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特許7504903タイムシェア制御を使用した化学機械研磨
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】タイムシェア制御を使用した化学機械研磨
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/26 20120101AFI20240617BHJP
   B24B 37/005 20120101ALI20240617BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
B24B37/26
B24B37/005 Z
H01L21/304 622F
H01L21/304 622R
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021553043
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 US2020020974
(87)【国際公開番号】W WO2020185463
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】62/816,015
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/688,604
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ツァン, ジミン
(72)【発明者】
【氏名】タン, チエンショー
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン, ブライアン ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】ルー, ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ディープ, プリシラ
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-117620(JP,A)
【文献】国際公開第2008/114805(WO,A1)
【文献】特開2001-001255(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1781184(KR,B1)
【文献】特開平08-243913(JP,A)
【文献】特開2001-054856(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0106904(KR,A)
【文献】米国特許第06093651(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/26
B24B 37/005
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学機械研磨のための方法であって、前記方法が、
回転軸の周りで研磨パッドを回転させることと、
前記研磨パッドに当接するように基板を位置決めすることであって、前記研磨パッドは前記回転軸と同心の研磨制御溝を有し、前記研磨制御溝は、前記研磨パッドの研磨面に形成され、前記研磨パッドの凹み領域を構成し、研磨に寄与しない前記研磨パッドの領域を提供する、前記研磨パッドに当接するように基板を位置決めすることと、
前記基板の中央部分及び前記基板のエッジ部分が、第1の持続時間中に前記研磨パッドの研磨面上方に位置決めされ、前記基板の前記中央部分及び前記基板の前記エッジ部分が、前記第1の持続時間中に研磨されるように、前記基板を前記研磨パッドにわたって横方向に振動させることと、
第2の持続時間中に、前記基板の前記中央部分が前記研磨パッドの前記研磨面上方に位置決めされ、前記基板の前記エッジ部分が前記研磨制御溝上方に位置決めされて、前記基板の前記中央部分が前記第2の持続時間中に研磨されるような位置に、前記基板を実質的に横方向に固定して保持することとを含み、
前記エッジ部分について所望の研磨速度の低下を提供するために、前記第2の持続時間に対する前記第1の持続時間の比が選択される、方法。
【請求項2】
前記研磨パッドが、前記研磨制御溝よりも狭いスラリ供給溝を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スラリ供給溝が前記研磨制御溝と同心である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記研磨パッドが正確に1つの研磨制御溝を有しており、前記研磨制御溝が、前記研磨パッドのエッジ付近にあるか、又は前記研磨パッドの中心付近にある、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記研磨パッドが、前記研磨パッドのエッジ付近にある第1の研磨制御溝と、前記研磨パッドの中心付近にある第2の研磨制御溝とを含む、正確に2つの研磨制御溝を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記基板の前記中央部分及び前記基板の前記エッジ部分が、前記第1の持続時間中に前記研磨パッドの前記研磨面上方に位置決めされ、前記基板の前記中央部分及び前記基板の前記エッジ部分が、前記第1の持続時間中に研磨されるように、前記基板を前記研磨パッドにわたって横方向に振動させることと、
前記第2の持続時間中に、前記基板の前記中央部分が前記研磨パッドの前記研磨面上方に位置決めされ、前記基板の前記エッジ部分が前記第1の研磨制御溝上方に位置決めされて、前記基板の前記中央部分が前記第2の持続時間中に研磨されるような位置に、前記基板を実質的に横方向に固定して保持することと、
前記基板の中央部分及び前記基板のエッジ部分が、第3の持続時間中に前記研磨パッドの研磨面上方に位置決めされ、前記基板の前記中央部分及び前記基板の前記エッジ部分が、前記第3の持続時間中に研磨されるように、前記基板を前記研磨パッドにわたって横方向に振動させることと、
第4の持続時間中に、前記基板の前記中央部分が前記研磨パッドの前記研磨面上方に位置決めされ、前記基板の前記エッジ部分が前記第2の研磨制御溝上方に位置決めされて、前記基板の前記中央部分が前記第4の持続時間中に研磨されるような位置に、前記基板を実質的に横方向に固定して保持することと
を含み、前記エッジ部分について所望の研磨速度を提供するために、前記第2の持続時間対前記第1、第2、第3及び第4の持続時間の合計の比と、前記第4の持続時間対前記第1、第2、第3及び第4の持続時間の前記合計の比とが選択される、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
研磨パッドを支持するための回転可能なプラテンと、
前記研磨パッドに当接するように基板を保持するためのキャリアヘッドであって、前記研磨パッドにわたって半径方向に移動可能であるキャリアヘッドと、
前記キャリアヘッドを移動させるためのアクチュエータと、
前記アクチュエータに連結されたコントローラであって、前記キャリアヘッドに、
第1の持続時間中に、前記基板の中央部分及び前記基板のエッジ部分が前記研磨パッドの研磨面上方に位置決めされるように、前記基板を前記研磨パッドにわたって横方向に振動させることと、
第2の持続時間中に、前記基板の前記中央部分が前記研磨パッドの前記研磨面上方に位置決めされ、前記基板の前記エッジ部分が研磨制御溝上方に位置決めされるような位置に、前記基板を実質的に横方向に固定して保持することと
を行わせるように構成されたコントローラと
を備え、
前記エッジ部分について所望の研磨速度の低下を提供するために、前記第2の持続時間に対する前記第1の持続時間の比が選択され、
前記研磨制御溝は、前記研磨パッドの前記研磨面に形成され、回転軸と同心であり、前記研磨パッドの凹み領域を構成し、研磨に寄与しない前記研磨パッドの領域を提供する、
研磨システム。
【請求項8】
前記コントローラが、前記キャリアヘッドに、
前記第1の持続時間中に、前記基板の前記中央部分及び前記基板の前記エッジ部分が前記研磨パッドの前記研磨面上方に位置決めされるように、前記基板を前記研磨パッドにわたって横方向に移動させることと、
前記第2の持続時間中に、前記基板の前記中央部分が前記研磨パッドの前記研磨面上方に位置決めされ、前記基板の前記エッジ部分が第1の研磨制御溝上方に位置決めされるような位置に、前記基板を実質的に横方向に固定して保持することと、
第3の持続時間中に、前記基板の中央部分及び前記基板のエッジ部分が前記研磨パッドの研磨面上方に位置決めされるように、前記基板を前記研磨パッドにわたって横方向に移動させることと、
第4の持続時間中に、前記基板の前記中央部分が前記研磨パッドの前記研磨面上方に位置決めされ、前記基板の前記エッジ部分が第2の研磨制御溝上方に位置決めされるような位置に、前記基板を実質的に横方向に固定して保持することと
を行わせるように構成され、
前記エッジ部分に所望の研磨速度を提供するために、前記第2の持続時間対前記第1、第2、第3及び第4の持続時間の合計の比と、前記第4の持続時間対前記第1、第2、第3及び第4の持続時間の前記合計の比とが選択される、請求項7に記載の研磨システム。
【請求項9】
請求項1に記載の方法に用いる研磨パッドであって、
複数のスラリ供給溝が内部に形成された中央領域と、研磨制御溝が内部に形成された外側領域又は内側領域の少なくとも1つとを有する研磨層であって、前記研磨制御溝は前記スラリ供給溝よりも幅が広い、研磨層
を備える、研磨パッド。
【請求項10】
前記外側領域が前記研磨制御溝を有する、請求項9に記載の研磨パッド。
【請求項11】
前記内側領域が前記研磨制御溝を有する、請求項9に記載の研磨パッド。
【請求項12】
前記外側領域が第1の研磨制御溝を有し、前記内側領域が第2の研磨制御溝を有する、請求項9に記載の研磨パッド。
【請求項13】
前記研磨制御溝が5-30mmの幅である、請求項9に記載の研磨パッド。
【請求項14】
滞留時間を決定するための方法であって、前記方法が、
研磨パッドの研磨面によって研磨される際の試験基板の中央部分の研磨速度を決定することと、
前記研磨パッドの前記研磨面によって研磨される際の前記試験基板のエッジ部分のエッジ研磨速度を決定することと、
前記試験基板の前記中央部分と前記試験基板の前記エッジ部分との間の研磨の不均一性を低減するために、前記試験基板の前記エッジ部分に対する研磨速度の所望の低下を決定することと、
第1の持続時間及び第2の持続時間を計算して、研磨速度の前記所望の低下を提供することと
を含み、前記第1の持続時間は、デバイス基板の中央部分及び前記デバイス基板のエッジ部分が前記研磨パッド上に位置決めされるように、前記デバイス基板が前記研磨パッドにわたって横方向に振動するためのものであり、前記第2の持続時間は、前記デバイス基板の前記中央部分が前記研磨パッドの前記研磨面上に位置決めされ、前記デバイス基板の前記エッジ部分が研磨制御溝の上方に位置決めされるような位置に、前記デバイス基板を実質的に横方向に固定して保持するためのものであり、
前記研磨制御溝は、前記研磨パッドの前記研磨面に形成され、回転軸と同心であり、前記研磨パッドの凹み領域を構成し、研磨に寄与しない前記研磨パッドの領域を提供し、
前記第2の持続時間/(前記第1の持続時間と前記第2の持続時間との和)により、前記滞留時間が決定される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板の化学機械研磨に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路は、典型的には、シリコンウエハ上に導電層、半導電層、又は絶縁層を連続的に堆積させることによって、基板上に形成される。1つの製造ステップは、非平面の表面上に充填層を堆積させ、該充填層を平坦化することを含む。特定の用途では、パターニングされた層の上面が露出するまで、充填層が平坦化される。例えば、導電性充填層がパターニングされた絶縁層上に堆積し、絶縁層のトレンチ又は孔を充填することができる。平坦化後に、絶縁層の隆起したパターンの間に残る導電層の部分が、基板上の薄膜回路の間に導電経路を提供するビア、プラグ、及びラインを形成する。酸化物研磨のような他の用途では、充填層は、非平面の表面上に所定の厚さが残るまで平坦化される。加えて、基板表面の平坦化は、通常、フォトリソグラフィのために必要とされる。
【0003】
化学機械研磨(CMP)は、平坦化の1つの容認された方法である。この平坦化方法は、典型的には、基板がキャリア又は研磨ヘッド上に装着されることを必要とする。基板の露出面は、典型的には、回転する研磨パッドに当接するように置かれる。キャリアヘッドは、基板に制御可能な負荷をかけ、研磨パッドに押し付ける。研磨用研磨スラリが、通常、研磨パッドの表面に供給される。
【0004】
研磨する際の1つの問題は、基板にわたる研磨速度の不均一性である。例えば、基板のエッジ部分は、基板の中央部分に対してより高速で研磨されうる。
【発明の概要】
【0005】
1つの態様では、化学機械研磨のための方法は、、回転軸の周りで研磨パッドを回転させることと、研磨パッドに当接するように基板を位置決めすることと、基板の中央部分及び基板のエッジ部分が、第1の持続時間中に研磨パッドの研磨面上方に位置決めされ、第1の持続時間中に研磨されるように、基板を研磨パッドにわたって横方向に振動させることと、基板の中央部分が研磨パッドの研磨面上方に位置決めされ、基板のエッジ部分が第2の持続時間中に研磨制御溝上方に位置決めされ、基板の中央部分が第2の持続時間中に研磨されるような位置に、基板を実質的に横方向に固定して保持することとを含む。
【0006】
別の態様では、研磨システムは、研磨パッドを支持するための回転可能なプラテンと、研磨パッドに当接するように基板を保持するために、研磨パッドにわたって半径方向に移動可能なキャリアヘッドと、キャリアヘッドを移動させるためのアクチュエータと、アクチュエータに連結されたコントローラとを含む。コントローラは、基板の中央部分及び基板のエッジ部分が、研磨パッドの研磨面上方に位置決めされるように、第1の持続時間中に基板を研磨パッドにわたって横方向に振動させることと、第2の持続時間中に、基板の中央部分が研磨パッドの研磨面上方に位置決めされ、基板のエッジ部分が研磨制御溝上方に位置決めされるような位置に、基板を実質的に横方向に固定して保持することと
をキャリアヘッドに行わせるように構成される。
【0007】
別の態様では、研磨パッドは、複数のスラリ供給溝が内部に形成された中央領域と、研磨制御溝が内部に形成された外側領域を有する研磨層を含み、研磨制御溝はスラリ供給溝よりも幅が広い。
【0008】
別の態様では、滞留時間を決定するための方法は、研磨パッドの研磨面によって研磨される際の試験基板の中央領域の研磨速度を決定することと、研磨パッドの研磨面によって研磨される際の基板のエッジ部分のエッジ研磨速度を決定することと、基板の中央部分と基板のエッジ部分との間の研磨の不均一性を低減するために、基板のエッジ部分に対する研磨速度の所望の低下を決定することと、第1の持続時間及び第2の持続時間を計算して、研磨速度の所望の低下を提供することとを含む。第1の持続時間は、デバイス基板の中央部分及び基板エッジのエッジ部分が研磨パッド上に位置決めされるように、デバイス基板が研磨パッドにわたって横方向に振動するためのものであり、第2の持続時間は、基板の中央部分が研磨パッドの研磨面上に位置決めされ、基板のエッジ部分が溝の上方に位置決めされるような位置に、デバイス基板を実質的に横方向に固定して保持するためのものである。
【0009】
実施態様は、以下の特徴のうちの1つ又は複数を含みうる。
【0010】
エッジ部分について所望の研磨速度を提供するために、第1の持続時間対第2の持続時間の比が選択されうる。
【0011】
研磨パッドは、スラリ供給溝を有しうる。スラリ供給溝は、研磨制御溝よりも狭くてもよい。スラリ供給溝は、研磨制御溝と同心でありうる。研磨制御溝は、スラリ供給溝を囲みうる。研磨制御溝は、研磨パッドのエッジの近くに位置決めされうる。研磨制御溝の幅は5~30mmでありうる。
【0012】
滞留時間は、溝の半径、基板の半径、及び研磨パッドの中心から基板の中心までの距離を使用して計算されうる。
【0013】
実施態様は、オプションで、以下の利点のうちの1つ又は複数を含みうるが、これらに限定されない。研磨の不均一性(例えば、基板の異なる部分での異なる研磨速度によって生じる)は、制御及び補正することができる。例えば、非研磨溝に対する基板の位置を制御することにより、エッジ補正を提供することができる。加えて、研磨に対する調整は、別個のモジュールの一部としてではなく、研磨ステーションで行うことができるので、スループットへの影響は最小限である。更に、第2のステーションは、エッジ補正を実行する必要がなく、研磨ステーション洗浄室で必要とされる設置面積を減少させる。
【0014】
1つ又は複数の実施態様の詳細は、添付の図面及び以下の説明に明記される。他の態様、特徴、及び利点は、説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】溝を有する研磨パッドを備えた化学機械研磨システムの概略断面図である。
図2】スラリ供給溝と研磨制御溝の両方を有する研磨パッドの概略断面図である。
図3A】回転軸と同心の溝を有する研磨パッドの概略上面図である。
図3B】回転軸と同心の溝を有する研磨パッドの別の実施態様の概略上面図である。
図3C】回転軸と同心の2つの溝を有する研磨パッドの別の実施態様の概略上面図である。
図4A】プラテン上の基板位置対時間の例示的なグラフである。
図4B】別の実施態様のプラテン上の基板位置対時間の例示的なグラフである。
図4C】別の実施態様のプラテン上の基板位置対時間の例示的なグラフである。
図5】ベースライン除去とタイムシェア制御除去からのウエハエッジ均一性の比較を示す例示的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
様々な図面における類似の参照番号及び記号表記は、類似の要素を示す。
【0017】
上述のように、基板が研磨パッドによって研磨されるときに、基板のエッジ部分は、基板の中央部分よりも高い速度で研磨される可能性があり、その結果、不均一に研磨された基板が生じる。しかしながら、研磨制御溝上方に基板を位置決めし保持することにより、研磨された基板の不均一性を低減することができる。研磨制御溝は、研磨パッドの周囲により近い位置若しくは研磨パッドの中心に近い位置に配置することができ、又は研磨パッドは、周囲により近い第1の研磨制御溝と、中心により近い第2の研磨制御溝とを含みうる。
【0018】
図1は、化学機械研磨システム20の研磨ステーションの例を示す。研磨システム20は、回転可能なディスク形状のプラテン24を含み、その上に研磨パッド30が置かれている。プラテン24は、軸25を中心として回転するように動作可能である。例えば、モータ26は、プラテン24を回転させるために、駆動軸28を回すことができる。研磨パッド30は、外側研磨層32及びより柔らかいバッキング層34を有する二層研磨パッドとすることができる。外側研磨層32は、研磨面36を有する。
【0019】
研磨システム20は、研磨液94(研磨用スラリなど)を研磨パッド30上に分配するために、供給ポート又は組み合わせた供給-濯ぎアーム92を含みうる。研磨システム20は、研磨パッド30の研磨面36の表面粗さを維持するために、調整ディスク42を備えたパッドコンディショナ装置40を含みうる。調整ディスク42は、ディスク42を、研磨パッド30を半径方向に横切って掃引するように揺動できるアーム44の端に位置決めされうる。
【0020】
キャリアヘッド70は、基板10を研磨パッド30に当接するよう保持するように動作可能である。キャリアヘッド70は、支持構造50(例えば、カルーセル又はトラック)から吊り下げられ、キャリアヘッドが軸55の周りを回転できるように、駆動軸58によってキャリアヘッド回転モータ56に連結される。オプションで、キャリアヘッド70は、トラックに沿った移動によって、又はカルーセル自体の回転振動によって、例えば、カルーセル上のスライダ上で、横方向に振動しうる。
【0021】
キャリアヘッド70は、ハウジング72と、ベース76、及び複数の加圧可能チャンバ80を画定する可撓性膜78を含む基板バッキングアセンブリ74と、ジンバル機構82(アセンブリ74の一部とみなされうる)と、ローディングチャンバ84と、保持リングアセンブリ100と、アクチュエータ122とを含む。
【0022】
ハウジング72は、概して、円形の形状とすることができ、研磨中に共に回転するように駆動軸58に連結することができる。キャリアヘッド100の空気圧制御のためにハウジング72を通って延びる通路(図示せず)が存在しうる。基板バッキングアセンブリ74は、ハウジング72の下に位置する垂直可動アセンブリである。ジンバル機構82は、ハウジング72に対するベース76の横方向の動きを防止しつつ、ベース76がハウジング72に対してジンバルできるようにする。ローディングチャンバ84は、ハウジング72とベース76との間に位置し、ベース76に、したがって基板バッキングアセンブリに、負荷(即ち、下向きの圧力又は重量)を加える。研磨パッドに対する基板バッキングアセンブリ74の垂直位置もまた、ローディングチャンバ84によって制御される。可撓性膜78の下面は、基板10に装着面を提供する。
【0023】
ある実施態様では、基板バッキングアセンブリ74は、ハウジング72に対して移動可能な別個の構成要素ではない。この場合、チャンバ84及びジンバル82は不要である。
【0024】
図1を参照すると、研磨パッド30は、研磨面36に形成された少なくとも1つの研磨制御溝102を有する。各研磨制御溝102は、研磨パッド30の凹み領域である。各研磨制御溝102は、環状溝、例えば円形であり、回転軸25と同心でありうる。各研磨制御溝102は、研磨に寄与しない研磨パッド30の領域を提供する。
【0025】
研磨制御溝102の壁は、研磨面36に対して直角である。研磨制御溝102の底面は、研磨面36と平行であるが、いくつかの実施態様では、研磨制御溝102の底面は、研磨面36に対して角度付けすることができる。研磨制御溝102の底部は、長方形又はU字形の断面を有しうる。研磨制御溝102は、10~80ミル、例えば10~60ミルの深さでありうる。
【0026】
いくつかの実施態様では、パッド30は、研磨パッド30の外側エッジ近傍に、例えば、外側エッジの15%以内(10%(半径による)など)に位置する研磨制御溝102aを含む。例えば、溝102aは、直径が30インチのプラテンの中心から14インチの半径方向の距離に位置しうる。
【0027】
いくつかの実施態様では、パッド30は、研磨パッド30の中心付近に、例えば、回転軸25の15%以内(10%(半径による)など)に位置する研磨制御溝102bを含む。例えば、溝102bは、直径が30インチのプラテンの中心から1インチの半径方向の距離に位置しうる。
【0028】
いくつかの実施態様では、パッド30は、研磨パッド30の外側エッジ付近に位置する研磨制御溝102aのみを含む(図3A参照)。この場合、研磨パッド30の外側エッジ付近に単一の制御研磨溝102だけが存在しうる。いくつかの実施態様では、パッド30は、研磨パッド30の中心付近に位置する研磨制御溝102bのみを含む(図3B参照)。この場合、研磨パッド30の中心付近に単一の制御研磨溝102だけが存在しうる。いくつかの実施態様では、パッド30は、研磨パッド30のエッジ付近に位置する第1の研磨制御溝102aと、研磨パッド30の中心付近に位置する第1の研磨制御溝102bとを含む(図3C参照)。この場合、研磨面に正確に2つの研磨溝102が存在しうる。
【0029】
図1に戻ると、研磨制御溝102は、基板10の一部を溝の上方に位置決めすることによって、その部分の研磨速度が大幅に低下することになるほど十分に幅広い。特に、エッジ補正のために、溝102は、基板のエッジでの環状バンド、例えば、少なくとも3mm幅のバンド(例えば、3~15mm幅のバンド(3~10mm幅のバンドなど))が研磨速度を低下させることになるほど十分に幅広い。研磨制御溝102は、3~50ミリメートル(例えば5~50ミリメートル、例えば3~10ミリメートル、例えば10~20ミリメートル)の幅を有しうる。
【0030】
基板10が研磨パッド30の研磨面36の上方に位置決めされると、研磨面36は、基板10に接触して研磨し、材料除去が行われる。一方、基板10のエッジが研磨制御溝102の上方に位置決めされると、基板10のエッジの接触及び研磨はなく、除去が行われる。オプションで、溝102は、研磨スラリが基板10を研磨することなく通過するための導管を提供することができる。
【0031】
ここで図2を参照すると、研磨パッド30はまた、1つ又は複数のスラリ供給溝112を含みうる。スラリ供給溝112は、環状溝、例えば、円形溝であり、研磨制御溝102と同心でありうる。あるいは、スラリ供給溝は、別のパターン、例えば、長方形のクロスハッチ、三角形のクロスハッチ等を有しうる。スラリ供給溝は、の約0.015~0.04インチの間(0.381~1.016mmの間(0.20インチなど))の幅、及び約0.09~0.24インチの間(0.12インチなど)のピッチを有しうる。
【0032】
スラリ供給溝112は、研磨制御溝102よりも狭い。例えば、スラリ供給溝112は、少なくとも3倍、例えば、少なくとも6倍(6~100倍など)の幅で狭くすることができる。スラリ供給溝112は、研磨パッド30にわたって均一に間隔を置くことができる。研磨制御溝102は、スラリ供給溝112よりも小さい、類似の、又は大きい深さを有しうる。いくつかの実施態様では、研磨制御溝102は、スラリ供給溝112よりも広い研磨パッド上の唯一の溝である。いくつかの実施態様では、研磨制御溝102a及び102bは、スラリ供給溝112よりも幅の広い研磨パッド上の唯一の溝である。
【0033】
ここで図3Aを参照すると、第1の持続時間にわたって、基板10は、基板10の中央部分12と基板10のエッジ部分14との両方が研磨パッド30の研磨面36によって研磨されるように、第1の位置又は第1の範囲の位置に位置決めされうる。よって、基板10のいずれも研磨制御溝102に重ならない。基板10の部分はスラリ供給溝112に重なるが、スラリ供給溝112は、比較的近接し間隔を置いて配置され、相対運動が、研磨速度に及ぼす影響を平均化する。
【0034】
第2の持続時間の間に、基板10の中央部分12が研磨面36によって研磨され、基板10のエッジ部分14の領域14aが研磨制御溝102の上方にあるように、基板10が位置決めされうる。第2の持続時間の間に、基板10は、第2の位置に横方向に固定されて保持されうる。こうして基板10の中央部分12は、第2の持続時間中に研磨され、一方、基板10のエッジ部分14の領域14aは、研磨制御溝102の上方に位置決めされており、研磨されない。エッジ部分14の一部(14bで示される)は研磨面36の上方に残るので、エッジ部分14は、なおもある程度研磨されるだろう。基板10の回転により、エッジ部分14は、なおも角度的に均一な方法で研磨されるべきであるが、領域14aにおける研磨の不足により、中央部分12よりも低い速度で研磨されるべきである。加えて、基板10の部分はスラリ供給溝112に重なるが、スラリ供給溝112は、比較的近接し間隔を置いて配置され、相対運動が、研磨速度に及ぼす影響を平均化する。コントローラは、支持体がキャリアヘッド70を移動させて、第1の持続時間中に基板10を横方向に振動させ、第2の持続時間中に一時、基板10を横方向に固定された位置で保持させうる。
【0035】
基板10のエッジ部分14の除去を少なくし、かつより均一に研磨された基板10を得るために、非研磨領域のタイムシェアが決定されうる。例えば、式[1]は、非研磨領域の
を決定するするために使用されうる。
ここで、
は、基板の中心に対する研磨制御溝102aによる基板10を横切る角度であり、式[2]~[3]を用いて決定されうる。
及び
ここで、
は、溝102aの内側エッジの半径であり、
は、基板10の半径であり、
は、研磨パッド30の中心から基板10の中心までの距離である。
【0036】
ここで図3A及び図4Aを参照すると、基板10の中央部分12及び基板10のエッジ部分14は、第1の持続時間T(t~t)の間に、研磨パッド30の研磨領域の上方に位置決めされる。基板は、この第1の持続時間中に、振動するように横方向に移動されうる。第1の持続時間の終わりに、基板は再び位置決めされる。基板10の中央部分12は、研磨パッド30の研磨領域上方に位置決めされ、基板10のエッジ部分14は、第2の持続時間T(t~t)の間に、研磨制御溝102の非研磨領域上方に位置決めされ、保持される。
【0037】
第1の持続時間の第1の位置(基板10の中央部分とエッジ分とが研磨される)と、
を使用して計算された持続時間中の第2の持続時間における第2の位置(基板10の中央部分が研磨され、基板10のエッジ分が研磨されない第2の位置に基板が保持される)との間で、基板10が振動するように、このプロセスを繰り返すことができる。
【0038】
第1の持続時間T対第2の持続時間Tの比は、エッジ部分14の研磨速度を所望の量だけ低下させるように選択されうる。例えば、比T/Tは、エッジで所望の研磨速度を達成するように、例えば、中央部分12と同じ研磨速度を達成するように、選択されうる。
【0039】
比T/(T+T)は、基板、例えばエッジ部分14bが、溝102上方に位置決めされ保持されるサイクル当たりの時間の割合(滞留時間としても知られている)を提供し、この場合、サイクルは、基板が1回の振動中に同じ位置に戻るのに要する時間の量によって決定される。
【0040】
一般に、Pが研磨制御溝を使用しないエッジ部分14の研磨速度であり、かつPDESが所望の研磨速度である場合、比T/(T+T)は以下のように設定されうる。
【0041】
図5は、基板のベースライン研磨120(例えば、タイムシェア制御なしの基板研磨)と基板のタイムシェア制御研磨130とからのウエハエッジ均一性の比較を示す例示的なグラフである。基板の中央部分の研磨は、ベースライン研磨120とタイムシェア制御研磨130との間で同等であるが、基板のエッジ部分の研磨は、ベースライン研磨120の方がタイムシェア研磨130よりも約9%高い。すなわち、ベースライン除去120に続いて、基板のエッジ部分は、基板の中央部分よりも約9%薄くなるだろう。タイムシェア制御を使用することによって、基板エッジ領域は、研磨領域にわたって約91%の時間を費やし、非研磨領域にわたって約9%の時間を費やすように位置決めされた(例えば、
について)。タイムシェア制御研磨130を用いて、研磨不均一性が低減された。
【0042】
図3Aは、研磨パッド30の周囲付近に研磨制御溝102aを備えた研磨パッドを使用することを図示しているが、類似のプロセスは、研磨パッド30の中心付近に研磨制御溝102bを備えた研磨パッドを使用して実行することができる。図3B及び図4Bを参照すると、研磨制御溝が中心付近にある研磨パッドについて、PDESは、上記と類似の方法で計算することができるが、式[5]~[8]を使用する。
【0043】
特に、式[5]は、非研磨領域の
を決定するために使用されうる。
ここで、
は、基板の中心に対して研磨制御溝102bによって基板10を横切る角度であり、式[6]~[7]を用いて決定されうる。
及び
ここで、
は、研磨制御溝102bの外側エッジの半径であり、
は、基板10の半径であり、
は、研磨パッド30の中心から基板10の中心までの距離である。
【0044】
次に、Pが研磨制御溝を使用しないエッジ部分14の研磨速度であり、かつPDESが所望の研磨速度である場合、比T/(T+T)は以下のように設定されうる。
【0045】
図3A及び図3Bは、単一の研磨制御溝102を有する研磨パッドを使用することを図示しているが、類似のプロセスは、2つの研磨制御溝102a、102bを有する研磨パッドを使用して実行することができる。ここで図3C及び図4Cを参照すると、基板10の中央部分12及び基板10のエッジ部分14は、第1の持続時間T(t~t)の間、研磨パッド30の研磨領域の上方に位置決めされる。基板は、この第1の持続時間中に、振動するように横方向に移動させることができるか、又は単に、研磨パッドを横切って直線的に移動させることができる。第1の持続時間の終わりに、基板が再び位置決めされ、基板10の中央部分12が研磨パッド30の研磨領域上方に位置決めされ、基板10のエッジ部分14が研磨パッドの周囲付近の研磨制御溝102aの非研磨領域上方に位置決めされる。基板は、第2の持続時間T(t~t)の間、この位置に保持されうる。次に、基板10の中央部分12と基板10のエッジ部分14とが、第3の持続時間T(t~t)中に、研磨パッド30の研磨領域の上方に位置決めされる。基板は、この第1の持続時間中に、振動するように横方向に移動させることができるか、又は単に、研磨パッドを横切って直線的に移動させることができる。第3の持続時間の終わりに、基板が再び位置決めされ、基板10の中央部分12が研磨パッド30の研磨領域上方に位置決めされ、基板10のエッジ部分14が研磨パッドの中心付近の研磨制御溝102bの非研磨領域上方に位置決めされる。基板は、第4の持続時間T(t~t)の間、この位置に保持されうる。
【0046】
Pが研磨制御溝を使用しないエッジ部分14の研磨速度であり、かつPDESが所望の研磨速度である場合、T/(T+T+T+T)及びT/(T+T+T+T)の比は、以下のように設定されうる。
ここで、S1及びS2は式[1]-[3]及び[5]-[7]に記載されるように計算される。
【0047】
本明細書で使用される際に、基板という用語は、例えば、製品基板(例えば、複数のメモリ又はプロセッサダイを含む)、試験基板、ベア基板、及びゲーティング基板を含みうる。基板は、集積回路製造の種々の段階にあり、例えば、基板はベアウエハであり、又は1つ以上の堆積層及び/又はパターニングされた層を含みうる。基板という用語は、円板及び矩形薄板を含みうる。
【0048】
上述の研磨システム及び方法は、様々な研磨システムに適用することができる。研磨パッド若しくはキャリアヘッドのいずれか、又はそれらの両方は、研磨面と基板との間の相対運動を提供するために、移動することができる。研磨パッドは、プラテンに固定された円形(又は何らかの他の形状)のパッドでありうる。研磨層は、標準的な(例えば、充填剤を含む又は含まないポリウレタン)研磨材料、軟質材料、又は固定研磨材料でありうる。相対的な位置決めの用語が使用されるが、研磨面及び基板は、垂直配向又は他の何らかの配向に保持されうると理解されるべきである。
【0049】
本発明の特定の実施形態が説明されてきた。他の実施形態が、以下の特許請求の範囲内に含まれる。例えば、特許請求の範囲に記載された作用を異なる順序で実行し、なおも望ましい結果を得ることができる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5