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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】堆肥化管理装置及び堆肥化管理方法
(51)【国際特許分類】
   C05F 3/06 20060101AFI20240617BHJP
   C02F 11/02 20060101ALI20240617BHJP
   G01K 1/14 20210101ALI20240617BHJP
   G01K 7/02 20210101ALI20240617BHJP
【FI】
C05F3/06 C
C02F11/02 ZAB
G01K1/14 L
G01K7/02 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020025670
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021130078
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】503255936
【氏名又は名称】有限会社 岡本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 佳之
(72)【発明者】
【氏名】住田 憲俊
(72)【発明者】
【氏名】小島 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】松尾 守展
(72)【発明者】
【氏名】岡本 壮一
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-039809(JP,A)
【文献】特開2010-070442(JP,A)
【文献】特開2009-013007(JP,A)
【文献】特開2012-229136(JP,A)
【文献】米国特許第06560895(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05F
C02F 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆肥材料を収容する複数の発酵槽に対向して移動可能に支持された堆肥材料把持部による堆肥材料切り返し動作を制御する切り返し動作制御部と、
前記堆肥材料把持部に設置される計測器が計測した結果を通知する情報であって前記堆肥材料切り返し動作時に当該堆肥材料把持部が把持している堆肥材料の堆肥化の状態を判定可能な情報である堆肥化情報を取得する堆肥化状態取得部と、
前記発酵槽に収容されている前記堆肥材料の位置を仮想的に区分けした仮想ブロックごとに、前記堆肥材料切り返し動作時に計測された前記堆肥化情報を記憶部に記憶させる記憶管理部と、
前記堆肥化情報に基づいて前記仮想ブロックごとに堆肥化の完了判定を行う堆肥化判定部と、を備えることを特徴とする堆肥化管理装置。
【請求項2】
前記計測器は温度センサであって、前記堆肥化情報には当該温度センサが前記堆肥材料切り返し動作時に計測した堆肥材料の温度を含み、
前記堆肥化判定部は、前記温度が所定の温度に達した前記仮想ブロックを堆肥化完了ブロックとして判定する、請求項1に記載の堆肥化管理装置。
【請求項3】
前記温度センサは熱電対を用いたものである、請求項2に記載の堆肥化管理装置。
【請求項4】
前記計測器は水分量センサであって、前記堆肥化情報には当該水分量センサが前記堆肥材料切り返し動作時に計測した堆肥材料の水分量を含み、
前記堆肥化判定部は、前記温度が所定の温度に達し、かつ、前記水分量が所定の前記水分量に達した前記仮想ブロックを堆肥化完了ブロックとして判定する、請求項2又は3に記載の堆肥化管理装置。
【請求項5】
前記計測器は前記堆肥材料把持部に把持している堆肥材料への相対位置を可変して前記堆肥化情報を取得する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の堆肥化管理装置。
【請求項6】
前記切り返し動作制御部は、前記完了判定において、堆肥化が未完了と判定された仮想ブロックに対応する堆肥材料への前記堆肥材料切り返し動作を継続して実行するように制御する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の堆肥化管理装置。
【請求項7】
堆肥材料を収容する複数の発酵槽に対向して移動可能に支持された堆肥材料把持部による堆肥材料切り返し動作をし、
前記堆肥材料把持部に設置される計測器が計測した結果を通知する情報であって前記堆肥材料切り返し動作時において前記堆肥材料把持部が把持している堆肥材料の堆肥化の状態を判定可能な情報としての堆肥化情報を取得し、
前記発酵槽に収容されている前記堆肥材料の位置を仮想的に区分けした仮想ブロックごとに、前記堆肥材料切り返し動作時に計測された前記堆肥化情報を記憶し、
前記堆肥化情報に基づいて前記仮想ブロックごとに堆肥化の完了判定を行う、ことを特徴とする堆肥化管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好気発酵する有機資材を堆肥化する堆肥化工程に関し、有機資材の温度及び水分を計測し堆肥化の度合いを管理する堆肥化管理装置及び堆肥化管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
畜産業において、家畜ふん尿から堆肥を生産して肥料として利用することが一般的に行なわれている。しかし、近年の労働力不足や経営規模の拡大に伴い、堆肥の生産に費やす労働力の省力化や、堆肥の外部流通・利用の拡大が課題となっている。
【0003】
一方、耕種側では、地力の維持向上や肥料コストの削減のため、家畜ふん堆肥の利用に期待が高まっているものの、堆肥中に残存する雑草種子や衛生面など家畜ふん堆肥の品質や取り扱い性に対する課題もある。そのため、2017年において発効された農業生産工程管理認証(通称「JGAP(Japan Good Agricultural Practice)認証」)では、雑草種子や病原菌を不活化できる堆肥化過程での有機物分解に伴う昇温反応に着目し、堆肥化においては「適切な発酵温度の確保」を認証取得のための適合規準として取り上げている。
【0004】
また、有機JASなど持続的な生産方式による農産物への関心が高まるにつれて、有機JASでも利用可能な家畜ふん堆肥の利用について改めて見直されている。
【0005】
以上のような背景により、有機資材(家畜ふん尿)を堆肥化させる堆肥生産工程において、温度測定に基づく堆肥の品質管理の必要性が高まっている。一方、堆肥温度の測定作業は、ほとんどのケースにおいて堆積物の側面や頂上表面に人手で温度計を挿入して読み値を記録する方法であるから、一つの発酵槽あたり一日数点の測定が時間的にも、労力的にも限度となっている。
【0006】
上記のような課題を鑑み、堆肥の生産工程で省力的に堆積温度を測定するための装置として、堆肥材料の切り返しを妨げることなく、堆肥材料の同一箇所における温度変化を継続的に測定することが可能な温度測定装置等が開示されている(特許文献1を参照)。
【0007】
また、コンポストの表面における温度分布を測定することにより、コンポスト内部の状況を確認することができ、内部状況に応じて、通気手段、加温冷却手段、及び攪拌手段を制御手段が作動させ脱臭効果を向上させるコンポスト装置等が開示されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2019-039809号公報
【文献】特開2010-070442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来技術を利用しても、有機資材(家畜ふん)から堆肥を生産するための堆肥化工程において、設備導入コスト及び運用コストの低減、さらには測定精度の向上を図るには課題がある。
【0010】
特許文献1に開示の温度測定装置等では、堆肥発酵槽内において任意の位置で挿入する温度センサを、切り返し装置の作業時に待避させるために、温度センサを支持・旋回・上下運動させるための機構や原動機を必要とする。このような温度センサの移動構成などは、温度測定そのものには不要な設備であり、導入時の費用負担の増加や運用時のコスト増の原因となる。また、腐食環境下での維持管理や故障対策も追加的に必要となる。さらに特許文献1に開示の温度測定装置では、温度の測定箇所が温度センサを移動させる機構によって制限されるので、温度測定に基づく堆肥化の管理精度を向上させることに困難さがある。
【0011】
特許文献2に開示のコンポスト装置等では、コンポストの表面における温度分布を赤外線サーモグラフィで堆肥と非接触で測定することが想定されている。したがって、堆肥の切り返し時など水蒸気の発生や発塵の多い環境では、これらがノイズとなって堆肥温度を精度よく測定できず、測定環境に影響を受けやく、測定精度の向上において課題を有する。
【0012】
本発明は、堆肥の生産工程において、省力的かつ精度よく堆肥化の状態を測定し管理する堆肥化管理装置及び堆肥化管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る堆肥化管理装置は、 堆肥材料を収容する複数の発酵槽に対向して移動可能に支持された堆肥材料把持部による堆肥材料切り返し動作を制御する切り返し動作制御部と、前記堆肥材料把持部に設置される計測器が計測した結果を通知する情報であって前記堆肥材料切り返し動作時において当該堆肥材料把持部が把持している堆肥材料の堆肥化の状態を判定可能な情報としての堆肥化情報を取得する堆肥化状態取得部と、前記発酵槽に収容されている前記堆肥材料の位置を仮想的に区分けした仮想ブロックごとに、前記堆肥材料切り返し動作時に計測された前記堆肥化情報を記憶部に記憶させる記憶管理部と、前記堆肥化情報に基づいて前記仮想ブロックごとに堆肥化の完了判定を行う堆肥化判定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記課題を解決し、堆肥の生産工程において、省力的かつ精度よく堆肥化の状態を測定し管理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る堆肥化管理装置を適用可能なクレーン式堆肥切り返し装置の概要を示す概要図。
図2】本発明に係る堆肥化管理装置の実施形態であるPLCの構成を例示する機能ブロック図。
図3】本実施形態における切り返し動作の概要を説明する説明図。
図4】本実施形態における切り返し動作に実行態様を説明する説明図。
図5】本実施形態に係るPLCで取得可能な堆肥化情報を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る堆肥化管理装置を適用可能なクレーン式堆肥切り返し装置1000の全体構造の概要を例示する概要図である。
【0017】
図1に示すように、クレーン式堆肥切り返し装置1000は、好気性発酵によって堆肥化可能な有機資材(家畜ふん尿)の発酵を促進し、発酵度合いを管理する機能を備える堆肥化管理装置を備える。堆肥化管理装置の詳細な実施形態は後述する。
【0018】
クレーン式堆肥切り返し装置1000は、有機資材である堆肥材料310を収容する発酵槽410に対して移動可能な堆肥クレーン200を備えている。
【0019】
堆肥クレーン200は、発酵槽410が設けられている建屋に設置されたクレーン走行部を構成するレール210に懸架されている。発酵槽410は、レール210に沿う方向に複数配列されていて、堆肥クレーン200が一つの発酵槽410に収容されている堆肥材料310を把持して隣接する発酵槽410に移動させることで、後述する「切り返し処理」を行い、堆肥化を促進する。
【0020】
複数配列されている発酵槽410は、各発酵槽410を所定の収容量となるように隔壁411で仕切られてもよい。なお、各発酵槽410の底面には堆肥材料310の発酵を促進するために空気を導入する通気口412が設けられている。堆肥材料310は、ある発酵槽410に対して、トラクター400などの運搬手段によって収容される。または、発酵槽410の前段に堆肥クレーン200で取り出し可能な搬入槽を設置して、堆肥材料310はそこに収容されてもよい。
【0021】
ある発酵槽410に収容された堆肥材料310は、所定のタイミングで堆肥クレーン200が備える堆肥材料把持部201によって把持されて持ち上げられ、隣の発酵槽410に移動する。すなわち、堆肥材料把持部201は、発酵槽410の上空の所定の位置までレール210に沿って移動し、ホイスト等により堆肥材料310の表面まで下降し、レーキ状グラブ204を開閉させて、発酵槽410内の所定位置の堆肥材料310を把持する。堆肥材料把持部201には、例えば、温度センサ202や水分量センサ203が設置されている。この温度センサ202や水分量センサ203によって、把持している堆肥材料310をホイスト等により堆肥材料把持部201がホームポジションまで上昇して隣の発酵槽410に移動するまでの間に温度や水分量を計測できる。
【0022】
温度センサ202や水分量センサ203は、堆肥化状態取得部12に計測結果を通知する計測器である。これら計測器は、堆肥材料把持部201の筐体に設置されている。堆肥材料把持部201は、発酵槽410の寸法に合わせて所定の長さを有しているので、計測器は堆肥材料把持部201の長手方向において、複数個が所定の間隔をもって配列される。これによって、発酵槽410に収容されている堆肥材料310の温度や水分量などによって示唆される堆肥化情報を同時期に多点で取得することができる。なお、計測器は、堆肥材料把持部201において把持されている堆肥材料に対する深さ方向の相対位置を可変できる構成を備えてもよい。この場合、切り返し処理を行っている途中の堆肥材料310であって堆肥材料把持部201が把持している最中の堆肥材料310における表面部分と中央部分の温度や水分量を計測することもできる。これによって、より精度よく、堆肥材料310の堆肥化度合い(堆肥化状態)を判定する情報を容易に得ることができる。
【0023】
なお、温度センサ202や水分量センサ203は、種々の型式のものを適用可能である。温度センサ202は、例えば、熱電対を用いるものを適用可能である。
【0024】
移動先の上空に移動した堆肥材料把持部201は、レーキ状グラブ204を解放して、堆肥材料310を移動先の発酵槽410に収容する。
【0025】
発酵槽410をまたがる堆肥材料310の移動は、所定のタイミングで繰り返し行なわれる。この繰り返しの間に、堆肥材料310の堆肥化は進行し、所定のタイミングにおいて、堆肥材料310の堆肥化の完了判定を行う。堆肥化が完了していると判定されたものから、順次、堆肥として搬出される。
【0026】
[堆肥化管理装置の実施形態]
次に、本発明に係る堆肥化管理装置の実施形態について、より詳細に説明する。図2は、堆肥化管理装置を構成するPLC100の構成と、PLC100によって動作が制御されるクレーン式堆肥切り返し装置1000の構成を示すブロック図である。
【0027】
PLC100は、制御部10と、制御部10において取得された堆肥化情報を記憶する記憶部20と、記憶部20に記憶された堆肥化情報を視覚的に確認できるように加工する機能に対して堆肥化情報を送信する通信部30と、を主に備えている。
【0028】
制御部10は、切り返し動作制御部11,堆肥化状態取得部12、記憶管理部13,堆肥化判定部14、と有する。
【0029】
[切り返し動作制御部11]
切り返し動作制御部11は、堆肥クレーン200の動作を制御して、「堆肥材料切り返し動作」(切り返し処理)を制御し、切り返し処理の対象として、各発酵槽410において仮想的に設定されるか仮想ブロックに関する情報を堆肥化状態取得部12に通知する。
【0030】
ここで、「切り返し処理」の概要について、図3を用いて説明する。図3に例示するように、二つの発酵槽410で堆肥材料310の切り返し処理を行う場合、「第一発酵槽」において「仮想ブロック番号」が「1」として管理されている堆肥材料310は、発酵槽410の最上部に相当する。これに対して、切り返し処理を行うと、仮想ブロック番号が「1」の部分は、「第二発酵槽」の最下部に移動する。なお、図3において各仮想ブロックを示すために付与されている数字のように、「第一発酵槽」と「第二発酵槽」では、上下方向の位置が入れ替わっている。すなわち、切り返し処理によって、上方にあった堆肥材料310が下方に移動する(天地返しする)。
【0031】
この切り返し処理を、各仮想ブロックに対して、例えば、一週間単位で繰り返すことを一ヶ月から三ヶ月繰り返し実行することによって、堆肥材料310が堆肥になる。
【0032】
堆肥材料310の堆肥化には、好気性の微生物による発酵作用が利用されるので、微生物の活性化のためにある程度の温度上昇が求められる。すなわち、堆肥化の進行度合い(堆肥化状態)を把握するには、堆肥材料310の温度管理が重要である。発酵槽410の下部は、通気口412から外気の流入に冷えて温度低下が生じやすいので、堆肥化の進行度合いが遅くなりがちであり、一方、ある程度上方に収容されている堆肥材料310は順調な温度上昇が望めるので、堆肥化の進行度が早い。堆肥化の進行度のムラを解消し、また、堆肥化をより促進するために、堆肥クレーン200によって、仮想ブロックごとに堆肥材料310を持ち上げて移動させ、上下方向の位置を入れ替える切り返し処理が有効である。
【0033】
図2に戻る。以上のように、切り返し処理を行うときには、「どの発酵槽410からどの発酵槽410への移動か」、「仮想ブロックの番号」、「各仮想ブロックにおける温度」を詳細に取得して管理することが、堆肥材料310の堆肥化状態の管理に重要である。そこで、切り返し動作制御部11は、タッチパネル220から入力される切り返し処理の開始指示や、予め設定される「切り返し処理スケジュール」に基づいて、各発酵槽410に対する切り返し処理を実行するように、堆肥クレーン200の動作を制御する。また、切り返し動作制御部11は、切り返し処理の対象としている発酵槽410を区別する情報と、仮想ブロックを区別する情報を堆肥化状態取得部12に通知する。
【0034】
[堆肥化状態取得部12]
堆肥化状態取得部12は、切り返し動作制御部11において通知される切り返し処理の実行時において、堆肥材料把持部201が把持した堆肥材料310の堆肥化状態情報を取得して記憶管理部13に通知する。堆肥化状態情報とは、堆肥材料310の温度や水分量をいう。
【0035】
切り返し動作時に堆肥クレーン200が把持している間において複数回(例えば、1秒おき)に、温度計測部121が温度センサ202の計測値を取得する。温度計測部121は、取得した温度のうち最高温度を堆肥化状態情報として、対応する仮想ブロックを区別する情報とともに、記憶管理部13に通知する。堆肥材料310の温度は、堆肥材料310の堆肥化が完了しているか否かを判定する指標となる。例えば、60℃に達していない堆肥材料310は、雑草種子や大腸菌など病原菌の残留リスクが高い。堆肥化状態取得部12では、発酵槽410に収容されている堆肥材料310を仮想ブロックごとに区別して、それぞれの仮想ブロックの温度の取得を、切り返し動作の実行中において、同時期に行うことができる。
【0036】
切り返し動作時に堆肥クレーン200が把持している間において複数回(例えば、1秒おき)に、水分量計測部122が水分量センサ203の計測値を取得する。水分量計測部122は、取得した水分量のうち最高値を堆肥化状態情報として、対応する仮想ブロックを区別する情報とともに、記憶管理部13に通知する。堆肥材料310の水分量は、温度と合わせて用いることで、堆肥材料310の堆肥化が完了しているか否かを判定する指標となる。例えば、好適な温度として60℃に達していない堆肥材料310があった場合、その水分量が所定の閾値(例えば75%)よりも多ければ、水分の影響で温度上昇が遅れている可能性が示唆される。また、微生物の活性水準とされる水分量所定の閾値とし、計測された水分量が、閾値よりも低ければ、微生物による分解がうまく進んでいないことが示される。このように、堆肥化状態取得部12では、発酵槽410に収容されている堆肥材料310を仮想ブロックごとに区別して、それぞれの仮想ブロックの温度や水分量の取得をする。そして、これら取得処理を、切り返し動作の実行中において、同時期に実行することが可能である。
【0037】
[記憶管理部13]
記憶管理部13は、堆肥化状態取得部12において取得された、仮想ブロックごとの温度や水分量を、仮想ブロックの管理情報と関連付けて記憶部20に記憶する。ここで、記憶部20に記憶される堆肥化状態情報のイメージを図4及び図5を用いて説明する。
【0038】
図4は、クレーン式堆肥切り返し装置1000と堆肥材料310の収容状態を例示する概要図である。温度センサ202が堆肥材料把持部201に四つ配列されているものとする。また、堆肥材料310の位置を区別する仮想ブロックを、一つの発酵槽410において、堆肥材料把持部201が移動する水平方向において3列で区別され、発酵槽410の深さ方向において、6層で区別されているものとする。この場合、一の発酵槽410における切り返し動作を(切り返し処理)を実行するとき、72点で温度計測が行なわれることとなる。
【0039】
図5は、記憶部20に記憶される(格納される)堆肥化状態情報の例である。図5(a)は、図4の「第一列」に相当する堆肥材料310に係る温度の格納例を示している。図5(b)は、図4の「第二列」に相当する堆肥材料310に係る温度の格納例を示している。図5(c)は、図4の「第三列」に相当する堆肥材料310に係る温度の格納例を示している。この堆肥化状態情報は、ある発酵槽410から隣の発酵槽410への切り返し動作を実行時に取得されたものである。したがって、図5に例示している情報と関連付けて、計測対象日時、計測対象の発酵槽410に関する情報も記憶される。図5に例示する堆肥化状態情報が、発酵槽410ごとに区別されて記憶部20に記憶される。なお、図5では水分量に関する例示はしていないが、堆肥化状態情報としての格納態様は、温度同様である。
【0040】
[堆肥化判定部14]
堆肥化判定部14は、記憶部20に記憶されている堆肥化状態情報を参照し、各仮想ブロックの堆肥化の進行状態を判定する。堆肥化の進行状態は、上述したとおり、堆肥材料の温度を指標として判定することができる。また、温度の変動の度合いの良否判定に水分量を指標として用いることができる。たとえば、好適な水分量が維持された仮想ブロックの堆肥材料310の温度が好適な温度である60℃以上に達していれば、この仮想ブロックの堆肥化は完了していると判定し「堆肥化完了ブロック」とする。なお、堆肥化完了判定の指標は、温度が60℃以上である期間が所定の時間(日数)を超えている場合や、水分量が程よく低下しかつ温度も60℃以上である場合などを用いることができる。
【0041】
なお、堆肥化完了の判定基準として用いる好適な温度や水分量は、上記の例に限定されるものではなく、季節や発酵槽410の設置環境によって、適宜異なるものである。判定基準は、タッチパネル220(図2参照)の入力部を介して任意に設定すればよい。
【0042】
なお、発酵槽410は、図1に例示したように、堆肥材料把持部201が移動する水平方向に沿って配列されているので、最終位置にある発酵槽410に収容されている堆肥材料310は、全ての仮想ブロックにおいて堆肥化完了となっていることが望ましい。その場合、当該発酵槽410に収容されている堆肥材料310の全てを堆肥として搬出可能である。
【0043】
しかし、最終位置にある発酵槽410に収容されている堆肥材料310において、上記に例示したように、所定の温度(例えば60℃)以上に至っていない仮想ブロックがあった場合、堆肥化判定部14は当該仮想ブロックを、堆肥化が未完了である「堆肥化未完了ブロック」と判定する。そして、堆肥化判定部14は、「堆肥化未完了ブロック」と判定した仮想ブロックの管理番号を切り返し動作制御部11に通知する。
【0044】
この場合、切り返し動作制御部11は、「堆肥化未完了ブロック」に相当する堆肥材料310に対して、継続して切り返し動作を実行するように、最終位置の発酵槽410から、その手前の発酵槽410に戻すなどの処理を行い、製品として搬出される堆肥材料310から、堆肥化が不十分と判定される状態の部分を隔離する。
【0045】
以上説明した本実施形態に係るPLC100によれば、堆肥材料310の堆肥化を行うときに実行される切り返し動作(切り返し処理)と同時期に、切り返し対象の堆肥材料310(仮想ブロックごとの堆肥材料310)の堆肥化の状態を自動的に取得できる。また、発酵槽410に収容されている堆肥材料310の全体の堆肥化状態も区別して取得することができるので、これをタッチパネル220の表示部や、通信部30を介して外部の表示装置に送信することで、堆肥材料310の堆肥化の状態を詳細に把握できる。その結果、堆肥化が不十分(堆肥化度合いが遅い)の部分に対して、よりよく堆肥化が進むように、個別に対処することができる。また、堆肥化が完了しているはずの発酵槽410において、堆肥化未完了が疑われる部分(仮想ブロック)を把握できるので、品質に影響を与える可能性がある部分を分離することができ、堆肥の質を向上させ、かつ安定させることができる。
【0046】
さらに、堆肥材料把持部201に対して、所定の配列(配置)をもって温度センサ202や水分量センサ203を付加し、これらセンサの計測値に基づいて制御する制御部10を付加することで、上記の機能を得ることができる。すなわち、堆肥化工程の管理コストや品質維持コストや設備導入コストを抑制しつつ、高品質の堆肥を製造することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 :制御部
11 :切り返し動作制御部
12 :堆肥化状態取得部
13 :記憶管理部
14 :堆肥化判定部
20 :記憶部
30 :通信部
121 :温度計測部
122 :水分量計測部
200 :堆肥クレーン
201 :堆肥材料把持部
202 :温度センサ
203 :水分量センサ
204 :レーキ状グラブ
210 :レール
220 :タッチパネル
310 :堆肥材料
410 :発酵槽
1000 :クレーン式堆肥切り返し装置
図1
図2
図3
図4
図5