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特許7503844作業車両の遠隔制御システム、遠隔操作装置および遠隔制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】作業車両の遠隔制御システム、遠隔操作装置および遠隔制御方法
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240614BHJP
   G05D 1/222 20240101ALN20240614BHJP
【FI】
A01B69/00 B
A01B69/00 303M
G05D1/222
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021052104
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149796
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】林 和信
(72)【発明者】
【氏名】山下 貴史
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-036796(JP,A)
【文献】特開2018-060261(JP,A)
【文献】特開平01-222708(JP,A)
【文献】特開昭52-038303(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0261986(US,A1)
【文献】特開2018-206222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00-69/08
G05D 1/00-1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の作業車両にそれぞれ搭載された車両制御装置と、上記作業車両の外部に存在する遠隔操作装置とを備え、上記遠隔操作装置から複数の上記車両制御装置にそれぞれ与えられる指示により上記複数の作業車両の動作を制御することが可能になされた作業車両の遠隔制御システムであって、
上記遠隔操作装置は、
上記複数の作業車両に設定されているそれぞれの動作モードを示すモード情報を取得するモード情報取得部と、
上記複数の作業車両のそれぞれの運転状況を示す情報を取得する運転状況情報取得部と、
上記モード情報取得部により取得される上記複数の作業車両のモード情報および上記運転状況情報取得部により取得される上記複数の作業車両の運転状況情報に基づいて、上記遠隔操作装置を操作する操作者の上記複数の作業車両に対する監視負荷の大きさを算出する監視負荷算出部と、
上記監視負荷算出部により算出された上記監視負荷の大きさおよびあらかじめ設定されている許容負荷の大きさに関する情報を用いて、監視負荷の増大抑制に関する所定の処理を実行する処理実行部とを備えた
ことを特徴とする作業車両の遠隔制御システム。
【請求項2】
上記処理実行部は、
上記遠隔操作装置からの外発指示または上記車両制御装置による内発指示が発行された場合に、それによって上記複数の作業車両の少なくとも1つに関して変化する動作モードおよび運転状況を反映して上記監視負荷算出部により算出される上記監視負荷の大きさが上記許容負荷を超えるか否かを判定する負荷判定部と、
上記負荷判定部により上記許容負荷を超えると判定された場合に、警告または制御禁止に関する所定の抑止処理を実行する抑止処理実行部とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の遠隔制御システム。
【請求項3】
上記負荷判定部は、上記遠隔操作装置からの外発指示による上記作業車両の遠隔制御または上記車両制御装置の内発指示による上記作業車両の自律制御によって、何れかの作業車両の動作モードまたは運転状況が変わろうとする場合または変わった場合に、変化後の動作モードおよび運転状況を反映して上記監視負荷算出部により算出される上記監視負荷の大きさが上記許容負荷を超えるか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載の作業車両の遠隔制御システム。
【請求項4】
上記処理実行部は、上記監視負荷算出部により算出された上記監視負荷の大きさおよび上記許容負荷の大きさに関する情報を監視画面に表示する処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の作業車両の遠隔制御システム。
【請求項5】
上記運転状況情報は、上記複数の作業車両のそれぞれが圃場の内外のどの場所を走行しているかを示す情報、および、上記複数の作業車両のそれぞれが圃場内でどのような作業をしているかを示す情報の少なくとも一方を有する作業状況情報を含むことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の作業車両の遠隔制御システム。
【請求項6】
上記運転状況情報は、上記複数の作業車両のそれぞれの走行速度を示す情報を含むことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の作業車両の遠隔制御システム。
【請求項7】
上記複数の作業車両のそれぞれの周囲監視機能の有無を示す監視機能情報を取得する監視機能情報取得部を更に備え、
上記監視負荷算出部は、上記モード情報取得部により取得される上記複数の作業車両のモード情報、上記運転状況情報取得部により取得される上記複数の作業車両の運転状況情報、および、上記監視機能情報取得部により取得される上記複数の作業車両の監視機能情報に基づいて、上記監視負荷の大きさを算出する
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の作業車両の遠隔制御システム。
【請求項8】
上記複数の作業車両のそれぞれの障害物自動回避機能の有無を示す回避機能情報を取得する回避機能情報取得部を更に備え、
上記監視負荷算出部は、上記モード情報取得部により取得される上記複数の作業車両のモード情報、上記運転状況情報取得部により取得される上記複数の作業車両の運転状況情報、および、上記回避機能情報取得部により取得される上記複数の作業車両の回避機能情報に基づいて、上記監視負荷の大きさを算出する
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の作業車両の遠隔制御システム。
【請求項9】
上記複数の作業車両との間のそれぞれの通信状態を示す通信状態情報を取得する通信状態情報取得部を更に備え、
上記監視負荷算出部は、上記モード情報取得部により取得される上記複数の作業車両のモード情報、上記運転状況情報取得部により取得される上記複数の作業車両の運転状況情報、および、上記通信状態情報取得部により取得される上記複数の作業車両の通信状態情報に基づいて、上記監視負荷の大きさを算出する
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の作業車両の遠隔制御システム。
【請求項10】
上記操作者による上記遠隔操作装置の操作状態を示す操作状態情報を取得する操作状態情報取得部を更に備え、
上記監視負荷算出部は、上記モード情報取得部により取得される上記複数の作業車両のモード情報、上記運転状況情報取得部により取得される上記複数の作業車両の運転状況情報、および、上記操作状態情報取得部により取得される上記操作状態情報に基づいて、上記監視負荷の大きさを算出する
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の作業車両の遠隔制御システム。
【請求項11】
上記許容負荷は、上記複数の作業車両を操作する操作者の人数に応じた値に設定されることを特徴とする請求項1~10の何れか1項に記載の作業車両の遠隔制御システム。
【請求項12】
複数の作業車両にそれぞれ搭載された複数の車両制御装置に対し、上記作業車両の外部から指示を送信することによって上記複数の作業車両の動作を制御する遠隔操作装置であって、
上記複数の作業車両に設定されているそれぞれの動作モードを示すモード情報を取得するモード情報取得部と、
上記複数の作業車両のそれぞれの運転状況を示す情報を取得する運転状況情報取得部と、
上記モード情報取得部により取得される上記複数の作業車両のモード情報および上記運転状況情報取得部により取得される上記複数の作業車両の運転状況情報に基づいて、上記遠隔操作装置を操作する操作者の上記複数の作業車両に対する監視負荷の大きさを算出する監視負荷算出部と、
上記監視負荷算出部により算出された上記監視負荷の大きさおよびあらかじめ設定されている許容負荷の大きさに関する情報を用いて、監視負荷の増大抑制に関する所定の処理を実行する処理実行部とを備えた
ことを特徴とする遠隔操作装置。
【請求項13】
複数の作業車両にそれぞれ搭載された車両制御装置と、上記作業車両の外部に存在する遠隔操作装置とを備えた作業車両の遠隔制御システムにおいて、上記遠隔操作装置から複数の上記車両制御装置にそれぞれ与えられる指示により上記複数の作業車両の走行を制御する方法であって、
上記遠隔操作装置のモード情報取得部が、上記複数の作業車両に設定されているそれぞれの動作モードを示すモード情報を取得するステップと、
上記遠隔操作装置の運転状況情報取得部が、上記複数の作業車両のそれぞれの運転状況を示す情報を取得するステップと、
上記遠隔操作装置の監視負荷算出部が、上記遠隔操作装置からの外発指示または上記車両制御装置による内発指示が発行された場合に、それによって上記複数の作業車両の少なくとも1つに関して変化する動作モードおよび運転状況を反映して、上記モード情報取得部により取得される上記複数の作業車両のモード情報および上記運転状況情報取得部により取得される上記複数の作業車両の運転状況情報に基づいて、上記遠隔操作装置を操作する操作者の上記複数の作業車両に対する監視負荷の大きさを算出するステップと、
上記遠隔操作装置の処理実行部が、上記監視負荷算出部により算出された上記監視負荷の大きさおよびあらかじめ設定されている許容負荷の大きさに関する情報を用いて、監視負荷の増大抑制に関する所定の処理を実行するステップとを有することを特徴とする作業車両の遠隔制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の遠隔制御システム、遠隔操作装置および遠隔制御方法に関し、特に、複数台の作業車両の走行を遠隔制御するシステムに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、農家人口の減少に伴い、担い手への農地の集積と経営規模の拡大とが進んでいる。そのため、将来的に熟練作業者の確保が困難になることが予想されている。このような状況のもと、限られた人員で、規模拡大に伴う多数圃場に対応しながら、生産性の高い農作業技術を実現することが求められている。例えば、自動走行作業車両の活用により作業者一人当たりの作業面積を増加させる技術の開発に期待が寄せられている。これに関して、従来、複数の自動走行作業車両の走行を遠隔制御するシステムが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の制御システムでは、遠隔操縦装置が、担当する圃場の作業領域と作業内容に関する情報を無人トラクタに伝達し、無人トラクタを自律走行および作業させ、無人トラクタの動作(自律走行および作業)の状態を監視する。また、遠隔操縦装置は、複数の無人トラクタの緊急停止、一時停止、再発進、車速の変更、エンジン回転数の変更、作業機の昇降、PTOクラッチの入り切り等を選択的に操作できるように構成されている。
【0004】
特許文献2に記載の複数台併走作業システムでは、1台の遠隔操作装置により作業開始の操作が行われると、複数台の自律走行作業車両が併走して、圃場内をあらかじめ設定した走行経路に沿って往復走行して作業を行い、オペレータがその近傍で遠隔操作装置を持って操作を行う。遠隔操作装置では、複数台の自律走行作業車両の個々の制御が可能であり、それぞれの自律走行作業車両に切り換えて操作でき、作業開始や緊急停止は複数台同時に制御できるようにしている。
【0005】
遠隔操作装置によって複数台の作業車両の動作を遠隔制御する場合、全ての作業車両を自律走行させて単に作業の完了を待てばよいというものではなく、各々の作業車両の走行状況や作業状況、周囲状況などを遠隔操作装置の操作者が遠隔から監視して、状況に応じて適切な遠隔制御を行うことが必要である。ここで、1台の作業車両を監視する場合に比べて、複数台の作業車両を監視する場合の方が、遠隔操作装置の操作者にかかる監視の負荷は大きくなる。そのため、このような監視のための負荷を考慮して、遠隔操作装置の操作者が複数台の作業車両を適切に遠隔制御できるようにするための仕組みの導入が望まれる。
【0006】
なお、自動運転技術により運行されるバス等の複数の移動体を遠隔監視する一の監視者に関する情報(監視台数や運行ルートなどに基づく監視負荷)に基づいて、一の監視者の監視状況が所定の条件を満たすかどうかに応じて、複数の移動体の自動運転に関する態様を決定するシステムが知られている(例えば、特許文献3参照)。この特許文献3には、複数の移動体の監視における一の監視者の負荷が所定の閾値以上である場合に、一の監視者の負荷が所定の閾値未満となるように、一部の移動体の自動運転に関する態様を変更することが開示されている(段落[0115]、[0125]など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6384545号公報
【文献】特開2016-95659号公報
【文献】特開2018-206222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献3に記載の技術では、単純に監視対象とするバスの台数や走行ルートに基づいて監視負荷を計算している。しかしながら、作業車両の場合、特許文献3に記載されているバスに比べ、自動走行時に変化し得る状況は複雑であり、監視者にかかる監視負荷も状況に応じて動的に変わる。例えば、農作業の最初から最後まで自動走行を継続するとは限らず、作業環境や周囲の状況に応じて走行モードを変える必要が生じる場合がある。また、作業車両の場合、単に走行するだけでなく、農作業をしながら走行するため、走行に関する監視だけでなく、農作業に関する監視も行う必要がある。そのため、特許文献3に記載の技術を作業車両の監視に適用することはできない。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、遠隔操作装置の操作者が複数台の作業車両の動作を遠隔制御する場合において、操作者が複数台の作業車両を適切に監視して遠隔制御することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明では、複数の作業車両にそれぞれ搭載された車両制御装置に対して遠隔操作装置から与えられる指示により複数の作業車両の動作を制御することが可能になされた遠隔制御システムにおいて、複数の作業車両のそれぞれの動作モードを示すモード情報と、複数の作業車両のそれぞれの運転状況を示す運転状況情報とに基づいて、遠隔操作装置を操作する操作者の複数の作業車両に対する監視負荷の大きさを算出し、算出した監視負荷の大きさおよびあらかじめ設定されている許容負荷の大きさに関する情報を用いて、監視負荷の増大抑制に関する所定の処理を実行するようにしている。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成した本発明によれば、遠隔操作装置の操作者が遠隔制御の対象とする作業車両に対して、遠隔操作装置からの外発指示または車両制御装置による内発指示に応じて制御が行われる場合に、作業車両の動作モードおよび運転状況に基づいて操作者の複数台の作業車両に対する監視負荷が算出され、算出された監視負荷の大きさおよびあらかじめ設定されている許容負荷の大きさに関する情報を用いて、監視負荷の増大抑制に関する所定の処理が実行される。これにより、操作者の監視負荷が許容負荷を超えない範囲で、操作者が複数台の作業車両を適切に監視して遠隔制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態による作業車両の遠隔制御システムの全体構成例を示す図である。
図2】本実施形態による車両制御装置の機能構成例を示すブロック図である。
図3】本実施形態による遠隔操作装置の機能構成例を示すブロック図である。
図4A】本実施形態による監視負荷算出部、負荷判定部および抑止処理実行部の動作内容の一例を説明するための図である。
図4B】本実施形態による監視負荷算出部、負荷判定部および抑止処理実行部の動作内容の一例を説明するための図である。
図4C】本実施形態による監視負荷算出部、負荷判定部および抑止処理実行部の動作内容の一例を説明するための図である。
図4D】本実施形態による監視負荷算出部、負荷判定部および抑止処理実行部の動作内容の一例を説明するための図である。
図4E】本実施形態による監視負荷算出部、負荷判定部および抑止処理実行部の動作内容の一例を説明するための図である。
図5】本実施形態による遠隔操作装置の動作例を示すフローチャートである
図6】本実施形態による遠隔操作装置の他の機能構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による作業車両の遠隔制御システム(以下、単に遠隔制御システムという)の全体構成例を示す図である。図1に示すように、本実施形態の遠隔制御システムは、複数の作業車両100-1~100-4(以下の説明において、各々を特に区別しないときは単に作業車両100と記す)にそれぞれ搭載された車両制御装置10-1~10-4(以下の説明において、各々を特に区別しないときは単に車両制御装置10と記す)と、作業車両100-1~100-4の外部にある基地局200の中に存在する遠隔操作装置20とを備えて構成される。
【0014】
作業車両100-1~100-4はそれぞれ作業機101-1~101-4(以下の説明において、各々を特に区別しないときは単に作業機101と記す)を備えている。作業機101は任意であるが、本実施形態では一例として、車両本体の後方に連結して使用される耕うん機であるとする。作業機101は、昇降可能に作業車両100に連結されており、作業時には作業機101を下降させ、非作業時には作業機101を上昇させる。
【0015】
車両制御装置10と遠隔操作装置20との間は、無線LANなどの無線通信手段を介して接続されており、相互に通信を行うことができるようになっている。本実施形態の遠隔制御システムでは、遠隔操作装置20から複数の車両制御装置10にそれぞれ与えられる指示(以下、外発指示ということがある)によって、複数の作業車両100の走行および作業を制御する。また、複数の車両制御装置10から遠隔操作装置20に送信される各種状態情報(詳細は後述する)によって、複数の車両制御装置10の走行を監視するための監視画面を遠隔操作装置20に表示させる。また、作業車両100に乗車した作業者による車両制御装置10の操作に基づいて、あるいは、車両制御装置10自体による自律的な制御に基づいて、遠隔操作装置20からの外発指示を受けずに、車両制御装置10自体による指示(以下、内発指示ということがある)によって作業車両100の走行および作業を制御することも可能である。
【0016】
本実施形態では、1台から最大4台までの作業車両100を遠隔制御により同時に走行させることができるシステムの例について説明するが、最大4台というのは一例に過ぎず、2台以上であればよい。
【0017】
図2は、車両制御装置10の機能構成例(一部にハードウェア構成を含む)を示すブロック図である。図2に示すように、車両制御装置10は、機能構成として、無線通信部11、モード設定部12、運転制御部13および状態情報送信部14を備えている。また、車両制御装置10は、記憶媒体として経路データ記憶部10Aを備えている。また、車両制御装置10には、各種センサ16およびカメラ17が電気的に接続されている。モード設定部12および運転制御部13について、以下では遠隔操作装置20からの指示に基づいて処理を実行する例について説明するが、作業車両100に乗車した作業者による指示あるいは車両制御装置10の自律制御に基づいて同様の処理を実行することも可能である。
【0018】
各機能ブロック11~14は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック11~14は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0019】
図3は、遠隔操作装置20の機能構成例(一部にハードウェア構成を含む)を示すブロック図である。図3に示すように、遠隔操作装置20は、機能構成として、無線通信部21、モード制御部22、遠隔操縦指示部23、状態情報受信部24、監視画面表示制御部25、モード情報取得部26、運転状況情報取得部27、監視負荷算出部28、負荷判定部29および抑止処理実行部30を備えている。また、遠隔操作装置20は、ハードウェア構成として、操作部31およびディスプレイ32を備えている。また、遠隔操作装置20は、記憶媒体として、経路データ記憶部20A、モード情報記憶部20Bおよび状態情報記憶部20Cを備えている。負荷判定部29および抑止処理実行部30は、特許請求の範囲の処理実行部に相当する。
【0020】
各機能ブロック21~30は、ハードウェア、DSP、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック21~30は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0021】
車両制御装置10の無線通信部11および遠隔操作装置20の無線通信部21は、相互に無線通信を行うものである。無線通信部11,21は、複数の作業車両100の走行および作業を制御するための各種指示(以下、遠隔操縦指示という)を遠隔操作装置20から車両制御装置10に送信する。また、無線通信部11,21は、車両制御装置10の各種センサ16およびカメラ17において検出された各種状態情報を車両制御装置10から遠隔操作装置20に送信する。
【0022】
車両制御装置10のモード設定部12は、遠隔操作装置20から受信する指示(以下、モード設定指示という)に従って、作業車両100の運転に関する動作モードを設定する。本実施形態において設定可能な動作モードは、例えば、手動運転モード、自動運転モード、遠隔操縦モード、待機モード、非常停止モード、一時停止モード、自動停止モードである。モード設定部12は、遠隔操作装置20から受信するモード設定指示に従って、これら複数の動作モードの何れかを設定する。
【0023】
手動運転モードは、作業者が作業車両100に乗車して運転(作業車両100の走行および作業機101の制御を含む)を手動で行う動作モードである。自動運転モードは、遠隔操作装置20からの指示により、あらかじめ設定した計画(経路データ記憶部10Aに記憶される経路データ)に従って運転を自動実行する動作モードである。遠隔操縦モードは、遠隔操作装置20から操作者による指示を逐一作業車両100の車両制御装置10に送信して運転を制御する動作モードである。待機モードは、遠隔操縦モードまたは手動運転モードのどちらにも遷移し得る動作モードである。
【0024】
非常停止モードは、何れかの作業車両100-i(iは1~4の何れか)が危険状態になった場合に手動走行モード以外の作業車両100の運転を緊急で停止させる停止状態の動作モードである。例えば、遠隔操作装置20が車両制御装置10から送られる各種状態情報に基づいて何れかの作業車両100-iが危険状態になったことを検知した場合に、監視下にある全ての車両制御装置10に非常停止の指示が一斉に送信され、手動走行モード以外の作業車両100が緊急停止する。非常停止モードの解除は、作業車両100-1~100-4の1台ずつ行う必要がある。一時停止モードは、自動運転モード中に何らかの理由により操作者の指示によって運転の自動実行を一時的に停止する動作モードである。簡単な再開操作で自動運転モードに復帰可能である。自動停止モードは、各種センサ16またはカメラ17あるいは作業車両100などの何らかの不具合により運転の自動実行を自動停止する動作モードである。
【0025】
運転制御部13は、モード設定部12により設定された動作モードに従って作業車両100の運転の制御を実行する。モード設定部12により自動運転モードが設定された場合、運転制御部13は、経路データ記憶部10Aに記憶された走行経路のデータと、各種センサ16に含まれる位置・方位センサにより検出される作業車両100の現在位置および現在方位(以下、車両位置・方位という)とに基づいて、走行経路に対する車両位置・方位の偏差を逐次検出しながら、その偏差が少なくなるように作業車両100の操舵を自動制御する。また、自動運転モードの設定時に運転制御部13は、作業車両100の走行速度や変速など、操舵以外の走行に関する制御も自動実行する。また、作業機101の作動に関する制御も自動実行する。すなわち、運転制御部13は、自動運転を開始した後は、遠隔操作装置20からの指示を受けることなく、一切の運転を自動制御する。
【0026】
経路データ記憶部10Aには、作業車両100が走行する圃場内にあらかじめ設定された走行経路を表す経路データが記憶されている。この経路データには、圃場内のどの位置で作業機101を下降させて作業を行い、どの位置で作業機101を上昇させて作業を停止するかの作業計画を示す作業指示データも含まれている。
【0027】
この経路データは、例えば、作業車両100が走行を開始する前に遠隔操作装置20から車両制御装置10に送信され、経路データ記憶部10Aに記憶される。なお、経路データ記憶部10Aに経路データを記憶させる方法は、上記のような無線送信によるものに限定されない。例えば、経路データを記憶したリムーバブル記憶媒体を車両制御装置10に接続し、当該リムーバブル記憶媒体から経路データ記憶部10Aに経路データを転送するようにしてもよい。
【0028】
モード設定部12により遠隔操縦モードが設定された場合、運転制御部13は、遠隔操作装置20から送信されてくる遠隔操縦指示に従って、作業車両100の運転の制御を実行する。この場合における遠隔操縦指示は、エンジンの起動・停止に関する指示、走行の開始・停止に関する指示、操舵の制御に関する指示、走行速度の制御に関する指示、変速の制御に関する指示、作業機101の作動(昇降および駆動)に関する指示などを含む。
【0029】
モード設定部12により待機モードが設定された場合、運転制御部13は、エンジンは動作させつつ変速をニュートラルにしてアイドリング状態とし、作業車両100を停止させる。また、PTO軸の動力をPTOクラッチによって停止させ、作業機101を所定の高さに維持した状態で待機させる。待機モードの設定時には、遠隔操作装置20から車両制御装置10に遠隔操縦指示は送信されない。従って、車両制御装置10が遠隔操縦指示に従って作業車両100を走行させたり作業機101を作動させたりすることはない。
【0030】
状態情報送信部14は、各種センサ16により検出される作業車両100の走行状態を示す走行状態情報、各種センサ16により検出される作業機101の作動状態を示す作動状態情報、および、カメラ17により撮影される車両周囲の状態を示す車両周囲画像を遠隔操作装置20に逐次送信する。走行状態情報は、例えば、車両位置・方位、操舵角、走行速度、変速段、エンジン回転数、エンジン負荷率、車体の傾き角度(ロール角度およびピッチ角度)、燃料残量、冷却水温度、バッテリ電圧、車両周囲画像などの情報を含む。また、作動状態情報は、例えば、作業機101の高さ、PTO回転数などの情報を含む。以下では、走行状態情報、作動状態情報および車両周囲画像を合わせて各種状態情報という。
【0031】
各種センサ16は、上述の走行状態情報および作動状態情報を取得するために必要な複数のセンサを含む。カメラ17は、例えば、作業車両100の前方、後方、左方、右方、左斜め後方および右斜め後方を撮影するための6つのカメラである。作業車両100の前方を撮影するフロントカメラは、車体の一部が写り込むような撮影範囲となるように、設置位置および設置角度が調整されている。作業車両100の後方を撮影するリアカメラは、作業機101が写り込むような撮影範囲となるように、設置位置および設置角度が調整されている。なお、ここに示したカメラ17の台数は一例であり、少なくとも1台以上あればよい。
【0032】
遠隔操作装置20のモード制御部22は、遠隔操作装置20の操作者(遠隔操作者)による操作部31に対する操作に従って、複数の車両制御装置10に対するモードの設定を制御する。モード制御部22により設定するように制御されたモード情報(どの作業車両100に対してどの動作モードを設定しているかの情報)は、モード情報記憶部20Bに記憶される。なお、作業車両100に乗車した作業者が車両制御装置10を手動で操作して動作モードを変更した場合、または、車両制御装置10による自動制御により動作モードが変更された場合、変更後の動作モードを示すモード情報が車両制御装置10から遠隔操作装置20に送信され、モード情報記憶部20Bに記憶される。詳細を後述するように、モード制御部22による動作モードの設定制御の実行は、抑止処理実行部30により制限されることがある。
【0033】
遠隔操縦指示部23は、遠隔操作者による操作部31に対する操作に従って、遠隔操縦モードが設定されている作業車両100-iの車両制御装置10-iに対して各種の遠隔操縦指示を送信する。上述したように、遠隔操縦指示は、作業車両100のエンジンの起動・停止に関する指示、走行の開始・停止に関する指示、操舵の制御に関する指示、走行速度の制御に関する指示、変速の制御に関する指示、作業機101の昇降に関する指示、作業機101の駆動に関する指示などを含む。詳細を後述するように、遠隔操縦指示部23による遠隔操縦指示の実行は、抑止処理実行部30により制限されることがある。
【0034】
状態情報受信部24は、複数の作業車両100の状態情報送信部14から送信された各種状態情報(走行状態情報、作動状態情報および車両周囲画像)をそれぞれ逐次受信する。状態情報受信部24により受信された各種状態情報は、状態情報記憶部20Cに記憶される。
【0035】
監視画面表示制御部25は、経路データ記憶部20Aに記憶されている経路データおよび圃場データ(緯度経度情報を含む地図状のデータ)と、モード情報記憶部20Bに記憶されているモード情報と、状態情報記憶部20Cに記憶されている各種状態情報とに基づいて、複数の作業車両100の動作モードおよび運転状態(走行状態および作動状態)を監視する監視画面を生成し、ディスプレイ32に表示させる。経路データ記憶部20Aに記憶されている経路データおよび圃場データは、複数の作業車両100-1~100-4に対してそれぞれ設定される走行経路および作業計画を表すデータと、複数の作業車両100-1~100-4がそれぞれ走行する圃場に関するデータである。圃場データには、監視画面に圃場の俯瞰画像を表示させるために使用するデータと、圃場周囲の道路(圃場の内外を繋ぐ進入路、圃場外の農道や一般道を含む)のデータとが含まれる。
【0036】
監視画面表示制御部25がディスプレイ32に表示する監視画面には、例えば、複数の作業車両100-1~100-4が走行している圃場の俯瞰画像、複数の作業車両100-1~100-4の走行位置を圃場の俯瞰画像上に重畳して示すための車両画像、複数の作業車両100-1~100-4の各種状態情報(走行状態情報、作動状態情報、車両周囲画像)と設定中のモード情報、後述する抑止処理実行部30により出力される所定の警告メッセージなどが含まれる。
【0037】
モード情報取得部26は、複数の作業車両100-1~100-4に設定されているそれぞれの動作モードを示すモード情報を取得する。本実施形態において、モード情報取得部26は、モード情報記憶部20Bに記憶されている複数の作業車両100-1~100-4のそれぞれのモード情報を、負荷判定部29から監視負荷算出部28を通じて供給される要求に応じて所定の時間間隔で定期的に取得する。車両制御装置10から無線通信部11,21を介して送られモード情報記憶部20Bに記憶されたモード情報は、この定期的な処理によってモード情報取得部26により取得される。なお、モード情報取得部26は、モード情報記憶部20Bに何れかの作業車両100-iのモード情報が記憶されたことを検知し、その検知をトリガとして、モード情報記憶部20Bに記憶されている複数の作業車両100-1~100-4のそれぞれのモード情報を取得するようにしてもよい。
【0038】
また、モード情報取得部26は、操作部31の操作に応じてモード制御部22によりモード設定指示が発行された際に、負荷判定部29から監視負荷算出部28を通じて供給される要求に応じて、モード情報記憶部20Bに記憶されているモード情報を取得する。
【0039】
運転状況情報取得部27は、複数の作業車両100-1~100-4のそれぞれの運転状況を示す運転状況情報を取得する。本実施形態において、運転状況情報取得部27は、状態情報記憶部20Cに記憶されている複数の作業車両100-1~100-4のそれぞれの走行状態情報(特に、車両位置・方位)と、経路データ記憶部20Aに記憶されている圃場データとに基づいて、作業車両100が圃場の内外のどの場所を走行しているかを示す作業状況情報を、運転状況情報の1つとして取得する。運転状況情報取得部27は、負荷判定部29からの要求に応じて所定の時間間隔で定期的に運転状況情報を取得する。
【0040】
作業状況情報は、作業車両100の走行場所として、圃場内、進入路、圃場外の何れかであるかを示す情報を含む。圃場外を示す情報は、農道または一般道の何れであるかを示す情報に細分化してもよい。農道を示す情報は、作業車両100と作業者(監視者)以外は存在しない完全封鎖状態の農道、作業車両100と作業者(監視者)に加え、他の作業者(ただし、主に関係者)や農業機械が存在する可能性がある準封鎖状態の農道、第三者の自動車や人の往来があり得る封鎖なし状態の農道の何れかを示す情報に更に細分化してもよい。
【0041】
なお、作業状況情報は、作業車両100が圃場内でどのような作業をしているかを示す情報を更に含んでもよい。作業車両100の作業内容を示す情報は、例えば、往復作業の直進中、往復作業の旋回中、作業開始点等への移動中、圃場の最外周作業中の何れかであるかを示す情報を含む。
【0042】
監視負荷算出部28は、モード情報取得部26により取得される複数の作業車両100-1~100-4のモード情報および運転状況情報取得部27により取得される複数の作業車両100-1~100-4の運転状況情報(作業状況情報)に基づいて、遠隔操作装置20を操作する操作者の複数の作業車両100-1~100-4に対する監視負荷の大きさを算出する。
【0043】
例えば、作業車両100の複数の動作モードに対して、動作モードごとの監視負荷の大きさに応じたコストがあらかじめ設定されるとともに、作業車両100の作業状況に対して、作業状況ごとの監視負荷の大きさに応じたコストがあらかじめ設定されている。コストとは、動作モードごとおよび作業状況ごとの監視負荷の大きさを数値化したものである。監視負荷算出部28は、モード情報取得部26により取得されるモード情報から特定されるコストと、運転状況情報取得部27により取得される作業状況情報から特定されるコストとを加算することにより、操作者の複数の作業車両100-1~100-4に対する監視負荷の大きさ(トータルコスト)を算出する。
【0044】
複数の動作モードに対するコストは、例えば、「手動運転モード<非常停止モード<待機モード<一時停止モード<自動停止モード<自動運転モード<遠隔操縦モード」の順で大きくなるように設定される。また、複数の作業状況に対するコストは、作業状況情報が作業車両100の走行場所として圃場内、進入路、圃場外の何れかであるかを示す情報である場合、例えば、「圃場内<進入路<圃場外」の順で大きくなるように設定される。作業状況情報が作業車両100の作業内容を示す情報を更に含む場合、複数の作業状況に対するコストは、例えば、「圃場内:往復作業の直進中<圃場内:往復作業の旋回中<圃場内:作業開始点等への移動中<圃場内:圃場の最外周作業中<進入路<圃場外」の順で大きくなるように設定される。また、圃場外の情報が更に細分化されている場合、複数の作業状況に対するコストは、例えば、「圃場内:往復作業の直進中<圃場内:往復作業の旋回中<圃場内:作業開始点等への移動中<圃場内:圃場の最外周作業中<進入路<圃場外:完全封鎖状態の農道<圃場外:準封鎖状態の農道<圃場外:封鎖なし状態の農道<一般道」の順で大きくなるように設定される。
【0045】
なお、ここに示した内容は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、いくつかの動作モードに対するコストを同じ値としてもよい。同様に、いくつかの作業状況に対するコストを同じ値としてもよい。
【0046】
ここでは、動作モードに対するコストと作業状況に対するコストとを別に設定しておいて、複数の作業車両100-1~100-4ごとの動作モードに対する複数のコストと、複数の作業車両100-1~100-4ごとの作業状況に対する複数のコストとを加算することによって操作者の監視負荷の大きさを算出する例を説明したが、これに限定されない。例えば、動作モードと作業状況との両方を考慮した統合コストを設定しておいて、複数の作業車両100-1~100-4ごとの動作モードおよび作業状況に対する複数の統合コストを加算することによって操作者の監視負荷の大きさを算出するようにしてもよい。
【0047】
負荷判定部29は、遠隔操作装置20からの外発指示(モード設定指示および遠隔操縦指示)または車両制御装置10による内発指示が発行された場合に、それによって複数の作業車両100-1~100-4の少なくとも1つに関して変化する動作モードおよび運転状況を反映して監視負荷算出部28により算出される監視負荷の大きさ(トータルコスト)が、あらかじめ設定されている許容負荷(コストに関する閾値)を超えるか否かを判定する。例えば、負荷判定部29は、遠隔操作装置20からの外発指示による作業車両100-iの遠隔制御によって、何れかの作業車両100-iの動作モードまたは運転状況が変わろうとする場合に、変化後の動作モードおよび運転状況を反映して監視負荷算出部28により算出される監視負荷の大きさが、あらかじめ設定されている許容負荷を超えるか否かを判定する。
【0048】
すなわち、負荷判定部29は、モード制御部22によりモード設定指示が発行されて、それが何れかの作業車両100-iの車両制御装置10-iに送信されようとしているか否か、および、遠隔操縦指示部23により遠隔操縦指示が発行されて、それが何れかの作業車両100-iの車両制御装置10-iに送信されようとしているか否かを監視している。つまり、負荷判定部29は、操作部31によりモード設定指示または遠隔操縦指示のための操作が行われたか否かを監視している。モード設定指示または遠隔操縦指示が車両制御装置10-iに実際に送信されると、モード設定指示に従って作業車両100-iの動作モードが変更され、あるいは遠隔操縦指示に従って作業車両100-iの運転が制御されるため、作業車両100-iの動作モードまたは運転状況がモード設定指示または遠隔操縦指示に応じて変わることになる。
【0049】
負荷判定部29は、モード設定指示または遠隔操縦指示が作業車両100-iに対して実際に送信される前に、監視負荷算出部28に対して監視負荷の算出を要求する。この要求を受けた監視負荷算出部28は、モード設定指示または遠隔操縦指示を作業車両100-iに送信した場合に変わることになる作業車両100-iの動作モードまたは運転状況を想定して、操作者の複数の作業車両100-1~100-4に対する監視負荷の大きさを算出し、その算出値を負荷判定部29に応答する。負荷判定部29は、このようにして算出された監視負荷が所定の許容負荷を超えるか否かを判定する。
【0050】
また、負荷判定部29は、車両制御装置10-iの内発指示による作業車両100-iの自律制御によって、何れかの作業車両100-iの動作モードまたは運転状況が変わった場合に、変化後の動作モードおよび運転状況を反映して監視負荷算出部28により算出される監視負荷の大きさが、あらかじめ設定されている許容負荷を超えるか否かを判定する。ここで、車両制御装置10の内発指示による作業車両100の自律制御とは、自動運転モードの設定中に車両制御装置10が作業車両100の運転を自動実行することを意味する。例えば、作業車両100の自律制御によって、作業車両100の動作モード、走行場所、作業内容、走行速度などが変わることがある。
【0051】
上述したように、車両制御装置10の状態情報送信部14は、作業車両100の各種状態情報を遠隔操作装置20に逐次送信しており、車両制御装置10の自律制御によって動作モードが変わった場合には変化後のモード情報を遠隔操作装置20に送信する。車両制御装置10から送信された各種状態情報は状態情報記憶部20Cに記憶され、モード情報はモード情報記憶部20Bに記憶される。監視負荷算出部28は、モード情報取得部26および運転状況情報取得部27によってモード情報記憶部20Bおよび状態情報記憶部20Cから定期的に取得される情報に基づいて監視負荷を算出する。負荷判定部29は、このようにして算出された監視負荷が所定の許容負荷を超えるか否かを判定する。
【0052】
抑止処理実行部30は、監視負荷算出部28により算出された監視負荷が許容負荷を超えると負荷判定部29により判定された場合に、警告または制御禁止に関する所定の抑止処理を実行する。例えば、抑止処理実行部30は、操作部31の操作によって操作者により指定されたモード設定指示または遠隔操縦指示を実行すると監視負荷が許容負荷を超えることを示す警告メッセージをディスプレイ32の監視画面に表示する。あるいは、抑止処理実行部30は、操作者により指定されたモード設定指示または遠隔操縦指示を無効化し、作業車両100に対して送信しないようにモード制御部22および遠隔操縦指示部23を制御するようにしてもよい。警告メッセージの表示と指示の無効化とを両方とも実行するようにしてもよい。
【0053】
例えば、モード制御部22によるモード設定指示の発行または遠隔操縦指示部23による遠隔操縦指示の発行が行われたことに応じて監視負荷算出部28により算出された監視負荷が許容負荷を超えた場合には、警告メッセージを表示するとともに、当該モード設定指示および遠隔操縦指示を無効化する。一方、モード情報取得部26および運転状況情報取得部27によって定期的に取得される情報に基づいて、車両制御装置10の内発指示による自律制御によって変わった作業車両100の動作モードまたは運転状況に応じて監視負荷算出部28により算出された監視負荷が許容負荷を超えた場合には、警告メッセージを表示するようにする。
【0054】
なお、ここでは、作業車両100の動作モードおよび作業状況に応じて監視負荷を算出する例を説明したが、これ以外の情報を更に考慮して監視負荷を算出するようにしてもよい。例えば、運転状況情報取得部27は、状態情報記憶部20Cに走行状態情報の1つとして記憶されている複数の作業車両100-1~100-4のそれぞれの走行速度情報を、運転状況情報として取得する。そして、監視負荷算出部28は、複数の作業車両100-1~100-4のそれぞれの走行速度情報を更に考慮して、操作者の複数の作業車両100-1~100-4に対する監視負荷の大きさを算出するようにしてもよい。この場合、走行速度に関するコストは、走行速度が速くなるほど大きな値となるように設定される。
【0055】
別の例として、複数の作業車両100-1~100-4のそれぞれの周囲監視機能の有無を示す監視機能情報を取得する監視機能情報取得部を更に備えるようにして、監視負荷算出部28は、モード情報取得部26により取得される複数の作業車両100-1~100-4のモード情報および運転状況情報取得部27により取得される複数の作業車両100-1~100-4の運転状況情報に加え、監視機能情報取得部により取得される複数の作業車両100-1~100-4の監視機能情報に基づいて、監視負荷の大きさを算出するようにしてもよい。複数の作業車両100-1~100-4の周囲監視機能の有無に関する情報は、例えば、遠隔操作装置20にあらかじめ設定され、これを監視機能情報取得部が取得する。あるいは、周囲監視機能の有無に関する情報が複数の作業車両100-1~100-4にあらかじめ設定され、作業車両100-1~100-4から遠隔操作装置20に送信された情報を監視機能情報取得部が取得するようにしてもよい。
【0056】
ここで、周囲監視機能とは、各種センサ16やカメラ17によって、作業車両100の周囲の状況を監視し、その状況に関する情報(例えば、各種センサ16の出力値や車両周囲画像など)を出力する機能をいう。上記実施形態では、複数の作業車両100-1~100-4が何れも各種センサ16およびカメラ17を備えるものとして説明したが、何れか一方または両方を備えない作業車両100-iが存在する場合に、各種センサ16およびカメラ17の有無によって異なるコストを設定し、これに応じて監視負荷の大きさを算出するようにしてもよい。例えば、周囲監視機能の有無に関するコストは、「各種センサ16およびカメラ17の両方あり<各種センサ16またはカメラ17の何れか一方のみあり<各種センサ16およびカメラ17の両方ともなし」の順に大きくなるように設定される。この場合の各種センサ16は、例えばGNSS(global navigation satellite system)やIMU(Inertial Measurement Unit)を含む。
【0057】
別の例として、複数の作業車両100-1~100-4のそれぞれの障害物自動回避機能の有無を示す回避機能情報を取得する回避機能情報取得部を更に備えるようにして、監視負荷算出部28は、モード情報取得部26により取得される複数の作業車両100-1~100-4のモード情報および運転状況情報取得部27により取得される複数の作業車両100-1~100-4の運転状況情報に加え、回避機能情報取得部により取得される複数の作業車両100-1~100-4の回避機能情報に基づいて、監視負荷の大きさを算出するようにしてもよい。複数の作業車両100-1~100-4の障害物自動回避機能の有無に関する情報は、例えば、遠隔操作装置20にあらかじめ設定され、これを回避機能情報取得部が取得する。あるいは、障害物自動回避機能の有無に関する情報が複数の作業車両100-1~100-4にあらかじめ設定され、作業車両100-1~100-4から遠隔操作装置20に送信された情報を回避機能情報取得部が取得するようにしてもよい。
【0058】
ここで、障害物自動回避機能とは、各種センサ16やカメラ17によって、作業車両100の周囲にある障害物を検知し、更にその検知した障害物への接近や衝突を回避する機能をいう。障害物を回避する方法として、作業車両100による自動回避(操舵制御による進行経路の変更または走行自動停止など)、遠隔操作装置20の操作者に対して障害物の検知を知らせる警報メッセージの出力などがある。警報メッセージが出力された場合は、例えば、遠隔操作装置20の操作者による遠隔操縦や作業者による乗車運転により作業車両100を操作して障害物を回避する。例えば、障害物自動回避機能の有無に関するコストは、「自動回避機能あり<警報の出力機能あり<何れの機能もなし」の順に大きくなるように設定される。
【0059】
別の例として、複数の作業車両100-1~100-4との間のそれぞれの通信状態を示す通信状態情報を取得する通信状態情報取得部を更に備えるようにして、監視負荷算出部28は、モード情報取得部26により取得される複数の作業車両100-1~100-4のモード情報および運転状況情報取得部27により取得される複数の作業車両100-1~100-4の運転状況情報に加え、通信状態情報取得部により取得される複数の作業車両100-1~100-4の通信状態情報に基づいて、監視負荷の大きさを算出するようにしてもよい。複数の作業車両100-1~100-4との通信状態は、無線通信部21により実行中の無線通信の状態を監視することによって取得することが可能である。
【0060】
例えば、通信状態に関するコストは、「複数の作業車両100-1~100-4の各種状態情報を受信するのに十分な帯域が確保されている状態<何れかの作業車両100-iとの通信状態が悪化した状態(例えば、各種状態情報の更新レートが低下した状態、または車両周囲画像のフレームレートが低下した状態)<通信が途絶えた状態」の順に大きくなるように設定される。
【0061】
別の例として、操作者による遠隔操作装置20の操作状態を示す操作状態情報を取得する操作状態情報取得部を更に備えるようにして、監視負荷算出部28は、モード情報取得部26により取得される複数の作業車両100-1~100-4のモード情報および運転状況情報取得部27により取得される複数の作業車両100-1~100-4の運転状況情報に加え、操作状態情報取得部により取得される操作状態情報に基づいて、監視負荷の大きさを算出するようにしてもよい。操作者による遠隔操作装置20の操作状態は、例えば、モード情報記憶部20Bに記憶されているモード情報と、操作部31に対する操作状況とを監視することによって取得することが可能である。
【0062】
例えば、操作状態に関するコストは、「複数の作業車両100-1~100-4が何れも自動運転モードに設定されていて、監視画面の監視のみを行っている状態<何れかの作業車両100-iに対して何らかの遠隔操縦指示をするために、操作部31の簡単な操作を行っている状態<何れかの作業車両100-iに対して何らかの遠隔操縦指示をするために、操作部31の複雑な操作を行っている状態」の順に大きくなるように設定される。簡単な操作とは、例えば単純なボタン操作である。複雑な操作とは、例えばハンドル、アクセル、ブレーキ、変速器などを用いた走行制御のための操作や、作業機101の昇降を含む作動制御のための操作などである。
【0063】
また、上記実施形態では、負荷判定部29は、あらかじめ設定された1つの許容負荷を監視負荷が超えるか否かを判定する例について説明したが、これに限定されない。例えば、許容負荷は、複数の作業車両100-1~100-4を操作する操作者の人数に応じた値に設定するようにしてもよい。すなわち、操作者の人数が多くなるほど値が大きくなるような許容負荷を複数設定し、そのときの操作者の人数に応じて何れかの許容負荷を用いるようにしてもよい。
【0064】
図4A図4Eは、監視負荷算出部28、負荷判定部29および抑止処理実行部30の動作内容の一例を説明するための図である。図4A図4Eでは、操作者の監視負荷を算出する際に用いる情報として、以下の(1)~(3)に示す情報を用いるものとしている。また、操作者が1人の場合の許容負荷の値が“8”、操作者が2人の場合の許容負荷の値が“12”に設定されているものとする。
(1)モード情報:自動運転モード、遠隔操縦モード、待機モードの何れか
(2)作業状況情報(走行場所):圃場内、農道の何れか
(3)監視仕様:カメラのみ、警報の出力機能あり、自動回避機能ありの何れか
ここで、監視仕様とは、周囲監視機能および障害物自動回避機能の有無を意味する。
【0065】
図4Aは、上記(1)~(3)の情報を考慮してあらかじめ4台の作業車両100-1~100-4に対して設定された各種コストを示す。図4Aに示すように、「待機モード<自動運転モード<遠隔操縦モード」の順に大きくなるようなコストが設定されている。また、自動運転モードのコストは走行場所に応じて2つパターンに分けられ、「圃場内<農道」の順に大きくなるようなコストが設定されている。また、4台の作業車両100-1~100-4がそれぞれ周囲監視機能/障害物自動回避機能を有するか否かに応じて、作業車両100-1~100-4ごとに異なるコストが設定されている。
【0066】
図4Bは、4台の作業車両100-1~100-4の現在の動作モードと運転状況およびその現状況に応じて算出される操作者の監視負荷の値を示したものである。図4Bに示す現状況では、4台の作業車両100-1~100-4が全て自動運転モードで圃場内を走行中である。この場合、4台の作業車両100-1~100-4に関するコストの値はそれぞれ“3”、“2”、“2”、“1”であり、これらを加算した監視負荷の値は“8”となる。これは1人の作業者が4台の作業車両100-1~100-4を監視する場合の許容負荷の範囲内の値である。
【0067】
図4Cは、図4Bに示す現状況から動作モードおよび運転状況の少なくとも一方が変化した後の状況およびその状況に応じて算出される監視負荷の値を示したものである。図4C(a)に示す状況は、第1の作業車両100-1が自動運転モードによる自動走行によって、走行場所が圃場から農道に変化した状況を示している。この場合、第1の作業車両100-1に関するコストは、“3”から“4”に上昇する。このため、4台の作業車両100-1~100-4に関するコストを合計した監視負荷の値は“9”となり、許容負荷の値“8”を超える。よって、抑止処理実行部30により警告メッセージが出力される。
【0068】
これに対し、例えば図4C(b)に示すように、操作者が操作部31を操作して第2の作業車両100-2に対するモード設定指示を発行し、第3の作業車両100-3の動作モードを待機モードに変更すると、第3の作業車両100-3に関するコストは、“2”から“0”に下降する。このため、4台の作業車両100-1~100-4に関するコストを合計した監視負荷の値は“7”となり、許容負荷の値“8”以下となる。これにより、警告メッセージの出力が停止される。
【0069】
図4Dは、図4Bに示す現状況から動作モードおよび運転状況の少なくとも一方が変化した後の状況およびその状況に応じて算出される監視負荷の値を示したものである。図4D(a)に示す状況は、操作者が操作部31を操作して第2の作業車両100-2に対するモード設定指示を発行し、第2の作業車両100-2の動作モードを遠隔操縦モードに設定しようとした状況を示している。この場合、第2の作業車両100-2に関するコストは“2”から“5”に上昇する。このため、4台の作業車両100-1~100-4に関するコストを合計した監視負荷の値は“11”となり、許容負荷の値“8”を超える。よって、抑止処理実行部30により警告メッセージが出力されるとともに、当該モード設定指示が無効化される。
【0070】
これに対し、例えば図4D(b)に示すように、操作者が操作部31を操作して第3の作業車両100-3と第4の作業車両100-4に対するモード設定指示を発行し、これら2つの作業車両100-3,100-4の動作モードを待機モードに変更すると、第3の作業車両100-3に関するコストは“2”から“0”に下降し、第4の作業車両100-4に関するコストは“1”から“0”に下降する。この時点で4台の作業車両100-1~100-4に関するコストを合計した監視負荷の値は“5”となり、許容負荷の値“8”以下のとなる。この後、第2の作業車両100-2に対するモード設定指示を発行し、第2の作業車両100-2の動作モードを遠隔操縦モードに変更すれば、第2の作業車両100-2に関するコストが“2”から“5”に上昇しても、4台の作業車両100-1~100-4に関するコストを合計した監視負荷の値は“8”となるため、当該モード設定指示は許容される。
【0071】
図4Eは、図4Bに示す状況から動作モードおよび運転状況の少なくとも一方が変化した後の状況およびその状況に応じて算出される監視負荷の値を示したものである。図4E(a)に示す状況は、操作者が操作部31を操作して第2の作業車両100-2および第4の作業車両100-4に対するモード設定指示を発行し、動作モードを何れも遠隔操縦モードに変更しようとした状況を示している。この場合、第2の作業車両100-2に関するコストは“2”から“5”に上昇し、第4の作業車両100-4に関するコストは“1”から“5”に上昇し、4台の作業車両100-1~100-4に関するコストを合計した監視負荷の値は“14”となる。よって、抑止処理実行部30により当該モード設定指示は無効化される。
【0072】
これに対し、例えば図4E(b)に示すように、操作者が操作部31を操作して第3の作業車両100-3に対するモード設定指示を発行し、第3の作業車両100-3の動作モードを待機モードに変更すると、第3の作業車両100-3に関するコストは“2”から“0”に下降する。このようにしても、2つの作業車両100-2,100-4の動作モードを遠隔操縦モードに変更した場合の監視負荷の値は“12”であり、1人の作業者が4台の作業車両100-1~100-4を監視する場合の許容負荷の値“8”を超えている。これに対し、作業者の数を増やして2人にすると、許容負荷の値は“12”であるから、2つの作業車両100-2,100-4の動作モードを遠隔操縦モードに変更することが可能となる。
【0073】
図5は、以上のように構成した本実施形態による遠隔操作装置20の動作例を示すフローチャートである。
【0074】
まず、負荷判定部29は、操作部31によりモード設定指示または遠隔操縦指示のための操作が行われたか否か、すなわち、モード制御部22によりモード設定指示が発行されて何れかの作業車両100-iの車両制御装置10-iに送信されようとしているか否か、および、遠隔操縦指示部23により遠隔操縦指示が発行されて何れかの作業車両100-iの車両制御装置10-iに送信されようとしているか否かを判定する(ステップS1)。
【0075】
ここで、モード制御部22によるモード設定指示の発行または遠隔操縦指示部23による遠隔操縦指示の発行が行われたと判定した場合、負荷判定部29は、監視負荷算出部28に対して監視負荷の算出を要求する。この要求を受けた監視負荷算出部28は、モード情報取得部26に要求を出して、モード情報記憶部20Bに記憶されている4台の作業車両100-1~100-4に関するモード情報を取得するとともに(ステップS2)、運転状況情報取得部27に要求を出して、4台の作業車両100-1~100-4に関する運転状況情報を取得する(ステップS3)。
【0076】
そして、監視負荷算出部28は、モード情報取得部26により取得されたモード情報と、運転状況情報取得部27により取得された運転状況情報とを用いて、上記ステップS1で発行されたモード設定指示または遠隔操縦指示を作業車両100-iに送信した場合に変わることになる作業車両100-iの動作モードまたは運転状況を想定して、操作者の複数の作業車両100-1~100-4に対する監視負荷の大きさを算出し、その算出値を負荷判定部29に応答する(ステップS4)。負荷判定部29は、このようにして算出された監視負荷が所定の許容負荷を超えるか否かを判定する(ステップS5)。
【0077】
ここで、算出された監視負荷が所定の許容負荷を超えると判定された場合、抑止処理実行部30は、警告メッセージをディスプレイ32の監視画面に表示するとともに、ステップS1で発行されたモード設定指示または遠隔操縦指示を無効化する(ステップS6)。一方、算出された監視負荷が所定の許容負荷を超えないと判定された場合、モード制御部22または遠隔操縦指示部23は、ステップS1で発行されたモード設定指示または遠隔操縦指示を作業車両100-iの車両制御装置10-iに送信する(ステップS7)。ステップS6またはS7の処理の実行の後、処理はステップS14に進む。
【0078】
上記ステップS1において、モード制御部22によるモード設定指示の発行および遠隔操縦指示部23による遠隔操縦指示の発行の何れも行われていないと判定された場合、負荷判定部29は、監視のための所定の時間間隔が経過したか否かを判定する(ステップS8)。所定の時間間隔がまだ経過していない場合、処理はステップS14に進む。
【0079】
一方、所定の時間間隔が経過した場合、負荷判定部29は、監視負荷算出部28に対して監視負荷の算出を要求する。この要求を受けた監視負荷算出部28は、モード情報取得部26に要求を出して、モード情報記憶部20Bに記憶されている4台の作業車両100-1~100-4に関するモード情報を取得するとともに(ステップS9)、運転状況情報取得部27に要求を出して、4台の作業車両100-1~100-4に関する運転状況情報を取得する(ステップS10)。
【0080】
そして、監視負荷算出部28は、モード情報取得部26により取得されたモード情報と、運転状況情報取得部27により取得された運転状況情報とを用いて、操作者の複数の作業車両100-1~100-4に対する監視負荷の大きさを算出し、その算出値を負荷判定部29に応答する(ステップS11)。負荷判定部29は、このようにして算出された監視負荷が所定の許容負荷を超えるか否かを判定する(ステップS12)。
【0081】
ここで、算出された監視負荷が所定の許容負荷を超えると判定された場合、抑止処理実行部30は、警告メッセージをディスプレイ32の監視画面に表示する(ステップS13)。その後、処理はステップS14に進む。一方、算出された監視負荷が所定の許容負荷を超えないと判定された場合、処理はステップS14に進む。ステップS14において、遠隔操作装置20は、電源がオフとされたか否かを判定する。電源がオフとされていない場合、処理はステップS1に戻る。一方、電源がオフとされた場合、図5に示すフローチャートの処理は終了する。
【0082】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、遠隔操作装置20からの外発指示による遠隔制御または車両制御装置10の内発指示による作業車両100の自律制御によって、何れかの作業車両100-iの動作モードまたは運転状況が変わろうとする場合または変わった場合に、変化後の動作モードおよび運転状況を反映して、複数の作業車両100-1~100-4のそれぞれの動作モードを示すモード情報と、複数の作業車両100-1~100-4のそれぞれの運転状況を示す運転状況情報とに基づいて、遠隔操作装置20を操作する操作者の複数の作業車両100-1~100-4に対する監視負荷の大きさを算出し、算出した監視負荷の大きさが、あらかじめ設定されている許容負荷を超えると判定された場合に、警告または制御禁止に関する所定の抑止処理を実行するようにしている。
【0083】
このように構成した本実施形態によれば、遠隔操作装置20の操作者が遠隔制御対象とする作業車両100に対して、遠隔操作装置20による遠隔制御または車両制御装置10による自律制御が行われる場合に、作業車両100に特有の動作モードおよび運転状況に基づいて操作者の複数台の作業車両100に対する監視負荷が算出され、監視負荷が許容負荷を超える場合には、遠隔制御または自律制御に対して警告または制御禁止に関する所定の抑止処理が実行される。これにより、操作者の監視負荷が許容負荷を超えない範囲で、操作者が複数台の作業車両100を適切に監視して遠隔制御を行うことができる。
【0084】
なお、上記実施形態では、監視下にある複数の作業車両100-1~100-4のうち何れかの作業車両100-iの動作モードまたは運転状況が変わろうとする場合または変わった場合に、操作者の監視負荷を算出して許容負荷を超えるか否かを判定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、遠隔操作装置20からの外発指示または車両制御装置10による内発指示によって、新たな作業車両100を監視下に加えることを指示した場合または監視下に加えた場合に、追加された作業車両100の動作モードまたは運転状況を含めて操作者の監視負荷を算出して許容負荷を超えるか否かを判定するようにしてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、監視負荷算出部28により算出された監視負荷の大きさが許容負荷を超えると負荷判定部29により判定された場合に、抑止処理実行部30が警告または制御禁止に関する所定の抑止処理を実行する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図6に示すように、負荷判定部29および抑止処理実行部30に代えて処理実行部33を備え、当該処理実行部33が監視画面表示制御部25を制御して、監視負荷算出部28により算出された監視負荷の大きさ(トータルコスト)と許容負荷(コストに関する閾値)とを含むメッセージをディスプレイ32の監視画面に常時表示させるようにしてもよい。
【0086】
現在の許容負荷に対する監視負荷を常時表示することによって、操作者は現在の負荷状況を視覚的に把握することができる。これにより操作者は、内発指示により警報が発せられることや、外発指示により警告メッセージが表示されたり指示が無効化されたりすることを未然に防ぐために有用な情報や機会を得ることができる。そのため安全の確保に繋がり、また操作者の心的負荷の軽減にも繋がる。なお、負荷判定部29および抑止処理実行部30に加えて、処理実行部33を更に備えるようにしてもよい。
【0087】
また上記実施形態では、複数の作業車両100-1~100-4を操作する操作者の人数に応じた値に許容負荷を設定する例について説明したが、操作者の熟練度に応じた値に許容負荷を設定するようにしてもよい。
【0088】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0089】
10 車両制御装置
12 モード設定部
13 運転制御部
14 状態情報送信部
20 遠隔操作装置
22 モード制御部
23 遠隔操縦指示部
24 状態情報受信部
25 監視画面表示制御部
26 モード情報取得部
27 運転状況情報取得部
28 監視負荷算出部
29 負荷判定部(処理実行部)
30 抑止処理実行部(処理実行部)
33 処理実行部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6