(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】画像投影装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/00 20060101AFI20240618BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G03B21/00 F
H04N5/74 B
(21)【出願番号】P 2020145697
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】今井 重明
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】平川 真
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-230346(JP,A)
【文献】特開2016-080748(JP,A)
【文献】特開2017-015927(JP,A)
【文献】特開2015-138148(JP,A)
【文献】特表2009-538448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00
H04N 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を出射する光源と、
複数のマイクロミラーを有し、該複数のマイクロミラーが二次元に配置されることにより形成された面である画像表示面に対する前記各マイクロミラーの反射面の角度を変更することにより、前記照明光が前記反射面で反射した反射光の向きを変更する画像表示素子と、
前記画像表示素子により生成された前記反射光を投影画像として被投射面に投射する投射光学系と、
を備え、
前記画像表示面に対する前記マイクロミラーの前記反射面の最大傾角θ1は、下記の式(1)を満たし、
前記画像表示面の対角長L、および、前記投射光学系における前記画像表示面に最も近いレンズの面の頂点と前記画像表示面との該投射光学系の光軸上の距離BFは、下記の式(2)を満たす画像投影装置。
θ1≧14[deg] ・・・(1)
1.5<BF/L<2.2 ・・・(2)
【請求項2】
前記投射光学系における前記画像表示面に最も近いレンズの外径D、前記光軸と前記画像表示面を含む平面との交点と、該画像表示面上の点のうち前記交点から最も離れた点との距離ImC、および前記距離BFは、下記の式(3)を満たす請求項1に記載の画像投影装置。
(D/2-ImC)/BF<0.2 ・・・(3)
【請求項3】
前記投射光学系は、テレセントリックレンズである請求項1または2に記載の画像投影装置。
【請求項4】
前記投射光学系
内で光束が最も細くなる面よりも前記画像表示素子側に配置された視野絞りを、さらに備えた請求項1~3のいずれか一項に記載の画像投影装置。
【請求項5】
前記投射光学系と前記画像表示素子との間に配置された複数の光学素子を、さらに備え、
前記複数の光学素子の総厚T、および前記距離BFは、下記の式(4)を満たす請求項1~4のいずれか一項に記載の画像投影装置。
T/BF<0.7 ・・・(4)
【請求項6】
前記複数の光学素子は、前記光軸に対してチルトした平行平板を含む請求項5に記載の画像投影装置。
【請求項7】
前記画像表示素子に最も近いレンズ群を支持する支持部材に配置され、光を吸収する光線カット構造を、さらに備えた請求項1~6のいずれか一項に記載の画像投影装置。
【請求項8】
前記画像表示面の面積Mと、前記投射光学系の開口数NAとから、Et=M×π×NA
2により算出されるエタンデュEtは、下記の式(5)を満たす請求項1~7のいずれか一項に記載の画像投影装置。
Et<35[m
2・sr] ・・・(5)
【請求項9】
前記画像表示素子の中心は、前記投射光学系の光軸の延長線からオフセットされた請求項1~8のいずれか一項に記載の画像投影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、様々な映像を拡大投影するプロジェクタ(画像投射装置)が広く普及している。プロジェクタは、光源から出射された光をDMD(Digital Mirror Device)または液晶表示素子といった空間光変調素子(画像表示素子)に集光させ、映像信号に基づいて変調された空間光変調素子からの出射光(反射光)をスクリーン上にカラー映像として表示させる装置である。
【0003】
従来、プロジェクタには、主に高輝度の超高圧水銀ランプ等が用いられてきたが、寿命が短くメンテナンスを頻繁に行う必要があり、有害物質である水銀の使用を抑えて環境側面に関しても配慮する必要があるために、レーザ光源またはLED(Light Emitting Diode)光源等の固体光源の使用に移行しつつある。レーザ光源またはLED光源は、寿命が長く、その単色性により色再現性もよいため、今後超高圧水銀ランプを搭載したプロジェクタは特殊な用途でのみ使用されることとなり、市場の大部分のプロジェクタは固体光源に切り替わってくる。
【0004】
また、DMDの解像性能に関しても、従来のXGA(eXtended Graphics Array)から、SXGA(Super eXtended Graphics Array)と高画素化が進み、現在はフルHD(High Definition)から4Kに移りつつある。一部であるが8K等の製品も現れていて、近い将来4K、8Kが主流となると言われている。この4Kおよび8Kに対応するためには、上述した空間光変調素子の高解像化が不可欠である。高解像化のためには、空間光変調素子を構成する一つの画素サイズが同じであれば、画素数に応じて空間光変調素子のサイズを大きくする必要がある。当該サイズを大きくすると、そのサイズに応じて、投射レンズのイメージサークルを大きくする必要があり、投射レンズが大きくなる傾向となる。その結果、プロジェクタの肥大化につながる。
【0005】
一方、空間光変調素子のサイズの拡大を抑えながら、高解像化を実現する技術も開発されており、その中の技術の一つとして、いわゆる画素ずらしがある。例えば、画素ずらしは、投射光路中に平行平板を配置し、その平行平板を傾斜して投射光路をシフトすることによって実現される。しかしながら、この平行平板は有限の厚みあるため、空間光変調素子と投射レンズとの間に配置する場合、投射レンズのバックフォーカスを一定程度確保する必要があり、投射光学系全体の占める割合も大きくなる傾向がある。
【0006】
以上のように、空間光変調素子の高解像化に伴って、そのサイズが大きくなることに起因して投射光学系が大きくなること、また、画素ずらしを実現するための平行平板を配置するためにバックフォーカスを長くする必要があるので投射光学系の占める容積が増大し、プロジェクタが大きくなるという傾向がある。このように投射光学系が大きくなると、空間光変調素子のオフ光または迷光等が投射光学系に入り込み、コントラストが低下してしまうという問題がある。
【0007】
上述のようなオフ光および迷光に対処する技術として、二次元的に配列された複数のミラーの各々をオンとオフとの状態をとることにより変調画像を生成し、その画像を表示する画像表示装置において、オフ光の一部は、投射レンズの鏡筒の一部に設けた反射部で反射させて当該鏡筒の発熱を抑えたり、反射光が到達する先に光吸収部材で迷光を防ぐ技術が開示されている(例えば特許文献1)。
【0008】
また、オフ光の投影光学系内への入射を防止するために、DMDから照明光学系のDMD側の瞳までの距離と、DMDの光軸位置から最軸外位置までの距離と、DMDを構成しているマイクロミラーの回転角とを規定した技術が開示されている(例えば特許文献2)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、たとえ光吸収部材があったとしても100[%]完全に迷光を吸収することはなく、少なからず迷光は投射系に入り込むことになる。そもそも、オフ光を、鏡筒を含めた投射光学系に当てる前提の位置関係となっていて、オフ光を投射光学系に入り込むことを防ぐことはできず、コントラストを確保するには十分ではないという問題がある。また、空間光変調素子のサイズと投射光学系のバックフォーカスとの関係などは一切開示されていない。
【0010】
また、特許文献2に記載された技術では、照明光学系のF値が異なる場合、およびDMDの振れ角が異なる場合に関しては何ら開示しておらず、DMDの振れ角と投射光学系との関係に関しても何ら示唆しておらず、オフ光の投影光学系内への入り込みを防ぐ条件を定めてはいない。さらに、8K等の高精細の性能が必要となった場合の光学ユニットに求められる条件等の開示も示唆も全くなされていない。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、投影画像のコントラストを高めることができる画像投影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、照明光を出射する光源と、複数のマイクロミラーを有し、該複数のマイクロミラーが二次元に配置されることにより形成された面である画像表示面に対する前記各マイクロミラーの反射面の角度を変更することにより、前記照明光が前記反射面で反射した反射光の向きを変更する画像表示素子と、前記画像表示装置により生成された前記反射光を投影画像として被投射面に投射する投射光学系と、を備え、前記画像表示面に対する前記マイクロミラーの前記反射面の最大傾角θ1は、θ1≧14[deg]を満たし、前記画像表示面の対角長L、および、前記投射光学系における前記画像表示面に最も近いレンズの面の頂点と前記画像表示面との該投射光学系の光軸上の距離BFは、1.5<BF/L<2.2を満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、投影画像のコントラストを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る画像投影装置の全体構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、DMDの構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、DMDの画像表示面に対する入射角および方位角を説明する図である。
【
図4】
図4は、照明光がDMDに長辺方向から入射した場合の動作を説明する図である。
【
図5】
図5は、照明光がDMDに短辺方向から入射した場合の動作を説明する図である。
【
図6】
図6は、オン光の照度分布を説明する図である。
【
図8】
図8は、DMDのオン光とオフ光との関係を説明する図である。
【
図9】
図9は、DMDに対して投射光学系をオフセットした場合の動作を説明する図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態に係る画像投影装置の光線カット構造の位置の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態に係る画像投影装置の要部構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら、本発明に係る画像投影装置の実施形態を詳細に説明する。また、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではなく、以下の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想到できるもの、実質的に同一のもの、およびいわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下の実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換、変更および組み合わせを行うことができる。
【0016】
[第1の実施形態]
(画像投影装置の全体構成)
図1は、第1の実施形態に係る画像投影装置の全体構成の一例を示す図である。
図1を参照しながら、本実施形態に係る画像投影装置1の全体構成について説明する。
【0017】
図1に示すように、画像投影装置1は、光源から出射される照明光に基づいて、スクリーン等に画像を投影させるための画像光を生成する画像表示装置2と、当該画像光をスクリーン等に投影させる投射光学系40と、を備えている。
図1に示す光学系は、テレセントリック光学系である。
【0018】
画像表示装置2は、
図1に示すように、光源10と、防爆ガラス11と、カラーホイール12と、ライトトンネル13と、照明光学系20と、DMD30と、カバーガラス31と、を備えている。
【0019】
光源10は、例えばランプ光源である。防爆ガラス11は、光源10を保護するガラスである。カラーホイール12は、光源10から出射された照明光を所望の色(例えば赤、緑、青)に分離するホイール部材である。ライトトンネル13は、カラーホイール12を透過した照明光を照明光学系20へ導光する光学部材である。
【0020】
照明光学系20は、光源10から入射した照明光をDMD30へ導く光学系である。照明光学系20は、
図1に示すように、第1リレーレンズ21と、第2リレーレンズ22と、ミラー23と、第3リレーレンズ24と、第4リレーレンズ25と、全反射プリズム26と、を有る。
【0021】
第1リレーレンズ21および第2リレーレンズ22は、ライトトンネル13により導光された照明光を取り込み、ミラー23へ導くリレーレンズである。ミラー23は、第2リレーレンズ22から出射した照明光の向きを折り曲げる反射部材である。第3リレーレンズ24および第4リレーレンズ25は、ミラー23で反射された照明光を全反射プリズム26へ導くリレーレンズである。
【0022】
全反射プリズム26は、2つの三角柱状のプリズムが接合された光学部材である。全反射プリズム26は、入射する照明光を反射してDMD30へ向けて照射し、当該DMD30からの反射光を外部へ向けて出射する。
【0023】
DMD30は、反射型の画像表示素子であり、複数の可動ミラーが縦横に配列されて、矩形の画像表示面を形成している。DMD30は、個々の可動ミラーが所定の軸を中心に回転することにより、入射する照明光を特定の方向(投射光学系40へ向かう方向)に反射するオン光を生成する動作と、当該特定の方向とは異なる方向に反射するオフ光を生成する動作と、を切り替えることができる。本実施形態では、DMD30の個々の可動ミラーは、互いに異なる軸方向となっている第1回転軸および第2回転軸を有する。なお、DMD30の具体的な構成については、後述する。
【0024】
図1に示すように、DMD30は、
図1の紙面視において全反射プリズム26の下面側にカバーガラス31を介して配置されており、DMD30による反射光が全反射プリズム26の上面から出射する構成となっている。全反射プリズム26の上方に投射光学系40が配置されている。
【0025】
光源10から、照明光学系20およびDMD30までの各素子は、金属性またはプラスチック製のハウジングで保持されている。
【0026】
投射光学系40は、全反射プリズム26を介してDMD30から反射された反射光(オン光、画像光)を、スクリーン等に投射する光学系である。投射光学系40を構成する光学部材のうち、DMD30からの反射光が入射するレンズ、すなわち、最もDMD30側に配置されたレンズを、投射光学系第1レンズ41とする。投射光学系40の光軸をAとしている。投射光学系40は、鏡筒に収められ、上述のハウジングに固定されている。
【0027】
上述のように、光源10から出射した照明光は、防爆ガラス11、カラーホイール12、およびライトトンネル13を経て照明光学系20へ入射する。照明光は、照明光学系20内へ入射すると、第1リレーレンズ21、第2リレーレンズ22、ミラー23、第3リレーレンズ24、第4リレーレンズ25、および全反射プリズム26を経て、DMD30へ入射する。
【0028】
なお、上述のように、光源10はランプ光源であるものとしたが、これに限定されるものではなく、半導体レーザ光源またはLED(Light Emitting Diode)光源等であってもよい。
【0029】
(DMDの構成および動作)
図2は、DMDの構成の一例を示す図である。
図3は、DMDの画像表示面に対する入射角および方位角を説明する図である。
図4は、照明光がDMDに長辺方向から入射した場合の動作を説明する図である。
図5は、照明光がDMDに短辺方向から入射した場合の動作を説明する図である。
図2~
図5を参照しながら、DMD30の構成および動作について説明する。
【0030】
図2(a)に示すように、DMD30は、一辺が数[μm]~十数[μm]の微小な多数のマイクロミラーと称される可動ミラー32が縦横に配列されて、矩形の画像表示面を形成している。
図2(a)に示すDMD30では、可動ミラー32を間引いて図示している。実際にDMD30に配列されている可動ミラー32は、例えば、4096×2160というような数が配列されている。個々の可動ミラー32が画素になっている。各可動ミラー32は、通常、
図2(b)示すように正方形であり、当該正方形の一辺の長さは、例えば5.4[μm]である。DMD30の対角サイズは、例えば約25[mm]である。
【0031】
可動ミラー32は、一方向に傾き、または異なる方向に傾くことにより、入射する照明光を互いに異なる方向に反射する。DMD30に入射する照明光は、可動ミラー32が一方向に傾くと、全反射プリズム26および投射光学系40を経て、スクリーンに到達する。この場合の可動ミラー32による状態(オン状態)の反射光をオン光とする。一方、DMD30に入射する照明光は、可動ミラー32が異なる方向に傾くと、オン光とは異なる方向に反射され、全反射プリズム26を経て、投射光学系40から外れる方向に出射する。この場合の可動ミラー32による状態(オフ状態)の反射光をオフ光とする。
【0032】
全反射プリズム26は、構成する面への入射角の違いにより、反射か透過かを区別する。全反射プリズム26は、可動ミラー32で生成されるオン光に対しては投射光学系40に向かって透過させる。一方、全反射プリズム26は、可動ミラー32で生成されるオフ光に対しては投射光学系40から外れる向きに反射する。
【0033】
次に、可動ミラー32の動きについて説明する。可動ミラー32は、
図2(c)および
図2(d)に示すように、2つの回転軸を中心に回転して傾くことができる。
図2において、可動ミラー32の一辺と平行な方向をx方向、可動ミラー32の他辺と平行な方向であってx方向に直交する方向をy方向とする。
【0034】
図2(c)に示すように、可動ミラー32は、y方向と平行な回転軸を中心に回転して傾くことができる。このy方向と平行な回転軸を、上述の第1回転軸とする。可動ミラー32は、第1回転軸を中心に所定の回転方向(第1方向)に傾くことによって、DMD30に入射する照明光を所定の反射方向(第1反射方向)に反射してオン光を生成する。
【0035】
一方、
図2(d)に示すように、可動ミラー32は、x方向と平行な回転軸を中心に回転して傾くことができる。このx方向と平行な回転軸を、上述の第2回転軸とする。可動ミラー32は、第2回転軸を中心に第1方向とは異なる方向(第2方向)に傾くことによって、DMD30に入射する照明光を第1反射方向とは異なる第2反射方向に反射してオフ光を生成する。
【0036】
上述の第1回転軸および第2回転軸を中心として可動ミラー32が回転したときの、可動ミラー32の反射面のxy平面に対する回転角(傾き角)を、それぞれθ[°]とする。
【0037】
なお、可動ミラー32の第1回転軸および第2回転軸が、可動ミラー32の各辺と平行な軸であるものとしているが、これに限定されるものではない。例えば、矩形の可動ミラー32の対角を結ぶ線に沿った2つの軸を第1回転軸および第2回転軸としてもよい。
【0038】
次に、
図3を参照しながら、DMD30の画像表示面への入射角および方位角について説明する。画像投影装置1に用いる画像表示装置2の性能を評価する要素として、投射される画像(投影画像)の品質があり、その中でもコントラスト比すなわち明暗比がある。画像表示素子としてDMD30を用いた場合、オフ光が投射光学系40に侵入するとコントラストが低下し、投射される画像の品質が低下する。コントラストを決定する要素の一つに、可動ミラー32の法線に対する入射角がある。本実施形態では、入射角だけでなく、DMD30の画像表示面の辺に対してなす角度である方位角に関しても考慮している。
【0039】
DMD30の画像表示面とは、可動ミラー32が配列されることによって形成される面と定義する。この画像表示面に対する法線Nと入射光線IN(照明光)の成す角を入射角αと定義する。入射光線INと画像表示面の一辺であるy軸またはx軸に対して成す角を方位角φと定義する。
図3に示す例では、DMD30の長辺方向と平行な方向をy軸としている。
図3に示すように、入射光線IN、法線Nおよび出射光線OUT(反射光)は、同一平面内にある。また、画像表示面の法線Nは、投射光学系40の光軸A(
図1参照)と平行である。
【0040】
次に、
図4を参照しながら、DMD30の長辺方向(短辺に直交する方向)から照明光が入射した場合の動作について説明する。
【0041】
図4(a)は、DMD30の長辺方向(短辺に直交する方向)から照明光が入射する場合を示している。照明光は画像表示面の法線に対して、ある入射角をもって入射し、当該入射角と同じ出射角をもって出射する。
図4(b)および
図4(c)は、1つの可動ミラー32を拡大して示しており、
図4(b)はオフ光として反射する状態(オフ状態)、
図4(c)はオン光として反射する状態(オン状態)である。
図4(c)に示すように可動ミラー32がオン状態にある場合、可動ミラー32で反射されるオン光は、投射光学系40に入射する。
図4(b)に示すように可動ミラー32がオフ状態にある場合、可動ミラー32で反射されるオフ光は、オン状態の場合とは別の方向に反射される。
【0042】
図4(b)に示すように、可動ミラー32がオフ状態にあるとき、入射する照明光に方位角を持たせる。すなわち、画像表示面の一辺に対して入射する照明光に角度を持たせる。可動ミラー32がオフ状態になるために、y軸と平行な方向の第1回転軸を中心に回転したとき、可動ミラー32へ入射する照明光の入射角が小さくなる側への方位角の移動をプラス、反対側への方位角の移動をマイナスと定義する。
【0043】
次に、
図5を参照しながら、DMD30の短辺方向(長辺に直交する方向)から照明光が入射した場合の動作について説明する。
【0044】
図5(a)は、DMD30の短辺方向(長辺に直交する方向)から照明光が入射する場合を示している。
図5(b)および
図5(c)は、1つの可動ミラー32を拡大して示しており、
図5(b)はオン光として反射する状態(オン状態)、
図5(c)はオフ光として反射する状態(オフ状態)である。可動ミラー32がオフ状態になるために、x軸と平行な方向の第2回転軸を中心に回転したとき、可動ミラー32へ入射する照明光の入射角が小さくなる側への方位角の移動をプラス、反対側への方位角の移動をマイナスと定義する。
【0045】
なお、
図4および
図5に示す例において、方位角の最適値は光学設計によって求めてもよく、または調整手段を設けて調整によって最適値に調整するようにしてもよい。
【0046】
(DMDからのオン光とオフ光との関係)
図6は、オン光の照度分布を説明する図である。
図7は、オフ光の分布を説明する図である。
図8は、DMDのオン光とオフ光との関係を説明する図である。
【0047】
まず、
図6を参照しながら、幾何学的な光線追跡シミュレーションにより求めたオン光の照度分布について説明する。なお、可動ミラー32は
図4(c)に示すオン状態にあり、回転角θは17[°]であるものとする。DMD30の画像表示面にあるすべての可動ミラー32がオン状態であるいわゆる全白(フルオン)の状態である。
【0048】
この場合、投射光学系第1レンズ41の外径をDとすると、オン光の光束領域を示すオン光領域ONは、
図6に示すように、投射光学系第1レンズ41の外径D内に分布している。
図6に示す例は、入射角αを35.5[°]、方位角を0[°]とした場合において、投射光学系第1レンズ41の、DMD30側における曲面頂点に接する平面での照度分布を示している。具体的には、
図6において、x方向からの照度分布の断面と、y方向からの照度分布の断面とを示している。このような照度分布のDMD30から反射光が投射光学系40を経てスクリーンに投射される。
【0049】
次に、
図7を参照しながら、幾何光学的な光線追跡シミュレーションにより求めたオフ光の光束の領域であるオフ光領域OFFを示す。なお、可動ミラー32は
図4(b)に示すオフ状態にあり、回転角θは17[°]であるものとする。DMD30の画像表示面にあるすべての可動ミラー32がオフ状態であるすなわち全黒(フルオフ)の状態である。
【0050】
可動ミラー32のオン状態とオフ状態とでは、可動ミラー32の傾き方向が異なる。オフ状態では、オフ光領域OFFは、
図7の左斜め上側に移行し、オフ光は、投射光学系第1レンズ41に入射しない理想的な状態になる。したがって、オフ光はスクリーンには到達せず、完全な黒表示となる。
【0051】
DMD30のすべての可動ミラー32がオン状態である全白(フルオン)の場合のオン光の照度と、すべての可動ミラー32がオフ状態である全黒(フルオフ)の場合のオフ光の照度とのコントラスト比は、コントラスト比=(全白の照度)/(全黒の照度)として算出される。または、スクリーンを縦横それぞれ3等分して9分割したANSI(American National Standards Institute)によるコントラスト比も用いることができる。いずれにしても、全黒の照度が大きくなるほどコントラスト比は小さくなり、画質は劣化する。また、オフ光が投射光学系第1レンズ41に入射すると、ゴースト光としてスクリーン上またはスクリーン近傍に到達してしまうことがあり、この場合も画質は劣化する。したがって、投射光学系第1レンズ41にオフ光が入射しないようにする必要がある。
【0052】
(投射光学系について)
図8は、DMDのオン光とオフ光との関係を説明する図である。
図9は、DMDに対して投射光学系をオフセットした場合の動作を説明する図である。
図8および
図9を参照しながら、投射光学系40について説明する。
【0053】
プロジェクタである画像投影装置1に対して、ユーザからの要望として、小型化についての要望がある。この場合、投射光学系40の大きさを小さくすることは、画像投影装置1全体の小型化に対する寄与は大きい。
【0054】
投射光学系40の大きさを小さくする方法として、投射光学系40のF値を大きくするという方法がある。例えば、DMD30からの距離を同一とした場合、投射光学系40のF値を大きくすると、最もDMD30に近いレンズ(投射光学系第1レンズ41)の外径を小さくすることができる。また、上述したように、DMD30を用いる画像投影装置1では、投射光学系第1レンズ41にオフ光が入射しないようにする必要があるが、投射光学系40のF値を大きくすることにより、オフ光が分離可能となるDMD30からの距離を短くできるという効果も得られる。
【0055】
ここで、
図8を参照しながら、オフ光が分離可能となるDMD30からの距離について説明する。
【0056】
図8(a)は、F値の小さい(エタンデュの大きい)投射光学系40におけるDMD30で反射した反射光の光束の振る舞いを表す図である。
図8(a)において、実線でF値の小さい(エタンデュの大きい)投射光学系40に対応するオン光およびオフ光の光束を示し、一点鎖線でオン光およびオフ光の主光線のみ抽出した光束を示す。テレセントリックの場合、オン光の主光線の幅は、DMDの幅と一致する。投射光学系40は、オン光の主光線だけでなく、マージナル光線(周辺光線)等の周辺領域の光線も取り込んでスクリーンに投射する。投射光学系40は、F値が小さくなる(エタンデュが大きくなる)とオン光の主光線からより離れた領域まで取り込み、F値が大きくなる(エタンデュが小さくなる)とオン光の主光線により近い領域のみを取り込むことになる。
【0057】
図8(b)は、投射光学系40のF値の大小(エタンデュの大小)によるオン光とオフ光とが分離可能になる高さの変化を説明する図である。
図8(b)において、実線でF値の大きい(エタンデュの小さい)投射光学系40に対応するオン光の光束を示し、点線でF値の小さい(エタンデュの大きい)投射光学系40に対応するオン光の光束を示す。
図8(b)に示すように、DMD30からの距離が等しい位置において、F値の小さい投射光学系40に対応する光束よりも、F値の大きい投射光学系40に対応する光束の方が、狭いことがわかる。このため、オン光とオフ光とが分離可能になるDMD30からの距離は、F値の大きい場合の方が短い。したがって、投射光学系40のF値を大きくすることによって、DMD30から投射光学系第1レンズ41までの距離を短くでき、コントラスト向上と小型化とを両立したプロジェクタを得られる。
【0058】
次に、
図9を参照しながら、投射光学系40のオフセットについて説明する。カメラ(撮像装置)の光学系と異なり、プロジェクタの光学系では、通常、DMD等の画像表示素子の中心を投射光学系の光軸の延長線からオフセットする。これは、画像表示素子の中心を投射光学系の光軸の延長線と一致させた場合、プロジェクタを机等に置いて投影すると投影領域が机等で遮光されてしまうからである。これを避けるために、ユーザはプロジェクタ前方を上方に傾ける必要があり、使い勝手が悪い。一方、画像表示素子の中心を投射光学系の光軸の延長線から下方にオフセットすると、共役関係により投影領域は投射光学系の光軸に対して上方にシフトするので、投影領域が机等で遮光されることがなく、ユーザの利便性が高まる。したがって、画像表示素子の中心を投射光学系の光軸の延長線からオフセットするのが通常である。
【0059】
本実施形態において、投射光学系40の最もDMD30に近いレンズである投射光学系第1レンズ41の光軸(すなわち投射光学系40の光軸)をAとし、光軸AとDMD30の画像表示面Sを含む平面との交点を点Oとし、DMD30の画像表示面S上の任意の点をPとする。また、任意の点Pのうち点Oから最も離れた点をP0とし、光軸Aと点P0との距離をImCとしたとき、投射光学系40に必要なイメージサークルの大きさは、光軸Aを中心とし、半径を距離ImCとする円となる。画像表示面S上のすべての点が投射光学系40のイメージサークル内に存在する必要があるためである。しかし、DMD30に対する投射光学系40のオフセット量が大きすぎると画像表示面Sのうち投射光学系40の光軸Aから最も離れた点P0を含めるために必要な投射光学系40のイメージサークルの大きさ(すなわち距離ImCの大きさ)が大きくなってしまう。したがって、最もDMD30に近い投射光学系第1レンズ41をはじめとして、投射光学系40全体の大型化を招くので適切に設定する必要がある。
【0060】
(コントラストを向上させる条件式について)
以下、投射光学系40の投影画像のコントラストを向上させる条件式について説明する。
【0061】
本実施形態に係る画像投影装置1において、DMD30の画像表示面に対する可動ミラー32の反射面の最大傾角をθ1とし、画像表示面の対角長をLとし、投射光学系40における画像表示面に最も近い投射光学系第1レンズ41の面の頂点と画像表示面との光軸A上の距離をBFとしたとき、下記の条件式(1)および(2)を満たすことが望ましい。
【0062】
θ1≧14[deg] ・・・(1)
1.2<BF/L<2.2 ・・・(2)
【0063】
条件式(1)は、可動ミラー32の傾斜角(回転角θ)の最適な範囲を示している。DMD30においては可動ミラー32の傾斜により、オン光とオフ光とに分けるが、傾斜角(回転角θ)が小さいと、オン光とオフ光とを十分に分離できず、オフ光が投射光学系40に入射して迷光となり、コントラストの低下を引き起こしてしまう。そこで、条件式(1)を満たすことにより、オフ光が投射光学系40に入射しにくくできる。
【0064】
条件式(2)は、画像投影装置1の小型化、ならびに、オフ光および当該オフ光の回折光が投射光学系40に入射することによるコントラストの低下の低減を両立させるための式である。BF/Lが条件式(2)の上限値を上回ると、オフ光の投射光学系40への入射を妨げることが可能となるが、バックフォーカスが大きくなることにより、画像投影装置1が大型化するだけでなく、DMD30に最も近いレンズ(投射光学系第1レンズ41)が大きくなることにより、回折光および照明光学系20のメカ部材等からの迷光が投射光学系40に入射してしまいコントラストの低下を起こしてしまう。また、BF/Lが条件式(2)の下限値を下回ると、画像投影装置1を小型化することができるが、オフ光とオン光とを十分に分離することができなくなる。そこで、条件式(1)および(2)を同時に満たすことにより、オン光とオフ光とを十分に分離し、投射光学系40内への迷光を最小限に抑え、投影画像のコントラストを向上させ、画像投影装置1を大幅に小型化することが可能となる。
【0065】
さらに好ましくは、下記の条件式(2a)を満たすことが望ましい。
【0066】
1.2<BF/L< 1.9 ・・・(2a)
【0067】
この条件式(2a)を満たすことにより、さらにコントラストを向上させることが可能になる。
【0068】
さらに好ましくは、下記の条件式(2b)を満たすことが望ましい。
【0069】
1.4<BF/L<1.8 ・・・(2b)
【0070】
この条件式(2b)を満たすことにより、投射光学系40の支持部材の遮光部材等について複雑な形状とする必要がなくなり、低コスト化することができる。
【0071】
さらに好ましくは、投射光学系40の画像表示面に最も近い投射光学系第1レンズ41の外径をDとし、点O(
図9参照)と点P(
図9参照)との距離が最大になる点をP0とし、その距離をImCとしたとき、下記の条件式(3)を満たすことが望ましい。
【0072】
(D/2-ImC)/BF<0.2 ・・・(3)
【0073】
条件式(3)は、画像表示面に最も近い投射光学系第1レンズ41の外径Dの最適な範囲を示した式である。外径Dをなるべく大きくすることにより、画像投影装置1の光利用効率を上げることができるが、同時に、コントラストの低下を招いてしまうため、上述の条件式(1)および(2)と併せて最適な範囲とする必要がある。(D/2-ImC)/BFが条件式(3)の上限値を上回ると、上述した通り、オフ光、回折光、およびメカ部材等からの迷光が投射光学系40に入射し、コントラストの低下を招いてしまう。
【0074】
さらに好ましくは、下記の条件式(3a)を満たすことが望ましい。
【0075】
(D/2-ImC)/BF<0.18 ・・・(3a)
【0076】
この条件式(3a)を満たすことにより、さらにコントラストを向上させることが可能になる。
【0077】
さらに好ましくは、下記の条件式(3b)を満たすことが望ましい。
【0078】
-0.5<(D/2-ImC)/BF<0.15 ・・・(3b)
【0079】
さらに好ましくは、投射光学系40がテレセントリックレンズであることが望ましい。テレセントリックレンズとすることにより、効率のよい照明系を選択することが可能となる。
【0080】
さらに好ましくは、投射光学系40の開口絞りよりもDMD30側に視野絞りを配置することが望ましい。開口絞り(投射光学系40内で光束が最も細くなる面)よりもDMD30側に視野絞りを配置することによって、上光線をカットすることができるため、投射光学系40における高い像高でのコマ収差の低減をすることが可能になる。これによって、高解像度化することができるだけでなく、特にミラーを用いた超短焦点レンズにおいては、最も拡大側にあるミラーにより反射された光とレンズとの干渉を回避しやすくなるため、小型化することが可能になる。さらに、視野絞りにより、迷光および回折光等をカットすることができるため、コントラストを向上させることが可能となる。
【0081】
さらに好ましくは、投射光学系40とDMD30との間に複数の光学素子を有し、当該複数の光学素子の総厚をTとしたときに、下記の条件式(4)を満たすことが望ましい。
【0082】
T/BF<0.7 ・・・(4)
【0083】
条件式(4)は、バックフォーカスに占める光学素子の厚みの割合を示す条件式である。T/BFが条件式(4)の上限値を上回ると、DMD30に最も近い投射光学系第1レンズ41の位置において、オフ光が分離できなくなってしまうため、コントラストの低下を招く。そこで、条件式(4)を満たすことにより、短いバックフォーカスでもオフ光を十分に分離することが可能となり、コントラストが向上する。
【0084】
さらに好ましくは、上述の複数の光学素子のうち1つの光学素子が平行平板であり、駆動素子によって光軸Aに対してチルトすることが望ましい。平行平板をチルトすることにより、光路を平行移動させることができ、画素ずらしを実現することにより高解像度化をすることが可能となる。
【0085】
さらに好ましくは、
図10に示すように、DMD30に一番近いレンズ群のレンズ支持部材42のオフ光および回折光が入射する位置に、当該オフ光および回折光等の光を吸収する光線カット構造43を配置することが望ましい。ここで、レンズ群とは、上述の開口絞りからDMD30までの間の1つまたは複数のレンズのことを指す。これによって、光利用効率を落とさずに、コントラストを向上させることが可能になる。なお、光線カット構造43は、レンズ支持部材42に一体化されている必要はなく、別部材として組み込まれていてもよい。
【0086】
さらに好ましくは、下記の条件式(5)を満たすことが望ましい。
【0087】
Et<35[mm2・sr] ・・・(5)
【0088】
この条件式(5)におけるEtはエタンデュであり、DMD30の画像表示面の面積をMとし、投射光学系40の開口数NAを用いて、以下の式(6)で求められる。
【0089】
Et=M×π×NA2 ・・・(6)
【0090】
条件式(5)は、光源10および照明光学系20のエタンデュを規定した式である。条件式(5)と共に、条件式(4)、(1)および(2)を同時に満たすことにより、短いバックフォーカスでオン光とオフ光とを十分に分離し、回折光等の投射光学系40への入射を低減させることができ、コントラスト向上および画像投影装置1の小型化を両立させることが可能になる。
【0091】
さらに好ましくは、下記の条件式(5a)を満たすことが望ましい
【0092】
Et<20[mm2・sr] ・・・(5a)
【0093】
さらに好ましくは、下記の条件式(5b)を満たすことが望ましい。
【0094】
Et<17[mm2・sr] ・・・(5b)
【0095】
以上のように、本実施形態に係る画像投影装置1では、条件式(1)および(2)を満たすことにより、オン光とオフ光とを十分に分離し、投射光学系40内への迷光を最小限に抑え、投影画像のコントラストを向上させ、画像投影装置1を大幅に小型化することが可能となる。すなわち、迷光を最小限に抑え、投影画像のコントラストを向上させることができるとともに、従来技術には課題としてとらえられていなかった装置の小型化に着目し、投射光学系40のバックフォーカスを規定することにより、投射光学系40の小型化に寄与することが可能となり、それによって画像投影装置1の大幅な小型化が可能となる。
【0096】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る画像投影装置について、第1の実施形態に係る画像投影装置1と相違する点を中心に説明する。第1の実施形態では、光源10をランプ光源とする構成を説明した。本実施形態では、光源に半導体レーザを用いた構成について説明する。
【0097】
図11は、第2の実施形態に係る画像投影装置の要部構成の一例を示す図である。
図11を参照しながら、本実施形態に係る画像投影装置1の要部構成について説明する。
【0098】
本実施形態に係る画像投影装置1の画像表示装置2は、
図11に示すように、光源10aと、コリメータレンズ14と、第1レンズ群15と、ダイクロイックミラー16と、第2レンズ群17と、蛍光体ホイール18と、第3レンズ群19と、を備えている。光源10aから照射される照明光の伝搬方向に、この順で配置された構成となっている。また、画像表示装置2は、さらに、上述の第1の実施形態と同様に、カラーホイール12と、ライトトンネル13と、照明光学系20と、DMD30と、カバーガラス31と、を備えている。なお、
図11では簡略化のため、照明光学系20、DMD30およびカバーガラス31の図示を省略している。
【0099】
光源10aは、半導体レーザに基づく複数の固体光源である。光源10aは、後述する蛍光体ホイール18が備える蛍光体を励起させる励起光Bとして、例えば発光強度の中心波長が455[nm]の青色帯域の光を出射する。光源10aから出射される青色レーザ光は、偏光状態が一定の直線偏光であり、後述するダイクロイックミラー16に対してS偏光となるように配置されている。なお、光源10aが出射する励起光Bは、蛍光体ホイール18の蛍光体を励起させることができる波長の光であれば、他の波長帯域の光であってもよい。また、
図11に示すように、光源10aは複数の固体光源としているが、これに限定されるものではなく、単一の固体光源であってもよい。また、複数の固体光源とする場合、基板上にアレイ状に配置した光源ユニットを使用してもよいが、これに限定されるものではない。
【0100】
コリメータレンズ14は、各光源10aから出射された照明光である励起光Bを略平行光とするレンズである。第1レンズ群15は、コリメータレンズ14により略平行光とされた励起光Bをダイクロイックミラー16へ導くレンズ群である。
【0101】
ダイクロイックミラー16は、平行平板形状のガラス板であり、入射面において励起光Bの波長帯域を反射し、蛍光体ホイール18により発生する蛍光光を透過させるようなコートが施されている。また、ダイクロイックミラー16により反射された励起光Bは、第2レンズ群17の光軸に対してシフトされている。
【0102】
第2レンズ群17は、ダイクロイックミラー16により反射された励起光Bを、
図11に示すように、蛍光体ホイール18の法線に対して傾いた状態で当該蛍光体ホイール18に入射するようにするレンズ群である。
【0103】
蛍光体ホイール18は、第2レンズ群17から入射された励起光Bを、蛍光体により蛍光光にする部材である。蛍光体ホイール18により射出された蛍光光は、再び第2レンズ群17を通過することにより略平行光となり、当該第2レンズ群17の光軸に対してダイクロイックミラー16の反対側を通過し、第3レンズ群19へ入射する。第3レンズ群19は、第2レンズ群17を通過した蛍光体ホイール18からの蛍光光を、カラーホイール12へ集光させるレンズ群である。
【0104】
カラーホイール12は、第1の実施形態で上述したように、光源10aから出射された照明光を所望の色(例えば赤、緑、青)に分離するホイール部材である。ライトトンネル13は、第1の実施形態で上述したように、カラーホイール12を透過した照明光を照明光学系20へ導光する光学部材である。
【0105】
なお、ライトトンネル13以降の構成は、第1の実施形態に係る構成と同様である。
【0106】
以上のように、本実施形態に係る画像投影装置1では、半導体レーザによる固体光源とした光源10aを用いて画像表示装置2が構成されている。このように構成によっても、第1の実施形態の効果と同様に、オン光とオフ光とを十分に分離し、投射光学系40内への迷光を最小限に抑え、投影画像のコントラストを向上させ、画像投影装置1を大幅に小型化することが可能となる。
【実施例】
【0107】
上述の第1の実施形態および第2の実施形態に係る画像投影装置1において、最大傾角θ1、距離BF、対角長L、外径D、距離ImC、総厚T、およびエタンデュEtの具体的な数値を、下記の(表1)に、実施例1~実施例5として示す。
【0108】
【0109】
なお、上述の各パラメータの数値は、上記の(表1)に記載された数値に限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。
【0110】
上述の各パラメータの数値を上記の(表1)とすることにより、上述の条件式(1)~(5)における各数式の値は、下記の(表2)に示した値となる。
【0111】
【0112】
上記の(表2)示すように、(表1)のような各パラメータの値とすることによって、実施例1~実施例5のいずれにおいても、条件式(1)~(5)のいずれも満たすことになり、コントラスト向上および小型化を両立した画像投影装置1を得ることができる。
【符号の説明】
【0113】
1 画像投影装置
2 画像表示装置
10、10a 光源
11 防爆ガラス
12 カラーホイール
13 ライトトンネル
14 コリメータレンズ
15 第1レンズ群
16 ダイクロイックミラー
17 第2レンズ群
18 蛍光体ホイール
19 第3レンズ群
20 照明光学系
21 第1リレーレンズ
22 第2リレーレンズ
23 ミラー
24 第3リレーレンズ
25 第4リレーレンズ
26 全反射プリズム
30 DMD
31 カバーガラス
32 可動ミラー
40 投射光学系
40a レンズ群
41 投射光学系第1レンズ
42 レンズ支持部材
43 光線カット構造
A 光軸
D 外径
ImC 距離
IN 入射光線
N 法線
O 点
OFF オフ光領域
ON オン光領域
OUT 出射光線
P、P0 点
PA 投影領域
S 画像表示面
α 入射角
θ 回転角
θ1 最大傾角
φ 方位角
【先行技術文献】
【特許文献】
【0114】
【文献】特開2017-032964号公報
【文献】特許第4016538号公報