(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】加工システム
(51)【国際特許分類】
B24B 49/02 20060101AFI20240617BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20240617BHJP
B24B 7/00 20060101ALI20240617BHJP
B24B 37/013 20120101ALI20240617BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
B24B49/02 Z
B24B49/10
B24B7/00 A
B24B37/013
H01L21/304 621B
H01L21/304 631
H01L21/304 622R
(21)【出願番号】P 2020025738
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 宰
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-122368(JP,A)
【文献】特開2016-201422(JP,A)
【文献】特開2003-300155(JP,A)
【文献】特開2017-163018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/02
B24B 49/10
B24B 7/00
B24B 37/013
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを所望の形状に加工する加工システムであって、
ワークを吸着保持するチャックと、
前記チャックを所定軌道上で回転移動させるインデックステーブルと、
平面から視て前記軌道上に
おいて前の加工位置と次の加工位置の間に設置されて、
前記前の加工位置から前記次の
加工位置に向かって回転
移動する前記チャック上で回転する加工後のワークの膜厚を非接触で測定する測定装置と、
前記測定装置の測定値に基づいて前記ワークの予想形状を演算し、前記ワークの予想形状と予め記憶された加工後のワークの目標形状とを比較して、加工の適否を判定する制御装置と、
を備えていることを特徴とする加工システム。
【請求項2】
前記ワークを研削する研削装置をさらに備え、
前記測定装置は、研削後のワークの膜厚を測定し、
前記制御装置は、研削後の前記ワークの予想形状と予め記憶された研削後のワークの目標形状とを比較して、研削加工の適否を判定することを特徴とする請求項1記載の加工システム。
【請求項3】
前記制御装置が、前記研削加工を適切でないと判定した場合、前記研削装置は、前記研削後のワークを再び研削加工することを特徴とする請求項2記載の加工システム。
【請求項4】
研削後の前記ワークを研磨する研磨装置をさらに備え、
前記測定装置は、研磨後のワークの膜厚を測定し、
前記制御装置は、研磨後の前記ワークの予想形状と予め記憶された研磨後のワークの目標形状とを比較して、研削及び研磨加工の適否を判定することを特徴とする請求項2記載の加工システム。
【請求項5】
前記制御装置が、前記研磨加工を適切でないと判定した場合、前記研磨装置は、前記研磨後のワークを再び研磨加工することを特徴とする請求項4記載の加工システム。
【請求項6】
ワークを所望の形状に加工する加工システムであって、
前記ワークを吸着保持するチャックと、
前記チャックを所定軌道上で回転移動させるインデックステーブルと、
平面から視て前記軌道上に
おいて前の第1加工位置と次の第2加工位置の間に設置されて、
前記第1
加工位置
から前記第2加工位置に向かって回転
移動する前記チャック上で回転する加工前の前記ワークの膜厚を非接触で測定する第1の測定装置と、
平面から視て前記軌道上に
おいて前の第3加工位置と次の第4加工位置の間に設置されて、
前記第
3加工位置
から前記第4加工位置に向かって回転
移動する前記チャック上で回転する加工後の前記ワークの膜厚を非接触で測定する第2の測定装置と、
前記第1の測定装置の測定値及び第2の測定装置の測定値の差分である予想加工量と予め記憶された加工の際の目標加工量とを比較して、加工の適否を判定する制御装置と、
を備えていることを特徴とする加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを薄く加工する加工システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野では、シリコンウェハ等の半導体ウェハ(以下、「ワーク」という)を薄く平坦に研削するものとして、回転する研削砥石の研削面をワークに押し当て、ワークの研削を行う研削装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、粗研削加工及び精研削加工の順にワークを加工し、保護テープ及びワーク裏面の洗浄を行った後に、静電容量センサによってワークの厚みを測定する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ワークの加工効率が向上するにしたがって、ワーク洗浄後のワーク厚み測定に要する時間がスループットに悪影響を及ぼすという問題があった。また、ワークがチャックテーブルから移送された後に厚み測定を行うため、ワーク厚が目標厚みより厚い場合であっても、ワークの再加工を行うことはできなかった。
【0006】
そこで、ワークの加工効率を損なうことなく短時間で加工の適否を判定するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る加工システムは、ワークを所望の形状に加工する加工システムであって、ワークを吸着保持するチャックと、前記チャックを所定軌道上で回転移動させるインデックステーブルと、平面から視て前記軌道上に設置されて、加工後のワークの膜厚を非接触で測定する測定装置と、前記測定装置の測定値に基づいて前記ワークの予想形状を演算し、前記ワークの予想形状と予め記憶された加工後のワークの目標形状とを比較して、加工の適否を判定する制御装置と、を備えている。
【0008】
この構成によれば、測定装置がワークの加工直後に速やかに膜厚を測定し、測定装置の測定値に基づいてワークの予想形状を演算することにより、加工システムの加工効率を損なうことなく、加工の適否を判定することができる。
【0009】
また、本発明に係る加工システムは、前記ワークを研削する研削装置をさらに備え、前記測定装置は、研削後のワークの膜厚を測定し、前記制御装置は、研削後の前記ワークの予想形状と予め記憶された研削後のワークの目標形状とを比較して、研削加工の適否を判定することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、測定装置が研削直後に速やかに膜厚を測定し、測定装置の測定値に基づいて研削後のワークの予想形状を演算することにより、加工システムの加工効率を損なうことなく、研削加工の適否を判定することができる。
【0011】
また、本発明に係る加工システムは、研削後の前記ワークを研磨する研磨装置をさらに備え、前記測定装置は、研磨後のワークの膜厚を測定し、前記制御装置は、研磨後の前記ワークの予想形状と予め記憶された研磨後のワークの目標形状とを比較して、研削及び研磨加工の適否を判定することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、測定装置が研磨直後に速やかに膜厚を測定し、測定装置の測定値に基づいて研磨後のワークの予想形状を演算することにより、加工システムの加工効率を損なうことなく、研削及び研磨加工の適否を判定することができる。
【0013】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る加工システムは、ワークを所望の形状に加工する加工システムであって、前記ワークを吸着保持するチャックと、前記チャックを所定軌道上で回転移動させるインデックステーブルと、平面から視て前記軌道上に設置されて、加工前の前記ワークの膜厚を非接触で測定する第1の測定装置と、平面から視て前記軌道上に設置されて、加工後の前記ワークの膜厚を非接触で測定する第2の測定装置と、前記第1の測定装置の測定値及び第2の測定装置の測定値の差分である予想加工量と予め記憶された加工の際の目標加工量とを比較して、加工の適否を判定する制御装置と、を備えている。
【0014】
この構成によれば、第2の測定装置がワークの加工直後に速やかに膜厚を測定し、第1の測定装置及び第2の測定装置の測定値に基づいて加工の際の予想加工量を演算することにより、加工システムの加工効率を損なうことなく、加工の適否を判定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、加工システムの加工効率を損なうことなく、加工の適否を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る加工システムを示す平面図。
【
図2】ワーク上における測定装置の測定点の位置関係を示す模式図。
【
図3】測定装置の測定値に基づいて算出されたワークの断面形状を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0018】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0019】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0020】
図1は、加工システム1の基本的構成を示す平面図である。加工システム1は、ワークWの研削加工及び研磨加工を連続して行うものである。なお、加工システム1は、研削加工又は研磨加工の何れか一方のみを行うものであっても構わない。
【0021】
加工システム1には、プラットフォームステージST1、粗研削ステージST2、精研削ステージST3及び研磨ステージST4の4つのステージが設けられている。
【0022】
加工システム1は、
図1の紙面を時計回りに回動可能なインデックステーブル2と、インデックステーブル2の回転軸2aを中心に同心円上で等間隔に離間して配置された4つのチャックテーブル3と、を備えている。インデックステーブル2が、90°ずつステップ回転することにより、チャックテーブル3は、プラットフォームステージST1、粗研削ステージST2、精研削ステージST3、研磨ステージST4の順に移動可能である。
【0023】
チャックテーブル3は、回転テーブル31の上面にアルミナ等の多孔質材料からなる図示しない吸着体が埋設されている。チャックテーブル3は、内部を通って表面に延びる図示しない管路を備えている。管路は、図示しないロータリージョイントを介して真空源、圧縮空気源又は給水源に接続されている。真空源が起動すると、チャックテーブル3に載置されたワークがチャックテーブル3に吸着保持される。また、圧縮空気源又は給水源が起動すると、ワークとチャックテーブル3との吸着が解除される。
【0024】
回転テーブル31は、図示しないチャックスピンドルに接続されている。チャックスピンドルは、回転テーブル31に垂直な回転軸回りに回転駆動可能に構成されている。なお、チャックテーブル3は、回転テーブル31を傾斜させる図示しないチルト機構を備えていても構わない。
【0025】
プラットフォームステージST1では、研削前のワークWが図示しない搬送アームによってチャックテーブル3上に搬送される。ワークWには、その向きを所定方向に一致させる位置出しが予め行われている。
【0026】
粗研削ステージST2には,粗研削装置4が設けられている。粗研削装置4は、図示しない粗研削砥石と、粗研削砥石が下端に取り付けられるとともに粗研削砥石を回転可能に支持する第1のスピンドル41と、第1のスピンドル41を鉛直方向に昇降させる第1のスピンドル送り機構42と、を備えている。
【0027】
粗研削砥石には、例えば#600のカップ型砥石が用いられる。第1のスピンドル送り機構42は、第1のスピンドル41の移動方向を案内する2本のリニアガイド43と、第1のスピンドル41を昇降させるボールネジスライダ機構44と、で構成されている。
【0028】
また、粗研削装置4には、第1の接触式厚み測定装置45が設けられている。第1の接触式厚み測定装置45は、先端に接触子が設けられた一対の検出アーム46、47を備えている。
【0029】
粗研削加工中に、検出アーム46の接触子がワークWの上面に当接し、検出アーム47の接触子がチャックテーブル3の上面に当接することにより、検出アーム46、47の各接触子が検出する高さの差分からワークWの厚みを測定可能である。なお、第1の接触式厚み測定装置45が測定したワークWの厚み(総厚)には、ワークWの一面に形成されたデバイスや一面に貼着された保護テープ等の厚みが含まれている。
【0030】
精研削ステージST3には、精研削装置5が設けられている。精研削装置5は、図示しない精研削砥石と、精研削砥石が下端に取り付けられるとともに精研削砥石を回転可能に支持する第2のスピンドル51と、第2のスピンドル51を鉛直方向に昇降させる第2のスピンドル送り機構52と、を備えている。
【0031】
精研削砥石には、例えば#4000のカップ型砥石が用いられる。第2のスピンドル送り機構52は、第2のスピンドル51の移動方向を案内する2本のリニアガイド53と、第2のスピンドル51を昇降させるボールネジスライダ機構54と、で構成されている。
【0032】
また、精研削装置5には、第2の接触式厚み測定装置55が設けられている。第2の接触式厚み測定装置55は、先端に接触子が設けられた一対の検出アーム56、57を備えている。
【0033】
精研削加工中に、検出アーム56の接触子がワークWの上面に当接し、検出アーム57の接触子がチャックテーブル3の上面に当接することにより、検出アーム56、57の各接触子が検出する高さの差分からワークWの厚みを測定可能である。なお、第2の接触式厚み測定装置55が測定したワークWの厚み(総厚)には、ワークWの一面に形成されたデバイスや裏面に貼着された保護テープ等の厚みが含まれている。
【0034】
研磨ステージST4には、研磨装置6が設けられている。研磨装置6は、図示しない研磨パッドが下端に取り付けられた研磨ヘッド61と、研磨ヘッド61が下端に取り付けられるとともに研磨ヘッド61を回転可能に支持する第3のスピンドル62と、第3のスピンドル62を鉛直方向に昇降させる図示しない第3のスピンドル送り機構と、を備えている。
【0035】
加工システム1には、膜厚測定装置7が設けられている。膜厚測定装置7は、ワークWの厚み(膜厚)を非接触で測定する。なお、膜厚測定装置7が測定したワークWの膜厚には、ワークWの一面に形成されたデバイスや一面に貼着された保護テープ等の厚みは含まれない。
【0036】
膜厚測定装置7は、加工システム1内に架設されたフレーム1aに固定され、インデックステーブル2の上方に設置されている。膜厚測定装置7がワークWの膜厚を測定する測定点は、平面から視てチャックテーブル3の中心軸の回転軌道O上に設定されている。
【0037】
図2は、ワークW上における膜厚測定装置7の測定点の位置関係を示す模式図である。なお、
図2(a)では、インデックステーブル2の回転数を20deg/s、チャックテーブル3の回転数を400rpm、膜厚測定装置7のサンプリング周期を4msecに設定した場合の膜厚測定装置7の測定点の位置関係を例示している。ワークWは、膜厚測定装置7の直下を回転しながら通過するため、膜厚測定装置7の測定点の軌跡は、ワークWの中心を含みワークW全面に拡がる。なお、膜厚測定装置7の測定点の軌跡は、インデックステーブル2の回転数、チャックテーブル3の回転数、膜厚測定装置7aのサンプリング周期によって適宜変更可能である。
【0038】
また、膜厚測定装置7は、測定点における冷却水が略一定の厚みに均されるように、ワークWの表面に向けてエアーを吹き付けるノズルを備えているのが好ましい。
【0039】
膜厚測定装置7は、インデックステーブル2の回転方向において、各ステージST1~ST4の上流側にそれぞれ1台ずつ設けられている。以下、4台の膜厚測定装置7を区別する場合には、符号7a~7dを付して区別する。
【0040】
加工システム1の動作は、制御装置8によって制御される。制御装置8は、加工システム1を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。制御装置8は、例えば、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御装置8の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作することにより実現されても良い。
【0041】
また、制御装置8は、膜厚測定装置7の測定値に基づいてワークの形状を演算することができる。
図3は、膜厚測定装置7の測定値に基づいて制御装置8が演算したワークWの形状である。
図3は、縦軸がワークWの膜厚、横軸がワークWの径方向寸法(-150~150mm)に設定している。
図3に図示されたワークWは、ワークWの周縁がワークWの回転中心よりも厚い中凹形状であることが分かる。
【0042】
次に、ワークWを加工する手順について説明する。
【0043】
[粗研削]
プラットフォームステージST1にて、ワークWがチャックテーブル3上に載置される。そして、真空源が起動すると、ワークWとチャックテーブル3との間に負圧が供給されて、ワークWがチャックテーブル3に吸着保持される。
【0044】
次に、インデックステーブル2が回転してチャックテーブル3が粗研削ステージST2に向けて移動する際に、膜厚測定装置7aが、直下を回転しながら通過する粗研削加工前のワークWの膜厚を測定する。
【0045】
チャックテーブル3が粗研削ステージST2に移動し、ワークWに対する粗研削加工が行われる。粗研削加工では、粗研削砥石及びチャックテーブル3をそれぞれ回転させた状態で、粗研削砥石の研削面をワークWに押し当てて、ワークWの粗研削を行う。第1の接触式厚み測定装置45の測定値が所望の厚みに達すると、粗研削装置4は、粗研削を終了する。
【0046】
次に、インデックステーブル2が回転して、チャックテーブル3が精研削ステージST3に向けて移動する際に、膜厚測定装置7bが、直下を回転しながら通過する精研削加工前のワークWの膜厚を測定する。
【0047】
制御装置8が、膜厚測定装置7bの測定値に基づいて、粗研削加工後のワークWの予測形状を演算する。
【0048】
そして、制御装置8が、粗研削加工後のワークWの予測形状と予め記憶された粗研削後のワークWの目標形状とを比較して、ワークWが適切に粗研削加工されたか否かを判定する。
【0049】
このような判定は、例えば、粗研削加工後のワークWの予想形状における平均膜厚が、粗研削加工後のワークWの目標形状における平均膜厚に対して所定の誤差内に収まっているか否か等により行われることが考えられるが、これに限定されるものではない。
【0050】
ワークWの予測形状が目標形状に達している場合には、粗研削加工が適切に行われたと判定し、ワークWの予測形状が目標形状に達していない場合には、粗研削加工が不十分であると判定する。
【0051】
なお、粗研削加工の適否は、制御装置8が、膜厚測定装置7a、7bの測定値に基づいて、粗研削加工前のワークWの予測形状及び粗研削加工後のワークWの予測形状をそれぞれ演算し、各予測形状の差分から得られる粗研削加工における予想加工量から、粗研削加工の適否を判定するように構成しても構わない。
【0052】
この場合には、制御装置8に粗研削におけるワークWの目標研削量が予め記憶され、制御装置8が、粗研削加工における予想加工量と目標研削量とを比較して、粗研削加工の適否を判定し、予想加工量が目標研削量に達している場合には、粗研削加工が適切に行われたと判定し、予想加工量が目標研削量に達していない場合には、粗研削加工が不十分であると判定する。
【0053】
なお、第1の接触式厚み測定45の測定値と膜厚測定装置7aとを用いれば、加工条件(加工レシピ)の整合性を確認することができる。具体的には、粗研削加工前に膜厚測定装置7aが測定したワークWの総厚(Si層の膜厚、デバイス層厚及び保護テープ厚の和)と膜厚測定装置7aが測定したワークWのSi層の膜厚の差分から、Si層を除いたワークWの厚みが得られるため、加工レシピに含まれる各種設定値が適切か否かを事前に確認することができる。
【0054】
そして、粗研削加工が不十分であると判定された場合には、インデックステーブル2が
図1の反時計回りに回転し、チャックテーブル3が粗研削ステージST2に戻り、ワークWを再び粗研削加工する。
【0055】
[精研削]
粗研削加工が適切に行われたと判定された場合には、インデックステーブル2が回転して、チャックテーブル3が精研削ステージST3に移動し、ワークWに対する精研削加工が行われる。精研削加工では、精研削砥石及びチャックテーブル3をそれぞれ回転させた状態で、精研削砥石の研削面をワークWに押し当てて、ワークWの精研削を行う。第2の接触式厚み測定装置55の測定値が所望の厚みに達すると、精研削装置5は、精研削を終了する。
【0056】
次に、インデックステーブル2が回転して、チャックテーブル3が研磨ステージST4に向けて移動する際に、膜厚測定装置7cが、直下を回転しながら通過する研磨加工前のワークWの膜厚を測定する。
【0057】
制御装置8が、膜厚測定装置7cの測定値に基づいて、精研削加工後のワークWの予測形状を演算する。
【0058】
そして、制御装置8が、精研削加工後のワークWの予測形状と予め記憶された精研削後のワークWの目標形状とを比較して、ワークWが適切に精研削加工されたか否かを判定する。このような判定は、例えば、精研削加工後のワークWの予想形状における平均膜厚が、精研削加工後のワークWの目標形状における平均膜厚に対して所定の誤差内に収まっているか否か等により行われることが考えられるが、これに限定されるものではない。
【0059】
予測形状が目標形状に達している場合には、精研削加工が適切に行われたと判定し、予測形状が目標形状に達していない場合には、精研削加工が不十分であると判定する。
【0060】
なお、粗研削加工の適否は、制御装置8が、膜厚測定装置7b、7cの測定値に基づいて、精研削加工前のワークWの予測形状及び精研削加工後のワークWの予測形状をそれぞれ演算し、各予測形状の差分から得られる精研削加工における予想加工量から、精研削加工の適否を判定するように構成しても構わない。
【0061】
この場合には、制御装置8に精研削におけるワークWの目標研削量が予め記憶され、制御装置8が、精研削加工における予想加工量と目標研削量とを比較して、精研削加工の適否を判定し、予想加工量が目標研削量に達している場合には、精研削加工が適切に行われたと判定し、予想加工量が目標研削量に達していない場合には、精研削加工が不十分であると判定する。
【0062】
そして、精研削加工が不十分であると判定された場合には、インデックステーブル2が
図1の反時計回りに回転し、チャックテーブル3が精研削ステージST3に戻り、ワークWを再び精研削加工する。
【0063】
なお、粗研削加工及び粗研削加工の適否判定は、一括して行っても構わない。具体的には、制御装置8が、膜厚測定装置7a、7cの測定値に基づいて、粗研削加工前のワークWの予測形状及び精研削加工後のワークWの予測形状をそれぞれ演算し、各予測形状の差分から得られる研削加工(粗研削加工及び精研削加工)における予想加工量から、研削加工の適否を判定する。
【0064】
この場合、制御装置8が、研削加工における予想加工量と予め記憶された研削加工におけるワークWの目標研削量とを比較して、研削加工の適否を判定し、予想加工量が目標研削量に達している場合には、研削加工が適切に行われたと判定し、予想加工量が目標研削量に達していない場合には、研削加工が不十分であると判定する。
【0065】
そして、研削加工が不十分であると判定された場合には、インデックステーブル2が
図1の時計回りに回転し、チャックテーブル3が粗研削ステージST2又は精研削ステージST3に戻り、ワークWを再び研削加工する。
【0066】
[研磨]
精研削加工が適切に行われたと判定された場合には、インデックステーブル2が回転して、チャックテーブル3が研磨ステージST4に移動し、ワークWに対する研磨加工が行われる。研磨加工では、研磨パッド及びチャックテーブル3をそれぞれ回転させた状態で、研磨パッドの下面をワークWに押し当てて、ワークWの研磨を行う。
【0067】
そして、インデックステーブル2が回転して、チャックテーブル3がプラットフォームステージST1に向けて移動する際に、膜厚測定装置7dが、ワークWの膜厚を測定する。
【0068】
制御装置8は、膜厚測定装置7dの測定値に基づいて、研磨加工後のワークWの予測形状を演算する。また、制御装置8が、ワークWの予想形状と予め記憶された研磨加工後のワークWの目標形状とを比較して、ワークWが所望の形状に加工されたか否かを判定する。このような判定は、例えば、研磨加工後のワークWの予想形状における平均膜厚が、研磨加工後のワークWの目標形状における平均膜厚に対して所定の誤差内に収まっているか否か等により行われることが考えられるが、これに限定されるものではない。
【0069】
予測形状が目標形状に達している場合には、研磨が適切に行われたと判定し、予測形状が目標形状に達していない場合には、研磨が不十分であると判定する。
【0070】
なお、制御装置8は、膜厚測定装置7c、7dの測定値に基づいて、研磨加工前のワークWの予測形状及び研磨加工後のワークWの予測形状をそれぞれ演算し、各予測形状の差分から得られる予想研磨量から、研磨加工の適否を判定するように構成しても構わない。
【0071】
この場合には、制御装置8に研磨加工におけるワークWの目標研磨量が予め記憶され、制御装置8が、研磨加工における予想研磨量と目標研磨量とを比較して、研磨加工の適否を判定し、予想研磨量が目標研磨量に達している場合には、研磨加工が適切に行われたと判定し、予想研磨量が目標研磨量に達していない場合には、研磨加工が不十分であると判定する。
【0072】
そして、研磨加工が不十分であると判定された場合には、インデックステーブル2が
図1の反時計回りに回転し、ワークWを再び研磨加工する。
【0073】
そして、制御装置8が、ワークWが目標形状に加工されたと判断した場合には、真空源が停止し、給水源又は圧縮空気源が起動してワークWとチャックテーブル3との吸着が解除される。
【0074】
このようにして、加工システム1の稼働率を妨げることなく、ワークWの膜厚を加工直後に速やかに測定することができる。
【0075】
また、膜厚測定装置7a~7dが、ワークWとチャックテーブル3との吸着を解除することなくワークWの膜厚測定を行い、判定の結果、ワークWの予想形状が目標形状より厚いと判断された場合には、再びワークWを適宜研削又は研磨することにより、ワークWを高精度に加工することができる。
【0076】
また、ワークWの予想形状から読み取れる加工の傾向(中凸、中凹等)が存在する場合には、その傾向をキャンセルするように、チャックテーブル3を傾斜させて加工条件を補正しても構わない。
【0077】
また、膜厚測定装置7a、7bの測定値から得られる粗研削加工におけるワークWの予想研削量を予め設定された粗研削加工の加工レシピと比較することで、その後に加工されるワークWの粗研削加工での研削量が最適化されるため、ワークWの強度を安定させることができる。
【0078】
また、膜厚測定装置7b、7cの測定値から得られる精研削加工におけるワークWの予想研削量を予め設定された精研削加工の加工レシピと比較することで、その後に加工されるワークWの精研削加工での研削量が最適化されるため、ワークWの強度を安定させることができる。
【0079】
なお、加工システム1は、4台の膜厚測定装置7a~7d全てを備えたものに限定されず、所望のタイミングでワークWの膜厚測定を実行可能な組み合わせのみを選択しても構わない。
【0080】
例えば、個別の加工の適否を判定せずに、研削加工及び研磨加工を終えたワークWの形状のみに基づいて加工全体の適否を判定することが考えられる。具体的には、制御装置8が、膜厚測定装置7dの測定値のみに基づいて研磨加工後のワークWの予測形状を演算し、ワークWの予想形状と予め記憶された研磨加工後のワークWの目標形状とを比較して、ワークWが所望の形状に加工されたか否かを判定することで、加工全体の適否を判定することが考えられる。
【0081】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。また、上述した実施形態及び各変形例は、互いに組み合わせても構わない。
【符号の説明】
【0082】
1 :加工システム
2 :インデックステーブル
2a :回転軸
3 :チャックテーブル
31 :回転テーブル
4 :粗研削装置
41 :第1のスピンドル
42 :第1のスピンドル送り機構
43 :(粗研削装置の)リニアガイド
44 :(粗研削装置の)ボールネジスライダ機構
45 :第1の接触式厚み測定装置
46、47:検出アーム
5 :精研削装置
51 :第2のスピンドル
52 :第2のスピンドル送り機構
53 :(精研削装置の)リニアガイド
54 :(精研削装置の)ボールネジスライダ機構
55 :第2の接触式厚み測定装置
56、57 :検出アーム
6 :研磨装置
61 :研磨ヘッド
62 :第3のスピンドル
7、7a~7d:膜厚測定装置
8 :制御装置
ST1:プラットフォームステージ
ST2:粗研削ステージ
ST3:精研削ステージ
ST4:研磨ステージ
W :ワーク