(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】研磨されるウェーハの上面から液体を除去する方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/30 20120101AFI20240617BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20240617BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240617BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
B24B37/30 E
B24B37/30 C
B24B41/06 A
H01L21/304 622K
H01L21/68 P
(21)【出願番号】P 2019032512
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2021-11-05
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】山木 暁
(72)【発明者】
【氏名】福島 誠
(72)【発明者】
【氏名】鍋谷 治
【合議体】
【審判長】刈間 宏信
【審判官】堀内 亮吾
【審判官】大山 健
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-507079(JP,A)
【文献】国際公開第2013/065237(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00 - 37/34,41/06
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性膜によって形成された中心側圧力室と外側圧力室を有する研磨ヘッドを用いてウェーハを研磨する方法であって、
前記弾性膜の中央部が前記ウェーハに向かって突出した状態で、前記弾性膜の
前記中央部を前記ウェーハの上面の中央部に接触させ
ると同時に、前記ウェーハの上面の液体を前記ウェーハの前記中央部から外側へ押し出し、その後、
前記弾性膜の外周部を前記ウェーハの上面の外周部に接触させることで、前記ウェーハの上面から液体を除去し、
前記弾性膜で前記ウェーハの下面を研磨面に押し付けて、前記ウェーハの下面を研磨する方法。
【請求項2】
前記中心側圧力室内の圧力を前記外側圧力室内の圧力よりも高くした状態で、前記弾性膜の中央部をウェーハの上面の中央部に接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中心側圧力室は、エアシリンダに連通しており、エアシリンダのピストンには錘が置かれている、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの研磨前または研磨中にウェーハの上面から液体を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
化学機械研磨(CMP)は、研磨面上にスラリーを供給しながら、ウェーハを研磨面に押し付け、スラリーの存在下でウェーハを研磨面に摺接させることで、ウェーハの表面を研磨する技術である。ウェーハの研磨中、ウェーハは研磨ヘッドによって研磨面に押し付けられる。ウェーハの表面は、スラリーの化学的作用と、スラリーに含まれる砥粒の機械的作用により平坦化される。
【0003】
図28は、研磨ヘッドを模式的に示す断面図である。研磨ヘッド600は、ウェーハW1の上面に接触する弾性膜610を有する。この弾性膜610は、複数の圧力室601~604を形成する形状を有しており、それぞれの圧力室601~604内の圧力は独立に調節することが可能である。したがって、研磨ヘッド600は、これら圧力室601~604に対応するウェーハW1の複数の領域を異なる力で押し付けることができ、ウェーハW1の所望の膜厚プロファイルを達成することができる。
【0004】
ウェーハW1の研磨が終了すると、研磨されたウェーハW1は搬送装置によって次工程に搬送される。
図29に示すように、次のウェーハW2は、搬送装置によって研磨ヘッド600の下方の受け渡し位置に運ばれる。同時に、研磨ヘッド600は、液体(例えば純水)で洗浄され、研磨ヘッド600からスラリーや研磨屑が除去される。そして、次のウェーハW2は、研磨ヘッド600に保持され、研磨ヘッド600により研磨面の上方位置に搬送される。ウェーハW2は、研磨ヘッド600により研磨面に押し付けられ、スラリーの存在下で研磨される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-11056号公報
【文献】特開2005-313312号公報
【文献】特開2007-242655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、
図30に示すように、ウェーハW2の上面と研磨ヘッド600の弾性膜610との間には、研磨ヘッド600の洗浄に使用された液体Qが存在していることがある。この液体Qが複数の圧力室にまたがって広がっていると、隣の圧力室内の圧力が液体Qに伝わり、意図しない力がウェーハW2に加わってしまう。
図30に示す例では、ウェーハW2の中央部の研磨レートを下げるために、中央の圧力室601内の圧力を下げたにもかかわらず、隣の圧力室602の圧力が液体Qを介してウェーハW2の中央部に加わる。結果として、ウェーハWの中央部の研磨レートを下げることができない。このように、ウェーハW2と研磨ヘッド600との間に存在する液体Qは、研磨ヘッド600が適切な力をウェーハW2に加えることを妨げてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、研磨されるウェーハの上面から液体を除去し、研磨ヘッドが適切な力をウェーハに加えることを可能とする方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、弾性膜によって形成された中心側圧力室と外側圧力室を有する研磨ヘッドを用いてウェーハを研磨する方法であって、前記弾性膜の中央部を前記ウェーハの上面の中央部に接触させ、その後、前記弾性膜の外周部を前記ウェーハの上面の外周部に接触させることで、前記ウェーハの上面から液体を除去し、前記弾性膜で前記ウェーハの下面を研磨面に押し付けて、前記ウェーハの下面を研磨する方法が提供される。
一態様では、前記中心側圧力室内の圧力を前記外側圧力室内の圧力よりも高くした状態で、前記弾性膜の中央部をウェーハの上面の中央部に接触させる。
一態様では、前記中心側圧力室は、エアシリンダに連通しており、エアシリンダのピストンには錘が置かれている。
【0009】
一態様では、弾性膜によって形成された中心側圧力室と外側圧力室を有する研磨ヘッドを用いてウェーハを研磨する方法であって、前記弾性膜を前記ウェーハの上面に接触させ、その後、前記外側圧力室、前記中心側圧力室の順に前記外側圧力室および前記中心側圧力室内に真空を形成することで、前記ウェーハの上面に存在する液体を外側に移動させ、その後、前記弾性膜で前記ウェーハの下面を研磨面に押し付けて、前記ウェーハの上面から液体を除去し、前記研磨ヘッドで前記ウェーハの下面を前記研磨面に摺接させて、前記ウェーハの下面を研磨する方法が提供される。
【0010】
一態様では、前記中心側圧力室、前記外側圧力室の順に前記中心側圧力室および前記外側圧力室内に圧縮気体を供給することで、前記弾性膜で前記ウェーハの下面を前記研磨面に押し付けて、前記ウェーハの上面から液体を除去する。
一態様では、前記外側圧力室および前記中心側圧力室は、第1圧力室、第2圧力室、および第3圧力室を少なくとも含み、前記第2圧力室は前記第1圧力室の外側に位置し、前記第3圧力室は前記第2圧力室の外側に位置しており、前記第3圧力室、前記第2圧力室、前記第1圧力室の順に前記第3圧力室、前記第2圧力室、前記第1圧力室内に真空を形成することで、前記ウェーハの上面に存在する液体を外側に移動させる。
【0011】
一態様では、研磨ヘッドを用いてウェーハを研磨する方法であって、搬送装置上の前記ウェーハの上面から液体を除去し、その後、前記研磨ヘッドで前記搬送装置上の前記ウェーハを保持し、前記研磨ヘッドで前記ウェーハの下面を研磨面に押し付けて、前記ウェーハの下面を研磨する方法が提供される。
【0012】
一態様では、前記搬送装置上の前記ウェーハの上面から液体を除去する工程は、前記搬送装置により前記ウェーハを傾けることで前記ウェーハの上面から液体を除去する工程である。
一態様では、前記搬送装置上の前記ウェーハの上面から液体を除去する工程は、前記搬送装置により前記ウェーハを揺り動かすことで前記ウェーハの上面から液体を除去する工程である。
一態様では、前記搬送装置上の前記ウェーハの上面から液体を除去する工程は、前記搬送装置上の前記ウェーハの上面に気体の噴流を送ることで前記ウェーハの上面から液体を除去する工程である。
【0013】
一態様では、弾性膜を有する研磨ヘッドを用いてウェーハを研磨する方法であって、前記弾性膜を前記ウェーハの上面に接触させ、前記弾性膜に形成されている液体流路に前記ウェーハの上面に存在する液体を流入させることで、前記ウェーハの上面から液体を除去し、その後、前記弾性膜で前記ウェーハの下面を研磨面に押し付けて、前記ウェーハの下面を研磨する方法が提供される。
【0014】
一態様では、前記弾性膜は、前記ウェーハの上面に接触する接触面を有し、前記液体流路は、前記接触面で開口する開口部と、前記開口部に接続され、かつ前記弾性膜内を延びる横孔を有し、前記横孔は前記弾性膜の外側面で開口している。
一態様では、前記液体流路に前記ウェーハの上面に存在する液体を流入させる工程は、前記液体流路を通じて前記ウェーハの上面に存在する液体を吸引する工程であり、前記液体流路は、前記弾性膜に接続された吸引ラインに連通している。
一態様では、前記弾性膜は、前記ウェーハの上面に接触する接触面を有し、前記液体流路は、前記接触面に形成された溝である。
一態様では、前記弾性膜の内部での前記溝の幅は、前記接触面での前記溝の幅よりも大きい。
【0015】
一態様では、ウェーハを研磨面に押し付けるための弾性膜であって、前記ウェーハに接触可能な接触面を有する接触部と、前記接触部に接続された外壁部を備え、前記接触部は、前記接触面で開口する開口部と、前記開口部に接続され、かつ前記接触部内を延びる横孔を有している、弾性膜が提供される。
一態様では、前記横孔は、前記弾性膜の外側面で開口している。
一態様では、前記横孔は、前記接触部の前記接触面とは反対側の面で開口している。
【0016】
一態様では、ウェーハを研磨面に押し付けるための弾性膜であって、前記ウェーハに接触可能な接触面を有する接触部と、前記接触部に接続された外壁部を備え、前記接触部は、前記接触面に形成された溝を有する、弾性膜が提供される。
一態様では、前記接触部の内部での前記溝の幅は、前記接触面での前記溝の幅よりも大きい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ウェーハの研磨前または研磨開始直後にウェーハの上面から液体が除去される。その結果、圧力室を形成する弾性膜は、ウェーハに対して意図した力を加えることができ、ウェーハの所望の膜厚プロファイルを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】
図1に示す研磨ヘッドにウェーハを搬送する搬送装置の上面図である。
【
図4】ウェーハの上面から液体を除去するときの研磨ヘッドを示す模式図である。
【
図5】研磨ヘッドの弾性膜がウェーハの上面に存在している液体を外側に押し出す様子を示す模式図である。
【
図6】研磨ヘッドの弾性膜がウェーハの上面に存在している液体を外側にさらに押し出す様子を示す模式図である。
【
図7】圧力レギュレータに代えて、エアシリンダと錘との組み合わせを使用して弾性膜の中央部を膨らます実施形態を説明する図である。
【
図9】弾性膜のさらに他の実施形態を示す模式図である。
【
図10】ウェーハの上面から液体を除去する方法の他の実施形態を説明する図である。
【
図14】ウェーハの上面から液体を除去する方法のさらに他の実施形態を説明する図である。
【
図17】ウェーハの上面から液体を除去する方法のさらに他の実施形態を説明する図である。
【
図19】ウェーハの上面から液体を除去する方法のさらに他の実施形態を説明する図である。
【
図21】ウェーハの上面から液体を除去することができる弾性膜の一実施形態を示す断面図である。
【
図22】
図21に示す弾性膜がウェーハの上面から液体を除去している様子を示す模式図である。
【
図23】ウェーハの上面から液体を除去することができる弾性膜の他の実施形態を示す断面図である。
【
図24】
図23に示す弾性膜がウェーハの上面から液体を除去している様子を示す模式図である。
【
図25】ウェーハの上面から液体を除去することができる弾性膜のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【
図27】
図25に示す弾性膜がウェーハの上面から液体を除去している様子を示す模式図である。
【
図29】研磨ヘッドが洗浄されている様子を説明する図である。
【
図30】ウェーハの上面と研磨ヘッドの弾性膜との間に存在する液体に起因する問題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、研磨装置の一実施形態を示す模式図である。
図1に示すように、研磨装置は、研磨パッド2を支持する研磨テーブル3と、基板の一例であるウェーハWを研磨パッド2に押し付ける研磨ヘッド1と、研磨テーブル3を回転させるテーブルモータ6と、研磨パッド2上にスラリーを供給するためのスラリー供給ノズル5とを備えている。研磨パッド2の表面は、ウェーハWを研磨する研磨面2aを構成する。
【0020】
研磨テーブル3はテーブルモータ6に連結されており、研磨テーブル3および研磨パッド2を一体に回転させるように構成されている。研磨ヘッド1は、研磨ヘッドシャフト11の端部に固定されており、研磨ヘッドシャフト11は、ヘッドアーム15に回転可能に支持されている。ヘッドアーム15は、支軸16に回転可能に支持されている。
【0021】
ウェーハWは次のようにして研磨される。研磨テーブル3および研磨ヘッド1を
図1の矢印で示す方向に回転させながら、スラリー供給ノズル5からスラリーが研磨テーブル3上の研磨パッド2の研磨面2aに供給される。ウェーハWは研磨ヘッド1によって回転されながら、研磨パッド2とウェーハWとの間にスラリーが存在した状態で研磨ヘッド1によって研磨パッド2の研磨面2aに押し付けられる。ウェーハWの表面は、スラリーの化学的作用と、スラリーに含まれる砥粒による機械的作用により研磨される。
【0022】
研磨装置は、研磨ヘッド1、研磨テーブル3、およびスラリー供給ノズル5の動作を制御する動作制御部9をさらに備えている。動作制御部9は少なくとも1台のコンピュータから構成される。
【0023】
次に、研磨ヘッド1について説明する。
図2は、研磨ヘッド1を示す断面図である。研磨ヘッド1は、研磨ヘッドシャフト11の端部に固定されたキャリア31と、キャリア31の下部に取り付けられた弾性膜34と、キャリア31の下方に配置されたリテーナリング32とを備えている。リテーナリング32は、弾性膜34の周囲に配置されている。このリテーナリング32は、ウェーハWの研磨中にウェーハWが研磨ヘッド1から飛び出さないようにするためにウェーハWを保持する環状の構造体である。
【0024】
弾性膜34は、ウェーハWの上面に接触可能な接触面35aを有する接触部35と、接触部35に接続された内壁部36a,36b,36cおよび外壁部36dを備えている。接触部35は、ウェーハWの上面と実質的に同じ大きさおよび同じ形状を有している。内壁部36a,36b,36cおよび外壁部36dは、同心状に配列された無端状の壁である。外壁部36dは内壁部36a,36b,36cの外側に位置しており、内壁部36a,36b,36cを囲むように配置されている。本実施形態では、3つの内壁部36a,36b,36cが設けられているが、本発明は本実施形態に限定されない。一実施形態では、1つまたは2つの内壁部のみが設けられてもよく、あるいは4つ以上の内壁部が設けられてもよい。
【0025】
弾性膜34とキャリア31との間には、4つの圧力室25A,25B,25C,25Dが設けられている。圧力室25A,25B,25C,25Dは、弾性膜34の接触部35、内壁部36a,36b,36c、および外壁部36dによって形成されている。すなわち、圧力室25Aは内壁部36a内に位置し、圧力室25Bは内壁部36aと内壁部36bとの間に位置し、圧力室25Cは内壁部36bと内壁部36cとの間に位置し、圧力室25Dは内壁部36cと外壁部36dとの間に位置している。中央の圧力室25Aは円形であり、他の圧力室25B,25C,25Dは環状である。これらの圧力室25A,25B,25C,25Dは、同心上に配列されている。圧力室25Bは圧力室25Aの外側に位置し、圧力室25Cは圧力室25Bの外側に位置し、圧力室25Dは圧力室25Cの外側に位置している。
【0026】
圧力室25A,25B,25C,25Dにはそれぞれ気体移送ラインF1,F2,F3,F4が接続されている。気体移送ラインF1,F2,F3,F4の一端は、研磨装置が設置されている工場に設けられたユーティリティ供給源としての圧縮気体供給源(図示せず)に接続されている。圧縮空気等の圧縮気体は、気体移送ラインF1,F2,F3,F4を通じて圧力室25A,25B,25C,25Dにそれぞれ供給されるようになっている。
【0027】
キャリア31とリテーナリング32との間には、環状のメンブレン(ローリングダイヤフラム)37が配置されおり、このメンブレン37の内部には圧力室25Eが形成されている。圧力室25Eは、気体移送ラインF5を介して上記圧縮気体供給源に連結されている。圧縮気体は、気体移送ラインF5を通じて圧力室25E内に供給され、圧力室25Eはリテーナリング32を研磨パッド2の研磨面2aに対して押圧する。
【0028】
気体移送ラインF1,F2,F3,F4,F5は、研磨ヘッドシャフト11に取り付けられたロータリージョイント40を経由して延びている。圧力室25A,25B,25C,25D,25Eに連通する気体移送ラインF1,F2,F3,F4,F5には、それぞれ圧力レギュレータR1,R2,R3,R4,R5が設けられている。圧縮気体供給源からの圧縮気体は、圧力レギュレータR1~R5を通って圧力室25A~25E内にそれぞれ独立に供給される。圧力レギュレータR1~R5は、圧力室25A~25E内の圧縮気体の圧力を調節するように構成されている。
【0029】
圧力レギュレータR1~R5は、圧力室25A~25Eの内部圧力を互いに独立して変化させることが可能であり、これにより、ウェーハWの対応する4つの領域、すなわち、中央部、内側中間部、外側中間部、およびエッジ部に対する研磨圧力、およびリテーナリング32の研磨パッド2への押圧力を独立に調節することができる。気体移送ラインF1,F2,F3,F4,F5は大気開放弁(図示せず)にもそれぞれ接続されており、圧力室25A~25Eを大気開放することも可能である。本実施形態では、弾性膜34は、4つの圧力室25A~25Dを形成するが、一実施形態では、弾性膜34は4つよりも少ない、または4つよりも多い圧力室を形成してもよい。
【0030】
圧力レギュレータR1~R5は動作制御部9に接続されている。動作制御部9は、圧力室25A~25Eのそれぞれの目標圧力値を圧力レギュレータR1~R5に送り、圧力レギュレータR1~R5は、圧力室25A~25E内の圧力が対応する目標圧力値に維持されるように動作する。
【0031】
研磨ヘッド1はウェーハWの複数の領域に対して、独立した研磨圧力をそれぞれ加えることができる。例えば、研磨ヘッド1は、ウェーハWの表面の異なる領域を異なる研磨圧力で研磨パッド2の研磨面2aに対して押し付けることができる。したがって、研磨ヘッド1は、ウェーハWの膜厚プロファイルを制御して、目標とする膜厚プロファイルを達成することができる。
【0032】
真空ラインL1,L2,L3,L4,L5は、気体移送ラインF1,F2,F3,F4,F5にそれぞれ接続されている。真空ラインL1,L2,L3,L4,L5には、真空弁V1,V2,V3,V4,V5がそれぞれ取り付けられている。真空弁V1,V2,V3,V4,V5は、電磁弁、電動弁、またはエアオペレート弁などのアクチュエータ駆動型弁である。真空弁V1~V5は動作制御部9に接続されており、真空弁V1~V5の動作は動作制御部9によって制御される。真空ラインL1,L2,L3,L4,L5を開くと、対応する圧力室25A,25B,25C,25D,25E内に真空が形成される。
【0033】
研磨ヘッド1がウェーハWを保持するときは、弾性膜34の接触部35がウェーハWに接触した状態で、真空弁V2,V3,V4を開き、圧力室25B,25C,25D内に真空を形成する。これら圧力室25B,25C,25Dを形成する接触部35の部位は上方に窪み、研磨ヘッド1は弾性膜34の吸盤効果によりウェーハWを吸着することができる。また、この圧力室25B,25C,25Dに圧縮気体を供給して吸盤効果を解除すると、研磨ヘッド1はウェーハWをリリースすることができる。
【0034】
図3は、
図1に示す研磨ヘッド1にウェーハを搬送する搬送装置の上面図である。
図3に示すように、ウェーハWは、搬送装置44によって研磨ヘッド1に搬送される。研磨ヘッド1は、
図3の実線で示す研磨位置P1と点線で示す受け渡し位置P2との間を移動可能とされている。より具体的には、ヘッドアーム15が支軸16を中心に回転することで、研磨ヘッド1は研磨位置P1と受け渡し位置P2との間を移動することができる。研磨位置P1は、研磨パッド2の研磨面2aの上方にあり、受け渡し位置P2は、研磨面2aの外側に位置している。
【0035】
搬送装置44は、ウェーハWが載置される搬送ステージ45と、搬送ステージ45を上下動させる昇降装置47と、搬送ステージ45および昇降装置47を一体に水平方向に移動させる水平移動装置49を備えている。研磨されるウェーハWは、搬送ステージ45上に置かれ、搬送ステージ45と共に水平移動装置49によって受け渡し位置P2に移動される。研磨ヘッド1が受け渡し位置P2にあるとき、昇降装置47は搬送ステージ45を上昇させる。研磨ヘッド1は搬送ステージ45上のウェーハWを保持し、ウェーハWと共に研磨位置P1に移動する。
【0036】
スラリー供給ノズル5は、回転する研磨パッド2の研磨面2aにスラリーを供給し、その一方で研磨ヘッド1は、ウェーハWを回転させながら、ウェーハWを研磨パッド2の研磨面2aに押し付け、ウェーハWを研磨面2aに摺接させる。ウェーハWの下面は、スラリーの化学的作用と、スラリーに含まれる砥粒の機械的作用により研磨される。
【0037】
ウェーハWの研磨後、研磨ヘッド1はウェーハWとともに受け渡し位置P2に移動する。そして、研磨されたウェーハWを搬送ステージ45に渡す。搬送ステージ45は、ウェーハWを次工程に移動させる。受け渡し位置P2には、研磨ヘッド1に液体(例えば純水などのリンス液)を供給して研磨ヘッド1を洗浄する洗浄ノズル53が配置されている。洗浄ノズル53は、研磨ヘッド1を向いている。ウェーハWをリリースした研磨ヘッド1は、洗浄ノズル53から供給される液体によって洗浄される。
【0038】
研磨ヘッド1の洗浄中、次に研磨されるウェーハは、搬送ステージ45によって研磨ヘッド1の下方の受け取り位置P2に移動される。研磨ヘッド1の洗浄が終わると、昇降装置47は、次のウェーハが載置された搬送ステージ45を上昇させる。そして、洗浄された研磨ヘッド1は、次のウェーハを保持し、研磨位置P1に移動する。このようにして、複数のウェーハが連続的に研磨される。
【0039】
しかしながら、研磨ヘッド1の洗浄中、次に研磨されるウェーハは研磨ヘッド1の下方の受け取り位置P2に移動されるため、ウェーハの上面に液体が落下する。ウェーハの上面に存在する液体は、
図30を参照して説明したように、研磨ヘッド1が適切な力をウェーハに加えることを妨げてしまう。1つの解決策は、研磨ヘッド1の洗浄が終了した後に、次のウェーハを受け取り位置P2に移動させることである。しかしながら、このような動作は研磨装置のスループットを低下させしてしまう。
【0040】
そこで、本実施形態では、次のようにしてウェーハの上面から液体を除去する。
図4は、ウェーハの上面から液体を除去するときの研磨ヘッド1を示す模式図である。
図4では、研磨ヘッド1の詳細な構成は省略されている。研磨されるウェーハWを保持する前、研磨ヘッド1の中心側の圧力室25A,25B,25C内の圧力を、外側の圧力室25D内の圧力よりも高くする。より具体的には、動作制御部9は、圧力レギュレータR1,R2,R3(
図2参照)に指令を発して、圧力室25A,25B,25C内に圧縮気体を供給し、その一方で、動作制御部9は、真空弁V4を開いて圧力室25D内に真空を形成する。
【0041】
一実施形態では、動作制御部9は、気体移送ラインF1,F2,F3に接続された大気開放弁(図示せず)を開いて、圧力室25A,25B,25C内を大気開放し、その一方で、動作制御部9は、真空弁V4を開いて圧力室25D内に真空を形成してもよい。さらに、一実施形態では、動作制御部9は、圧力レギュレータR1,R2,R3(
図2参照)に指令を発して、圧力室25A,25B,25C内に圧縮気体を供給し、その一方で、動作制御部9は、気体移送ラインF4に接続された大気開放弁(図示せず)を開いて、圧力室25D内を大気開放してもよい。
【0042】
圧力室25A,25B,25C内の圧力と、圧力室25D内の圧力との間の差は、弾性膜34の接触部35の中央部を膨らませ、接触部35の中央部をウェーハWに向かって突出させる。接触部35の中央部が突出した状態で、研磨ヘッド1はウェーハWに向かって下降し、弾性膜34をウェーハWの上面に接触させる。
図5に示すように、弾性膜34の中央部、すなわち接触部35の中央部は、最初にウェーハWの上面の中央部に接触する。弾性膜34は、ウェーハWの上面に存在している液体Qを外側に押し出す。
【0043】
さらに、研磨ヘッド1を下降させて、接触部35の大部分をウェーハWの上面に接触させる。より詳細には、
図6に示すように、弾性膜34の中央部がウェーハWの上面の中央部に接触している状態で、弾性膜34の外周部、すなわち接触部35の外周部をウェーハWの上面の外周部に接触させる。弾性膜34は、ウェーハWの上面に存在している液体Qをさらに外側に押し出し、液体QをウェーハWの上面から除去する。その後、研磨ヘッド1の弾性膜34は、ウェーハWの下面を研磨面2a上のスラリーの存在下で研磨面2aに摺接させ、スラリーの化学的作用とスラリーに含まれる砥粒の機械的作用により研磨する。
【0044】
このように、ウェーハWの上面に存在する液体Qは、中央部が突出した弾性膜34によりウェーハWの外側に移動され、ウェーハWの上面から除去される。したがって、研磨ヘッド1は、弾性膜34とウェーハWの上面との間に液体Qが実質的に存在しない状態で、ウェーハWを保持することができる。結果として、圧力室25A,25B,25C,25Dを形成する弾性膜34は、意図する力をウェーハWに加えることができ、研磨ヘッド1はウェーハWの所望の膜厚プロファイルを達成することができる。
【0045】
弾性膜34は柔軟であるため、圧力室25A,25B,25C内が低圧であっても、弾性膜34は容易に膨らみやすい。弾性膜34の膨らみが大きすぎると、弾性膜34がウェーハWを押し付けたときにウェーハWに過剰な負荷が掛かるおそれがある。圧力レギュレータR1,R2,R3により、圧力室25A,25B,25C内を低圧(例えば25hPa以下)に維持することは可能であるが、目標とする低い圧力にまで下げるのに長い時間がかかり、かつ圧力室25A,25B,25C内の圧力が安定しないことがある。
【0046】
そこで、一実施形態では、
図7に示すように、圧力レギュレータR1,R2,R3に代えて、エアシリンダ41と錘42との組み合わせを使用して、圧縮気体を圧力室25A,25B,25Cに送る。圧力室25A,25B,25Cは、気体移送ラインF1,F2,F3を介して共通のエアシリンダ41に連通している。エアシリンダ41は、鉛直姿勢に配置されている。研磨ヘッド1がウェーハWを保持する前に、錘42はエアシリンダ41のピストン41A上に置かれ、ピストン41Aを下方に押す。エアシリンダ41内の気体は、圧力室25A,25B,25C内に送り込まれるため、弾性膜34の中央部が膨らむ。
図4に示す実施形態と同様に、圧力室25Dには真空が形成される。一実施形態では、動作制御部9は、気体移送ラインF4に接続された大気開放弁(図示せず)を開いて、圧力室25D内を大気開放してもよい。
【0047】
弾性膜34の膨らみは、エアシリンダ41の直径とピストン41Aの行程距離で調整される。錘42が軽すぎると弾性膜34が膨らまずにピストン41Aが途中で止まってしまうため、適切な速度でピストン41Aが低下する錘42が使用される。本実施形態によれば、エアシリンダ41と錘42との組み合わせは、圧力室25A,25B,25C内の低圧を安定して維持することができ、結果として、弾性膜34の膨らみを適切に制御することができる。
【0048】
図8は、弾性膜34の他の実施形態を示す模式図である。この実施形態では、内壁部36a,36b,36cの縦方向の長さは、外壁部36dの縦方向の長さよりも長く、内壁部36a,36b,36cの下端は外壁部36dの下端よりも低い位置にある。内壁部36a,36b,36cと外壁部36dとの縦方向の長さの違いは、弾性膜34の接触部35の中央部をウェーハWに向かって突出させる。
【0049】
図9は、研磨ヘッド1の他の実施形態を示す模式図である。この実施形態では、キャリア31の下部は、内壁部36a,36b,36cが固定された第1面31aと、外壁部36dが固定された第2面31bを有している。第1面31aは第2面31bよりも低い位置にある。内壁部36a,36b,36cの下端は外壁部36dの下端よりも低い位置にある。キャリア31の第1面31aと第2面31bとの高さの違いは、弾性膜34の接触部35の中央部をウェーハWに向かって突出させる。
【0050】
図8および
図9に示す弾性膜34は、
図4乃至
図6に示す実施形態と同様に、ウェーハWの上面に接触するときに、ウェーハWの上面に存在している液体Qを外側に押し出し、液体QをウェーハWの上面から除去することができる。なお、
図8および
図9に示す実施形態では、圧力室25A,25B,25C内の圧力と、圧力室25D内の圧力との間に差を設けなくてもよい。具体的には、圧力レギュレータR1,R2,R3,R4は、圧力室25A,25B,25C,25D内の圧縮気体の圧力を同じに維持してもよい。
【0051】
次に、ウェーハWの上面から液体を除去する方法の他の実施形態について、
図10乃至
図13を参照して説明する。特に説明しない本実施形態の詳細は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0052】
図10に示すように、研磨ヘッド1をウェーハWの上面に向かって下降させる。ウェーハWの上面には液体Qが存在している。
図11に示すように、弾性膜34の接触部35をウェーハWの上面上の液体Qに接触させ、さらに弾性膜34の接触部35をウェーハWの上面に押し付ける。このとき、液体Qの一部は、ウェーハWの上面からこぼれ落ちる。
【0053】
図12に示すように、外側に位置する圧力室25Dから中心側に位置する圧力室25Bに向かう順序で(すなわち圧力室25D,25C,25Bの順に)、圧力室25D,25C,25B内に真空を順次形成する。圧力室25D,25C,25Bを構成する接触部35の部位は真空により上方に窪み、弾性膜34とウェーハWの上面との間に空間が形成される。ウェーハWの上面上の液体Qは、これら空間内に順次流入し、ウェーハWの外側に向かう液体Qの流れが形成される。
【0054】
その後、研磨ヘッド1はウェーハWを研磨パッド2の上方位置に運び、
図13に示すように、弾性膜34でウェーハWの下面を研磨パッド2の研磨面2aに対して押し付ける。このとき、動作制御部9は、圧力レギュレータR2,R3,R4に指令を発して、中心側に位置する圧力室25Bから外側に位置する圧力室25Dに向かう順序で(すなわち圧力室25B,25C,25Dの順に)圧力室25B,25C,25D内に圧縮気体を供給する。弾性膜34とウェーハWの上面との間の空間内に保持されていた液体Qは、弾性膜34の接触部35に押されてウェーハWの外側に移動し、ウェーハWの上面から除去される。
【0055】
その後、研磨ヘッド1の弾性膜34は、ウェーハWの下面を研磨面2a上のスラリーの存在下で研磨面2aに摺接させ、スラリーの化学的作用とスラリーに含まれる砥粒の機械的作用により研磨する。
【0056】
次に、ウェーハWの上面から液体を除去する方法の他の実施形態について、
図14乃至
図16を参照して説明する。特に説明しない本実施形態の詳細は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図14は、
図3に示す搬送装置44の変形例を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の詳細は、
図3に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0057】
図14に示すように、搬送装置44は、搬送ステージ45を傾ける傾動装置55を備えている。この傾動装置55は、昇降装置47に保持されており、搬送ステージ45と一体に上下動される。傾動装置55は、水平に延びる支持軸55aと、支持軸55aを回転させる回転装置55bを有している。支持軸55aは、搬送ステージ45に連結されており、回転装置55bは昇降装置47に固定されている。回転装置55bは、支持軸55aおよび搬送ステージ45を所定の角度だけ回転させることが可能に構成されている。回転装置55bは、サーボモータなどのアクチュエータ(図示せず)を備えている。
【0058】
搬送ステージ45上のウェーハWは、水平移動装置49によって受け渡し位置P2に移動される。研磨ヘッド1は、洗浄ノズル53から供給される液体によって洗浄される。研磨ヘッド1の洗浄に使用された液体は、搬送ステージ45上のウェーハWの上面に落下する。
図15は、
図14に示す矢印Aで示す方向から見た搬送装置44の図である。
図15に示すように、ウェーハWの上面には液体Qが存在する。そこで、
図16に示すように、傾動装置55は、ウェーハWが研磨ヘッド1に保持される前に、搬送ステージ45およびウェーハWを一体に傾ける。液体Qは、傾いたウェーハWの上面からこぼれ落ち、これにより液体QはウェーハWの上面から除去される。
【0059】
液体QがウェーハWの上面から除去された後、傾動装置55はウェーハWを再び水平姿勢に戻す。その後、ウェーハWは研磨ヘッド1に保持される。研磨ヘッド1はウェーハWを研磨パッド2の上方の研磨位置P1(
図3参照)に運び、弾性膜34でウェーハWの下面を研磨パッド2の研磨面2aに対して押し付ける。研磨ヘッド1の弾性膜34は、ウェーハWの下面を研磨面2a上のスラリーの存在下で研磨面2aに摺接させ、スラリーの化学的作用とスラリーに含まれる砥粒の機械的作用により研磨する。
【0060】
本実施形態によれば、ウェーハWの上面から液体Qが除去された後に、ウェーハWが研磨ヘッド1に保持される。したがって、ウェーハWの上面と研磨ヘッド1の弾性膜34との間に液体Qが存在しなく、弾性膜34は、意図する力をウェーハWに加えることができ、研磨ヘッド1はウェーハWの所望の膜厚プロファイルを達成することができる。
【0061】
図17および
図18は、ウェーハWの上面から液体を除去する方法のさらに他の実施形態を説明する模式図である。特に説明しない本実施形態の詳細は、
図3に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0062】
図17に示すように、搬送ステージ45上のウェーハWは、水平移動装置49によって受け渡し位置P2に移動される。研磨ヘッド1は、洗浄ノズル53から供給される液体によって洗浄される。研磨ヘッド1の洗浄に使用された液体は、搬送ステージ45上のウェーハWの上面に落下する。
【0063】
図18に示すように、ウェーハWが研磨ヘッド1に保持される前に、水平移動装置49は搬送ステージ45およびウェーハWを水平方向に揺り動かす。ウェーハWが揺り動かされると、ウェーハWの上面から液体Qがこぼれ落ち、これにより液体QはウェーハWの上面から除去される。一実施形態では、傾動装置55により搬送ステージ45およびウェーハWを傾けた状態で、水平移動装置49は搬送ステージ45およびウェーハWを水平方向に揺り動かしてもよい。さらに、一実施形態では、傾動装置55は設けなくてもよい。
【0064】
液体QがウェーハWの上面から除去された後、ウェーハWは研磨ヘッド1に保持される。研磨ヘッド1はウェーハWを研磨パッド2の上方の研磨位置P1(
図3参照)に運び、弾性膜34でウェーハWの下面を研磨パッド2の研磨面2aに対して押し付ける。研磨ヘッド1の弾性膜34は、ウェーハWの下面を研磨面2a上のスラリーの存在下で研磨面2aに摺接させ、スラリーの化学的作用とスラリーに含まれる砥粒の機械的作用により研磨する。
【0065】
本実施形態によれば、ウェーハWの上面から液体Qが除去された後に、ウェーハWが研磨ヘッド1に保持される。したがって、ウェーハWの上面と研磨ヘッド1の弾性膜34との間に液体Qが存在しなく、弾性膜34は、意図する力をウェーハWに加えることができ、研磨ヘッド1はウェーハWの所望の膜厚プロファイルを達成することができる。
【0066】
図19は、ウェーハWの上面から液体を除去する方法のさらに他の実施形態を説明する模式図である。特に説明しない本実施形態の詳細は、
図3に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0067】
図19に示すように、本実施形態の研磨装置は、受け渡し位置P2に配置された気体噴流ノズル57を備えている。気体噴流ノズル57は、水平方向に対して傾いており、受け渡し位置P2にある搬送ステージ45の上部を向いて、すなわち搬送ステージ45の上のウェーハWの上面を向いて配置されている。気体噴流ノズル57は、図示しない圧縮気体供給源に連結されている。本実施形態では、複数の気体噴流ノズル57が設けられているが、一実施形態では、1つの気体噴流ノズル57のみが設けられてもよい。
【0068】
搬送ステージ45上のウェーハWは、水平移動装置49によって受け渡し位置P2に移動される。研磨ヘッド1は、洗浄ノズル53から供給される液体によって洗浄される。研磨ヘッド1の洗浄に使用された液体は、搬送ステージ45上のウェーハWの上面に落下する。
図20に示すように、ウェーハWが研磨ヘッド1に保持される前に、気体噴流ノズル57は、気体の噴流をウェーハWの上面に送り、液体QをウェーハWの上面から除去する。
【0069】
液体QがウェーハWの上面から除去された後、ウェーハWは研磨ヘッド1に保持される。研磨ヘッド1はウェーハWを研磨パッド2の上方の研磨位置P1(
図3参照)に運び、弾性膜34でウェーハWの下面を研磨パッド2の研磨面2aに対して押し付ける。研磨ヘッド1の弾性膜34は、ウェーハWの下面を研磨面2a上のスラリーの存在下で研磨面2aに摺接させ、スラリーの化学的作用とスラリーに含まれる砥粒の機械的作用により研磨する。
【0070】
本実施形態によれば、ウェーハWの上面から液体Qが除去された後に、ウェーハWが研磨ヘッド1に保持される。したがって、ウェーハWの上面と研磨ヘッド1の弾性膜34との間に液体Qが存在しなく、弾性膜34は、意図する力をウェーハWに加えることができ、研磨ヘッド1はウェーハWの所望の膜厚プロファイルを達成することができる。
【0071】
図21は、ウェーハWの上面から液体を除去することができる弾性膜34の一実施形態を示す断面図である。
図21に示すように、弾性膜34は、その内部に形成された液体流路60を有している。より具体的には、弾性膜34の接触部35は、接触面35aで開口する複数の開口部61と、複数の開口部61に接続された横孔62を有している。弾性膜34の接触面35aは、ウェーハWの上面に接触される弾性膜34の一面である。開口部61は、中心側に位置する圧力室25Aの下方に設けられ、他の圧力室25B~25Dの下方には設けられていない。一実施形態では、開口部61は、圧力室25B~25Dの下方にも設けられてもよい。横孔62は、接触部35内を延びており、横孔62の外端は弾性膜34の外側面34aで開口している。したがって、弾性膜34の接触面35aと外側面34aは、開口部61および横孔62から構成される液体流路60によって連通している。
【0072】
図22に示すように、圧力室25A~25D内に圧縮気体を供給して弾性膜34を膨らませ、弾性膜34の接触面35aをウェーハWの上面に押し付ける。ウェーハWの上面に存在する液体Q(
図21参照)は、開口部61から液体流路60内に流入し、液体流路60を通って弾性膜34の外部に流出する。結果として、液体QはウェーハWの上面から除去される。
【0073】
液体QがウェーハWの上面から除去された後、ウェーハWは研磨ヘッド1に保持される。研磨ヘッド1はウェーハWを研磨パッド2の上方の研磨位置P1(
図3参照)に運び、弾性膜34でウェーハWの下面を研磨パッド2の研磨面2aに対して押し付ける。研磨ヘッド1の弾性膜34は、ウェーハWの下面を研磨面2a上のスラリーの存在下で研磨面2aに摺接させ、スラリーの化学的作用とスラリーに含まれる砥粒の機械的作用により研磨する。
【0074】
本実施形態によれば、研磨ヘッド1は、弾性膜34とウェーハWの上面との間に液体Qが実質的に存在しない状態で、ウェーハWを保持することができる。結果として、圧力室25A,25B,25C,25Dを形成する弾性膜34は、意図する力をウェーハWに加えることができ、研磨ヘッド1はウェーハWの所望の膜厚プロファイルを達成することができる。
【0075】
図23は、ウェーハWの上面から液体を除去することができる弾性膜34の他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の詳細は、
図21および
図22に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図23に示すように、液体流路60は、弾性膜34に接続された吸引ライン70に連通している。より具体的には、横孔62は、開口部61および吸引ライン70の両方に接続されている。横孔62の一端は開口部61に接続され、横孔62の他端は接続部35の上面35b(接続部35の接触面35aとは反対側の面)で開口している。
【0076】
吸引ライン70は、キャリア31を貫通して延びており、吸引ライン70の端部は接触部35の上面35bに接続されている。吸引ライン70は、液体流路60に連通しているが、圧力室25Aには連通していない。したがって、吸引ライン70は、圧力室25A内に真空を形成せずに、液体流路60内に真空を形成することができる。
【0077】
図24に示すように、圧力室25A~25D内に圧縮気体を供給して弾性膜34を膨らませ、弾性膜34の接触面35aをウェーハWの上面に押し付けながら、吸引ライン70によって液体流路60内に真空を形成する。ウェーハWの上面に存在する液体Q(
図23参照)は、開口部61から液体流路60内に吸引され、ウェーハWの上面から除去される。
【0078】
図25は、ウェーハWの上面から液体を除去することができる弾性膜34のさらに他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の詳細は、
図21および
図22に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図25に示すように、液体流路は、接触面35aに形成された複数の溝75から構成されている。
【0079】
図26は、
図25に示す弾性膜34の底面図である。
図26に示すように、複数の溝75は同心円状に配列された環状溝である。ただし、溝75の形状は本実施形態に限定されない。例えば、溝75は、互いに平行に配列された直線溝であってもよい。
【0080】
図27に示すように、圧力室25A~25D内に圧縮気体を供給して弾性膜34を膨らませ、弾性膜34の接触面35aをウェーハWの上面に押し付ける。ウェーハWの上面に存在する液体Q(
図25参照)は、液体流路としての溝75内に流入する。結果として、液体Qは、ウェーハWの上面から除去される。
【0081】
本実施形態では、溝75に一旦流入した液体Qが溝75から流出してしまうことを防ぐため、接触部35の内部での溝75の幅は、接触面35aでの溝75の幅よりも大きい。すなわち、溝75の入り口は狭く、溝75の内部は広くなっている。このような断面形状の溝75は、その内部に液体Qを保持しやすい。ウェーハWの上面に不規則に存在する液体を除去するため、溝75は、弾性膜34の接触面35aの全体に均一に分布してもよい。
【0082】
図21乃至
図27に示す弾性膜34は、3Dプリンター(立体印刷機)を用いて作成することができる。
【0083】
【0084】
上述した各実施形態に係る研磨ヘッド1は4つの圧力室25A,25B,25C,25Dを有しているが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。ウェーハの上面から液体を排除する上記実施形態は、4つよりも少ない圧力室を持つ研磨ヘッド、および4つよりも多い圧力室を持つ研磨ヘッドにも適用することができる。
【0085】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0086】
1 研磨ヘッド
2 研磨パッド
2a 研磨面
3 研磨テーブル
5 スラリー供給ノズル
6 テーブルモータ
11 研磨ヘッドシャフト
15 ヘッドアーム
25A,25B,25C,25D,25E 圧力室
31 キャリア
32 リテーナリング
34 弾性膜
35 接触部
35a 接触面
36a,36b,36c 内壁部
36d 外壁部
37 メンブレン(ローリングダイヤフラム)
40 ロータリージョイント
41 エアシリンダ
42 錘
44 搬送装置
45 搬送ステージ
47 昇降装置
49 水平移動装置
53 洗浄ノズル
55 傾動装置
57 気体噴流ノズル
60 液体流路
61 開口部
62 横孔
70 吸引ライン
75 溝
F1,F2,F3,F4,F5 気体移送ライン
R1,R2,R3,R4,R5 圧力レギュレータ
L1,L2,L3,L4,L5 真空ライン
V1,V2,V3,V4,V5 真空弁