好ましい。
【0042】
隣り合う焼結体の間隔は、例えば1mm以上10mm以下の範囲内とすることができる。一定の間隔で複数の焼結体が支持部材に仮止めされることが好ましい。
【0043】
焼結体を支持部材に配置する場合、成形体を形成する方法によっては、半導体加工用のダイシングテープ(放射線硬化型粘着テープ)を用いて焼結体を仮止めしてもよい。例えばダイシングテープの片面の粘着剤層上に焼結体を仮止めし、焼結体を仮止めした面と反対側のダイシングテープの粘着剤層を支持部材に仮止めして、焼結体を支持部材に仮止めしてもよい。ダイシングテープが、放射線硬化型粘着剤を用いた粘着剤層を有する場合は、焼結体の周囲の少なくとも一部を覆うように成形体用組成物を配置した後、例えば放射線照射を行って粘着剤層を硬化させて、焼結体とダイシングテープ及び支持部材を剥離させてもよい。放射線硬化型粘着剤は、例えば(メタ)アクリル系樹脂を含む放射線硬化型粘着剤を用いることができる。ダイシングテープを用いて焼結体を支持部材に仮止めする場合には、ダイシングテープによって、成形体用組成物スラリーに含まれる水分が支持部材に吸水されにくくなるため、乾式成形法等を用いて成形体を形成することが好ましい。
【0044】
成形体用組成物は、焼結体の周囲の少なくとも一部を覆うように配置する。焼結体が上面、下面及び側面を有する場合、成形体用組成物は、焼結体の側方を取り囲むように配置することが好ましい。
【0045】
図3Bは、光学部品の製造方法の一態様を示す概略断面図であって、焼結体の周囲の少なくとも一部を覆うように成形体用組成物を配置して成形体とすることの一態様を示す概略断面図である。枠体42は、支持部材40に仮止めされた焼結体1の周囲を取り囲むように配置される。枠体42内に成形体用組成物スラリー2aが充填され、焼結体1の周囲に成形体用組成物スラリー2aが配置される。枠体42の上部には蓋体43が配置されてもよい。成形体用組成物スラリー2aに含まれる水分は、支持部材40を構成する石膏に吸水されて、焼結体1と固着した成形体が形成される。支持部材40が石膏にように水分を吸収する材料である場合、例えば室温で数時間静置することにより、成形体用組成物スラリー2a中の水分は、石膏に吸水される。
【0046】
スリップキャスト法を用いることにより、焼結体及び成形体用組成物を加圧せずに成形体を形成することができる。また、成形体用組成物スラリーから水分が支持部材に吸水される際に、焼結体と成形体の間に水素結合が形成されて、焼結体と成形体が固着するため、成形体用組成物に含まれる有機系バインダーを、例えばドクターブレード法を用いる場合と比較して少なくすることができる。得られる光学部品の見切りの向上に適する量の炭素が成形体に含有されるように、原料の量を調整することができる。例えば、成形体用組成物中の有機系バインダーの量を適する量に少なくすることができると、成形体の密度を高めることができ、焼成時に成形体にクラックが生成されるのを抑制することができる。焼成成形体の製造方法にスリップキャスト法を用いる場合において、成形体に含まれる炭素の由来となる成形体組成物中の原料は、前述する範囲内の量であればよい。
【0047】
枠体は、離型性及び撥水性を有する材料で形成されているものが好ましい。枠体の少なくとも内面の表面が離型剤又は撥水剤で処理されていてもよい。枠体の表面は、含フッ素ポリオレフィン系ポリマー(例えばポリテトラフルオロエチレン)、例えばテフロン(登録商標)等で表面処理されていてもよい。
【0048】
成形体用組成物を焼結体の側方を取り囲むように配置する際に、成形体用組成物スラリーの厚みは、焼結体の厚みよりも大きくてよい。成形体用組成物スラリーは、焼結体の側面のみならず上面まで被覆するように配置してもよい。成形体用組成物スラリーを、焼結体の厚みと同じ厚みとなるように配置することは困難であるため、成形体用組成物スラリーを配置しやすいように、成形体用スラリーの厚みが焼結体の厚みよりも大きくなるように配置することが好ましい。成形体用スラリーからなる成形体の厚みが焼結体の厚みよりも大きい場合、成形体と焼結体が一体となった複合体を焼成した後に、成形体の厚みを焼結体と厚みと同じ厚みとなるように研磨することができる。成形体の厚みが焼結体の厚みよりも大きいと、成形体を研磨する際に焼結体のみに力が加わることなく、焼結体と成形体の剥離を抑制することができる。成形体用スラリーの厚みは、焼結体の厚みの2倍以上4倍以下の範囲内であることが好ましい。成形体用組成物スラリーの厚みが、焼結体の厚みの2倍以上4倍以下の範囲内であれば、焼結体と成形体の剥離を抑制して、成形体を研磨しやすい。
【0049】
光学部品の製造方法は、焼結体の周囲の少なくとも一部を覆うように成形体用組成物を配置した後、焼結体と成形体を加圧された雰囲気で焼成する前に、支持部材及び枠体を除去して成形体用組成物からなる成形体とし、成形体と焼結体からなる複合体を得ることと、成形体の上面が平坦な平面となるように乾式で研磨すること、を含んでいてもよい。また、支持部材を除去した後、又は、成形体の上面を乾式で研磨した後に、成形体と焼結体からなる複合体を乾燥すること、を含んでいてもよい。
【0050】
図3Cは、光学部品の製造方法の一態様を示す概略断面図であって、焼結体の周囲の少なくとも一部を覆うように成形体用組成物を配置して成形体とすることの一態様を示す概略断面図である。図2Cは、支持部材及び枠体を除去した状態の焼結体1と、成形体用組成物からなる成形体2bと、からなる複合体11aを示す。支持部材及び枠体を除去した成形体2bを含む複合体11aは、上面が平坦となっていない場合がある。複合体11aは、研磨前であり、後述する研磨によって、上面を平坦にすることができる。支持部材に仮止めされていた焼結体1は、加熱によって接着剤を軟化させることによって、支持部材を除去することができる。また、枠体は、少なくとも内面が離型性及び撥水性を有するため、成形体用組成物スラリー中の水分が支持部材である石膏に吸水させて成形体となる過程で、成形体と枠体が離間し、容易に枠体を除去することができる。
【0051】
図3Dは、光学部品の製造方法の一態様を示す概略断面図であって、焼結体の周囲の少なくとも一部を覆うように成形体用組成物を配置して成形体とすることの一態様を示す概略断面図である。図3Dは、上面を乾式で研磨して平面とした状態の成形体2c及び焼結体1からなる研磨後の複合体11bを示す。成形体2cの上面を乾式で研磨して、平面とすることによって焼成時の成形体の反りを抑制することができ、成形体をむらなく焼成することができる。
【0052】
支持部材及び枠体を除去した成形体及び焼結体からなる複合体は、焼成する温度よりも低い温度で加熱して乾燥することが好ましい。成形体及び焼結体を乾燥するための加熱温度は、80℃以上200℃以下の範囲内であることが好ましく、100℃以上180℃以下の範囲内であることがより好ましい。成形体及び焼結体を80℃以上200℃以下の温度で加熱して乾燥することにより、成形体用組成物に含まれる有機系バインダー又は分散剤中に含まれる有機物を除去しすぎることなく、成形体中の水分を蒸発させて成形体の密度を高めることができる。
【0053】
光学部品の製造方法は、焼結体と成形体を0.5MPa以上200MPa以下の範囲内の加圧された不活性雰囲気で焼成することの前に、焼結体と成形体を焼成する温度よりも低い温度で加熱して脱脂すること、を含んでいてもよい。脱脂は、不活性雰囲気で行ってもよく、大気雰囲気で行ってもよい。脱脂するための加熱する雰囲気における不活性雰囲気は、後述する焼成するときの不活性雰囲気と同様の雰囲気とすることができる。脱脂することは、後述する焼成することと同じ炉内で行ってもよく、脱脂のために加熱した後、そのまま温度を焼成温度まで高くして焼成を行ってもよい。脱脂するための加熱の温度は、200℃以上650℃以下の範囲内であることが好ましく、300℃以上600℃以下の範囲内でもよい。脱脂するための加熱の温度が200℃以上650℃以下の範囲内であれば、成形体用組成物中の原料由来の炭素が飛散し過ぎることなく、見切りを向上するために好適な量の炭素を成形体に含めることができる。脱脂するために加熱する時間は、0.5時間以上5時間以内であればよく、1時間以上3時間以内でもよい。
【0054】
光学部品の製造方法は、焼結体と成形体を0.5MPa以上200MPa以下の範囲内の加圧された不活性雰囲気中で焼成すること、を含む。図1において、光学部品の製造方法における「焼結体と成形体を0.5MPa以上200MPa以下の範囲内の加圧された不活性雰囲気中で焼成すること」は、「焼結体と成形体を加圧された不活性雰囲気中で焼成することS103」に相当する。
【0055】
焼結体と成形体を0.5MPa以上200MPa以下の範囲内の加圧された不活性雰囲気中で焼成することによって、焼結体と一体となった成形体に成形体用組成物の原料由来の炭素を含有させて成形体をグレー色とすることができ、白色の成形体を用いるよりも、成形体と焼結体との色のコントラストが大きくなり、成形体と焼結体との境界が明確となる見切りを向上することができる。また、光学部品を使用したときに、成形体から光が漏れることを抑制することができ、焼結体からの発光と、成形体の非発光の明暗をよりはっきりと明らかにすることができる。
【0056】
図4は、光学部品の製造方法の一態様を示す概略断面図であって、焼結体と成形体を焼成することの一態様を示す概略断面図である。焼結体1及び成形体2cからなる複合体11bは、焼成による反りを抑制するために複合体11bの下面に1枚の押さえ板51が配置され、るつぼ60内に配置される。るつぼ60の底面には、複合体11bの反りを抑制するために、粉体52が配置されていることが好ましい。押さえ板51は、サファイア板であることが好ましい。複合体11bの上面と下面に1枚ずつ2枚の押さえ板51が配置されてもよい。るつぼ60は、酸化アルミニウム製のるつぼ60を用いることができる。るつぼ60に配置する粉体52は、酸化アルミニウムであることが好ましい。
【0057】
焼成における不活性雰囲気は、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガスなどの不活性ガスを主成分とする雰囲気をいう。
【0058】
焼成における加圧された不活性雰囲気は、ゲージ圧で0.5MPa以上200MPa以下の範囲内であり、0.8MPa以上100MPa以下の範囲内でもよく、0.9MPa以上10MPa以下の範囲内でもよい。焼結体と成形体を加圧された雰囲気中で焼成することによって、成形体中に含まれる成形体用組成物の原料炭素が外部に飛散することなく、成形体内に成形体用組成物の原料由来の炭素を閉じ込めることができる。
【0059】
焼成する温度は、1300℃以上1600℃以下の範囲内であることが好ましく、1350℃以上1550℃以下の範囲内であることがより好ましい。焼成する温度が1300℃以上1600℃以下の範囲内であると、成形体用組成物の原料由来の炭素を成形体中に含有させ、成形体の強度を向上させて、成形体と焼結体を一体化させることができる。
【0060】
焼結体と一体化した成形体は、焼成により、酸化アルミニウムの結晶相と、酸化アルミニウム以外の無機酸化物を含む場合には、酸化アルミニウムと無機酸化物が反応して生成された結晶相と、を含む。成形体用組成物中に、無機酸化物として、酸化アルミニウムと酸化イットリウムを含む場合には、焼成した成形体は、酸化アルミニウムの結晶相の他に、例えばイットリウムアルミニウムガーネット、イットリウムアルミニウムペロブスカイト、イットリウムアルミニウムモノクリニック、アルミン酸イットリウムからなる群から選択される少なくとも1種のアルミン酸塩の結晶相を含んでいてもよい。
【0061】
前述の光学部品の製造方法により、成形体と焼結体を備える光学部品が得られる。焼成された成形体と焼結体は、成形体の厚みが焼結体の厚みより大きい場合には、焼結体の周囲が成形体で覆われている。焼結体が露出するまで、成形体の一部を除去してもよい。成形体を除去する方法は、研磨が挙げられる。成形体の下面及び焼結体の下面の付着物を除去するために、下面側から研磨してもよい。焼結体に光が透過するように成形体を研磨し、焼結体に光が透過する光学部品が得られる。研磨の一例として、平面研削盤を用いた研削が挙げられる。
【0062】
光学部品は、蛍光体を含み、上面、下面及び側面を有する焼結体と、焼結体の側方に配置され、酸化アルミニウムを含む無機酸化物及び全有機体炭素を含む成形体と、を備える。全有機体炭素は、成形体の全体量に対して100質量ppm以上9000質量ppm以下の範囲内である。炭素を含有する成形体はグレー色なり、白色の成形体よりも、焼結体と成形体との色のコントラストが大きくなり、焼結体と成形体の境界が明確となる見切りが向上する。また、光学部品を使用したときに、成形体から光が漏れることを抑制することができ、焼結体からの発光と、成形体の非発光の明暗をよりはっきりと明らかにすることができる。見切りが向上した光学部品は、エッジの効いた見切りの良い光を出射することができ、光の出力を高めることができる。成形体に含まれる全有機体炭素の量が100質量ppm以上9000質量ppm以下の範囲内であると、成形体がグレー色となり、黒色よりも外部の光を吸収し難いため、外部の光を成形体が吸収することによって光の出力が低下することを抑制することができる。光学部材は、前述の製造方法によって製造されたものであることが好ましく、成形体に含まれる全有機体炭素は、成形体を構成する成形体用組成物の原料由来の炭素である。光学部品は、成形体中に、成形体の全体量に対して全有機体炭素を110質量ppm以上8900質量ppm以下の範囲内で含んでもよく、120質量ppm以上8800質量pp以下の範囲内で含んでもよい。
【0063】
光学部品の成形体中の全有機体炭素は、固体試料燃焼装置(例えばSSM-5000A、株式会社島津製作所製)を用いて、測定試料を加熱し、全有機体炭素計(TOC計、例えば全有機体炭素計TOC-V、株式会社島津製作所製)を用いて、測定試料に含まれる全炭素(TC)成分と、測定試料に含まれる無機炭素(IC)成分を測定して、成形体中に含まれる全有機体炭素(TOC)を測定することができる。
【0064】
成形体の明度L値は50以上90以下の範囲内であることが好ましい。成形体の明度L値は、国際照明委員会(CIE)で規格化されたL色空間における明度L値をいう。成形体の明度L値は、JIS Z8781に準拠して、分光光度計(例えばCMS-355P、株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて、測定することができる。L値が100に近いほど明るい色になり、白色に近い色になる。L値が0に近いほど暗い色になり、黒色に近い色になる。成形体の明度L値が50以上90以下の範囲内であれば、焼結体と成形体との色のコントラストが大きくなり、焼結体と成形体の境界が明確となり、光学部品の見切りが向上する。明度L値が50以上90以下の範囲内の成形体と、焼結体と、を備えた光学部品は、エッジの効いた見切りのよい光を出射することができ、光の出力を高めることができる。成形体の明度L値が50未満であると、成形体が外部の光を吸収しやすく、光学部品から出射される光束が逆に低下する虞がある。成形体の明度L値が90を超えると、白色に近くなり、照射された光を反射が大きくなり、光学部品から出射される光束が低下する虞がある。
【0065】
図5は、光学部品の一例を示す概略断面図である。光学部品10は、焼成後、研磨された成形体2dと焼結体1を備える。焼結体1は、上面と、下面及び側面を有し、焼結体1の側方に成形体2dを備えている。焼結体1は、蛍光体70を含む。焼結体1に光が照射されると、蛍光体70が照射した光を吸収して波長変換し、波長変換した光が焼結体1から出射される。
【0066】
成形体は、焼結体を取り囲むように側方に配置されていることが好ましい。成形体が焼結体を取り囲むように側方に配置されていると、焼結体と成形体の境界がより明確となり、光学部品の見切りが向上する。光学部品は、エッジの効いた見切りのよい光を出射することができ、光の出力を高めることができる。
【0067】
成形体は、焼結体の側面に接していることが好ましい。成形体が焼結体の側面に接していることにより、焼結体と成形体の境界がよりさらに明確となり、光学部品の見切りが向上する。光学部品は、エッジの効いた見切りのよい光を出射することができ、光の出力を高めることができる。
【0068】
光学部品の焼結体は、蛍光体を含むことが好ましい。蛍光体は、蛍光体は、無機材料からなる蛍光体であることが好ましい。蛍光体は、希土類アルミン酸塩蛍光体を含むことが好ましい。希土類アルミン酸塩蛍光体は、前記式(I)で表される組成式に含まれる組成を有する蛍光体を含むことが好ましい。蛍光体は、希土類アルミン酸塩蛍光体の組成とは、組成が異なる蛍光体、例えば窒化物蛍光体を含んでいてもよい。窒化物蛍光体は、前記式(II)で表される組成式に含まれる組成を有する蛍光体、又は、前記式(III)で表される組成式に含まれる組成を有する蛍光体が挙げられる。
【0069】
光学部品の焼結体は、蛍光体と、蛍光体の組成とは異なる組成を有するセラミックスと、を含んでいてもよい。セラミックスは、光透過性を有するセラミックスであることが好ましく、酸化アルミニウム含むことが好ましい。セラミックスは、酸化アルミニウムの他に、酸化アルミニウムとは組成の異なる他の無機酸化物、酸化アルミニウムと無機酸化物が反応した前述のアルミン酸塩等が挙げられる。
【0070】
光学部品の成形体の相対密度は、75%以上90%以下の範囲内でもよく、80質量%以上でもよい。光学部品の相対密度が75%以上90%以下の範囲内であれば、焼結体の側方に配置された成形体で焼結体を支持して、光学部品の強度を維持することができる。光学部品の成形体の相対密度は、光学部品の成形体の見掛け密度及び光学部品の成形体の真密度から下記式(1)により算出することができる。
【0071】
【数1】
【0072】
光学部品の成形体の見掛け密度は、光学部品の全質量から焼結体の質量を差し引いた質量を、光学部品の全体の体積から焼結体の体積を差し引いた体積で除すことによって算出することができる。光学部品の成形体の見掛け密度は、下記式(2)により算出することができる。光学部品の体積及び焼結体の体積はアルキメデス法によって求めることができる。
【0073】
【数2】
【0074】
光学部品の成形体の真密度は、成形体に含まれる無機酸化物の質量割合と真密度から算出することができる。成形体に含まれる無機酸化物が1種類である場合には、成形体中に含まれる無機酸化物の質量割合と真密度の積を成形体の真密度として算出することができる。成形体中に含まれる無機酸化物は、ほぼ100質量%として算出することができる。成形体中に2種類以上の無機酸化物が含まれる場合、例えば2種類の無機酸化物が含まれる場合には、第1無機酸化物と第2無機酸化物の質量換算の含有割合によって、光学部品の成形体の真密度を算出することができる。例えば成形体に第1無機酸化物と第2無機酸化物の2種類の無機酸化物が含まれる場合には、下記式(3)により真密度を算出することができる。
【0075】
【数3】
【0076】
得られた光学部品は、光源と組み合わせて、発光装置の波長変換部材を構成する部材として用いることができる。光学部品を用いた発光装置の一例について説明する。
【0077】
光源は、発光ダイオード(LED)又はレーザーダイオード(LD)からなる発光素子を用いることができる。発光素子は、例えば窒化物系半導体を用いた半導体発光素子であるLEDチップ又はLDチップを用いることができる。
発光素子は、好ましくは380nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、より好ましくは390nm以上495nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、さらに好ましくは400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、特に好ましくは420nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する。発光素子は、p電極及びn電極が設けられている。発光素子のp電極及びn電極は、発光素子の同じ側の面に形成されていてもよく、異なる側の面に設けられていてもよい。発光素子は、フリップチップ実装されていてもよい。
【0078】
図6Aは、発光装置の一例を示す概略平面図である。図6Bは、図6AのVIB―VIB’線における概略断面図である。説明のために、図6A図6Bは、縮尺が異なっている。
発光装置100は、基板30上に複数の発光素子20を備え、発光素子20の上面に光学部品10を備える。光学部品10は、蛍光体70を含む焼結体1と、成形体2dと、を備える。発光装置100は、1つの発光素子20の上に1つの焼結体1が位置するように光学部品10が配置されている。発光素子20の周囲は、光反射性部材80が配置されている。光反射性部材80としては、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素等の光拡散材を含有する、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。
【0079】
発光装置は、発光素子の上面に1つの焼結体が配置されるように光学部材を配置することが好ましい。光源となる発光素子から光が出射されると、焼結体に含まれる蛍光体が発光素子からの光を吸収して波長変換し、波長変換された光を焼結体から出射することができる。
【0080】
発光装置は、2つ以上の発光素子からの光が1つの焼結体を通過するように光学部品を配置してもよい。
【実施例
【0081】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0082】
実施例1
下記の蛍光体を含む焼結体と、酸化アルミニウムを含む無機酸化物及び有機系バインダーを含む成形体用組成物を準備した。図1における「焼結体と成形体用組成物を準備することS101」に相当する。
焼結体として(YGdCe(AlGa12(組成式中、e+f+g=1であり、h+i=1である。)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体と酸化アルミニウムからなる焼結体を準備した。焼結体は、縦500μm及び横1000μmの矩形状の上面及び下面と、厚さ1000μmの直方体である。希土類アルミン酸塩蛍光体は、前述の式(I)で表される組成式に含まれる組成を有していた。焼結体は、希土類アルミン酸塩蛍光体を20質量%、酸化アルミニウムを80質量%含む。
【0083】
成形体用組成物として、成形体の全体量に対して、酸化アルミニウムを含む無機酸化物粉末76.40質量%、有機系バインダー2.40質量%、分散剤0.70質量%、及び溶媒20.50質量%を含む成形体用組成物スラリーを準備した。無機酸化物粉末と、分散剤と、溶媒と、ボールミルを用いて混合し、さらに有機系バインダーを添加して、ボールミルを用いて混合し、混合物スラリーを得た。混合物スラリーは、メッシュ(目開き27mmのナイロン製メッシュ)を通過させ、撹拌・脱泡装置(マゼルスターK2000、倉敷紡績株式会社製)を用いて、さらに撹拌及び脱泡して成形体用組成物スラリーを得た。無機酸化物粉末、有機系バインダー、分散剤、及び溶媒は、以下を用いた。
無機酸化物粉末:酸化アルミニウム粒子を95.2質量%と、酸化イットリウム粒子を4.8質量%と、を含む。
酸化アルミニウム粒子:AKP-20、住友化学製、純度99.99質量%以上(カタログ値)、中心粒径0.42μm(カタログ値、レーザー回折粒度分布測定法)。
酸化イットリウム粒子:高純度4N品、日本イットリウム株式会社製。
有機系バインダー:バインドセラムWA310、三井化学株式会社製、水性エマルジョン、固形分濃度41質量%、有機物はアクリル樹脂を含む。
分散剤:セルナD-305、中京油脂株式会社製、ポリカルボン酸アンモニウムを含む。
溶媒:脱イオン水。
【0084】
下記のように、焼結体の周囲の少なくとも一部を覆うように成形体用組成物を配置して成形体とした。図1における「焼結体の周囲に成形体用組成物を配置して成形体とすることS102」に相当する。
成形体は、スリップキャスト法によって形成した。
まず、シリコーン塗布基板に焼結体を配置させ、別のシリコーン塗布基板にアクリル系樹脂を含む接着剤を塗布し、アクリル系樹脂を含む接着剤を塗布した面を焼結体に接触させて加圧することで、焼結体に接着剤を転写した。
支持部材として石膏を用いて、支持部材上に接着剤を介して複数の焼結体を仮止めした。実施例1においては、支持部材上に4つの焼結体を仮止めした。
焼結体の周囲に、内径が30mmのテフロン(登録商標)リングからなる枠体を配置した。焼結体の上面が見えなくなるまで、枠体の内側に成形体用組成物スラリーを充填し、焼結体の周囲に成形体用組成物スラリーを配置した。成形体用組成物スラリーの厚みは、焼結体の厚みの2倍以上4倍以下の範囲内であった。成形体用組成物スラリーは、室温(約25℃)で一晩静置し、成形体用組成物スラリー中の水分を支持部材である石膏に吸わせて、成形体を形成した。
枠体と支持部材を除去し、成形体と焼結体の複合体を得た。
複合体を大気雰囲気中、150℃で3時間加熱し、成形体中の水分を除去して乾燥させた。
反りを抑制するために、複合体の下面に1枚押さえ板を配置し、底面に酸化アルミニウム粉体を配置したるつぼに複合体を入れて、大気雰囲気(酸素20体積%)で、大気圧0.10MPaの電気マッフル炉(アドバンテック東洋株式会社製)内に配置し、370℃で2時間加熱して脱脂した。
【0085】
下記のように、焼結体と成形体を0.5MPa以上200MPa以下の範囲内の加圧された不活性雰囲気中で焼成した。図1における「焼結体と成形体を加圧された不活性雰囲気で焼成することS103」に相当する。
脱脂することと同様に、複合体の上面及び下面に1枚ずつ、2枚のサファイア板を押さえ板として配置し、底面に酸化アルミニウム粒子を配置したるつぼに複合体を入れて、窒素雰囲気(窒素100体積%)、ゲージ圧で0.92MPaの加圧雰囲気炉(富士電波工業株式会社製)内に配置し、1400℃で2時間焼成して、焼結体と成形体が一体となった光学部品を得た。
さらに光学部品の上面側から焼結体の上面が露出するまで、平面研削盤により成形体を研削し、焼結体と、焼結体の側方を取り囲み、焼結体の側面に接する成形体と、を備えた光学部品を得た。
【0086】
実施例2
蛍光体を含む焼結体と、酸化アルミニウムを含む無機酸化物及び有機系バインダーを含む成形体用組成物を準備すること、において、成形体用組成物として、無機酸化物粉末の100質量部に対して0.2質量部の黒色顔料を含む成形体用組成物スラリーを準備した。黒色顔料は、カーボンブラック(デンカブラック、デンカ株式会社製)を用いた。全体量に対して、酸化アルミニウムを含む無機酸化物粉末76.40質量%、有機系バインダー2.40質量%、分散剤0.70質量%、黒色顔料0.15質量%、及び溶媒20.35質量%を含む成形体用組成物スラリーを準備した。この成形体用組成物スラリーを成形体用組成物として用いたこと以外は、実施例1と同様にして光学部品を得た。
【0087】
実施例3
蛍光体を含む焼結体と、酸化アルミニウムを含む無機酸化物及び有機系バインダーを含む成形体用組成物を準備すること、において、成形体用組成物として、無機酸化物粉末の100質量部に対して1質量部の黒色顔料を含む成形体用組成物スラリーを準備した。黒色顔料は、カーボンブラック(デンカブラック、デンカ株式会社製)を用いた。全体量に対して、酸化アルミニウムを含む無機酸化物粉末76.40質量%、有機系バインダー2.40質量%、分散剤0.70質量%、黒色顔料0.76質量%、及び溶媒19.74質量%を含む成形体用組成物スラリーを準備した。この成形体用組成物スラリーを成形体用組成物として用いたこと以外は、実施例1と同様にして光学部品を得た。
【0088】
比較例1
焼結体の周囲の少なくとも一部を覆うように成形体用組成物を配置して成形体とすることにおいて、700℃で加熱して脱脂したことと、焼結体と成形体を0.5MPa以上200MPa以下の範囲内の加圧された不活性雰囲気中で焼成したのではなく、大気雰囲気(酸素20体積%)、大気圧0.10MPaで焼成したこと以外は、実施例1と同様にして、光学部品を得た。
【0089】
得られた光学部品又は成形体について、以下の測定を行った。結果を表1に示す。表1中、「-」の記号は、成形体用組成物中に黒色顔料を含まないことを表す。
【0090】
光学部品の成形体の相対密度を前記式(1)から(3)に基づき求めた。酸化アルミニウム粒子の真密度は3.98g/cm、酸化イットリウム粒子の真密度は5.01g/cmを使用した。
【0091】
焼結体を備えていないこと以外は、各実施例及び比較例と同様にして、実施例1から3及び比較例1の各測定試料を作製した。各測定試料を固体試料燃焼装置(SSM-5000A、株式会社島津製作所製)を用いて加熱し、全有機体炭素計(TOC計、全有機体炭素計TOC-V、株式会社島津製作所製)を用いて、測定試料に含まれる全炭素(TC)成分と、測定試料に含まれる無機炭素(IC)成分を測定して、成形体中に含まれる全有機体炭素(TOC)の量を測定した。
【0092】
焼結体を備えていないこと以外は、各実施例及び比較例と同様にして、実施例1から3及び比較例1の各測定試料を作製した。成形体の各測定試料の厚みは400μmとした。成形体の上面に対して垂直となる光軸の方向から拡散照射し、光軸に対して7°の反射率を分光光度計(CMS-355P、株式会社村上色彩技術研究所製)を用いて測定し、分光反射率から国際照明委員会(CIE)により規格化されたL表色系に基づき、明度L値を測定した。明度L値が93.2の白色の校正用板と、明度L値が0.81の黒色の校正用板を用いた。
【0093】
【表1】
【0094】
実施例1から3に係る光学部品の成形体は、成形体の全体量に対する全有機体炭素の量が100質量ppm以上9000質量ppm以下の範囲内であった。実施例1から3に係る光学部品の成形体は、明度L値が50以上90以下の範囲内であり、外部の光の吸収を抑制し、照射された光の反射を抑制して、焼結体と成形体との色のコントラストが大きくなり、焼結体と成形体の境界が明確となり、光学部品の見切りが向上した。成形体の相対密度は80%以上90%以下の範囲内であり、焼結体の側方に配置された成形体で焼結体を支持し光学部品の強度を維持することができた。
【0095】
図7は、実施例1に係る光学部品の平面の写真である。光学部品10は、蛍光体70を含む焼結体1と、成形体2dと、の色のコントラストにより、焼結体1と成形体2dの境界が明確であり、見切りが向上している。
【0096】
比較例1に係る光学部品の成形体は、加圧していない大気雰囲気で焼成しているため、成形体の全体量に対する全有機体炭素の量が100質量ppm未満であり、明度L値が90を超えて大きく、照射された光を反射して、光学部品から放出される光の光束が低下する虞があった。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の一態様の光学部品の製造方法によって得られた光学部品は、LEDやLDの励起光源と組み合わせて、車載用光源や一般照明用の照明装置、液晶表示装置のバックライト、プロジェクター用光源に使用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1:焼結体、2a:成形体用組成物スラリー、2b、2c、2d:成形体、10:光学部品、11a、11b:複合体、20:発光素子、30:基板、40:支持部材、41:接着剤、42:枠体、43:蓋体、51:押さえ板、52:粉体、60:るつぼ、70:蛍光体、80:光反射性部材、100:発光装置。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6A
図6B
図7