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特許7505275電子部品の製造方法、仮保護用樹脂組成物及び仮保護用樹脂フィルム
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  • 特許-電子部品の製造方法、仮保護用樹脂組成物及び仮保護用樹脂フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】電子部品の製造方法、仮保護用樹脂組成物及び仮保護用樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240618BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20240618BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20240618BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20240618BHJP
   H01L 23/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H01L21/78 M
C08L33/04
C08K3/01
C08K5/54
H01L21/78 Q
H01L23/00 C
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020100279
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021197380
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】小川 紗瑛子
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 省吾
【審査官】▲はま▼中 信行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-140201(JP,A)
【文献】特開2019-102745(JP,A)
【文献】特開2013-074200(JP,A)
【文献】特開2015-220377(JP,A)
【文献】国際公開第2018/055859(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/00
H01L 21/301
C08K 3/01
C08K 5/54
C08L 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁シールドを有する電子部品の製造方法であって、
表面に凹凸を有する被加工体に仮保護材を貼り付ける貼付工程と、
前記仮保護材を光照射により硬化させる光硬化工程と、
前記被加工体及び前記仮保護材を個片化するダイシング工程と、
個片化した前記被加工体の、前記仮保護材が貼り付けられていない部分に金属膜を形成するシールド工程と、
金属膜が形成された前記被加工体と前記仮保護材とを剥離する剥離工程と、を備え、
前記仮保護材が、35℃でのずり粘度が5000~30000Pa・sであり、且つ露光量を500mJ/cm以上とした光照射後の25℃での弾性率が100MPa以下及び引張試験における伸び率が35%以上である仮保護用樹脂組成物から形成される、製造方法。
【請求項2】
前記樹脂組成物が(A)(メタ)アクリル共重合体を含み、該(メタ)アクリル共重合体が炭素-炭素二重結合含有基を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記(A)(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量が10万~35万である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記(A)(メタ)アクリル共重合体の二重結合当量が500~4000である、請求項2又は3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記(A)(メタ)アクリル共重合体のガラス転移温度が-30~10℃である、請求項2~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂組成物が(B)光ラジカル重合開始剤を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂組成物が(C)シリコーン化合物を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記仮保護材がフィルム状である、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
表面に凹凸を有する被加工体に仮保護材を貼り付ける貼付工程と、
前記仮保護材を光照射により硬化させる光硬化工程と、
前記被加工体及び前記仮保護材を個片化するダイシング工程と、
個片化した前記被加工体の、前記仮保護材が貼り付けられていない部分に金属膜を形成するシールド工程と、
金属膜が形成された前記被加工体と前記仮保護材とを剥離する剥離工程と、を備える、電磁シールドを有する電子部品の製造方法において用いられる、前記仮保護材を形成するための仮保護用樹脂組成物であって、
35℃でのずり粘度が5000~30000Pa・sであり、且つ露光量を500mJ/cm以上とした光照射後の25℃での弾性率が100MPa以下及び引張試験における伸び率が35%以上である、仮保護用樹脂組成物。
【請求項10】
前記樹脂組成物が(A)(メタ)アクリル共重合体を含み、該(メタ)アクリル共重合体が炭素-炭素二重結合含有基を有する、請求項9に記載の仮保護用樹脂組成物。
【請求項11】
前記(A)(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量が10万~35万である、請求項10に記載の仮保護用樹脂組成物。
【請求項12】
前記(A)(メタ)アクリル共重合体の二重結合当量が500~4000である、請求項10又は11に記載の仮保護用樹脂組成物。
【請求項13】
前記(A)(メタ)アクリル共重合体のガラス転移温度が-30~10℃である、請求項10~12のいずれか一項に記載の仮保護用樹脂組成物。
【請求項14】
(B)光ラジカル重合開始剤を更に含む、請求項9~13のいずれか一項に記載の仮保護用樹脂組成物。
【請求項15】
(C)シリコーン化合物を更に含む、請求項9~14のいずれか一項に記載の仮保護用樹脂組成物。
【請求項16】
請求項9~15のいずれか一項に記載の仮保護用樹脂組成物をフィルム状に形成してなる、仮保護用樹脂フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法、並びに当該電子部品の製造方法にて使用される仮保護用樹脂組成物及び仮保護用樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、タブレットPC等の電子機器の多機能化、グローバル化等に伴い、搭載される無線システムの数が増加してきている。一方で、内蔵回線のクロック周波数及びデータ伝送速度が大きくなってきており、それらの無線システムで使われる周波数帯のノイズが発生し易くなっている。従来、このようなノイズ対策として、ノイズの発生源を含む回路を金属板で囲う電磁シールドが行われている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3824742号明細書
【文献】特開平9-223761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献に記載されているような技術では、実装に必要な面積が大きい。そのため、電磁シールドが施される回路によっては高背化してしまい、電子機器の小型化及び薄型化に対する阻害要因となっている。
【0005】
このような背景から、ノイズの発生源を含む回路に対し、電磁シールド材となる金属をスパッタリングすることにより、電磁シールドを成膜する新たな方法が提案されている。電磁シールドが設けられる電子部品としては、BGA(Ball Grid Array)パッケージ等が挙げられる。近年、BGAパッケージ等の小型化及び薄型化に加えて、構造自体が複雑化してきており、このような電子部品に対しても、所望の部分に電磁シールドを形成することが求められている。
【0006】
ところで、そのような形成方法において、電磁シールドを設けない部分を樹脂組成物で仮保護しておく方法が考えられるが、シールド形成後には当該樹脂組成物を好適に除去することが求められる。樹脂組成物の除去が不充分であると、樹脂組成物の残滓に起因して電子部品の信頼性が損なわれる虞がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電磁シールドを有しかつ信頼性に優れる電子部品の製造方法を提供することを目的とする。本発明はまた、当該製造方法において用いられる、仮保護材を形成するための仮保護用樹脂組成物、及び当該仮保護用樹脂組成物をフィルム状に形成してなる仮保護用樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題の解決のため、当該プロセスにおいて使用する仮保護材の樹脂の選定及び物性の調整に鋭意研究を重ねた。そして、特定の製造プロセスと、粘度、弾性率及び伸び率が適切に制御された樹脂組成物から形成される仮保護材とを組み合わせて用いることが、上記課題の解決に極めて重要であることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
本発明は、電磁シールドを有する電子部品の製造方法であって、表面に凹凸を有する被加工体に仮保護材を貼り付ける貼付工程と、仮保護材を光照射により硬化させる光硬化工程と、被加工体及び仮保護材を個片化するダイシング工程と、個片化した被加工体の、仮保護材が貼り付けられていない部分に金属膜を形成するシールド工程と、金属膜が形成された被加工体と仮保護材とを剥離する剥離工程と、を備える、製造方法を提供する。当該製造方法において用いられる仮保護材は、35℃でのずり粘度が5000~30000Pa・sであり、且つ露光量を500mJ/cm以上とした光照射後の25℃での弾性率が100MPa以下及び引張試験における伸び率が35%以上である、仮保護用樹脂組成物から形成される。
【0010】
本発明の製造方法によれば、所望の部分に金属膜の電磁シールドが形成され、かつ信頼性に優れる小型の電子部品が製造される。
【0011】
一般に、被加工体と、仮保護材のような粘着性材料とを貼り合せる際には、粘着性材料が端部からはみ出て被加工体側面に回り込む、ブリードと言う現象が起こる場合がある。ブリードが生じた状態の被加工体に対し金属膜を形成すると、ブリード自体にも金属膜が形成されるため、仮保護材と共にブリードが剥離されたときに被加工体側面において金属膜が形成されていない部分が露出してしまう。そのため、例えば予めダイシング等により小型化した被加工体を準備し、その被加工体と仮保護材とを単に貼り付けて金属膜を形成しようとしても、上記ブリードの影響により、所望の電磁シールドを有する電子部品を得ることは難しい。
【0012】
そこで、ブリードが生じないような樹脂設計を検討することが考えられる。しかしながら、ブリードの抑制を求めすぎると、仮保護材が、被加工体が有する凹凸を充分に埋込むことができなくなる。埋込性が不充分であると、貼付界面にボイドが残存することになるため、金属膜を形成する際の加熱時のボイドの膨れにより、貼付界面に空隙が生じる。これにより、仮保護材により保護されるべき部分にも金属膜が形成されてしまう。
【0013】
この問題に対処をするべく、本発明では、仮保護材による凹凸の埋込性は担保したまま、仮保護材を貼り付けた際に被加工体側面に生じ得るブリードの問題に必ずしも対処をしなくてもよい(無視することができる)よう、工程面及び樹脂物性面において工夫がなされている。本発明においては、少なくとも、被加工体と仮保護材とを貼り付ける貼付工程を実施した後、両者の一体物を個片化するダイシング工程を実施する。各工程をこの順に実施することで、ブリードが生じ得る被加工体の端部を避けて、金属膜形成用のサンプルを得ることができる。仮保護材形成に用いられる樹脂組成物は、35℃でのずり粘度が30000Pa・s以下という物性を満たす。そのため、硬化前の充分な埋込性を担保することができる。
【0014】
また、樹脂組成物を用いた上記の製造プロセスでは、金属膜が形成された後、被加工体と仮保護材とを剥離することになるが、その際に、被加工体に仮保護材由来の残滓が付着する場合がある。例えば、ある程度大きな凹凸があるパッケージの場合には、凹部に残滓が付着し良好な剥離性が得られない場合がある。本発明における仮保護材は、そのような残滓の付着が生じないような工夫もなされている。仮保護材形成に用いられる樹脂組成物は、硬化前の35℃でのずり粘度が5000Pa・s以上でありつつ、露光量を500mJ/cm以上とした光照射後の25℃での弾性率が100MPa以下及び引張試験における伸び率が35%以上という物性を満たす。これにより、剥離の際に硬化後の仮保護材の破壊が抑制されるため、被加工体表面にある程度大きな凹凸が形成されている場合であっても、優れた剥離性を得ることができる。剥離性に優れるということはすなわち、凹凸に仮保護材由来の残滓が付着し難いということである。
【0015】
このように、特定の製造プロセスと、特定の仮保護材とを組み合わせて用いる本発明により、側面を含めた所望の箇所に対し良好な電磁シールドが形成され、かつ信頼性に優れる小型の電子部品を得ることができる。
【0016】
本発明は、また、表面に凹凸を有する被加工体に仮保護材を貼り付ける貼付工程と、仮保護材を光照射により硬化させる光硬化工程と、被加工体及び仮保護材を個片化するダイシング工程と、個片化した被加工体の、仮保護材が貼り付けられていない部分に金属膜を形成するシールド工程と、金属膜が形成された被加工体と仮保護材とを剥離する剥離工程と、を備える、電磁シールドを有する電子部品の製造方法において用いられる、仮保護材を形成するための仮保護用樹脂組成物を提供する。当該仮保護用樹脂組成物において、35℃でのずり粘度が5000~30000Pa・sであり、且つ露光量を500mJ/cm以上とした光照射後の25℃での弾性率が100MPa以下及び引張試験における伸び率が35%以上である。
【0017】
本発明の特定の仮保護材を用いることで、特定の製造プロセスにおいて、側面を含めた所望の箇所に対し良好な電磁シールドが形成されており、かつ信頼性に優れる小型の電子部品を得ることができる。その詳細については上述のとおりである。
【0018】
本発明は、さらに、上記の仮保護用樹脂組成物をフィルム状に形成してなる、仮保護用樹脂フィルムを提供する。
【0019】
一態様において、仮保護用樹脂組成物は(A)(メタ)アクリル共重合体を含み、該(メタ)アクリル共重合体が炭素-炭素二重結合含有基を有してよい。これにより光照射による硬化性を仮保護材に付与することができる。
【0020】
一態様において、(A)(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量は10万~35万であってよい。これにより、硬化後の弾性率を低減し易い。
【0021】
一態様において、(A)(メタ)アクリル共重合体の二重結合当量は500~4000であってよい。これにより、硬化後の伸びを向上させ易い。
【0022】
一態様において、(A)(メタ)アクリル共重合体のガラス転移温度(℃)は-30~10℃であってよい。これにより、硬化前のずり粘度を向上させ易い。
【0023】
一態様において、仮保護用樹脂組成物は(B)光ラジカル重合開始剤を更に含んでよい。これにより硬化後の弾性率をより向上させ易い。
【0024】
一態様において、仮保護用樹脂組成物は(C)シリコーン化合物を更に含んでよい。これにより、被加工体と仮保護材との剥離性をより向上させ易い。特に、溶剤を用いることなく、被加工体と仮保護材とを容易に剥離することが可能となる。
【0025】
一態様において、仮保護材はフィルム状であってよい。これにより、製造工程中の取り扱い性を向上することができると共に、被加工体へのスパッタリングを効率よく実施することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、電磁シールドを有する電子部品の新たな製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、当該製造方法において用いられる、仮保護材を形成するための仮保護用樹脂組成物、及び当該仮保護用樹脂組成物をフィルム状に形成してなる仮保護用樹脂フィルムを提供することができる。
【0027】
本発明に係る仮保護用樹脂組成物、あるいは仮保護用樹脂フィルムは、良好な埋込性と剥離性とを有している。そのため、これらを用いることで、所望の部分に金属膜の電磁シールドが形成された電子部品を製造することができる。また、それらを用いることで、被加工体への仮保護材由来の残滓付着を抑制しつつ、信頼性に優れる電子部品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る製造方法を示す工程模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0030】
<電子部品の製造方法>
電子部品の製造方法は、電磁シールドを有する電子部品の製造方法であって、表面に凹凸を有する被加工体に仮保護材を貼り付ける貼付工程と、仮保護材を光照射により硬化させる光硬化工程と、被加工体及び仮保護材を個片化するダイシング工程と、個片化した被加工体の、仮保護材が貼り付けられていない部分に金属膜を形成するシールド工程と、金属膜が形成された被加工体と仮保護材とを剥離する剥離工程と、を少なくとも備えている。
【0031】
以下、各工程について、適宜図面を参照しながら説明をする。
【0032】
(貼付工程:図1(A)~図1(B))
本工程では、表面に凹凸を有する被加工体10に仮保護材20を貼り付ける。図1(A)に示されるように、被加工体10は、基板1上に凸部2を備えている。
【0033】
被加工体10としては特に制限されないが、例えば、BGA(Ball Grid Array)パッケージ、LGA(Land Grid Array)パッケージ等が挙げられる。BGAパッケージであれば、具体的には一方の面に複数のバンプ(凸部)有し且つ他方の面が封止材により封止されている半導体基板が挙げられる。バンプ高さは5~300μm程度である。
【0034】
仮保護材20としては、後述の所定の仮保護用樹脂組成物から形成される仮保護用樹脂フィルムを用いることができる。仮保護用樹脂フィルムは、すなわちフィルム状の仮保護材である。当該フィルムは、被加工体に貼り付けられる面とは反対の面に、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の基材フィルム30を備えることができる。
【0035】
被加工体10と仮保護材20との貼り付けには、ロールラミネーター、真空ラミネーター等を用いることができる。例えば真空ラミネーターを用いる場合であれば、真空ラミネーターLM-50×50-S(製品名、株式会社エヌ・ピー・シー製)、真空ラミネーターV130(製品名、ニチゴーモートン株式会社製)等を用いて、気圧1.5hPa以下(好ましくは1hPa以下)、ラミネート温度25~180℃(好ましくは40~120℃)、ラミネート圧力0.01~0.5MPa(好ましくは0.1~0.5MPa)、及び保持時間1~600秒(好ましくは30~300秒)の条件にて貼り付けを行うことができる。
【0036】
(光硬化工程:図1(C))
本工程では、被加工体10に貼り付けられた仮保護材20に対し光照射を行い、仮保護材を光硬化させる。光照射は、仮保護材20の貼り付け面とは反対の面の、基材フィルム30側から行うことができる。なお、図中、光硬化した仮保護材20を仮保護材20cとする。
【0037】
照射する光としては紫外線(UV)が挙げられ、仮保護材20への露光量(積算照射量)が500mJ/cm以上となるように照射する。露光量を少なくとも500mJ/cmとしたのは、露光量が500mJ/cmより少ない場合、仮保護材の硬化不足が発生する虞があるためである。露光量の上限は特に限定されないが、作業効率の観点から3000mJ/cm程度とすることができる。光照射には、例えばUVを照射することのできるUV-330 HQP-2型露光機(製品名、株式会社オーク製作所製)等を用いることができる。
【0038】
(ダイシング工程:図1(D))
本工程では、被加工体10と、光硬化した仮保護材20cとの一体物に対しダイシングを行い、当該一体物を個片化する。具体的には、仮保護材20cから基材フィルム30を剥がしてダイシングテープ40上に載置し、例えばフルオートマチックダイシングソーDFD-6361(製品名、株式会社ディスコ製)等を用いて個片化する。
【0039】
なお、個片化された一体物は、後述のシールド工程を実施するため、図1(E)に示されるように、ポリイミドテープ等の耐熱粘着材テープ50上に搬送される。
【0040】
(シールド工程及び剥離工程:図1(F))
本工程では、個片化された一体物において、被加工体10の、少なくとも仮保護材20cが貼り付けられていない部分に、電磁シールドとなる金属膜Mを形成し、その後、金属膜Mが形成された被加工体10と仮保護材20cとを剥離する。
【0041】
金属膜Mの形成は、公知のスパッタリング装置(例えばスパッタリング装置SDHシリーズ:製品名、株式会社アルバック製)を用い、例えば温度60~150℃、及び圧力1×10-1Pa~10×10-1Paの条件にて、ターゲット金属を銅等として行うことができる。形成される金属膜Mの厚さは、0.1~10μm程度である。なお、本工程にて仮保護材20cは剥離されるため、仮保護材20c表面にも金属膜Mが形成されて構わない。
【0042】
金属膜Mが形成された被加工体10を、例えば所定のコレットCでピックアップすることで、仮保護材20cから剥離する。両者の剥離には、例えばダイボンダBESTEM-02(製品名、キャノンマシナリー株式会社製)等を用いることができる。
【0043】
上記製造方法においては、仮保護材として、以下に示す所定の仮保護用樹脂組成物から形成される材を使用する。以下、仮保護用樹脂組成物及び仮保護用樹脂フィルムについて説明する。
【0044】
<仮保護用樹脂組成物>
仮保護用樹脂組成物は、上記の、電磁シールドを有する電子部品の製造方法において用いられる、仮保護材を形成するための仮保護用樹脂組成物である。仮保護用樹脂組成物は、以下の物性を有する。
・35℃でのずり粘度が5000~30000Pa・s。
・露光量を500mJ/cm以上とした光照射後の25℃での弾性率が100MPa以下。
・露光量を500mJ/cm以上とした光照射後の引張試験における伸び率が35%以上。
【0045】
具体的には、表面に凹凸を有する被加工体に仮保護材を貼り付ける貼付工程と、仮保護材を光照射により硬化させる光硬化工程と、被加工体及び仮保護材を個片化するダイシング工程と、個片化した被加工体の、仮保護材が貼り付けられていない部分に金属膜を形成するシールド工程と、金属膜が形成された被加工体と仮保護材とを剥離する剥離工程と、を備える、電磁シールドを有する電子部品の製造方法において用いられる、仮保護材を形成するための仮保護用樹脂組成物であって、35℃でのずり粘度が5000~30000Pa・sであり、且つ露光量を500mJ/cm以上とした光照射後の25℃での弾性率が100MPa以下及び引張試験における伸び率が35%以上である、樹脂組成物である。
【0046】
上記仮保護用樹脂組成物であれば、硬化前の充分な埋込性と、硬化後の優れた剥離性を示すことができる。そして、このように設計された樹脂組成物を、上記特定の製造工程において用いることにより、所望の部分に金属膜の電磁シールドが形成された、小型の電子部品を製造することができる。
【0047】
なお、例えばBGAパッケージのような、回路面にハンダボールを実装した、高さ数100μmを超える表面凹凸のある被加工体に対し、従来周知の支持テープ(バックグラインドテープ、ダイシングテープ等)を貼り合せて凹凸を埋め込むこと、そして所望の加工後に被加工体表面から支持テープを剥離することは困難である。また、凹凸を埋め込むため柔らかく設計された仮保護用樹脂組成物を用いる場合においても、凹凸の大きさや形状によっては、剥離時に仮保護材由来の残滓が生じる虞がある。
【0048】
仮保護用樹脂組成物の、35℃でのずり粘度(光硬化前のずり粘度)が5000Pa・s以上であることにより、剥離時に仮保護材由来の残滓発生を抑制しつつ剥離することができる。さらにフィルムをロール化する場合においても、端部からの樹脂の染み出しを抑制することができる。このような観点から、当該ずり粘度は6500Pa・s以上とすることができ、8000Pa・s以上であってよく、8500Pa・s以上であってよい。
【0049】
仮保護用樹脂組成物の、35℃でのずり粘度(光硬化前のずり粘度)が30000Pa・s以下であることにより、半導体素子に代表される被加工体にダメージを与えることなく、また凹凸埋込時に空隙を生じさせることなく、被加工体に仮保護材を貼り付けることができる。このような観点から、当該ずり粘度は20000Pa・s以下とすることができ、12000Pa・s以下であってよい。
【0050】
ずり粘度は、例えば、レオメーター(株式会社アントンパール・ジャパン製、MCR301)を用いて測定することができる。
【0051】
仮保護用樹脂組成物の、露光量を500mJ/cm以上とした光照射後の25℃での弾性率(光硬化後の弾性率)が100MPa以下であることにより、剥離時にアンカー効果を抑制し、残滓発生を抑制しつつ剥離することができる。このような観点から、当該弾性率は85MPa以下とすることができ、70MPa以下であってよく、60MPa以下であってよい。なお、当該弾性率の下限としては、良好なダイシング性の観点から20MPa以上とすることができる。
【0052】
弾性率は、例えば、動的粘弾性装置Rheogel-E4000(製品名、株式会社UMB製)を用いて測定することができる。
【0053】
仮保護用樹脂組成物の、露光量を500mJ/cm以上とした光照射後の引張試験における伸び率(破断伸び率)が35%以上であることにより、剥離時に仮保護材の破壊を抑制し、残滓発生を抑制しつつ剥離することができる。このような観点から、当該伸び率は40%以上とすることができ、45%以上であってよく、50%以上であってよく、55%以上であってよい。なお、当該伸び率の上限としては、良好なダイシング性の観点から80%以下とすることができる。
【0054】
伸び率は、例えば、島津製作所製オートグラフ「AGS-1000」を用いて測定することができる。
【0055】
本実施形態においては、仮保護用樹脂組成物が上記のような粘度、弾性率及び伸び率を有してさえすればよく、組成物の具体的な組成については特段限定されない。仮保護用樹脂組成物の光硬化前のずり粘度、光硬化後の弾性率及び伸び率を適切に制御することで、小さいサイズの被加工体においても、硬化前の被加工体表面の凹凸の埋込と、剥離後の被加工体表面への残滓発生抑制を実現することができる。以下では一例として、(A)(メタ)アクリル共重合体で構成される主成分に、光反応制御成分として(B)光ラジカル重合開始剤と、離型成分として(C)シリコーン化合物とを添加した態様について説明をするが、当業者であればその他の変形態様についても適宜実施することができる。
【0056】
<(A)(メタ)アクリル共重合体>
(A)成分としては、炭素-炭素二重結合含有基を有する(メタ)アクリル共重合体が挙げられる。
【0057】
(メタ)アクリル共重合体としてのアクリル系樹脂又はメタクリル系樹脂(以下、「(メタ)アクリル系樹脂」という。)は、感光性炭素-炭素二重結合含有基を有することができる。(メタ)アクリル系樹脂は、側鎖に感光性炭素-炭素二重結合含有基を有することができる。このような樹脂を用いることで、仮保護用樹脂組成物から形成される仮保護材に感光性を付与することができる。
【0058】
このような特徴を有する(メタ)アクリル系樹脂は、既知の方法で合成することで得ることができる。そのような方法として、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法、析出重合法、気相重合法、プラズマ重合法、超臨界重合法などが挙げられる。重合反応の種類としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、リビングラジカル重合、リビングカチオン重合、リビングアニオン重合、配位重合、イモーダル重合などの他、ATRP又はRAFTといった手法も用いることができる。この中でも、溶液重合法を用いて、ラジカル重合により(メタ)アクリル系樹脂を合成することは、経済性の良さ、反応率の高さ、重合制御の容易さ等の他、重合で得られた樹脂溶液をそのまま用いて配合できるといった配合の簡便さもあるため好ましい。
【0059】
ここでは、溶液重合法を用いて、ラジカル重合により(メタ)アクリル系樹脂を得る方法を例に挙げ、詳細に説明する。
【0060】
(メタ)アクリル系樹脂を合成する際に用いられるモノマーとしては、一分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有するものであれば特に制限はない。そのようなモノマーとして、具体的に例示するのであれば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)スクシネート等の脂肪族(メタ)アクリレート;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)テトラヒドロフタレート、モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)ヘキサヒドロフタレート等の脂環式(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、o-ビフェニル(メタ)アクリレート、1-ナフチル(メタ)アクリレート、2-ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、p-クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、1-ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(o-フェニルフェノキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(1-ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(2-ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;2-テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-N-カルバゾール等の複素環式(メタ)アクリレート、これらのカプロラクトン変性体、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、α-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、α-プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、α-ブチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、α-エチル-6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル等のエチレン性不飽和基とエポキシ基を有する化合物;(2-エチル-2-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、2-(2-エチル-2-オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-メチル-2-オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、3-(2-エチル-2-オキセタニル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(2-メチル-2-オキセタニル)プロピル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基とオキセタニル基を有する化合物;2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のエチレン性不飽和基とイソシアネート基を有する化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基とヒドロキシ基を有する化合物が挙げられる。これらのモノマーは適宜組み合わせて用いることができる。
【0061】
更に必要に応じて、上述モノマーと共重合可能なスチレン、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-イソブチルマレイミド、N-2-メチル-2-プロピルマレイミド、N-ペンチルマレイミド、N-2-ペンチルマレイミド、N-3-ペンチルマレイミド、N-2-メチル-1-ブチルマレイミド、N-2-メチル-2-ブチルマレイミド、N-3-メチル-1-ブチルマレイミド、N-3-メチル-2-ブチルマレイミド、N-ヘキシルマレイミド、N-2-ヘキシルマレイミド、N-3-ヘキシルマレイミド、N-2-メチル-1-ペンチルマレイミド、N-2-メチル-2-ペンチルマレイミド、N-2-メチル-3-ペンチルマレイミド、N-3-メチル-1-ペンチルマレイミド、N-3-メチル-2-ペンチルマレイミド、N-3-メチル-3-ペンチルマレイミド、N-4-メチル-1-ペンチルマレイミド、N-4-メチル-2-ペンチルマレイミド、N-2,2-ジメチル-1-ブチルマレイミド、N-3,3-ジメチル-1-ブチルマレイミド、N-3,3-ジメチル-2-ブチルマレイミド、N-2,3-ジメチル-1-ブチルマレイミド、N-2,3-ジメチル-2-ブチルマレイミド、N-ヒドロキシメチルマレイミド、N-1-ヒドロキシエチルマレイミド、N-2-ヒドロキシエチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-1-プロピルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-1-プロピルマレイミド、N-3―ヒドロキシ-1-プロピルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-2-プロピルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-2-プロピルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-1-ブチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-1-ブチルマレイミド、N-3-ヒドロキシ-1-ブチルマレイミド、N-4-ヒドロキシ-1-ブチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-2-ブチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-2-ブチルマレイミド、N-3-ヒドロキシ-2-ブチルマレイミド、N-4-ヒドロキシ-2-ブチルマレイミド、N-2-メチル-3-ヒドロキシ-1-プロピルマレイミド、N-2-メチル-3-ヒドロキシ-2-プロピルマレイミド、N-2-メチル-2-ヒドロキシ-1-プロピルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-1-ペンチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-1-ペンチルマレイミド、N-3-ヒドロキシ-1-ペンチルマレイミド、N-4-ヒドロキシ-1-ペンチルマレイミド、N-5-ヒドロキシ-1-ペンチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-2-ペンチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-2-ペンチルマレイミド、N-3-ヒドロキシ-2-ペンチルマレイミド、N-4-ヒドロキシ-2-ペンチルマレイミド、N-5-ヒドロキシ-2-ペンチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-3-ペンチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-3-ペンチルマレイミド、N-3-ヒドロキシ-3-ペンチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-2-メチル-1-ブチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-2-メチル-2-ブチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-2-メチル-3-ブチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-2-メチル-4-ブチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-ブチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-ブチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-2-メチル-4-ブチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-3-メチル-1-ブチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-3-メチル-3-ブチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ブチルマレイミド、N-4-ヒドロキシ-2-メチル-1-ブチルマレイミド、N-4-ヒドロキシ-2-メチル-2-ブチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-3-メチル-1-ブチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-1-プロピルマレイミド、N-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-1-プロピルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-1-ヘキシルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-2-ヘキシルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-3-ヘキシルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-4-ヘキシルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-5-ヘキシルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-6-ヘキシルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-1-ヘキシルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-2-ヘキシルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-3-ヘキシルマレイミド、N-2-ヒドロキシ_-4-ヘキシルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-5-ヘキシルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-6-ヘキシルマレイミド、N-3-ヒドロキシ-1-ヘキシルマレイミド、N-3-ヒドロキシ-2-ヘキシルマレイミド、N-3-ヒドロキシ-3-ヘキシルマレミド、N-3-ヒドロキシ-4-ヘキシルマレイミド、N-3-ヒドロキシ-5-ヘキシルマレイミド、N-3-ヒドロキシ-6-ヘキシルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-2-メチル-1-ペンチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-2-メチル-2-ペンチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-2-メチル-3-ペンチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-2-メチル-4-ペンチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-2-メチル-5-ペンチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-ペンチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-2-メチル-2-ペンチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-2-メチル-3-ペンチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-2-メチル-4-ペンチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-2-メチル-5-ペンチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-3-メチル-1-ペンチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-3-メチル-2-ペンチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-3-メチル-3-ペンチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ペンチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-3-メチル-5-ペンチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-4-メチル-1-ペンチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-4-メチル-3-ペンチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-4-メチル-4-ペンチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-4-メチル-5-ペンチルマレイミド、N-3-ヒドロキシ-2-メチル-1-ペンチルマレイミド、N-3-ヒドロキシ-2-メチル-2-ペンチルマレイミド、N-3-ヒドロキシ-2-メチル-3-ペンチルマレイミド、N-3-ヒドロキシ-2-メチル-4-ペンチルマレイミド、N-3-ヒドロキシ-2-メチル-5-ペンチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-4-メチル-1-ペンチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-4-メチル-3-ペンチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-4-メチル、N-1-ヒドロキシ-3-メチル-1-ペンチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-3-メチル-2-ペンチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-3-メチル-3-ペンチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-3-メチル-4-ペンチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-3-メチル-5-ペンチルマレイミド、N-3-ヒドロキシ-3-メチル-1-ペンチルマレイミド、N-3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ペンチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-3-エチル-4-ブチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-3-エチル-4-ブチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-2-エチル-1-ブチルマレイミド、N-4-ヒドロキシ-3-エチル-1-ブチルマレイミド、N-4-ヒドロキシ-3-エチル-2-ブチルマレイミド、N-4-ヒドロキシ-3-エチル-3-ブチルマレイミド、N-4-ヒドロキシ-3-エチル-4-ブチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-2,3-ジメチル-1-ブチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-2,3-ジメチル-2-ブチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-2,3-ジメチル-3-ブチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-2,3-ジメチル-4-ブチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-2,3-ジメチル-1-ブチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-2,3-ジメチル-3-ブチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-2,3-ジメチル-4-ブチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-1-ブチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-3-ブチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-4-ブチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル-1-ブチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル-2-ブチルマレイミド、N-2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル-4-ブチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-3,3-ジメチル-1-ブチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-3,3-ジメチル-2-ブチルマレイミド、N-1-ヒドロキシ-3,3-ジメチル-4-ブチルマレイミド等のアルキルマレイミド;N-シクロプロピルマレイミド、N-シクロブチルマレイミド、N-シクロペンチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-シクロヘプチルマレイミド、N-シクロオクチルマレイミド、N-2-メチルシクロヘキシルマレイミド、N-2-エチルシクロヘキシルマレイミド、N-2-クロロシクロヘキシルマレイミド等のシクロアルキルマレイミド;N-フェニルマレイミド、N-2-メチルフェニルマレイミド、N-2-エチルフェニルマレイミド、N-2-クロロフェニルマレイミド等のアリールマレイミドなどを、適宜用いることができる。
【0062】
(メタ)アクリル系樹脂を得るために必要な重合開始剤としては、30℃以上の加熱によりラジカルを発生する化合物であれば特に制限はないが、例えばメチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、メチルシクロヘキサノンパーオキシド等のケトンパーオキシド;1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール;p-メンタンヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド;α、α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド;オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ステアリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド;ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシカーボネート等のパーオキシカーボネート;t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウリレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2’-ジメチルバレロニトリル)などが挙げられる。
【0063】
溶液重合の際に用いられる反応溶媒としては、(メタ)アクリル系樹脂を溶解し得るものであれば、特に制限はないが、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、p-シメン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の多価アルコールアルキルエーテルアセテート;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミドなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。更に超臨界二酸化炭素などを溶媒に用いて重合することもできる。
【0064】
(メタ)アクリル系樹脂に、紫外線、電子線、及び/又は可視光線の照射によって反応し得る官能基を化学的に結合させることによって、感光性(光硬化性)を付与することができる。紫外線、電子線、及び/又は可視光線の照射によって反応し得る官能基としては、具体的に例示するのであれば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、脂環式エポキシ基、オキセタン基などが挙げられる。
【0065】
(メタ)アクリル系樹脂に感光性を付与する方法としては、特に制限はないが、例えば上記の(メタ)アクリル系樹脂を合成する際に、前もって付加反応し得る官能基、例えば水酸基、カルボキシ基、無水マレイル基、グリシジル基、アミノ基等を有するモノマーを用いることで、(メタ)アクリル系樹脂に付加反応可能な官能基を導入し、そこに少なくとも1つのエチレン性不飽和基と、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の官能基とを有する化合物を付加反応させて側鎖にエチレン性不飽和基を導入することで、(メタ)アクリル系樹脂に感光性を付与することができる。
【0066】
(メタ)アクリル系樹脂に感光性を付与することができる化合物としては特に制限はなく、グリシジル(メタ)アクリレート、α-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、α-プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、α-ブチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、α-エチル-6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル等のエチレン性不飽和基とエポキシ基を有する化合物;(2-エチル-2-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、2-(2-エチル-2-オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-メチル-2-オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、3-(2-エチル-2-オキセタニル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(2-メチル-2-オキセタニル)プロピル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基とオキセタニル基を有する化合物;(メタ)アクリロイルイソシアネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等のエチレン性不飽和基とイソシアネート基を有する化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基とヒドロキシ基を有する化合物;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、コハク酸(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)、2-フタロイルエチル(メタ)アクリレート、2-テトラヒドロフタロイルエチル(メタ)アクリレート、2-ヘキサヒドロフタロイルエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、3-ビニル安息香酸、4-ビニル安息香酸等のエチレン性不飽和基とカルボキシ基を有する化合物などが挙げられる。
【0067】
(A)成分の重量平均分子量は、10万~35万とすることができる。当該重量平均分子量が10万以上であれば、仮保護用樹脂組成物から形成される仮保護材の耐熱性及び剥離性をより良好にすることができ、35万以下であれば、仮保護用樹脂組成物の成膜性と流動性をより良好にすることができ、被加工体表面の凹凸埋込性をより良好にすることができる。この観点から、当該重量平均分子量は、12万以上であってよく、13万以上であってよく、14万以上であってよく、また、30万以下であってよく、25万以下であってよく、18万以下であってよい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンによる検量線を用いて得られるポリスチレン換算値である。
【0068】
(A)成分の二重結合当量は、500~4000とすることができる。当該二重結合当量が500以上であれば、仮保護用樹脂組成物から形成される仮保護材の剥離性をより良好にすることができ、4000以下であれば、仮保護用樹脂組成物のダイシング性をより良好にすることができる。この観点から、当該二重結合当量は、1000以上であってよく、1500以上であってよく、また、3750以下であってよく、3500以下であってよい。二重結合当量は計算値である。二重結合当量とは、1つの二重結合あたりの分子量である。
【0069】
(A)成分のガラス転移温度は-30~10℃とすることができる。当該ガラス転移温度が-30℃以上であれば、仮保護用樹脂組成物から形成される仮保護材の剥離性をより良好にすることができ、10℃以下であれば、被加工体表面の凹凸埋込性をより良好にすることができる。この観点から、当該ガラス転移温度は-15℃以上であってよく、-10℃以上であってよく、また、5℃以下であってよく、0℃以下であってよい。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により測定した中間点ガラス転移温度である。具体的には、昇温速度10℃/分、測定温度:-80~80℃の条件で熱量変化を測定し、JIS K 7121に準拠した方法によって算出した中間点ガラス転移温度である。
【0070】
仮保護用樹脂組成物は、上記に例示した(メタ)アクリル系樹脂に加え、非架橋性(メタ)アクリル系樹脂をさらに含んでいてよい。すなわち、仮保護用樹脂組成物は、架橋性(メタ)アクリル系樹脂((A)成分)と、非架橋性(メタ)アクリル系樹脂((a)成分)とを含んでいてよい。
【0071】
非架橋性(メタ)アクリル系樹脂としては、特に制限されず公知のものを使用することができる。仮保護用樹脂組成物の適当な粘度・弾性率を実現する観点から、重量平均分子量は50万以下であってよく、ガラス転移温度は-20~20℃程度であってよい。
【0072】
非架橋性(メタ)アクリル系樹脂の配合量は、架橋性(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、5~80質量部とすることができ、10~70質量部であってよい。両者の割合が上記範囲内であると、適度な伸びをもつフィルムを得易い。
【0073】
<(B)光ラジカル重合開始剤>
(B)成分としては、紫外線、可視光線等の活性光線の照射によって重合を開始させるものであれば特に制限は無い。
【0074】
(B)成分としては、特に制限はなく、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のベンゾインケタール;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン等のα-ヒドロキシケトン;フェニルグリオキシル酸メチル、フェニルグリオキシル酸エチル、オキシフェニル酢酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル、オキシフェニル酢酸2-(2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ)エチル等のグリオキシエステル;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリン-4-イルフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イルフェニル)-ブタン-1-オン、1,2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-(4-モルフォリン)-2-イルプロパン-1-オン等のα-アミノケトン;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ),2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル],1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド;2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、N,N,N’,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;2-エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ベンズアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントラキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルアントラキノン等のキノン化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル化合物;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9、9’-アクリジニルヘプタン)等のアクリジン化合物:N-フェニルグリシン、クマリンなどが挙げられる。
【0075】
以上の光ラジカル重合開始剤は、単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。更に、適切な増感剤と組み合わせて用いることもできる。
【0076】
(B)成分の配合量は、上記(A)成分100質量部に対して、0.05~10質量部とすることができる。(B)成分の配合量が上記範囲内であると、充分な光照射で充分な(メタ)アクリルモノマーの反応性を得易くなる。
【0077】
<(C)シリコーン化合物>
(メタ)アクリル共重合体及びシリコーン化合物を適切に選択・配合することで、離型成分の事前塗布なしでの剥離性が良好となり、剥離後の残滓発生を抑制することができる。
【0078】
(C)成分としては、シロキサン結合部位を有する化合物であればよく、例えば、反応性官能基を有しないオルガノポリシロキサン、反応性官能基を有するオルガノポリシロキサン、シリコーン変性ポリイミド樹脂、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂、シリコーン変性アルキド樹脂、ストレートシリコーンオイル、非反応性の変性シリコーンオイル、反応性の変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらの中でも、仮保護用樹脂組成物から形成される仮保護材の弾性率、剥離性、及び(A)成分との相溶性の観点から、反応性官能基を有するシリコーン樹脂を用いることができる。反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミド基、アミノ基、アクリロイル基等が挙げられ、これらの中でも特にアクリロイル基を用いることができる。これらの化合物は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.05~30質量部とすることができる。(C)成分の配合量が0.05質量部以上であれば、仮保護用樹脂組成物から形成される仮保護材の剥離性を良好にすることができ、30質量部以下であれば、被加工体と強固に貼り付けることができる。この観点から、(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~20質量部であってよく、0.5~15質量部であってよい。
【0080】
仮保護用樹脂組成物は、耐熱性、切削性を向上させる観点から、無機フィラーを更に含むことができる。
【0081】
無機フィラーとしては、例えば、絶縁性微粒子、ウィスカー等が挙げられる。絶縁性微粒子としては、例えば、ガラス、シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック、マイカ、窒化ホウ素等が挙げられる。これらの中では、取扱性の観点から、シリカ、アルミナ、酸化チタン及び窒化ホウ素を用いることができ、特にシリカ、アルミナ及び窒化ホウ素を用いることができる。ウィスカーとしては、例えば、ホウ酸アルミニウム、チタン酸アルミニウム、酸化亜鉛、珪酸カルシウム、硫酸マグネシウム、窒化ホウ素等が挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
無機フィラーは、表面に有機基を有するものが好ましい。無機フィラーの表面が有機基によって修飾されていることにより、仮保護用樹脂組成物を調製するときの有機溶剤への分散性、並びに仮保護用樹脂組成物から形成される仮保護材の密着性及び耐熱性を向上させることが容易となる。
【0083】
無機フィラーの平均粒径は、0.01~10μmとすることができる。平均粒径が0.01μm以上であると、仮保護用樹脂組成物から形成される仮保護材の流動性を確保し易くなるため、被加工体表面のバンプ等の突起物の埋込性を良好にすることができ、10μm以下であると、仮保護用樹脂組成物中で無機フィラーが沈降することを抑制し易くなる。この観点から、無機フィラーの平均粒径は、0.05~5μmであってよく、0.1~3μmであってよい。
【0084】
無機フィラーの配合量は、(A)成分100質量部に対して、1~100質量部とすることができる。配合量が1質量部以上であれば、仮保護用樹脂組成物から形成される仮保護材の耐熱性、切削性等を良好にすることができ、100質量部以下であれば、仮保護用樹脂組成物から形成される仮保護材の流動性を確保できるため、被加工体表面のバンプ等の突起物の埋込性を良好にすることができる。この観点から、無機フィラーの配合量は、(A)成分100質量部に対して、3~70質量部であってよく、5~50質量部であってよい。
【0085】
仮保護用樹脂組成物は、更に有機フィラーを含むことができる。有機フィラーとしては、例えば、カーボン、ゴム系フィラー、シリコーン系微粒子、ポリアミド微粒子、ポリイミド微粒子等が挙げられる。有機フィラーの配合量は、(A)成分100質量部に対し、50質量部以下とすることができ、40質量部以下であってよく、30質量部以下であってよい。
【0086】
仮保護用樹脂組成物には、必要に応じて更に酸化防止剤、黄変防止剤、着色剤、可塑剤、安定剤等のいわゆる添加剤を、所期の効果に悪影響を与えない割合で添加してもよい。
【0087】
仮保護用樹脂組成物は、必要に応じて更に有機溶剤を用いて希釈してもよい。有機溶剤としては、当該樹脂組成物を溶解し得るものであれば特に制限はないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系有機溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル系有機溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコールアルキルエーテルアセテート;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系有機溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0088】
仮保護用樹脂組成物における固形分濃度は、10~80質量%とすることができる。
【0089】
仮保護用樹脂組成物の特に好適な態様としては、光照射前の適切な粘度、光照射後の適切な弾性率、離型性等を得る観点から、(A)(メタ)アクリル共重合体、(B)光ラジカル重合開始剤、及び(C)シリコーン化合物を含有する組成物であって、(A)成分100質量部に対して、(B)成分0.05~10質量部、(C)成分0.05~30質量部を含有する組成物が挙げられる。
【0090】
<仮保護用樹脂フィルム>
仮保護用樹脂フィルムは、上述した各成分を含む仮保護用樹脂組成物をフィルム状に形成することで得られる。具体的には、当該組成物を有機溶媒中で混合、混練等してワニスを調製し、調製したワニスを基材フィルム上に塗布して加熱乾燥する方法により、仮保護用樹脂フィルムを得ることができる。
【0091】
上記の混合、混練等は、通常の撹拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を用い、これらを適宜組み合わせて行うことができる。上記の加熱乾燥は、使用した有機溶媒が充分に揮散する条件であれば特に制限はないが、通常60~200℃での0.1~90分間の加熱により行うことができる。
【0092】
上記ワニスを調製するための有機溶媒は、上記各成分を均一に溶解、混練又は分散できるものであれば制限はなく、従来公知のものを使用することができる。乾燥速度が速く、価格が安い点でメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等を使用することが好ましい。
【0093】
上記基材フィルムとしては、光照射の際に光を透過すれば特に制限はなく、例えば、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム等)、ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム等)、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルム等が挙げられる。
【0094】
仮保護用樹脂フィルムの厚さは、被加工体表面の凹凸を充分に埋め込むという観点から、被加工体の凹凸と同等以下の厚さが好ましく、5~300μmが好ましい。なお、凸部分の体積が大きい場合は、仮保護用樹脂フィルムの厚さが凸部の高さより薄くても、凹凸を充分に埋め込むことができる。
【0095】
なお、仮保護用樹脂フィルムが、ポリエステルフィルム等の基材フィルム上に設けられた状態のものを仮保護用樹脂フィルムシートと言うことができる。すなわち、当該仮保護用樹脂フィルムシートは、基材フィルムと、当該基材フィルム上に仮保護用樹脂フィルムと、を備えることができる。
【0096】
以上、本発明に係る電子部品の製造方法、当該方法にて用いられる仮保護用樹脂組成物及び仮保護用樹脂フィルムの好適な実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を行ってもよい。
【実施例
【0097】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0098】
<(メタ)アクリル共重合体の準備>
[(メタ)アクリル共重合体A-1]
スリーワンモータ、撹拌翼及び窒素導入管が備え付けられた容量4000mlのオートクレーブに、酢酸エチル1000g、2-エチルヘキシルアクリレート(HA)250g、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)560g、メチルメタクリレート(MMA)190g、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル2.0g、連鎖移動剤n-オクチルメルカプタンを10.0g配合し、均一になるまで撹拌した。その後、流量100ml/minにて60分間バブリングを実施し、系中の溶存酸素を脱気した。1時間かけて60℃まで昇温し、昇温後4時間重合させた。その後1時間かけて90℃まで昇温し、更に90℃にて1時間保持後、室温に冷却した。次に、上記オートクレーブに酢酸エチルを1000g加えて撹拌し希釈した。これに重合禁止剤としてメトキノンを0.1g、ウレタン化触媒としてジオクチルスズジラウレートを0.05g添加した後、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製カレンズMOI:製品名)を120g加え、70℃で6時間反応させた後、室温に冷却した。その後、酢酸エチルを加え、アクリル樹脂溶液中の不揮発分含有量が35質量%となるよう調整し、連鎖重合可能な官能基を有する(メタ)アクリル共重合体A-1を含むアクリル樹脂溶液A-1を得た。
【0099】
[(メタ)アクリル共重合体A-2]
スリーワンモータ、撹拌翼及び窒素導入管が備え付けられた容量4000mlのオートクレーブに、酢酸エチル1000g、2-エチルヘキシルアクリレート(HA)250g、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)560g、メチルメタクリレート(MMA)190g、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル2.0g、連鎖移動剤n-オクチルメルカプタンを10.0g配合し、均一になるまで撹拌した。その後、流量100ml/minにて60分間バブリングを実施し、系中の溶存酸素を脱気した。1時間かけて60℃まで昇温し、昇温後4時間重合させた。その後1時間かけて90℃まで昇温し、更に90℃にて1時間保持後、室温に冷却した。次に、上記オートクレーブに酢酸エチルを1000g加えて撹拌し希釈した。これに重合禁止剤としてメトキノンを0.1g、ウレタン化触媒としてジオクチルスズジラウレートを0.05g添加した後、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製カレンズMOI:製品名)を50g加え、70℃で6時間反応させた後、室温に冷却した。その後、酢酸エチルを加え、アクリル樹脂溶液中の不揮発分含有量が35質量%となるよう調整し、連鎖重合可能な官能基を有する(メタ)アクリル共重合体A-2を含むアクリル樹脂溶液A-2を得た。
【0100】
[(メタ)アクリル共重合体A-3]
スリーワンモータ、撹拌翼及び窒素導入管が備え付けられた容量4000mlのオートクレーブに、酢酸エチル1000g、2-エチルヘキシルアクリレート(HA)250g、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)560g、メチルメタクリレート(MMA)190g、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル2.0g、連鎖移動剤n-オクチルメルカプタンを12.0g配合し、均一になるまで撹拌した。その後、流量100ml/minにて60分間バブリングを実施し、系中の溶存酸素を脱気した。1時間かけて60℃まで昇温し、昇温後4時間重合させた。その後1時間かけて90℃まで昇温し、更に90℃にて1時間保持後、室温に冷却した。次に、上記オートクレーブに酢酸エチルを1000g加えて撹拌し希釈した。これに重合禁止剤としてメトキノンを0.1g、ウレタン化触媒としてジオクチルスズジラウレートを0.05g添加した後、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製カレンズMOI:製品名)を100g加え、70℃で6時間反応させた後、室温に冷却した。その後、酢酸エチルを加え、アクリル樹脂溶液中の不揮発分含有量が35質量%となるよう調整し、連鎖重合可能な官能基を有する(メタ)アクリル共重合体A-3を含むアクリル樹脂溶液A-3を得た。
【0101】
[(メタ)アクリル共重合体A-4]
スリーワンモータ、撹拌翼及び窒素導入管が備え付けられた容量4000mlのオートクレーブに、酢酸エチル1000g、2-エチルヘキシルアクリレート(HA)650g、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)350g、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル3.0g配合し、均一になるまで撹拌した。その後、流量100ml/minにて60分間バブリングを実施し、系中の溶存酸素を脱気した。1時間かけて60℃まで昇温し、昇温後4時間重合させた。その後1時間かけて90℃まで昇温し、更に90℃にて1時間保持後、室温に冷却した。次に、上記オートクレーブに酢酸エチルを1000g加えて撹拌し希釈した。これに重合禁止剤としてメトキノンを0.1g、ウレタン化触媒としてジオクチルスズジラウレートを0.05g添加した後、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製カレンズMOI:製品名)を100g加え、70℃で6時間反応させた後、室温に冷却した。その後、酢酸エチルを加え、アクリル樹脂溶液中の不揮発分含有量が35質量%となるよう調整し、連鎖重合可能な官能基を有する(メタ)アクリル共重合体A-4を含むアクリル樹脂溶液A-4を得た。
【0102】
[(メタ)アクリル共重合体A-5]
スリーワンモータ、撹拌翼及び窒素導入管が備え付けられた容量4000mlのオートクレーブに、酢酸エチル1000g、2-エチルヘキシルアクリレート(HA)250g、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)560g、メチルメタクリレート(MMA)190g、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル2.0g、連鎖移動剤n-オクチルメルカプタンを5.0g配合し、均一になるまで撹拌した。その後、流量100ml/minにて60分間バブリングを実施し、系中の溶存酸素を脱気した。1時間かけて60℃まで昇温し、昇温後4時間重合させた。その後1時間かけて90℃まで昇温し、更に90℃にて1時間保持後、室温に冷却した。次に、上記オートクレーブに酢酸エチルを1000g加えて撹拌し希釈した。これに重合禁止剤としてメトキノンを0.1g、ウレタン化触媒としてジオクチルスズジラウレートを0.05g添加した後、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製カレンズMOI:製品名)を120g加え、70℃で6時間反応させた後、室温に冷却した。その後、酢酸エチルを加え、アクリル樹脂溶液中の不揮発分含有量が35質量%となるよう調整し、連鎖重合可能な官能基を有する(メタ)アクリル共重合体A-5を含むアクリル樹脂溶液A-5を得た。
【0103】
<(メタ)アクリル共重合体の評価>
各(メタ)アクリル共重合体の物性を評価した。結果を表1に示す。
【0104】
(重量平均分子量の測定)
各(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量(標準ポリスチレン換算)を、HLC-8320GPC(製品名、東ソー株式会社製)を用いて、溶離液流量1mL/分、カラム温度40℃の条件で測定した。なお、溶離液にはテトラヒドロフランを、カラムには日立化成株式会社製Gelpack GL-A150-S/GL-A160-Sを使用した。
【0105】
(ガラス転移温度の測定)
各(メタ)アクリル共重合体のガラス転移温度Tgを、DSC8230(製品名、株式会社リガク社製)を用いて、昇温速度10℃/分、測定温度:-80~80℃の条件で測定した。なお、この場合のガラス転移温度とは、熱量変化からJIS K 7121に準拠した方法によって算出した中間点ガラス転移温度のことである。
【0106】
(二重結合当量の計算)
各(メタ)アクリル共重合体の二重結合当量を計算により求めた。二重結合当量とは、1つの二重結合あたりの分子量である。
【0107】
【表1】
【0108】
<仮保護用樹脂組成物の調製>
表2及び表3に示す組成比(単位:質量部)にて各成分を配合して、実施例及び比較例の仮保護用樹脂組成物を調製した。表中の、非架橋性メタアクリル共重合体、光ラジカル重合開始剤、シリコーン化合物の詳細は以下のとおりである。
【0109】
[非架橋性メタアクリル共重合体]
LA-2140(製品名、クラレ株式会社製、クラリティ)
FS-1208(製品名、ライオン株式会社製)
【0110】
[光ラジカル重合開始剤]
Irgacure 369(製品名、BASF株式会社製、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリン-4-イルフェニル)-ブタン-1-オン)。
【0111】
[シリコーン化合物]
BYK-UV 3500(製品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、アクリロイル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)。
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
【0114】
次に、得られた仮保護用樹脂組成物に、更にシクロヘキサノンを加えて撹拌混合した。各成分が均一になるまで撹拌を行い、仮保護用樹脂組成物のワニスを調製した。調製したワニスを100メッシュのフィルターでろ過し、真空脱泡した。真空脱泡後のワニスを、基材フィルムである、厚さ38μmの離型処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布した。塗布したワニスを、90℃で5分間、続いて140℃で5分間の2段階で加熱乾燥した。こうして、基材PETフィルム上に形成された、厚さ200μmの仮保護用樹脂フィルム(仮保護材)を得た。
【0115】
<各種物性の評価>
得られた仮保護用樹脂フィルムについて、各種物性の評価を行った。評価結果を表4及び表5に示す。チップサイズを10mm×10mmとした。
【0116】
[光硬化前の35℃ずり粘度]
仮保護用樹脂フィルムの光硬化前の35℃ずり粘度を、下記の方法により評価した。
レオメーター(株式会社アントンパール・ジャパン製、MCR301)を用いて、サンプル厚さ:200μm、昇温速度10℃/分、周波数:1Hzの条件で、測定治具(ディスポーザブルプレート(直径8mm)及びディスポーザブルサンプルディッシュ)を用いて、30℃~120℃における溶融粘度を測定し、温度35℃での値を用いて評価した。
【0117】
[光硬化後の25℃弾性率]
仮保護用樹脂フィルムの光硬化後の25℃弾性率を、下記の方法により評価した。
UV-330 HQP-2型露光機(製品名、株式会社オーク製作所製)を用い、露光量を500mJ/cmとして仮保護用樹脂フィルムにUV照射を行い、仮保護用樹脂フィルムを硬化させた。仮保護用樹脂フィルムから基材PETフィルムを剥離除去した後、幅4mm、長さ30mmに切り出してサンプルを得た。これを動的粘弾性装置Rheogel-E4000(製品名、株式会社UMB製)にセットし、引張り荷重をかけて、周波数10Hz、昇温速度3℃/分で測定し、25℃での測定値を硬化後弾性率として記録した。
【0118】
[破断伸び率の測定]
仮保護用樹脂フィルムの光硬化後の破断伸び率を、下記の方法により評価した。
UV-330 HQP-2型露光機(製品名、株式会社オーク製作所製)を用い、露光量を500mJ/cmとして仮保護用樹脂フィルムにUV照射を行い、仮保護用樹脂フィルムを硬化させた。仮保護用樹脂フィルムから基材PETフィルムを剥離除去した後、幅1cm、長さ4.2cmに切り出してサンプルを得た。これを島津製作所製オートグラフ「AGS-1000」にセットし、チャック間距離40mm、引っ張り速度300mm/minで測定し、硬化後の破断伸び率を測定した。
【0119】
[段差埋込性]
仮保護用樹脂フィルムを被加工体に貼り付けた際の段差埋込性を、下記の方法により評価した。
厚さ625μmのシリコンミラーウェハ(6インチ)表面に、ブレードダイシングにより幅40μm、深さ40μmの溝を100μm間隔で形成した。このようにして形成した段差付きシリコンミラーウェハの段差が上面となるように真空ラミネーターLM-50X50-S(製品名、株式会社エヌ・ピー・シー製)のステージ上に置き、一方仮保護用樹脂フィルム(厚さ200μm)を段差付きシリコンミラーウェハ側に対面するように設置し、これらを、気圧1.5hPa、ラミネート温度80℃、ラミネート圧力0.1MPa、及び保持時間2分の条件で真空ラミネートした。その後、超音波顕微鏡Insight-300(製品名、インサイト株式会社製)を用いて、仮保護用樹脂フィルムによる段差埋込の状態を確認した。具体的には、超音波顕微鏡で撮影した画像に対し、画像処理ソフトAdobe Photoshop(登録商標)を用いて、色調補正及び二階調化を施すことによりボイド部分を識別した。そして、ヒストグラムによりボイド部分の占める割合(%)を算出した。この作業を異なる5か所に対して行ってその平均値を取り、以下の基準に従って段差埋込性を評価した。
○:ボイドの割合が5%未満であった。
×:ボイドの割合が5%以上であった。
【0120】
[ダイシング性]
仮保護用樹脂フィルムのダイシング性を、下記の方法により評価した。被加工体として、厚さ625μmシリコンミラーウェハ(6インチ)を使用し、ここに上記で得られた仮保護用樹脂フィルム(厚さ200μm)を40℃でロールラミネートにより貼り付けることで、仮保護用樹脂フィルムを装備したシリコンミラーウェハを得た。UV-330 HQP-2型露光機(製品名、株式会社オーク製作所製)を用いて、露光量を500mJ/cmとして仮保護用樹脂フィルムにUV照射を、仮保護用樹脂フィルム側から行った。そして、仮保護用樹脂フィルムから基材PETフィルムを剥離除去してダイシングテープUC-353EP-110(製品名、古川電気工業株式会社製)に貼り付け、フルオートマチックダイシングソーDFD-6361(製品名、株式会社ディスコ製)を用いてダイシングをし、チップを得た。チップサイズは10mm×10mmとした。なお、ブレードにはZH05-SD4000-N1-70-BB(製品名、株式会社ディスコ製)を用い、条件をブレードハイト90μm、ブレード回転数40000rpm、ダイシング速度55mm/secとした。また、カット方法はシングルカットとした。以下のバリ及びデラミネーション評価において、いずれも○評価である場合をダイシング性○、いずれかが×評価である場合をダイシング性×と評価した。
バリに関しては、ダイシング後のチップにおける仮保護用樹脂フィルムの断面を、デジタルマイクロスコープVHX-S50(製品名、株式会社キーエンス製)を用いて観察した。異なる5か所について観察を行い、以下の基準に従ってダイシング性を評価した。
○:断面から5μm以上のバリが出ていなかった。
×:断面から5μm以上のバリが出ていた。
デラミネーションに関しては、ダイシング前後にダイシングテープ上に存在しているチップの数をそれぞれ目視にてカウントし、以下の基準に従って評価した。
○:チップの残存率が98%以上であった。
×:チップの残存率が98%未満であった。
【0121】
[剥離性]
被加工体からの仮保護用樹脂フィルムの剥離性を、下記の方法により評価した。
ダイシング性評価で作製した10mm×10mmのチップを、耐熱粘着材テープであるポリイミドテープ上に搬送し、貼り付けた。そして、被加工体を、硬化した仮保護用樹脂フィルムから剥離するべく、ダイボンダBESTEM-02(製品名、キャノンマシナリー株式会社製)を用い、コレットサイズ9mm、ピン数13pin、突き上げ速度20mm/secの条件にてピックアップを実施した。ピックアップは50チップについて行った。仮保護用樹脂フィルムの残滓が確認されたチップ数に応じて、剥離性を以下の基準に従って評価した。
A:0~10個
B:11~20個
C:21~50個
【0122】
[電磁シールド形成性]
被加工体における電磁シールド形成性(電磁遮蔽形成性)を、下記の方法により評価した。
まず、ダイシング性評価で作製した10mm×10mmのチップを、耐熱粘着材テープであるポリイミドテープ上に搬送し、貼り付けた。そして、被加工体に対しスパッタリング装置SDHシリーズ(製品名、株式会社アルバック製)を用いて、温度60~150℃及び圧力7×10-1Paの条件で約1.8μmの銅を成膜して、電磁シールドを形成した。その後、剥離性評価の場合と同様にして、ダイボンダBESTEM-02(製品名、キャノンマシナリー株式会社製)を用いて、被加工体を、硬化した仮保護用樹脂フィルムから剥離することで、電磁シールドが形成された被加工体を得た。得られた被加工体をマイクロスコープにて観察し、電磁シールド形成性を以下の基準に従って評価した。
○:仮保護用樹脂フィルムで保護されていた面以外の全面に銅が成膜された。
×:仮保護用樹脂フィルムで保護されていた面以外の全面には銅が成膜されなかった、あるいは、仮保護用樹脂フィルムで保護されていた面にも銅が成膜された。
【0123】
【表4】
【0124】
【表5】
【0125】
表4及び表5に示した結果から明らかなように、実施例では、所望の部分に電磁シールドを有し、かつ信頼性に優れる電子部品が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0126】
1…基板、2…凸部、10…被加工体、20,20c…仮保護材、30…基材フィルム、40…ダイシングテープ、50…耐熱粘着材テープ、M…金属膜、C…コレット。
図1