(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】インゴットの品質を向上するためのシリコン融液中のドーパント濃度制御
(51)【国際特許分類】
C30B 15/04 20060101AFI20240612BHJP
C30B 29/06 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
C30B15/04
C30B29/06 502H
C30B29/06 502A
(21)【出願番号】P 2021519714
(86)(22)【出願日】2019-09-09
(86)【国際出願番号】 US2019050140
(87)【国際公開番号】W WO2020076448
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-09-01
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518112516
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GlobalWafers Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】マリア・ポッリーニ
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-266093(JP,A)
【文献】特表2003-532613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 15/04
C30B 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン種結晶をシリコン融液に接触させる工程、
該シリコン融液からシリコン種結晶を引き抜いて、単結晶シリコンインゴットのネック部を形成する工程、
該単結晶シリコンインゴットのネック部に隣接して、外向きに広がるシードコーンを成長させる工程、
該単結晶シリコンインゴットの本体部の抵抗率を4mΩ・cm未満に低下させるのに十分な濃度でn型ドーパントを該融液に添加する工程、および
該単結晶シリコンインゴットの本体部を、該外向きに広がるシードコーンに隣接して成長させる工程
を含み、
該シリコン融液は、ルツボ内に収容され、溶融シリコンおよびn型ドーパントを含み、
該ネック部は、5mΩ・cm
~12mΩ・cmの抵抗率を有し、
該シリコン種結晶を
、3mm/分
~5mm/分の引き抜き速度で引き抜き、
該単結晶シリコンインゴットのネック部が、支配的な格子間の点欠陥として空孔を含み、
該ネック部のn型ドーパントの濃度が
、3.5×10
18[atoms/cm
3]
~1.3×10
19[atoms/cm
3]であり、
該外向きに広がるシードコーンは、5mΩ・cm
~12mΩ・cmの抵抗率を有し、
該単結晶シリコンインゴットの外向きに広がるシードコーンが、支配的な格子間の点欠陥として空孔を含んでおり、
該外向きに広がるシードコーンのn型ドーパントの濃度が
、3.5×10
18[atoms/cm
3]
~1.3×10
19[atoms/cm
3]であり、
該単結晶シリコンインゴットの本体部は、4mΩ・cm未満の抵抗率を有する、
チョフラルスキー法により単結晶シリコンインゴットを製造する方法。
【請求項2】
前記単結晶シリコンインゴットの成長を完了させる工程、
シリコンおよびn型ドーパントを、ルツボに加えて、補充シリコン融液を形成する工程、
溶融シリコンおよび加えられたn型ドーパントを含む該補充シリコン融液と、第2のシリコン種結晶を接触させる工程、
該第2のシリコン種結晶をシリコン融液から引き抜いて、第2の単結晶シリコンインゴットの第2のネック部を形成する工程
を更に含み、
該第2のネック部は、5mΩ・cm
~12mΩ・cmの抵抗率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シリコン種結晶を
、8rpm
~15rpmの速度で回転させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ルツボを
、5rpm
~10rpmの速度で回転させる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ネック部が
、2.5mm
~6.5mmの直径を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ネック部が
、3mm
~6mmの直径を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記単結晶シリコンインゴットがn型インゴットである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ネック部および外向きに広がるシードコーンにおけるn型ドーパントの濃度が、前記ネック部および外向きに広がるシードコーンにおけるp型ドーパントの濃度を超える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ネック部のn型ドーパントの濃度が
、4×10
18[atoms/cm
3]~1×10
19[atoms/cm
3]である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
外向きに広がるシードコーンのn型ドーパントの濃度が
、4×10
18[atoms/cm
3]~1×10
19[atoms/cm
3]である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記ネック部が、5mΩ・cm
~8mΩ・cmの抵抗率を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記外向きに広がるシードコーンが、5mΩ・cm
~8mΩ・cmの抵抗率を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記単結晶シリコンインゴットの本体部が
、2mΩ・cm未満の抵抗率を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記単結晶シリコンインゴットの本体部が、1.7mΩ・cm未満の抵抗率を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記単結晶シリコンインゴットの本体部が、1.6mΩ・cm未満の抵抗率を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記n型ドーパントが、ヒ素、リン、アンチモン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記n型ドーパントがヒ素である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記シリコン融液に添加されるn型ドーパントの濃度が
、200gのn型ドーパント60kgのシリコン
~400gのn型ドーパント/60kgのシリコンである、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記シリコン融液に添加されるn型ドーパントの濃度が
、300gのn型ドーパント/60kgのシリコンである、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記単結晶シリコンインゴットの本体部のスライスが
、400個/cm
2未満の転位を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記単結晶シリコンインゴットの本体部のスライスが
、100個/cm
2未満の転位を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記単結晶シリコンインゴットの本体部のスライスが
、10個/cm
2未満の転位を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記単結晶シリコンインゴットの本体部のスライスが、1個/cm
2未満の転位を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記単結晶シリコンインゴットの本体部のスライスが、ゼロ転位ウエハである、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
単結晶シリコンインゴットのネック部と、
該単結晶シリコンインゴットのネック部に隣接する外向きに広がるシードコーンと、
該外向きに広がるシードコーンに隣接する単結晶シリコンインゴットの本体部と
を含み、
該ネック部が、5mΩ・cm
~12mΩ・cmの抵抗率を有し、
該単結晶シリコンインゴットのネック部が、支配的な格子間の点欠陥として空孔を含み、
該ネック部のn型ドーパントの濃度が
、3.5×10
18[atoms/cm
3]
~1.3×10
19[atoms/cm
3]であり、
該外向きに広がるシードコーンが、5mΩ・cm
~12mΩ・cmの抵抗率を有し、
該単結晶シリコンインゴットの外向きに広がるシードコーンが、支配的な格子間の点欠陥として空孔を含んでおり、
該外向きに広がるシードコーンのn型ドーパントの濃度が
、3.5×10
18[atoms/cm
3]
~1.3×10
19[atoms/cm
3]であり、
該単結晶シリコンインゴットの本体部が、4mΩ・cm未満の抵抗率を有し、
前記単結晶シリコンインゴットの本体部のスライスが
、400個/cm
2未満の転位を含む、単結晶シリコンインゴット。
【請求項26】
前記単結晶シリコンインゴットの本体部のスライスが
、100個/cm
2未満の転位を含む、請求項25に記載の単結晶シリコンインゴット。
【請求項27】
前記単結晶シリコンインゴットの本体部のスライスが
、10個/cm
2未満の転位を含む、請求項25に記載の単結晶シリコンインゴット。
【請求項28】
前記単結晶シリコンインゴットの本体部のスライスが、1個/cm
2未満の転位を含む、請求項25に記載の単結晶シリコンインゴット。
【請求項29】
前記単結晶シリコンインゴットの本体部のスライスがゼロ転位ウエハである、請求項25に記載の単結晶シリコンインゴット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2018年10月12日に出願された米国仮特許出願第62/744,672号に対して優先権を主張し、その開示内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本開示の技術分野は、単結晶シリコンインゴットを製造する方法に関し、より詳細には、シリコン融液中のドーパント濃度を制御することにより、品質が向上した単結晶シリコンインゴットを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体電子部品の製造のためのほとんどの方法の出発材料である単結晶シリコンは、一般的に、チョフラルスキー(Czochralski;「Cz」)法によって製造される。この方法では、多結晶シリコン(以下、「ポリシリコン」)をルツボに投入して溶融し、種結晶を溶融したシリコンに接触させ、ゆっくりと抽出することで単結晶を成長させる。ネック部の形成が完了したら、目的の直径に達するまで、引き抜き速度および/または溶融温度を下げるなどして、結晶の直径を大きくしていく。その後、融液レベルの低下を補いながら引き抜き速度と溶融温度を制御して、ほぼ一定の直径を有する円筒状の結晶本体部を成長させる。成長方法の終わり近くであるが、ルツボから溶融シリコンを取り出す前に、結晶の直径を徐々に小さくして、エンドコーンの形にテールエンドを形成するのが一般的である。エンドコーンは通常、結晶の引き抜き速度とルツボへの熱供給量を増加することで形成される。そして、直径が十分に小さくなると、結晶は融液から分離される。
【0004】
結晶成長が始まると、種結晶を融液に接触させたときの熱衝撃で結晶内に転位が発生する。この転位は、種結晶と結晶本体部との間のネック部で排除されない限り、成長中の結晶全体に伝播して増殖していく。
【0005】
シリコン単結晶内の転位を排除する従来の方法としては、いわゆる「ダッシュネック部法(dash neck method)」がある。これは、小径(例えば、2~4mm)のネック部を高い結晶引き抜き速度(例えば、6mm/分という高速度)で成長させて転位を完全に排除してから結晶本体部の成長を開始するというものである。一般に、これらの小径ネック部では、ネック部の約100~約125mmが成長した後に転位を排除することができる。転位が除去されると、結晶の直径が拡大され、外向きに広がる「コーン」部または「テーパー」部が形成される。ネック部に隣接する外向きに広がるシードコーンの所望の直径に達すると、次いで円筒形の本体部をほぼ一定の直径になるように成長させる。
【0006】
転位を除去する従来の方法はほとんど成功しているが、このような方法では、インゴットの一定の直径部分に伝播する転位を含むいくつかのネック部が生じる可能性がある。そのようなインゴットは、デバイスの製造には適しておらず、高いコストで廃棄される。
【0007】
このセクションは、以下に記載および/または請求される本開示の様々な態様に関連し得る技術分野の様々な態様を読む者に紹介することを意図している。この議論は、本開示の様々な態様のより良い理解を促進するための背景情報を読む者に提供するのに役立つと考えられる。従って、これらの記載は、この観点から読まれるべきものであり、先行技術を認めるものではないと解されるべきである。
【発明の概要】
【0008】
本開示の1つの態様は、チョフラルスキー法により単結晶シリコンインゴットを製造する方法に関するものである。この方法は、シリコン種結晶をシリコン融液と接触させる工程であって、シリコン融液はルツボ内に収容され、溶融シリコンおよびn型ドーパントを含む工程;シリコン融液からシリコン種結晶を引き抜いて、単結晶シリコンインゴットのネック部を形成する工程であって、ネック部は、5mΩ・cm~約12mΩ・cmの抵抗率を有する工程;前記単結晶シリコンインゴットのネック部に隣接して、外向きに広がる(または、外側に向かってフレアする;outwardly flaring)シードコーンを成長させる工程であって、前記外向きに広がるシードコーンは、5mΩ・cm~約12mΩ・cmの抵抗率を有する工程;単結晶シリコンインゴットの本体部の抵抗率を4mΩ・cm未満に低下させるのに十分な濃度のn型ドーパントを融液に添加する工程;単結晶シリコンインゴットの本体部を、外向きに広がるシードコーンに隣接して成長させる工程であって、単結晶シリコンインゴットの本体部は4mΩ・cm未満の抵抗率を有する工程を含む。
【0009】
本開示の前述の態様に関連して述べた特徴の様々な改良が存在する。更なる特徴もまた同様に、本開示の前述の態様に組み込まれてもよい。これらの改良点および追加の特徴は、個別に存在してもよいし、任意の組み合わせで存在してもよい。例えば、本開示の図示された実施形態のいずれかに関連して以下に議論される様々な特徴は、本開示の前述した態様のいずれかに、単独でまたは任意の組み合わせで組み込まれてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】チョフラルスキー法によって成長した単結晶シリコンインゴットの部分正面図である。
【
図2】チョフラルスキー法によって成長した単結晶シリコンインゴットのゼロ転位またはゼロ転位成長の消失を、インゴットのネック部および外向きに広がるシードコーン部の抵抗率に応じて表したグラフである。
【0011】
対応する参照符号は,図面全体で対応する部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の規定は、インゴット品質を向上させた単結晶シリコンインゴットを製造する方法に関するものである。チョフラルスキー法に従った、高度にドープされたシリコン融液からのゼロ転位(zero dislocation;ZD)単結晶シリコンインゴットの成長には困難が伴う。特に高度にドープされたシリコン融液では、結晶成長中に外向きに広がるシードコーンまたはクラウン部の構造が失われることがある。外向きに広がるシードコーンやクラウン部のゼロ転位の消失(Loss of zero dislocation;LZD)のよくある原因として、ネック部の成長時に転位の除去が不完全であることが挙げられる。転位が1つでも生き残っていれば、それが固液界面に到達し、成長界面とともに成長を始める可能性がある。
【0013】
クラウン部を生成するために結晶径を大きくすると、熱応力が著しく増大するため、塑性変形によって応力を緩和するために転位が増殖し始める。しばらくすると、転位の密度が高くなり、成長線が消失して、構造の消失が明らかになる。従って、重度にドープされたシリコン融液からのネック部の成長時に、シリコン結晶の不完全な転位消去を解決する方法が必要である。
【0014】
本発明は、単結晶シリコンインゴットのネック部、外向きに広がるシードコーン隣接部、および本体部の内の1つまたはすべてにおける転位が低減または除去される確率を最大化する方法を提供する。低転位成長またはゼロ転位成長を得ることは、単結晶シリコンインゴットの成長中にシリコン融液中のドーパント濃度を制御することによるものである。この方法は、ネック部を開始する前に、制御された量のドーパントを融液に加えることを規定する。ドーパントの量は、5mΩ・cm~約12mΩ・cm、例えば5mΩ・cm~約8mΩ・cmの結晶種端部での抵抗率を得るような量でなければならない。この抵抗率は、n型ドーパントを用いるドーピング、例えばヒ素ドーピングの場合に、ネック部成長時の結晶中の空孔濃度が最大となるドーパント濃度範囲に対応する。従って、いくつかの実施形態では、単結晶シリコンインゴットのネック部は、支配的な固有の点欠陥(dominant intrinsic point defect)として空孔を含む。いくつかの実施形態では、単結晶シリコンインゴットの外向きに広がるシードコーンは、支配的な固有の点欠陥として空孔を含む。5mΩ・cm~約12mΩ・cm、例えば5mΩ・cm~約8mΩ・cmの抵抗率範囲内では、転位は結晶/融液の表面の界面、即ち成長するインゴットの端部まで登り、排除される。この方法は、連続チョフラルスキー法などの、本体相中にドーピングすることで任意の目標抵抗率を達成する結晶成長法にも便利に適用できる。この場合、実際には、ネック部で転位排除のために最適化された融液濃度で上記方法を開始し、ゼロ転位(ZD)クラウン部を成功させ、本体部を開始することが可能である。本体部を開始すると、成長中のドーピングにより、構造が失われること(ゼロ転位の消失、またはLZD)を発生させることなく、非常に低い抵抗値、例えば、約4mΩ・cm未満、約2mΩ・cm未満、約1.7mΩ・cm以下、更には約1.6mΩ・cm以下に到達することが可能である。
【0015】
本開示の実施形態および一般的にはチョフラルスキー法に従って製造された単結晶シリコンインゴット10を
図1に示す。上記インゴット10は、シリコン融液と最初に接触した種結晶12の一部と、種結晶12に隣接するネック部24と、外向きに広がるシードコーン部16と、ショルダー部18と、一定の直径の本体部20とを含む。上記ネック部24は、融液に接触し、上記インゴット10を形成するために引き抜かれた種結晶12に取り付けられている。上記ネック部24は、上記インゴットの上記シードコーン部16が形成され始めると終了する。
【0016】
一般に、インゴット10が引き抜かれる融液は、多結晶シリコンをルツボに充填してシリコンチャージを形成することによって形成される。例えば、流動床反応器でシランまたはハロシランを熱分解して製造された粒状多結晶シリコン、またはシーメンス反応器で製造された多結晶シリコンなど、様々な多結晶シリコンの供給源を使用することができる。ルツボに添加される固体ポリシリコンは、典型的には粒状ポリシリコンであるが、チャンクポリシリコンを使用してもよく、粒状ポリシリコンの使用に最適化されたポリシリコン供給装置を用いて、ルツボに供給される。塊状ポリシリコンは、通常、3~45mm(例えば、最大の寸法)のサイズを有し、粒状ポリシリコンは、典型的には、400~1400ミクロンのサイズを有する。粒状ポリシリコンは、サイズが小さいため、供給量の制御が容易かつ正確に行えるなどの利点がある。しかし、粒状ポリシリコンは、化学的気相成長法などの製造方法を採用しているため、塊状ポリシリコンに比べてコストが高くなるという問題がある。塊状ポリシリコンの方が、コストが安く、サイズが大きい分だけ供給量が多いというメリットがある。多結晶シリコンの供給装置に合わせて、加熱ユニットや冷却ジャケットの位置、電源制御の動作などを調整している。充填されたシリコン充填物(silicon charge)の質量は、特にバッチ法の場合、単結晶シリコンインゴットのサイズに応じて、少なくとも約25kg~約2000kg、例えば、少なくとも約50kg~約2000kg、または少なくとも約50kg~約1800kg、例えば、約50kg~約1500kgで変化してもよい。
【0017】
多結晶シリコンがルツボに加えられて充填物を形成すると、充填物を溶融するために、シリコンのほぼ溶融温度(例えば、約1412℃)以上の温度に加熱し、それによって溶融シリコンからなるシリコン融液を形成する。いくつかの実施形態では、シリコン融液を含むルツボを、少なくとも約1425℃、少なくとも約1450℃、更には少なくとも約1500℃の温度に加熱する。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、n型単結晶シリコンインゴットに利用される。本明細書で使用する場合、用語「n型」は、ヒ素、リン、アンチモン、またはそれらの組み合わせなどの周期表の第5族からの元素を含むシリコンを指す。いくつかの実施形態では、シリコンは、n型ドーパントとしてヒ素を含んでいる。n型インゴットは、チョフラルスキー成長中のシリコン融液に、n型ドーパントの供給源、例えば、許容可能な純度のヒ素、リン、および/またはアンチモンの固体元素供給源を加えることによって得られる。いくつかの実施形態では、シリコン融液に添加されるn型ドーパントの濃度は、約200gのn型ドーパント/60kgのシリコン~約400gのn型ドーパント/60kgのシリコンであり、例えば、約300gのn型ドーパント/60kgのシリコンである。ドーピング効率は、ドーパントの不完全な組み込み、インゴット内のシリコン融液と凝固したシリコンの間のドーパントの偏析係数、融液からのドーパントの蒸発などの要因により、一般的に100%未満である。従って、シリコン融液に添加するn型ドーパントの量は、一般的に融液自体に効果的に組み込まれる量の約2倍である。
【0019】
充填物が液化して、溶融シリコンおよびn型ドーパントを含むシリコン融液が形成されると、シリコン種結晶(その一部が
図1に12として示されている)が融液に接触するように下げられる。その後、シリコン種結晶は、シリコンが付着した状態(即ち、ネック部24が形成された状態)で融液から引き抜かれ、それにより、融液の表面付近または表面に融液‐固体界面が形成される。いくつかの実施形態では、シリコン種結晶は、約1.5mm/分~約6mm/分、例えば、約3mm/分~約5mm/分の引き抜き速度で引き抜かれる。いくつかの実施形態では、シリコン種結晶は、約5rpm~約30rpm、または約5rpm~約20rpm、または約8rpm~約20rpm、または約10rpm~約20rpmの速度で回転される。いくつかの実施形態では、シリコン種結晶は、約8rpm~約15rpm、例えば約11rpmの速度で回転される。いくつかの実施形態では、ルツボは、約0.5rpm~約10rpm、または約1rpm~約10rpm、または約4rpm~約10rpm、または約5rpm~約10rpm、例えば約8rpmの速度で回転される。いくつかの実施形態では、種結晶は、ルツボよりも速い速度で回転される。いくつかの実施形態では、種結晶は、ルツボの回転速度よりも少なくとも1rpm高く、例えば少なくとも約3rpm高く、または少なくとも約5rpm高い速度で回転される。従来は、結晶内のドーパント濃度の半径方向の均一性を高めるために、結晶の回転速度をルツボの回転速度よりも高くしていた。いくつかの実施形態では、シリコン種結晶およびルツボは、反対方向に回転される、即ち逆回転である。
【0020】
一般に、ネック部は、約10mm~約700mm、約30mm~約700mm、約100mm~約700mm、約200mm~約700mm、または約300mm~約700mmの長さを有する。いくつかの実施形態では、ネック部は、約10mm~約100mmの長さ、例えば、約20mm~約50mmの長さを有する。いくつかの実施形態では、ネック部は、約350mm~約550mmの長さを有する。いくつかの実施形態では、ネック部は、約450mm~約550mm間の長さを有する。しかし、ネック部の長さは、これらの範囲外で変化してもよい。いくつかの実施形態では、ネック部は、約1mm~約10mm、約2.5mm~約6.5mm、例えば、約3mm~約6mmの直径を有する。ネック部の直径の下限は、結晶インゴットの本体部が大きくなったときに、結晶の重量を維持するのに十分な機械的強度が必要であることから決定される。直径の上限は、直径が大きくなると転位の除去がより困難になること、即ち転位が移動しなければならない表面までの距離が長くなることに加えて、直径が大きくなると結晶中心と結晶表面との間の熱勾配が大きくなることによって誘発される熱応力が大きくなり、転位が多発する危険性があることによって決定される。いくつかの実施形態では、n型単結晶シリコンインゴットの成長中に形成されたネック部は、5mΩ・cm~約12mΩ・cmの抵抗率、例えば5mΩ・cm~約8mΩ・cmの抵抗率を有する。これらの抵抗率を達成するためにネック部に組み込まれたn型ドーパント、特にヒ素の適切な濃度は、約3.5×1018[atoms/cm3]~約1.3×1019[atoms/cm3]、例えば約4×1018[atoms/cm3]~1×1019[atoms/cm3]であってもよい。
【0021】
ネック部の形成後、ネック部24に隣接する外向きに広がるシードコーン部分16を成長させる。一般に、引き抜き速度は、ネック部の引き抜き速度から、外向きに広がるシードコーン部分16を成長させるのに適した速度まで減少させる。例えば、外向きに広がるシードコーン16の成長中のシードコーンの引き抜き速度は、約0.5mm/分~約2.0mm/分、例えば約1.0mm/分である。いくつかの実施形態では、外向きに広がるシードコーン16は、約100mm~約400mm、例えば約150mm~約250mmの長さを有する。外向きに広がるシードコーン16の長さは、これらの範囲外で変化してもよい。いくつかの実施形態では、外向きに広がるシードコーン16は、約150mm、少なくとも約150mm、約200mm、少なくとも約200mm、約300mm、約450mm、または更に少なくとも約450mmの末端直径に成長する。外向きに広がるシードコーン16の末端直径は、一般的に、単結晶シリコンインゴットの本体部の一定の直径と同等である。いくつかの実施形態では、n型単結晶シリコンインゴットの成長中に形成されたネック部に隣接する外向きに広がるシードコーンは、5mΩ・cm~約12mΩ・cm、例えば5mΩ・cm~約8mΩ・cmの抵抗率を有する。これらの抵抗率を達成するために、外向きに広がるシードコーンに組み込まれたn型ドーパント、特にヒ素の適切な濃度は、約3.5×1018[atoms/cm3]~約1.3×1019[atoms/cm3]、例えば約4×1018[atoms/cm3]~1×1019[atoms/cm3]であってもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、ネック部および外向きに広がるシードコーンと本体部におけるn型ドーパントの濃度が、ネック部および外向きに広がるシードコーンにおける、ホウ素、アルミニウム、またはガリウムなどのp型ドーパントの濃度を上回る。n型ドーパントは、所望の抵抗率を達成するために優勢なドーパントであり、空孔は、ネック部および外向きに広がるシードコーンにおいて優勢な固有の点欠陥として存在する。好ましくは、n型ドーパントの濃度が、p型ドーパントの濃度を大きく上回る。P型ドーパントの濃度は、シリコン融液や成長結晶に意図的に添加されたものであれ、汚染物質として添加されたものであれ、好ましくは約1×1016[atoms/cm3]以下、好ましくは1×1015[atoms/cm3]以下、更に好ましくは1×1014[atoms/cm3]以下である。
【0023】
ネック部24と、ネック部24に隣接する外向きに広がるシードコーン18とを形成した後、次にコーン部16に隣接する一定の直径を有するインゴット本体部20を成長させる。本体部20の一定直径部は、周縁部50と、周縁部に平行な中心軸Xと、中心軸から周縁部に向かって延びる半径Rとを有する。また、中心軸Xは、上記シードコーン部16とネック部24を通過している。インゴット本体部20の直径は変化してもよく、いくつかの実施形態では、直径は、約150mm、約200mm、約300mm、約300mmより大きい、約450mm、または約450mmよりも更に大きくてもよい。いくつかの実施形態では、単結晶シリコンインゴットの本体部は、最終的に、少なくとも約1000mmの長さ、例えば、少なくとも1100mmの長さ、例えば、少なくとも1200mmの長さ、例えば、少なくとも1400mmの長さに成長する。少なくとも1500mmの長さ、少なくとも1700mmの長さ、または少なくとも1900mmの長さ、または少なくとも2000mmの長さ、または少なくとも2200mmの長さ、または少なくとも約3000mmの長さ、または少なくとも約4000mmの長さに成長させることができる。
【0024】
本発明の方法によれば、単結晶シリコンインゴットの本体部の抵抗率は、ネック部および/またはネック部に隣接する外向きに広がるシードコーンの抵抗率よりも低くてもよい。これは、ネック部に隣接する外向きに広がるシードコーンが形成された後に、シリコン融液に追加のn型ドーパント、例えば、ヒ素を添加することによって達成されてもよい。いくつかの実施形態では、単結晶シリコンインゴットの本体部は、4mΩ・cm未満、例えば2mΩ・cm未満、1.7mΩ・cm未満、または更に約1.6mΩ・cm未満の抵抗率を有する、例えばヒ素でドープされたn型インゴットである。これらの抵抗率では、インゴットの本体部は、ネック部や外向きに広がるシードコーンのように、空孔が支配的な材料から、支配的な格子間の固有の点欠陥に移行する可能性がある。しかし、ネック部とクラウン部で転位が除去されると、成長中の単結晶シリコンインゴットの転位のない特性を維持するために、本体相が空孔リッチである必要はない。
【0025】
更に、本発明の方法によれば、シリコン融液を構成するルツボに磁界を印加してもよい。適切な結晶/融液界面、即ちメニスカスの形状および高さを設定するために、カスプ磁場または水平磁場のいずれかを印加することができる。磁場は主に所望の結晶/融液界面の形状と高さを固定するために使用され、酸素含有量Oiの制御は副次的な目的である。
【0026】
単結晶シリコンインゴットの本体部の成長中にシリコン融液に磁場を印加することにより、融液の流れと融液/固体界面の形状の制御、ひいてはインゴットの品質を高めることができる。いくつかの実施形態では、印加された磁場は、単結晶シリコンインゴットの本体部の成長の少なくとも約70%、または単結晶シリコンインゴットの本体部の成長の約70%から約90%、実質的に一定の融液/固体界面プロファイルを維持する。磁場によって電磁力が加わり、シリコン融液の流れに影響を与えるため、融液中の熱伝達に影響を与えます。これにより、完全なシリコンを作るための重要な制御パラメータである、結晶/融液界面のプロファイルや成長結晶の温度が変化する。
【0027】
磁場は、インゴット内の酸素含有量と均一性に影響を与えます。インゴット内の酸素源は、石英ルツボの壁の溶解、融液自由表面でのSiOx(g)の蒸発(融液の流れの動力学によって制御される)、成長結晶外面への組み込みである。磁界は、成長中の対流する融液の流れに影響を与え、それが酸素の蒸発と組み込みに影響を与えます。単結晶シリコンインゴットへの酸素導入量の時間変化は、次の式:
に従って、融液中の酸素の拡散と対流によって制御される。
【0028】
Cは固化シリコンの酸素濃度、tは時間、vは対流速度(融液流速)、ρはシリコン融液の密度、∇は勾配(d/dx)である。印加した磁場は、融液の速度(v)と融液中の酸素濃度の勾配(dC/dx = ∇C)に影響を与える。磁場によって融液の流れが定常状態になるため、インゴットへの酸素の組み込み(Oi)は時定数となり、半径方向および軸方向の酸素濃度の均一性が向上する。SOURCE項は、酸素の発生である石英(SiO
2)ルツボの溶解(Si(l)+SiO
2(s)→SiOx(g))と、融液からの酸素(SiOx(g))の除去(消失)である蒸発の2つのパラメータから導かれる。バッチ式Cz法では、このSOURCE項は一定ではない。その代わり、結晶が成長するにつれて融液の質量が減少するため、結晶の長さに依存する。インゴットが体長のかなりの部分まで成長すると、残りの融液量が少なくなるため、ルツボと接触するシリコン融液の量が減り、その結果、ルツボから融液に取り込まれる酸素の濃度が低くなる。そのため、他の条件(拡散、対流、蒸発)が一定であれば、凝固するシリコン結晶に組み込まれる酸素が減少する。融液の自由表面(融液と気体の接触面)の面積は、SiOx(g)の蒸発速度に影響する。バッチ式のCz法では、
図1Cに示すように、ルツボの形状のために融液の質量が小さく、表面積が相対的に小さくなる。SiOx(g)の蒸発が少ないということは、凝固中のシリコン結晶への酸素の組み込みが多いことを意味する。本発明の方法では、結晶インゴットの成長に合わせてポリシリコンを添加するため、融液の質量は一定に保たれる。従って、すべてのソース項(SiO
2ルツボの融液への溶解による酸素の発生、融液自由表面からのSiOx(g)ガスの蒸発)は一定である。従って、拡散項と対流項が凝固中のシリコン結晶の酸素に影響を与えることになる。印加された磁場は、融液の流れをより安定させる(即ち、融液の流れは、時間に依存しない定常状態のように一定である)ので、インゴットの全長の成長中に酸素を組み込むことは、軸方向および半径方向に均一で安定している。いくつかの実施形態では、約4PPMA~約18PPMAの濃度で格子間酸素(interstitial oxygen)をインゴットに組み込むことができる。いくつかの実施形態では、格子間酸素は、約10PPMA~約35PPMAの濃度でインゴットに組み込まれてもよい。いくつかの実施形態では、インゴットは、約15PPMAを超えない、または約10PPMAを超えない濃度の酸素を含む。格子間酸素は、SEMI MF 1188-1105に従って測定してもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、単結晶シリコンインゴットの本体部の成長中に、シリコン融液に水平磁場が印加される。水平磁場の存在下での結晶成長は、シリコン融液を保持するルツボを従来の電磁石の極の間に配置することによって達成される。いくつかの実施形態では、水平磁場は、融液領域において約0.2[T(テスラ)]~約0.4[T]の磁束密度を有していてもよい。溶融物における磁場の変動は、所定の強度において±約0.03[T]未満である。水平磁場をかけると、流体の動きとは逆方向の軸方向にローレンツ力が発生し、融液の対流を促進する反対の力が働く。その結果、融液の対流が抑制され、界面付近の結晶の軸方向の温度勾配が大きくなる。その後、融液と結晶の界面は、界面付近の結晶内の軸方向温度勾配の増加に対応して結晶側に上昇し、ルツボ内の融液対流からの寄与が減少する。
【0030】
いくつかの実施形態では、単結晶シリコンインゴットの本体部を成長させる間に、カスプ磁場をシリコン融液に印加する。カスプ磁場は、2つの制御パラメータ、即ち、磁束密度および磁場形状を有する。カスプ磁場は、融液の直近の表面にある水平(径方向)磁場成分と、インゴットの軸付近の融液内にあるより深い垂直(軸方向)磁場を組み合わせて印加するものである。このカスプ磁場は、逆方向に電流を流す一対のHelmholtzコイルを用いて発生させている。その結果、2つの磁場の中間に位置するインゴットの軸に沿った垂直方向では、磁場が打ち消し合って垂直磁場成分がゼロかそれに近い状態になる。例えば、カスプの磁束密度は、軸方向に約0~約0.2[T]が一般的である。また、半径方向の磁束密度は、一般的に垂直方向の磁束密度よりも高い。例えば、カスプ磁束密度は、半径方向位置に依存して、典型的には約0~約0.6[T]、例えば約0.2~約0.5[T]である。半径方向のカスプ磁界は、融液の流れを抑制し、それによって融液を安定させる。言い換えれば、半径方向のカスプ磁場をかけることで、結晶成長が起こる固液界面に隣接した部分では対流が起こり、融液の残りの部分では対流が抑制され、均一な酸素分布を実現するための有効な手段となる。融液の対流は、融液の自由表面と融液ルツボの界面のカスプ磁界によって、同時に局所的に独立して制御することができる。これにより、結晶の回転速度によらず、磁束密度のみで成長中の結晶中の酸素濃度を制御することができる。軸方向または半径方向の磁場がある場合は、結晶の回転速度を制御することで酸素濃度の制御が可能になる。カスプ磁場を印加することで、磁場を印加せずに成長させたインゴットよりも少ない酸素含有量、例えば約15PPMA以下、または約10PPMA以下のインゴットに成長させることができる。格子間酸素は、SEMI MF 1188-1105に従って測定してもよい。
【0031】
第1の単結晶シリコンインゴットの完成時に、結晶引上装置は、チャックおよびシードを十分に予熱できるように、第2のネック部の成長前に安定化期間を設けてもよい。従って、いくつかの実施形態では、第1の単結晶シリコンインゴットの成長が完了し、これに続いて、シリコンとn型ドーパントを添加してシリコン融液を補充する。その後、第2のネック部を補充されたシリコン融液に接触させ、第2のシリコン種結晶を引き抜いて、第2の単結晶シリコンインゴットの第2のネック部を形成する。いくつかの実施形態では、第2のネック部は、5mΩ・cm~約12mΩ・cmの抵抗率、例えば5mΩ・cm~約8mΩ・cmの抵抗率を有する。更に、外向きに広がる第2のシードコーンを成長させ、このシードコーンは、5mΩ・cm~約12mΩ・cm、例えば5mΩ・cm~約8mΩ・cmの抵抗率を有する。その後、第2の結晶の本体部の低抵抗化のために、融液に追加のn型ドーパントを添加する。従って、第2の単結晶シリコンインゴットの本体部は、4mΩ・cm未満、例えば2mΩ・cm未満、1.7mΩ・cm未満、または更に約1.6mΩ・cm未満の抵抗率を有する。
【0032】
この方法を複数回繰り返して、これらの抵抗率特性を有する追加のインゴットを成長させてもよい。
【0033】
本発明の方法によれば、ネック部およびネック部に隣接する外向きに広がるシードコーンにおいて、5mΩ・cm~約12mΩ・cmの抵抗率、例えば5mΩ・cm~約8mΩ・cmの抵抗率を達成するのに十分な濃度でn型ドーパントを添加することにより、成長中の単結晶シリコンインゴットにおいて非常に高い空孔濃度を促進することができる。いくつかの実施形態では、空孔がネック部における支配的な固有の点欠陥である。いくつかの実施形態では、空孔は、ネック部に隣接する外向きに広がるシードコーンにおける支配的な固有の点欠陥である。いくつかの実施形態では、空孔は、ネック部およびネック部に隣接する外向きに広がるシードコーンにおいて、支配的な固有の点欠陥である。空孔が支配的な固有点欠陥となることで、高い引き上げ率を採用しなくても、結晶表面に向かって上昇することで、既存の転位の除去が促進される。軽度のドープ材料では、高い引き抜き速度と小径のネック部の組み合わせが採用されることが多い。ネック部を細くすることで、熱応力を最小限に抑え、転位が消失する結晶表面までの移動距離を短くすることができる。高い引き抜き速度は、多くの空孔を組み込み、転位を結晶表面に向かって移動させるのに有効である。しかし、高濃度にドープされた結晶の場合は、2つの理由からこの方法は有効ではない。第1に、空孔濃度はドーパント濃度のみの関数となり、引き抜き速度(より正確には、引き抜き速度と軸方向温度勾配のV/G比)にはあまり依存しない。第2に、重度にドープされた融液の場合、高い引き抜き速度は体質的な過冷却問題の発生を助長する。従って、重度にドープされた融液の場合、引き抜き速度を軽度にドープされた融液のように広い範囲の値で選択することはできない。本解決策では、ドーパント濃度によって空孔濃度を制御しながら、ネック部中の体質的な過冷却の状態を避けるために最適な引き抜き速度値を選択することができる。このようにして、2つの問題が切り離される。
【0034】
本発明の方法により、転位が減少または除去された単結晶シリコンインゴットの形成が可能になる。いくつかの実施形態では、単結晶シリコンインゴットの本体部のスライスは、約400個未満の転位/cm2、例えば約100個未満の転位/cm2、または約10個未満の転位/cm2、または更に1個未満の転位/cm2を含む。いくつかの実施形態では、単結晶シリコンインゴットの本体部のスライスは、転位ゼロのウエハである。転位は、インゴットからスライスを取り出し、転位を画定するために優先的なエッチングを行うなど、当技術分野で従来から知られている手段によって決定することができる。
【実施例】
【0035】
本開示の方法を、以下の実施例によって更に説明する。これらの実施例は、限定的な意味で捉えるべきではない。
【0036】
複数の単結晶シリコンインゴットを成長させた。インゴットは、n型であり、ヒ素がドープされていた。結晶は、ネック部の直径が5.5mm、ネック部の長さが40mmの状態で成長させた。結晶の回転速度は11rpm、ルツボの回転速度は8rpmであった。融液の質量は60kgであった。ネック部とクラウン部の抵抗率は、5mΩ・cm以下とそれ以上の値に変化させた。そして、本体部の転位を測定した。その結果を
図4に示す。抵抗率が4.5mΩ・cm未満の試験では、すべてクラウン部のゼロ転位(LZD)とインゴット本体部の転位が発生したのに対し、抵抗率が5.5mΩ・cm以上の試験では、単結晶シリコンインゴットのクラウン部と本体部のゼロ転位成長にすることに成功したことが明確にわかる。
【0037】
本明細書で使用されるように、寸法、濃度、温度、または他の物理的もしくは化学的特性または特徴の範囲と関連して使用される用語「約(about)」、「実質的に(substantially)」、「本質的に(essentially)」、および「約(approximately)」は、例えば、丸め、測定方法、または他の統計的変動に起因する変動を含む、特性または特徴の範囲の上限および/または下限に存在する可能性のある変動をカバーすることを意味する。
【0038】
本開示の要素またはその実施形態を紹介する場合、冠詞「a」、「an」、「the」および「said」は、1つまたは複数の要素が存在することを意味することを意図する。用語「comprising」、「including」、「containing」、および「having」は、包括的であることを意図しており、記載された要素以外の追加の要素が存在する可能性があることを意味する。特定の向きを示す用語(例えば、「上部(top)」、「底部(bottom)」、「側部(side)」など)の使用は、説明の便宜上のものであり、記載されたアイテムの特定の方向性を要求するものではない。
【0039】
本開示の範囲から逸脱することなく、上記の構造および方法に様々な変更を加えることができるため、上記の説明に含まれ、添付の図面に示されているすべての事項は、限定的な意味ではなく、例示として解釈されることが意図されている。
【符号の説明】
【0040】
10 … 単結晶シリコンインゴット
12 … シリコン種結晶
16 … 外向きに広がるシードコーン部
18 … ショルダー部
20 … 本体部
24 … ネック部