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特許7504675非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20240617BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240617BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240617BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/052
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020110281
(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2021007096
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2019119773
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】320011605
【氏名又は名称】MUアイオニックソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深水 浩二
(72)【発明者】
【氏名】中澤 英司
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-073738(JP,A)
【文献】特開2012-190699(JP,A)
【文献】特開2006-221972(JP,A)
【文献】特開2007-134245(JP,A)
【文献】特開2019-003941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0567
H01M 10/0569
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオンを吸蔵及び放出しうる正極並びに負極を備える非水系電解液電池用の非水系電解液であって、該非水系電解液がアルカリ金属塩及び非水溶媒とともに、(1)非水系電解液の全量に対して0.001質量%以上5質量%以下の下記式(A)で表される化合物、及び(2)非水系電解液の溶媒全量に対して5体積%以上90体積%以下の炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステルを含有することを特徴とする非水系電解液。
【化1】

(式(A)中、R~Rのすべてが水素原子である。)
【請求項2】
前記炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステルは酢酸メチルであることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解液。
【請求項3】
更に、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネートおよびフッ素原子を有する環状カーボネートからなる群より選ばれる1種以上の化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の非水系電解液。
【請求項4】
前記、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネートおよびフッ素原子を有する環状カーボネートからなる群より選ばれる1種以上の化合物の総含有量が、非水系電解液の全量に対して0.001質量%以上5質量%以下である、請求項に記載の非水系電解液。
【請求項5】
リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極と、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極と、非水系電解液とを備えた非水系電解液電池であって、該非水系電解液が、請求項1乃至のいずれか一項に記載の非水系電解液であることを特徴とする、非水系電解液電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、ノート型パーソナルコンピュータ等の携帯用電子機器の急速な進歩に伴い、その主電源やバックアップ電源に用いられる電池に対する高容量化への要求が高くなっており、ニッケル・カドミウム電池やニッケル・水素電池に比べてエネルギー密度の高いリチウムイオン二次電池等の非水系電解液電池が注目されている。
リチウムイオン二次電池の電解液としては、LiPF、LiBF、LiN(CFSO、LiCF(CFSO等の電解質を、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の高誘電率溶媒と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の低粘度溶媒との混合溶媒に溶解させた非水系電解液が代表例として挙げられる。
【0003】
また、リチウムイオン二次電池の負極活物質としては主にリチウムイオンを吸蔵及び放出することができる炭素質材料が用いられており、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素等が代表例として挙げられる。更に高容量化を目指してシリコンやスズ等を用いた金属又は合金系の負極も知られている。正極活物質としては主にリチウムイオンを吸蔵及び放出することができる遷移金属複合酸化物が用いられており、遷移金属の代表例としてはコバルト、ニッケル、マンガン、鉄等が挙げられる。
【0004】
このような非水系電解液を用いた非水系電解液二次電池では、その非水系電解液の組成によって反応性が異なるため、非水系電解液により電池特性が大きく変わることになる。非水系電解液二次電池の保存特性等の電池特性を改良したり、過充電時の電池の安全性を高めたりするために、非水溶媒や電解質について種々の検討がなされている。
【0005】
特許文献1には、コバルト酸リチウムを活物質とする正極と、シリコンを活物質とする負極と、非水電解液とからなるリチウム電池において、電解液中にハロゲン化炭酸エチレンと特定のリン酸エステルを含有させることにより、高温連続充電後の放電容量維持率を向上させる検討がなされている。
特許文献2には、コバルト酸リチウムを活物質とする正極と、炭素或いはケイ素を活物質とする負極と、非水電解液とからなるリチウム電池において、電解液中にリン酸エステルと共に、スルホン構造を有する化合物を添加することにより、高温保存時の電池の膨れを改善する検討がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-115583号公報
【文献】特開2008-41635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年のリチウム非水系電解液電池の特性改善への要求はますます高まっており、高温保存特性、エネルギー密度、出力特性、寿命、高速充放電特性、低温特性等の全ての性能を高いレベルで併せ持つことが求められているが、未だに達成されていない。特に高密度化によるレート特性が低下すること、高温保存試験後の負極抵抗が高いこと、及び高温保存後の電力容量低下など、課題がある。
【0008】
特許文献1には、リン酸トリフェニル等の特定のリン酸エステルとフルオロエチレンカーボネート等のハロゲン化炭酸エチレンを含有させた電解液を用いると、サイクル試験後の放電容量が改善することが開示されている。しかし、これら特定のハロゲン化炭酸エチレン及びリン酸エステル化合物を組み合わせてもレート特性と、高温保存後の低温における負極抵抗に関して改善する余地がある。
特許文献2に記載には、特定のリン酸エステルと共に、スルホン構造を有する化合物を含有させた電解液を用いると、高温保存時の電池の膨れが改善することが開示されている。しかし、この電解液を用いてもレート特性と、高温保存後の低温における負極抵抗、及び高温保存後の電力容量低下に関して改善する余地がある。
【0009】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。即ち、非水系電解液電池において、レート特性と、高温保存後の低温における負極抵抗の増加を改善し得る、非水系電解液及び非水系電解液電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の化合物を電解液中に含有させることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0011】
本発明の要旨は、以下に示す通りである。
(a)金属イオンを吸蔵及び放出しうる正極並びに負極を備える非水系電解液電池用の非水系電解液であって、該非水系電解液がアルカリ金属塩及び非水溶媒とともに、(1)下記式(A)で表される化合物、及び(2)炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステルを含有することを特徴とする非水系電解液。
【化1】
(式(A)中、R~Rのすべてが水素原子である。)
(b)前記炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステルは酢酸メチルであることを特徴とする(a)に記載の非水系電解液。
(c)前記式(A)で表される化合物の濃度が、非水系電解液の全量に対して0.001質量%以上5質量%以下である、(a)又は(b)に記載の非水系電解液。
(d)前記炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステルの含有量が、非水系電解液の溶媒全量に対して5体積%以上90体積%以下である、(a)~(c)のいずれかに記載の非水系電解液。
(e)更に、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネートおよびフッ素原子を有する環状カーボネートからなる群より選ばれる1種以上の化合物を含有することを特徴とする(a)~(d)のいずれかに記載の非水系電解液。
(f)前記、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネートおよびフッ素原子を有する環状カーボネートからなる群より選ばれる1種以上の化合物の総含有量が、非水系電解液の全量に対して0.001質量%以上5質量%以下である、(e)に記載の非水系電解液。
(g)リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極と、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能
な負極と、非水系電解液とを備えた非水系電解液電池であって、該非水系電解液が、(a)~(f)のいずれかに記載の非水系電解液であることを特徴とする非水系電解液電池。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、非水系電解液電池に関して、レート特性と、高温保存後の低温における負極抵抗の増加抑制に優れる電池を実現する非水系電解液及び係る非水系電解液を用いた非水系電解液電池を提供することができる。
さらに、本発明の一実施形態に係る非水系電解液によれば、非水系電解液電池の、レート特性と、高温保存後の開回路電圧、容量残存率、及び低温における負極抵抗を改善し得る。
本発明の非水系電解液を用いて作製された非水系電解液電池、及び本発明の非水系電解液電池が、レート特性と、高温保存後の開回路電圧(以下、OCVと記す場合がある)、容量残存率、及び低温における負極抵抗の点で改善された二次電池となる作用・原理は明確ではないが、以下のように考えられる。ただし、本発明は、以下に記述する作用・原理に限定されるものではない。
【0013】
炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステルは鎖状カーボネートに比べて、低粘度かつ高誘電率である。したがって、炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステルを含有する電解液は、鎖状カーボネートのみを含有する従来の電解液に比べて、リチウムイオン電導性に優れ、レート特性に優れる電池を実現することができる。しかし、炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステルは耐酸化性が鎖状カーボネートに比べて低いため、充放電もしくは高温保存により正極表面において継続的に分解するため、電池の高温保存後のOCV低下、及び、残存容量の低下が起こる。同時に、正極表面を変質させるため、正極の抵抗を増加させる。その結果、電池のレート特性低下が起こる。また、炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステルが正極において酸化分解した成分は、電解液中を拡散し、負極表面に到達する。負極表面に到達した酸化分解成分は負極表面で還元分解を起こし、負極の抵抗を増加させる。抵抗が増加した負極では低温におけるリチウムイオンの受け入れが低下し、リチウム電析などが起こりやすくなる。
式(A)で表される化合物は、分子内に易酸化性部位である芳香環を有する。そのため、正極上で上述部位が酸化反応を受けるのだが、式(A)で表される化合物は酸化分解された際に芳香環上にカチオンを発生させる。該カチオンは炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステルと素早く反応することで正極表面上に保護被膜を形成し、正極表面で炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステルが継続して酸化分解されることを抑制する。そのため、電池の高温保存後のOCV低下を抑制し、かつ、残存容量の低下を改善できる。同時に正極表面の変質を抑制できるため、レート特性が改善されると推定している。また、正極での継続的な炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステルの分解が抑えられることで、負極に回り込む酸化分解成分が減り、電池の高温保存後の低温における負極抵抗の増加が抑えられると推定している。なお、式(A)で表される化合物のR~Rが水素原子以外である場合、すなわち、芳香環上に置換基を有する化合物である場合、置換基が酸化され、芳香環上にカチオンが発生しないため、所望の反応が起こらないと推定している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
また、ここで“重量%”、“重量ppm”及び“重量部”と“質量%”、“質量ppm”及び“質量部”とは、それぞれ同義である。また、単にppmと記載した場合は、“質量ppm”のことを示す。
【0015】
1.非水系電解液
1-1.本発明の非水系電解液
本発明に係る非水系電解液は、アルカリ金属塩及び非水溶媒とともに、(1)下記式(A)で表される化合物、及び(2)炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステルを含有することを特徴とする。
【0016】
1-1-1.式(A)で表される化合物
【0017】
【化2】
【0018】
(式(A)中、R~Rのすべてが水素原子である。)
【0019】
本発明には式(A)で表される化合物が用いられるが、具体的には以下の構造の化合物である。芳香環の立体障害が小さく、炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステルとの反応が好適に進行するためである。
【化3】
【0020】
本発明の非水系電解液全量に対する式(A)で表される化合物の濃度に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液の全量に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上であり、また、通常5.0質量%以下、好ましくは4.5質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、さらに好ましくは3.5質量%以下、特に好ましくは3.0質量%以下の濃度である。上記範囲の濃度であれば、式(A)で表される化合物の電極上での反応性及び電極上で生成した電解液の還元生成物等の塩基成分との反応性が好ましい範囲に調節でき、電池特性を最適にすることが可能となる。
【0021】
また、式(A)で表される化合物の濃度が上記範囲を満たした場合は、高温特性等の効果がより向上する。
【0022】
なお、本発明の電解液に、式(A)で表される化合物を配合する方法は、特に制限されない。上記化合物を直接電解液に添加する方法の他に、電池内又は電解液中において上記化合物を発生させる方法が挙げられる。上記化合物を発生させる方法としては、この化合物以外の化合物を添加し、電解液等の電池構成要素を酸化、還元、又は加水分解等して発生させる方法が挙げられる。更には、電池を作製して、充放電等の電気的な負荷をかけることによって、発生させる方法も挙げられる。
【0023】
1-1-2.炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステル
炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステルとして、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチルが挙げられる。なかでも、酢酸メチルが粘度低下による物質拡散の向上の点からより好ましい。
【0024】
炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステルの含有量は、通常、非水電解液の溶媒全量(100体積%中)に対して、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上、特に好ましくは20体積%以上である。このように下限を設定することで、非水系電解液のリチウムイオン等の金属イオンの拡散を改善し、非水系電解液電池を安全に廃棄できる性能を向上させやすくなる。また、鎖状カルボン酸エステルの含有量は、非水系電解液の溶媒全量(100体積%中)に対して、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下、さらに好ましくは70体積%以下、特に好ましくは60体積%以下である。このように上限を設定することで、物質の拡散を妨げる重合性化合物の生成量を抑えられ、非水系電解液電池を安全に廃棄処理できる。
炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステルは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。なお、炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステルを2種以上併用する場合には、炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステルの合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
【0025】
1-2.電解質
<アルカリ金属塩>
非水系電解液における電解質としては、アルカリ金属塩が使用されるが、通常、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、この用途に用いることが知られているものであれば特に制限がなく、任意のものを用いることができ、具体的には以下のものが挙げられる。
【0026】
フルオロホウ酸リチウム塩類、フルオロリン酸リチウム塩類、タングステン酸リチウム塩類、カルボン酸リチウム塩類、スルホン酸リチウム塩類、リチウムイミド塩類、リチウムメチド塩類、リチウムオキサラート塩類、及び含フッ素有機リチウム塩類等が挙げられる。
【0027】
なかでも、フルオロホウ酸リチウム塩類としてLiBF;フルオロリン酸リチウム塩類としてLiPF6、LiPOF、LiPO;スルホン酸リチウム塩類としてLiFSO、CHSOLi;リチウムイミド塩類としてLiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド;リチウムメチド塩類として、LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSO;リチウムオキサラート塩類として、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、リチウムトリス(オキサラト)フォスフェート等が、低温出力特性やハイレート充放電特性、インピーダンス特性、高温保存特性、サイクル特性等を向上させる効果がある点からより好ましい。さらに好ましくは、LiPF、LiN(FSO、リチウムビス(オキサラト)ボレート及びLiFSOであり、特に好ましくはLiPFである。また、上記リチウム塩は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0028】
これらのリチウム塩を2種以上を併用する場合の好ましい一例は、LiPFとLiN(FSO、LiPFとLiBF、LiPFとLiN(CFSO、L
iBFとLiN(FSO、LiBFとLiPFとLiN(FSOが挙げられる。なかでも、好ましくは、LiPFとLiN(FSO、LiPFとLiBF、LiBFとLiPFとLiN(FSO等の併用であり、負荷特性やサイクル特性を向上させる効果がある。
【0029】
非水系電解液中のこれらのリチウム塩の濃度は、本発明の効果を損なわない限り、その含有量は特に制限されないが、電解液の電気伝導率を良好な範囲とし、良好な電池性能を確保する点から、非水系電解液中のリチウムの総モル濃度は、好ましくは0.3mol/L以上、より好ましくは0.4mol/L以上、さらに好ましくは0.5mol/L以上であり、また、好ましくは3mol/L以下、より好ましくは2.5mol/L以下、さらに好ましくは2.0mol/L以下である。
リチウムの総モル濃度が上記範囲内にあることにより、電解液の電気伝導率が十分となり、また、粘度上昇による電気伝導度の低下、それに起因する電池性能の低下を防ぐ。
【0030】
1-3.非水溶媒
本発明における非水溶媒について特に制限はなく、公知の有機溶媒を用いることが可能である。これらを例示すると、フッ素原子を有さない環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状カルボン酸エステル、炭素数5以上の鎖状カルボン酸エステル、エーテル系化合物、スルホン系化合物等が挙げられる。2種以上の有機溶媒の組み合わせとして、特段の制限はないが、フッ素原子を有さない環状カーボネートと炭素数5以上の鎖状カルボン酸エステル、環状カルボン酸エステルと鎖状カーボネート、及びフッ素原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネートと炭素数5以上の鎖状カルボン酸エステルが挙げられる。なかでも、フッ素原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネート、及び飽和環状カーボネートと鎖状カーボネートと炭素数5以上の鎖状カルボン酸エステルが好ましい。
【0031】
<フッ素原子を有さない環状カーボネート>
フッ素原子を有さない環状カーボネートとしては、炭素数2~4のアルキレン基を有する環状カーボネートが挙げられる。
炭素数2~4のアルキレン基を有する、フッ素原子を有さない環状カーボネートの具体的な例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートが挙げられる。中でも、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から特に好ましい。
【0032】
フッ素原子を有さない環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
フッ素原子を有さない環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水溶媒100体積%中、通常3体積%以上、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上である。この範囲とすることで、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液電池の大電流放電特性、負極に対する安定性、サイクル特性を良好な範囲としやすくなる。また、95体積%以下、より好ましくは90体積%以下、さらに好ましくは85体積%以下、特に好ましくは80体積%以下である。この範囲とすることで、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては非水系電解液電池の負荷特性を良好な範囲としやすくなる。
【0033】
<鎖状カーボネート>
鎖状カーボネートとしては、炭素数3~7の鎖状カーボネートが好ましく、炭素数3~7のジアルキルカーボネートがより好ましい。
鎖状カーボネートの具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n-プロピルイソプロピ
ルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネートが挙げられる。特に好ましくはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートである。
また、フッ素原子を有する鎖状カーボネート類(以下、「フッ素化鎖状カーボネート」と記載する場合がある)も好適に用いることができる。
【0034】
フッ素化鎖状カーボネートが有するフッ素原子の数は、1以上であれば特に制限されないが、通常6以下であり、好ましくは4以下である。フッ素化鎖状カーボネートが複数のフッ素原子を有する場合、それらは互いに同一の炭素に結合していてもよく、異なる炭素に結合していてもよい。
フッ素化鎖状カーボネートとしては、フルオロメチルメチルカーボネート等のフッ素化ジメチルカーボネート誘導体、2-フルオロエチルメチルカーボネート等のフッ素化エチルメチルカーボネート誘導体、エチル-(2-フルオロエチル)カーボネート等のフッ素化ジエチルカーボネート誘導体等が挙げられる。
【0035】
鎖状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
鎖状カーボネートの配合量は、非水溶媒100体積%中、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上、ことさらに好ましくは20体積%以上、特に好ましくは25体積%以上である。このように下限を設定することにより、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては非水系電解液電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。また、鎖状カーボネートは、非水溶媒100体積%中、90体積%以下、より好ましくは85体積%以下、特に好ましくは80体積%以下であることが好ましい。このように上限を設定することにより、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。
【0036】
<炭素数5以上の鎖状カルボン酸エステル>
炭素数5以上の鎖状カルボン酸エステルとしては、炭素数が5以上であれば特に限定されない。具体的には、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、吉草酸メチル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、及びピバル酸メチルが挙げられる。上述の化合物の水素の一部をフッ素で置換した鎖状カルボン酸エステルも好適に使える。
炭素数5以上の鎖状カルボン酸エステルの配合量は、非水溶媒100体積%中、通常1体積%以上、好ましくは5体積%以上、より好ましくは15体積%以上である。この範囲であれば、非水系電解液の電気伝導率を改善し、非水系電解液電池の大電流放電特性を向上させやすくなる。また、炭素数5以上の鎖状カルボン酸エステルの配合量は、通常70体積%以下、好ましくは50体積%以下、より好ましくは40体積%以下である。このように上限を設定することにより、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避し、負極抵抗の増大を抑制し、非水系電解液電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。
【0037】
<環状カルボン酸エステル>
環状カルボン酸エステルとしては、炭素原子数が3~12のものが好ましい。
具体的には、ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン、ガンマカプロラクトン、イプシロンカプロラクトン等が挙げられる。中でも、ガンマブチロラクトンがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から特に好ましい。
【0038】
環状カルボン酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
環状カルボン酸エステルの配合量は、通常、非水溶媒100体積%中、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上である。この範囲であれば、非水系電解液の電気伝導率を改善し、非水系電解液電池の大電流放電特性を向上させやすくなる。また、環状カルボン酸エステルの配合量は、好ましくは50体積%以下、より好ましくは40体積%以下である。このように上限を設定することにより、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避し、負極抵抗の増大を抑制し、非水系電解液電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。
【0039】
<エーテル系化合物>
エーテル系化合物としては、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタン、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等の炭素数3~10の鎖状エーテル、及びテトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、2-メチル-1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン等炭素数3~6の環状エーテルが好ましい。なお、上述のエーテル系化合物の一部の水素がフッ素にて置換されていても良い。
なかでも、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタン、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルが、リチウムイオンへの溶媒和能力が高く、イオン解離性を向上させる点で好ましく、特に好ましくは、粘性が低く、高いイオン伝導度を与えることから、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタンである。
【0040】
エーテル系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
エーテル系化合物の配合量は、通常、非水溶媒100体積%中、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上、また、好ましくは70体積%以下、より好ましくは60体積%以下、さらに好ましくは50体積%以下である。
【0041】
この範囲であれば、エーテル系化合物のリチウムイオン解離度の向上と粘度低下に由来するイオン伝導度の向上効果を確保しやすく、負極活物質が炭素質材料の場合、エーテル系化合物がリチウムイオンと共に共挿入されて容量が低下するといった事態を回避しやすい。
【0042】
<スルホン系化合物>
スルホン系化合物としては、炭素数3~6の環状スルホン、及び炭素数2~6の鎖状スルホンが好ましい。スルホン系化合物の1分子中のスルホニル基の数は、1又は2であることが好ましい。
【0043】
炭素数3~6の環状スルホンとしては、
モノスルホン化合物であるトリメチレンスルホン類、テトラメチレンスルホン類、ペンタメチレンスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類;
ジスルホン化合物であるトリメチレンジスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類等が挙げられる。
【0044】
中でも誘電率と粘性の観点から、テトラメチレンスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類がより好ましく、テトラメチレンスルホン類(スルホラン類)が特に好ましい。
スルホラン類としては、スルホラン及び/又はスルホラン誘導体(以下、スルホランも含めて「スルホラン類」と記載する場合がある)が好ましい。スルホラン誘導体としては
、スルホラン環を構成する炭素原子上に結合した水素原子の1以上がフッ素原子やアルキル基で置換されたものが好ましい。
【0045】
なかでも、2-メチルスルホラン、3-メチルスルホラン、2-フルオロスルホラン、3-フルオロスルホラン、2,3-ジフルオロスルホラン、2-トリフルオロメチルスルホラン、3-トリフルオロメチルスルホラン等が、イオン伝導度が高く、入出力特性が高い点で好ましい。
【0046】
また、炭素数2~6の鎖状スルホンとしては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン等が挙げられる。なかでも、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホンが等がイオン伝導度が高く、入出力特性が高い点で好ましい。
【0047】
スルホン系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
スルホン系化合物の配合量は、通常、非水溶媒100体積%中、好ましくは0.3体積%以上、より好ましくは1体積%以上、さらに好ましくは5体積%以上であり、また、好ましくは40体積%以下、より好ましくは35体積%以下、さらに好ましくは30体積%以下である。
この範囲であれば、サイクル特性や保存特性等の耐久性の向上効果が得られやすく、また、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避することができ、非水系電解液電池の充放電を高電流密度で行う場合に、充放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0048】
1-5.助剤
本発明の非水系電解液において、式(A)で表される化合物、及び炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステル以外に、目的に応じて適宜助剤を用いてもよい。助剤としては、従来公知のものを任意に用いることができる。なお、助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0049】
非水系電解液に含有していてもよい助剤としては、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素原子を有する環状カーボネート、イソシアナト基(イソシアネート基)を有する化合物、硫黄含有有機化合物、式(A)で表される化合物以外のリン含有有機化合物、シアノ基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物、式(A)で表される化合物以外の芳香族化合物、炭素数5以上のフッ素非含有カルボン酸エステル、エーテル結合を有する環状化合物、カルボン酸無水物、ホウ酸塩、シュウ酸塩、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、フルオロスルホン酸塩等が例示できる。硫黄含有有機化合物、式(A)で表される化合物以外のリン含有有機化合物、シアノ基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物、式(A)で表される化合物以外の芳香族化合物、炭素数5以上のフッ素非含有カルボン酸エステル、エーテル結合を有する環状化合物、カルボン酸無水物、ホウ酸塩、シュウ酸塩、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、フルオロスルホン酸塩は、例えば、国際公開公報第2015/111676号に記載の化合物等が挙げられる。エーテル結合を有する環状化合物は、非水系電解液において助剤として用いることもできるし、1-3.で示したとおり非水溶媒としても用いることができるものも含まれる。エーテル結合を有する環状化合物を助剤として用いる場合は、4質量%未満の量で用いる。ホウ酸塩、シュウ酸塩、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩、フルオロスルホン酸塩は、非水系電解液において助剤として用いることもできるし、1-2.で示したとおり電解質として用いることができるものも含まれる。これら化合物を助剤として用いる場合は、3質量%未満で用いる。
なかでも、本発明の一実施形態に係る非水系電解液は、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート及びフッ素原子を有する環状カーボネートからなる群より選ばれる1種以上をさらに含有することが、電池特性向上の点から好ましく、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート及びフッ素原子を有する環状カーボネートをさらに含有することが特に好ましい。
式(A)で表される化合物は活物質上で酸化反応を受けて、構造内に活性ラジカル・カチオンを形成する。また、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネートおよびフッ素原子を有する環状カーボネートは構造中にラジカル・カチオン受容部位を有している。そのため、複合的な被膜が形成されることが考えられる。
したがって、それぞれの化合物を単独で添加した時よりも、活物質表面での電解液の反応をより抑制するため、電池特性は向上する。
【0050】
<炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート>
炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート(以下、「不飽和環状カーボネート」と記載する場合がある)としては、炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を有する環状カーボネートであれば、特に制限はなく、任意の不飽和カーボネートを用いることができる。なお、芳香環を有する環状カーボネートも、不飽和環状カーボネートに包含されることとする。
【0051】
不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート類、カテコールカーボネート類または芳香環、炭素-炭素二重結合もしくは炭素-炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類、等が挙げられる。
ビニレンカーボネート類としては、
ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5-ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、4,5-ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、4,5-ジビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート、4,5-ジアリルビニレンカーボネート、4-フルオロビニレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルビニレンカーボネート、4-フルオロ-5-フェニルビニレンカーボネート、4-フルオロ-5-ビニルビニレンカーボネート、4-アリル-5-フルオロビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0052】
芳香環、炭素-炭素二重結合もしくは炭素-炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類の具体例としては、
ビニルエチレンカーボネート、4,5-ジビニルエチレンカーボネート、4-メチル-5-ビニルエチレンカーボネート、4-アリル-5-ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、4,5-ジエチニルエチレンカーボネート、4-メチル-5-エチニルエチレンカーボネート、4-ビニル-5-エチニルエチレンカーボネート、4-アリル-5-エチニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、4,5-ジフェニルエチレンカーボネート、4-フェニル-5-ビニルエチレンカーボネート、4-アリル-5-フェニルエチレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、4,5-ジアリルエチレンカーボネート、4-メチル-5-アリルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0053】
中でも、好ましい不飽和環状カーボネートとしては、
ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5-ジメチルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、4,5-ビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート、4,5-ジアリルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4,5-ジビニルエチレンカーボネート、4-メチル-5-ビニルエチレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、4,5-ジアリルエチレンカーボネート、4-メチル-5-アリルエチレンカーボネート、4-アリル-5-ビニルエチレンカーボネー
ト、エチニルエチレンカーボネート、4,5-ジエチニルエチレンカーボネート、4-メチル-5-エチニルエチレンカーボネート、4-ビニル-5-エチニルエチレンカーボネートが挙げられる。
【0054】
また、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネートはさらに安定な界面保護被膜を形成するので、特に好ましい。
不飽和環状カーボネートの分子量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、好ましくは、80以上、250以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する不飽和環状カーボネートの溶解性を確保しやすく、本発明の効果が十分に発現されやすい。不飽和環状カーボネートの分子量は、より好ましくは85以上であり、また、より好ましくは150以下である。不飽和環状カーボネートの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
【0055】
不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、不飽和環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、更に好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。この範囲内であれば、非水系電解液電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0056】
<フッ素原子を有する環状カーボネート>
フッ素原子を有する環状カーボネート化合物としては、炭素原子数2~6のアルキレン基を有する環状カーボネートのフッ素化物、及びその誘導体が挙げられ、例えばエチレンカーボネートのフッ素化物、及びその誘導体が挙げられる。エチレンカーボネートのフッ素化物の誘導体としては、例えば、アルキル基(例えば、炭素原子数1~4個のアルキル基)で置換されたエチレンカーボネートのフッ素化物が挙げられる。中でもフッ素原子を1~8個有するエチレンカーボネート、及びその誘導体が好ましい。
【0057】
具体的には、
モノフルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(ジフルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(トリフルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-4-フルオロエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-5-フルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4,5-ジメチルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4,5-ジメチルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5,5-ジメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0058】
中でも、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート及び4,5-ジフルオロエチレンカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種が、高イオン伝導性を与え、かつ好適に界面保護被膜を形成する点でより好ましい。
フッ素原子を有する環状カーボネート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0059】
フッ素原子を有する環状カーボネート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上
を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。本発明の非水系電解液全体に対するハロゲン化環状カーボネートの配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、また、通常10質量%以下、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。ただし、モノフルオロエチレンカーボネートは溶媒として用いてもよく、その場合は上記の含有量に限定されない。本明細書においては、フッ素原子を有し、かつ不飽和結合を有する環状カーボネートは、不飽和環状カーボネートに分類する。
【0060】
2.非水系電解液電池構成
本発明の非水系電解液は、非水系電解液電池の中でも二次電池用、例えばリチウム二次電池用の電解液として用いるのに好適である。以下、本発明の非水系電解液を用いた非水系電解液電池について説明する。
本発明の非水系電解液電池は、公知の構造を採ることができ、典型的には、イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵及び放出可能な負極及び正極と、上記の本発明の非水系電解液とを備える。
【0061】
2-1.負極
負極とは、負極活物質を集電体表面の少なくとも一部に有するものをいう。
以下に負極に使用される負極活物質について述べる。
負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵及び放出可能なものであれば、特に制限はない。
具体例としては、炭素質材料、Liと合金化可能な金属粒子、リチウム含有金属複合酸化物材料、及びこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でもサイクル特性及び安全性が良好でさらに連続充電特性も優れている点で、炭素質材料、Liと合金化可能な金属粒子及びLiと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子との混合物を使用するのが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて併用してもよい。
【0062】
<炭素質材料>
炭素質材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素、炭素被覆黒鉛、黒鉛被覆黒鉛及び樹脂被覆黒鉛等が挙げられる。なかでも、天然黒鉛が好ましい。炭素質材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
天然黒鉛としては、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛及び/又はこれらの黒鉛を原料に球形化や緻密化等の処理を施した黒鉛粒子等が挙げられる。これらの中でも、粒子の充填性や充放電レート特性の観点から、球形化処理を施した球状もしくは楕円体状の黒鉛粒子が特に好ましい。
黒鉛粒子の平均粒子径(d50)は、通常1μm以上通常100μm以下である。
【0063】
<炭素質材料の物性>
負極活物質としての炭素質材料は、以下の(1)~(4)に示した物性及び形状等の特徴の内、少なくとも1項目を満たしていることが好ましく、複数の項目を同時に満たすことが特に好ましい。
(1)X線パラメータ
炭素質材料の学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)は、通常0.335nm以上0.360nm以下である。また、学振法によるX線回折で求めた炭素質材料の結晶子サイズ(Lc)は、1.0nm以上である。
(2)体積基準平均粒径
炭素質材料の体積基準平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)であり、通常1μm以上100μm以下である。
(3)ラマンR値、ラマン半値幅
炭素質材料のラマンR値は、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法を用いて測定した値であり、通常0.01以上1.5以下である。
また、炭素質材料の1580cm-1付近のラマン半値幅は特に制限されないが、通常10cm-1以上100cm-1以下である。
(4)BET比表面積
炭素質材料のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値であり、通常0.1m・g-1以上100m・g-1以下である。
負極活物質中に性質の異なる炭素質材料が2種以上含有していてもよい。ここでいう性質とは、X線回折パラメータ、メジアン径、ラマンR値及びBET比表面積の群から選ばれる1つ以上の特性を示す。
好ましい例としては、体積基準粒度分布がメジアン径を中心としたときに左右対称とならないこと、ラマンR値が異なる炭素質材料を2種以上含有していること、及びX線パラメータが異なること等が挙げられる。
【0064】
<Liと合金化可能な金属粒子>
Liと合金化可能な金属粒子は、従来公知のいずれのものも使用可能であるが、容量とサイクル寿命の点から、金属粒子は、例えば、Sb、Si、Sn、Al、As、及びZnからなる群から選ばれる金属又はその化合物であることが好ましい。
金属化合物として、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物等が挙げられる。また、2種以上の金属からなる合金を使用してもよい。なかでも、金属Si(以下、Siと記載する場合がある)又はSi金属化合物が高容量化の点で、好ましい。
本明細書では、Si又はSi金属化合物を総称してSi化合物と呼ぶ。Si化合物としては、具体的には、SiO,SiN,SiC、SiZ(Z=C、N)等が挙げられる。Si化合物としてSi金属酸化物(SiO)が、黒鉛と比較して理論容量が大きい点で好ましく、又は非晶質SiあるいはナノサイズのSi結晶は、リチウムイオン等のアルカリイオンの出入りがしやすく、高容量を得ることが可能である点で好ましい。
この一般式SiOは、二酸化珪素(SiO)とSiとを原料として得られるが、そのxの値は通常0<x<2である。
Liと合金化可能な金属粒子の平均粒子径(d50)は、サイクル寿命の観点から、通常0.01μm以上10μm以下である。
【0065】
<Liと合金可能な金属粒子と黒鉛粒子との混合物>
負極活物質として用いられるLiと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子との混合物は、前述のLiと合金化可能な金属粒子と前述の黒鉛粒子が互いに独立した粒子の状態で混合されている混合体でもよいし、Liと合金化可能な金属粒子が黒鉛粒子の表面又は内部に存在している複合体でもよい。
Liと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子の合計に対するLiと合金化可能な金属粒子の含有割合は、通常1質量%以上99質量%以下である。
【0066】
<リチウム含有金属複合酸化物材料>
負極活物質として用いられるリチウム含有金属複合酸化物材料としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能であれば、特に制限されないが、高電流密度充放電特性の点からチタンを含むリチウム含有金属複合酸化物材料が好ましく、リチウムとチタンの複合酸化物(以下、「リチウムチタン複合酸化物」と略記する場合がある)がより好ましく、スピネル構造を有するリチウムチタン複合酸化物が出力抵抗を大きく低減するので特に好ましい。
また、リチウムチタン複合酸化物のリチウムやチタンが、他の金属元素、例えば、Al、Ga、Cu及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素で置換されていてもよい。
リチウムチタン複合酸化物として、Li4/3Ti5/3、LiTi及びLi4/5Ti11/5が好ましい。また、リチウム・チタンの一部が他の元素で置換されたリチウムチタン複合酸化物として、例えば、Li4/3Ti4/3Al1/3が好ましい。
【0067】
<負極の構成と作製法>
負極の製造は、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のいずれの方法を用いてもよい。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって形成することができる。
【0068】
〈集電体〉
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電体としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられるが、加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
【0069】
〈バインダー〉
負極活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
具体例としては、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子ポリフッ化ビニリデン;ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
負極活物質に対するバインダーの割合は、通常0.1質量%以上20質量%以下である。
特に、SBRに代表されるゴム状高分子を主要成分に含有する場合には、負極活物質に対するバインダーの割合は、通常0.1質量%以上5質量%以下である。また、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分に含有する場合には負極活物質に対する割合は、通常1質量%以上15質量%以下である。
【0070】
〈増粘剤〉
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調整するために使用される。増粘剤としては、特に制限されないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
増粘剤を用いる場合には、負極活物質に対する増粘剤の割合は、通常0.1質量%以上5質量%以下である。
【0071】
〈電極密度〉
負極活物質を電極化した際の電極構造は特に制限されないが、集電体上に存在している負極活物質の密度は、通常1g・cm-3以上2.2g・cm-3以下である。
【0072】
〈負極板の厚さ〉
負極板の厚さは用いられる正極板に合わせて設計されるものであり、特に制限されないが、芯材の金属箔厚さを差し引いた合材層の厚さは通常15μm以上300μm以下である。
【0073】
〈負極板の表面被覆〉
また、上記負極板の表面に、負極活物質とは異なる組成の物質が付着したもの(表面付着物質)を用いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム等の酸化物、硫酸リチウム等の硫酸塩、炭酸リチウム等の炭酸塩等が挙げられる。
【0074】
2-2.正極
正極とは、正極活物質を集電体表面の少なくとも一部に有するものをいう。
<正極活物質>
以下に正極に使用される正極活物質(リチウム遷移金属系化合物)について述べる。
〈リチウム遷移金属系化合物〉
リチウム遷移金属系化合物とは、リチウムイオンを脱離、挿入することが可能な構造を有する化合物であり、例えば、硫化物やリン酸塩化合物、ケイ酸化合物、ホウ酸化合物、リチウム遷移金属複合酸化物などが挙げられる。なかでも、リチウム遷移金属複合酸化物が好ましい。
リチウム遷移金属複合酸化物としては、三次元的拡散が可能なスピネル構造や、リチウムイオンの二次元的拡散を可能にする層状構造に属するものが挙げられる。スピネル構造を有するものは、一般的にLi(Mは少なくとも1種以上の遷移金属)と表され、具体的にはLiMn、LiCoMnO、LiNi0.5Mn1.5、LiCoVOなどが挙げられる。層状構造を有するものは、一般的にLiMO(Mは少なくとも1種以上の遷移金属、xは通常1以上1.5以下)と表される。具体的にはLiCoO、LiNiO、LiNi0.85Co0.10Al0.05、LiNi0.80Co0.15Al0.05、LiNi0.33Co0.33Mn0.33、Li1.05Ni0.33Co0.33Mn0.33、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、Li1.05Ni0.5Co0.2Mn0.3、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1などが挙げられる。
【0075】
なかでも、層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物が好ましく、下記組成式(F)で示される遷移金属酸化物であることがより好ましい。
Lia1Nib1Coc1d1・・・(F)
(組成式(F)中、0.9≦a1≦1.1、0.3≦b1≦0.9、0.01≦c1≦0.5、0.0≦d1≦0.5の数値を示し、0.5≦b1+c1かつb1+c1+d1=1を満たす。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
組成式(F)中、0.1≦d1≦0.5の数値を示すことが好ましい。
【0076】
特に、下記組成式(F’)で示される遷移金属酸化物であることが好ましい。
Lia1Nib1Coc1d1・・・(F’)
(式(F’)中、0.90≦a1≦1.10、0.50≦b1≦0.98、0.01≦c1<0.50、0.01≦d1<0.50の数値を示し、b1+c1+d1=1を満たす。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
【0077】
組成式(F’)で表されるリチウム遷移金属酸化物の好適な具体例としては、例えば、LiNi0.85Co0.10Al0.05、LiNi0.80Co0.15Al0.05、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、Li1.05Ni0.50Co0.20Mn0.30、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1等が挙げられる。
各組成式中、MはMn、Alが好ましい。遷移金属酸化物の構造安定性が高まり、繰り返し充放電した際の構造劣化が抑制されるためである。
【0078】
〈異元素導入〉
また、リチウム遷移金属複合酸化物は、上記の組成式に含まれる元素以外の元素(異元素)が導入されてもよい。
【0079】
〈表面被覆〉
上記正極活物質の表面に、これとは異なる組成の物質(表面付着物質)が付着したものを用いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム等の酸化物、硫酸リチウム等の硫酸塩、炭酸リチウム等の炭酸塩等が挙げられ、炭酸塩であることが、上記式(A)で表される化合物、及び炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステルと正極の親和性が向上するため好ましい。
これら表面付着物質は、例えば、溶媒に溶解又は懸濁させて該正極活物質に含浸添加、乾燥する方法等により該正極活物質表面に付着させることができる。
表面付着物質の量としては、該正極活物質に対して質量で、下限として好ましくは1μmol/g以上であり、10μmol/g以上が好ましく、通常1mmol/g以下で用いられる。
本明細書においては、正極活物質の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものも「正極活物質」という。
【0080】
〈ブレンド〉
なお、これらの正極活物質は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0081】
<正極の構成と作製法>
以下に、正極の構成と製造方法について述べる。本実施形態において、正極活物質を用いる正極の製造は、常法により行うことができる。即ち、正極活物質と結着剤、並びに必要に応じて導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、又はこれらの材料を液体媒体に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を集電体上に形成されることにより正極を得ることができる。また、例えば、上述の正極活物質をロール成形してシート電極としたり、圧縮成形によりペレット電極としてもよい。
以下、スラリーを正極集電体に塗布・乾燥する場合について説明する。
【0082】
〈活物質含有量〉
正極活物質の、正極活物質層中の含有量は、通常80質量%以上98質量%以下である。
【0083】
〈正極活物質層の密度〉
塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。正極活物質層の密度は、通常1.5g/cm以上であり、3.0g/cm以上であることが好ましく、3.3g/cmがさらに好ましく、また通常3.8g/cm以下である。
【0084】
〈導電材〉
導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料等が挙げられる。導電材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。導電材は、正極活物質層中に、通常0.01質量%以上50質量%以下含有するように用いられる。
【0085】
〈結着剤〉
正極活物質層の製造に用いる結着剤としては、特に限定されず、塗布法の場合は、電極
製造時に用いる液体媒体に対して溶解又は分散される材料であれば、その種類は特に制限されないが、耐候性、耐薬品性、耐熱性、難燃性等からポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンシアニド等のCN基含有ポリマーなどが好ましい。
また、上記のポリマーなどの混合物、変成体、誘導体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体なども使用できる。なお、結着剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、結着剤として樹脂を用いる場合、その樹脂の重量平均分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1万以上300万以下である。分子量がこの範囲であると電極の強度が向上し、電極の形成を好適に行うことができる。
正極活物質層中の結着剤の割合は、通常0.1質量%以上80質量%以下である。
【0086】
〈液体媒体〉
スラリーを形成するための液体媒体としては、正極活物質、導電材、結着剤、並びに必要に応じて使用される増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
【0087】
〈集電体〉
正極集電体の材質としては特に制限されず、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料が挙げられる。中でもアルミニウムが好ましい。
集電体の形状としては、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。これらのうち、金属薄膜が好ましい。なお、金属薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。
【0088】
〈正極板の厚さ〉
正極板の厚さは特に限定されないが、高容量かつ高出力の観点から、芯材の金属箔厚さを差し引いた合材層の厚さは、集電体の片面に対して通常10μm以上500μm以下である。
【0089】
〈正極板の表面被覆〉
また、上記正極板の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものを用いてもよく、上述の表面付着物質と同じ物質が用いられる。
【0090】
2-3.セパレータ
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この場合、非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
セパレータの材料や形状については特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。
【0091】
〈材料〉
セパレータの材料としては非水系電解液に対し安定な材料であれば特に制限されないが、好ましくは、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物類、窒化アルミや窒化ケイ素等の窒化物類、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩類、ガラス繊維からなるガラスフィルター等の無機物;ポリオレフィン等の樹脂が挙げられ、より好ましくはポリオレフィンであり、特に好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンである。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また上記材料を積層させて用いてもよい。
【0092】
〈形態〉
形態としては特に制限されないが、好ましくは、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状では、孔径が0.01~1μm、厚さが1~50μmのものが好適に用いられる。上記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製の結着材を用いて上記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いてもよい。セパレータは、好ましくは、保液性に優れるため、微多孔性フィルム及び不織布である。
【0093】
〈空孔率〉
セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの空孔率は任意であるが、通常20%以上90%以下である。
【0094】
〈透気度〉
セパレータの非水系電解液電池における特性を、ガーレ値で把握することができる。ガーレ値とは、フィルム厚さ方向の空気の通り抜け難さを示し、100mlの空気が該フィルムを通過するのに必要な秒数で表される。セパレータのガーレ値は、任意ではあるが、通常10~1000秒/100mlである。
【0095】
2-4.電池設計〈電極群〉
電極群は、上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもののいずれでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する)は、通常40%以上90%以下である。
【0096】
〈集電構造〉
電極群が前述の積層構造のものでは、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減する構造も好適に用いられる。電極群が前述の捲回構造のものでは、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
【0097】
〈保護素子〉
保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)素子、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等を使用することができる。上記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
【0098】
〈外装体〉
非水系電解液電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等を外装体(外装ケース)内に収納して構成される。この外装体に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り公知のものを任意に採用することができる。
外装ケースの材質は用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に限定されるものではないが、軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
上記金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、又は、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。
【0099】
〈形状〉
また、外装ケースの形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型
、大型等の何れであってもよい。
【実施例
【0100】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
本実施例及び比較例に使用した化合物を以下に示す。
【0101】
【化4】
【化5】
【0102】
<実施例1>
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、非水溶媒としてエチレンカーボネート(以下、ECと記載)、ジメチルカーボネート(以下、DMCと記載)、及び酢酸メチル(以下、MAと記載)の混合物(体積比20:40:40)を用い、電解質として十分に乾燥させたLiPFを非水系電解液中の濃度1.3mol/Lで溶解させ、さらにビニレンカーボネート(以下、VCと記載)を非水系電解液全体に対し1.0質量%、モノフルオロエチレンカーボネート(以下、FECと記載)を非水系電解液全体に対し2.0質量%、及び化合物1を非水系電解液全体に対し3.0質量%加えて実施例1の非水系電解液を調製した。
【0103】
[正極の作製]
正極活物質としてニッケル含有遷移金属酸化物(LiNi0.85Co0.10Al0.05)97質量部と、導電材としてアセチレンブラック1.5質量部と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.5質量部とを、N-メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ21μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0104】
[負極の作製]
負極活物質として天然黒鉛粉末、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、及びバインダーとしてスチレン・ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン・ブタジエンゴムの濃度50質量%)を用い、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ12μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした
。なお、乾燥後の負極において、天然黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレン・ブタジエンゴム=98:1:1の質量比となるように作製した。
【0105】
[非水系電解液電池(パウチ型)の製造]
上記の正極、負極、及びポリプロピレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層して電池要素を作製した。
この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正極と負極の端子が突設するように挿入した後、実施例1の非水系電解液を袋内に注入し、真空封止を行い、パウチ型電池を作製し、実施例1の非水系電解液電池とした。
【0106】
<実施例2>
乾燥アルゴン雰囲気下、非水溶媒としてEC、DMC、EMC、及びMAの混合物(体積比20:60:10:10)を用い、電解質として十分に乾燥させたLiPFを非水系電解液中の濃度1.3mol/Lで溶解させ、さらにVCを非水系電解液全体に対し1.0質量%、FECを非水系電解液全体に対し2.0質量%、及び化合物1を非水系電解液全体に対し0.3質量%加えて実施例2の非水系電解液を調製した。
実施例2の非水系電解液を用いた以外は実施例1と同様にして実施例2の非水系電解液電池を作製した。
【0107】
<実施例3>
乾燥アルゴン雰囲気下、非水溶媒としてEC、DMC、EMC、及びプロピオン酸メチル(以下、MPと記載)の混合物(体積比20:60:10:10)を用い、電解質として十分に乾燥させたLiPFを非水系電解液中の濃度1.3mol/Lで溶解させ、さらにVCを非水系電解液全体に対し1.0質量%、FECを非水系電解液全体に対し2.0質量%、及び化合物1を非水系電解液全体に対し3.0質量%加えて実施例3の非水系電解液を調製した。
実施例3の非水系電解液を用いた以外は実施例1と同様にして実施例3の非水系電解液電池を作製した。
【0108】
<比較例1>
化合物1の非水系電解液全体に対する含有量を2.0質量%とし、酢酸メチルの代わりにDMCを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の非水系電解液電池を作製した。
【0109】
<比較例2>
化合物1の非水系電解液全体に対する含有量を4.0質量%としたこと以外は、比較例1と同様にして、比較例2の非水系電解液電池を作製した。
【0110】
<比較例3>
化合物1を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の非水系電解液電池を作製した。
【0111】
<比較例4>
化合物1の代わりに化合物2を非水系電解液全体に対する含有量を3.0質量%として加えたこと以外は、実施例2と同様にして、比較例4の非水系電解液電池を作製した。
【0112】
<比較例5>
化合物1の代わりに化合物2を非水系電解液全体に対する含有量を3.0質量%として加えたこと以外は、実施例3と同様にして、比較例5の非水系電解液電池を作製した。
【0113】
<非水系電解液電池の評価>
[レート特性]
作製した上記各非水系電解液電池を、電極間の密着性を高めるためにガラス板で挟んだ状態で、25℃において、0.05Cに相当する定電流で4時間充電を行い、0.2Cの定電流で2.5Vまで放電した。ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、0.5Cとはその1/2倍の電流値を、また0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
次に0.1Cに相当する定電流で4.1Vまで充電し、0.2Cの定電流で2.5Vまで放電し、さらに0.2Cに相当する定電流で4.1Vまで充電し、0.2Cの定電流で2.5Vまで放電し、その後、0.2Cで4.1Vまで定電流-定電圧充電(0.05Cカット)した。その後、45℃で、3日間経過した後、0.2Cの定電流で2.5Vまで放電した。その後、充電条件を0.2Cで4.2Vまで定電流-定電圧充電(0.05Cカット)することに統一して、2.5Vまでの1C放電容量と0.05C放電容量を測定した。100×(1C放電容量/0.05C放電容量)をレート特性とした。実施例1~3、比較例1~5の組成及びレート特性の評価結果を表1に示す。
【0114】
[高温保存後の低温における負極抵抗]
上記レート特性の測定後に、再び4.2Vまで充電し、85℃で、3日間静置した。その後0.2Cの定電流で2.5Vまで放電し、0.2Cで4.2Vまで定電流-定電圧充電(0.05Cカット)した後、0℃において、電圧の振幅を10mV、周波数を0.1~20000Hzの範囲で、開回路電圧での交流インピーダンスを測定した。周波数15.9Hzにおける虚部を低温における負極抵抗とした。低温における負極抵抗が小さいほど負極におけるリチウムカチオンの受け入れがスムーズになり、リチウム電析などを抑えることが期待できる。実施例1、比較例1~3の組成及び低温における負極抵抗の評価結果を表1に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
表1から、式(A)で表される化合物、及び炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステルを含有する非水系電解液を用いた場合(実施例1~3)は、そうでない場合(比較例1~5)に比べて、非水系電解液電池のレート特性と、高温保存後の低温における負極抵抗を同時に改善できることが明らかである。
【0117】
<実施例4>
乾燥アルゴン雰囲気下、非水溶媒としてEC、DMC、EMC、及びMAの混合物(体積比20:60:10:10)を用い、電解質として十分に乾燥させたLiPFを非水系電解液中の濃度1.3mol/Lで溶解させ、さらにVCを非水系電解液全体に対し1.0質量%、FECを非水系電解液全体に対し2.0質量%、及び化合物1を非水系電解
液全体に対し0.5質量%加えて実施例4の非水系電解液を調製した。実施例4の非水系電解液を用いた以外は実施例1と同様にして実施例4の非水系電解液電池を作製した。
【0118】
<実施例5>
化合物1の非水系電解液全体に対する含有量を0.3質量%としたこと以外は、実施例4と同様にして、実施例5の非水系電解液電池を作製した。
【0119】
<実施例6>
化合物1の非水系電解液全体に対する含有量を3.0質量%とし、酢酸メチルの代わりにMPを用いたこと以外は、実施例4と同様にして、実施例6の非水系電解液電池を作製した。
【0120】
<比較例6>
化合物1の代わりに化合物2を非水系電解液全体に対する含有量を3.0質量%として加えたこと以外は、実施例4と同様にして、比較例6の非水系電解液電池を作製した。
【0121】
<比較例7>
化合物1の代わりに化合物2を非水系電解液全体に対する含有量を3.0質量%として用いたこと以外は、実施例6と同様にして、比較例7の非水系電解液電池を作製した。
【0122】
<非水系電解液電池の評価>
[高温保存後のOCV]
作製した上記各非水系電解液電池を、電極間の密着性を高めるためにガラス板で挟んだ状態で、25℃において、0.05Cに相当する定電流で4時間充電を行い、0.2Cの定電流で2.5Vまで放電した。ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、0.5Cとはその1/2倍の電流値を、また0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
次に0.1Cに相当する定電流で4.1Vまで充電し、0.2Cの定電流で2.5Vまで放電し、さらに0.2Cに相当する定電流で4.1Vまで充電し、0.2Cの定電流で2.5Vまで放電し、その後、0.2Cで4.1Vまで定電流-定電圧充電(0.05Cカット)した。その後、45℃で、3日間経過した後、0.2Cの定電流で2.5Vまで放電した。その後、充電条件を0.2Cで4.2Vまで定電流-定電圧充電(0.05Cカット)することに統一して、2.5Vまでの1C放電容量と0.05C放電容量を測定した。その後、再び4.2Vまで充電し、85℃で、3日静置した。その後、25℃に冷却した後、開回路電圧を測定した。比較例6の電圧を基準の0Vとし、実施例4~6、および比較例7と比較例6との開回路電圧の差を高温保存後のOCV(ΔV)として表2に示す。なお、高温保存後のOCVが高いほど、高温放置時の自己放電が抑えられ、所望の電力容量を取り出せることを意味する。
【0123】
[容量残存率]
実施例4~6、比較例6及び比較例7の非水系電解液電池について、高温保存後のOCVを測定した後、0.2Cの定電流で2.5Vまで放電した。この放電容量を高温保存前の0.2C容量で割って、100を掛けた値を容量残存率(%)として表2に示す。なお、容量残存率が高いほど、高温放置時の自己放電が抑えられ、所望の電力容量を取り出せることを意味する。
【0124】
[高温保存後の低温における負極抵抗]
容量残存率を測定した後、0.2Cで4.2Vまで定電流-定電圧充電(0.05Cカット)した後、0℃において、電圧の振幅を10mV、周波数を0.1~20000Hzの範囲で、開回路電圧での交流インピーダンスを測定した。周波数15.9Hzにおける
虚部を低温における負極抵抗とした。比較例6を100とした場合の実施例4~6及び比較例7の相対値(%)を表2に示す。低温における負極抵抗が小さいほど負極におけるリチウムカチオンの受け入れがスムーズになり、リチウム電析などを抑えることが期待できる。
【0125】
【表2】
【0126】
表2から、式(A)で表される化合物、及び炭素数4以下の鎖状カルボン酸エステルを含有する非水系電解液を用いた場合(実施例4~6)は、そうでない場合(比較例6~7)に比べて、非水系電解液電池の高温保存後OCVの低下を抑制し、高温保存後の低温における負極抵抗を低減し、高温保存後の容量残存率の低下を抑制できることが明らかである。