IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アプライド マテリアルズ インコーポレイテッドの特許一覧 ▶ ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニアの特許一覧

特許7503547金属シリサイドの選択的堆積及び酸化物の選択的除去
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】金属シリサイドの選択的堆積及び酸化物の選択的除去
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/28 20060101AFI20240613BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20240613BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240613BHJP
   C23C 16/02 20060101ALI20240613BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
H01L21/28 A
H01L21/28 301S
H01L21/285 C
H01L21/302 102
C23C16/02
C23C16/42
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021524215
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 US2019052967
(87)【国際公開番号】W WO2020101806
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】16/189,429
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハン, レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】キム, ナムスン
(72)【発明者】
【氏名】ネマニ, シュリーニヴァース ディー.
(72)【発明者】
【氏名】イー, エリー ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】チョイ, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】アルズ, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】キュンメル, アンドリュー
【審査官】早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-533877(JP,A)
【文献】特表2011-508433(JP,A)
【文献】特開昭61-128521(JP,A)
【文献】特開平07-283168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/311
H01L 21/3205-21/3215
H01L 21/768
H01L 23/52
H01L 23/522-23/532
H01L 21/28-21/288
H01L 29/40-29/51
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理方法であって、
バルク酸化ケイ素及び自然酸化ケイ素を含むケイ素含有基板を、NF前駆体及びNH前駆体から形成されたプラズマ並びにArに曝露して、前記基板に含まれるバルク酸化ケイ素及び自然酸化ケイ素のうち、前記自然酸化ケイ素を選択的かつ優先的に除去することを含み、前記曝露することが、
前記基板を約40℃と約50℃の間の温度に加熱すること、及び
約40秒未満の期間、前記基板を前記プラズマとArに曝露すること、
を含み、
前記NF 前駆体、前記NH 前駆体、及びArの比(NF :NH :Ar)は、1:10:1.5である、方法。
【請求項2】
基板処理方法であって、
バルク酸化ケイ素及び自然酸化ケイ素を含むケイ素含有基板を、NF前駆体及びNH前駆体から形成されたプラズマに曝露して、前記基板に含まれるバルク酸化ケイ素及び自然酸化ケイ素のうち、前記自然酸化ケイ素を選択的かつ優先的に除去することであって、
前記基板を約40℃と約50℃の間の温度に加熱すること、及び
約40秒未満の期間、前記基板を前記プラズマに曝露すること、
を含む、前記自然酸化ケイ素を選択的かつ優先的に除去することと、
前記基板を第1の温度に加熱することと、
前記基板を、水素を含むプラズマに曝露することと、
前記基板をMoF前駆体の第1の供給量に曝露することと、
前記基板をSi前駆体の第2の供給量に曝露することと、
前記基板を前記第1の供給量に曝露することと、前記基板を前記第2の供給量に曝露することとを連続サイクルで行うことと、
前記連続サイクル後に、前記基板をSi前駆体の第3の供給量に曝露することと、
を含む、方法。
【請求項3】
前記基板を約500℃と約550℃の間の第2の温度で前記第3の供給量に曝露した後に、前記基板をアニールすることをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の温度が約100℃と約150℃の間である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記連続サイクルが10回未満実施される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
水素を含む前記プラズマが、NF、NH、及びHからなる群より選択される前駆体から形成される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
を用いる窒素パージプロセスが前記連続サイクル中に実施される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の供給量が約10msと約100msの間の持続時間で実施される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の供給量が、約1MegaLと約10MegaLの間のMoF流量を含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の供給量が約1msと約50msの間の持続時間で実施される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の供給量が、約1MegaLと約10MegaLの間のSi流量を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第3の供給量が、約20MegaLと約50MegaLの間のSi流量を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
基板処理方法であって、
バルク酸化ケイ素及び自然酸化ケイ素を含むケイ素含有基板を、チャンバ壁を有する反応チャンバ中のヒータ上に配置することと、
前記基板をNF前駆体及びNH前駆体から形成されたプラズマに曝露して、前記基板に含まれるバルク酸化ケイ素及び自然酸化ケイ素のうち、前記自然酸化ケイ素を選択的かつ優先的に除去することであって、
前記基板を約40℃と約50℃の間の温度に加熱すること、及び
約40秒未満の期間、前記基板を前記プラズマに曝露すること、
を含む、前記自然酸化ケイ素を選択的かつ優先的に除去することと、
前記ヒータ上の前記基板を第1の温度に加熱することと、
前記チャンバ壁を前記第1の温度より低い第2の温度で維持することと、
前記基板のケイ素含有表面を水素に曝露することと、
前記基板をMoF前駆体の第1の供給量に曝露することと、
前記基板をSi前駆体の第2の供給量に曝露することと、
前記基板を前記第1の供給量に曝露することと、前記基板を前記第2の供給量に曝露することとを連続サイクルで行うことと、
前記連続サイクル後に、前記基板をSi前駆体の第3の供給量に曝露することと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施態様は、概して、金属シリサイドの堆積及び自然酸化ケイ素の選択的エッチングのための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノスケールデバイス上の材料の正確な配置は、次世代ナノエレクトロニクスの原子スケールの特性の操作にとって重要である。半導体製造では、コスト、歩留まり、及びスループットの要求を満たすために、優れた共形性及び化学量論を備えた材料の詳細な配置が利用される。金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)のチャネル長が縮小し続けているため、反応性イオンエッチングによる損傷や構造アライメントの構造の複雑さといった、トップダウンプロセスに起因する制約を克服することが望ましい。
【0003】
最近、MOSFETデバイスが3D構造(FinFET)で製造されているため、共形の膜の品質を維持しながら、ナノスケールの領域選択的堆積に関心が高まってきた。領域選択的堆積への1つのアプローチは、原子層堆積(ALD)プロセスと組み合わせて、自己組織化単分子層(SAM)をパッシベーション層として利用することである。パッシベーション層は、ALD前駆体に対して反応性のある表面官能基をブロック又は排除するため、選択性を得ることができる。しかしながら、SAMのアプローチは依然としてパッシベーション層の選択的堆積を利用している。さらに、選択的堆積の後にパッシベーション層が選択的に除去され、これは、プロセスがさらに複雑になり、スループットが低下することを余儀なくさせる。
【0004】
さらに、高度な選択的領域堆積を可能にするためには、その上に選択的に堆積するために内在する材料を露出させるために、自然酸化物材料を除去する必要がある。ただし、高度なノードでは、基板上に自然酸化物材料に加えて他の酸化物材料が存在するとき、自然酸化物の除去がますます複雑になり、選択は困難になる。
【0005】
よって、当該技術分野では、材料の選択的堆積及び酸化物の選択的除去のための改善された方法が必要とされる。
【発明の概要】
【0006】
一実施態様では、基板処理方法が提供される。この方法は、ケイ素含有表面を有する基板を第1の温度に加熱することと、基板を水素を含むプラズマに曝露することと、基板をMoF前駆体の第1の供給量に曝露することと、基板をSi前駆体の第2の供給量に曝露することとを含む。基板を第1の供給量に曝露すること及び基板を第2の供給量に曝露することは逐次的に循環され、その連続サイクルの後、基板はSi前駆体の第3の供給量に曝露される。
【0007】
別の実施態様では、基板処理方法が提供される。この方法は、チャンバ壁を有する反応チャンバ中のヒータ上に基板を配置することと、ヒータ上の基板を第1の温度に加熱することと、チャンバ壁を第1の温度未満の第2の温度で維持することと、基板のケイ素含有表面を水素に曝露することとを含む。基板はMoF前駆体の第1の供給量に曝露され、基板はSi前駆体の第2の供給量に曝露され、基板を第1の供給量に曝露すること及び基板を第2の供給量に曝露することは逐次的に循環され、その連続サイクルの後、基板はSi前駆体の第3の供給量に曝露される。
【0008】
さらに別の実施態様では、基板処理方法が提供される。この方法は、基板を第1の温度に加熱することと、基板のケイ素含有表面を水素含有プラズマに曝露することと、基板をMoF前駆体の第1の供給量に曝露することと、基板をSi前駆体の第2の供給量に曝露することとを含む。基板を第1の供給量に曝露すること及び基板を第2の供給量に曝露することは逐次的に循環され、その連続サイクルの後、基板はSi前駆体の第3の供給量に曝露され、基板を第3の供給量に曝露した後、基板は約500℃と約550℃の間の第2の温度でアニールされる。
【0009】
特許又は出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも一つの図面を含有する。カラー図面付きのこの特許又は特許出願公開の写しは、請求に応じて、必要な料金を支払うことにより、特許庁から提供される。
【0010】
本開示の上述の特徴を詳細に理解できるように、上記で簡単に要約されている本開示のより詳細な説明が、実施態様を参照することによって得られ、それらの実施態様の一部が添付図面に示される。しかし、添付図面は例示的な実施態様を示しているにすぎず、したがって、本開示の範囲を限定すると見なすべきではなく、その他の等しく有効な実施態様も許容され得ることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本明細書に記載の実施態様による、ケイ素基板上のMoSi膜選択性のX線光電子分光法(XPS)データを示す。
図1B】本明細書に記載の実施態様による、酸窒化ケイ素基板上のMoSi膜選択性のXPSデータを示す。
図2A】本明細書に記載の実施態様による、ケイ素基板上のSi及びMoのXPS酸化状態データを示す。
図2B】本明細書に記載の実施態様による、ケイ素基板上のSi及びMoのXPS酸化状態データを表す。
図3A】本明細書に記載の実施態様による、ALD処理の前の異なる基板タイプ上に存在するさまざまな要素のXPS化学組成データを示す。
図3B】本明細書に記載の実施態様による、5回のALDサイクルの後の異なる基板タイプ上に存在するさまざまな要素のXPS化学組成データを示す。
図3C】本明細書に記載の実施態様による、追加のALDサイクルの後の異なる基板タイプ上に存在するさまざまな要素のXPS化学組成データを示す。
図4A】本明細書に記載の実施態様による、ALD処理の前の異なる基板タイプ上に存在するさまざまな要素のXPS化学組成データを示す。
図4B】本明細書に記載の実施態様による、5回のALDサイクルの後の異なる基板タイプ上に存在するさまざまな要素のXPS化学組成データを示す。
図4C】本明細書に記載の実施態様による、アニーリング処理の後の図4Bの基板のXPS化学組成データを示す。
図5A】本明細書に記載の実施態様による、Arスパッタリングの後のMoSi膜のXPS深さプロファイリングデータを示す。
図5B】本明細書に記載の実施態様による、MoSi膜のXPS化学組成データを示す。
図5C】本明細書に記載の実施態様による、時間に対するMoSi膜の化学組成を表すデータを示す。
図6A】本明細書に記載の実施態様による、Arスパッタリングの後のMoSi膜のXPS深さプロファイリングデータを示す。
図6B】本明細書に記載の実施態様による、MoSi膜の表面組成データを示す。
図6C】本明細書に記載の実施態様による、図6BのMoSi膜のバルク組成データを示す。
図6D】本明細書に記載の実施態様による、時間に対するMoSi膜の化学組成を表すデータを示す。
図7】本明細書に記載の実施態様による、基板上に存在する他の材料に対して有利にケイ素上に選択的に堆積したMoSi膜の断面トンネル電子顕微鏡写真(TEM)である。
図8】本明細書に記載の実施態様による、バルク酸化ケイ素に対する自然酸化ケイ素の選択的エッチングを示すグラフである。
図9】本明細書に記載の実施態様による、接触構造の一部の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
理解が容易になるよう、可能な場合には、各図に共通する同一の要素を示すために同一の参照番号を使用した。一実施態様の構成要素及び特徴は、さらなる記述がなくとも、他の実施態様に有益に組み込まれ得ると想定されている。
【0013】
本明細書に記載の実施態様は、領域選択的堆積のためのALD前駆体の、基板に応じた反応性を利用する方法を含む。より具体的には、本開示の実施態様は、MoF及びSiの基板選択性を使用する、SiO、SiON、及びSiNよりも優先的にSi上にMoSiを選択的に堆積させることに関する。化学量論的なMoSi膜を実現するために、Moが豊富なMoSi膜にSiを供給することにより、MoF及びSiのALDサイクルの後に膜への追加のSiの導入が実施された。本明細書に記載の方法は、バルク酸化物材料をエッチングすることなく自然酸化物材料の除去を可能にする、自然酸化物の選択的除去も提供する。
【0014】
SiO及びSiNよりも優先的にSi上にMoSiを高度に選択的に堆積させることは、MoF及びSi前駆体を使用する原子層堆積(ALD)を介して実現された。堆積の選択性は、反応物質(MoF及びSi)とSiO及びSiN含有基板との間の化学反応性の欠如によって可能になった。対照的に、自己制御的にH終端Si上に核形成されたMoFと、それに続くSiの曝露は、MoFをMoに還元させた。これはMo-Si結合形成と一致する。
【0015】
X線光電子分光法(XPS)により、MoF及びSiの5回のALDサイクルが準化学量論的なMoSi膜をSi基板上に選択的に堆積させたことが明らかになった。ALDプロセスでは、MoF及びSi前駆体は、それぞれの連続する前駆体の曝露間にパージを伴って繰り返して、逐次的に循環された。追加のSiを準化学量論的なMoSi膜へ供給することにより、SiO及びSiNに対する堆積選択性を妨げることなく、より多くのSiが膜に導入された。一実施態様では、MoSi膜のバルクは、約1.7と約1.9の間のSi:Mo比を有し、約10%未満のF及びO不純物を有する。本明細書に記載の実施態様は、従来の高圧Si ALDサイクルよりも、例えばソース/ドレインコンタクト構造の形成における、ケイ化物材料の形成に有利であると考えられる。
【0016】
MoSiの堆積選択性は、本明細書に記載の実施態様に従って、3次元(3D)ナノスケールSiO及びSiNの特徴を含有するパターン化されたSi基板について分析された。断面透過型電子顕微鏡法(TEM)は、MoSiの選択的堆積がナノスケール3D構造上で実現されることを示した。一実施態様では、1μmあたり約10未満の核がSiO上に存在する。SiOがおよそ10/μmのOH基を有するため、これは、SiO上のOH基とSi上のSi-H基との間の約10:1の選択性に対応している。よって、ケイ化物堆積に関する基板に応じた選択性は、パッシバント(すなわちSAM)を用いないことを可能にすると考えられる。
【0017】
実験
本明細書に記載のMoSiケイ化物形成プロセスにさまざまな基板タイプを用いた。4つのタイプの基板:Pタイプ Si(100)、熱的に成長したSiO/Si(100)、SiON、及びSとSiOとSiNの材料表面を単一基板上に有するパターン化基板を用いた。本明細書に記載されるSiON(酸窒化ケイ素)は、別途記載のない限りSiであり、これは、製造中に反応性イオンエッチングと酸素中プラズマ灰化とを施された。よって、SiON基板は、集積3Dナノスケールデバイスで処理した後のSiの状態と同様の酸素を含有する。
【0018】
基板を12mm×3mmのピースにダイシングし、アセトン、メタノール、及び脱イオン(DI)HOで脱脂した。脱脂した基板を0.5%のHF(aq)溶液に30秒間浸漬して、Siの自然酸化物を除去した。洗浄手順の一貫性のために、SiO、SiON、及びパターン化基板に同じ洗浄手順を施した。ある実施態様では、自然酸化物の除去プロセスは、米国カリフォルニア州サンタクララのアプライドマテリアルズ社から入手可能なSICONI(登録商標)前洗浄プロセスである。
【0019】
プラズマベースの自然酸化物の除去プロセスが用いられ得ることも検討される。例えば、NF/H及び/又はNF3/NH3プラズマ洗浄プロセスを用いて、基板のケイ素含有表面を洗浄及び水素終端し得る。SiON基板上では、NFプラズマ処理は、活性ヒドロキシル核形成部位のパッシベーションにより、堆積選択性の損失を防止するか又は実質的に低減すると考えられる。
【0020】
図8は、プラズマ処理中の時間に応じた自然酸化ケイ素の厚さ及びバルク酸化ケイ素の厚さの選択的エッチングの速度を示すグラフ800である。データ802は、NF/NHプラズマに曝露されたときのバルク酸化ケイ素の厚さを表す。データ804は、NF/NHプラズマに曝露されたときの自然酸化ケイ素の厚さを表す。時間806はNF/NHプラズマがオンにされたときを表し、時間808はNF/NHプラズマがオフにされたときを表す。
【0021】
一実施態様では、バルク酸化ケイ素に対して選択的に自然酸化ケイ素を選択的にエッチングするためのプラズマは、処理チャンバ中in-situで形成される。あるいは、バルク酸化ケイ素に対して選択的に自然酸化ケイ素を選択的にエッチングするためのプラズマは、処理チャンバへの供給前に、例えば、遠隔プラズマ源によって、遠隔で形成される。プラズマを形成するのに用いられる前駆体はNF及びNHを含む。一実施態様では、自然酸化ケイ素の選択的除去のために、Arなどの不活性ガスを用いて、活性種の基板への供給が容易にされる。
【0022】
一実施態様では、NF:NHの比は、約1:5と約1:20の間、例えば約1:10である。Arキャリアガスを用いる実施態様では、ArはNFよりも多いがNHよりも少ない量で提供される。例えば、NF:NH:Arの比は1:10:1.5である。自然酸化物の選択的除去プロセスが実施される処理チャンバ環境の圧力は、約10mTorrと約1,000mTorrの間、例えば約100mTorrと約500mTorrの間、例えば約200mTorrである。一実施態様では、圧力は約190mTorrである。プラズマを生成するのに用いられる電力は、約10Wと約500Wの間、例えば約50Wと約250Wの間、例えば約100Wである。自然酸化物の除去プロセスが実施される環境の温度は、約30℃と約70℃の間、例えば約40℃と約50℃の間、例えば約45℃である。
【0023】
時間806では、プラズマは開始され、自然酸化ケイ素804は、自然酸化ケイ素材料の厚さの減少によって示される厚さの減少を経験する。一実施態様では、プラズマ処理は、1分未満の時間で、例えば、約15秒と約30秒の間といった、40秒未満の時間で実施される。プラズマ曝露の最初の1分以内に、自然酸化ケイ素804はエッチングされ、バルク酸化ケイ素は実質的に厚さの減少を経験しない。これは、バルク酸化ケイ素に対して優先的に自然酸化ケイ素を除去するための高度な選択性を示している。自然酸化物除去プロセスは、窒化ケイ素材料に対しても選択的であるため、自然酸化ケイ素が窒化ケイ素よりも優先的に除去されることも考えられる。
【0024】
自然酸化ケイ素の選択的除去後の基板の原子力間顕微鏡分析によって、曝露されたケイ素表面(自然酸化ケイ素が除去された場所)は、サブオングストロームの表面粗さを示すことが明らかになった。ケイ素材料のエッチングは表面を粗くすることが予想されるため、このような粗さは、自然酸化物の除去後に内在するケイ素材料がエッチングされないか又は実質的にエッチングされないことと一致する。
【0025】
ある実施態様では、(NH)SiF塩などの残留する材料は、自然酸化物の選択的な除去プロセスを実施した後に基板上に留まる場合がある。その塩を除去するために、任意選択的なアニーリング処理が実施される。一実施態様では、アニーリング処理は、約80℃と約160℃の間、例えば、約100℃と約140℃、例えば約120℃である。アニーリングは、例えば塩を揮発させることによって、基板の表面、例えば基板のケイ素表面から塩を除去すると考えられる。
【0026】
図9は、本明細書に記載の実施態様による、上に形成された接触構造910を有する基板900の断面概略図である。基板900は、ケイ素材料膜902と、ケイ素材料膜902上に形成されたバルク酸化ケイ素904とを含む。接触構造910は、ケイ素材料膜902の表面906上に形成される。自然酸化物の選択的除去の前に、表面906は、その上に形成された自然酸化物の薄膜を有する。上記の実施態様を用いて、バルク酸化ケイ素904又は内在するケイ素膜材料902を実質的に変更又は除去することなく、自然酸化物は表面906から除去される。
【0027】
表面906上に形成された接触構造910は、ゲート酸化物914と、スペーサ918と、キャップ920とによって囲まれたゲート916を含む。一実施態様では、ゲート916は金属含有材料である。スペーサ918及びキャップ920は、窒化ケイ素材料などの窒化物含有材料を含む。接触構造910の形成前又は後に、本明細書に記載の自然酸化物の選択的除去プロセスを用いることによって、後に続く金属堆積のための表面906の調整が可能になる。隣接する接触構造910間で形成されたチャネル912における金属堆積は、表面906からキャップ920へ向かって延在する。自然酸化物を表面906から選択的に除去することによって、内在するケイ素材料膜902への金属接着が改善される。
【0028】
自然酸化物の除去後、基板は高純度のNガスを使用して送風乾燥された。Si、SiO、SiON、及びパターン化基板は、単一基板ホルダに一緒にロードされて、基板が同じALD条件に曝露された。基板は、ターボ分子ポンプで汲み上げ、機械式ポンプでバッキングされたロードロックチャンバにロードされた。ロードロックのベース圧力は、約2.0×10-7Torrであった。続いて、基板をin-situで約3.0×10-10Torrのベース圧力を有する超高真空チャンバに移した。このチャンバは、イオンポンプ及びチタン昇華ポンプによって汲み上げられた。超高真空チャンバには、単色XPS装置、走査型トンネル顕微鏡(STM)、熱分解窒化ホウ素(PBN)ヒータを使用したアニーリングシステムが備えられていた。
【0029】
基板を初めに超高真空チャンバ中で120℃でアニールし、XPSを使用して基板の化学組成を決定した。基板をin-situで約5.0×10-7Torrnベース圧力を有する反応チャンバに移した。MoSiの堆積には、MoF(99%純度)及びSi(99.99%純度)前駆体を用いた。
【0030】
ALDサイクル中、Nの一定のパージ(80mTorr)を使用し、このパージの圧力はリークバルブを使用して制御された。MoF及びSiの供給は空気圧バルブを使用して制御された。MoF及びSiの供給には膨張用空間を用いた。膨張用空間の利用には、二次空間をMoF又はSiで充填することと、それぞれの二次空間からの前駆体を供給することが含まれる。MoFの充填時間は約10msと約10msの間、例えば約40msである。MoFの供給時間は約10msと約100msの間、例えば約50msである。Siの充填時間は約1msと約50msの間、例えば約18msである。Siの供給時間は約1msと約50msの間、例えば約18msである。
【0031】
MoF及びSiの曝露は、ラングミュア(L)を単位として計算され、ここで、1L=1×10-6Torr×1secであった。曝露中の圧力スパイクは、反応チャンバ中の対流ゲージ(convectron gauge)を使用してモニタリングされた。供給量は、MoFに関しては約1.8MegaLであり、Siに関しては約4.2MegaLであった。供給の間に2分の待機時間があった。基板はPBNヒータを使用して加熱され、温度は約100℃と約150℃の間の温度、例えば約120℃で維持された。チャンバ壁は約65℃と約85℃の間の温度で維持された。一実施態様では、MoFの供給量は約1.0MegaLと約10MegaLとの間であった。別の実施態様では、Siの供給量は約1.0MegaLと約10MegaLの間であった。
【0032】
堆積サイクルの後、XPS及びSTM分析のために、基板をin-situで超高真空チャンバに移した。XPS測定に関して、Al Kαアノード(1486.7 eV)でX線を生成した。0.1eVのステップ幅と50eVのパスエネルギーを有するコンスタントアナライザエネルギー(CAE)を使用してXPSデータを得た。XPS検出器は、基板法線に対して60°(基板表面からの取り出し角度30°)に配置され、検出器の受け入れ角度は7°であった。それぞれの相対感度因子で各ピーク面積を補正した後、Casa XPS v.2.3プログラムを使用してXPSスペクトルを分析した。この研究における化学構成要素のすべては、すべての構成要素の合計に対して正規化された。-1.8Vの基板バイアス及び200pAの定電流で走査型トンネル顕微鏡法を実施した。
【0033】
膜のバルクの元素組成を調べるために、XPSと併せてArスパッタリングを実施した。5kVのレンズ電圧と6.0×10-7TorrのArで1.2μAのビーム電流とを使用した。ラスターが基板領域全体をカバーするために使用されたため、電流密度はおよそ1.2uA/50mmであった。MoSi基板はスパッタリング中25℃で維持され、熱脱離が最小限に抑えられた。
【0034】
結果
図1Aは、120℃でのMoF及びSiの連続供給の前と後のHFで洗浄したSi表面のXPS化学組成のデータを示している。5.4MegaLのMoFの二つのセットを、HFで洗浄したSi基板上に120℃で供給した。XPSは16%でMOの飽和を示した。その後、4.2MegaLのSi及び追加の42MegaLのSiを、MoF飽和Si表面上に120℃で供給し、Siが59%で飽和した。一実施態様では、MoFは約1MegaLと約10MegaLの間で供給された。別の実施態様では、SIは約1MegaLと約10MegaLの間で供給された。別の実施態様では、追加のSiの供給量は約20MegaLと約50MegaLの間であった。
【0035】
HFで洗浄した後、すべてのSiは、9%のO及び12%Cの汚染物質を含み、0の酸化状態にあった。汚染物質は、基板を真空へ移す間の不定炭化水素吸着によって引き起こされると考えられる。HF(aq)を用いてSi上の自然酸化物を除去し、Si表面をH終端させておく。図1のSi 2pデータはSiの総量を示すのに対し、Si(0)データは0の酸化状態にあるSiの量を示すことに留意されたい。
【0036】
120℃で5.4MegaLのMoFの後、14%のMo及び38%のFがHF洗浄したSi表面上に堆積した。120℃で追加の5.4MegaLのMoFを供給した後、Mo濃度は14%から16%に増加し、F濃度は38%から42%に増加した。追加の5.4MegaLのMoF後のMo及びF含有量のこの小さな増加は、HF洗浄したSiに対するMoFの反応が自己制御的であることを示している。Si表面がMoFで飽和した後、F/Moの比は2.6であり、Siのすべては0の酸化状態にあった。4.2MegaLのSiと42MegaLのSiの連続供給は、Si反応もMoFで覆われたSi表面上で飽和することを示す。より厚い準化学量論的なMoSi膜を用いると、Siがさらに表面上に導入され得ると考えられる。しかしながら、SiはMoの薄膜(単分子層)に対して自己制御的に反応する。
【0037】
Siの飽和後、Si含有量は59%であり、Fは10%に減少した。基板はSiであるため、Si供給後のSi含有量のこの増加は、Fの脱着が発生したため部分的に基板に起因する可能性がある。しかしながら、Si供給後にMoの減衰が観察された。これはSiの堆積と一致している。MoF及びSiのH終端Siに対する反応は、Si-H終端Siに対するMoSi ALDの可能性を説明している。
【0038】
図1Bは、図1に関して上に記載した同じシリーズのMoF及びSi飽和供給量のXPS化学組成データを示しているが、SiON基板上のものである。説明しているように、反応は観察されなかった。SiON基板は名目上SiONであったが、XPSは表面上ごく少量のNしか示さなかったため、この基板はほとんどがイオン損傷SiOであることに留意されたい。MoFの初めの3回のパルスの後、8%のF及びごく少量のMo(<1%)が観察された。残りの飽和供給量では、SiON表面はMoFとSiの両方に対して非反応性のままであった。この調査で使用されるSiONはイオン損傷しているが、Siは+3及び+4の酸化状態にあり、データは強力なSi-O、Si-N、SiO-H結合と一致しており、よって、SiがMoと結合するのを実質的に防ぐ。
【0039】
図2A及び2Bは、各実験操作での酸化状態を比較するために示された、HF洗浄したSi基板のSi 2p及びMo 3dのXPSスペクトルを示している。図2Aは、MoF及びSの逐次供給後のSi 2pピークを示しており、120℃で10.8MegaLのMoFの供給後(青線)、Siが0の酸化状態のままであり、これはMo-Si結合形成に一致し、FによるSiのエッチングはなかったことを示している。120℃で4.2MegaLのSi供給後(赤線)、Siのバルクは0の酸化状態に留まった。これは、MoSiの単層の形成に一致する。わずかに酸化したSiピークは、表面でSiH4-x(x=2又は3)又はSiOである可能性のある、高い結合エネルギーで出現した。図2Bは、MoF及びSの逐次供給後のMo 3dピークを示しており、Mo 3dピークがMoFの飽和供給後(黒線及び青線)に多数の酸化状態で存在したことを示す。Siの供給後(赤線)、Moのすべては減少し、ピークは227.4eVで中心にあった。これはMoSi形成に一致する。
【0040】
初めの5.4MegaLのMoFの後、Si 2pピークは0の酸化状態のままであった。これはSi-Mo結合形成に一致している。Mo 3dピークは多数の酸化状態で出現した。これは、表面種がMoFであり、x=4、5及び6(黒線)であることを示している。追加の5.4MegaLのMoFは、Si 2pピーク又はMo 3dピークの酸化状態を変更しなかった(青線)。データは、表面でのSi-Mo-F形成を示唆している。MoF飽和供給量の後、F/Mo比は2.6であった(図1A XPSデータ)が、Moは4-6の酸化状態にあったため、いくらかのMo-O結合が形成あると考えられることに留意されたい。4.2MegaLのSi供給後(赤線)、Si 2p XPSピーク上により高い結合エネルギー(103eV)で小さなショルダーピークが出現した。これは、Si-F又はSi-O形成に一致している。Mo 3dスペクトルは、単一のSi供給後、MoのすべてがMoに還元され、結合エネルギーは227.4eVであることを示す。これは、MoSiの単層の形成と、残留する酸素又はフッ素の、Si-O及びSi-F結合の形態のMoからSへの遷移とに一致している。MoF及びSiの簡略化された反応は:
と記載することができる。
【0041】
Si基板上のMoSiのALD特性と、SiO及びSiN基板に対する選択性とは、パターン化基板上のMoSi堆積のXPSを介して検証された。図3Aは、三つの基板:HF洗浄したSi、HF洗浄したSiO、及びHF洗浄したパターン化基板のセットの化学組成を示している。図3Bは、120℃でのMoF及びSiの5回のALDサイクルの後の、図3Aの基板のそれぞれの化学組成を示している。データは、Si欠乏MoSiがSi上に選択的に堆積されるがSiO上には堆積されないことを示した。パターン化試料のSi構成要素も、MoSi堆積によって選択的に減衰した。図3Cは、追加の25.2MegaL(3パルスと10パルスの間)のSiの後の、図3Bの基板のそれぞれの化学組成を示している。追加のSiはSiをMoSi表面上に導入した。追加のSiパルス中にSiOに対する選択性は維持された(ALDプロセスを通して、SiOは0%のMo及び0%のSiを有した)。
【0042】
三つの基板を単一基板ホルダ上に一緒にロードし、それらが確実に同一の堆積条件に曝露されるようにした。Si基板及びSiO基板は、パターン化基板上への堆積中に選択性の検証を可能にした。パターン化基板は、Si基板の上部でSiNに挟まれたSiO層を有する。パターン化基板上のSiNは、イオン損傷しており、製造中にOに灰化されたため、実際にはSiONであったことに留意されたい。図3Aに示すように、30sのHF洗浄により、Si上の自然酸化物は除去された。熱的に成長したSiOは300nmの厚さであり、30sのHF洗浄によって、SiOの元素組成又は酸化状態は変更されなかった。HF洗浄したパターン化基板は、SiN、SiO、及びSiの混合物で構成された。
【0043】
図3Bに示すように、120℃でのMoF及びSiの5回のALDサイクルの後にXPSを実施した。XPSは、Si基板上の32%のMo及び10%のSiの表面組成を示した。これは、Siが非常に欠乏したMoSiに対応する。SiO基板上にMoSiは堆積されず、これは高度に選択的なALDに一致していた。パターン化基板上、XPSは、5%のMoが堆積され、Siが1%に減衰したことを示した。表面上のN及びOの留分は、パターン化基板上でのALD中に有意に変化しない。このデータは、Si欠乏MoSiがパターン化基板上6%のSiに選択的に堆積されていることに一致している。
【0044】
パターン化基板上の堆積選択性は、本明細書に記載の実施態様の三つの態様に一致している。(1)MoSi堆積はSi基板上では生じたがSiO基板上では生じなかった。(2)MoSi堆積の後、Si(Si-N及びSi-Oからのより高い酸化状態Siピークではない)はパターン化基板上で減衰した。(3)数値的に、6%のSiを有するパターン化基板上約4%のMo堆積は、Si基板上に32%のMoを有し、HF洗浄した表面上に54%のSiを有することに比例する。
【0045】
MoSiの単層は図1及び図2に記載のALD飽和実験においてSi上に堆積することができたが、連続したALDサイクルでは化学量論的なMoSiは生成されなかった。Si欠乏MoSiの形成は、フルオロシラン除去プロセス中に脱着する表面Si-H種と、標準的なSiの供給では容易に除去されない残留するMo-F結合とによるものであると考えられる。初めの1-3単層では、フッ素の脱着を助けるために存在する基板からの過剰なSiがあるが、より厚い膜では、利用可能なSiはガス状のSiのみであるため、Mo-F表面結合が持続する場合がある。MoF及びSiを使用する全体的なフルオロシラン除去化学は、二つの化学反応のうちの一つに一致している。
1:
2:
【0046】
MoSiを形成するために、三つの基板を120℃で追加の25.2MegaL(3パルスと10パルスの間、例えば6パルス)のSiに曝露した(図3Cを参照)。追加のSi曝露後、SiはSi基板上で20%増加した。これは、Siが膜中に又は基板の表面上に導入されていることに一致している。追加のSi供給は、SiOに対するSi上への堆積選択性を低減しなかった。
【0047】
図4A-4Cは、堆積後にアニールされた、HF洗浄したSi、SiO及びSiON上へのMoSiの選択的堆積のXPS化学組成データを示している。図4Aは、HF洗浄後のSi、SiO及びSiON基板のXPS化学組成を示している。図4Bは、MoSiの5回のALDサイクルとそれに続く120℃でのSiの追加の6パルス(25.2MegaL)の後に、MoSiがSi上にのみ選択的に堆積されることを示すXPS化学組成データを示している。図4Cは、520℃で3分間堆積後アニール(PDA)が実施された基板のXPS化学組成データを示している。示しているように、PDAはFをMoSi膜から除去し、MoをMoに還元させた。
【0048】
図4Aは、HF洗浄後にSiON表面が主にSiNで構成されることを示している。MoSiの5回のALDとそれに続くSiの追加の25.2MegaLの後、図4Bに示すように、24%のMoと18%のSiがHF洗浄したSi上に存在したのに対して、1%未満のMoがSiO及びSiN表面上で検出された。続いて、三つの基板を520℃で3分間アニールした。これにより、Si基板上でFは25%から3%に減少した。520℃のPDAはまた、Si基板上でMoをMoに還元させ、表面でSi:Mo比を約0.75から約0.5に低下させた。これは、SiHF又はSiFの形態の表面Fの脱着に一致している。PDAのXPS分析は、PDAによりFが膜から除去され、これにより、隣接するMOSFETデバイス構造へのFの拡散の可能性が減少することを示している。
【0049】
in-situでのSTM及びex-situでの原子力間顕微鏡法(AFM)を使用して、堆積とSi及びSiO基板上PDAとの後に表面トポグラフィーを調査した。MoF及びSiの20サイクル後のHF洗浄したSiの別個の基板をin-situでのSTMのために調製した。STMデータは、MoSi膜が原子的に平坦で、RMS粗さが約2.8Åの共形であることを示した。上記の基板を、約5.0×10-10Torrの圧力の超高真空チャンバ中、500℃で3分間in-situでアニールした。500℃でのアニール後、膜はより平坦で、RMS厚さは約1.7Åになった。
【0050】
120℃で5回のALDサイクルとそれに続くin-situで550℃でのアニール後のMoSi/HF洗浄したSiの別の基板を、N平衡した5% H中900℃でスパイクアニールするためにex-situ炉に入れた。900℃のスパイクアニール後、AFMを使用して表面形態を得た。膜は4.75ÅのサブナノスケールのRMS粗さを保持した。これは、MoSi膜が最大約900℃の高熱安定性を有することを実証した。
【0051】
120℃で5回のALDサイクルの供給と、それに続くin-situで550℃で3分間のアニールの後のSiO基板表面のex-situAFM画像データを、選択性を確かめるために、基板表面上の核の数をカウントすることにより実施した。核の密度は約9核/μmであり、これは、SiOよりもSiが優先的に堆積することを裏付けた。本明細書に記載の実施態様の高い堆積選択性は、反応チャンバの壁の温度を制御することにより、及び短い高圧Siパルスと長いパージサイクルを使用してALDを容易にし、CVD堆積計画を回避することによって、さらに改善されると考えられる。
【0052】
MoSi膜の内部組成を決定するために、深さプロファイルの調査も実施した。図5Aは、120℃でのMoF及びSiの5回のサイクルの後、HF洗浄したSi上でのArスパッタリング後のXPS化学組成データを示している。図5Bは、逐次的なArスパッタリング後のSi 2pピークを示しており、この結果は、MoSi膜のバルクがほぼSiからなることを示している。図5Cは、120℃でのMoF及びSiの5回のサイクル後のSiでのArスパッタリング時間に対してプロットされた堆積膜の化学組成データを示している。
【0053】
図5Aに示すXPSデータは、追加のSi導入を伴わずにMoF及びSiの5回のALDサイクルを使用して120℃でHF洗浄したSi基板上に堆積されたMoSi膜に由来する。スパッタリング時間が増加すると、内在するSi基板が曝露されるまでMoSi膜は薄くなった。スパッタリングの初めの10分で、Fは35%から8%に減少したのに対して、Moは酸化MoとMoの混合物から純粋なMoに変わった。このデータは、表面Fが主にMoに結合していることに一致している。
【0054】
連続したスパッタリングサイクルの後、Siの量は増加し、Moの量は減少した。さらに、Siの量はSiの総量と共に増加し、合計100分間のスパッタリング時間の後に最大値43%に達した。純粋なMoSi相を区別するためにSi対Moの比が用いられた。これは、純粋なMoSi相では、MoとSiの両方が互いに結合し、0の酸化状態を有するためである。基板表面で酸化ケイ素とMoF種とを除去した後、SiのパーセンテージはMoのパーセンテージを超えた。MoSi膜のバルクにおけるSi:Mo比は1.41であった。これはSi欠乏MoSi膜に対応する。膜の中心ではSi:Mo比は1.77であり、したがって、バックグラウンドO/HOが存在しない場合はSi:Mo比は2に近い可能性があることに留意されたい。
【0055】
図5Bは、図5Aの各XPS測定値に相当するSi 2pの未処理のXPSスペクトルを示している。4回目のスパッタリングサイクルの後、99.2eVでのSiピークは増加し、より高い結合エネルギーに拡大した。対照的に、各スパッタリングサイクルの後、MoピークのエネルギーはMoに対応した。よって、バルクMoSi膜は主としてMoSiの形態のSi及びMoであるが、上面と底部インターフェースはSiOが豊富であると考えられる。上部SiOはチャンバ環境からの汚染物質に一致しているが、底部インターフェースの酸化物は不完全なex-situでのHF洗浄に一致している。
【0056】
底部インターフェースの準化学量論的な酸化物は、堆積及び膜の品質に影響を及ぼさなかった。これは、MoSi ALDの選択性がSiOの品質の影響を受けやすいことを示している。図5Cは、図5AのXPS測定値から得られた化学構成要素のパーセンテージを示している。第2のスパッタリングサイクル(合計スパッタリング時間の40分間)の後、Fは3%未満に減少し、最終的に0%に達した。膜のバルクのOは<10%であったが、MoSi-Siインターフェースで15%に徐々に増加した。これは、インターフェース酸化物層の存在に一致している。
【0057】
MoSi膜のSi:Mo比に対する追加のSi供給の影響を理解するために、追加のSiが導入されたMoSiでXPS深さプロファイリングを実施した。120℃でのMoF及びSiの5回のALDと、それに続いて、乾燥洗浄したSiで530℃で3分間アニールした最後に、Siの追加の6パルス(25.2MegaL)を供給した。本明細書に記載のアニール後の乾燥洗浄プロセスは、キャリアガスとしてArを用いてNF及びNHのプラズマを利用する。
【0058】
図6A-6Dは、追加のSi供給への曝露後のMoSi膜のXPSプロファイルデータを示している。図6Aは、MoF及びSiの5サイクルと、それに続く120℃でのSiの追加の6パルス(25.2MegaL)の後の、Arスパッタリング乾燥洗浄したSi後のXPS化学組成データを示している。図6Bは、MoF及びSiの5回のALDサイクル後、追加のSiパルス無しの、XPS表面組成データを示している。Si:Mo比は5回のALDについては0.33であり、5ALD+6×Siについては0.89であった。これは、表面上のSi導入に一致している。図6Cは、Arスパッタリングを使用して表面汚染物質を除去した後の、Siパルスを伴う場合と伴わない場合のMoSiのXPSバルク組成データを示している。Si:Mo比は5回のALDについては1.77であり、5ALD+6×Siについては1.96であった。図6Dは、MoF及びSiの5サイクルと、それに続く120℃での追加のSiパルスの後のSiでのArスパッタ時間に対してプロットされたMoSi膜のXPS化学組成データを示している。
【0059】
図6Aは、乾燥洗浄基板で実施された各操作後の一連の深さプロファイルXPSを表している。6×Si/5ALDサイクルの後、28%のF、20%のSi、及び28%のMoが基板表面に存在した。表面のFは、530℃でのアニール後にほとんどが除去され、MoはすべてMoに還元した。これは、図4Cに表されているように表面からのFの脱着に一致していた。この操作では、Si:Mo比は0.89であった。比較すると、図6Bに示されているように、追加のSi供給を伴わないMoSi膜のSi:Mo比はわずか0.33であった。
【0060】
表面酸化物汚染物質を除去した後、追加のSiパルスを伴うMoSiについて、バルクのSi:Moは1.32(Si:Mo=1.96)であった。これは、図6Cに示されている追加のSi導入を伴わないMoSiのバルクにおけるSi:Mo=1.41(Si:Mo=1.77)と同等であった。よって、追加のSiパルスはALDサイクル後のSi欠乏MoSi表面のSi含有量を増加させると考えられる。対照的に、MoSi膜のバルクにおけるSi:Mo比は化学量論的なMoSiに近かった。図6Dは、Arスパッタ時間に応じた各化学構成要素のXPSパーセンテージを示す。これは、MoSi膜のバルクにおけるMoSiの形成に一致している。
【0061】
一実施態様では、4.2MegaLのSiが空気圧バルブを使用して6秒間の持続時間にわたって反応チャンバに導入された。Siプロセス特性は、従来のSi供給パラメータよりも約10倍短い供給持続時間にわたるおよそ3倍のSi曝露を用いる。よって、本明細書に記載の実施態様は、ALD供給中に従来の供給計画と比較して30倍高い分圧を用いる。供給中の30倍高い瞬間圧力は、前駆体介在Si化学吸着層がMoと反応してより多くのSiをMoSi膜に導入するのに十分長く表面上に留まると考えられる。Si導入はまた、自己制御的であり、これによりMoSiの成長速度が約1.2nm/サイクルであることを可能にすると考えられる。
【0062】
4端子プローブ測定を使用してMoSi膜の抵抗を測定した。電気測定では、>10000ohm・cmの抵抗を有する、アップドープされたSi(001)が基板として使用された。電気測定では、120℃でのMoSi ALDの10サイクルがHFで洗浄された固有の(半絶縁性)Si基板上に堆積され、それに続いて、in-situでの550℃で3分間のアニールと、N平衡した5%のH中900℃でのスパイクアニールとがなされた。少量のNiがプローブコンタクトとして堆積された。抵抗は110Ohmであり、抵抗は無限シート近似を使用して以下:
[式中、kは定数であり、tは厚さであり、Rmaxは測定された最大抵抗値である]
のように計算された。
【0063】
ナノ構造パターン上でのMoSiの選択性を確かめるために、パターン化基板上で断面TEM調査が実施された。図7は、MoSi/HF洗浄したパターン化基板の断面TEM画像である。HF洗浄したパターン化基板では、MoSi ALDの5を5サイクルと、それに続いて、追加の25.2MegaLのSiを120℃で供給した。各堆積工程におけるこの基板の元素組成を図3A-3Cに示す。TEM画像は、SiNでもSiOでもなく、Si上へのMoSiの堆積の完全な選択性を示す。5回のALDサイクルと、それに続く追加の25.2MegaLの後のSi上に堆積したMoSi膜の厚さは、約6.3nmであった。これは約1.2nm/サイクルの成長速度を達成した。MoSi ALDの1サイクル当たりの成長速度により、コンタクト材料及びコンタクトデバイス構造には5ALDサイクルで十分であると考えられる。
【0064】
熱成長させたSiO、イオン損傷SiON、及びSiNに対して、水素終端Si上に選択的プロセスを行うことによって、準化学量論的なMoSiの選択的原子層堆積が達成された。選択性は、SiO又はSiNではなく、H-Si上のMoF及びSiの好適な反応性に基づくものであり、これは、Si-O、Si-N,及びSiO-H結合が十分に強いために、120℃でいずれかの前駆体によってそれらを切断することができないためである。Both MoF及びSiはどちらも自己制御的な挙動を示した。これは、2.8Åの二乗平均(RMS)粗さを有する共形性の高い滑らかな膜の堆積を可能にした。約500℃から550℃の温度での超高真空内での3分間のPDAにより、RMS粗さが1.7Åまでさらに減少した。H/N環境での900℃のスパイクアニール後でさえも、MoSi膜の品質が保たれ、これは高い熱安定性に一致する。
【0065】
深さプロファイリングXPS調査によって、MoSiのバルクは、<10%の酸素及びフッ素を有する化学量論的MoSi(Si:Mo=1.7-1.9)に近いことが明らかとなった。5回のALDサイクルの後のMoSi膜の表面は、0.33のSi:Mo比を有する、Siが非常に欠乏しているMoSi表面を示し、この表面のSi:Mo比は、追加のSiをパルスすることによって、0.89に改善される。断面TEM画像は、ナノスケールで選択性が保持され、基板を消耗せずにSi上にMoSiを選択的に堆積することができることを示している。
【0066】
約1.2nm/サイクルのMoSi膜の成長速度により、MoSi膜をコンタクト材料として用いるのに10回未満のALDサイクル、例えば5回のALDサイクルで十分になる。したがって、従来のALDプロセスと比較すると、本明細書書に記載の実施態様を用いることによってプロセススループットが向上する。MoSiの選択的堆積は、複雑な3D MOSFET構造(例えばFinFET)のためにリソグラフィ処理への依存を排除する、又は依存を実質的に低減すると考えられる。SiO-H結合に対するSi-H結合の選択性は、10を超える。よって、追加のパッシベーション層さえも使用せずに、ナノスケールの高い選択性が可能である。本明細書に記載の実施態様は、還元剤のALDパルス中の分圧を変えることによって、選択性を保持しながら、金属に対するシリサイドのALDを容易に切り替えることができることも示している。
【0067】
上記の説明は本開示の実施態様を対象としているが、本開示の基本的な範囲から逸脱しなければ、本開示の他の実施態様及び更なる実施態様が考案されてよく、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9