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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】光源装置、検出装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20240618BHJP
   H01S 5/02 20060101ALI20240618BHJP
   H01S 5/40 20060101ALI20240618BHJP
   H01S 5/42 20060101ALI20240618BHJP
   H01L 33/58 20100101ALI20240618BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20240618BHJP
   H01L 33/08 20100101ALI20240618BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20240618BHJP
   F21V 14/06 20060101ALI20240618BHJP
   F21V 23/00 20150101ALI20240618BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20240618BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20240618BHJP
   G01S 17/10 20200101ALI20240618BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240618BHJP
   F21Y 105/12 20160101ALN20240618BHJP
【FI】
F21S2/00 311
H01S5/02
H01S5/40
H01S5/42
H01L33/58
H01L33/00 L
H01L33/08
F21V5/00 320
F21V14/06
F21V23/00 113
G01C3/06 120Q
G01S7/481 A
G01S17/10
F21Y115:30
F21Y105:12
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019225299
(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公開番号】P2020155403
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2019046772
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓海
(72)【発明者】
【氏名】池應 敏行
(72)【発明者】
【氏名】泉谷 一磨
(72)【発明者】
【氏名】植野 剛
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/087301(WO,A1)
【文献】特開2008-205342(JP,A)
【文献】特開2007-214564(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109058930(CN,A)
【文献】特開2011-159435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
H01S 5/02
H01S 5/40
H01S 5/42
H01L 33/58
H01L 33/00
H01L 33/08
F21V 5/00
F21V 14/06
F21V 23/00
G01C 3/06
G01S 7/481
G01S 17/10
F21Y 115/30
F21Y 105/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光部を備える光源と、前記光源で発した光を、前記光源の発光面よりも広範囲の照射領域に拡大して照射する投光光学系とを有し、
前記投光光学系の拡大率が相対的に大きい照射領域に対応する前記光源の発光領域の単位面積あたりの発光光量が、前記投光光学系の拡大率が相対的に小さい照射領域に対応する前記発光領域の単位面積あたりの発光光量よりも大きく、
前記照射領域の周辺部が中央部よりも前記投光光学系の拡大率が大きく、
前記照射領域の周辺部に対応する前記発光領域の単位面積あたりの発光光量が、前記照射領域の中央部に対応する前記発光領域の単位面積あたりの発光光量よりも大きいことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
複数の発光部を備える光源と、前記光源で発した光を、前記光源の発光面よりも広範囲の照射領域に拡大して照射する投光光学系とを有し、
前記投光光学系の拡大率が相対的に大きい照射領域に対応する前記光源の発光領域の単位面積あたりの発光光量が、前記投光光学系の拡大率が相対的に小さい照射領域に対応する前記発光領域の単位面積あたりの発光光量よりも大きく、
前記投光光学系は、
前記光源から発した光の発散角を抑制する集光光学要素と、
前記集光光学要素を透過した光の照射角度を拡大させて出射する拡大光学要素と、
を有することを特徴とする光源装置。
【請求項3】
前記集光光学要素を、前記光源又は前記拡大光学要素に対して移動可能な第1の位置調整部を有する請求項に記載の光源装置。
【請求項4】
前記第1の位置調整部は、前記集光光学要素を少なくとも光軸方向へ位置調整可能である請求項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記拡大光学要素を、前記光源又は前記集光光学要素に対して移動可能な第2の位置調整部を有する請求項から請求項のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項6】
前記第2の位置調整部は、前記拡大光学要素を少なくとも光軸方向へ位置調整可能である請求項に記載の光源装置。
【請求項7】
前記光源を、前記投光光学系に対して移動可能な第3の位置調整部を有する請求項から請求項のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項8】
前記第3の位置調整部は、前記光源を少なくとも光軸に垂直な方向へ位置調整可能である請求項に記載の光源装置。
【請求項9】
前記光源の少なくとも一部で、隣り合う前記発光部の間隔が異なる請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項10】
前記光源の少なくとも一部で、前記発光部の発光量が異なる請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項11】
前記複数の発光部に印加される電流量が同じである請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項12】
前記光源は、垂直共振器面発光レーザ、端面発光レーザ、発光ダイオードのいずれかである請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の光源装置と、
前記光源装置から発せられ対象物で反射された光を検出する検出部と、
を有することを特徴とする検出装置。
【請求項14】
複数の発光部を備える光源と、前記光源で発した光を、前記光源の発光面よりも広範囲の照射領域に拡大して照射する投光光学系とを有し、前記投光光学系の拡大率が相対的に大きい照射領域に対応する前記光源の発光領域の単位面積あたりの発光光量が、前記投光光学系の拡大率が相対的に小さい照射領域に対応する前記発光領域の単位面積あたりの発光光量よりも大きい光源装置と、
前記光源装置から発せられ対象物で反射された光を検出する検出部と、
を有することを特徴とする検出装置。
【請求項15】
前記検出部からの信号に基づき、前記対象物との距離に関する情報を取得する計算部を有する請求項13又は請求項14に記載の検出装置。
【請求項16】
請求項13から請求項15のいずれか1項に記載の検出装置からの情報が入力される電子機器であって、前記検出装置からの情報に基づき当該電子機器の制御を行う制御部を有することを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、検出装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、対象物に光を照射して対象物からの反射光を受光し、対象物の状態などを検出する検出装置が、様々な分野で用いられている。例えば、特許文献1には、レーザ光によって、物体の存在の検出や、対象物との距離の測定を行うライダーシステムが記載されている。このライダーシステムでは、光源として垂直共振器面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)を用い、VCSELで発した光をレンズを通して照射する光源装置を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-214564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光源からの光を、投光光学系によって拡げて広範囲に照射させると、投光光学系の収差などの影響で、照射面での光の照度が不均一になるおそれがある。従来の光源装置では、このような問題に着眼して照射面での照度を均一にすることが検討されていなかった。しかし、反射光を受光して検出を行う検出装置では、光源装置から照射面へ均一な照度で投光することは、検出精度の向上において極めて重要である。
【0005】
本発明は、以上の問題意識に基づいてなされたものであり、照射される光の照度の均一性に優れる光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光源装置は、複数の発光部を備える光源と、光源で発した光を、光源の発光面よりも広範囲の照射領域に拡大して照射する投光光学系とを有し、投光光学系の拡大率が相対的に大きい照射領域に対応する光源の発光領域の単位面積あたりの発光光量が、投光光学系の拡大率が相対的に小さい照射領域に対応する光源の発光領域の単位面積あたりの発光光量よりも大き
一つの態様では、前記照射領域の周辺部が中央部よりも前記投光光学系の拡大率が大きく、前記照射領域の周辺部に対応する前記発光領域の単位面積あたりの発光光量が、前記照射領域の中央部に対応する前記発光領域の単位面積あたりの発光光量よりも大きい。
一つの態様では、前記投光光学系は、前記光源から発した光の発散角を抑制する集光光学要素と、前記集光光学要素を透過した光の照射角度を拡大させて出射する拡大光学要素と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、投光光学系を原因とする照度のばらつきを解消するように光源の発光光量を設定したことにより、照射される光の照度の均一性に優れる光源装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の光源装置を適用した検出装置の一実施形態である測距装置を概念的に示す図である。
図2】光源装置における投光光学系の基準状態を示す図であり、(A)は光源装置の構成、(B)は光源装置による照射面上の光の照射状態を示す。
図3】光源装置における投光光学系の照射領域調整状態を示す図であり、(A)は光源装置の構成、(B)は光源装置による照射面上の光の照射状態を示す。
図4】調整機構を備えた形態の光源装置を示す断面図である。
図5】光源装置の光源の一部を示す断面図である。
図6】光源の複数の発光部を均一間隔で配置した場合と、複数の発光部を粗密配置にした場合の、照射面上の照度分布を示すグラフである。
図7】光源装置の光源で、複数の発光部を粗密配置にした形態を示す図である。
図8】光源の複数の発光部を均一の発光量で発光させた場合と、複数の発光部を異なる発光量で発光させた場合の、照射面上の照度分布を示すグラフである。
図9】光源装置の光源で、複数の発光部の発光量を異ならせる形態を示す図である。
図10】光源装置の光源で、複数の発光部の設置範囲の一例を示す図である。
図11】照射面における光の照射領域を示す図であり、(A)は矩形の発光面全体に発光部を配置した場合、(B)は楕円状に発光部を配置した場合を示す。
図12】光源装置を物品検査用の検出装置に適用した例を示す図である。
図13】光源装置を有する検出装置を可動機器に適用した例を示す図である。
図14】光源装置を有する検出装置を携帯情報端末に適用した例を示す図である。
図15】光源装置を有する検出装置を移動体の運転支援システムに適用した例を示す図である。
図16】光源装置を有する検出装置を移動体の自律走行システムに適用した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明を適用した実施形態を説明する。図1は、測距装置10の概要を示したものである。測距装置10は、光源装置11から検出対象物12に対してパルス光を投光(照射)し、検出対象物12からの反射光を受光素子13で受光して、反射光の受光までに要した時間に基づいて検出対象物12との距離を測定する、TOF(Time Of Flight)方式の距離検出装置である。
【0010】
図1に示すように、光源装置11は、光源14と投光光学系15を有している。光源14は、光源駆動回路16により電流が送られて発光が制御される。光源駆動回路16は、光源14を発光させたときに信号制御回路17に信号を送信する。投光光学系15は、光源14から出射した光を拡げて(発散させて)検出対象物12に投光させる光学系である。
【0011】
光源装置11から投光されて検出対象物12で反射された反射光は、集光作用を持つ受光光学系18を通して受光素子13に導光される。受光素子13は光電変換素子からなり、受光素子13で受光した光が光電変換され、電気信号として信号制御回路17に送られる。信号制御回路17は、投光(光源駆動回路16からの発光信号入力)と受光(受光素子13からの受光信号入力)の時間差に基づいて、検出対象物12までの距離を計算する。従って、測距装置10では、受光素子13が、光源装置11から発せられて検出対象物12で反射された光を検出する検出部として機能する。また、信号制御回路17が、受光素子13(検出部)からの信号に基づき、検出対象物12との距離に関する情報を取得する計算部として機能する。
【0012】
図2(A)及び図3(A)に光源装置11の構成を示した。先に説明した光源14(図1)として面発光レーザ20を備え、面発光レーザ20は、発光面P1上に所定の位置関係で配置された複数の面発光レーザ素子21を備えている。本発明における光源の一例が面発光レーザ20であり、本発明における発光部の一例が面発光レーザ素子21である。本実施形態の面発光レーザ素子21は、基板に対して垂直方向に発光する垂直共振器面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:以下、VCSELとする)である。
【0013】
個々の面発光レーザ素子21に対応する面発光レーザ20の部分的な断面構造を図5に示す。基板22上に、下部多層膜反射鏡24D、下部スペーサ層25D、活性層26、上部スペーサ層25U、上部多層膜反射鏡24U、コンタクト層23が積層して設けられている。上部多層膜反射鏡24U中に電流狭窄層27が形成されている。電流狭窄層27は、電流通過領域27aと、電流通過領域27aを取り囲む電流通過抑制領域27bによって構成されている。基板22の下部に下部電極28Dが配され、最上部に上部電極28Uが配されている。上部電極28Uの内方は絶縁体29で絶縁されている。上部電極28Uは、コンタクト層23の周縁部に接触し、コンタクト層23の中央部は開放されている。
【0014】
各電極28U、28Dから活性層26へ電流を印加すると、積層構造の上部多層膜反射鏡24Uと下部多層膜反射鏡24Dで増幅されて、レーザ光が発振する。印加電流量の大きさに応じて、レーザ光の発光強度が変化する。電流狭窄層27は、活性層26への印加電流量の効率を高めて発振閾値を下げるものである。電流狭窄層27の電流通過領域27aが大きく(広く)なるにつれて、印加できる最大電流量が増加して、発振可能なレーザ光の最大出力が増加するが、その反面、発振閾値が上がるという特性がある。
【0015】
VCSELは、端面発光レーザに比べて、発光素子の二次元化が容易であり、発光素子を高密度で配置した多点ビーム化が可能という特徴がある。また、VCSELは、複数の発光素子のレイアウトの自由度が高く、電極の配置などの構造上の制約を除いて、基板上の任意の位置に発光素子を配置することができる。
【0016】
図2(A)及び図3(A)に示すように、投光光学系15は、集光光学素子である集光レンズ30と、拡大光学素子である投光レンズ31を有する。集光レンズ30は、正のパワーを持つレンズであり、面発光レーザ20の各面発光レーザ素子21から発した光の発散角を抑制して、各面発光レーザ素子21の共役像を形成することができる。投光レンズ31は、負のパワーを持つレンズであり、集光レンズ30を透過した光の照射角度を拡大させて出射し、面発光レーザ20の発光面P1よりも広範囲の照射領域に投光する。投光レンズ31のレンズ面の曲率によって、照射領域の範囲や共役像の拡大の程度が決まる。
【0017】
なお、本発明における投光光学系の構成は、図2(A)及び図3(A)に示す一例に限定されるものではない。投光光学系15を構成する集光光学素子は、光源(面発光レーザ20)からの光の発散角を抑えるものであればよく、レンズ以外に、回折格子などを用いることもできる。また、集光光学素子にレンズを用いる場合、複数の面発光レーザ素子21からの光を透過可能な共用のレンズであってもよいし、個々の面発光レーザ素子21に対応する複数のレンズを備えるマイクロレンズアレイであってもよい。投光光学系15における投光光学素子は、光を拡げるものであればよく、両凹レンズや負のメニスカスレンズ、あるいは拡散板など、任意のものを用いることができる。集光光学素子と投光光学素子のいずれにおいても、レンズを用いる場合は、光軸方向に並ぶレンズ枚数は、単一(単レンズ)であってもよいし、複数枚のレンズからなるレンズ群を用いてもよい。
【0018】
図2(A)は、集光レンズ30の焦点距離と、面発光レーザ20の発光面P1から集光レンズ30までの距離とが等しい状態の光源装置11を示している。この状態を、光源装置11における投光光学系15の基準状態とする。投光光学系15の基準状態では、面発光レーザ20のそれぞれの面発光レーザ素子21からの光が集光レンズ30によってコリメートされ、集光レンズ30の透過後は光路上のどの位置においても各面発光レーザ素子21の共役像が形成される。つまり、発光面P1と照射面P2は共役の関係に近くなる。なお、照射面P2は、光学的な状態を理解しやすくするために設定した仮想の平面であり、実際の検出対象物12は、平面に限らず様々な形状である。
【0019】
投光光学系15の基準状態での、照射面P2上の照射領域を図2(B)に示した。面発光レーザ20において、複数の面発光レーザ素子21の間にはそれぞれ隙間があるので、各面発光レーザ素子21の共役像が形成される基準状態では、照射面P2上に離散的な(互いの間に隙間がある)照射領域E1が現れる。より詳しくは、照射領域E1は照射面P2上で光が照射されている領域であり、面発光レーザ20の複数の面発光レーザ素子21の配置に対応する位置関係で、複数の照射領域E1が存在する。個々の照射領域E1の間には、照射領域E1に比して照度が低い(光が照射されていない)非照射領域E2が存在する。非照射領域E2は、面発光レーザ20における複数の面発光レーザ素子21の間の隙間部分に対応する領域である。つまり、投光光学系15の基準状態では、照射面P2で離散的に照度が強くなり、照度の均一性が得られない。
【0020】
図3(A)は、投光光学系15の基準状態(図2(A))から、集光レンズ30を光軸方向で僅かに物体側(発光面P1に近づく側)にずらした状態を示している。この状態を、光源装置11における投光光学系15の照射領域調整状態とする。照射領域調整状態では、集光レンズ30をずらすことによって、各面発光レーザ素子21からの光が完全にはコリメートされずに発散し、上記の基準状態に比べて、各面発光レーザ素子21の像が拡がりを持つようになる。その結果、図3(B)に示すように、照射面P2上で、複数の面発光レーザ素子21間の隙間に対応する領域を埋めるように光が照射された全面照射領域E3が得られる。
【0021】
基準状態から集光レンズ30をどの程度ずらすと照射領域調整状態になるかは、投光光学系15や面発光レーザ20のスペックや各種条件によって異なる。本実施形態の構成では、基準状態における面発光レーザ20の発光面P1から集光レンズ30までの距離(集光レンズ30の焦点距離に相当する)に対して、15%から24%の範囲で物体側(発光面P1に近づく側)に集光レンズ30をずらすことによって、広角かつ均一な照度の全面照射領域E3を得ることができた。集光レンズ30をすらす量が上記範囲の下限(15%)を下回ると、各面発光レーザ素子21に対応する照射面P2上の照射領域が狭まって、図2(B)のような非照射領域E2が現れてしまう。集光レンズ30をすらす量が上記範囲の上限(24%)を上回ると、投光レンズ31への光の入射角度が大きくなり過ぎて、照射面P2での照射領域における収差の影響が大きくなり、照度の均一性が損なわれるおそれがある。
【0022】
投光光学系15において、集光レンズ30の光軸方向位置をすらすという上記の方法の他に、投光レンズ31のレンズ面の曲率を変更するという方法でも、非照射領域E2を発生させない投光を実現することができる。より詳しくは、投光レンズ31に各面発光レーザ素子21の共役像を入射させ、投光レンズ31自身のレンズ面の曲率設定によって各面発光レーザ素子21の像を拡げるという設定にする。その上で、非照射領域E2を含まない適切な照射範囲(全面照射領域E3)が得られる投光レンズ31を選択する。この方法は、面発光レーザ20と集光レンズ30の組み合わせ及び配置を変更せずに、目的とする照射範囲に応じて投光レンズ31のみを換装するという運用が可能であり、設定や調整にかかる作業負担を軽減できる。
【0023】
また、投光光学系15による照射領域の調整として、集光レンズ30の光軸方向位置をずらす方法と、投光レンズ31のレンズ面の曲率を変更(投光レンズ31を換装)する方法を併用することも可能である。
【0024】
図1の測距装置10において、受光素子13(図1)の形状及び配置は、光源装置11から投射される光の照射領域と対応する関係にある。これにより、面発光レーザ20の各面発光レーザ素子21から発した光と、検出対象物12で反射して受光素子13で受光される光との相関関係が維持され、各面発光レーザ素子21に対応する照射領域ごとに正確な検出(測距)を行うことができる。
【0025】
図3(B)のような全面照射領域E3を得るために、光源装置11を構成する投光光学系15の位置を、面発光レーザ20の位置に対して設計値の通りに適切に配置する必要がある。例えば、投光光学系15を構成する集光レンズ30の位置が設計値に対して光軸方向にずれると、図2(B)のように、照射面P2上に各面発光レーザ素子21の共役像が形成されて、照射面P2での非照射領域E2が増加してしまうおそれがある。投光光学系15を構成する投光レンズ31についても、設計値通りに配置する必要がある。
【0026】
また、投光光学系15と面発光レーザ20との間で、光軸に垂直な方向への位置がずれると、光源装置11からの出射光の出射角度がずれる。受光光学系18(図1)の画角に対して、光源装置11からの出射光の出射角度のずれが大きくなると、受光光学系18を通して反射光が受光されなくなる非照射範囲が増加し、結果として、測距装置10で測距できる範囲が狭まってしまう。
【0027】
このような状態になることを防いで設計通りの性能を得るべく、光学的要素の位置を調整する調整機構を備えた形態の光源装置11を図4に示す。図4に示す光源装置11は、集光レンズ30を位置調整可能に支持する第1の位置調整部80と、投光レンズ31を位置調整可能に支持する第2の位置調整部81と、投光光学系15に対して面発光レーザ20を位置調整可能に支持する第3の位置調整部82と、を備えている。
【0028】
第1の位置調整部80について説明する。集光レンズ30はレンズホルダ83の内側に保持され、レンズホルダ83は集光レンズ鏡筒84の内側に配置される。レンズホルダ83は、可動部85を介して、集光レンズ鏡筒84に対して光軸方向へ移動可能に支持されている。可動部85は、集光レンズ鏡筒84の内周面に形成した雌ネジ(ヘリコイド)を有し、雌ネジに対してレンズホルダ83の外周部分の雄ネジを螺合させた構成である。レンズホルダ83は、可動部85の雌ネジに沿って、集光レンズ30の光軸を中心として回転しながら、光軸方向に移動して位置を調整可能である。図4に示した可動部85の光軸方向の形成範囲(集光レンズ鏡筒84に雌ネジが形成された範囲)が、集光レンズ30の可動範囲となる。
【0029】
第2の位置調整部81について説明する。投光レンズ31はレンズホルダ86の内側に保持され、レンズホルダ86は投光レンズ鏡筒87の内側に配置される。投光レンズ鏡筒87は集光レンズ鏡筒84の外側に取り付けられ、集光レンズ鏡筒84の中心軸と投光レンズ鏡筒87の中心軸が同軸上に位置している。レンズホルダ86は、可動部88を介して、投光レンズ鏡筒87に対して光軸方向へ移動可能に支持されている。可動部88は、投光レンズ鏡筒87の内周面に形成した雌ネジ(ヘリコイド)を有し、雌ネジに対してレンズホルダ86の外周部分の雄ネジを螺合させた構成である。レンズホルダ86は、可動部88の雌ネジに沿って、投光レンズ31の光軸を中心として回転しながら、光軸方向に移動して位置を調整可能である。図4に示した可動部88の光軸方向の形成範囲(投光レンズ鏡筒87に雌ネジが形成された範囲)が、投光レンズ31の可動範囲となる。
【0030】
なお、第1の位置調整部80や第2の位置調整部81は、レンズホルダ83の位置を精密に管理できるものであれば良く、上述の可動部85や可動部85のようなネジ機構には限定されない。変形例として、集光レンズ鏡筒84の周面や投光レンズ鏡筒87の周面に、雌ネジではなくカム(カム溝)を形成し、レンズホルダ83やレンズホルダ86にカムフォロアを設け、カムフォロアがカムに案内されることで、レンズホルダ83やレンズホルダ86が光軸方向に移動する構成であってもよい。あるいは、光軸方向に延びるガイド部(ガイド軸、ガイド溝など)に対してレンズホルダ83やレンズホルダ86を可動に支持し、光軸方向に延びる送りネジに対してレンズホルダ83やレンズホルダ86を螺合させ、送りネジの回転によって、レンズホルダ83やレンズホルダ86がガイド部に案内されて光軸方向に移動する構成であってもよい。レンズホルダ83やレンズホルダ86を光軸方向へ移動させる駆動力は、手動によって付与されてもよいし、モータなどの駆動手段によって付与してもよい。
【0031】
集光レンズ30や投光レンズ31の位置が設計値からずれた場合に、第1の位置調整部80や第2の位置調整部81を用いた位置調整を行うことで、照射面P2において非照射領域の無い全面照射領域E3(図3(B))での照明を容易に実現することができる。
【0032】
第3の位置調整部82について説明する。面発光レーザ20は電子回路基板90上に支持されている。電子回路基板90には、光源駆動回路16(図1)など、面発光レーザ20の駆動に必要な要素が搭載されている。集光レンズ鏡筒84に対して電子回路基板90は、調整機構91を介して、光軸に垂直な少なくとも異なる2つの方向へ移動可能に支持されている。集光レンズ鏡筒84に対して電子回路基板90を移動させることにより、光軸に垂直な平面上での(すなわち、図2(A)や図3(A)に示す発光面P1に沿う)、面発光レーザ20の位置が変化する。調整機構91は、面発光レーザ20が位置する中央部分が開口しており、個々の面発光レーザ素子21から発する光を遮らない。
【0033】
第3の位置調整部82における調整機構91の構成は、適宜選択可能である。一例として、調整機構91を2段階の移動ステージで構成する。そして、調整機構91における1段目の移動ステージと2段目の移動ステージを、光軸に垂直な第1の方向に延びる第1のガイド部(ガイド軸、ガイド溝など)に沿って相対的に移動可能に組み合わせる。1段目の移動ステージを電子回路基板90に固定する。2段目の移動ステージを、集光レンズ鏡筒84に対して、光軸に垂直な第2の方向(第1の方向とは異なる方向)に延びる第2のガイド部(ガイド軸、ガイド溝など)に沿って移動可能に支持する。このような構成により、電子回路基板90と集光レンズ鏡筒84(及び投光レンズ鏡筒87)との位置関係を、光軸に垂直な任意の方向に変化させることができる。調整機構91を構成する各移動ステージなどを光軸に垂直な方向へ移動させる駆動力は、手動によって付与されてもよいし、モータなどの駆動手段によって付与してもよい。
【0034】
第3の位置調整部82の異なる例として、電子回路基板90に固定されて集光レンズ鏡筒84の内部に挿入される挿入部を設ける。集光レンズ鏡筒84には、周方向に位置を異ならせて、内径方向への突出量を変更可能な3つ以上の支持部を設ける。これらの支持部によって挿入部を支持することで、電子回路基板90の位置が定まる。そして、集光レンズ鏡筒84の内径方向への各支持部の相対的な突出量を変更することで、光軸に垂直な方向での集光レンズ鏡筒84に対する電子回路基板90の位置を調整することができる。
【0035】
集光レンズ鏡筒84と投光レンズ鏡筒87は、それぞれが支持する集光レンズ30の光軸と投光レンズ31の光軸を一致させるように構成されている。そして、第3の位置調整部82を用いて、集光レンズ鏡筒84及び投光レンズ鏡筒87に対して、面発光レーザ20及び電子回路基板90の位置を調整することによって、集光レンズ30及び投光レンズ31の光軸に対する面発光レーザ20の中心合わせを行うことができる。これにより、光源装置11からの出射光の出射角度のずれを防止し、受光光学系18での受光画角に対する光源装置11からの非照射範囲を低減して、測距装置10による測距精度を向上させることができる。
【0036】
以上のように、第1の位置調整部80、第2の位置調整部81及び第3の位置調整部82を用いて、面発光レーザ20、集光レンズ30、投光レンズ31のそれぞれの位置関係を調整することにより、設計値に対する光源装置11の各部分の実装ずれや、ユーザーの使用に伴って経時的に生じた光源装置11の各部分の位置ずれを、容易に補正することができる。
【0037】
なお、図4の光源装置11では、第1の位置調整部80と第2の位置調整部81が光軸方向の位置調整を行い、第3の位置調整部82が光軸に垂直な方向の位置調整を行うが、各調整部における調整の方向は図4の形態に限定されない。例えば、第1の位置調整部80や第2の位置調整部81に、光軸に垂直な方向への集光レンズ30や投光レンズ31の位置調整を行う手段を設けてもよい。あるいは、第3の位置調整部82に、光軸方向への面発光レーザ20及び電子回路基板90の位置調整を行う手段を設けてもよい。また、第1の位置調整部80と第2の位置調整部81と第3の位置調整部82を全て設けるのではなく、いずれかの位置調整部だけを選択して搭載してもよい。
【0038】
ところで、面発光レーザ20の各面発光レーザ素子21からの光を投光光学系15によって広角に拡げると、歪曲収差の影響によって照射面P2での像が歪む。すなわち、像の拡大率が照射領域によって異なる。すると、上記のように全面照射領域E3で投光した場合であっても、像面の歪みを起因とする照度のムラ(照射面P2上での領域の違いによる照度のばらつき)が発生する。この照度のムラは、光を拡げて照射する投光光学系15自体の収差に起因するものであり、図2(A)の基準状態と、図3(A)の照射領域調整状態のいずれにおいても生じる可能性がある。
【0039】
歪曲収差には、像の中央部が収縮して周辺部が引き伸ばされる糸巻き型の歪曲収差と、像の中央部が膨らみ周辺部が収縮する樽型の歪曲収差がある。糸巻き型の歪曲収差では、面発光レーザ20の発光面P1において周辺部に配置された面発光レーザ素子21ほど、照射面P2上での像の歪みが大きくなり(引き伸ばされ)、単位面積あたりの照度(光量)が低下する。樽型の歪曲収差では、面発光レーザ20の発光面P1において中央部に配置された面発光レーザ素子21ほど、照射面P2上での像の歪みが大きくなり(引き伸ばされ)、単位面積あたりの照度(光量)が低下する。
【0040】
本実施形態の光源装置11では、面発光レーザ20での設定によって、投光光学系15の収差を起因とする照射面P2上での照度のばらつきを防ぐ。すなわち、面発光レーザ20において、投光光学系15の拡大率が相対的に大きい照射領域に対応する発光領域の単位面積あたりの発光光量を、投光光学系15の拡大率が相対的に小さい照射領域に対応する発光領域の単位面積あたりの発光光量よりも大きくさせる。このような照度の均一化の手段として、複数の面発光レーザ素子21の間隔を変更する第1の形態と、複数の面発光レーザ素子21の発光量を異ならせる第2の形態がある。
【0041】
複数の面発光レーザ素子21の間隔を変更して行う照度均一化の第1形態について説明する。この設定例は、面発光レーザ20からの光を投光光学系15によって広角に拡げて投光した結果、照射面P2上での像に糸巻き型の歪曲収差が発生する場合に対応したものである。
【0042】
面発光レーザ20で隣り合う面発光レーザ素子21を全て等間隔に配置した場合の照射面P2での照度分布を、図6に照度分布Tv1として示した。図6のグラフの横軸は、水平方向の角度を表し、縦軸は、照射面P2上での照度比(最も照度が高い箇所を100%とする)を表している。
【0043】
面発光レーザ素子21の均等配置時の照度分布Tv1は、投光光学系15の歪曲収差の影響によって、照明範囲の中央部での強度が最も強く、周辺部に進むにつれて強度が低下する山形になっている。この照度分布Tv1では、最も照度が強いピーク値の80%の照度に相当する水平方向の角度幅が106°であった。
【0044】
ここで、図7に示すように、面発光レーザ20で発光面P1の中央部よりも周辺部ほど、隣り合う面発光レーザ素子21の間隔を狭める粗密配置(非均一な間隔設定)にする。これにより、照射面P2上で像が引き伸ばされる程度(拡大率)が大きくなる周辺部ほど、対応する発光面P1側では、単位面積あたりの面発光レーザ素子21の数が多くなる(配置密度が高くなる)ように配置されるので、面発光レーザ素子21を等間隔で配置した場合と比較して、照射面P2上での照度の均一性が向上する。
【0045】
一例として、本実施形態では、以下のように複数の面発光レーザ素子21を配置した。面発光レーザ20は、水平方向及び垂直方向の寸法がいずれも1.44mmの正方形である発光面P1内に、水平、垂直の各1列につき21個ずつ、合計411個の面発光レーザ素子21を備えている。水平方向と垂直方向の両方の中央に位置する中央の面発光レーザ素子21Q(図7参照)を挟んで、水平方向と垂直方向のいずれにも片側に10個ずつ面発光レーザ素子21がある。
【0046】
中央の面発光レーザ素子21Qから見て、1つ隣に配置されている面発光レーザ素子21までの距離をa1、2番目に配置されている面発光レーザ素子21までの距離をa2、n番目に配置されている面発光レーザ素子21までの距離をan(n=1,2,…m)とする。水平方向、垂直方向のそれぞれの列に配置できる面発光レーザ素子21の最大数をN=2m+1(m≧1)、面発光レーザ素子21を配置可能な最大距離をb(am=b)とすると、距離anは以下の関係を満たす。
an=b-α(N-1/2-n)β
【0047】
本実施形態では、N=21、b=0.7mmであり、n=10のときにan=0.7mmとなる。この条件で、照射面P2における照度が均一になるような定数α、βの値を求めると、水平方向と垂直方向のいずれでも、α=0.05、β=1.15になった。そして、水平方向と垂直方向のいずれでも、発光面P1の最も外側に位置する面発光レーザ素子21とその1つ内側の面発光レーザ素子21との間隔が49.6μmで最小値となり、中央部に進むにつれて隣り合う面発光レーザ素子21の間隔が徐々に増加し、中央の面発光レーザ素子21Qとその1つ外側の面発光レーザ素子21との間隔(a1)が80μmで最大値となる。
【0048】
以上の条件を満たすように複数の面発光レーザ素子21を粗密配置した場合の照射面P2上での照度分布を、図6に照度分布Tw1として示した。この照度分布Tw1では、面発光レーザ素子21を均等配置した場合の照度分布Tv1と比較して、周辺部での強度低下が改善され、中央部から周辺部にかけて概ね均一な照度が得られている。この粗密配置の場合の照度分布Twでは、最も照度が強いピーク値の80%の照度に相当する水平方向の角度幅が143°であった。図6では水平方向の照度分布Twを示しているが、面発光レーザ素子21の粗密配置の結果、垂直方向についても水平方向と同様に、周辺部の強度低下を改善した結果が得られた。なお、以上に述べた面発光レーザ素子21の粗密配置の条件や数値は、本実施形態における一例であり、光源や光学系の構成や形態などによって適切な粗密配置の条件や数値は異なる。
【0049】
面発光レーザ素子21の粗密配置の適正値は、投光光学系15と面発光レーザ20などのスペックに応じて、設計段階で計算及び設定することができる。すなわち、投光光学系15での収差は光学設計時に分かるため、この収差の影響によって生じ得る照射領域での照度のばらつきも計算が可能である。そして、面発光レーザ20の発光面P1のうち、照射面P2で投射される像が相対的に大きく引き伸ばされる照射領域(単位面積あたりの照度が低くなる照射領域)に対応する領域ほど、発光面P1側での面発光レーザ素子21の配置密度を高くする(隣り合う面発光レーザ素子21の間隔を狭くする)ことで単位面積あたりの発光光量が大きくなり、均一に近づけた照度分布を得ることができる。投光光学系15の光学設計に基づいて、面発光レーザ素子21の粗密配置の計算と設計をコンピュータ上のシミュレーションで行えば、測定や調整の手間などを要さずに、投光光学系15用に最適化された面発光レーザ20を生産することができる。
【0050】
面発光レーザ素子21の粗密配置による照度の均一化は、面発光レーザ20における面発光レーザ素子21ごとの発光強度を変更せずに実現できるため、各面発光レーザ素子21に印加する電流量を変更する制御を行う必要がない。従って、面発光レーザ20への印加電流を制御する光源駆動回路16の小型化を実現できる。
【0051】
なお、照射面P2上の像に樽型の歪曲収差が発生する場合には、糸巻き型の歪曲収差に対応させた図7に示す例とは異なり、面発光レーザ20で発光面P1の周辺部よりも中央部で、隣り合う面発光レーザ素子21の間隔を狭めるような粗密配置にする。
【0052】
本実施形態では、水平方向と垂直方向のそれぞれで、隣り合う面発光レーザ素子21の間隔を段階的に異ならせるものとしたが、隣り合う面発光レーザ素子21の間隔が均一の部分と、隣り合う面発光レーザ素子21の間隔が異なる部分とを含むように構成することも可能である。例えば、発光面P1の中央から所定の範囲までは面発光レーザ素子21の間隔を均一にし、発光面P1の周辺部だけで面発光レーザ素子21の間隔を異ならせる形態も可能である。あるいは、発光面P1の周辺から所定の範囲までは面発光レーザ素子21の間隔を均一にし、発光面P1の中央部だけで面発光レーザ素子21の間隔を異ならせる形態も可能である。発光面P1のどの領域でどの程度の間隔に設定するかは、投光光学系15の歪曲収差による影響などに応じて、適宜選択すればよい。
【0053】
続いて、面発光レーザ20の複数の面発光レーザ素子21の発光量を異ならせて行う照度均一化の第2形態を説明する。この設定例は、面発光レーザ20からの光を投光光学系15によって広角に拡げて投光した結果、照射面P2上での像に糸巻き型の歪曲収差が発生する場合に対応したものである。なお、発光面P1上で隣り合う面発光レーザ素子21の間隔は一定としている。
【0054】
面発光レーザ20で各面発光レーザ素子21の発光量を同一にした場合の照射面P2での照度分布を、図8に照度分布Tv2として示した。図8のグラフの横軸は、水平方向の角度を表し、縦軸は、照射面P2上での照度比(最も照度が高い箇所を100%とする)を表している。各面発光レーザ素子21の印加電流量及び電流狭窄層27の電流通過領域27aの大きさを共通にすることで、各面発光レーザ素子21の発光量が同じになる。
【0055】
各面発光レーザ素子21の発光量を同じにした場合の照度分布Tv2は、投光光学系15の歪曲収差の影響によって、照明範囲の中央部での強度が最も強く、周辺部に進むにつれて強度が低下する山形になっている。この照度分布Tv2では、最も照度が強いピーク値の80%の照度に相当する水平方向の角度幅が57°であった。
【0056】
本実施形態では、図9に示すように、発光面P1を水平方向に5つの領域F1~F5に分割して、領域ごとに面発光レーザ素子21の印加電流量を異ならせるように制御する。より詳しくは、発光面P1の中央部に位置する領域F1から、周辺部に位置する領域F4、F5に進むにつれて段階的に印加電流量を増やすことで、各面発光レーザ素子21から出射する光の平均出力が、発光面P1の周辺部ほど高くなるようにしている。これにより、照射面P2上で像が引き伸ばされる程度が大きくなる周辺部ほど、面発光レーザ20の対応する発光領域で単位面積あたりの発光光量が大きくなるので、各面発光レーザ素子21の印加電流量を一定にした場合と比較して、照射面P2上での照度の均一性が向上する。
【0057】
一例として、各面発光レーザ素子21の印加電流量を、中央部の領域F1では1w、領域F1の一つ外側の領域F2及び領域F3では1.06W、最も周辺部の領域F4及びF5では1.29Wの平均出力の光を出射する設定とした。この印加電流量の違いに対応して、電流狭窄層27の電流通過領域27aの大きさを、領域F1で9μm、領域F2及び領域F3で9.2μm、領域F4及びF5で10μmに設定した。
【0058】
以上のように領域F1~F5ごとの印加電流量を設定した場合の照射面P2上での照度分布を、図8に照度分布Tw2として示した。この照度分布Tw2では、印加電流量が一定である場合の照度分布Tv2における周辺部での強度低下が改善されており、最も照度が強いピーク値の80%の照度に相当する水平方向の角度幅が、85°であった。
【0059】
なお、照射面P2上の像に樽型の歪曲収差が発生する場合には、糸巻き型の歪曲収差に対応させた上記の例とは異なり、面発光レーザ20で、周辺側の領域F4及び領域F5から中央側の領域F1に進むにつれて、面発光レーザ素子21への印加電流量を増加させる。つまり、中央側の領域F1で単位面積あたりの発光光量が大きく、周辺側の領域F4及び領域F5で単位面積あたりの発光光量が小さくなるように設定する。
【0060】
各面発光レーザ素子21の印加電流量は、光源駆動回路16による制御で変更できるので、光源装置11が完成した後で、動的に照度分布の調整を行うことも可能である。
【0061】
なお、上記の方法は、各面発光レーザ素子21への印加電流量を変えるものであるが、各面発光レーザ素子21に印加する電流量を一定にした上で、電流狭窄層27の電流通過領域27aの大きさのみを変えることによっても、各面発光レーザ素子21の発光量を変化させて、照射面P2上での照度を均一化させる効果を得られる。電流通過領域27aの大きさを小さくすると、面発光レーザ素子21の発振閾値が低くなるため、電流通過領域27aの大きさが相対的に大きい面発光レーザ素子21と比べて、一定の印加電流量を与えた場合に出射する光の平均出力が大きくなる。従って、発光面P1のうち、発光光量を大きくさせることが求められる位置にある面発光レーザ素子21ほど、電流通過領域27aの大きさを小さくさせる。但し、電流通過領域27aの大きさは、各面発光レーザ素子21での電極構造などによって選択可能な範囲が決まっているため、当該範囲内で設定する必要がある。
【0062】
本実施形態では、発光面P1を水平方向で5つの領域F1~F5に分けて、各領域での面発光レーザ素子21の発光量を異ならせている。この実施形態とは異なり、垂直方向で複数の領域に分けて面発光レーザ素子21の発光量を管理することや、水平方向と垂直方向の両方で桝目状に区切られた領域ごとに面発光レーザ素子21の発光量を管理することも可能である。さらに、面発光レーザ素子21の発光量を異ならせる範囲を、桝目状以外の形状に設定してもよい。また、面発光レーザ素子21の数が少ない場合などでは、全ての面発光レーザ素子21の発光量を異ならせるように制御することも可能である。
【0063】
以上で説明した、複数の面発光レーザ素子21の間隔を変更する(粗密配置にする)第1の方法(図6図7)と、複数の面発光レーザ素子21の発光量を異ならせる第2の方法(図8図9)とを併用して、照射領域での照度の均一化を行うことも可能である。
【0064】
図10及び図11は、発光面P1上での面発光レーザ素子21の設置範囲の設定により、照射面P2での照射領域の形を変更させる例を示したものである。この設定例は、面発光レーザ20からの光を投光光学系15によって広角に拡げて投光した結果、照射面P2上での像に糸巻き型の歪曲収差が発生する場合に対応したものである。
【0065】
図11(A)は、矩形の発光面P1の全体に面発光レーザ素子21を配置した場合の、照射面P2上の照明領域を示したものである。図11(A)に対応した発光面P1側の構成の図示は省略するが、図7に示す構成と同様に、各面発光レーザ素子21の間隔を、発光面P1の中央部で広く、周辺部で狭くなる粗密配置にしている。
【0066】
図11(A)において、照度に大きな差が生じる境界を二点鎖線で概念的に示しており、輪郭線K1が照明領域のおおよその外形になる。この図から分かるように、投光光学系15の歪曲収差の影響によって、照射面P2の周辺部、特に四隅付近での照射領域の歪みが大きくなっている。
【0067】
図10は、面発光レーザ20における矩形状の発光面P1のうち、四隅の部分を、面発光レーザ素子21が配置されない非発光部分Hとし、複数の面発光レーザ素子21によって形成される発光部分が全体として楕円状になるように設定したものである。また、楕円状に設定した発光部分(面発光レーザ素子21の設置範囲)においては、各面発光レーザ素子21の間隔を、発光面P1の中央部で広く、周辺部で狭くなる粗密配置にしている。なお、非発光部分Hでは、図5に示すような面発光レーザ素子21の構造を物理的に設けない構成にしてもよいし、面発光レーザ素子21としての構造は備えているが制御的に素子を発光させないようにしてもよい。
【0068】
図11(B)は、楕円状に面発光レーザ素子21の設置範囲を設定した場合(図10)の、照射面P2上の照度を示したものである。図11(A)と同様に、照度に大きな差が生じる境界を二点鎖線で概念的に示しており、輪郭線K2が照明領域のおおよその外形になる。発光面P1の四隅部分を非発光部分Hにしたことにより、図11(A)のような照射面P2の四隅部分での照射の大きな歪みが生じず、矩形に近い形状の照射領域(輪郭線K2)が形成されている。また、歪曲収差により像が大きく引き伸ばされる周辺部に対応する領域を、発光面P1では非発光部分Hにしているので、照射領域の周辺部での照度のばらつきも抑制される。
【0069】
このように、発光面P1と照射面P2とは対応関係にあるため、発光面P1側で面発光レーザ素子21を設置する範囲設定を変えることで、照射面P2での照射領域の形を変えることができる。従って、測距装置10(図1)において、受光素子13の形状に対応した照射領域を形成するように光源装置11からの光の照射を行うことで、不要な領域への照射を避けて、光の利用効率を向上させることができる。
【0070】
以上のように、本発明を適用した光源装置11では、投光光学系15の収差の影響による照度のばらつきを低減させるように、面発光レーザ20の発光領域の単位面積あたりの発光光量を、照射領域に応じて適宜異ならせている。これにより、照射対象への広角な投光と、照度の均一性とを両立させた、高品質な光源装置11が得られる。そして、光源装置11から照度の均一性に優れた投光を行うことで、光源装置11を用いる測距装置10(あるいは測距以外の用途も含む検出装置全般)における検出精度を向上させることができる。
【0071】
以上に説明した光源装置11を各種電子機器に用いた適用例を、図12から図16を参照して説明する。これらの適用例における検出装置50は、図1に示す測距装置10のうち信号制御回路17の部分を、後述するそれぞれの機能ブロックに置き換えたものであり、それ以外の基本構成は測距装置10と共通している。検出装置50では、図1に示す受光素子13が、光源装置11から発せられて検出対象物12で反射された光を検出する検出部である。なお、図12から図16では、検出装置50が備える判断部などの機能ブロックを、作図の都合上、検出装置50の外側に記載している。
【0072】
図12は、工場などにおける物品検査用に検出装置50を使用した適用例を示す。検出装置50の光源装置11から発した光を、複数の物品51をカバーする照射領域に投射して、反射した光を検出部(受光素子13)で受光する。検出部で検出された情報に基づいて、判断部52が各物品51の状態などを判断する。具体的には、受光素子13で光電変換された電気信号に基づいて、画像処理部53で画像データ(光源装置11からの光の照射領域の画像情報)を生成し、得られた画像情報に基づいて、判断部52で各物品51の状態判断を行う。つまり、検出装置50における受光光学系18と受光素子13は、光源装置11から光の投射領域を撮像する撮像手段として機能する。撮像した画像情報に基づいて判断部52が行う物品51の状態判断には、パターンマッチングなど、周知の画像解析を利用できる。
【0073】
図12の適用例では、照射領域に均一な照度で投光できる検出装置50(光源装置11)を用いることによって、広角に光を照射しても照度のばらつきが抑えられる。その結果、多くの物品51を同時に精度良く検査することができ、検査の作業効率が向上する。また、TOF方式の検出を行う検出装置50の使用によって、各物品51の正面側(検出装置50に対向する側)だけでなく、各物品51の奥行き方向の情報も取得できる。そのため、既存の撮像装置による外観検査に比べて、物品51における微細な傷や欠陥、立体形状などを識別しやすく、検査精度の向上を図ることができる。また、検出装置50の光源装置11からの光で、検査対象である物品51を含む照射領域が照明されるため、暗い環境下でも使用が可能である。
【0074】
図13は、可動機器の動作制御に検出装置50を使用した適用例を示す。可動機器である多関節アーム54は、屈曲可能なジョイントで接続された複数のアームを有し、先端にハンド部55を備えている。多関節アーム54は、例えば工場の組み立てラインなどで用いられ、対象物56の検査、搬送、組み付けの際に、ハンド部55によって対象物56を把持する。
【0075】
多関節アーム54におけるハンド部55の直近に検出装置50が搭載されている。検出装置50は、光の投射方向がハンド部55の向く方向に一致するように設けられており、対象物56及びその周辺領域を検出対象とする。検出装置50は、対象物56を含む照射領域からの反射光を受光素子13で受光して、画像処理部57で画像データを生成し(撮像を行い)、得られた画像情報に基づいて、判断部58が対象物56に関する各種情報を判断する。具体的には、検出装置50を用いて検出される情報は、対象物56までの距離、対象物56の形状、対象物56の位置、複数の対象物56が存在する場合の互いの位置関係などである。そして、判断部58での判断結果に基づいて、駆動制御部59が多関節アーム54及びハンド部55の動作を制御して、対象物56の把持や移動などを行わせる。
【0076】
図13の適用例では、検出装置50による対象物56の検出に関して、上述した図12の検出装置50と同様の効果(検出精度の向上)を得ることができる。加えて、多関節アーム54(特に、ハンド部55の直近)に検出装置50を搭載することによって、把持の対象物である対象物56を近距離から検出することができ、多関節アーム54から離れた位置に配した撮像装置による遠方からの検出と比較して、検出精度や認識精度の向上を図ることができる。
【0077】
図14は、電子機器の使用者認証に検出装置50を使用した適用例を示す。電子機器である携帯情報端末60は、使用者の認証機能を備えている。認証機能は、専用のハードウェアによって実現してもよいし、携帯情報端末60を制御するCPU(Central Processing Unit)がROM(Read Only Memory)などのプログラムを実行することにより実現してもよい。
【0078】
使用者の認証を行う際には、携帯情報端末60に搭載した検出装置50の光源装置11から、携帯情報端末60を使用する使用者61へ向けて光が投射される。使用者61及びその周囲で反射された光が検出装置50の受光素子13で受光され、画像処理部62で画像データを生成する(撮像を行う)。検出装置50により使用者61を撮像した画像情報と、予め登録された使用者情報との一致度を、判断部63が判断して、登録済みの使用者であるか否かを判定する。具体的には、使用者61の顔、耳、頭部などの形状(輪郭や凹凸)を測定して、使用者情報として用いることができる。
【0079】
図14の適用例では、検出装置50による使用者61の検出に関して、上述した図12の検出装置50と同様の効果(検出精度の向上)を得ることができる。特に、光源装置11から均一な照度で広角に光を投射して広い範囲で使用者61の情報を検出することができるため、検出範囲が狭い場合に比して、使用者を認識するための情報量が多くなり、認識精度の向上を実現できる。
【0080】
図14は検出装置50を携帯情報端末60に搭載した例であるが、検出装置50を用いた使用者認証を、据え置き式のパーソナルコンピュータ、プリンタなどのOA機器、建物のセキュリティシステムなどに利用することも可能である。また、機能面では、個人の認証機能に限らず、顔などの立体形状のスキャニングに用いることも可能である。この場合も、均一な照度で広角に光を投射できる検出装置50(光源装置11)の搭載によって、高精度なスキャニングを実現できる。
【0081】
図15は、自動車などの移動体における運転支援システムに検出装置50を使用した適用例を示す。自動車64は、減速や操舵などの運転動作の一部を自動的に行うことが可能な運転支援機能を備えている。運転支援機能は、専用のハードウェアによって実現してもよいし、自動車64の電装系を制御するECU(Electronic Control Unit)がROMなどのプログラムを実行することにより実現してもよい。
【0082】
自動車64の車内に搭載した検出装置50の光源装置11から、自動車64を運転する運転者65へ向けて光が投射される。運転者65及びその周囲で反射された光が検出装置50の受光素子13で受光され、画像処理部66で画像データを生成する(撮像を行う)。判断部67が、運転者65を撮像した画像情報に基づいて、運転者65の顔(表情)や姿勢などの情報を判断する。そして、判断部67の判断結果に基づいて、運転制御部68がブレーキや操舵輪を制御して、運転者65の状況に応じた適切な運転支援を行う。例えば、脇見運転や居眠り運転を検出したときの自動減速や自動停止などの制御を行うことができる。
【0083】
図15の適用例では、検出装置50による運転者65の状態検出に関して、上述した図12の検出装置50と同様の効果(検出精度の向上)を得ることができる。特に、光源装置11から均一な照度で広角に光を投射して広い範囲で運転者65の情報を検出することができるため、検出範囲が狭い場合に比して多くの情報量が得られ、運転支援の精度向上を実現できる。
【0084】
図15は検出装置50を自動車64に搭載した例であるが、自動車以外の移動体として、電車や航空機などに適用することも可能である。また、検出の対象として、移動体の運転者や操縦者の顔や姿勢の検出以外に、客席における乗客の状態や、客席以外の車内の状態の検出に用いることも可能である。また、機能面では、図14の適用例と同様にして、運転者の個人認証に用いることも可能である。例えば、検出装置50を用いて運転者65を検出して、予め登録された運転者情報と合致した場合にのみ、エンジンの始動を許可したり、ドアロックの施錠や解錠を許可したりするという制御が可能である。
【0085】
図16は、移動体における自律走行システムに検出装置50を使用した適用例を示す。図15の適用例とは異なり、図16の適用例では、移動体70の外部にある対象物のセンシングに検出装置50を用いている。移動体70は、外部の状況を認識しながら自動で走行することが可能な自律走行型の移動体である。
【0086】
移動体70に検出装置50が搭載されており、検出装置50は移動体70の進行方向及びその周辺領域に向けて光を照射する。移動体70の移動エリアである室内71において、移動体70の進行方向に机72が設置されている。移動体70に搭載した検出装置50の光源装置11から投射された光のうち、机72及びその周囲で反射された光が検出装置50の受光素子13で受光され、光電変換された電気信号が信号処理部73に送られる。信号処理部73では、受光素子13から送られた電気信号などに基づいて、机72との距離や机72の位置、机72以外の周辺状況など、室内71のレイアウトに関する情報を算出する。この算出された情報に基づいて、移動体70の移動経路や移動速度などを判断部74が判断し、判断部74の判断結果に基づいて、運転制御部75が移動体70の走行(駆動源であるモータの動作など)を制御する。
【0087】
図16の適用例では、検出装置50による室内71のレイアウト検出に関して、上述した図12の検出装置50と同様の効果(検出精度の向上)を得ることができる。特に、光源装置11から均一な照度で広角に光を投射して広い範囲で室内71の情報を検出することができるため、検出範囲が狭い場合に比して多くの情報量が得られ、移動体70の自律走行の精度向上を実現できる。
【0088】
図16は、室内71で走行する自律走行型の移動体70に検出装置50を搭載した例であるが、屋外で走行する自律走行型の車両(いわゆる自動運転車両)に適用することもできる。また、自律走行型ではなく、運転者が運転を行う自動車などの移動体における運転支援システムに適用することも可能である。この場合、検出装置50を用いて移動体の周辺状況を検出して、検出された周辺状況に応じて、運転者の運転を支援することができる。
【0089】
以上、図示実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨内における変更や改良が可能である。
【0090】
上記実施形態では、光源として、複数の面発光レーザ素子21を水平方向及び垂直方向に並べて、全体として面発光する形態の面発光レーザ20を用いているが、水平方向や垂直方向など、特定の方向にのみ発光領域が並ぶライン状の光源を用いることも可能である。
【0091】
光源として、上記実施形態のVCSEL以外に、端面発光レーザや発光ダイオード(LED)などを用いることも可能である。上記のようにVCSELは、発光領域の二次元化の容易さや、複数の発光領域の配置の自由度の高さといった点で有利であるが、VCSEL以外の光源を用いた場合でも、各発光素子の配置や発光量を適宜設定することによって、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0092】
10 :測距装置
11 :光源装置
13 :受光素子(検出部)
14 :光源
15 :投光光学系
16 :光源駆動回路
17 :信号制御回路(計算部)
18 :受光光学系
20 :面発光レーザ(光源)
21 :面発光レーザ素子(発光部)
27 :電流狭窄層
30 :集光レンズ(集光光学要素)
31 :投光レンズ(拡大光学要素)
50 :検出装置
54 :多関節アーム(電子機器)
60 :携帯情報端末(電子機器)
64 :自動車(電子機器)
70 :移動体(電子機器)
80 :第1の位置調整部
81 :第2の位置調整部
82 :第3の位置調整部
E1 :照射領域
E2 :非照射領域
E3 :全面照射領域
H :非発光部分
P1 :発光面
P2 :照射面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16