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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】切削装置、及び、切削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/06 20120101AFI20240613BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240613BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20240613BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20240613BHJP
   B23Q 3/08 20060101ALI20240613BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B24B41/06 L
H01L21/78 F
H01L21/78 N
B24B49/12
B24B27/06 M
B23Q3/08 A
B23Q17/24 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020023127
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021126735
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】久保 敦嗣
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 芳昌
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-118982(JP,A)
【文献】特開2017-019054(JP,A)
【文献】特開2019-150929(JP,A)
【文献】特開2010-087141(JP,A)
【文献】米国特許第5803797(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/06
H01L 21/301
B24B 49/12
B24B 27/06
B23Q 3/08
B23Q 17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削予定ラインを有した被加工物を切削する切削装置であって、
被加工物を吸引保持するための直線状の吸引溝が形成された保持面を有する保持部材を備えた保持テーブルと、
該保持テーブルで保持された該被加工物を切削する切削ブレードを有する切削ユニットと、
該保持テーブルを該切削ユニットに対して加工送り方向に相対移動させる加工送り機構と、
を備え、
該直線状の吸引溝は、該加工送り方向から所定の角度ずれた方向に伸びるように設定され、
該直線状の吸引溝は、該保持面の中心を通過して直交する二本の直線状の吸引溝で構成され、
該保持面には、該被加工物を保持した状態で該被加工物よりも外側の位置に環状の吸引溝が設けられ、
該直線状の吸引溝と、該環状の吸引溝が連通するように構成され、
該直線状の吸引溝と、該環状の吸引溝は、該保持面の表面に形成されて上方に開放される凹状の溝であり、
該保持部材は透明部材からなり、該保持面の表面は、該直線状の吸引溝と、該環状の吸引溝を除く箇所は平坦である、
ことを特徴とする切削装置。
【請求項2】
該環状の吸引溝が同心状に複数設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の切削装置。
【請求項3】
該保持部材はガラスからなり、
保持部材を介して被加工物の被保持面を撮像する撮像カメラを更に備える、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の切削装置。
【請求項4】
切削された被加工物の溝を撮像し、
撮像した座標位置において、該直線状の吸引溝が存在する場合には、撮像画像に該直線状の吸引溝の情報を重ね合わせて表示する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の切削装置。
【請求項5】
切削予定ラインを有した被加工物を切削ブレードで切削する切削方法であって、
被加工物を吸引保持するための直線状の吸引溝が形成された保持面を有する保持部材を備える保持テーブルで被加工物を保持する保持ステップと、
該保持テーブルを加工送り方向に該切削ブレードに対して相対移動させ、該被加工物の該切削予定ラインを該切削ブレードで切削する切削ステップと、を有し、
該直線状の吸引溝は、該加工送り方向から所定の角度ずれた方向に伸びるように設定されるものであり、
該直線状の吸引溝は、該保持面の中心を通過して直交する二本の直線状の吸引溝で構成され、
該保持面には、該被加工物を保持した状態で該被加工物よりも外側の位置に、環状の吸引溝が同心状に複数設けられ、
該直線状の吸引溝と、該環状の吸引溝が連通するように構成され、
該直線状の吸引溝と、該環状の吸引溝は、該保持面の表面に形成されて上方に開放される凹状の溝であり、
該保持部材は透明部材からなり、該保持面の表面は、該直線状の吸引溝と、該環状の吸引溝を除く箇所は平坦である、
ことを特徴とする切削方法。
【請求項6】
該環状の吸引溝が同心状に複数設けられる、
ことを特徴とする請求項5に記載の切削方法。
【請求項7】
該保持部材は、ガラスからなり、
保持ステップを実施した後、該保持部材を介して被加工物の被保持面を撮像カメラで撮像する撮像ステップを更に備える、
ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の切削方法。
【請求項8】
切削ステップを実施した後、溝を撮像する溝確認ステップをさらに備え、
溝確認ステップでは、撮像した座標位置において、該直線状の吸引溝が存在する場合には、撮像画像に該直線状の吸引溝の情報を重ね合わせて表示する、
ことを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削予定ラインを有した被加工物を切削ブレードで切削する切削装置、及び、切削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されるように、アルミナセラミクスやジルコニアを主成分とするポーラスセラミックス等の多孔質材にて保持テーブルを構成し、この保持テーブルの保持面にて被加工物を吸引保持する切削装置が知られている。
【0003】
切削加工がされる際には、被加工物の下面は保持面によって支持され、切削ブレードを被加工物に切り込ませることにより、切削溝が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-62476号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多孔質材にて構成される保持テーブルの保持面には、微小な凹部分と凸部分が存在することになる。そして、凹部分では被加工物の被保持面(下面)が支持されないこととなる。
【0006】
以上のような状態で切削ブレードにより被加工物を厚み方向で完全に切断するフルカットを実施すると、凹部分に対応する領域において、被加工物の被保持面に欠けが大きく発生してしまうことが懸念される。
【0007】
また、切削ブレードにより被加工物に対し所定の深さで切り込んでハーフカット溝を形成するハーフカットを実施する場合でも、凹部分に対応する領域において、ハーフカット溝の底からクラックが生じることが懸念される。
【0008】
また、多孔質材で構成される保持テーブルでは、凹部分がランダムに出現することになり、被加工物における欠けやクラックの発生箇所もランダムになり、予測もできないこととなる。
【0009】
本発明の目的は、保持テーブルの保持面において新規な構成を採用することで、多孔質材にて構成される保持テーブルにおいて生じる上記課題を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、
切削予定ラインを有した被加工物を切削する切削装置であって、
被加工物を吸引保持するための吸引溝が形成された保持面を有する保持部材を備えた保持テーブルと、
該保持テーブルで保持された該被加工物を切削する切削ブレードを有する切削ユニットと、
該保持テーブルを該切削ユニットに対して加工送り方向に相対移動させる加工送り機構と、
を備え、
該吸引溝は、該加工送り方向から所定の角度ずれた方向に伸びるように設定される、
切削装置とする。
【0011】
また、本発明の一態様によれば、
該吸引溝は、少なくとも互いに直交する2つの吸引溝を含んで構成される、こととする。
【0012】
また、本発明の一態様によれば、
該保持部材はガラスからなり、
該保持部材を介して被加工物の被保持面を撮像する撮像カメラを更に備える、こととする。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、
切削予定ラインを有した被加工物を切削ブレードで切削する切削方法であって、
被加工物を吸引保持するための吸引溝が形成された保持面を有する保持部材を備える保持テーブルで被加工物を保持する保持ステップと、
該保持テーブルを加工送り方向に該切削ブレードに対して相対移動させ、該被加工物の該切削予定ラインを該切削ブレードで切削する切削ステップと、を有し、
該吸引溝は、該加工送り方向から所定の角度ずれた方向に伸びるように設定される、
切削方法とする。
【0014】
また、本発明の一態様によれば、
該吸引溝は、少なくとも互いに直交する2つの吸引溝を含んで構成される、こととする。
【0015】
また、本発明の一態様によれば、
該保持部材は、ガラスからなり、
該保持ステップを実施した後、該保持部材を介して被加工物の被保持面を撮像カメラで撮像する撮像ステップを更に備える、こととする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、平坦な保持面を有する保持部材により被加工物を保持することができ、凹部分と凸部分がランダムに存在する多孔質材で保持部材を構成する場合と比較して、欠けやクラックの発生を低減し、加工品質の向上を図ることができる。また、切削予定ラインと吸引溝が非平行となるため、両者が重なる領域を少なく抑えることができ、被加工物において加工品質の悪化の発生を抑制することができる。
【0017】
また、本発明の一態様によれば、吸引溝により広範囲で確実に被加工物を吸引保持することが可能となる。
【0018】
また、本発明の一態様によれば、下側から被加工物を撮像し、切削予定ラインの検出をすることができ、例えば、被加工物であるウェーハに形成されるデバイスを下側にしてテープで保護した状態で加工するアプリケーションにおいて、好適に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施に使用される切削装置の一実施形態の斜視図である。
図2】支持ボックス及び保持テーブル部分の分解斜視図である。
図3】(A)は支持ボックス上に搭載された保持テーブルの斜視図である。(B)は下方撮像機構及びその支持構造の斜視図である。
図4】保持テーブルの断面形状等について示す図である。
図5】(A)は、下方撮像機構の構成について示す側面概要図である。(B)は、プリズム本体の別実施形態について示す図である。
図6】下方撮像機構の構成について示す正面概要図である。
図7】(A)は被加工物の一例であるウェーハの表面を表す図である。(B)は被加工物の一例であるウェーハの裏面を表す図である。
図8】(A)は保持部材に形成される吸引溝について説明する図である。(B)はウェーハの切削予定ラインと吸引溝の角度のずれについて説明する図である。
図9】保持テーブルと下方撮像機構の位置関係について説明する図である。
図10】被加工物を下側から撮像カメラで撮像することについて説明する図である。
図11】切削ステップについて説明する図である。
図12】溝確認ステップと撮像画像の例について示す図である。
図13】上方撮像機構の一実施例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る切削装置2について示す斜視図である。
【0021】
図1に示すように、切削装置2の基台4には、保持テーブル27が移動機構23(図3(A))によりX軸方向に往復動可能に配設されている。保持テーブル27の周囲にはウォーターカバー14が配設されており、このウォーターカバー14と基台4にわたり蛇腹16が連結されている。
【0022】
図1に示すように、基台4の前側角部には、後述する被加工物を収容するカセット20を載置するためのカセット載置台21が設けられる。
【0023】
カセット20内にはウェーハユニット8(図7(B))が複数枚収容され、搬送ユニット40によってカセット20から一対のガイドレール71上へと搬入される。また、加工の終わったウェーハユニット8は、搬送ユニット40によって一対のガイドレール71上からカセット20へと搬出される。
【0024】
一対のガイドレール71は、保持テーブル27の上方に配置され、ウェーハユニット8を一時的に仮置するための仮置領域18を構成する。
【0025】
図1に示すように、搬送ユニット40は、X軸方向、及び、Z軸方向に移動する略L字状の第一アーム41の下部に設けた水平部41aに備えられる。
【0026】
第一アーム41の水平部41aには、ガイドレール71と保持テーブル27の間でウェーハユニット8を移動させるための第一搬送手段47が構成される。この第一搬送手段47は、X軸方向に伸びる二本のアーム部47aと、アーム部47aの両端に設ける吸着部47bと、を有して構成される。吸着部47bによって、ウェーハユニット8(図7(B))のフレームFが吸着保持される。
【0027】
図1に示すように、基台4上には門型形状のコラム24が立設されており、コラム24にはY軸方向に伸長する一対のガイドレール26が固定されている。ガイドレール26には、Y軸移動ブロック28が移動可能に設けられており、ボールねじ30とパルスモータ32とからなるY軸移動機構34によって、Y軸移動ブロック28がガイドレール26に案内されてY軸方向に移動する。
【0028】
図1に示すように、Y軸移動ブロック28にはZ軸方向に伸長する一対のガイドレール36が固定されている。ガイドレール36に対しZ軸移動ブロック38が移動可能に設けられており、ボールねじ40とパルスモータ42とからなるZ軸移動機構44によって、Z軸移動ブロック38がガイドレール36に案内されてZ軸方向に移動する。
【0029】
図1に示すように、Z軸移動ブロック38には切削ユニット46及び上方撮像機構52が取付けられている。切削ユニット46は、図11に示すように、図示せぬモータにより回転駆動されるスピンドル48の先端部に切削ブレードB1を着脱可能に装着して構成されている。
【0030】
図1に示すように、基台4上には、スピンナーテーブル56を有するスピンナー洗浄ユニット54が設けられており、切削加工後の被加工物をスピンナーテーブル56で吸引保持してスピンナー洗浄するとともに、スピン乾燥できるようになっている。
【0031】
図1に示すように、第一搬送手段47の側方には、保持テーブル27とスピンナー洗浄ユニット54との間でウェーハユニットを移動させる第二搬送手段50が設けられる。
【0032】
図1に示すように、切削装置2はコントローラ80を備え、各種の駆動部の動作制御が行われる。また、タッチパネル等からなる表示モニター60が設けられ、後述する撮像画像等の各種情報が表示される。
【0033】
図2は、保持テーブル27の構成について説明する図である。
保持テーブル27は環状ベース62と、円盤状の保持部材74とを有する。環状ベース62は、嵌合部64と、嵌合部64より大径のベルト巻回部66と、嵌合部64軸方向に貫通する貫通部65と、貫通部65を塞ぐ透明部材68と、を有する。
【0034】
図2に示すように、環状ベース62の上面には、円盤状の保持部材74の枠部74bを載置して固定するための被装着領域70が設けられる。
【0035】
図2に示すように、保持部材74は、円盤状の保持部74aと、その周囲を取り囲む枠部74bを有して構成される。保持部74aは、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、サファイア、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム等の透明部材にて構成されている。なお、透明部材の「透明」とは、「可視光の少なくとも一部の波長の光を透過し、吸収、散乱しない」ことをいうものであり、後述する外周凸部検出ステップや、分割予定ライン検出ステップの実行を可能とするものであればよく、着色されたものであってもよい。また、保持部材74の一部の必要な範囲にのみ透明領域を構成することとしてもよい。以上のようにして、保持部材74の保持部74aにて、保持テーブル27に透明領域が構成される。
【0036】
図4に示すように、保持部74aの上面は、ウェーハWを保持する保持面74cを形成する。保持面74cにおいて、保持部74aの外周縁に近い箇所には、環状の吸引溝76が同心状に複数設けられており(本実施例では3列)、この吸引溝76にテープTが吸着保持される。吸引溝76は、保持部材74が環状ベース62に取付けられた状態で吸引源89に接続される。
【0037】
図8(A)(B)に示すように、吸引溝76は、ウェーハ10を保持した状態で、ウェーハ10よりも外周側に形成される。
【0038】
図2図8(A)に示すように、保持部材74の保持面74cには、直線状の吸引溝77が形成される。本実施例では、円盤形状の保持部材74の中心を通過し、互いに直交する二本の吸引溝77が形成されている。
【0039】
図8(A)に示すように、保持部材74の保持面74cは、仮想線で示されるウェーハ10よりも広く構成され、二本の吸引溝77の長さは、それぞれウェーハ10の直径以上の長さで構成される。吸引溝77はウェーハ10の外周側に位置する環状の吸引溝76に連通され、吸引源89に接続される。
【0040】
図4にも示されるように、環状の吸引溝76同士は、保持部材74の半径方向に伸びる接続溝によって接続される。この接続溝は、例えば、吸引溝77を最も外周側にある吸引溝76まで延長させるようにして構成することができる。
【0041】
なお、図8(A)に示すように、本実施例のように保持部材74の中心を通過して直交する二本の吸引溝77とすることによれば、被加工物であるウェーハの広範囲を均等に吸引保持できる点で好ましいが、溝の本数や配置場所については、特に限定されるものではない。
【0042】
図2及び図4に示すように、環状ベース62の上面には、保持部材74の周囲を取り囲むように、ウェーハユニット8の環状フレームFを下側から支持するフレーム支持部72が4箇所に設けられる。
【0043】
図2及び図4に示すように、フレーム支持部72は、環状フレームFを支持する支持面を構成する支持ブロック72aと、環状フレームFの下側から吸着保持する吸着部72bと、を有し、吸着部72bは、吸引源89に接続される。
【0044】
図2及び図4に示すように、保持テーブル27の環状ベース62には、保持部材74の保持部74aとほぼ同径の貫通部65が形成されており、貫通部65の下部が透明部材68(例えば、ガラス)にて閉鎖される。これにより、下側から順に、透明部材68、貫通部65、保持部材74の保持部74aが配置され、これらの部位において光が透過することで、詳しくは後述するように、保持テーブル27の下方からの撮像が可能となる。なお、透明部材68は省略することとしてもよい。
【0045】
図2に示すように、保持部材74を環状ベース62の被装着領域70上に搭載し、環状ベース62から下方に突設される環状の嵌合部64を支持ボックス15の円形開口15aに嵌合させることで、図3(A)に示すように保持テーブル27が支持ボックス15に回転可能に搭載された状態となる。
【0046】
図3(A)に示すように、支持ボックス15の連結板15bにはモータ17が取り付けられており、モータ17の出力軸に連結されたプーリー17aと環状ベース62のベルト巻回部66に渡りベルト29が巻回される。モータ17を駆動すると、ベルト29を介して保持テーブル27が回転される。
【0047】
図3(A)に示すモータ17は、例えばパルスモータから構成され、アライメント遂行時にモータ17を所定パルスで駆動すると、保持テーブル27が所定量回転(θ回転)されて、図7(A)に示すウェーハ10の切削予定ライン(ストリート)13のアライメントを行うことができる。
【0048】
図3(A)に示すように、支持ボックス15は、X軸方向に固定的に延在する一対のガイドレール31にスライド可能に載置されており、移動機構23によりX軸方向に移動される。移動機構23は、ガイドレール31の間に平行に配置されるボールネジ23aと、パルスモータ23bを有して構成される。支持ボックス15(保持テーブル27)が移動するX軸方向は加工送り方向であり、図8(B)に示すように、この加工送り方向Kと、切削予定ライン13が平行とされた状態で切削加工が行われる。
【0049】
図3(A)に示すように、ボールネジ23aは支持ボックス15の下板15eの下面に設けた雌ネジ部に螺合され、パルスモータ23bを駆動してボールネジ23aを回転させることで、支持ボックス15がX軸方向に移動する。
【0050】
図3(A)に示すように、支持ボックス15の近傍には、保持テーブル27に保持された半導体ウェーハ等の被加工物を保持部材74の下側から撮像する下方撮像機構82が設けられている。
【0051】
図9に示すように、支持ボックス15は、上板15c、下板15e、及び、連結板15bにて側面視において略コ字をなしており、連結板15bの反対側には、上板15cと下板15eの間の空間に下方撮像機構82の進入を可能とする開口部15gが形成される。
【0052】
図3(A)(B)に示すように、下方撮像機構82は、Y軸移動ブロック83に立設されるコラム96に設けられる。Y軸移動ブロック83は、Y軸方向に固定的に延在する一対のガイドレール81にスライド可能に載置されており、駆動手段87によりY軸方向に移動される。駆動手段87は、ガイドレール81の間に平行に配置されるボールネジ85aと、パルスモータ87bを有して構成される。
【0053】
図3(A)に示すように、ボールネジ85aはY軸移動ブロック83の下面に設けた雌ネジ部に螺合され、パルスモータ87bを駆動してボールネジ85aを回転させることで、Y軸移動ブロック83がY軸方向に移動する。
【0054】
図3(B)に示すように、下方撮像機構82は、プリズム機構Pと、撮像カメラCと、を有して構成される。
【0055】
図5(A)、及び、図6に示すように、プリズム機構Pは、プリズム本体90と、光源92と、プリズム本体90、及び、光源92を収容する筐体84と、を有して構成される。
【0056】
図5(A)に示すように、プリズム機構Pのプリズム本体90は、側面視において約45度の角度の傾斜をなす反射面90aを有するいわゆる直角プリズム(側面視直角三角形)にて構成される。
【0057】
図5(A)に示すように、筐体84において、反射面90aに対して斜め45度上方の位置、即ち、プリズム本体90に対して上方となる位置には、第一通過口85aが形成されている。反射面90aは第一通過口85aを通じて保持テーブル27に対向する。
【0058】
図5(A)に示すように、筐体84において、反射面90aに対し斜め45度下方の位置、即ち、プリズム本体90に対して側方となる位置には、第二通過口85bが形成されている。
【0059】
以上のようにして、図5(A)に示すように、第一通過口85aから進入する光H1が、反射面90aで反射して90度屈折し、第二通過口85bから出射される。
【0060】
なお、図5(A)に示すプリズム本体90のように、反射面90aで光H1を直接反射させる他、図5(B)に示すプリズム本体90Aのように、プリズム本体90A内に光H1を透過させて反射面90bで光H1を屈折させることとしてもよい。この場合、光路長を長く形成することができ、各部品の干渉を避けるなどの設計が可能となる。
【0061】
図5(A)及び図6に示すように、筐体84内には、例えばLEDからなる光源92が収容されており、筐体84の上面には、光源92の光を透過させるための光透過口86が形成されている。本実施例では、プリズム本体90を挟んで両側に3個づつ光源92が配置され、各光源92に対応する位置に光透過口86が形成される。
【0062】
図6に示すように、光源92から照射される光H2は、上方に配置される保持テーブル27に保持されたウェーハWの下面に向けて照射され、その反射した光H1がプリズム本体90に入射する。なお、光源92は、照射される光H2が撮像カメラC(図5(A))の焦点位置を照らすように傾斜して配置され、光H2の光軸が傾斜するように構成される。
【0063】
図5(A)に示すように、撮像カメラCは、鏡筒91と、鏡筒91の一端側に設けられる対物レンズ93と、鏡筒91の他端側に設けられる撮像素子95と、を有して構成される。
【0064】
図5(A)に示すように、鏡筒91は、第二通過口88bに接続されるように設けられ、対物レンズ93がプリズム本体90の反射面90aに対向するように配置される。
【0065】
図5(A)に示すように、対物レンズ93を通過した光H1は撮像素子95にて受光され、図示せぬ画像処理装置により画像データ化される。
【0066】
図3(B)に示すように、下方撮像機構82を構成するプリズム機構Pや撮像カメラCは、支持プレート94により支持され、支持プレート94の基端部はZ軸移動ブロック98に固定されている。Y軸移動ブロック83(図3(A))に立設されるコラム96には、ボールねじ100及びパルスモータ102から構成されるZ軸移動手段104が設けられ、Z軸移動ブロック98が一対のガイドレール106に沿ってZ軸方向(上下方向)に移動され、これに伴って、下方撮像機構82もZ軸方向(上下方向)に移動される。
【0067】
次に、以上の装置構成を用いた加工例について説明する。
<被加工物準備ステップ>
可視光に対して透過性を有するテープを被加工物の表面に貼着するステップである。
図7(A)(B)は、被加工物の一例であるウェーハ10を示すものである。なお、被加工物は、以下で説明する半導体ウェーハの他、LED等の光デバイスが形成された光デバイスウェーハ、電子部品に使用される各種セラミック基板やガラス基板などが考えられる。
【0068】
ウェーハ10の表面10aには、デバイス11が格子状に配列され、切削予定ライン13(ストリート)に沿って切削加工が施されるものである。ウェーハ10は、例えば、厚さが100μmのSiCウェーハである。
【0069】
図7(B)に示すように、ウェーハ10の裏面10b側を上側にして露出させるとともに、ウェーハ10の表面10aをテープTに貼着し、テープTを介して環状フレームFとウェーハ10を一体とするウェーハユニット8が構成される。
【0070】
以上のようなウェーハユニット8を構成することで、表面10aのデバイス11をテープTにて保護しつつ、ウェーハ10がハンドリング可能な状態とされる。なお、環状フレームFを用いずに、ウェーハ10の表面10aにテープを貼着して保護することとしてもよい。
【0071】
また、図7(B)において、テープTは透明、即ち、「可視光の少なくとも一部の波長の光を透過し、吸収、散乱しない」特性を有することとし、後述する切削予定ライン検出ステップや溝確認ステップの実行を可能とするものである。また、テープTは着色されたもであってもよく、伸縮性のある樹脂製のテープにて構成することができる。また、テープTを用いる代わりに、ガラスや樹脂等からなる板状のハードプレートにてウェーハ10の表面10aを保護してハンドリングすることとしてもよい。
【0072】
<保持ステップ>
図9に示すように、少なくとも一部が透明な保持部材74を有した保持テーブル27でテープTを介して被加工物(ウェーハ10)の表面10a側を保持するステップである。
【0073】
まず、図8(B)に示すように、保持部材74に形成される直線状の吸引溝77が、それぞれ、加工送り方向K(X軸方向)と所定の角度θずれるように設定される。
【0074】
具体的には、図3に示すモータ17を駆動し、ベルト29を介して保持テーブル27を回転させることで、図8(A)に示すように、保持部材74の吸引溝77が加工送り方向K(X軸方向)と所定の角度θだけずれるように設定される。この角度θを実現する保持部材74の角度設定は、保持部材74を設置した際に、切削装置2(図1)のコントローラ80(図1)に記憶され、モータ17(図3)を駆動して再現可能とされる。
【0075】
本実施例では、二本の吸引溝77が、加工送り方向K(X軸方向)に対し、それぞれ45度ずれるように配置される。なお、図8(B)では、テープT(図9)の図示は省略されている。
【0076】
以上のように保持テーブル27の吸引溝77の角度を設定した上で、図8(B)に示すように、ウェーハ10を保持部材74上に載置する。この際、ウェーハ10の各デバイス11の間に形成される切削予定ライン13が加工送り方向K(X軸方向)と平行になるように載置される。
【0077】
以上のようにして、保持部材74の吸引溝77と、ウェーハ10の切削予定ライン13が、角度θずれた状態で、ウェーハ10が保持テーブル27に保持される。
【0078】
なお、この保持ステップにおいては、吸引溝77と切削予定ライン13において角度θのずれが生じる相対関係が実現されればよく、特に上述した方法に限定されるものではない。
【0079】
<切削予定ライン検出ステップ(第一撮像ステップ)>
図10に示すように、保持ステップを実施した後、保持部材74とテープTとを介して保持テーブル27で保持された被加工物(ウェーハ10)を下側から撮像カメラCで撮像して切削予定ライン13(図7(A))の位置を検出するステップである。
【0080】
具体的には、図10に示すように、Y軸移動ブロック83を移動させることで、下方撮像機構82をウェーハ10の下方に位置付け、保持テーブル27の保持部材74、テープTを介して、ウェーハ10の表面10a(図9)を撮像するとともに、撮像画像をもとにウェーハ10の切削予定ライン13(図7(A))が検出される。撮像の際には、吸引溝77が写り込まない領域が撮像されることが好ましい。
【0081】
ここで、検出された切削予定ライン13(図8(B))が吸引溝77(図8(B))と略平行となっていることが確認された場合には、第一搬送手段47(図1)により一旦被加工物を持ち上げて保持部材74の上方に待機させるとともに、保持部材74を回転させた後に被加工物を置き直し、切削予定ライン13(図8(B))と吸引溝77(図8(B))の相対角度(角度θ)が所定の角度になるように調整することとしてもよい。
【0082】
また、以上に説明した切削予定ライン検出ステップでは、保持部材74が透明のガラスで構成される場合において、下側から撮像カメラCで切削予定ライン13(図7(A))を検出するものであるが、この他、保持部材74が金属やセラミクスなどの非透明の素材で構成される場合においては、図1、及び、図10に示す上方撮像機構52を利用し、上側から被加工物を撮像することで切削予定ライン13(図7(A))を検出することとしてもよい。この場合、被加工物は、例えば、図7(A)のようなウェーハ10の場合には、デバイス11が形成される表面10aが、図7(B)に示すテープTに貼着された状態で、上側に露出するように貼着されるものとする。
【0083】
<切削ステップ>
図11に示すように、切削ユニット46の切削ブレードB1の位置を、切削予定ライン検出ステップで検出された切削予定ライン13(図7(A))の位置に合わせるとともに、切削ユニット46を所定の高さに位置付け、保持テーブル27を加工送り方向(X軸方向)に移動させることで、切削加工が行われ、切削予定ライン13に沿って溝が形成される。
【0084】
図11に示すように、一つの切削予定ライン13(図7(A))について切削加工を行った後、切削ブレードB1をY軸方向にインデックス送りを行って、隣の切削予定ラインについて同様に切削加工を行う。
【0085】
図7(A)において、第一の方向(例えば、X軸方向)に伸びる全ての切削予定ライン13について切削加工を行った後、保持テーブル27(図11)を90度回転させ、図7(A)において第二の方向(例えば、Y軸方向)について、同様の切削加工が実施される。
【0086】
<溝確認ステップ(第二撮像ステップ)>
図10及び図12に示すように、上方撮像機構52によりウェーハ10の上方から溝を撮像して溝の状態を確認するステップであり、これによりカーフチェックが行われるものである。
【0087】
上方撮像機構52は、図13の例に示すように撮像素子52Sと、対物レンズ52Lと、光源52Uと、を有して構成されるものであり、光源52Uから投光された光の反射光を受光して撮像を行うものである。
【0088】
図12は、撮像画像S1の一例であり、溝Mの周囲の部分が光Lを反射することにより明るく映り、溝Mの部分が暗く映る。この撮像画像S1に基づいて、チッピングやクラックなどの検出や、溝Mの幅の測定などのカーフチェックを行うことができる。
【0089】
この溝確認ステップは、切削ステップにおける加工途中や、特定の切削加工を終了した段階、あるいは、実施されるべき全ての切削加工を終了した段階において、被加工物(ウェーハ10)を撮像することで行われる。
【0090】
この撮像画像S1は、図1に示すように、上方撮像機構52にて撮像した画像をコントローラ80が画像処理することで、表示モニター60に表示されるものである。
【0091】
ここで、コントローラ80は、撮像した座標位置において、吸引溝77(図8(A))が存在すると判定した場合には、図12に示すように、撮像画像S1中に吸引溝77の情報を重ね合わせて表示することができるように構成される。即ち、コントローラ80は、予め記憶された吸引溝77の座標位置と、撮像画像S1が撮像された箇所の座標位置と、を参照し、撮像画像S1に吸引溝77の仮想的な画像を重ねて表示させるものである。これにより、撮像箇所に吸引溝77が存在することをオペレータに認識させることができる。
【0092】
そして、このように撮像した箇所に吸引溝77が存在している場合には、ウェーハの被保持面(下面)が支持されていないため、他の箇所と比較して、クラック等が生じやすく、カーフチェックには適さないものとなる。
【0093】
この点に鑑み、上述のように、撮像画像S1に吸引溝77を仮想的に重ねて表示することで、オペレータに吸引溝77の存在を認識させることとし、これにより、オペレータに対し他の箇所でカーフチェックをすべきことを促すことができる。
【0094】
なお、以上の説明では、図12に示すようにウェーハ10の上方に配置される上方撮像機構52を用いて撮像画像を取得してカーフチェックすることとしたが、ウェーハ10の下方に配置される撮像カメラCを用いて撮像画像を取得してカーフチェックすることとしてもよい。
【0095】
以上のようにして本発明を実施することができる。
即ち、図1、及び、図8(B)に示すように、
切削予定ライン13を有した被加工物(ウェーハ10)を切削する切削装置2であって、
被加工物を吸引保持するための吸引溝77が形成された保持面74cを有する保持部材74を備えた保持テーブル27と、
保持テーブル27で保持された被加工物を切削する切削ブレードB1を有する切削ユニット46と、
保持テーブル27を切削ユニット46に対して加工送り方向Kに移動させる加工送り機構としての移動機構23と、
を備え、
吸引溝77は、加工送り方向Kから所定の角度θずれた方向に伸びるように設定される、こととするものである。
【0096】
これにより、平坦な保持面を有する保持部材74により被加工物を保持することができ、凹部分と凸部分がランダムに存在する多孔質材で保持部材を構成する場合と比較して、欠けやクラックの発生を低減し、加工品質の向上を図ることができる。また、切削予定ライン13と吸引溝77が非平行となるため、両者が重なる領域を少なく抑えることができ、被加工物において加工品質の悪化の発生を抑制することができる。
【0097】
また、図8(B)に示すように、吸引溝77は、少なくとも互いに直交する2つの吸引溝77,77を含んで構成される、こととするものである。
【0098】
これにより、吸引溝により広範囲で確実に被加工物を吸引保持することが可能となる。
【0099】
また、図10に示すように、
保持部材74はガラスからなり、
保持部材74を介して被加工物の被保持面を撮像する撮像カメラCを更に備える、こととするものである。
【0100】
これにより、下側から被加工物を撮像し、切削予定ライン13(図7(A))の検出をすることができ、例えば、被加工物であるウェーハ10に形成されるデバイス11を下側にしてテープTで保護した状態で加工するアプリケーションにおいて、好適に実施することができる。
【0101】
また、図1、及び、図8(B)に示すように、
切削予定ライン13を有した被加工物を切削ブレードB1で切削する切削方法であって、
被加工物を吸引保持するための吸引溝77が形成された保持面74cを有する保持部材74を備える保持テーブル27で被加工物を保持する保持ステップと、
保持テーブル27を加工送り方向Kに切削ブレードB1に対して相対移動させ、被加工物の切削予定ライン13を切削ブレードB1で切削する切削ステップと、を有し、
吸引溝77は、加工送り方向Kから所定の角度θずれた方向に伸びるように設定される、こととするものである。
【0102】
これにより、平坦な保持面を有する保持部材74により被加工物を保持することができ、凹部分と凸部分がランダムに存在する多孔質材で保持部材を構成する場合と比較して、欠けやクラックの発生を低減し、加工品質の向上を図ることができる。また、切削予定ライン13と吸引溝77が非平行となるため、両者が重なる領域を少なく抑えることができ、被加工物において加工品質の悪化の発生を抑制することができる。
【0103】
また、図10に示すように、
保持部材74は、ガラスからなり、
保持ステップを実施した後、保持部材74を介して被加工物の被保持面を撮像カメラCで撮像する撮像ステップを更に備える、こととするものである。なお、ここでいう「撮像ステップ」は、上述した切削予定ライン検出ステップ(第一撮像ステップ)と、溝確認ステップ(第二撮像ステップ)のいずれか一つ、又は、両方を含むものである。
【0104】
これにより、下側から被加工物を撮像し、切削予定ライン13(図7(A))の検出をすることができ、例えば、被加工物であるウェーハ10に形成されるデバイス11を下側にしてテープTで保護した状態で加工するアプリケーションにおいて、好適に実施することができる。
【符号の説明】
【0105】
2 切削装置
10 ウェーハ
10a 表面
11 デバイス
13 切削予定ライン
27 保持テーブル
46 切削ユニット
52 上方撮像機構
60 表示モニター
74 保持部材
74a 保持面
77 吸引溝
80 コントローラ
82 下方撮像機構
B1 切削ブレード
C 撮像カメラ
K 加工送り方向
M 溝
S1 撮像画像
T テープ
θ 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13