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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20240617BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240617BHJP
   C08G 73/12 20060101ALI20240617BHJP
   C08F 299/02 20060101ALI20240617BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
G03F7/027 514
G03F7/004 501
C08G73/12
C08F299/02
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024515545
(86)(22)【出願日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 JP2023016824
(87)【国際公開番号】W WO2023233896
(87)【国際公開日】2023-12-07
【審査請求日】2024-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2022090502
(32)【優先日】2022-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 和明
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-073127(JP,A)
【文献】特開2009-155433(JP,A)
【文献】特開2011-059656(JP,A)
【文献】特開2014-157310(JP,A)
【文献】国際公開第2014/104090(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
C08G 73/12
C08F 299/02
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂前駆体(A)と、光ラジカル重合開始剤(C)と、有機溶媒(S)とを含む、感光性樹脂組成物であって、
前記ポリイミド樹脂前駆体(A)が、下記式(1):
【化1】
(式(1)中、XA1、及びYA1は、炭素原子数6以上40以下の有機基であり、
A1、及びRA2は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1以上30以下の有機基であり、RA1、及びRA2としての前記有機基は、C-O結合を介して、式(1)中のエステル結合中の酸素原子に結合する。)
で表される構成単位からなり、
前記ポリイミド樹脂前駆体(A)が、前記RA1、及び前記RA2としての前記有機基として、炭素-炭素二重結合を有する炭素原子数3以上20以下の不飽和基を有し、
前記ポリイミド樹脂前駆体(A)が、前記YA1として、下記式(A1-1):
【化2】
(式(A1-1)中、Xは、(ma1+ma3+2)価の有機基であり、Ra1は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、又はハロゲン原子であり、Ra2は、炭素原子数1以上20以下の脂肪族基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、又はハロゲン原子であり、Arは、Ra2で置換されていてもよいフェニル基、又はRa2で置換されていてもよいナフチル基であり、ma1は、0以上10以下の整数であり、ma2は、0以上7以下の整数であり、ma3は、1以上10以下の整数である。)
で表される2価の基、又は下記式(A2-1):
【化3】
(式(A2-1)中、Ra3及びRa4は、それぞれ独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子であり、ma4及びma5は、それぞれ独立に0以上4以下の整数である。)
で表される部分構造を有する2価の基を含み、
有機溶媒(S)がウレア系溶媒(S1)を含み、
前記有機溶媒(S)の質量に対する、前記ウレア系溶媒(S1)の質量の比率が、50質量%以上である、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ウレア系溶媒(S1)の含有量が、前記ポリイミド樹脂前駆体(A)100質量部に対して、90質量部以上である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ウレア系溶媒(S1)の含有量が、前記ポリイミド樹脂前駆体(A)100質量部に対して、200質量部以上である、請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
感光性樹脂組成物の質量に対する、前記有機溶媒(S)以外の成分の質量の比率が50質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ウレア系溶媒(S1)が、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア、N,N,N’,N’-テトラエチルウレア、N,N,N’,N’-テトラブチルウレア、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、及びN,N’-ジメチルプロピレンウレアからなる群より選択される1種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
基板上に、請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を塗布して、塗布膜を形成することと、
前記塗布膜を位置選択的に露光することと、
露光された前記樹脂膜を現像することと、を含む、パターン化された樹脂膜の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法により製造された前記パターン化された樹脂膜を加熱することにより、前記ポリイミド樹脂前駆体に由来するポリイミド樹脂を生成させることを含む、パターン化されたポリイミド樹脂膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂前駆体を含む感光性樹脂組成物と、当該感光性樹脂祖組成物を用いるパターン化された樹脂膜、及びパターン化されたポリイミド樹脂膜の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂、及びポリアミド樹脂は、優れた耐熱性、機械的強度、及び絶縁性や、低誘電率等の特性を有するため、種々の素子や、多層配線基板等の電子基板のような電気・電子部品において、絶縁材や保護材として広く使用されている。
【0003】
近年、携帯電話等の通信機器では、高周波数化が進んでいる。そのため、通信機器が有する金属配線を絶縁する絶縁部にも高周波数化への対応が求められる。
ここで、周波数が高いほど伝送損失が増加し、伝送損失が増加すると電気信号が減衰する。したがって、ポリイミド樹脂、及びポリアミド樹脂等の樹脂に対して、高周波数化への対応として、さらに伝送損失を低減するために、高周波数帯域でのさらなる低誘電正接化と、さらなる低誘電率化が求められる。
【0004】
上記のような要求から、高周波数帯域において良好な誘電特性を示す樹脂膜を形成できる組成物として、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルに由来する4,4’-ジオキシビフェニル骨格を有する構成単位を有する特定の構造の芳香族ポリアミド樹脂と、光重合開始剤とを含む感光性樹脂組成物(特許文献1、実施例を参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2019/044874号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される感光性樹脂組成物を用いる場合、ある程度誘電正接が低いポリイミド樹脂膜を形成できる。一方で、特許文献1に記載される感光性樹脂組成物には、保管時に増粘等の性状変化が生じやすい問題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、誘電正接が低いポリイミド樹脂を与え、且つ保管時の安定性に優れる感光性樹脂組成物と、当該感光性樹脂組成物用いるパターン化された樹脂膜、及びパターン化されたポリイミド樹脂膜の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、側鎖に芳香族基を有するジアミン化合物や、4,4’-ジオキシビフェニル骨格を有するジアミン化合物と、炭素-炭素二重結合を含む不飽和基を有するジカルボン酸化合物とに由来するポリイミド樹脂前駆体(A)と、光ラジカル重合開始剤(C)と、有機溶媒(S)とを含む、感光性樹脂組成物において、有機溶媒(S)として、特定の量のウレア系溶媒(S1)を用いることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
本発明の第1の態様は、ポリイミド樹脂前駆体(A)と、光ラジカル重合開始剤(C)と、有機溶媒(S)とを含む、感光性樹脂組成物であって、
ポリイミド樹脂前駆体(A)が、下記式(1):
【化1】
(式(1)中、XA1、及びYA1は、炭素原子数6以上40以下の有機基であり、
A1、及びRA2は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1以上30以下の有機基であり、RA1、及びRA2としての前記有機基は、C-O結合を介して、式(1)中のエステル結合中の酸素原子に結合する。)
で表される構成単位からなり、
ポリイミド樹脂前駆体(A)が、前記RA1、及び前記RA2としての前記有機基として、炭素-炭素二重結合を有する炭素原子数3以上20以下の不飽和基を有し、
ポリイミド樹脂前駆体(A)が、YA1として、下記式(A1-1):
【化2】
(式(A1-1)中、Xは、(ma1+ma3+2)価の有機基であり、Ra1は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、又はハロゲン原子であり、Ra2は、炭素原子数1以上20以下の脂肪族基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、又はハロゲン原子であり、Arは、Ra2で置換されていてもよいフェニル基、又はRa2で置換されていてもよいナフチル基であり、ma1は、0以上10以下の整数であり、ma2は、0以上7以下の整数であり、ma3は、1以上10以下の整数である。)
で表される2価の基、又は下記式(A2-1):
【化3】
(式(A2-1)中、Ra3及びRa4は、それぞれ独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子であり、ma4及びma5は、それぞれ独立に0以上4以下の整数である。)
で表される部分構造を有する2価の基を含み、
有機溶媒(S)がウレア系溶媒(S1)を含み、
有機溶媒(S)の質量に対する、ウレア系溶媒(S1)の質量の比率が、50質量%以上である、感光性樹脂組成物である。
【0010】
本発明の第2の態様は、基板上に、第1の態様にかかる感光性樹脂組成物を塗布して、塗布膜を形成することと、塗布膜を位置選択的に露光することと、露光された塗布膜を現像することと、を含む、パターン化された樹脂膜の製造方法である。
【0011】
本発明の第3の態様は、第2の態様にかかる製造方法により製造された前記パターン化された樹脂膜を加熱することにより、ポリイミド樹脂前駆体に由来するポリイミド樹脂を生成させることを含む、パターン化されたポリイミド樹脂膜の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、誘電正接が低いポリイミド樹脂を与え、且つ保管時の安定性に優れる感光性樹脂組成物と、当該感光性樹脂組成物用いるパターン化された樹脂膜、及びパターン化されたポリイミド樹脂膜の製造方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
≪感光性樹脂組成物≫
感光性樹脂組成物は、ポリイミド樹脂前駆体(A)と、光ラジカル重合開始剤(C)と、有機溶媒(S)とを含む。
【0014】
ポリイミド樹脂前駆体(A)は、後述する式(1)で表される構成単位からなる。感光性樹脂組成物が、式(1)で表される構成単位からなるポリイミド樹脂前駆体(A)を含むことにより、感光性樹脂組成物を用いて、誘電正接が低いポリイミド樹脂を形成することができる。
ポリイミド樹脂前駆体(A)については、詳細に後述する。
【0015】
有機溶媒(S)は、ウレア系溶媒(S1)を含む。ウレア系溶媒(S1)の含有量は、前記有機溶媒(S)の質量に対して、50質量%以上である。感光性樹脂組成物が、上記の量のウレア系溶媒(S1)を含むことにより、感光性樹脂組成物は、保管時の安定性に優れる
【0016】
以下、感光性樹脂組成物が含み得る、必須、又は任意の成分について説明する。
【0017】
<ポリイミド樹脂前駆体(A)>
ポリイミド樹脂前駆体(A)は、下記式(1)で表される構成単位からなる。
【化4】
【0018】
式(1)中、XA1、及びYA1は、炭素原子数6以上40以下の有機基である。RA1、及びRA2は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1以上30以下の有機基である。RA1、及びRA2としての前記有機基は、C-O結合を介して、式(1)中のエステル結合中の酸素原子に結合する。
【0019】
ポリイミド樹脂前駆体(A)は、RA1、及びRA2としての有機基として、炭素-炭素二重結合を有する炭素原子数3以上20以下の不飽和基を有する。
なお、ポリイミド樹脂前駆体(A)の分子鎖上に、所望する量の、炭素-炭素二重結合を有する炭素原子数3以上20以下の不飽和基が、RA1、及びRA2としての有機基として存在すれば足りる。
ポリイミド樹脂前駆体(A)の分子鎖上のRA1、及びRA2としての有機基が、全て、炭素-炭素二重結合を有する炭素原子数3以上20以下の不飽和基である必要はない。
【0020】
ポリイミド樹脂前駆体(A)は、式(1)中のYA1として、下記式(A1-1)で表される2価の基、又は下記式(A2-1)で表される部分構造を有する2価の基を含む。その結果、感光性樹脂組成物を用いて、誘電正接が低いポリイミド樹脂を形成することができる。
【0021】
【化5】
【0022】
式(A1-1)中、Xは、(ma1+ma3+2)価の有機基である。Ra1は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、又はハロゲン原子である。Ra2は、炭素原子数1以上20以下の脂肪族基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、又はハロゲン原子である。Arは、Ra2で置換されていてもよいフェニル基、又はRa2で置換されていてもよいナフチル基である。ma1は、0以上10以下の整数である。ma2は、0以上7以下の整数である。ma3は、1以上10以下の整数である。
【0023】
【化6】
【0024】
式(A2-1)中、Ra3及びRa4は、それぞれ独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。ma4及びma5は、それぞれ独立に0以上4以下の整数である。
【0025】
ポリイミド樹脂前駆体(A)は、典型的には、ジアミン化合物と、テトラカルボン酸二無水物とアルコール類との反応物であるジカルボン酸との重合体である。
ただし、ジアミン化合物、ジカルボン酸、テトラカルボン酸二無水物、及びアルコール類について、ポリイミド樹脂前駆体(A)が上記の所定の要件を満たすように選択される。
【0026】
〔ジアミン化合物〕
ジアミン化合物は、以下の式(A2)で表される。
N-YA1-NH・・・(A2)
(式(A2)中、YA1は2価の有機基を表す。)
【0027】
A1は炭素原子数6以上40以下の2価の有機基である。YA1は、2つのアミノ基の他に、1又は複数の置換基を有していてもよい。
置換基の好適な例としては、フッ素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上6以下のフッ素化アルキル基、炭素原子数1以上6以下のフッ素化アルコキシ基、カルボキシ基、又はヒドロキシ基が好ましい。
置換基がフッ素化アルキル基又はフッ素化アルコキシ基である場合、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルコキシ基であるのが好ましい。
【0028】
A1としての有機基の炭素原子数の下限値は6であり、上限値は40であり、30がより好ましい。
A1は、脂肪族基であってもよいが、1以上の芳香環を含む有機基であることが好ましい。
【0029】
A1が1以上の芳香環を含む有機基である場合、当該有機基は、1の芳香族基そのものであってもよく、2以上の芳香族基が、脂肪族炭化水素基及びハロゲン化脂肪族炭化水素基や、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等のヘテロ原子を含む結合を介して結合された基であってもよい。YA1に含まれる、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等のヘテロ原子を含む結合としては、-CONH-、-NH-、-N=N-、-CH=N-、-COO-、-O-、-CO-、-SO-、-SO-、-S-、及び-S-S-等が挙げられ、-COO-、-O-、-CO-、及び-S-が好ましい。
【0030】
アミノ基と結合するYA1中の芳香環はベンゼン環であることが好ましい。YA1中のアミノ基と結合する環が2以上の環を含む縮合環である場合、当該縮合環中のアミノ基と結合する環はベンゼン環であることが好ましい。
また、YA1に含まれる芳香環は、芳香族複素環であってもよい。
【0031】
A1が芳香族環を含む有機基である場合、ポリイミド樹脂前駆体(A)を用いて形成されるポリイミド樹脂の電気特性と機械特性との向上の点から、当該有機基は下記式(21)~(24)で表される基のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【化7】
【0032】
(21)~(24)中、R111は、水素原子、フッ素原子、カルボキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシ基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上4以下のハロゲン化アルキル基よりなる群から選択される1種を示す。式(24)中、Qは、9,9’-フルオレニリデン基、又は、式:-C-、-C-C-、-O-C-C-O-、-O-C-CO-C-O-、-O-C-C(CH-C-O-、-OCO-C-COO-、-OCO-C-C-COO-、-OCO-、-O-、-CO-、-C(CF-、-C(CH-、-CH-、-O-C-SO-C-O-、-C(CH-C-C(CH-、-O-C10-O-、-O-C-O-、-O-CH-O-、及び-O-(CH-O-で表される基よりなる群から選択される1種を示す。
【0033】
の例示における-C-は、フェニレン基であり、m-フェニレン基、及びp-フェニレン基が好ましく、p-フェニレン基がより好ましい。また、-C10-は、ナフタレンジイル基であり、ナフタレン-1,2-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,3-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、及びナフタレン-2,7-ジイル基が好ましく、ナフタレン-1,4-ジイル基、及びナフタレン-2,6-ジイル基がより好ましい。
の例示におけるnは、1以上の整数であり、1以上20以下の整数が好ましく、1以上12以下の整数がより好ましく、1以上6以下の整数がさらに好ましい。
【0034】
A1として、式(24)で表される基を含むジアミン化合物としては、下記式(a2)で表される化合物が好ましい。式(a2)中のnについて、式(24)中の、Qについて説明した通りである。
【化8】
【0035】
式(21)~(24)中のR111としては、形成される樹脂膜の電気特性向上の観点から、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、又はトリフルオロメチル基がより好ましく、水素原子、又はトリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0036】
式(24)中のQとしては、形成される樹脂膜の電気特性と機械特性の点から、-C-C-、-O-C-C-O-、-O-C-CO-C-O-、-O-C-C(CH-C-O-、-OCO-C-COO-、-OCO-C-C-COO-、-OCO-、-O-、-CO-、-C(CF-、-C(CH-、-CH-、-O-C-SO-C-O-、-C(CH-C-C(CH-、-O-C10-O-、-O-C-O-、-O-CH-O-、-O-(CH-O-、-O-(CH-O-、-O-(CH-O-、-O-(CH-O-、及び-O-(CH-O-が好ましい。ポリイミド樹脂前駆体(A)を用いて形成されるポリイミド樹脂の電気特性と機械特性向上の点から、式(24)中のQとしては、-O-C-C-O-、-O-C-C(CH-C-O-がより好ましく、-O-C-C-O-で表され-C-がともにp-フェニレン基である基が特に好ましい。
【0037】
式(A2)で表されるジアミン化合物として芳香族ジアミン化合物を用いる場合、例えば、以下に示される芳香族ジアミン化合物を好適に用いることができる。
すなわち、芳香族ジアミン化合物としては、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、9,10-ジアミノアントラセン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス[N-(3-アミノベンゾイル)-3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2’-ビス[N-(4-アミノベンゾイル)-3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3-カルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3-スルホ-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジアミノベンズアニリド、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(4-アミノフェノキシ)エタン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ブタン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、1,6-ビス(4-アミノフェノキシ)ヘキサン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[N-(3-アミノベンゾイル)-3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]スルホン、ビス[N-(4-アミノベンゾイル)-3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、2,2-ビス[4-{4-アミノ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ}フェニル]ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス[N-(3-アミノベンゾイル)-3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]フルオレン、9,9-ビス[N-(4-アミノベンゾイル)-3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]フルオレン、2,7-ジアミノフルオレン、2-(4-アミノフェニル)-5-アミノベンゾオキサゾール、2-(3-アミノフェニル)-5-アミノベンゾオキサゾール、2-(4-アミノフェニル)-6-アミノベンゾオキサゾール、2-(3-アミノフェニル)-6-アミノベンゾオキサゾール、1,4-ビス(5-アミノ-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン、1,4-ビス(6-アミノ-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン、1,3-ビス(5-アミノ-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン、1,3-ビス(6-アミノ-2-ベンゾオキサゾリル)ベンゼン、2,6-ビス(4-アミノフェニル)ベンゾビスオキサゾール、2,6-ビス(3-アミノフェニル)ベンゾビスオキサゾール、ビス[(3-アミノフェニル)-5-ベンゾオキサゾリル]、ビス[(4-アミノフェニル)-5-ベンゾオキサゾリル]、ビス[(3-アミノフェニル)-6-ベンゾオキサゾリル]、ビス[(4-アミノフェニル)-6-ベンゾオキサゾリル]、N,N’-ビス(3-アミノベンゾイル)-2,5-ジアミノ-1,4-ジヒドロキシベンゼン、N,N’-ビス(4-アミノベンゾイル)-2,5-ジアミノ-1,4-ジヒドロキシベンゼン、N,N’-ビス(4-アミノベンゾイル)-4,4’-ジアミノ-3,3-ジヒドロキシビフェニル、N,N’-ビス(3-アミノベンゾイル)-3,3’-ジアミノ-4,4-ジヒドロキシビフェニル、N,N’-ビス(4-アミノベンゾイル)-3,3’-ジアミノ-4,4-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエタン-1,1-ジイル)]ジアニリン、3,5-ジアミノ安息香酸、3,4-ジアミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸4-アミノフェニルエステル、1,3-ビス(4-アニリノ)テトラメチルジシロキサン、1,4-ビス(3-アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、オルト-トリジンスルホン等が挙げられる。これらの中では、電気特性と機械特性向上の点から、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、及び3,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルが好ましい。
【0038】
また、YA1としては、鎖状の脂肪族基及び/又は芳香族環を有していてもよいケイ素原子含有基を採用することができる。このようなケイ素原子含有基としては、典型的には、以下に示される基を用いることができる。
【化9】
【0039】
両末端にアミノ基を有し、且つケイ素原子含有基を有する化合物の具体例としては、両末端アミノ変性メチルフェニルシリコーン(例えば信越化学社製の、X-22-1660B-3(数平均分子量4,400程度)及びX-22-9409(数平均分子量1,300程度))、両末端アミノ変性ジメチルシリコーン(例えば信越化学社製の、X-22-161A(数平均分子量1,600程度)、X-22-161B(数平均分子量3,000程度)及びKF8012(数平均分子量4,400程度);東レダウコーニング製のBY16-835U(数平均分子量900程度);並びにJNC社製のサイラプレーンFM3311(数平均分子量1,000程度))等が挙げられる。
【0040】
また、式(A2)で表されるジアミン化合物として、オキシアルキレン基を有するジアミンも好ましく使用できる。オキシアルキレン基の好ましい例としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基(-C(CH)-CH-O-、-CH-C(CH)-O-、又は-CHCHCH-O-)が挙げられる。
オキシアルキレン基を有するジアミンは、2種以上のオキシアルキレン基を組み合わせて含んでいてもよい。オキシアルキレン基を有するジアミンが、2種以上のオキシアルキレン基を含む場合、2種以上のオキシアルキレン基はブロック的にジアミンに含まれてもよく、ランダム的にジアミンに含まれてもよい。
オキシアルキレン基を有するジアミンは、環式基を含まないのが好ましく、芳香族基を含まないのがより好ましい。
オキシアルキレン基を有するジアミンの具体例としては、それぞれHUNTSUMAN社製の、ジェファーミン(登録商標)KH-511、ジェファーミン(登録商標)ED-600、ジェファーミン(登録商標)ED-900、ジェファーミン(登録商標)ED-2003、ジェファーミン(登録商標)EDR-148、ジェファーミン(登録商標)EDR-176、ジェファーミン(登録商標)D-200、ジェファーミン(登録商標)D-400、ジェファーミン(登録商標)D-2000、及びジェファーミン(登録商標)D-4000、並びに1-(2-(2-(2-アミノプロポキシ)エトキシ)プロポキシ)プロパン-2-アミン、及び1-(1-(1-(2-アミノプロポキシ)プロパン-2-イル)オキシ)プロパン-2-アミン等が挙げられる。
【0041】
前述の通り、ポリイミド樹脂前駆体(A)は、式(1)中のYA1として、下記式(A1-1)、又は下記式(A2-1)で表される基を含む。
このため、ジアミン化合物と、テトラカルボン酸二無水物とアルコール類との反応物であるジカルボン酸とを反応させて、ポリイミド樹脂前駆体(A)を調製する場合、式(A2)で表され、且つ、YA1が、下記式(A1-1)、又は下記式(A2-1)で表される基である化合物が、ジアミン化合物の一部、又は全部として使用される。
【0042】
【化10】
【0043】
式(A1-1)中、Xは、(ma1+ma3+2)価の有機基である。Ra1は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、又はハロゲン原子である。Ra2は、炭素原子数1以上20以下の脂肪族基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、又はハロゲン原子である。Arは、Ra2で置換されていてもよいフェニル基、又はRa2で置換されていてもよいナフチル基である。ma1は、0以上10以下の整数である。ma2は、0以上7以下の整数である。ma3は、1以上10以下の整数である。式(A1-1)で表される2価の炭素原子数の上限は40である。
【0044】
式(A1-1)において、Arは、Ra2で置換されていてもよいフェニル基、又はRa2で置換されていてもよいナフチル基である。Arは、フェニル基、又はナフチル基であるのが好ましい。つまり、式(A1-1)において、ma2は、0であるのが好ましい。
【0045】
式(A1-1)において、Ra2は、炭素原子数1以上20以下の脂肪族基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、又はハロゲン原子である。Ra2としての有機基は、O、N、S、P、B、Si、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
a2としての脂肪族基の炭素原子数は、1以上12以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。
【0046】
a2としての脂肪族基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、及びn-イコシル基等の鎖状アルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、2-n-プロペニル基(アリル基)、1-n-ブテニル基、2-n-ブテニル基、及び3-n-ブテニル基等の鎖状アルケニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等のシクロアルキル基;クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、及びパーフルオロデシル基等のハロゲン化鎖状アルキル基;2-クロロシクロヘキシル基、3-クロロシクロヘキシル基、4-クロロシクロヘキシル基、2,4-ジクロロシクロヘキシル基、2-ブロモシクロヘキシル基、3-ブロモシクロヘキシル基、及び4-ブロモシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシ-n-プロピル基、及び4-ヒドロキシ-n-ブチル基等のヒドロキシ鎖状アルキル基;2-ヒドロキシシクロヘキシル基、3-ヒドロキシシクロヘキシル基、及び4-ヒドロキシシクロヘキシル基等のヒドロキシシクロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基、n-ペンタデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基、n-ヘプタデシルオキシ基、n-オクタデシルオキシ基、n-ノナデシルオキシ基、及びn-イコシルオキシ基等の鎖状アルコキシ基;ビニルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、2-n-プロペニルオキシ基(アリルオキシ基)、1-n-ブテニルオキシ基、2-n-ブテニルオキシ基、及び3-n-ブテニルオキシ基等の鎖状アルケニルオキシ基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、n-プロポキシメチル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-n-プロポキシエチル基、3-メトキシ-n-プロピル基、3-エトキシ-n-プロピル基、3-n-プロポキシ-n-プロピル基、4-メトキシ-n-ブチル基、4-エトキシ-n-ブチル基、及び4-n-プロポキシ-n-ブチル基等のアルコキシアルキル基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、n-プロポキシメトキシ基、2-メトキシエトキシ基、2-エトキシエトキシ基、2-n-プロポキシエトキシ基、3-メトキシ-n-プロポキシ基、3-エトキシ-n-プロポキシ基、3-n-プロポキシ-n-プロポキシ基、4-メトキシ-n-ブチルオキシ基、4-エトキシ-n-ブチルオキシ基、及び4-n-プロポキシ-n-ブチルオキシ基等のアルコキシアルコキシ基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、及びデカノイル基等の脂肪族アシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、n-ブチルオキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、及びn-デシルオキシカルボニル基等の鎖状アルキルオキシカルボニル基;ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ノナノイルオキシ基、及びデカノイルオキシ基等の脂肪族アシルオキシ基である。
【0047】
式(A1-1)において、ma3は1以上10以下の整数である。ma3の値は、1以上10以下であれば特に限定されず、Xの構造に応じて適宜選択される。ma3の値は、1以上4以下が好ましく、1又は2がより好ましい。
【0048】
式(A1-1)において、Xとしての有機基は、O、N、S、P、B、Si、及びハロゲン原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。なお、式(A1-1)で表される化合物において、2つのアミノ基は、それぞれXとしての有機基中の炭素原子に結合する。
【0049】
Xとしての有機基としては、脂肪族基であってもよく、芳香族基であってもよく、脂肪族基と芳香族基との組み合わせであってもよい。Xとしての有機基は、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等のヘテロ原子を含む結合を介して結合された基であってもよい。Xとしての有機基に含まれる、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等のヘテロ原子を含む結合としては、-CONH-、-NH-、-N=N-、-CH=N-、-COO-、-O-、-CO-、-SO-、-SO-、-S-、及び-S-S-等が挙げられ、-O-、-CO-、及び-S-が好ましい。
【0050】
Xとしての有機基が、脂肪族基である場合、当該脂肪族基は、飽和脂肪族基であっても不飽和脂肪族基であってもよい。Xとしての有機基が脂肪族基である場合、当該脂肪族基は、脂肪族炭化水素基であるのが好ましい。Xとしての有機基が脂肪族基である場合、当該脂肪族基は、鎖状であっても、環状であっても、鎖状の脂肪族基と環状の脂肪族基との組み合わせであってもよい。鎖状の脂肪族基は、分岐を有していてもよい。
【0051】
Xとしての有機基が脂肪族基である場合、当該脂肪族基としては炭素原子数1以上20以下のアルキレン基から(ma1+ma3+2)個の水素原子を除いた基が好ましく、炭素原子数1以上16以下のアルキレン基から(ma1+ma3+2)個の水素原子を除いた基がより好ましく、炭素原子数1以上12以下のアルキレン基から(ma1+ma3+2)個の水素原子を除いた基がさらに好ましい。
【0052】
Xとしての有機基が、芳香族基を含む基である場合、式(A1)中のX、Ar、Ra1、及びRa2で構成される基としては下記の式(11)~式(15)で表される基が挙げられる。
【化11】
【0053】
式(11)~式(15)において、Ar、Ra1、Ra2、ma1、ma2、及びma3は式(A1)中のこれらと同様である。式(13)において、ma4、及びma5は、それぞれ独立に0以上4以下の整数である。ma6、及びma7は、それぞれ独立に0以上4以下の整数である。ma6及びma7の和は、1以上8以下である。式(14)において、ma8、ma9、及びma10は、それぞれ独立に0以上4以下の整数である。ma8、ma9、及びma10の和は、0以上10以下である。ma11、ma12、及びma13は、それぞれ独立に0以上4以下の整数である。ma11、ma12、及びma13の和は、1以上10以下である。式(15)において、ma14は、0以上3以下の整数である。ma15は、0以上5以下の整数である。ma14、及びma15の和は、0以上8以下である。ma16は、0以上3以下の整数である。ma17は、0以上5以下の整数である。ma16、及びma17の和は、1以上8以下である。
【0054】
式(11)において、ma1は0が好ましい。ma2は0が好ましい。ma3は1又は2が好ましい。
式(12)において、ma1は0が好ましい。ma2は0が好ましい。ma3は1又は2が好ましい。
式(13)において、ma2は0が好ましい。ma4及びma5は、それぞれ0が好ましい。ma6及びma7は、それぞれ0、1、又は2が好ましい。ma6及びma7の和は1以上であり、4以下が好ましい。
式(14)において、ma2は0が好ましい。ma8、ma9、及びma10は、それぞれ0が好ましい。ma11、ma12、及びma13は、それぞれ0、1、又は2が好ましい。ma11、ma12、及びma13の和は1以上であり、6以下が好ましい。
式(15)において、ma2は0が好ましい。ma14及びma15は、それぞれ0が好ましい。ma16及びma17はそれぞれ0、1、又は2が好ましい。ma16及びma17の和は、1以上であり、4以下が好ましい。
【0055】
式(11)~式(15)において、Ra3は、単結合、又は2価の連結基である。ただし、2価の連結基は芳香族基を含む基ではない。2価の連結基としては、炭素原子数1以上20以下の脂肪族炭化水素基、-CONH-、-NH-、-N=N-、-CH=N-、-COO-、-O-、-CO-、-SO-、-SO-、-S-、及び-S-S-、並びにこれらの基から選択される2種以上を組み合わせた基等が挙げられる。連結基の炭素原子数は1以上20以下が好ましく、1以上12以下がより好ましく、1以上6以下がさらに好ましい。連結基としての脂肪族炭化水素基は、1以上の不飽和結合を有してもよく、分岐を有してもよく、環構造を含んでいてもよい。連結基としての脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基(エチレン基)、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ウンデカン-1,11-ジイル基、ドデカン-1,12-ジイル基、トリデカン-1,13-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基、ペンタデカン-1,15-ジイル基、ヘキサデカン-1,16-ジイル基、ヘプタデカン-1,17-ジイル基、オクタデカン-1,18-ジイル基、ノナデカン-1,19-ジイル基、イコサン-1,20-ジイル基、エテン-1,2-ジイル基(ビニレン基)、プロペン-1,3-ジイル基、エチン-1,2-ジイル基、及びプロピン-1,3-ジイル基等が挙げられる。
【0056】
連結基の好適な例としては、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基、炭素原子数2以上6以下のアルケニレン基、炭素原子数2以上6以下のアルキニレン基、炭素原子数1以上6以下のアルキレンオキシ基、炭素原子数2以上6以下のアルケニレンオキシ基、炭素原子数2以上6以下のアルキニレンオキシ基、炭素原子数1以上6以下のアルキレンチオ基、炭素原子数2以上6以下のアルケニレンチオ基、炭素原子数2以上6以下のアルキニレンチオ基、炭素原子数1以上6以下のアルキレンアミノ基、炭素原子数2以上6以下のアルケニレンアミノ基、炭素原子数2以上6以下のアルキニレンアミノ基、-CONH-、-NH-、-COO-、-O-、-CO-、-SO-、-SO-、-S-、-OCONH-、及び-OCOO-等が挙げられる。
【0057】
ポリイミド樹脂前駆体(A)を用いて形成されるポリイミド樹脂が低い誘電正接と、良好な機械的性質を示す点から、式(A1-1)で表される2価の基の中では、下記式(A1-2)で表される2価の基が好ましい。
【化12】
【0058】
式(A1-2)中、Ra1、Ra2、Ar、ma1、ma2、及びma3は、式(A1)中のこれらと同様である。Ya1は、炭素原子数1以上20以下の有機基、又は単結合である。Ya2は、炭素原子数1以上20以下の有機基である。na1は0又は1である。na2は0又は1である。na1が1である場合、Ya1は、単結合でない。
【0059】
式(A1-2)中、Ya1としての有機基は、O、N、S、P、B、Si、及びハロゲン原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。Ya1としての有機基は、炭化水素基であるのが好ましい。Ya1としての炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であっても、芳香族炭化水素基であっても、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基との組み合わせてあってもよい。Ya1としての炭化水素基としては、芳香族炭化水素基が好ましく、フェニレン基、及びナフタレンジイル基がより好ましい。Ya1としての芳香族炭化水素基の好適な具体例としては、p-フェニレン基、m-フェニレン基、o-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基、ナフタレン-1,2-ジイル基、ナフタレン-1,3-ジイル基、ナフタレン-1,5-ジイル基、ナフタレン-1,6-ジイル基、ナフタレン-1,7-ジイル基、ナフタレン-1,8-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-2,7-ジイル基、及びナフタレン-2,3-ジイル基が挙げられる。これらの芳香族炭化水素基の中では、p-フェニレン基、及びm-フェニレン基が好ましく、p-フェニレン基がより好ましい。
【0060】
式(A1-2)において、na2が1であるのが好ましく、na1及びna2がともに1であり、Ya1が有機基であるのがより好ましい。この場合、エーテル結合の立体的な自由度の高さに起因して、式(A1-2)で表される構成単位が良好にパッキングされやすく、機械特性、熱的特性、電気特性等に優れるポリイミド樹脂を与えるポリイミド樹脂前駆体(A)を得やすいと考えらえる。
【0061】
式(A1-2)において、ma1は0が好ましい。ma2は0が好ましい。ma3は、1又は2が好ましい。
【0062】
以上説明した式(A1-1)で表されるジアミン化合物(A-1)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【化13】
【0063】
【化14】
【0064】
【化15】
【0065】
【化16】
【0066】
【化17】
【0067】
【化18】
【0068】
【化19】
【0069】
【化20】
【0070】
以下、式(A2-1)で表される部分構造を有する2価の基について説明する。
【化21】
【0071】
式(A2-1)中、Ra3及びRa4は、それぞれ独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。ma4及びma5は、それぞれ独立に0以上4以下の整数である。
【0072】
式(A2-1)中、Ra3及びRa4としての炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基が挙げられる。これらのアルキル基の中では、メチル基、及びエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
式(A2-1)中、Ra3及びRa4としての炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、及びtert-ブチルオキシ基が挙げられる。これらのアルコキシ基の中では、メトキシ基、及びエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
式(A2-1)中、Ra3及びRa4としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。これらのハロゲン原子の中では、塩素原子、及び臭素原子が好ましい。
【0073】
式(A2-1)において、ma4及びma5は、それぞれ独立に0以上4以下の整数である。式(A2-1)で表される部分構造を有する2価の基を有するジアミン化合物の入手が容易であること等から、ma4及びma5は、それぞれ。0以上2以下の整数が好ましく、0がより好ましい。
【0074】
式(A2-1)で表される部分構造を有する2価の基として好適な基としては、下記式(A2-2)で表される2価の基が挙げられる。
【化22】
【0075】
式(A2-2)中、X及びXは、それぞれ独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、及びハロゲン原子からなる群より選択される1以上の基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基である。Ra3、Ra4、ma4、及びma5は、式(A2-1)中のこれらと同様である。ただし、式(A2-2)で表される2価の基の炭素原子数の上限は40である。
【0076】
式(A2-2)におけるX及びXは、それぞれ独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、及びハロゲン原子からなる群より選択される1以上の基で置換されていてもよい2価の芳香族炭化水素基である。
置換基としての炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基が挙げられる。これらのアルキル基の中では、メチル基及びエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
置換基としての炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、及びtert-ブチルオキシ基が挙げられる。これらのアルコキシ基の中では、メトキシ基、及びエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。これらのハロゲン原子の中では、塩素原子、及び臭素原子が好ましい。
【0077】
及びXとしての芳香族炭化水素基の炭素原子数は、式(A2-2)で表される2価の基の炭素原子数が40以下である限り特に限定されない。なお、前述の芳香族炭化水素基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まない。
、及びXとしての芳香族炭化水素基としては、o-フェニレン基、m-フェニレン基、及びp-フェニレン基等のフェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基、ナフタレン-1,3-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、及びナフタレン-2,7-ジイル基等のナフタレンジイル基、ビフェニル-4,4’-ジイル基、ビフェニル-3,4’-ジイル基、及びビフェニル-3,3’-ジイル基等のビフェニルジイル基が好ましい。
【0078】
、及びXとしては、p-フェニレン基、m-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基、及びビフェニル-4,4’-ジイル基が好ましく、p-フェニレン基、及びビフェニル-4,4’-ジイル基がより好ましく、p-フェニレン基がさらに好ましい。
【0079】
以上説明した式(A2-1)で表される部分構造を有する2価の基を有するジアミン化合物の具体例としては、下記の基が挙げられる。
【化23】
【0080】
ポリイミド樹脂前駆体(A)の製造に用いられるジアミン化合物は、式(A2)中のYA1として、上記の式(A1-1)で表される2価の基、又は式(A2-1)で表される部分構造を有する2価の基を有するジアミン化合物とともに、以下のジアミン化合物(A-3)、又は以下のダイマージアミン化合物(A-4)を含むのもの好ましい。
【0081】
(ジアミン化合物(A-3))
ジアミン化合物(A-3)は、下記式(A3)で表される部分構造を有し、式(A2)中のYA1として、上記の式(A1-1)で表される2価の基、又は式(A2-1)で表される部分構造を有する2価の基を有するジアミン化合物に該当しないジアミン化合物である。
【化24】
【0082】
式(A3)中、Ra5及びRa6は、それぞれ独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子である。ma6及びma7は、それぞれ独立に0以上4以下の整数である。Ra7及びRa8は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のハロゲン化アルキル基、又はフェニル基である。Ra7とRa8とは互いに結合して環を形成してもよい。
【0083】
式(A3)中、Ra5及びRa6としての炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基が挙げられる。これらのアルキル基の中では、メチル基、及びエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
式(A3)中、Ra5及びRa6としての炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、及びtert-ブチルオキシ基が挙げられる。これらのアルコキシ基の中では、メトキシ基、及びエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
式(A3)中、Ra5及びRa6としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。これらのハロゲン原子の中では、塩素原子、及び臭素原子が好ましい。
【0084】
式(A3)において、ma6及びma7は、それぞれ独立に0以上4以下の整数である。ジアミン化合物(A-3)の入手が容易であること等から、ma6及びma7は、それぞれ、0以上2以下の整数が好ましく、0がより好ましい。
【0085】
式(A3)中、Ra7及びRa8としての炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基が挙げられる。
式(A3)中、Ra7及びRa8としての炭素原子数1以上4以下のハロゲン化アルキル基としては、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1,1-ジフルオロエチル基、及び1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル基が挙げられる。
式(A3)中のRa7及びRa8としては、ポリイミド樹脂前駆体(A)の有機溶媒への溶解性が良好であることや、ジアミン化合物(A-3)の入手が容易であること等から、水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、及びフェニル基が好ましい。
また、Ra7及びRa8とが互いに結合して、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、及びシクロオクチリデン基等の炭素原子数5以上8以下のシクロアルキリデン基を形成するのも好ましい。
【0086】
式(A3)で表される部分構造の好適な具体例としては、下記の構造が挙げられる。
【化25】
【0087】
ジアミン化合物(A-3)として好適な化合物としては、下記式(A3-1)で表される化合物が挙げられる。
【化26】
【0088】
式(A3-1)中、X及びXは、それぞれ独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、及びハロゲン原子からなる群より選択される1以上の基で置換されていてもよい芳香族炭化水素基である。Ra5、Ra6、Ra7、Ra8、及びma6、及びma7は、式(A3)中のこれらと同様である。
【0089】
式(A3-1)におけるX及びXは、それぞれ独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、及びハロゲン原子からなる群より選択される1以上の基で置換されていてもよい2価の芳香族炭化水素基である。
置換基としての炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基が挙げられる。これらのアルキル基の中では、メチル基、及びエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
置換基としての炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、及びtert-ブチルオキシ基が挙げられる。これらのアルコキシ基の中では、メトキシ基、及びエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。これらのハロゲン原子の中では、塩素原子、及び臭素原子が好ましい。
【0090】
及びXとしての芳香族炭化水素基の炭素原子数は、式(A3-1)で表されるジアミン化合物の炭素原子数が40以下である限り特に限定されない。なお、前述の芳香族炭化水素基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まない。
及びXとしての芳香族炭化水素基としては、o-フェニレン基、m-フェニレン基、及びp-フェニレン基等のフェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基、ナフタレン-1,3-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、及びナフタレン-2,7-ジイル基等のナフタレンジイル基、ビフェニル-4,4’-ジイル基、ビフェニル-3,4’-ジイル基、及びビフェニル-3,3’-ジイル基等のビフェニルジイル基が好ましい。
【0091】
及びXとしては、p-フェニレン基、m-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基、及びビフェニル-4,4’-ジイル基が好ましく、p-フェニレン基、及びビフェニル-4,4’-ジイル基がより好ましく、p-フェニレン基がさらに好ましい。
【0092】
以上説明した式(A3)で表されるジアミン化合物(A-3)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【化27】
【0093】
【化28】
【0094】
(ダイマージアミン化合物(A-4))
高周波数帯域における誘電率、及び誘電性正接の低いポリイミド樹脂を与えるポリイミド樹脂前駆体(A)を得やすいことから、ジアミン化合物は、式(A2)中のYA1として、上記の式(A1-1)で表される2価の基、又は式(A2-1)で表される部分構造を有する2価の基を有するジアミン化合物とともに、ダイマージアミン化合物(A-4)を含むのもの好ましい。
ダイマージアミン化合物(A-4)は、ダイマー酸が有する2つの末端カルボキシ基が、アミノメチル基、又はアミノ基に置換されてなるジアミン化合物である。ダイマー酸は、不飽和脂肪酸の分子間重合反応によって得られる既知の二塩基酸である。ダイマー酸を製造するための工業的製造プロセスは、ほぼ標準化されている。典型的には、ダイマー酸は、炭素原子数11以上22以下の不飽和脂肪酸を、粘土触媒等の存在下に二量化して得られる。ただし、ダイマージアミン化合物(A-4)の炭素原子数の上限は40である。工業的に得られるダイマー酸は、オレイン酸、リノール酸、及びリノレン酸等の炭素原子数18の不飽和脂肪酸を二量化して得られる炭素原子数36の二塩基酸が主成分である。工業的に得られるダイマー酸は、精製の度合いに応じ、炭素原子数18のモノマー酸、炭素原子数54のトリマー酸、及び炭素原子数20以上54以下の他の重合脂肪酸を、それぞれ任意の量、含有し得る。
ダイマージアミン化合物(A-4)としては下記式(31)で表されるジアミン化合物が好ましい。
【化29】
(31)
【0095】
式(31)において、e、f、g、及びhはそれぞれ0以上の整数である。e+fは、6以上17以下の整数、g+hは、8以上19以下である。式(31)中、波線部は炭素-炭素単結合、又は炭素-炭素二重結合を意味する。
【0096】
さらに伸度に優れるポリイミド樹脂を形成できるポリイミド樹脂前駆体(A)を得やすいことから、式(31)で表されるジアミン化合物としては、下記式(32)で表される化合物が好ましい。
【化30】
(32)
【0097】
式(31)で表されるジアミン化合物の市販品としては、下記式(33)で表される化合物を含む、バーサミン551(BASF社製)、及びプリアミン1074(クローダジャパン社製)や、上記式(32)で表される化合物を含むバーサミン552(BASF社製)、プリアミン1073(クローダジャパン社製)、及びプリアミン1075(クローダジャパン社製)が挙げられる。このような市販されるダイマージアミン化合物(A-4)は、通常、複数種のアミン化合物を含む混合物である。
【化31】
(33)
【0098】
ジアミン化合物の総モル数に対する、式(A2)中のYA1として、上記の式(A1-1)で表される2価の基、又は式(A2-1)で表される部分構造を有する2価の基を有するジアミン化合物のモル数の比率は、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、80モル%以上がさらに好ましく、90モル%以上が特に好ましく、100モル%が最も好ましい。
【0099】
〔テトラカルボン酸二無水物とアルコール類との反応物であるジカルボン酸〕
ジカルボン酸は、テトラカルボン酸二無水物とアルコール類との反応物である。
ポリイミド樹脂前駆体(A)が、前述の式(1)中の、RA1、及びRA2としての有機基として、炭素-炭素二重結合を有する炭素原子数3以上20以下の不飽和基を有する。
このため、ジカルボン酸は、炭素-炭素二重結合を有する炭素原子数3以上20以下の不飽和基を有するジカルボン酸を含む。
このようなジカルボン酸は、炭素-炭素二重結合を有する炭素原子数3以上20以下のアルコールと、テトラカルボン酸二無水物とを反応させることにより得られる。
このようなジカルボン酸を用いることにより、ポリイミド樹脂前駆体(A)を含む感光性組成物が良好な感光性を有し、ポリイミド樹脂前駆体(A)を用いて種々の機械的特性や電気的特性に優れるポリイミド樹脂を形成できる。
以下、本明細書において、特段説明のない限り、「ジカルボン酸」は、テトラカルボン酸二無水物と、上記のアルコール類との反応物であるジカルボン酸を意味する。
以下、テトラカルボン酸二無水物と、アルコール類とについて説明する。
【0100】
(テトラカルボン酸二無水物)
テトラカルボン酸二無水物としては、所望する効果が損なわれない限り特に限定されない。テトラカルボン酸二無水物としては、典型的には、従来から、ポリアミック酸及びポリイミド樹脂の製造に用いられているテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物としては、下記式(A3)で表される化合物が挙げられる。
【化32】
【0101】
式(A3)中、XA1は、炭素原子数6以上40以下の4価の有機基である。XA1は、式(A3)における2個の-CO-O-CO-で表される酸無水物基の他に、1又は複数の置換基を有していてもよい。
置換基の好適な例としては、フッ素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上6以下のフッ素化アルキル基、炭素原子数1以上6以下のフッ素化アルコキシ基が好ましい。また、式(A3)で表される化合物は、酸無水物基の他にカルボキシ基、又はカルボン酸エステル基を含んでいてもよい。
置換基がフッ素化アルキル基又はフッ素化アルコキシ基である場合、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルコキシ基であるのが好ましい。
以上の置換基については、後述の芳香族基が芳香環上に有していてもよい1又は複数の置換基についても同様のことがいえる。
【0102】
A1を構成する炭素原子数は8以上が好ましく、12以上がより好ましい。また、XA1を構成する炭素原子数は、30以下が好ましい。XA1は、脂肪族基であっても、芳香族基であっても、これらの構造を組み合わせた基であってもよい。XA1は、炭素原子、及び水素原子の他に、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子を含んでいてもよい。XA1が酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含む場合、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子は、含窒素複素環基、-CONH-、-NH-、-N=N-、-CH=N-、-COO-、-O-、-CO-、-SO-、-SO-、-S-、及び-S-S-から選択される基として、XA1に含まれてもよく、-O-、-CO-、及び-S-から選択される基として、XA1に含まれることがより好ましい。
【0103】
式(A3)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、脂肪族基に結合するジカルボン酸無水物基を2つ有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物であっても、芳香族基に結合するジカルボン酸無水物基を少なくとも1つ有する芳香族テトラカルボン酸二無水物であってもよい。
なお、芳香族テトラカルボン酸二無水物は、芳香族基に結合するジカルボン酸無水物基を2つ有するのが好ましい。
【0104】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、脂環式構造を含有してもよい。該脂環式構造は多環式であってもよい。脂環式構造を有さない脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(例えば、リカシッドBT-100、新日本理化社製)が挙げられる。
脂環式構造を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2”-ノルボルナン-5,5”,6,6”-テトラカルボン酸二無水物(例えば、エネハイド(登録商標)CpODA、エネオス社製)、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ヘキサフルオロプロパン二無水物[5,5’-(1,4-フェニレン)ビスノルボルナン]-2,2’,3,3’-テトラカルボン酸二無水物(例えば、エネハイド(登録商標)BzDA、エネオス社製)、及び1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン(例えば、リカシッドTDA-100、新日本理化社製)、が挙げられる。
【0105】
式(A3)で表され、芳香族基に結合するジカルボン酸無水物基を2つ有する芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、トリメリット酸(3,4-ジカルボキシフェニル)二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)メタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)エタン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)ビフェニル二無水物、2,6-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)ナフタレン二無水物、1,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)エタン二無水物(例えば、リカシッドTMEG100、新日本理化社製)、及び1,10-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)デカン二無水物(例えば、10BTA、黒金化成社製)等が挙げられる。
これらの芳香族テトラカルボン酸二無水物の中では、電気特性に優れる硬化物を形成しやすい点で、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)ビフェニル二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルオキシ)ビフェニル二無水物、2,6-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)ナフタレン二無水物、及びα,ω-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)アルカン二無水物が好ましい。
α,ω-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)アルカン二無水物は下記式(a1)で表される化合物である。
【化33】
【0106】
α,ω-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)アルカン二無水物中の直鎖アルキレン基の炭素原子数である式(a1)中のnは、1以上の整数であり、1以上20以下が好ましく、2以上12以下がより好ましい。α,ω-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)アルカン二無水物の好適な具体例としては、1,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)エタン二無水物(例えば、リカシッドTMEG100、新日本理化社製)、及び1,10-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)デカン二無水物(例えば、10BTA、黒金化成社製)等が挙げられる。
【0107】
また、ポリイミド樹脂前駆体(A)を含む組成物を用いて形成されるポリイミド樹脂膜の反り抑制や、ポリイミド樹脂前駆体(A)を含む組成物に感光性を付与した場合に、当該組成物のフォトリソグラフィー特性が良好である点で、芳香族テトラカルボン酸二無水物がビフェニルテトラカルボン酸二無水物であるのも好ましい。
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、及び2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が挙げられ、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0108】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、また、例えば、下記式(a3-2)~(a3-4)で表される化合物であってもよい。
【化34】
【0109】
上記式(a3-2)及び式(a3-3)において、Ra01、Ra02及びRa03は、それぞれ、ハロゲンで置換されていてもよい脂肪族基、酸素原子、硫黄原子、1つ以上の2価元素を介した芳香族基のいずれかであるか、又はそれらの組み合わせによって構成される2価の基を示す。Ra02及びRa03は、同一であっても異なっていてもよい。
すなわち、Ra01、Ra02及びRa03は、炭素-炭素の一重結合、炭素-酸素-炭素のエーテル結合、又はハロゲン元素(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)を含んでいてもよい。式(a3-2)で表される化合物としては、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)メタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)エタン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ヘキサフルオロプロパン二無水物、及び1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物等が挙げられる。
【0110】
また、上記式(a3-4)において、Ra04、Ra05はハロゲンで置換されていてもよい脂肪族基、1つ以上の2価元素を介した芳香族基、ハロゲンのいずれかであるか、又はそれらの組み合わせによって構成される1価の置換基を示す。Ra04、及びRa05は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。式(a3-4)で表される化合物として、ジフルオロピロメリット酸二無水物、及びジクロロピロメリット酸二無水物等も用いることができる。
【0111】
ポリイミド樹脂前駆体(A)は、前述のアルコールに由来する残基以外に、その分子鎖上にラジカル重合性基含有基を有するのも好ましい。
このため、式(A3)中の4価の有機基Aは、下記式(a3-5)~式(a3-7)で表される基であってもよい。
【化35】
【0112】
式(a3-5)~式(a3-7)における、Ra01、Ra02、及びRa03は、前述の式(a3-2)、式(a3-3)、及び式(a3-4)における、Ra01、Ra02、及びRa03と同様である。
式(a3-5)、式(a3-6)、及び式(a3-7)における、Ra06は、ラジカル重合性基含有基である。ラジカル重合性基含有基については後述する。
【0113】
(アルコール類)
前述の通り、ジカルボン酸は、テトラカルボン酸二無水物とアルコール類との反応物である。
前述の通り、ポリイミド樹脂前駆体(A)は、前述の式(1)中の、RA1、及びRA2としての有機基として、炭素-炭素二重結合(エチレン性不飽和二重結合)を有する炭素原子数3以上20以下の不飽和基を有する。
このため、アルコール類の、一部、又は全部として、炭素-炭素二重結合を有する炭素原子数3以上20以下のアルコールが使用される。
【0114】
以下、炭素-炭素二重結合を有する炭素原子数3以上20以下のアルコールを、アルコールIと記す。アルコールI以外の他のアルコールを、アルコールIIと記す。
【0115】
・アルコールI
ジカルボン酸は、カルボン酸無水物基と上記のアルコール類との反応より生成するカルボン酸エステル基を2つ有する。ジカルボン酸における、前述のカルボン酸エステル基の総モル数に対する、アルコールIに由来するカルボン酸エステル基のモル数の比率は、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。
【0116】
アルコールIとしては、誘電正接が低く、耐薬品性に優れるポリイミド樹脂を形成しやすいことから、以下のアルコールI-1が好ましい。また、アルコールIは、以下のアルコールに該当しないアルコールI-2を含んでいてもよい。
アルコールI-1は、第二級水酸基と、エチレン性不飽和二重結合とを組み合わせて有するか、メチロール基と、エチレン性不飽和二重結合とを組み合わせて有するアルコールである。
なお、本出願の特許請求の範囲において、メチロール基を、第二級炭素原子、第三級炭素原子、1つの炭素原子と1つのヘテロ原子と結合している炭素原子、2つのヘテロ原子と結合している炭素原子、又は芳香環中の炭素原子に結合しているヒドロキシメチル基として定義する。
例えば、ヒドロキシエチル基は、ヒドロキシメチル基と、メチレン基とからなる。しかし、上記の定義によれば本出願の明細書、及び特許請求の範囲において、ヒドロキシエチル基に含まれる、メチレン基中の第一級炭素原子に結合するヒドロキシメチル基は、メチロール基に該当しない。
【0117】
アルコールI-1を製造する場合、製造方法に起因して、不可避的に、アルコールI-1とともに、アルコールI-2とを含む混合物が生成する場合がある。
例えば、第二級水酸基、又はメチロール基と、第一級水酸基とを有するポリオールを、(メタ)アクリル酸ハライドやハロゲン化アリル等と反応させてアルコールIを製造する場合、第1級水酸基とともに(メタ)アクリロイル基やアリル基を有するアルコールが副生する場合がある。
このような方法より生成した、アルコールI-1とともに、アルコールI-2を含む混合物を、テトラカルボン酸二無水物と反応させるアルコール類として用いることができる。
アルコールI-1のモル数と、アルコール1-IIのモル数との合計に対する、アルコールI-1のモル数の比率は特に限定されない。アルコールI-1のモル数と、アルコール1-IIのモル数との合計に対する、アルコールI-1のモル数の比率は、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%がさらに好ましく、100モル%が特に好ましい。
【0118】
上記の通り、アルコールIはエチレン性不飽和二重結合を有する。典型的には、エチレン性不飽和二重結合含有基としては、ビニル基、及びアリル基等のアルケニル基を含むアルケニル基含有基が好ましく、(メタ)アクリロイル基含有基がより好ましい。
前述の通り、ジカルボン酸は、アルコールIに由来するエチレン性不飽和二重結合を含む残基を有する。このため、ポリイミド樹脂前駆体(A)も、アルコールIに由来するエチレン性不飽和二重結合を含む残基を有する。
【0119】
・アルコールI-1
アルコールI-1は、第二級水酸基と、エチレン性不飽和二重結合とを組み合わせて有するか、メチロール基と、エチレン性不飽和二重結合とを組み合わせて有するアルコールである。
アルコールI-1は、2以上の水酸基を組み合わせて有してもよい。アルコールI-1は、第二級水酸基と、メチロール基とを組み合わせて有してもよい。
アルコールI-1は、1つの第二級水酸基、又は1つのメチロール基を有するのが好ましい。
【0120】
アルコールI-1が、2以上のエチレン性不飽和二重結合を有する場合、アルコールIとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、又はジペンタエリスリトール等の(メタ)アクリレートが好ましい。
2以上のエチレン性不飽和二重結合を有するアルコールI-1の好適な具体例としては、グリセリン-1,3-ジ(メタ)アクリレート、グリセリン-1,2-ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの化合物は、アクリロイル基と、メタクリロイル基とを組み合わせて有してもよい。
【0121】
アルコールI-1が、1つのエチレン性不飽和二重結合を有する場合、アルコールIとしては、下記式(I)で表される化合物、及び下記式(II)で表される化合物から選択される少なくとも1種が好ましい。
CH=CR-CO-O-R-CHR-OH (I)
CH=CR-CO-O-R-CH-OH (II)
【0122】
式(I)中、Rは、水素原子、又はメチル基である。Rは、エステル結合中の酸素原子とC-O結合により結合し、Rが結合する炭素原子とC-C結合により結合する2価の有機基である。Rは、Rが結合する炭素原子とC-C結合により結合する1価の有機基である。RとRとは結合して環を形成してもよい。
式(II)中、Rは、水素原子、又はメチル基である。Rは、エステル結合中の酸素原子とC-O結合により結合し、式(II)中のメチロール基とC-C結合により結合する2価の有機基である。
【0123】
上記の式(I)において、Rは、エステル結合中の酸素原子とC-O結合により結合し、Rが結合する炭素原子とC-C結合により結合する2価の有機基である。当該2価の有機基は、ハロゲン原子、O、S、及びN等のヘテロ原子を含む基であってもよい。
式(I)中のRとしての2価の有機基の炭素原子数は、式(I)で表されるアルコールの炭素原子数が20以下である限り、特に限定されない。2価の有機基の炭素原子数は、例えば、1以上12以下が好ましく、1以上8以下がより好ましい。
【0124】
式(I)中のRとしての2価の有機基としては、2価の炭化水素基が好ましい。2価の炭化水素基は、環式基を含んでいてもよい。当該環式基は、脂肪族環であっても、芳香族環であっても、脂肪族環と芳香族環とが縮合した縮合環であってもよい。Rとしての2価の炭化水素基としては、アルキレン基が好ましい。
【0125】
アルキレン基の好適な例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基(エチレン基)、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、及びオクタン-1,8-ジイル基が挙げられる。
これらの中では、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基(エチレン基)、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、及びペンタン-1,5-ジイル基が好ましい。
【0126】
式(I)において、Rは、Rが結合する炭素原子とC-C結合により結合する1価の有機基である。当該1価の有機基は、ハロゲン原子、O、S、及びN等のヘテロ原子を含む基であってもよい。
式(I)中のRとしての1価の有機基の炭素原子数は、式(I)で表されるアルコールの炭素原子数が20以下である限り、特に限定されない。1価の有機基の炭素原子数は、例えば、1以上12以下が好ましく、1以上8以下がより好ましい。
【0127】
式(I)中のRとしての1価の有機基としては、鎖状脂肪族基であっても、環式基であっても、鎖状脂肪族基と環式基とからなる基であってもよい。当該環式基は、脂肪族環であっても、芳香族環であっても、脂肪族環と芳香族環とが縮合した縮合環であってもよい。
【0128】
式(I)中のRとしての1価の有機基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、及びn-オクチル基等のアルキル基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、n-プロピルオキシメチル基、n-ブチルオキシメチル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-n-プロピルオキシエチル基、2-n-ブチルオキシエチル基、3-メトキシプロピル基、3-エトキシプロピル基、3-n-プロピルオキシプロピル基、3-n-ブチルオキシプロピル基、4-メトキシブチル基、4-エトキシブチル基、4-n-プロピルオキシブチル基、及び4-n-ブチルオキシブチル基等のアルコキシアルキル基;フェノキシメチル基、2-フェノキシエチル基、3-フェノキシプロピル基、及び4-フェノキシブチル基等のアリールオキシアルキル基;シクロペンチルオキシメチル基、2-シクロペンチルオキシエチル基、3-シクロペンチルオキシプロピル基、4-シクロペンチルオキシブチル基、シクロヘキシルオキシメチル基、2-シクロヘキシルオキシエチル基、3-シクロヘキシルオキシプロピル基、4-シクロヘキシルオキシブチル基、シクロヘプチルオキシメチル基、2-シクロヘプチルオキシエチル基、3-シクロヘプチルオキシプロピル基、及び4-シクロヘプチルオキシブチル基等のシクロアルキルオキシアルキル基が挙げられる。
【0129】
式(I)中の、-R-CHR-で表される2価の基の好適な具体例としては以下の基が挙げられる。以下の具体例において、*は、式(I)中のエステル結合中の酸素原子と結合する結合手の末端である。**は、式(I)の水酸基と結合する結合手の末端である。
なお、ポリイミド樹脂前駆体(A)を用いて形成されるポリイミド樹脂が、低い誘電正接値を示し、耐薬品性に優れることから、式(I)中の、-R-CHR-で表される2価の基が、環式基を含むのが好ましい。かかる環式基は、芳香族基であっても脂環式基であっても、芳香環と脂肪族環とが縮合した縮合環式基であってもよい。
【化36】
【0130】
式(I)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【化37】
【0131】
上記の式(II)において、Rは、エステル結合中の酸素原子とC-O結合により結合し、式(II)中のメチロール基とC-C結合により結合する2価の有機基である。当該2価の有機基は、ハロゲン原子、O、S、及びN等のヘテロ原子を含む基であってもよい。
式(II)中のRとしての2価の有機基の炭素原子数は、式(II)で表されるアルコールの炭素原子数が20以下である限り、特に限定されない。2価の有機基の炭素原子数は、例えば、1以上12以下が好ましく、1以上8以下がより好ましい。
【0132】
式(II)中のRとしての2価の有機基としては、鎖状脂肪族基であっても、環式基であっても、鎖状脂肪族基と環式基とからなる基であってもよい。当該環式基は、脂肪族環であっても、芳香族環であっても、脂肪族環と芳香族環とが縮合した縮合環であってもよい。
【0133】
式(II)中の、Rで表される2価の基の好適な具体例としては以下の基が挙げられる。以下の具体例において、*は、式(II)中のエステル結合中の酸素原子と結合する結合手の末端である。**は、式(II)のメチロール基と結合する結合手の末端である。
【化38】
【0134】
式(II)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【化39】
【0135】
・アルコールI-2
アルコールI-2は、炭素-炭素二重結合(エチレン性不飽和二重結合)を有する炭素原子数3以上20以下のアルコールであって、アルコールI-1に該当しないアルコールである。
アルコールI-2は、エチレン性不飽和二重結合含有基を有する。エチレン性不飽和二重結合含有基としては、ビニル基、及びアリル基等のアルケニル基を含むアルケニル基含有基が好ましく、(メタ)アクリロイル基含有基がより好ましい。
【0136】
アルコールI-2としての、エチレン性不飽和二重結合含有基を有するアルコール類の好ましい例としては、ジオール類のモノ(メタ)アクレート、N-ヒドロキシアルキル置換(メタ)アクリルアミド、水酸基含有不飽和ケトン、アルケニルアルコール、及び炭素原子数3以上のアルケニル基を有するジオール類のモノアルケニルエーテルが挙げられる。ただし、これらのアルコール類は、第二級水酸基、又はメチロール基を有さない。
【0137】
ジオール類のモノ(メタ)アクリレートを与えるジオール類としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、及び1,3-プロパンジオール等のアルカンジオール(アルキレングリコール);ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、及びトリプロピレングリコール等のオリゴ又はポリアルキレングリコール;1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、及び1,2-シクロヘキサンジオール等のシクロアルカンジオールが挙げられる。
ジオール類のモノ(メタ)アクリレートを与えるジオール類はこれらには限定されない。
アルカンジオールの炭素原子数は、2以上10以下が好ましく、2以上6以下がより好ましく、2以上4以下がより好ましい。オリゴ又はポリアルキレングリコールの炭素原子数は、4以上20以下が好ましく、4以上10以下がより好ましい。シクロアルカンジオールの炭素原子数は、4以上8以下が好ましく、5以上7以下がより好ましい。
アルカンジオール、並びにオリゴ又はポリアルキレングリコールは、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0138】
N-ヒドロキシアルキル置換(メタ)アクリルアミドが有するN-ヒドロキシアルキル基の炭素原子数は、2以上10以下が好ましく、2以上6以下がより好ましく、2以上4以下がさらに好ましい。N-ヒドロキシアルキル置換(メタ)アクリルアミドが有するN-ヒドロキシアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。N-ヒドロキシアルキル置換(メタ)アクリルアミドが有するN-ヒドロキシアルキル基は、第二級水酸基、又はメチロール基を有さない。
【0139】
水酸基含有不飽和ケトンは、カルボニル基にヒドロキシアルキル基とアルケニル基とが結合した化合物であるのが好ましい。ヒドロキシアルキル基の炭素原子数は、2以上10以下が好ましく、2以上6以下がより好ましく、2以上4以下がさらに好ましい。ヒドロキシアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。ヒドロキシアルキル基は、第二級水酸基、又はメチロール基を有さない。アルケニル基の炭素原子数は、2以上10以下が好ましく、2以上6以下がより好ましく、2以上4以下がさらに好ましい。アルケニル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0140】
アルケニルアルコールの炭素原子数は、3以上10以下が好ましく、3以上6以下がより好ましく、3又は4がさらに好ましい。アルケニルアルコールは、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルケニルアルコールは、第二級水酸基、又はメチロール基を有さない。
【0141】
炭素原子数3以上のアルケニル基を有するジオール類のモノアルケニルエーテルについて、当該ジオール類のモノアルケニルエーテルを与えるジオール類は、ジオール類のモノ(メタ)アクリレートを与えるジオール類と同様である。
アルケニル基の炭素原子数は、3以上であり、3以上10以下が好ましく、3以上6以下がより好ましい。アルケニル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0142】
ラジカル重合性基を有するアルコールIIの好ましい具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、及び2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート等のジオール類のモノ(メタ)アクレート;N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル置換(メタ)アクリルアミド;(ヒドロキシメチル)ビニルケトン、及び(2-ヒドロキシエチル)ビニルケトン等の水酸基含有ケトンが挙げられる。
【0143】
・アルコールII
アルコールIIは、アルコールIに該当しないアルコールである。アルコールIIの構造は、所望する効果が損なわれない限り特に限定されない。
【0144】
アルコールIIの例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、及びn-ヘキサノール等のアルカンモノオール;フェノール、p-クレゾール、m-クレゾール、o-クレゾール、α-ナフトール、及びβ-ナフトール等のフェノール類又はナフトール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、1,3-プロパンジオールモノメチルエーテル、1,3-プロパンジオールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコール類のモノエーテル;アルコールIに該当しない、ラジカル重合性基を有するアルコール類が挙げられる。
【0145】
(ジカルボン酸の製造)
以上説明したテトラカルボン酸二無水物と、アルコール類とを反応させることによりジカルボン酸が得られる。アルコルール類は、カルボン酸無水物基と反応し、カルボキシ基と、エステル基とを生成させる。
【0146】
前述したテトラカルボン酸二無水物に、Ra21-OHで表されるアルコールを反応させることでジカルボン酸が得られる。
a21は、前述のアルコール類から水酸基を除いた残基である。
このようなジカルボン酸は、当該ジカルボン酸において隣接する炭素原子上に位置する、カルボキシ基と、-CO-O-Ra21で表される基とのペアを、2対有する。
【0147】
カルボキシ基と、-CO-O-Ra21で表される基とのペアを、2対有する上記のジカルボン酸には、カルボキシ基の位置と、-CO-O-Ra21で表される基の位置とが異なる異性体が存在し得る。上記のジカルボン酸としては、このような異性体のうちの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本出願の明細書、及び特許請求の範囲では、ポリイミド樹脂前駆体が、ジカルボン酸の複数の異性体に由来する複数種の構成単位を含むことを許容するものとする。
【0148】
一例として、ピロメリット酸二無水物に対応するジカルボン酸に関しては、異性体として、下記式(a4-a1)で表される化合物と、下記式(a4-a2)で表される化合物とが存在する。また、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物に対応するジカルボン酸に関しては、異性体として、下記式(a4-b1)で表される化合物と、下記式(a4-b2)で表される化合物と、下記式(a4-b3)で表される化合物とが存在する。
下記式(a4-a1)、式(a4-a2)、及び式(a4-b1)~式(a4-b3)において、Ra21は、それぞれ上述した通りである。
【0149】
【化40】
【0150】
前述の式(a3-2)~式(a3-4)で表されるテトラカルボン酸二無水物に対応するジカルボン酸としては、下記式(a4-2a)~式(a4-2c)、式(a4-3a)~式(a4-3c)、及び式(a4-4a)~式(a4-4c)で表される化合物が挙げられる。式(a4-2a)~式(a4-2c)、式(a4-3a)~式(a4-3c)、及び式(a4-4a)~式(a4-4c)において、Ra01~Ra05は、式(a3-2)~式(a3-4)におけるこれらと同様である。式(a4-2a)~式(a4-2c)、式(a4-3a)~式(a4-3c)、及び式(a4-4a)~式(a4-4c)において、Ra21は、前述の通りである。
【化41】
【0151】
前述の式(a3-5)~式(a3-7)で表されるテトラカルボン酸二無水物に対応するジカルボン酸としては、下記式(a4-5a)~式(a4-5c)、式(a4-6a)~式(a4-6c)、式(a4-7a)、及び式(a4-7b)で表される化合物が挙げられる。式(a4-5a)~式(a4-5c)、式(a4-6a)~式(a4-6c)、式(a4-7a)、式(a4-7b)において、Ra01~Ra03、Ra06、m1、及びm2は、式(a3-5)~式(a3-7)におけるこれらと同様である。式(a4-5a)~式(a4-5c)、式(a4-6a)~式(a4-6c)、式(a4-7a)、及び式(a4-7b)において、Ra21は、前述の通りである。
【0152】
【化42】
【0153】
テトラカルボン酸二無水物と、アルコール類との反応は、通常、有機溶媒中で行われる。テトラカルボン酸二無水物とアルコール類との反応に使用される有機溶媒は、テトラカルボン酸二無水物及びアルコール類を溶解させることができ、テトラカルボン酸二無水物及びアルコール類と反応しない有機溶媒であれば特に限定されない。有機溶媒は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0154】
テトラカルボン酸二無水物とアルコール類との反応に用いる有機溶媒の例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルイソ酪酸アミド、メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、N-メチルカプロラクタム、N,N’-ジメチルプロピレンウレア、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア、及びピリジン等の含窒素極性溶媒;ジメチルスルホキシド;スルホラン;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、及びα-メチル-γ-カプロラクトン等のラクトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、及びシュウ酸ジエチル等のエステル類;エチレンカーボネート、及びプロピレンカーボネート等のカーボネート;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノン等のケトン類;アセトニトリル;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、及びテトラヒドロフラン等のエーテル類;ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,4-ジクロロブタン、クロロベンゼン、及びo-ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、及びキシレン等が挙げられる。
これらの有機溶媒は、1種を単独で用いられても2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0155】
これらの有機溶媒の中では、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチルカプロラクタム、及びN,N,N’,N’-テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤が好ましい。
【0156】
テトラカルボン酸二無水物と、アルコール類とを反応させる際の温度は、反応が良好に進行する限り特に限定されない。典型的には、テトラカルボン酸二無水物と、アルコール類との反応温度は、-5℃以上120℃以下が好ましく、0℃以上80℃以下がより好ましく、0℃以上50℃以下が特に好ましい。テトラカルボン酸二無水物と、アルコール類とを反応させる時間は、反応温度によっても異なるが、典型的には、30分以上20時間以下が好ましく、1時間以上8時間以下がより好ましく、2時間以上6時間以下が特に好ましい。
【0157】
テトラカルボン酸二無水物と、アルコール類との反応中のエチレン性不飽和二重結合間の架橋を防ぐ目的で、重合禁止剤を少量用いてもよい。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、4-メトキシフェノール、tert-ブチルピロカテコール、及びビス-tert-ブチルヒドロキシトルエン等のフェノール類や、フェノチアジンが挙げられる。重合禁止剤の使用量は、例えば、エチレン性不飽和二重結合のモル数に対して、0.01モル%以上5モル%以下が好ましい。
【0158】
テトラカルボン酸二無水物と、アルコール類との反応は、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、及び1,4-アザビシクロ[2,2,2]オクタン等の有機塩基の存在下に行ってもよい。これらの塩基は単独で用いてもよく、2種類以上を同時に用いてもよい。
【0159】
アルコール類の使用量は、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、1.8モル以上2.2モル以下が好ましく、2モル以上2.1モル以下がより好ましい。
【0160】
ジカルボン酸の製造において、製造条件によっては、一方のジカルボン酸無水物基のみがアルコール類と反応することにより、ジカルボン酸無水物基を有するモノカルボン酸化合物が生成したり、テトラカルボン酸二無水物の一部が反応系内の水分と反応することにより、テトラカルボン酸化合物やトリカルボン酸化合物が生成したりする。
所望する効果が損なわれない限りにおいて、上記のモノカルボン酸化合物、トリカルボン酸化合物、及びテトラカルボン酸化合物から選択される少なくとも1種を含むジカルボン酸を、ポリイミド樹脂前駆体の製造に用いることができる。
ジカルボン酸が、不純物として上記のモノカルボン酸化合物、トリカルボン酸化合物、及びテトラカルボン酸化合物から選択される少なくとも1種を含む場合、ジカルボン酸中の、不純物としての、上記のモノカルボン酸化合物、トリカルボン酸化合物、及びテトラカルボン酸化合物から選択される少なくとも1種の含有量は、不純物の質量を含むジカルボン酸の質量に対して、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
【0161】
(ポリイミド樹脂前駆体(A)の製造方法)
ポリイミド樹脂前駆体(A)の製造方法は、前述のジアミン化合物と、ジカルボン酸とを、ポリイミド樹脂前駆体(A)の重量平均分子量が所望する程度に増加するまで、前述のジアミン化合物と、ジカルボン酸とを、重縮合できる方法であれば特に限定されない。
好ましい方法としては、縮合剤の存在下に、前述のジアミン化合物と、ジカルボン酸とを縮合させる方法が挙げられる。必要に応じて、縮合剤とともに、縮合助剤を用いるのも好ましい。
縮合剤、及び縮合助剤としては、従来より、ジカルボン酸と、ジアミン化合物との縮合に用いられていた化合物であれば特に限定されない。
【0162】
好ましい縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩、1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリノエチル)-カルボジイミド・メトトルエンスルホン酸塩、1,3-ビス(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イルメチル)カルボジイミド、ポリマー担持型1-ベンジル-3-シクロヘキシルカルボジイミド、及びポリマー担持型1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0163】
縮合剤の使用量は、所望する分子量のポリイミド樹脂前駆体(A)が得られる限り特に限定されない。縮合剤の使用量は、典型的には、ジカルボン酸1モルに対して、1モル以上5モル以下が好ましく、2モル以上4モル以下がより好ましく、2モル以上3モル以下がさらに好ましい。
また、ポリイミド樹脂前駆体(A)を製造する際の、ジカルボン酸の量とジアミン化合物の量との比率は、所望する分子量のポリイミド樹脂前駆体(A)を製造できる限り特に限定されない。
ポリイミド樹脂前駆体(A)が、アミノ基末端を有する場合、(ジカルボン酸のモル数)/(ジアミン化合物のモル数)で示される原料比率を、好ましくは0.5/1~0.95/1、より好ましくは0.55/1~0.80/1の範囲内で調整するのがよい。(ジカルボン酸のモル数)/(ジアミン化合物のモル数)の値が小さいほど、ポリイミド樹脂前駆体(A)の分子鎖が伸長しにくく、低分子量のポリイミド樹脂前駆体(A)を得やすい。
ポリイミド樹脂前駆体(A)が、カルボキシ基末端を有する場合、(ジアミン化合物のモル数)/(ジカルボン酸のモル数)で示される原料比率を、好ましくは0.5/1~0.95/1、より好ましくは0.55/1~0.80/1の範囲内で調整するのがよい。(ジアミン化合物のモル数)/(ジカルボン酸のモル数)の値が小さいほど、ポリイミド樹脂前駆体(A)の分子鎖が伸長しにくく、低分子量のポリイミド樹脂前駆体(A)を得やすい。
【0164】
具体的には、ジカルボン酸と、ジアミン化合物とを、上記の縮合剤の存在下に、有機溶剤中で、例えば、-20℃以上150℃以下、好ましくは0℃以上50℃以下において、30分以上24時間以下、好ましくは1時間以上10時間以下、より好ましくは1時間以上4時間以下反応させる。
【0165】
重縮合を行う際に使用する溶媒としては、テトラカルボン酸二無水物と、アルコール類との反応において使用され得る前述の溶媒を用いることができる。
溶媒の使用量は、ジカルボン酸の質量とジアミン化合物の質量との合計100質量部に対して、50質量部以上10,000質量部以下が好ましく、100質量部以上2,000質量部以下がより好ましく、150質量部以上1,000質量部以下がさらに好ましい。
【0166】
ポリイミド樹脂前駆体(A)を製造する際の、ジカルボン酸及びジアミン化合物の使用量は特に限定されないが、ジカルボン酸1モルに対して、ジアミン化合物を0.8モル以上1.2モル以下用いることが好ましく、0.9モル以上1.1モル以下用いることがより好ましく、0.95モル以上1.05モル以下用いることが特に好ましい。
【0167】
高周波数帯域において優れた誘電特性を示すポリイミド樹脂を与えるポリイミド樹脂前駆体(A)を得やすい点から、ポリイミド樹脂前駆体(A)は、好ましくは炭素原子数2以上50以下、より好ましくは炭素原子数3以上40以下の2価の脂肪族炭化水素基を含むのが好ましい。
ポリイミド樹脂前駆体(A)の分子鎖における、かかる2価の脂肪族炭化水素基の位置は特に限定されない。
炭素原子数2以上50以下の2価の脂肪族炭化水素基を分子鎖中に与える単量体としては、例えば、前述のダイマージアミン化合物(A-4)や、前述のα,ω-ビス(3,4-ジカルボキシフェニルカルボニルオキシ)アルカン二無水物が挙げられる。
【0168】
ポリイミド樹脂前駆体(A)の重量平均分子量は、その用途にあわせて適宜設定すればよい。ポリイミド樹脂前駆体(A)の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量として測定することができる。ポリイミド樹脂前駆体(A)の重量平均分子量は、例えば、機械特性が良好な樹脂膜を得る観点で、上記ポリスチレン換算で5,000以上であり、15,000以上が好ましく、250,000,000以上がより好ましい。一方、得られるポリイミド樹脂前駆体(A)の重量平均分子量は、有機溶媒への溶解性の点等から、例えば上記ポリスチレン換算で100,000以下であり、80,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましい。
この重量平均分子量は、前述のジカルボン酸とジアミン化合物との配合量や、溶媒や反応温度等の反応条件を調整して、上述の値とすればよい。
【0169】
ポリイミド樹脂前駆体(A)を含む感光性樹脂組成物の保存安定性を向上や、ポリイミド樹脂膜の機械特性のさらなる向上、ポリイミド樹脂前駆体(A)を製造する際の重合の再現性の向上等を目的として、ポリイミド樹脂前駆体(A)の主鎖末端は、末端封止剤で封止されてもよい。末端封止剤としては、モノアミン、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸ハロゲン化物、及びモノ活性エステル化合物等が挙げられる。
末端封止に用いられるモノアミンとしては、公知の化合物を使用できる。モノアミンとしては、例えば、アニリン、2-エチニルアニリン、3-エチニルアニリン、4-エチニルアニリン、3-ヒドロキシアニリン、4-ヒドロキシアニリン、3-アミノチオフェノール、及び4-アミノチオフェノール等の芳香族モノアミンや、ヘキシルアミン、及びオクチルアミン等の炭素原子数3以上20以下の分岐構造を有してもよい脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン等の脂環式構造を有するモノアミンや、トリメトキシアミノプロピルシラン、及びトリエトキシアミノプロピルシラン等のアミノシランが挙げられる。
末端封止剤として用いられる酸無水物、モノ酸ハロゲン化物、及びモノ活性エステル化合物の中では、酸無水物が好ましい。酸無水物としては、公知の酸無水物、及びその誘導体を使用できる。例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、xo-3,6-エポキシ-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、スクシン酸無水物、無水マレイン酸、ナジック酸無水物、及びそれらの誘導体が挙げられる。
ポリイミド樹脂前駆体(A)における末端封止剤の導入率としては、形成されるポリイミド樹脂膜の機械特性が優れる観点から、全モノマーのモル数に対して、40モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましく、10モル%以下がさらに好ましい。
【0170】
以上のようにして製造されたポリイミド樹脂前駆体(A)は、溶液や懸濁液の状態、又は周知の方法で反応液から分離、回収された後、ポリイミド樹脂の製造に使用される。
【0171】
<ポリイミド樹脂>
前述のポリイミド樹脂前駆体(A)を、イミド化することによりポリイミド樹脂が得られる。当該ポリイミド樹脂は、高周波数帯域において低い誘電正接を示し、耐薬品性に優れる。
ポリイミド樹脂前駆体(A)をイミド化する方法は特に限定されない。イミド化は、加熱により行われてもよく、イミド化剤を用いて行われてもよい。
【0172】
加熱によりイミド化を行う場合、加熱は、ポリイミド樹脂前駆体(A)の溶液又は懸濁液に対して行われてもよく、固体状のポリイミド樹脂前駆体(A)に対して行われてもよい。
ポリイミド樹脂前駆体(A)の溶液を加熱してイミド化を行う場合、イミド化の際に副生する水を除去しながら加熱を行うのが好ましい。
イミド化のための加熱の条件は、ポリイミド樹脂前駆体(A)が分解せず、良好にイミド化が進行する限り特に限定されない。
ポリイミド樹脂前駆体(A)の溶液に対して加熱を行う場合、典型的には、加熱温度として80℃以上220℃以下が好ましく、100℃以上200℃以下がより好ましく、120℃以上180℃以下が特に好ましい。固体状のポリイミド樹脂前駆体(A)に対して加熱を行う場合、典型的には、加熱温度として、180℃以上400℃以下が好ましく、200℃以上350℃以下がより好ましい。
加熱時間は、加熱温度にもよるが、典型的には、1時間以上24時間以下が好ましく、2時間以上12時間以下がより好ましい。
【0173】
イミド化剤により、ポリイミド樹脂前駆体(A)をイミド化する場合、通常、ポリイミド樹脂前駆体(A)の溶液又は懸濁液に対してイミド化剤を加えてイミド化が実施される。イミド化剤によるイミド化を行う場合に用いることができる有機溶媒としては、例えば、ポリイミド樹脂前駆体(A)の調製に用いることができる有機溶媒と同様の有機溶媒を用いることができる。
イミド化剤によるイミド化を行う場合に、ポリイミド樹脂前駆体(A)の溶液又は懸濁液におけるポリイミド樹脂前駆体(A)の濃度は特に限定されない。典型的には、ポリイミド樹脂前駆体(A)の溶液又は懸濁液におけるポリイミド樹脂前駆体(A)の濃度は、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上30質量%以下がより好ましい。
イミド化剤の使用量は特に限定されない。イミド化剤の使用量は、イミド化剤の種類に応じて、ポリイミド樹脂前駆体(A)が所望する程度にイミド化されるように選択される。
イミド化剤によるイミド化を行う場合の反応温度は、特に限定されない。反応温度は、例えば、0℃以上100℃以下が好ましく、5℃以上50℃以下がより好ましい。
イミド化剤を用いる場合のイミド化反応の時間は、特に限定されない。イミド化反応は、イミド化剤の種類に応じて、例えば、30分以上24時間程度行われるのが好ましく、1時間以上12時間以下行われるのがより好ましく、2時間以上6時間以下行われるのがさらに好ましい。
【0174】
イミド化剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸、無水トリフルオロ酢酸、アセチルクロライド、トシルクロライド、メシルクロライド、クロルギ酸エチル、トリフェニルホスフィンとジベンゾイミダゾリルジスルフィド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、カルボジイミダゾール、2-エトキシ-1-エトキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン、及びシュウ酸N,N’-ジスクシンイミジルエステル等の脱水剤や、ピリジン、ピコリン、2,6-ルチジン、コリジン、トリエチルアミン、N-メチルモルフォリン、4-N,N’-ジメチルアミノピリジン、イソキノリン、トリエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン、及び1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕-7-ウンデセン等の塩基性化合物が挙げられる。
【0175】
<モノマー化合物(B)>
感光性樹脂組成物は、ラジカル重合性基を有するモノマー化合物(B)を含んでいてもよい。
モノマー化合物(B)として、ラジカル重合性基としてエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー化合物が好ましく用いられる。かかるモノマー化合物(B)は、単官能モノマー化合物であっても、多官能モノマー化合物であってもよく、多官能モノマー化合物が好ましい。
【0176】
単官能モノマー化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、tert-ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、及びフタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能光重合性モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0177】
多官能モノマー化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリンエチレンオキサイド(EO)付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロピレンオキサイド(PO)付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンEO/PO共付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンEO付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO/PO共付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンEO付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンPO付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンEO/PO共付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールウンデカ(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールドデカ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、1,3-アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3,5-アダマンタントリオールジ(メタ)アクリレート、1,3,5-アダマンタントリオールトリ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)-3、5-ジメチルフェニル]フルオレン、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(すなわち、トリレンジイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN-メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等の多官能モノマー化合物や、トリアクリルホルマール等が挙げられる。これらの多官能モノマー化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0178】
また、特公昭48-41708号公報、特公昭50-6034号公報、及び特開昭51-37193号公報に記載されるウレタン(メタ)アクリレート類;特開昭48-64183号公報、特公昭49-43191号公報、及び特公昭52-30490号公報に記載されるポリエステル(メタ)アクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシ(メタ)アクリレート類;特開2008-292970号公報の段落[0254]~[0257]に記載の化合物;多官能カルボン酸にグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基とエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させて得られる多官能(メタ)アクリレート;特開2010-160418号公報、特開2010-129825号公報、及び特許第4364216号等に記載される、フルオレン環を有し、エチレン性不飽和結合を有する基を2個以上有する化合物やカルド樹脂;特公昭46-43946号公報、特公平1-40337号公報、及び特公平1-40336号公報に記載の不飽和化合物;特開平2-25493号公報に記載のビニルホスホン酸系化合物;特開昭61-22048号公報に記載のペルフルオロアルキル基を含む化合物;日本接着協会誌,vol.20,No.7,300~308ページ(1984年)に記載される光重合性モノマー及びオリゴマーもの好ましく使用される。
【0179】
これらのエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー化合物(B)の中でも、ポリイミド樹脂膜の基板への密着性、ポリイミド樹脂膜の強度を高める傾向にある点から、3官能以上の多官能モノマー化合物が好ましく、4官能以上の多官能モノマー化合物がより好ましく、5官能以上の多官能モノマー化合物がさらに好ましい。
【0180】
感光性樹脂組成物におけるモノマー化合物(B)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。感光性樹脂組成物におけるモノマー化合物(B)の含有量は、後述する有機溶媒(S)の質量を除いた感光性樹脂組成物の質量を100質量部としたときに、0.1質量部以上50質量部以下が好ましく、0.5質量部以上40質量部以下がより好ましく、1質量部以上25質量部以下が特に好ましい。
【0181】
<光ラジカル重合開始剤(C)>
光ラジカル重合開始剤(C)としては、特に限定されず、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0182】
光ラジカル重合開始剤(C)として具体的には、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(4-メチルベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-2-(ベンゾイルオキシムイミノ)-1-プロパノン、1-フェニル-1,2-ブタジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、エタノン,1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-ベンゾイル)オキシム、1-フェニル-3-エトキシプロパントリオン-2-(O-ベンゾイル)オキシム、O-アセチル-1-[6-(2-メチルベンゾイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル]エタノンオキシム(Irgacure OXE02、BASFジャパン社製)、(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)[4-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルフェニル]メタノンO-アセチルオキシム、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、2-(ベンゾイルオキシイミノ)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1-オクタノン(Irgacure OXE01、BASFジャパン社製)、NCI-831(ADEKA社製)、NCI-930(ADEKA社製)、OXE-03(BASFジャパン社製)、OXE-04(BASFジャパン社製)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、4-ベンゾイル-4’-メチルジメチルスルフィド、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-イソアミル、4-ジエチル安息香酸エチル、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、o-ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾイルギ酸メチル、ベンゾイルギ酸エチル、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2-クロロチオキサンテン、2,4-ジエチルチオキサンテン、2-メチルチオキサンテン、2-イソプロピルチオキサンテン、アントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、β-クロルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロペルオキシド、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、フルオレノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン、2-フェニルアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルジクロロアセトフェノン、α,α-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イロキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパナミニウムクロリド、4-アジドベンザルアセトフェノン、2,6-ビス(p-アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6-ビス(p-アジドベンジリデン)-4-メチルシクロヘキサノン、ジベンゾスベロン、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、9-フェニルアクリジン、1,7-ビス-(9-アクリジニル)ヘプタン、1,5-ビス-(9-アクリジニル)ペンタン、1,3-ビス-(9-アクリジニル)プロパン、p-メトキシトリアジン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-n-ブトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アルキル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、2-ヒドロキシ-3-(4-ベンゾイルフェノキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロペンアミニウムクロリド一水塩、ナフタレンスルフォニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N-フェニルチオアクリドン、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、四臭素化炭素、及びトリブロモフェニルスルホン等が挙げられる。これらの光ラジカル重合開始剤(C)は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
感度が良好である点からは、光ラジカル重合開始剤(C)としては、オキシムエステル系光重合開始剤が好ましい。
【0183】
光ラジカル重合開始剤(C)の中では、感光性樹脂組成物の感度の点で、オキシムエステル化合物が好ましい。
オキシムエステル化合物としては、下記式(c1)で表される部分構造を有する化合物が好ましい。
【0184】
【化43】
【0185】
式(c1)中、n1は、0、又は1である。Rc2は、一価の有機基である。Rc3は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上20以下の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有してもよいアリール基である。*は結合手である。
【0186】
感光性樹脂組成物における、光ラジカル重合開始剤(C)の含有量は、感光性樹脂組成物が所望するフォトリソグラフィー特性を有する限り特に限定されない。樹感光性樹脂組成物における光ラジカル重合開始剤(C)の含有量は、典型的には、ポリイミド樹脂前駆体(A)の質量と、モノマー化合物(B)の質量との合計100質量部に対して、0.01質量以上20質量部以下が好ましく、0.1質量部以上15質量部以下がより好ましく、1質量部以上10質量部以下がさらに好ましい。
【0187】
<チオール化合物(D)>
感光性樹脂組成物は、チオール化合物(D)を含んでいてもよい。これにより、感光性樹脂組成物を用いて、伸び、及び引張強度に優れるポリイミド樹脂を形成しやすい。
チオール化合物(D)が有するメルカプト基の数は特に限定されない。チオール化合物(D)が有するメルカプト基の数は、2以上が好ましく、2以上10以下がより好ましく、2以上6以下がさらに好ましい。
【0188】
2以上のメルカプト基を有する化合物の具体例としては、1,2-ベンゼンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、1,4-ベンゼンジチオール、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3-トリメルカプトベンゼン、1,2,4-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、2,5-トルエンジチオール、3,4-トルエンジチオール、1,3-ジ(p-メトキシフェニル)プロパン-2,2-ジチオール、1,3-ジフェニルプロパン-2,2-ジチオール、フェニルメタン-1,1-ジチオール、2,4-ジ(p-メルカプトフェニル)ペンタン、1,2-ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、及び1,3,5-トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン等が挙げられる。
【0189】
また、2以上のメルカプト基を有するチオール化合物(D)としては、入手又は合成が容易である点や、硬化性組成物中での溶解安定性の点等から、2以上の水酸基を有するポリオールのメルカプトアルカノエートが好ましい。
2以上の水酸基を有するポリオールのメルカプトアルカノエートは、水酸基を有していてもよいが、水酸基を有していないのが好ましい。
【0190】
メルカプトアルカノエートを与えるメルカプトアルカン酸の炭素原子数は特に限定されないが、2以上6以下が好ましく、3又は4が好ましい。メルカプトアルカノエートを与えるメルカプトアルカン酸の具体例としては、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、2-メルカプトブタン酸、3-メルカプトブタン酸、4-メルカプトブタン酸、2-メルカプトペンタン酸、3-メルカプトペンタン酸、4-メルカプトペンタン酸、5-メルカプトペンタン酸、2-メルカプトヘキサン酸、3-メルカプトヘキサン酸、4-メルカプトヘキサン酸、及び5-メルカプトヘキサン酸が挙げられる。
これらの中では、2-メルカプトプロピオン酸、及び3-メルカプトブタン酸が好ましい。
【0191】
メルカプトアルカノエートを与えるポリオールは、芳香族基を含んでいてもよい。
芳香族基を含まないポリオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ショ糖、グルコース、マンノース、メチルグルコシド、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸等が挙げられる。
芳香族ポリオールとしては、ハイドロキノン、レゾルシノール、及びカテコール等のベンゼンジオール;フロログルシノール、ピロガロール、及び1,2,4-ベンゼントリオール等のベンゼントリオール;1,2-ナフタレンジオール、1,3-ナフタレンジオール、1,4-ナフタレンジオール、1,5-ナフタレンジオール、1,6-ナフタレンジオール、1,7-ナフタレンジオール、1,5-ナフタレンジオール、2,3-ナフタレンジオール、2,6-ナフタレンジオール、及び2,7-ナフタレンジオール等のナフタレンジオール;1,4,5-ナフタレントリオール、1,2,4-ナフタレントリオール、1,3,8-ナフタレントリオール、及び1,2,7-ナフタレントリオール等のナフタレントリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールS、及びビスフェノールZ等のビスフェノール類;3,3’,4,4’-テトラヒドロキシビフェニル、及び3,3’,5,5’-テトラヒドロキシビフェニル等のテトラヒドロキシビフェニル;カリックスアレーン;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、及びナフトールノボラック等のノボラック樹脂が挙げられる。
【0192】
上記のポリオールの中では、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸が好ましく、1,4-ブタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸がより好ましい。
【0193】
以上説明したポリオールのメルカプトアルカノエートとしては、1,4-ブタンジオールジ(2-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールジ(3-メルカプトブタノエート)、トリメチロールエタントリ(2-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリ(3-メルカプトブタノエート)、トリメチロールプロパントリ(2-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリ(3-メルカプトブタノエート)、ペンタエリスリトールテトラ(2-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(3-メルカプトブタノエート)、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸トリ(2-メルカプトプロピオネート)、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸トリ(3-メルカプトブタノエート)が好ましく、1,4-ブタンジオールジ(3-メルカプトブタノエート)、トリメチロールエタントリ(3-メルカプトブタノエート)、トリメチロールプロパントリ(3-メルカプトブタノエート)、ペンタエリスリトールテトラ(3-メルカプトブタノエート)、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸トリ(3-メルカプトブタノエート)がより好ましい。
【0194】
チオール化合物(D)の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。チオール化合物(D)の使用量は、ポリイミド樹脂前駆体(A)の質量とモノマー化合物(B)の質量との合計100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下が好ましく、0.2質量部以上20質量部以下がより好ましく、0.5質量部以上15質量部以下がさらに好ましく、1質量部以上12質量部以下が特に好ましい。
【0195】
<有機溶媒(S)>
感光性樹脂組成物は、有機溶媒(S)を含む。有機溶媒(S)は、ウレア系溶媒(S1)を含む。有機溶媒(S)の質量に対する、ウレア系溶媒(S1)の質量の比率は50質量%以上である。
感光性樹脂組成物が、有機溶媒(S)として、上記の量のウレア系溶媒(S1)を含むことにより、感光性樹脂組成物は、保管時の安定性に優れる。
【0196】
有機溶媒(S)の質量に対する、ウレア系溶媒(S1)の質量の比率は、50質量%以上であり、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%が最も好ましい。
【0197】
ウレア系溶媒(S1)の含有量は、ポリイミド樹脂前駆体(A)100質量部に対して、90質量部以上が好ましく、150質量部以上がより好ましく、200質量部以上がさらに好ましく、250質量部以上が特に好ましい。また、ウレア系溶媒(S1)の含有量は、ポリイミド樹脂前駆体(A)100質量部に対して、3,000質量部以下が好ましく、2,000質量部以下がより好ましく、1,500質量部以下が特に好ましい。
【0198】
ウレア系溶媒(S1)は、>N-CO-N<で表される結合を含む化合物であれば特に限定されない。ウレア系溶媒(S1)は、例えば、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、及びN,N’-ジメチルプロピレンウレアのような環状の含窒素化合物であってもよい。
ウレア系溶媒(S1)としては、下記式(S1)で表される化合物が好ましい。
s1s2N-CO-NRs3s4・・・(S1)
【0199】
式(S1)中、Rs1~Rs4は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基である。Rs1~Rs4のうちの少なくとも1つは、アルキル基である。Rs1~Rs4の全てがアルキル基であるのが好ましい。Rs1、又はRs2と、Rs3、又はRs4とが結合して、環を形成してもよい。
【0200】
ウレア系溶媒(S1)としては、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア、N,N,N’,N’-テトラエチルウレア、N,N,N’,N’-テトラブチルウレア、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、及びN,N’-ジメチルプロピレンウレアからなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0201】
有機溶媒(S)は、ウレア系溶媒(S1)とともに、ウレア系溶媒以外の他の有機溶媒を含んでいてもよい。
【0202】
ポリイミド樹脂前駆体(A)の溶解性が良好である点から、他の有機溶媒の具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、N,N-ジメチルイソ酪酸アミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド等の含窒素極性溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、及びイソホロン等のケトン類;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、ギ酸-n-ペンチル、プロピオン酸-n-ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸-n-ブチル、メトキシ策酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸-n-ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸-n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、等のエステル類;ジアセトンアルコール、及び3-メチル-3-メトキシブタノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、等のグリコールエーテル類;アニソール等の芳香族エーテル類;ジオキサン、及びテトラヒドロフラン等の環状エーテル類;エチレンカーボネート、及びプロピレンカーボネート等の環状エステル類;アニソール、トルエン、及びキシレン等の芳香族溶媒;リモネン等の脂肪族炭化水素類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類が挙げられる。
【0203】
有機溶媒(S)の使用量は、有機溶媒(S)の質量に対する、ウレア系溶媒(S1)の質量の比率が、50質量%以上である限り、特に限定されない。感光性樹脂組成物は、懸濁液でも溶液であってもよく、溶液であるのが好ましい。
感光性樹脂組成物の保管時安定性が特に良好であることや、所望する膜厚のポリイミド樹脂膜を製膜しやすいこと等から、感光性樹脂組成物の質量に対する、感光性樹脂組成物に含まれる有機溶媒(S)以外の成分の質量の比率は、50質量%以下が好ましく、5質量%以上50質量%以下がより好ましく、15質量%以上45質量%以下がさらに好ましく、20質量%以上40質量%以下が最も好ましい。
【0204】
<その他の成分>
感光性樹脂組成物は、必要に応じて、以上説明した成分以外の種々の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、着色剤、分散剤、増感剤、密着促進剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、消泡剤、界面活性剤、イミド化促進剤、密着性向上剤としての含窒素複素環化合物、及びシランカップリング剤等が挙げられる。また、感光性樹脂組成物は、必要に応じて、種々の充填材、又は強化材を含んでいてもよい。
【0205】
増感剤としては、公知の化合物を使用できる。増感剤としては、例えば、ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、N-フェニルジエタノールアミン、N-フェニルグリシン、7-ジエチルアミノ-3-ベンゾイルクマリン、7-ジエチルアミノ―4-メチルクマリン、N-フェニルモルホリン、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0206】
重合禁止剤としては、公知の化合物を使用できる。重合禁止剤としては、例えば、フェノール性水酸基を有する化合物や、ニトロソ化合物、N-オキシド化合物、キノン化合物、N-オキシル化合物、及びフェノチアジン化合物等が挙げられる。より具体的には、重合禁止剤としては、Irganox1010、Irganox1035、Irganox1098、Irganox1135、Irganox245、Irganox259、Irganox3114、(いずれもBASFジャパン社製)、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、及び4-メトキシフェノールが好ましく、Irganox1010、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、及び4-メトキシフェノールがより好ましい。
【0207】
感光性樹脂組成物が光ラジカル重合開始剤(C)を含む場合、感光性樹脂組成物の優れた現像性と、良好な酸化防止効果とを両立する観点で、重合禁止剤の使用量は、ポリイミド樹脂前駆体(A)の質量に対して、0.005質量%以上1質量%以下が好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下がより好ましく、0.03質量%以上0.3質量%以下がさらに好ましい。
【0208】
含窒素複素環化合物は、金属表面に配位して安定化することにより、感光性樹脂組成物を用いて形成される樹脂膜の金属表面に対する密着性を向上させる。含窒素複素環化合物としては、公知の化合物を使用できる。含窒素複素環化合物としては、例えば、イミダゾール、ピラゾール、インダゾール、カルバゾール、トリアゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、テトラゾール、ピリジン、ピペリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、シアヌル酸、イソシアヌル酸、及びそれらの誘導体が挙げられる。金属との配位性の観点から好ましい含窒素複素環化合物の具体例としては、1H-ベンゾトリアゾール、4-メチル-1H-メチルベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-メチルベンゾトリアゾール、4-カルボキシ-1H-メチルベンゾトリアゾール、及び5-カルボキシ-1H-メチルベンゾトリアゾール等のトリアゾール類や、1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、及び5-フェニル-1H-テトラゾール等のトリアゾール類が挙げられる。
【0209】
感光性樹脂組成物の優れた現像性と、感光性樹脂組成物を用いて形成されるポリイミド樹脂膜の基板等への密着性の向上とを両立する観点から、含窒素複素環化合物の使用量は、ポリイミド樹脂前駆体(A)の質量に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上3質量%以下がより好ましい。
【0210】
シランカップリング剤を感光性樹脂組成物に配合することにより、感光性樹脂組成物を用いて形成される樹脂膜の基板等に対する密着性を向上させることができる。シランカップリング剤としては、公知の化合物を使用できる。シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(エポキシシクロヘキシル)トリエトキシシラン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-アミノプロピルトリメトキシシランと酸無水物との反応物、及び3-アミノプロピルトリエトキシシランと酸無水物との反応物等が挙げられる。
3-アミノプロピルトリメトキシシラン、又は3-アミノプロピルトリエトキシシランと反応させる酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、ナジック酸無水物、3-ヒドロキシフタル酸無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、及び4,4’-オキシジフタル酸二無水物等が挙げられる。
【0211】
シランカップリング剤の使用量は、ポリイミド樹脂前駆体(A)の質量に対して、0.01質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0212】
界面活性剤を感光性樹脂組成物に配合することにより、感光性樹脂組成物の塗布性が向上し、また感光性樹脂組成物の基板との濡れ性が向上する。界面活性剤としては、公知の化合物を使用できる。界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
【0213】
界面活性剤の使用量は、ポリイミド樹脂前駆体(A)の質量に対して、0.001質量%以上1質量%以下が好ましい。
【0214】
ポリイミド樹脂前駆体(A)が、加熱によりポリイミド樹脂に変換され得る。このため、感光性樹脂組成物が、環化促進剤を含有していてもよい。環化促進剤は、ポリアミック酸や、テトラカルボン酸二無水物とアルコール類との反応によって合成し得るジカルボン酸化合物に由来する構成単位を含むポリアミド樹脂の環化によるポリイミド樹脂の生成を促進する。
感光性樹脂組成物が環化促進剤を含む場合、感光性樹脂組成物を用いて、環化によってポリイミド樹脂を生成させつつ形成された樹脂膜の、機械特性や耐候信頼性が向上する。環化促進剤としては、公知の熱塩基発生剤や熱酸発生剤が用いられる。
【0215】
各種添加剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。使用量が上記されていない添加剤についての使用量は、感光性樹脂組成物の固形分の質量に対して、例えば、0.001質量%以上60質量%以下の範囲内で適宜調整すればよく、好ましくは0.01質量%以上5質量%以下である。
【0216】
<感光性樹脂組成物の調製方法>
以上説明した、必須の成分と、必要に応じて任意の成分とを、それぞれ所望する量均一に混合することにより感光性樹脂組成物を調製できる。混合方法は特に限定されない。感光性樹脂組成物中の異物を除去する目的で、感光性樹脂組成物をフィルターによって濾過することが好ましい。
【0217】
≪感光性ドライフィルム≫
感光性ドライフィルムは、基材フィルムと、該基材フィルムの表面に形成された感光性層とを有し、感光性層が、前述の感光性樹脂組成物からなるものである。
【0218】
基材フィルムとしては、光透過性を有するものが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等が挙げられるが、光透過性及び破断強度のバランスに優れる点でポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましい。
【0219】
基材フィルム上に、前述の感光性樹脂組成物を塗布して感光性層を形成することにより、感光性ドライフィルムが製造される。
基材フィルム上に感光性層を形成するに際しては、アプリケーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター等を用いて、基材フィルム上に乾燥後の膜厚が好ましくは0.5μm以上300μm以下、より好ましくは1μm以上300μm以下、特に好ましくは3μm以上100μm以下となるように感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥させる。
【0220】
感光性ドライフィルムは、感光性層の上にさらに保護フィルムを有していてもよい。この保護フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム等が挙げられる。
【0221】
≪樹脂膜形成方法≫
感光性樹脂組成物を基板上に塗布して塗布膜を形成する、塗布工程と、
塗布膜を乾燥させて樹脂膜を得る、乾燥工程と、を備える、方法により前述のポリイミド樹脂前駆体(A)を含む樹脂膜を形成できる。
【0222】
基板としては、特に限定されず、従来公知の基板を用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等を例示することができる。基板としては、シリコン基板やガラス基板等を用いることもできる。
【0223】
液状の感光性樹脂組成物を基板上に塗布して塗布膜した後、塗布された感光性樹脂組成物から溶媒を除去することによって所望の膜厚の塗布膜が形成される。塗布膜の厚さは特に限定されないが、0.5μm以上が好ましく、0.5μm以上300μm以下がより好ましく、1μm以上150μm以下が特に好ましく、3μm以上100μm以下が最も好ましい。
【0224】
基板上への感光性樹脂組成物の塗布方法としては、スピンコート法、スリットコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、及びアプリケーター法等の方法を採用することができる。
【0225】
基板上に塗布された感光性樹脂組成物を乾燥させる方法は特に限定されない。好ましくは、乾燥は、加熱により行われる。乾燥時の加熱条件は、感光性樹脂組成物中の各成分の種類、配合割合、塗布膜厚等によって異なるが、通常は70℃以上200℃以下で、好ましくは80℃以上150℃以下で、2分以上120分以下程度である。
以上のようにして、前述のポリイミド樹脂前駆体(A)を含む樹脂膜が形成される。
【0226】
≪パターン化された樹脂膜の形成方法≫
前述の感光性樹脂組成物を基板上に塗布して塗布膜を形成する、塗布工程と、
塗布膜に、位置選択的に活性光線又は放射線を照射して露光する露光工程と、
露光後の塗布膜を現像し、パターン化された樹脂膜を得る現像工程と、を含む、方法によりパターン化された樹脂膜が形成される。パターン化された樹脂膜は、前述のポリイミド樹脂前駆体(A)を含む。
【0227】
基板と、感光性樹脂組成物の塗布方法とは、樹脂膜形成方法について前述した通りである。
基板上に塗布された感光性樹脂組成物は、通常、乾燥により塗布膜とされる。基板上に塗布された感光性樹脂組成物を乾燥させる方法は特に限定されない。好ましくは、乾燥は、加熱により行われる。乾燥時の加熱条件は、感光性樹脂組成物中の各成分の種類、配合割合、塗布膜厚等によって異なるが、通常は70℃以上200℃以下で、好ましくは80℃以上150℃以下で、2分以上120分以下程度である。
【0228】
上記のようにして形成された塗布膜に対して、位置選択的に活性光線又は放射線を照射して露光を行う。一選択的な露光は、通常、所定のパターンのマスクを介して、活性光線又は放射線、例えば波長が300nm以上500nm以下の紫外線又は可視光線を位置選択的に照射することにより行われる。
【0229】
放射線の線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレーザー等を用いることができる。また、放射線には、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線、イオン線等が含まれる。放射線照射量は、樹脂膜形成感光性樹脂の組成や感光性層の膜厚等によっても異なるが、例えば超高圧水銀灯使用の場合、100mJ/cm以上10,000mJ/cm以下である。
【0230】
次いで、露光された塗布膜を、従来知られる方法に従って現像し、不要な部分を溶解、除去することにより、所定の形状にパターン化された樹脂膜が形成される。この際、感光性樹脂組成物に含まれる成分に応じた現像液が使用される。前述のポリイミド樹脂前駆体(A)が、カルボキシ基のようなアルカリ可溶性基を有する樹脂である場合、現像液としては、アルカリ性水溶液を使用し得る。また、現像液としては、前述の有機溶媒(S)として例示した有機溶媒を用いることができる。
【0231】
アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(水酸化テトラメチルアンモニウム)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン、及び1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノナン等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。また、上記アルカリ類の水溶液にメタノール、及びエタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
【0232】
現像時間は、感光性樹脂組成物の組成や塗布膜の膜厚等によっても異なるが、通常1分以上30分以下の間である。現像方法は、液盛り法、ディッピング法、パドル法、スプレー現像法等のいずれでもよい。
【0233】
現像後は、必要に応じて洗浄を30秒以上90秒以下の間行い、エアーガンや、オーブン等を用いてパターン化された樹脂膜を乾燥させる。このようにして、基板の表面上に、所望する形状にパターン化された樹脂膜が形成される。洗浄溶剤については、特に限定されない。一例として、アルカリ現像した場合の洗浄溶剤としては、水やアルコール類等が使用可能である。有機溶媒(S)にて現像した場合は、ソルベントショックが起きない範囲で、有機溶媒(S)が使用可能である。
【0234】
樹脂膜に含まれるポリイミド樹脂前駆体(A)は、加熱によりイミド化され得る。このため、現像後、必要に応じて、現像された塗布膜に対して、ベークを施すことにより、樹脂膜中のポリイミド樹脂前駆体(A)をイミド化させることができる。ポリイミド樹脂前駆体(A)を加熱により、ポリイミド樹脂に変換させる条件は、前述した通りである。また、ベークは、樹脂膜の酸化を防ぎ、機械特性が良好な樹脂膜を得る観点で、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0235】
上記のようにして形成されるパターン化されたポリイミド樹脂膜は、例えば、半導体デバイスの絶縁膜、再配線層用層間絶縁膜や、タッチパネルディスプレーや有機電界発光表示パネル等における絶縁膜や保護膜として好適に用いられる。前述した感光性樹脂組成物は解像性が良好であることから、上記のようにして形成されるパターン化された樹脂膜は、特に、三次元実装デバイスにおける再配線層用層間絶縁膜等として、好ましく用いることができる。
また、上記のようにして形成されるパターン化された樹脂膜は、エレクトロニクス用のフォトレジスト、ガルバニック(電解)レジスト、エッチングレジスト、及びソルダートップレジスト等としても好適に使用され得る。
さらに、上記のようにして形成されるパターン化された樹脂膜は、オフセット版面、又はスクリーン版面等の版面の製造、成形部品をエッチングする際のエッチングマスクの形成、エレクトロニクス部品、特に、マイクロエレクトロニクス部品における保護ラッカー、及び誘電層の製造等にも用いることもできる。
【0236】
以上の通り、本発明者により、以下の(1)~(7)が提供される。
(1)ポリイミド樹脂前駆体(A)と、光ラジカル重合開始剤(C)と、有機溶媒(S)とを含む、感光性樹脂組成物であって、
ポリイミド樹脂前駆体(A)が、下記式(1):
【化44】
(式(1)中、XA1、及びYA1は、炭素原子数6以上40以下の有機基であり、
A1、及びRA2は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1以上30以下の有機基であり、RA1、及びRA2としての有機基は、C-O結合を介して、式(1)中のエステル結合中の酸素原子に結合する。)
で表される構成単位からなり、
ポリイミド樹脂前駆体(A)が、RA1、及びRA2としての有機基として、炭素-炭素二重結合を有する炭素原子数3以上20以下の不飽和基を有し、
ポリイミド樹脂前駆体(A)が、YA1として、下記式(A1-1):
【化45】
(式(A1-1)中、Xは、(ma1+ma3+2)価の有機基であり、Ra1は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、又はハロゲン原子であり、Ra2は、炭素原子数1以上20以下の脂肪族基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、又はハロゲン原子であり、Arは、Ra2で置換されていてもよいフェニル基、又はRa2で置換されていてもよいナフチル基であり、ma1は、0以上10以下の整数であり、ma2は、0以上7以下の整数であり、ma3は、1以上10以下の整数である。)
で表される2価の基、又は下記式(A2-1):
【化46】
(式(A2-1)中、Ra3及びRa4は、それぞれ独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、又はハロゲン原子であり、ma4及びma5は、それぞれ独立に0以上4以下の整数である。)
で表される部分構造を有する2価の基を含み、
有機溶媒(S)がウレア系溶媒(S1)を含み、
有機溶媒(S)の質量に対する、ウレア系溶媒(S1)の質量の比率が、50質量%以上である、感光性樹脂組成物。
(2)ウレア系溶媒(S1)の含有量が、ポリイミド樹脂前駆体(A)100質量部に対して、90質量部以上である、(1)に記載の感光性樹脂組成物。
(3)ウレア系溶媒(S1)の含有量が、ポリイミド樹脂前駆体(A)100質量部に対して、200質量部以上である、(1)、又は(2)に記載の感光性樹脂組成物。
(4)感光性樹脂組成物の質量に対する、有機溶媒(S)以外の成分の質量の比率が50質量%以下である、(1)~(3)のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
(5)ウレア系溶媒(S1)が、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア、N,N,N’,N’-テトラエチルウレア、N,N,N’,N’-テトラブチルウレア、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、及びN,N’-ジメチルプロピレンウレアからなる群より選択される1種以上である、(1)~(4)のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
(6)基板上に、(1)~(5)のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物を塗布して、塗布膜を形成することと、
塗布膜を位置選択的に露光することと、
露光された前記樹脂膜を現像することと、を含む、パターン化された樹脂膜の製造方法。
(7)(6)に記載の製造方法により製造されたパターン化された樹脂膜を加熱することにより、ポリイミド樹脂前駆体に由来するポリイミド樹脂を生成させることを含む、パターン化されたポリイミド樹脂膜の製造方法。
【実施例
【0237】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
【0238】
〔実施例1~15、及び比較例1~14〕
実施例、及び比較例において、ジアミン化合物として下記のDA1、及びDA2を用いた。
【化47】
【0239】
実施例、及び比較例において、テトラカルボン酸二無水物として、下記のTC1、及びTC2を用いた。
【化48】
【0240】
実施例、及び比較例において、テトラカルボン酸に無水物と反応させるアルコールについて、以下のAlc1~Alc3を用いた。
Alc1:2-ヒドロキシエチルメタクリレート(東京化成工業製)
Alc2:2-ヒドロキシプロピルアクリレート(共栄社製、ライトアクリレートHOP-A(N))
Alc3:2-ヒドロキシブチルアクリレート(共栄社製、ライトアクリレートHOB-A)
【0241】
実施例、及び比較例において、有機溶媒として、下記の有機溶媒を用いた。
TMU:N,N,N’,N’-テトラメチルウレア
TEU:N,N,N’,N’-テトラエチルウレア
TBU:N,N,N’,N’-テトラブチルウレア
DMI:1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン
DMPU:N,N’-ジメチルプロピレンウレア
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
NEP:N-エチル-2-ピロリドン
GBL:γ-ブチロラクトン
DEAc:N,N-ジエチルアセトアミド
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
DMPA:N,N-ジメチルプロピオンアミド
DEDM:ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)
【0242】
(ジカルボン酸の製造)
表1に記載の種類のテトラカルボン酸二無水物0.1モルを、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)100gに溶解させた。得られた溶液に、表1に記載の種類のアルコール0.2モルと、ピリジン15.8g(0.2モル)と、ジメチルアミノピリジン2.4g(0.02モル)とを加えた。次いで、溶液を40℃で16時間撹拌して、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとの反応物であるジカルボン酸を得た。
【0243】
(ポリイミド樹脂前駆体の製造)
得られたジカルボン酸0.1モルを含む溶液を0℃に冷却した。冷却された溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド43.3g(0.21モル)がNMP40gに溶解した縮合剤溶液と、表1に記載の種類のジアミン化合物0.1モルがNMP40gに溶解したジアミン溶液とを、それぞれ滴下した。
滴下終了後、得られた反応液を室温で4時間撹拌して、ジカルボン酸とジアミン化合物とを縮合させた。
反応終了後、反応液に、メタノール1.92gを加えた。沈殿した副生物をろ過により除去した後、ポリイミド樹脂前駆体を含むろ液を大量のイソプロピルアルコール水溶液中に滴下した。滴下後、イソプロピルアルコール中水溶液中に析出したポリイミド樹脂前駆体ろ過により回収した。回収された析出物を、イソプロピルアルコールにより3回洗浄した。洗浄後の析出物を減圧乾燥して、各実施例、及び比較例のポリイミド樹脂前駆体を得た。
【0244】
(感光性樹脂組成物の製造)
ポリイミド樹脂前駆体100質量部と、光ラジカル重合開始剤(Irgacure OXE-02、BASFジャパン社製)3質量部と、チオール化合物(ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトブチレート)、カレンズMT(登録商標)PE1、昭和電工株式会社製)5質量部と、界面活性剤(BYK333、ビックケミー社製)0.05質量部とを、表1に記載の種類の有機溶媒に固形分濃度27質量%となるように均一に溶解させて、各実施例、及び各比較例の感光性樹脂組成物を得た。
有機溶媒の使用量は、292.14質量部である。
【0245】
各実施例、及び各比較例の感光性樹脂組成物について、以下の方法に従い、保管安定性と、感光性樹脂組成物を用いて形成されるポリイミド樹脂膜の誘電正接とを評価した。評価結果を表1に記す。
【0246】
<保管安定性評価>
感光性樹脂組成物を、室温で保管した。保管中の感光性樹脂組成物の目視観察の結果に基づいて、以下の基準に従って、保管安定性を評価した。
○:2週間以上、粘度の変化等の性状変化が見られなかった。
×:2週間経過までに、粘度の変化等の性状変化が見られた。
【0247】
<誘電正接評価>
感光性樹脂組成物をシリコンウエハー上にスピンコーターにより塗布した後、感光性樹脂組成物の薄膜を90℃で240秒間ベークした。ベークされた塗布膜を、高圧水銀灯を用いて積算光量2,000mJ/cmで露光した。露光後の膜をイナートオーブンにて、窒素雰囲気下で、温度を5℃/分の昇温速度で230℃まで昇温し、同温度にて塗布膜を1時間加熱した。温度が100℃まで下がったところで、ウエハを取り出し、濃度2質量%のフッ化水素酸水溶液に5分~30分間浸漬し、ウエハから樹脂膜を剥離することで、ポリイミド樹脂膜を得た。剥離後の樹脂膜の膜厚は、10μmであった。
【0248】
得られたフィルムの誘電正接(tanδ)を、電子情報通信学会の信学技報 vol. 118, no. 506, MW2018-158, pp. 13-18, 2019年3月 「感光性絶縁フィルムの円筒空洞共振器法によるミリ波複素誘電率評価に関する検討」(高萩耕平(宇都宮大学)、海老澤和明(東京応化工業株式会社)、古神義則(宇都宮大学)、清水隆志(宇都宮大学))に記載された方法で測定した。ネットワークアナライザーHP8510C(キーサイト社製)を使用し、空洞共振器法で、室温25℃、湿度50%、周波数36GHz、サンプル厚さ10μmの条件で測定した。誘電正接の測定値に基づき、以下の基準に従い誘電正接の評価を行った。
○:誘電正接が0.010未満。
×:誘電正接値が0.010超。
【0249】
【表1】
【0250】
実施例によれば、前述の所定の構造のポリイミド樹脂前駆体(A)と、光ラジカル重合開始剤(C)と、有機溶媒(S)とを含む感光性樹脂組成物が、有機溶媒(S)の質量に対して50質量%以上のウレア系溶媒(S1)を含む場合、感光性樹脂組成物が、保管安定性に優れ、また、誘電正接の低いポリイミド樹脂膜を与えることが分かる。
他方、比較例によれば、感光性樹脂組成物が、前述の所定の構造のポリイミド樹脂前駆体(A)と、光ラジカル重合開始剤(C)と、有機溶媒(S)とを含んでいても、有機溶媒(S)の質量に対するウレア系溶媒(S1)の質量の比率が50質量未満である場合、感光性樹脂組成物が、保管安定性に劣ることが分かる。