(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ペプチド化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/08 20060101AFI20240618BHJP
C07K 1/06 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
C07F7/08 G CSP
C07F7/08 F
C07K1/06
(21)【出願番号】P 2021543000
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2020032343
(87)【国際公開番号】W WO2021039901
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2019158350
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】長屋 昭裕
(72)【発明者】
【氏名】半田 道玄
(72)【発明者】
【氏名】三森 雄二
【審査官】宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/069978(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/038650(WO,A1)
【文献】特開昭52-102229(JP,A)
【文献】LIANG, Huan et al.,Di-tert-butylisobutylsilyl, another useful protecting group,Org Lett.,2011年,Vol.13,No.15,p.4120-4123
【文献】CHAO, Hann-Guang et al.,Synthesis and Application of Bis-Silylethyl-Derived Phosphate-Protected Fmoc-Phosphotyrosine Derivat,J. Org. Chem.,1994年,59,p.6687-6691
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F,C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(1)及び(2):
(1) 式(I):
【化1】
[式中、
Yは、N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドの残基を表し、
R
1、R
2及びR
3は、互いに独立して、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基(該脂肪族炭化水素基中の1乃至5つのメチレン基は、互いに独立して、-O-、-CO-、-N(R
6)-、-N(R
7)CO-、-CON(R
8)-からなる群から選ばれる構造で置き換えられていてもよい)又は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基を表し、
R
6、R
7及びR
8は、互いに独立して、水素原子又はC
1-6アルキル基を表し、
R
1R
2R
3Si基中の炭素原子の総数は、18乃至80であり、
R
1R
2R
3SiCH
2CH
2基は、Y中のアミノ酸又はペプチド残基のC末端と結合している]
で表されるアミノ酸又はペプチド化合物のN末端保護基を除去する工程、及び
(2) 工程(1)で得られたC-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドのN末端に、N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドを縮合させる工程
を含む、ペプチドの製造方法。
【請求項2】
下記工程(1)及び(2):
(1) 式(I):
【化2】
[式中、
Yは、N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドの残基を表し、
R
1、R
2及びR
3は、互いに独立して、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基(該脂肪族炭化水素基中の1乃至5つのメチレン基は、互いに独立して、-O-、-CO-、-N(R
6)-、-N(R
7)CO-、-CON(R
8)-からなる群から選ばれる構造で置き換えられていてもよい)を表し、
R
6、R
7及びR
8は、互いに独立して、水素原子又はC
1-6アルキル基を表し、
R
1R
2R
3Si基中の炭素原子の総数は、18乃至80であり、
R
1R
2R
3SiCH
2CH
2基は、Y中のアミノ酸又はペプチド残基のC末端と結合している]
で表されるアミノ酸又はペプチド化合物のN末端保護基を除去する工程、及び
(2) 工程(1)で得られたC-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドのN末端に、N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドを縮合させる工程
を含む、ペプチドの製造方法。
【請求項3】
R
1、R
2及びR
3のうち少なくとも一つが、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基(該脂肪族炭化水素基中の1つのメチレン基は、-O-で置き換えられていてもよく、該脂肪族炭化水素基中の炭素原子の内、3つ以上が3級又は4級の炭素原子である)である、請求項1に記載のペプチドの製造方法。
【請求項4】
R
1、R
2及びR
3のうち少なくとも一つが、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基(該脂肪族炭化水素基中の1つのメチレン基は、-O-で置き換えられていてもよく、該脂肪族炭化水素基中の炭素原子の内、3つ以上が3級又は4級の炭素原子である)である、請求項2に記載のペプチドの製造方法。
【請求項5】
置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基(該脂肪族炭化水素基中の1つのメチレン基は、-O-で置き換えられていてもよく、該脂肪族炭化水素基中の炭素原子の内、3つ以上が3級又は4級の炭素原子である)における脂肪族炭化水素基が、C
15-40アルキル基である、請求項3又は4に記載のペプチドの製造方法。
【請求項6】
R
1及びR
2が、それぞれ独立して、C
1-6アルキル基である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のペプチドの製造方法。
【請求項7】
R
1及びR
2が、それぞれ独立して、置換基を有してもよいフェニル基である、請求項1又は3に記載のペプチドの製造方法。
【請求項8】
R
1及びR
2が、フェニル基である、請求項7に記載のペプチドの製造方法。
【請求項9】
R
1、R
2及びR
3のうち少なくとも一つが、芳香族炭化水素基(該芳香族炭化水素基は、C
15-40アルコキシ基で置換されている)である、請求項1に記載のペプチドの製造方法。
【請求項10】
R
1及びR
2が、それぞれ独立して、C
1-6アルキル基である、請求項9に記載のペプチドの製造方法。
【請求項11】
R
1及びR
2が、それぞれ独立して、置換基を有してもよいフェニル基である、請求項9に記載のペプチドの製造方法。
【請求項12】
R
1及びR
2が、フェニル基である、請求項11に記載のペプチドの製造方法。
【請求項13】
R
3が、下記式(II):
【化3】
[式中、R
4は、C
15-20アルキル基を表す]
である、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のペプチドの製造方法。
【請求項14】
R
3が、下記式(II’):
【化4】
[式中、R
4は、C
15-20アルキル基を表す]
である、請求項9乃至12のいずれか1項に記載のペプチドの製造方法。
【請求項15】
R
4中の炭素原子の内、3つ以上が3級又は4級の炭素原子である、請求項13又は14に記載のペプチドの製造方法。
【請求項16】
R
1R
2R
3Si基が、下記式(III):
【化5】
である、請求項15に記載のペプチドの製造方法。
【請求項17】
R
1R
2R
3Si基が、下記式(III’):
【化6】
である、請求項15に記載のペプチドの製造方法。
【請求項18】
R
1R
2R
3Si基が、下記式(III’’):
【化7】
である、請求項15に記載のペプチドの製造方法。
【請求項19】
R
1R
2R
3Si基が、下記式(III’’’):
【化8】
である、請求項15に記載のペプチドの製造方法。
【請求項20】
さらに、工程(2)で得られたペプチドのC末端保護基を除去する工程を含む、請求項1乃至19のいずれか1項に記載のペプチドの製造方法。
【請求項21】
さらに、工程(2)で得られたペプチドのC末端保護基をフッ素化剤で除去する工程を含む、請求項1乃至19のいずれか1項に記載のペプチドの製造方法。
【請求項22】
R
1R
2R
3Si基中の炭素原子の総数が、20乃至80である、請求項1乃至21のいずれか1項に記載のペプチドの製造方法。
【請求項23】
R
1R
2R
3Si基中の炭素原子の総数が、20乃至40である、請求項1乃至21のいずれか1項に記載のペプチドの製造方法。
【請求項24】
N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドのN末端保護基が、ベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメトキシカルボニル基又はt-ブトキシカルボニル基である、請求項1乃至23のいずれか1項に記載のペプチドの製造方法。
【請求項25】
アミノ酸又はペプチドがα-アミノ酸で構成される、請求項1乃至24のいずれか1項に記載のペプチドの製造方法。
【請求項26】
式(IV):
【化9】
[式中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、C
1-6アルキル基を表し、R
3は、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基(該脂肪族炭化水素基中の1乃至5つのメチレン基は、互いに独立して、-O-、-CO-、-N(R
6)-、-N(R
7)CO-、-CON(R
8)-からなる群から選ばれる構造で置き換えられていてもよく、該脂肪族炭化水基中の炭素原子の内、3つ以上が3級又は4級の炭素原子である)を表し、
R
6、R
7及びR
8は、互いに独立して、水素原子又はC
1-6アルキル基を表し、
R
1R
2R
3Si基中の炭素原子の総数は、18乃至80である]
で表される化合物。
【請求項27】
式(IV):
【化10】
[式中、
R
1及びR
2は、フェニル基を表し、R
3は、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基(該脂肪族炭化水素基中の1乃至5つのメチレン基は、互いに独立して、-O-、-CO-、-N(R
6)-、-N(R
7)CO-、-CON(R
8)-からなる群から選ばれる構造で置き換えられていてもよく、該脂肪族炭化水基中の炭素原子の内、3つ以上が3級又は4級の炭素原子である)を表し、
R
6、R
7及びR
8は、互いに独立して、水素原子又はC
1-6アルキル基を表し、
R
1R
2R
3Si基中の炭素原子の総数は、18乃至80である]
で表される化合物。
【請求項28】
置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基(該脂肪族炭化水素基中の1乃至5つのメチレン基は、互いに独立して、-O-、-CO-、-N(R
6)-、-N(R
7)CO-、-CON(R
8)-からなる群から選ばれる構造で置き換えられていてもよく、該脂肪族炭化水基中の炭素原子の内、3つ以上が3級又は4級の炭素原子である)における脂肪族炭化水素基が、C
15-40アルキル基である、請求項26又は27に記載の化合物。
【請求項29】
式(IV):
【化11】
[式中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立してC
1-6アルキル基又はフェニル基を表し、R
3は、フェニル基(該フェニル基は、C
15-40アルコキシ基で置換されている)を表し、
R
1R
2R
3Si基中の炭素原子の総数は、18乃至80である]
で表される化合物。
【請求項30】
R
3が、下記式(II):
式(II)
【化12】
[式中、R
4は、C
15-20アルキル基を表す]
である、請求項26乃至28のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項31】
R
3が、下記式(II’):
【化13】
[式中、R
4は、C
15-20アルキル基を表す]
である、請求項29に記載の化合物。
【請求項32】
R
4中の炭素原子の内、3つ以上が3級又は4級の炭素原子である、請求項30又は31に記載の化合物。
【請求項33】
R
1R
2R
3Si基中の炭素原子の総数が、20乃至40である、請求項26乃至32のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項34】
下記式(V)で表される化合物。
【化14】
【請求項35】
下記式(V’)で表される化合物。
【化15】
【請求項36】
下記式(V’’)で表される化合物。
【化16】
【請求項37】
下記式(V’’’)で表される化合物。
【化17】
【請求項38】
請求項26乃至37のいずれか1項に記載の化合物を含む、アミノ酸又はペプチド中のカルボキシ基を保護するための試薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸又はペプチドのカルボキシ基の保護剤として有用な新規シリル化合物及び当該化合物を用いるペプチドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチドの液相合成においては、ペプチド結合を形成する縮合反応、続くペプチド鎖伸長に伴う一時保護基の脱保護反応を溶液中で行う必要があり、さらに精製を容易に行うためには、生成物が有機溶媒に可溶であることが求められる。
近年では、このような液相でのペプチド合成及び精製を容易にする方法として、オキシアルキレン基を介したトリアルキルシリルオキシ基を有する化合物や、分岐鎖含有芳香族化合物を保護基として使用する方法が報告されている(例えば、特許文献1、2)。
また、トリメチルシリルエチル基等は、ペプチドのカルボキシ基の保護に用いられ、N末端の一時保護基(例えば、ベンジルオキシカルボニル基、フルオレニルメチルオキシカルボニル基、t-ブチルオキシカルボニル基など)の脱離条件で結合が維持され、テトラブチルアンモニウムフルオリドなどのフッ素化剤で、側鎖保護基を維持したまま選択的に脱離することが知られている(例えば、特許文献3、非特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/038650号
【文献】国際公開第2012/029794号
【文献】特開昭52-102229号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】オーガニック レターズ、2018年、20巻、6166-6169頁
【文献】テトラへドロン レターズ、2004年、45巻、3585-3588頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1又は2に記載のC末端保護基は、酸性条件下で脱保護されるため、N末端一時保護基の使用に制限があり、N末端一時保護基がFmoc基以外の条件については検討されていなかった。
また、本発明者らが確認したところ、上記特許文献3、非特許文献1又は2に記載されている、トリメチルシリルエチル基で保護されたペプチド化合物は、有機溶媒への溶解性が低く、液相によるペプチド合成において、反応後の化合物の分離、精製が困難であることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者らは鋭意検討した結果、三置換シリルエチル基において、三置換部分の少なくとも一つを長鎖アルキル基又は芳香族炭化水素基とすることで、三置換シリルエチル基でC末端が保護されたアミノ酸又はペプチド化合物が有機溶媒に溶解し易くなることを見出した。さらに上記三置換シリルエチル基が、N末端一時保護基の脱保護条件では維持され、置換基部分が嵩高くなることによる反応性の低下を招くことなく、選択的に脱保護されることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下を特徴とするものである。
【0007】
[1]
下記工程(1)及び(2):
(1) 式(I):
【化1】
[式中、
Yは、N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドの残基を表し、
R
1、R
2及びR
3は、互いに独立して、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基(該脂肪族炭化水素基中の1乃至5つのメチレン基は、互いに独立して、-O-、-CO-、-N(R
6)-、-N(R
7)CO-、-CON(R
8)-からなる群から選ばれる構造で置き換えられていてもよい)又は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基を表し、
R
6、R
7及びR
8は、互いに独立して、水素原子又はC
1-6アルキル基を表し、
R
1R
2R
3Si基中の炭素原子の総数は、18乃至80であり、
R
1R
2R
3SiCH
2CH
2基は、Y中のアミノ酸又はペプチド残基のC末端と結合している]
で表されるアミノ酸又はペプチド化合物のN末端保護基を除去する工程、及び
(2) 工程(1)で得られたC-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドのN末端に、N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドを縮合させる工程
を含む、ペプチドの製造方法。
【0008】
[2]
下記工程(1)及び(2):
(1) 式(I):
【化2】
[式中、
Yは、N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドの残基を表し、
R
1、R
2及びR
3は、互いに独立して、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基(該脂肪族炭化水素基中の1乃至5つのメチレン基は、互いに独立して、-O-、-CO-、-N(R
6)-、-N(R
7)CO-、-CON(R
8)-からなる群から選ばれる構造で置き換えられていてもよい)を表し、
R
6、R
7及びR
8は、互いに独立して、水素原子又はC
1-6アルキル基を表し、
R
1R
2R
3Si基中の炭素原子の総数は、18乃至80であり、
R
1R
2R
3SiCH
2CH
2基は、Y中のアミノ酸又はペプチド残基のC末端と結合している]
で表されるアミノ酸又はペプチド化合物のN末端保護基を除去する工程、及び
(2) 工程(1)で得られたC-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドのN末端に、N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドを縮合させる工程
を含む、ペプチドの製造方法。
【0009】
[3]
R1、R2及びR3のうち少なくとも一つが、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基(該脂肪族炭化水素基中の1つのメチレン基は、-O-で置き換えられていてもよく、該脂肪族炭化水素基中の炭素原子の内、3つ以上が3級又は4級の炭素原子である)である、[1]に記載のペプチドの製造方法。
【0010】
[4]
R1、R2及びR3のうち少なくとも一つが、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基(該脂肪族炭化水素基中の1つのメチレン基は、-O-で置き換えられていてもよく、該脂肪族炭化水素基中の炭素原子の内、3つ以上が3級又は4級の炭素原子である)である、[2]に記載のペプチドの製造方法。
【0011】
[5]
置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基(該脂肪族炭化水素基中の1つのメチレン基は、-O-で置き換えられていてもよく、該脂肪族炭化水素基中の炭素原子の内、3つ以上が3級又は4級の炭素原子である)における脂肪族炭化水素基が、C15-40アルキル基である、[3]又は[4]に記載のペプチドの製造方法。
【0012】
[6]
R1及びR2が、それぞれ独立して、C1-6アルキル基である、[1]乃至[5]のいずれか1つに記載のペプチドの製造方法。
【0013】
[7]
R1及びR2が、それぞれ独立して、置換基を有してもよいフェニル基である、[1]又は[3]に記載のペプチドの製造方法。
【0014】
[8]
R1及びR2が、フェニル基である、[7]に記載のペプチドの製造方法。
【0015】
[9]
R1、R2及びR3のうち少なくとも一つが、芳香族炭化水素基(該芳香族炭化水素基は、C15-40アルコキシ基で置換されている)である、[1]に記載のペプチドの製造方法。
【0016】
[10]
R1及びR2が、それぞれ独立して、C1-6アルキル基である、[9]に記載のペプチドの製造方法。
【0017】
[11]
R1及びR2が、それぞれ独立して、置換基を有してもよいフェニル基である、[9]に記載のペプチドの製造方法。
【0018】
[12]
R1及びR2が、フェニル基である、[11]に記載のペプチドの製造方法。
【0019】
[13]
R
3が、下記式(II):
【化3】
[式中、R
4は、C
15-20アルキル基を表す]
である、[1]乃至[8]のいずれか1つに記載のペプチドの製造方法。
【0020】
[14]
R
3が、下記式(II’):
【化4】
[式中、R
4は、C
15-20アルキル基を表す]
である、[9]乃至[12]のいずれか1つに記載のペプチドの製造方法。
【0021】
[15]
R4中の炭素原子の内、3つ以上が3級又は4級の炭素原子である、[13]又は[14]に記載のペプチドの製造方法。
【0022】
[16]
R
1R
2R
3Si基が、下記式(III):
【化5】
である、[15]に記載のペプチドの製造方法。
【0023】
[17]
R
1R
2R
3Si基が、下記式(III’):
【化6】
である、[15]に記載のペプチドの製造方法。
【0024】
[18]
R
1R
2R
3Si基が、下記式(III’’):
【化7】
である、[15]に記載のペプチドの製造方法。
【0025】
[19]
R
1R
2R
3Si基が、下記式(III’’’):
【化8】
である、[15]に記載のペプチドの製造方法。
【0026】
[20]
さらに、工程(2)で得られたペプチドのC末端保護基を除去する工程を含む、[1]乃至[19]のいずれか1つに記載のペプチドの製造方法。
【0027】
[21]
さらに、工程(2)で得られたペプチドのC末端保護基をフッ素化剤で除去する工程を含む、[1]乃至[19]のいずれか1つに記載のペプチドの製造方法。
【0028】
[22]
R1R2R3Si基中の炭素原子の総数が、20乃至80である、[1]乃至[21]のいずれか1つに記載のペプチドの製造方法。
【0029】
[23]
R1R2R3Si基中の炭素原子の総数が、20乃至40である、[1]乃至[21]のいずれか1つに記載のペプチドの製造方法。
【0030】
[24]
N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドのN末端保護基が、ベンジルオキシカルボニル基、9-フルオレニルメトキシカルボニル基又はt-ブトキシカルボニル基である、[1]乃至[23]のいずれか1つに記載のペプチドの製造方法。
【0031】
[25]
アミノ酸又はペプチドがα-アミノ酸で構成される、[1]乃至[24]のいずれか1つに記載のペプチドの製造方法。
【0032】
[26]
式(IV):
【化9】
[式中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、C
1-6アルキル基を表し、R
3は、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基(該脂肪族炭化水素基中の1乃至5つのメチレン基は、互いに独立して、-O-、-CO-、-N(R
6)-、-N(R
7)CO-、-CON(R
8)-からなる群から選ばれる構造で置き換えられていてもよく、該脂肪族炭化水基中の炭素原子の内、3つ以上が3級又は4級の炭素原子である)を表し、
R
6、R
7及びR
8は、互いに独立して、水素原子又はC
1-6アルキル基を表し、
R
1R
2R
3Si基中の炭素原子の総数は、18乃至80である]
で表される化合物。
【0033】
[27]
式(IV):
【化10】
[式中、
R
1及びR
2は、フェニル基を表し、R
3は、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基(該脂肪族炭化水素基中の1乃至5つのメチレン基は、互いに独立して、-O-、-CO-、-N(R
6)-、-N(R
7)CO-、-CON(R
8)-からなる群から選ばれる構造で置き換えられていてもよく、該脂肪族炭化水基中の炭素原子の内、3つ以上が3級又は4級の炭素原子である)を表し、
R
6、R
7及びR
8は、互いに独立して、水素原子又はC
1-6アルキル基を表し、
R
1R
2R
3Si基中の炭素原子の総数は、18乃至80である]
で表される化合物。
【0034】
[28]
置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基(該脂肪族炭化水素基中の1乃至5つのメチレン基は、互いに独立して、-O-、-CO-、-N(R6)-、-N(R7)CO-、-CON(R8)-からなる群から選ばれる構造で置き換えられていてもよく、該脂肪族炭化水基中の炭素原子の内、3つ以上が3級又は4級の炭素原子である)における脂肪族炭化水素基が、C15-40アルキル基である、[26]又は[27]に記載の化合物。
【0035】
[29]
式(IV):
【化11】
[式中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立してC
1-6アルキル基又はフェニル基を表し、R
3は、フェニル基(該フェニル基は、C
15-40アルコキシ基で置換されている)を表し、
R
1R
2R
3Si基中の炭素原子の総数は、18乃至80である]
で表される化合物。
【0036】
[30]
R
3が、下記式(II):
式(II)
【化12】
[式中、R
4は、C
15-20アルキル基を表す]
である、[26]乃至[28]のいずれか1つに記載の化合物。
【0037】
[31]
R
3が、下記式(II’):
【化13】
[式中、R
4は、C
15-20アルキル基を表す]
である、[29]に記載の化合物。
【0038】
[32]
R4中の炭素原子の内、3つ以上が3級又は4級の炭素原子である、[30]又は[31]に記載の化合物。
【0039】
[33]
R1R2R3Si基中の炭素原子の総数が、20乃至40である、[26]乃至[32]のいずれか1つに記載の化合物。
【0040】
[34]
下記式(V)で表される化合物。
【化14】
【0041】
[35]
下記式(V’)で表される化合物。
【化15】
【0042】
[36]
下記式(V’’)で表される化合物。
【化16】
【0043】
[37]
下記式(V’’’)で表される化合物。
【化17】
【0044】
[38]
[26]乃至[37]のいずれか1つに記載の化合物を含む、アミノ酸又はペプチド中のカルボキシ基を保護するための試薬。
【発明の効果】
【0045】
三置換シリルエチル基で保護されたアミノ酸又はペプチドは、有機溶媒に溶解し易くなり、反応後の生成物の分離、精製を容易にすることができた。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0047】
本明細書における「n-」はノルマル、「i-」はイソ、「s-」はセカンダリー、「t-」はターシャリー、「Et」はエチル、「Bu」はブチル、「Ph」はフェニル、「Fmoc」は9-フルオレニルメトキシカルボニル、「Boc」はt-ブチルオキシカルボニル、「Cbz」はベンジルオキシカルボニル、「TMSE」はトリメチルシリルエチル、「DMSE」はジメチル(オクタデシル)シリルエチル、「FESE」は(3-((2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル)オキシ)プロピル)ジエチルシリルエチル、「FPSE」は(3-((2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル)オキシ)プロピル)ジフェニルシリルエチル、「MPSE」は、2-((4-((2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル)-オキシ)フェニル)ジメチルシリル)エチル、「TPSE」は、2-((4-((2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル)-オキシ)フェニル)ジフェニルシリル)エチルを意味する。
【0048】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。
【0049】
「C1-6アルキル基」とは、炭素数が1乃至6個である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を意味し、具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などが挙げられる。
【0050】
「C15-20アルキル基」とは、炭素数が15乃至20個である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を意味し、具体例としては、ペンタデシル基、オクタデシル基、イコシル基、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデシル基、2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル基などが挙げられる。
【0051】
「C1-40アルキル基」とは、炭素数が1乃至40個である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を意味し、具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、トリアコンチル基、テトラコンチル基、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデシル基、2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル基などが挙げられる。
【0052】
「C15-40アルキル基」とは、炭素数が15乃至40個である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を意味し、具体例としては、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、トリアコンチル基、テトラコンチル基、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデシル基、2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル基などが挙げられる。
【0053】
「C1-6アルキレン基」とは、前記定義「C1-6アルキル基」から任意の位置の水素原子を1個取り除いた2価の置換基を意味し、具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、1,4-ブチレン基(テトラメチレン基)、1,2-ブチレン基、1,3-ブチレン基、2,3-ブチレン基、n-ペンチレン基(ペンタメチレン基)、n-ヘキシレン基(ヘキサメチレン基)などが挙げられる。
【0054】
「C1-6アルコキシ基」とは、炭素数が1乃至6個である直鎖又は分岐鎖状のアルコキシ基を意味し、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
【0055】
「C15-20アルコキシ基」とは、炭素数が15乃至20個である直鎖又は分岐鎖状のアルコキシ基を意味し、具体例としては、ペンタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、イコシルオキシ基、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデシル基、2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチルオキシ基などが挙げられる。
【0056】
「C1-40アルコキシ基」とは、炭素数が1乃至40個である直鎖又は分岐鎖状のアルコキシ基を意味し、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ドコシルオキシ基、トリアコンチルオキシ基、テトラコンチルオキシ基、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデシル基、2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチルオキシ基などが挙げられる。
【0057】
「C15-40アルコキシ基」とは、炭素数が15乃至40個である直鎖又は分岐鎖状のアルコキシ基を意味し、具体例としては、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ドコシルオキシ基、トリアコンチルオキシ基、テトラコンチルオキシ基、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデシル基、2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチルオキシ基などが挙げられる。
【0058】
「C2-20アルケニル基」とは、炭素数が2乃至20個である直鎖又は分岐鎖状のアルケニル基を意味し、具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、レチニル基、フィチル基などが挙げられる。
【0059】
「C2-6アルキニル基」とは、炭素数が2乃至6個である直鎖又は分岐鎖状のアルキニル基を意味し、具体例としては、エチニル基、1-プロピニル基などが挙げられる。
【0060】
「C3-6シクロアルキル基」とは、炭素数が3乃至6個であるシクロアルキル基を意味し、具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0061】
「C6-14アリール基」とは、炭素数が6乃至14個である芳香族炭化水素基を意味し、その具体例としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基、ビフェニル基などが挙げられる。
【0062】
「C6-14アリールオキシ基」とは、炭素数が6乃至14個であるアリールオキシ基を意味し、具体例としては、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、1-アントラセニルオキシ基、2-アントラセニルオキシ基、9-アントラセニルオキシ基、ビフェニルオキシ基などが挙げられる。
【0063】
「C7-14アラルキル基」とは、炭素数が7乃至14個であるアラルキル基を意味し、具体例としては、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、1-ナフチルプロピル基などが挙げられる。
【0064】
「トリC1-6アルキルシリル基」とは、同一又は異なる3個の前記「C1-6アルキル基」がシリル基に結合した基を意味し、具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ジ-t-ブチルイソブチルシリル基などが挙げられる。
【0065】
「トリC1-6アルキルシリルオキシ基」とは、同一又は異なる3個の前記「C1-6アルキル基」がシリルオキシ基に結合した基を意味し、具体例としては、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基、t-ブチルジメチルシリルオキシ基、ジ-t-ブチルイソブチルシリルオキシ基などが挙げられる。
【0066】
「5-10員複素環基」とは、環を構成する原子の数が5乃至10個であり、かつ環を構成する原子中に、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より独立して選ばれる1乃至4個のヘテロ原子を含有する単環系又は縮合環系の複素環基を意味する。この複素環基は飽和、部分不飽和、不飽和のいずれであってもよく、具体例としては、ピロリジニル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロチエニル基、ピペリジル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、アゼパニル基、オキセパニル基、チエパニル基、アゼピニル基、オキセピニル基、チエピニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イミダゾリニル基、ピラジニル基、モルホリニル基、チアジニル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾイミダゾリル基、プリニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、クロメニル基、イソクロメニル基などが挙げられる。
【0067】
「脂肪族炭化水素基」とは、直鎖、分岐鎖状又は環状の、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基であり、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基等が挙げられ、具体例としては、C1-40アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C2-20アルケニル基、C2-6アルキニル基、C7-14アラルキル基等が挙げられる。
【0068】
「芳香族炭化水素基」とは、単環又は複数の環から構成される炭化水素基であり、少なくとも一つの環が芳香族性を示す基を意味し、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、インデニル基、フェナレニル基、インダニル基等が挙げられ、好ましくはC6-14アリール基であり、より好ましくはフェニル基である。
【0069】
「置換基を有してもよい」とは、無置換であるか、又は化学的に許容される任意の数の任意の置換基で置換されていることを意味する。
【0070】
上記の「任意の置換基」は、本発明が対象とする反応に悪影響を与えない置換基であれば特に種類は限定されない。
【0071】
「置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基」における「置換基」としては、例えば、C6-14アリール基、C6-14アリールオキシ基、5-10員複素環基、ヒドロキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、トリC1-6アルキルシリル基、トリC1-6アルキルシリルオキシ基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられ、好ましくは、C6-14アリール基又はトリC1-6アルキルシリルオキシ基である。
【0072】
「置換基を有してもよい芳香族炭化水素基」における「置換基」としては、例えば、ハロゲン原子、C1-40アルコキシ基、ニトロ基等が挙げられ、好ましくは、C1-40アルコキシ基であり、より好ましくはC15-40アルコキシ基であり、さらに好ましくはC15-20アルコキシ基である。
【0073】
「N-保護アミノ酸」及び「N-保護ペプチド」とは、N末端のアミノ基が保護されており、C末端のカルボキシ基が無保護のアミノ酸又はペプチドを意味する。
【0074】
「N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドの残基」とは、N-保護アミノ酸及びN-保護ペプチドのC末端カルボキシ基から水素原子を除いた基を意味する。
【0075】
「C-保護アミノ酸」及び「C-保護ペプチド」とは、C末端のカルボキシ基が保護されており、N末端のアミノ基が無保護のアミノ酸又はペプチドを意味する。
【0076】
本発明で使用されるアミノ酸は、アミノ基とカルボキシ基の両方の官能基を持つ有機化合物であり、好ましくはα-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸又はδ-アミノ酸であり、より好ましくはα-アミノ酸又はβ-アミノ酸であり、さらに好ましくはα-アミノ酸である。またこれらのアミノ酸に2以上のアミノ基が存在する場合(例えば、アルギニン、リシン等)、2以上のカルボキシ基が存在する場合(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸等)、又は反応性官能基が存在する場合(例えば、システイン、セリン等)、本発明で使用されるアミノ酸は、ペプチドの形成に関与しないアミノ基、カルボキシ基及び/又は反応性官能基が、保護及び/又は修飾されたアミノ酸も含む。
【0077】
本発明で使用されるアミノ酸のアミノ基は置換されていてもよい。当該アミノ基の置換基は、好ましくは置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはC1-6アルキル基又はC7-14アラルキル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
【0078】
ペプチドとは当業者に周知の概念であるが、念のために補足すると、本発明におけるペプチドは、アミノ酸をモノマーとしてペプチド結合により鎖状につながった分子をいい、本発明で使用されるペプチドを構成するアミノ酸は、上述のアミノ酸である。また本発明で使用されるペプチドを構成するアミノ酸の数は、2以上であれば特に限定はないが、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは10以下である。
【0079】
α-アミノ酸の立体構造は特に限定されないが、好ましくはL体である。
【0080】
「一時保護基」とは、ペプチド鎖を伸長する末端側の保護基であり、ペプチド伸長反応(縮合工程)を行う前に脱保護される保護基を意味し、N末端側からのペプチド鎖の伸長においては、N末端保護基が挙げられる。N末端保護基の具体例としては、カルバメート系保護基(9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基、t-ブトキシカルボニル(Boc)基、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)基、アリルオキシカルボニル基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基、2-(p-ビフェニル)イソプロピルオキシカルボニル基等)、アミド系保護基(アセチル基、トリフルオロアセチル基等)、イミド系保護基(フタロイル基等)、スルホンアミド系保護基(p-トルエンスルホニル基、2-ニトロベンゼンスルホニル基等)、ベンジル基等が挙げられる。
【0081】
本明細書で用いるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を持つ。本明細書に記載されたものと同様又は同等の任意の方法及び材料は、本発明の実施又は試験において使用することができるが、好ましい方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及したすべての刊行物及び特許は、例えば、記載された発明に関連して使用されうる刊行物に記載されている、構築物及び方法論を記載及び開示する目的で、参照として本明細書に組み入れられる。
【0082】
〔本発明化合物〕
本発明の、「三置換シリルエチル化合物」とは、下記式(IV):
【化18】
[式中、
R
1及びR
2は、互いに独立して、C
1-6アルキル基又はフェニル基を表し、R
3は、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基(該脂肪族炭化水素基中の1乃至5つのメチレン基は、互いに独立して、-O-、-CO-、-N(R
6)-、-N(R
7)CO-、-CON(R
8)-からなる群から選ばれる構造で置き換えられていてもよく、該脂肪族炭化水基中の炭素原子の内、3つ以上が3級又は4級の炭素原子である)又はフェニル基(該フェニル基は、C
15-40アルコキシ基で置換されている)を表し、
R
6、R
7及びR
8は、互いに独立して、水素原子又はC
1-6アルキル基を表し、
R
1R
2R
3Si基中の炭素原子の総数は、18乃至80である]で表される化合物を意味する。
【0083】
R1及びR2は、それぞれ独立して、好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基又はフェニル基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基又はフェニル基である。
【0084】
R
3は、好ましくは、置換基を有してもよいC
15-40アルキル基(該C
15-40アルキル基中の1乃至5つのメチレン基は、互いに独立して、-O-、-CO-、-N(R
6)-、-N(R
7)CO-、-CON(R
8)-からなる群から選ばれる構造で置き換えられていてもよく、該C
15-40アルキル基中の炭素原子の内、3つ以上が3級又は4級の炭素原子である)又はフェニル基(該フェニル基は、C
15-40アルコキシ基で置換されている)であり、より好ましくは下記式(II):
【化19】
[式中、
R
4は、C
15-20アルキル基を表す]又は
下記式(II’):
【化20】
[式中、
R
4は、C
15-20アルキル基を表す]であり、さらに好ましくは、R
4中の炭素原子の内、3つ以上が3級又は4級の炭素原子である、上記式(II)又は(II’)であり、特に好ましくは、下記式(VII):
【化21】
又は下記式(VII’):
【化22】
である。
【0085】
「R1R2R3Si基中の総炭素数」とは、R1、R2及びR3がそれぞれ有する炭素原子数の合計であり、R1、R2及びR3の内、少なくとも1つが置換基を有している場合は、その置換基中の炭素原子数も含まれる。
【0086】
R1R2R3Si基中の総炭素数は、好ましくは18以上であり、より好ましくは、18乃至80であり、さらに好ましくは20乃至80であり、特に好ましくは20乃至40である。
【0087】
〔本発明化合物の製造方法〕
式(IV)で示される本発明化合物の一般的製造方法について説明する。
以下の一般的製造法で用いられる溶媒は、反応に悪い影響を及ぼさない限り特に限定されない。それらの溶媒の例としては以下が挙げられる。
含ハロゲン炭化水素溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム)。
脂肪族炭化水素溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン)。
芳香族炭化水素溶媒(例えば、トルエン、キシレン)。
エーテル溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル)。
エステル溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル)。
アルコール溶媒(例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、2,2,2-トリフルオロエタノール)。
アミド溶媒(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)。
ニトリル溶媒(例えば、アセトニトリル)。
各工程で、好ましい溶媒については、それぞれ後述される。
【0088】
本発明化合物の製造方法は、特に限定されないが、例えば下記の反応式に従って製造することができる。
【0089】
【化23】
[式中、
R
1、R
2及びR
3は、上記と同義であり、Xはハロゲン原子、C
1-6アルコキシ基等の脱離基を表し、R
5は、C
1-6アルキル基又はベンジル基を表す。]
【0090】
原料の化合物(VIII)及び(IX)は、特に述べない限り、市販品として容易に入手できるか、あるいは、公知の方法又はこれらに準ずる方法に従って製造することができる。
【0091】
以下の各方法で得られる化合物の収率は、用いる反応条件によって異なりうるが、これらの生成物から通常の手段(蒸留、カラムクロマトグラフィー等)によって単離、精製し、高純度のものを得ることができる。
【0092】
工程(a)
当該工程は、化合物(VIII)から化合物(XI)を得る工程である。
【0093】
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、塩基存在下、化合物(VIII)と、酢酸エステルを反応させることにより行われる。
【0094】
当該反応に影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、含ハロゲン炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、エーテル溶媒等が挙げられる。好ましくは、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒又はエーテル溶媒であり、より好ましくはヘプタン、テトラヒドロフラン又はメチル-t-ブチルエーテルである。
【0095】
当該反応に用いる塩基としては、例えば、ナトリウムt-ブトキシド、カリウムt-ブトキシド、リチウムジイソプロピルアミン、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド等が挙げられる。好ましくは、リチウムジイソプロピルアミンである。
【0096】
当該反応に用いる酢酸エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸ベンジル等が挙げられる。好ましくは、酢酸エチルである。なお、当該反応に用いる酢酸エステルは、市販品として容易に入手できるか、あるいは、公知の方法又はこれらに準ずる方法に従って製造することができる。
【0097】
当該反応を行う場合、反応温度は、通常-90℃乃至40℃であり、好ましくは-90℃乃至0℃であり、より好ましくは-80℃乃至-20℃である。また、反応時間は、通常1乃至72時間であり、好ましくは1乃至24時間である。
【0098】
工程(b)
当該工程は、化合物(IX)から化合物(X)を得る工程である。
【0099】
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、金属触媒存在下、化合物(IX)と、R3に対応する基を有するアリル化合物を反応させることにより行われる。
【0100】
当該反応に影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、含ハロゲン炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒等が挙げられる。好ましくは、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素溶媒又はエーテル溶媒であり、より好ましくは、トルエン、テトラヒドロフラン又はメチル-t-ブチルエーテルである。
【0101】
当該反応に用いる金属触媒としては、例えば、白金触媒(例えば、白金-1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンコンプレックス、ヘキサクロリド白金酸)、ロジウム触媒(例えば、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム)等が挙げられる。好ましくは、ヘキサクロリド白金酸及びクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムである。
【0102】
当該反応に用いるR
3に対応する基を有するアリル化合物としては、例えば、下記式(VI):
【化24】
[式中、
R
4は、C
15-20アルキル基を表し、
L
1は、-O-又はメチレン基であり、L
2は、C
1-6アルキレン基を表す。]が挙げられる。好ましくは、L
1が-O-、L
2がC
1-6アルキレン基であり、より好ましくはL
1が-O-、L
2がメチレン基である。なお、当該反応に用いるアリル化合物は、市販品として容易に入手できるか、あるいは、公知の方法又はこれらに準ずる方法に従って製造することができる。
【0103】
当該反応を行う場合、反応温度は、通常-20℃乃至使用する溶媒の沸点の範囲の任意の温度であり、好ましくは0℃乃至60℃であり、より好ましくは10℃乃至40℃である。また、反応時間は、通常1乃至72時間であり、好ましくは1乃至24時間である。
【0104】
工程(c)
当該工程は、化合物(X)から化合物(XI)を得る工程である。
【0105】
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、金属触媒存在下、化合物(X)と、ジアゾ酢酸エステルを反応させることにより行われる。
【0106】
当該反応に影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、含ハロゲン炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、エーテル溶媒等が挙げられる。好ましくは、含ハロゲン炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒又はエーテル溶媒であり、より好ましくは、塩化メチレン、ヘプタン又はトルエンである。
【0107】
当該反応に用いる金属触媒としては、例えば、鉄触媒(例えば、トリフルオロメタンスルホンサン鉄)、ロジウム触媒(例えば、酢酸ロジウム)、銅触媒(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸銅)等が挙げられる。好ましくは、酢酸ロジウムである。
【0108】
当該反応に用いるジアゾ酢酸エステルとしては、例えば、ジアゾ酢酸メチル、ジアゾ酢酸エチル、ジアゾ酢酸n-プロピル、ジアゾ酢酸i-プロピル、ジアゾ酢酸n-ブチル、ジアゾ酢酸ベンジル等が挙げられる。好ましくは、ジアゾ酢酸エチルである。なお、当該反応に用いるジアゾ酢酸エステルは、市販品として容易に入手できるか、あるいは、公知の方法又はこれらに準ずる方法に従って製造することができる。
【0109】
当該反応を行う場合、反応温度は、通常-20℃乃至使用する溶媒の沸点の範囲の任意の温度であり、好ましくは0℃乃至60℃であり、より好ましくは10℃乃至40℃である。また、反応時間は、通常1乃至72時間であり、好ましくは1乃至24時間である。
【0110】
工程(d)
当該工程は、化合物(XI)から化合物(XII)を得る工程である。
【0111】
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、還元剤を用いることで、化合物(XI)を反応させることにより行われる。
【0112】
当該反応に影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、含ハロゲン炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、エーテル溶媒、ニトリル溶媒等が挙げられる。好ましくは、含ハロゲン炭化水素溶媒又はエーテル溶媒であり、より好ましくは、塩化メチレン又はテトラヒドロフランである。
【0113】
当該反応に用いる還元剤としては、例えば、ヒドロビス(2-メチルプロピル)アルミニウム、テトラヒドロリチウムアルミニウム等が挙げられる。好ましくは、テトラヒドロリチウムアルミニウムである。
【0114】
当該反応を行う場合、反応温度は、通常-20℃乃至使用する溶媒の沸点の範囲の任意の温度であり、好ましくは0℃乃至60℃であり、より好ましくは10℃乃至40℃である。また、反応時間は、通常1乃至24時間であり、好ましくは1乃至5時間である。
【0115】
本発明化合物の製造方法は、別の様態として、例えば下記の反応式に従って製造することができる。
【0116】
【化25】
[式中、
R
1、R
2及びR
3は、上記と同義であり、Xはハロゲン原子、C
1-6アルコキシ基等の脱離基を表す。]
【0117】
原料の化合物(XIII)は、特に述べない限り、市販品として容易に入手できるか、あるいは、公知の方法又はこれらに準ずる方法に従って製造することができる。
【0118】
以下の各方法で得られる化合物の収率は、用いる反応条件によって異なりうるが、これらの生成物から通常の手段(蒸留、カラムクロマトグラフィー等)によって単離、精製し、高純度のものを得ることができる。
【0119】
工程(e)
当該工程は、化合物(XIII)から化合物(XIV)を得る工程である。
【0120】
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、R3に対応する基を有する有機ハロゲン化合物と金属試薬により調製される有機金属試薬を化合物(XIII)と反応させることにより行われる。
【0121】
当該反応に影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、エーテル溶媒等が挙げられる。好ましくは、脂肪族炭化水素溶媒又はエーテル溶媒であり、より好ましくはヘキサン、ヘプタン又はテトラヒドロフランである。
【0122】
当該反応に用いるR
3に対応する基を有する有機ハロゲン化合物としては、例えば、下記式(VI’):
【化26】
[式中、
R
4は、C
15-40アルキル基を表し、
L
1は、-O-又はメチレン基であり、L
2は、芳香族炭化水素基であり、Xは、ハロゲン原子を表す。]が挙げられる。好ましくは、L
1が-O-、L
2がフェニル、Xがハロゲン原子であり、より好ましくはL
1が-O-、L
2がフェニル、Xが臭素原子である。なお、当該反応に用いる有機ハロゲン化合物は、市販品として容易に入手できるか、あるいは、公知の方法又はこれらに準ずる方法に従って製造することができる。
【0123】
当該反応に用いる金属試薬は、例えば、亜鉛、マグネシウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム等が挙げられる。好ましくは、n-ブチルリチウムである。
【0124】
当該反応を行う場合、反応温度は、通常-90℃乃至溶媒の沸点の範囲の任意の温度であり、好ましくは-90℃乃至0℃であり、より好ましくは-80℃乃至-20℃である。また、反応時間は、通常1乃至72時間であり、好ましくは1乃至24時間である。
【0125】
工程(f)
当該工程は、化合物(XIV)から化合物(XII)を得る工程である。
【0126】
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、ホウ素試薬と化合物(XIV)を反応させた後、塩基及び酸化試薬で処理することにより行われる。
【0127】
当該反応に影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、含ハロゲン炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、ニトリル溶媒等が挙げられる。好ましくは、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素溶媒又はエーテル溶媒であり、より好ましくは、トルエン又はテトラヒドロフランである。
【0128】
当該反応に用いるホウ素試薬としては、例えば、ボラン-テトラヒドロフラン錯体、ボラン-ジメチルスルフィド錯体、ジシアミルボラン、ジシクロへキシルボラン、9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン、カテコールボラン、ピナコールボラン、ジイソピノカンフェイルボラン等が挙げられる。好ましくは、ボラン-テトラヒドロフラン錯体、ビシクロ[3.3.1]ノナン、ジイソピノカンフェイルボランであり、より好ましくは、ビシクロ[3.3.1]ノナンである。
【0129】
当該反応に用いる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。好ましくは、水酸化ナトリウムである。
【0130】
当該反応に用いる酸化試薬としては、過酸化水素水等が挙げられる。
【0131】
当該反応を行う場合、反応温度は、通常-20℃乃至使用する溶媒の沸点の範囲の任意の温度であり、好ましくは0℃乃至60℃であり、より好ましくは10℃乃至40℃である。また、反応時間は、通常1乃至72時間であり、好ましくは1乃至24時間である。
【0132】
〔本発明のペプチドの製造方法〕
三置換シリルエチル基で保護されたアミノ酸又はペプチドは、有機溶媒に溶解し易くなり、反応後の生成物の分離、精製を容易にすることができる。また、一つの様態として、三置換シリルエチル基は、ペプチド中の他の保護基を維持したまま、三置換部分を嵩高くすることによる反応性の低下を招くことなく、フッ素化剤によって選択的に脱保護される。さらに、もう一つの様態として、アミノ酸又はペプチドのC末端に三置換シリルエチル基を導入することで、N末端一時保護基に、Fmoc基、Boc基又はCbz基等を使用し、N末端方向へペプチド鎖を伸長することができる。
【0133】
本発明のペプチドの製造方法(以下、本製造法)は、特に限定されないが、以下の各工程(i)乃至(viii)をすべて又は適宜組み合わせることで行うことができる。
なお、本製造法は以下に基づき説明される。
(a)本製造法に用いられる三置換シリルエチル基とは、
式(IV):
【化27】
[式中、
R
1、R
2及びR
3は、互いに独立して、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基(該脂肪族炭化水素基中の1乃至5つのメチレン基は、互いに独立して、-O-、-CO-、-N(R
6)-、-N(R
7)CO-、-CON(R
8)-からなる群から選ばれる構造で置き換えられていてもよい)又は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基を表し、
R
6、R
7及びR
8は、互いに独立して、水素原子又はC
1-6アルキル基を表し、
R
1R
2R
3Si基中の炭素原子の総数は、18乃至80である]
で表される化合物由来の基である。
(b)反応の具体的な条件は、本発明のペプチドの製造が達成される限りにおいて特に制限されない。各反応における好ましい条件は適宜詳述される。
(c)各反応で記載される溶媒は、単独で用いても、2種類以上を混合して用いても良い。
【0134】
工程(i):C末端保護工程
当該工程は、本発明化合物を、N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドのC末端に導入する工程である。
【0135】
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、縮合剤存在下、本発明化合物と、N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドを反応させることにより行われる。
【0136】
当該反応に影響を及ぼさない溶媒としては、含ハロゲン炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒等が挙げられる。好ましくは、含ハロゲン炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒又はアミド溶媒であり、より好ましくは塩化メチレン、トルエン、シクロペンチルメチルエーテル、酢酸イソプロピル又はN,N-ジメチルホルムアミドである。
【0137】
当該反応に用いる縮合剤としては、特に制限は無いが、例えば、カルボジイミド系縮合剤(例えば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、1-エチル-3-ジメチルアミノプロピルカルボジイミド 塩酸塩(EDCI))、クロロホルメート系縮合剤(例えば、クロロギ酸エチル、クロロギ酸イソブチル)、イミダゾール系縮合剤(例えば、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI))、ホスホニウム系縮合剤(例えば、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(PyBOP(登録商標))、ブロモトリピロリジノホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(PyBrop(登録商標)))、ウロニウム系縮合剤(例えば、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート(TBTU)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-5-クロロ-1H-ベンゾトリアゾリウム3-オキシド ヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、O-ベンゾトリアゾール-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロボレート(HBTU)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU))、AllessanCAP(登録商標)が挙げられる。
【0138】
当該反応において、添加剤及び塩基は、反応を妨げない限り適宜使用することができる。
【0139】
当該反応に用いる添加剤としては、特に制限はないが、例えば、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-1H-1,2,3-トリアゾール-5-カルボン酸エチルエステル(HOCt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、(ヒドロキシイミノ)シアノ酢酸エチル(OxymaPure)等が挙げられる。
【0140】
当該反応に用いる塩基としては、特に制限はないが、例えば、脂肪族アミン(例えば、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン)、芳香族アミン(例えば、ピリジン)等が挙げられる。好ましくは、脂肪族アミンであり、より好ましくはN,N-ジイソプロピルエチルアミンである。
【0141】
当該反応を行う場合、反応温度は、通常-20℃乃至使用する溶媒の沸点の範囲の任意の温度であり、好ましくは-10℃乃至60℃であり、より好ましくは-10℃乃至40℃である。また、反応時間は、通常1乃至24時間であり、好ましくは1乃至6時間である。
【0142】
工程(ii):N末端脱保護工程
当該工程は、上記工程(i)で得られたアミノ酸又はペプチドのN末端保護基を除去する工程である。
【0143】
N末端保護基としては、ペプチド化学等の技術分野で一般的に用いられる、アミノ基の一時保護基が使用可能である。好ましくは、三置換シリルエチル基の脱離とは異なる条件により脱離する保護基であり、より好ましくはカルバメート系保護基(9-フルオレニルメトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基等)であり、さらに好ましくは9-フルオレニルメトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基である。
【0144】
脱保護条件は、N末端保護基の種類により適宜選択されるが、反応に影響を及ぼさない溶媒中、三置換シリルエチル基の脱離とは異なる条件により脱保護するのが好ましい。例えば、9-フルオレニルメトキシカルボニル基の場合は、塩基で処理することにより行なわれ、t-ブトキシカルボニル基の場合は、酸で処理することにより行われ、ベンジルオキシカルボニル基の場合は、金属触媒存在下、水素添加することにより行われる。
【0145】
当該反応に影響を及ぼさない溶媒としては、N末端保護基の脱保護条件により適宜選択される。例えば、9-フルオレニルメトキシカルボニル基及びt-ブトキシカルボニル基の場合は、含ハロゲン炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒等が挙げられ、ベンジルオキシカルボニル基の場合は、アルコール溶媒、芳香族炭化水素溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒等が挙げられる。
【0146】
当該工程に用いる塩基としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピペリジン、モルホリン、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、ジアザビシクロウンデセン等が挙げられる。
【0147】
当該反応に用いる酸としては、例えば、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。
【0148】
当該反応に用いる金属触媒としては、例えば、パラジウムカーボン粉末、白金カーボン粉末、ルテニウムカーボン粉末、アルミナ粉末が挙げられる。
【0149】
当該反応を行う場合、反応温度は、通常-20℃乃至使用する溶媒の沸点の範囲の任意の温度であり、好ましくは0℃乃至60℃であり、より好ましくは10℃乃至40℃である。また、反応時間は、通常1乃至24時間であり、好ましくは1乃至6時間である。
【0150】
工程(iii):縮合工程
当該工程は、上記工程(ii)で得られたC-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドのN末端に、N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドを縮合させる工程である。
【0151】
当該反応は、ペプチド化学等の技術分野で一般的に用いられる縮合条件下で行われ、例えば、工程(i)と同様の縮合剤、添加剤、及び/又は塩基の存在下があげられる。
【0152】
当該反応後、求核剤を加えることにより、C末端が活性化されたN-保護アミノ酸又はN-保護ペプチド残基のC末端を不活性化することができる。
【0153】
当該反応後に用いられる求核剤としては、特に制限はないが、例えば、第1級又は第2級アミンが挙げられる。好ましくは、脂肪族アミン(例えば、プロピルアミン、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン)、ベンジルアミンであり、より好ましくはN,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミンである。
【0154】
当該反応後に用いられる求核剤により、C末端の不活性化と同時にN末端保護基であるFmoc基を脱保護することもできる。
【0155】
工程(iv):精製工程
当該工程は、上記工程(i)乃至(iii)で得られたアミノ酸又はペプチドを、分液により精製する工程である。
【0156】
分液操作では、ペプチドを溶解させた溶液を、目的とするペプチドや含まれ得る不純物に応じて、水、酸性及び/又は塩基性水溶液及び/又は貧溶媒で洗浄することにより、不純物を除去することができる。
【0157】
分液操作で用いる酸性水溶液は、特に制限は無いが、例えば、塩酸、硫酸、酢酸水溶液、リン酸水溶液、クエン酸水溶液、塩化アンモニウム水溶液、硫酸水素カリウム水溶液が挙げられる。好ましくは、塩酸、硫酸水素カリウム水溶液である。
【0158】
分液操作で用いる塩基性水溶液は、特に制限は無いが、例えば、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、アンモニア水が挙げられる。好ましくは、炭酸水素ナトリウム水溶液、アンモニア水である。
【0159】
分液操作で用いる貧溶媒は、ペプチドを溶解させた良溶媒と分離するものであり、例えば、脂肪族炭化水素を良溶媒とした場合、ニトリル溶媒、アルコール溶媒又はアミド溶媒が挙げられる。好ましくは、脂肪族炭化水素を良溶媒とした場合、ニトリル溶媒又はアミド溶媒であり、より好ましくは、ヘプタン又はヘキサンを良溶媒とした場合、アセトニトリル又はN,N-ジメチルホルムアミドである。
【0160】
工程(v)乃至(vii):ペプチド鎖伸長工程
工程(iv)で得られたペプチドに対して、下記工程(v)乃至(vii)を所望の回数繰返すことにより、ペプチド鎖をさらに伸長することができる。
(v)精製工程で得られたペプチドのN末端保護基を除去する工程、
(vi)上記工程(v)で得られた、C-保護ペプチドのN末端に、N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドを縮合させる工程、及び
(vii)上記工程(v)及び/又は(vi)で得られたペプチドを沈殿又は分液により精製する工程。
いずれも、上記工程(ii)乃至(iv)と同様の操作で実施することができる。
【0161】
本製造法においては、次工程の反応に影響を及ぼさない範囲で工程(iv)又は工程(vii)の精製工程を適宜省略することも可能である。
【0162】
工程(ix):C末端脱保護工程
当該工程は、上記工程(iv)又は(vii)の精製工程により単離されたペプチドから、C末端保護基を除去する工程である。
【0163】
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、フッ素化剤等の試薬を用いて反応させることにより行われる。
【0164】
当該反応に影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、アルコール溶媒、含ハロゲン炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒等が挙げられる。好ましくはエーテル溶媒、アミド溶媒又はニトリル溶媒であり、より好ましくはテトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド又はアセトニトリルである。
【0165】
当該反応で用いるフッ素化剤は、例えば、フッ化水素-アミン塩(例えば、テトラブチルアンモニウムフルオリド、フッ化水素-ピリジン錯体、フッ化水素-トリエチルアミン錯体)、フッ化水素-金属塩(例えば、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム)が挙げられる。好ましくは、フッ化水素-アミン塩であり、より好ましくは、テトラブチルアンモニウムフルオリドである。
【0166】
当該反応を行う場合、反応温度は、通常-20℃乃至使用する溶媒の沸点の範囲の任意の温度であり、好ましくは0℃乃至60℃であり、より好ましくは10℃乃至40℃である。また、反応時間は、通常1乃至24時間であり、好ましくは1乃至5時間である。
【0167】
各反応において、反応基質がヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシ基又はカルボニル基を有する場合(特にアミノ酸又はペプチドの側鎖に官能基を有する場合)、これらの基にペプチド化学等で一般的に用いられるような保護基が導入されていてもよく、反応後に必要に応じて保護基を除去することにより目的化合物を得ることができる。
【0168】
保護及び脱保護は、一般的に知られている保護基を用いて、保護・脱保護反応(例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第4版(Protective Groups in Organic Synthesis, Fourth edition)、グリーン(T.W.Greene)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons Inc.)(2006年)など参照)を行うことにより実施することができる。
【実施例】
【0169】
以下に参考合成例、合成例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0170】
本明細書において、アミノ酸等を略号で表示する場合、各表示は、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものである。
【0171】
合成例中、「M」はmol/Lを意味する。
【0172】
実施例のプロトン核磁気共鳴(1H-NMR)は、特に記述が無い場合は、日本電子(JEOL)社製JNM-ECP300を用いて重クロロホルムで測定し、化学シフトは、テトラメチルシランを内部標準(0.0ppm)としたときのδ値(ppm)で示した。
【0173】
NMRスペクトルの記載において、「m」はマルチプレット、「CDCl3」は重クロロホルムを意味する。
【0174】
高速液体クロマトグラフィー/質量分析は、特に記載が無い場合は、Waters社製ACQUITY UPLC H-Class/QDa、Waters社製ACQUITY UPLC H-Class/SQD2、又は、Shimadzu社製LC-20AD/Triple Tof5600のいずれかを用いて測定した。
【0175】
質量分析(MS)は、特に記載が無い場合は、MALDI-TOF-MS;Bruke
r社製を用いた。マトリックスは、特に記載がない場合は、α-シアノ-4-ヒドロキシ
ケイ皮酸(CHCA)又は2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB)を用いた。
【0176】
高速液体クロマトグラフィー/質量分析の記載において、ESI+はエレクトロスプレーイオン化法のポジティブモードであり、M+Hはプロトン付加体、M+Naはナトリウム付加体、2M+Naは二量体のナトリウム付加体を意味する。
【0177】
高速液体クロマトグラフィー/質量分析の記載において、ESI-はエレクトロスプレーイオン化法のネガティブモードであり、M-Hはプロトン欠損体を意味する。
【0178】
質量分析の記載において、M+Hはプロトン付加体、M+Naはナトリウム付加体を意味する。
【0179】
シリカゲルカラムクロマトグラフィーでの精製は、特に記述がない場合は、山善製Hi-Flashカラム、バイオタージ製SNAP Ultra Silica Cartridge、メルク製シリカゲル60又は富士シリシア化学製PSQ60Bのいずれかを用いた。
【0180】
合成例1:2-((3-((2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル)オキシ)プロピル)ジエチルシリル)エタノール(FESE-OH)の合成
【化28】
【0181】
(i)国際公開第2018/207735号に記載の方法で得られた5-((アリルオキシ)メチル)-2,2,4,8,10,10-ヘキサメチルウンデカン(5.0g、16mmol)、ジエチルシラン(3.4g、39mmol)をトルエン(51g)と混合させ、室温でクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(0.09g、0.10mmol)を加えて2時間攪拌した。得られた反応液をトルエンで希釈した後、飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、無色油状物の(3-((2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル)オキシ)プロピル)ジエチルシラン(4.9g、12mmol)を収率75%で得た。
【0182】
(ii)(3-((2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル)オキシ)プロピル)ジエチルシラン(4.6g、12mmol)、酢酸ロジウム(0.11g、0.25mmol)を塩化メチレン(50g)と混合させ、室温で15%ジアゾ酢酸エチル-トルエン溶液(12g、15mmol)を滴下して4時間攪拌した。得られた反応液をメチル-t-ブチルエーテルで希釈した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、淡黄色油状物のエチル-2-((3-((2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル)オキシ)プロピル)ジエチルシリル)アセテート(5.3g)を得た。
【0183】
(iii)上記で得られたエチル-2-((3-((2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル)オキシ)プロピル)ジエチルシリル)アセテート(5.0g)をテトラヒドロフラン(40g)と混合させ、室温で2Mテトラヒドロリチウムアルミニウム-テトラヒドロフラン溶液(4.0mL、8mmol)を滴下して1時間攪拌した。得られた反応液をメチル-t-ブチルエーテルで希釈した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、無色油状物のFESE-OH(2.4g、5.4mmol)を2工程収率48%で得た。
【0184】
1H-NMR(CDCl3)
δppm:0.50-0.58(6H,m),0.83-1.06(32H,m),1.09-1.33(6H,m),1.38-1.61(6H,m)、1.67-1.83(1H,m)、3.18-3.40(4H,m)、3.70-3.76(2H,m)
【0185】
参考合成例1:Cbz-Phe-OFESEの合成
【化29】
【0186】
(i)FESE-OH(1.0g、2.3mmol)、Cbz-Phe-OH(0.82g、2.7mmol)を塩化メチレン(10g)と混合させ、0℃に冷却後、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(0.53g、2.8mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.01g、0.08mmol)を加えて1時間攪拌した。得られた反応液を室温に昇温し、2時間攪拌した。得られた反応液をメチル-t-ブチルエーテルで希釈した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、無色油状物のCbz-Phe-OFESE(1.6g、2.2mmol)を収率96%で得た。
【0187】
MS(ESI-)m/z;722.65(M-H)
【0188】
合成例2:Fmoc-Phe-Phe-OFESEの合成
【化30】
【0189】
(i)Cbz-Phe-OFESE(1.2g、1.7mmol)、10質量%Pd-C(0.2g)をテトラヒドロフラン(24g)と混合させ、水素ガス雰囲気下、室温で17時間攪拌した。得られた反応液をろ過後、ろ液を濃縮し、黒色油状物のH-Phe-OFESE(1.1g)を得た。
【0190】
(ii)上記で得られたH-Phe-OFESE(1.1g)、Fmoc-Phe-OH(0.79、2.0mmol)を塩化メチレン(10g)と混合させ、0℃に冷却後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.32g、2.5mmol)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(0.93g、2.2mmol)を加えて2時間攪拌した。得られた反応液をメチル-t-ブチルエーテルで希釈した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体のFmoc-Phe-Phe-OFESE(1.5g、1.6mmol)を2工程収率94%で得た。
【0191】
MS(ESI+)m/z;959.65(M+H)+
【0192】
合成例3:Cbz-Ser(t-Bu)-Phe-OFESEの合成
【化31】
【0193】
(i)FESE-OH(1.0g、2.3mmol)、Fmoc-Phe-OH(1.2g、3.1mmol)を塩化メチレン(10g)、N-メチルピロリドン(4.0g)と混合させ、0℃に冷却後、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(0.52g、2.7mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.003g、0.02mmol)を加え、反応液を室温に昇温し、1.5時間攪拌した。得られた反応液に、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(2.3g、23mmol)を加えて室温で17時間攪拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈した後、5質量%アンモニウム水溶液、10質量%硫酸水素カリウム水溶液、5質量%食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮し、無色油状物のH-Phe-OFESE(2.8g)得た。
【0194】
MS(ESI+)m/z;590.45(M+H)+
【0195】
(ii)上記で得られたH-Phe-OFESE(2.8g)、Cbz-Ser(t-Bu)-OH(0.86、2.9mmol)を塩化メチレン(13g)と混合させ、0℃に冷却後、1-エチル-3-ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(0.56g、2.9mmol)を加えて室温で3時間攪拌した。得られた反応液に、さらにCbz-Ser(t-Bu)-OH(0.36、1.2mmol)、1-エチル-3-ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(0.26g、1.4mmol)を加えて、室温で1時間攪拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈した後、5質量%アンモニウム水溶液、10質量%硫酸水素カリウム水溶液、5質量%食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、カラムクロマトグラフィーで精製し、無色油状物のCbz-Ser(t-Bu)-Phe-OFESE(1.9g、2.2mmol)を3工程収率96%で得た。
【0196】
MS(ESI+)m/z;867.55(M+H)+
【0197】
合成例4:Cbz-Ser(t-Bu)-Phe-OHの合成
【化32】
【0198】
(i)Cbz-Ser(t-Bu)-Phe-OFESE(0.31g、0.36mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(6.0g)と混合させ、室温下で1Mテトラブチルアンモニウムフルオリド-テトラヒドロフラン溶液(0.53mL、0.53mmol)を加えて、室温で24時間攪拌した。得られた反応液に水(6.0g)を加えて、ヘキサン(6.0g)で2回洗浄した。得られた水層を酢酸エチルで希釈し、10質量%硫酸水素カリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を濃縮し、白色固体のCbz-Ser(t-Bu)-Phe-OH(0.15g、0.34mmol)を収率94%で得た。
【0199】
MS(ESI+)m/z;443.10(M+H)+
【0200】
合成例5:Cbz-Ser(t-Bu)-Dap(Boc)-Val-Pro-Phe-Phe-OFESEの合成
【化33】
【0201】
(i)Fmoc-Phe-Phe-OFESE(0.51g、0.53mmol)をシクロペンチルメチルエーテル(10g)と混合させ、室温でジアザビシクロウンデセン(0.02g、0.13mmol)を加えて2時間攪拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈した後、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮し、無色油状物のH-Phe-Phe-OFESE(0.49g)を得た。
【0202】
MS(ESI-)m/z;735.60(M-H)+
【0203】
(ii)上記で得られたH-Phe-Phe-OFESE(0.49g)、Boc-Val-Pro-OH(0.20、0.64mmol)をシクロペンチルメチルエーテル(4.6g)、N-メチルピロリドン(1.0g)と混合させ、0℃に冷却後、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(0.31g、0.72mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.10g、0.77mmol)、を加えて1時間攪拌した。得られた反応液を室温に昇温し、2時間攪拌した。得られた反応液をシクロペンチルメチルエーテルで希釈した後、5質量%アンモニウム水溶液、10質量%硫酸水素カリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体のBoc-Val-Pro-Phe-Phe-OFESE(0.50g、0.48mmol)を2工程収率91%で得た。
【0204】
MS(ESI+)m/z;1033.75(M+H)+
【0205】
(iii)Boc-Val-Pro-Phe-Phe-OFESE(0.30g、0.29mmol)を酢酸エチル(3.0g)と混合させ、室温で4M塩化水素-酢酸エチル(2.9mL、12mmol)を加えて0℃で1時間攪拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮し、白色固体のH-Val-Pro-Phe-Phe-OFESE(0.27g)を得た。
【0206】
MS(ESI-)m/z;931.75(M-H)+
【0207】
(iv)上記で得られたH-Val-Pro-Phe-Phe-OFESE(0.25g)、Fmoc-Dap(Boc)-OH(0.15、0.35mmol)を酢酸エチル(5.4g)と混合させ、0℃に冷却後、50質量%AllessanCAP(登録商標)-酢酸エチル溶液(0.50g、0.58mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.30g、2.3mmol)を加えて1.5時間攪拌した。得られた反応液を室温に昇温し、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(0.84g、8.2mmol)を加えて21時間攪拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈した後、5質量%アンモニウム水溶液、10質量%硫酸水素カリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮し、黄色油状物のH-Dap(Boc)-Val-Pro-Phe-Phe-OFESE(0.35g)を得た。
【0208】
(v)上記で得られたH-Dap(Boc)-Val-Pro-Phe-Phe-OFESE(0.35g)、Cbz-Ser(t-Bu)-OH(0.11、0.37mmol)をトルエン(4.0g)と混合させ、0℃に冷却後、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(0.17g、0.40mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.05g、0.43mmol)、を加えて1時間攪拌した。得られた反応液を室温に昇温し、19時間攪拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、10質量%硫酸水素カリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮し、酢酸エチル(3mL)、ヘキサン(2mL)、アミノシリカゲル(富士シリシア化学製)(0.06g)を加えて攪拌し、ろ過した。得られたろ液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体のCbz-Ser(t-Bu)-Dap(Boc)-Val-Pro-Phe-Phe-OFESE(0.30g、0.21mmol)を4工程収率78%で得た。
【0209】
MS(ESI+)m/z;1397.10(M+H)+
【0210】
参考合成例2:Cbz-Phe-ODMSEの合成
【化34】
【0211】
(i)国際公開第2011/134675号に記載の方法で得られた2-(ジメチル(オクタデシル)シリル)エタノール(0.50g、1.4mmol)、Cbz-Phe-OH(0.50g、1.7mmol)を塩化メチレン(5.0g)と混合させ、室温で1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(0.33g、1.7mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.01g、0.08mmol)を加えて5.5時間攪拌した。得られた反応液をメチル-t-ブチルエーテルで希釈した後、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、無色油状物のCbz-Phe-ODMSE(0.83g、1.3mmol)を収率93%で得た。
【0212】
MS(ESI-)m/z;636.55(M-H)+
【0213】
合成例6:Fmoc-Phe-Phe-ODMSEの合成
【化35】
【0214】
(i)Cbz-Phe-ODMSE(0.70g、1.1mmol)、10質量%Pd-C(0.09g)を酢酸エチル(14g)と混合させ、水素ガス雰囲気下、室温で25時間攪拌した。得られた反応液をろ過後、ろ液を濃縮し、黒色油状物のH-Phe-ODMSE(0.58g)を得た。
【0215】
(ii)上記で得られたH-Phe-ODMSE(0.58g)、Fmoc-Phe-OH(0.51g、1.3mmol)を塩化メチレン(5.6g)と混合させ、0℃に冷却後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.21g、1.6mmol)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(0.61g、1.4mmol)を加えて1時間攪拌した。得られた反応液を室温に昇温し、1時間攪拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体のFmoc-Phe-Phe-ODMSE(0.91g、1.0mmol)を2工程収率91%で得た。
【0216】
MS(ESI+)m/z;873.60(M+H)+
【0217】
参考合成例3:Fmoc-Phe-Phe-OTMSEの合成
【化36】
【0218】
(i)トリメチルシリルエタノール(0.24g、2.0mmol)、Cbz-Phe-OH(0.50g、1.7mmol)を塩化メチレン(5.3g)と混合させ、室温で1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(0.38g、2.0mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.002g、0.02mmol)を加えて24時間攪拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体のCbz-Phe-OTMSE(0.39g、0.98mmol)を収率49%で得た。
【0219】
(ii)Cbz-Phe-OTMSE(0.27g、0.68mmol)、10質量%Pd-C(0.04g)をテトラヒドロフラン(5.3g)と混合させ、水素ガス雰囲気下、室温で24時間攪拌した。得られた反応液をろ過後、ろ液を濃縮し、黒色油状物のH-Phe-OTMSE(0.18g)を得た。
(iii)上記で得られたH-Phe-OTMSE(0.18g)、Fmoc-Phe-OH(0.31g、0.80mmol)を塩化メチレン(4.0g)と混合させ、0℃に冷却後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.21g、1.7mmol)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(0.35g、0.82mmol)を加えて1時間攪拌した。得られた反応液を室温に昇温し、3時間攪拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体のFmoc-Phe-Phe-OTMSE(0.39g、0.61mmol)を2工程収率90%で得た。
【0220】
MS(ESI+)m/z;635.35(M+H)+
【0221】
試験例1:有機溶媒への溶解性評価
[試験化合物]
溶解性の測定には、合成例2、合成例6及び参考合成例3で得られた化合物を使用した。
【0222】
[試験方法]
試験化合物をトルエン、シクロペンチルメチルエーテル又は酢酸エチルに飽和させ、20℃で1時間以上撹拌した。得られた溶液を遠心ろ過した後、ろ液を下記測定条件で分析し、試験化合物の溶解量を算出した。
【0223】
[測定条件]
高速液体クロマトグラフィー:SHIMADZU製 HPLC-20A
カラム:XBridge C18(2.5μm、4.6×100mm)
カラムオ-ブン温度:40℃
溶離液:A=0.2vоl% トリフルオロ酢酸水溶液
B=0.2vоl% トリフルオロ酢酸アセトニトリル溶液
A/B=50/50(0-2分)、50/50-0/100(2-15分)、0/100(15-40分)
溶離液速度:1.0mL/分
検出波長:210nm
【0224】
[試験結果]
各有機溶媒100gに溶解した化合物の量は、表1の通り。合成例2及び合成例6の化合物は、参考合成例3の化合物と比較して、トルエン、シクロペンチルメチルエーテル及び酢酸エチルへの溶解性が向上した。
【0225】
【0226】
合成例7:2-((3-((2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル)オキシ)プロピル)ジフェニルシリル)エタノール(FPSE-OH)の合成
【化37】
【0227】
(i)国際公開第2018/207735号に記載の方法で得られた5-((アリルオキシ)メチル)-2,2,4,8,10,10-ヘキサメチルウンデカン(10.1g、33mmol)、ジフェニルシラン(11.9g、65mmol)をトルエン(100g)と混合させ、室温でクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(0.1g、0.10mmol)を加えて2時間攪拌した。得られた反応液を飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、無色油状物の(3-((2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル)オキシ)プロピル)ジフェニルシラン(15.0g、30mmol)を収率91%で得た。
【0228】
(ii)(3-((2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル)オキシ)プロピル)ジフェニルシラン(15.0g、30mmol)、酢酸ロジウム(0.05g、0.10mmol)を塩化メチレン(150g)と混合させ、室温で15%ジアゾ酢酸エチル-トルエン溶液(47g、62mmol)を滴下して1時間攪拌した。得られた反応液を塩化メチレンで希釈した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮し、淡黄色油状物(21.7g)を得た。
【0229】
(iii)上記で得られた淡黄色油状物(20.6g)をテトラヒドロフラン(30g)と混合させ、室温でテトラヒドロリチウムアルミニウム(1.0g、26mmol)とテトラヒドロフラン(27g)の混合液に滴下して1時間30分攪拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈した後、1M塩酸、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、無色油状物のFPSE-OH(4.84g、9.0mmol)を2工程収率32%で得た。
【0230】
1H-NMR(CDCl3)
δppm:0.82-1.80(41H,m),3.14-3.41(4H,m)、3.74-3.80(2H,m)、7.31-7,41(6H,m)、7.49-7.53(2H,m)
MS(TOF-MS)m/z;561.03(M+Na)+
【0231】
参考合成例4:Cbz-Phe-OFPSEの合成
【化38】
【0232】
(i)FPSE-OH(2.0g、3.7mmol)、Cbz-Phe-OH(1.3g、4.3mmol)を塩化メチレン(22g)と混合させ、0℃に冷却後、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(0.90g、4.7mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.01g、0.08mmol)を加えて1時間攪拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈した後、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、無色油状物のCbz-Phe-OFPSE(2.9g、3.5mmol)を収率96%で得た。
【0233】
MS(TOF-MS)m/z;842.54(M+Na)+
【0234】
合成例8:Fmoc-Phe-Phe-OFPSEの合成
【化39】
【0235】
(i)Cbz-Phe-OFPSE(2.0g、2.4mmol)、10質量%Pd-C(0.3g)を2,2,2-トリフルオロエタノール(30g)と混合させ、水素ガス雰囲気下、室温で42時間攪拌した。得られた反応液をろ過後、ろ液を濃縮し、無色油状物のH-Phe-OFPSE(1.6g)を収率98%で得た。
【0236】
(ii)H-Phe-OFPSE(1.5g、2.2mmol)、Fmoc-Phe-OH(1.2、3.1mmol)を塩化メチレン(20g)と混合させ、0℃に冷却後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.52g、4.0mmol)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(1.4g、3.3mmol)を加えて2時間攪拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈した後、10質量%硫酸水素カリウム水溶液、5質量%アンモニア水溶液、5%食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体のFmoc-Phe-Phe-OFPSE(2.2g、2.1mmol)を収率91%で得た。
【0237】
MS(TOF-MS)m/z;1077.76(M+Na)+
【0238】
試験例2:有機溶媒への溶解性評価
[試験化合物]
溶解性の測定には、合成例8で得られた化合物を使用した。
【0239】
[試験方法]
試験化合物をトルエン、シクロペンチルメチルエーテル又は酢酸エチルに溶解させ、20℃で1時間以上撹拌した。得られた溶液を遠心ろ過した後、ろ液を下記測定条件で分析し、試験化合物の溶解量を算出した。
【0240】
[測定条件]
高速液体クロマトグラフィー:SHIMADZU製 HPLC-20A
カラム:XBridge C18(2.5μm、4.6×100mm)
カラムオ-ブン温度:40℃
溶離液:A=0.2vоl% トリフルオロ酢酸水溶液
B=0.2vоl% トリフルオロ酢酸アセトニトリル溶液
A/B=50/50(0-2分)、50/50-0/100(2-15分)、0/100(15-40分)
溶離液速度:1.0mL/分
検出波長:210nm
【0241】
[試験結果]
各有機溶媒100gに溶解した化合物の量は、表2の通り。合成例8の化合物は、参考合成例3の化合物と比較して、トルエン、シクロペンチルメチルエーテル及び酢酸エチルへの溶解性が向上した。
【0242】
【0243】
参考合成例5:1-ブロモ-4-((2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル)オキシ)-ベンゼンの合成
【化40】
【0244】
(i)2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクタン-1-オル(5.0g、18.6mmol),トリフェニルホスフィン(4.8g、18.3mmol)を塩化メチレン(50.0g)と混合させ、0℃に冷却後、N-ブロモスクシンイミド(3.3g、18.5mmol)を加えて3.5時間攪拌した。得られた反応液を濃縮後、n-ヘプタン(100mL)で希釈し、シリカゲルショートパッドでろ過した。ろ過物をn-ヘプタン(100mL)で洗浄し、得られたろ液を濃縮し、無色油状物の5-(ブロモメチル)-2,2,4,8,10,10-ヘキサメチルウンデカン(5.3g、16.0mmol)を収率86%で得た。
【0245】
(ii)炭酸カリウム(1.2g,9.0mmol)、4-ブロモフェノール(1.5g、8.9mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(25.0g)と混合させ、室温で5-(ブロモメチル)-2,2,4,8,10,10-ヘキサメチルウンデカン(2.5g、7.5mmol)を加えた後、120℃に昇温して22時間攪拌した。得られた反応液に水を加えて、ヘキサンで抽出した後、得られた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、無色油状物の(1-ブロモ-4-((2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル)オキシ)-ベンゼン(1.9g、4.4mmol)を収率59%で得た。
【0246】
1H-NMR(CDCl3)
δppm:0.87-0.94(23H,m),1.00-1.08(2H,m),1.16-1.50(8H,m),1.59-1.69(1H,m)、1.77-1.90(1H,m)、3.71-3.86(2H,m)、6.75-6.80(2H,m)、7.33-7.37(2H,m)
【0247】
合成例9:2-((4-((2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル)-オキシ)フェニル)ジメチルシリル)エタノール(MPSE-OH)の合成
【化41】
【0248】
(i)1-ブロモ-4-((2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル)オキシ)-ベンゼン(0.50g、1.2mmol)をテトラヒドロフラン(5.0g)と混合させ、-78℃で1.59Mのn-ブチルリチウム-ヘキサン溶液(0.9mL、1.4mmol)を滴下し、1時間撹拌した。得られた反応液に-78℃でクロロジメチルビニルシラン(0.22g、1.8mmol)とテトラヒドロフラン(1.0g)の混合液を滴下し、0.5時間撹拌した後、室温に昇温して0.5時間撹拌した。得られた反応液に水を加えて、酢酸エチルで抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を濃縮し、無色油状物の(4-((2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル)-オキシ)フェニル)ジメチルビニルシランの粗物(0.50g)を得た。
【0249】
(ii)上記で得られた4-((2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル)-オキシ)フェニル)ジメチルビニルシランの粗物(0.2g)をテトラヒドロフラン(1.0g)と混合させ、0℃で9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン2量体(0.17g、0.7mmol)とテトラヒドロフラン(1.0g)の混合液に滴下し、室温に昇温して1時間撹拌した。得られた反応液を0℃に冷却し、30質量%水酸化ナトリウム水溶液(0.15g、1.1mmol)、30質量%過酸化水素水(0.15g、1.3mmol)を滴下した後、室温に昇温して1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈し、飽和塩化アンモニウム、飽和食塩水で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、無色油状物のMPSE-OH(0.18g、0.4mmol)を2工程収率85%で得た。
【0250】
MS(ESI+)m/z;471.36(M+Na)+
【0251】
合成例10:2-((4-((2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル)-オキシ)フェニル)ジフェニルシリル)エタノール(TPSE-OH)の合成
【化42】
【0252】
(i)1-ブロモ-4-((2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル)オキシ)-ベンゼン(0.55g、1.3mmol)をテトラヒドロフラン(3.6g)と混合させ、-78℃で1.59Mのn-ブチルリチウム-ヘキサン溶液(1.1mL、1.4mmol)を滴下し、1.5時間撹拌した。得られた反応液に-78℃でクロロジフェニルビニルシラン(0.47g、1.9mmol)とテトラヒドロフラン(1.1g)の混合液を滴下し、20分間撹拌した後、室温に昇温して40分間撹拌した。得られた反応液に水を加えて、ヘキサンで抽出した後、水層を酢酸エチルで再度抽出した。得られた有機層を10質量%食塩水で洗浄し、得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、淡黄色油状物の(4-((2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル)-オキシ)フェニル)ジフェニルビニルシラン(0.64g、1.2mmol)を収率89%で得た。
【0253】
(ii)上記で得られた4-((2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクチル)-オキシ)フェニル)ジフェニルビニルシラン(0.25g、0.45mmol)をテトラヒドロフラン(1.8g)と混合させ、0℃で9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン2量体(0.17g、0.76mmol)とテトラヒドロフラン(1.8g)の混合液に滴下し、室温に昇温して4時間撹拌した。45℃に昇温した後、9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン2量体(0.057g、0.25mmol)を加えて0.5時間撹拌した。得られた反応液を0℃に冷却し、30質量%水酸化ナトリウム水溶液(0.19g、1.4mmol)、30質量%過酸化水素水(0.21g、1.9mmol)を滴下した後、室温に昇温して1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈し、10質量%食塩水、飽和塩化アンモニウム水溶液で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、無色油状物のTPSE-OH(0.13g、0.23mmol)を収率50%で得た。
【0254】
MS(ESI+)m/z;1167.80(2M+Na)+
【産業上の利用可能性】
【0255】
本発明により、ペプチドの高効率な製造方法を提供することができる。