(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】ポジ型感光性樹脂組成物、パターニングされたレジスト膜の形成方法、及びパターニングされたレジスト膜
(51)【国際特許分類】
G03F 7/022 20060101AFI20240617BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20240617BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
G03F7/022 601
C09K3/00 T
G03F7/20 521
G03F7/20 501
(21)【出願番号】P 2020086807
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】松本 直純
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-029209(JP,A)
【文献】特開2000-029208(JP,A)
【文献】特開2000-314959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性樹脂(A)、及びキノンジアジド基含有化合物(B)を含み、
前記キノンジアジド基含有化合物(B)が、下記式(B1):
【化1】
(式(B1)中、Dは、それぞれ独立に、水素原子、又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基であり、4個のDのうちの少なくとも1つが1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基である。)
で表される化合物と、下記式(B2):
【化2】
(式(B2)中、R
b1は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基であり、R
b2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は炭素原子数3以上6以下のシクロアルキル基であり、Dは、それぞれ独立に、水素原子、又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基であり、4個のDのうちの少なくとも1つが1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基である。)
で表される化合物と、
下記式(B3):
【化3】
(式(B3)中、R
b3
は、それぞれ独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基であり、Dは、それぞれ独立に、水素原子、又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基であり、2+m個のDのうちの少なくとも1つが1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基であり、l、及びmは、それぞれ独立に1又は2である。)
で表される化合物、及び/又は下記式(B4):
【化4】
(式(B4)中、Dは、それぞれ独立に、水素原子、又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基であり、3個のDのうちの少なくとも1つが1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基である。)
で表される化合物を含み、
前記式(B1)で表される化合物の質量をM1とし、前記式(B2)で表される化合物の質量をM2とする場合に、M1/M2が1.2以上5.0以下である、ポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
アルカリ可溶性樹脂(A)、及びキノンジアジド基含有化合物(B)を含み、
前記キノンジアジド基含有化合物(B)が、下記式(B1):
【化5】
(式(B1)中、Dは、それぞれ独立に、水素原子、又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基であり、4個のDのうちの少なくとも1つが1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基である。)
で表される化合物と、下記式(B2):
【化6】
(式(B2)中、R
b1
は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基であり、R
b2
は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は炭素原子数3以上6以下のシクロアルキル基であり、Dは、それぞれ独立に、水素原子、又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基であり、4個のDのうちの少なくとも1つが1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基である。)
で表される化合物と、を含み、
前記式(B1)で表される化合物の質量をM1とし、前記式(B2)で表される化合物の質量をM2とする場合に、M1/M2が1.2以上5.0以下であり、
前記キノンジアジド基含有化合物(B)の質量に対する、前記M1と前記M2との和の比率が、20質量%以上50質量%以下である、ポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記キノンジアジド基含有化合物(B)が、さらに、下記式(B3):
【化7】
(式(B3)中、R
b3は、それぞれ独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基であり、Dは、それぞれ独立に、水素原子、又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基であり、2+m個のDのうちの少なくとも1つが1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基であり、l、及びmは、それぞれ独立に1又は2である。)
で表される化合物、及び/又は下記式(B4):
【化8】
(式(B4)中、Dは、それぞれ独立に、水素原子、又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基であり、3個のDのうちの少なくとも1つが1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基である。)
で表される化合物を含む、請求項
2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記キノンジアジド基含有化合物(B)が、前記式(B3)で表される化合物、及び前記式(B4)で表される化合物を含む、請求項
3に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記キノンジアジド基含有化合物(B)の質量に対する、前記M1と前記M2との和の比率が、20質量%以上50質量%以下である、請求項
1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板に塗布して塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜を位置選択的に露光する工程と、
露光された塗布膜を現像液により現像する工程と、
を含む、パターニングされたレジスト膜の形成方法。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物からなる、パターニングされたレジスト膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物、パターニングされたレジスト膜の形成方法、及びパターニングされたレジスト膜に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に配線や端子を形成する方法として、レジストパターンをマスクパターンとして用いて金属層のエッチングを行ったり、レジストパターンをめっき用の鋳型パターンとして用いてめっきを行ったりする方法が知られている。
【0003】
基板上に配線や端子を形成する際にレジストパターンを形成する方法としては、ネガ型の感光性組成物からなるドライフィルムを用いて基板上に感光性組成物層を形成し、当該感光性組成物層を露光及び現像する方法が一般的である。しかし、ネガ型の感光性組成物を用いる場合には、解像性が不十分であったり、レジストパターンを基板から剥離させ難い場合があったりする等の問題がある。
【0004】
このため、上記の課題を解決する方法としては、解像性が良好であり、基板からの剥離が比較的容易であるポジ型の感光性組成物を用いてレジストパターンを形成する方法が挙げられる。
金属からなる配線や端子等を形成するために使用できるポジ型の感光性組成物としては、例えば、クレゾールノボラック樹脂等のアルカリ可溶性ノボラック樹脂と、感光剤と、ベンゾトリアゾール系化合物とを含む感光性組成物が知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されるようなポジ型の感光性組成物では、優れた焦点深度(DOF)特性と、現像残渣をほとんど発生させることなく微細なパターンを形成できる優れた解像性との両立が難しい。このため、特許文献1に記載されるようなポジ型の感光性組成物への、優れた焦点深度特性、及び優れた解像性の付与が望まれている。
また、感光性組成物には、一般的に高感度化が要求される。ところが、通常、感光性組成物を高感度化させると、焦点深度特性、及び解像性の低下が起こりやすい。このため、高感度の感光性組成物では、優れた焦点深度特性と優れた解像性との両立が、特に望まれる。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、優れた焦点深度特性と、優れた解像性とを兼ね備えるポジ型感光性樹脂組成物と、当該ポジ型感光性樹脂組成物を用いるパターニングされたレジスト膜の形成方法と、前述のポジ型感光性樹脂組成物からなるパターニングされたレジスト膜とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、アルカリ可溶性樹脂(A)と、キノンジアジド基含有化合物(B)とを含むポジ型感光性樹脂組成物において、特定の構造の2種のキノンジアジド基含有化合物を特定の比率で組み合わせて含むキノンジアジド基含有化合物(B)を用いることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
本発明の第1の態様は、アルカリ可溶性樹脂(A)、及びキノンジアジド基含有化合物(B)を含み、
キノンジアジド基含有化合物(B)が、下記式(B1):
【化1】
(式(B1)中、Dは、それぞれ独立に、水素原子、又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基であり、4個のDのうちの少なくとも1つが1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基である。)
で表される化合物と、下記式(B2):
【化2】
(式(B2)中、R
b1は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基であり、R
b2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は炭素原子数3以上6以下のシクロアルキル基であり、Dは、それぞれ独立に、水素原子、又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基であり、4個のDのうちの少なくとも1つが1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基である。)
で表される化合物と、を含み、
式(B1)で表される化合物の質量をM1とし、式(B2)で表される化合物の質量をM2とする場合に、M1/M2が1.2以上5.0以下である、ポジ型感光性樹脂組成物である。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様にかかるポジ型感光性樹脂組成物を基板に塗布して塗布膜を形成する工程と、
塗布膜を位置選択的に露光する工程と、
露光された塗布膜を現像液により現像する工程と、
を含む、パターニングされたレジスト膜の形成方法である。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1の態様にかかるポジ型感光性樹脂組成物からなる、パターニングされたレジスト膜である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた焦点深度特性と、優れた解像性とを兼ね備えるポジ型感光性樹脂組成物と、当該ポジ型感光性樹脂組成物を用いるパターニングされたレジスト膜の形成方法と、前述のポジ型感光性樹脂組成物からなるパターニングされたレジスト膜とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
≪ポジ型感光性樹脂組成物≫
ポジ型感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(A)と、キノンジアジド基含有化合物(B)とを含む。
キノンジアジド基含有化合物(B)は、下記式(B1):
【化3】
(式(B1)中、Dは、それぞれ独立に、水素原子、又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基であり、4個のDのうちの少なくとも1つが1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基である。)
で表される化合物と、下記式(B2):
【化4】
(式(B2)中、R
b1は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基であり、R
b2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は炭素原子数3以上6以下のシクロアルキル基であり、Dは、それぞれ独立に、水素原子、又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基であり、4個のDのうちの少なくとも1つが1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基である。)
で表される化合物と、を含む。
キノンジアジド基含有化合物(B)において、式(B1)で表される化合物の質量をM1とし、式(B2)で表される化合物の質量をM2とする場合に、M1/M2は、1.2以上5.0以下である。
【0014】
ポジ型感光性樹脂組成物が、かかる比率で式(B1)で表される化合物と、式(B2)で表される化合物とを含むことにより、ポジ型感光性樹脂組成物が、優れた焦点深度特性と、優れた解像性とを兼ね備える。
以下、ポジ型感光性樹脂組成物に含まれる、必須、又は任意の成分について説明する。
【0015】
<アルカリ可溶性樹脂(A)>
アルカリ可溶性樹脂(A)としては、カルボキシ基やフェノール性水酸基等のアルカリ可溶性基を有する樹脂であって、ポジ型感光性樹脂組成物に所望する現像特性を付与し得る樹脂を特に限定なく用いることができる。
アルカリ可溶性樹脂(A)の好適な例としては、例えば、
フェノール類と、アルデヒド類及び/又はケトン類とを、酸性触媒存在下に縮合させて得られるノボラック樹脂;
ヒドロキシスチレンの単独重合体や、ヒドロキシスチレンと他のスチレン系単量体との共重合体、ヒドロキシスチレンとアクリル酸又はメタクリル酸あるいはその誘導体との共重合体等のヒドロキシスチレン系樹脂;
(メタ)アクリル酸とその誘導体との共重合体である(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0016】
これらの中では、耐熱性が良好で、比較的安価に合成又は入手可能である点でノボラック樹脂が好ましい。以下、ノボラック樹脂について説明する。
【0017】
ノボラック樹脂としては、従来からポジ型感光性樹脂組成物に配合されている種々のノボラック樹脂を用いることができる。ノボラック樹脂としては、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物(以下、単に「フェノール類」という。)とアルデヒド類とを酸触媒下で付加縮合させることにより得られるものが好ましい。
【0018】
・フェノール類
フェノール類としては、例えば、フェノール;o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール等のクレゾール類;2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール等のキシレノール類;o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール等のエチルフェノール類;2-イソプロピルフェノール、3-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、o-ブチルフェノール、m-ブチルフェノール、p-ブチルフェノール、並びにp-tert-ブチルフェノール等のアルキルフェノール類;2,3,5-トリメチルフェノール、及び3,4,5-トリメチルフェノール等のトリアルキルフェノール類;レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、及びフロログリシノール等の多価フェノール類;アルキルレゾルシン、アルキルカテコール、及びアルキルハイドロキノン等のアルキル多価フェノール類(いずれのアルキル基も炭素数1以上4以下である。);α-ナフトール;β-ナフトール;ヒドロキシジフェニル;並びにビスフェノールA等が挙げられる。これらのフェノール類は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
これらのフェノール類の中でも、m-クレゾール及びp-クレゾールが好ましく、m-クレゾールとp-クレゾールとを併用することがより好ましい。この場合、両者の配合割合を調整することにより、ポジ型感光性樹脂組成物としての感度や、形成される被覆樹脂層17の耐熱性等の諸特性を調節することができる。m-クレゾールとp-クレゾールの配合割合は特に限定されるものではないが、m-クレゾール/p-クレゾールの質量比で、3/7以上8/2以下が好ましい。m-クレゾールの割合が3/7以上であると、ポジ型感光性樹脂組成物としての感度を向上させることができ、8/2以下であると、感光性樹脂組成物を用いて形成されるレジスト膜の耐熱性を向上させることができる。
【0020】
・アルデヒド類
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、及びアセトアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒド類は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
・酸触媒
酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、及び亜リン酸等の無機酸類;蟻酸、シュウ酸、酢酸、ジエチル硫酸、及びパラトルエンスルホン酸等の有機酸類;並びに酢酸亜鉛等の金属塩類等が挙げられる。これらの酸触媒は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
・分子量
ノボラック樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw;以下、単に「重量平均分子量」ともいう。)は、ポジ型感光性樹脂組成物の現像性、解像性等の観点から、1000以上が好ましく、2000以上がより好ましく、3000以上がさらに好ましく、また、50000以下が好ましく、40000以下がより好ましく、30000以下がさらに好ましく、20000以下がさらにより好ましい。
【0023】
ノボラック樹脂の分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1以上20以下が好ましく、2以上17以下がより好ましく、3以上15以下が特に好ましく、4以上12以下がさらに好ましい。
なお、本明細書において、重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnは、GPC(ゲル透過クロマトグラフィ)測定における、ポリスチレン換算の相対値として定義することができる。
また、ノボラック樹脂を複数種用いる場合、これら複数種のノボラック樹脂を組み合わせた状態で、GPC(ゲル透過クロマトグラフィ)測定を行い、得られたチャートから分散度を決定すればよい。
【0024】
ノボラック樹脂としては、ポリスチレン換算の重量平均分子量が異なるものを少なくとも2種組み合わせて用いることができる。重量平均分子量が異なるものを大小組み合わせて用いることにより、ポジ型感光性樹脂組成物に現像性、解像性、成膜性等の多面的な優れた特性を付与することができる。
ノボラック樹脂として、重量平均分子量が異なる樹脂の組み合わせとしては、特に限定されないが、重量平均分子量が1000以上10000以下である低重量平均分子量側の樹脂と、重量平均分子量が5000以上50000以下である高重量平均分子量側の樹脂との組み合わせが好ましく、重量平均分子量が2000以上8000以下である低重量平均分子量側の樹脂と、重量平均分子量が8000以上40000以下である高重量平均分子量側の樹脂との組み合わせがより好ましく、重量平均分子量が3000以上7000以下である低重量平均分子量側の樹脂と、重量平均分子量が10000以上20000以下である高重量平均分子量側の樹脂との組み合わせがさらに好ましい。
【0025】
ノボラック樹脂として、重量平均分子量が異なる樹脂を組み合わせて用いる場合、それぞれの含有率は特に限定されないが、ノボラック樹脂の全量における低重量平均分子量側の樹脂の含有率は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、一方で、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
【0026】
ポジ型感光性樹脂組成物がアルカリ可溶性樹脂(A)としてノボラック樹脂を含む場合、アルカリ可溶性樹脂(A)の質量に対するノボラック樹脂の質量の比率は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらにより好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0027】
ポジ型感光性樹脂組成物の固形分全体に対するアルカリ可溶性樹脂(A)の質量の比率は、ポジ型感光性樹脂組成物が、所望する量のキノンジアジド基含有化合物(B)を含む限り特に限定されない。
ポジ型感光性樹脂組成物の固形分全体に対するアルカリ可溶性樹脂(A)の質量の比率は、40質量%以上80質量%以下が好ましく、45質量%以上75質量%以下がより好ましく、50質量%以上70質量%以下がさらに好ましい。
【0028】
<キノンジアジド基含有化合物(B)>
ポジ型感光性樹脂組成物は、キノンジアジド基含有化合物(B)を含有する。
キノンジアジド基含有化合物(B)は、下記式(B1):
【化5】
(式(B1)中、Dは、それぞれ独立に、水素原子、又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基であり、4個のDのうちの少なくとも1つが1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基である。)
で表される化合物と、下記式(B2):
【化6】
(式(B2)中、R
b1は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基であり、R
b2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は炭素原子数3以上6以下のシクロアルキル基であり、Dは、それぞれ独立に、水素原子、又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基であり、4個のDのうちの少なくとも1つが1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基である。)
で表される化合物と、を含む。
キノンジアジド基含有化合物(B)において、式(B1)で表される化合物の質量をM1とし、式(B2)で表される化合物の質量をM2とする場合に、M1/M2は、1.2以上5.0以下である。
【0029】
ポジ型感光性樹脂組成物が、かかる比率で式(B1)で表される化合物と、式(B2)で表される化合物とを含むことにより、ポジ型感光性樹脂組成物が、優れた焦点深度特性と、優れた解像性とを兼ね備える。
【0030】
焦点深度特性が特に良好である点と、断面形状が良好な矩形であるパターンを形成しやすい点とから、M1/M2は、1.3以上4.0以下が好ましく、1.5以上2.5以下がより好ましく、1.7以上2.2以下がさらに好ましい。
【0031】
式(B2)中、Rb1は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。炭素原子数1以上6以下のアルキル基の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、及びn-ヘキシル等が挙げられる。
Rb1としては、水素原子、又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0032】
式(B2)中、Rb2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は炭素原子数3以上6以下のシクロアルキル基である。
炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、Rb1としてのアルキル基と同様である。
炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、及びn-ヘキシルオキシ等が挙げられる。
炭素原子数3以上6以下のシクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基が挙げられる。これらの中ではシクロヘキシル基が好ましい。
【0033】
式(B1)、及び式(B2)において、Dは、水素原子、又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基である。Dとしての1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基は、ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホニルクロリドを、ジオキサンのような溶媒中において、トリエタノールアミン、炭酸アルカリ、炭酸水素アルカリ等のアルカリの存在下でフェノール性水酸基と縮合させることにより、式(B1)で表される化合物や式(B2)で表される化合物に導入される。
【0034】
焦点深度特性と解像性とについての所望する効果を得やすい点から、キノンジアジド基含有化合物(B)の質量に対する、M1とM2との和の比率は、20質量%以上50質量%以下が好ましく、23質量%以上45質量%以上がより好ましく、25質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。
【0035】
キノンジアジド基含有化合物(B)は、式(B1)で表される化合物、及び式(B2)で表される化合物とともに、さらに、下記式(B3):
【化7】
(式(B3)中、R
b3は、それぞれ独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基であり、Dは、それぞれ独立に、水素原子、又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基であり、2+m個のDのうちの少なくとも1つが1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基であり、l、及びmは、それぞれ独立に1又は2である。)
で表される化合物、及び/又は下記式(B4):
【化8】
(式(B4)中、Dは、それぞれ独立に、水素原子、又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基であり、3個のDのうちの少なくとも1つが1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基である。)
で表される化合物を含むのが好ましく、式(B3)で表される化合物、及び式(B4)で表される化合物を含むのがより好ましい。
【0036】
キノンジアジド基含有化合物(B)が、式(B3)で表される化合物、及び/又は式(B4)で表される化合物を含むことにより、感度が良好であり、断面形状が良好な矩形であるパターンを形成できる、ポジ型感光性樹脂組成物を得やすい。
【0037】
式(B3)中、Rb3は、それぞれ独立に、炭素原子数1以上5以下のアルキル基である。炭素原子数1以上5以下のアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。炭素原子数1以上5以下のアルキル基の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、及びネオペンチル基等が挙げられる。
Rb3としては、メチル基、及びエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0038】
ポジ型感光性樹脂組成物の現像液に対する溶解性と、感度とを適度な範囲内としやすい点から、式(B3)で表されるキノンジアジドエステル化物における、Dが1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基である平均割合(平均エステル化率)は40%以上60%以下が好ましく、50%以上55%以下がより好ましい。
【0039】
ポジ型感光性樹脂組成物の現像液に対する溶解性と、感度とを適度な範囲内としやすい点から、式(B4)で表されるキノンジアジドエステル化物における、Dが1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基である平均割合(平均エステル化率)は65%以上85%以下が好ましく、70%以上75%以下がより好ましい。
【0040】
ポジ型感光性樹脂組成物がキノンジアジド基含有化合物(B)として式(B3)で表される化合物、及び/又は式(B4)で表される化合物を含む場合、キノンジアジド基含有化合物(B)の質量からM1及びM2の合計を除いた質量に対する、式(B3)で表される化合物の質量と式(B4)で表される化合物の質量との和の比率は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらにより好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0041】
式(B3)で表される化合物の質量をM3とし、式(B4)で表される化合物の質量をM4とする場合に、M3/M4の範囲は特に限定されない。M3/M4は、ポジ型感光性樹脂組成物の感度、焦点深度特性、及び解像性等の諸特定のバランスが良好である点で、1.5以上4.0以下が好ましく、1.7以上3.5以下がより好ましく、2.0以上3.0以下がさらに好ましい。
【0042】
キノンジアジド基含有化合物(B)は、式(B1)で表される化合物、式(B2)で表される化合物、式(B3)で表される化合物、及び式(B4)で表される化合物以外のその他のキノンジアジド基含有化合物を含んでいてもよい。その他のキノンジアジド基含有化合物は、従来から種々のポジ型感光性樹脂組成物に配合されているキノンジアジド基を有する化合物から、適宜選択することができる。
【0043】
その他のキノンジアジド基含有化合物の好適な具体例としては、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,6-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4-トリヒドロキシ-2’-メチルベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,6-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,4’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,5-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,5’,6-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン等のポリヒドロキシベンゾフェノン類;ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-2-(2’,4’-ジヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)-2-(2’,3’,4’-トリヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-{1-[4-〔2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール、及び3,3’-ジメチル-{1-[4-〔2-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール等のビス[(ポリ)ヒドロキシフェニル]アルカン類;トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3、5-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン、及びビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン等のトリス(ヒドロキシフェニル)メタン類又はそのメチル置換体;ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-4-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、及びビス(5-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-4-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン等のビス(シクロヘキシルヒドロキシフェニル)(ヒドロキシフェニル)メタン類又はそのメチル置換体;フェノール、p-メトキシフェノール、ジメチルフェノール、ヒドロキノン、ナフトール、ピロカテコール、ピロガロール、ピロガロールモノメチルエーテル、ピロガロール-1,3-ジメチルエーテル、及び没食子酸等の水酸基を有する化合物;並びにピロガロール-アセトン樹脂等と、キノンジアジド基含有スルホン酸との完全エステル化合物、部分エステル化合物、アミド化物、又は部分アミド化物等が挙げられる。これらのその他のキノンジアジド基含有化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
その他のキノンジアジド基含有化合物として使用される上記キノンジアジド基含有スルホン酸としては、特に限定されないが、例えば、ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホン酸、ナフトキノン-1,2-ジアジド-4-スルホン酸等のナフトキノンジアジドスルホン酸;オルトアントラキノンジアジドスルホン酸等が挙げられ、ナフトキノンジアジドスルホン酸が好ましい。キノンジアジド基含有スルホン酸、好ましくはナフトキノンジアジドスルホン酸の上記エステル化合物は、ポジ型感光性樹脂組成物を溶液として使用する際に通常用いられる溶剤によく溶解し、且つアルカリ可溶性樹脂(A)との相溶性が良好である。
【0045】
キノンジアジド基含有化合物(B)の含有量は、ポジ型感光性樹脂組成物の感度の点から、以下の範囲内であるのが好ましい。下限について、アルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。上限について、アルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。
【0046】
<増感剤(C)>
ポジ型感光性樹脂組成物は、増感剤(C)を含んでいてもよい。増感剤(C)は、分子量1000以下のフェノール性水酸基を有する化合物である。
ポジ型感光性樹脂組成物が、アルカリ可溶性樹脂(A)と、キノンジアジド基含有化合物(B)と、増感剤(C)とを組み合わせて含むことにより、パターン化されたレジスト膜の良好な断面形状と、高い感度との両立が容易である。
【0047】
増感剤(C)として使用し得る化合物の好適な例としては、キノンジアジド基含有化合物(B)について説明した、種々のフェノール性水酸基含有化合物が挙げられる。
つまり、増感剤(C)の好適な具体例としては、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,6-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4-トリヒドロキシ-2’-メチルベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,6-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,4’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,5-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,5’,6-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,及び4,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン等のポリヒドロキシベンゾフェノン類;ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-2-(2’,4’-ジヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)-2-(2’,3’,4’-トリヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-{1-[4-〔2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール、及び3,3’-ジメチル-{1-[4-〔2-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール等のビス[(ポリ)ヒドロキシフェニル]アルカン類;トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3、5-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン、及びビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン等のトリス(ヒドロキシフェニル)メタン類又はそのメチル置換体;ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-4-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、及びビス(5-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-4-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン等のビス(シクロヘキシルヒドロキシフェニル)(ヒドロキシフェニル)メタン類又はそのメチル置換体;フェノール、p-メトキシフェノール、ジメチルフェノール、ヒドロキノン、ナフトール、ピロカテコール、ピロガロール、ピロガロールモノメチルエーテル、ピロガロール-1,3-ジメチルエーテル、及び没食子酸等の水酸基を有する化合物が挙げられる。
【0048】
増感剤(C)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。レジスト膜の断面形状と、感度とに関する所望する効果を得やすいことから、増感剤(C)の含有量は、アルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対して、10質量部以上30質量以下が好ましく、13質量部以上27質量以下がより好ましく、15質量部以上20質量部以上がさらに好ましい。
【0049】
<その他の成分>
ポジ型感光性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、着色剤、密着性向上剤、界面活性剤、可塑剤等の種々の添加剤を含有していてもよい。
【0050】
・密着性向上剤
密着性向上剤としては、パターン化されたレジスト膜の、当該レジスト膜が形成された面との密着性を向上させることのできる材料の中から適宜選択できる。例えば、2-ヒドロキシエチルピリジン等のヒドロキシアルキル含窒素複素環化合物を、この密着性向上剤として用いることができる。
【0051】
・界面活性剤
ポジ型感光性樹脂組成物は、塗布性、消泡性、及びレベリング性等を向上させるため、界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、例えばBM-1000、BM-1100(BMケミー社製)、メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF183(大日本インキ化学工業社製)、フロラードFC-135、フロラードFC-170C、フロラードFC-430、フロラードFC-431(住友スリーエム社製)、サーフロンS-112、サーフロンS-113、サーフロンS-131、サーフロンS-141、サーフロンS-145(旭硝子社製)、SH-28PA、SH-190、SH-193、SZ-6032、SF-8428(東レシリコーン社製)、BYK-310、BYK-330(ビックケミージャパン社製)等の名称で市販されているシリコン系又はフッ素系界面活性剤を使用することができる。
【0052】
界面活性剤の含有量は、アルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対して、0.05質量部以上5質量部以下が好ましい。
【0053】
<溶剤>
ポジ型感光性樹脂組成物は、上記の各成分を適当な溶剤に溶解して、溶液の形で用いることが好ましい。このような溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、及びエチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、及びジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類;メチルセロソルブアセテート、及びエチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、及びメチルアミルケトン等のケトン類;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ジオキサン等の環式エーテル類;並びに2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、オキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、及びアセト酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0054】
ポジ型感光性樹脂組成物における溶剤の含有量は、ポジ型感光性樹脂組成物の粘度や塗布性を勘案して適宜調整される。具体的には、溶剤は、ポジ型感光性樹脂組成物の固形分濃度が、好ましくは5質量%以上50質量%以下、より好ましくは10質量%以上30質量%以下であるように使用される。
【0055】
<ポジ型感光性樹脂組成物の調製方法>
ポジ型感光性樹脂組成物は、上記の各成分を所定の比率で配合した後、通常の方法で混合、撹拌することにより調製することができる。また、必要に応じて、さらにメッシュ、メンブレンフィルタ等を用いて濾過してもよい。
【0056】
≪パターニングされたレジスト膜の形成方法≫
パターニングされたレジスト膜は、前述のポジ型感光性樹脂組成物を基板に塗布して塗布膜を形成する工程と、
塗布膜を位置選択的に露光する工程と、
露光された塗布膜を現像液により現像する工程と、
を含む方法により形成され得る。
【0057】
ポジ型感光性樹脂組成物の基板への塗布は、スピンナー、ロールコーター、スプレーコーター、スリットコーター等を用いて行われる。塗布装置はこれらに限定されない。通常、塗布膜は加熱等の方法により乾燥される。乾燥の方法としては、例えば(1)ホットプレートにて80℃以上120℃以下の温度にて60秒以上120秒以下の間塗布膜を乾燥する方法、(2)室温にて数時間~数日塗布膜を放置する方法、(3)温風ヒータや赤外線ヒータ中に数十分~数時間塗布膜を入れて溶剤を除去する方法、のいずれでもよい。また、必要に応じて乾燥された塗布膜の膜厚は、特に限定されないが、1.0μm以上5.0μm以下程度が好ましい。
【0058】
基板の種類は、特に限定されない。前述のポジ型感光性樹脂組成物は、感度に優れるため大面積への基板への適用が容易である。このため、好適な基板としては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のディスプレイ用の基板が挙げられる。かかるディスプレイ用の基板としては、例えば、透明導電回路等の配線を備え、必要に応じてブラックマトリクス、カラーフィルタ、偏光板等を備えるガラス板が挙げられる。
【0059】
次いで、パターン形状に応じた所定のパターンを有するマスクを介して、塗布膜に対する露光を行う。露光は、紫外線、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を照射することにより行う。活性エネルギー線の光源としては、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、エキシマレーザー発生装置等が挙げられる。照射するエネルギー線量は、ポジ型感光性樹脂組成物の組成によっても異なるが、例えば30~2000mJ/cm2程度であればよい。
【0060】
次いで、露光された塗布膜を、現像液で現像し、パターン化されたレジスト膜を形成する。現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液のような有機アルカリの水溶液、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、メタケイ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等の無機アルカリの水溶液が挙げられる。
現像後、パターン化されたレジスト膜の表面を、水や、レジスト膜を過度に溶解させない有機溶媒等によってリンスしてもよい。また、必要に応じて、パターン化されたレジスト膜をベークしてもよい。
【0061】
このようにして、前述のポジ型感光性樹脂組成物からなるパターニングされたレジスト膜が形成される。かかるレジスト膜は、保護膜や絶縁膜として使用されてもよい、エッチング用のマスクパターンや、めっき用の鋳型として用いられてもよい。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0063】
〔実施例1~4、及び比較例1~3〕
実施例及び比較例において、アルカリ可溶性樹脂(A)((A)成分)として、m-クレゾール/p-クレゾールの質量が36/64であるクレゾールノボラック樹脂(重量平均分子量6000)を用いた。
【0064】
実施例及び比較例において、キノンジアジド基含有化合物(B)((B)成分)として、下記のB-I、B-II、B-III、及びB-IVを用いた。B-Iは、前述の式(B1)で表される化合物に該当する。B-IIは、前述の式(B2)で表される化合物に該当する。B-IIIは、前述の式(B3)で表される化合物に該当する。B-IVは、前述の式(B4)で表される化合物に該当する。なお、各化合物のキノンジアジド基の平均導入率(平均で何モル個の置換基ODがキノンジアジド基で置換されているかという意味)は、B-Iが2.4モル、B-IIが2.0モル、B-IIIが2.1モル、B-IVが1.7モルである。
【化9】
【0065】
アルカリ可溶性樹脂(A)100質量部と、表1に記載の種類及び量のキノンジアジド基含有化合物(B)と、表1に記載の量の密着増強剤としての2-ピリジンエタノールと、表1に記載の量の界面活性剤BYK-310(ビックケミー社製)とを、固形分濃度が24質量となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させて、各実施例及び比較例のポジ型感光性樹脂組成物を得た。得られたポジ型感光性樹脂組成物を用いて、以下の方法に従い、解像性、断面形状、感度、及び焦点深度幅の評価を行った。これらの評価結果を表1に記す。
【0066】
<解像性>
ポジ型感光性樹脂組成物の試料をスピンナーを用いて8インチのSiウェーハ上に塗布して塗布膜を形成した。塗布膜を、ダイレクトホットプレート(DHP)で110℃で90秒間乾燥させて、膜厚1.5μmのレジスト被膜を形成した。
次いで、1.5μm径のホールパターンを実現するためのマスクパターンが描かれたマスク又は1.3μmのラインアンドスペース(LS)パターンを実現するためのマスクパターンが描かれたマスクを介してそれぞれFPA-5510iv(商品名、キヤノン社製、NA=0.12)を用い、露光を行った。
露光されたレジスト被膜を、23℃、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液に65秒間接触させて現像を行った。得られたレジストパターンを、30秒間水洗いし、スピン乾燥した。
得られたホールパターン及びLSパターンを、それぞれSEM写真にて観察し、以下の基準に従い、解像性の評価を行った。
○:現像残渣を発生させることなく、所定のサイズのホール及びLSを形成できた。
×:現像残渣が発生したか、所定のサイズのホール及びLSの少なくとも一方を形成できなかった。
【0067】
<断面形状>
上記解像性評価にて得られた1.3μmLSパターンの断面形状をSEM写真にて観察し、以下の基準に従って断面形状を評価した。
◎:矩形形状
〇:レジストパターンの基板と反対側の表面近傍の幅が、レジストパターンの高さ方向中心部付近の幅よりも太い、Tトップ形状
×:頭付き無し(断面形状が三角形に近いパターン形状)
【0068】
<感度>
上記解像性評価にて、LSパターン寸法が1.30μmとなる露光量(最適露光量)を確認し、以下の基準に従って感度を評価した。
○:LSパターン寸法が1.3μmとなる露光量が40mJ/cm2未満である。
×:LSパターン寸法が1.3μmとなる露光量が40mJ/cm2以上である。
【0069】
<焦点深度幅>
上記感度評価にて確認した、各ポジ型感光性樹脂組成物の最適露光量で、焦点を-20μm~+20μmの範囲で1μm毎に上下にずらしてそれぞれLSパターンを形成し、LSパターンをSEM写真にて観察した。
SEM写真の観察結果から、LSパターンの断面形状が、断面形状評価における◎又は〇であり、且つLSパターン寸法が1.3±0.13μmの範囲となる焦点の範囲を求め、焦点深度幅(DOF)を評価した。
【0070】
【0071】
表1によれば、式(B1)で表される化合物に該当するB-Iと、式(B2)で表される化合物に該当するB-IIとを組み合わせて含む実施例のポジ型感光性樹脂組成物は、解像性が良好であり、焦点深度幅が広いことが分かる。
他方、比較例1から、ポジ型感光性樹脂組成物が、B-IとB-IIとを組み合わせて含んでいても、B-Iの質量M1と、B-IIの質量M2との比率M1/M2が1.2未満である場合、優れた解像性と、優れた焦点深度特性とを両立できないことが分かる。
また、比較例2、及び比較例3からは、ポジ型感光性樹脂組成物が、式(B1)で表される化合物に該当するB-I、又は式(B2)で表される化合物に該当するB-IIを欠く場合、焦点深度幅が狭まることが分かる。