(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】レベル調整装置
(51)【国際特許分類】
H04B 1/16 20060101AFI20240612BHJP
H03G 3/20 20060101ALI20240612BHJP
H04N 21/61 20110101ALI20240612BHJP
H04N 21/647 20110101ALI20240612BHJP
【FI】
H04B1/16 R
H03G3/20 C
H04N21/61
H04N21/647
H03G3/20 B
(21)【出願番号】P 2020136047
(22)【出願日】2020-08-11
【審査請求日】2023-07-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 川越 正登が、2020年4月17日付で、第73回 北海道 放送技術報告会講演予稿集において公開。
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100163511
【氏名又は名称】辻 啓太
(72)【発明者】
【氏名】川越 正登
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 充志
(72)【発明者】
【氏名】中村 塁
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-017037(JP,A)
【文献】特開平05-191794(JP,A)
【文献】特開平10-135861(JP,A)
【文献】特表2000-509224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/06
H04B 1/16
H03G 1/00-3/34
H04N 7/10
H04N 7/14-7/173
H04N 7/20-7/56
H04N 21/00-21/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数帯の複数のチャンネルの受信信号の信号レベルを調整して出力するレベル調整装置であって、
局部発振信号を出力する局部発振器と、
前記局部発振信号を用いて、前記第1の周波数帯よりも低い第2の周波数帯に、前記複数のチャンネルの受信信号の周波数変換を行う第1の周波数変換部と、
前記第1の周波数変換部による周波数変換後の信号を、第1の帯域の信号と、前記第2の周波数帯内の前記第1の帯域よりも高い第2の帯域の信号とに分離する分離部と、
前記局部発振信号を用いて、前記第2の周波数帯から前記第1の周波数帯に、前記第1の帯域の信号の周波数変換を行う第2の周波数変換部と、
前記局部発振信号を用いて、前記第2の周波数帯から前記第1の周波数帯に、前記第2の帯域の信号の周波数変換を行う第3の周波数変換部と、
前記第2の周波数変換部による周波数変換後の信号のレベル調整を行う第1のレベル調整部と、
前記第3の周波数変換部による周波数変換後の信号のレベル調整を行う第2のレベル調整部と、
前記第1のレベル調整部によるレベル調整後の信号と、前記第2のレベル調整部によるレベル調整後の信号とを混合して出力する混合器と、
前記複数のチャンネルのうち、基準となる第1のチャンネルとの相関が所定の閾値よりも低い第2のチャンネルに応じて、前記複数のチャンネルの受信信号が、前記第1の帯域と前記第2の帯域とに分離されるように、前記局部発振信号の周波数を制御する制御部と、を備えるレベル調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレベル調整装置において、
前記第1の周波数帯の複数のチャンネルの受信信号の入力先を、前記第1の周波数変換部と、前記第1のレベル調整部とで切り替え可能な切替部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1のチャンネルと、前記複数のチャンネルのうちの前記第1のチャンネル以外の全てのチャンネルとの相関が前記所定の閾値以上である場合、前記複数のチャンネルの受信信号が前記第1のレベル調整部に入力されるように、前記切替部を制御する、レベル調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レベル調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ放送の難視解消を目的として、
図10に示すように、送信所1から送信された複数のチャンネルの放送波を所定の受信点に設けられた受信アンテナ2で受信し、受信アンテナ2の受信信号を送信機3により各家庭などに設置された光受信機4に送信する施設(共聴施設)が設置されている。従来、送信機3と受信機4とは同軸ケーブルを介して接続されていたが、近年では、同軸ケーブルから光ケーブルへの改修が進められている。
【0003】
上述した共聴施設では、放送波の海上伝搬、長距離伝搬、地形あるいは自然現象などによるフェージングの影響により、受信信号の信号レベルが低下することがある。同軸ケーブルを用いる場合には、チャンネルごとに、信号レベルを調整するユニットが設けられており、当該ユニットにより信号レベルを調整した上で、受信機に送信されていた。ところが、同軸ケーブルから光ケーブルへの改修に伴って、上述したユニットが撤去されたため、受信信号の信号レベルの低下による受信不良が問題となっている。
【0004】
特許文献1には、地上デジタル放送の受信信号を再送信する再送信ユニットを備える再送信装置が記載されている。再送信ユニットは、局部発振信号により、最大で連続する3チャンネル分の帯域の信号をダウンコンバートして中間周波帯域信号に変換し、その中間周波帯域信号を、通過帯域が6MHzずつ異なる3つのSAWフィルタにそれぞれに入力して、各チャンネルの信号を抽出する。再送信ユニットは、抽出した各チャンネルの信号のレベル調整を行い、レベル調整後の信号を混合して出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フェージングによる受信不良への対策として、AGC(Auto Gain Control)機能を有するアンプ(AGCアンプ)が有効であることが知られている。AGC機能とは、入力信号のレベル変動に対して、利得調整を行い、出力信号のレベルを一定に制御する機能である。AGCアンプを用いることで、受信信号の信号レベルが変動した場合にも、出力信号のレベルを一定に保つことができる。
【0007】
共聴施設で信号を受信する各チャンネルの周波数特性により、一部のチャンネルの受信信号の信号レベルだけが、他のチャンネルの受信信号の信号レベルと、挙動が異なることがある。AGCアンプは、入力される全てのチャンネルの信号レベルの合計に基づき利得を調整する(総合電力検波方式)ために、全てのチャンネルの信号レベルが同じ挙動で変動する場合には、有効に機能する。しかしながら、一部のチャンネルの受信信号の信号レベルだけが他のチャンネルの受信信号の信号レベルと挙動が異なる場合、AGCアンプを用いても、一部のチャンネルの信号レベルの変動に追従できず、受信不良が発生することがある。
【0008】
特許文献1に記載の再送信装置では、処理可能なチャンネルの数および配置が異なる複数の再送信ユニットを用意し、地域ごとのチャンネル配置に応じて、複数(地域に応じて3つ、または4つ)の再送信ユニットを組み合わせる必要があり、コストの増大および構成の複雑化を招いてしまう。そのため、より簡易な構成で、複数のチャンネルの受信信号の信号レベルを調整する技術が求められている。
【0009】
本発明の目的は、上述した課題を解決し、より簡易な構成で、複数のチャンネルの受信信号の信号レベルを調整することができるレベル調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係るレベル調整装置は、第1の周波数帯の複数のチャンネルの受信信号の信号レベルを調整して出力するレベル調整装置であって、局部発振信号を出力する局部発振器と、前記局部発振信号を用いて、前記第1の周波数帯よりも低い第2の周波数帯に、前記複数のチャンネルの受信信号の周波数変換を行う第1の周波数変換部と、前記第1の周波数変換部による周波数変換後の信号を、第1の帯域の信号と、前記第2の周波数帯内の前記第1の帯域よりも高い第2の帯域の信号とに分離する分離部と、前記局部発振信号を用いて、前記第2の周波数帯から前記第1の周波数帯に、前記第1の帯域の信号の周波数変換を行う第2の周波数変換部と、前記局部発振信号を用いて、前記第2の周波数帯から前記第1の周波数帯に、前記第2の帯域の信号の周波数変換を行う第3の周波数変換部と、前記第2の周波数変換部による周波数変換後の信号のレベル調整を行う第1のレベル調整部と、前記第3の周波数変換部による周波数変換後の信号のレベル調整を行う第2のレベル調整部と、前記第1のレベル調整部によるレベル調整後の信号と、前記第2のレベル調整部によるレベル調整後の信号とを混合して出力する混合器と、前記複数のチャンネルのうち、基準となる第1のチャンネルとの相関が所定の閾値よりも低い第2のチャンネルに応じて、前記複数のチャンネルの受信信号が、前記第1の帯域と前記第2の帯域とに分離されるように、前記局部発振信号の周波数を制御する制御部と、を備える。
【0011】
また、本発明に係るレベル調整装置において、前記第1の周波数帯の複数のチャンネルの受信信号の入力先を、前記第1の周波数変換部と、前記第1のレベル調整部とで切り替え可能な切替部をさらに備え、前記制御部は、前記第1のチャンネルと、前記複数のチャンネルのうちの前記第1のチャンネル以外の全てのチャンネルとの相関が前記所定の閾値以上である場合、前記複数のチャンネルの受信信号が前記第1のレベル調整部に入力されるように、前記切替部を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るレベル調整装置によれば、より簡易な構成で、複数のチャンネルの受信信号の信号レベルを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレベル調整装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図1に示すレベル調整装置におけるLow側の処理を示す図である。
【
図3】
図1に示すレベル調整装置におけるHigh側の処理を示す図である。
【
図4】
図1に示すレベル調整装置におけるLow側の処理の具体例を示す図である。
【
図5】
図1に示すレベル調整装置におけるHigh側の処理の具体例を示す図である。
【
図6】
図1に示す制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図1に示すレベル調整装置による信号レベルの調整前の、複数のチャンネルの受信信号の信号レベル変動の一例を示す図である。
【
図8】
図1に示すレベル調整装置による信号レベルの調整後の、複数のチャンネルの受信信号の信号レベル変動の一例を示す図である。
【
図9】
図1に示すレベル調整装置による信号分離の有無の一例を示す図である。
【
図10】放送波の共聴施設について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るレベル調整装置100の構成例を示す図である。本実施形態に係るレベル調整装置100は、例えば、
図10に示す受信アンテナ2により受信された、複数のチャンネルの受信信号の信号レベルを調整して、送信機3に出力するものである。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係るレベル調整装置100は、局部発振器101と、分配器102,103,106と、切替部104と、ミキサ105,109,110と、バンドパスフィルタ(BPF)107,108,111,112と、AGCアンプ113,114と、混合器115と、蓄積部116と、制御部117とを備える。
【0017】
局部発振器101は、受信アンテナ2の受信信号の周波数よりも低い、所定の周波数の局部発振信号を分配器102に出力する。受信アンテナ2の受信信号は、例えば、470~710MHzのUHF(Ultra High Frequency)帯(第1の周波数帯)の信号である。局部発振器101は、例えば、368MHzから440MHzの間で、局部発振信号の周波数Loを制御可能である。
【0018】
分配器102は、局部発振器101から出力された局部発振信号を、ミキサ105、ミキサ109およびミキサ110に出力する。
【0019】
分配器103は、受信アンテナ2が受信した、複数のチャンネルの受信信号が入力される。分配器103は、入力された複数のチャンネルの受信信号を、切替部104を介して、ミキサ105またはAGCアンプ113に出力する。また、分配器103は、複数のチャンネルの受信信号を蓄積部116に出力する。
【0020】
切替部104は、制御部117の制御に従い、分配器103からの信号の出力先を、ミキサ105とAGCアンプ113とで切り替える。切替部104により、複数のチャンネルの受信信号の入力先を、ミキサ105とAGCアンプ113とで切り替え可能となる。
【0021】
第1の周波数変換部としてのミキサ105は、分配器102から出力された局部発振信号を用いて、分配器103の出力信号(複数のチャンネルの受信信号)の周波数帯よりも低い周波数帯(第2の周波数帯)に、分配器103の出力信号の周波数変換を行う。例えば、ミキサ105は、UHF帯から、30~300MHzのVHF(Very High Frequency)帯に、複数のチャンネルの受信信号の周波数変換を行う。ミキサ105は、周波数変換後の信号を分配器106に出力する。
【0022】
分配器106は、ミキサ105の出力信号(ミキサ105による周波数変換後の信号)を、BPF107およびBPF108に出力する。
【0023】
BPF107は、分配器106から出力された、ミキサ105による周波数変換後の信号のうち、所定の帯域(第1の帯域)の信号を、ミキサ109に出力する(通過させる)。BPF107は、例えば、30MHzから108MHzまでの信号を通過させる。
【0024】
BPF108は、分配器106から出力された、ミキサ105による周波数変換後の信号のうち、BPF107が信号を通過させる帯域(第1の帯域)よりも高い所定の帯域(第2の帯域)の信号を、ミキサ110に出力する(通過させる)。BPF108は、例えば、114MHzから342MHzまでの信号を通過させる。
【0025】
一般に、UHF帯よりもVHF帯の方が、安価で特性のよい分離フィルタを作成しやすい。そのため、本実施形態のように、UHF帯の複数のチャンネルの受信信号をVHF帯に周波数変換した後に、BPF107,108に入力することで、コストの削減および特性の改善を図ることができる。
【0026】
分配器106、BPF107およびBPF108は、分離部118を構成する。分離部118は、ミキサ105による周波数変換後の信号を、第1の帯域(例えば、30MHz~108MHz)の信号と、第1の帯域よりも高い第2の帯域(114MHz~342MHz)の信号とに分離する。
【0027】
第2の周波数変換部としてのミキサ109は、局部発振信号を用いて、元の周波数帯(第1の周波数帯)に、BPF107の出力信号の周波数変換を行う。ミキサ109は、周波数変換後の信号をBPF111に出力する。
【0028】
第3の周波数変換部としてのミキサ110は、局部発振信号を用いて、元の周波数帯(第1の周波数帯)に、BPF108の出力信号の周波数変換を行う。ミキサ110は、周波数変換後の信号をBPF112に出力する。
【0029】
BPF111は、ミキサ109による周波数変換後の信号のうち、所定の帯域の信号をAGCアンプ113に出力する(通過させる)。BPF111は、例えば、470MHzから548MHzまでの信号を通過させる。
【0030】
BPF112は、ミキサ110による周波数変換後の信号のうち、所定の帯域の信号をAGCアンプ114に出力する(通過させる)。BPF112は、例えば、482MHzから710MHzまでの信号を通過させる。
【0031】
第1のレベル調整部としてのAGCアンプ113は、分配器103またはBPF111の出力信号のレベル調整を行い、レベル調整後の信号を混合器115に出力する。
【0032】
第2のレベル調整部としてのAGCアンプ114は、BPF112の出力信号のレベル調整を行い、レベル調整後の信号を混合器115に出力する。
【0033】
混合器115は、AGCアンプ113によるレベル調整後の信号と、AGCアンプ114によるレベル調整後の信号とを混合して、送信機3に出力する。
【0034】
蓄積部116は、所定時間分(例えば、24時間分)の、分配器103の出力信号(複数のチャンネルの受信信号)の信号レベルのデータを蓄積する。
【0035】
制御部117は、局部発振器101が出力する局部発振信号の周波数を制御する。具体的には、制御部117は、受信信号の複数のチャンネルのうち、基準となるチャンネル(第1のチャンネル)との相関が所定の閾値よりも低いチャンネル(第2のチャンネル)に応じて、複数のチャンネルの受信信号が、BPF107が信号を通過させる第1の帯域とBPF108が信号を通過させる第2の帯域とに分離されるように、局部発振号信号の周波数Loを制御する。また、制御部117は、上述した受信信号の分離を行う場合、分配器103からの信号の出力先がミキサ105となるように、切替部104を制御する。また、制御部117は、上述した受信信号の分離が不要である場合、分配器103からの信号の出力先がAGCアンプ113となるように、切替部104を制御する。
【0036】
次に、本実施形態に係るレベル調整装置100の動作について説明する。まず、本実施形態に係るレベル調整装置100による、複数のチャンネルの受信信号の分離について説明する。上述したように、本実施形態に係るレベル調整装置100においては、複数のチャンネルの受信信号を、BPF107,ミキサ109およびBPF111からなる系統と、当該系統よりも処理する信号の周波数が高い、BPF108,ミキサ110およびBPF112からなる系統とに分離する。以下では、BPF107,ミキサ109およびBPF111で処理される系統をLow側と称し、BPF108,ミキサ110およびBPF112で処理される系統をHigh側と称する。また、複数のチャンネルの受信信号の周波数帯域は、470MHz~710MHzであるとする。また、局部発振信号の周波数は、368MHzから440MHzの範囲で制御可能であるとする。また、BPF107は、30MHzから108MHzの信号を通過させ、BPF108は、114MHzから342MHzの信号を通過させるものとする。また、BPF111は、470MHzから548MHzの信号を通過させ、BPF112は、482MHzから710MHzの信号を通過させるものとする。
【0037】
まず、Low側の処理について、
図2を参照して説明する。
【0038】
ミキサ105は、局部発振信号を用いて、複数のチャンネルの受信信号の周波数変換を行う。ミキサ105による周波数変換後の信号の周波数は、局部発振信号の周波数Loによって異なる。例えば、局部発振信号の周波数Loが368MHzである場合、ミキサ105による周波数変換後の信号の周波数は、102MHzから342MHzとなる。局部発振信号の周波数Loが440MHzである場合、ミキサ105による周波数変換後の信号の周波数は、30MHzから270MHzとなる。
【0039】
BPF107は、30MHzから108MHzの信号を通過させる。したがって、局部発振信号の周波数Loが368MHzである場合、BPF107は、102MHzから108MHzの信号をミキサ109に出力する。また、局部発振信号の周波数Loが440MHzである場合、BPF107は、30MHzから108MHzの信号をミキサ109に出力する。
【0040】
ミキサ109は、局部発振信号を用いて、BPF107の出力信号の周波数変換を行う。局部発振信号の周波数Loが368MHzである場合、ミキサ109は、BPF107の出力信号(102MHzから108MHzの信号)を、470MHzから476MHzの信号に周波数変換し、BPF111に出力する。局部発振信号の周波数Loが440MHzである場合、ミキサ109は、BPF107の出力信号(30MHzから108MHzの信号)を、470MHzから548MHzの信号に周波数変換し、BPF111に出力する。
【0041】
BPF111は、470MHzから548MHzの信号を通過させる。局部発振信号の周波数Loが368MHzである場合、BPF111は、470MHzから476MHzの信号をAGCアンプ113に出力する。局部発振信号の周波数Loが440MHzである場合、BPF111は、470MHzから548MHzの信号をAGCアンプ113に出力する。
【0042】
次に、High側の処理について、
図3を参照して説明する。
【0043】
BPF108は、114MHzから342MHzまでの信号を通過させる。したがって、局部発振信号の周波数Loが368MHzである場合、BPF108は、114MHzから342MHzの信号をミキサ110に出力する。また、局部発振信号の周波数Loが440MHzである場合、BPF108は、114MHzから270MHzの信号をミキサ110に出力する。
【0044】
ミキサ110は、局部発振信号を用いて、BPF108の出力信号の周波数変換を行う。局部発振信号の周波数Loが368MHzである場合、ミキサ110は、BPF108の出力信号(114MHzから342MHzの信号)を、482MHzから710MHzの信号に周波数変換し、BPF112に出力する。局部発振信号の周波数Loが440MHzである場合、ミキサ110は、BPF108の出力信号(114MHzから270MHzの信号)を、554MHzから710MHzまでの信号に周波数変換し、BPF112に出力する。
【0045】
BPF112は、482MHzから710MHzの信号を通過させる。局部発振信号の周波数Loが368MHzである場合、BPF112は、482MHzから710MHzの信号をAGCアンプ114に出力する。局部発振信号の周波数Loが440MHzである場合、BPF112は、554MHzから710MHzの信号をAGCアンプ114に出力する。
【0046】
図2,3を参照して説明したように、局部発振信号の周波数Loが368MHzである場合、476MHzを境界として受信信号が2系統に分離され、AGCアンプ113,114に入力される。また、局部発振信号の周波数Loが440MHzである場合、548MHzを境界として、受信信号が2系統に分離され、AGCアンプ113,114に入力される。このように、本実施形態に係るレベル調整装置100においては、局部発振信号の周波数Loを調整することで、Low側に分離される信号と、High側に分離される信号との境界を調整することができる。
【0047】
本実施形態に係るレベル調整装置100による、複数のチャンネルの受信信号の分離について、
図4,5を参照してより具体的に説明する。
図4,5においては、16chおよび20ch~33chの受信信号を例として説明する。16chの受信信号は、488MHzから494MHzの信号である。20ch~30chの受信信号はそれぞれ、500MHzから600MHzの間の6MHzの帯域幅の信号である。以下では、16chの信号と、その他のチャンネル(20ch~33ch)とに分離する例を用いて説明する。
【0048】
まず、Low側の処理について、
図4を参照して説明する。
【0049】
制御部117は、局部発振信号の周波数Loを、例えば、386MHzに制御する。局部発振信号の周波数Loが386MHzである場合、16chの受信信号は、102MHzから108MHzの信号に周波数変換される。したがって、BPF107は、16chの受信信号を通過させ、20ch~33chの信号をカットする。ミキサ109は、BPF107の出力信号を元の周波数帯(488MHzから494MHz)の信号に周波数変換する。したがって、AGCアンプ113には、16chの受信信号が入力される。
【0050】
次に、High側の処理について、
図5を参照して説明する。
【0051】
局部発振信号の周波数Loが386MHzである場合、16chの受信信号は、102MHzから108MHzの信号に周波数変換される。また、20ch~33chの受信信号は、126MHzから210MHzの範囲で、周波数変換される。したがって、BPF108は、20ch~33chの受信信号を通過させ、16chの受信信号をカットする。ミキサ110は、BPF108の出力信号を元の周波数帯(512MHzから596MHzの間)の信号に周波数変換する。したがって、AGCアンプ114には、20ch~33chの受信信号が入力される。
【0052】
次に、制御部117の動作について、
図6を参照して説明する。
図6は、制御部117の動作の一例を示すフローチャートである。
【0053】
制御部117は、初期値を設定する(ステップS101)。具体的には、制御部117は、共聴施設の受信点で受信した全てのチャンネルのうち、最小のチャンネル番号をAと設定する。また、制御部117は、その他のチャンネルのチャンネル番号を、小さい順にB[m](m=0,1,・・・)と設定する。チャンネル番号がB[m]のチャンネル(chB[m])は、後述するように、チャンネル番号Aのチャンネル(chA)と信号が比較されるチャンネルである。以下では、chB[m]を比較チャンネルと称することがある。また、制御部117は、エリアにおけるすべてのチャンネルのうち、最大のチャンネル番号をMAXchと設定する。また、制御部117は、Low側に分離可能な最大のチャンネル番号をMAXfreqと設定する。MAXfreqは、局部発振器101が出力する局部発振信号の周波数Loを調整可能な範囲に応じて定まる。また、制御部117は、相関係数の所定の閾値をCORvalと設定する。また、制御部117は、Low側に分離するチャンネルのうち、最大のチャンネル番号をSEPchと設定する。以下では、チャンネル番号がSEPchであるチャンネルを分離チャンネルと称する。
【0054】
制御部117は、m=0、SEPch=MAXfeq+1とし(ステップS102)、比較チャンネルおよび分離チャンネルを初期化する。
【0055】
制御部117は、A≦MAXfreqであるか否かを判定する(ステップS103)。つまり、制御部117は、chAがLow側に分離可能な範囲のチャンネルであるか否かを判定する。
【0056】
A≦MAXfreqであると判定した場合(ステップS103:Yes)、制御部117は、蓄積部116に蓄積されている、chAおよびchB[m]の受信信号の信号レベルのデータを、所定時間分(例えば、過去24時間、12時間、6時間、1時間など)だけ取得する。制御部117は、chAの受信信号と、chB[m]の受信信号との相関係数Cを算出する(ステップS104)。このように、制御部117は、chAを基準となるチャンネル(第1のチャンネル)として、chAの受信信号と、比較チャンネルであるchB[m](第2のチャンネル)の受信信号との相関を算出する。chAの受信信号と、chB[m]の受信信号とが同様の傾向で変動する場合、相関係数Cは大きくなる。一方、chAの受信信号と、chB[m]の受信信号とが異なる傾向で変動する場合、すなわち、信号の挙動が異なる場合、相関係数Cは小さくなる。
【0057】
制御部117は、算出した相関係数Cが閾値CORval以上(C≧CORval)であるか否かを判定する(ステップS105)。
【0058】
C≧CORvalであると判定した場合(ステップS105:Yes)、制御部117は、B[m]=MAXchであるか否かを判定する(ステップS106)。
【0059】
B[m]=MAXchでないと判定した場合(ステップS106:No)、制御部117は、mに1を加算し(ステップS107)、ステップS104の処理に戻る。
【0060】
C≧CORvalでない(C<CORvalである)と判定した場合(ステップS105:No)、制御部117は、B[m]-1≦MAXfreqであるか否かを判定する(ステップS108)。つまり、制御部117は、chB[m]を区切りとして、チャンネル番号がB[m]以上のチャンネルの受信信号をHigh側に、チャンネル番号がB[m]-1以下のチャンネルの受信信号をLow側に分離可能であるか否かを判定する。
【0061】
B[m]-1≦MAXfreqであると判定した場合(ステップS108:Yes)、制御部117は、SEPch=B[m]-1と設定する(ステップS109)。
【0062】
B[m]-1≦MAXfreqでない(B[m]-1>MAXfreqである)と判定した場合(ステップS108:No)、制御部117は、SEPch=MAXfreqと設定する(ステップS110)。
【0063】
ステップS109またはステップS110の処理の後、あるいは、B[m]=MAXchであると判定した場合(ステップS106:Yes)、制御部117は、SEPch≦MAXfreqであるか否かを判定する(ステップS111)。
【0064】
SEPch≦MAXfreqであると判定した場合(ステップS111:Yes)、制御部117は、分配器103からミキサ105に、複数のチャンネルの受信信号が入力されるように切替部104を制御する。また、制御部117は、チャンネル番号がSEPch以下のチャンネルの受信信号がLow側のBPF107を通過し、チャンネル番号がSEPchより大きいチャンネルの受信信号がHigh側のBPF108を通過するように、局部発振信号の周波数Loを制御する(ステップS112)。
【0065】
SEPch≦MAXfreqでない(SEPch>MAXfreqである)と判定した場合(ステップS111:No)、制御部117は、分離チャンネルがLow側に分離可能な範囲のチャンネルでないため、複数のチャンネルの受信信号が分配器103からAGCアンプ113に入力されるように、切替部104を制御する。
【0066】
図6を参照して説明したように、制御部117は、chAの受信信号とchB[m]の受信信号との相関係数Cが閾値CORvalより小さく、B[m]-1≦MAXfreqである場合、chB[m]を区切りとして、複数のチャンネルの受信信号を2つの系統に分離する。具体的には、制御部117は、チャンネル番号B[m]-1以下のチャンネルがLow側に、チャンネル番号B[m]以上のチャンネルがHigh側に分離されるように、局部発振信号の周波数Loを制御する。
【0067】
また、制御部117は、chAの受信信号とchB[m]の受信信号との相関係数Cが閾値CORvalより小さく、B[m]-1>MAXfreqである場合、チャンネル番号がMAXfreqのチャンネルを区切りとして、複数のチャンネルの受信信号を2つの系統に分離する。具体的には、制御部117は、チャンネル番号がMAXfreq以下のチャンネルがLow側に、チャンネル番号がMAXfreqより大きいチャンネルがHigh側に分離されるように、局部発振信号の周波数Loを制御する。
【0068】
このように、制御部117は、基準となるchA(第1のチャンネル)との相関が所定の閾値CORvalよりも小さいchB[m]に応じて、複数のチャンネルの受信信号が、BPF107が信号を通過させる帯域(第1の帯域)と、BPF108が信号と通過させる帯域(第2の帯域)とに分離されるように、局部発振号信号の周波数Loを制御する。
【0069】
図7は、本実施形態に係るレベル調整装置100による信号レベル調整前の、複数のチャンネル(16ch,20ch,22ch,26ch,29ch,31chおよび33ch)の受信信号の信号レベル変動の一例を示す図である。
【0070】
図7に示すように、16ch以外のチャンネルの受信信号の信号レベルは、70dBμV程度から85dBμV程度の間で推移し、また、増加あるいは減少の仕方も概ね一様である。一方、16chの受信信号の信号レベルは、他のチャンネルの受信信号の信号レベルの挙動とは異なり、50dBμV程度まで低下している時間帯がある。このように、16chと他のチャンネルとで、受信信号の信号レベルの挙動が大きく異なっている。そこで、本実施形態に係るレベル調整装置100により、16chの受信信号のLow側に、その他のチャンネルの受信信号をHigh側に分離して、信号レベルの調整を行った。
【0071】
図8は、レベル調整装置100による、
図7に示す複数のチャンネルの受信信号の信号レベルの調整を行った後の、各チャンネルの受信信号の信号レベル変動を示す図である。
【0072】
図8に示すように、本実施形態に係るレベル調整装置100により信号レベルの調整を行うことで、全チャンネルの受信信号の信号レベルを概ね一定に保つことができた。
【0073】
このように本実施形態に係るレベル調整装置100によれば、人手を介さず自動で、チャンネル間の信号の相関から、局部発振信号の周波数Loの制御の要否の判定および局部発振信号の周波数Loの制御を行うことができる。通常、各チャンネルのレベル変動の挙動は時間変化があり、例えば、16chのみが挙動が異なる場合もあれば、16chおよび20chのみが他のチャンネルと挙動が異なる場合もある。このような場合に、自動判定・制御を行わないと、どちらかの場合の設定で固定されてしまい、うまくAGC機能が働かない時間帯が発生してしまう。一方、本実施形態に係るレベル調整装置100のように、自動判定・制御を行うことで、時間変化に追従して適切なチャンネルの分離を行い、AGCを機能させることができる。
【0074】
なお、
図6を参照して説明したように、制御部117は、chAと全ての比較chそれぞれとの相関係数CがCORval以下である場合、SEPch=MAXfreq+1と設定する。この場合、SEPch>MAXfreqなので、制御部117は、局部発振信号の周波数Loの制御は行わず、分配器103の出力信号がAGCアンプ113に入力されるように切替部104を制御する。したがって、制御部117は、
図9に示すように、各チャンネルの相関の程度に応じて、信号分離の有無を切り替える。こうすることで、不要な周波数変換などが行われることをなくすことができる。
【0075】
このように本実施形態においては、レベル調整装置100は、複数のチャンネルのうち、
基準となるチャンネル(第1のチャンネル)との相関が所定の閾値よりも低いチャンネル(第2のチャンネル)に応じて、複数のチャンネルの受信信号が、BPF107が信号を通過させる帯域(第1の帯域)と、BPF108が信号を透過させる帯域(第2の帯域)とに分離されるように、局部発振信号の周波数Loを制御する。
【0076】
そのため、基準となるチャンネルと、基準となるチャンネルとの相関が所定の閾値よりも低いチャンネルは、異なるAGCアンプ113,114にそれぞれ入力されるので、AGC機能により、相関が低いチャンネルの信号レベルの改善を図ることができる。また、局部発振信号の周波数Loを制御することで、複数のチャンネルの受信信号を分離する境界を調整することができるので、地域ごとのチャンネル配置に応じた専用の構成などを用いることなく、信号レベルを調整することができる。したがって、より簡易な構成で、複数のチャンネルの受信信号の信号レベルを調整することができる。
【0077】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨および範囲内で、多くの変更および置換が可能であることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形および変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 送信所
2 受信アンテナ
3 送信機
4 受信機
100 レベル調整装置
101 局部発振器
102,103,106 分配器
104 切替部
105 ミキサ(第1の周波数変換部)
107,108,111,112 バンドパスフィルタ
109 ミキサ(第2の周波数変換部)
110 ミキサ(第3の周波数変換部)
113 AGCアンプ(第1のレベル調整部)
114 AGCアンプ(第2のレベル調整部)
115 混合器
116 蓄積部
117 制御部
118 分離部