(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-11
(45)【発行日】2024-06-19
(54)【発明の名称】測定される入射瞳内で照明光によって照明されたときの光学系の結像品質を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240612BHJP
G01M 11/02 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 501
G01M11/02 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022088414
(22)【出願日】2022-05-31
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】10 2021 205 541.9
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】クラウス グウォッシュ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス コッホ
(72)【発明者】
【氏名】ラース ストッペ
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル デッカー
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス フィッシャー
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-055882(JP,A)
【文献】国際公開第03/021352(WO,A1)
【文献】特開2020-060470(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0357758(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
G01M 11/00-11/08
G02B 9/00-17/08、21/02-21/04
27/00-30/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定される入射瞳(11;25)内および/または測定される射出瞳内で照明光(1)によって照明されたときの光学系(13)の結像品質を決定するための方法であって、
前記光学系(13)の物体平面(4)に試験構造体(5)を配置するステップと、
前記試験構造体(5)を前記照明光(1)を用いて照明するための照明角度分布を指定するステップと、
前記物体平面(4)に対する前記試験構造体(5)の異なる距離位置(z
m)において、前記指定された照明角度分布で前記試験構造体(5)を照明するステップと、
前記試験構造体(5)の測定された空間像を決定するために、空間分解検出装置(14)を使用して、前記光学系(13)の像平面(15)における前記照明光(1)の強度I(x,y,z
m)を測定するステップであって、前記照明光が、各距離位置(z
m)において前記試験構造体(5)を結像するときに前記光学系(13)によって案内される、ステップと、
前記測定された空間像をシミュレートされた空間像と比較し、前記測定された空間像と前記シミュレートされた空間像との間の差が最小化されるまで、前記シミュレートされた空間像を記述するための関数セットのフィッティングパラメータを適合させるステップと、
前記測定された空間像と前記シミュレートされた空間像との間の前記最小化された差の結果に基づいて前記光学系(13)の波面を決定するステップと、
前記指定された照明角度分布が、測定される前記瞳(11;25)内のサブアパーチャ(10
i)に対応するステップと、
測定される前記瞳(11;25)において前記既に測定されたサブアパーチャ(10
i)に対してシフトさせた、さらなる指定されたサブアパーチャ(10
i+1)を使用して、「指定する」ステップから「決定する」ステップまでを繰り返すステップと、
測定される前記瞳(11;25)全体にわたって前記測定されたサブアパーチャ(10
i)について得られた前記結果を合成することによって、前記光学系の前記波面を決定するステップと、
を含
み、
前記光学系(13)の前記結像品質を前記試験構造体に依存せずに決定するために、前記試験構造体(5)による前記波面への影響に対する試験構造体寄与(P)を排除する、方法。
【請求項2】
前記瞳(11;25)が前記サブアパーチャ(10
i)によって走査される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試験構造体寄与が、正確に1つの指定されたサブアパーチャ(10
i)に対して決定され、次いで、この寄与が、前記さらなる指定されたサブアパーチャ(10
i+1、10
i+2、…)についての前記光学系の前記結像品質の前記試験構造体に依存しない決定にも使用される、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記試験構造体寄与を排除しながら前記結像品質を決定するために、線形連立方程式が解かれ、
前記試験構造体寄与の前記排除前の波面決定のデータ(M)、
前記試験構造体の寄与(P)、および
変換行列(T)
が前記線形連立方程式に含まれる、
請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記試験構造体寄与の前記排除前の前記波面決定の前記データ(M)、および/または
前記試験構造体の前記寄与(P)、および/または
前記変換行列(T)
の、決定される解空間におけるそれぞれの座標(kx,ky)への依存性が、基底関数への分解によって記述される、
請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記試験構造体(5)としてピンホールが使用される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記ピンホールが、楕円形エッジを有する、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
測定される前記瞳(11;25)が楕円形エッジを有し、前記波面の前記決定内に、互いに垂直な瞳座標(kx,ky)において等距離である座標格子上の測定される前記瞳(11;25)の少なくとも断面記述のための瞳関数の表現と、前記瞳(11;25)の楕円形エッジの主軸比に従ってスケーリングされたパラメータ化された基底関数と、が存在する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
測定される前記瞳(11;25)が楕円形エッジを有し、前記波面の前記決定内に、前記瞳(11;25)の楕円形エッジの主軸比に従って、互いに垂直な瞳座標(kx,ky)においてスケーリングされた座標格子上の測定される前記瞳(11;25)の少なくとも断面記述のための瞳関数の表現と、均一にスケーリングされたパラメータ化された基底関数と、が存在する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
計測システム(2)であって、
試験構造体(5)を照明するための照明光学ユニット(7)と、結像光学ユニット(13)であって、前記結像光学ユニット(13)の前記結像品質が決定されることが意図されている、前記試験構造体(5)を空間分解検出装置(14)に向けて結像するための、結像光学ユニット(13)と、
前記計測システム(2)に、
前記光学系(13)の物体平面(4)に配置された試験構造体(5)を前記照明光(1)を用いて照明するための照明角度分布を指定し、
前記物体平面(4)に対する前記試験構造体(5)の異なる距離位置(z
m)において、前記指定された照明角度分布で前記試験構造体(5)を照明し、
前記試験構造体(5)の測定された空間像を決定するために、空間分解検出装置(14)を使用して、前記光学系(13)の像平面(15)における前記照明光(1)の強度I(x,y,z
m)を測定し、ここで、前記照明光が、各距離位置(z
m)において前記試験構造体(5)を結像するときに前記光学系(13)によって案内され、
前記測定された空間像をシミュレートされた空間像と比較し、前記測定された空間像と前記シミュレートされた空間像との間の差が最小化されるまで、前記シミュレートされた空間像を記述するための関数セットのフィッティングパラメータを適合させ、
前記測定された空間像と前記シミュレートされた空間像との間の前記最小化された差の結果に基づいて前記光学系(13)の波面を決定し、
前記指定された照明角度分布が、測定される瞳(11;25)内のサブアパーチャ(10
i)に対応し、
測定される前記瞳(11;25)において前記既に測定されたサブアパーチャ(10
i)に対してシフトさせた、さらなる指定されたサブアパーチャ(10
i+1)を使用して、前記光学系(13)の物体平面(4)に配置された試験構造体(5)を前記照明光(1)を用いて照明するための照明角度分布を指定することから、前記測定された空間像と前記シミュレートされた空間像との間の前記最小化された差の結果に基づいて前記光学系(13)の波面を決定することまでを繰り返し、
測定される前記瞳(11;25)全体にわたって前記測定されたサブアパーチャ(10
i)について得られた前記結果を合成することによって、前記光学系の前記波面を決定
し、
前記光学系(13)の前記結像品質を前記試験構造体に依存せずに決定するために、前記試験構造体(5)による前記波面への影響に対する試験構造体寄与(P)を排除する、
ことをさせるように構成され
た制御部と、
照明光学ユニット瞳面(9)に配置され、測定される前記瞳において照明サブアパーチャを画定する、照明光学ユニット(7)のサブアパーチャ絞り(8)
と、
を含み、
前記サブアパーチャ絞り(8)は、変位駆動部(8a)によって、前記照明光学ユニット瞳面(9)内で変位可能である計測システム(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ドイツ特許出願第102021205541.9号の内容が参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は、測定される入射瞳内で照明光によって照明されたときの光学系の結像品質を決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィマスクの空間像を3次元で測定するための計測システムは、国際公開第2016/012426A1号から知られている。ドイツ特許第102013219524A1号には、光学系の結像品質を決定するための装置および方法、ならびに光学系が記載されている。ドイツ特許第102013219524A1号には、ピンホールの結像に基づいて波面を決定するための位相回復法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/012426A1号
【文献】ドイツ特許第102013219524A1号
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、光学系の結像品質を決定するための方法を、測定される瞳に関連して可能な限り柔軟に設計することである。
【0006】
この目的は、当初請求項1に明記された特徴を有する決定方法によって本発明に従って達成される。
【0007】
本発明によると、空間像測定に基づく結像品質の決定には、単一の測定中にその全体が照明されるように測定される瞳が必要でないことが認識された。むしろ、測定される瞳内のサブアパーチャを使用して順次測定を行い次いで、様々なサブアパーチャによって得られた測定結果を合成することが可能である。測定される瞳内のサブアパーチャ上の指定された照明角度分布の場合、適切なサブアパーチャ絞りを光学系の投影光学ユニットの入射瞳に導入することができ、指定された瞳座標に従った所望の照明方向が得られるように、照明光ビーム経路に対して横方向に位置決めすることができる。サブアパーチャによる適切なカバレッジによって、測定される瞳の従来にはない形状を記録し、測定することも可能である。測定される瞳は、楕円形瞳、円形瞳、または自由形状によって画定された瞳とすることができる。空間分解検出装置の画素分解能は、測定される瞳の開口数に適合させることができる。より高い開口数に対しては、検出装置のより大きな画素分解能が選択される。各サブアパーチャ測定において、このサブアパーチャにおける光学系の波面は、文献、例えばドイツ特許第102013219524A1号から原理的に知られている位相回復法を用いて推定することができる。差の決定を最適化するために、投影法(誤差低減アルゴリズム、Gerchberg-Saxton法、IFTA法)および/または従来の反復最適化法(勾配降下法、最小二乗法、減衰最小二乗法、遺伝的探索法、シンプレックス、Chambolle-Pock最適化、逆伝播法)および/または直接反転法(Extended Nijboer Zernike Decomposition(S.Van Haver,The Extended Nijboer-Zernike Diffraction Theory and its Applications,2010,http://resolver.tudelft.nl/uuid:8d96ba75-24da-4e31-a750-1bc348155061)、データベースに基づく方法、機械学習法)を使用することができる。
【0008】
当初請求項2に記載のサブアパーチャによる瞳の走査は、十分に比較可能な方法手順を容易にする。サブアパーチャによる瞳の走査は、正確に1ラインのサブアパーチャによって実施することができる。あるいは、複数のサブアパーチャラインにわたる走査も可能である。走査は、照明光の主光線極角が一定のままであるようなものとすることができる。この場合、試験構造体は常に同じ主光線入射角で照明される。一変形例では、主光線極角がそれぞれの場合においてライン内で一定で、主光線極角がライン間で変化する複数のラインでもマルチライン走査が可能である。
【0009】
当初請求項3に記載の試験構造体寄与の排除は、結像品質の決定を系統的に歪曲する試験構造体寄与を排除することによって、方法の結果を改善する。
【0010】
当初請求項4に記載の方法では、試験構造体寄与の決定に関連付けられた費用が低減される。正確に1つの指定されたサブアパーチャに対して一旦決定された試験構造体寄与は、他のサブアパーチャの場合に試験構造体寄与を排除する目的で、例えば、それぞれのサブアパーチャに割り当てられた照明角度、特に主光線方位角に従って試験構造体寄与を回転させることによって、後処理または変換することができる。
【0011】
当初請求項5に記載の方法は、実際にその価値が証明されている。本方法の指数は、シフト回転法として知られている。このようなシフト回転法の例は、D.Suらによる専門論文「Absolute surface figure testing by shift-rotation method using Zernike polynomials」(Optics Letters Vol.37,No.15,3198-3200,2012,https://doi.org/10.1364/OL.37.003198)、Y.Liuらによる「Extended shift-rotation method for absolute interferometric testing of a spherical surface with pixel-level spatial resolution」(Applied Optics Vol.56,No.16,2017,https://doi.org/10.1364/AO.56.004886,DE 10 2013 226 668 A1 and US5982490A)に見出すことができる。
【0012】
当初請求項6に記載の基底関数への分解は、実際にその価値が証明されている。以下を基底関数として使用することができる。ゼルニケ多項式、Bhatia-Wolf多項式、ベッセル関数、ラプラス方程式の解、直交化された局所的に分布した狭い指数関数および/またはガウス関数(任意で格子上に分布する)、直交化された局所的に分布したスプライン多項式(任意で格子上に分布する)、ならびに直交化された基底関数の混合。例として、このような直交化は、Gram-Schmidt直交化法(Korn and Korn,"Mathematical Handbook for Scientists and Engineers",McGraw-Hill,1968;D.Malacara,"Optical Shop Testing",Wiley-Interscience,1992;http://de.wikipedia.org/wiki/Schmidtsches_Orthonormalisierungsverfahren)を用いて実施することができる。
【0013】
当初請求項7に記載の試験構造体としてのピンホールは、実際にその価値が証明されている。
【0014】
当初請求項8に記載の楕円形ピンホールは、アナモルフィック結像系、すなわち互いに垂直な平面において異なる結像スケールを有する結像系の場合に収差を決定するのに特に適していることが分かった。当初請求項8に記載の楕円形ピンホールはまた、楕円形状の入射瞳を有するアイソモルフィック結像系の場合に収差を決定するのに特に適していることが分かった。
【0015】
当初請求項9および10に記載の瞳関数の表現は、本決定方法において実施するのに特に適していることが分かった。
【0016】
当初請求項11に記載の測定システムの利点は、本決定方法を参照して上記で既に説明したものに対応する。
【0017】
本発明のさらなる目的は、例えば従来技術による位相回復法が、測定される楕円形瞳に対しても利用可能となるように、冒頭で記載したタイプの計測システムを開発することである。
【0018】
本発明によると、本目的は、当初請求項12に明記された特徴を有する計測システムによって達成される。
【0019】
本発明によると、楕円形瞳を、計測システムの瞳面に配置された楕円形エッジを有する絞りを使用することによって直接測定することができ、位相回復法によって波面を決定するために使用することができることが認識された。このようにして、このような計測システムは、特に、測定される入射瞳内および/または測定される射出瞳内で照明光を用いて照明されたときの光学系の結像品質を決定するために使用することができる。位相回復法では、上記で説明した決定方法に従って、スケーリングされた様式でパラメータ化された基底関数、特に圧縮ゼルニケ多項式ならびに/またはスケーリングされた座標格子および均一にスケーリングされたパラメータ化された基底関数を使用することができる。
【0020】
当初請求項13に記載の計測システムの利点は、決定方法に関して上記で既に説明したものに対応する。
[当初請求項1]
測定される入射瞳(11;25)内および/または測定される射出瞳内で照明光(1)によって照明されたときの光学系(13)の結像品質を決定するための方法であって、
前記光学系(13)の物体平面(4)に試験構造体(5)を配置するステップと、
前記試験構造体(5)を前記照明光(1)を用いて照明するための照明角度分布を指定するステップと、
前記物体平面(4)に対する前記試験構造体(5)の異なる距離位置(zm)において、前記指定された照明角度分布で前記試験構造体(5)を照明するステップと、
前記試験構造体(5)の測定された空間像を決定するために、空間分解検出装置(14)を使用して、前記光学系(13)の像平面(15)における前記照明光(1)の強度I(x,y,zm)を測定するステップであって、前記照明光が、各距離位置(zm)において前記試験構造体(5)を結像するときに前記光学系(13)によって案内される、ステップと、
前記測定された空間像をシミュレートされた空間像と比較し、前記測定された空間像と前記シミュレートされた空間像との間の差が最小化されるまで、前記シミュレートされた空間像を記述するための関数セットのフィッティングパラメータを適合させるステップと、
前記測定された空間像と前記シミュレートされた空間像との間の前記最小化された差の結果に基づいて前記光学系(13)の波面を決定するステップと、
前記指定された照明角度分布が、測定される前記瞳(11;25)内のサブアパーチャ(10i)に対応するステップと、
測定される前記瞳(11;25)において前記既に測定されたサブアパーチャ(10i)に対してシフトさせた、さらなる指定されたサブアパーチャ(10i+1)を使用して、「指定する」ステップから「決定する」ステップまでを繰り返すステップと、
測定される前記瞳(11;25)全体にわたって前記測定されたサブアパーチャ(10i)について得られた前記結果を合成することによって、前記光学系の前記波面を決定するステップと、
を含む方法。
[当初請求項2]
前記瞳(11;25)が前記サブアパーチャ(10i)によって走査される、当初請求項1に記載の方法。
[当初請求項3]
前記光学系(13)の前記結像品質を前記試験構造体に依存せずに決定するために、前記試験構造体(5)による前記波面への影響に対する試験構造体寄与(P)を排除することを特徴とする、当初請求項1または2に記載の方法。
[当初請求項4]
前記試験構造体寄与が、正確に1つの指定されたサブアパーチャ(10i)に対して決定され、次いで、この寄与が、前記さらなるサブアパーチャ(10i+1、10i+2、…)についての前記光学系の前記結像品質の前記試験構造体に依存しない決定にも使用される、当初請求項3に記載の方法。
[当初請求項5]
前記試験構造体寄与を排除しながら前記結像品質を決定するために、線形連立方程式が解かれ、
前記試験構造体寄与の前記排除前の波面決定のデータ(M)、
前記試験構造体の寄与(P)、および
変換行列(T)
が前記線形連立方程式に含まれる、
当初請求項3または4に記載の方法。
[当初請求項6]
前記試験構造体寄与の前記排除前の前記波面決定の前記データ(M)、および/または
前記試験構造体の前記寄与(P)、および/または
前記変換行列(T)
の、決定される解空間におけるそれぞれの座標(kx,ky)への依存性が、基底関数への分解によって記述される、
当初請求項5に記載の方法。
[当初請求項7]
前記試験構造体(5)としてピンホールが使用される、当初請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
[当初請求項8]
前記ピンホールが、楕円形エッジを有する、当初請求項7に記載の方法。
[当初請求項9]
決定される前記瞳(11;25)が楕円形エッジを有し、前記波面の前記決定内に、互いに垂直な瞳座標(kx,ky)において等距離である座標格子上の決定される前記瞳(11;25)の少なくとも断面記述のための瞳関数の表現と、前記瞳(11;25)の楕円形エッジの主軸比に従ってスケーリングされたパラメータ化された基底関数と、が存在する、当初請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
[当初請求項10]
決定される前記瞳(11;25)が楕円形エッジを有し、前記波面の前記決定内に、前記瞳(11;25)の楕円形エッジの主軸比に従って、互いに垂直な瞳座標(kx,ky)においてスケーリングされた座標格子上の決定される前記瞳(11;25)の前記少なくとも断面記述のための瞳関数の表現と、均一にスケーリングされたパラメータ化された基底関数と、が存在する、当初請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
[当初請求項11]
試験構造体(5)を照明するための照明光学ユニット(7)と、結像光学ユニット(13)であって、前記結像光学ユニット(13)の前記結像品質が決定されることが意図されている、前記試験構造体(5)を空間分解検出装置(14)に向けて結像するための、結像光学ユニット(13)と、を有する、当初請求項1から10のいずれか1項に記載の方法を実行するための計測システム(2)。
[当初請求項12]
試験構造体(5)のためのホルダ(18)を有し、
前記ホルダ(18)によって指定された物体平面(4)の前記試験構造体(5)を照明するための照明光学ユニット(7)を有し、
空間分解検出装置(14)を有し、
前記試験構造体(5)を前記検出装置(14)に向けて像平面(15)に結像するための結像光学ユニット(13)を有する、
計測システム(2)において、
楕円形エッジを有する開口を有する絞り(8;10i;11a)が照明瞳面(9)および/または前記結像光学ユニット(13)の入射瞳(11a)に配置されていることを特徴とする、
計測システム(2)。
[当初請求項13]
当初請求項1から10のいずれか1項に記載の方法を実行するための当初請求項12に記載の計測システム。
【0021】
本発明の例示的な実施形態は、図面を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】両方ともそれぞれ非常に概略的に表されている照明光学ユニットおよび結像光学ユニットを含む、測定される入射瞳内で照明光を用いて照明されたときの光学系の結像品質を決定するための計測システムの、入射面に垂直な視野方向での平面図を非常に概略的に示す図である。
【
図2】
図1による計測システムにおいて結像される反射物体として使用するためのEUVピンホールの形態の試験構造体を拡大斜視図で示す図である。
【
図3】
図2による試験構造体を結像する際の計測システムの結像光学ユニットの像平面における強度測定の結果を、物体平面(z焦点スタック)に対する試験構造体の配置面の異なる位置について示す図である。
【
図4】測定される光学系の測定される入射瞳を示す図であり、前記入射瞳は、測定される入射瞳の1ライン走査のために、それぞれが円形エッジを有するサブ瞳として具現化された1組のサブアパーチャと共に、楕円形状の入射瞳として具現化されており、サブアパーチャのそれぞれは、照明光を用いて試験構造体を照明するための指定された照明角度分布に対応し、試験構造体は、すべてのサブアパーチャの重ね合わせに対応する照明角度分布で順次照明される。
【
図5】
図4と同様の表現で、サブアパーチャを使用して測定される入射瞳の走査の変形例であり、走査は、試験構造体の照明の主光線極角がすべてのサブアパーチャに対して一定のままであるように実施される。
【
図6】
図4および
図5と同様の表現で、サブアパーチャを使用して測定される入射瞳のマルチラインデカルト走査のさらなる変形例である。
【
図7】
図5による走査の選択されたサブアパーチャについて、結像光学ユニットの瞳面における位相寄与として表された波面測定結果を等高線図で示す図である。
【
図8】
図5による走査の選択されたサブアパーチャについて、結像光学ユニットの瞳面における位相寄与として表された波面測定結果を等高線図で示す図である。
【
図9】
図5による走査の選択されたサブアパーチャについて、結像光学ユニットの瞳面における位相寄与として表された波面測定結果を等高線図で示す図である。
【
図10】
図5による走査の選択されたサブアパーチャについて、結像光学ユニットの瞳面における位相寄与として表された波面測定結果を等高線図で示す図である。
【
図11】
図5による走査の選択されたサブアパーチャについて、結像光学ユニットの瞳面における位相寄与として表された波面測定結果を等高線図で示す図である。
【
図12】
図7による波面測定結果に対する分離された試験構造体の寄与を示す図であり、再度等高線図を用いて表されている。
【
図13】
図8による波面測定結果に対する分離された試験構造体の寄与を示す図であり、再度等高線図を用いて表されている。
【
図14】
図9による波面測定結果に対する分離された試験構造体の寄与を示す図であり、再度等高線図を用いて表されている。
【
図15】
図10による波面測定結果に対する分離された試験構造体の寄与を示す図であり、再度等高線図を用いて表されている。
【
図16】
図11による波面測定結果に対する分離された試験構造体の寄与を示す図であり、再度等高線図を用いて表されている。
【
図17】
図7による元の波面測定結果から
図12による試験構造体寄与分を減算した後、すなわち試験構造体寄与分を排除した後の、
図7によるサブアパーチャに対応する測定される入射瞳のセクションにおける波面測定結果を示す図であり、再度等高線図を用いて表されている。
【
図18】
図8による元の波面測定結果から
図13による試験構造体寄与分を減算した後、すなわち試験構造体寄与分を排除した後の、
図8によるサブアパーチャに対応する測定される入射瞳のセクションにおける波面測定結果を示す図であり、再度等高線図を用いて表されている。
【
図19】
図9による元の波面測定結果から
図14による試験構造体寄与分を減算した後、すなわち試験構造体寄与分を排除した後の、
図9によるサブアパーチャに対応する測定される入射瞳のセクションにおける波面測定結果を示す図であり、再度等高線図を用いて表されている。
【
図20】
図10による元の波面測定結果から
図15による試験構造体寄与分を減算した後、すなわち試験構造体寄与分を排除した後の、
図10によるサブアパーチャに対応する測定される入射瞳のセクションにおける波面測定結果を示す図であり、再度等高線図を用いて表されている。
【
図21】
図11による元の波面測定結果から
図16による試験構造体寄与分を減算した後、すなわち試験構造体寄与分を排除した後の、
図11によるサブアパーチャに対応する測定される入射瞳のセクションにおける波面測定結果を示す図であり、再度等高線図を用いて表されている。
【
図22】
図17~
図21による波面測定結果のサブアパーチャ寄与の重ね合わせを示す図である。
【
図23】
図22による波面測定結果を測定される入射瞳に制限したもの、すなわち、測定される光学系の波面の位相を入射瞳内で測定した結果を示す図である。
【
図24】
図1による計測システムの代わりに計測システムのさらなる実施形態において使用され得る複数のレンズを有する結像系の表現を、結像光学ユニットとの関係であまり概略的でなく示す図であり、結像系は、測定されるフォーカススタックの物体平面と像平面との間に表されている。
【
図25】アナモルフィック光学系の測定される射出瞳における位相分布の一例を、圧縮ゼルニケ多項式に対応する楕円率に従ってパラメータ化された楕円アポダイゼーションにより正方格子上に表現した図である。
【
図26】楕円形瞳マスクの半長軸および半短軸に沿った
図25による瞳関数の断面を示す図である。
【
図27】従来の非圧縮ゼルニケ多項式による瞳関数の円形アポダイゼーションおよびパラメータ化により、楕円射出瞳の主軸比に一致させた非正方形瞳格子上に表された
図25による瞳関数を、
図25と同様の表現で示す図である。
【
図28】2つの直交する主軸に沿った
図27による瞳関数の2つの断面を、
図26と同様の表現で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、位置関係の表現を容易にするために、デカルトxyz座標系が使用される。
図1において、x軸は、図面の平面に対して垂直に、図面の平面から外に延びている。y軸は、
図1において右に向かって延びている。
図1において、z軸は、上に向かって延びている。
【0024】
子午線断面に対応する図において、
図1は、測定される入射瞳11内で照明光1によって照明されたときの光学系の結像品質を決定するための計測システム2におけるEUV照明光または結像光1のビーム経路を示す。この場合、物体平面4の物体視野3内に配置されたレチクルまたはリソグラフィマスクの形態の試験構造体5(
図2参照)が、EUV照明光1を使用して結像される。以下では、試験構造体5を物体または試料とも呼ぶ。計測システム2は、3次元(3D)空間像を解析するために使用される(空間像計測システム)。用途には、リソグラフィマスクの空間像を再現することが含まれ、これは、空間像が生産用投影露光装置、例えばスキャナにおいても同じように見えるためである。この目的のために、特に、計測システム2自体の結像品質を測定し、任意で調整することが必要である。その結果、空間像の解析は、計測システム2の投影光学ユニットの結像品質を決定するのに役立ち、さもなければ特に投影露光装置内の投影光学ユニットの結像品質を決定するのに役立つことができる。このようなシステムは、国際公開第2016/012426A1号、米国特許出願公開第2013/0063716A1号(同
図3参照)、ドイツ特許第10220815A1号(同
図9参照)、ドイツ特許第10220816A1号(同
図2参照)、および米国特許出願公開第2013/0083321A1号から知られている。
【0025】
照明光1は、物体5で反射される。照明光1の入射面は、中心照明の場合にはyz平面に平行である(kx=0、例えば
図4に関する以下の説明を参照)。
【0026】
EUV照明光1は、EUV光源6によって生成される。光源6は、レーザプラズマ源(LPP;laser produced plasma)または放電源(DPP;discharge produced plasma)とすることができる。原理的には、シンクロトロンベースの光源、例えば自由電子レーザ(FEL)を使用することもできる。EUV光源の使用波長は、5nm~30nmの範囲であってもよい。原理的には、計測システム2の変形例の場合、光源6の代わりに、別の使用光波長用の光源、例えば193nmの使用波長用の光源を使用してもよい。
【0027】
計測システム2の実施形態に応じて、後者は、反射性さもなければ透過性の物体5に使用することができる。透過性物体の一例は、ピンホール開孔である。
【0028】
計測システム2の照明光学ユニット7は、光源6と物体5との間に配置される。照明光学ユニット7は、物体視野3にわたって規定された照明強度分布で、同時に物体視野3の視野点が照明される規定された照明角度分布で検査される物体5を照明する働きをする。この照明角度分布は、以下では照明サブアパーチャとも呼ばれる。
【0029】
照明サブアパーチャは、照明光学ユニット瞳面9に配置された照明光学ユニット7のシグマサブアパーチャ絞り8によって画定される。代替的または追加的に、対応するサブアパーチャ絞りは、計測システム2の結像光学ユニット内に存在してもよく、これについては以下でさらに説明する。シグマサブアパーチャ絞り8は、入射する照明光1のビームをエッジで制限する。代替的にまたは追加的に、シグマサブアパーチャ絞り8および/または結像光学ユニットの絞りは、内側から照明光ビームを遮ることもでき、すなわち暗絞り(obscuration stop)として作用することもできる。対応する絞りは、それに応じて内側でビームを遮る内部絞り本体を有することができ、前記絞り本体は、複数のウェブによって、例えば4つのウェブによって外部絞り支持体に接続されている。シグマサブアパーチャ絞り8は、変位駆動部8aによって、照明光学ユニット瞳面9内で、すなわちxy平面と平行に、規定された様式で変位可能である。
【0030】
図4は、測定される光学系の測定される楕円形状の入射瞳11を走査する複数のこのようなサブアパーチャ10
i(i=1~5)を示す。楕円形状の入射瞳11は、x軸に平行な長半軸とy軸に平行な短半軸との比が2:1である。10:1~1.1:1の範囲にある楕円エッジ輪郭10の他の軸比、例えば1.5:1、1.6:1、2.5:1、3:1、4:1、5:1または8:1も可能である。
【0031】
物体5で反射した後、照明および結像光1は、計測システム2の結像光学ユニットまたは投影光学ユニット13に入射する。照明サブアパーチャと類似した様式で、
図1の投影光学ユニット13の入射瞳11にNAサブアパーチャ絞り11aによって指定される投影光学ユニットサブアパーチャがある。NAサブアパーチャ絞り11aは、投影光学ユニット瞳面11内で、すなわちxy平面と平行に、変位駆動部11bによって、規定された様式で変位可能である。典型的には、シグマサブアパーチャ絞りおよびNAサブアパーチャ絞りは、互いに対して位置合わせされ、照明光1の中心光線と試験構造体5での反射が両方の絞りに中心で当たるようにしている。シグマサブアパーチャ絞りおよびNAサブアパーチャ絞りは、互いに対して中心にくるように調整することができる。NAサブアパーチャ絞りによって画定される投影光学ユニット13の入射瞳11の領域は、サブアパーチャと呼ばれる。
【0032】
測定される結像光学ユニット13は、物体5を計測システム2の空間分解検出装置14に向けて結像させる役割を果たす。検出装置14は、例えばCCD検出器として設計される。CMOS検出器を使用することもできる。検出装置14は、投影光学ユニット13の像平面15に配置されている。
【0033】
検出装置14は、デジタル画像処理装置17に信号接続されている。
【0034】
xy平面における検出装置14の画素空間分解能は、測定される入射瞳11の座標方向xおよびyの開口数(NAx、NAy)に反比例するように指定することができる。この画素空間分解能は、x座標方向では、通常λ/2NAx未満であり、y座標方向では、通常λ/2NAy未満である。ここで、λは照明光1の波長である。検出装置14の画素空間分解能は、NAx、NAyとは無関係に、正方形の画素寸法で実施することもできる。
【0035】
検出装置14の空間分解能は、リサンプリングによって向上または減少させることができる。x方向およびy方向で寸法が異なる画素を有する検出装置も可能である。
【0036】
物体5は、物体ホルダまたはホルダ18によって担持される。ホルダ18は、変位駆動部19によって、一方ではxy平面に平行に、他方ではこの平面に垂直に、すなわちz方向に変位させることができる。変位駆動部19は、計測システム2の動作全体と同様に、中央制御装置20によって制御され、中央制御装置20は、これ以上具体的には示されない仕方で、制御される構成要素と信号接続している。
【0037】
計測システム2の光学セットアップは、半導体部品の投影リソグラフィ製造中の物体5の投影露光の過程において、照明および結像の可能な限り最も正確なエミュレーションに役立つ。
【0038】
図1は、物体平面4の領域における試験構造体5の様々な可能な配置面を、それぞれの場合で破線を用いて示している。計測システム2の動作中、試験構造体5は、サブアパーチャ10
iによってそれぞれ指定された照明角度分布を使用して、物体平面4に対する試験構造体5の異なる距離位置z
mで照明され、強度I(x,y,z
m)が、像平面15においてそれぞれの距離位置z
mに対して空間的に分解されて記録される。この測定結果I(x,y,z
m)は、空間像とも呼ばれる。
【0039】
焦点面zmの数は、2~20、例えば10~15とすることができる。この場合、数レイリー単位(NA/λ2)にわたるz方向の総変位が存在する。
【0040】
図1には、挿入図として、円形または楕円形の試験構造体の形態であってもよい試験構造体5のxy平面図が示されている。
【0041】
入射瞳11に加えて、
図1には、投影光学ユニット13の射出瞳21もやはり概略的に表されている。
【0042】
図1の下は、検出装置14の3つの測定結果を再度xy平面図で示し、中央の測定結果は、物体平面4に配置された場合の試験構造体5の画像表現を示し、他の2つの測定結果は、試験構造体5が物体平面4のz座標と比較して正のz方向に1回、負のz方向に1回変位した画像表現を示す。試験構造体5の空間像は、それぞれのz座標に割り当てられた測定結果の総和から生じる。
【0043】
図2は、反射型ピンホールとして具現化された試験構造体5の詳細を示す。照明光1の主光線が試験構造体5で反射する際の経路が概略的に示されている。照明光1の主光線の試験構造体5のピンホールへの入射角は、3°~8°の範囲、例えば5°または6°である。試験構造体5のピンホールは、100nm~150nmの範囲の直径を有する。ピンホールは、吸収体層22に形成され、吸収体層22は、高反射性多層層23に施されている。吸収体層は、50nm~70nmの範囲の厚さを有する。多層層は、250nm~300nmの範囲の厚さを有する。
【0044】
試験構造体5のピンホールは、楕円形であってもよい。ピンホールの主軸は、投影光学ユニット13のエアリーディスク(Airy disk)とほぼ同じサイズ、すなわち、x座標の方向に2.44λ/NAxおよびy座標の方向に2.44λ/NAyを有することができる。
【0045】
試験構造体5は、単一のピンホールまたは複数のピンホール、特にピンホールの周期的アレイを有することができる。例えば米国特許出願公開第2015/0355052A1号に記載されているように、他の試験構造体が可能である。
【0046】
図3は、結果I(x,y,z
m)を、試験構造体5のz座標が異なる一連の5つの測定結果として示しており、5つのうち中央の測定結果は、試験構造体が物体平面4に配置された状態で出現している。したがって、検出装置14の測定結果が再度描かれている。
図3の左端に示された測定結果と
図3の右端に示された測定結果とを比較すると、試験構造体5の円形ピンホールを結像する際の結像測定結果の非対称性が示されており、これは、照明光1による試験構造体5の斜め照明に起因し得る。これにより、試験構造体5による波面への影響に対する照明角度に依存した試験構造体の寄与が得られる。
【0047】
図4は、照明光学ユニット7および投影光学ユニット13のサブアパーチャ絞り8および11aによって指定されるサブアパーチャ10
1~10
5を使用して、測定される投影光学ユニット13の入射瞳11を単一ライン走査した実施形態を示す。
【0048】
これらの瞳は、角度空間で、すなわち瞳座標kx(x空間座標に対応する)とky(y空間座標に対応する)で表現されている。斜め照明のため、入射瞳11の中心は、kx=0およびky≠0にある。様々なサブアパーチャ10
iの中心、すなわちそれぞれの主光線の相対位置が
図4において三角形によってラベル付けされている。隣接するサブアパーチャ10
i、10
i+1のこれらの中心は、kx方向に一定の増分だけ互いに対してシフトしている。サブアパーチャ10iの中心はそれぞれ、同じky座標を有する。すべてのサブアパーチャ10
iの包絡線は、その全体で、測定される入射瞳11を覆っている。楕円形状の入射瞳11の中心は、(kx=0,ky=0.1)にある。サブアパーチャ10
3の中心は、測定される楕円形状の入射瞳11の中心と一致する。
【0049】
図5は、サブアパーチャ10
iを用いた、測定される入射瞳11の走査の変形例を示す。再度、5つのサブアパーチャ10
1~10
5を用いた走査が示されている。
図5による走査は、瞳面9の原点(kx=0、ky=0)とサブアパーチャ10
iの中心との間の主光線極角θがそれぞれの場合において一定のままであるような走査である。
(kx,ky)空間において、主光線極角θは、0.1よりもわずかに大きい絶対値を有する。この主光線極角θは、瞳面9の原点0,0とサブアパーチャ10
iのそれぞれの中心との間で測定される。したがって、
図5による走査では、サブアパーチャ10
iは、それぞれのサブアパーチャの主光線極角θが一定のままであるように、互いに対してシフトしている。
【0050】
入射瞳11が走査されるとき、サブアパーチャ10
1~10
5は、
図5による実施形態では約75°である主光線方位角φにわたって掃引する。
【0051】
図6は、サブアパーチャ10
i,jを用いた、測定される楕円形状の入射瞳11の走査のさらなる変形例を示す。この場合、iは、それぞれのサブアパーチャ10
i,jの行番号を指定し、jは、列番号を指定する。
図6による走査は、3行(i=3)および7列(j=7)の合計21個のサブアパーチャ10
i,jを用いて実施されている。
【0052】
図5による変形例のような一定の主光線極角θを用いた単一行走査の代替として、それぞれの主光線極角θ
iが各行において一定のままであり、様々な行i、i+1の主光線極角θ
i、θ
i+1がそれぞれの場合において互いに異なるマルチライン走査も存在し得る。
【0053】
図7~
図11は、サブアパーチャ10
5(
図7)、10
4(
図8)、10
3(
図9)、10
2(
図10)および10
1(
図11)の使用に基づいた波面測定の結果を等高線図の形態で示す。この場合、測定は、主光線極角を一定にした
図5に従った走査によって行われた。それぞれの波面表現の右隣には、それぞれの等高線に対応する相対的な位相値の凡例がある。
【0054】
図7は、それぞれ設定されたサブアパーチャ10
iについてフォーカススタックの測定結果から決定された波面の位相を示す。
図7~
図11による位相寄与のこの決定は、ドイツ特許第102013219524B4号から知られている位相回復法を用いて実施されている。
【0055】
図7~
図11と同様の表現で、
図12~
図16は、試験構造体5による照明光1の波面への影響に対する試験構造体の寄与の位相を示す。いずれの場合も、この試験構造体の寄与を、
図7~
図11による測定結果から分離および排除することができる。ここで利用されるのは、とりわけ、それぞれのサブアパーチャ10
5(
図12)~10
1(
図16)による照明中の試験構造体寄与が位相分布に関して一定のままであり、この位相分布の向きのみが主光線方位角φの回転に従って変化することである。試験構造体寄与の最小位相値の「極」24は、約75°だけ変化させた主光線方位角φに対応して、
図12ではほぼ右を向き、
図16ではほぼ上を向いている。
【0056】
【0057】
図17~
図21は、再度
図7~
図11と同様の表現で、
図12~
図16による試験構造体寄与の排除後のそれぞれのサブアパーチャ10
5(
図17)~10
1(
図21)についての波面測定の結果を示す。
図17~
図21による測定中にそれぞれのサブアパーチャ10
5~10
1によって測定または決定される波面位相寄与は、ドットを使用して描かれた円形エッジによって境界付けられ、さらに、それぞれのサブアパーチャ10
iの瞳面内で測定される光学系の波面位相の描写が存在する。
【0058】
図17~
図21と同様の表現で、
図22は、
図17~
図21によるサブアパーチャ決定結果の重ね合わせ、すなわち、測定される光学系の瞳面における決定された波面成分全体を示す。
【0059】
図23は、
図22による決定結果を、測定される楕円形状の入射瞳11に制限したものを示す。
【0060】
図23による波面測定データを、
図7~
図11による元の測定データおよび
図12~
図16による試験構造体寄与から決定する場合、シフト回転法が使用される。
【0061】
このようなシフト回転方法の例は、例えば、D.Suらによる専門論文「Absolute surface figure testing by shift-rotation method using Zernike polynomials. Optics Letters Vol.37,No.15,3198-3200,2012.https://doi.org/10.1364/OL.37.003198およびDE102013226 668 A1」に見出すことができる。
【0062】
n個すべて(図示する例ではn=5)のサブアパーチャの測定データ(m個の画素値)をベクトルとして結合すると、以下の連立方程式を構築することができる。
【数1】
は波面測定の測定データ(上記の
図7~
図11参照)であり、n個のサブアパーチャはそれぞれがm個の波面点、すなわち、画素格子上で評価された波面測定の結果として瞳面内にm個の画素を有する。
【数2】
は投影光学ユニット13の決定される波面点(上記の
図17~
図21参照)であり、典型的にはq>m(
図7~
図11による結果の重ね合わせ、
図22および
図23参照)であり、指数qは、少なくとも1つのサブアパーチャ10
i(i=1~n)によって覆われるすべての点に及ぶ。
【数3】
はピンホール寄与(
図12~16参照)であり、m個の波面点。
【数4】
は複合変換行列である。
【数5】
はサブアパーチャiについてのm×q光学変換行列であり、
【数6】
はサブアパーチャiについてのm×mピンホール変換行列である。
【0063】
上記の
図4によるサブアパーチャ走査に対して、
【数7】
は、ピンホールの寄与がkxに依存しない場合、m×m個の単位行列I
mによって与えられる。ピンホール寄与がkxに依存する場合、この依存性は、変換行列
【数8】
の適切な選択によってモデル化される。
【0064】
上記の
図5によるサブアパーチャ走査の場合、行列は波面点の回転に対応する。波面がデカルト格子上に記述される場合、回転には通常、画素値の補間が必要である。この場合、「最近傍」補間および線形(または高次)補間の両方が可能であり、それに応じて
【数9】
でモデル化される。
【0065】
連立方程式
【数10】
は、線形連立方程式を解くための従来の方法を使用して解くことができ、このようにして、投影光学ユニットの測定される波面収差Wおよびピンホールによって生じる波面収差Pの成分を決定することができる。
【0066】
ゼルニケ多項式を、測定される楕円形瞳の領域における投影光学ユニットの決定された波面収差Wおよびピンホールの決定された波面収差Pにフィッティングすることができ、したがって、ゼルニケスペクトルを決定することが可能である。
【0067】
ピンホールおよび投影光学ユニットの寄与を分離することができるため、適用例からの方法を使用して、楕円形状の入射瞳11ではなく、測定される光学ユニットの丸い円形の入射瞳での波面測定を改善することもできる。
【0068】
位相回復においては、測定された空間像I(x,y,zm)をシミュレートされた空間像Isimと比較して、シミュレートされた空間像を記述するための関数セットのフィッティングパラメータを、測定された空間像とシミュレートされた空間像との差が最小化されるまで適合させる。
【0069】
光学系の波面は、測定された空間像とシミュレートされた空間像との差が最小化されることに基づいて位相回復内で決定される。
【0070】
位相回復の差の最小化は、様々な方法を用いて最適化することができる。これらには、誤差低減アルゴリズムとしても知られる投影法、Gerchberg-Saxton法またはIFTA法が含まれる。従来の反復最適化法の使用も可能である。例として、このような方法には、勾配降下法、最小二乗法、減衰最小二乗法、遺伝的探索法、シンプレックス法、Chambolle-Pock最適化法、逆伝搬法が含まれる。直接反転法も使用することができる。その例として、拡張Nijbourゼルニケ分解、または、例えばデータベースに記憶された以前の結果に基づく機械学習ベースの方法が挙げられる。光学系の収差が、測定される入射瞳内で原理的に予想される場合、シミュレーションによって十分に密にサンプリングされたデータベースを生成することができる。その場合、回復は、このデータベース内で検索することによって実施することができる。機械学習の範囲内では、予め計算された収差データセットを用いてネットワークを訓練することができる。
【0071】
光学系の結像収差のパラメトリック捕捉および決定のために、これらの結像収差の記述、すなわち、例えば
図23による位相分布の記述を基底関数に分解することができる。このような基底関数による最適化は、望ましくない結果ノイズを回避する。
【0072】
結像品質を正確に決定するために重要なことは、基底関数が予想される結像収差をうまく記述することができることである。ここで考慮すべきことは、測定される楕円形の瞳が円形のサブアパーチャを用いて走査されることである。この場合、位相回復によって決定された波面の領域は重なり合う。これを使用して、測定される楕円形状の入射瞳全体を計算できるようにするために、個々の波面に対する関数分解の基底が、シフト/回転によって記述可能であるように選択されると有利である。
【0073】
ゼルニケ多項式は、原理的に基底関数として適している。Bhatia-Wolf多項式、ベッセル関数、ラプラス方程式の解、直交化された局所的に分布した狭い指数関数および/またはガウス関数(任意で格子上に分布する)、直交化された局所的に分布したスプライン多項式(任意で格子上に分布する)、ならびに直交化された基底関数の混合が、シフト/回転の記述可能性に関して有利であることが分かった。
【0074】
この場合、関数の直交化は、最適化のロバスト性および結果の比較可能性を向上させる。基底関数の部分的な直交化も可能である。
【0075】
上に列挙した可能な基底関数の混合、例えば、ゼルニケ多項式と、直交化された、局所的に分布した狭い指数関数との組み合わせも、特に適切な場合がある。この目的のために、少数のゼルニケ多項式、例えば9~16個のゼルニケ多項式を使用して、従来の結像収差をこの仕方で記述している。さらに、例えば指数関数またはガウス関数の形態の局所的なPilk関数を使用して、局所的な偏差を記述することができる。この場合、指数関数は、ゼルニケ関数に対して部分的に直交化される。関数セットFの別の関数セットGに対する部分的な直交化とは、Fの各要素がある方法を用いて変換され、その後Gのすべての要素に対して直交されることを意味するものと理解される。例として、これは、Gram-Schmidt直交化法の直交化ステップを使用して実施することができる。完全な直交化との違いは、FおよびGの要素が必ずしも互いに直交している必要がないということである。
【0076】
例として、このような直交化は、Gram-Schmidt直交化法(D. Malacara, "Optical Shop Testing", Wiley-Interscience, 1992; http://de.wikipedia.org/wiki/Schmidtsches_Orthonormalisierungsverfahren)を使用して実施することができる。
【0077】
図24は、位相回復法を明らかにする目的で、物体平面4と像平面15との間の計測システム2の実施形態を示す。上述の図を参照して、特に
図1を参照して既に説明されたものに対応する構成要素および機能には、同じ参照符号を付し、再度詳細に説明しない。波長λ=193nmの照明光1と、物体平面4における試験構造体5としてのピンホール絞りと、を使用した場合の状況が示されている。投影光学ユニット13は、合計10個のレンズL1~L10を有するレンズ系として明らかにされている。さらに、照明光学ユニット瞳面9と光学的に共役な測定される投影光学ユニット13の瞳面25が描かれている。
【0078】
図24は、さらに、測定される光学系の波面26を明らかにしており、それに基づいて光学系の結像品質が記述される。例として、
図23は、このような瞳面内の波面26の位相プロファイルを示す。
【0079】
検出装置14が配置される像平面15に加えて、
図24は、像平面15からある距離にあるさらなる平行な反射像平面を示しており、これらのさらなる反射像平面は、z方向における試験物体5の変位のために生じる。その代替として、検出装置14をz方向に変位させることも可能であり、これは
図24で明らかである。
【0080】
検出装置14によって測定された強度I(x,y,z)に対して以下の関係を構築することができる。
【数11】
この場合、H
object_pupilは、物体平面4と瞳面25の瞳11との間の光学的伝達関数である。
H
pupil_imageは、瞳11と像平面15との間の光学的伝達関数である。
E
objectは、試験物体5の複素振幅(振幅と位相)である。
E
pupilは、複素瞳振幅の形態の系の伝達関数、すなわち光学系の所望の波動関数である。
Nは、とりわけ、検出装置14におけるノイズを記述する寄与である。
【0081】
位相回復の範囲内で、波動関数Epupilは、測定された強度値Iから逆算される。
【0082】
この場合、投影光学ユニット3による試験物体5の結像の前方シミュレーションを実施し、収差、すなわち結像収差をパラメータとしたシミュレーションと測定結果Iとの差を最小化する。
【0083】
アナモルフィック投影光学ユニット13を使用する場合、シミュレーションは、アナモルフィックセットアップに従って適合される必要がある。フーリエ変換に基づくシミュレーションの定式化は、高速かつ正確なシミュレーションの実現に役立つ。
【0084】
この目的のためにパラメータ化される投影光学ユニットの楕円形瞳11は、以下の変形例によってパラメータ化することができる。
【0085】
まず、瞳関数は、楕円アポダイゼーションと、圧縮ゼルニケ多項式、すなわちx方向およびy方向に異なるようにスケーリングされたゼルニケ多項式による瞳関数のパラメータ化と共に正方格子上に表現することができる。これは、
図25および
図26において例示的に視覚化されており、これらの図は、等距離のkx格子およびky格子(正方形格子)においてそのように表現された楕円形瞳11のパラメータ化の例を示す。瞳11の楕円形のエッジ内には、適切に圧縮されたゼルニケ多項式の線形結合としての記述がある。楕円境界の外側では、瞳関数は、楕円の長半径を半径とする円内でゼロに設定される(ゼロパディング)。
【0086】
図26は、
図25に描かれた瞳関数の断面を、最初にkx方向(切断線27)に、次にky方向(切断線28)に(kx、ky)平面図で示す。
【0087】
瞳関数の表現の変形例は、非正方形の瞳格子上で実施され、すなわち、スケーリングがkx方向とky方向とで異なる。格子のスケーリング、すなわちkxおよびkyにおける格子幅は、楕円形瞳11の関連付けられた開口数NAx、NAyの絶対値に結合される。その場合、画素に関して、この表現は、円形アポダイゼーションと、圧縮されたゼルニケ多項式ではなく、従来のゼルニケ多項式による瞳関数のパラメータ化とを有する。シミュレーションの範囲内では、kxおよびkyの異なる格子幅を、フーリエ変換のスケーリングにおいて考慮する必要がある。この場合、適応されたゼロパディングを使用することができ、またはチャープZ変換を使用することができ、その際、異なる適応されたスケーリングパラメータを選択する必要がある。kxおよびkyの瞳格子幅は、瞳関数が最大限走査され、数値的に最高の情報密度を有するように選択することができる。
【0088】
図27および
図28は、非正方形瞳格子および円形アポダイゼーションを有するこの変形例による、
図25および
図26によるものに対応する例示的な瞳関数の表現を示す。瞳座標kx、kyは、
図27および
図28では、スケーリングが異なっていることに留意されたい。
【0089】
検出装置14の所与の画素格子と、瞳関数の最大走査を伴う
図27および
図28による瞳表現によるxおよびy格子との間のチャープZ変換のスケーリング係数scal
x/yは、次のように計算される。
【数12】
ここで
λは、照明光1の波長であり、
dx(dy)は、画素寸法であり、
NA
x/yは、瞳11のx方向およびy方向の開口数である。
【0090】
その場合、瞳11の開口数NAx、NAyの違いにより、x方向およびy方向に異なるスケーリングが生じる。
【0091】
原則として、dx=dyが適用される。しかしながら、x方向およびy方向の検出装置14の画素寸法は、原則として、異なるように選択されてもよい。
【0092】
計算のさらなる変形例は、従来のFFTおよび楕円アポダイゼーション行列の使用、またはチャープZ変換、適合されたスケーリングパラメータおよび円形アポダイゼーション行列の使用のいずれかによる、いわゆる誤差低減アルゴリズムの使用にある。その結果、瞳空間と像空間とを交互に切り替えることが可能であり、対応する制限がそれぞれの空間において実施される(Gerchberg-Saxtonアルゴリズムとも呼ばれる従来のIFTAアルゴリズムの場合と同様)。
【0093】
上で説明した瞳関数の表現の変形例を使用して、一方では、測定される入射瞳11全体を表現することが可能であり、さもなければサブアパーチャ10iを表現することが可能である。
【0094】
上記の測定は、円形のサブアパーチャ10iで実施された。原理的には、楕円形に境界を定められたサブアパーチャを用いて測定を行うこともできる。これは、楕円形状の入射瞳にわたる収差を決定するためにも同様に使用することができる。この場合、測定は、それぞれ絞り8および11aの位置で楕円形絞りを使用して直接行うことができる。
【符号の説明】
【0095】
0 原点
1 照明光
2 計測システム
3 物体視野
4 物体平面
5 試験構造体
6 光源
7 照明光学ユニット
8 絞り
8a 変位駆動部
9 照明光学ユニット瞳面
10 楕円エッジ輪郭
10i サブアパーチャ
11 投影光学ユニット瞳面
11a NAサブアパーチャ絞り
11b 変位駆動部
13 投影光学ユニット
14 検出装置
15 像平面
17 デジタル画像処理装置
18 ホルダ
19 変位駆動部
20 中央制御装置
21 射出瞳
22 吸収体層
23 高反射性多層層
25 瞳面
26 波面
27 切断線
28 切断線
101 サブアパーチャ
102 サブアパーチャ
103 サブアパーチャ
104 サブアパーチャ
105 サブアパーチャ
L1 レンズ
L10 レンズ
L2 レンズ
L3 レンズ
L4 レンズ
L5 レンズ
L6 レンズ
L7 レンズ
L8 レンズ
L9 レンズ
NAx 開口数
NAy 開口数
P 波面収差
W 波面収差
zm 距離位置
θ 主光線極角
φ 主光線方位角