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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】冷凍ソース
(51)【国際特許分類】
   A23L 23/00 20160101AFI20240613BHJP
   A23L 17/40 20160101ALI20240613BHJP
【FI】
A23L23/00
A23L17/40 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020139701
(22)【出願日】2020-08-20
(65)【公開番号】P2022035401
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鍋島 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 真知子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 武紀
【審査官】長谷川 莉慧霞
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-0829514(KR,B1)
【文献】株式会社フタバ MESSAGE[online],No. 173,2014年12月01日,<URL: https://www.futaba-com.co.jp/mess/mes_173.html>,[検索日:2024年1月4日]
【文献】うま!蟹肩で蟹のトマトクリームパスタ,クックパッド[online],2017年01月04日,<URL: https://cookpad.com/recipe/4269208>,[検索日:2024/01/15]
【文献】スパゲティコンサルサディフィノッキクレマエポルパディグランキ,世界のレシピ[online],2016年05月05日,WEBアーカイブ、<URL: http://jp.ndish.com/recipe/re00070/>,[検索日:2024年1月15日]
【文献】蟹とフェンネルのリゾット,FC2ブログ[online],2012年01月07日,<URL: http://tayatoru.blog62.fc2.com/blog-entry-1230.html>,[検索日:2024年1月15日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状部を有するカニ風味ソースを冷凍してなる冷凍ソースであって、該液状部にカニエキス及びカニミソエキスを含み、該液状部100質量%中におけるカニエキス及びカニミソエキスの合計の固形分含量が~5質量%である、冷凍ソース。
【請求項2】
さらに、カニ肉のほぐし身を、前記液状部100質量部に対し湿重量で3~30質量部含む、請求項1に記載の冷凍ソース。
【請求項3】
前記カニ肉のほぐし身が、カニ肩肉のほぐし身である、請求項2に記載の冷凍ソース。
【請求項4】
さらに、フェンネルを、前記液状部100質量%中に固形分として0.005~0.1質量%含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の冷凍ソース。
【請求項5】
前記液状部のpHが3.5~6.0である、請求項1~4のいずれか1項に記載の冷凍ソース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カニ風味の冷凍ソースに関する。
【背景技術】
【0002】
カニは節足動物である甲殻類の一種であり、固い殻で覆われ、胴体に当たる甲羅と、節のある肢を持つことが特徴である。カニは殻の中にある肉や、甲羅の裏にあるみそが独特の風味を有しており、食材として人気がある。またカニを材料としてとった出汁は、スープや、カニ風味の食品原料としても利用されている。一方で、カニは独特の臭みも有しており、カニ身を加熱調理した後に時間が経過した場合や、一旦冷凍後に解凍した場合などに、強い臭みが感じられることがある。
【0003】
そこで従来、食品におけるカニの風味を向上させるための技術が種々提案されている。特許文献1には、紅ズワイガニのカニ身の加工方法として、カニ身を殻付きの状態で半ボイルした後、殻から出してスチーム加熱する加工方法が記載されている。また特許文献2には、姿のまま調理された甲殻類を、別の甲殻類から得られたスープ中に浸した状態で密封されている、甲殻類の加工食品が記載されている。これらの技術によれば、カニの風味を高めることができるが、同時に臭みも強まるため、敬遠される場合も少なくない。
【0004】
また、肉料理、野菜料理、パスタ類等の食品は、各種ソースをかけたり和えたりして喫食されることも多く、そのようなソースの一種として、カニ風味のソースも人気がある。各種ソースは、冷凍して流通・販売されることもあるが、カニ風味のソースの場合、冷凍後に解凍して喫食すると、カニの臭みが感じられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-220561号公報
【文献】特開平11-89544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、冷凍後に解凍して喫食する際に、カニの臭みがほとんど感じられず、カニの風味が極めて高い冷凍ソースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液状部を有するカニ風味ソースを冷凍してなる冷凍ソースであって、該液状部にカニエキス及びカニミソエキスを含み、該液状部100質量%中におけるカニエキス及びカニミソエキスの合計の固形分含量が0.5~5質量%である、冷凍ソースを提供することで上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冷凍後に解凍して喫食する際に、カニの臭みがほとんど感じられず、カニの風味が極めて高い冷凍ソースが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の冷凍ソースは、液状部を有するカニ風味ソースを冷凍してなる。すなわち本発明の冷凍ソースは、その冷凍状態が維持される環境下では、凍結状態の液状部を有する固形物であり、解凍後の常温常圧の環境下(喫食される環境下)では、液状部を有するカニ風味ソース(流動物)である。本発明において、冷凍ソースとは、冷凍状態で長期保管が可能で、解凍してそのまま、又はさらに調理操作を行うことで喫食可能となるソースをいう。本発明の冷凍ソースは、喫食可能な状態(カニ風味ソース)とした後に肉料理、野菜料理、パスタ類等の対象となる食品に付着させることで、対象の食品に簡便にカニ風味を付与することができる。
【0010】
本発明の冷凍ソースは、冷凍前又は解凍後のカニ風味ソースの状態において、液状部のみからなるソースであってもよく、液状部に加えて、後述する固形部(いわゆる具材等)を有するソースであってもよい。本発明において、カニ風味ソースの液状部は、喫食時に液状乃至ペースト状であり、カニ風味を許容できるソースであればどのような種類でもよく、その種類としては、トマトソース、ホワイトソース、ブラウンソース、ベシャメルソース、カレーソース、和風ソース等を例示することができる。
【0011】
本発明の冷凍ソースは、カニエキス及びカニミソエキスを含み、且つ冷凍前又は解凍後の液状部を有するカニ風味ソースの状態で該液状部100質量%中におけるカニエキス及びカニミソエキスの合計の固形分含量が0.5~5質量%である点で特徴付けられる。これにより、カニの臭みを感じることが無く、純粋にカニの持つ風味を感じられるようになる。
【0012】
本発明において、カニエキスとは、カニから水性液体又は蒸気により抽出したエキスであり、通常、粉末状又は液状乃至ペースト状のものである。したがって、カニ全体の粉砕物であるカニパウダー、カニ殻の粉砕物であるカニフィラーは、抽出工程を経ずに製造されたものであるため、本発明でいうカニエキスではない。
カニエキスは例えば以下のようにして製造することができる。カニ原料をそのまま又は軽く裁断し、カニ原料と同質量~10倍質量程度の水に浸漬し、加熱してエキスを抽出する。抽出温度は50~100℃、抽出時間は20分~24時間程度であり得る。抽出後、常法で固液分離した後、得られた液体を加熱濃縮、膜濃縮、減圧濃縮等の公知の方法で濃縮する。濃縮は液体状乃至ペースト状になるまで行ってもよく、乾燥粉末になるまで行ってもよい。以上の製造工程において、熱を過剰にかけるとカニ風味が低下する場合があるため、濃縮は膜濃縮又は減圧濃縮によって行うことが好ましい。
また、食用として市販されているカニエキスを用いても構わない。
カニエキスの製造に用いるカニ原料としては、カニミソを含むカニの全体を用いても、カニ全体から取り出した殻又は肉(ただし、カニミソを除く)を単独で又は組み合わせて用いてもよいが、カニ全体を用いると臭みが感じられやすくなるため、殻のみ、身のみ、又は殻と身とを組み合わせて原料としたカニエキスを用いることが好ましく、殻と身とを組み合わせて原料としたカニエキスを用いることがさらに好ましい。
【0013】
またカニミソとは、カニ甲羅の裏側に付着した茶色から濃緑色のペースト状の部分である。本発明で用いるカニミソエキスは、このカニミソから、カニエキスと同様の手法で抽出したエキスである。つまりカニミソエキスは、カニミソを抽出源とするものであり、カニミソを含むカニ全体又はカニ全体の一部(カニミソを除く)を抽出源とするカニエキスとは明確に区別される。また、食用として市販されているカニミソエキスを用いても構わない。
【0014】
カニエキス及びカニミソエキスの原料として使用できるカニの種類は、特に限定されないが、ズワイガニ、タラバガニ、ヤシガニ、モズクガニ、タカアシガニ、アオガニ、ワタリガニ、毛ガニ、花咲ガニ等を例示することができる。
【0015】
本発明で用いるカニエキス及びカニミソエキスは、同種のカニに由来するものであってもよく、別種のカニに由来するものであってもよい。カニ風味の鮮烈さを高める観点からは、カニエキスとカニミソエキスとで別種のカニを用いることが好ましい。
【0016】
本発明の冷凍ソースにおいて、カニエキス及びカニミソエキスの含有量は、冷凍前又は解凍後の液状部を有するカニ風味ソースの状態で該液状部100質量%中に、両者の合計の固形分含量として0.5~5質量%であり、好ましくは1~4質量%である。0.5質量%未満であると、ソースのカニ風味が物足りなく感じられ、5質量%を超えると、カニの臭みが感じられるようになる。
【0017】
また本発明の冷凍ソースは、冷凍前又は解凍後の液状部を有するカニ風味ソースの状態において、カニエキスとカニミソエキスとの固形分での含有質量比は、前者:後者として、好ましくは3:1~1:2、より好ましくは2:1~1:1である。
【0018】
本発明の冷凍ソースは、フェンネルを含むと、カニの臭みがさらに抑制され、甘い風味が付与されるため好ましい。フェンネルは、ハーブ或いは香辛料として従来から食品に用いられている、セリ科ウイキョウ属の植物である。フェンネルは、葉若しくは種子をそのまま用いてもよく、又は葉若しくは種子を粉砕物若しくはエキスにして用いてもよい。また食用として市販されているものを用いてもよい。
フェンネルは、冷凍前又は解凍後の液状部を有するカニ風味ソースの状態で該液状部100質量%中に、固形分として好ましくは0.005~0.1質量%、より好ましくは0.008~0.08質量%である。
【0019】
また、本発明の冷凍ソースの冷凍前又は解凍後のカニ風味ソースの液状部は、pHが3.5~6.0の範囲であると、カニの臭みやえぐみが生じにくくなるため好ましい。カニエキス及びカニミソエキスを配合したソース液状部のpHは通常6.3~7.3付近となるが、酸性の原材料を配合する、pH調整剤を配合する等により、pHを上記範囲に調整することができる。液状部のpHは、より好ましくは4.4~5.8である。
【0020】
本発明の冷凍ソースは、前述したように、冷凍前又は解凍後の液状部を有するカニ風味ソースの状態において、該液状部に加えて固形部を有してもよく、その場合、本発明の冷凍ソースは、凍結状態の液状部及び固形部を含む。固形部も、カニ風味が許容できるものであれば特に限定されず、その例としては、牛、豚、鶏等の肉類、魚類、甲殻類、野菜類、キノコ類、ショートパスタ類(ラビオリ等)等の具材、クルトン等の浮き具類やトッピング等を例示することができる。
【0021】
本発明の冷凍ソースが固形部を有する場合、液状部と固形部との質量比は、固形部の食材種類等にもよるが、冷凍前又は解凍後の液状部を有するカニ風味ソースの状態において、湿重量基準で、一般的には1:1~20:1程度である。
【0022】
本明細書において、「湿重量」とは、当該物体の非冷凍及び非乾燥状態での重量を指す。例えば、固形部(具体的には例えば、後述するカニ肉のほぐし身)の湿重量は、該固形部を含むソースが非冷凍及び非乾燥状態(典型的には喫食可能状態)にあるときの、該固形部の重量を指す。
【0023】
尚、本発明においては、冷凍ソースに含まれる食材のうち、該冷凍ソースを解凍して得られる、液状部を有する流動状ソース中で、5mm以上の差し渡し長さ又は長軸長さ(以下、これらをまとめて単に「長さ」ともいう)を持って存在するものを固形部とし、流動状ソース中での最大長さがそれ未満のものは液状部に含まれるものとみなして、含有量の算出を行う。例えば、前記流動状ソースが野菜粉砕物を含有する場合、該流動状ソース中で5mm以上の長さを持って存在する野菜粉砕物は固形部であり、該流動状ソース中での長さがそれ未満の野菜粉砕物は液状部に含まれるものとみなす。但し、フェンネルについては、葉又は種子をそのまま用いた場合に、前記流動状ソース中でその長さが5mm以上であっても、液状部に含まれるものとみなす。
【0024】
本発明の冷凍ソースにおいて、固形部としてカニ肉のほぐし身を含むと、特に解凍後のカニ風味ソースの喫食時にそれをかみしめた際のカニ風味が増し、さらにカニ肉の具材感もあるカニ風味ソースが得られるため好ましい。ここで、カニ肉のほぐし身は、差し渡し長さが5mm~20mmの球状、又は長軸方向の長さが5~60mm、長軸方向と直交する径が0.1~2.5mmの繊維状になるように小粒化されたカニの身が好ましい。カニ肉のほぐし身は、カニの脚に由来するもの、爪に由来するもの、甲羅に由来するもの(肩肉)いずれであってもよい。喫食したときの良好な具材感の点からは、肩肉を用いることが好ましい。一定の具材感を付与し、且つソースに臭みが生じることを抑制しつつ濃厚なカニの旨味を味わえる点からは、脚肉を用いることが好ましい。また、カニ肉のほぐし身に使用できるカニの種類は特に限定されず、例えば、カニエキス及びカニミソエキスの原料として使用できるものとして挙げたものを使用することができる。
【0025】
本発明の冷凍ソースにおけるカニ肉のほぐし身の含有量は、液状部100質量部に対し湿重量で、すなわち該冷凍ソースの冷凍前又は解凍後の液状部を有するカニ風味ソースにおいて該液状部100質量部に対して、好ましくは3~30質量部、より好ましくは6~25質量部である。尚、カニ肉のほぐし身は一般に、冷凍ソースに使用される際、見栄えを考慮して、その製造工程で液状部の上にトッピングして冷凍される場合があるが、トッピングしたカニ肉は、冷凍すると変色したり、臭みがより増したりするため、本発明の冷凍ソースにおいて、カニ肉のほぐし身は、凍結状態の液状部中に包含された状態であることが好ましい。
【0026】
本発明の冷凍ソースの製造は、通常の冷凍ソースの製造方法に従えばよい。例えば、常法により液状部を有する中間ソースを製造した後、該中間ソースにカニエキス及びカニミソエキスを添加し、更に必要に応じ具材等の固形部となる食材を添加し、それらを混合してカニ風味ソースを得、該カニ風味ソースを常法により冷凍すればよい。
液状部に用いる原材料としては、食品に通常用いられる成分を特に制限なく用いることができ、例えば、ビーフエキス、野菜エキス等のエキス類、野菜のすりおろし等の粉砕物類(前記固形部に相当するものを除く)、穀粉類、澱粉類、糖類、蛋白質類、油脂類、乳・乳製品類、調味料、酸味料、保存料、乳化剤、増粘剤、ゲル化剤、酸化防止剤、酵素類、色素類、香料類等が挙げられる。また固形部に用いる原材料も特に制限はなく、前述した具材等をそのまま又は別途味付けや調理等を行ってから用いることができる。
【実施例
【0027】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例4は参考例である。
【0028】
以下の実施例及び比較例において使用した材料は以下の通りである。尚、以下の材料に用いたカニ原料は、カニエキスCを除き全てズワイガニであり、カニエキスCはワタリガニである。また以下の材料はいずれも固形分100%であった。
・カニエキスA :カニ肉を煮出したエキスを乾燥粉末化したもの
・カニエキスB :カニ脚の殻付き肉を煮出したエキスを乾燥粉末化したもの
・カニエキスC :カニ脚の殻付き肉を煮出したエキスを乾燥粉末化したもの
・カニミソエキス:カニミソを煮出したエキスを乾燥粉末化したもの
・カニパウダー :カニ全体の乾燥粉砕物
・カニフィラー :カニの殻の乾燥粉砕物
【0029】
〔実施例1~3及び比較例1~7〕
市販のトマトソース(pH6.3)に表1に記載の各原料を加えて、液状部のみからなるカニ風味のトマトソースを製造した。得られたトマトソースをパウチ袋に封入し、-20℃で冷凍して、カニ風味の冷凍トマトソースを製造した。
【0030】
〔試験例1〕
各実施例及び比較例のカニ風味の冷凍トマトソースを解凍し、皿に移して電子レンジで加熱し、訓練された10名の専門パネラーが食し、下記評価基準に従って風味を5点満点で評価した。その結果を、パネラー10名の評価点の平均値として下記表1に示す。
【0031】
<ソースの風味の評価基準>
5点:カニの風味が非常にあり、臭みが全く感じられず、極めて良好。
4点:カニの風味が十分にあり、臭みがほとんど感じられず、良好。
3点:カニの風味があり、臭みがわずかに感じられるが、問題ない風味。
2点:カニの風味がやや物足りず、臭みが感じられ、不良。
1点:カニの風味が物足りず、臭みが強く感じられ、極めて不良。
【0032】
【表1】
【0033】
表1に示す通り、カニエキスとカニミソエキスの両者を含む各実施例の冷凍トマトソースを解凍し加熱したところ、カニの風味が高くてもカニの臭みはあまり感じられず、良好なカニ風味をもつソースであった。これに対して、カニエキス又はカニミソエキスのいずれかのみ含む比較例1~3、カニ全体の粉砕物であるカニパウダーを含む比較例4、及びカニエキス又はカニミソエキスのいずれかとカニパウダー又はカニ殻粉砕物であるカニフィラーのいずれかとを組み合わせた比較例5~7では、カニの風味に比べてカニの臭みが感じられ、好ましいものではなかった。また実施例1の冷凍トマトソースを解凍後に加熱し、オムレツにかけて食したところ、トマトソースの酸味とカニの風味、卵のコクが良好にマッチしており、非常に美味であった。
【0034】
〔実施例4~13及び比較例8~9〕
カニエキスA及びカニミソエキスの配合量を表2及び表3に記載の通りに変えた以外は、実施例1と同様にして、液状部のみからなるカニ風味の冷凍トマトソースを製造した。得られた冷凍トマトソースについて試験例1と同様にして風味を評価した。その結果を表2及び表3に示す。尚、表2及び表3には実施例1の結果を再掲する。
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
〔実施例14~22〕
カニエキス及びカニミソエキスと共に、カニの脚肉のほぐし身(20mm×0.3mmの繊維状)、又は肩肉のほぐし身(差し渡し長さが5mmの球状)を表4に記載の量で配合した以外は、実施例1と同様にして、液状部及び固形部を有するカニ風味の冷凍トマトソースを製造した。得られた冷凍トマトソースについて試験例1と同様にして、風味を評価し、さらに下記評価基準でカニ肉の具材感も評価した。その結果を表4に示す。
【0038】
<ソースのカニ肉の具材感の評価基準>
5点:カニの具材感が非常にあり、極めて良好。
4点:カニの具材感が十分にあり、良好。
3点:カニの具材感があるが、やや物足りない。
2点:カニの具材感があまり感じられず、不良。
1点:カニの具材感がほとんど感じられず、極めて不良。
【0039】
【表4】
【0040】
カニ肉のほぐし身の配合量が液状部100質量部に対して3~30質量部の範囲である実施例16~20及び22では、カニ肉を含まない実施例14、上記範囲外の量で含む実施例15及び21に比べて、ソースのカニ風味が高評価であった。一方で、カニ肉の具材感は、配合量が多いほど評価点が高かったが、配合量が同一である実施例18と実施例22とを対比すると、脚肉のほぐし身よりも肩肉のほぐし身の方が、具材感が良好であった。
【0041】
〔実施例23~31〕
フェンネル(葉の粉末)又はローリエ(葉の粉末)を表5に記載の量で配合した以外は、実施例1と同様にして、液状部のみからなるカニ風味の冷凍トマトソースを製造した。得られた冷凍トマトソースについて試験例1と同様にして風味を評価した。その結果を表5に示す。
【0042】
【表5】
【0043】
フェンネルを配合することで、カニ風味が向上した。この効果はローリエでは認められなかったことから、フェンネルに特有のものと考えられる。
【0044】
〔実施例32~34〕
酢酸ナトリウムを表6に記載の量で配合してpHを表6に記載のように調整した以外は、実施例1と同様にして、液状部のみからなるカニ風味の冷凍トマトソースを製造した。得られた冷凍トマトソースについて試験例1と同様にして風味を評価した。その結果を表6に示す。尚、表6には、実施例1の結果を再掲する。
【0045】
【表6】
【0046】
ソースのpHを6.0以下にすることで、カニ風味が向上した。尚、pHが3.5未満になると、酸味が強くなりすぎ、カニ風味に異味が感じられるようになった。
【0047】
〔実施例35~37及び比較例10~16〕
市販のクリームソース(pH6.6)に表7に記載の各原料を加えてカニ風味のクリームソースを製造した。クリームソースをパウチ袋に封入し、-20℃で冷凍して、カニ風味の冷凍クリームソースを製造した。
【0048】
得られた冷凍クリームソースについて試験例1と同様にして風味を評価した。その結果を表7に示す。
【0049】
【表7】