(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20240618BHJP
G02B 7/08 20210101ALI20240618BHJP
H04N 23/50 20230101ALI20240618BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G02B7/04 D
G02B7/08 B
H04N23/50
(21)【出願番号】P 2020102218
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100136261
【氏名又は名称】大竹 俊成
(72)【発明者】
【氏名】中野 拓海
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 拓司
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-034554(JP,A)
【文献】特開2003-131111(JP,A)
【文献】特開2010-039377(JP,A)
【文献】特開平08-110460(JP,A)
【文献】特開2018-200367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
G02B 7/08
H04N 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1駆動源と、
第2駆動源と、
前記
第1駆動源によって回転する
第1回転軸と、
前記第2駆動源によって回転する第2回転軸と、
前記
第1回転軸と係合する
第1係合部を有し、
第1レンズを保持する
第1レンズ保持枠と、
前記第2回転軸と係合する第2係合部を有し、第2レンズを保持する第2レンズ保持枠と、
前記
第1レンズ保持枠
及び前記第2レンズ保持枠よりも外周側に配置される外筒と、
を備え、
前記第1駆動源の駆動力によって前記第1レンズ保持枠が光軸方向に移動し、
前記第2駆動源の駆動力によって前記第2レンズ保持枠が前記光軸方向に移動し、
前記
第1回転軸と前記
第1レンズ保持枠との間に、前記外筒の周壁が存在し、
前記第2回転軸と前記第2レンズ保持枠との間に、前記外筒の周壁が存在し、
前記
第1レンズ保持枠は前記
第1係合部を保持する
第1軸保持部を有し、
前記第2レンズ保持枠は前記第2係合部を保持する第2軸保持部を有し、
前記
第1係合部は、前記
第1軸保持部を中心に回転可能であ
り、
前記第2係合部は、前記第2軸保持部を中心に回転可能であり、
前記外筒は、前記第1係合部及び前記第2係合部を前記外筒よりも外周側に配置するための穴部を有し、
光軸を中心とする円の周方向において前記第1回転軸と前記第2回転軸との距離が短い方の範囲に、前記第1駆動源と前記第2駆動源と前記穴部とが配置される、
レンズ鏡筒。
【請求項2】
前記
第1係合部は前記
第1回転軸と接触する
第1接触部を有し、
前記第2係合部は前記第2回転軸と接触する第2接触部を有し、
前記
第1接触部と前記
第1軸保持部とは
前記光軸を中心とする円の略同一円周上に配置され
、
前記第2接触部と前記第2軸保持部とは前記光軸を中心とする円の略同一円周上に配置される、
請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記
第1係合部は、前記
第1係合部を前記
第1回転軸の方向に付勢する
第1付勢部材を有
し、
前記第2係合部は、前記第2係合部を前記第2回転軸の方向に付勢する第2付勢部材を有する、
請求項1または請求項2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記
第1係合部は
、
前記
第1回転軸と接触する少なくとも2つの
第1接触部と、
前記
第1接触部を前記
第1回転軸の方向に付勢する
第1付勢部材
と、を有
し、
前記第2係合部は、
前記第2回転軸と接触する少なくとも2つの第2接触部と、
前記第2接触部を前記第2回転軸の方向に付勢する第2付勢部材と、を有する、
請求項1
に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記
第1付勢部材が前記少なくとも2つの
第1接触部を付勢する力は略同一であ
り、
前記第2付勢部材が前記少なくとも2つの第2接触部を付勢する力は略同一である、
請求項4に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記
第1レンズ保持枠は外周側に突出する
第1突部を有し、
前記第2レンズ保持枠は外周側に突出する第2突部を有し、
前記外筒は前記
第1突部
及び前記第2突部が係合する直進溝を内周面に有し、
前記直進溝に対して前記
第1突部
及び前記第2突部が
前記光軸方向に移動することにより、前記
第1レンズ保持枠
及び前記第2レンズ保持枠の
前記光軸方向の移動が案内される、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記
第1突部は
第1ベアリングを有
し、
前記第2突部は第2ベアリングを有する、
請求項6に記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
前記
第1駆動源を前記外筒に固定する
第1固定部
と、
前記第2駆動源を前記外筒に固定する第2固定部と、
を備え、
前記
第1回転軸は前記
第1固定部よりも外周側に配置され
、
前記第2回転軸は前記第2固定部よりも外周側に配置される、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項9】
前記
第1係合部は、前記
第1固定部より外周側に配置され
、
前記第2係合部は、前記第2固定部より外周側に配置される、
請求項8に記載のレンズ鏡筒。
【請求項10】
前記
第1固定部は前記
第1駆動源を固定する第1部分を有し、
前記
第1軸保持部は、
前記光軸方向において前記第1部分よりも前記
第1係合部側に配置され
、
前記第2固定部は前記第2駆動源を固定する第2部分を有し、
前記第2軸保持部は、前記光軸方向において前記第2部分よりも前記第2係合部側に配置される、
請求項8に記載のレンズ鏡筒。
【請求項11】
前記
第1固定部は
、光軸に直交する略平行な第1部分と第2部分と、前記第1部分に直交する第3部分と、を含むコの字状の
第1取付部材を有し、
前記第3部分に、前記
第1駆動源を前記外筒に固定する固定ねじが貫通する穴が形成されて
おり、
前記第2固定部は、光軸に直交する略平行な第4部分と第5部分と、前記第4部分に直交する第6部分と、を含むコの字状の第2取付部材を有し、
前記第6部分に、前記第2駆動源を前記外筒に固定する固定ねじが貫通する穴が形成されている、
請求項8に記載のレンズ鏡筒。
【請求項12】
前記
第1係合部は、前記外筒よりも外周側に配置され
、
前記第2係合部は、前記外筒よりも外周側に配置される、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項13】
前記外筒は、前記
第1係合部
及び第2係合部を前記外筒よりも外周側に配置するための穴部を有する、
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項14】
前記
第1駆動源
と前記第2駆動源とは、
前記外筒よりも外周側に、前記穴部を挟んで対向する位置に
前記第1回転軸と前記第2回転軸とが光軸と平行な方向に沿うように配置される、
請求項13に記載のレンズ鏡筒。
【請求項15】
前記
第1駆動源の少なくとも一部は、前記外筒よりも外周側に配置され
、
前記第2駆動源の少なくとも一部は、前記外筒よりも外周側に配置される、
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項16】
前記
第1レンズ保持枠は、前記
第1レンズ保持枠の位置を検出する
第1検出部によって検出される
第1被検出部を有し、
前記
第1被検出部は、前記外筒より外周側に配置され
、
前記第2レンズ保持枠は、前記第2レンズ保持枠の位置を検出する第2検出部によって検出される第2被検出部を有し、
前記第2被検出部は、前記外筒より外周側に配置される、
請求項1から請求項15のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項17】
前記第1駆動源と前記第2駆動源とは、
前記光軸を中心とする円の周方向において前記穴部に対して略対称に配置されている、
請求項1から請求項16のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項18】
第1駆動源と、
第2駆動源と、
前記
第1駆動源によって回転する
第1回転軸と、
前記第2駆動源によって回転する第2回転軸と、
前記
第1回転軸と係合する
第1係合部を有し、
第1レンズを保持する
第1レンズ保持枠と、
前記第2回転軸と係合する第2係合部を有し、第2レンズを保持する第2レンズ保持枠と、
前記
第1レンズ保持枠
及び前記第2レンズ保持枠よりも外周側に配置される外筒と、
を備え、
前記第1駆動源の駆動力によって前記第1レンズ保持枠が光軸方向に移動し、
前記第2駆動源の駆動力によって前記第2レンズ保持枠が前記光軸方向に移動し、
前記
第1回転軸の中心軸と直交する全ての面内において、光軸と前記
第1回転軸の前記中心軸とを結んだ線上で前記
第1回転軸と前記
第1レンズ保持枠との間に、前記外筒の周壁が存在し、
前記第2回転軸の中心軸と直交する全ての面内において、光軸と前記第2回転軸の前記中心軸とを結んだ線上で前記第2回転軸と前記第2レンズ保持枠との間に、前記外筒の周壁が存在し、
前記
第1レンズ保持枠は前記
第1係合部を保持する
第1軸保持部を有し、
前記第2レンズ保持枠は前記第2係合部を保持する第2軸保持部を有し、
前記光軸を中心とする円の周方向において、前記
第1軸保持部が前記
第1係合部を保持する位置と、前記
第1係合部が前記
第1回転軸と係合する位置とは異な
り、
前記光軸を中心とする円の周方向において、前記第2軸保持部が前記第2係合部を保持する位置と、前記第2係合部が前記第2回転軸と係合する位置とは異なり、
前記外筒は、前記第1係合部及び前記第2係合部を前記外筒よりも外周側に配置するための穴部を有し、
前記光軸を中心とする周方向において前記第1回転軸と前記第2回転軸との距離が短い方の範囲に、前記第1駆動源と前記第2駆動源と前記穴部とが配置される、
レンズ鏡筒。
【請求項19】
請求項1から請求項
18のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
レンズ鏡筒及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のレンズ群を、独立したアクチュエータで別々に駆動するレンズ鏡筒が提案されている(例えば、特許文献1)。また、複数のレンズ群を精度よく動かすことが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によれば、レンズ鏡筒は、第1駆動源と、第2駆動源と、前記第1駆動源によって回転する第1回転軸と、前記第2駆動源によって回転する第2回転軸と、前記第1回転軸と係合する第1係合部を有し、第1レンズを保持する第1レンズ保持枠と、前記第2回転軸と係合する第2係合部を有し、第2レンズを保持する第2レンズ保持枠と、前記第1レンズ保持枠及び前記第2レンズ保持枠よりも外周側に配置される外筒と、を備え、前記第1駆動源の駆動力によって前記第1レンズ保持枠が光軸方向に移動し、前記第2駆動源の駆動力によって前記第2レンズ保持枠が前記光軸方向に移動し、前記第1回転軸と前記第1レンズ保持枠との間に、前記外筒の周壁が存在し、前記第2回転軸と前記第2レンズ保持枠との間に、前記外筒の周壁が存在し、前記第1レンズ保持枠は前記第1係合部を保持する第1軸保持部を有し、前記第2レンズ保持枠は前記第2係合部を保持する第2軸保持部を有し、前記第1係合部は、前記第1軸保持部を中心に回転可能であり、前記第2係合部は、前記第2軸保持部を中心に回転可能であり、前記外筒は、前記第1係合部及び前記第2係合部を前記外筒よりも外周側に配置するための穴部を有し、光軸を中心とする円の周方向において前記第1回転軸と前記第2回転軸との距離が短い方の範囲に、前記第1駆動源と前記第2駆動源と前記穴部とが配置される。
【0005】
第2の態様によれば、撮像装置は、上記レンズ鏡筒を備える。
【0006】
なお、後述の実施形態の構成を適宜改良しても良く、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させても良い。更に、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るレンズ鏡筒の断面図である。
【
図2】
図2(A)は、第2固定筒、第1レンズ保持枠、および第2レンズ保持枠の関係を示す部分断面斜視図であり、
図2(B)は、
図2(A)において矢印A10で示す方向から第2固定筒を見た場合の部分断面図である。
【
図5】
図5(A)は、
図1において矢印A12で示す方向から第2固定筒を見た概略斜視図であり、
図5(B)は、第1駆動源ユニットの拡大図である。
【
図6】
図6(A)は、ラック保持機構の拡大図であり、
図6(B)は、ラック保持機構を
図6(A)において矢印A1に示す方向から見た図である。
【
図7】
図7(A)は、
図6(B)のA-A線断面図であり、
図7(B)は、
図6(B)のB-B線断面図であり、
図7(C)は、
図6(B)のC-C線断面図である。
【
図8】
図8(A)は、軸保持部のラック側の面の拡大図であり、
図8(B)は、ラックの側面図である。
【
図9】
図9(A)及び
図9(B)は、変形例1に係る第1突部及び第2突部の直進溝内における配置例を示す図である。
【
図10】
図10は、変形例2に係る第1突部及び第2突部の直進溝内における配置例を示す図である。
【
図11】
図11(A)及び
図11(B)は、変形例3に係る第1突部及び第2突部の直進溝内における配置例を示す図である。
【
図12】
図12(A)及び
図12(B)は、変形例に係るラックについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るレンズ鏡筒100と、カメラボディ101と、を備えるカメラ1を示す図である。
図2(A)は、後述する第2固定筒20、第1レンズ保持枠F1、および第2レンズ保持枠F2の関係を示す部分断面斜視図であり、
図2(B)は、
図2(A)において矢印A10で示す方向から第2固定筒20を見た場合の部分断面図である。また、
図3は、
図2(B)のA-A線断面図である。
【0009】
なお、本実施形態において、レンズ鏡筒100は、カメラボディ101に対して着脱可能であるが、これに限定されず、レンズ鏡筒100とカメラボディ101とは一体であってもよい。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係るレンズ鏡筒100は、第1固定筒10と、第1固定筒10よりも内周側に配置された第2固定筒20と、第1固定筒10の外周側に配置されたフォーカス環15と、を備える。本実施形態において、第1固定筒10は複数の部品から構成されているが、1つの部品により構成されてもよい。
図1に示すように、第1固定筒10には、レンズ鏡筒100をカメラボディ101に着脱可能とするレンズマウント13が固定されている。
【0011】
また、レンズ鏡筒100は、共通の光軸OAに沿って順次配列され、第1レンズ群L1及び第2レンズ群L2を含む複数のレンズ群を備える。第1レンズ群L1及び第2レンズ群L2は、それぞれ、フォーカスレンズ群である。
【0012】
第1レンズ群L1は第1レンズ保持枠F1に保持され、第2レンズ群L2は第2レンズ保持枠F2に保持され、他のレンズ群は、第1固定筒10に保持されている。
【0013】
詳細は後述するが、第1レンズ保持枠F1及び第2レンズ保持枠F2は、それぞれ、第1駆動源ユニット60及び第2駆動源ユニット70によって駆動される。第1駆動源ユニット60又は第2駆動源ユニット70は、例えば、ステッピングモータやボイスコイルモータ、超音波モータ等を用いることができる。これにより、例えば、第1レンズ保持枠F1及び第2レンズ保持枠F2は、フォーカス環15の操作に応じて、個別又は一体に光軸OA方向に直進移動する。
【0014】
第1レンズ保持枠F1及び第2レンズ保持枠F2は、
図2(A)に示すように、第2固定筒20の内側に配置される。
図1及び
図2(A)に示すように、第2固定筒20は、光軸OA方向に延びる複数(本実施形態では3つ)の直進溝21と、第2固定筒20を貫通し、光軸OA方向に延びる穴22と、を有する。
【0015】
本実施形態において、第2固定筒20の第1レンズ保持枠F1及び第2レンズ保持枠F2を収容する部分の壁部には、穴22以外には、当該壁部を貫通する(壁部の内側と外側とを連通する)開口が形成されていない。これにより、第2固定筒20の外側から内側への漏光を抑制できるとともに、漏光に対する対策も容易となる。また、第2固定筒20の強度も向上する。
【0016】
図3に示すように、第1レンズ保持枠F1は、光軸OA方向と交差する方向に突出する第1突部31を備え、第2レンズ保持枠F2は、光軸OA方向と交差する方向に突出する第2突部41を備える。第1突部31と第2突部41とは、第2固定筒20が有する直進溝21と係合する。より具体的には、第1突部31と第2突部41とは互いに当接し、第1突部31と第2突部41とは当接した状態で直進溝21に係合する。
【0017】
第1突部31と直進溝21の壁21aとの間には、壁21aと当接するブロック50が設けられている。ブロック50は、光軸OA方向において第1レンズ保持枠F1(第1突部31)と一体となって移動するが、光軸OAを中心とする周方向において第1突部31に対して移動可能となるように、第1レンズ保持枠F1に組付けられている。第1突部31、第2突部41、およびブロック50が直進溝21と係合するため、光軸OAを中心とする第1レンズ保持枠F1及び第2レンズ保持枠F2の回転が規制され、第1レンズ保持枠F1及び第2レンズ保持枠F2は、直進溝21に案内されて、光軸OA方向に直進移動する。
【0018】
ここで、第2固定筒20と、第1レンズ保持枠F1の第1突部31と、第2レンズ保持枠F2の第2突部41と、ブロック50との関係について、
図4(A)及び
図4(B)を用いて説明する。
【0019】
図4(A)及び
図4(B)は、
図3のB-B線断面図であり、
図4(A)は第1レンズ群L1と第2レンズ群L2とが光軸OA方向において最も離間した状態を示し、
図4(B)は、第1レンズ群L1と第2レンズ群L2とが光軸OA方向において最も近接した状態を示す。
図4(A)及び
図4(B)では、第1レンズ保持枠F1の本体部と第2レンズ保持枠F2の本体部の図示を省略している。
【0020】
図4(A)及び
図4(B)に示すように、第1突部31とブロック50との間には、第1突部31とブロック50とが互いに離間する方向に第1突部31とブロック50とを付勢する圧縮ばね51が設けられている。なお、圧縮ばね51は、例えば、板ばね等、他の付勢部材であってもよい。
【0021】
圧縮ばね51によって、ブロック50が直進溝21の壁21aに押し付けられるとともに、第1突部31が第2突部41に対して付勢される。これにより、第1レンズ保持枠F1と第2レンズ保持枠F2とが独立して移動するときのガタが抑制でき(第1レンズ保持枠F1と第2レンズ保持枠F2との間のガタを抑制でき)、直進溝21内において第1レンズ保持枠F1と第2レンズ保持枠F2とをそれぞれ精度よく移動させることができる。
【0022】
また、圧縮ばね51によって、第1突部31を介して第2突部41が第2固定筒20の直進溝21の壁21bに押し付けられるため、第1レンズ保持枠F1と第2レンズ保持枠F2とが移動するときのガタが抑制され、直進溝21内において第1レンズ保持枠F1と第2レンズ保持枠F2とを精度よく移動させることができる。
【0023】
図4(A)及び
図4(B)に示すように、第1突部31と第2突部41とは、光軸OAを中心とする周方向において、少なくとも一部が重なる。より具体的には、第1レンズ群L1と第2レンズ群L2とが最も離間した状態であっても、近接した状態であっても、第1突部31と第2突部41とは、光軸OAを中心とする周方向において、少なくとも一部が重なる。これにより、第1突部31と第2突部41とは互いを光軸OA方向にガイドしあうことができる。
【0024】
第2レンズ保持枠F2の第2突部41は、ベアリング411を備え、周方向において直進溝21の壁のうち一方の壁21bと当接する。第1レンズ保持枠F1の第1突部31は、ベアリング311を有し、第2突部41に当接する。ブロック50は、ベアリング501を備え、周方向において直進溝21の壁のうち他方の壁21aと当接する。なお、
図2(A)及び
図2(B)に示すように、第1突部31及び第2突部41には、レンズ鏡筒100の組み立て時にベアリング311,411,501が外れないように、板17及び18がそれぞれ取り付けられているが、
図3以降の図では、板17及び18の図示を省略している。なお、板17及び18を用いなくてもよい。すなわち、ベアリング311,411,501と直進溝21との間に、板17及び18が存在していなくてもよい。
【0025】
ベアリング311及びベアリング501によって、第1レンズ保持枠F1が第2レンズ保持枠F2及び第2固定筒20に対して光軸OA方向に移動する場合において、第1突部31と第2突部41との間の摺動抵抗と、ブロック50と壁21aとの間の摺動抵抗と、を低減することができる。また、ベアリング311及びベアリング411によって、第2レンズ保持枠F2が第1レンズ保持枠F1及び第2固定筒20に対して光軸OA方向に移動する場合において、壁21bと第2突部41との間の摺動抵抗と、第1突部31と第2突部41との間の摺動抵抗と、を低減することができる。さらに、ベアリング411及びベアリング501によって、第1レンズ保持枠F1と第2レンズ保持枠F2とが光軸OA方向に移動する場合の摺動抵抗を低減することができる。
【0026】
なお、本実施形態では、第1突部31、第2突部41及びブロック50がそれぞれベアリング311、ベアリング411、およびベアリング501を有する場合について説明するが、第1突部31、第2突部41及びブロック50の少なくとも1つがベアリングを有していればよい。例えば、ベアリングの代わりに突部を設けてもよい。
【0027】
次に、第1レンズ保持枠F1及び第2レンズ保持枠F2を駆動させるための駆動機構について説明する。
図5(A)は
図1において矢印A12で示す方向から第2固定筒20を見た概略斜視図であり、
図5(B)は、第1駆動源ユニットの拡大図である。なお、
図5(B)では、第2固定筒20の図示を省略している。
【0028】
図5(A)に示すように、第2固定筒20の外周部には、第1レンズ保持枠F1を光軸OA方向に移動するための第1駆動源ユニット60と、第2レンズ保持枠F2を光軸OA方向に移動するための、第1駆動源ユニット60とは異なる第2駆動源ユニット70と、が固定されている。
【0029】
第1駆動源ユニット60及び第2駆動源ユニット70は、第2固定筒20が有する複数(例えば、3つ)の直進溝21のうち、光軸OAを中心とする周方向に並んで配置された2つの直進溝21の間に設けられている。さらに、第1駆動源ユニット60及び第2駆動源ユニット70は、第2固定筒20が有する穴22を挟んで対向する位置に設けられている。より具体的には、第1駆動源ユニット60及び第2駆動源ユニット70は、光軸OAを中心とする周方向において穴22に対して対称に配置されている。
【0030】
次に、第1駆動源ユニット60及び第2駆動源ユニット70の構成について説明する。
【0031】
図5(B)に示すように、第1駆動源ユニット60は、ステッピングモータ601と、リードスクリュー602と、ラック603と、取付部材604と、を備える。第2駆動源ユニット70は、ステッピングモータ701と、リードスクリュー702と、ラック703と、取付部材704と、を備える。なお、第1駆動源ユニット60と第2駆動源ユニット70とは、同様の構成を有するため、以下では第1駆動源ユニット60の構成について説明し、第2駆動源ユニット70の構成についての詳細な説明は省略する。
【0032】
取付部材604は、コの字状の部材であり、ステッピングモータ601が固定される第1部分604aと、第1部分604aと対向する第2部分604bと、第1部分604aと第2部分604bとの間でリードスクリュー602と平行に延在する第3部分604cとを有する。第3部分604cには、複数の穴が形成されており、
図5(B)に示すように、ビスなどによって、取付部材604を第2固定筒20の外周面にビス止めすることによって、第1駆動源ユニット60が第2固定筒20に固定される。これにより、第2固定筒20の径方向において、リードスクリュー602と第1レンズ保持枠F1との間に第2固定筒20の周壁が存在するようになる。また、リードスクリュー602が第3部分604cよりも外周側に配置される。
【0033】
リードスクリュー602は、ステッピングモータ601の出力軸に直結され、光軸OA方向に伸びている。リードスクリュー602の先端部は取付部材604の第2部分604bによって回転可能に支持されている。リードスクリュー602は、先端部が取付部材604の第2部分604bによって回転可能に支持されることで、先端部の振れが抑制される。
【0034】
リードスクリュー602には、ラック603が係合している。ラック603は、第1レンズ保持枠F1が備えるラック保持機構33に保持されている。なお、第2駆動源ユニット70のラック703は、第2レンズ保持枠F2が備えるラック保持機構43に保持されている(
図5(A)参照)。
【0035】
ここで、ラック603及びラック保持機構33について説明する。なお、ラック703及びラック保持機構43はそれぞれラック603及びラック保持機構33と同様の構成を有する。
【0036】
図6(A)は、ラック603及びラック保持機構33の拡大図であり、
図6(B)は、ラック603及びラック保持機構33を、
図6(A)において矢印A1で示す方向から見た図である。
図7(A)は、
図6(B)のA-A線断面図であり、
図7(B)は、
図6(B)のB-B線断面図であり、
図7(C)は、
図6(B)のC-C線断面図である。
図8(A)は、軸保持部のラック側の面の拡大図であり、
図8(B)は、ラックの側面図である。
【0037】
図6(A)等に示すように、ラック603は、ラック本体611と、付勢部材612と、を備える。
【0038】
図8(B)に示すように、ラック本体611は、第1側壁部611aと、第1側壁部611aと対向する第2側壁部611bと、第1側壁部611aと第2側壁部611bとを接続する接続部611cと、を有する。接続部611cには、ラック保持軸331の第1部材331aが挿通される貫通孔611dが形成されている。
【0039】
第1側壁部611a、第2側壁部611b、および接続部611cは、1つの部材で構成されている。ラック本体611は、例えばポリアセタール等の可撓性を有する樹脂製である。
【0040】
第1側壁部611aは、リードスクリュー602と接触する2つの第1接触部613aを有し、第2側壁部611bは、リードスクリュー602と接触する1つの第2接触部613bを有する。第1接触部613aと第2接触部613bとは、リードスクリュー602を挟みこむように構成されている。また、第1接触部613aと第2接触部613bとは、互い違いに配置されている。第1接触部613a及び第2接触部613bの内面には、リードスクリュー602のねじ山と相補的な形状のねじ山が形成されている。
【0041】
付勢部材612は、例えば、板ばねであって、一端が第1側壁部611aと係合し、他端が第2側壁部611bと係合し、
図8(B)において矢印で示すように、第1側壁部611aと第2側壁部611bとを略同一の力で内側に付勢する。これにより、第1接触部613aと第2接触部613bとはお互いが近づくように付勢されるため、第1接触部613a及び第2接触部613bの内面に形成されたねじ山がリードスクリュー602に形成されたねじ山と密着する。これにより、リードスクリュー602とラック603との間のガタが抑制される。なお、第1側壁部611aと第2側壁部611bとを略同一の力で内側に付勢できるのであれば、付勢部材612として、例えば、ねじりコイルばね等の付勢部材を用いてもよい。
【0042】
次に、ラック保持機構33について詳細に説明する。
【0043】
ラック保持機構33は、
図6(A)~
図7(A)に示すように、ラック保持軸331と、軸保持部332と、圧縮ばね333と、を備える。
【0044】
図3に示すように、軸保持部332は、第1レンズ保持枠F1の外周から光軸OA方向と交差する方向に突出しており、第2固定筒20が有する穴22を貫通する。
【0045】
図7(A)に示すように、軸保持部332は、ラック保持軸331が挿通される貫通孔332aを有する。貫通孔332aは、段付き貫通孔である。貫通孔332aは、第2固定筒20の外周面よりも外周側に位置する。
【0046】
また、軸保持部332には、不図示のフォトインタラプタの検出部の間を通過する遮光部334が設けられている。これにより、第1レンズ保持枠F1の位置を検出することができる。遮光部334は、第2固定筒20よりも外周側に配置されている。
【0047】
ラック保持軸331は、第1部材331aと第2部材331bとを有する。第1部材331aは、フランジ部331a1を有し、ラック本体611の貫通孔611dに挿通され、一端が軸保持部332の貫通孔332aに挿入されることで、フランジ部331a1と軸保持部332との間でラック603を保持する。第2部材331bは、第1部材331aとは反対側から軸保持部332に挿入され、第1部材331aと結合されている。軸保持部332の貫通孔332aが第2固定筒20の外周面よりも外周側に位置するため、当該貫通孔332aに挿入されるラック保持軸331によって保持されるラック603は、第2固定筒20よりも外側に配置される。
【0048】
第1部材331aは、軸保持部332の貫通孔332a内に配置された圧縮ばね333によって、
図7(A)において、矢印A3で示す方向に付勢されている。これにより、ラック603も、矢印A3で示す方向に付勢され、軸保持部332に押し付けられる。ラック603を軸保持部332に完全に固定するわけではないため、ラック603は、ラック保持軸331の軸を中心に揺動(回転)することができる。このため、ラック603を軸保持部332に直接ネジ止めする場合と比較して、第1レンズ保持枠F1に余計な力がかかることが抑制される。これにより、ステッピングモータ601にかかる負荷を低減することができる。
【0049】
図8(A)に示すように、ラック603と当接する軸保持部332の面332cには、球面状の突部332dが形成されており、突部332dは、ラック603と当接する。また、軸保持部332の貫通孔332aは、
図7(B)及び
図7(C)に示すように、第1部材331a及び第2部材331bが矢印A5及びA7で示す第1レンズ保持枠F1の径方向には移動可能であるが、矢印A6及びA8で示す光軸OAを中心とする周方向には移動できないように形成されている。すなわち、矢印A5及びA7で示す径方向において、貫通孔332aの側面と第1部材331a及び第2部材331bとの間には隙間が存在するが、矢印A6及びA8で示す周方向において、貫通孔332aの側面と第1部材331a及び第2部材331bとが当接する(隙間がない)ように、貫通孔332aが形成されている。これにより、周方向におけるガタがなくなり、周方向におけるラック603のリードスクリュー602に対する追従性が向上する。
【0050】
ラック603は矢印A3で示す方向に付勢され、さらに、ラック603の側面は、球面状の突部332dに当接する。さらに、ラック保持軸331は、軸保持部332によって、光軸OAを中心とする第1レンズ保持枠F1の径方向に移動可能に保持されている。これにより、ラック603は、
図7(A)に矢印A4で示すように揺動可能となる。さらに、上述したように、ラック603は、ラック保持軸331の軸を中心として回転可能となっている。リードスクリュー602の軸方向を光軸OA方向に完全に一致させることは難しいが、本実施形態によれば、上記構成によってラック603がリードスクリュー602に追従でき、第1レンズ保持枠F1の光軸OA方向の移動精度を向上させることができる。
【0051】
なお、ラック保持機構33及び43は、ほぼ同様の構成を有するため、ラック保持機構43の詳細な説明を省略する。具体的には、
図3に示すように、ラック保持機構43は、軸保持部332と同様の軸保持部432、遮光部334と同様の遮光部434、及び貫通孔332aと同様の貫通孔432a等を備える。
【0052】
以上詳細に説明したように、本実施形態に係るレンズ鏡筒100は、第1レンズ群L1を保持し、第1突部31を有する第1レンズ保持枠F1と、第1レンズ保持枠F1を光軸OA方向に移動するステッピングモータ601と、第2レンズ群L2を保持し、第2突部41を有する第2レンズ保持枠F2と、第2レンズ保持枠F2を光軸OA方向に移動するステッピングモータ701と、第1突部31及び第2突部41と係合し、光軸OA方向に延在する直進溝21を有し、第1レンズ保持枠F1及び第2レンズ保持枠F2よりも外周側に配置される第2固定筒20と、を備える。これにより、第1レンズ保持枠F1と第2レンズ保持枠F2の光軸OA回りの回転を規制し、第1レンズ保持枠F1と第2レンズ保持枠F2を光軸OA方向に直進移動させることができる。また、第1レンズ保持枠F1の第1突部31と第2レンズ保持枠F2の第2突部41とで1つの直進溝21を共有するため、第2固定筒20をシンプルな構成にすることができ、また、第1レンズ保持枠F1と第2レンズ保持枠F2とを精度よく光軸方向に移動させることができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、第1突部31と第2突部41とは、光軸OAを中心とする周方向において、少なくとも一部が重なる。これにより、第1突部31と第2突部41とは、直進溝21内において、お互いを光軸OA方向にガイドすることができる。また、直進溝21の光軸OA方向の長さを短くすることができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、光軸OAを中心とする周方向において、第1突部31と第2突部41とは当接し、第2突部41は、直進溝21の一方の壁21bと当接する。さらに、レンズ鏡筒100は、第1突部31に対して光軸OAを中心とする周方向において移動可能なブロック50と、第1突部31とブロック50との間に配置された圧縮ばね51と、を備え、ブロック50は、直進溝21の他方の壁21aと当接する。これにより、第1レンズ保持枠F1と第2レンズ保持枠F2とが独立して移動するときのガタを抑制できる。また、第1レンズ保持枠F1と第2レンズ保持枠F2との間のガタを抑制できる。
【0055】
レンズ保持枠をガイドバーに沿って光軸OA方向に直進案内するガイドバー方式のレンズ鏡筒では、カメラを傾けたりした場合に、レンズ保持枠とガイドバーとの間でガタが発生しないように、レンズ保持枠をばね等の付勢部材によってガイドバーに対して付勢することが多い。この場合、レンズ保持枠とガイドバーとの間の摺動抵抗が増加するとともに、付勢部材による力がレンズ保持枠にかかるため、レンズ保持枠の移動に比較的大きなトルクが必要となり、小型のステッピングモータによってレンズ保持枠を駆動させることが難しい場合がある。一方、本実施形態に係るレンズ鏡筒100では、3つの直進溝21内で、ブロック50及び圧縮ばね51によって第1レンズ保持枠F1と第2レンズ保持枠F2とをそれぞれ直進溝21の壁21a及び21bに当接する方向に付勢するため、第1レンズ保持枠F1及び第2レンズ保持枠F2に過度な力がかからない。そのため、比較的トルクの小さい小型のステッピングモータを用いても、第1レンズ保持枠F1及び第2レンズ保持枠F2を駆動させることができる。これにより、光軸OA方向において、第1レンズ保持枠F1及び第2レンズ保持枠F2を精度よく移動させることができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、第1突部31、第2突部41及びブロック50は、それぞれベアリングを有する。これにより、第1レンズ保持枠F1及び第2レンズ保持枠F2が移動するときの摺動抵抗を低減することができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、第2固定筒20は複数の直進溝21を有し、ステッピングモータ601及びステッピングモータ701は、複数の直進溝21のうち光軸OAを中心とする周方向において並んで配置される2つの直進溝21の間に配置される。これにより、ステッピングモータ601及びステッピングモータ701をバランスよく配置することができる。また、第1固定筒10と第2固定筒20との間の空いている空間にステッピングモータ601及び701を配置することができるため、レンズ鏡筒100を小型化することができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、レンズ鏡筒100は、ステッピングモータ601によって回転するリードスクリュー602と、第1レンズ保持枠F1に保持され、リードスクリュー602と係合するラック本体611と、を備え、ラック本体611は、第1側壁部611aと、第2側壁部611bと、第1側壁部611aと第2側壁部611bとを接続する接続部611cとを備え、第1側壁部611aと第2側壁部611bと接続部611cとは、1つの部材で構成されている。これにより、部品点数が少なくなるため、ラック本体611を複数の部材で構成する場合と比較して故障を低減することができる。
【0059】
さらに、第1側壁部611aは、リードスクリュー602と接触する第1接触部613aを有し、第2側壁部611bは、リードスクリュー602と接触する第2接触部613bを有し、レンズ鏡筒100は、第1接触部613aと第2接触部613bとが近づくように、ラック本体611を付勢する付勢部材612を備える。これにより、第1接触部613a及び第2接触部613bの内面に形成されたねじ山がリードスクリュー602に形成されたねじ山と密着するため、ガタが抑制される。
【0060】
また、例えば、ねじりばね等を用いて第1側壁部611a及び第2側壁部611bのいずれか一方を付勢して、第1接触部613a又は第2接触部613bの内面に形成されたねじ山をリードスクリュー602に形成されたねじ山と密着させる場合、第1側壁部611a又は第2側壁部611bに対する力の反力がラック本体611及びラック保持軸331を介して第1レンズ保持枠F1にかかってしまい、3つの直進溝21によってバランスよく支持されている第1レンズ保持枠F1に影響を与えてしまう。本実施形態では、第1接触部613aと第2接触部613bとが略同一の力でリードスクリュー602に向かって付勢されるため、ラック本体611に反力が生じない。このため、第1レンズ保持枠F1に余計な力が働くことを抑制することができる。これにより、第1レンズ保持枠F1を第2固定筒20内でバランスよく保持することができる。第2レンズ保持枠F2についても同様である。
【0061】
また、詳細に説明したように、本実施形態に係るレンズ鏡筒100は、ステッピングモータ601と、ステッピングモータ601によって回転するリードスクリュー602と、リードスクリュー602と係合するラック603を有し、第1レンズ群L1を保持する第1レンズ保持枠F1と、第1レンズ保持枠F1よりも外周側に配置される第2固定筒20と、を備え、リードスクリュー602と第1レンズ保持枠F1との間に第2固定筒20の周壁が存在する。第1レンズ保持枠F1とリードスクリュー602との間に第2固定筒20の周壁が介在するため、リードスクリュー602が第2固定筒20と第1レンズ保持枠F1との間に配置される場合(リードスクリュー602が第2固定筒20の内周側に配置される場合)と比較して、リードスクリュー602に塗布された潤滑剤やリードスクリュー602とラック603との摺動によって生じたゴミが第1レンズ群L1及び第2レンズ群L2に付着するのを抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、レンズ鏡筒100は、ステッピングモータ601を第2固定筒20に固定する取付部材604を備え、リードスクリュー602は取付部材604の第3部分604cよりも外周側に配置される。また、本実施形態によれば、ラック603は、取付部材604の第3部分604cよりも外周側に配置される。さらに、ラック603は、第2固定筒20よりも外周側に配置される。これにより、第1レンズ保持枠F1を駆動する第1駆動源ユニット60の構成要素を第2固定筒20よりも外周側に配置できる、すなわち、第1駆動源ユニット60と第1レンズ保持枠F1との間に第2固定筒20を介在させることができるため、ゴミが第1レンズ群L1及び第2レンズ群L2に付着するのを第2固定筒20によって抑制することができる。第2駆動源ユニット70についても同様である。
【0063】
また、本実施形態によれば、第2固定筒20は、ラック603を第2固定筒20よりも外周側に配置するための穴22を有する。第2固定筒20の第1レンズ保持枠F1及び第2レンズ保持枠F2を収容する部分の壁面には、穴22以外に穴を形成する必要がないため、漏光を抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、第1レンズ保持枠F1は、第1レンズ保持枠F1の位置を検出するフォトインタラプタ(不図示)によって検出される遮光部334を有し、遮光部334は、第2固定筒20より外周側に配置される。これにより、フォトインタラプタの発光部からの光を第2固定筒20により遮断することができるため、フォトインタラプタの光が撮像に与える影響を低減することができる。
【0065】
なお、上記実施形態において、ステッピングモータ601の少なくとも一部が、第2固定筒20よりも外周側に配置されていればよい。すなわち、ステッピングモータ601の一部が、第2固定筒20よりも内周側に配置されていてもよい。
【0066】
また、上記実施形態において、第1レンズ保持枠F1及び第2レンズ保持枠F2を収納する第2固定筒20は、光軸OA方向に直進移動が可能な移動筒であってもよい。また、上記実施形態において、レンズ鏡筒100は単焦点レンズであってもよいし、ズームレンズであってもよい。
【0067】
また、上記実施形態に係る第1駆動源ユニット60及び第2駆動源ユニット70を、ガイドバーに沿って第1レンズ保持枠F1及び第2レンズ保持枠F2を光軸OA方向に直進移動させるガイドバー方式のレンズ鏡筒に適用してもよい。
【0068】
また、レンズ鏡筒100は、第1レンズ保持枠F1及び第2レンズ保持枠F2のいずれか一方のみを有していてもよい。すなわち、ごみ等の侵入を防ぐという観点から、レンズ保持枠とリードスクリューとの間に第2固定筒20の周壁を存在させる構成は、レンズ群が複数の場合及び1つの場合のいずれにも適用することができる。
【0069】
また、上記実施形態において、第1突部31が有するベアリング311と、第2突部41が有するベアリング411とのうち、少なくとも1つは、他のベアリング311及び411と異なる直径を有していてもよい。例えば、2つのベアリング311の一方は、他方のベアリング311と異なる直径を有していてもよい。また、2つのベアリング411の一方は、他方のベアリング411と異なる直径を有していてもよい。また、2つのベアリング311の一方は、2つのベアリング411の一方又は両方と異なる直径を有していてもよい。また、2つのベアリング311及び2つのベアリング411の全てが互いに異なる直径を有していてもよい。このように、ベアリング311及び411の直径を変更することで、第1レンズ保持枠F1及び第2レンズ保持枠F2のチルト調整や調芯を行うことができる。
【0070】
なお、上記実施形態において、第1突部31とブロック50との間に圧縮ばね51を設けていたが、これに限られるものではない。ここで、変形例に係る第1突部31と第2突部41との配置例について
図9(A)~
図11(B)を参照して説明する。
【0071】
(変形例1)
図9(A)は、変形例1に係る第1突部31Aと第2突部41Aとの配置例を示す図である。
図9(B)は、
図9(A)において、ベアリング311及び411を取り外した状態の図である。
【0072】
図9(A)に示すように、変形例1では、第1突部31Aはベアリング311を有し、ベアリング311は、直進溝21の一方の壁21aに当接する。また、第2突部41Aはベアリング411を有し、ベアリング411は、直進溝21の他方の壁21bに当接する。
【0073】
第1突部31Aと第2突部41Aとの間には、2枚の押圧部材81が設けられている。
図9(B)に示すように、押圧部材81の一端部は第2突部41Aが有する突起412と係合し、押圧部材81の他端部は、第1突部31Aが有する突起312と部分的に接触する。2枚の押圧部材81は引張ばね82で接続されている。引張ばね82により押圧部材81同士が引っ張られると、突起312と突起412とは、押圧部材81の他端部に形成された斜面81aに沿って第1突部31Aと第2突部41Aとが互いから離れる方向に押される。これにより、第1突部31Aと第2突部41Aとが、それぞれ、壁21bと壁21aとに押し付けられるため、第1レンズ保持枠F1及び第2レンズ保持枠F2が直進溝21に沿って光軸OA方向に直進移動するときのガタが抑制される。
【0074】
(変形例2)
図10は、変形例2に係る第1突部31Bと第2突部41Bとの配置例を示す図である。変形例2では、第1突部31Bと第2突部41Bとの間に、ベアリング851を有する第1ブロック85と、ベアリング861を有する第2ブロック86とが設けられている。第1ブロック85と第2ブロック86との間には、圧縮ばね87が設けられている。圧縮ばね87は、矢印A21で示すように、第1ブロック85と第2ブロック86とを、第1ブロック85と第2ブロック86とが離間する方向に付勢する。これにより、第1ブロック85及び第2ブロック86が第1突部31Bに形成された斜面313a及び313bをそれぞれ押し上げるとともに、第2突部41Bに形成された斜面413a及び413bをそれぞれ押し上げる。これにより、第1突部31Bと第2突部41Bとは、互いに離間する方向に付勢され、それぞれ、壁21aと壁21bとに押し付けられるため、第1レンズ保持枠F1及び第2レンズ保持枠F2が直進溝21に沿って光軸OA方向に直進移動するときのガタが抑制される。
【0075】
(変形例3)
図11(A)は、変形例3に係る第1突部31Cと第2突部41Cとの配置例を示す図であり、
図11(B)は、
図11(A)のD-D線断面図である。
図11(A)に示すように、変形例3では、第2固定筒20が有する直進溝21は、突部211を有し、第1突部31Cと第2突部41Cとは、引張ばね88により接続されている。第1突部31Cはベアリング311を有し、突部211の一方の側壁部211aに当接する。また、第2突部41Cはベアリング411を有し、突部211の他方の側壁部211bに当接する。引張ばね88は、第1突部31C及び第2突部41Cを、第1突部31及び第2突部41が互いに近づく方向に付勢する。これにより、第1突部31Cが側壁部211aに押し付けられ、第2突部41Cが側壁部211bに押し付けられるため、第1レンズ保持枠F1及び第2レンズ保持枠F2が直進溝21に沿って光軸OA方向に直進移動するときのガタが抑制される。
【0076】
また、ラック603の構成は上記実施形態に限られるものではない。
図12(A)及び
図12(B)は、変形例に係るラック603Aを示す図である。
図12(A)に示すように、ラック603Aのラック本体611Aは、第1側壁部611aと、第2側壁部611bと、第1側壁部611aと第2側壁部611bとを接続する接続部611cと、を備え、第1側壁部611aと第2側壁部611bと接続部611cとは、1つの部材で構成されている。
【0077】
変形例では、第1側壁部611aが有する第1接触部613aの端部と第2側壁部611bが備える第2接触部613bの端部とが引張ばね612Aで接続されている。これにより、第1接触部613aと第2接触部613bとは、
図12(B)において、矢印A22で示されるように、互いに近づく方向に斜めに付勢される。これにより、第1接触部613aの内側に形成されたねじ山と第2接触部613bの内側に形成されたねじ山とがリードスクリュー602のねじ山と密着するため、ガタを抑制することができる。また、第1接触部613aと第2接触部613bとが略同一の力でリードスクリュー602に向かって付勢されるため、ラック本体611Aに反力が生じない。このため、第1レンズ保持枠F1に余計な力が働くことを抑制することができる。これにより、第1レンズ保持枠F1を第2固定筒20内でバランスよく保持することができる。
【0078】
上述した実施形態は好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能であり、任意の構成要件を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 カメラ
10 第1固定筒
20 第2固定筒
21 直進溝
21a,21b 壁
22 穴
31 第1突部
41 第2突部
50 ブロック
51 圧縮ばね
60 第1駆動源ユニット
70 第2駆動源ユニット
100 レンズ鏡筒
311,411,501 ベアリング
601,701 ステッピングモータ
602,702 リードスクリュー
603,703 ラック
611 ラック本体
611a 第1側壁部
611b 第2側壁部
611c 接続部
612 付勢部材
612A 引張ばね
613a 第1接触部
613b 第2接触部
F1 第1レンズ保持枠
F2 第2レンズ保持枠
L1 第1レンズ群
L2 第2レンズ群