(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 49/14 20060101AFI20240612BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20240612BHJP
B24B 55/00 20060101ALI20240612BHJP
B24B 55/02 20060101ALI20240612BHJP
B23Q 17/20 20060101ALI20240612BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240612BHJP
G01B 5/02 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
B24B49/14
B24B7/04 A
B24B55/00
B24B55/02 B
B23Q17/20 A
H01L21/304 622S
H01L21/304 631
G01B5/02
(21)【出願番号】P 2020148806
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中塚 敦
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-83266(JP,A)
【文献】特開2015-98074(JP,A)
【文献】特開平11-333719(JP,A)
【文献】特開昭63-256358(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0102227(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/14
B24B 7/04
B24B 55/00 - 55/02
B23Q 17/20
H01L 21/304
G01B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面で被加工物を保持するチャックテーブルと、研削砥石で被加工物を研削する研削手段と、該研削砥石に研削水を供給する研削水供給部と、少なくとも該保持面に保持された被加工物の上面高さを測定する上面高さ測定器と、を備える研削装置であって、
該上面高さ測定器は、被加工物の上面に接触させるプローブと、該プローブを下端に配置し該保持面に垂直方向に移動自在に支持されたシャフトと、該シャフトを移動自在に支持するガイドと、該シャフトの高さを検知するスケールと、該シャフトを上昇させる、又は該シャフトを該シャフトの自重で下降させる上下駆動部と、該シャフトと該ガイドと該スケールと該上下駆動部とを収容し該プローブを外に露出させるケースと、を備え、
加工熱を吸収した該研削水による熱影響を該ケースが受けないようにする防止機構を備え、
該防止機構は、該ケースの上面に平行で、該上面の上に僅かな隙間を設けて、該上面の外周縁から僅かに内側に上プレート外周縁を位置付けるように配設された上プレートと、該上プレートの下面と該ケースの該上面との間の該隙間に水を供給させ該ケースの該上面に水層を形成する上面水供給部と、を備え、
該上面水供給部から供給された水が、該ケースの該上面に水層を形成するとともに該上プレートの該上プレート外周縁から溢れ出て該ケースの側面に伝わり落ちることによって該側面全面を覆う水層を形成させ、該研削水の熱影響を防止する研削装置。
【請求項2】
前記防止機構は、前記ケースの下面に平行で、該下面の下に僅かな隙間を設けて配置する下プレートと、該ケースの該下面と該下プレートの上面との間の該隙間に水を供給させ該ケースの該下面に水層を形成する下面水供給部と、を備える請求項1記載の研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等の被加工物を研削する研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チャックテーブルの保持面に保持された被加工物を研削砥石で研削する研削装置は、例えば特許文献1に開示されているような被加工物の上面高さと被加工物を保持する保持面の高さとを測定する各測定器を備えていて、研削加工中に被加工物の上面高さと保持面高さとの差を被加工物の厚さとして算出し、被加工物の厚さが予め設定した厚さになるまで研削している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、上記のような研削装置においては、研削加工した際に発する加工熱を除去する為に研削砥石に研削水を供給している。この研削水は、加工熱を吸収し温度が上昇する。この温度が上昇した研削水は、研削砥石の回転による遠心力を受け、研削砥石から放射状に撒き散らかされて測定器にかかる。そして、温度が上昇した研削水がかかることによって、測定器のゲージ等が温度差で熱変形し正常な値を測定できなくなるという問題が有る。
【0005】
したがって、研削装置は、測定器に研削水がかかったとしても、被加工物の上面の正確な高さや被加工物の正確な厚さを測定できるようにするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、保持面で被加工物を保持するチャックテーブルと、研削砥石で被加工物を研削する研削手段と、該研削砥石に研削水を供給する研削水供給部と、少なくとも該保持面に保持された被加工物の上面高さを測定する上面高さ測定器と、を備える研削装置であって、該上面高さ測定器は、被加工物の上面に接触させるプローブと、該プローブを下端に配置し該保持面に垂直方向に移動自在に支持されたシャフトと、該シャフトを移動自在に支持するガイドと、該シャフトの高さを検知するスケールと、該シャフトを上昇させる、又は該シャフトを該シャフトの自重で下降させる上下駆動部と、該シャフトと該ガイドと該スケールと該上下駆動部とを収容し該プローブを外に露出させるケースと、を備え、加工熱を吸収した該研削水による熱影響を該ケースが受けないようにする防止機構を備え、該防止機構は、該ケースの上面に平行で、該上面の上に僅かな隙間を設けて、該上面の外周縁から僅かに内側に上プレート外周縁を位置付けるように配設された上プレートと、該上プレートの下面と該ケースの該上面との間の該隙間に水を供給させ該ケースの該上面に水層を形成する上面水供給部と、を備え、該上面水供給部から供給された水が、該ケースの該上面に水層を形成するとともに該上プレートの該上プレート外周縁から溢れ出て該ケースの側面に伝わり落ちることによって該側面全面を覆う水層を形成させ、該研削水の熱影響を防止する研削装置である。
【0007】
本発明に係る研削装置において、前記防止機構は、前記ケースの下面に平行で、該下面の下に僅かな隙間を設けて配置する下プレートと、該ケースの該下面と該下プレートの上面との間の該隙間に水を供給させ該ケースの該下面に水層を形成する下面水供給部と、を備えると好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る研削装置は、被加工物の上面高さを測定する上面高さ測定器は、被加工物の上面に接触させるプローブと、プローブを下端に配置し保持面に垂直方向に移動自在に支持されたシャフトと、シャフトを移動自在に支持するガイドと、シャフトの高さを検知するスケールと、シャフトを上昇させる、又はシャフトをシャフトの自重で下降させる上下駆動部と、シャフトとガイドとスケールと上下駆動部とを収容しプローブを外に露出させる例えば矩形のケースと、を備え、加工熱を吸収した研削水による熱影響をケースが受けないようにする防止機構を備え、防止機構は、ケースの上面に平行で、上面の上に僅かな隙間を設けて、上面の外周縁から僅かに内側に上プレート外周縁を位置付けるように配設された上プレートと、上プレートの下面とケースの上面との間の隙間に水を供給させケースの上面に水層を形成する上面水供給部と、を備えることで、上面水供給部から供給された水が、ケースの上面に水層を形成するとともに上プレートの上プレート外周縁から溢れ出てケースの側面に伝わり落ちることによって側面全面を覆う水層を形成させることが可能となる。そして、研削砥石に供給されて温まった研削水がケース側に飛び散っても、ケースの周囲を水層で保護していているため、ケースやケースの内部の構成が研削水による熱影響を受けることを防ぐことが可能となり、被加工物の上面の正確な高さを上面高さ測定器で継続的に測定できる。
また、ケースの上面に平行な上プレートとケースの上面との間の僅かな隙間に水を供給することでケースの上面全面及び側面全面を覆う水層を形成しているので、水層を形成するための供給水量を抑えることができる。
【0009】
本発明に係る研削装置において、防止機構は、ケースの下面に平行で、下面の下に僅かな隙間を設けて配置する下プレートと、ケースの下面と下プレートの上面との間の隙間に水を供給させケースの下面に水層を形成する下面水供給部と、を備えることで、ケースの下面側に飛んできた温まった研削水によってケースやケースの内部の構成が研削水の熱影響を受けてしまうことを防ぐことが可能となるため、被加工物の上面の正確な高さを上面高さ測定器でより正確に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】上面厚み測定器、及び防止機構の一例を側方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す研削装置1は、チャックテーブル30上に保持された被加工物90を研削手段7によって研削加工する装置であり、研削装置1の長手方向がY軸方向であるベース10上の前方(-Y方向側)は、チャックテーブル30に対して被加工物90の着脱が行われる領域であり、ベース10上の後方(+Y方向側)は、研削手段7によってチャックテーブル30上に保持された被加工物90の研削が行われる領域である。
なお、本発明に係る研削装置は、研削装置1のような研削手段7が1軸の研削装置に限定されるものではなく、粗研削手段と仕上げ研削手段とを備え、回転するターンテーブルで被加工物90を粗研削手段又は仕上げ研削手段の下方に位置づけ可能な2軸の研削装置等であってもよい。
【0012】
被加工物90は、例えば、シリコン母材等からなる円形の半導体ウェーハである。なお、被加工物90はシリコン以外にガリウムヒ素、サファイア、窒化ガリウム、セラミックス、樹脂、又はシリコンカーバイド等で構成されていてもよいし、矩形のパッケージ基板等であってもよい。
【0013】
被加工物90を保持する
図1に示すチャックテーブル30は、例えば、その外形が円形状であり、ポーラス部材等からなり図示しない吸引源に連通し被加工物90を吸引保持可能な上面を保持面300として備えている。
【0014】
図1に示すように、チャックテーブル30は、カバー39によって囲繞されていると共に、その下方に配設された図示しないテーブル回転手段によって軸方向がZ軸方向の回転軸を軸に回転可能である。また、チャックテーブル30は、
図1に示すカバー39及びカバー39に連結された蛇腹カバー390の下方に配設された図示しないY軸移動手段によってY軸方向に往復移動可能となっている。
【0015】
図1に示すベース10上の研削領域には、コラム11が立設されており、コラム11の前面には研削手段7をチャックテーブル30に対して離間又は接近するZ軸方向(鉛直方向)に研削送りする研削送り手段13が配設されている。研削送り手段13は、鉛直方向の軸心を有するボールネジ130と、ボールネジ130と平行に配設された一対のガイドレール131と、ボールネジ130の上端に連結しボールネジ130を回動させるモータ132と、内部のナットがボールネジ130に螺合し側部がガイドレール131に摺接する昇降板133とを備えており、モータ132がボールネジ130を回動させると、これに伴い昇降板133がガイドレール131にガイドされてZ軸方向に往復移動し、昇降板133に固定されている研削手段7がZ軸方向に研削送りされる。
【0016】
チャックテーブル30に保持された被加工物90を研削する研削手段7は、軸方向がZ軸方向であるスピンドル70と、スピンドル70を回転可能に支持するハウジング71と、スピンドル70を回転駆動するモータ72と、スピンドル70の下端に連結された円板状のマウント73と、マウント73の下面に着脱可能に装着された研削ホイール74と、ハウジング71を支持し研削送り手段13の昇降板133にその側面が固定されたホルダ75とを備える。
【0017】
研削ホイール74は、平面視円環状のホイール基台741と、ホイール基台741の下面に環状に配置された略直方体形状の複数の研削砥石740と、を備える。研削砥石740は、適宜のバインダー(接着剤)でダイヤモンド砥粒等が固着されて成形されており、主にその下面が研削面となる。
【0018】
スピンドル70の内部には、純水等を蓄えた研削水源180に連通し研削水の通り道となる流路181が、スピンドル70の軸方向に貫通して設けられており、該流路181は、さらにマウント73を通り、ホイール基台741の底面において研削砥石740に向かって研削水を噴出できるように開口している。そして、流路181及び研削水源180によって、研削砥石740に研削水を供給する研削水供給部18が構成される。
なお、研削時に、研削ホイール74は、チャックテーブル30から水平方向に一部がはみ出すように位置づけられているため、そのはみ出した部分の研削ホイール74の内側に配設され研削水を噴射する外部ノズルを研削水供給部としてもよい。
【0019】
研削装置1は、例えば、研削中において被加工物90の厚さを測定する厚さ測定手段4を備えている。厚さ測定手段4は、例えば、チャックテーブル30の保持面300の高さ測定用の保持面高さ測定器5と、チャックテーブル30の保持面300に保持された被加工物90の上面の高さを測定する上面高さ測定器6とを備えている。
【0020】
ベース10上のチャックテーブル30の移動経路脇で研削位置まで下降した研削ホイール74の近傍となる位置には、測定器支持コラム14が立設されており、測定器支持コラム14の+X方向側の前面にチャックテーブル30の移動経路上に交差するように水平に延在する第1アーム141と第2アーム142とが並んで配設されている。そして、第1アーム141の先端側に上面高さ測定器6が固定されており、第2アーム142の先端側に保持面高さ測定器5が固定されている。
【0021】
厚さ測定手段4は、保持面高さ測定器5により、基準面となる保持面300の高さ位置を測定し、上面高さ測定器6により、研削される被加工物90の上面の高さ位置を測定し、両者の測定値の差を算出することで、被加工物90の厚さを研削中に逐次測定することができる。
なお、厚さ測定手段4は、上面高さ測定器6のみを備えていてもよい。この場合には、厚さ測定手段4は、予め、保持面300の高さ位置及び研削前の被加工物90の厚さ(投入厚さ)を把握しており、それ故、保持面300で保持された研削前の被加工物90の上面の高さ位置を把握している。したがって、厚さ測定手段4は、保持面300で保持された研削前の被加工物90の上面の高さ位置と研削加工中に測定した被加工物90の上面の高さ位置との差から被加工物90の研削により除去された量(除去量)を測定して、さらに、研削加工中の被加工物90の厚さを逐次測定できる。
【0022】
上面高さ測定器6と保持面高さ測定器5とは同様の構成を備えているため、以下に上面高さ測定器6の構成についてのみ説明する。また、上面高さ測定器6と保持面高さ測定器5とは、それぞれ防止機構2によって、研削中に用いられる研削水からの熱影響を受けないようになっている。
図2に示す直動式のリニアゲージである上面高さ測定器6は、被加工物90の上面に接触させるプローブ60と、プローブ60を下端に配置しチャックテーブル30の保持面300に垂直方向(Z軸方向)に移動自在に支持されたシャフト61と、シャフト61を移動自在に支持するガイド69と、シャフト61の高さを検知するスケール63と、シャフト61を上昇させる、又はシャフト61をシャフト61の自重で下降させる上下駆動部64と、シャフト61とガイド69とスケール63と上下駆動部64とを収容しプローブ60を外に露出させるケース65と、を備えている。
【0023】
シャフト61は、例えば、シャフト61の外側面を囲繞しエアを介在させシャフト61の外側面を支持するガイド69によって非接触で上下動可能に支持されている。シャフト61は、本実施形態においては外形が四角柱状に形成されており、シャフト61の上端側は、例えば、平板状の連結部材612の下面側に図示しない固定ナットによって連結している。シャフト61の外側面は、ガイド69から供給されるエアによって囲繞されることで、プローブ60のZ軸方向を回転軸方向とする回転を規制する規制面となる。
プローブ60は、例えばダイヤモンド等で構成され丸みを帯びた球面状の下端を備え、Z軸方向に平行に延在しており、シャフト61の下端に一体的に配設されている。
【0024】
上下駆動部64は、例えば、ピストンシリンダであり、内部にピストン640を備え基端側(-Z方向側)に底のあるシリンダチューブ641と、シリンダチューブ641に挿入され下端がピストン640に取り付けられたピストンロッド642と、シリンダチューブ641の内部にエアを流入するためのエア流入口6411、エア流入口6412とを少なくとも備えている。ピストンロッド642の上端側は、連結部材612の下面に接触可能となっており、シリンダチューブ641の基端側は、ケース65の底板653の上面に固定されている。
【0025】
エア流入口6411、エア流入口6412には、それぞれエア供給管682、エア供給管683が連通しており、エア供給管682、エア供給管683はソレノイドバルブ685を介してコンプレッサー等からなるエア供給源68に連通している。
【0026】
上下駆動部64によって被加工物90の上面から離反する方向にプローブ60を上昇させるときは、ソレノイドバルブ685がエア供給源68とエア供給管683とを連通させた状態で、エア供給源68がエア流入口6412からシリンダチューブ641内にエアを供給することにより、ピストン640を上昇させる。そして、連結部材612の下面にピストンロッド642を接触させてから、さらにピストンロッド642と共に連結部材612を上昇させることにより、連結部材612に連結されたシャフト61を上昇させる。
【0027】
一方、上下駆動部64によってプローブ60を被加工物90の上面に接近させる方向に下降させるときは、ソレノイドバルブ685がエア供給源68とエア供給管682とを連通させた状態で、エア供給源68がエア流入口6411からシリンダチューブ641内にエアを供給し、また、エア流入口6412からエアを流出させることにより、規制された速度でピストンロッド642を下降させることで、シャフト61の自重によってシャフト61及びシャフト61の下端に配設されたプローブ60が下降する速度を制限する。そして、プローブ60の下端が被加工物90の上面に接触するまでシャフト61を下降させる。
【0028】
ガイド69は、ケース65の底板653に下部側の一部がZ軸方向に貫通するように配設された枠体690を有しており、枠体690の内部にシャフト61を挿通させてシャフト61の外側面を非接触で支持できる構成となっている。例えば、枠体690と底板653との接触部位には、図示しないシーリング部材が配設されている。
【0029】
シャフト61は、本実施形態においては四角柱状に形成されており、これに対応して、枠体690には、シャフト61を上下動可能に収容するための横断面四角形状の縦孔がZ軸方向に貫通形成されている。ガイド69の下端からは、プローブ60が下方に突き出ている。枠体690は、シャフト61の外側面から小さな隙間を設けて離間して該外側面を囲繞する支持面6901と、シャフト61の外側面を囲繞しシャフト61の外側面を支持するエアを該隙間に対して支持面6901から噴出させる複数の噴射口6902と、枠体690の外側面に形成されエア供給源68に連通するエア供給口6904と、エア供給口6904と各噴射口6902とを連通させる内部流路6906とを備えている。
【0030】
このように構成されるガイド69では、各噴射口6902からシャフト61の外側面に対して垂直な方向にエアを噴出することによって、シャフト61を隙間に介在させたエアで囲繞して非接触の状態で支持することができる。なお、シャフト61の形状は、四角柱状に限られず、回転しない形状、すなわち円柱でない形状であればよい。したがって、多角柱でもよいし、楕円柱でもよい。また、一面のみが平らな面に形成され、他の面が曲面に形成された柱状でもよい。これに対応し、枠体690の縦孔も、シャフト61と同形状に形成されていればよい。
【0031】
連結部材612の下面の一角には、スケール63が配設されている。スケール63は、連結部材612の下面にその上端が固定されておりシャフト61の延在方向(Z軸方向)と平行に-Z方向に向かって延在する。そして、スケール63に対向するように、スケール63の目盛りを読み取る読み取り部635がケース65内に配設されている。例えば、読み取り部635は、ケース65の側壁654の内側面に固定されており、スケール63の目盛りの反射光を読み取る光学式のものであり、プローブ60の下端の高さ位置、すなわち、被加工物90の上面の高さ位置を読み取ることができる。
【0032】
図1に示すように、ケース65は、本実施形態においては、直方体状の外形を備えているが、これに限定されず、例えば円柱状の外形を備えていてもよい。
図2に示すように、ケース65は、例えば、平面視略矩形で水平面に平行な底板653と、底板653の外周から一体的に+Z方向に立ち上がる4枚の側壁と、平面視矩形で4枚の側壁の上端に連結され水平面に平行な天板658とを備えている。
図1、
図2でX軸方向において対向する2枚の側壁を側壁654として、Y軸方向において対向する2枚の側壁を側壁655とする。
-X方向側の側壁654の外側面は、例えば第1アーム141の前面に固定されている。
【0033】
研削装置1は、研削水供給部18から研削砥石740と被加工物90との接触部位に供給され加工熱を吸収した研削水による熱影響をケース65及びケース65の内部に収容されたシャフト61、ガイド69、上下駆動部64、及びスケール63等が受けないようにする防止機構2を備えている。
【0034】
図2に示す防止機構2は、ケース65の天板658の上面に平行で、天板658の上面の上に僅かな隙間200を設けて、上面の4辺である外周縁6581から僅かに内側に上プレート外周縁201を位置付けるように配設された上プレート20と、上プレート20の下面とケース65の天板658の上面との間の隙間200に水を供給させケース65の天板658の上面に水層を形成する上面水供給部22と、を備えている。さらに、防止機構2は、本実施形態においては、ケース65の底板653の下面に平行で、該下面の下に僅かな隙間290を設けて配置する下プレート29と、ケース65の底板653の下面と下プレート29の上面との間の隙間290に水を供給させケース65の下面に水層を形成する下面水供給部27と、を備えている。
【0035】
上プレート20は、水平方向に延在しており、例えば、上プレート20の-X方向側の一辺は、第1アーム141の上面に立設されたプレート支持柱21の上端側に固定されている。
【0036】
例えば、第1アーム141の内部にはアーム内流路228が形成されており、該アーム内流路228は、所定の温度に調温された冷却水をポンプ等からなり送出可能な冷却水源229に継手や配管等を介して連通している。アーム内流路228は、プレート支持柱21内部の支持柱内流路227に連通しており、該支持柱内流路227は、上プレート20内部に形成された上プレート内流路226に連通している。なお、上プレート内流路226に直に冷却水源229が連通していてもよい。
【0037】
上プレート20の下面とケース65の天板658の上面との間の隙間200は、例えば約1mm~2mmとなっている。本実施形態においては、例えば、上プレート20の下面のプレート支持柱21側の領域(-X方向側の領域)は一部が矩形に切り欠かれており、上プレート20の下面のうち、水(冷却水)を下方に噴射可能な上プレート噴射面204は、平面視矩形状の天板658の上面の相似形であり天板658の上面よりもわずかに大きさが小さく設定されており、天板658の上面の4辺、即ち、4つの外周縁6581からわずかに内側に上プレート噴射面204の四辺である上プレート外周縁201がそれぞれ位置している。
【0038】
上プレート20内部の上プレート内流路226は複数に分岐して、その各下端側が上プレート噴射面204に例えば均等間隔を空けて開口している。そして、本実施形態においては、上プレート内流路226、支持柱内流路227、アーム内流路228、及び冷却水源229等によって上面水供給部22が形成される。
なお、上プレート内流路226の開口は、上プレート噴射面204に一つだけでもよい。
【0039】
下プレート29は、水平方向に延在しており、下プレート29の-X方向側の一辺は、第1アーム141の前面に固定されている。下プレート29は、ケース65の底板653を貫通するガイド69、シャフト61、及びプローブ60が貫通しており、ガイド69と下プレート29との接触部位には図示しないシーリング部材が配設されている。
【0040】
第1アーム141の内部に形成されたアーム内流路228は、下プレート29内部に形成された下プレート内流路273に連通している。下プレート内流路273は複数に分岐して、その各上端側が下プレート29の上面に例えば均等間隔を空けて開口している。そして、本実施形態においては、下プレート内流路273、アーム内流路228、及び冷却水源229等によって下面水供給部27が形成される。
下プレート29の上面とケース65の底板653の下面との間の隙間290は、例えば1mm~2mmとなっている。
なお、下プレート内流路273の開口は、下プレート29の上面に一つだけでもよい。
また、例えば、
図2に示すように、枠体690内の下部側に枠体内水流路6909を形成し、枠体内水流路6909に冷却水を流してもよい。
また、下面水供給部27の下プレート内流路273と枠体内水流路6909とを連通させ、冷却水源229から送出される冷却水Lを枠体内水流路6909に供給してもよい。これによって、枠体690の下プレート29から下方に突き出た部分も冷却水Lによって冷却されるため、ガイド69の研削水による熱影響がさらに抑えられる。
【0041】
以下に、
図1に示す研削装置1において、チャックテーブル30に保持された被加工物90を研削する場合の研削装置1の動作について説明する。
着脱領域内において、被加工物90がチャックテーブル30の保持面300上に互いの中心を略合致させた状態で載置される。そして、図示しない吸引源により生み出される吸引力が保持面300に伝達され、チャックテーブル30が保持面300上で被加工物90を吸引保持する。
【0042】
次いで、被加工物90を吸引保持したチャックテーブル30が、着脱領域から研削領域内の研削手段7の下まで+Y方向へ移動し、研削手段7の研削砥石740の回転中心が被加工物90の回転中心に対して所定距離だけ水平方向にずれ、研削砥石740の回転軌跡が被加工物90の回転中心を通るようにチャックテーブル30が位置づけされる。
【0043】
そして、
図2に示すように、研削手段7が研削送り手段13により-Z方向へと送られ、回転する研削砥石740が被加工物90の上面に当接することで研削が行われる。研削中は、チャックテーブル30が所定の回転速度で回転されるのに伴って、保持面300上に保持された被加工物90も回転するので、研削砥石740が被加工物90の上面の全面の研削加工を行う。
【0044】
研削砥石740による被加工物90の研削が開始されると、
図1に示す保持面高さ測定器5により、基準面となる保持面300の高さ位置が測定され、上面高さ測定器6により、研削される被加工物90の上面の高さ位置が後に詳しく説明するようにして測定され、厚さ測定手段4が両者の測定値の差を算出することで、被加工物90の厚さを研削中に逐次測定する。
【0045】
研削加工中には、
図1、2に示す研削水供給部18からスピンドル70を通して、研削水が研削砥石740と被加工物90の上面との接触部位に供給されて、接触部位が冷却・洗浄される。そして、研削熱を吸収して温まった研削水の一部は、保持面300上、及びカバー39上を流れていき、カバー39からベース10内に配設された図示しないウォータケースに流下する。
【0046】
また、研削熱を吸収して温まった研削水の一部は、回転する研削砥石740の遠心力を受けて周囲に飛び散り、厚さ測定手段4側にも飛び散る。温度が上昇した研削水がかかることによって、上面高さ測定器6の各構成が温度差で熱変形し被加工物90の正確な上面の高さを測定できなくなることを防ぐため、防止機構2が動作する。なお、保持面高さ測定器5も、上面高さ測定器6とは別途の防止機構2によって、保持面高さ測定器5のプローブ60や図示しないシャフト61等の各構成が温まった研削水で熱変形することが防がれるが、説明は省略する。
【0047】
まず、
図2に示す上面高さ測定器6による被加工物90の上面の高さ測定では、上下駆動部64が、プローブ60を被加工物90の上面に接近する-Z方向に下降させる。具体的には、
図2に示すソレノイドバルブ685の供給ポートがエア供給管682に連通した状態で、エア供給源68がエア流入口6411からシリンダチューブ641内にエアを供給することにより、規制された速度でシリンダチューブ641の内部においてピストン640を下方向(-Z方向)に移動させる。これにより、主にシャフト61の自重による下降速度を制限しながらプローブ60の下端が被加工物90の上面に接触するまでプローブ60を下降させる。このように、上下駆動部64がシャフト61の下降速度を制限することにより、プローブ60の下端が被加工物90に接触する時の衝撃を小さくすることができる。
【0048】
この際、エア供給源68からガイド69のエア供給口6904にエアを供給し、噴射口6902からシャフト61の外側面に向かって噴射させることで、ガイド69でシャフト61を非接触で支持しつつ、規制面としての役割を果たすシャフト61の外側面によってプローブ60のZ軸を軸とした回転方向の動きを規制する。
【0049】
シャフト61の下降により被加工物90にプローブ60が接触したら、プローブ60の下端が被加工物90の上面に接触したときのスケール63の目盛りを読み取り部635が読み取り、被加工物90の上面の高さ位置が検出される。そして、研削中において上面高さ測定器6が逐次被加工物90の上面の高さを測定し続ける。
【0050】
上面高さ測定器6による被加工物90の上面高さの測定が開始されると、防止機構2の上面水供給部22が上プレート20の下面とケース65の上面との間の隙間200に水を供給する。即ち、所定の温度に調温された冷却水L(純水)が冷却水源229から単位時間当たりに所定量ずつ送出され始め、アーム内流路228、支持柱内流路227、及び上プレート内流路226を通り、上プレート噴射面204の上プレート内流路226の複数の開口から隙間200に向かって冷却水Lが噴出する。
【0051】
隙間200に到達した冷却水Lは、ケース65の上面に水層を形成するとともに上プレート20の上プレート噴射面204の4辺である上プレート外周縁201から溢れ出る。なお、隙間200は、毛細管現象等によって冷却水Lの層によって満たされた状態になる。この際、ケース65の上面の外周縁6581から僅かに内側に上プレート外周縁201を位置付けていることで、例えば、上プレート外周縁201とケース65の上面の外周縁との間において、冷却水Lが山状に盛り上がり、ケース65の上面の4辺である4つの外周縁全周を囲繞する。さらにケース65の上面の4辺である4つの外周縁全周を囲繞した冷却水Lは、山状に盛り上がることで、ケース65の上面の4辺である4つの外周縁6581とケース65の側壁654、側壁655の外側面との角部分を覆うようにしつつ、ケース65の側壁654、側壁655の外側面に伝わり落ちることによって各外側面全面を覆う水層を形成させる。そして、水幕切れを起こさず、外側面全面を覆うようにして冷却水Lが流れ落ちていく。
これが、例えば、ケース65の上面の外周縁6581と上プレート外周縁201とを同位置に位置付けている場合には、ケース65の上面の外周縁6581に至った冷却水Lがケース65の上面の4つの外周縁6581において途切れ途切れとなってしまい、ケース65の側壁654、側壁655の外側面に移動した冷却水が、水滴状や複数の川状に該外側面を流れて落ちてしまう現象が発生し、ケース65の側壁654、側壁655の外側面に冷却水が流れていない箇所が生じてしまうのと大きく相違する点である。
なお、ケース65の上面の4辺である4つの外周縁6581と側壁654、側壁655の外側面との角を面取りしていてもよい。また、その面取りは、上プレート外周縁201より外側に形成しているとよい。
【0052】
また、本実施形態においては、防止機構2の下面水供給部27が下プレート29の上面とケース65の下面との間の隙間290に冷却水Lを供給する。即ち、所定の温度に調温された冷却水Lが冷却水源229から単位時間当たりに所定量ずつ送出され始め、アーム内流路228、及び下プレート内流路273を通り、下プレート内流路273の複数の開口から隙間290に向かって冷却水Lが噴出する。そして、隙間290は、毛細管現象等によって広がった冷却水Lの層によって満たされた状態になる。
【0053】
上記のように、研削加工中においては、防止機構2によって、ケース65の天板658の上面に水層が形成され、かつ2枚の側壁654、2枚の側壁655の各外側面全面を覆う水層が形成されていることで、研削砥石740に供給されて温まった研削水がケース65側に飛び散っても、ケース65が水層で保護されているため、ケース65やケース65の内部のシャフト61、ガイド69、上下駆動部64、及びスケール63等が研削水による熱影響を受けてしまうのを防ぐことができ、被加工物90の上面の正確な高さを上面高さ測定器6で継続的に測定できる。
また、ケース65の上面に平行な上プレート20とケース65の上面との間の僅かな隙間200に冷却水Lを供給することでケース65の天板658の上面全面及び側壁654、側壁655の外側面全面を覆う水層を形成しているので、例えばノズル噴射等によって冷却水をケース65に部分的に多く無駄に供給してしまうようなことが無いため、水層を形成するための供給水量を抑えることができる。
【0054】
さらに、本実施形態において、防止機構2は、ケース65の底板653の下面に平行で、該下面の下に僅かな隙間290を設けて配置する下プレート29と、ケース65の下面と下プレート29の上面との間の隙間290に水を供給させケース65の下面に水層を形成する下面水供給部27と、を備えることで、ケース65の下面側に飛んできた温まった研削水によってケース65やケース65の内部のシャフト61、ガイド69、上下駆動部64、及びスケール63等が研削水の熱影響を受けてしまうことを防ぐことが可能となるため、被加工物90の上面の正確な高さを上面高さ測定器6でより正確に測定できる。
【0055】
厚さ測定手段4による厚み測定を伴いつつ、被加工物90が所定の厚みになるまで研削された後、研削手段7が上方へ移動し被加工物90から離間する。また、
図2に示す上下駆動部64は、プローブ60を被加工物90から離反する上方向(+Z方向)に上昇させる。具体的には、ソレノイドバルブ685の供給ポートがエア供給管683に連通するように切り替えられた状態で、エア供給源68がエア流入口6412からシリンダチューブ641内にエアを供給することにより、ピストン640を上昇させる。そして、ピストンロッド642を上昇させることにより連結部材612と共にシャフト61を上昇させ、プローブ60を被加工物90から離間させる。これによって、被加工物90の研削が完了する。
なお、本発明に係る研削装置1は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0056】
90:被加工物
1:研削装置 10:ベース
30:チャックテーブル 300:保持面 39:カバー 390:蛇腹カバー
11:コラム 13:研削送り手段 7:研削手段
18:研削水供給部 180:研削水源 181:流路
4:厚さ測定手段 5:保持面高さ測定器
6:上面高さ測定器 60:プローブ 61:シャフト
63:スケール 635:読み取り部
64:上下駆動部 641:シリンダチューブ 642:ピストンロッド 6411、6412:エア流入口
65:ケース 653:底板 658:天板 654、655:側壁
69:ガイド 690:枠体 6901:支持面 6902:噴射口 6909:枠体内水流路
6904:エア供給口 6906:内部流路
68:エア供給源 682、683:エア供給管 685:ソレノイドバルブ
2:防止機構 20:上プレート 200:上プレートの下面とケースの上面との間の隙間 201:上プレート外周縁 204:上プレート噴射面
22:上面水供給部 226:上プレート内流路 227:支持柱内流路 228:アーム内流路 229:冷却水源
29:下プレート 27:下面水供給部 273:下プレート内流路