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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】排ガス除害システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/46 20060101AFI20240612BHJP
   B01D 53/68 20060101ALI20240612BHJP
   B01D 53/81 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
B01D53/46 ZAB
B01D53/68 100
B01D53/81
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022047862
(22)【出願日】2022-03-24
(65)【公開番号】P2023141509
(43)【公開日】2023-10-05
【審査請求日】2023-12-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】川端 宏文
(72)【発明者】
【氏名】今井 建一
(72)【発明者】
【氏名】大石 祐輔
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-050855(JP,A)
【文献】特開2009-019977(JP,A)
【文献】特開2002-267606(JP,A)
【文献】特開2013-185866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-53/73
B01D 53/74-53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
B01D 53/14-53/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置から排出される特殊ガスを含む排気ガスを除害すると共に排気ラインにおける排ガス漏洩検査機能を備えた排ガス除害システムであって、
排気ガスが負圧状態で流れる排気ラインと、
該排気ラインに設けられて排気ガスを除害する排ガス処理装置と、
前記排気ラインから分岐する漏洩検査ラインと、
前記漏洩検査ラインに設けられ、前記特殊ガスを吸着する吸着材が充填された特殊ガス除去筒と、
前記特殊ガス除去筒の下流側に設置され、前記漏洩検査ラインに流れる排気ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度計と、
を備えたことを特徴とする排ガス除害システム。
【請求項2】
前記特殊ガス除去筒の下流側、かつ、前記酸素濃度計の上流側に設置され、空気を前記漏洩検査ラインに取り込むための三方弁を備えたことを特徴とする請求項1に記載の排ガス除害システム。
【請求項3】
前記特殊ガス除去筒の下流側、かつ、前記酸素濃度計の上流側に不活性ガスを導入するための不活性ガス導入バルブを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス除害システム。
【請求項4】
前記不活性ガス導入バルブの下流側、かつ、前記酸素濃度計の上流側に設置され、前記不活性ガスを希釈するためのドライエアーを導入するためのドライエアー導入バルブを備えたことを特徴とする請求項3に記載の排ガス除害システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体製造装置の排ガス処理ラインに設けられて排気ガスを除害する排ガス除害システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスでは、爆発性を有するシラン系ガス(例えば、SiH4やSiH2Cl2)や、毒性を有するリン系ガス(例えば、PH3)、ヒ素系ガス(例えば、AsH3)、ホウ素系ガス(例えば、B26)などが使用されている。半導体製造装置から排出される排気ガスには、これらの特殊ガスが有害成分として含まれている。
このため、半導体製造装置の排気ガスは、排気ラインを通じて排ガス除害装置に送られて分解処理される(特許文献1及び2)。
【0003】
半導体製造装置の排気ラインにおいては、回転機等の振動による継手の緩み、排気ガスの腐食性によるシール材の劣化などにより時間経過とともに、ガス漏洩リスクは高まっていく。そこで、設備の安全な運用を継続するために定期的なガス漏洩検査が必要となる。
【0004】
従来、定期的な漏洩検査を実施する場合、半導体製造装置の後段に設置されているアイソレーションバルブを閉じて、ガス吸引のために排気ラインに設けられる真空ポンプを停止するといった大掛かりな停止操作が必要であった。
このため、漏洩検査の定期的な周期は、半導体製造装置の稼働率の維持と安全性(漏洩検査)のバランスを考慮して決定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-023000号公報
【文献】特開2007-029790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、装置や部品の交換作業等を行った後の簡易的な漏洩検査を行うために、排気ラインに酸素濃度計を設置し、負圧状態である排気ラインへの環境空気の侵入の有無をチェックすることで、排気ラインの漏洩の有無を検査することが想定される。
このような、酸素濃度計を用いて漏洩検査を行うことを想定した排ガス除害システム50の概念図を図5に示す。
【0007】
図5において、1は半導体製造装置、2は半導体製造装置1から排出される排気ガスが流れる排気ライン、3は排気ライン2を仕切るアイソレーションバルブ、5は排気ライン2を負圧にする真空ポンプ、7は排気切替三方弁、9は排ガス処理装置、11は排気ダクト、13は排気ライン2から分岐して設けられて漏洩検査を行うための漏洩検査ライン、15は漏洩検査ライン13に設けられたサンプリング仕切弁、17は酸素濃度計である。
【0008】
図5に示される排ガス除害システム50には、半導体製造装置1において特殊ガスの使用を停止して不活性ガス(窒素など)のみが排気されている状態において、酸素濃度計17を用いて排ガスライン2に漏洩が無いことを確認することができる。
したがって、図5にされる排ガス除害システム50における漏洩検査は、例えば、真空ポンプの交換作業後等の簡易検査に使用するには有効である。
【0009】
しかしながら、図5に示される排ガス除害システム50における漏洩検査は、半導体製造装置1が特殊ガスを用いて稼働し、排ガス処理装置9で排気ガスを処理している間の排気ガスの漏洩を検査することはできないという問題がある。
なぜなら、排気ライン2に排気される特殊ガスが酸素濃度計17に流れ、これが酸素濃度計17の故障を引き起こすためである。
【0010】
また、図5に示される排ガス除害システム50における漏洩検査は、半導体製造装置1から特殊ガスが排気されない、つまり不活性ガスのみが排気される状態であっても、漏洩検査を精度よく行うことはできないという問題もある。なぜなら、半導体製造装置1や排気ライン2の配管に残留するわずかな特殊ガスが、漏洩検査時に酸素濃度計17に流れて酸素濃度計17の故障を引き起こすからである。
仮に、漏洩検査の初回は精度よく検知できたとしても、漏洩検査を重ねる度に、酸素濃度計17に特殊ガスによる損傷が蓄積されるため、長期間に亘って漏洩検知をすることは難しい。
【0011】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、半導体製造装置の稼働を停止することなく、長期間かつ精度よく漏洩検査を行うことができる漏洩検査機能を備えた排ガス除害システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明に係る排ガス除害システムは、半導体製造装置から排出される特殊ガスを含む排気ガスを除害すると共に排気ラインにおける排ガス漏洩検査機能を備えたものであって、
排気ガスが負圧状態で流れる排気ラインと、
該排気ラインに設けられて排気ガスを除害する排ガス処理装置と、
前記排気ラインから分岐する漏洩検査ラインと、
前記漏洩検査ラインに設けられ、前記特殊ガスを吸着する吸着材が充填された特殊ガス除去筒と、
前記特殊ガス除去筒の下流側に設置され、前記漏洩検査ラインに流れる排気ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度計と、
を備えたことを特徴とするものである。
【0013】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記特殊ガス除去筒の下流側、かつ、前記酸素濃度計の上流側に設置され、空気を前記漏洩検査ラインに取り込むための三方弁を備えたことを特徴とするものである。
【0014】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記特殊ガス除去筒の下流側、かつ、前記酸素濃度計の上流側に不活性ガスを導入するための不活性ガス導入バルブを備えたことを特徴とするものである。
【0015】
(4)また、上記(3)に記載のものにおいて、前記不活性ガス導入バルブの下流側、かつ、前記酸素濃度計の上流側に設置され、前記不活性ガスを希釈するためのドライエアーを導入するためのドライエアー導入バルブを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、排気ガスに含まれる特殊ガスが、特殊ガス除去筒を通過することにより除去されるので、酸素濃度計が特殊ガスにより損傷を受けにくくなる。このため、半導体製造装置の稼働を停止することなく、長期間かつ精度よく漏洩検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態に係る排ガス除害システムの構成機器の説明図である。
図2図1に示した排ガス除害システムの排ガス処理状態のガスの流れを説明する説明図である。
図3図1に示した排ガス除害システムの漏洩検査時のガスの流れを説明する説明図である。
図4図1に示した排ガス除害システムのパージ処理の流れを説明するフローチャートである。
図5】酸素濃度計を用いて漏洩検査を行う排ガス除害システムの装置構成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施の形態に係る排ガス除害システム51を図1に基づいて説明する。なお、図1において、図5と同一部分には同一の符号を付してある。
本実施の形態に係る排ガス除害システム51は、排気ガスが負圧状態で流れる排気ライン2と、排気ライン2に設けられて排気ガスを除害する排ガス処理装置9と、排気ライン2から分岐する漏洩検査ライン13と、漏洩検査ライン13に設けられて特殊ガスを吸着する吸着材が充填された特殊ガス除去筒19と、特殊ガス除去筒19の下流側に設置されて漏洩検査ライン13に流れる排気ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度計17と、を備えている。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0019】
<排気ライン>
排気ライン2は、排気ガスが負圧状態で流れるラインであり、排気ライン2には、アイソレーションバルブ3、真空ポンプ5、排気切替三方弁7、排ガス処理装置9が設けられている。
排気ダクト11を工場等の排気設備に接続することで、排気ライン2は負圧状態となり、排気ガスが外部に漏洩することを可及的に防止している。工場等の排気設備の能力が足りない場合は、排ガス処理装置9に図示しない排気ファンを追加することで、排気ライン2を負圧状態にすることができる。
【0020】
排気切替三方弁7は、排気ライン2における排気ガス処理装置の上流側に設けられて、排気ガスの流れを排ガス処理装置9側と排気ダクト11側とで切り替える機能を有する。
【0021】
<排ガス処理装置>
排ガス処理装置9は、半導体製造装置1から排出される特殊ガスを除害する装置であって、例えば特殊ガスをバーナで燃焼して除害する装置を使用することができる。もっとも、排ガス処理装置9における排ガス処理の方式は特に限定されず、例えば特殊ガスをプラズマにより分解する処理装置であってもよく、他の方式のものでもよい。
【0022】
<漏洩検査ライン>
漏洩検査ライン13は、排気ライン2から分岐して設けられ漏洩検査を行うための排気ガスを流すためのラインである。
漏洩検査ライン13には、排気ライン2から排気ガスを導入するためのサンプリング仕切弁15と、サンプリング仕切弁15の下流側に設けられて特殊ガスを吸着して除去する特殊ガス除去筒19と、特殊ガス除去筒19の下流側に設けられてサンプリング系統を切り替えて空気を取り込むためのサンプリング系統切替三方弁21(本発明の三方弁に相当)と、サンプリング系統切替三方弁21の下流側に設けられてサンプリングガスを吸引するサンプリングポンプ23と、サンプリングポンプ23の下流側に設けられた酸素濃度計17とが設けられている。
サンプリング系統切替三方弁21は、一方の入口に漏洩検査ライン13の上流側が接続され、他方の入口に空気導入ラインが接続され、また、出口に酸素濃度計17に繋がる漏洩検査ライン13の下流側が接続されている。
【0023】
また、図1に示されるように、漏洩検査ライン13における特殊ガス除去筒19とサンプリング系統切替三方弁21との間に不活性ガス、例えば窒素ガスを導入するための不活性ガス導入バルブ25を設けるのが好ましい。
不活性ガス導入バルブ25を設けた場合において、サンプリング系統切替三方弁21によって流路を切り替えることにより、酸素濃度計17対して、排気ガス若しくは不活性ガスまたは空気を流すことができる。
【0024】
また、図1に示されるように、不活性ガス導入バルブ25の下流側、かつ、酸素濃度計17の上流側に設置され、不性ガスを希釈するためのドライエアーを導入するためのドライエアー導入バルブ27を設けるのが好ましい。
ドライエアー導入バルブ27から供給されたドライエアーは、窒素ガスと混合される。窒素ガスとドライエアーの供給量を調整することにより、所定の酸素濃度を有するガスを得ることができる。この所定の酸素濃度を有するガスは、後述する「酸素濃度計の劣化検査方法」に使用できる。
ここで、ドライエアーとは、露点温度が使用環境において結露が生じない温度以下の空気を意味する。例えば、露点温度が0℃以下の空気を使用することができる。
【0025】
<特殊ガス除去筒>
特殊ガス除去筒19は、漏洩検査ライン13に設けられて排気ガス中に含まれる特殊ガスを吸着する吸着材が充填されている。
吸着材は、特殊ガスを吸着することにより、排気ガスに含まれる特殊ガスを除去する。特殊ガス除去筒19には、異なる種類の吸着材を2以上充填してもよい。半導体製造プロセスでは、様々な特殊ガスが使用されるため、異なる種類の吸着材を充填することにより、排気ガス中に含まれる特殊ガスの濃度をより低下させることができる。
吸着材としては、特殊ガスの種類に応じて銅を含有する吸着剤、ソーダライム及び活性炭等を使用できるが、特殊ガスを吸着できるものであればこれに限定されない。
【0026】
また、吸着材の種類が異なる複数の特殊ガス除去筒19を、直列に接続して設けてもよい。半導体製造プロセスでは、様々な特殊ガスが使用されるため、異なる種類の吸着材が充填された特殊ガス除去筒19を複数設けることにより、排気ガス中に含まれる特殊ガスを効果的に吸着することができる。
また、吸着材の種類が同じ特殊ガス除去筒19を並列に接続してもよい。一方の特殊ガス除去筒19から流出するガスの特殊ガス濃度が許容限界を超える前に、他方の特殊ガス除去筒19に切り替えることにより、システムを連続して運用することができる。
【0027】
<酸素濃度計>
酸素濃度計17は、特殊ガス除去筒19の下流側に設置されて漏洩検査ライン13に流れる排気ガスの酸素濃度を測定する。
酸素濃度計17は、例えばジルコニア式酸素濃度計やガルバニ式酸素濃度計を使用することができる。もっとも、酸素濃度を測定できるものでれば、酸素濃度計17の種類は特に限定されない。
【0028】
上記のように構成された本実施の形態に係る排ガス除害システム51の動作説明を、半導体を生産している状態である「生産中の状態」、排気ガスの漏洩検査を行っている「漏洩検査中の状態」及び漏洩検査後に行うパージ処理を行っている「パージ時の状態」に分けて説明する。
【0029】
<生産中の状態>
生産中の状態における各構成機器の状態は表1の「生産中」の欄に示す通りであり、ガスの流れは図2の黒矢印で示す通りである。
【0030】
【表1】
【0031】
半導体製造装置1から排出された排気ガスは、排気ライン2を通って排ガス処理装置9に流れる。サンプリング仕切弁15が閉じているため、排気ガスは、漏洩検査ライン13には流れない。
サンプリング系統切替三方弁21は、空気導入ラインから空気を酸素濃度計17に流し、酸素濃度計17は、空気の酸素濃度を測定する。これにより、酸素濃度計17の連続的な通気運転が可能となる。
また、このとき、空気の酸素濃度を測定することで、後述の「酸素濃度計の劣化検査方法」で説明するとおり、初期の測定値に対する増減を監視し、酸素濃度計17の劣化を検出できる。
【0032】
<漏洩検査中の状態>
漏洩検査は、半導体製造装置1が特殊ガスを排気しない状態、例えば、ウエハを処理するサイクルのインターバル中に実行する。このとき、半導体製造装置1はスタンバイ状態であり、不活性ガスを排出する。もっとも、排気ライン2には特殊ガスが微量に残存しているため、不活性ガスに特殊ガスが含まれる可能性があるが、特殊ガスは特殊ガス除去筒19の吸着材に吸着されるので問題ない。
【0033】
また、ウエハ処置中に排出される特殊ガスは吸着材によって吸着できるので、ウエハ処理中、すなわち半導体製造装置1の稼動中にも漏洩検査をすることができる。つまり、本発明によれば、半導体製造装置1がウエハを処理している稼動中であるかスタンバイ状態であるかを問わず漏洩検査を実行することができる。
【0034】
漏洩検査中の状態における各構成機器の状態は表1の「漏洩検査時」の欄に示す通りであり、ガスの流れは図3の灰色矢印で示す通りである。
漏洩検査中は、生産中には閉じていたサンプリング仕切弁15が開けられ、半導体製造装置1からか排出された排気ガスの一部は、サンプリング仕切弁15を通過して、漏洩検査ライン13に流れる。残りの排気ガスは、排ガス処理装置9に流れる。
漏洩検査ライン13に流れた排気ガスは、特殊ガス除去筒19を通過し、排気ガスに含まれる特殊ガスが除去される。特殊ガスが除去された排気ガスは、酸素濃度計17に流れる。漏洩が無ければ、排気ガス中に空気が導入されることがないので、酸素濃度計17は、酸素濃度0%を示す。一方、漏洩が発生している場合、酸素濃度計17が示す酸素濃度は、0%よりも大きくなる。
【0035】
<パージ時の状態>
漏洩検査の後にパージ処理を実行する。
パージ開始時の各構成機器の状態は表1の「パージ開始時」の欄に示す通りである。以下、漏洩検査の状態から行うパージ処理の手順について、図4のフロー図に基づいて説明する。
【0036】
不活性ガス導入バルブ25を開ける(S1)。これによって、不活性ガスが酸素濃度計17に流れる。
次に、サンプリング仕切弁15を閉じる(S3)。これによって、排気ガスラインからのガス流入が止まる。
この状態を所定時間保持する(S5)。これによって、漏洩検査ライン13に不活性ガスが所定時間流れ、特殊ガスを除去することができる。所定時間は、配管や特殊ガス除去筒19等の形状や容積を考慮して決めることができる。
【0037】
所定時間経過後、サンプリング系統切替三方弁21を、サンプリング側から環境Airに切り替える(S7)。これによって、不活性ガスは、漏洩検査ライン13におけるサンプリング仕切弁15とサンプリング系統切替三方弁21との間に供給される。このとき、サンプリング仕切弁15とサンプリング系統切替三方弁21との間が所定の圧力まで加圧される(S9)。圧力は、図示しない圧力計で測定される。所定の圧力は、配管や特殊ガス除去筒19等の耐圧性能を考慮して決めることができる。
【0038】
所定の圧力に到達すると、不活性ガス導入バルブ25を閉じる(S11)。これによって、サンプリング仕切弁15とサンプリング系統切替三方弁21との間が加圧された状態で保持される。その結果、漏洩検査ライン13に外部から空気が流入しにくくなる。これにより、吸着材と空気中の水分が反応して、吸着材の寿命が低下することを防ぐことができる。
【0039】
<酸素濃度計の劣化検査方法>
酸素濃度計の劣化検査方法について、酸素濃度の上限値を計測する観点からの劣化検査方法(以下、「上限を検査する方法」)と、酸素濃度の下限値を計測する観点からの劣化検査方法(以下、「下限を検査する方法」)について説明する。
【0040】
『上限を検査する方法』
前述したように、生産中の状態で酸素濃度計17に空気が流れるので、酸素濃度計17の測定結果が所定の濃度であること(例えば、21vol%程度)であることを監視する。酸素濃度計17の応答時間を経過しても所定濃度にならない場合、酸素濃度計17が劣化していることを検知できる。誤差が所定の値を超える場合は、空気でスパン校正をすることができる。
【0041】
本システムの酸素濃度計17は、漏洩検査を目的とするため、空気の酸素濃度21vol%程度よりも低い酸素濃度領域を監視している。このため、低い酸素濃度領域の誤差を確認することが望ましい。以下、この方法について説明する。
不活性ガス導入弁とドライエアー導入バルブ27の開閉度を調整して、窒素ガスとドライエアーを混合することにより、任意の酸素濃度を有するガスを、酸素濃度計17に供給することができる。これにより、低い酸素濃度領域の誤差を確認することができる。誤差が所定の値を超える場合は、任意の酸素濃度のガスでスパン校正をすることができる。低い酸素濃度でスパン校正をすることにより、漏洩検査に適した濃度領域を精度よく補正をすることができる。
【0042】
『下限を検査する方法』
パージ処理におけるのステップ(S3)の状態において、酸素濃度計17には、不活性ガスが流れる。このとき、酸素濃度計17の測定結果が0vol%であることを確認する。酸素濃度計17の応答時間を経過しても、0vol%とならない場合、サンプリング系統のリークまたは酸素濃度計17が劣化していることを検知できる。誤差が所定の値を超える場合は、不活性ガスでスパン校正をすることができる。
【0043】
以上のように、本実施の形態に係る排気ガス除害システム51においては、排気ガスに含まれる特殊ガスが、特殊ガス除去筒19を通過することにより、除去される。このため、酸素濃度計17が、特殊ガスにより損傷を受けにくくなる。このため、長期間かつ精度よく漏洩検査を行うことができる。
また、特殊ガス除去筒19の吸着材がウエハ処置中に排出される特殊ガスを吸着できるので、半導体製造装置1の稼働を停止することなく、漏洩検査を行うことができる。
【0044】
また、漏洩検査をしない間に、空気を酸素濃度計17に流すことができ、酸素濃度計17を常に運転させることができるため、応答性よく漏洩検査できる。また、空気の酸素濃度を測定することにより、酸素濃度計17の測定誤差を監視することができ、酸素濃度計17の劣化を検知できる。
【0045】
また、不活性ガスで漏洩検査ライン13をパージすることでき、特殊ガスが漏洩検査ライン13に残留することを抑制できる。特殊ガスは、微量であっても配管等を腐食させる原因となるが、パージをすることで配管等の劣化を防ぐことができる。
また、不活性ガスの酸素濃度を測定することで、酸素濃度計17の誤差を監視することができ、酸素濃度計17の劣化を検知できる。
【0046】
不活性ガスをドライエアーで希釈することにより、不活性ガス中の酸素濃度を調整することができる。これにより、酸素濃度が低い領域でも、酸素濃度計17の誤差を見ることができる。漏洩検査は、微量のリークを検知するために、低酸素濃度領域で実施されることが多い。したがって、低酸素濃度領域で測定誤差を確認できることは、精度よく微量リークを検知することができる利点がある。
【符号の説明】
【0047】
1 半導体製造装置
2 排気ライン
3 アイソレーションバルブ
5 真空ポンプ
7 排気切替三方弁
9 排ガス処理装置
11 排気ダクト
13 漏洩検査ライン
15 サンプリング仕切弁
17 酸素濃度計
19 特殊ガス除去筒
21 サンプリング系統切替三方弁
23 サンプリングポンプ
25 不活性ガス導入バルブ
27 ドライエアー導入バルブ
50 排ガス除害システム(想定例)
51 排ガス除害システム(実施の形態)
図1
図2
図3
図4
図5