(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】遠心沈降式の粒径分布測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 15/04 20060101AFI20240612BHJP
G01N 21/01 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
G01N15/04 A
G01N21/01 B
(21)【出願番号】P 2021569766
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2020045161
(87)【国際公開番号】W WO2021140797
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2020001365
(32)【優先日】2020-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】520276604
【氏名又は名称】エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】山口 哲司
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 憲
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-111647(JP,U)
【文献】特開昭57-211042(JP,A)
【文献】実開平05-006353(JP,U)
【文献】特開平03-087636(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0016686(US,A1)
【文献】実公昭56-053895(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00 - 15/1492
G01N 21/01
G01N 21/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項7】
前記カバー体は、前記セル保護部材を、前記セル保持体の回転軸方向において隙間を空けて覆うものである、請求項5又は6記載の遠心沈降式の粒径分布測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心沈降式の粒径分布測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の遠心沈降式の粒径分布測定装置としては、非特許文献1に示すように、測定試料及び分散媒を収容した測定セルを回転させ、分散媒中で測定試料中の粒子を沈降させて、測定試料の粒径分布を測定するものがある。
【0003】
ここで、測定セルはモータにより回転される回転ディスクに装着されており、当該回転ディスクを挟んで測定光学系である光源及び光検出器が設けられている。また、この回転ディスクには、分散媒のみを収容した参照セルも設けられている。参照セルは、当該参照セルを透過した参照光量を基準として、測定セルを透過した測定光量を補正することにより、光源の光量変化の影響を排除するためのものでもある。
【0004】
また、遠心沈降式の粒径分布測定装置には、特許文献1に示すように、風損の影響を低減すべく、回転ディスク(ディスク本体)の測定セル等が取り付けられる面に、測定セル等を覆うカバー体(ホルダーカバー)が設けられている。そして、このカバー体には、光源から光検出器への光を遮らないように光通過孔が形成されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】東川 喜昭、「自然/遠心沈降式粒度分布測定装置CAPA-700」、Readout、株式会社堀場製作所、1992年1月、No.4、p.23-29
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、セル交換時などには、回転ディスクに測定セル等を取り付けた後に、当該回転ディスクに取り付けられた測定セルに対してカバー体の光通過孔を位置合わせしながら、カバー体を回転ディスクに取り付ける必要がある。このようにカバー体を位置合わせしつつ、回転ディスクを取り付ける作業が煩雑になってしまう。
【0008】
そこで本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、セル交換時などにおいてセル保持体に対するカバー体の取り付け作業を容易にすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係る遠心沈降式の粒径分布測定装置は、測定試料及び分散媒が収容される測定セルを保持するセル保持体と、前記セル保持体に前記測定セルを覆うように取り付けられるカバー体と、前記セル保持体を回転し、前記測定セルに遠心力を作用させる回転部と、前記測定セルの回転通過領域を挟む一方側に設けられ、前記セルに光を照射する光源と、前記測定セルの回転通過領域を挟む他方側に設けられ、前記セルを透過した光を検出する光検出器と、前記光検出器からの光強度信号を取得して、粒径分布を算出する粒径分布演算部とを備え、前記カバー体の回転通過領域は、前記光源及び前記光検出器の間を通過する光の光路よりも内側に位置していることを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、カバー体の回転通過領域が、光源及び光検出器の間を通過する光の光路よりも内側に位置しているので、カバー体に光を通過させる通過孔を形成する必要がなくなり、従来のような通過孔の位置合わせが不要となる。その結果、セル交換時などにおいてセル保持体に対するカバー体の取り付け作業を容易にすることができる。
【0011】
風損を小さくするための具体的な実施の態様としては、前記セル保持体は、平面視において円形状をなすものであり、その中心が前記回転部による回転中心となり、前記カバー体は、平面視において円形状をなすものであり、前記セル保持体に対して同心円状に取り付けられるものであることが望ましい。
【0012】
セル保持体の回転時のバランスを保つとともに、光源の光量変化の影響を排除するためには、前記セル保持体は、その回転中心を挟むように前記測定セル及び参照試料が収容される参照セルを保持するものであることが望ましい。
この場合、測定セルによる風損だけでなく、参照セルによる風損を小さくするためには、前記カバー体は、前記測定セルとともに前記参照セルを覆うものであることが望ましい。
【0013】
セル保持体の具体的な実施の態様としては、前記セル保持体の一面には、前記測定セルを収容するセル用凹部が形成されるとともに、前記カバー体を収容するカバー体用凹部が形成されていることが望ましい。この構成であれば、カバー体をセル保持体に取り付けることで、セル用凹部がカバー体によって覆われ、セル保持体の上面の凹凸を小さくすることができるので、凹凸による風損の低減や、騒音の低減を図ることができる。
【0014】
回転により測定セルが破損しないようにするためには、前記セル保持体と前記測定セルとの間に介在して設けられ、前記測定セルに加わる遠心荷重を分散させて前記測定セルの破損を防止するセル保護部材をさらに備えていることが望ましい。
さらに、測定セルに加わる遠心加重は、セル保護部材を介してセル保持体に伝わるが、セル保護部材とセル保持体とが面で接触する構造とすることで、セル保持体に生じる応力の低減を図ることができる。
【0015】
ここで、セル保護部材により測定セルの保護部分を大きくするとともに、測定を妨げないようにするためには、前記セル保護部材は、前記光源から前記光検出器に対して光が透過する光透過部が形成されていることが望ましい。
【0016】
セル保護部材はセル保持体に対して着脱可能に構成されていることから、それらの間にはがたつきがある。一方で、セル保護部材の光通過部は、セル保持体が回転している状態で、光源及び光検出器の間を通過する光が通過するように形成されている。ここで、カバー体をセル保護部材に接触して設けた場合、カバー体によってセル保護部材が固定されてしまい、セル保持体が回転している状態で、セル保護部材の光通過部が誤った位置に位置することになってしまう。この問題を好適に解決するためには、前記カバー体は、前記セル保護部材を、前記セル保持体の回転軸方向において隙間を空けて覆うものであることが望ましい。この構成であれば、セル保護部材がカバー体に固定されないので、セル保持体が回転している状態で、セル保護部材の光通過部を所望の位置に位置させることができ、セル保護部材の光通過部に光を確実に通過させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上に述べた本発明によれば、セル交換時などにおいてセル保持体に対するカバー体の取り付け作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る遠心沈降式の粒径分布測定装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】同実施形態のカバー体を取り付けた状態のセル保持体の平面図である。
【
図3】同実施形態のセル保持体及びカバー体を示す断面図である。
【
図4】同実施形態のカバー体及び光路との位置関係を示す断面図である。
【符号の説明】
【0019】
100・・・遠心沈降式の粒径分布測定装置
2・・・測定セル
31・・・セル保持体
311・・・セル用凹部
312・・・カバー体用凹部
33・・・カバー体
34・・・セル保護部材
34h1・・・光通過孔
34h2・・・光通過孔
41・・・光源
51・・・光検出器
6・・・参照セル
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る遠心沈降式の粒径分布測定装置について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
本実施形態の遠心沈降式の粒径分布測定装置100は、
図1に示すように、測定試料及び分散媒(例えば水)からなる試料懸濁液を収容する測定セル2と、当該測定セル2を回転させるセル回転機構3と、当該セル回転機構3による測定セル2の回転通過領域を挟んで設けられた測定光学系である光照射部4及び光検出部5とを備えている。なお、回転通過領域とは、セル回転機構3により測定セル2が通過する円環状の領域であり、当該領域の周方向の一部分を挟んで光照射部4及び光検出部5が挟んで設けられる。
【0022】
測定セル2は、例えば樹脂製の透光性を有する材料から形成された角形セルである。本実施形態では、参照セル6も設けられており、当該参照セル6には分散媒である水が収容されている。
【0023】
セル回転機構3は、測定セル2及び参照セル6が着脱可能に取り付けられるセル保持体31と、当該セル保持体31を回転させる回転部32とを有している。
【0024】
セル保持体31は、平面視において円形状をなすものであり(
図2参照)、その中心が回転部32による回転中心となる。本実施形態では、円盤形状をなしている。そして、セル保持体31には、その回転中心を挟むように測定セル2及び参照セル6が取り付けられる。また、セル保持体31には、特に
図3に示すように、セル形状に対応した取り付け凹部311が形成されており、当該取り付け凹部311にセル2、6を嵌め入れることによって取り付けられる。なお、セル保持体31は、金属製のものである。
【0025】
また、セル保持体31の上面には、
図1等に示すように、測定セル2及び参照セル6が回転中に不意に外れないようにするためのカバー体33が設けられている。カバー体33は、平面視において円形状をなすものであり(
図2参照)、セル保持体31に対して同心円状に取り付けられる。本実施形態のカバー体33は、円板形状をなしている。
【0026】
このカバー体33は、セル保持体31に対してネジ構造7により固定される。ネジ構造は、セル保持体31又はカバー体33の一方の中心部に設けられた雄ねじ部71と、セル保持体31又はカバー体33の他方の中心部に設けられた雌ねじ部72とから構成される。そして、雄ねじ部71に雌ねじ部72をねじ込むことによって、セル保持体31に対してカバー体33が固定される。
【0027】
さらに、セル保持体31には、保持体31及びセル2、6の間に介在して設けられ、セル2、6に加わる遠心力を受けて分散させてセル2、6の破損を防止するセル保護部材34が設けられている。このセル保護部材34は、例えば測定セル2と同じ樹脂製である。セル保護部材34はセル2、6とともにセル保持体31から取り外すことができる。
【0028】
回転部32は、
図1に示すように、セル保持体31の下面における中心部に接続された回転軸321と、当該回転軸321を回転させるモータ322とを有している。当該モータ322は、制御部10によってその回転数が制御される。なお、回転軸321は、セル保持体31に一体形成されたものであってもよいし、別体に形成されたものであっても良い。また、回転軸321は、1つの部材から構成されるものであってもよいし、複数の部材を接続して構成されたものであっても良い。
【0029】
光照射部4は、
図1に示すように、セル2、6の回転通過領域(セル保持体31)の下方に設けられている。本実施形態の光照射部4は、例えばLEDなどの光源41と、当該光源41から出射された光を集光する集光レンズ42とを有している。光照射部4により射出された光は、セル保持体31に形成された光通過孔31h及びセル保護部材34に形成された光通過孔34h1を通って測定セル2又は参照セル6に照射される。なお、セル保護部材34の光通過孔34h1、34h2は、セル保持体31が回転してセル保護部材34が遠心力を受けた状態で、セル保持体31の光通過孔31hと一致(中心軸が一致)するように形成されている。
【0030】
光検出部5は、
図1に示すように、セル2、6の回転通過領域(セル保持体31)の上方に設けられている。本実施形態の光検出部5は、光検出器51と、当該光検出器51により検出される光を集光する集光レンズ52とを有している。光検出部5により検出される光は、セル2、6を透過してセル保護部材34に形成された光通過孔34h2を通り、集光レンズ52により集光される。
【0031】
光検出器51により得られた光強度信号は、粒径分布演算部11により取得されて、粒径分布演算部11によって粒径分布データが算出される。粒径分布演算部11は、光強度信号を吸光度に換算し、その時間変化から粒径分布データを算出する。当該粒径分布データは、図示しない表示部によってディスプレイ上に表示される。なお、粒径分布演算部11は、制御部10とともに、CPU、メモリ、入出力インターフェース、AD変換器等を有するコンピュータにより構成されている。
【0032】
然して、本実施形態の遠心沈降式の粒径分布測定装置100においては、
図2及び
図4に示すように、カバー体33の回転通過領域が、光源41及び光検出器51の間を通過する光の光路よりも内側に位置するように構成されている。
【0033】
具体的には、
図4に示すように、カバー体33の半径r(回転部32の回転中心からカバー体33の外周端までの距離)が、回転部32の回転中心から光の光路までの距離Lよりも小さくなるように構成されている。この構成により、カバー体33は、光を通過する通過孔を有さない構成となる。
【0034】
このカバー体33は、セル保持体31からセル2、6が飛び出さないようにするものであり、セル保持体31に取り付けられた状態において、測定セル2及び参照セル6の径方向内側の一部を覆う構成となる。本実施形態では、カバー体33は、セル2、6を保護するセル保護部材34に形成された光通過孔34h2を塞がないように、セル保護部材34の一部も覆う構成となる。これにより、カバー体33は、セル保持体31からセル保護部材34が飛び出さないようにするものでもある。また、カバー体33は、セル保持体31に取り付けられた状態でセル用凹部311を覆う形状を有しており、セル保持体31の上面の凹凸を小さくすることができ、回転時の凹凸による風損の低減及び騒音の低減ができる。
【0035】
また、セル保持体31の上面には、
図3に示すように、取り付け凹部311(セル用凹部311)の他に、カバー体33を収容するためのカバー体用凹部312が形成されている。このカバー体用凹部312は、回転部32の回転中心に対して同軸上に形成されている。これにより、カバー体33をセル保持体31に位置決めしやすくできる。また、カバー体用凹部312の深さは、カバー体33の上面とセル保持体31の上面との段差が小さくなる深さである。なお、本実施形態では、
図4に示すように、カバー体33がセル保護部材34の一部を覆う構成であることから、セル保護部材34にもカバー体33に接触しないように凹部341が形成されている。セル保護部材34がカバー体33に接触しないように構成することによって、セル保持体の回転時にセル保護部材34が遠心力を受けて径方向外側に移動し、セル保護部材34の光通過孔34h1、34h2とセル保持体31の光通過孔31hと一致する。具体的にカバー体33は、セル保護部材34を、セル保持体31の回転軸方向において隙間を空けて覆っている。この回転軸方向の隙間は、カバー体33の下面が接触するカバー体用凹部312の上面が、取り付け凹部311に取り付けられたセル保護部材34の凹部341の上向き面よりも高くなるように構成されていることにより形成される。つまり、この回転軸方向の隙間は、カバー体33の下面と、セル保護部材34の凹部341の上向き面との間に形成される。また、セル保護部材34は、遠心力を受けてセル保持体31の径方向外側に移動することから、カバー体33の外側周面とセル保護部材34の凹部341の内向き面との間にも径方向において隙間が空くことになる。また、測定セル2に加わる遠心加重は、セル保護部材34を介してセル保持体31に伝わるが、セル保護部材34とセル保持体31とが面で接触する構造とすることで、セル保持体31に生じる応力の低減を図ることができる。
【0036】
<本実施形態の効果>
本実施形態の遠心沈降式の粒径分布測定装置100によれば、カバー体33の回転通過領域が、光源41及び光検出器51の間を通過する光の光路よりも内側に位置しているので、カバー体33に光を通過させる通過孔を形成する必要がなくなり、従来のような通過孔の位置合わせが不要となる。その結果、セル交換時などにおいてセル保持体31に対するカバー体33の取り付け作業を容易にすることができる。本実施形態では、セル保持体31に対するカバー体33の周方向の取り付け位置を気にすること無く、セル保持体31の雄ねじ部にカバー体33の雌ねじ部をねじ込むだけで、カバー体33を取り付けることができる。
【0037】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0038】
例えば、前記実施形態のカバー体33はセル保持体31の上面の凹凸を減らして風損を小さくするものであれば、平面視において円形状をなすものである必要はない。この場合であっても、カバー体33の回転通過領域は、光源41及び光検出器51の間を通過する光の光路よりも内側に位置するように構成する。
【0039】
また、セル保護部材34に光通過孔34h1、34h2を形成する構成であったが、例えばセル保護部材34に光通過孔を形成すること無く、セル保護部材34をセル2、6の光通過部位を除く部分を保護する構成とすることが考えられる。
【0040】
前記実施形態では、測定セル2に光を照射してその透過光を検出するものであったが、測定セル2に同位体試料や自発光試料を収容する場合には、光照射部を設けない構成としても良い。この場合、カバー体33の回転通過領域は、測定セル2から光検出器51までの光の光路よりも内側に位置するように構成する。
【0041】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、セル交換時などにおいてセル保持体に対するカバー体の取り付け作業を容易にする遠心沈降式の粒径分布測定装置を提供することができる。