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特許7503474ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の粘度上昇抑制剤、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品の加水分解抑制剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の粘度上昇抑制剤、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品の加水分解抑制剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20240613BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240613BHJP
   C08K 5/19 20060101ALI20240613BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K3/013
C08K5/19
C08L63/00 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020179523
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070452
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 樹
(72)【発明者】
【氏名】五島 一也
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-075756(JP,A)
【文献】国際公開第2018/174129(WO,A1)
【文献】特開2002-194184(JP,A)
【文献】特開平06-256628(JP,A)
【文献】特開平09-059495(JP,A)
【文献】特開2002-128998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸末端基が35meq/kg以下のポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、エポキシ系樹脂(B)0.5質量部以上10質量部以下と、第4級アンモニウム塩(C)と、寸法精度向上剤(D)を含有する、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であり、第4級アンモニウム塩(C)を構成する第4級アンモニウムカチオンNR の4つのRは、それぞれ炭素原子数1~15の、アルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれか又はそれらの組み合わせであり、寸法精度向上剤(D)が寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)及び/又は寸法精度向上用充填剤(D-2)からなり、寸法精度向上剤(D)の含有量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)0~100質量部及び/又は寸法精度向上用充填剤(D-2)0~100質量部、且つ寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)と寸法精度向上用充填剤(D-2)の合計で10~200質量部であり、
前記第4級アンモニウム塩(C)を構成する前記4つのRの炭素原子数が、いずれも1~10である、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項2】
前記第4級アンモニウム塩(C)を構成する前記4つのRの炭素原子数の合計が30以
下である、請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項3】
前記第4級アンモニウム塩(C)を構成する前記4つのRの炭素原子数の合計が26以下である、請求項2に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項4】
前記第4級アンモニウム塩(C)を構成する前記4つのRの炭素原子数の合計が22以下である、請求項3に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項5】
前記第4級アンモニウム塩(C)を構成する前記4つのRの炭素原子数の合計が18以下である、請求項4に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項6】
前記第4級アンモニウム塩(C)を構成するアニオンが臭化物イオンである、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項7】
前記第4級アンモニウム塩(C)がテトラブチルアンモニウムブロミド及び/又はベンジルトリメチルアンモニウムブロミドである、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項8】
前記第4級アンモニウム塩(C)の含有量が、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し0.1質量部以上3.0質量部以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品。
【請求項10】
第4級アンモニウム塩(C)を含有する、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)とエポキシ系樹脂(B)と寸法精度向上剤(D)を含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の粘度上昇抑制剤であり、前記第4級アンモニウム塩(C)を構成する第4級アンモニウムカチオンNR の4つのRのうち、3つがメチル基であり、他1つがアルキル基、アリール基、アラルキル基から選択される炭素原子数6以上の官能基であり、寸法精度向上剤(D)が寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)及び/又は寸法精度向上用充填剤(D-2)からなり、寸法精度向上剤(D)の含有量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)0~100質量部及び/又は寸法精度向上用充填剤(D-2)0~100質量部、且つ寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)と寸法精度向上用充填剤(D-2)の合計で10~200質量部であり、
前記第4級アンモニウム塩(C)を構成する前記4つのRの炭素原子数が、いずれも1~10である、粘度上昇抑制剤。
【請求項11】
前記第4級アンモニウム塩(C)がベンジルトリメチルアンモニウムブロミドである、請求項10に記載の粘度上昇抑制剤。
【請求項12】
第4級アンモニウム塩(C)を含有する、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)とエポキシ系樹脂(B)を含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品の加水分解抑制剤であり(但し、カルボジイミド化合物を除く)、第4級アンモニウム塩(C)を構成する第4級アンモニウムカチオンNR の4つのRは、それぞれ炭素原子数1~15の、アルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれか又はそれらの組み合わせであり、寸法精度向上剤(D)が寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)及び/又は寸法精度向上用充填剤(D-2)からなり、寸法精度向上剤(D)の含有量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)0~100質量部及び/又は寸法精度向上用充填剤(D-2)0~100質量部、且つ寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)と寸法精度向上用充填剤(D-2)の合計で10~200質量部であり、
前記第4級アンモニウム塩(C)を構成する前記4つのRの炭素原子数が、いずれも1~10である、加水分解抑制剤。
【請求項13】
前記第4級アンモニウム塩を構成する前記第4級アンモニウムカチオンNR の4つのRの炭素原子数の合計が30以下である、請求項12に記載の加水分解抑制剤。
【請求項14】
前記第4級アンモニウム塩を構成する前記第4級アンモニウムカチオンNR の4つのRの炭素原子数の合計が26以下である、請求項13に記載の加水分解抑制剤。
【請求項15】
前記第4級アンモニウム塩を構成する前記第4級アンモニウムカチオンNR の4つのRの炭素原子数の合計が22以下である、請求項14に記載の加水分解抑制剤。
【請求項16】
前記第4級アンモニウム塩を構成する前記第4級アンモニウムカチオンNR の4つのRの炭素原子数の合計が18以下である、請求項15に記載の加水分解抑制剤。
【請求項17】
前記第4級アンモニウム塩を構成するアニオンが臭化物イオンである、請求項12から16のいずれか一項に記載の加水分解抑制剤。
【請求項18】
前記第4級アンモニウム塩がテトラブチルアンモニウムブロミド及び/又はベンジルトリメチルアンモニウムブロミドである、請求項12から17のいずれか一項に記載の加水分解抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の粘度上昇抑制剤、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品の加水分解抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」とも呼ぶ)樹脂は、耐熱性、耐薬品性、電気特性、機械的特性、及び成形加工性などの種々の特性に優れるため、多くの用途に利用されている。
【0003】
しかし、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、結晶性樹脂であることから射出成形時の配向による収縮の異方性に起因する成形品の反り変形など、寸法精度の低下が生じうる。特に、ポリブチレンテレフタレート樹脂が繊維状充填剤を含む場合、ポリブチレンテレフタレート樹脂の分子配向だけでなく、繊維状充填剤の配向による収縮の異方性も発生しやすくなる。そこで、ポリブチレンテレフタレート樹脂に非晶性の樹脂やアスペクト比の小さい充填剤を添加することで、異方性を低減し、寸法精度を向上させることが検討されてきていた。
【0004】
また、ポリブチレンテレフタレート樹脂はポリエステル樹脂であることから、耐加水分解性の改善は耐久性向上に不可欠である。そのため、エポキシ系樹脂やカルボジイミドの添加等、添加剤による改良も従来からなされている。たとえば特許文献1には、非晶性樹脂とカルボジイミドを添加した、低反り性と耐加水分解性に優れるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が開示されている。
【0005】
カルボジイミドは耐加水分解性の改善効果が非常に良好ではあるが、有毒なイソシアネートが発生する問題がある。また、エポキシ系樹脂の場合、耐加水分解性の改善効果が十分でなかったり、PBTのカルボン酸末端とエポキシ基が反応し粘度が上昇する場合があった。
【0006】
なお、エポキシ系樹脂と開環触媒を組み合わせることは従来からよく知られている(特許文献2)。しかしながら、この文献において実際に開環触媒としての効果が示されているのはステアリン酸カルシウムのみである。
【0007】
また、特許文献3には開環触媒が多数例示されている。4級アンモニウム塩としてはテトラブチルアンモニウムブロミドなどの記載はあるものの、特にステアリン酸ナトリウムが好ましいとの記載があり、4級アンモニウム塩の実際の評価はされてはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第WO2009/150833号パンフレット
【文献】特開平11-236492号公報
【文献】特開平8-157701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、寸法精度と耐加水分解性の改善効果に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、成形品、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の粘度上昇抑制剤、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品の加水分解抑制剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、カルボン酸末端基が35meq/kg以下のポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、エポキシ系樹脂(B)0.5質量部以上10質量部以下と、第4級アンモニウム塩(C)と、寸法精度向上剤(D)を含有する、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、上記のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品、第4級アンモニウム塩を含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の粘度上昇抑制剤、第4級アンモニウム塩を含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品の加水分解抑制剤により、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の(1)~(20)に関する。
(1)カルボン酸末端基が35meq/kg以下のポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、エポキシ系樹脂(B)0.5質量部以上10質量部以下と、第4級アンモニウム塩(C)と、寸法精度向上剤(D)とを含有する、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であり、第4級アンモニウム塩(C)を構成する第4級アンモニウムカチオンNR の4つのRは、それぞれ炭素原子数1~15の、アルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれか又はそれらの組み合わせであり、寸法精度向上剤(D)が寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)及び/又は寸法精度向上用充填剤(D-2)からなり、寸法精度向上剤(D)の含有量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)0~100質量部及び/又は寸法精度向上用充填剤(D-2)0~100質量部、且つ寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)と寸法精度向上用充填剤(D-2)の合計で10~200質量部である、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(2)前記第4級アンモニウム塩(C)を構成する前記4つのRの炭素原子数が、いずれも1~10である、(1)に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(3)前記第4級アンモニウム塩(C)を構成する前記4つのRの炭素原子数の合計が30以下である、(1)または(2)に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(4)前記第4級アンモニウム塩(C)を構成する前記4つのRの炭素原子数の合計が26以下である、(3)に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(5)前記第4級アンモニウム塩(C)を構成する前記4つのRの炭素原子数の合計が22以下である、(4)に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(6)前記第4級アンモニウム塩(C)を構成する前記4つのRの炭素原子数の合計が18以下である、(5)に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(7)前記第4級アンモニウム塩(C)を構成するアニオンが臭化物イオンである、(1)から(6)のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(8)前記第4級アンモニウム塩(C)がテトラブチルアンモニウムブロミド及び/又はベンジルトリメチルアンモニウムブロミドである、(1)から(7)のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(9)前記第4級アンモニウム塩(C)の含有量が、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し0.1質量部以上3.0質量部以下である、(1)から(8)のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(10)(1)から(9)のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品。
(11)第4級アンモニウム塩(C)を含有する、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)とエポキシ系樹脂(B)と寸法精度向上剤(D)とを含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の粘度上昇抑制剤であり、前記第4級アンモニウム塩(C)を構成する第4級アンモニウムカチオンNR の4つのRのうち、3つがメチル基であり、他1つがアルキル基、アリール基、アラルキル基から選択される炭素原子数6以上の官能基であり、寸法精度向上剤(D)が寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)及び/又は寸法精度向上用充填剤(D-2)からなり、寸法精度向上剤(D)の含有量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)0~100質量部及び/又は寸法精度向上用充填剤(D-2)0~100質量部、且つ寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)と寸法精度向上用充填剤(D-2)の合計で10~200質量部である、粘度上昇抑制剤。
(12)前記第4級アンモニウム塩がベンジルトリメチルアンモニウムブロミド又はドデシルトリメチルアンモニウムブロミドである、(11)に記載の粘度上昇抑制剤。
(13)第4級アンモニウム塩(C)を含有する、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)とエポキシ系樹脂(B)と寸法精度向上剤(D)とを含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品の加水分解抑制剤であり、前記第4級アンモニウム塩(C)を構成する第4級アンモニウムカチオンNR の4つのRは、それぞれ炭素原子数1~15の、アルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれか又はそれらの組み合わせであり、寸法精度向上剤(D)が寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)及び/又は寸法精度向上用充填剤(D-2)からなり、寸法精度向上剤(D)の含有量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)0~100質量部及び/又は寸法精度向上用充填剤(D-2)0~100質量部、且つ寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)と寸法精度向上用充填剤(D-2)の合計で10~200質量部である、加水分解抑制剤。
(14)前記第4級アンモニウム塩を構成する前記4つのRの炭素原子数が、いずれも1~10である、(13)に記載の加水分解抑制剤。
(15)前記第4級アンモニウム塩を構成する前記4つのRの炭素原子数の合計が30以下である、(13)または(14)に記載の加水分解抑制剤。
(16)前記第4級アンモニウム塩を構成する前記4つのRの炭素原子数の合計が26以下である、(15)に記載の加水分解抑制剤。
(17)前記第4級アンモニウム塩を構成する前記4つのRの炭素原子数の合計が22以下である、(16)に記載の加水分解抑制剤。
(18)前記第4級アンモニウム塩を構成する前記4つのRの炭素原子数の合計が18以下である、(17)に記載の加水分解抑制剤。
(19)前記第4級アンモニウム塩を構成するアニオンが臭化物イオンである、(13)から(18)のいずれかに記載の加水分解抑制剤。
(20)前記第4級アンモニウム塩がテトラブチルアンモニウムブロミド及び/又はベンジルトリメチルアンモニウムブロミドである、(13)から(19)のいずれかに記載の加水分解抑制剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、寸法精度と耐加水分解性の改善効果に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、成形品、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の粘度上昇抑制剤、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品の加水分解抑制剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。また、本明細書において「X~Y」との表現は、「X以上Y以下」であることを意味している。
【0014】
[ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物]
(ポリブチレンテレフタレート樹脂)
ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)は、少なくともテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステルや酸ハロゲン化物等)を含むジカルボン酸成分と、少なくとも炭素原子数4のアルキレングリコール(1,4-ブタンジオール)又はそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を含むグリコール成分とを重縮合して得られるポリブチレンテレフタレート樹脂である。本実施形態において、ポリブチレンテレフタレート樹脂はホモポリブチレンテレフタレート樹脂に限らず、ブチレンテレフタレート単位を60モル%以上含有する共重合体であってもよい。
【0015】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は35meq/kg以下であるが、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、30meq/kg以下が好ましく、25meq/kg以下がより好ましい。
【0016】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV)は本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されないが、0.60dL/g以上1.2dL/g以下であるのが好ましく、0.65dL/g以上0.9dL/g以下であるのがより好ましい。このような範囲の固有粘度のポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合には、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が特に成形性に優れたものとなる。また、異なる固有粘度を有するポリブチレンテレフタレート樹脂をブレンドして、固有粘度を調整することもできる。例えば、固有粘度1.0dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂と固有粘度0.7dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂とをブレンドすることにより、固有粘度0.9dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂を調製することができる。ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、例えば、o-クロロフェノール中で温度35℃の条件で測定することができる。
【0017】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の調製において、コモノマー成分としてテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を用いる場合、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル等のC8-14の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC4-16のアルカンジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等のC5-10のシクロアルカンジカルボン酸;これらのジカルボン酸成分のエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステル誘導体や酸ハロゲン化物等)を用いることができる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0018】
これらのジカルボン酸成分の中では、イソフタル酸等のC8-12の芳香族ジカルボン酸、及び、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC6-12のアルカンジカルボン酸がより好ましい。
【0019】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の調製において、コモノマー成分として1,4-ブタンジオール以外のグリコール成分を用いる場合、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-オクタンジオール等のC2-10のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等の、ビスフェノールAのC2-4のアルキレンオキサイド付加体;又はこれらのグリコールのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を用いることができる。これらのグリコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0020】
これらのグリコール成分の中では、エチレングリコール、トリメチレングリコール等のC2-6のアルキレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール、又は、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール等がより好ましい。
【0021】
ジカルボン酸成分及びグリコール成分の他に使用できるコモノマー成分としては、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4-カルボキシ-4’-ヒドロキシビフェニル等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸;プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(ε-カプロラクトン等)等のC3-12ラクトン;これらのコモノマー成分のエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステル誘導体、酸ハロゲン化物、アセチル化物等)が挙げられる。
【0022】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量は、樹脂組成物の全質量の20~90質量%であることが好ましく、30~80質量%であることがより好ましく、40~70質量%であることがさらに好ましい。
【0023】
(エポキシ系樹脂)
本発明におけるエポキシ系樹脂を構成するエポキシ系化合物としては、例えば、ビフェニル型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物等の芳香族エポキシ化合物を挙げることができる。エポキシ化合物は、2種以上の化合物を任意に組み合わせて使用してもよい。エポキシ当量は、150~1500g/当量(g/eq)であることが好ましい。
【0024】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物におけるエポキシ系樹脂の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、0.5質量部以上10質量部以下であるが、0.5質量部以上8質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上6質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがさらに好ましく、0.5質量部以上4質量部以下であることが特に好ましい。
【0025】
(第4級アンモニウム塩)
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に含有される第4級アンモニウム塩を構成する第4級アンモニウムカチオンは、分子式NR で表される正電荷を持った多原子イオンである。4つのRはそれぞれ炭素原子数1~15の、アルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれか又はそれらの組み合わせである。
【0026】
4つのRの炭素原子数はいずれも1~10であることが好ましく、1~8であることがより好ましく、1~7であることがさらに好ましく、2~4であることが特に好ましく、4(ブチル基)であることが最も好ましい。なお、4つのRの炭素原子数は互いに異なっていてもよい。また、4つのRの炭素原子数の合計は30以下であることが好ましく、26以下であることがより好ましく、22以下であることがさらに好ましく、18以下であることが特に好ましく、16以下であることが最も好ましい。
【0027】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に含有される第4級アンモニウム塩を構成するアニオンは、1価の負電荷を有している。そのアニオンは、ハロゲン化物イオンであることが好ましく、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンからなる群から選択されるイオンであることがより好ましく、塩化物イオン、臭化物イオンからなる群から選択されるイオンであることがさらに好ましく、臭化物イオンであることが特に好ましい。
【0028】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に含有される特に好ましい第4級アンモニウム塩として、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミドが挙げられる。
【0029】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に含有される第4級アンモニウム塩の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し0.1質量部以上3.0質量部以下であることが好ましく、0.15質量部以上2.0質量部以下であることがより好ましく、0.2質量部以上1.0質量部以下であることがさらに好ましい。
【0030】
(ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の粘度上昇抑制剤)
また、第4級アンモニウム塩として、NR で表される第4級アンモニウムカチオンの4つのRのうち、3つがメチル基であり、他1つがアルキル基、アリール基、アラルキル基から選択される炭素原子数6以上の官能基であるものを用いることにより、ポリブチレンテレフタレート樹脂とエポキシ系樹脂を含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の粘度上昇抑制剤とすることが可能である。本発明の粘度上昇抑制剤として好ましい第4級アンモニウム塩としては、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドが挙げられる。
【0031】
(ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品の加水分解抑制剤)
さらに、第4級アンモニウム塩として、NR で表される第4級アンモニウムカチオンの4つのRが、それぞれ炭素原子数1~15の、アルキル基、アリール基、アラルキル基のいずれか又はそれらの組み合わせであるものを用いることにより、ポリブチレンテレフタレート樹脂とエポキシ系樹脂を含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品の加水分解抑制剤とすることが可能である。
【0032】
(寸法精度向上剤)
本発明におけるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、当該樹脂組成物からなる成形品の反り変形を抑制するために、寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)及び/又は寸法精度向上用充填剤(D-2)からなる寸法精度向上剤(D)が添加される。
【0033】
寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)としては、成形時や熱処理時の収縮率及び/又は線膨張係数が小さいのみならず、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)との加工温度が近く、相溶性の良い樹脂を好ましく用いることができる。このような寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)としては、ポリアミド樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂(ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体等)、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、ポリブチレンテレフタレート以外のポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂等)、ポリオレフィン樹脂、オレフィン系エラストマ、コアシェル系エラストマ、ジエン系エラストマ、ポリエステル系エラストマ、ウレタン系エラストマ、シリコーン系エラストマ及びこれらの組み合わせを挙げることができる。中でも、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、およびスチレン系樹脂といった非晶性の熱可塑性樹脂は、成形品の収縮率やその異方性が小さいため低反り化の効果が得やすく、またポリブチレンテレフタレート樹脂組成物中に液状の添加剤が含有される場合に、そのブリードアウトを抑制する効果も得られるため特に好ましい。また、ポリオレフィン樹脂やオレフィン系エラストマ(エチレンエチルアクリレート共重合体など)は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に添加した際に、耐トラッキング性の低下が小さいことから、特に耐トラッキング性が要求される用途においては、これらを添加することも好ましい。なお、これらの樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂の親和性を向上させるために、公知の相溶化剤を併用しても良い。
【0034】
寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)の添加量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、0~100質量部であり、5~90質量部または10~80質量部であっても良い。ただし、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)との相溶性によっては、多量に添加することで良好な分散状態が得られず、凝集塊や相間剥離により、組成物としての機械的特性を悪化させるおそれがあるため、寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)の含有量は、本発明におけるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物全体に対し、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、25質量%以下であることが特に好ましい。
【0035】
寸法精度向上用充填剤(D-2)としては、有機系充填剤、無機系充填剤、金属系充填剤及びこれらの組み合わせのいずれも用いることができるが、樹脂成形品の加工温度範囲や使用温度範囲における収縮率や線膨張係数の小さい、無機系充填剤、金属系充填剤が好ましい。また、金属部材と組み合わせる絶縁部材として用いる成形品においては、絶縁性を確保する意味で無機系充填剤を用いることが特に好ましい。
【0036】
寸法精度向上用充填剤(D-2)の形状としては、繊維状充填剤、板状充填剤、球状充填剤、粉状充填剤、曲面状充填剤、不定形充填剤及びこれらの組み合わせのいずれも用いることができるが、反り変形を低減するには、異方性の小さい充填剤を用いることが好ましい。板状充填剤、球状充填剤、粉状充填剤等、特にアスペクト比が1に近い充填剤を用いることがより好ましい。一方、ガラス繊維等の繊維状充填剤を用いる場合、引張強度等の機械的特性の向上効果は大きいが、繊維状充填剤の配向に起因して、反りの原因となる収縮率の異方性が大きくなる傾向にあるため、本発明において寸法精度向上用充填剤(D-2)として用いる繊維状充填剤は、ミルドファイバやウィスカ等の繊維長÷繊維径の比が100以下(好ましくは2~30)の短繊維か、断面が繭型や長円形・楕円形といった扁平形状(断面の長径÷短径の比が1.3~10、好ましくは1.5~5)の非円形断面繊維といった、アスペクト比が小さいものである。なお、これら繊維長や繊維径(断面の長径、短径含む)の比は、繊維状充填剤の製造元各社が開示するカタログや仕様書の値を用いて算出すればよい。
【0037】
板状充填剤の具体例としては、板状タルク、マイカ、ガラスフレーク、金属片及びこれらの組み合わせ等を挙げることができ、球状充填剤の具体例としては、ガラスビーズ、ガラスバルーン、球状シリカ及びこれらの組み合わせ等を挙げることができ、粉状充填剤としてはガラス粉、タルク粉、石英粉末、石英粉末、カオリン、クレー、珪藻土、ウォラストナイト、炭化珪素、窒化珪素、金属粉、無機酸金属塩(炭酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸カルシウム、スズ酸亜鉛、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等)の粉末、金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等)の粉末、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、アルミナ水和物(ベーマイト)等)の粉末、金属硫化物(硫化亜鉛、硫化モリブデン、硫化タングステン等)の粉末、及びこれらの組み合わせ等を挙げることができる。なお、金属部材と組み合わせて用いる成形品においては、金属腐食性の観点から、これら寸法精度向上用充填剤(D-2)の中に含まれる遊離無機酸の含有量がそれぞれ0.5質量%以下のものであることが好ましい。
【0038】
寸法精度向上用充填剤(D-2)のサイズについては、反り低減効果と機械的特性や流動性等とのバランスを考慮して適宜選択することができる。例えばタルクとしては、体積平均粒子径が1~10μmのタルク、または嵩比重が0.4~1.5の圧縮微粉タルクを好適に用いることができ、マイカとしては、体積平均粒子径が10~60μmのマイカを好適に用いることができる。これら平均粒子径や嵩比重についても、製造元各社が開示するカタログや仕様書の値を用いればよい。
【0039】
これらの寸法精度向上剤(D-2)は、無機化合物および/または有機化合物で表面処理(表面被覆)されていてもよく、表面処理に用いられる無機化合物としては、例えば、水酸化アルミニウム、アルミナ、シリカ、ジルコニア、水酸化ジルコニウム、ジルコニア水和物、酸化セリウム、酸化セリウム水和物、水酸化セリウム等のアルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、セリウム等の無機酸化物、水酸化物が好ましく挙げられる。また、これらの無機化合物は水和物であってもよい。これらの中でも、水酸化アルミニウム、シリカが好ましく、シリカを用いる場合は、SiO・nHOで表されるシリカ水和物であることが特に好ましい。また、表面処理に用いられる有機化合物としては、エポキシ化合物やアミン化合物が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ、ノボラック型エポキシ等のエポキシ化合物およびモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジクロルヘキシルアミン等のアミン化合物をより好ましい化合物として例示することができる。
【0040】
寸法精度向上剤(D-2)の添加量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、0~100質量部であり、5~90質量部または10~80質量部であっても良い。寸法精度向上剤(D-2)の添加量は、反り低減効果と機械的特性や流動性等とのバランスを考慮して適宜選択することができる。
【0041】
上述の寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)及び/又は寸法精度向上用充填剤(D-2)からなる寸法精度向上剤(D)の添加量は、寸法精度向上用アロイ樹脂(D-1)と寸法精度向上用充填剤(D-2)の合計として、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、10~200質量部であり、20~180質量部または30~150質量部であっても良い。
【0042】
(その他の成分)
本発明の実施形態のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、その目的に応じた所望の特性を付与するために、一般に熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂に添加される公知の物質、例えば、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、円形断面ガラス繊維などの強化用充填剤、帯電防止剤、染料や顔料等の着色剤、離型剤、潤滑剤、結晶化促進剤、結晶核剤等を配合することが可能である。
【0043】
(成形品)
本発明の実施形態の成形品は、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形してなるものである。成形方法は特に限定されず、公知の成形方法を採用することができる。例えば、(1)各成分を混合して、一軸又は二軸の押出機により混練し押出してペレットを調製した後、成形する方法、(2)一旦、組成の異なるペレット(マスターバッチ)を調製し、そのペレットを所定量混合(希釈)して成形に供し、所定の組成の成形品を得る方法、(3)成形機に各成分の1又は2以上を直接仕込む方法などで製造できる。なお、ペレットは、例えば、脆性成分(ガラス系補強材など)を除く成分を溶融混合した後に、脆性成分を混合することにより調製してもよい。また、熱可塑性樹脂からなる他の成形品の成形方法もまた、特に限定されず、公知の成形方法を採用することができる。
【0044】
成形品は、前記樹脂組成物を溶融混練し、押出成形、射出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、回転成形、ガスインジェクションモールディングなどの慣用の方法で成形してもよいが、通常、射出成形により成形される。なお、射出成形時の金型温度は、通常40~90℃、好ましくは50~80℃、さらに好ましくは60~80℃程度である。
【0045】
成形品は、着色剤を含んでいてもよい。前記着色剤としては、無機顔料[カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックなど)などの黒色顔料、酸化鉄赤などの赤色顔料、モリブデートオレンジなどの橙色顔料、酸化チタンなどの白色顔料など]、有機顔料(黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料など)などが挙げられる。カーボンブラックの平均粒子径は、通常、10~1000nm、好ましくは10~100nm程度であってもよい。着色剤の割合は、成形品全体に対して0.1~10重量%、好ましくは0.3~5重量%(例えば、0.3~3重量%)程度である。
【0046】
[実施例]
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
<材料>
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)
・PBT:ポリプラスチックス社製、末端カルボキシル基量12meq/kg、固有粘度0.87dl/gのポリブチレンテレフタレート樹脂
(B)エポキシ系樹脂
・エポキシ樹脂:三菱ケミカル社製、エピコートJER1004K
(C)第4級アンモニウム塩
・(C-1)テトラブチルアンモニウムブロミド
・(C-2)テトラエチルアンモニウムブロミド
・(C-3)テトラプロピルアンモニウムブロミド
・(C-4)テトラペンチルアンモニウムブロミド
・(C-5)テトラヘキシルアンモニウムブロミド
・(C-6)テトラヘプチルアンモニウムブロミド
・(C-7)テトラオクチルアンモニウムブロミド
・(C-8)テトラブチルアンモニウムクロリド
・(C-9)テトラブチルアンモニウムヨージド
・(C-10)テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート
・(C-11)ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド
・(C-12)ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド
・(C-13)ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド
・(C-14)ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド
・(C’-1)セチルジメチルエチルアンモニウムブロミド
・(C’-2)ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド
・(C’-3)フェニルボロン酸
・(C’-4)ステアリン酸カルシウム
・(C’-5)ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート
(D)寸法精度向上剤
(D-1)寸法精度向上用アロイ樹脂
(D-1-1)AS樹脂(Ningbo LG Yongxing Chemical社製、アクリロニトリル-スチレン樹脂 80HF)
(D-1-2)PC樹脂(帝人社製、ポリカーボネート樹脂 パンライトL-1225W)
(D-1-3)PET樹脂(帝人社製、ポリエチレンテレフタレート樹脂 TRN-8550FF)
(D-1-4)EEA共重合体(NUC社製、NUC-6570)
(D-2)寸法精度向上用充填剤
(D-2-1)タルク(松村産業社製、クラウンタルクPP)
(D-2-2)ガラスフレーク(日本板硝子社製、マイクログラス フレカREFG-301)
(D-2-3)扁平断面ガラス繊維(日東紡社製、CSG3PA830(長径28μm、短径7μmの長円形断面(長径÷短径比=4)、平均繊維長3mmの長円形断面ガラス繊維))
(その他の成分)
・強化用充填剤:日本電気硝子製、円形断面ガラス繊維 ECS03T―127(平均繊維径13μm、平均繊維長3mm)
・酸化防止剤:BASFジャパン社製、フェノール系酸化防止剤 イルガノックス1010
・滑剤:理研ビタミン社製、ジグリセロールテトラベヘネート リケマールB74
【0048】
<評価方法>
(実施例1~24、比較例1~11)
各成分を表1、2に示す割合で混合した後、日本製鋼所製TEX-30を用いて、シリンダー温度260℃、吐出量15kg/h、スクリュ回転数130rpmで溶融混練して押出し、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなるペレットを得て、以下の各特性の評価を行った。
【0049】
(溶融粘度)
得られたペレットを140℃で3時間乾燥した後、東洋精機製キャピログラフを用い、キャピラリーとして1mmφ×20mmL/フラットダイを使用し、バレル温度260℃、滞留時間9分にて、せん断速度1000sec-1での溶融粘度(Pa・s)を測定した。溶融粘度が150Pa・s以下のものを◎、150Pa・s超200Pa・s以下のものを○、200Pa・s超のものを×として判定した結果を表1、2に示す。
【0050】
(耐加水分解性)
得られたペレットを140℃で3時間乾燥した後、シリンダー温度260℃、金型温度80℃で射出成形して、ISO3167に準拠した1Aタイプの引張試験片を作製し、得られた試験片について、ISO527-1,2に準拠し、引張強さの測定を行った。
【0051】
次いで、同様にして作製した別の引張試験片を、プレッシャークッカー試験(121℃×100%Rh×203kPa×75hr、100hr、120hr)にて処理した後、ISO527-1,2に準拠し、引張強さの測定を行い、未処理品の引張強さに対する比率からそれぞれの強度保持率(%)を算出した。強度保持率が80%以上のものを◎、50%以上80%未満のものを○、30以上50%未満のものを△、30%未満のものを×として判定した結果を表1、2に示す。
【0052】
(寸法精度(低反り性))
得られたペレットを140℃で3時間乾燥させた後、シリンダ温度260℃、金型温度60℃、保圧60MPaにて120mm×120mm×2mmの平板状試験片を射出成形した。得られた平板状試験片を23℃、50%RHで24時間静置後、定盤上に載置し、上面の四隅と中心、及び各辺の中央部(4点)の、合計9点についてミツトヨ製CNC画像測定機で高さ方向の座標を測定し、最高部と最低部との差から、成形品の反りの発生量を算出した。反りの発生量が5mm以下である場合を◎、5mm超10mm以下である場合を○、10mm超15mm以下である場合を△、15mm超である場合を×として評価した結果を表1、2に示す。
【0053】

【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
表1、2に示した通り、各実施例ではPCT処理後においても、高い引張強さ保持率を示していた。特に、各実施例ではPCT処理100hr後または120hr後において顕著な優位性が見られることが確認された。これは、本発明の特定の第4級アンモニウム塩が、ポリブチレンテレフタレート樹脂とエポキシ系樹脂を含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品の加水分解性を向上させていることを示している。
【0056】
また、表1の実施例21、24に示した通り、本発明の第4級アンモニウム塩のカチオンを構成する4つのRのうち、3つがメチル基、他1つがアルキル基、アリール基、アラルキル基から選択される炭素原子数6以上の官能基である場合、ポリブチレンテレフタレート樹脂とエポキシ系樹脂を含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の粘度上昇を抑制しつつ、PCT100hr後または120hr後においても、高い引張強さ保持率を示していた。