(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】膜厚測定装置、研磨装置及び膜厚測定方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240613BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240613BHJP
B24B 49/04 20060101ALI20240613BHJP
B24B 37/013 20120101ALI20240613BHJP
G01B 11/06 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
H01L21/304 622S
B24B49/12
B24B49/04 Z
B24B37/013
G01B11/06 Z
(21)【出願番号】P 2020085008
(22)【出願日】2020-05-14
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐鳥 博俊
(72)【発明者】
【氏名】石井 遊
(72)【発明者】
【氏名】金馬 利文
(72)【発明者】
【氏名】木下 将毅
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-58225(JP,A)
【文献】特開2002-124496(JP,A)
【文献】国際公開第2010/037452(WO,A1)
【文献】特開平10-294297(JP,A)
【文献】特開2013-110390(JP,A)
【文献】特開2014-103344(JP,A)
【文献】特開2014-216457(JP,A)
【文献】特開2004-12302(JP,A)
【文献】特開2010-23210(JP,A)
【文献】特開2001-21317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 49/12
B24B 49/04
B24B 37/013
G01B 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの配線パターンを
内部に含む膜を有する基板の前記膜を研磨する研磨装置に適用された膜厚測定装置であって、
前記研磨装置は、前記膜が押し付けられる研磨パッドを保持する研磨テーブルを備え、
前記膜厚測定装置は、
前記研磨装置による前記膜の研磨中に、入射光を投光する投光器と、
前記投光器から投光された前記入射光を集光して所定のスポットサイズにした上で、前記膜に投光させる集光器と、
前記膜から反射された反射光を受光する受光器と、を備え、
前記入射光の前記スポットサイズをD(μm)とし、前記入射光のスポット面積をS(μm
2)とし、前記膜の研磨中における前記投光器又は前記集光器の周速度をω(μm/sec)とし、前記
少なくとも1つの配線パターン
の最小面積をSmin(μm
2)とし、前記入射光の露光時間をt(sec)とした場合に、前記入射光の露光時間(t)は以下の式(1)を満たすように設定されて
おり
(S+D×ω×t)≦(α×Smin)・・・(1)
(αは、0<α≦2の範囲から選択された値である)、
前記最小面積は、前記少なくとも1つの配線パターンが複数の配線パターンである場合は、前記複数の配線パターンを構成する各々の配線パターンの面積のうち最小の値であり、前記少なくとも1つの配線パターンが1つの配線パターンである場合は、前記1つの配線パターンの面積である、
膜厚測定装置。
【請求項2】
前記膜は、有機化合物及び無機化合物の少なくとも一方を含む請求項1に記載の膜厚測定装置。
【請求項3】
前記投光器、前記集光器及び前記受光器は、前記研磨テーブルに配置されており、
前記研磨パッドの一部には、前記入射光及び前記反射光が透過可能な光透過部材が配置されている請求項1又は2に記載の膜厚測定装置。
【請求項4】
前記投光器、前記集光器及び前記受光器を有するセンサーヘッドを前記研磨テーブルに取り付ける、筒状の治具を備え、
前記筒状の治具は、前記入射光及び前記反射光が前記筒状の治具の内部を通過するように、前記研磨テーブルに接続されている請求項3に記載の膜厚測定装置。
【請求項5】
前記集光器は、レンズによって構成されている請求項1~4のいずれか1項に記載の膜厚測定装置。
【請求項6】
前記入射光は、赤外領域の波長を有し、且つ、レーザー光である請求項1~5のいずれか1項に記載の膜厚測定装置。
【請求項7】
少なくとも1つの配線パターンを
内部に含む膜を有する基板の前記膜を研磨する研磨装置であって、
請求項1~6のいずれか1項に記載の膜厚測定装置を備える、研磨装置。
【請求項8】
少なくとも1つの配線パターンを
内部に含む膜を有する基板の前記膜を研磨する研磨装置による前記膜の研磨中に、請求項1~6のいずれか1項に記載の膜厚測定装置を用いて、前記膜の膜厚を測定する、膜厚測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜厚測定装置、研磨装置及び膜厚測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に形成された無機絶縁膜を平坦化するために、例えば化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)が行われている(例えば、特許文献1~3参照)。このような研磨に用いられる研磨装置は、研磨パッドを保持するとともに回転する研磨テーブルと、基板を保持するとともに基板の膜を研磨パッドに押し付けながら回転する基板保持部材とを備えている。そして、この研磨装置は、スラリーの存在下で研磨テーブル及び基板保持部材が回転することで、膜を研磨している。
【0003】
また、従来、研磨装置による膜の研磨中に、無機絶縁膜の膜厚に関するデータを光学的に測定する膜厚測定装置が知られている(例えば、特許文献1~3参照)。具体的には、このような膜厚測定装置は、研磨装置による研磨中に無機絶縁膜に向けて入射光を投光し、この無機絶縁膜から反射された反射光の強度に基づいて、膜厚に関するデータを測定している。そして、この研磨装置は、膜厚測定装置によって無機絶縁膜の膜厚に関するデータを測定しながら研磨を行い、膜厚が所定の値になったときに研磨終点に達したと判断して、研磨を終了させている。
【0004】
また、従来、基板に形成された膜として、複数の配線パターンを含む膜が知られている(例えば特許文献4参照)。また、このような配線パターンを含む膜として、有機化合物によって構成された膜(すなわち、有機絶縁膜)が知られている。そして、このような有機絶縁膜の平坦化にも、CMPが行われている(例えば特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-23210号公報
【文献】特開2001-235311号公報
【文献】特開平10-229060号公報
【文献】特開2001-21317号公報
【文献】特許第6606309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、有機絶縁膜の膜厚は無機絶縁膜の膜厚に比較して厚いことが多い。このため、無機絶縁膜に用いられている従来の膜厚測定技術を、そのまま有機絶縁膜に適用した場合、配線パターンからの反射光の光量が不足するおそれがある。この場合、研磨中に膜厚に関するデータを取得することが困難になるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、膜の膜厚が厚い場合であっても、配線パターンからの反射光の光量が不足することを抑制することができる技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(態様1)
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る膜厚測定装置は、複数の配線パターンを含む膜を有する基板の前記膜を研磨する研磨装置に適用された膜厚測定装置であって、
前記研磨装置は、前記膜が押し付けられる研磨パッドを保持する研磨テーブルを備え、前記膜厚測定装置は、前記研磨装置による前記膜の研磨中に、入射光を投光する投光器と、前記投光器から投光された前記入射光を集光して所定のスポットサイズにした上で、前記膜に投光させる集光器と、前記膜から反射された反射光を受光する受光器と、を備え、前記所定のスポットサイズは、前記複数の配線パターンを構成する各々の前記配線パターンの幅のうち最小の値である最小幅よりも小さい。
【0009】
この態様によれば、入射光のスポットサイズが配線パターンの最小幅よりも小さいので、配線パターンに投光される入射光の光量を多くすることができる。これにより、膜の膜厚が厚い場合であっても、配線パターンからの反射光の光量が不足することを抑制することができる。
【0010】
(態様2)
上記態様1において、前記膜は、有機化合物によって構成された有機絶縁膜であってもよい。この態様によれば、有機絶縁膜の配線パターンからの反射光の光量が不足することを抑制することができる。
【0011】
(態様3)
上記態様1又は2において、前記投光器、前記集光器及び前記受光器は、前記研磨テーブルに配置されており、前記研磨パッドの一部には、前記入射光及び前記反射光が透過可能な光透過部材が配置されていてもよい。この態様によれば、膜厚測定装置が適用された研磨装置の構成を簡素化することができる。これにより、研磨装置の製造コストの削減を図ることができる。
【0012】
(態様4)
上記態様3において、前記膜厚測定装置は、前記投光器、前記集光器及び前記受光器を有するセンサーヘッドを前記研磨テーブルに取り付ける、筒状の治具を備え、前記治具は、前記入射光及び前記反射光が前記治具の内部を通過するように、前記研磨テーブルに接続されていてもよい。この態様によれば、センサーヘッドから基板までの距離を一定に保つことが容易にできる。これにより、集光器から基板までの距離を焦点距離に合わせることが容易にできる。
【0013】
(態様5)
上記態様1~4のいずれか1態様において、前記集光器は、レンズによって構成されていてもよい。この態様によれば、簡素な構成によって、入射光を集光することができる。
【0014】
(態様6)
上記態様1~5のいずれか1態様において、前記入射光は、赤外領域の波長を有し、且つ、レーザー光であってもよい。この態様によれば、配線パターンに投光される入射光の光量を多くすることができる。これにより、配線パターンからの反射光の光量を多くすることができる。
【0015】
(態様7)
上記態様1~6のいずれか1態様において、前記入射光の前記スポットサイズをD(μm)とし、前記入射光のスポット面積をS(μm2)とし、前記膜の研磨中における前記投光器又は前記集光器の周速度をω(μm/sec)とし、前記複数の配線パターンを構成する各々の前記配線パターンの面積のうち最小の値である最小面積をSmin(μm2)とし、前記入射光の露光時間をt(sec)とした場合に、前記入射光の露光時間(t)は以下の式(1)を満たすように設定されている。
(S+D×ω×t)≦(α×Smin)・・・(1)
(αは、0<α≦2の範囲から選択された値である)
【0016】
この態様によれば、入射光が配線パターン以外の部分に投光される時間を適切な範囲内に制限することができる。これにより、配線パターンからの反射光の光量が不足することを効果的に抑制することができる。
【0017】
(態様8)
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る膜厚測定装置は、複数の配線パターンを含む膜を有する基板の前記膜を研磨する研磨装置に適用された膜厚測定装置であって、
前記研磨装置は、前記膜が押し付けられる研磨パッドを保持する研磨テーブルを備え、
前記膜厚測定装置は、
前記研磨装置による前記膜の研磨中に、入射光を投光する投光器と、
前記投光器から投光された前記入射光を集光して所定のスポットサイズにした上で、前記膜に投光させる集光器と、
前記膜から反射された反射光を受光する受光器と、を備え、
前記入射光の前記スポットサイズをD(μm)とし、前記入射光のスポット面積をS(μm2)とし、前記膜の研磨中における前記投光器又は前記集光器の周速度をω(μm/sec)とし、前記複数の配線パターンを構成する各々の前記配線パターンの面積のうち最小の値である最小面積をSmin(μm2)とし、前記入射光の露光時間をt(sec)とした場合に、前記入射光の露光時間(t)は以下の式(1)を満たすように設定されている。
(S+D×ω×t)≦(α×Smin)・・・(1)
(αは、0<α≦2の範囲から選択された値である)
【0018】
この態様によれば、入射光が配線パターン以外の部分に投光される時間を適切な範囲内に制限することができる。これにより、膜の膜厚が厚い場合であっても、配線パターンからの反射光の光量が不足することを抑制することができる。
【0019】
(態様9)
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る研磨装置は、複数の配線パターンを含む膜を有する基板の前記膜を研磨する研磨装置であって、上記態様1~8のいずれか1態様に係る膜厚測定装置を備える研磨装置である。
【0020】
この態様によれば、上記の膜厚測定装置を備えているので、膜の膜厚が厚い場合であっても、配線パターンからの反射光の光量が不足することを抑制することができる。
【0021】
(態様10)
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る膜厚測定方法は、複数の配線パターンを含む膜を有する基板の前記膜を研磨する研磨装置による前記膜の研磨中に、上記態様1~8のいずれか1態様に係る膜厚測定装置を用いて、前記膜の膜厚を測定する方法である。
【0022】
この態様によれば、膜の膜厚が厚い場合であっても、配線パターンからの反射光の光量が不足することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態1に係る研磨装置の主要な構成を模式的に示す構成図である。
【
図3】
図2の基板保持部材と研磨テーブルとを分離させた状態を示す断面図である。
【
図6】実施形態1に係る膜厚測定装置のセンサーヘッド及び光源・分光モジュールの構成を説明するための図である。
【
図7】比較例に係る研磨装置及び膜厚測定装置の構成を説明するための断面図である。
【
図8】比較例に係る膜厚測定装置において、入射光が膜に投光される様子を示す図である。
【
図9】実施形態1に係る膜厚測定装置において、入射光が膜に投光される様子を示す図である。
【
図10】
図10(A)~
図10(C)は、実施形態1の変形例に係る式(1)を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1に係る膜厚測定装置30、研磨装置10、及び、膜厚測定方法について、図面を参照しつつ説明する。なお、本願の図面は、本実施形態の特徴の理解を容易にするために模式的に図示されており、各構成要素の寸法比率等は実際のものと同じであるとは限らない。また、本願の図面には、参考用として、X-Y-Zの直交座標が図示されている。この直交座標のうち、Z方向は上方に相当し、-Z方向は下方(重力が作用する方向)に相当する。
【0025】
図1は、本実施形態に係る研磨装置10の主要な構成を模式的に示す構成図である。本実施形態に係る研磨装置10は、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)を行うことが可能な研磨装置である。具体的には、
図1に例示されている研磨装置10は、研磨テーブル11と、回転軸12と、基板保持部材13と、スラリー供給ノズル14と、研磨制御装置20と、膜厚測定装置30とを備えている。
図2は、
図1のA1付近の断面図である。
図3は、
図2の基板保持部材13と研磨テーブル11とを分離させた状態を示す断面図である。
【0026】
図1、
図2及び
図3に示すように、研磨テーブル11は、研磨パッド70を保持するとともに、回転するように構成された研磨テーブルである。具体的には、本実施形態に係る研磨テーブル11は円盤状の部材によって構成されており、その上面に、研磨パッド70が貼付されている。研磨パッド70の上面(表面)は、研磨面71に相当する。研磨中において、この研磨面71には、後述する基板200の膜202が押し付けられる。
【0027】
研磨パッド70の具体的な種類は、特に限定されるものではなく、硬質発砲タイプの研磨パッドや、不織布タイプの研磨パッド、スエードタイプの研磨パッド等、種々の研磨パッドを用いることができる。この研磨パッド70は、膜202の種類に応じて適宜設定される。
【0028】
図1に示すように、研磨テーブル11は、回転軸12に接続されている。この回転軸12は、駆動機構(例えばモータ等)によって回転駆動される。回転軸12における研磨テーブル11の側とは反対側の端部には、継手12aが設けられている。この継手12aは、ロータリージョイント及びロータリーコネクタを備えている。この研磨テーブル11の回転動作は、後述する研磨制御装置20よって制御されている。
【0029】
図2及び
図3に示すように、本実施形態に係る研磨パッド70の一部には、後述する入射光L1及び反射光L2が通過可能な、光透過部材72が配置されている。本実施形態において、光透過部材72は、光透過性を有する素材、具体的には透明な素材(例えば透明
プラスチックや透明ガラス等)からなる窓部材(すなわち、透光窓部材)によって構成されている。この光透過部材72は、研磨テーブル11が回転して研磨パッド70が回転した場合に、基板200の膜202の少なくとも一部が光透過部材72の上を通過するように、その位置(研磨パッド70における相対的な位置)が設定されている。後述するセンサーヘッド41の集光器44によって集光された入射光L1は、この光透過部材72を通過してから膜202に入射する。また、膜202から反射された反射光L2は、この光透過部材72を通過してから、センサーヘッド41の受光器45に受光される。
【0030】
図1に示すように、基板保持部材13は、研磨中において、研磨テーブル11の研磨面71の上に配置されている。
図2及び
図3に示すように、基板保持部材13の下面には、基板200が取り付けられている。基板保持部材13は、基板200を保持するとともに基板200の膜202を研磨パッド70の研磨面71に押し付けながら回転するように構成されている。なお、この基板保持部材13は、一般に、「トップリング」や「研磨ヘッド」等と別称されている場合がある。
【0031】
図1を参照して、スラリー供給ノズル14は、研磨面71に対してスラリー(具体的には研磨スラリー)を供給するノズルである。スラリーは、例えば、酸化ケイ素や、酸化アルミニウム、酸化セリウム等の砥粒を含む溶液である。このスラリーの具体的な種類は、特に限定されるものではなく、膜202の種類に応じて適宜設定すればよい。なお、スラリーの供給は、研磨面71の上部からではなく、下部から行ってもよく、あるいは、研磨面71の上部及び下部の両方から行ってもよい。例えば、スラリーを下部から供給する場合には、研磨テーブル11の下部の回転中心の近傍箇所から鉛直に伸びる流路(図示せず)と、これに連通する研磨パッド70(研磨面71)の開口(図示せず)とから、スラリーを供給してもよい。
【0032】
研磨制御装置20は、研磨装置10の動作を制御する制御装置である。具体的には、本実施形態に係る研磨制御装置20は、コンピュータを備えている。このコンピュータは、プロセッサとしてのCPU(Central Processing Unit)20aや、記憶装置20b等を備えている。記憶装置20bは、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶媒体によって構成されている。研磨制御装置20においては、プロセッサとしてのCPU20aが、記憶装置20bに記憶されているプログラムに基づいて、研磨テーブル11の回転動作やスラリー供給ノズル14からのスラリーの供給動作等を制御することで、研磨装置10の動作を制御している。
【0033】
以上説明したような研磨装置10は、スラリーの存在下で研磨テーブル11及び基板保持部材13がそれぞれ回転することで、基板200の膜202を所望の平坦面に研磨する。
【0034】
続いて、基板200の構成について説明する。
図4は、基板200の平面図である。具体的には、
図4は、基板200を下方側から視認した状態を模式的に図示している。なお、
図4において、後述する膜202の図示は省略されている。また、
図4には、
図4のA2部分の拡大図も図示されている。
図5は、基板200の部分断面図である。具体的には、
図5は、基板200の一部について、基板200の法線を含む面で切断した断面を模式的に図示している。
【0035】
図4に示すように、本実施形態に係る基板200は、一例として、角形基板である。但し、基板200は、このような角形基板に限定されるものではなく、角形以外の外観形状(例えば、円形等)を有する基板であってもよい。
【0036】
図5に示すように、本実施形態に係る基板200は、基板コア201と、この基板コア201の表面に配置された膜202とを有している。この膜202の内部には、配線パターン構造203が含まれている。なお、本実施形態に係る基板200は、具体的には、プリント基板である。
【0037】
基板コア201の材質は特に限定されるものではないが、本実施形態では、一例として、ガラス系素材を用いている。膜202の材質は特に限定されるものではなく、無機化合物や、有機化合物等を用いることができる。本実施形態においては、膜202の材質の一例として、有機化合物を用いている。すなわち、本実施形態に係る膜202は、有機絶縁膜である。この有機化合物の材質の種類は特に限定されるものではないが、本実施形態では、一例として、樹脂を用いており、この樹脂の一例として、ポリイミドを用いている。
【0038】
図4に示すように、基板コア201の表面には、複数の配線パターン構造203が配置されている。
図5に示すように、膜202は、この複数の配線パターン構造203の表面を覆うように配置されている。各々の配線パターン構造203は、複数の配線パターン204を有している。配線パターン204の材質は、導電性を有するものであればよく、その具体的な種類は特に限定されるものではないが、本実施形態では、一例として、銅を用いている。
【0039】
図4のA2部分の拡大図、及び、
図5には、複数の配線パターン204の中から選択された3つの配線パターン204が抜粋されて例示されている。この3つの配線パターン204は、それぞれ、幅(W1)、幅(W2)、幅(W3)を有している。また、各々の配線パターン204は、X方向を短手方向とし、Y方向を長手方向としている。3つの配線パターン204の幅のうち、幅(W1)が最も小さい値となっている。また、本実施形態において、この幅(W1)は、基板200の膜202に含まれる全ての配線パターン204のうちで最も小さい値である。
【0040】
すなわち、本実施形態において、幅(W1)は、複数の配線パターン204を構成する各々の配線パターン204の幅のうち最小の値である「最小幅」に相当する。なお、「配線パターンの幅」とは、配線パターンの面方向(X-Y平面内の方向)の長さであり、且つ、短手方向の長さをいう。
【0041】
研磨前(CMPの実行前)の状態において、配線パターン204は膜202の内部に埋没している。本実施形態に係る研磨装置10は、基板200の膜202を研磨することで、膜202を平坦化する。この膜202の研磨において、研磨装置10は、基板200の膜厚が予め設定された所定値になった時点を、研磨の終点(すなわち、「研磨終点」)とする。この研磨終点の具体的な値は特に限定されるものではなく、例えば、配線パターン204が膜202の表面に露出する膜厚以下の値を研磨終点としてもよく、配線パターン204が膜202の表面に露出する膜厚よりも大きい値(すなわち、配線パターン204が膜202の表面に露出しない範囲内の値)を研磨終点としてもよい。
【0042】
続いて、膜厚測定装置30について説明する。
図1を再び参照して、本実施形態に係る膜厚測定装置30は、基板200の膜202の膜厚に関するデータを光学的に測定する光学式の膜厚測定装置である。また、本実施形態に係る膜厚測定装置30は、研磨装置10による研磨中に、膜厚に関するデータを測定する。
【0043】
具体的には、
図1に示すように、本実施形態に係る膜厚測定装置30は、センサーモジュール40と、光源・分光モジュール50と、データ処理システム60とを備えている。光源・分光モジュール50とデータ処理システム60と研磨制御装置20とは、配線15を介して電気的に接続されている。本実施形態において、センサーモジュール40及び光
源・分光モジュール50は、研磨テーブル11に配置されている。センサーモジュール40及び光源・分光モジュール50は、研磨テーブル11の回転時において、研磨テーブル11とともに回転する。
【0044】
図2及び
図3に示すように、センサーモジュール40は、センサーヘッド41と、筒状の治具42とを備えている。
【0045】
治具42は、センサーヘッド41を研磨テーブル11に取り付けるための治具である。この治具42は、入射光L1及び反射光L2が、この治具42の内部を通過するように、研磨テーブル11に接続されている。具体的には、本実施形態に係る治具42は、一例として、研磨テーブル11に設けられた筒状の孔に嵌められている。また、本実施形態に係る治具42の上端面は、光透過部材72の下面に配置されたガラス板46の下面に、接続されている。入射光L1及び反射光L2は、治具42の内部(筒の内部)を通過する。
【0046】
具体的には、本実施形態に係るガラス板46は、光を透過するガラスからなる板部材によって構成されており、光透過部材72の下面に接続されている。本実施形態に係る治具42の上端面(筒状の治具42の開口した上端面)は、このガラス板46の下面に接続されている。このガラス板46によって、例えば、スラリー等の異物が治具42の内部(筒の内部)に入り込むことが効果的に抑制されている。なお、治具42は、治具42とガラス板46との間に隙間が形成されないように、ガラス板46の下面に密接していることが好ましい。
【0047】
なお、上述した
図2及び
図3は、研磨テーブル11への治具42の取付態様の一例であり、研磨テーブル11への治具42の取付態様は、
図2及び
図3に例示する態様に限定されるものではない。
【0048】
図6は、膜厚測定装置30のセンサーヘッド41及び光源・分光モジュール50の構成を説明するための図である。センサーヘッド41は、投光器43と、集光器44と、受光器45とを備えている。光源・分光モジュール50は、光源51と、分光器52とを備えている。
【0049】
投光器43、集光器44、及び、受光器45は、センサーヘッド41の内部に収容されている。投光器43は、研磨装置10による膜202の研磨中に、所定の方向に向けて、入射光L1を投光する機器である。具体的には、本実施形態に係る投光器43は、入射光L1を膜202の方向に向けて投光している。また、投光器43は、光ファイバーによって構成されている。この光ファイバーの一端(膜202の側とは反対側の端部)は、光源51に接続されている。光源51から発光された光は、この光ファイバーを通過して、入射光L1として投光される。なお、本実施形態において、投光器43と集光器44とは別体になっているが、この構成に限定されるものではない。投光器43と集光器44とは、一体になっていてもよい。
【0050】
光源51の種類は、特に限定されるものではなく、ハロゲンランプやレーザー発光装置等を用いることができる。本実施形態においては、光源51の一例として、レーザー発光装置を用いている。また、本実施形態において、光源51が発光する光は、赤外領域の波長(具体的には、780nmよりも長い波長)である。すなわち、本実施形態に係る入射光L1は、赤外領域の波長を有するレーザー光である。
【0051】
集光器44は、投光器43から投光された入射光L1を所定のスポットサイズ(D(μm))にした上で、膜202に投光させる機器である。この所定のスポットサイズ(D)は、複数の配線パターン204を構成する各々の配線パターン204の幅のうち最小の値
である「最小幅(本実施形態では、W1(μm))」よりも小さい値である。なお、本実施形態において、スポットサイズ(D)とは、入射光L1の集光スポットの外径寸法をいう。本実施形態に係るスポットサイズ(D)は、一例として、30μm以下の値に設定されている(この場合、最小幅(W1)は、30μmよりも大きい)。
【0052】
上記のような機能を有するものであれば、集光器44の具体的な構成は特に限定されるものではないが、本実施形態に係る集光器44は、一例として、レンズ(すなわち、集光レンズ)によって構成されている。
【0053】
具体的には、本実施形態に係る集光器44は、1つのレンズによって構成されている。この集光器44としてのレンズは、投光器43と膜202との間に配置されており、投光器43から投光された入射光L1を集光して所定のスポットサイズ(D)にした上で、膜202に投光させている。
【0054】
より具体的には、このレンズは、レンズによって集光された入射光L1の焦点が、膜202の表面(すなわち、研磨パッド70の研磨面71)に位置するように、その焦点距離が設定されている。また、本実施形態によれば、前述した治具42によって、レンズから基板200の膜202までの距離の調整が行われている。具体的には、治具42によって、レンズから膜202までの距離が、レンズによって集光された入射光L1の焦点が膜202の表面に位置するように、調整されている。そして、このレンズは、レンズによって集光された入射光L1のスポットサイズ(D;すなわち、最小スポット径)が、配線パターン204の最小幅(W1)よりも小さくなるように、設定されている。なお、
図6や後述する
図9において、前述したガラス板46及び光透過部材72の図示は省略されているが、実際は、レンズによって集光された入射光L1は、ガラス板46及び光透過部材72を通過してから膜202に入射する。
【0055】
なお、本実施形態において、集光器44は、1つのレンズによって構成されているが、この構成に限定されるものではない。集光器44は、複数のレンズの組み合わせによって構成されていてもよい。あるいは、集光器44は、レンズ以外の部材によって構成されていてもよい。集光器44のレンズ以外の構成の一例を挙げると、放物面鏡が挙げられる。この放物面鏡は、投光器43から投光された入射光L1を集光して所定のスポットサイズ(D)にした上で、膜202に投光させる。
【0056】
受光器45は、膜202から反射された反射光L2を受光する機器である。具体的には、本実施形態に係る受光器45は、光ファイバーによって構成されている。この光ファイバーの一端(膜202の側とは反対側の端部)は、分光器52に接続されている。
【0057】
分光器52は、反射光L2を分光して、分光された波長の光の強度をデジタル信号に変換する機器である。この分光器52の構成自体は、先行技術文献に開示されているような公知の膜厚測定装置に用いられている分光器と同様であるので、分光器52の詳細な説明は省略する。
【0058】
分光器52によって変換されたデジタル信号は、配線15を介してデータ処理システム60(
図1)に伝えられる。データ処理システム60は、受光器45が受光した反射光L2の強度に基づいて、膜202の膜厚に関するデータを測定するシステムである。具体的には、受光器45が受光した反射光L2の強度は、膜厚と相関関係を有している。そこで、データ処理システム60は、この受光器45が受光した反射光L2の強度に基づいて、膜202の膜厚に関するデータを測定している。なお、本実施形態において、この「膜厚に関するデータ」とは、膜厚(μm)と相関関係を有するデータであればよく、例えば、膜厚そのものであってもよく、あるいは、膜厚と相関を有する指標(例えば、膜厚の変化
量等)であってもよい。
【0059】
具体的には、
図1に示すように、本実施形態に係るデータ処理システム60は、第1データ処理装置61と第2データ処理装置62とを備えている。
【0060】
第1データ処理装置61は、コンピュータを備えており、このコンピュータは、プロセッサとしてのCPU61aや、記憶装置61b等を備えている。記憶装置61bは、ROM、RAM等の記憶媒体によって構成されている。第1データ処理装置61は、記憶装置61bに記憶されたプログラムに基づいてCPU61aが作動することで、分光器52から送信されたデータに基づいて、反射強度を指数化するデータ処理を実行する。
【0061】
第1データ処理装置61で処理されたデータは、第2データ処理装置62に送信される。第2データ処理装置62は、コンピュータを備えており、このコンピュータは、プロセッサとしてのCPU62aや、記憶装置62b等を備えている。記憶装置62bは、ROM、RAM等の記憶媒体によって構成されている。第2データ処理装置62は、記憶装置62bに記憶されたプログラムに基づいてCPU62aが作動することで、指数化されたデータの時間波形のノイズ除去処理を実行するとともに、このノイズ除去処理が実行された後の波形を解析して反射強度や特徴点(微分値の極大値・極小値や閾値等の特徴点)を検出する。この検出された値(検出値)は、膜厚と相関関係を有している。そこで、第2データ処理装置62は、この検出値に基づいて膜厚に関するデータを算出して取得する。以上のように、本実施形態に係るデータ処理システム60は、膜厚に関するデータを測定している。
【0062】
また、本実施形態に係る第2データ処理装置62は、上記のように測定されたデータに基づいて、膜厚が予め設定された研磨終点に到達したことを判定する(すなわち、研磨の研磨終点を測定する)。第2データ処理装置62は、膜厚が研磨終点に到達した旨を判定した場合、研磨終点に到達した旨の信号(研磨終点信号)を、研磨制御装置20に送信する。この研磨終点信号を受信した研磨制御装置20は、研磨装置10の駆動機構(例えばモータ)を停止させることで、研磨装置10による研磨を終了させる。
【0063】
なお、上述したデータ処理システム60によるデータ処理のアルゴリズム(すなわち、反射光の強度に基づいて膜厚に関するデータを測定するためのデータ処理アルゴリズム)は、前述した特許文献1や特許文献2に開示されているような公知の膜厚測定装置に用いられているデータ処理装置と同様であり、これらの技術を適用することができる。このため、このデータ処理のより詳細な説明は省略する。
【0064】
ここで、研磨中において基板200は投光器43に対して相対的に移動しているので、仮に、膜厚測定装置30による入射光L1の露光時間が長過ぎる場合、入射光L1が配線パターン204以外の部分に投光される時間が長過ぎてしまい、この結果、配線パターン204からの反射光L2を受光し難くなるおそれがある。そこで、膜厚測定装置30による入射光L1の露光時間は、所定時間以下に設定されていることが好ましい。この露光時間の所定時間としては、例えば、露光時間がこの時間よりも長い場合に反射光L2を受光し難くなると考えられる時間を用いればよく、この具体的な値は、予め実験、シミュレーション等を行って適宜設定すればよい。
【0065】
本実施形態においては、この露光時間の一例として、0.1(msec:ミリ秒)以下の時間(すなわち、0.0(msec)よりも大きく0.1(msec)以下の範囲から選択された時間)を用いている。但し、この時間は、あくまでも一例であり、これに限定されるものではない。
【0066】
なお、本実施形態に係る膜厚測定方法は、上述した膜厚測定装置30を用いて膜202の膜厚を測定する方法であり、上述した膜厚測定装置30によって実現されている。すなわち、本実施形態に係る膜厚測定方法は、研磨装置10による研磨中に、投光器43が入射光L1を投光すること、集光器44が入射光L1を集光して所定のスポットサイズ(D)にした上で、膜202に投光させること、及び、受光器45が膜202から反射された反射光L2を受光することを含んでいる。そして、所定のスポットサイズ(D)は、複数の配線パターン204を構成する各々の配線パターン204の幅のうち最小の値である最小幅(W1)よりも小さく設定されている。
【0067】
続いて、本実施形態の作用効果について、比較例と比較しつつ説明する。
図7は、比較例に係る研磨装置100及び膜厚測定装置300の構成を説明するための断面図である。比較例に係る研磨装置100は、光透過部材72を備えていない点と、流路部材110を備えている点と、膜厚測定装置30に代えて膜厚測定装置300を備えている点とにおいて、主として、本実施形態に係る研磨装置10と異なっている。
【0068】
流路部材110には、流路111が形成されている。この流路111には、例えば水のような、光透過性を有する液体(FL)が通過する。具体的には、流路111は、液体が下方側から上方側に向けて流動した後に、基板200の膜202の表面に沿って流動し、次いで、上方側から下方側に向けて流動するように構成されている。比較例に係る膜厚測定装置300は、集光器44を備えていない点と、流路部材110の内部に投光器43及び受光器45が配置されている点とにおいて、主として、本実施形態に係る膜厚測定装置30と異なっている。
【0069】
比較例に係る膜厚測定装置300によれば、投光器43から膜202に向けて入射光L1が投光され、膜202から反射された反射光L2を受光器45が受光する。そして、比較例に係る膜厚測定装置300のデータ処理システムは、この受光器45が受光した反射光L2の強度に基づいて膜厚に関するデータを取得する。
【0070】
図8は、比較例に係る膜厚測定装置300において、入射光L1が膜202に投光される様子を示す図である。
図8に示すように、比較例に係る膜厚測定装置300の場合、集光器44を備えていないので、投光器43から投光された入射光L1は、集光されずに、膜202に投光される。この場合、入射光L1は、膜202における配線パターン204のみならず、膜202における配線パターン204以外の部分にも投光される。このため、比較例においては、膜202に向けて投光された入射光L1のうち、配線パターン204に投光される光量は十分に多いとはいえない。このような比較例の場合、配線パターン204からの反射光L2の光量が不足するおそれがある。
【0071】
特に、膜202として、有機化合物によって構成された膜(有機絶縁膜)を用いる場合には、無機化合物によって構成された膜(無機絶縁膜)を用いる場合に比較して、膜202の膜厚が厚いことが多い。また、膜202の光透過率も低いことが多い。このため、比較例に係る膜厚測定装置300の場合、膜202として有機絶縁膜を用いる場合には、配線パターン204からの反射光L2の光量が不足するおそれが特に高くなる。そして、配線パターン204からの反射光L2の光量が不足した場合、膜厚に関するデータを測定することが困難になるおそれがある。
【0072】
図9は、本実施形態に係る膜厚測定装置30において、入射光L1が膜202に投光される様子を示す図である。上述した比較例に対して、本実施形態によれば、集光器44によって、入射光L1のスポットサイズ(D)を配線パターン204の最小幅(W1)よりも小さくしているので、配線パターン204に投光される入射光L1の光量を多くすることができる。この結果、配線パターン204からの反射光L2の光量を多くすることがで
きる。したがって、本実施形態によれば、膜202の膜厚が厚い場合であっても、反射光L2の光量が不足することを抑制することができる。
【0073】
このように、本実施形態によれば、有機絶縁膜のように、膜202の膜厚が厚い場合であっても、反射光L2の光量が不足することを抑制して、研磨装置10による研磨中に、膜厚に関するデータを測定することができる。
【0074】
これにより、本実施形態によれば、有機絶縁膜のように、膜202の膜厚が厚い場合であっても(また、膜202の光透過率が低い場合であっても)、研磨中に研磨終点を測定することができ、膜202の研磨を確実に行うことができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、
図2及び
図3で説明したように、研磨パッド70に光透過部材72が配置されており、この光透過部材72を介して入射光L1が膜202に投光され、且つ、光透過部材72を介して反射光L2が受光器45に受光される構成になっているので、比較例のような流路部材110を備えることなく、膜厚を測定することができる。これにより、比較例のように流路部材110を備える場合に比較して、研磨装置10の構成を簡素化することができる。この結果、研磨装置10の製造コストの削減を図ることができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、
図2及び
図3で説明したように、センサーヘッド41を研磨テーブル11に取り付ける筒状の治具42を備えているので、センサーヘッド41から基板200までの距離を一定に保つことが容易にできる。これにより、集光器44から基板200までの距離を焦点距離に合わせることが容易にできる。
【0077】
また、本実施形態によれば、集光器44としてレンズを用いているので、簡素な構成によって、入射光L1を集光することができる。
【0078】
また、本実施形態によれば、入射光L1は、赤外領域の波長を有し、且つ、レーザー光であるので、例えば入射光L1が白色光の場合に比較して、配線パターン204に投光される入射光L1の光量を多くすることができる。この結果、配線パターン204からの反射光L2の光量を多くすることができる。これにより、研磨中に膜厚に関するデータを効果的に測定することができる。
【0079】
(実施形態1の変形例)
上述した実施形態1において、入射光L1の露光時間として定数を用いているが、この構成に限定されるものではない。露光時間の適切な値は、入射光L1のスポットサイズ、入射光L1のスポット面積、膜202の研磨中における投光器43又は集光器44の周速度、及び、配線パターンの面積といったパラメータによって、異なる値をとり得ると考えられる。そこで、本変形例において、露光時間は、これらのパラメータに基づいて設定されている。具体的には、以下のとおりである。
【0080】
すなわち、入射光L1のスポットサイズをD(μm)とし、入射光L1のスポット面積をS(μm2)とし、膜202の研磨中における投光器43又は集光器44の周速度をω(μm/sec)とし、複数の配線パターン204を構成する各々の配線パターン204の面積のうち最小の値である「最小面積」をSmin(μm2)とし、入射光L1の露光時間をt(sec)とした場合に、本変形例に係る入射光L1の露光時間(t)は、以下の式(1)を満たすように設定されている。
【0081】
(S+D×ω×t)≦(α×Smin)・・・(1)
(上記式(1)において、α(係数)は、0<α≦2の範囲から選択された値である)
【0082】
なお、
図4を参照して、最小面積Sminは、例えば各々の配線パターン204の長手方向の長さが同じ場合には、最小幅を有する配線パターン204の面積に相当する。仮に、各々の配線パターン204の長手方向の長さが異なる場合には、最小面積Sminは、必ずしも最小幅を有する配線パターン204の面積に相当するとは限らない。
【0083】
上記式(1)は以下の観点に基づいて導出されたものである。
図10(A)~
図10(C)は、本変形例に係る式(1)を説明するための説明図である。まず、
図10(A)に示すように、スポットサイズD(μm)及びスポット面積S(μm
2)を有する入射光L1が、速度V(μm/sec)で直線方向に時間ts(sec)の間、移動した場合を想定する。この場合、この入射光L1の軌跡の面積は、「S+D×V×ts」によって表される。
【0084】
図10(B)に示すように、研磨中において、入射光L1のスポット面積Sは、基板200に対して円弧状に相対的に移動する。ここで、研磨中における入射光L1の軌跡の面積を入射光軌跡面積Sp(μm
2)と定義する。この入射光軌跡面積Spは、研磨中において、実際に膜厚を測定することが可能な領域(すなわち、「膜厚の実測領域」)に相当する。
【0085】
図10(C)は、入射光軌跡面積Spのうち、周方向両端部にある円弧状の部分を除いた領域を抜粋したものである。ここで、スポットサイズDは配線パターン204の幅よりも小さいため、
図10(C)に図示されている領域を長方形とみなすことができる。この結果、
図10(C)に図示されている領域の面積は、
図10(A)に示されている「D×V×ts」の面積と略同一とみなすことができる。
【0086】
そこで、
図10(C)に示されている面積を
図10(A)に示されている「D×V×ts」の面積と同じであるとみなすとともに、この「V」を「ω(周速度)」に置き換える。そうすると、
図10(C)に示されている面積は、「D×ω×ts」によって表される。また、この式において、時間tsは、膜厚の測定時における入射光L1の露光時間tに相当するため、この時間tsを露光時間tとする。
【0087】
そうすると、
図10(B)に示す入射光軌跡面積Sp、すなわち、膜厚の実測領域は、「S+D×ω×t」によって表されることが分かる。すなわち、入射光軌跡面積Sp(膜厚の実測領域)は、入射光L1のスポットサイズDと投光器43又は集光器44の周速度ωと入射光L1の露光時間tとの積算値に、入射光L1のスポット面積Sを加算した値によって表される。なお、「投光器43の周速度」と「集光器44の周速度」とは同じ値であると考えられるため、式(1)の周速度ωとして、投光器43の周速度を用いてもよく、集光器44の周速度を用いてもよい。
【0088】
前述した式(1)は、このように算出される入射光軌跡面積Spが、配線パターン204の最小面積Sminのα倍(αは、0<α≦2の範囲から選択された値)以下の値である、ということを規定している。以上のような観点で、式(1)は導出されている。
【0089】
なお、この式(1)で用いられているαの値は、1の近傍の値として設定された係数である。このαの値は、式(1)で用いられる各種のパラメータの誤差等を考慮して、0<α≦2の範囲から選択された値、すなわち、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、及び、2.0の中から選択された一の値を、適宜設定すればよい。なお、αの上限値は、1.5以下であることがより好ましい。すなわち、αは、0<α≦1.5の範囲から選択された値であることがより好ましい。
【0090】
上記の式(1)において、S、D、ω、Smin、及び、αは、露光時間を設定する前の段階で、取得しておく。そして、式(1)に基づいて、この式(1)を満たすようなtを求めて、このtを露光時間として、設定する。以上のように、本変形例に係る露光時間は設定されている。
【0091】
以上説明したような本変形例によれば、露光時間が式(1)に基づいて設定されているので、入射光L1が配線パターン204以外の部分に投光される時間を極力低減することができる。これにより、膜202の膜厚が厚い場合であっても、配線パターン204からの反射光L2の光量が不足することを効果的に抑制することができる。
【0092】
(実施形態2)
続いて、本発明の実施形態2に係る膜厚測定装置30、研磨装置10、及び、膜厚測定方法について説明する。なお、実施形態1と同一の部材には同一の符号を付して、説明を省略する。本実施形態に係る膜厚測定装置30及びこれを備える研磨装置10は、前述した実施形態1の変形例に係る膜厚測定装置30において、「入射光L1のスポットサイズ(D)が配線パターン204の最小幅(W1)よりも小さい」という構成を含まない点において、異なっている。その他の構成は、実施形態1の変形例と同様である。
【0093】
すなわち、本実施形態に係る膜厚測定装置30は、実施形態1に係る膜厚測定装置30において、「入射光L1のスポットサイズ(D)が配線パターン204の最小幅(W1)よりも小さい」という構成の代わりに、「入射光L1の露光時間が前述した式(1)を満たすように設定されている」という構成を含む、膜厚測定装置30である。なお、本実施形態に係る膜厚測定方法は、本実施形態に係る研磨装置10による膜202の研磨中に、本実施形態に係る膜厚測定装置30を用いて膜202の膜厚を測定する方法である。
【0094】
本実施形態によれば、前述した実施形態1の変形例と同様に、入射光L1が配線パターン204以外の部分に投光される時間を極力低減することができる。これにより、膜202の膜厚が厚い場合であっても、配線パターン204からの反射光L2の光量が不足することを抑制することができる。
【0095】
なお、実施形態1の変形例と、本実施形態とを比較した場合、実施形態1の変形例の方が、「入射光L1のスポットサイズ(D)が配線パターン204の最小幅(W1)よりも小さい」という構成をさらに含んでいる点において、配線パターン204からの反射光L2の光量が不足することを、より抑制することができる。
【0096】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0097】
10 研磨装置
11 研磨テーブル
13 基板保持部材
20 研磨制御装置
30 膜厚測定装置
40 センサーモジュール
41 センサーヘッド
42 治具
43 投光器
44 集光器
45 受光器
46 ガラス板
50 光源・分光モジュール
51 光源
52 分光器
60 データ処理システム
61 第1データ処理装置
62 第2データ処理装置
70 研磨パッド
71 研磨面
72 光透過部材
200 基板
201 基板コア
202 膜
203 配線パターン構造
204 配線パターン
L1 入射光
L2 反射光
W1 最小幅
D スポットサイズ
S スポット面積
ω 周速度
Smin 最小面積
t 露光時間