(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】ポリオレフィン樹脂組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 23/02 20060101AFI20240617BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20240617BHJP
C08K 5/375 20060101ALI20240617BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20240617BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20240617BHJP
C07C 69/54 20060101ALI20240617BHJP
C07C 321/30 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
C08L23/02
C08K5/14
C08K5/375
C08K5/00
C08J3/22 CES
C07C69/54 B
C07C321/30
(21)【出願番号】P 2021516301
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2020017828
(87)【国際公開番号】W WO2020218574
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2019084196
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】木村 奈津子
(72)【発明者】
【氏名】樋口 悠
(72)【発明者】
【氏名】宮武 俊明
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-011413(JP,A)
【文献】特開2013-209633(JP,A)
【文献】特開平08-315638(JP,A)
【文献】特開2006-225416(JP,A)
【文献】特開平03-207788(JP,A)
【文献】特表2009-520092(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106280046(CN,A)
【文献】特開平02-258803(JP,A)
【文献】特開2008-170976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、C08K5、C07C321
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)100質量部のポリオレフィン樹脂、
(B)0.01~5質量部の、1個の(メタ)アクリレート基と、1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物、及び
(C)0.01~5質量部の有機過酸化物
を少なくとも含有する、ポリオレフィン樹脂組成物であって、
(B)1個の(メタ)アクリレート基と、1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物は、式(I):
【化1】
[式(I)中、
X
1及びX
2は、それぞれ独立に、水素結合性基又は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、かつ、X
3及びX
4は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~9の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基を表すか、又は、X
1及びX
2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~9の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基を表し、かつ、X
3及びX
4は、それぞれ独立に、水素結合性基又は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、但し、X
1~X
4の少なくとも1つは-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、R
1は水素原子又はメチル基を表し、
Yは、単結合、スルフィド結合、又は炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキレン基を表し、
R
2及びR
5は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~9の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基を表し、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す]
で表され、
(B)1個の(メタ)アクリレート基と、1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物:(C)有機過酸化物のモル比は3:1~1.01:1であり、
(A)ポリオレフィン樹脂はプロピレン系樹脂及びエチレン系共重合体を含み、該プロピレン系樹脂の含有量は、ポリオレフィン樹脂組成物に含まれるプロピレン系樹脂及びエチレン系共重合体の合計量に基づいて、50質量%以上であ
り、
前記水素結合性基は、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミド基、及び、カルバメート基からなる群から選択される、
ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項2】
式(I)中、X
1は水素結合性基又は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、X
2は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、X
3及びX
4は水素原子を表し、Yは、単結合又は炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキレン基を表し、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2~R
5は、それぞれ独立に、炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項3】
式(I)中、X
1及びX
2は炭素数1~9の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基を表し、X
3は水素結合性基又は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、X
4は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、Yは、スルフィド結合を表し、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2及びR
5は水素原子を表し、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項4】
(B)1個の(メタ)アクリレート基と、1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物は、1個の(メタ)アクリレート基及び少なくとも1個の水素結合性基を有する化合物である、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項5】
(B)1個の(メタ)アクリレート基及び少なくとも1個の水素結合性基を有する化合物は、式(Ia):
【化3】
[式(Ia)中、
X
1aは
、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミド基、及び、カルバメート基からなる群から選択される水素結合性基を表し、
Y
aは、単結合又は炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキレン基を表し、
R
1は水素原子又はメチル基を表し、
R
2a~R
5aは、それぞれ独立に、炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す]
で表される、請求項4に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項6】
式(Ia)は、式(Ia’):
【化4】
[式(Ia’)中、X
1a、R
1及びR
2a~R
5aは、それぞれ、式(Ia)中のX
1a、R
1及びR
2a~R
5aについて定義した通りであり、R
6は水素原子又はメチル基を表す]
で表される、請求項5に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項7】
水素結合性基は、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、及び、リン酸基からなる群から選択される、請求項1~6のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項8】
式(Ia’)中、X
1aはヒドロキシル基を表し、R
1は水素原子を表し、R
2a~R
5aは1,1-ジメチルプロピル基を表し、R
6はメチル基を表す、請求項6に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項9】
式(Ia’)中、X
1aはヒドロキシル基を表し、R
1及びR
6は水素原子を表し、R
2a及びR
5aはt-ブチル基を表し、R
3a及びR
4aはメチル基を表す、請求項6に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項10】
式(I)は、式(Id):
【化5】
[式(Id)中、X
3bは
、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミド基、及び、カルバメート基からなる群から選択される水素結合性基
、又は
、-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、R
1は水素原子を表す]
で表される、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項11】
(C)有機過酸化物は、過酸化アルキル化合物、過酸化ジアシル化合物、過酸化エステル化合物及び過酸化カーボネート化合物からなる群から選択される、請求項1~10のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項12】
(B)1個の(メタ)アクリレート基と、1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物:(C)有機過酸化物のモル比は3:1~1.1:1である、請求項1~11のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項13】
プロピレン系樹脂は、プロピレンに由来する単量体単位を該プロピレン系樹脂の総量に基づいて80質量%以上含有する、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項14】
エチレン系共重合体は、エチレンに由来する単量体単位を該エチレン系共重合体の総量に基づいて20質量%以上含有する、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法であって、(A)ポリオレフィン樹脂、(B)1個の(メタ)アクリレート基と1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物、並びに、(C)有機過酸化物を、予め乾式混合して得た混合物を溶融混練することにより互いに混合する工程を少なくとも含む、製造方法。
【請求項16】
(A)ポリオレフィン樹脂、(B)1個の(メタ)アクリレート基と1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物、並びに、(C)有機過酸化物を乾式混合して混合物を得る工程(1)、及び、工程(1)で得た混合物を溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物を得る工程(2)を含むか、又は、
(A)ポリオレフィン樹脂と(C)有機過酸化物の一部を乾式混合して第1乾式混合物を得る工程(1a)、工程(1a)で得た乾式混合物を溶融混練して第1予備混合物を得る工程(2a)、工程(2a)で得た第1予備混合物と、(B)1個の(メタ)アクリレート基と及び少なくとも1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物と、(C)有機過酸化物の別の一部とを乾式混合して第2乾式混合物を得る工程(1b)、工程(1b)で得た乾式混合物を溶融混練して、ポリオレフィン樹脂組成物を得る工程(2b)を含む、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記工程(1)及び工程(1b)における、(B)1個の(メタ)アクリレート基と1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物の混合は、該化合物と、ポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂とを少なくとも含むマスターバッチを用いて行われる、請求項15又は16に記載の製造方法。
【請求項18】
式(Ic):
【化6】
[式(Ic)中、X
1は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、R
1は水素原子を表す]
で表される化合物。
【請求項19】
式(Id):
【化7】
[式(Id)中、X
3bは
、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミド基、及び、カルバメート基からなる群から選択される水素結合性基を表し、R
1は水素原子を表す]
で表される化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂は、例えば自動車用途における、バンパー、インスツルメンタルパネル、ドアトリム、ピラー等の内外装部品、家電用途における掃除機、テレビ等の部品等の各種工業部品用の材料として使用されている。これらの部品には、剛性、耐衝撃性を有することが求められる一方、近年高まりつつある自動車や家電製品の軽量化に対する要求のために、これらに使用される部品に対しても軽量化が要求されている。
【0003】
部品を軽量化するための1つの方法として、部品を薄肉化する方法が考えられるが、薄肉化により耐衝撃性が低下することがある。また、薄肉化された形状の部品を成形する際には、該部品を構成するポリオレフィン樹脂の流動性を向上させる必要があるが、樹脂の流動性を向上させることによっても、耐衝撃性が低下することがある。
【0004】
ポリオレフィン樹脂を含む組成物に関し、例えば特許文献1には、特定のプロピレン重合体、及び、エチレンとプロピレン又は炭素数4~20のα-オレフィンとの共重合体を含む樹脂組成物が記載されている。特許文献2には、熱可塑性ポリマーと特定の相溶化剤を含む熱可塑性ポリマー組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-79375号公報
【文献】特表2018-505284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような種々の樹脂組成物が検討されてはいるものの、ポリオレフィン樹脂組成物の耐衝撃性及び流動性を向上させることに対する要求はなお存在する。さらに、部品等に求められる特性に応じて、ポリオレフィン樹脂組成物は、着色せずに、又は、場合により着色して使用されるが、いずれの場合においても、着色前のポリオレフィン樹脂組成物に由来する色み(例えば黄色度)が、低減されていることが望ましい。
【0007】
そのため本発明は、ポリオレフィン樹脂組成物自体に由来する色みが低減され、かつ、耐衝撃性及び流動性に優れる樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、樹脂組成物に含まれる成分の種類と量に着目し、鋭意検討を行った。その結果、特定の成分を含むポリオレフィン樹脂組成物によれば上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕(A)100質量部のポリオレフィン樹脂、
(B)0.01~5質量部の、1個の(メタ)アクリレート基と、1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物、及び
(C)0.01~5質量部の有機過酸化物
を少なくとも含有する、ポリオレフィン樹脂組成物。
〔2〕(B)1個の(メタ)アクリレート基と、1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物は、式(I):
【化1】
[式(I)中、
X
1及びX
2は、それぞれ独立に、水素結合性基又は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、かつ、X
3及びX
4は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~9の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基を表すか、又は、X
1及びX
2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~9の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基を表し、かつ、X
3及びX
4は、それぞれ独立に、水素結合性基又は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、但し、X
1~X
4の少なくとも1つは-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、R
1は水素原子又はメチル基を表し、
Yは、単結合、スルフィド結合、又は炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキレン基を表し、
R
2及びR
5は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~9の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基を表し、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す]
で表される、前記〔1〕に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔3〕式(I)中、X
1は水素結合性基又は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、X
2は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、X
3及びX
4は水素原子を表し、Yは、単結合又は炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキレン基を表し、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2~R
5は、それぞれ独立に、炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す、前記〔2〕に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔4〕式(I)中、X
1及びX
2は炭素数1~9の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基を表し、X
3は水素結合性基又は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、X
4は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、Yは、スルフィド結合を表し、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2及びR
5は水素原子を表し、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す、前記〔2〕に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔5〕(B)1個の(メタ)アクリレート基と、1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物は、1個の(メタ)アクリレート基及び少なくとも1個の水素結合性基を有する化合物である、前記〔1〕に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔6〕(B)1個の(メタ)アクリレート基及び少なくとも1個の水素結合性基を有する化合物は、式(Ia):
【化2】
[式(Ia)中、
X
1aは水素結合性基を表し、
Y
aは、単結合又は炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキレン基を表し、
R
1は水素原子又はメチル基を表し、
R
2a~R
5aは、それぞれ独立に、炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す]
で表される、前記〔5〕に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔7〕式(I)は、式(Ia’):
【化3】
[式(Ia’)中、X
1a、R
1及びR
2a~R
5aは、それぞれ、式(Ia)中のX
1a、R
1及びR
2a~R
5aについて定義した通りであり、R
6は水素原子又はメチル基を表す]
で表される、前記〔6〕に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔8〕水素結合性基は、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、及び、リン酸基からなる群から選択される、前記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔9〕式(Ia’)中、X
1aはヒドロキシル基を表し、R
1は水素原子を表し、R
2a~R
5aは1,1-ジメチルプロピル基を表し、R
6はメチル基を表す、前記〔7〕に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔10〕式(Ia’)中、X
1aはヒドロキシル基を表し、R
1及びR
6は水素原子を表し、R
2a及びR
5aはt-ブチル基を表し、R
3a及びR
4aはメチル基を表す、前記〔7〕に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔11〕式(I)は、式(1d):
【化4】
[式(1d)中、X
3bは水素結合性基又は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、R
1は水素原子を表す]
で表される、前記〔2〕に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔12〕(C)有機過酸化物は、過酸化アルキル化合物、過酸化ジアシル化合物、過酸化エステル化合物及び過酸化カーボネート化合物からなる群から選択される、前記〔1〕~〔11〕のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔13〕(B)1個の(メタ)アクリレート基と、1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物:(C)有機過酸化物の質量比は1:10~10:1である、前記〔1〕~〔12〕のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔14〕(A)ポリオレフィン樹脂はプロピレン系樹脂を含む、前記〔1〕~〔13〕のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔15〕プロピレン系樹脂は、プロピレンに由来する単量体単位を該プロピレン系樹脂の総量に基づいて80質量%以上含有する、前記〔14〕に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔16〕(A)ポリオレフィン樹脂は、エチレン系共重合体をさらに含む、前記〔14〕又は〔15〕に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔17〕エチレン系共重合体は、エチレンに由来する単量体単位を該エチレン系共重合体の総量に基づいて20質量%以上含有する、前記〔16〕に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔18〕前記〔1〕~〔17〕のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法であって、(A)ポリオレフィン樹脂、(B)1個の(メタ)アクリレート基と1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物、並びに、(C)有機過酸化物を、予め乾式混合して得た混合物を溶融混練することにより互いに混合する工程を少なくとも含む、製造方法。
〔19〕(A)ポリオレフィン樹脂、(B)1個の(メタ)アクリレート基と1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物、並びに、(C)有機過酸化物を乾式混合して混合物を得る工程(1)、及び、工程(1)で得た混合物を溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物を得る工程(2)を含むか、又は、
(A)ポリオレフィン樹脂と(C)有機過酸化物の一部を乾式混合して第1乾式混合物を得る工程(1a)、工程(1a)で得た乾式混合物を溶融混練して第1予備混合物を得る工程(2a)、工程(2a)で得た第1予備混合物と、(B)1個の(メタ)アクリレート基と及び少なくとも1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物と、(C)有機過酸化物の別の一部とを乾式混合して第2乾式混合物を得る工程(1b)、工程(1b)で得た乾式混合物を溶融混練して、ポリオレフィン樹脂組成物を得る工程(2b)を含む、前記〔18〕に記載の製造方法。
〔20〕前記工程(1)及び工程(1b)における、(B)1個の(メタ)アクリレート基と1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物の混合は、該化合物と、ポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂とを少なくとも含むマスターバッチを用いて行われる、前記〔18〕又は〔19〕に記載の製造方法。
〔21〕1個の(メタ)アクリレート基と1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物、及び、ポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、マスターバッチ。
〔22〕1個の(メタ)アクリレート基と1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物を、ポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体100質量部に対して10~50質量部含む、前記〔21〕に記載のマスターバッチ。
〔23〕有機過酸化物をさらに含む、前記〔20〕又は〔21〕に記載のマスターバッチ。
〔24〕式(Ic):
【化5】
[式(1c)中、X
1は水素結合性基又は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、R
1は水素原子を表す]
で表される化合物。
〔25〕式(Id):
【化6】
[式(1d)中、X
3bは水素結合性基又は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、R
1は水素原子を表す]
で表される化合物。
【0010】
本発明は、好ましい一態様において、以下の態様も包含する。
〔1’〕(A)100質量部のポリオレフィン樹脂、
(B)0.01~5質量部の、1個の(メタ)アクリレート基及び少なくとも1個の水素結合性基を有する化合物、及び
(C)0.01~5質量部の有機過酸化物
を少なくとも含有する、ポリオレフィン樹脂組成物。
〔2’〕(B)1個の(メタ)アクリレート基及び少なくとも1個の水素結合性基を有する化合物は、式(Ia):
【化7】
[式(Ia)中、
X
1aは水素結合性基を表し、
Y
aは、単結合又は炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキレン基を表し、
R
1は水素原子又はメチル基を表し、
R
2a~R
5aは、それぞれ独立に、炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す]
で表される、前記〔1’〕に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔3’〕式(I)は、式(Ia’):
【化8】
[式(Ia’)中、X
1a、R
1及びR
2a~R
5aは、それぞれ、式(Ia)中のX
1a、R
1及びR
2a~R
5aについて定義した通りであり、R
6は水素原子又はメチル基を表す]
で表される、前記〔2’〕に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔4’〕水素結合性基は、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、及び、リン酸基からなる群から選択される、前記〔1’〕~〔3’〕のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔5’〕式(Ia’)中、X
1aはヒドロキシル基を表し、R
1は水素原子を表し、R
2a~R
5aは1,1-ジメチルプロピル基を表し、R
6はメチル基を表す、前記〔3’〕に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔6’〕式(Ia’)中、X
1aはヒドロキシル基を表し、R
1及びR
6は水素原子を表し、R
2a及びR
5aはt-ブチル基を表し、R
3a及びR
4aはメチル基を表す、前記〔3’〕に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔7’〕(C)有機過酸化物は、過酸化アルキル化合物、過酸化ジアシル化合物、過酸化エステル化合物及び過酸化カーボネート化合物からなる群から選択される、前記〔1’〕~〔6’〕のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔8’〕(B)1個の(メタ)アクリレート基及び少なくとも1個の水素結合性基を有する化合物:(C)有機過酸化物の質量比は1:10~10:1である、前記〔1’〕~〔7’〕のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔9’〕(A)ポリオレフィン樹脂はプロピレン系樹脂を含む、前記〔1’〕~〔8’〕のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔10’〕プロピレン系樹脂は、プロピレンに由来する単量体単位を該プロピレン系樹脂の総量に基づいて80質量%以上含有する、前記〔9’〕に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔11’〕(A)ポリオレフィン樹脂は、エチレン系共重合体をさらに含む、前記〔9’〕又は〔10’〕に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔12’〕エチレン系共重合体は、エチレンに由来する単量体単位を該エチレン系共重合体の総量に基づいて20質量%以上含有する、前記〔11’〕に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
〔13’〕前記〔1’〕~〔12’〕のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法であって、(A)ポリオレフィン樹脂、(B)1個の(メタ)アクリレート基及び少なくとも1個の水素結合性基を有する化合物、並びに、(C)有機過酸化物を、予め乾式混合して得た混合物を溶融混練することにより互いに混合する工程を少なくとも含む、製造方法。
〔14’〕(A)ポリオレフィン樹脂、(B)1個の(メタ)アクリレート基及び少なくとも1個の水素結合性基を有する化合物、並びに、(C)有機過酸化物を乾式混合して混合物を得る工程(1)、及び、工程(1)で得た混合物を溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物を得る工程(2)を含むか、又は、
(A)ポリオレフィン樹脂と(C)有機過酸化物の一部を乾式混合して第1乾式混合物を得る工程(1a)、工程(1a)で得た乾式混合物を溶融混練して第1予備混合物を得る工程(2a)、工程(2a)で得た第1予備混合物と、(B)1個の(メタ)アクリレート基及び少なくとも1個の水素結合性基を有する化合物と、(C)有機過酸化物の別の一部とを乾式混合して第2乾式混合物を得る工程(1b)、工程(1b)で得た乾式混合物を溶融混練して、ポリオレフィン樹脂組成物を得る工程(2b)を含む、前記〔13’〕に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポリオレフィン樹脂組成物自体に由来する色みが低減された、耐衝撃性及び流動性に優れるポリオレフィン樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。
【0013】
<ポリオレフィン樹脂組成物>
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、(A)100質量部のポリオレフィン樹脂、(B)0.01~5質量部の、1個の(メタ)アクリレート基と、1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物、及び、(C)0.01~5質量部の有機過酸化物を少なくとも含有する。本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、上記のようにポリオレフィン樹脂を主成分とし、該ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.01~5質量部の(B)1個の(メタ)アクリレート基と、1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物、及び、該ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.01~5質量部の(C)有機過酸化物を含有する。なお、本明細書において、1個の(メタ)アクリレート基と、1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物を、「化合物(B)」とも称する。
【0014】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、本発明の一態様においては、(A)100質量部のポリオレフィン樹脂、(B)0.01~5質量部の、1個の(メタ)アクリレート基及び少なくとも1個の水素結合性基を有する化合物、及び、(C)0.01~5質量部の有機過酸化物を少なくとも含有する。本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、上記のようにポリオレフィン樹脂を主成分とし、該ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.01~5質量部の(B)1個の(メタ)アクリレート基及び少なくとも1個の水素結合性基を有する化合物、及び、該ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.01~5質量部の(C)有機過酸化物を含有する。なお、本明細書において、1個の(メタ)アクリレート基及び少なくとも1個の水素結合性基を有する化合物を、「化合物(Ba)」とも称する。なお、特記しない限り、以下の化合物(B)に関する記載は、他の化合物(Ba)等にも同様にあてはまる。
【0015】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物において、ポリオレフィン樹脂組成物自体に由来する色みが低減されると共に、耐衝撃性及び流動性が向上する理由は明らかではないが、次のメカニズムによる可能性があると考えられる。なお、本発明は次のメカニズムに何ら限定されるものではない。ポリオレフィン樹脂組成物に有機過酸化物が含まれる場合、当該有機過酸化物は、ポリオレフィン樹脂を分解し、樹脂の流動性を向上させる作用があると考えられる。一方、ポリオレフィン樹脂組成物中に含まれる化合物(B)は、1個の(メタ)アクリレート基と、1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを有することにより、有機過酸化物と反応すると共に、化合物(B)の(メタ)アクリレート基又は水素結合性基がポリオレフィン樹脂と適度に反応及び/又は相互作用し、かつ、別のポリオレフィン樹脂と相互作用している化合物(B)の(メタ)アクリレート基又は水素結合性基と相互作用する。その結果、ポリオレフィン樹脂中の例えばプロピレン系樹脂とエチレン系共重合体とを相溶化させ、プロピレン系樹脂、エチレン系共重合体を微分散化させて、ポリオレフィン樹脂組成物の耐衝撃性を向上させる作用を有すると考えられる。特に化合物(B)が1個の(メタ)アクリレート基及び少なくとも1個の水素結合性基を有する化合物(Ba)である場合、該化合物(Ba)は、1個の(メタ)アクリレート基及び少なくとも1個の水素結合性基を有することにより、有機過酸化物と反応すると共に、化合物(Ba)の(メタ)アクリレート基がポリオレフィン樹脂と適度に反応及び/又は相互作用し、さらに、該化合物(Ba)の水素結合性基は、ポリオレフィン樹脂と相互作用している別の化合物(Ba)の水素結合性基と水素結合することで、ポリオレフィン樹脂中の例えばプロピレン系樹脂とエチレン系共重合体とを相溶化させ、その結果、プロピレン系樹脂、エチレン系共重合体を微分散化させて、ポリオレフィン樹脂組成物の耐衝撃性を向上させる作用を有すると考えられる。また、特定の化合物(B)及び有機過酸化物を含有する本発明のポリオレフィン樹脂組成物から得られる成形体は、驚くべきことに、黄色度が低いことがわかった。
【0016】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物において、化合物(B)の含有量は、(A)ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.01~5質量部である。化合物(B)の含有量が0.01質量部未満である場合、ポリオレフィン樹脂の微分散化が十分になされないと考えられ、得られる成形体の耐衝撃性を十分に高めることができない。一方、化合物(B)の含有量が5質量部を超える場合、色相が悪化しやすい。さらに、化合物(B)の含有量が多すぎることは経済的観点からも好ましくない。耐衝撃性と流動性とを良好なバランスで向上させやすい観点からは、化合物(B)の含有量は、(A)ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、好ましくは0.03~4質量部、より好ましくは0.04~3質量部、さらに好ましくは0.05~2質量部であり、さらにより好ましくは0.1~0.3質量部である。なお、化合物(B)は、本発明のポリオレフィン樹脂組成物を製造する際の溶融混練等における加熱条件下で、ポリオレフィン樹脂(A)等と反応し得る。そのため、本発明のポリオレフィン樹脂組成物における化合物(B)の含有量には、ポリオレフィン樹脂組成物中に化合物(B)のままで存在する未反応の化合物(B)の量と、ポリオレフィン樹脂等と反応し、別の構造となっている化合物(B)の量も含める。そのため、本発明のポリオレフィン樹脂組成物における化合物(B)の含有量は、ポリオレフィン樹脂組成物を製造する際に添加した化合物(B)の量(仕込み量)としてよい。
【0017】
ポリオレフィン樹脂組成物中に化合物(B)のままで存在する未反応の化合物(B)の含有量は、ポリオレフィン樹脂組成物の製造条件によっても異なるが、ポリオレフィン樹脂組成物を製造する際に添加した化合物(B)の量(仕込み量)に対して好ましくは1~100%、より好ましくは1~95%、さらに好ましくは1~90%、さらにより好ましくは2~90%程度となる。そのため、ポリオレフィン樹脂組成物における未反応の化合物(B)の含有量は、(A)ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0001~5質量部、より好ましくは0.0001~4.95質量部、さらに好ましくは0.0001~4.5質量部、さらにより好ましくは0.0002~4質量部である。ポリオレフィン樹脂組成物における未反応の化合物(B)の含有量は、例えば、ポリオレフィン樹脂ペレットをクロロホルム等の溶媒によりソックスレー抽出し、その溶媒を測定試料とし、液体クロマトグラフィーにより測定してよい。
【0018】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物において、(C)有機過酸化物の含有量は、(A)ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.01~5質量部である。有機過酸化物の含有量が0.01質量部未満である場合、ポリオレフィン樹脂組成物の流動性及び耐衝撃性を十分に高めることができない。一方、有機過酸化物の含有量が5質量部を超える場合、得られる成形体の耐衝撃性が低くなる。流動性と耐衝撃性を両立させやすい観点からは、有機過酸化物の含有量は、(A)ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、好ましくは0.03~3質量部、より好ましくは0.04~2質量部、さらに好ましくは0.05~1質量部、さらにより好ましくは0.05~0.5である。なお、有機過酸化物(C)も、本発明のポリオレフォン樹脂組成物を製造する際の溶融混練等における加熱条件下で、ポリオレフィン樹脂(A)等と反応し得る。そのため、本発明のポリオレフィン樹脂組成物における有機過酸化物(C)の含有量には、ポリオレフィン樹脂組成物中に有機過酸化物(C)のままで存在する未反応の有機過酸化物(C)の量と、ポリオレフィン樹脂等と反応し、別の構造となっている有機過酸化物(C)の量も含める。そのため、本発明のポリオレフィン樹脂組成物における有機過酸化物(C)の含有量は、ポリオレフィン樹脂組成物を製造する際に添加した有機過酸化物(C)の量(仕込み量)としてよい。
【0019】
ポリオレフィン樹脂組成物中に有機過酸化物(C)のままで存在する未反応の有機過酸化物(C)の含有量は、ポリオレフィン樹脂組成物の製造条件によっても異なるが、ポリオレフィン樹脂組成物を製造する際に添加した有機過酸化物(C)の量(仕込み量)に対して好ましくは0.1~10%、より好ましくは0.1~5%、さらに好ましくは1~3%程度となる。そのため、ポリオレフィン樹脂組成物における未反応の有機過酸化物(C)の含有量は、(A)ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、好ましくは0.00001~0.5質量部、より好ましくは0.00001~0.4質量部、さらに好ましくは0.00001~0.3質量部、さらにより好ましくは0.00001~0.25質量部、とりわけ好ましくは0.00001~0.15質量部である。ポリオレフィン樹脂組成物における未反応の有機過酸化物(C)の含有量は、例えば、ポリオレフィン樹脂ペレットをクロロホルム等の溶媒によりソックスレー抽出し、その溶媒を測定試料とし、液体クロマトグラフィーにより測定してよい。
【0020】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物に含まれるポリオレフィン樹脂の含有量は、ポリオレフィン樹脂組成物の総量に基づいて、好ましくは60~99.9質量%、より好ましくは70~99.9質量%、さらに好ましくは75~99.0質量%である。
【0021】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物において、化合物(B):有機過酸化物(C)のモル比は、耐衝撃性向上の観点から、好ましくは1:10~10:1、より好ましくは5:1~1:1、さらに好ましくは3:1~1.2:1である。化合物(B)と有機過酸化物とのモル比が上記の範囲内である場合、黄色度を低下させやすく、ポリオレフィン樹脂組成物の流動性と耐衝撃性を両立させやすい。同様の観点から、ポリオレフィン樹脂組成物に含まれる化合物(B)のモル量は、有機過酸化物(C)のモル量よりも多いことが好ましい。この場合、化合物(B):有機過酸化物(C)のモル比は、好ましくは10:1~1.01:1、より好ましくは5:1~1.1:1、さらにより好ましくは3:1~1.2:1である。
【0022】
<化合物(B)>
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.01~5質量部の(B)1個の(メタ)アクリレート基と、1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物を含有する。化合物(B)は、上記官能基を有する限り特に限定されず、本発明のポリオレフィン樹脂組成物は1種類の化合物(B)を含有してもよいし、2種類以上の化合物(B)を含有してもよい。なお、本明細書において(メタ)アクリレート基は、アクリレート基又はメタクリレート基を表す。また、本明細書において水素結合性基は、水素結合可能な基であれば特に限定されず、例えばヒドロキシル基、アミノ基(第1級及び第2級アミノ基)、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミド基、カルバメート基等が挙げられる。化合物(B)が水素結合性基を有する場合、黄色度を低下させやすく、流動性と耐衝撃性を両立させやすい観点からは、水素結合性基は、好ましくはヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基からなる群から選択され、より好ましくはヒドロキシル基及びアミノ基からなる群から選択され、さらに好ましくはヒドロキシル基である。
【0023】
化合物(B)が水素結合性基を有する場合、化合物(B)が有する水素結合性基の数は、少なくとも1個であればよいが、ポリオレフィン樹脂組成物自体に由来する色み(黄色度)を低減させやすく、かつ、耐衝撃性及び流動性を向上させやすい観点からは、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個、さらに好ましくは1個である。化合物(B)が水素結合性基を有さず、2個以上の(メタ)アクリレート基を有する場合、化合物(B)が有する(メタ)アクリレート基の数は、少なくとも2個であればよいが、ポリオレフィン樹脂組成物自体に由来する色み(黄色度)を低減させやすく、かつ、耐衝撃性及び流動性を向上させやすい観点からは、好ましくは2~3個、より好ましくは2個である。したがって、同様の観点から、化合物(B)は1個の(メタ)アクリレート基と1個の水素結合性基を有するか、又は、2個の(メタ)アクリレート基を有することが好ましい。
【0024】
本発明の好ましい一態様において、(B)1個の(メタ)アクリレート基と、1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物は、式(I):
【化9】
[式(I)中、
X
1及びX
2は、それぞれ独立に、水素結合性基又は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、かつ、X
3及びX
4は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~9の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基を表すか、又は、X
1及びX
2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~9の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基を表し、かつ、X
3及びX
4は、それぞれ独立に、水素結合性基又は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、但し、X
1~X
4の少なくとも1つは-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、R
1は水素原子又はメチル基を表し、
Yは、単結合、スルフィド結合、又は炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキレン基を表し、
R
2及びR
5は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~9の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基を表し、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す]
で表される。ポリオレフィン樹脂組成物が上記の式(I)で表される化合物(B)を含有する場合、ポリオレフィン樹脂組成物自体に由来する色みを低減しやすく、かつ、樹脂組成物の耐衝撃性及び流動性を向上させやすいため好ましい。この態様において、本発明のポリオレフィン樹脂組成物は式(I)で表される1種類の化合物を含有してもよいし、式(I)で表される2種類以上の化合物を含有してもよい。
【0025】
式(I)中、X1、X2、X3及びX4は、上記の条件下で、水素結合性基、-OC(=O)CR1=CH2[R1は水素原子又はメチル基を表す]、水素原子又は炭素数1~9の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基を表し得る。水素結合性基の例は、上記に述べた通りであり、好ましくはヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基からなる群から選択され、より好ましくはヒドロキシル基及びアミノ基からなる群から選択され、さらに好ましくはヒドロキシル基である。-OC(=O)CR1=CH2で表される基は、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基である。炭素数1~9の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基の例としては、式(Ia)中のR2a~R5aに関して後述する基が挙げられる。
【0026】
式(I)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2及びR5は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~9の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基を表し、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。炭素数1~9の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基の例としては、式(Ia)中のR2a~R5aに関して後述する基が挙げられる。
【0027】
式(I)中、Yは、単結合、スルフィド結合、又は炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキレン基を表す。炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキレン基の例としては、式(Ia)中のYaに関して後述する基が挙げられる。
【0028】
本発明の好ましい一態様において、式(I)で表される化合物(B)が、式(I)中のX
1は水素結合性基又は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、X
2は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、X
3及びX
4は水素原子を表し、Yは、単結合又は炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキレン基を表し、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2~R
5は、それぞれ独立に、炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す化合物であることが好ましい。この場合、化合物(B)は式(I-1):
【化10】
[式(I-1)中、X
1は水素結合性基又は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、Yは、単結合又は炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキレン基を表し、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2~R
5は、それぞれ独立に、炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す]
で表される化合物である。
【0029】
上記の式(I-1)中、X1は水素結合性基又は-OC(=O)CR1=CH2で表される基を表し、流動性と耐衝撃性とを両立させやすい観点からは、好ましくは水素結合性基、より好ましくはヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基又はリン酸基、さらに好ましくはヒドロキシル基又はアミノ基、さらにより好ましくはヒドロキシル基を表す。
【0030】
上記の式(I-1)中、Yは、ポリオレフィン樹脂組成物の流動性と耐衝撃性を両立させやすい観点から、好ましくは炭素数1~8のアルキル基を側鎖として有してもよいメチレン基、さらに好ましくは炭素数1~3のアルキル基を側鎖として有してもよいメチレン基、さらにより好ましくはメチルメチレン基又はメチレン基を表す。
【0031】
上記の式(I-1)中、R2~R5は、それぞれ独立に、炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、ポリオレフィン樹脂組成物の流動性と耐衝撃性を両立させやすい観点から、それぞれ独立に、好ましくはメチル基、tert-ブチル基及び1,1-ジメチルプロピル基からなる群から選択される基を表す。
【0032】
本発明の好ましい一態様において、化合物(B)は、1個の(メタ)アクリレート基及び少なくとも1個の水素結合性基を有する化合物であり、より好ましくは、式(Ia):
【化11】
[式(Ia)中、
X
1aは水素結合性基を表し、
Y
aは、単結合又は炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキレン基を表し、
R
1は水素原子又はメチル基を表し、
R
2a~R
5aは、それぞれ独立に、炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す]
で表される化合物である。この態様において、本発明のポリオレフィン樹脂組成物は式(Ia)で表される1種類の化合物を含有してもよいし、式(Ia)で表される2種類以上の化合物を含有してもよい。
【0033】
式(Ia)中のX1aは水素結合性基を表し、水素結合性基としては、例えば上記に記載した基が挙げられる。X1aは、流動性と耐衝撃性とを両立させやすい観点からは、好ましくはヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基又はリン酸基、より好ましくはヒドロキシル基又はアミノ基、さらに好ましくはヒドロキシル基である。
【0034】
式(Ia)中のYaは、単結合又は炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキレン基を表す。炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキレン基の炭素数は、黄色度を低下させやすく、流動性と耐衝撃性とを両立させやすい観点から、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、特に好ましくは1~3である。炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、sec-ブチレン基、n-ペンチレン基、2-メチル-ブチレン基、3-メチルブチレン基、2-エチル-プロピレン基、n-ヘキシレン、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基等が挙げられる。式(Ia)中のYaは、ポリオレフィン樹脂組成物の流動性と耐衝撃性を両立させやすい観点から、好ましくは炭素数1~8のアルキル基を側鎖として有してもよいメチレン基、さらに好ましくは炭素数1~3のアルキル基を側鎖として有してもよいメチレン基、特に好ましくはメチルメチレン基又はメチレン基を表す。
【0035】
式(Ia)中のR1は水素原子又はメチル基を表し、耐衝撃性向上の観点からは、式(Ia)中のR1は水素原子を表す。
【0036】
式(Ia)中のR2a~R5aは、それぞれ独立に、炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキル基の炭素数は、ポリオレフィン樹脂組成物の流動性と耐衝撃性を両立させやすい観点から、好ましくは1~6、より好ましくは1~5である。炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、2-メチル-ブチル基、3-メチルブチル基、2-エチル-プロピル基、n-ヘキシル、n-ヘプチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基等が挙げられる。式(Ia)中のR2a~R5aは、ポリオレフィン樹脂組成物の流動性と耐衝撃性を両立させやすい観点から、それぞれ独立に、好ましくはメチル基、tert-ブチル基及び1,1-ジメチルプロピル基からなる群から選択される基である。
【0037】
本発明の好ましい一態様において、式(Ia)は、式(Ia’):
【化12】
[式(Ia’)中、X
1a及びR
1及びR
2a~R
5aは、それぞれ、式(Ia)中のX
1a、R
1及びR
2a~R
5aについて定義した通りであり、R
6は水素原子又はメチル基を表す]
で表される。この態様において、本発明のポリオレフィン樹脂組成物は式(Ia’)で表される1種類の化合物を含有してもよいし、式(Ia’)で表される2種類以上の化合物を含有してもよい。
【0038】
式(Ia’)中のX1a、R1及びR2a~R5aは、それぞれ、式(Ia)中のX1a、R1及びR2a~R5aについて定義した通りであり、式(Ia)中のX1a、R1及びR2a~R5aに関する上記の記載が、式(Ia’)中のX1a、R1及びR2a~R5aについても同様に当てはまる。
【0039】
例えば、式(Ia’)中のX1aは、好ましくはヒドロキシル基又はアミノ基であり、より好ましくはヒドロキシル基である。式(Ia’)中のR2a~R5aは、それぞれ独立に、好ましくはメチル基、tert-ブチル基及び1,1-ジメチルプロピル基からなる群から選択される基である。
【0040】
本発明の好ましい一態様において、式(Ia’)で表される化合物は、ポリオレフィン樹脂組成物自体に由来する色みを低減しやすく、ポリオレフィン樹脂組成物の流動性及び耐衝撃性を向上させやすい観点から、式(Ia’)中の、X1aがヒドロキシル基を表し、R1が水素原子を表し、R2a~R5aが1,1-ジメチルプロピル基を表し、R6がメチル基を表す化合物である。このような化合物は、例えばスミライザーGSとして、住友化学株式会社から市販されている化合物である。
【0041】
本発明の別の好ましい一態様において、式(Ia’)で表される化合物は、ポリオレフィン樹脂組成物自体に由来する色みを低減しやすく、ポリオレフィン樹脂組成物の流動性及び耐衝撃性を向上させやすい観点から、式(Ia’)中の、X1aがヒドロキシル基を表し、R1及びR6が水素原子を表し、R2a及びR5aがt-ブチル基を表し、R3a及びR4aがメチル基を表す化合物である。このような化合物は、例えばスミライザーGMとして、住友化学株式会社から市販されている化合物である。
【0042】
本発明の別の好ましい一態様において、式(I-1)で表される化合物は、ポリオレフィン樹脂組成物自体に由来する色みを低減しやすく、ポリオレフィン樹脂組成物の流動性及び耐衝撃性を向上させやすい観点から、式(I-1)中のX
1aが水素結合性基又は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基、好ましくは水素結合性基、より好ましくはヒドロキシル基を表し、R
1が水素原子を表し、R
2~R
5がメチル基を表し、Yがメチルメチレン基を表す化合物である。このような化合物は、次の式(1c):
[式(1c)中、X
1は水素結合性基又は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、R
1は水素原子を表す]
で表される化合物である。
【0043】
上記の式(Ic)で表される化合物は、ポリオレフィン樹脂等の樹脂の添加剤として使用することで、樹脂の変色を防止する、樹脂組成物の耐衝撃性及び流動性を向上させることができる化合物である。したがって、当該化合物は樹脂の添加剤、好ましくはポリオレフィン樹脂の添加剤、より好ましくは該樹脂の変色防止剤、耐衝撃性向上剤、流動性向上剤等として有効な化合物である。本発明は、上記の式(Ic)で表される化合物も提供する。なお、式(Ic)で表される化合物は、例えば実施例に記載の方法により製造することができる。
【0044】
本発明の別の好ましい一態様において、式(I)で表される化合物(B)が、式(I)中のX
1及びX
2は炭素数1~9の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基を表し、X
3は水素結合性基又は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、X
4は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、Yは、スルフィド結合を表し、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2及びR
5は水素原子を表し、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す化合物であることが好ましい。この場合、化合物(B)は式(I-2):
【化13】
[式(I-2)中、X
1及びX
2は、互いに独立に、炭素数1~9の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基を表し、X
3は水素結合性基又は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
3及びR
4は、互いに独立に、炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す]
で表される化合物である。
【0045】
上記の式(I-2)中、X3は水素結合性基又は-OC(=O)CR1=CH2で表される基を表し、流動性と耐衝撃性とを両立させやすい観点からは、好ましくは水素結合性基、より好ましくはヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基又はリン酸基、さらに好ましくはヒドロキシル基又はアミノ基、さらにより好ましくはヒドロキシル基を表す。
【0046】
上記の式(I-2)中、X1及びX2は、互いに独立に、炭素数1~9の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基を表し、ポリオレフィン樹脂組成物の流動性と耐衝撃性を両立させやすい観点から、それぞれ独立に、好ましくはメチル基、tert-ブチル基及び1,1-ジメチルプロピル基からなる群から選択される基、より好ましくはメチル基を表す。
【0047】
上記の式(I-2)中、R3及びR4は、互いに独立に、炭素数1~9の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、ポリオレフィン樹脂組成物の流動性と耐衝撃性を両立させやすい観点から、それぞれ独立に、好ましくはメチル基、tert-ブチル基及び1,1-ジメチルプロピル基からなる群から選択される基、より好ましくはtert-ブチル基を表す。
【0048】
本発明の別の好ましい一態様において、式(I-2)で表される化合物は、ポリオレフィン樹脂組成物自体に由来する色みを低減しやすく、ポリオレフィン樹脂組成物の流動性及び耐衝撃性を向上させやすい観点から、式(I-2)中のX
1及びX
2はメチル基を表し、X
3は水素結合性基又は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、R
1は水素原子を表し、R
3及びR
4はメチル基を表す化合物である。このような化合物は、次の式(Id):
【化14】
[式(1d)中、X
3bは水素結合性基又は-OC(=O)CR
1=CH
2で表される基を表し、R
1は水素原子を表す]
で表される化合物である。
【0049】
上記の式(Id)で表される化合物は、ポリオレフィン樹脂等の樹脂の添加剤として使用することで、樹脂の変色を防止する、樹脂組成物の耐衝撃性及び流動性を向上させることができる化合物である。したがって、当該化合物は樹脂の添加剤、好ましくはポリオレフィン樹脂の添加剤、より好ましくは該樹脂の変色防止剤、耐衝撃性向上剤、流動性向上剤等として有効な化合物である。本発明は、上記の式(Id)で表される化合物も提供する。なお、式(Id)で表される化合物は、例えば実施例に記載の方法により製造することができる。
【0050】
<(C)有機過酸化物>
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.01~5質量部の(C)有機過酸化物を含有する。本発明において、有機過酸化物は、例えば高温条件下でポリオレフィン樹脂鎖を切断することによりポリオレフィン樹脂を分解して、ポリオレフィン樹脂の流動性を向上させる作用を有すると考えられる。また、有機過酸化物が化合物(B)と何らかの反応を生じることにより、化合物(B)のオレフィン樹脂に対する微分散化作用を向上させる作用を有すると考えられる。有機過酸化物としては、例えば、過酸化アルキル化合物、過酸化ジアシル化合物、過酸化エステル化合物、及び、過酸化カーボネート化合物等が挙げられる。
【0051】
過酸化アルキル化合物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、tert-ブチルクミル、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,4-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリパーオキソナン等が挙げられる。
【0052】
過酸化ジアシル化合物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0053】
過酸化エステル化合物としては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α-クミルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルパーオキシル-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、ジ-tert-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、tert-アミルパーオキシ3,5,5―トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ3,5,5―トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシアセテート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-ブチルパーオキシトリメチルアジペート等が挙げられる。
【0054】
過酸化カーボネート化合物としては、例えば、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0055】
有機過酸化物は、ポリオレフィン樹脂組成物自体に由来する色みを低減しやすく、ポリオレフィン樹脂組成物の耐衝撃性及び流動性を向上させやすい観点から、好ましくは過酸化アルキル化合物であり、より好ましくは、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン及び1,4-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0056】
<(A)ポリオレフィン樹脂>
本発明のポリオレフィン樹脂組成物に含まれるポリオレフィン樹脂としては、エチレン単独重合体、炭素数3以上のα-オレフィンの単独重合体、エチレン及び炭素数3以上のα-オレフィンからなる群から選択される2種以上のモノマーの共重合体、並びに、これらと、エチレン又はαオレフィン以外の他のモノマーとの共重合体が挙げられる。ポリオレフィン樹脂として、1種類のポリオレフィン樹脂を含有してもよいし、2種類以上のポリオレフィン樹脂を含有してもよい。
【0057】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物に含まれるポリオレフィン樹脂は、好ましくはプロピレン系樹脂を含む。本明細書において、プロピレン系樹脂は、プロピレン単独重合体及びプロピレン系共重合体からなる群から選択される樹脂である。プロピレン単独重合体は、プロピレンのホモポリマーであり、プロピレン系共重合体はプロピレンと、エチレン及び/又は炭素数が4以上のα-オレフィンとの共重合体である。ポリオレフィン樹脂組成物に含まれるポリオレフィン樹脂は、1種類のプロピレン系樹脂を含有していてもよいし、2種以上のプロピレン系樹脂を含有していてもよい。
【0058】
プロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体、及び/又は、プロピレンと、エチレン及び/又は炭素数が4以上のα-オレフィンとの共重合体である。炭素数が4以上のα-オレフィンとしては、好ましくは炭素数が4~10のα-オレフィン、より好ましくは炭素数が4~8のα-オレフィンが挙げられる。炭素数が4以上のα-オレフィンの例としては、好ましくは1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン及び1-デセンが挙げられ、より好ましくは、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンが挙げられる。プロピレン系共重合体は、好ましくは、これらのα-オレフィンの1種又は2種以上とプロピレンとの共重合体であってよい。但し、プロピレン系樹脂がエチレンに由来する単量体単位を含む場合、エチレンに由来する単量体単位の量は、該プロピレン系樹脂の総量に基づいて、20質量未満である。
【0059】
ポリオレフィン樹脂がプロピレン系樹脂を含有する場合、プロピレン系樹脂の固有粘度は、成形体の剛性の観点から、好ましくは0.1~5dl/g、より好ましくは0.3~4dl/g、さらに好ましくは0.5~3dl/gである。なお、固有粘度の測定方法は、実施例に記載するとおりである。
【0060】
本発明の好ましい一態様において、ポリオレフィン樹脂組成物に含まれるポリオレフィン樹脂は、プロピレン系樹脂に加えて、エチレン系共重合体をさらに含む。エチレン系共重合体は、エチレンと、炭素数が3以上のα-オレフィンとの共重合体である。炭素数が3以上のα-オレフィンとしては、好ましくは炭素数が3~10のα-オレフィン、より好ましくは炭素数が3~8のα-オレフィンが挙げられる。炭素数が3以上のα-オレフィンの例としては、好ましくはプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン及び1-デセンが挙げられ、より好ましくは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンが挙げられる。エチレン系共重合体は、好ましくは、エチレンとこれらのα-オレフィンの1種又は2種以上との共重合体であってよい。但し、エチレン系共重合体がプロピレンに由来する単量体単位を含む場合、当該共重合体におけるエチレンに由来する単量体単位の量は、該エチレン系共重合体の総量に基づいて、20質量%以上である。
【0061】
エチレン系共重合体におけるエチレンに由来する単量体単位の含有量は、成形体の耐衝撃の観点から、該エチレン系共重合体の総量に基づいて、好ましくは20質量%以上、より好ましくは20~99.5質量%、さらにより好ましくは25~99質量%、特に好ましくは28~90質量%である。
【0062】
エチレン系共重合体における炭素数が3以上のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量は、経済性の観点から、該共重合体に含まれるエチレンに由来する単量体単位及び炭素数が3以上のα-オレフィンに由来する単量体単位の総量に基づいて、好ましくは80質量%以下、より好ましくは0.5~80質量%、さらにより好ましくは1~75質量%、特に好ましくは10~72質量%である。
【0063】
ポリオレフィン樹脂組成物に含まれるポリオレフィン樹脂が、プロピレン系樹脂に加えて、エチレン系共重合体をさらに含む本発明の好ましい一態様において、プロピレン系樹脂の含有量は、耐衝撃性と剛性を良好なバランスで達成しやすい観点から、ポリオレフィン樹脂組成物に含まれるプロピレン系樹脂及びエチレン系共重合体の合計量に基づいて、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。また、エチレン系共重合体の含有量は、耐衝撃性と剛性を良好なバランスで達成しやすい観点から、ポリオレフィン樹脂組成物に含まれるプロピレン系樹脂及びエチレン系共重合体の合計量に基づいて、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。ポリオレフィン樹脂組成物に含まれるポリオレフィン樹脂が2種以上のエチレン系共重合体を含有する場合、当該エチレン系共重合体の合計量が上記範囲となればよい。
【0064】
ポリオレフィン樹脂組成物に含まれるポリオレフィン樹脂が、プロピレン系樹脂及びエチレン系共重合体を少なくとも含む本発明の好ましい一態様において、当該ポリオレフィン樹脂は、それぞれ別々に製造したプロピレン系樹脂及びエチレン系共重合体を含んでいてもよいし、重合触媒を用いてプロピレンの単独重合体を重合し、続いて連続して、例えばエチレンガスを共存させてエチレン-プロピレン共重合体を重合することにより製造されるインパクトコポリマーとも称される樹脂を含んでいてもよい。当該インパクトコポリマーは、エチレン-プロピレンブロック共重合体とも称される樹脂である。このようなインパクトコポリマーとしては、例えば特開2004-182981号公報に記載されるポリマーが挙げられる。ポリオレフィン樹脂は、上記インパクトコポリマーとも称される樹脂に、エチレン系共重合体をさらに添加して製造してもよい。別々に製造した樹脂を混合する場合、溶融混練により混合を行ってよい。
【0065】
<その他の成分>
(フィラー)
ポリオレフィン樹脂組成物は、得られる成形体の機械物性を向上させるために、無機フィラーを含有してもよい。無機フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、結晶性ケイ酸カルシウム、タルク、繊維状マグネシウムオキシサルフェート等が挙げられる。無機フィラーは、好ましくはタルク又は繊維状マグネシウムオキシサルフェート、より好ましくはタルクである。これらは単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。無機フィラーを使用する場合、その含有量は、得られる成形体の剛性と衝撃強度を高めやすい観点から、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、好ましくは1~25質量部である。
【0066】
(添加剤)
ポリオレフィン樹脂組成物に添加してよい添加剤としては、例えば、中和剤、酸化防止剤、加工安定剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、造核剤、透明化核剤、滑剤、加工助剤、金属石鹸、着色剤(カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料)、発泡剤、抗菌剤、可塑剤、難燃剤、架橋剤、架橋助剤、高輝度化剤等が挙げられる。これらは単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。上記の添加剤を使用する場合、その含有量は、得られる成形体の剛性と衝撃強度を高めやすい観点から、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、好ましくは1~25質量部である。
【0067】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物のYIは、本発明の樹脂組成物から得られる成形体の品質を向上させやすい観点から、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは12以下、さらにより好ましくは10以下、特に好ましくは8以下、最も好ましくは6以下である。ポリオレフィン樹脂組成物のYIは、例えば樹脂組成物をプレス成形して得たシートを測定試料とし、色差計を用いて測定してよく、例えば実施例に記載の方法により測定することができる。
【0068】
<ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法>
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、(A)ポリオレフィン樹脂、(B)1個の(メタ)アクリレート基と1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物、並びに、(C)有機過酸化物を、予め乾式混合して得た混合物を溶融混練することにより互いに混合する工程を少なくとも含む製造方法により製造することができる。本発明は、当該ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法も提供する。ポリオレフィン樹脂がどのような状態で微分散化されているかは明らかではないが、(A)ポリオレフィン樹脂、化合物(B)及び有機過酸化物(C)を、予め乾式混合して得た混合物を溶融混練することにより互いに混合する工程を少なくとも含む本発明の製造方法によれば、ポリオレフィン樹脂の流動性と耐衝撃性とを向上させることができる。なお、本発明の製造方法において、(A)ポリオレフィン樹脂、化合物(B)及び有機過酸化物(C)を、予め乾式混合して得た混合物を溶融混練するとは、(A)ポリオレフィン樹脂、化合物(B)及び有機過酸化物(C)の全てを乾式混合した後、溶融混練してもよいし、(A)ポリオレフィン樹脂、化合物(B)及び/又は有機過酸化物(C)の少なくとも一部を乾式混合し、溶融混練した後、得られた混合物と残りの一部とを再度乾式混合してから、溶融混練してもよい。
【0069】
なお、本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、化合物(B)を予め樹脂と混合したマスターバッチ、及び/又は、(C)有機過酸化物を予め樹脂と混合したマスターバッチを使用して、これらのマスターバッチと(A)ポリオレフィン樹脂とを混合することにより製造してもよい。これらのマスターバッチを使用する場合には、押出機を用いて(A)ポリオレフィン樹脂を溶融混練しながら、これらのマスターバッチをサイドフィードして混合し、本発明のポリオレフィン樹脂組成物を得てもよい。
【0070】
したがって、本発明は、化合物(B)と樹脂とを含むマスターバッチ、好ましくは化合物(B)とポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂とを少なくとも含むマスターバッチも提供する。本発明のマスターバッチは、化合物(B)を、樹脂(好ましくはポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂、より好ましくはエチレン系共重合体)100質量部に対して、好ましくは10~50質量部、より好ましくは20~48質量部、さらに好ましくは25~46質量部含む。マスターバッチに含まれるポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体としては、本発明のポリオレフィン樹脂組成物に含まれるポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体として上記に記載した樹脂が挙げられる。本発明のマスターバッチは、1種類の樹脂を含有してもよいし、2種以上の樹脂を組み合わせて含有してもよい。
【0071】
本発明のマスターバッチは、有機過酸化物をさらに含んでいてもよい。この場合、有機過酸化物の量は、樹脂(好ましくはポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂、より好ましくはエチレン系共重合体)100質量部に対して、好ましくは5~25質量部、より好ましくは5~20質量部、さらに好ましくは5~15質量部である。
【0072】
本発明のマスターバッチの製造方法は、特に限定されないが、化合物(B)が加熱等により分解されることを抑制しやすい観点から、化合物(B)と樹脂とを、化合物(B)の融点よりも低い温度で混錬する方法を用いることが好ましい。このような観点から、マスターバッチは、化合物(B)と樹脂とを、場合により有機過酸化物や他の添加剤と共に、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下の温度で混錬することにより製造することが好ましい。また、化合物(B)の分解を抑制すると共に、化合物(B)が均一に分散されたマスターバッチを製造しやすい観点から、マスターバッチに含まれる樹脂は、好ましくはポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂であり、より好ましくはエチレン系共重合体である。
【0073】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法の具体例としては、例えば、
製造方法I:(A)ポリオレフィン樹脂、化合物(B)、並びに、(C)有機過酸化物を乾式混合して混合物を得る工程(1)、及び、工程(1)で得た混合物を溶融混練して、本発明のポリオレフィン樹脂組成物を得る工程(2)を含む製造方法、又は、
製造方法II:(A)ポリオレフィン樹脂と(C)有機過酸化物の一部を乾式混合して第1乾式混合物を得る工程(1a)、工程(1a)で得た乾式混合物を溶融混練して第1予備混合物を得る工程(2a)、工程(2a)で得た第1予備混合物と、化合物(B)と、(C)有機過酸化物の別の一部とを乾式混合して第2乾式混合物を得る工程(1b)、工程(1b)で得た乾式混合物を溶融混練して、本発明のポリオレフィン樹脂組成物を得る工程(2b)を含む製造方法が挙げられる。
【0074】
ポリオレフィン樹脂組成物に含まれるポリオレフィン樹脂が、プロピレン系樹脂及びエチレン系共重合体を少なくとも含む場合(特に、エチレン系樹脂の含有量が、ポリオレフィン樹脂組成物に含まれるプロピレン系樹脂及びエチレン系共重合体の合計量に基づいて、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上の場合)、ポリオレフィン樹脂組成物の耐衝撃性及び流動性を向上させやすい観点からは、(A)ポリオレフィン樹脂を、化合物(B)と溶融混練する前に、(A)ポリオレフィン樹脂と(C)有機過酸化物とを溶融混練することが好ましい。また、ポリオレフィン樹脂組成物の耐衝撃性及び流動性を向上させやすい観点からは、(A)ポリオレフィン樹脂と(C)有機過酸化物の一部とを溶融混練した後で、得られた混合物に、化合物(B)と(C)有機過酸化物の別の一部(残りの部分)とを添加することがより好ましい。したがって、当該態様においては、上記製造方法(II)を用いることが好ましい。有機過酸化物を少なくとも2回に分けて添加することにより、有機過酸化物がポリオレフィン樹脂を効率的に分解し、樹脂の流動性を向上させ易いと共に、化合物(B)とポリオレフィン樹脂との反応及び/又は相互作用にも有機過酸化物が寄与し、ポリオレフィン樹脂を微分散性が向上し、ポリオレフィン樹脂組成物の耐衝撃性を向上させやすくなると考えられる。
【0075】
ポリオレフィン樹脂組成物が他の樹脂、無機フィラー、添加剤等をさらに含有する場合、製造方法Iにおいては、これらを上記工程(1)において混合してもよいし、工程(2)において混合してもよい。また、上記製造方法IIにおいても、いずれの工程で混合してもよい。
【0076】
製造方法IIの工程(1b)及び(2b)において、工程(1a)及び(2a)で得た混合物(第1予備混合物)と化合物(B)と(C)有機過酸化物の別の一部とを混合する。第1予備混合物を、一旦、ペレットとして取り出してもよい。第1予備混合物に化合物(B)と有機過酸化物の別の一部とを、必要に応じて添加剤と共に添加し、さらに溶融混練することで、ポリオレフィン樹脂(好ましくはプロピレン系樹脂及びエチレン系共重合体)が均一に分散した、ポリオレフィン樹脂組成物を得ることができる。
【0077】
本発明の好ましい一態様において、前記工程(1)及び工程(1b)における、(B)1個の(メタ)アクリレート基と1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物の混合は、該化合物と樹脂(好ましくはポリオレフィン系樹脂及びエチレン系共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂、より好ましくはエチレン系共重合体)とを少なくとも含むマスターバッチを用いて行われる。
【0078】
乾式混合には、粉体を袋に入れ手で回して混合してもよいし、ヘンシェルミキサー、サンドミル、エッジランナー、タニナカ式粉砕機等を用いることもできる。溶融混練には、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機等を用いることができ、2台以上の押出機を組み合わせて用いることもできる。生産性を高くしやすい観点からは、溶融混練に二軸押出機を用いることが好ましい。溶融混練する際の温度(例えば押出機の設定温度)は、ポリオレフィン樹脂組成物自体に由来する色みを低減しやすい観点から、150℃以上、好ましくは160~300℃、より好ましくは170~250℃、さらに好ましくは190℃~230℃である。
【0079】
<ポリオレフィン樹脂組成物の成形体>
本発明のポリオレフィン樹脂組成物を公知の成形方法により成形することにより、成形体を製造することができる。成形方法としては、射出成形法、プレス成形法、真空成形法、真空プレス成形法、圧空成形法、発泡成形法、押出成形法等が挙げられ、これらの成形方法によって、それぞれ、射出成形体、プレス成形体、真空成形体、真空プレス成形体、圧空成形体、発泡成形体、押出成形体等を得ることができる。好ましい成形方法は、多様な成型品に対応でき、汎用性の観点から、射出成形法である。射出成形法としては、例えば、一般的な射出成形法、射出発泡成形法、超臨界射出発泡成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、ガスアシスト射出成形法、サンドイッチ成形法、サンドイッチ発泡成形法、インサート・アウトサート成形法等が挙げられる。
【0080】
例えば上記の成形方法により、本発明のポリオレフィン樹脂組成物を成形して得た成形体の用途は、特に限定されないが、好ましくは自動車内装用部品、例えば、バンパー、ドアトリム、ピラー、インスツルメンタルパネル、コンソール、ロッカーパネル、アームレスト、ドアーパネル、スペアタイヤカバー等である。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記しない限り、それぞれ質量%及び質量部を意味する。始めに物性値の測定方法を説明する。
【0082】
固有粘度の測定
極限粘度(単位:dl/g)は、以下の方法によって、テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定される値である。
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1g/dl、0.2g/dl及び0.5g/dlの3点について還元粘度を測定する。極限粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載された計算方法、すなわち還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求められる。
【0083】
メルトフローレートの測定
実施例及び比較例で得たポリオレフィン樹脂組成物のペレットについて、メルトインデクサ(型式L246-3537、株式会社テクノ・セブン製)を用いて、温度230℃、荷重2.16kgでのメルトフローレート(本明細書において、MFRと記載する場合もある)を測定した。なお、メルトフローレートの数値が高いほど、流動性に優れ、加工性に優れるといえる。
【0084】
アイゾッド衝撃強さ(Izod、単位:kJ/m2)
実施例及び比較例で得たポリオレフィン樹脂組成物のペレットを、東芝機械(株)製、IS100型射出成型機を用いて、成形温度220℃、金型冷却温度50℃の条件で射出成型し、幅12.7mm、長さ63.5mm、厚み3.2mmのアイゾッド衝撃試験片を成型後、IS-K-7110に記載の寸法のVノッチ(Aタイプ)を入れ、試験片とした。作製した試験片を、23℃で1時間以上静置して状態調節後に、東洋精機社製デジタル衝撃試験機を用いてアイゾッド衝撃試験を行い、アイゾッド衝撃強さを測定した。
【0085】
イエローインデックスの測定
実施例及び比較例で得たポリオレフィン樹脂組成物のペレットを、プレス機(関西ロール(株)社製「PEW-5040」)を用いて、温度220℃の条件でプレスし、厚さ1mmのシートを得た。得られたシートのイエローインデックス(黄色度、YI)を、色差計(コニカミノルタジャパン(株)製「CM-3500d」)を用いて測定した。なお、YIが小さいほど、変色が抑制されていることを示す。
【0086】
製造例1:ポリオレフィン樹脂(A-1)の製造
特開2004-182981号公報の実施例1に記載の方法に従い、重合触媒を製造し、該重合触媒を用いて液相-気相重合法により、プロピレン系樹脂としてプロピレン単独重合体成分79質量部と、エチレン系共重合体としてエチレン-プロピレンランダム共重合体成分21質量部とを含有するポリオレフィン樹脂(A-1)を製造した。得られたポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)は、25g/10分であった。ポリオレフィン樹脂(A-1)に含まれる、プロピレン単独重合体成分(P部、プロピレン系樹脂pp1)の固有粘度は、1.1dl/gであった。また、エチレン-プロピレンランダム共重合体成分(EP部、エチレン系共重合体ep1)の固有粘度は、2.8dl/gであり、エチレン系共重合体ep1に含まれるエチレンに由来する単量体単位の含有量はエチレン系共重合体の総量に基づいて33質量%であった。
【0087】
製造例2:ポリオレフィン樹脂(A-2)の製造
特開2004-182981号公報の実施例1に記載の方法に従い、重合触媒を製造し、該重合触媒を用いて液相-気相重合法により、プロピレン系樹脂としてプロピレン単独重合体成分89質量部と、エチレン系共重合体としてエチレン-プロピレンランダム共重合体成分11質量部とを含有するポリオレフィン樹脂(A-2)を製造した。得られたポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)は、98g/10分であった。ポリオレフィン樹脂(A-2)に含まれる、プロピレン単独重合体成分(P部、プロピレン系樹脂pp2)の固有粘度は、0.79dl/gであった。また、エチレン-プロピレンランダム共重合体成分(EP部、エチレン系共重合体ep2)の固有粘度は、7.0dl/gであり、エチレン系共重合体ep2に含まれるエチレンに由来する単量体単位の含有量はエチレン系共重合体の総量に基づいて32質量%であった。
【0088】
製造例3:有機過酸化物(C-1)含有マスターバッチの製造
有機過酸化物(C-1)(2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン)10質量部を、プロピレンホモポリマー90質量部に、室温で含浸し、有機過酸化物(C-1)を10質量%含有するポリプロピレンパウダーを製造した。
【0089】
有機過酸化物(C-2)含有マスターバッチ
有機過酸化物(C-2)を8質量%含有するマスターバッチを使用した。
【0090】
実施例1
製造例1で得たポリオレフィン樹脂(A-1)を100質量部、製造例3で得たマスターバッチを1質量部(有機過酸化物(C-1)を0.1質量部含有する)、及び、化合物(B-1)として住友化学(株)製、スミライザーGM0.14質量部を計量し、均一に混合した後、該混合物を、30mm径の二軸押出成形機(ナカタニ機械(株)製、NAS30型押出機)の最上流側の原料投入口から投入し、シリンダー温度220℃、吐出量2.4kg/時間、スクリュ回転数70rpmの条件で溶融混練し、原料を均一分散させ、ポリオレフィン樹脂組成物のペレットを得た。
【0091】
実施例2~4、比較例1及び2
有機過酸化物(C-1)の含有量、化合物(B-1)及び有機過酸化物の含有量を表1に記載のとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリオレフィン樹脂組成物のペレットを得た。
【0092】
実施例5及び6
化合物(B-1)に代えて、化合物(B-2)として住友化学(株)製、スミライザーGSを用い、化合物(B-2)の含有量を表1に記載のとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリオレフィン樹脂組成物のペレットを得た。
【0093】
比較例3
化合物(B-1)に代えて、化合物(B-3)としてフルベンを用い、化合物(B-3)の含有量を表1に記載のとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリオレフィン樹脂組成物のペレットを得た。
【0094】
実施例7
製造例2で得たポリオレフィン樹脂(A-2)を77質量部、エチレン-ブテン-1共重合体(eb1、住友化学(株)製「Excellen FX555」、エチレンに由来する単量体単位の含有量:76質量%、ブテン-1に由来する単量体単位の含有量:24質量%)を23質量部、及び、有機過酸化物(C-2)を含有するマスターバッチを、有機過酸化物(C-2)の量が表1に示す量となる量を計量し均一に混合した後、該混合物を、日本製鋼所製二軸混練機TEX44αIIの最上流側の原料投入口から投入し、シリンダー温度230℃、吐出量50kg/時間、スクリュ回転数200rpmの条件で溶融混練し、原料を均一分散させ、樹脂組成物前駆体(第1予備混合物)のペレットを得た。このようにして得たペレット100質量部に対し、化合物(B-1)を1.64質量部、及び、製造例3で得た有機過酸化物(C-1)を含有するマスターバッチを、有機過酸化物(C-1)の量が表1に示す量となる量を計量し、予め均一に混合した後、該混合物を、日本製鋼所製二軸混練機TEX44αIIの最上流側の原料投入口から投入し、シリンダー温度230℃、吐出量50kg/時間、スクリュ回転数200rpmの条件で溶融混練し、原料を均一分散させ、ポリオレフィン樹脂組成物のペレットを得た。
【0095】
比較例4
有機過酸化物(C-1)及び化合物(B-1)を添加しなかったこと以外は実施例7と同様にして、ポリオレフィン樹脂組成物のペレットを得た。
【0096】
実施例1~7及び比較例1~4で得た樹脂組成物のペレットを用いて、上記の方法に従い、メルトフローレート、アイゾッド衝撃強さ及びイエローインデックスを測定した。得られた結果を、各樹脂組成物の組成と共に表1に示す。なお、ポリオレフィン樹脂(A-1)は、上記の通り、プロピレン単独重合体成分79質量部と、エチレン-プロピレンランダム共重合体成分21質量部とを含有し、ポリオレフィン樹脂(A-2)は、上記の通り、プロピレン単独重合体成分89質量部と、エチレン-プロピレンランダム共重合体成分11質量部とを含む。また、表1中のB-3はフルベンであり、本発明における化合物(B)に相当する化合物ではない。
【0097】
【0098】
上記の1個の(メタ)アクリレート基及び少なくとも1個の水素結合性基を有する化合物(Ba)を用いる一態様においては、(A)100質量部のポリオレフィン樹脂、0.01~5質量部の化合物(Ba)、及び、(C)0.01~5質量部の有機過酸化物を少なくとも含有する、実施例1~7の本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、MFRが高く流動性に優れると共に、当該樹脂組成物を用いて製造した成形体は、耐衝撃性に優れ、黄色度YIが低いことが確認された。これに対し、化合物(B)(とりわけ化合物(Ba))も有機過酸化物も含有しない比較例1の樹脂組成物は、流動性が不十分であった。さらに、有機過酸化物を含有するが化合物(B)(とりわけ化合物(Ba))を含有しない比較例2及び4の樹脂組成物は、流動性は高いものの耐衝撃性が低い結果であった。また、本発明の化合物(B)(とりわけ化合物(Ba))に相当しないフルベン(B-3)を含有する比較例3の樹脂組成物の場合、成形体のYIが高い結果となった。
【0099】
化合物(B-4)の合成
2、4-ジメチルフェノールを100g(0.82モル)、トリオキサンを12.9g(0.14モル)、キシレン48.0g、水89.8gおよび98%硫酸3.0gを四つ口フラスコに仕込んだのち、120℃まで昇温し、還流状態で16時間保持した。その後、水相を分液除去した後、析出物をろ過し、ヘキサンでろ物を洗浄した。その後、析出物を300mlのトルエンで溶解した後、トルエン層を水100mlで3回分液洗浄を行い、トルエン層を濃縮及び乾燥し、6,6’-メチレンビス(2,4-ジメチルフェノール)を43g、収率41%、純度97%で得た。
得られた6,6‘-メチレンビス(2,4-ジメチルフェノール)を42.9g、キシレンを43.2g、トリエチルアミンを43.2g、アクリル酸を12.0gを四つ口フラスコに仕込み、75℃まで昇温した後、塩化ホスホリル19.0gを2時間かけて滴下し、その後30分間加熱保持した。その後、水130gで3回分液洗浄行った後、キシレン相を濃縮乾固した粗生成物を、シリカゲルカラムで精製を行い、次の式(B-4)で表される化合物を6.7g、収率13%、純度98%で得た。
【化15】
【0100】
化合物(B-4)の1H-NMR及びMSの測定結果は次の通りである。
1H-NMR(CDCl3、400MHz):δ2.12、2.17、2.21、2.24(s、12H、Me)、δ3.69(s、2H、Ar-CH
2
-Ar)、δ6.05(dd,J=10.4、1.2Hz、1H、CH=CH
2
)、δ6.66(dd、J=17.2、1.2Hz、1H、CH=CH
2
)、δ6.37(dd、J=17.4、10.4Hz、1H、CH=CH2)、δ6.74、6.79、6.84、6.91(s、4H、Ar)
MS(ESI) m/z(rel intensity)309.5([M-H-], 100)
【0101】
化合物(B-5)の合成
2、4-ジターシャリーブチルフェノールを30g(0.15モル)、トリオキサンを2.3g(0.025モル)、キシレン14.4g、水26.4gおよび98%硫酸1.0gを四つ口フラスコに仕込んだのち、120℃まで昇温し、還流状態で12時間保持した。その後、水相を分液除去した後、キシレン相を飽和食塩水100mlで3回洗浄した。その後、濃縮乾固したものをヘキサン60gで加熱溶解させ、再結晶を行い、析出物をろ過及び乾燥し、6,6’-メチレンビス(2,4-ジターシャリーブチルフェノール)を20g、収率57%、純度99.7%で得た。
得られた6,6’-メチレンビス(2,4-ジターシャリーブチルフェノール)を19.7g、キシレンを20.0g、トリエチルアミンを20.0g、アクリル酸3.3gを四つ口フラスコに仕込み、75℃まで昇温した後、塩化ホスホリル8.8gを1.5時間かけて滴下し、その後1時間加熱保持した。その後、水45gで3回分液洗浄行った後、キシレン相を濃縮乾固した粗生成物を、シリカゲルカラムで精製を行い、次の式(B-5)で表される化合物を8.9g、収率40%、純度98%で得た。
【化16】
【0102】
化合物(B-5)の1H-NMR及びMSの測定結果は次の通りである。
1H-NMR(CDCl3、400MHz):δ1.15、1.30、1.36、1.37(s、36H、t-Bu)、δ3.70(d、J=3.9Hz、2H、Ar-CH
2
-Ar)、δ5.15(d、J=0.5Hz、1H、OH)、δ6.09(dd,J=10.5、1.2Hz、1H、CH=CH
2
)、δ6.67(dd、J=17.3、1.2Hz、1H、CH=CH
2
)、δ6.41(dd、J=17.2、10.4Hz、1H、CH=CH2)、δ6.76、6.98、7.23、7.30(d、J=2.5、2.4、2.4、2.2Hz、4H、Ar)
MS(ESI) m/z(rel intensity)477.5([M-H-], 100)
【0103】
化合物(B-6)の合成
2-ターシャリーブチル-p-クレゾールを306g(1.86モル)、キシレンを169ml、ぺレックスNBL(花王株式会社製)を6.12gおよび2.3%硫酸313gを四つ口フラスコに仕込み、50℃まで昇温した。その後、パラアルデヒドを43.9g(326ミリモル)を2時間かけて滴下した。滴下後、95℃まで昇温し、加熱還流状態で5時間保温を行った。その後、60℃まで放冷した後、パラアルデヒドを0.544g(4.03ミリモル)を追加し、その後再度95℃まで昇温し、還流状態で15時間保温した。その後、0℃まで冷却し、析出物をろ過し、水洗し、粗生成物を得た。粗生成物をヘキサン350mlで加熱溶解させ、撹拌させながら0℃まで冷却し、析出物を少量のヘキサンで洗浄し、6,6’-メチレンビス(2-ターシャリーブチル-4メチルフェノール)を133g、純度99%で得た。
得られた6,6’-メチレンビス(2-ターシャリーブチル-4メチルフェノール)を66.5g(188ミリモル)、キシレンを66.5g、トリエチルアミンを39.9g(394ミリモル)、アクリル酸を13.5g(187ミリモル)を四つ口フラスコに仕込み、55℃まで昇温した後、塩化ホスホリル17.9g(117ミリモル)を1時間かけて滴下した。その後、室温まで放冷した後、水を添加して反応をクエンチした後、析出した結晶をろ過及び水洗し、粗生成物を得た。粗生成物をメタノールで洗浄し、乾燥を行い、次の式(B-6)で表される化合物を65.1g、収率85%、純度99%で得た。
【化17】
【0104】
化合物(B-6)の1H-NMR及びMSの測定結果は次の通りである。
1H-NMR(CDCl3、400MHz):δ1.35、1.36(s、18H、t-Bu)、δ1.46(d、J=7.1Hz、3H、Ar-CH(-CH
3
)-Ar)、δ2.15、2.35(s、6H、Ar-CH
3
)、δ3.85(q、J=6.8Hz、1H、Ar-CH(-CH3)-Ar)、δ6.16、6.78(d,J=1.0Hz、2H、CH=CH
2
)、δ6.45(dd、J=6.1、4.4Hz、1H、CH=CH2)、δ6.4-7.1(s、4H、Ar)
MS(ESI) m/z(rel intensity)407.5([M-H]-、100)
【0105】
化合物(B-7)の合成
2,4-ジメチルフェノールを230g(1.88モル)、キシレンを110g(1.20モル)、パラアルデヒドを44.8g(0.339モル)、水を230g、98%硫酸を7.3g(0.074モル)およびぺレックスNBL(花王株式会社製)2.54gを四つ口フラスコに仕込み、120℃まで昇温した。その後、還流状態で20時間保温した後、パラアルデヒドを10.9g(0.082モル)追加し、再度加熱還流を8時間継続した。追加で還流状態を8時間保持した後の総還流保温時間28時間後に、パラアルデヒド4.35g(0.033モル)を再度追加し、更に13時間還流保温を継続した。その後、キシレンを151g追加し、70℃に調温した後、撹拌しながら室温まで放冷した。その後析出物をろ過し、ろ物を水500mlで3回洗浄した後、乾燥した。パラアルデヒドを43.9g(326ミリモル)を2時間かけて滴下した。滴下後、95℃まで昇温し、加熱還流状態で5時間保温を行った。その後、60℃まで放冷した後、パラアルデヒドを0.544g(4.03ミリモル)を追加し、その後再度95℃まで昇温し、還流状態で15時間保温した。その後、キシレンを151g追加し、室温まで冷却した。析出物をろ過し、ろ物を水500mlで3回洗浄した。得られたろ物を真空乾燥後、トルエン789gに加熱溶解させ、内温60℃に調温した状態で、ヘキサン641gを加え、室温まで撹拌放冷した。析出した固体をろ過し、ろ物をヘキサン800mlで3回洗浄し、真空乾燥して目的物である1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エタンを146g、収率57%、純度99%で得た。
得られた1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エタンを145g(0.537モル)、キシレンを146g、トリエチルアミンを116g、アクリル酸を38.4g(0.533ミリモル)を四つ口フラスコに仕込み、63℃まで昇温した後、塩化ホスホリル50.9g(0.322モル)を1時間15分かけて滴下した。この時の内温は75~78℃であった。その後、72℃で1時間加熱保温した後、60℃まで室温まで放冷した後、水440mlとトルエン500mlを加えた。更にトルエン750mlと少量の食塩水を添加した後、分液を実施した。その後トルエン相を食塩水450ml、4.8%炭酸ナトリウム水溶液438g、食塩水450mlの順で洗浄を行った。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥を行った後、減圧下で溶媒留去を行った。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、次の式(B-7)で表される化合物を64.6g、収率37%、純度96%で得た。
【化18】
【0106】
化合物(B-7)の1H-NMR及びMSの測定結果は次の通りである。
1H-NMR(CDCl3、400MHz):δ1.50(d、J=7.4Hz、3H、Ar-CH(-CH
3
)-Ar)、δ2.12、2.16、2.19、2.30(s、12H、Ar-CH
3
)、δ4.04(s、1H、Ar-CH(-CH3)-Ar)、δ6.08、6.69(d,J=10.8、17.1Hz,2H,CH=CH
2
)、δ6.40(dd、J=25.6、10.4Hz、1H、CH=CH2)、δ6.6-7.0(s、4H、Ar)
MS(ESI) m/z(rel intensity)323.5([M-H]-、100)
【0107】
化合物(B-8)の合成
2,4-ジターシャリーブチルフェノールを102g(0.49モル)、キシレンを56ml、パラアルデヒドを11.8g(0.089モル)、水を102ml、98%硫酸を1.9g(0.074モル)およびぺレックスNBL(花王株式会社製)1.0gを四つ口フラスコに仕込み、92℃まで昇温した。その後、5時間保温した後、パラアルデヒドを5.9g(0.044モル)追加し、加熱撹拌を一終夜継続した。キシレンを56ml追加した後、50℃まで放冷した後、種晶を加え、更に25℃まで放冷した。析出した固体を水および少量のヘキサンで洗浄及び乾燥し、目的物である1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジターシャリーブチルフェニル)エタンを64.9g得た。同様の操作を2度実施した。
得られた1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジターシャリーブチルフェニル)エタンを73.4g(0.167モル)、キシレンを86ml、トリエチルアミンを49.7g(0.356mol)、アクリル酸を11.9g(0.166モル)を四つ口フラスコに仕込み、80℃まで昇温した後、塩化ホスホリル9.7ml(0.104モル)を50分かけて滴下した。反応完結後、内温が45℃まで放冷した後、水を150ml滴下し、トルエンにて抽出を行った。セライトろ過後、ろ液を水洗し、乾燥し、濃縮した。得られた固体をメタノールで洗浄した。セライトろ過時のろ上物をクロロホルムで抽出、硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮し、セライトろ過時のろ液より得られた固体と混合した後、再度メタノールで洗浄、乾燥し、次の式(B-8)で表される化合物を76.6g、収率93%で得た。
【化19】
【0108】
化合物(B-8)の1H-NMR及びMSの測定結果は次の通りである。
1H-NMR(CDCl3、400MHz):δ1.08、1.35、1.36、1.37(s、36H、t-Bu)、δ1.51(d、J=7.1Hz、3H、Ar-CH(-CH
3
)-Ar)、δ3.91(q、J=13.9、6.9Hz、1H、Ar-CH(-CH3)-Ar)、δ6.13,6.16(dd,J=10.5、1.0Hz,1H,CH=CH
2
)、δ6.48(dd、J=17.4、10.5Hz、1H、CH=CH2)、δ6.76(dd,J=17.2、0.9Hz,1H、CH=CH
2
)、δ6.5-7.3(s、4H、Ar)
MS(ESI) m/z(rel intensity)491.5([M-H]-、100)
【0109】
化合物(B-9)の合成
4,4-チオビス(2-ターシャリーブチル-5-メチルフェノール)(住友化学社製、WX-R)を50.0g(0.14モル)、脱水トルエンを100g、トリエチルアミンを141g(1.4モル)を四つ口フラスコに仕込み、室温で撹拌溶解させた。その後、アクリロリルクロライド 51.5g(0.56モル)を8時間かけて滴下した。反応終了後、水でトルエン相を水洗・分液を3回行い、トルエン相を濃縮・乾燥した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムで精製し、目的物である次の式(B-9)で表される化合物を12.2g、収率20%、純度99%で得た。
【化20】
【0110】
化合物(B-9)の1H-NMRの測定結果は次の通りである。
1H-NMR(CDCl3、400MHz):δ1.14、1.35(s、18H、t-Bu)、δ2.27、2.33(d、J=0.5Hz、6H、Me)、δ4.93(s、1H、OH)、δ6.03(dd,J=10.5、1.2Hz、1H、CH=CH
2
)、δ6.34(dd、J=17.3、10.3Hz、1H、CH=CH2)、δ6.60(dd、J=17.4、1.2Hz、1H、CH=CH
2
)、δ6.6-7.3(s、4H、Ar)
【0111】
実施例8~13
化合物(B-1)を表1に記載のとおり上記のようにして得た化合物(B-4)~(B-9)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリオレフィン樹脂組成物のペレットを得た。その後、ペレットを用いてメルトフローレート、アイゾッド衝撃強さ及びイエローインデックスを測定した。得られた結果を、各樹脂組成物の組成と共に表2に示す。
【表2】
【0112】
化合物(B)を含む一態様において、(A)100質量部のポリオレフィン樹脂、(B)0.01~5質量部の、1個の(メタ)アクリレート基と、1個の水素結合性基又は1個の(メタ)アクリレート基とを少なくとも有する化合物(B)、及び(C)0.01~5質量部の有機過酸化物を少なくとも含有する、実施例8~13の本発明のポリオレフィン樹脂組成物も、MFRが高く流動性に優れると共に、当該樹脂組成物を用いて製造した成形体は、耐衝撃性に優れ、黄色度YIが低いことが確認された。
【0113】
実施例14:マスターバッチの製造
エチレン・1-オクテン共重合体(The Dow Chemical Company から入手可能である、ENGAGE8842)73質量部に化合物(B-1)として住友化学(株)製、スミライザーGM27質量部をドライブレンドし、有機過酸化物(C-1)(2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン)4質量部を含浸させ、該混合物を、30mm径の二軸押出成形機(ナカタニ機械(株)製、NAS30型押出機)の最上流側の原料投入口から投入し、シリンダー温度70℃、で押出し、マスターバッチを得た。
【0114】
マスターバッチの評価
製造例1で得たポリオレフィン樹脂(A-1)98質量部にステアリン酸カルシウム0.05部、Irganox1010、0.05部、Irgafos168、0.1部を混合し、有機過酸化物(C-1)を10質量%含有するポリプロピレンパウダー1.8質量部および実施例14で得たマスターバッチを3.1質量部添加し、ドライブレンド後、30mm径の二軸押出成形機(ナカタニ機械(株)製、NAS30型押出機)の最上流側の原料投入口から投入し、シリンダー温度220℃、吐出量2.4kg/時間、スクリュ回転数70rpmの条件で溶融混練し、原料を均一分散させ、ポリオレフィン樹脂組成物のペレットを得た。樹脂組成物のペレットを用いて、上記の方法に従い、メルトフローレート、射出成形品を用いてアイゾッド衝撃強さ及びイエローインデックスを測定した。得られた結果を表3に示す。
【表3】