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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】洗浄モジュールおよび基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240617BHJP
   B08B 3/04 20060101ALI20240617BHJP
   B08B 3/12 20060101ALI20240617BHJP
   B08B 7/04 20060101ALI20240617BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
H01L21/304 642E
B08B3/04 A
B08B3/12 C
B08B7/04 Z
H01L21/304 648A
H01L21/304 644E
H01L21/304 651G
H01L21/304 621D
H01L21/304 622Q
H01L21/68 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020187971
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077220
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】眞継 阿沙葵
(72)【発明者】
【氏名】谷澤 昭尋
(72)【発明者】
【氏名】古澤 磨奈人
(72)【発明者】
【氏名】青山 英治
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 歩
(72)【発明者】
【氏名】笹谷 祐介
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢一
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 康之
(72)【発明者】
【氏名】相馬 剛
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-9987(JP,A)
【文献】特開2020-53421(JP,A)
【文献】特開2019-36573(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110757316(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 3/04
B08B 3/12
B08B 1/20
B08B 7/04
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研磨面を下方に向けた状態の基板を搬送路に沿って下流側の基板受け渡し位置まで搬送するための第1の搬送機構と、
前記搬送路から離間した位置に配置され、被研磨面を下方に向けた状態の基板を洗浄するための洗浄槽と、
前記搬送路の前記基板受け渡し位置と前記洗浄槽との間で基板を移載するための移載機と、
前記移載機によって前記洗浄槽から前記基板受け渡し位置に移載された基板を前記搬送路に沿ってさらに下流側へ搬送するための第2の搬送機構と、
を含む、洗浄モジュール。
【請求項2】
前記移載機は、前記搬送路に沿って前記基板受け渡し位置に搬送された基板を収容するための収容空間を形成する収容機構を含み、
前記収容機構は、前記基板を前記収容空間に搬入するための入口と、前記入口を開閉するための第1のシャッタと、前記基板を前記収容空間から搬出するための出口と、前記出口を開閉するための第2のシャッタと、を含む、
請求項1に記載の洗浄モジュール。
【請求項3】
前記移載機は、前記収容機構を昇降させるための昇降機構と、前記収容機構を前記基板受け渡し位置と前記洗浄槽との間で移動させるための移動機構と、前記収容機構を傾斜させるための傾斜機構と、を含む、
請求項2に記載の洗浄モジュール。
【請求項4】
前記洗浄槽は、前記洗浄槽内に収容された洗浄液に浸漬された基板に対して超音波を印加するための超音波照射器を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の洗浄モジュール。
【請求項5】
前記搬送路の前記基板受け渡し位置よりも基板搬送下流側に配置され、前記第2の搬送機構によって搬送される基板の被研磨面に接触して回転する第1のロールスポンジ、および前記基板の裏面に接触して回転する第2のロールスポンジ、を含むスクラブ洗浄機構をさらに含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の洗浄モジュール。
【請求項6】
前記スクラブ洗浄機構は、前記第1のロールスポンジに接触して前記第1のロールスポンジを洗浄するための第1のクリーニング機構、および前記第2のロールスポンジに接触して前記第2のロールスポンジを洗浄するための第2のクリーニング機構、をさらに含む、
請求項5に記載の洗浄モジュール。
【請求項7】
前記第1のロールスポンジおよび前記第2のロールスポンジは、前記第2の搬送機構を挟んで対向して配置され、
前記第1のクリーニング機構および前記第2のクリーニング機構は、前記第2の搬送機構を挟んで対向しないように配置される、
請求項6に記載の洗浄モジュール。
【請求項8】
前記スクラブ洗浄機構が配置された領域において、前記第2の搬送機構は、前記搬送路に沿って配置された複数の第1のローラシャフトと、前記搬送路を挟んで前記複数の第1のローラシャフトと対向して配置された複数の第2のローラシャフトと、前記複数の第1のローラシャフトに取り付けられた複数の第1の搬送ローラと、前記複数の第2のローラ
シャフトに取り付けられた複数の第2の搬送ローラと、前記複数の第1の搬送ローラおよび前記複数の第2の搬送ローラの少なくとも一方を前記基板の搬送位置に応じて個別に前記搬送路の方向へ押圧するように構成された複数の押圧機構と、を含む、
請求項5から7のいずれか一項に記載の洗浄モジュール。
【請求項9】
前記搬送路の前記スクラブ洗浄機構よりも基板搬送下流側に配置され、前記スクラブ洗浄機構によって洗浄された基板の被研磨面および裏面にリンス液を供給するためのリンス洗浄機構、をさらに含む、
請求項5から8のいずれか一項に記載の洗浄モジュール。
【請求項10】
基板を研磨するように構成された研磨モジュールと、
前記研磨モジュールによって研磨された基板を洗浄するように構成された請求項1から8のいずれか一項に記載の洗浄モジュールと、
前記洗浄モジュールによって洗浄された基板を乾燥させるように構成された乾燥モジュールと、
を含む、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、洗浄モジュールおよび基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造に、基板の表面を平坦化するために基板処理装置が使用されている。半導体デバイスの製造に使用される基板は、多くの場合、円板形状である。また、半導体デバイスに限らず、CCL基板(Copper Clad Laminate基板)やPCB(Printed Circuit Board)基板、フォトマスク基板、ディスプレイパネルなどの四角形の基板の表面を平坦化する際の平坦度の要求も高まっている。
【0003】
例えば特許文献1には、基板の被研磨面を下方に向けた状態で研磨処理を行い、研磨後に搬送路に沿って搬送される基板の両面に対して洗浄液を噴射して洗浄し、洗浄後に搬送路に沿って搬送される基板を乾燥させる基板処理装置が開示されている。しかしながら、研磨処理が行われた基板には研磨によって生じたスラリなどの残渣が付着している場合があり、洗浄液を基板の両面に噴射するだけでは残渣を十分に取り除けないおそれがある。この点、例えば特許文献2には、基板を縦向き姿勢で洗浄液に浸漬させて基板の両面に対して超音波を照射することにより基板を洗浄することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-9987号公報
【文献】特開2003-104544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば特許文献1に開示されている従来技術では基板に付着した残渣を十分に取り除けないおそれがあるので、基板の洗浄力を向上させるために特許文献2に記載されている基板の洗浄技術を組み合わせることも考えられるが、装置全体の構造が複雑化するので好ましくない。
【0006】
すなわち、基板の研磨処理は、特許文献1に記載されているように基板の被研磨面を下向きにして行われるか、または基板の被研磨面を上向きにして行われるのが一般的である。したがって、研磨処理後の基板は横向きの姿勢になっているので、その基板を特許文献2に記載されているように縦向きの姿勢で洗浄液に浸して超音波洗浄する場合には、基板の姿勢を縦向きにするための機構が必要になり、装置全体の構造が複雑化する。これに加えて、基板を縦向きの姿勢で超音波洗浄した場合には、基板の上部に付着していた残渣が超音波によって剥離されたとしても洗浄液中で下方に沈み基板の下部に再付着するおそれもある。
【0007】
そこで、本願は、簡易な構造で基板の洗浄力を向上させることができる洗浄モジュールおよび基板処理装置を実現することを1つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によれば、被研磨面を下方に向けた状態の基板を搬送路に沿って下流側の基板受け渡し位置まで搬送するための第1の搬送機構と、前記搬送路から離間した位置に配置され、被研磨面を下方に向けた状態の基板を洗浄するための洗浄槽と、前記搬送路の前記基板受け渡し位置と前記洗浄槽との間で基板を移載するための移載機と、前記移載機に
よって前記洗浄槽から前記基板受け渡し位置に移載された基板を前記搬送路に沿ってさらに下流側へ搬送するための第2の搬送機構と、を含む、洗浄モジュールが開示される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態による基板処理装置の全体構成を示す平面図である。
図2】一実施形態による搬送モジュールを模式的に示す側面図である。
図3】一実施形態による搬送モジュールを示す斜視図である。
図4】一実施形態による研磨モジュールを概略的に示す斜視図である。
図5】一実施形態による洗浄モジュールを模式的に示す平面図である。
図6】一実施形態による洗浄モジュールを模式的に示す斜視図である。
図7】一実施形態による移載機を模式的に示す側面図、平面図、および断面図である。
図8】一実施形態による移載機を模式的に示す側面図である。
図9】一実施形態によるスクラブ洗浄機構を模式的に示す側面図である。
図10】一実施形態によるスクラブ洗浄機構を模式的に示す側面図である。
図11】一実施形態による押圧機構を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る洗浄モジュールおよび基板処理装置の実施形態を添付図面とともに説明する。添付図面において、同一または類似の要素には同一または類似の参照符号が付され、各実施形態の説明において同一または類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0011】
図1は、一実施形態による基板処理装置1000の全体構成を示す平面図である。図1に示される基板処理装置1000は、ロードモジュール100、搬送モジュール200、研磨モジュール300、洗浄モジュール400、乾燥モジュール500、およびアンロードモジュール600を有する。図示の実施形態において、搬送モジュール200は、2つの搬送モジュール200A、200Bを有し、研磨モジュール300は、2つの研磨モジュール300A、300Bを有する。一実施形態において、これらの各モジュールは、独立に形成することができる。これらのモジュールを独立して形成することで、各モジュールの数を任意に組み合わせることで異なる構成の基板処理装置1000を簡易に形成することができる。また、基板処理装置1000は、制御装置900を備え、基板処理装置1000の各構成要素は制御装置900により制御される。一実施形態において、制御装置900は、入出力装置、演算装置、記憶装置などを備える一般的なコンピュータから構成することができる。
【0012】
<ロードモジュール>
ロードモジュール100は、研磨および洗浄などの処理が行われる前の基板WFを基板処理装置1000内へ導入するためのモジュールである。一実施形態において、ロードモジュール100は、SMEMA(Surface Mount Equipment Manufacturers Association)の機械装置インタフェース規格(IPC-SMEMA-9851)に準拠するように構成される。
【0013】
図示の実施形態において、ロードモジュール100の搬送機構は、複数の搬送ローラ202(第1の搬送ローラ)と、搬送ローラ202が取り付けられる複数のローラシャフト204とを有する。図1に示される実施形態においては、各ローラシャフト204には3つの搬送ローラ202が取り付けられている。基板WFは、搬送ローラ202上に配置され、搬送ローラ202が回転することで基板WFが搬送される。ローラシャフト204上の搬送ローラ202の取り付け位置は、基板WFを安定的に搬送することができる位置であれば任意とすることができる。ただし、搬送ローラ202は基板WFに接触するので、
処理対象である基板WFに接触しても問題の無い領域に搬送ローラ202が接触するように配置すべきである。一実施形態において、ロードモジュール100の搬送ローラ202は、導電性ポリマーから構成することができる。一実施形態において、搬送ローラ202は、ローラシャフト204などを介して電気的に接地される。これは、基板WFが帯電して基板WF上の電子デバイス等を損傷することを防止するためである。また、一実施形態において、ロードモジュール100に、基板WFの帯電を防止するためにイオナイザー(図示せず)を設けてもよい。
【0014】
<搬送モジュール>
図1に示される基板処理装置1000は、2つの搬送モジュール200A、200Bを備えている。2つの搬送モジュール200A、200Bは同一の構成とすることができるので、以下において、一括して搬送モジュール200として説明する。
【0015】
図2は、一実施形態による搬送モジュール200を模式的に示す側面図である。図3は、一実施形態による搬送モジュール200を模式的に示す斜視図である。なお、図3においては、図示の明瞭化のために、後述する上搬送ローラ(第2の搬送ローラ)290およびその駆動機構は省略している。図示の搬送モジュール200は、基板WFを搬送するための複数の搬送ローラ(第1の搬送ローラ)202を備えている。搬送ローラ202を回転させることで、搬送ローラ202上の基板WFを所定の方向に搬送することができる。搬送モジュール200の搬送ローラ202は、導電性ポリマーから形成されても、導電性のないポリマーから形成されてもよい。搬送ローラ202は、ローラシャフト(第1のローラシャフト)204に取り付けられており、ギア206を介して、モータ208により駆動される。一実施形態において、モータ208はサーボモータとすることができ、ギア206は、歯車式とすることができるが、マグネットギアとすることもできる。また、図示の搬送モジュール200は、搬送中の基板WFの側面を支持するガイドローラ212を備える。
【0016】
図2、3に示されるように、搬送モジュール200はプッシャ230を有する。プッシャ230は、複数の搬送ローラ202の上にある基板WFを、複数の搬送ローラ202から離れるように持ち上げることができるように構成される。またプッシャ230は、保持している基板WFを搬送モジュール200の搬送ローラ202に受け渡すことができるように構成される。
【0017】
図2に示されるように、搬送モジュール200は、ストッパ220を有する。ストッパ220は、ストッパ移動機構222に接続されており、ストッパ220は搬送ローラ202上を移動する基板WFの搬送路内に進入可能である。ストッパ220が基板WFの搬送路内に位置しているときは、搬送ローラ202上を移動する基板WFの側面がストッパ220に接触し、移動中の基板WFをストッパ220の位置で停止させることができる。また、ストッパ220が基板WFの搬送路から退避した位置にあるときは、基板WFは、搬送ローラ202上を移動することができる。ストッパ220による基板WFの停止位置は、プッシャ230が搬送ローラ202上の基板WFを受け取ることができる位置(基板受け渡し位置)である。
【0018】
本実施形態の搬送モジュール200は、搬送ローラ202上の所定の位置における基板WFの存在の有無を検知するためのセンサ216を有する。センサ216は任意の形式のセンサとすることができ、たとえば光学式のセンサとすることができる。図2に示される実施形態においては、センサ216は搬送モジュール200に7個(216a~216g)設けられている。一実施形態において、これらのセンサ216a~216gによる基板WFの検知に応じて、搬送モジュール200の動作を制御することができる。図2に示されるように、搬送モジュール200は、搬送モジュール200内に基板WFを受け入れる
ために開閉可能な入口シャッタ218を有する。
【0019】
センサ216aは、搬送モジュール200の入口側に設けられる。センサ216aによって基板WFの後ろが通過したことが確認されると、入口シャッタ218を閉じるようにすることができる。その後、センサ216aの下流側に配置されたセンサ216bにより基板WFの位置を監視しながら、搬送ローラ202で基板WFが搬送される。このときストッパ移動機構222によりストッパ220が基板WFの搬送路内に移動されている。搬送ローラ202上を搬送されてきた基板WFは、ストッパ220に接触して停止する。また、センサ216cはストッパ220の位置に配置されており、センサ216cにより基板WFを検知すると搬送ローラ202の動作を停止する。ストッパ220の位置(基板受け渡し位置)で停止した基板WFは、プッシャ230を介して、研磨モジュール300のトップリング302に受け渡される。
【0020】
図2、3に示される搬送モジュール200は、洗浄機構を有する。図2、3に示されるように、洗浄機構は洗浄ノズル284を有する。洗浄ノズル284は、搬送ローラ202の上側に配置される上洗浄ノズル284aと、下側に配置される下洗浄ノズル284bとを有する。上洗浄ノズル284aおよび下洗浄ノズル284bは、図示しない洗浄液の供給源に接続される。上洗浄ノズル284aは、搬送ローラ202上を搬送される基板WFの上面に洗浄液を供給するように構成される。下洗浄ノズル284bは、搬送ローラ202上を搬送される基板WFの下面に洗浄液を供給するように構成される。上洗浄ノズル284aおよび下洗浄ノズル284bは、搬送ローラ202上を搬送される基板WFの幅と同程度、またはそれ以上の幅を備え、基板WFが搬送ローラ202上を搬送されることで、基板WFの全面が洗浄されるように構成される。図2図3に示されるように、洗浄機構は、搬送モジュール200の基板受け渡し領域よりも下流側に位置している。
【0021】
図2に示されるように、プッシャ230による基板WFの受け渡しが行われない領域において、搬送ローラ202の上には上搬送ローラ290が配置されている。上搬送ローラ290は、動力源に接続されており、回転可能に構成されている。一実施形態において、上搬送ローラ290は、搬送ローラ202と同様にギア206およびモータ208により駆動されるように構成される。
【0022】
<研磨モジュール>
図4は一実施形態による研磨モジュール300を概略的に示す斜視図である。図1に示される基板処理装置1000は、2つの研磨モジュール300A、300Bを備えている。2つの研磨モジュール300A、300Bは同一の構成とすることができるので、以下において、一括して研磨モジュール300として説明する。
【0023】
図4に示されるように、研磨モジュール300は、研磨テーブル350と、トップリング302と、を備える。研磨テーブル350は、テーブルシャフト351に支持される。研磨テーブル350は、図示していない駆動部によって、矢印ACで示すように、テーブルシャフト351の軸心周りに回転するようになっている。研磨テーブル350には、研磨パッド352が貼り付けられる。トップリング302は、基板WFを保持して研磨パッド352に押圧する。トップリング302は、図示していない駆動源によって回転駆動される。基板WFは、トップリング302に保持されて研磨パッド352に押圧されることによって研磨される。
【0024】
図4に示されるように、研磨モジュール300は、研磨パッド352に研磨液又はドレッシング液を供給するための研磨液供給ノズル354を備える。研磨液は、例えば、スラリである。ドレッシング液は、例えば、純水である。また、図4に示されるように、研磨テーブル350およびテーブルシャフト351には、研磨液を供給するための通路353
が設けられている。通路353は、研磨テーブル350の表面の開口部355に連通している。研磨テーブル350の開口部355に対応する位置において研磨パッド352は貫通孔357が形成されており、通路353を通る研磨液は、研磨テーブル350の開口部355および研磨パッド352の貫通孔357から研磨パッド352の表面に供給される。また、研磨モジュール300は、研磨パッド352のコンディショニングを行うためのドレッサ356を備える。また、研磨モジュール300は、液体、又は、液体と気体との混合流体、を研磨パッド352に向けて噴射するためのアトマイザ358を備える。アトマイザ358から噴射される液体は、例えば、純水であり、気体は、例えば、窒素ガスである。
【0025】
トップリング302は、トップリングシャフト304によって支持される。トップリング302は、図示していない駆動部によって、矢印ABで示すように、トップリングシャフト304の軸心周りに回転するようになっている。また、トップリングシャフト304は、図示しない駆動機構により、上下方向に移動可能である。
【0026】
基板WFは、トップリング302の研磨パッド352と対向する面に真空吸着によって保持される。研磨時には、研磨液供給ノズル354から、および/または研磨パッド352の貫通孔357から研磨パッド352の研磨面に研磨液が供給される。また、研磨時には、研磨テーブル350及びトップリング302が回転駆動される。基板WFは、トップリング302によって研磨パッド352の研磨面に押圧されることによって研磨される。
【0027】
図4に示されるように、トップリングシャフト304は、アーム360に連結されており、アーム360は、回転軸362を中心に揺動可能である。基板WFの研磨中に、トップリング302が研磨パッド352の中心を通過するように、アーム360を固定あるいは揺動させてもよい。また、基板WFの研磨中に、基板WFが研磨パッド352の貫通孔357を覆うようにアーム360を固定または揺動させてもよい。図1に示されるように、揺動可能なアーム360により、トップリング302は、搬送モジュール200の方へ移動可能である。トップリング302が、搬送モジュール200の基板受け渡し位置に移動することで、トップリング302は、プッシャ230から基板WFを受け取ることができる。また、研磨モジュール300での基板WFの研磨後に、トップリング302からプッシャ230に基板WFを受け渡すことができる。
【0028】
<洗浄モジュール> 本実施形態の基板処理装置1000は、搬送モジュール200の洗浄機構(上洗浄ノズル284aおよび下洗浄ノズル284b)によって洗浄しきれないスラリなどの残渣を基板WFから除去するために洗浄モジュール400を備える。図5は、一実施形態による洗浄モジュールを模式的に示す平面図である。図6は、一実施形態による洗浄モジュールを模式的に示す斜視図である。
【0029】
図5に示すように洗浄モジュール400には、研磨モジュール300によって研磨された基板WFが被研磨面を下方に向けた状態で入口シャッタ410を介して搬入される。図6に示すように洗浄モジュール400は、被研磨面を下に向けた状態の基板WFを直線状の搬送路405に沿って下流側の基板受け渡し位置418まで搬送するための第1の搬送機構210-1を備える。洗浄モジュール400は、搬送路405と直交する方向に搬送路405から離間した位置に配置された超音波洗浄槽440を備える。超音波洗浄槽440は、被研磨面を下方に向けた状態の基板WFを洗浄するための洗浄槽である。洗浄モジュール400は、搬送路405の基板受け渡し位置418と超音波洗浄槽440との間で基板WFを移載するための移載機420を備える。また、洗浄モジュール400は、移載機420によって超音波洗浄槽440から基板受け渡し位置418に移載された基板WFを搬送路405に沿ってさらに下流側へ搬送するための第2の搬送機構210-2を備える。なお、移載機420による基板WFの受け渡しが行われない領域において、搬送ロー
ラ202の上には上搬送ローラ290が配置されるが、図示の明瞭化のために、図5、6では上搬送ローラ290およびその駆動機構は省略している。
【0030】
図7は、一実施形態による移載機を模式的に示す側面図、平面図、および断面図である。図7(A)は、図6におけるA方向から見た側面図である。図7(B)は、図6におけるB方向から見た側面図である。図7(C)は、図7(B)におけるC方向から見た平面図である。図7(D)は、図7(B)におけるD方向から見た平面図である。図7(E)は、図7(B)におけるE-E線の断面図である。図8は、一実施形態による移載機を模式的に示す側面図である。なお、図7(C)、図7(D)、および図7(E)においては、図示の明瞭化のために、基板WFは省略している。
【0031】
図8に示すように、洗浄モジュール400は、基板受け渡し位置418まで基板WFを搬送するように構成された第1の搬送機構210-1を含む。第1の搬送機構210-1は、基板WFの搬送路の下側において基板WFの搬送方向に沿って間隔をあけて配置された回転可能な複数のローラシャフト204を含む。また、第1の搬送機構210-1は、基板WFの搬送路の上側において基板WFの搬送方向に沿って間隔をあけて配置された回転可能な複数の上ローラシャフト291を含む。また、第1の搬送機構210-1は、基板WFの被研磨面(下面)を支持して搬送するように構成された搬送ローラ202を含む。本実施形態では、各ローラシャフト204に3つの搬送ローラ202が取り付けられている。また、第1の搬送機構210-1は、搬送ローラ202とともに基板WFを挟持して搬送するように構成された上搬送ローラ290を含む。本実施形態では、各上ローラシャフト291に3つの上搬送ローラ290が取り付けられている。基板受け渡し位置418においては、基板受け渡しのために、上ローラシャフト291および上搬送ローラ290は設けられず、ローラシャフト204および搬送ローラ202のみ設けられる。基板受け渡し位置418におけるローラシャフト204および搬送ローラ202は、基板WFを基板受け渡し位置418まで搬送するとともに、超音波洗浄された基板WFを基板受け渡し位置418からさらに下流へ搬送するので、第1の搬送機構210-1の機能と第2の搬送機構210-2の機能を兼ね備えることになる。
【0032】
一実施形態において、洗浄モジュール400の搬送ローラ202および上搬送ローラ290は、導電性ポリマーから構成することができる。搬送ローラ202および上搬送ローラ290は、ローラシャフト204および上ローラシャフト291などを介して電気的に接地される。これは、基板WFが帯電して基板WFを損傷することを防止するためである。搬送ローラ202および上搬送ローラ290は、搬送モジュール200において説明したものと同様にギア206およびモータ208により駆動されるので、構造および駆動機構の詳細な説明を省略する。
【0033】
図7および図8に示すように、移載機420は、第1の搬送機構210-1により搬送路405に沿って基板受け渡し位置418に搬送された基板WFを収容するための収容空間435を形成する収容機構430を含む。収容機構430は、基板WFの被研磨面を支持するための支持部材431と、支持部材431の上方に支持部材431と距離をあけて対向する上部部材432と、支持部材431および上部部材432を接続する柱部材433と、を含む。支持部材431、上部部材432、および柱部材433によって収容空間435が形成される。支持部材431上には基板WFの被研磨面に接触する突起434が設けられる。
【0034】
また、図8に示すように、収容機構430は、基板WFを収容空間435に搬入するための入口437と、入口437を開閉するための第1のシャッタ436と、を含む。また、収容機構430は、基板WFを収容空間435から搬出するための出口439と、出口439を開閉するための第2のシャッタ438と、を含む。収容機構430は、図8(A
)に示すように、基板WFが収容空間435に搬入されてくる際には、第2のシャッタ438を下方に移動させて出口439を閉じるとともに、第1のシャッタ436を上方で待機させて入口437を開けるように構成される。また、収容機構430は、図8(B)に示すように、基板WFが収容空間435に搬入されたら、第1のシャッタ436を下方へ移動させて入口437を閉じるように構成される。移載機420は、収容機構430を昇降させるための昇降機構428を備える。昇降機構428は、例えばモータなどの公知の機構によって実現することができる。移載機420は、図8(C)に示すように、基板WFが収容空間435に搬入され入口437が閉じられたら、昇降機構428によって収容機構430を上方へ移動させることによって基板WFを保持するように構成される。
【0035】
図6に示すように、移載機420は、収容機構430を基板受け渡し位置418と超音波洗浄槽440との間で移動させるように、搬送路405と直交する方向に伸びる移載シャフト422に沿って収容機構430を移動させるように構成された移動機構424を含む。移動機構424は、例えばモータなどの公知の機構によって実現することができる。移載機420は、基板受け渡し位置418に搬送された基板WFを収容機構430によって保持し、移動機構424によって超音波洗浄槽440の真上まで運ぶように構成される。
【0036】
移載機420は、収容機構430を傾斜させるための傾斜機構426を含む。傾斜機構426は、例えばチルト機構などの公知の機構によって実現することができる。移載機420は、超音波洗浄槽440の真上まで基板WFを運んだら、傾斜機構426によって基板WFを傾ける。なお、傾斜機構426は、基板WFを縦向きになるほど傾けるのではなく、例えば20度以下、好ましくは10度以下の範囲で基板WFを傾けることによって、基板WFの被研磨面を下方に向けた状態を維持する。移載機420は、基板WFを傾けた状態で、昇降機構428によって収容機構430を下降させることにより基板WFを超音波洗浄槽440に浸漬させる。基板WFをわずかに傾けること、また、超音波洗浄槽440への投入速度を昇降機構428により比較的緩やかな速度に制御することにより、移載機420は、基板浸漬時の洗浄液による基板への抵抗を低減して基板WFを超音波洗浄槽440に浸漬させることができる。このため、1辺の長さが500mmを超える大きさの基板でも、基板へのダメージが少ない洗浄ができる。
【0037】
図5に示すように、超音波洗浄槽440は、超音波洗浄槽440内に収容された洗浄液に浸漬された基板WFに対して超音波を印加するための超音波照射器442を含む。超音波洗浄槽440は、超音波照射器442から超音波を照射することによって基板WFの被研磨面および裏面に付着したスラリなどの残渣を洗浄することができる。本実施形態によれば、基板WFの姿勢を縦向きに変えるための機構が不要であるので、簡易な構造の洗浄モジュール400を実現することができる。また、本実施形態によれば、搬送モジュール200の洗浄機構(上洗浄ノズル284aおよび下洗浄ノズル284b)による洗浄に加えて、超音波洗浄槽440での洗浄も行うので、基板WFの洗浄力を向上させることができる。さらに、本実施形態によれば、超音波洗浄槽440は基板WFの姿勢が傾斜した状態で基板WFの超音波洗浄及び基板の取り出しを行うので、基板WFの姿勢が縦向きの状態で基板WFを洗浄する場合に比べて、基板WFから剥離した残渣が再び基板WFに付着するのを抑制することができる。
【0038】
移載機420は、超音波洗浄槽440で基板WFを洗浄している際に、傾斜機構426を用いて収容機構430をロール方向に運動させることができる。これにより、収容機構430の突起434に対して基板WFが接触する箇所をずらすことができるので、洗浄残りを防ぐことができる。また、洗浄残りを防ぐという同様の目的で、移動機構424を用いて収容機構430を移載シャフト422に沿って往復移動させることによって揺動させてもよい。
【0039】
図5に示すように、洗浄モジュール400は、搬送路405の基板受け渡し位置よりも基板搬送下流側に配置された2つのスクラブ洗浄機構450A、450Bを含む。2つのスクラブ洗浄機構450A、450Bは同様の構成とすることができるので、以下において、一括してスクラブ洗浄機構450として説明する。
【0040】
図9は、一実施形態によるスクラブ洗浄機構を模式的に示す側面図である。図10は、一実施形態によるスクラブ洗浄機構のロールスポンジの位置を模式的に示す側面図である。図9に示すように、洗浄モジュール400は第2の搬送機構210-2を備える。第2の搬送機構210-2は、第1の搬送機構210-1と同様の構成を有するので、詳細な説明を省略する。スクラブ洗浄機構450は、第2の搬送機構210-2によって搬送される基板WFの被研磨面に接触して非図示の回転機構により所定の回転数で回転する第1のロールスポンジ451-1と、ロードセル459-1を介して第1のロールスポンジ451-1を昇降させるための昇降機構453と、を含む。また、スクラブ洗浄機構450は、第2の搬送機構210-2によって搬送される基板WFの裏面に接触して非図示の回転機構により所定の回転数で回転する第2のロールスポンジ451-2と、第2のロールスポンジ451-2を保持するためのロールホルダ454と、を含む。さらに、スクラブ洗浄機構450は、ロールホルダ454に取り付けられたロードセル459-2を介して第2のロールスポンジ451-2を昇降させるための昇降機構455と、第2のロールスポンジ451-2を搬送路405と平行に伸びるシャフト452に沿って駆動するための水平駆動機構457と、を含む。第1のロールスポンジ451-1と第2のロールスポンジ451-2は、第2の搬送機構210-2を挟んで対向して配置される。昇降機構453、昇降機構455、および水平駆動機構457は、例えばモータなどの公知の機構によって実現することができる。昇降機構453および昇降機構455は、第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2を基板WFに対して上下対称に昇降させてもよいし、個別に昇降させることもできる。
【0041】
ロードセル459-1は、昇降機構453によって第1のロールスポンジ451-1を基板WFに対して押圧する力を測定する測定器である。ロードセル459-2は、昇降機構455によって第2のロールスポンジ451-2を基板WFに対して押圧する力を測定する測定器である。第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2を個別に昇降させる場合、スクラブ洗浄機構450は、ロードセル459-1の測定値に基づいて第1のロールスポンジ451-1の基板WFに対する押圧力を閉ループ制御するように構成される。同様に第2のロールスポンジ451-2はロードセル459-2の測定値に基づいて閉ループ制御される。例えば、スクラブ洗浄機構450は、ロードセル459-1およびロードセル459-2の測定値が予め設定された指定値となるように第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2の位置制御を行うことができる。また、第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2を基板WFに対して上下対称に昇降させる場合、スクラブ洗浄機構450は閉ループ制御に用いる測定値としてロードセル459-1を参照しても良いし、ロードセル459-2を参照しても良い。ただし、ロードセル459-1とロードセル459-2のどちらか一方を参照すると、基板WFが反り等によって第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2の一方に片当たりしている状況を検知できない可能性がある。例えばロードセル459-2の測定値に基づいて閉ループ制御を行った場合、基板WFが第1のロールスポンジ451-1に接触しておらず、基板WFの上面を洗浄できていなくても、スクラブ洗浄機構450はこれを検知できない。そこで、スクラブ洗浄機構450は、ロードセル459-1の測定値とロードセル459-2の測定値の平均値に基づいて第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2の位置制御を行うことができる。この場合、基板WFが片当たりすると、ロードセル459-1とロードセル459-2のどちらか一方の測定値が0となり、これらの平均値も半減す
る。するとスクラブ洗浄機構450は、第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2を基板WFに接近させることで押圧力を増大させようと制御する。結果として基板WFが片当たりしている状況から復帰でき、スクラブ洗浄機構450は基板WFの上下両面を洗浄できる。また、スクラブ洗浄機構450は、ロードセル459-1およびロードセル459-2の測定値と予め設定された指定値との差が閾値を超えたら第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2の位置のフィードバック制御を行うことができる。これは、ロードセル459-1およびロードセル459-2の測定値と予め設定された指定値との差が小さいのにフィードバック制御を行うとハンチングする可能性があるためである。また、ロードセル459-1およびロードセル459-2の測定値には、第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2の段差および基板WFの振動などがノイズとして乗ることも考えられるので、スクラブ洗浄機構450は、測定値の移動平均を求めて位置制御に用いることもできる。
【0042】
図9に示すように、スクラブ洗浄機構450は、第1のロールスポンジ451-1を用いて基板WFをロール洗浄する際に、洗浄液を基板WFの被研磨面に噴射するための複数の第1の洗浄ノズル456-1を含む。また、スクラブ洗浄機構450は、第2のロールスポンジ451-2を用いて基板WFをロール洗浄する際に、洗浄液を基板WFの裏面に噴射するための複数の第2の洗浄ノズル456-2を含む。
【0043】
図9に示すように、スクラブ洗浄機構450は、第1のロールスポンジ451-1に接触して第1のロールスポンジ451-1を洗浄するための第1のクリーニング機構458-1を含む。また、スクラブ洗浄機構450は、第2のロールスポンジ451-2に接触して第2のロールスポンジ451-2を洗浄するための第2のクリーニング機構458-2を含む。第1および第2のクリーニング機構458-1、458-2は、一例では、ロールスポンジと接触することによってロールスポンジに付着したゴミなどの汚れを落とすための石英板で構成することができるが、これに限定されない。
【0044】
第1のクリーニング機構458-1と第2のクリーニング機構458-2は、第2の搬送機構210-2を挟んで対向しないように配置されている、つまり鉛直方向に重ならないように基板の搬送方向の異なる位置に配置されている。これは、第2のクリーニング機構458-2を第1のクリーニング機構458-1の直上に配置すると、第2のロールスポンジ451-2に付着していた汚れが第1のロールスポンジ451-1に落下して第1のロールスポンジ451-1を汚染するおそれがあるためである。本実施形態のように第1のクリーニング機構458-1と第2のクリーニング機構458-2を上下方向に重ならないように配置することによって、第2のロールスポンジ451-2に付着していた汚れに起因する第1のロールスポンジ451-1の汚染を防止することができる。
【0045】
図10に示すように、第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2は、基板WFの洗浄中以外のときには、ロール洗浄位置450aに配置される。スクラブ洗浄機構450に基板WFが搬送されると、第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2は、洗浄準備位置450bを経由して基板洗浄位置450cへ移動して、基板WFを洗浄する。基板WFの洗浄が終了すると、第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2は、洗浄準備位置450bを経由してロール洗浄位置450aに移動する。
【0046】
次に、スクラブ洗浄機構450における基板WFの洗浄力を強化するための押圧機構について説明する。図10に示すように、スクラブ洗浄機構450が配置された領域において、第2の搬送機構210-2は、上搬送ローラ290を基板WFの搬送路の方向へ押圧するように構成された複数の押圧機構211を含む。これは、本実施形態のスクラブ洗浄
機構450では、第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2による洗浄によって基板WFに外力が作用し、基板搬送に支障をきたすという課題に対応するためである。具体的には、基板WFは回転する第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2を押し付けられることで洗浄される。洗浄時はローラシャフト204および上ローラシャフト291を回転駆動することによって、基板WFと接触している搬送ローラ202および上搬送ローラ290から基板WFにトラクション(粘着摩擦による駆動力)がかかり、基板WFは搬送される。このように基板WFを洗浄しながら搬送することによって基板全面の洗浄が行われる。
【0047】
洗浄時、基板WFと搬送ローラ202および上搬送ローラ290はグリップ状態にあり、基板WFは搬送ローラ202および上搬送ローラ290に対して滑ることなく、基板WFを挟んで互いに矢印ADで示すように逆方向に回転する搬送ローラ202および上搬送ローラ290の外周速度に沿って搬送路405の矢印AEで示す搬送方向に搬送される。一方で第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2は基板WFに対して時計回りまたは反時計回りに回転しつつスリップしており、これにより第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2が基板WFの表面をこすり、基板WFを洗浄している。つまり基板WFと第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2の最大摩擦力より、基板WFと搬送ローラ202および上搬送ローラ290の最大摩擦力の方が大きいために、基板WFに対して搬送ローラ202および上搬送ローラ290はグリップし、第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2はスリップしており、洗浄時はこの関係が常に成り立っている必要がある。
【0048】
ここで洗浄性能を改善するために、第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2をより強く基板WFに押圧した場合を想定する。この時、第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2と基板WFの最大摩擦力も大きくなり、搬送ローラ202および上搬送ローラ290と基板WFの最大摩擦力を上回ったとする。すると基板WFは第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2に対してグリップし、搬送ローラ202および上搬送ローラ290が基板WFに対してスリップすることになる。すると、第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2は基板WFの表面をこすらないため、洗浄性能は極端に低下する。
【0049】
第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2が基板WFに対してグリップ状態にある時、第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2が搬送ローラ202および上搬送ローラ290より速く回転していれば基板WFは先送りされる。逆に第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2が搬送ローラ202および上搬送ローラ290と逆回転していれば、基板WFは押し戻されてしまい、基板WFは搬出されない。どちらにせよ第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2が基板WFの表面をこすらないため、洗浄性能はほとんど発揮されない。
【0050】
この問題を回避する最も簡単な手段としては、第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2の基板WFに対する押圧力を抑えて、第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2と基板WFの最大摩擦力を抑制する、というものがある。しかしこの方法では第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2の洗浄性能が限られるため、基板WFの汚染度合によっては基板を十分に洗浄できない可能性がある。
【0051】
上記の問題を解決するため、上搬送ローラ290を基板WFに対して押圧し、荷重をか
けることにより、基板WFと搬送ローラ202および上搬送ローラ290との最大摩擦を増大させることができる。これにより第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2を基板WFに強く押圧しても、搬送ローラ202および上搬送ローラ290を基板WFにグリップさせ、基板WFを搬送しながら洗浄することが可能になる。なお、本実施形態では、上搬送ローラ290を基板WFに対して強く押圧する例を示すが、搬送ローラ202を基板WFに対して強く押圧してもよいし、上搬送ローラ290および搬送ローラ202の両方を基板WFに対して強く押圧してもよい。
【0052】
図11は、一実施形態による押圧機構を模式的に示す側面図である。図11(A)は、押圧機構の側面図を示しており、図11(B)は、図11(A)におけるB-B線の断面図を示している。上搬送ローラ290の押圧方法に関して、上ローラシャフト291および上搬送ローラ290は回転しているため直接外力を作用させることは難しい。そこで図11に示すように、上ローラシャフト291の両端にある軸受205を保持するベアリングホルダ207に対して荷重をかければ良い。押圧の対象としているのは上搬送ローラ290なので、ベアリングホルダ207さらに上ローラシャフト291を介して上搬送ローラ290を下方向に押圧すれば、上搬送ローラ290を基板WFに押圧することができる。
【0053】
上搬送ローラ290を基板WFに押圧するタイミングについて説明する。基板WFに既に接している上搬送ローラ290は基板WFへの押圧を行っても問題ないが、基板WFにまだ接触していない上搬送ローラ290に荷重をかけてしまうと、基板WFが上搬送ローラ290と搬送ローラ202との間に入っていけなくなってしまう。つまり搬送される基板WFの位置に応じて、複数ある上搬送ローラ290に順次荷重をかけていく必要がある。
【0054】
このように複数の上搬送ローラ290毎に荷重をかけるタイミングが異なるため、一括してすべての上搬送ローラ290を押圧することはできず、個別に押圧する構造が必要である。また、基板WFの搬送位置に合わせて押圧状態を切り替える必要があるため、上搬送ローラ290の押圧機構はバネ等を用いて常に予圧をかける方法は適さない。
【0055】
以上を踏まえた上で、上搬送ローラ290の押圧機構として、電力でモータやソレノイドを駆動したり、あるいは空気圧で押し付けたり、といった方法が考えられる。複数の上搬送ローラ290を個別に押し付ける必要があるため、モータやソレノイド、エアシリンダを使用する場合は、全ての上搬送ローラ290に対してこれらの機構を設置する必要がある。上搬送ローラ290の周辺スペースに余裕が無い場合は、ダイヤフラムを用いたシリンダを使用すると、押圧機構をコンパクトに収めることができる。そこで、本実施形態では、ダイヤフラムシリンダを用いた押圧機構211を採用している。図11(B)に示すように、押圧機構211は、ベアリングホルダ207を押圧するためのピストン217と、ピストン217を保持しつつ摺動させて昇降可能なシリンダ215と、圧力をピストン217に伝えるためのダイヤフラム214と、を備える。シリンダ215には、ダイヤフラム214に圧縮流体を供給するための穴213が形成されている。穴213には継手などを介して圧縮した気体や作動油、水などの流体を供給して圧力をかけ、この圧力を受けたダイヤフラム214はピストン217をベアリングホルダ207に押圧する。押圧機構211は複数の上搬送ローラ290のそれぞれに設けられる。各押圧機構211は、基板WFが搬送ローラ202と上搬送ローラ290との間に搬送されたら基板WFを押圧するように構成される。
【0056】
本実施形態のような構造であれば、エアシリンダやモータを用いる場合と比較して押圧機構の構造を小さくできる。また各ダイヤフラムシリンダにはチューブだけ接続しておき、供給する圧縮流体を電磁弁などで制御するだけで、ピストン217の押し付け状態と開
放状態とを簡単に切り替えることができる。このようにして、複数の上搬送ローラ290を搬送される基板WFに対して順次押し付けることで両者の最大摩擦力を増大させることによって、第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2を基板WFに強く押し当てて洗浄したとしても、上搬送ローラ290を基板WFにグリップさせて基板WFを意図したとおりに搬送することができ、かつ第1のロールスポンジ451-1および第2のロールスポンジ451-2による高い洗浄性能を発揮することができる。
【0057】
図1および図9に示すように、洗浄モジュール400は、搬送路405のスクラブ洗浄機構450よりも基板搬送下流側に配置されたリンス洗浄機構460を含む。リンス洗浄機構460は、スクラブ洗浄機構450によって洗浄された基板WFの被研磨面にリンス液(例えば純水)を供給するための第1のリンス液供給ノズル462-1と、基板WFの裏面にリンス液を供給するための第2のリンス液供給ノズル462-2と、を含む。基板WFはリンス洗浄機構460によってリンス液で洗浄される。リンス洗浄機構460によって洗浄された基板WFは図5に示す出口シャッタ470を介して洗浄モジュール400から搬出される。なお、本実施形態では、超音波洗浄槽440による超音波洗浄、およびスクラブ洗浄機構450によるロール洗浄の両方を基板WFに対して行った後にリンス洗浄機構460によるリンス洗浄を行う例を示したが、これに限定されない。洗浄モジュール400は、基板WFの材質、基板WFに付着した汚れの種類、または基板WFの大きさなどに応じて、超音波洗浄のみを行った後にリンス洗浄を行ってもよいし、ロール洗浄のみを行った後にリンス洗浄を行うこともできる。また、超音波洗浄槽440およびスクラブ洗浄機構450は、薬液を供給するシステムを含んでいてもよい。これにより、物理的洗浄方法と化学的洗浄方法の両方を使用できる洗浄モジュール400を実現することができる。さらに、洗浄モジュール400は、複数の超音波洗浄槽440を含んでいてもよい。これにより、使用できる洗浄液の種類を増やすことができるので基板に付着した種々の残渣に対応でき、また、洗浄モジュール400のスループットを向上させることができる。
【0058】
<乾燥モジュール>
図1に示す乾燥モジュール500は、基板WFを乾燥させるための装置である。図1に示される基板処理装置1000においては、乾燥モジュール500は、研磨モジュール300で研磨された後に、搬送モジュール200の洗浄部で洗浄された基板WFを乾燥させる。図1に示されるように、乾燥モジュール500は、洗浄モジュール400の下流に配置される。
【0059】
乾燥モジュール500は、搬送ローラ202上を搬送される基板WFに向けて気体を噴射するためのノズル530を有する。気体は、たとえば圧縮された空気または窒素とすることができる。搬送される基板WF上の水滴を乾燥モジュール500によって吹き飛ばすことで、基板WFを乾燥させることができる。
【0060】
<アンロードモジュール>
図1に示すアンロードモジュール600は、研磨および洗浄などの処理が行われた後の基板WFを基板処理装置1000の外へ搬出するためのモジュールである。図1に示される基板処理装置1000においては、アンロードモジュール600は、乾燥モジュール500で乾燥された後の基板を受け入れる。図1に示されるように、アンロードモジュール600は、乾燥モジュール500の下流に配置される。一実施形態において、アンロードモジュール600は、SMEMA(Surface Mount Equipment Manufacturers Association)の機械装置インタフェース規格(IPC-SMEMA-9851)に準拠するように構成される。
【0061】
以上、いくつかの本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態
は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0062】
本願は、一実施形態として、被研磨面を下方に向けた状態の基板を搬送路に沿って下流側の基板受け渡し位置まで搬送するための第1の搬送機構と、前記搬送路から離間した位置に配置され、被研磨面を下方に向けた状態の基板を洗浄するための洗浄槽と、前記搬送路の前記基板受け渡し位置と前記洗浄槽との間で基板を移載するための移載機と、前記移載機によって前記洗浄槽から前記基板受け渡し位置に移載された基板を前記搬送路に沿ってさらに下流側へ搬送するための第2の搬送機構と、を含む、洗浄モジュールを開示する。
【0063】
本願は、一実施形態として、前記移載機は、前記搬送路に沿って前記基板受け渡し位置に搬送された基板を収容するための収容空間を形成する収容機構を含み、前記収容機構は、前記基板を前記収容空間に搬入するための入口と、前記入口を開閉するための第1のシャッタと、前記基板を前記収容空間から搬出するための出口と、前記出口を開閉するための第2のシャッタと、を含む、洗浄モジュールを開示する。
【0064】
本願は、一実施形態として、前記移載機は、前記収容機構を昇降させるための昇降機構と、前記収容機構を前記基板受け渡し位置と前記洗浄槽との間で移動させるための移動機構と、前記収容機構を傾斜させるための傾斜機構と、を含む、洗浄モジュールを開示する。
【0065】
本願は、一実施形態として、前記洗浄槽は、前記洗浄槽内に収容された洗浄液に浸漬された基板に対して超音波を印加するための超音波照射器を含む、洗浄モジュールを開示する。
【0066】
本願は、一実施形態として、前記搬送路の前記基板受け渡し位置よりも基板搬送下流側に配置され、前記第2の搬送機構によって搬送される基板の被研磨面に接触して回転する第1のロールスポンジ、および前記基板の裏面に接触して回転する第2のロールスポンジ、を含むスクラブ洗浄機構をさらに含む、洗浄モジュールを開示する。
【0067】
本願は、一実施形態として、前記スクラブ洗浄機構は、前記第1のロールスポンジに接触して前記第1のロールスポンジを洗浄するための第1のクリーニング機構、および前記第2のロールスポンジに接触して前記第2のロールスポンジを洗浄するための第2のクリーニング機構、をさらに含む、洗浄モジュールを開示する。
【0068】
本願は、一実施形態として、前記第1のロールスポンジおよび前記第2のロールスポンジは、前記第2の搬送機構を挟んで対向して配置され、前記第1のクリーニング機構および前記第2のクリーニング機構は、前記第2の搬送機構を挟んで対向しないように配置される、洗浄モジュールを開示する。
【0069】
本願は、一実施形態として、前記スクラブ洗浄機構が配置された領域において、前記第2の搬送機構は、前記搬送路に沿って配置された複数の第1のローラシャフトと、前記搬送路を挟んで前記複数の第1のローラシャフトと対向して配置された複数の第2のローラシャフトと、前記複数の第1のローラシャフトに取り付けられた複数の第1の搬送ローラと、前記複数の第2のローラシャフトに取り付けられた複数の第2の搬送ローラと、前記複数の第1の搬送ローラおよび前記複数の第2の搬送ローラの少なくとも一方を前記基板
の搬送位置に応じて個別に前記搬送路の方向へ押圧するように構成された複数の押圧機構と、を含む、洗浄モジュールを開示する。
【0070】
本願は、一実施形態として、前記搬送路の前記スクラブ洗浄機構よりも基板搬送下流側に配置され、前記スクラブ洗浄機構によって洗浄された基板の被研磨面および裏面にリンス液を供給するためのリンス洗浄機構、をさらに含む、洗浄モジュールを開示する。
【0071】
本願は、一実施形態として、基板を研磨するように構成された研磨モジュールと、前記研磨モジュールによって研磨された基板を洗浄するように構成された上記のいずれか1つに記載の洗浄モジュールと、前記洗浄モジュールによって洗浄された基板を乾燥させるように構成された乾燥モジュールと、を含む、基板処理装置を開示する。
【符号の説明】
【0072】
202 搬送ローラ
204 ローラシャフト
210-1 第1の搬送機構
210-2 第2の搬送機構
211 押圧機構
290 上搬送ローラ
291 上ローラシャフト
400 洗浄モジュール
405 搬送路
420 移載機
422 移載シャフト
424 移動機構
426 傾斜機構
428 昇降機構
430 収容機構
435 収容空間
436 第1のシャッタ
437 入口
438 第2のシャッタ
439 出口
440 超音波洗浄槽
442 超音波照射器
450 スクラブ洗浄機構
451-1 第1のロールスポンジ
451-2 第2のロールスポンジ
458-1 第1のクリーニング機構
458-2 第2のクリーニング機構
460 リンス洗浄機構
500 乾燥モジュール
1000 基板処理装置
WF 基板
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