(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】新規な化合物、それを含むコーティング組成物、それを用いた有機発光素子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 217/94 20060101AFI20240617BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20240617BHJP
H10K 50/17 20230101ALI20240617BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20240617BHJP
H10K 85/10 20230101ALI20240617BHJP
H10K 71/40 20230101ALI20240617BHJP
H10K 71/12 20230101ALI20240617BHJP
【FI】
C07C217/94 CSP
H10K50/15
H10K50/17
H10K85/60
H10K85/10
H10K71/40
H10K71/12
(21)【出願番号】P 2023506319
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 KR2021015282
(87)【国際公開番号】W WO2022092837
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0142781
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ミンソブ・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ジヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ドウォン・イム
(72)【発明者】
【氏名】ドゥファン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ウンヒェ・カン
(72)【発明者】
【氏名】ジェスン・ペ
(72)【発明者】
【氏名】ジェチョル・イ
【審査官】池上 佳菜子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0035513(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0111968(KR,A)
【文献】特表2023-509898(JP,A)
【文献】特表2019-531311(JP,A)
【文献】国際公開第2020/162156(WO,A1)
【文献】特開2018-194794(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0234118(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0137263(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物:
【化1】
前記化学式1において、
Lは置換または非置換の二価の炭化水素環
基であり、
L1およびL2は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、
単結合;
または置換または非置換のアリーレン
基であり、
Ar1およびAr2は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換のアリール
基であり、
L10およびL11は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換のアリーレン基であり、
X1およびX2は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、硬化性基であり、
R1~R4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;置換または非置換のアルキル基;置換または非置換のアルコキシ基;置換または非置換のアリール基;または置換または非置換のヘテロアリール基であり、
n1およびn2はそれぞれ0~7の整数であり、n1およびn2がそれぞれ2以上の場合、2以上の括弧内の置換基は互いに同一または異なり、
m1は、1~Ar1に置換基が結合できる結合位置の数であり、
m2は、1~Ar2に置換基が結合できる結合位置の数であり、
n3およびn4は、それぞれ0~4の整数であり、n3およびn4がそれぞれ2以上の場合、2以上の括弧内の置換基は互いに同一または異なり、
m3およびm4は、それぞれ1~5の整数であり、n3+m3は5以下であり、n4+m4は5以下である。
【請求項2】
前記硬化性基は、下記構造から選択されるいずれか一つであり、
下記の構造において、--は結合位置を意味する、請求項1に記載の化合物:
【化2】
【請求項3】
前記化学式1は、下記の化学式2で表される、請求項1または2に記載の化合物:
【化3】
前記化学式2において、
L、L1、L2、Ar1、Ar2、L10、L11、X1、X2、R1~R4、n1~n4、およびm1~m4の定義は、化学式1と同様である。
【請求項4】
前記化学式1は、下記の化学式3で表される、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物:
【化4】
前記化学式3において、
L、L1、L2、Ar1、Ar2、X1、X2、R1~R4、n1~n4およびm1~m4の定義は、化学式1と同様であり、
R5およびR6は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;置換または非置換のアルキル基;置換または非置換のアルコキシ基;置換または非置換のアリール基;または置換または非置換のヘテロアリール基であり、
n5およびn6はそれぞれ0~4の整数であり、n5およびn6がそれぞれ2以上の場合、2以上の括弧内の置換基は互いに同一または異なる。
【請求項5】
前記Lは、C
1-20のアルキル基で置換または非置換のC
6-30の二価の炭化水素環基である、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
前記Lは、下記の構造から選択されるいずれか一つである、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物:
【化5】
前記構造は、重水素;ハロゲン基;置換または非置換のアルキル基;置換または非置換のアルコキシ基;置換または非置換のアリール基;および置換または非置換のヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換または非置換され、
前記構造において、・・・は結合位置を意味する。
【請求項7】
前記Ar1およびAr2は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換のフェニル基;置換または非置換のビフェニル基;または置換または非置換のターフェニル基である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
前記m1およびm2は、それぞれ1~5の整数である、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
前記化学式1は、下記の化合物のいずれか一つで表される、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【化6A】
【化6B】
【化6C】
【化6D】
【化6E】
【化6F】
【化6G】
【化6H】
【化6I】
【化6J】
。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の化合物を含むコーティング組成物。
【請求項11】
第1の電極;
第2の電極;および
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられる1層以上の有機物層を含み、
前記1層以上の有機物層のうち1層以上は、請求項10のコーティング組成物またはその硬化物を含む、有機発光素子。
【請求項12】
前記コーティング組成物またはその硬化物を含む有機物層は、正孔輸送層または正孔注入層である、請求項11に記載の有機発光素子。
【請求項13】
第1の電極を準備する段階;
前記第1の電極上に1層以上の有機物層を形成する段階;および
前記1層以上の有機物層上に第2の電極を形成する段階を含み、
前記1層以上の有機物層を形成する段階は、請求項10のコーティング組成物を用いて有機物層を形成する段階を含む、有機発光素子の製造方法。
【請求項14】
前記コーティング組成物を用いて有機物層を形成する段階は、
前記コーティング組成物をコーティングする段階;および
前記コーティングされたコーティング組成物を熱処理または光処理することを含む、請求項13に記載の有機発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2020年10月30日付にて韓国特許庁に提出された韓国特許第10-2020-0142781号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本発明に含まれる。
本発明は、新規な化合物、前記化合物を含むコーティング組成物、前記コーティング組成物を用いて形成された有機発光素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光現象は、特定の有機分子の内部プロセスによって電流が可視光に切り替わる例の一つである。有機発光現象の原理は次のとおりである。アノードとカソードの間に有機物層を配置させたときに、両電極間に電流を流すと、カソードとアノードからそれぞれ電子と正孔が有機物層に注入される。有機物層に注入された電子と正孔は、再結合してエキシトン(exciton)を形成し、このエキシトンが再び底の状態に落ちて光が出る。この原理を利用する有機発光素子は、一般にカソードとアノードおよびその間に位置する有機物層、たとえば正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層、電子輸送層から構成されることができる。
【0003】
従来には、有機発光素子を製造するために、蒸着工程を主に使用してきた。しかし、蒸着工程で有機発光素子を製造する際、材料の損失が多く発生するという問題点と大面積の素子を製造することが難しいという問題点があり、これを解決するために、溶液工程を用いた素子が開発されつつある。
【0004】
したがって、溶液工程用材料の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国特許公開公報第10-2017-089095号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新規な化合物、前記化合物を含むコーティング組成物、前記コーティング組成物を用いて形成された有機発光素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
下記化学式1で表される化合物を提供する。
【化1】
【0008】
前記化学式1において、
Lは置換または非置換の二価の炭化水素環基;または置換または非置換の二価のヘテロ環基であり、
L1およびL2は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;置換または非置換のアリーレン基;または置換または非置換のヘテロアリーレン基であり、
Ar1およびAr2は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換のアリール基;または置換または非置換のヘテロアリール基であり、
L10およびL11は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換のアリーレン基であり、
X1およびX2は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、硬化性基であり、
R1~R4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;置換または非置換のアルキル基;置換または非置換のアルコキシ基;置換または非置換のアリール基;または置換または非置換のヘテロアリール基であり、
n1およびn2はそれぞれ0~7の整数であり、n1およびn2がそれぞれ2以上の場合、2以上の括弧内の置換基は互いに同一または異なり、
m1は、1~Ar1に置換基が結合できる結合位置の数であり、
m2は、1~Ar2に置換基が結合できる結合位置の数であり、
n3およびn4は、それぞれ0~4の整数であり、n3およびn4がそれぞれ2以上の場合、2以上の括弧内の置換基は互いに同一または異なり、
m3およびm4はそれぞれ1~5の整数であり、n3+m3は5以下であり、n4+m4は5以下である。
【0009】
本発明は、前記化合物を含むコーティング組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、第1の電極;第2の電極;および前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられる少なくとも1層の有機物層を含み、前記少なくとも1層の有機物層のうち少なくとも1層は、上述のコーティング組成物またはその硬化物を含む有機発光素子を提供する。
【0011】
最後に、本発明は、第1の電極を準備する段階;前記第1の電極上に1層以上の有機物層を形成する段階;および前記1層以上の有機物層上に第2の電極を形成する段階を含み、前記1層以上の有機物層を形成する段階は、前記コーティング組成物を用いて有機物層を形成する段階を含むものである、有機発光素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の化学式1の化合物は、有機発光素子の有機物層の材料として用いることができ、低い駆動電圧と優れた発光効率および寿命特性を有する素子を得ることができ、溶液工程が可能で素子の大面積化が可能である。
【0013】
また、本発明の化合物は、特定位置に4個以上のフルオロ基(-F)を含むことにより、優れた正孔移動度(Hole-mobility)を有するため、素子に適用する際に低電圧、高効率および長寿命特定を有する素子を得ることができる。
【0014】
さらに、本発明の化学式1の化合物を含む有機物層を形成した後、上層部の有機物層を溶液工程を通じて形成する場合、前記化学式1の化合物を含む有機物層は、上層部の溶液工程の溶媒に対して溶解しないため、素子の性能が低下しないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による有機発光素子の一例を図示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明において、ある部材(層)が他の部材(層)「上」に位置していると言うとき、これはある部材(層)が他の部材に接している場合だけでなく、両部材(層)の間に他の部材(層)が存在する場合も含む。
【0018】
本発明において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0019】
本発明において「硬化性基」とは、熱および/または光に暴露することにより、化合物間に架橋を起こす反応性置換基を意味し得る。架橋は、熱処理または光照射によって、炭素-炭素多重結合または環状構造が分解して生成されたラジカルが連結されることで生成されることができる。
【0020】
以下、本発明の置換基について詳細に説明する。
【0021】
本発明において、「-----」は、他の置換基または結合部に結合される部位を意味する。
【0022】
本発明において、前記「置換」という用語は、化合物の炭素原子に結合された水素原子が他の置換基に変わることを意味し、置換される位置は、水素原子が置換される位置、すなわち置換基が置換可能な位置であれば限定されず、2以上置換される場合、2以上の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0023】
本発明において「置換または非置換の」という用語は、重水素、ハロゲン基、ニトリル基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基およびヘテロアリール基からなる群から選択された少なくとも1つの置換基で置換または非置換されるか、前記例示した置換基のうち、2以上の置換基が連結された置換基で置換または非置換されたことを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であってもよい。すなわち、ビフェニル基はアリール基であってもよく、2つのフェニル基が連結された置換基と解釈されてもよい。
【0024】
また、本発明において「置換または非置換の」という用語は、重水素、ハロゲン基、ニトリル基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~60アリール基および炭素数2~60のヘテロアリール基からなる群から選択された1つ以上の置換基で置換または非置換されるか、前記例示した置換基のうち2以上の置換基が連結された置換基で置換または非置換されたことを意味する。
【0025】
本発明において、ハロゲン基は、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)またはヨード基(-I)である。
【0026】
本発明において、アルキル基は、直鎖または分岐鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1~20であってもよい。他の実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~10である。前記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
本発明において、シクロアルキル基は、特に限定されないが、炭素数3~60であってもよく、一実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~30である。また他の一実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~20である。前記シクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本発明において、アルコキシ基は、直鎖または分岐鎖であり得る。前記アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~20であってもよい。前記アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基などであってもよいが、これに限定されない。
【0029】
本発明において、アリール基は特に限定されないが、炭素数6~60であってもよく、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~30である。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~20である。前記アリール基は、単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などであってもよいが、これに限定されない。前記多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、フェリレニル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
本発明において、フルオレニル基は置換されてもよく、2つの置換基が互いに結合してスピロ構造を形成してもよい。
【0031】
前記フルオレニル基が置換される場合、
【化2】
などのスピロフルオレニル基、
【化3】
(9,9-ジメチルフルオレニル基)、および
【化4】
(9,9-ジフェニルフルオレニル基)などの置換されたフルオレニル基になり得る。ただし、これに限定されるものではない。
【0032】
本発明において、ヘテロ環基は、異種原子である、N、O、PおよびSのうち少なくとも1つを含む芳香族、脂肪族または芳香族と脂肪族の縮合環基である。前記ヘテロ環基の炭素数は特に限定されないが、炭素数2~60であってもよい。
【0033】
本発明において、ヘテロアリール基は、異種原子である、N、O、PおよびSのうち少なくとも1つを含む芳香族環基であり、炭素数は特に限定されないが、炭素数2~60であってもよい。一実施形態によれば、前記ヘテロアリール基の炭素数は2~30である。前記ヘテロアリール基の例としては、ピリジン基、ピロール基、ピリミジン基、ピリダジン基、フラン基、チオフェン基、ベンゾチオフェン基、ベンゾフラン基、ジベンゾチオフェン基、ジベンゾフラン基、カルバゾール基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本発明において、炭化水素環基は、芳香族、脂肪族または芳香族と脂肪族の縮合環基であってもよい。
【0035】
本発明において、芳香族炭化水素環基は、前述のアリール基に関する説明を適用することができる。
【0036】
本発明において、脂肪族炭化水素環基は、上述したシクロアルキル基に関する説明を適用することができる。
【0037】
本発明において、アリーレン基は2価であることを除いては、前述のアリール基に関する内容が適用される。
【0038】
本発明において、ヘテロアリーレン基は2価であることを除いては、前述のヘテロアリーレン基に関する内容が適用される。
【0039】
本発明において、「CY1-Y2」は「炭素数Y1~Y2」を意味する。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式1で表される化合物を提供する。
【0041】
前記化学式1で表される化合物は、置換基Ar1およびAr2にそれぞれフルオロ基(-F)を含むことにより、前記Ar1およびAr2の位置でのラジカル形成が抑制されることにより化合物の安定性が高く、高いHOMO(highest occupied molecular orbital)エネルギー準位値を有する。これにより、本発明の一実施形態によって、前記化学式1の化合物を有機発光素子内の正孔注入層に含む場合、正孔注入層から正孔輸送層への正孔注入が容易となり素子の寿命の向上に主な影響が及ぶ。
【0042】
本発明において、「エネルギー準位」は、エネルギーの大きさを意味するものである。したがって、エネルギー準位は、該当エネルギー値の絶対値を意味するものと解釈される。例えば、エネルギー準位が深いとは、真空準位からマイナス方向に絶対値が大きくなることを意味する。
【0043】
本発明の一実施形態において、前記化学式1の化合物は、適切な有機溶媒に対して溶解性を有する化合物が好ましい。
【0044】
また、本発明の一実施形態に係る化合物の場合、溶液塗布法により有機発光素子を製造することができ、素子の大面積化が可能であり得る。
【0045】
本発明の一実施形態において、前記化学式1においてFは、フルオロ基を意味する。
【0046】
本発明において、前記X1およびX2は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、硬化性基である。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、前記硬化性基は、以下の構造から選択されるいずれか一つである。
【化5】
【0048】
本発明の一実施形態によれば、前記X1およびX2は互いに同一または異なり、それぞれ独立して
【化6】
または
【化7】
である。
【0049】
本発明の一実施形態において、前記化学式1は、下記の化学式2で表される。
【化8】
【0050】
前記化学式2において、
L、L1、L2、Ar1、Ar2、L10、L11、X1、X2、R1~R4、n1~n4、およびm1~m4の定義は化学式1と同様である。
【0051】
本発明の一実施形態において、前記L10およびL11は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換のC6-60のアリーレン基である。
【0052】
また他の一実施形態において、前記L10およびL11は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換のC6-30のアリーレン基である。
【0053】
また他の一実施形態によれば、前記L10およびL11は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換のフェニレン基である。
【0054】
また他の一実施形態によれば、前記L10およびL11はそれぞれフェニレン基である。
【0055】
本発明の一実施形態において、前記化学式1は下記の化学式3で表される。
【化9】
【0056】
前記化学式3において、
L、L1、L2、Ar1、Ar2、X1、X2、R1~R4、n1~n4およびm1~m4の定義は化学式1と同様であり、
R5およびR6は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;置換または非置換のアルキル基;置換または非置換のアルコキシ基;置換または非置換のアリール基;または置換または非置換のヘテロアリール基であり、
n5およびn6は、それぞれ0~4の整数であり、n5およびn6がそれぞれ2以上の場合、2以上の括弧内の置換基は互いに同一または異なる。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、前記R5およびR6は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;置換または非置換のC1-20のアルキル基;置換または非置換のC1-20のアルコキシ基;置換または非置換のC6-30のアリール基;または置換または非置換のC2-30のヘテロアリール基である。
【0058】
また他の一実施形態において、前記R5およびR6は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;C1-20のアルキル基;C1-20のアルコキシ基;C6-30のアリール基;またはC2-30のヘテロアリール基である。
【0059】
また他の一実施形態において、前記R5およびR6はそれぞれ水素である。
【0060】
本発明の一実施形態において、前記n5は0~4の整数であり、n5が2以上の場合、2以上のR5は互いに同一または異なる。
【0061】
本発明の一実施形態において、前記n6は0~4の整数であり、n6が2以上の場合、2以上のR6は互いに同一または異なる。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、前記n5およびn6はそれぞれ0または1である。
【0063】
本発明の一実施形態において、前記Lは置換または非置換のC6-60の2価の炭化水素環基;あるいは、置換または非置換のC2-60の2価のヘテロ環基である。
【0064】
また他の一実施形態において、前記Lは置換または非置換のC6-30の二価の炭化水素環基;あるいは、置換または非置換のC2-30の2価のヘテロ環基である。
【0065】
また他の一実施形態によれば、前記Lは、C1-20のアルキル基で置換または非置換のC6-30の2価の炭化水素環基である。
【0066】
本発明の一実施形態において、前記Lは以下の構造から選択されるいずれか一つである。
【0067】
【0068】
前記構造は重水素;ハロゲン基;置換または非置換のアルキル基;置換または非置換のアルコキシ基;置換または非置換のアリール基;および置換または非置換のヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されるか、非置換であり、
前記構造において、・・・は結合位置を意味する。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、前記構造は、重水素;ハロゲン基;置換または非置換のC1-20のアルキル基;置換または非置換のC1-20のアルコキシ基;置換または非置換のC6-30のアリール基;および置換または非置換のC2-30のヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されるか、非置換である。
【0070】
また他の一実施形態において、前記構造は、置換または非置換のC1-20のアルキル基で置換されるか、非置換である。
【0071】
また他の一実施形態によれば、前記構造は、置換または非置換のC1-10のアルキル基で置換されるか、非置換である。
【0072】
また他の一実施形態において、前記構造はメチル基で置換されるか、非置換である。
【0073】
本発明の一実施形態において、前記L1およびL2は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;置換または非置換のC6-60のアリーレン基;または置換または非置換のC2-60のヘテロアリーレン基である。
【0074】
また他の一実施形態において、前記L1およびL2はそれぞれ直接結合である。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、前記Ar1およびAr2は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換のC6-60のアリール基;または置換または非置換のC2-60のヘテロアリール基である。
【0076】
また他の一実施形態によれば、前記Ar1およびAr2は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換のC6-30のアリール基;または置換または非置換のC2-30のヘテロアリール基である。
【0077】
また他の一実施形態によれば、前記Ar1およびAr2は互いに同一または異なり、それぞれ独立してC1-20のアルキル基で置換または非置換のC6-30のアリール基である。
【0078】
また他の一実施形態において、前記Ar1およびAr2は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換のフェニル基;置換または非置換のビフェニル基;または置換または非置換のターフェニル基である。
【0079】
また他の実施形態によれば、前記Ar1およびAr2は互いに同一または異なり、それぞれ独立してC1-20のアルキル基で置換または非置換のフェニル基;C1-20のアルキル基で置換または非置換のビフェニル基;またはC1-20のアルキル基で置換または非置換のターフェニル基である。
【0080】
また他の一実施形態において、前記Ar1およびAr2は互いに同一または異なり、それぞれ独立してC1-10のアルキル基で置換または非置換のフェニル基;C1-10のアルキル基で置換または非置換のビフェニル基;またはC1-10のアルキル基で置換または非置換のターフェニル基である。
【0081】
また他の一実施形態によれば、前記Ar1およびAr2は互いに同一または異なり、それぞれ独立してメチル基で置換または非置換のフェニル基;メチル基で置換または非置換のビフェニル基;またはメチル基で置換または非置換のターフェニル基である。
【0082】
本発明の一実施形態によれば、前記R1~R4は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;置換または非置換のC1-20のアルキル基;置換または非置換のC1-20のアルコキシ基;置換または非置換のC6-30のアリール基;または置換または非置換のC2-30のヘテロアリール基である。
【0083】
また他の一実施形態において、前記R1~R4はそれぞれ水素である。
【0084】
本発明の一実施形態において、前記n1およびn2はそれぞれ0または1である。
【0085】
本発明の一実施形態によれば、前記m1は1~Ar1に置換基が結合できる結合位置の数であり、前記m2は1~Ar2に置換基が結合できる結合位置の数である。ここで、置換基が結合できる結合位置の数とは、Ar1またはAr2がフェニル基の場合、水素が結合された5つを意味し、Ar1またはAr2がビフェニル基の場合、水素が結合された9つを意味する。
【0086】
本発明の一実施形態において、前記m1およびm2はそれぞれ1~5の整数である。
【0087】
また他の一実施形態によれば、前記m1は1である。
【0088】
また他の一実施形態によれば、前記m1は2である。
【0089】
また他の一実施形態によれば、前記m1は3である。
【0090】
また他の一実施形態によれば、前記m1は4である。
【0091】
また他の一実施形態によれば、前記m1は5である。
【0092】
また他の一実施形態によれば、前記m2は1である。
【0093】
また他の一実施形態によれば、前記m2は2である。
【0094】
また他の一実施形態によれば、前記m2は3である。
【0095】
また他の一実施形態によれば、前記m2は4である。
【0096】
また他の一実施形態によれば、前記m2は5である。
【0097】
本発明の一実施形態によれば、前記m3およびm4はそれぞれ1~5の整数であり、前記n3およびn4はそれぞれ0~4の整数であり、n3+m3は5以下であり、n4+m4は5以下である。
【0098】
本発明の一実施形態において、前記n3およびn4がそれぞれ2以上の場合、2以上の括弧内の置換基は互いに同一または異なる。
【0099】
また他の一実施形態によれば、前記m3は1である。
【0100】
また他の一実施形態によれば、前記m3は2である。
【0101】
また他の一実施形態によれば、前記m3は3である。
【0102】
また他の一実施形態によれば、前記m3は4である。
【0103】
また他の一実施形態によれば、前記m3は5である。
【0104】
また他の一実施形態によれば、前記m4は1である。
【0105】
また他の一実施形態によれば、前記m4は2である。
【0106】
また他の一実施形態によれば、前記m4は3である。
【0107】
また他の一実施形態によれば、前記m4は4である。
【0108】
また他の一実施形態によれば、前記m4は5である。
【0109】
本発明の一実施形態において、前記化学式1は、以下の化合物のいずれか一つで表され得る。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
本発明の一実施形態による化合物は、後述する製造方法のように製造されてもよい。また、置換基は当技術分野で知られている方法によって結合することができ、置換基の種類、位置または数は当技術分野で知られている技術に従って変更されてもよい。
【0121】
本発明の一実施形態において、前述の化学式1の化合物を含むコーティング組成物が提供される。
【0122】
本発明の一実施形態において、前記コーティング組成物は、前記化学式1の化合物および溶媒を含む。
【0123】
本発明の一実施形態において、前記コーティング組成物は液状であってもよい。前記「液相」は、常温および常圧で液体状態であることを意味する。
【0124】
本発明の一実施形態において、前記溶媒は、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン(Isophorone)、テトラロン(Tetralone)、デカロン(Decalone)、アセチルアセトン(Acetylacetone)などのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2-ヘキサンジオールなどの多価アルコールおよびその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;およびN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒;テトラリンなどの溶媒が例示されるが、本発明の一実施形態に係る化学式1の化合物を溶解または分散させることができる溶媒であればよく、これらを限定しない。
【0125】
また他の実施形態において、前記溶媒は、1種単独で用いてもよいし、または2種以上の溶媒を混合して使用してもよい。
【0126】
本発明の一実施形態において、前記コーティング組成物は、pドーピング物質をさらに含まない。
【0127】
本発明の一実施形態において、前記コーティング組成物は、pドーピング物質をさらに含む。
【0128】
本発明において、前記pドーピング物質とは、ホスト物質をp半導体特性を有するようにする物質を意味する。p半導体特性とは、HOMO(highest occupied molecular orbital)エネルギー準位で正孔の注入を受けるか、輸送する特性、すなわち正孔の導電度の大きい物質の特性を意味する。
【0129】
前記pドーピング物質は、以下の構造のいずれか一つであってもよいが、これに限定されない。
【化12】
【0130】
本発明の一実施形態において、前記pドーピング物質の含量は、前記化学式1の化合物を基準に0重量%~50重量%である。
【0131】
本発明の一実施形態において、前記pドーピング物質の含量は、前記コーティング組成物の全固形分含量を基準に0~30重量%である。本発明の一実施形態において、前記pドーピング物質の含量は、前記コーティング組成物の全固形分含量を基準に1~30重量%であることが好ましい。
【0132】
また他の実施形態において、前記コーティング組成物は、光硬化性基および/または熱硬化性基を含む単分子;あるいは、熱によるポリマー形成が可能な末端基を含む単分子をさらに含んでもよい。前記のように光硬化性基および/または熱硬化性基を含む単分子;あるいは、熱によるポリマー形成が可能な末端基を含む単分子は、3,000g/mol以下の分子量の化合物であってもよい。
【0133】
前記光硬化性基および/または熱硬化性基を含む単分子;あるいは、熱によるポリマー形成が可能な末端基を含む単分子は、フェニル、ビフェニル、フルオレン、ナフタレンなどのアリール;アリールアミン;あるいは、フルオレンに光硬化性基および/または熱硬化性基または熱によるポリマー形成が可能な末端基が置換された単分子を意味し得る。
【0134】
また他の実施形態において、前記コーティング組成物の粘度は、常温で2cP~15cPである。
【0135】
前記粘度を満たすと、素子の製造が容易である。具体的には、素子内の有機物層の形成時に均一な膜を形成することができる。
【0136】
本発明はまた、前記コーティング組成物を用いて形成された有機発光素子を提供する。
【0137】
本発明の一実施形態において、第1の電極;第2の電極;および前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた少なくとも1層の有機物層を含み、前記少なくとも1層の有機物層のうち1層以上は、前記コーティング組成物またはその硬化物を含み、前記コーティング組成物の硬化物は、前記コーティング組成物が熱処理または光処理によって硬化された状態である。
【0138】
本発明の一実施形態において、前記コーティング組成物またはその硬化物を含む有機物層は、正孔輸送層または正孔注入層である。
【0139】
本発明の一実施形態において、前記コーティング組成物またはその硬化物を含む有機物層は、電子輸送層または電子注入層である。
【0140】
また他の実施形態において、前記コーティング組成物またはその硬化物を含む有機物層は、発光層である。
【0141】
また他の実施形態において、前記コーティング組成物またはその硬化物を含む有機物層は発光層であり、前記発光層は、前記化学式1の化合物を発光層のホストとして含む。
【0142】
また他の実施形態において、前記コーティング組成物またはその硬化物を含む有機物層は発光層であり、前記発光層は前記化学式1の化合物を発光層のドーパントとして含む。
【0143】
本発明の一実施形態において、前記有機発光素子は、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電子阻止層、正孔阻止層、正孔輸送および注入層、並びに電子輸送および注入層からなる群から選択される1層または2層以上をさらに含む。
【0144】
本発明の一実施形態において、前記第1の電極はアノードであり、第2の電極はカソードである。
【0145】
また他の一実施形態によれば、前記第1の電極はカソードであり、第2の電極はアノードである。
【0146】
また他の実施形態において、有機発光素子は、基板上にアノード、1層以上の有機物層およびカソードが順次積層された構造(normal type)の有機発光素子であってもよい。
【0147】
また他の実施形態において、有機発光素子は、基板上にカソード、1層以上の有機物層およびアノードが順次積層された逆方向構造(inverted type)の有機発光素子であってもよい。
【0148】
本発明の有機発光素子の有機物層は単層構造からなってもよいが、2層以上の有機物層が積層された多層構造からなってもよい。例えば、本発明の有機発光素子は、有機物層として、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、正孔輸送および注入層、電子輸送および注入層などを含む構造を有してもよい。しかしながら、有機発光素子の構造はこれに限定されず、より少ない数の有機層を含んでもよい。
【0149】
例えば、本発明の一実施形態による有機発光素子の構造は
図1に例示されている。
【0150】
図1には、基板101上に第1の電極201、正孔注入層301、正孔輸送層401、発光層501、電子輸送および注入層601ならびに第2の電極701が順次積層された有機発光素子の構造が例示されている。ここで、電子輸送および注入層とは、電子輸送と電子注入を同時に行う層を意味する。前記
図1の正孔注入層301および/または正孔輸送層401は、前述の化学式1の化合物を含むコーティング組成物を用いて形成されてもよい。
【0151】
前記
図1は、有機発光素子を例示したものであり、これに限定されない。
【0152】
前記有機発光素子が複数の有機物層を含む場合、前記有機物層は同じ材料または異なる材料で形成されてもよい。
【0153】
本発明の有機発光素子は、有機物層の少なくとも1層が前記化学式1の化合物を含むコーティング組成物を用いて形成することを除いては、当技術分野で知られている材料と方法で製造されてもよい。
【0154】
例えば、本発明の有機発光素子は、基板上にアノード、有機物層およびカソードを順次積層することにより製造してもよい。このとき、スパッタリング法(sputtering)や電子ビーム蒸発法(e-beam evaporation)のようなPVD(Physical Vapor Deposition)法を用いて、基板上に金属または導電性を有する金属酸化物またはそれらの合金を蒸着してアノードを形成し、その上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層、電子輸送層、正孔輸送および注入層ならびに、電子輸送および注入層のうち1層以上を含む有機物層溶液工程、蒸着工程等を通じて形成した後、その上にカソードとして使用できる物質を蒸着させることによって製造され得る。このような方法の他にも、基板上にカソード物質から有機物層、アノード物質を順次蒸着して有機発光素子を作製してもよい。
【0155】
また、本発明は、前記コーティング組成物を用いて形成された有機発光素子の製造方法を提供する。
【0156】
具体的には、本発明の一実施形態において、第1の電極を準備する段階;前記第1の電極上に1層以上の有機物層を形成する段階;および前記1層以上の有機物層上に第2の電極を形成する段階を含み、前記1層以上の有機物層を形成する段階は、前記コーティング組成物を用いて有機物層を形成する段階を含む。
【0157】
本発明の一実施形態において、前記コーティング組成物を用いて1層以上の有機物層を形成する段階は、スピンコーティング方法を用いる。
【0158】
また他の実施形態において、前記コーティング組成物を用いて少なくとも1層の有機物層を形成する段階は、印刷法を使用する。
【0159】
本発明の一実施形態において、前記印刷法は、例えば、インクジェットプリンティング、ノズルプリンティング、オフセットプリンティング、転写プリンティング、またはスクリーンプリンティングなどがあるが、これらを限定しない。
【0160】
本発明の一実施形態によるコーティング組成物は、構造的な特性によって溶液工程が適しており、印刷法によって形成することができるため、素子の製造時に時間およびコストなど経済的効果がある。
【0161】
本発明の一実施形態において、前記コーティング組成物を用いて少なくとも1層の有機物層を形成する段階は、前記コーティング組成物をコーティングする段階;および前記コーティングされたコーティング組成物を熱処理または光処理する段階を含む。
【0162】
本発明の一実施形態において、前記コーティング組成物を用いて少なくとも1層の有機物層を形成する段階は、前記第1の電極または少なくとも1層の有機物層上にコーティング組成物をコーティングする段階;および前記コーティングされたコーティング組成物を熱処理または光処理する段階を含む。
【0163】
本発明の一実施形態において、前記熱処理する段階は、熱処理を介して行われることができ、熱処理する段階における熱処理温度は85℃~250℃であり、一実施形態によれば100℃~250℃であり、他の一実施形態において、150℃~250℃であってもよい。
【0164】
また他の実施形態において、前記熱処理する段階における熱処理時間は1分~2時間であり、一実施形態によれば1分~1時間であり、他の一実施形態において、30分~1時間であってもよい。
【0165】
前記コーティング組成物を用いて形成された1層以上の有機物層を形成する段階で前記熱処理または光処理段階を含む場合には、コーティング組成物に含まれた複数の前記化合物が架橋を形成して薄膜化された構造が含まれた有機物層を提供することができる。この場合、前記コーティング組成物を用いて形成された有機物層の表面上に他の層を積層する際に、溶媒によって溶解されたり、形態学的に影響を受けたり、分解されることを防止することができる。
【0166】
従って、前記コーティング組成物を用いて形成された有機物層が熱処理または光処理の段階を含んで形成された場合には、溶媒に対する抵抗性が増加して溶液での積層および架橋方法を繰り返し行って多層を形成してもよく、安定性が増加して素子の寿命特性を向上させることができる。
【0167】
前記アノード物質としては、通常、有機物層への正孔の注入が円滑になるように、仕事関数の大きい物質が好ましい。本発明で使用できるアノード物質の具体例としては、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属またはそれらの合金;酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)のような金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO2:Sbなどの金属と酸化物の組み合わせ;ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ[3,4-(エチレン-1,2-ジオキシ)チオフェン](PEDOT)、ポリピロールおよびポリアニリンなどの導電性高分子などがあるが、これらに限定されない。
【0168】
前記カソード物質としては、通常、有機物層への電子の注入が容易になるように、仕事関数の小さい物質であることが好ましい。カソード物質の具体例としては、バリウム、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、錫、および鉛のような金属またはそれらの合金;LiF/AlまたはLiO2/Alなどの多層構造物質などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0169】
前記正孔注入層は、電極から正孔を注入する層であり、正孔注入物質としては、正孔を輸送する能力を有し、アノードでの正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成された励起子の電子注入層または電子注入材料への移動を防止し、また、薄膜形成能力に優れた化合物が好ましい。正孔注入物質のHOMO(highest occupied molecular orbital)がアノード物質の仕事関数と周辺有機物層のHOMOとの間であることが好ましい。正孔注入物質の具体例としては、前述の化学式1の化合物、金属ポルフィリン(porphyrin)、オリゴチオフェン、アリールアミン系の有機物、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン系の有機物、キナクリドン(quinacridone)系の有機物、ペリレン(perylene)系の有機物、アントラキノンおよびポリアニリンとポリチオフェン系の導電性高分子などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0170】
前記正孔輸送層は、正孔注入層から正孔を受け取り、発光層まで正孔を輸送する層であり、正孔輸送物質としてはアノードや正孔注入層から正孔が輸送されて発光層に移すことのできる物質であり、正孔に対する移動性が大きい物質が適している。具体的な例としては、アリールアミン系の有機物、導電性高分子、および共役部分と非共役部分が一緒にあるブロック共重合体などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0171】
前記正孔輸送および注入層は、上述した正孔輸送層および正孔注入層の材料を含んでもよい。
【0172】
前記発光物質としては、正孔輸送層と電子輸送層から輸送された正孔と電子とをそれぞれ受け取って結合させることにより、可視光線領域の光を出すことができる物質であり、蛍光や燐光に対する量子効率の良い物質が好ましい。具体例としては、8-ヒドロキシ-キノリンアルミニウム錯体(Alq3);カルバゾール系化合物;二量体化スチリル(dimerized styryl)化合物;BAlq;10-ヒドロキシベンゾキノリン-金属化合物;ベンゾオキサゾール、ベンズチアゾールおよびベンズイミダゾール系の化合物;ポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)系の高分子;スピロ(spiro)化合物;ポリフルオレン、ルブレンなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0173】
前記発光層は、ホスト材料およびドーパント材料を含んでもよい。ホスト材料としては、縮合芳香族環誘導体またはヘテロ環含有化合物などがある。具体的に、縮合芳香族環誘導体としては、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、ナフタレン誘導体、ペンタセン誘導体、フェナントレン化合物、フルオランテン化合物などがあり、ヘテロ環含有化合物としては、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ラダー型フラン化合物、ピリミジン誘導体などがあるが、これらに限定されない。
【0174】
前記ドーパント材料としては、芳香族アミン誘導体、スチリルアミン化合物、ホウ素錯体、フルオランテン化合物、金属錯体などがある。具体的には、芳香族アミン誘導体としては、置換または非置換のアリールアミノ基を有する縮合芳香族環誘導体として、アリールアミノ基を有するピレン、アントラセン、クリセン、ペリフランテンなどがあり、スチリルアミン化合物としては、置換または非置換のアリールアミンに少なくとも1つのアリールビニル基が置換されている化合物であり、アリール基、シリル基、アルキル基、シクロアルキル基およびアリールアミノ基からなる群から1または2以上選択される置換基が置換または非置換される。具体的には、スチリルアミン、スチリルジアミン、スチリルトリアミン、スチリルテトラアミンなどがあるが、これらに限定されない。また、金属錯体としては、イリジウム錯体、白金錯体などがあるが、これらに限定されない。
【0175】
前記電子輸送層は、電子注入層から電子を受け取り、発光層へと電子を輸送する層であり、電子輸送物質としては、カソードから電子の注入をうまく受けて発光層に移すことができる物質であり、電子に対する移動性の大きい物質が好適である。具体例としては、8-ヒドロキシキノリンのAl錯体;Alq3を含む錯体;有機ラジカル化合物;ヒドロキシフラボン-金属錯体などがあるが、これらに限定されるものではない。電子輸送層は、従来技術において使用されてきたような、任意の所望のカソード物質と共に使用してもよい。特に、適切なカソード物質の例は、低い仕事関数を有し、アルミニウム層または銀層の後に続く従来の物質である。具体的には、セシウム、バリウム、カルシウム、イッテルビウムおよびサマリウムであり、それぞれアルミニウム層またはシルバー層の後に続く物質である。
【0176】
前記電子注入層は、電極から電子を注入する層であり、電子注入物質としては、電子を輸送する能力を有し、カソードからの電子注入効果、発光層または発光材料に対して優れた電子注入効果を有し、発光層で生成された励起子の正孔注入層への移動を防止し、さらに、薄膜形成能力に優れた化合物が好ましい。具体的には、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フレオレニリデンメタン、アントロンなどとそれらの誘導体、金属錯体化合物および含窒素五員環誘導体などがあるが、これらに限定されない。
【0177】
前記電子輸送および注入層は、上述した電子輸送層および電子注入層の材料を含んでもよい。
【0178】
前記金属錯体化合物としては、8-ヒドロキシキノリナトリチウム、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)亜鉛、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)銅、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)ガリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h])キノリナト)ベリリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)亜鉛、ビス(2-メチル-8-キノリナト)クロロガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(o-クレゾラト)ガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(1-ナフトラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(2-ナフトラト)ガリウムなどがあるが、これに限定されない。
【0179】
前記正孔阻止層は、正孔のカソード到達を阻止する層であり、一般に正孔注入層と同じ条件で形成され得る。具体的には、オキサジアゾール誘導体やトリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、BCP、アルミニウム錯体(aluminum complex)などがあるが、これらに限定されない。
【0180】
前記電子阻止層は、電子のアノード到達を阻止する層であり、当技術分野で知られている材料を用いてもよい。
【0181】
本発明に係る有機発光素子は、使用される材料に応じて、前面発光型、後面発光型、または両面発光型であってもよい。
【実施例】
【0182】
以下、本発明を具体的に説明するために、実施形態を挙げて詳細に説明する。しかしながら、本発明に係る実施形態は、様々な他の形態に変更することができ、本発明の範囲は以下に説明する実施形態に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施形態は、当技術分野において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0183】
<製造例>
製造例1.化合物1の製造
1)中間体1-1の合成
【化13】
【0184】
1-ブロモ-4-フルオロベンゼン[1-bromo-4-fluorobenzene](27.9mL、255mmol)をテトラヒドロフラン(THF)(500mL)に入れた。窒素置換した後、-78℃に冷却した。n-BuLi(2.5M Hex)(96mL、240mmol)を滴下漏斗(dropping funnel)に入れた後、反応混合物にゆっくりと投入した。-78℃で30分間撹拌した。2-ブロモフルオレノン[2-bromofluorenone](38.9g、150mmol)を投入した。ゆっくりと常温に上げながら一晩撹拌した。蒸留水を投入して反応を終結した後、酢酸エチルと水で抽出した。有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥させ、濾過した。濾液を真空回転濃縮器で乾燥して有機溶媒を除去し、次の反応に用いた。
【0185】
【0186】
中間体1-1(約53g、150mmol)、フェノール[phenol](70.6g、750mmol)を丸底フラスコ(RBF)に入れた。CH3SO3H(214mL)を入れた後、60℃で4時間撹拌した。氷水を投入した後、酢酸エチルと水で抽出した。有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥させ、濾過した。濾液を真空回転濃縮器で乾燥して有機溶媒を除去した。カラム精製後、ジクロロメタン/ヘプタン[Dichloromethane/Heptane]条件で結晶化して中間体1-2を40.6g確保した。
【0187】
【0188】
中間体1-2(40g、92.7mmol)、4-ニトロベンズアルデヒド[4-nitrobenzaldehyde](21.2g、139mmol)、Cu(OAc)2(842mg、4.64mmol)、Cs2CO3(45.3g、139mmol)をRBFに入れた。ジメチルホルムアミド[DMF](310mL)を加え、100℃で4時間撹拌した。酢酸エチルと水で抽出し、有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥後濾過した。濾液を真空回転濃縮器で乾燥して有機溶媒を除去した。カラム精製後、ジクロロメタン/ヘプタン[DCM/Heptane]条件で結晶化して中間体1-3を38.7g確保した。
【0189】
【0190】
CH3PPh3Br(51.6g、144.6mmol)、KOtBu(16.2g、144.6mmol)、THF(217mL)をRBFに入れた後、0℃に冷却した。中間体1-3(38.7g、72.3mmol)をテトラヒドロフラン[THF](144mL)に溶解した溶液を反応混合物に投入した。常温に昇温し、1時間撹拌した。酢酸エチルと水で抽出し、有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥後濾過した。濾液を真空回転濃縮器で乾燥して有機溶媒を除去した。カラム精製後、DCM/EtOH条件で結晶化して中間体1-4を33.7g確保した。
【0191】
【0192】
N,N’-ビス(4-フルオロフェニル)ベンジジン[N,N’-Bis(4-fluorophenyl)benzidine](944mg,2.5mmol),中間体1-4(2.73g,5.13mmol),Pd(PtBu3)2(64mg、0.125mmol)とNaOtBu(961mg、10mmol)をRBFに入れた。窒素置換した後、トルエン(12.5mL)を入れ、90℃で1時間撹拌した。酢酸エチルと水で抽出し、有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥後濾過した。濾液を真空回転濃縮器で乾燥して有機溶媒を除去した。カラム精製後、DCM/EtOH条件で結晶化して化合物1を2.7g確保した。化合物の合成は、LC-MSとNMRによって確認した。MS:[M+H]+=1277
化合物1のNMR測定値:1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ7.83(m,4H)、7.45-7.36(m,12H)、7.27(t,2H)、7.17-6.86(m,36H)、6.65-6.57(m,2H)、5.65(dd,2H)、5.11(dd,2H)
【0193】
【0194】
N,N’-ビス(3,4-ジフルオロフェニル)ベンジジン[N,N’-Bis(3,4-difluorophenyl)benzidine](1.02g,2.5mmol),中間体1-4(2.73g,5.13mmol)、Pd(PtBu3)2(64mg、0.125mmol)およびNaOtBu(961mg、10mmol)をRBFに入れた。窒素置換した後、トルエン(12.5mL)を入れ、90℃で1時間撹拌した。酢酸エチルと水で抽出し、有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥後濾過した。濾液を真空回転濃縮器で乾燥して有機溶媒を除去した。カラム精製後、DCM/EtOH条件で結晶化して化合物2を2.8g確保した。化合物の合成は、LC-MSとNMRによって確認した。MS:[M+H]+=1313
化合物2のNMR測定値:1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ7.87(t,4H)、7.50(d,4H)、7.44-7.27(m,12H)、7.11-7.00(m,22H)6.94-6.83(m,10H)、6.66-6.59(m,2H)、5.66(dd,2H)、5.12(dd,2H)
【0195】
【0196】
N,N’-ビス(2,6-ジフルオロフェニル)ベンジジン[N,N’-Bis(2,6-difluorophenyl)benzidine](1.02g,2.5mmol),中間体1-4(2.73g,5.13mmol)、Pd(PtBu3)2(64mg、0.125mmol)とNaOtBu(961mg、10mmol)をRBFに入れた。窒素置換した後、トルエン(12.5mL)を入れ、90℃で1時間撹拌した。酢酸エチルと水で抽出し、有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥後濾過した。濾液を真空回転濃縮器で乾燥して有機溶媒を除去した。カラム精製後、DCM/EtOH条件で結晶化して化合物3を2.5g確保した。化合物の合成は、LC-MSとNMRによって確認した。MS:[M+H]+=1313
化合物3のNMR測定値:1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ7.86-7.83(m,4H)、7.46-7.37(m,14H)、7.30-7.22(m,6H)、7.10-6.87(m,28H)、6.65-6.56(m,2H)、5.66(dd,2H)、5.11(dd,2H)
【0197】
【0198】
2,2’-Bis(4-fluorophenylamino)-9,9’-spirobi[9h-fluorene](1.34g,2.5mmol),中間体1-4(2.73g,5.13mmol),Pd(PtBu3)2(64mg、0.125mmol)とNaOtBu(961mg、10mmol)をRBFに入れた。窒素置換した後、トルエン(12.5mL)を入れ、90℃で1時間撹拌した。酢酸エチルと水で抽出し、有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥後濾過した。濾液を真空回転濃縮器で乾燥して有機溶媒を除去した。カラム精製後、DCM/EtOH条件で結晶化して化合物4を2.9g確保した。化合物の合成は、LC-MSとNMRによって確認した。MS:[M+H]+=1440
化合物4のNMR測定値:1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ7.80-7.74(m,6H)、7.69(d,2H)、7.44-7.33(m,8H)、7.30-7.24(m,4H))、7.06-6.80(m,36H)、6.71-6.63(m,2H)、6.56(m,2H)、6.30-6.28(m,2H)、5.70(dd,2H)、5.17(dd,2H)
【0199】
製造例5.化合物5の製造
1)中間体5-1の合成
【化21】
【0200】
1-bromo-2,6-difluorobenzene(29.4mL、255mmol)をTHF(500mL)に入れる。窒素置換した後、-78℃に冷却した。n-BuLi(2.5M Hex)(96mL、240mmol)をdropping funnelに入れた後、反応混合物にゆっくりと投入した。-78℃で30分間撹拌した。2-bromofluorenone(38.9g、150mmol)を投入し、ゆっくりと常温に上げながら一晩撹拌した。蒸留水を投入して反応を終結した後、酢酸エチルと水で抽出した。有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥させ、濾過した。濾液を真空回転濃縮器で乾燥して有機溶媒を除去し、次の反応に用いた。
【0201】
【0202】
中間体5-1(56g、150mmol)、phenol(70.6g、750mmol)をRBFに入れた。CH3SO3H(214mL)を入れた後、60℃で4時間撹拌した。氷水を投入した後、酢酸エチルと水で抽出した。有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥させ、濾過した。濾液を真空回転濃縮器で乾燥して有機溶媒を除去した。カラム精製後、DCM/Heptane条件で結晶化して中間体5-2を45.2g確保した。
【0203】
【0204】
中間体5-2(45.2g、100mmol)、4-nitrobenzaldehyde(22.8g、150mmol)、Cu(OAc)2(908mg、5mmol)、Cs2CO3(48.9g、150mmol)をRBFに入れた。DMF(333mL)を加え、100℃で4時間撹拌した。酢酸エチルと水で抽出し、有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥後濾過した。濾液を真空回転濃縮器で乾燥して有機溶媒を除去した。カラム精製後、DCM/Heptane条件で結晶化して中間体5-3を39.8g確保した。
【0205】
【0206】
CH3PPh3Br(51.4g、144mmol)、KOtBu(16.2g、144mmol)、THF(216mL)をRBFに入れた後、0℃に冷却した。中間体5-3(39.8g、72mmol)をTHF(144mL)に溶解した溶液を反応混合物に投入し、常温に昇温しながら1時間撹拌した。酢酸エチルと水で抽出し、有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥後濾過した。濾液を真空回転濃縮器で乾燥して有機溶媒を除去した。カラム精製後、DCM/EtOH条件で結晶化して中間体5-4を34.8g確保した。
【0207】
【0208】
N,N’-Bis(4-fluorophenyl)benzidine(944mg,2.5mmol),中間体5-4(2.83g,5.13mmol),Pd(PtBu3)2(64mg,0.125mmol)とNaOtBu(961mg,10mmol)をRBFに入れた。窒素置換した後、トルエン(12.5mL)を入れ、90℃で1時間撹拌した。酢酸エチルと水で抽出し、有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥後濾過した。濾液を真空回転濃縮器で乾燥して有機溶媒を除去した。カラム精製後、DCM/EtOH条件で結晶化して化合物5を2.7g確保した。化合物の合成は、LC-MSとNMRによって確認した。MS:[M+H]+=1331
化合物5のNMR測定値:1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ7.84-7.81(m,4H)、7.46(d,2H)、7.43-7.34(m,12H)、7.27(t,2H)、7.18-7.12(m,6H)、7.09-6.95(m,14H)、6.95-6.87(m,8H)、6.83(t,4H)、6.64-6.55(m,2H)、5.64(dd,2H)、5.10(dd,2H)
【0209】
【0210】
2,2’-Bis(4-fluorophenylamino)-9,9’-spirobi[9h-fluorene](1.34g,2.5mmol),中間体5-4(2.83g,5.13mmol),Pd(PtBu3)2(64mg、0.125mmol)とNaOtBu(961mg、10mmol)をRBFに入れた。窒素置換した後、トルエン(12.5mL)を入れ、90℃で1時間撹拌した。酢酸エチルと水で抽出し、有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥後濾過した。濾液を真空回転濃縮器で乾燥して有機溶媒を除去した。カラム精製後、DCM/EtOH条件で結晶化して化合物6を2.9g確保した。化合物の合成は、LC-MSとNMRによって確認した。MS:[M+H]+=1475
化合物6のNMR測定値:1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ7.79-7.73(m,6H)、7.69-7.66(m,2H)、7.44-7.40(m,6H)、7.36-7.22(m,8H)、7.08-6.85(m,22H)、6.85-6.67(m,10H)、6.71-6.63(m,2H)、6.58-6.55(m,2H)、6.26(m,2H)、2H)、5.70(dd,2H)、5.17(dd,2H)
【0211】
【0212】
N,N’-Bis(4-fluoro-3-methylphenyl)benzidine(1.0g,2.5mmol),中間体5-4(2.83g,5.13mmol),Pd(PtBu3)2(64mg,0.125mmol)とNaOtBu(961mg、10mmol)をRBFに入れた。窒素置換した後、トルエン(12.5mL)を入れ、90℃で1時間撹拌した。酢酸エチルと水で抽出し、有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥後濾過した。濾液を真空回転濃縮器で乾燥して有機溶媒を除去した。カラム精製後、DCM/EtOH条件で結晶化して化合物7を3.1g確保した。化合物の合成は、LC-MSとNMRによって確認した。MS:[M+H]+=1341
化合物7のNMR測定値:1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ7.84-7.81(m,4H)、7.46(d,2H)、7.43-7.34(m,10H)、7.27(t,2H)、7.18-7.12(m,6H)、7.09-6.95(m,14H)、6.95-6.87(m,8H)、6.83(t,4H)、6.64-6.55(m,2H)、5.64(dd,2H)、5.10(dd,2H)、2.33(s,6H)
【0213】
製造例8.化合物8の製造
1)中間体8-1の合成
【化28】
【0214】
中間体5-2(4.5g、10mmol)、Cs2CO3(3.3g、10mmol)をRBFに入れた。DMF(50mL)と4-vinylbenzyl chloride(1.7mL、12mmol)を加え、60℃で4時間撹拌した。酢酸エチルと水で抽出し、有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥後濾過した。濾液を真空回転濃縮器で乾燥して有機溶媒を除去した。カラム精製後、DCM/Heptane条件で結晶化して中間体8-1を3.9g確保した。
【0215】
【0216】
N,N’-Bis(4-fluorophenyl)benzidine(944mg,2.5mmol),中間体8-1(2.9g,5.13mmol),Pd(PtBu3)2(64mg,0.125mmol)とNaOtBu(961mg,10mmol)をRBFに入れた。窒素置換した後、トルエン(12.5mL)を入れ、90℃で1時間撹拌した。酢酸エチルと水で抽出し、有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥後濾過した。濾液を真空回転濃縮器で乾燥して有機溶媒を除去した。カラム精製後、DCM/EtOH条件で結晶化して化合物8を2.8g確保した。化合物の合成は、LC-MSとNMRによって確認した。MS:[M+H]+=1341
化合物8のNMR測定値:1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ7.84-7.81(m,4H)、7.46(d,2H)、7.43-7.33(m,12H)、7.26(t,2H)、7.19-7.13(m,6H)、7.09-6.96(m,14H)、6.94-6.87(m,8H)、6.83(t,4H)、6.64-6.55(m,2H)、5.64(dd,2H)、5.16(s,4H)5.10(dd,2H)
【0217】
製造例9.化合物9の製造
1)中間体9-1の合成
【化30】
【0218】
1-bromo-2,3,4,5, 6-pentafluorobenzene(31.8mL、255mmol)をTHF(500mL)に入れ、窒素置換した後、-78℃に冷却した。n-BuLi(2.5M Hex)(96mL、240mmol)をdropping funnelに入れた後、反応混合物にゆっくり投入し、-78℃で30分間撹拌した。2-bromofluorenone(38.9g、150mmol)を投入した。ゆっくりと常温に上げながら一晩撹拌した。蒸留水を投入して反応を終結した後、酢酸エチルと水で抽出した。有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥させ、濾過した。濾液を真空回転濃縮器で乾燥して有機溶媒を除去し、次の反応に用いた。
【0219】
【0220】
中間体9-1(64.1g、150mmol)、phenol(70.6g、750mmol)をRBFに入れた。CH3SO3H(214mL)を入れた後、60℃で4時間撹拌した。氷水を投入した後、酢酸エチルと水で抽出した。有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥させ、濾過した。濾液を真空回転濃縮器で乾燥して有機溶媒を除去した。カラム精製後、DCM/Heptane条件で結晶化して中間体9-2を52.8g確保した。
【0221】
【0222】
中間体9-2(50.3g、100mmol)、4-nitrobenzaldehyde(22.8g、150mmol)、Cu(OAc)2(908mg、5mmol)、Cs2CO3(48.9g、150mmol)をRBFに入れた。DMF(333mL)を加え、100℃で4時間撹拌した。酢酸エチルと水で抽出し、有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥後濾過した。濾液を真空回転濃縮器で乾燥して有機溶媒を除去した。カラム精製後、DCM/Heptane条件で結晶化して中間体9-3を48.6g確保した。
【0223】
【0224】
CH3PPh3Br(51.4g、144mmol)、KOtBu(16.2g、144mmol)、THF(216mL)をRBFに入れた後、0℃に冷却した。中間体9-3(43.7g、72mmol)をTHF(144mL)に溶解した溶液を反応混合物に投入し、常温に昇温しながら1時間撹拌した。酢酸エチルと水で抽出し、有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥後濾過した。濾液を真空回転濃縮器で乾燥して有機溶媒を除去した。カラム精製後、DCM/EtOH条件で結晶化して中間体9-4を31g確保した。
【0225】
【0226】
N,N’-Bis(4-fluorophenyl)benzidine(944mg,2.5mmol),中間体9-4(2.73g,5.13mmol),Pd(PtBu3)2(64mg,0.125mmol)とNaOtBu(961mg,10mmol)をRBFに入れた。窒素置換した後、トルエン(12.5mL)を入れ、90℃で1時間撹拌した。酢酸エチルと水で抽出し、有機層を集めた後、MgSO4を用いて有機層を乾燥後濾過した。濾液を真空回転濃縮器で乾燥して有機溶媒を除去した。カラム精製後、DCM/EtOH条件で結晶化して化合物9を2.7g確保した。化合物の合成は、LC-MSとNMRによって確認した。MS:[M+H]+=1421
化合物9のNMR測定値:1H NMR(500MHz,DMSO-d6)δ7.83(m,4H)、7.45-7.36(m,12H)、7.27(t,2H)、7.17-6.86(m,28H)、6.65-6.57(m,2H)、5.65(dd,2H)、5.11(dd,2H)
【0227】
<素子例>
実験例1.
ITO(indium tin oxide)が1,500Åの厚さで薄膜コーティングされたガラス基板を洗剤を溶かした蒸留水に入れ、超音波で洗浄した。この時、洗剤としてはフィッシャー社(Fischer Co.)の製品を使用し、蒸留水としてはミリポア社(Millipore Co.)の製品のフィルター(Filter)で2次にかけてろ過されたた蒸留水を使用した。ITOを30分間洗浄した後、蒸留水で2回繰り返して超音波洗浄を10分間進行した。蒸留水洗浄が終わった後、イソプロピル、アセトンの溶剤で超音波洗浄をして乾燥させた後、前記基板を5分間洗浄した後、グローブボックスで基板を輸送させた。
【0228】
ITO透明電極上に先に製造例1で製造した化合物1および下記化合物Gを8:2の重量比で含む2wt%シクロヘキサノンインクをITO表面上にスピンコーティングし、220℃で30分間熱処理して400Å厚さの正孔注入層を形成した。
【0229】
前記正孔注入層上に下記の化合物Aの2wt%トルエンインクをスピンコーティングし、120℃で10分間熱処理して200Å厚さの正孔輸送層を形成した。前記正孔輸送層上に下記の化合物Bと化合物Cを92:8の重量比で真空蒸着して200Å厚さの発光層を形成した。前記発光層上に下記の化合物Dを真空蒸着して350Å厚さの電子輸送および注入層を形成した。前記電子輸送および注入層上に順次10Å厚さでLiFと1000Å厚さでアルミニウムを蒸着してカソードを形成した。
【0230】
【0231】
前記の過程で有機物の蒸着速度は0.4~0.7Å/secを維持し、カソードのリチウムフルオリドは0.3Å/sec、アルミニウムは2Å/secの蒸着速度を維持し、蒸着時の真空度は2×10-7~5×10-8torrを維持した。
【0232】
実験例2~9
正孔注入層(HIL)の製造時、前記化合物1の代わりに下記の表1に記載の化合物を用いたことを除いては、前記実験例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0233】
比較実験例1~3
正孔注入層の製造時に、前記化合物1の代わりに下記の表1に記載のように、下記の化合物CE1~CE3のうちいずれか1つの化合物を用いたことを除いては、前記実験例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0234】
【0235】
前記実験例および比較実験例で製造した有機発光素子を10mA/cm2の電流密度で駆動電圧、外部量子効率(external quantum efficiency)、輝度および寿命を測定した結果を下記の表1に示した。前記外部量子効率は、(放出された光子数)/(注入された電荷運搬体数)で求めた。T95は、輝度が初期輝度(500nit)から95%に減少するのにかかる時間(hr)を意味する。
【0236】
【0237】
実験例1~9は、本発明に係る化学式1で表される化合物を正孔注入層のホストとして用いたものであり、比較実験例1~3はフルオロ基(-F)が結合されていない化合物CE1、フルオロ基(-F)がフルオレンにのみ結合された化合物CE2、または化学式1のAr2にフルオロ基(-F)が結合されていない化合物CE3を用いたものである。
【0238】
前記表1に示すように、本発明に係る化学式1で表される化合物を正孔注入層のホストとして用いた有機発光素子は、比較実験例の有機発光素子に比べて駆動電圧が大きく減少し、寿命が大きく向上することが確認できた。
【0239】
また、実験例の有機発光素子は、比較実験例の有機発光素子と比較して効率および輝度が増加することが示された。これにより分子内に導入されたフルオロ基(-F)により膜、界面特性が改善され、HOMOレベルの変化により正孔移動度と正孔/電子のバランスが改善されることにより、有機発光素子の性能が改善されることが確認できた。
【符号の説明】
【0240】
101 ・・・基板
201 ・・・第1の電極
301 ・・・正孔注入層
401 ・・・正孔輸送層
501 ・・・発光層
601 ・・・電子輸送および注入層
701 ・・・第2の電極