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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】誘電エラストマートランスデューサー
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/20 20230101AFI20240612BHJP
   H10N 30/30 20230101ALI20240612BHJP
   H10N 30/87 20230101ALI20240612BHJP
   H10N 30/06 20230101ALI20240612BHJP
   H10N 30/857 20230101ALI20240612BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
H10N30/20
H10N30/30
H10N30/87
H10N30/06
H10N30/857
H02N11/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020553808
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(86)【国際出願番号】 JP2019041432
(87)【国際公開番号】W WO2020090562
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2018204560
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514285911
【氏名又は名称】千葉 正毅
(73)【特許権者】
【識別番号】510244754
【氏名又は名称】和氣 美紀夫
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】千葉 正毅
(72)【発明者】
【氏名】和氣 美紀夫
(72)【発明者】
【氏名】上島 貢
(72)【発明者】
【氏名】竹下 誠
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-232679(JP,A)
【文献】特開2017-127088(JP,A)
【文献】特開平11-112046(JP,A)
【文献】特開昭61-252798(JP,A)
【文献】国際公開第2017/129453(WO,A1)
【文献】特開2018-019490(JP,A)
【文献】特開2013-055877(JP,A)
【文献】特開2012-069715(JP,A)
【文献】特開2008-251833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 30/20
H10N 30/30
H10N 30/87
H10N 30/06
H10N 30/857
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電エラストマー層と電極層とを有する誘電エラストマー要素と、
制御部と、を備え、
前記誘電エラストマー要素は、
互いに積層された一対の誘電エラストマー層と、
前記一対の誘電エラストマー層に挟まれた内部電極層と、
前記一対の誘電エラストマー層を挟み、且つそれぞれに個別に接続された配線によって前記制御部に接続されることにより互いに同電位とされた一対の外部電極層と、を有し、
前記誘電エラストマー要素は、ロール状に巻かれており、
前記一対の外部電極層は、互いの一部同士が直接対面している、誘電エラストマートランスデューサー。
【請求項2】
前記外部電極層の電位は、0またはグランド電位とされている、請求項に記載の誘電エラストマートランスデューサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電エラストマートランスデューサーに関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーの変換効率に優れたトランスデューサーとして、誘電エラストマー層を有する誘電エラストマートランスデューサーが注目されている。この誘電エラストマートランスデューサーは、誘電エラストマー層の変形(伸縮及び収縮)を利用して、任意のエネルギーを他のエネルギーに変換する。
【0003】
たとえば、外力を受けた際の誘電エラストマー層の変形を用いて発電を行うことにより、力学的エネルギーを電気エネルギーに変換する場合、誘電エラストマートランスデューサーは、発電素子として機能する。また、一対の電極に電荷を付与した際の誘電エラストマー層の変形を利用して駆動力を発揮させる場合、誘電エラストマートランスデューサーは、アクチュエーターとして機能する。また、コンデンサ(キャパシタ)としての誘電エラストマートランスデューサーの静電容量の変化を利用して、誘電エラストマートランスデューサーをセンサ素子として用いることもできる。
【0004】
たとえば、誘電エラストマートランスデューサーをアクチュエーターとして使用する場合、各々が誘電エラストマー層および一対の電極層を有する複数の誘電エラストマー要素を組み合わせて構成することが想定される。このような構成により、駆動力の強化やストロークの延長が可能となる。しかしながら、各誘電エラストマー要素の一対の電極には、顕著な高電圧(電位差)が付与される。このため、隣り合う誘電エラストマー要素の電極層同士に意図しない電気的な挙動が生じてしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-124875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、複数の誘電エラストマー要素をより安定して使用することが可能な誘電エラストマートランスデューサーを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって提供される誘電エラストマートランスデューサーは、各々が誘電エラストマー層と当該誘電エラストマー層を挟む一対の電極層とを有する複数の誘電エラストマー要素を備える、誘電エラストマートランスデューサーであって、隣り合う前記誘電エラストマー要素の前記誘電エラストマー層同士の間には、一方の前記誘電エラストマー要素の一方の前記電極層と他方の前記誘電エラストマー要素の一方の前記電極層とが、互いに同電位とされた状態で配置されている。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記各誘電エラストマー層は、内周縁および外周縁を有する環状形状であり、隣り合う前記誘電エラストマー層の内周縁同士または外周縁同士が互いに固定された状態で軸方向に伸張されることにより、前記複数の誘電エラストマー要素が錐台筒状をなしており、前記各誘電エラストマー要素の前記一対の電極層のうち径方向外方に位置するものの電位は、0またはグランド電位とされている。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記各誘電エラストマー層は、内周縁および外周縁を有する環状形状であり、前記複数の誘電エラストマー要素は、前記内周縁同士および前記外周縁同士がそれぞれ互いに固定された状態で積層されている。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、誘電エラストマー層と電極層とを有する誘電エラストマー要素を備えるトランスデューサーであって、前記誘電エラストマー要素は、互いに積層された一対の誘電エラストマー層と、前記一対の誘電エラストマー層に挟まれた内部電極層と、前記一対の誘電エラストマー層を挟み、且つ互いに同電位とされた一対の外部電極層と、を有する。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記外部電極層の電位は、0またはグランド電位とされている。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記誘電エラストマー要素は、ロール状に巻かれており、前記一対の外部電極層は、互いの一部同士が対面している。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、互いに積層された複数の前記誘電エラストマー要素を備えており、隣り合う前記誘電エラストマー要素の前記外部電極層同士は、互いに同電位とされている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の誘電エラストマー要素をより安定して使用することができる。
【0015】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る誘電エラストマートランスデューサーを示す斜視図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る誘電エラストマートランスデューサーを示す平面図である。
図4図3のIV-IV線に沿う断面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る誘電エラストマートランスデューサーを示す平面図である。
図6図5のVI-VI線に沿う断面図および要部拡大断面図である。
図7】本発明の第4実施形態に係る誘電エラストマートランスデューサーを示す断面図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る誘電エラストマートランスデューサーの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0018】
<第1実施形態>
図1および図2は、本発明の第1実施形態に係る誘電エラストマートランスデューサーを示している。本実施形態の誘電エラストマートランスデューサーA1は、複数の誘電エラストマー要素1、支持部材21,22,23,24,25および制御部3を備えている。誘電エラストマートランスデューサーA1の用途は特に限定されず、以降の説明においては、アクチュエーターとして用いられる場合を例に説明する。
【0019】
複数の誘電エラストマー要素1は、互いに共通の構成であり、誘電エラストマー層11および一対の電極層12,13を有する。図1および図2においては、説明の便宜上、複数の誘電エラストマー要素1を、誘電エラストマー要素1A,1B,1C,1Dとして区別して符号を付している。また、図2においては、誘電エラストマー要素1A~1Dの構成要素を、それぞれ誘電エラストマー層11A~11D、電極層12A~12D、電極層13A~13Dとして区別して符号を付している。なお、複数の誘電エラストマー要素1の個数は特に限定されず、3つ以下でもよいし、5つ以上であってもよい。
【0020】
誘電エラストマー層11は、エラストマー(ゴム状弾性を有する高分子化合物)のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。エラストマーの種類は、特に限定されないが、例えば、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマー等である。
【0021】
熱硬化性エラストマーの種類は、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、合成ゴム、シリコーンゴム系エラストマー、ウレタンゴム系エラストマー及びフッ素ゴム系エラストマー等である。
【0022】
熱可塑性エラストマーとしては、芳香族ビニル系モノマーと共役ジエン系モノマーとの共重合体が挙げられる。具体的には、例えば芳香族ビニル系モノマーと共役ジエン系モノマーとの共重合体としては、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロックポリマー等のジブロック型ブロックポリマー;スチレン-ブタジエン-スチレンブロックポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンブロックポリマー(SIS)、スチレン-ブタジエン-イソプレンブロックポリマー、スチレン-イソブチレン-スチレンブロックポリマー(SIBS)等のトリブロック型ブロックポリマー;スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエンブロックポリマー、スチレン-イソプレン-スチレン-イソプレンブロックポリマー、スチレン-ブタジエン-イソプレン-スチレンブロックポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレン-イソプレンブロックポリマー、スチレン-イソブチレン-ブタジエン-スチレンなどのようなマルチブロック型スチレン含有ブロックポリマーおよびこれらの水素添加物または部分水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、SISなどのブロックポリマーがより好ましく用いられる。
【0023】
但し、誘電エラストマー層11は、上記したエラストマーと共に、他の材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいてもよい。この他の材料は、例えば、各種の添加剤等である。
【0024】
本実施形態においては、誘電エラストマー層11は、外力が付与されていない状態において、円環形状であり、円形の内周端と外周端とを有している。これらの誘電エラストマー層11は、隣り合う誘電エラストマー層11の内周端同士または外周端同士が互いに固定された状態で、図中上下方向に一致する軸方向に伸長されるように、錐台筒状をなしている。なお、複数の誘電エラストマー層11を錐台筒状に維持するために、例えば図示しない重りや支持構造物または弾性体を適宜採用してもよい。
【0025】
電極層12,13は、誘電エラストマー層11を挟むように誘電エラストマー層11の両面に分かれて設けられている。本実施形態においては、電極層12,13は、誘電エラストマー層11の形状に対応して、外力が付与されていない状態においてたとえば円環形状である。
【0026】
電極層12,13の材質は特に限定されず、導電性を有しつつ誘電エラストマー層11の変形に十分に追従し得る様々な材料が採用される。電極層12,13の材質としては、たとえば、炭素材料、導電性高分子化合物及び金属材料等の導電性材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。炭素材料は、例えば、黒鉛、フラーレン、カーボンナノチューブ(CNT)及びグラフェン等である。この炭素材料には、例えば、金属ドープ処理、金属内包処理及び金属鍍金処理等の処理のうちのいずれか1種類または2種類以上が施されていてもよい。導電性高分子化合物は、例えば、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリベンゾチアゾールなどである。金属材料は、例えば、銀(Ag)、金(Au)及びアルミニウム(Al)等であり、合金でもよい。
【0027】
本実施形態においては、錐台筒状とされた誘電エラストマー層11A~11Dの外面に電極層12A~12Dが設けられており、誘電エラストマー層11A~11Dの内面に電極層13A~13Dが設けられている。このため、隣り合う誘電エラストマー要素1Aと誘電エラストマー要素1Bとについては、誘電エラストマー層11Aと誘電エラストマー層11Bとの間に電極層13Aと電極層13Bとが配置されている。また、隣り合う誘電エラストマー要素1Bと誘電エラストマー要素1Cとについては、誘電エラストマー層11Bと誘電エラストマー層11Cとの間に電極層12Bと電極層12Cとが配置されている。また、隣り合う誘電エラストマー要素1Cと誘電エラストマー要素1Dとについては、誘電エラストマー層11Cと誘電エラストマー層11Dとの間に電極層13Cと電極層13Dとが配置されている。
【0028】
支持部材21,22,23,24,25は、複数の誘電エラストマー要素1を、錐台筒状をなして連結した状態で支持するための支持手段の例示である。なお、複数の誘電エラストマー要素1を支持する支持手段の構成は何ら限定されない。図示された例においては、支持部材21,22,23,24,25は、たとえば絶縁性の樹脂等からなるリング状の部材である。支持部材21は、誘電エラストマー要素1Aの内周端を支持している。支持部材22は、誘電エラストマー要素1Aおよび誘電エラストマー要素1Bの外周端を支持している。支持部材23は、誘電エラストマー要素1Bおよび誘電エラストマー要素1Cの内周端を支持している。支持部材24は、誘電エラストマー要素1Cおよび誘電エラストマー要素1Dの外周端を支持している。支持部材25は、誘電エラストマー要素1Aの内周端を支持している。また、誘電エラストマー要素1A,1B,1C,1Dに張力を生じさせるために、たとえば、支持部材21を固定し、支持部材25に図示しない錘を取り付ければよい。当該錘の重量により、誘電エラストマー要素1A,1B,1C,1Dは伸張させられ、張力が生じる。
【0029】
制御部3は、誘電エラストマートランスデューサーA1を用いた処理を実現するものであり、誘電エラストマートランスデューサーA1をアクチュエーターとして用いる場合、制御部3は、電極層12,13に電圧(電位差)を付与する電源回路を含む。誘電エラストマートランスデューサーA1を発電用途として用いる場合、制御部3は、初期電圧(電位差)を付与する電源回路や電気エネルギーの回収回路を含む。誘電エラストマートランスデューサーA1がセンサ素子として用いられる場合、制御部3は、誘電エラストマートランスデューサーA1の静電容量の変化を検出する検出回路を含む。本例においては、誘電エラストマートランスデューサーA1がアクチュエーターとして用いられ、制御部3が電源回路を含む場合を例に説明する。
【0030】
制御部3と誘電エラストマー要素1A~1Dとは、配線31および配線32によって接続されている。配線31は、電極層12A~12Dに接続されている。配線32は、電極層13A~13Dに接続されている。図示された例においては、配線31は、グランド接続されている。これにより、電極層12A~12Dが0またはグランド電位とされている。配線32は、配線31に対して正電圧または負電圧の電位を付与するものであり、図示された例においては、正電圧に設定されている。このため、電極層13A~13Dが正電位とされる。なお、配線32による電極層13A~13Dへの電圧印加(電位付与)は、誘電エラストマートランスデューサーA1に与えるべき伸縮動作に応じて、制御部3によって適宜制御される。
【0031】
次に、誘電エラストマートランスデューサーA1の作用について説明する。
【0032】
本実施形態によれば、誘電エラストマー要素1A~1Dにおいて、隣り合う誘電エラストマー層11の間に配置された電極層12同士または電極層13同士は、互いに同電位とされている。このため、誘電エラストマートランスデューサーA1の動作時等において、隣り合う電極層12同士または電極層13同士が近づいたり接したりしたとしても、意図しないショート導通や放電等が生じるおそれがない。したがって、誘電エラストマートランスデューサーA1によれば、複数の誘電エラストマー要素1をより安定して使用することができる。
【0033】
誘電エラストマートランスデューサーA1においては、複数の誘電エラストマー要素1(誘電エラストマー層11)が、錐台筒状をなして軸方向に連結されている。このような構成の複数の誘電エラストマー要素1において、外面に設けられた電極層12A~12Dは、配線31が接続されることにより、0またはグランド電位とされている。このため、誘電エラストマートランスデューサーA1の動作時等において、外部の導電体等が電極層12A~12Dに近づいたり接したりしたとしても、意図しないショート導通や放電等が生じるおそれがない。したがって、誘電エラストマートランスデューサーA1の複数の誘電エラストマー要素1をより安定して使用するのに好ましい。
【0034】
図3図7は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0035】
<第2実施形態>
図3および図4は、本発明の第2実施形態に係る誘電エラストマートランスデューサーを示している。本実施形態の誘電エラストマートランスデューサーA2は、複数の誘電エラストマー要素1A,1Bを備えている。
【0036】
誘電エラストマー要素1A,1B(誘電エラストマー層11A,11B)の形状は特に限定されず、図示された例においては、円環形状である。誘電エラストマー要素1A,1Bは、互いに積層されている。
【0037】
誘電エラストマー層11A,11Bの外周端同士は、支持部材26によって互いに固定されている。支持部材26は、たとえば絶縁材料からなる複数のリング状部材によって構成されている。誘電エラストマー層11A,11Bの内周端同士は、支持部材27によって互いに固定されている。支持部材27は、たとえば絶縁材料からなる複数の円板状部材によって構成されている。
【0038】
本実施形態においては、隣り合う誘電エラストマー要素1A,1Bについて、誘電エラストマー層11Aと誘電エラストマー層11Bとの間に、電極層12Aおよび電極層12Bが配置されている。電極層13Aおよび電極層13Bは、誘電エラストマー層11Aおよび誘電エラストマー層11Bの外面に設けられている。
【0039】
電極層13Aおよび電極層13Bには、配線31が接続されている。配線31は、グランド接続されている。このため、電極層13A,13Bは、0またはグランド電位とされている。電極層12Aおよび電極層12Bには、配線32が接続されている。これにより、電極層12A,12Bは、たとえば正電位とされている。
【0040】
本実施形態においても、隣り合う誘電エラストマー要素1A,1Bの誘電エラストマー層11Aと誘電エラストマー層11Bとの間に配置された電極層12Aおよび電極層12Bは、互いに同電位とされている。これにより、誘電エラストマートランスデューサーA2の動作時等において、電極層12A,12B同士が近づいたり接したりしたとしても、意図しないショート導通や放電等が生じるおそれがない。したがって、誘電エラストマートランスデューサーA2によれば、複数の誘電エラストマー要素1をより安定して使用することができる。
【0041】
また、外側に配置された電極層13A,13Bが0またはグランド電位とされている。これにより、外部の導電体等が電極層13A,13Bに近づいたり接したりしたとしても、意図しないショート導通や放電等が生じるおそれがない。したがって、誘電エラストマートランスデューサーA2の複数の誘電エラストマー要素1をより安定して使用するのに好ましい。
【0042】
<第3実施形態>
図5および図6は、本発明の第3実施形態に係る誘電エラストマートランスデューサーを示している。本実施形態の誘電エラストマートランスデューサーA3は、誘電エラストマー要素1の構造が、上述した実施形態と異なっている。
【0043】
図6の要部拡大断面図に示すように、本実施形態の誘電エラストマー要素1は、一対の誘電エラストマー層11、内部電極層14および一対の外部電極層15を有する。一対の誘電エラストマー層11は、互いに対面している。内部電極層14は、一対の誘電エラストマー層11に挟まれており、一対の誘電エラストマー層11に固定されている。一対の外部電極層15は、一対の誘電エラストマー層11の外側にそれぞれ設けられており、一対の誘電エラストマー層11にそれぞれ固定されている。
【0044】
本実施形態においては、たとえば長尺状の誘電エラストマー要素1が円筒形状に巻かれている。図5は、円筒形状の誘電エラストマー要素1の外観を示している。図6の断面図は、円筒形状に巻かれた誘電エラストマー要素1の一部を、理解の便宜上、平坦に延ばして示している。円筒形状に巻かれた誘電エラストマー要素1においては、誘電エラストマー要素1の複数の部分が、径方向に互いに積層された構造となっている。誘電エラストマー要素1の積層された複数の部分同士は、互いの外部電極層15が接近するか、あるいは接する状態となっている。
【0045】
円筒形状に巻かれた誘電エラストマー要素1の軸方向両端は、たとえば一対の支持部材27によって支持されている。誘電エラストマートランスデューサーA3をアクチュエーターとして動作させる場合、たとえば、一対の支持部材27の間に弾性部材を設けてもよい。この弾性部材が誘電エラストマー要素1の内部において一対の支持部材27を離間させる弾性力を不勢すればよい。
【0046】
本実施形態においては、一対の外部電極層15は、配線31によって制御部3に接続されている。内部電極層14は、配線32によって制御部3に接続されている。配線31がグランド接続されていることにより、一対の外部電極層15は、0またはグランド電位とされている。内部電極層14は、たとえば正電圧とされている。
【0047】
このような実施形態によれば、誘電エラストマー要素1が円筒形状に巻かれることにより、誘電エラストマー要素1のうち互いに積層される部分同士は、それぞれの外部電極層15が接近するかまたは接することとなる。一対の外部電極層15は、互いに同じ電位とされているため、意図しないショート導通や放電等が生じるおそれがない。したがって、誘電エラストマートランスデューサーA3によれば、積層された部分を有する構造である誘電エラストマー要素1をより安定して使用することができる。
【0048】
また、誘電エラストマートランスデューサーA3の外側に位置する外部電極層15が、0またはグランド電位とされている。これにより、外部の導電体等が外部電極層15に近づいたり接したりしたとしても、意図しないショート導通や放電等が生じるおそれがない。したがって、誘電エラストマートランスデューサーA3の複数の誘電エラストマー要素1をより安定して使用するのに好ましい。
【0049】
<第4実施形態>
図7は、本発明の第4実施形態に係る誘電エラストマートランスデューサーを示している。本実施形態の誘電エラストマートランスデューサーA4は、複数の誘電エラストマー要素1を備えている。それぞれの誘電エラストマー要素1は、誘電エラストマートランスデューサーA3と同様の構成であり、一対の誘電エラストマー層11と、内部電極層14および一対の外部電極層15とを備えている。
【0050】
本実施形態においては、複数の誘電エラストマー要素1が互いに積層された構成である。このような構成の具体的な構造例としては、たとえば、上述した誘電エラストマートランスデューサーA2と類似の構成が挙げられる。本実施形態においても、一対の外部電極層15が同電位とされ、好ましくは、0またはグランド電位とされる。
【0051】
このような実施形態によっても、複数の誘電エラストマー要素1をより安定して使用することができる。
【0052】
<第1実施形態 変形例>
図8は、誘電エラストマートランスデューサーA1の変形例を示している。本変形例の誘電エラストマートランスデューサーA11は、2つの誘電エラストマー要素1A,1Bと、支持部材21,22,23,29を備える。
【0053】
本変形例においては、2つの誘電エラストマー要素1A,1Bは、相対的に大径の支持部材21,23と、相対的に小径であり支持部材21,23の間に配置された支持部材22とに支持されている。支持部材29は、支持部材21と支持部材23とを、図中上下方向に離間させた状態で互いに固定するものであり、例えば棒状部材である。支持部材21,23が、例えば円環形状である場合、複数の支持部材29を等間隔(例えば90度ピッチ)で配置してもよい。このような支持構造により、2つの誘電エラストマー要素1A,1Bは、電圧が印加されていない初期状態において図中上下方向に一致する軸方向に伸長された錐台筒状をなしており、いわゆる鼓形の3次元形状を呈している。このような誘電エラストマー要素1A,1Bには、それぞれに張力が生じている。
【0054】
本変形例においても、電極層12A,12Bが、誘電エラストマー層11A,11Bの外側に配置されており、電極層13A,13Bが誘電エラストマー層11A,11Bの内側に配置されている。外側の電極層12A,12Bは、0またはグランド電位とされている。
【0055】
本変形例においては、制御部3に接続された2つの配線32を備える。一方の配線32は、制御部3と誘電エラストマー要素1Aの電極層12Aとに接続されている。一方の配線32は、制御部3と誘電エラストマー要素1Bの電極層12Bとに接続されている。このような構成により、制御部3は、誘電エラストマー要素1A,1Bに、個別に電圧を印加することが可能である。例えば、誘電エラストマー要素1Aのみに電圧を印加した場合、誘電エラストマー層11A(誘電エラストマー要素1A)が伸長し、電圧が印加されていない誘電エラストマー層11B(誘電エラストマー要素1B)は、誘電エラストマー層11A(誘電エラストマー要素1A)の伸長に伴って収縮する。これにより、支持部材22は、図中下方に移動する。一方、誘電エラストマー要素1Bのみに電圧を印加した場合、誘電エラストマー層11B(誘電エラストマー要素1B)が伸長し、電圧が印加されていない誘電エラストマー層11A(誘電エラストマー要素1A)は、誘電エラストマー層11B(誘電エラストマー要素1B)の伸長に伴って収縮する。これにより、支持部材22は、図中上方に移動する。このような制御部3からの電圧印加により、支持部材22を介して、外部に力を伝達し、誘電エラストマートランスデューサーA11は、アクチュエーターとして機能する。
【0056】
本変形例によっても、複数の誘電エラストマー要素1をより安定して使用することができる。
【0057】
本発明に係る誘電エラストマートランスデューサーは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る誘電エラストマートランスデューサーの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0058】
〔付記1〕
各々が誘電エラストマー層と当該誘電エラストマー層を挟む一対の電極層とを有する複数の誘電エラストマー要素を備え、
隣り合う前記誘電エラストマー要素の前記誘電エラストマー層同士の間には、一方の前記誘電エラストマー要素の一方の前記電極層と他方の前記誘電エラストマー要素の一方の前記電極層とが、互いに同電位とされた状態で配置されている、誘電エラストマートランスデューサー。
〔付記2〕
前記各誘電エラストマー層は、内周縁および外周縁を有する環状形状であり、
隣り合う前記誘電エラストマー層の内周縁同士または外周縁同士が互いに固定された状態で軸方向に伸張されることにより、前記複数の誘電エラストマー要素が錐台筒状をなしており、
前記各誘電エラストマー要素の前記一対の電極層のうち径方向外方に位置するものの電位は、0またはグランド電位とされている、付記1に記載の誘電エラストマートランスデューサー。
〔付記3〕
前記各誘電エラストマー層は、内周縁および外周縁を有する環状形状であり、
前記複数の誘電エラストマー要素は、前記内周縁同士および前記外周縁同士がそれぞれ互いに固定された状態で積層されている、付記1に記載の誘電エラストマートランスデューサー。
〔付記4〕
誘電エラストマー層と電極層とを有する誘電エラストマー要素を備え、
前記誘電エラストマー要素は、
互いに積層された一対の誘電エラストマー層と、
前記一対の誘電エラストマー層に挟まれた内部電極層と、
前記一対の誘電エラストマー層を挟み、且つ互いに同電位とされた一対の外部電極層と、を有する、誘電エラストマートランスデューサー。
〔付記5〕
前記外部電極層の電位は、0またはグランド電位とされている、付記4に記載の誘電エラストマートランスデューサー。
〔付記6〕
前記誘電エラストマー要素は、ロール状に巻かれており、
前記一対の外部電極層は、互いの一部同士が対面している、付記4または5に記載の誘電エラストマートランスデューサー。
〔付記7〕
互いに積層された複数の前記誘電エラストマー要素を備えており、
隣り合う前記誘電エラストマー要素の前記外部電極層同士は、互いに同電位とされている、付記4または5に記載の誘電エラストマートランスデューサー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8