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特許7504410制御装置、地中熱利用システム、制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】制御装置、地中熱利用システム、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   F24T 10/20 20180101AFI20240617BHJP
   F25B 30/06 20060101ALI20240617BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
F24T10/20
F25B30/06 T
F28D20/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022057820
(22)【出願日】2022-03-31
(65)【公開番号】P2023149312
(43)【公開日】2023-10-13
【審査請求日】2023-10-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】三原 伸治
(72)【発明者】
【氏名】崔 林日
(72)【発明者】
【氏名】坂井 正頌
(72)【発明者】
【氏名】山口 徹
(72)【発明者】
【氏名】竹中 悠
(72)【発明者】
【氏名】中尾 正喜
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-173257(JP,A)
【文献】特開平11-325650(JP,A)
【文献】特開2014-115016(JP,A)
【文献】特開2021-004700(JP,A)
【文献】特開2007-085644(JP,A)
【文献】特開平08-247496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24T 10/20
F25B 30/06
F28D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水井戸と冷水井戸とを備える熱源井戸設備を、前記温水井戸及び前記冷水井戸の各井戸の年間における揚水体積と還水体積とを等しくするように制御する物質平衡制御部と、
加熱装置及び冷却装置のうち、少なくとも一方を含む蓄熱補助設備を、前記温水井戸及び前記冷水井戸の両方の井戸の前記年間における揚水熱量と還水熱量とを等しくするように制御する熱平衡制御部と、
を備え
前記物質平衡制御部が、前記年間の各運転期間における揚水又は還水すべき設定体積を算出する体積算出部と、前記設定体積に基づき、前記熱源井戸設備を操作する井戸設備操作部と、を備え、
前記熱平衡制御部が、前記各運転期間における還水すべき設定温度を算出する温度算出部と、前記設定温度に基づき、前記蓄熱補助設備を操作する補助設備操作部と、を備える制御装置。
【請求項2】
前記温度算出部が、前期の還水履歴から揚水温度応答を求めるモデル式により、前記揚水温度応答の還水重み付け平均値を算出する第一算出部を備える請求項に記載の制御装置。
【請求項3】
前記温度算出部が、前記第一算出部で算出した前記揚水温度応答から次期の還水温度を算出する第二算出部を備える請求項に記載の制御装置。
【請求項4】
前記加熱装置が、太陽熱集熱器を含む請求項1からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記冷却装置が、冷却塔を含む請求項1からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記熱源井戸設備が、前記温水井戸と前記冷水井戸と接続する配管をさらに備え、
熱負荷と前記配管内との間に設けられているヒートポンプと、
前記配管内の水と前記ヒートポンプ側及び前記蓄熱補助設備側の媒体との間で、熱交換を行う熱交換器と、
をさらに備える
請求項1からのいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載の制御装置と、
前記熱源井戸設備と、
前記蓄熱補助設備と、
を備える
地中熱利用システム。
【請求項8】
温水井戸と冷水井戸とを備える熱源井戸設備を、前記温水井戸及び前記冷水井戸の各井戸の年間における揚水体積と還水体積とを等しくするように制御し、
加熱装置及び冷却装置のうち、少なくとも一方を含む蓄熱補助設備を、前記温水井戸及び前記冷水井戸の両方の井戸の前記年間における揚水熱量と還水熱量とを等しくするように制御
前記揚水体積と前記還水体積とを等しくする制御において、前記年間の各運転期間における揚水又は還水すべき設定体積を算出し、前記設定体積に基づき、前記熱源井戸設備を操作し、
前記揚水熱量と前記還水熱量とを等しくする制御において、前記各運転期間における還水すべき設定温度を算出し、前記設定温度に基づき、前記蓄熱補助設備を操作する
制御方法。
【請求項9】
コンピュータに、
温水井戸と冷水井戸とを備える熱源井戸設備を、前記温水井戸及び前記冷水井戸の各井戸の年間における揚水体積と還水体積とを等しくするように制御し、
加熱装置及び冷却装置のうち、少なくとも一方を含む蓄熱補助設備を、前記温水井戸及び前記冷水井戸の両方の井戸の前記年間における揚水熱量と還水熱量とを等しくするように制御
前記揚水体積と前記還水体積とを等しくする制御において、前記年間の各運転期間における揚水又は還水すべき設定体積を算出し、前記設定体積に基づき、前記熱源井戸設備を操作し、
前記揚水熱量と前記還水熱量とを等しくする制御において、前記各運転期間における還水すべき設定温度を算出し、前記設定温度に基づき、前記蓄熱補助設備を操作する
ことを実行させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、地中熱利用システム、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、井戸に蓄えた蓄熱を利用する地中熱利用システムが提案されている。
【0003】
これに関連する技術として、例えば、特許文献1には、帯水層に延びる複数の井戸に蓄えた温水及び冷水を利用する地中熱利用システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-325650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された地中熱利用システムは、冷房負荷に偏った建物の場合にあっては、冷却塔等を介して温水を冷却し、暖房負荷に偏った建物の場合にあっては、太陽熱等を介して冷水を温めて井戸を回復している。
しかし、特許文献1に開示された地中熱利用システムでは、年間を通じた熱量バランスと体積バランスとを維持できないことがある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、年間を通じた熱量バランスと体積バランスとを維持しやすい制御装置、地中熱利用システム、制御方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る制御装置は、温水井戸と冷水井戸とを備える熱源井戸設備を、前記温水井戸及び前記冷水井戸の各井戸の年間における揚水体積と還水体積とを等しくするように制御する物質平衡制御部と、加熱装置及び冷却装置のうち、少なくとも一方を含む蓄熱補助設備を、前記温水井戸及び前記冷水井戸の両方の井戸の前記年間における揚水熱量と還水熱量とを等しくするように制御する熱平衡制御部と、を備える。
【0008】
本開示に係る制御方法は、温水井戸と冷水井戸とを備える熱源井戸設備を、前記温水井戸及び前記冷水井戸の各井戸の年間における揚水体積と還水体積とを等しくするように制御し、加熱装置及び冷却装置のうち、少なくとも一方を含む蓄熱補助設備を、前記温水井戸及び前記冷水井戸の両方の井戸の前記年間における揚水熱量と還水熱量とを等しくするように制御する。
【0009】
本開示に係るプログラムは、コンピュータに、温水井戸と冷水井戸とを備える熱源井戸設備を、前記温水井戸及び前記冷水井戸の各井戸の年間における揚水体積と還水体積とを等しくするように制御し、加熱装置及び冷却装置のうち、少なくとも一方を含む蓄熱補助設備を、前記温水井戸及び前記冷水井戸の両方の井戸の前記年間における揚水熱量と還水熱量とを等しくするように制御することを実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の制御装置、地中熱利用システム、制御方法、及びプログラムによれば、年間を通じた熱量バランスと体積バランスとを維持しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施形態に係る地中熱利用システムの系統図である。
図2】本開示の実施形態に係る地中熱利用システムの年間サイクルにおける機能を説明する図である。
図3】本開示の実施形態に係る制御装置のブロック図である。
図4】本開示の実施形態に係る制御方法のフローチャートである。
図5】年間サイクルにおける還水温度と揚水温度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示に係る実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において同一または相当する構成には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0013】
<実施形態>
本開示に係る地中熱利用システムの実施形態について、図1図5を参照して説明する。
(地中熱利用システムの構成)
図1に示すように、地中熱利用システム1は、熱源井戸設備10と、蓄熱補助設備20と、ヒートポンプ30と、熱交換器40と、制御装置50とを備える。
熱負荷LD(例:空調負荷)が暖房を利用している時、地中熱利用システム1は、熱源井戸設備10に蓄えられた温水の温熱を暖房に利用すると同時に排冷熱を蓄える。
熱負荷LDが冷房を利用している時、地中熱利用システム1は、熱源井戸設備10に蓄えられた冷水の冷熱を冷房に利用すると同時に排温熱を蓄える。
【0014】
(熱源井戸設備の構成)
熱源井戸設備10は、温水井戸11と、冷水井戸12と、配管13とを備える。
【0015】
温水井戸11及び冷水井戸12は、それぞれ、地上から帯水層LY内に延びている。
温水井戸11及び冷水井戸12は、それぞれスクリーンを有するケーシング等を備え、帯水層LYの地下水を取り込んだり、温水井戸11及び冷水井戸12の内部から帯水層LYへ地下水を戻したりできるように構成されている。
地中熱利用システム1の定常運転時において、温水井戸11周辺の帯水層LYには温水が蓄えられ、冷水井戸12周辺の帯水層LYには冷水が蓄えられている。
温水井戸11と冷水井戸12とは、蓄えられた温水と冷水とが混ざらない程度に互いに十分離れた距離に設けられている。
【0016】
地中熱利用システム1において、熱源井戸設備10は、地下水を、温水井戸11及び冷水井戸12のうちの一方から地上にくみ上げ、熱利用及び補助蓄熱のために地上で熱交換を行い、温水井戸11及び冷水井戸12のうちの他方に注入する。つまり、熱源井戸設備10は、温水井戸11から地下水をくみ上げて冷水井戸12に注入する場合と、冷水井戸12から地下水をくみ上げて温水井戸11に注入する場合の、2つの運転モードを有する。
【0017】
配管13は、温水井戸11と冷水井戸12とを接続する。
配管13の一端である第一端131は、温水井戸11の内部に延びており、温水井戸11の内部の地下水に浸漬されている。
配管13の他端である第二端132は、冷水井戸12の内部に延びており、冷水井戸12の内部の地下水に浸漬されている。
【0018】
第一端131及び第二端132の各々には、ポンプPP、調整弁RV、逆止弁CV等が設けられており、配管13内の水の流量を調整できるように構成されている。
ポンプPPは、制御装置50からの指令により、インバータ制御により出力を変更できる。
調整弁RVは、制御装置50からの指令により、開度を変更できる。
【0019】
(ヒートポンプの構成)
ヒートポンプ30は、コンデンサ、エバポレータ、コンプレッサ等を備え、熱交換器40を介して、熱負荷LDと配管13との間に設けられている。
ヒートポンプ30は、熱交換器40で配管13内の水と熱交換を行った媒体を冷却したり、加熱したりする。これにより、ヒートポンプ30は、配管13内の水から得られた温熱又は冷熱を熱負荷LDに利用する一方、熱負荷LDから排出される排温熱又は排冷熱を、熱交換器40を介して、配管13内の水に蓄える。
【0020】
(熱交換器の構成)
熱交換器40は、配管13内の水とヒートポンプ30側及び蓄熱補助設備20側の媒体との間で熱交換する。
具体的には、熱交換器40は、配管13内の水として、温水井戸11からくみ上げられて配管13内を流れる地下水と、ヒートポンプ30側及び蓄熱補助設備20側の媒体との間で熱交換する。熱交換が行われた後の地下水は、熱交換器40から配管13内を流れ、冷水井戸12に注入される。
逆に、熱交換器40は、配管13内の水として、冷水井戸12からくみ上げられて配管13内を流れる地下水と、ヒートポンプ30側及び蓄熱補助設備20側の媒体との間で熱交換する。熱交換が行われた後の地下水は、熱交換器40から配管13内を流れ、温水井戸11に注入される。
熱交換器40は、地上で延びる配管13の途中に設けられている。
【0021】
熱交換器40を経た水が温水の場合、温水井戸11では温水蓄熱を行う。
熱交換器40を経た水が冷水の場合、冷水井戸12では冷水蓄熱を行う。
ここで「温水」とは、帯水層LYの地下水の初期地中温度より高い温度の水のことであり、「冷水」とは、帯水層LYの地下水の初期地中温度より低い温度の水のことである。
例えば、帯水層LYの地下水の初期地中温度は18℃である。
【0022】
(蓄熱補助設備の構成)
蓄熱補助設備20は、熱交換器40で配管13内の水と熱交換を行った媒体を冷却したり、加熱したりする。
蓄熱補助設備20は、加熱装置201と、冷却装置206とを備える。
本実施形態において、加熱装置201は太陽熱集熱器202を備え、冷却装置206は冷却塔207を備える。
【0023】
冷却塔207は、水を大気と接触させて気化させるときの気化熱を利用し、蓄熱補助設備20の媒体を冷却する。
これにより、図2に示すように、冬期において、熱負荷LDにおける暖房と同時に冷水井戸12への蓄冷を行う通常の運転に加え、必要に応じて冷却塔207を利用した冷水井戸12への補助蓄冷が可能となる。
【0024】
太陽熱集熱器202は、太陽により水を温めて得られた太陽熱を利用し、蓄熱補助設備20の媒体を加熱する。
これにより、図2に示すように、夏期において、熱負荷LDにおける冷房と同時に温水井戸11への蓄熱を行う通常の運転に加え、必要に応じて太陽熱集熱器202を利用した温水井戸11への補助蓄熱が可能となる。
【0025】
(制御装置の構成)
図3に示すように、制御装置50は、物質平衡制御部501と、熱平衡制御部505とを機能的に備える。
【0026】
制御装置50は、ハードウェア構成として、CPU51と、メモリ52、通信インタフェース53と、記録媒体54とを備える。
【0027】
CPU51は、予め用意されたプログラムに従って動作することで種々の機能を発揮するプロセッサである。CPU51の機能については後述する。
【0028】
メモリ52は、CPU51の動作に必要な記憶領域を有する。
【0029】
通信インタフェース53は、通信線を介して他の装置と通信可能に接続するための接続インタフェースであり、他の装置に指令を送信したり、他の装置からの応答を受信したりできるように構成されている。
【0030】
記録媒体54は、制御装置50の筐体内に設けられたローカルの記録媒体であって、HDDやSSDなどの大容量記憶デバイスである。
【0031】
次に、制御装置50のCPU51の機能について説明する。
CPU51は、予め用意されたプログラムに従って動作することで、上述のように、物質平衡制御部501及び熱平衡制御部505としての機能を発揮する。
【0032】
(物質平衡制御部の構成)
物質平衡制御部501は、熱源井戸設備10を、温水井戸11及び冷水井戸12の各井戸の年間における揚水体積と還水体積とを等しくするように制御する。
物質平衡制御部501は、体積算出部502と、井戸設備操作部503とを備える。
【0033】
体積算出部502は、年間の各運転期間における各井戸の揚水又は還水すべき設定体積を算出する。
具体的には、体積算出部502は、温水井戸11と冷水井戸12と別々に、暖房運転期間(例えば冬期の一期間)における設定体積を算出する。
また、体積算出部502は、温水井戸11と冷水井戸12と別々に、暖房と低温外気との併用の運転期間(例えば冬期の別期間)における設定体積を算出する。
また、体積算出部502は、温水井戸11と冷水井戸12と別々に、冷房運転期間(例えば夏期)における設定体積を算出する。
【0034】
井戸設備操作部503は、算出された設定体積に基づき、熱源井戸設備10を操作する。
具体的には、各運転期間における各井戸の揚水又は還水の体積が、算出された設定体積となるように、ポンプPP、調整弁RV等に指令を送り、配管13内の水の流量を制御する。
【0035】
(熱平衡制御部の構成)
熱平衡制御部505は、蓄熱補助設備20を、温水井戸11及び冷水井戸12の両方の井戸の年間における揚水熱量と還水熱量とを等しくするように制御する。
熱平衡制御部505は、温度算出部506と、補助設備操作部509とを備える。
【0036】
温度算出部506は、還水すべき還水温度を算出する。
具体的には、温度算出部506は、暖房運転期間(例えば冬期の一期間)における冷水井戸12への還水温度を算出する。
また、温度算出部506は、暖房と低温外気との併用運転期間(例えば冬期の別期間)における冷水井戸12への還水温度を算出する。
また、温度算出部506は、冷房運転期間(例えば夏期の別期間)における温水井戸11への還水温度を算出する。
【0037】
温度算出部506は、第一算出部507と、第二算出部508とを備える。
第一算出部507は、前期の還水履歴から揚水温度応答を求めるモデル式により、揚水温度応答の還水重み付け平均値を算出する。モデル式の詳細については後述する。
第二算出部508は、第一算出部507で算出した揚水温度応答から次期の還水温度を決定する。
【0038】
補助設備操作部509は、温度算出部506が算出した還水すべき還水温度に基づき、蓄熱補助設備20を操作する。
具体的には、各運転期間において加熱が必要な時は、補助設備操作部509は、体積算出部502で算出された体積で還水しつつ還水温度が算出した還水温度となるように、蓄熱補助設備20の加熱装置201に指令を送り、加熱装置201の加熱能力を操作する。
逆に、各運転期間において冷却が必要な時は、補助設備操作部509は、体積算出部502で算出された体積で還水しつつ還水温度が算出した還水温度となるように、蓄熱補助設備20の冷却装置206に指令を送り、冷却装置206の冷却能力を操作する。
【0039】
(制御装置の動作)
本実施形態の制御装置50の動作について説明する。
制御装置50の動作は、制御方法の実施形態に相当する。
制御装置50は、図4に示す各ステップを実施する。
【0040】
まず、物質平衡制御部501は、熱源井戸設備10を、温水井戸11及び冷水井戸12の各井戸の年間における揚水体積と還水体積とを等しくするように制御する(ST01:物質平衡制御ステップ)
具体的には、体積算出部502は、年間の各運転期間における揚水又は還水すべき設定体積を算出し(ST01A:設定体積算出ステップ)、井戸設備操作部503は、熱源井戸設備10を操作する(ST01B:井戸設備操作ステップ)
【0041】
ST01の実施と並行して、熱平衡制御部505は、蓄熱補助設備20を、温水井戸11及び冷水井戸12の両方の井戸の年間における揚水熱量と還水熱量とを等しくするように制御する(ST02:物質平衡制御ステップ)。
具体的には、温度算出部506は、年間の各運転期間における還水すべき設定温度を算出し(ST02A:設定温度算出ステップ)、補助設備操作部509は、設定温度に基づき、蓄熱補助設備20を操作する(ST02B:補助設備操作ステップ)。
【0042】
(モデル式の詳細説明)
地中熱利用システム1では、図5に示すようなモデルを構築する。
図5において、縦軸は揚水・還水温度を示し、横軸は揚水・還水体積を示す。
地中熱利用システム1は、還水温度を設定することができ、図5においても蓄熱・蓄冷期間中一定としている。
図5に示すモデルは、夏期冷房負荷が冬期暖房負荷よりも大きい場合を想定している。このため、図5に示すモデルには、暖房運転による蓄冷では足りない冷熱分を補うために冬期における蓄熱補助設備20の運転が加えられている。もし、夏期冷房負荷が冬期暖房負荷よりも大きい場合、夏期に蓄熱を補う運転が必要となる。
揚水温度は前年度の還水履歴の影響を受けるため、前年度の還水履歴から揚水温度応答を求めるためのモデル式を作成し、次年度運転時の注水温度を決定する。
揚水温度は、揚水期間中徐々に初期地下水温度へ向かって低下又は上昇するが、作成する簡易モデルでは、揚水温度応答を還水重み付け平均値として算出し、使用する。
【0043】
ここで、熱量の正負の定義に関し、帯水層LYへの熱の流入を正とし、帯水層LYからの熱の流出を負とする。
また、各記号を以下のように定義する。
Qw,w:冬期の熱量(図5に示す網掛け部の面積)
Qw,s:夏期の熱量(図5に示す網掛け部の面積)
Tp,w:冬期の温水井戸揚水温度
Ti,w,1:冬期の冷水井戸還水温度
Ti,s:夏期の温水井戸還水温度
Tp,s:夏期の冷水井戸揚水温度
Ti,w,2:暖房と低温外気との併用運転期間における平均還水温度
Vw,1:暖房運転期間の揚水・還水体積
Vw,2:暖房と低温外気との併用運転期間の揚水・還水体積
Vw,s:冷房運転期間の揚水・還水体積
Vw,w=Vw,1+Vw,2
【0044】
冬期の熱量Qw,w(図5に示す網掛け部の面積)は、式(1)となる。
【0045】
【数1】
【0046】
式(1)の右辺第一項は、式(2)となる。
【0047】
【数2】
【0048】
ここで、暖房運転期間におけるTp,wの平均温度を式(3)のようにおく。
【0049】
【数3】
【0050】
すると、式(2)は式(4)となる。
【0051】
【数4】
【0052】
同様に、暖房と低温外気との併用運転期間におけるTp,wの平均温度を式(5)のようにおく。
【0053】
【数5】
【0054】
すると、式(1)は式(6)となる。
【0055】
【数6】
【0056】
同様に、夏期の熱量Qw,s(図5に示す網掛け部の面積)である式(7)において、式(8)のようにおく。
【0057】
【数7】
【0058】
【数8】
【0059】
すると、式(9)となる。
【0060】
【数9】
【0061】
結果、年間サイクルの式として、式(6)と式(9)が得られる。
【0062】
次に、年間サイクルの物質平衡式は、式(10)となる。
【0063】
【数10】
【0064】
年間サイクルの熱平衡式は、式(11)となる。
【0065】
【数11】
【0066】
以上より、熱物質平衡制御は次のように定式化できる。
「年間サイクルにおいて、式(6)、式(9)、式(10)、式(11)を満足する、変数Ti,w,1、Ti,w,2、Ti,s、Vw,1、Vw,2を求めること。」
【0067】
上記で説明した年間熱物質平衡制御を実現するためには、還水履歴から揚水温度応答を得るモデルが必要である。
【0068】
Tp,w(冬期の温水井戸揚水温度)は、Ti,s(夏期の温水井戸還水温度)から式(12)に示す関数により求める。
【0069】
【数12】
【0070】
Tp,s(夏期の冷水井戸揚水温度)は、Ti,w,1(冬期の冷水井戸還水温度)とTi,w,2(暖房と低温外気との併用運転期間における平均還水温度)とから、式(13)に示す関数により求める。
【0071】
【数13】
【0072】
各期の熱回収率εは、帯水層LYに同量の水が注入され、そこから揚水されるときの生産エネルギーと投入エネルギーの比として定義される。水のエネルギー量は、帯水層LYの基の周辺温度T0を基準として定義される。熱回収率εは、式(14)となる。
【0073】
【数14】
【0074】
式(14)は、式(15)のように書くことができる。
【0075】
【数15】
【0076】
無次元温度T'は、式(16)のように定義される。
【0077】
【数16】
【0078】
熱回収率の式(14)は、式(17)のように表記できる。
【0079】
【数17】
【0080】
還水流量、揚水流量が一定の場合、無次元化揚水温度は、式(18)となる。
【0081】
【数18】
【0082】
1、2サイクル目の揚水温度応答は、過去のデータから予測することができないため、下記の手順で想定する必要がある。
【0083】
[1]物性値や帯水層条件を設定する。
【0084】
[2]縦分散長と等価熱伝導率から、式(19)に従って、有効熱伝導率を求める。
【0085】
【数19】
【0086】
[3]式(20)に示すように、無次元数を求める。
【0087】
【数20】
【0088】
[4]揚水温度データベース(Doughtyらによるもの(CHRISTINE DOUGHTY等,“A Dimensionless Parameter Approach to the Thermal Behavior of an Aquifer Thermal Energy Storage System”,WATER RESOURCES RESEARCH,1982年6月,VOL.18,NO.3,p. 571-587)、中尾、仲西によるもの(中尾正喜,仲西琴音等,“帯水層蓄熱システム企画のための揚水温度予測手法(第1報)既往研究の無次元化アプローチと課題”,空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集,公益社団法人 空気調和・衛生工学会,2020年,第2巻,p.169-172))から、無次元数に近い揚水温度データを抽出する。
【0089】
(作用及び効果)
本実施形態によれば、制御装置50は、各井戸の年間における揚水体積と還水体積とを等しくでき、両方の井戸の年間における揚水熱量と還水熱量とを等しくできる。
したがって、制御装置50は、年間を通じた熱量バランスと体積バランスとを維持しやすい。
加えて、年間を通じたこれらのバランスを維持できれば、還水温度の低下又は上昇が抑制でき、地中の熱塊サイズが安定し、周辺帯水層及び地球環境への影響を抑制できる。
また、自動制御しやすいことで、長期安定した運用が可能であり、帯水層蓄熱利用が普及しやすい。
また、事前に蓄冷運転方式、運転時間等を決めることができるため、蓄熱、消費電力ロス等の縮小が可能となる。
また、簡易的に平均揚水温度変化を求めることにより、制御装置50は、物質平衡制御及び熱平衡制御を実施しやすい。
【0090】
また、本実施形態の制御装置50は、年間の各運転期間における揚水又は還水すべき設定体積と還水すべき設定温度を算出し、熱源井戸設備10と蓄熱補助設備20とを操作するため、制御装置50は、熱源井戸設備10及び蓄熱補助設備20を、各運転期間の目標となる揚水又は還水すべき体積と還水すべき温度とに設定できる。
【0091】
また、本実施形態の制御装置50は、第一算出部507を備えることにより、蓄熱補助設備20の利用の有無を含む期間における平均的な還水温度を予測できる。
【0092】
また、本実施形態の制御装置50は、第二算出部508を備えることにより、次期の還水温度を予測できる。
【0093】
また、本実施形態の加熱装置201は、太陽熱集熱器202を含むことにより、太陽熱のような未利用の自然エネルギーが可能である。
【0094】
また、本実施形態の冷却装置206は、冷却塔207を含むことにより、低い外気温を利用した蓄冷が可能である。
【0095】
また、本実施形態では、配管13内の水とヒートポンプ30側及び蓄熱補助設備20側の媒体との間で熱交換が行われるため、熱源井戸設備10と熱負荷LDとの間、及び熱源井戸設備10と蓄熱補助設備20との間での熱収受がしやすい。
【0096】
<変形例>
本実施形態では、蓄熱補助設備20は、加熱装置201と、冷却装置206とを備えるが、蓄熱を補助できるなら、どのように構成されてもよい。
変形例として、寒冷地においては、蓄熱補助設備20は、加熱装置201及び冷却装置206のうち、加熱装置201のみを備えてもよい。
他の変形例として、温暖地においては、蓄熱補助設備20は、加熱装置201及び冷却装置206のうち、冷却装置206のみを備えてもよい。
【0097】
本実施形態では、温度算出部506は、第一算出部507と、第二算出部508とを備えるが、還水温度を算出できるならどのように構成されてもよい。
変形例として、温度算出部506は、第一算出部507及び第二算出部508のうち、第一算出部507のみを備えてもよい。
他の変形例として、温度算出部506は、第一算出部507及び第二算出部508のうち、第二算出部508のみを備えてもよい。
【0098】
ヒートポンプ30は、熱負荷LDに対して設けられているが、配管13内の水に温熱又は冷熱を提供するために必要であれば、さらに他の設備にも設けられてもよい。
変形例として、ヒートポンプ30は、熱負荷LDに加えて、蓄熱補助設備20に対して設けられてもよい。
【0099】
なお、上述の各実施形態においては、制御装置50の各種機能を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをマイコンといったコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各種処理を行うものとしている。ここで、コンピュータシステムのCPU51の各種処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって上記各種処理が行われる。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0100】
<その他の実施形態>
以上、本開示の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として示したものであり、本開示の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、本開示の範囲や要旨に含まれると同様に、本開示の範囲とその均等の範囲に含まれるものとする。
【0101】
<付記>
上述の実施形態に記載の制御装置50、地中熱利用システム1、制御方法、及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0102】
(1)第1の態様に係る制御装置50は、温水井戸11と冷水井戸12とを備える熱源井戸設備10を、前記温水井戸11及び前記冷水井戸12の各井戸の年間における揚水体積と還水体積とを等しくするように制御する物質平衡制御部501と、加熱装置201及び冷却装置206のうち、少なくとも一方を含む蓄熱補助設備20を、前記温水井戸11及び前記冷水井戸12の両方の井戸の前記年間における揚水熱量と還水熱量とを等しくするように制御する熱平衡制御部505と、を備える。
【0103】
本態様によれば、制御装置50は、各井戸の年間における揚水体積と還水体積とを等しくでき、両方の井戸の年間における揚水熱量と還水熱量とを等しくできる。
したがって、制御装置50は、年間を通じた熱量バランスと体積バランスとを維持しやすい。
加えて、年間を通じたこれらのバランスを維持できれば、還水温度の低下又は上昇が抑制でき、地中の熱塊サイズが安定し、周辺帯水層及び地球環境への影響を抑制できる。
また、自動制御しやすいことで、長期安定した運用が可能であり、帯水層蓄熱利用が普及しやすい。
また、事前に蓄冷運転方式、運転時間等を決めることができるため、蓄熱、消費電力ロス等の縮小が可能となる。
【0104】
(2)第2の態様に係る制御装置50は、前記物質平衡制御部501が、前記年間の各運転期間における揚水又は還水すべき設定体積を算出する体積算出部502を備え、前記熱平衡制御部505が、前記各運転期間における還水すべき設定温度を算出する温度算出部506を備え、前記設定体積に基づき、前記熱源井戸設備10を操作する井戸設備操作部503と、前記設定温度に基づき、前記蓄熱補助設備20を操作する補助設備操作部509と、をさらに備える(1)の制御装置50である。
【0105】
本態様によれば、制御装置50は、熱源井戸設備10及び蓄熱補助設備20を、各運転期間の目標となる揚水又は還水すべき体積と還水すべき温度とに設定できる。
【0106】
(3)第3の態様に係る制御装置50は、前記温度算出部506が、前期の還水履歴から揚水温度応答を求めるモデル式により、前記揚水温度応答の還水重み付け平均値を算出する第一算出部507を備える(2)の制御装置50である。
【0107】
本態様によれば、制御装置50は、蓄熱補助設備20の利用の有無を含む期間における平均的な還水温度を予測できる。
【0108】
(4)第4の態様に係る制御装置50は、前記温度算出部506が、前記第一算出部で算出した前記揚水温度応答から次期の還水温度を算出する第二算出部508を備える(2)または(3)の制御装置50である。
【0109】
本態様によれば、制御装置50は、次期の還水温度を予測できる。
【0110】
(5)第5の態様に係る制御装置50は、前記加熱装置201が、太陽熱集熱器202を含む(1)から(4)のいずれか一つの制御装置50である。
【0111】
本態様によれば、太陽熱のような未利用の自然エネルギーが可能である。
【0112】
(6)第6の態様に係る制御装置50は、前記冷却装置206が、冷却塔207を含む(1)から(5)のいずれか一つの制御装置50である。
【0113】
本態様によれば、低い外気温を利用した蓄冷が可能である。
【0114】
(7)第7の態様に係る制御装置50は、前記熱源井戸設備10が、前記温水井戸11と前記冷水井戸12と接続する配管13をさらに備え、熱負荷LDと前記配管13内との間に設けられているヒートポンプ30と、前記配管13内の水と前記ヒートポンプ30側及び前記蓄熱補助設備20側の媒体との間で、熱交換を行う熱交換器40と、をさらに備える(1)から(6)のいずれか一つの制御装置50である。
【0115】
本態様によれば、配管13内の水とヒートポンプ30側及び蓄熱補助設備20側の媒体との間で熱交換が行われるため、熱源井戸設備10と熱負荷LDとの間、及び熱源井戸設備10と蓄熱補助設備20との間での熱収受がしやすい。
【0116】
(8)第8の態様に係る地中熱利用システム1は、(1)から(7)のいずれか一つの制御装置50と、前記熱源井戸設備10と、前記蓄熱補助設備20と、を備える。
【0117】
本態様によれば、地中熱利用システム1は、各井戸の年間における揚水体積と還水体積とを等しくでき、両方の井戸の年間における揚水熱量と還水熱量とを等しくできる。
したがって、地中熱利用システム1は、年間を通じた熱量バランスと体積バランスとを維持しやすい。
加えて、年間を通じたこれらのバランスを維持できれば、還水温度の低下又は上昇が抑制でき、地中の熱塊サイズが安定し、周辺帯水層及び地球環境への影響を抑制できる。
また、自動制御しやすいことで、長期安定した運用が可能であり、帯水層蓄熱利用が普及しやすい。
また、事前に蓄冷運転方式、運転時間等を決めることができるため、蓄熱、消費電力ロス等の縮小が可能となる。
【0118】
(9)第9の態様に係る制御方法は、温水井戸11と冷水井戸12とを備える熱源井戸設備10を、前記温水井戸11及び前記冷水井戸12の各井戸の年間における揚水体積と還水体積とを等しくするように制御し、加熱装置201及び冷却装置206のうち、少なくとも一方を含む蓄熱補助設備201を、前記温水井戸11及び前記冷水井戸12の両方の井戸の前記年間における揚水熱量と還水熱量とを等しくするように制御する。
【0119】
本態様によれば、制御方法は、各井戸の年間における揚水体積と還水体積とを等しくでき、両方の井戸の年間における揚水熱量と還水熱量とを等しくできる。
したがって、制御方法は、年間を通じた熱量バランスと体積バランスとを維持しやすい。
加えて、年間を通じたこれらのバランスを維持できれば、還水温度の低下又は上昇が抑制でき、地中の熱塊サイズが安定し、周辺帯水層及び地球環境への影響を抑制できる。
また、自動制御しやすいことで、長期安定した運用が可能であり、帯水層蓄熱利用が普及しやすい。
また、事前に蓄冷運転方式、運転時間等を決めることができるため、蓄熱、消費電力ロス等の縮小が可能となる。
【0120】
(10)第10の態様に係るプログラムは、コンピュータに、温水井戸と冷水井戸とを備える熱源井戸設備を、前記温水井戸及び前記冷水井戸の各井戸の年間における揚水体積と還水体積とを等しくするように制御し、加熱装置及び冷却装置のうち、少なくとも一方を含む蓄熱補助設備を、前記温水井戸及び前記冷水井戸の両方の井戸の前記年間における揚水熱量と還水熱量とを等しくするように制御することを実行させる。
【0121】
本態様によれば、プログラムは、各井戸の年間における揚水体積と還水体積とを等しくでき、両方の井戸の年間における揚水熱量と還水熱量とを等しくできる。
したがって、プログラムは、年間を通じた熱量バランスと体積バランスとを維持しやすい。
加えて、年間を通じたこれらのバランスを維持できれば、還水温度の低下又は上昇が抑制でき、地中の熱塊サイズが安定し、周辺帯水層及び地球環境への影響を抑制できる。
また、自動制御しやすいことで、長期安定した運用が可能であり、帯水層蓄熱利用が普及しやすい。
また、事前に蓄冷運転方式、運転時間等を決めることができるため、蓄熱、消費電力ロス等の縮小が可能となる。
【符号の説明】
【0122】
1 地中熱利用システム
11 温水井戸
12 冷水井戸
13 配管
20 蓄熱補助装置
30 ヒートポンプ
40 熱交換器
50 制御装置
51 CPU
52 メモリ
53 通信インタフェース
54 記録媒体
131 第一端
132 第二端
201 加熱装置
202 太陽熱集熱器
206 冷却装置
207 冷却塔
501 物質平衡制御部
502 体積算出部
503 井戸設備操作部
505 熱平衡制御部
506 温度算出部
507 第一算出部
508 第二算出部
509 補助設備操作部
CV 逆止弁
LD 熱負荷
LY 帯水層
PP ポンプ
RV 調整弁
図1
図2
図3
図4
図5