IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニコンの特許一覧

<>
  • 特許-計測システム 図1
  • 特許-計測システム 図2
  • 特許-計測システム 図3
  • 特許-計測システム 図4
  • 特許-計測システム 図5
  • 特許-計測システム 図6
  • 特許-計測システム 図7
  • 特許-計測システム 図8
  • 特許-計測システム 図9
  • 特許-計測システム 図10
  • 特許-計測システム 図11
  • 特許-計測システム 図12
  • 特許-計測システム 図13
  • 特許-計測システム 図14
  • 特許-計測システム 図15
  • 特許-計測システム 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】計測システム
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/00 20060101AFI20240618BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240618BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G03F9/00 H
G03F7/20 501
G01B11/00 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022179762
(22)【出願日】2022-11-09
(62)【分割の表示】P 2021082242の分割
【原出願日】2017-08-22
(65)【公開番号】P2023022066
(43)【公開日】2023-02-14
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2016164168
(32)【優先日】2016-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 剛
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 祐一
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/102484(WO,A1)
【文献】特開2006-245030(JP,A)
【文献】特開2009-212518(JP,A)
【文献】特開2009-147317(JP,A)
【文献】国際公開第2006/126569(WO,A1)
【文献】国際公開第03/065428(WO,A1)
【文献】特開2011-155040(JP,A)
【文献】国際公開第99/036949(WO,A1)
【文献】特開2004-022552(JP,A)
【文献】特開2002-367886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロデバイスの製造ラインで用いられる計測システムであって、
基板に形成された複数のマークの位置情報を取得する第1計測装置と、
前記第1計測装置を制御可能な制御装置と、を備え、
前記第1計測装置は、前記基板の第m層(mは1以上の整数)に形成された複数のマークの絶対位置情報と、前記基板の第n層(nは、mより大きい、2以上の整数)に形成された複数のマークの絶対位置情報とを、前記第n層の前記複数のマーク形成後、前記第n層に対するプロセス処理の前にそれぞれ取得して、前記基板上の前記第m層の前記複数のマークの絶対位置情報に基づいて求められる情報と、前記基板上の前記第n層の前記複数のマークの絶対位置情報に基づいて求められる情報とのそれぞれを出力し、
前記出力する情報は、前記第m層と前記第n層の重ね合わせずれに関する情報を含み、前記第m層に形成された複数のマークの絶対位置情報と、前記第n層に形成された複数のマークの絶対位置情報とに基づいて、前記重ね合わせずれが、前記第m層と前記第n層とのいずれに主として起因するかを判別する計測システム。
【請求項2】
前記プロセス処理はエッチング処理を含み、前記第n層に形成された複数のマークの絶対位置情報の取得は、前記第n層に対するエッチング処理の前に行われる請求項1に記載の計測システム。
【請求項3】
前記出力する情報は、前記複数のマークとともに前記基板上の前記第m層に形成された複数の区画領域の配列情報を含む請求項1または2に記載の計測システム。
【請求項4】
前記第m層の前記複数のマークの絶対位置情報に基づいて求められる情報は、前記第m層の露光に用いられた露光装置に提供される請求項1から3のいずれか一項に記載の計測システム。
【請求項5】
前記第n層の前記複数のマークの絶対位置情報に基づいて求められる情報は、前記第n層の露光に用いられた露光装置に提供される請求項のいずれか一項に記載の計測システム。
【請求項6】
前記第m層に形成された複数のマークは第1マークを含み、前記第n層に形成された複数のマークは、前記第1マークに対応する第2マークを含み、
前記出力する情報は、前記第1マークと前記第2マークの位置ずれに関する情報を含む請求項のいずれか一項に記載の計測システム。
【請求項7】
前記第1計測装置を用いて取得された、前記基板上の前記第m層および前記第n層の前記複数のマークの絶対位置情報をそれぞれ出力する請求項1~のいずれか一項に記載の計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測システム及び基板処理システム、並びにデバイス製造方法に係り、さらに詳しくはマイクロデバイスの製造ラインで用いるための計測システム及び計測システムを含む基板処理システム、並びに基板処理システムの一部を構成する露光装置を用いるデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等のマイクロデバイスを製造するリソグラフィ工程では、ウエハあるいはガラスプレート等の基板(以下、ウエハと総称する)上に多層の回路パターンを重ね合わせて形成するが、各層間での重ね合わせ精度が悪いと、マイクロデバイスは所定の回路特性を発揮することができず、場合によっては不良品ともなる。このため、通常、ウエハ上の複数のショット領域の各々に予めマーク(アライメントマーク)を形成しておき、露光装置のステージ座標系上におけるそのマークの位置(座標値)を検出する。しかる後、このマーク位置情報と新たに形成されるパターン(例えばレチクルパターン)の既知の位置情報とに基づいて、ウエハ上の1つのショット領域をそのパターンに対して位置合わせするウエハアライメントが行われる。
【0003】
ウエハアライメントの方式として、スループットとの兼ね合いから、ウエハ上のいくつかのショット領域(サンプルショット領域又はアライメントショット領域とも呼ばれる)のみのアライメントマークを検出し、ウエハ上のショット領域の配列を統計的手法で算出するエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA)が主流となっている。
【0004】
しかるに、リソグラフィ工程において、ウエハ上に重ね合わせ露光を行う場合、レジスト塗布、現像、エッチング、CVD(ケミカル・ベイパー・デポジション)、CMP(ケミカル・メカニカル・ポリッシング)などのプロセス処理工程を経たウエハには、そのプロセス起因で前層のショット領域の配列に歪みが生じることがあり、その歪みが重ね合わせ精度の低下の要因となり得る。かかる点に鑑み、近時の露光装置は、ウエハ変形の1次成分のみならず、プロセス起因で生じるショット配列の非線形成分等を補正するグリッド補正機能等を有している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかるに、集積回路の微細化に伴い重ね合わせ精度の要求が次第に厳しくなっており、より高精度な補正を行うため、サンプルショット領域の数を増やすこと、すなわち検出すべきマークの数を増やすことが必要不可欠である。また、ウエハが載置されるステージを2つ備えたツインステージタイプの露光装置では、1つのステージ上でウエハに対する露光が行われるのと並行して、もう1つのステージ上でウエハ上のマークの検出等を実行することができるため、スループットを極力低下させず、サンプルショット領域の数を増やすことが可能である。
【0006】
しかしながら、今や重ね合わせ精度に対する要求はさらに厳しくなっており、たとえツインステージタイプの露光装置であっても、スループットを低下させることなく、要求される重ね合わせ精度を実現するのに十分な数のマークを検出することは困難になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国出願公開第2002/0042664号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様によれば、マイクロデバイスの製造ラインで用いられる計測システムであって、それぞれが基板に対する計測処理を行なう複数の計測装置と、前記複数の計測装置を制御可能な制御装置と、を備え、前記複数の計測装置は、基板に形成された複数のマークの位置情報を取得する第1計測装置を、少なくとも1つ含む計測システムが、提供される。
【0009】
第2の態様によれば、マイクロデバイスの製造ラインで用いられる計測システムであって、基板に形成された複数のマークの位置情報を取得する第1計測装置と、前記第1計測装置を制御可能な制御装置と、を備え、前記第1計測装置は、露光及び現像処理が施された基板に形成された複数のマークの位置情報を取得する、計測システムが、提供される。
【0010】
第3の態様によれば、マイクロデバイスの製造ラインで用いられる計測システムであって、基板に形成された複数のマークの位置情報を取得する第1計測装置と、前記第1計測装置を制御可能な制御装置と、を備え、前記第1計測装置は、エッチング処理、及び成膜処理後であって、感光材が塗布される前の基板に形成された複数のマークの位置情報を取得する、計測システムが、提供される。
【0011】
第4の態様によれば、第3の態様に係る計測システムと、前記計測システムに含まれる前記第1計測装置による前記複数のマークの位置情報の計測が終了した前記基板が載置される基板ステージを有し、該基板ステージ上に載置された前記基板に対して、該基板上の複数のマークのうち選択された一部のマークの位置情報を取得するアライメント計測及び前記基板をエネルギビームで露光する露光が行われる露光装置と、を備える基板処理システムが、提供される。
【0012】
第5の態様によれば、第1の態様に係る計測システム及び第2の態様に係る計測システムのいずれかと、前記計測システムに含まれる前記第1計測装置による前記複数のマークの位置情報の計測が終了した前記基板が載置される基板ステージを有し、該基板ステージ上に載置された前記基板に対して、該基板上の複数のマークのうち選択された一部のマークの位置情報を取得するアライメント計測及び前記基板をエネルギビームで露光する露光が行われる露光装置と、を備える基板処理システムが、提供される。
【0013】
第6の態様によれば、第4の態様に係る基板処理システム及び第5の態様に係る基板処理システムのいずれかの一部を構成する露光装置を用いて基板を露光することと、露光された前記基板を現像することと、を含むデバイス製造方法が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係る基板処理システムを、マイクロデバイスの製造ラインで用いられる他の装置とともに示すブロック図である。
図2図1の基板処理システムが備える計測システムを示す外観斜視図である。
図3】チャンバの天井部を取り去った図1の計測システムを示す平面図である。
図4】計測システムの一部を構成する計測装置の構成を概略的に示す斜視図である。
図5図5(A)は、図4の計測装置の一部省略した正面図(-Y方向から見た図)、図5(B)は、マーク検出系の光軸AX1を通るXZ平面で断面した計測装置の一部省略した断面図である。
図6】マーク検出系の光軸AX1を通るYZ平面で断面した計測装置の一部省略した断面図である。
図7図7(A)は、第1位置計測システムのヘッド部を示す斜視図、図7(B)は、第1位置計測システムのヘッド部の平面図(+Z方向から見た図)である。
図8】第2位置計測システムの構成を説明するための図である。
図9】計測装置の制御系を中心的に構成する制御装置の入出力関係を示すブロック図である。
図10】1ロットのウエハを処理する際の制御装置の処理アルゴリズムに対応するフローチャートである。
図11図1に示される露光装置の構成を概略的に示す図である。
図12】露光装置が備える露光制御装置の入出力関係を示すブロック図である。
図13図13(A)は、高次偏微分補正の一例を説明するための図、図13(B)は、1次近似補正の一例を説明するための図である。
図14】第2の実施形態に係る、計測装置を用いる露光装置起因のウエハグリッドの管理方法を、図1の基板処理システムに適用した場合の処理の流れを概略的に示す図である。
図15】第2の実施形態に係る、計測装置を用いる重ね合わせ計測方法を、図1の基板処理システムに適用した場合の処理の流れを概略的に示す図である。
図16】半導体デバイスの製造プロセスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
《第1の実施形態》
以下、第1の実施形態について図1図13(B)に基づいて説明する。図1には、マイクロデバイス(例えば、半導体デバイス)の製造ラインで用いられる第1の実施形態に係る基板処理システム1000が、製造ラインで用いられる他の装置とともにブロック図にて示されている。
【0016】
基板処理システム1000は、図1に示されるように、互いにインラインにて接続された露光装置200及びコータ・デベロッパ(レジスト塗布現像装置)300を備えている。また、基板処理システム1000は、図1に示されるように、計測システム500、を備えている。以下では、コータ・デベロッパ300を、C/D300と略記する。なお、インラインにて接続されるとは、ウエハ(基板)の搬送経路が実質的につながるように、異なる装置同士が接続されることを意味し、本明細書では、かかる意味で、「インラインにて接続」あるいは「インライン接続」なる用語を用いる。例えば、異なる2つの装置がインライン接続されている場合、ロボットアームなどの搬送機構を用いて、一方の装置で処理を終えたウエハ(基板)を、他方の装置へ、順次搬送することができる。なお、異なる装置がインターフェース部を介して接続される場合も、「インライン接続」と呼ぶ場合もある。
【0017】
計測システム500は、ここでは、同一のチャンバ502(図2参照)内に所定方向に隣接して配置された3台の計測装置100~100、及び計測システム500の全体を統括的に管理する計測システム制御装置530等を備えている。計測装置100~100のそれぞれは、制御装置60(i=1~3)を有し、制御装置60のそれぞれは、計測システム制御装置530に接続されている。なお、制御装置60(i=1~3)を備えずに、計測システム制御装置530で計測装置100~100のそれぞれを制御しても良い。
【0018】
基板処理システム1000が備える、露光装置200及びC/D300は、いずれもチャンバを有し、チャンバ同士が隣接して配置されている。
【0019】
露光装置200が有する露光制御装置220と、C/D300が有するC/D制御装置320と、計測システム制御装置530とは、ローカルエリアネットワーク(LAN)1500を介して互いに接続されている。LAN1500には、製造ラインの全体を管理するホストコンピュータ(HOST)2000、解析装置3000及びホストコンピュータ2000の管理下にある各種プロセス処理(ウエハプロセスの前工程のプロセス処理)を行う装置群も接続されている。図1では、この装置群のうち、重ね合わせ計測器400、エッチング装置2100、CMP装置2200及びCVD装置などの成膜装置2300が、代表的に示されている。この他、LAN1500には、洗浄装置、酸化・拡散装置及びイオン注入装置なども接続されている。
【0020】
なお、基板処理システム1000に、ホストコンピュータ2000、解析装置3000、重ね合わせ計測器400、エッチング装置2100、CMP装置2200、成膜装置2300の少なくとも一つが含まれても良い。
【0021】
最初に、計測システム500について説明する。図2には、計測システム500の外観斜視図が示されている。計測システム500は、基板処理システム1000を構成する他の装置から離れてクリーンルームの床面F上に設置されている。すなわち、計測システム500は、露光装置200、及びC/D300に、インライン接続されていない。
【0022】
計測システム500は、前述の3台の計測装置100~100が、その内部に配置されたチャンバ502と、該チャンバ502の一側に配置された、キャリアシステム510とを備えている。本実施形態において、キャリアシステム510は、EFEM(Equipment Front End Module)システムである。以下、キャリアシステム510を、EFEMシステム510と呼んでも良い。
【0023】
なお、後述するように、本実施形態のキャリアシステム510は、FOUP(Front-Opening Unified Pod )用であるが、FOUPに限らず、1つ、又は複数のウエハを収容可能な他の種類のキャリア(例えば、SMIFポッド)をキャリアシステム510で扱っても良い。
【0024】
以下では、チャンバ502と、EFEMシステム510とが並ぶ方向をX軸方向とし、床面Fに平行な面内でX軸に垂直な方向をY軸方向とし、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸方向として説明を行う。
【0025】
図2に示されるように、チャンバ502は、直方体の形状を有し、その内部の第1空間には、図3に示されるように、計測装置100~100がX軸方向に並んで収納されている。図3は、チャンバ502の天井部を取り去った計測システム500の平面図を示し、この図3には、計測装置100~100それぞれが有するチャンバ101(i=1~3)が示されている。なお、計測装置100~100それぞれがチャンバ101を備えていなくても良い。
【0026】
計測システム500は、複数の計測装置100~100をX軸方向に並べているので、計測システム500のY軸方向の幅を大きくすることなく、複数の計測装置100~100を備えることができる。計測システム500などが設置される工場においては、オペレータ用の通路がY軸方向に延びており、上述の各種処理を行う装置(エッチング装置2100、CMP装置2200など)は、その通路に沿って配置される。したがって、工場の床面Fを有効活用するために、計測システム500のY軸方向の幅を抑えることは重要である。
【0027】
また、チャンバ502内の第1空間の-Y側には、計測装置100~100のそれぞれとウエハの受け渡しをすることができる搬送システム521が配置されている。なお、以下では、便宜上、第1空間の-Y側の、搬送システム521が設置された空間を第2空間と呼ぶ。図2において、太い破線は、第1空間と第2空間との仮想的な仕切りを示す。
【0028】
チャンバ502の-X側(前面側)に隣接して、床面F上には、EFEMシステム510が設置されている。EFEMシステム510は、ウエハ搬送用のロボットが内部に設置されたEFEM本体512と、EFEM本体512の-X側(前面側)に取り付けられたロードポートとを備えたモジュール機器である。EFEM本体512には、その前面側にFOUP用の複数のロードポート514(キャリア載置装置と呼んでも良い)がY軸方向に並んで設けられている。なお、本実施形態では、EFEM本体512は3つのロードポート514を有しているが、ロードポートの数は、3つに限らず、1つでも良いし、2つでも良いし、4つ以上でも良い。ここで、FOUPとは、SEMI スタンダードE47.1に規定されている、ミニエンバイロメント方式の半導体工場で使われるウエハ用の搬送、保管を目的としたキャリアであり、正面開口式カセット一体型搬送、保管箱である。図2及び図3では、3つのロードポート514それぞれの上にFOUP520が設置されており、FOUP内には、計測対象として、少なくとも1枚のウエハが収容されている。
【0029】
本実施形態では、図示は省略したが、3つのロードポート514の真上のクリーンルームの天井近傍に、OHT(Overhead Hoist Transport)用の軌道レールが設けられている。OHTとは、天井レベルの空間を走行する無人搬送車であり、このOHTによって、FOUP520が、ロードポート514上に搬入される。
【0030】
3つのロードポート514のそれぞれは、載置部515と載置部515に載置されたFOUP520のカバーを開閉する開閉機構518とを有する。開閉機構518は、ロードポート514の載置部515に載置されたFOUP520に対向する、EFEM本体512のフロント部分に設けられ、FOUP520の内部を外部に対して気密状態を保ったまま、FOUP520のカバーを開閉可能である。この種の開閉機構は、周知であるから、開閉機構518の構成等の説明は省略する。
【0031】
EFEM本体512の内部には、ウエハを出し入れするため、カバーが開けられた状態の3つのFOUP内部にアクセス可能なウエハ搬送用のロボット516(図3参照)が設けられている。なお、EFEM本体512の上部に、EFEM本体512の内部のクリーン度を保つためのFFU(Fan Filter Unit、不図示)を設け、空調機からの温調空気を、FFUを介してEFEM本体512の内部に送っても良い。なお、空調機からの温調空気を用いてウエハの温度を安定させるバッファを、EFEM本体512の内部に設けても良い。
【0032】
チャンバ502の第2空間に対向するEFEM本体512の背面側の部分には、開口が形成されており、該開口が開閉部材によって開閉されるようになっている。
【0033】
EFEMシステム510の構成各部(ロボット516、開閉機構518など)は、計測システム制御装置530(図1参照)によって制御される。
【0034】
チャンバ502の第2空間の内部には、図3に示されるように、搬送システム521が設置されている。第2空間内のY軸方向の一側と他側とにそれぞれ配置され、チャンバ502のほぼ全長に渡ってX軸方向に延びるガイド522A、522Bと、ガイド522Aに沿って往復移動可能なロード用の搬送部材524と、ガイド522Bに沿って往復移動可能なアンロード用の搬送部材526とが設けられている。
【0035】
ロード用の搬送部材524は、ガイド522Aに内蔵された固定子と、搬送部材524に設けられた可動子とを有するリニアモータ(固定子が内蔵されたガイドと同一の符号を用いて、リニアモータ522Aと表記する)によって、ガイド522Aに沿って移動可能である。また、アンロード用の搬送部材526は、ガイド522Bに内蔵された固定子と、搬送部材526に設けられた可動子とを有するリニアモータ(固定子が内蔵されたガイドと同一の符号を用いて、リニアモータ522Bと表記する)によって、ガイド522Bに沿って移動可能である。リニアモータ522A、522Bは、計測システム制御装置530によって制御される。なお、搬送部材524,526はエアスライダなどを用いて非接触で移動するようにしても良い。また、搬送部材524,526を動かす駆動機構は、上述のリニアモータ(522A,522B)に限られず、回転モータとボールねじ機構を用いた構成であっても良い。
【0036】
ガイド522Aは、ガイド522Bより高い位置に配置されている。このため、ロード用の搬送部材524が、アンロード用の搬送部材526の上方の空間を移動する。
【0037】
なお、上述の搬送システム521において、搬送部材524、ガイド522Aをウエハのロードとアンロードに用い、搬送部材526とガイド522Bを、ウエハのロードとアンロードに用いても良い。
【0038】
また、上述の搬送システム521は、複数の計測装置100~100のそれぞれとウエハの受け渡しが可能であるが、搬送システム521が、計測装置100だけとウエハの受け渡しを行う搬送装置(ガイドと搬送部材を含む)、計測装置100だけとウエハの受け渡しを行う搬送装置(ガイドと搬送部材を含む)、計測装置100だけとウエハの受け渡しを行う搬送装置(ガイドと搬送部材を含む)を有していても良い。この場合、搬送装置のそれぞれは、ロード用のガイドと搬送部材、及びアンロード用のガイドと搬送部材を有していても良いし、ロードとアンロードに兼用されるガイドと搬送部材を有していても良い。
【0039】
図3に示されるように、計測装置100には、搬送部材524及び搬送部材526との間で、ウエハの受け渡しを行う多関節型ロボットを有するウエハ搬送系70(i=1~3)が、設けられている。ウエハ搬送系70(i=1~3)は、チャンバ101の開口を介して搬送部材524及び搬送部材526との間で、ウエハの受け渡しを行う。
【0040】
搬送部材524は、EFEM本体512とチャンバ502との境界の近傍に設定されたウエハ受け渡し位置(ロード側ウエハ受け渡し位置)でロボット516からFOUP520内の計測処理対象のウエハを受け取り、ウエハ搬送系70(i=1~3のいずれか)による計測装置100とのウエハ受け渡し位置まで搬送する。上記の計測処理対象のウエハは、本実施形態では、少なくとも第1層目の露光が終了し、さらに現像終了後、エッチング、酸化・拡散、成膜、イオン注入、平坦化(CMP)などのウエハプロセスの前工程のプロセス処理のうちの必要な処理が終了したウエハであって、レジスト塗布のためC/D300に搬入される前のウエハである。
【0041】
搬送部材526は、ウエハ搬送系70(i=1~3のいずれか)から計測が終了したウエハを受け取り、EFEM本体512とチャンバ502との境界の近傍に設定されたアンロード側ウエハ受け渡し位置(前述のロード側ウエハ受け渡し位置の下方の位置)へ搬送する。
【0042】
ロボット516は、搬送部材526によってアンロード側ウエハ受け渡し位置へ搬送された計測処理済みのウエハを、FOUP520内に搬入する(戻す)。
【0043】
図1に戻り、計測装置100~100のそれぞれとしては、本実施形態では、同様の構成の計測装置が用いられている。
【0044】
なお、本実施形態では、搬送部材524、搬送部材526などの、計測装置100とのウエハの受け渡しを行うための搬送システム521が、チャンバ502の第2空間内に配置されることで、搬送部材524、搬送部材526によってウエハが搬送される空間が、結果的に気密空間となっている場合について例示したが、これに限らず、3つの計測装置100~100を床面F上に並べて配置し、これらの計測装置100~100(同一チャンバ内に収容されているか否かを問わない)に、搬送システム521が収容された気密室がその内部に形成される別のチャンバを併設しても良い。
【0045】
また、搬送部材524,526の替わりに、ガイドに沿って往復移動可能な多関節型ロボットを用いても良い。この場合、ウエハ搬送系70は、多関節型ロボットを備えていなくてもよく、搬送システム521の多関節型ロボットとウエハの受け渡しを行う、ロード用のウエハ保持部、及びアンロード用のウエハ保持部を備えていれば良い。
【0046】
また、搬送部材524,526の替わりに、多関節型ロボットを用いる場合、EFEMシステム510が、ロボット516を備えていなくても良い。この場合、搬送システム521の多関節型ロボットがFOUP520からウエハを取り出したり、FOUP520にウエハを戻したりしても良い。
【0047】
ここで、計測装置100について詳述する。図4には、計測装置100の構成が斜視図にて概略的に示されている。なお、図4に示される計測装置100は、実際には、前述のチャンバ101と、該チャンバ101の内部に収容された構成部分とで構成されるが、以下では、チャンバ101に関する説明は省略する。本実施形態に係る計測装置100では、後述するようにマーク検出系MDSが設けられており、以下では、マーク検出系MDSの光軸AX1の方向が前述のZ軸方向に一致し、これに直交するXY平面内で、後述する可動ステージが長ストロークで移動する方向が前述のY軸方向に一致しているものとするとともに、X軸、Y軸、Z軸回りの回転(傾斜)方向を、それぞれθx、θy及びθz方向として、説明を行う。ここで、マーク検出系MDSは、その下端(先端)には円筒状の鏡筒部41が設けられ、鏡筒部41の内部には、共通のZ軸方向の光軸AX1を有する複数のレンズエレメントから成る光学系(屈折光学系)が収納されている。本明細書では、説明の便宜上から鏡筒部41の内部の屈折光学系の光軸AX1を、マーク検出系MDSの光軸AX1と称している。
【0048】
図5(A)には、図4の計測装置100の正面図(-Y方向から見た図)が一部省略して示され、図5(B)には、光軸AX1を通るXZ平面で断面した計測装置100の断面図が一部省略して示されている。また、図6には、光軸AX1を通るYZ平面で断面した計測装置100の断面図が一部省略して示されている。
【0049】
計測装置100は、図4に示されるように、光軸AX1に直交するXY平面にほぼ平行な上面を有する定盤12と、定盤12上に配置され、ウエハWを保持して定盤12に対してX軸及びY軸方向に所定ストロークで可動し、かつZ軸、θx、θy及びθz方向に微小移動(微小変位)が可能なウエハスライダ(以下、スライダと略記する)10と、スライダ10を駆動する駆動システム20(図9参照)と、スライダ10の定盤12に対するX軸、Y軸、Z軸、θx、θy及びθzの各方向(以下、6自由度方向と称する)の位置情報を計測する第1位置計測システム30(図4では不図示、図6図9参照)と、スライダ10に搭載された(保持された)ウエハW上のマークを検出するマーク検出系MDSを有する計測ユニット40と、マーク検出系MDS(計測ユニット40)と定盤12との相対的な位置情報を計測する第2位置計測システム50(図9参照)と、駆動システム20によるスライダ10の駆動を制御しつつ、第1位置計測システム30による計測情報及び第2位置計測システム50による計測情報を取得し、マーク検出系MDSを用いてスライダ10に保持されたウエハW上の複数のマークの位置情報を求める制御装置60図4では不図示、図9参照)と、を備えている。
【0050】
定盤12は、平面視矩形(又は正方形)の直方体部材から成り、その上面は平坦度が非常に高くなるように仕上げられて、スライダ10の移動の際のガイド面が形成されている。定盤12の素材としては、ゼロ膨張材料とも呼ばれる低熱膨張率の材料、例えばインバー型合金、極低膨張鋳鋼、あるいは極低膨張ガラスセラミックスなどが用いられている。
【0051】
定盤12には、-Y側の面のX軸方向の中央部に1箇所、+Y側の面のX軸方向の両端部に各1箇所、合計で3箇所に底部が開口した切り欠き状の空所12aが形成されている。図4では、その3箇所の空所12aのうち、-Y側の面に形成された空所12aが示されている。それぞれの空所12aの内部には、除振装置14が配置されている。定盤12は、床面F上に設置された平面視矩形のベースフレーム16のXY平面に平行な上面上で3つの除振装置14によって、上面がXY平面にほぼ平行となるように3点支持されている。なお、除振装置14の数は、3つに限られない。
【0052】
スライダ10は、図6に示されるように、底面の四隅に空気静圧軸受(エアベアリング)18が各1つ、合計4つ、それぞれの軸受面が、スライダ10の下面とほぼ同一面となる状態で取付けられており、これら4つのエアベアリング18から定盤12に向けて噴出される加圧空気の軸受面と定盤12の上面(ガイド面)との間の静圧(隙間内圧力)によって、スライダ10が、定盤12の上面上で所定のクリアランス(空隙、ギャップ)、例えば数μm程度のクリアランスを介して浮上支持されている。本実施形態では、スライダ10は、ゼロ膨張材料の一種であるゼロ膨張ガラス(例えば、ショット社のゼロデュアなど)がその素材として用いられている。
【0053】
スライダ10の上部には、ウエハWの直径より僅かに大きな内径の平面視円形の所定深さの凹部10aが形成され、凹部10aの内部にウエハWの直径とほぼ同じ直径のウエハホルダWHが配置されている。ウエハホルダWHとしては、バキュームチャック、静電チャック、あるいはメカニカルチャックなどを用いることができるが、一例として、ピンチャック方式のバキュームチャックが、用いられるものとする。ウエハWは、その上面が、スライダ10の上面とほぼ同一面にとなる状態で、ウエハホルダWHによって吸着保持されている。ウエハホルダWHには、複数の吸引口が形成されており、この複数の吸引口が不図示の真空配管系を介してバキュームポンプ11(図9参照)に接続されている。そして、バキュームポンプ11のオン・オフ等が、制御装置60によって制御される。なお、スライダ10とウエハホルダWHのいずれか一方、又は両方を「第1基板保持部材」と呼んでも良い。
【0054】
また、スライダ10には、ウエハホルダWHに形成された例えば3つの円形開口を介して上下動し、ウエハ搬送系70図4では不図示、図9参照)と協働してウエハをウエハホルダWH上にロードするとともにウエハをウエハホルダWH上からアンロードする上下動部材(不図示)が設けられている。上下動部材を駆動する駆動装置13が制御装置60によって制御される(図9参照)。
【0055】
本実施形態では、ウエハホルダWHとして、一例として、直径300mmの300ミリウエハを吸着保持可能なサイズのものが用いられているものとする。なお、ウエハ搬送系70がウエハホルダWH上のウエハを、上方から非接触で吸引保持する非接触保持部材、例えばベルヌーイチャックなどを有している場合には、スライダ10に上下動部材を設ける必要はなく、ウエハホルダWHに上下動部材のための円形開口を形成する必要もない。
【0056】
図5(B)及び図6に示されるように、スライダ10の下面のウエハWよりも一回り大きい領域には、2次元グレーティング(以下、単にグレーティングと呼ぶ)RG1が水平(ウエハW表面と平行)に配置されている。グレーティングRG1は、X軸方向を周期方向とする反射型の回折格子(X回折格子)と、Y軸方向を周期方向とする反射型回折格子(Y回折格子)と、を含む。X回折格子及びY回折格子の格子線のピッチは、例えば1μmと設定されている。
【0057】
除振装置14は、能動型振動分離システム(いわゆるAVIS(Active Vibration Isolation System))であり、加速度計、変位センサ(例えば静電容量センサなど)、及びアクチュエータ(例えばボイスコイルモータなど)、並びにエアダンパとして機能するエアマウント等を備えている。除振装置14は、比較的高周波の振動を、エアマウント(エアダンパ)によって減衰させることができるとともに、アクチュエータにより除振(制振)することができる。したがって、除振装置14は、定盤12とベースフレーム16との間で振動が伝達するのを回避することができる。なお、エアマウント(エアダンパ)に代えて、油圧式のダンパを用いても良い。
【0058】
ここで、エアマウントに加えてアクチュエータを設けているのは、エアマウントの気体室内の気体の内圧は高いため、制御応答が20Hz程度しか確保できないので、高応答の制御が必要な場合には、不図示の加速度計などの出力に応じてアクチュエータを制御する必要があるからである。但し、床振動などの微振動は、エアマウントによって除振される。
【0059】
除振装置14の上端面は、定盤12に接続されている。エアマウントには、不図示の気体供給口を介して気体(例えば圧縮空気)を供給することが可能であり、エアマウントは、内部に充填された気体量(圧縮空気の圧力変化)に応じてZ軸方向に所定のストローク(例えば、1mm程度)で伸縮する。このため、3つの除振装置14それぞれが有するエアマウントを用いて定盤12の3箇所を下方から個別に上下動させることにより、定盤12及びこの上に浮上支持されたスライダ10を、Z軸方向、θx方向、及びθy方向それぞれの位置を任意に調整できるようになっている。また、除振装置14のアクチュエータは、定盤12を、Z軸方向に駆動するのみならず、X軸方向及びY軸方向にも駆動可能である。なお、X軸方向及びY軸方向への駆動量は、Z軸方向への駆動量に比べて小さい。3つの除振装置14は、制御装置60に接続されている(図9参照)。なお、3つの除振装置14のそれぞれが、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に限らず、例えば6自由度方向に定盤12を移動できるアクチュエータを備えていても良い。制御装置60は、第2位置計測システム50によって計測されるマーク検出系MDS(計測ユニット40)と定盤12との相対的な位置情報に基づいて、後述する第1位置計測システム30のヘッド部32が固定される定盤12の6自由度方向の位置が、マーク検出系MDSに対して所望の位置関係を維持するように、3つの除振装置14のアクチュエータを常時リアルタイムで制御している。なお、3つの除振装置14の各々をフィードフォワード制御しても良い。例えば、制御装置60は、第1位置計測システム30の計測情報に基づいて、3つの除振装置14の各々をフィードフォワード制御するようにしても良い。なお、制御装置60による除振装置14の制御についてはさらに後述する。
【0060】
駆動システム20は、図9に示されるように、スライダ10をX軸方向に駆動する第1駆動装置20Aと、スライダ10を第1駆動装置20Aと一体でY軸方向に駆動する第2駆動装置20Bとを含む。
【0061】
図4及び図6からわかるように、スライダ10の-Y側の側面には、磁石ユニット(又はコイルユニット)から成り、側面視逆L字状の一対の可動子22aが、X軸方向に所定間隔で固定されている。スライダ10の+Y側の側面には、図6に示されるように、磁石ユニット(又はコイルユニット)から成る一対の可動子22b(ただし、+X側の可動子22bは不図示)が、X軸方向に所定間隔で固定されている。一対の可動子22aと一対の可動子22bとは、左右対称に配置されているが、互いに同様に構成されている。
【0062】
可動子22a、22bは、図4図6に示されるように、平面視矩形枠状の可動ステージ24の一部を構成するY軸方向に所定距離離れて配置され、それぞれX軸方向に延びる一対の板部材24a、24bのXY平面に実質的に平行な上面上に非接触で支持されている。すなわち、可動子22a、22bの下面(板部材24a、24bにそれぞれ対向する面)には、エアベアリング(不図示)がそれぞれ設けられ、これらのエアベアリングが板部材24a、24bに対して発生する浮上力(加圧空気の静圧)により、可動子22a、22bは、可動ステージ24によって、下方から非接触で支持されている。なお、各一対の可動子22a、22bが固定されたスライダ10の自重は、前述したように、4つのエアベアリング18が定盤12に対して発生する浮上力によって支持されている。
【0063】
一対の板部材24a、24bそれぞれの上面には、図4図6に示されるように、コイルユニット(又は磁石ユニット)から成る固定子26a、26bが、X軸方向の両端部を除く領域に配置されている。
【0064】
一対の可動子22aと固定子26aとの間の電磁相互作用により、一対の可動子22aを、X軸方向に駆動する駆動力(電磁力)及びY軸方向に駆動する駆動力(電磁力)が発生し、一対の可動子22bと固定子26bとの間の電磁相互作用により、一対の可動子22bを、X軸方向に駆動する駆動力(電磁力)及びY軸方向に駆動する駆動力(電磁力)が発生する。すなわち、一対の可動子22aと固定子26aとによって、X軸方向及びY軸方向の駆動力を発生するXYリニアモータ28Aが構成され、一対の可動子22bと固定子26bとによって、X軸方向及びY軸方向の駆動力を発生するXYリニアモータ28Bが構成され、XYリニアモータ28AとXYリニアモータ28Bとによって、スライダ10を、X軸方向に所定ストロークで駆動するとともに、Y軸方向に微小駆動する第1駆動装置20Aが構成されている(図9参照)。第1駆動装置20Aは、XYリニアモータ28AとXYリニアモータ28Bとがそれぞれ発生するX軸方向の駆動力の大きさを異ならせることにより、スライダ10を、θz方向に駆動することができる。第1駆動装置20Aは、制御装置60によって制御される(図9参照)。本実施形態では、後述する第2駆動装置とともに第1駆動装置20Aにより、スライダ10をY軸方向に駆動する粗微動駆動系を構成する関係から第1駆動装置20Aは、X軸方向の駆動力のみならず、Y軸方向の駆動力も発生するが、第1駆動装置20Aは、Y軸方向の駆動力を必ずしも発生する必要はない。
【0065】
可動ステージ24は、一対の板部材24a、24bと、X軸方向に所定距離離れて配置され、それぞれY軸方向に延びる一対の連結部材24c、24dと、を有している。連結部材24c、24dのY軸方向の両端部には、段部がそれぞれ形成されている。そして、連結部材24c、24dそれぞれの-Y側の段部の上に板部材24aの長手方向の一端部と他端部が載置された状態で、連結部材24c、24dと板部材24aとが一体化されている。また、連結部材24c、24dそれぞれの+Y側の段部の上に板部材24bの長手方向の一端部と他端部が載置された状態で、連結部材24c、24dと板部材24bとが一体化されている(図5(B)参照)。すなわち、このようにして、一対の板部材24a、24bが一対の連結部材24c、24dにより連結され、矩形枠状の可動ステージ24が構成されている。
【0066】
図4及び図5(A)に示されるように、ベースフレーム16上面のX軸方向の両端部近傍には、Y軸方向に延びる一対のリニアガイド27a、27bが、固定されている。+X側に位置する一方のリニアガイド27aの内部には、上面及び-X側の面の近傍にY軸方向のほぼ全長に渡るコイルユニット(又は磁石ユニット)から成るY軸リニアモータ29Aの固定子25a(図5(B)参照)が収納されている。リニアガイド27aの上面及び-X側の面に対向して、断面L字状の磁石ユニット(又はコイルユニット)から成り、固定子25aとともに、Y軸リニアモータ29Aを構成する可動子23aが配置されている。リニアガイド27aの上面及び-X側の面にそれぞれ対向する、可動子23aの下面及び+X側の面には、対向する面に対して加圧空気を噴出するエアベアリングがそれぞれ固定されている。そのうち、特に、可動子23aの+X側の面に固定されたエアベアリングとしては、真空予圧型のエアベアリングが用いられている。この真空予圧型のエアベアリングは、軸受面とリニアガイド27aの-X側の面との間の加圧空気の静圧と真空予圧力とのバランスにより、可動子23aとリニアガイド27aとの間のX軸方向のクリアランス(隙間、ギャップ)を一定の値に維持する。
【0067】
可動子23aの上面上には、複数、例えば2つの直方体部材から成るXガイド19がY軸方向に所定間隔を隔てて固定されている。2つのXガイド19のそれぞれには、Xガイド19とともに一軸ガイド装置を構成する断面逆U字状のスライド部材21が、非接触で係合している。スライド部材21のXガイド19に対向する3つの面には、エアベアリングがそれぞれ設けられている。
【0068】
2つのスライド部材21は、図4に示されるように、連結部材24cの下面(-Z側の面)にそれぞれ固定されている。
【0069】
-X側に位置する他方のリニアガイド27bは、内部にコイルユニット(又は磁石ユニット)から成るY軸リニアモータ29Bの固定子25bを収納し、左右対称であるが、リニアガイド27aと同様に構成されている(図5(B)参照)。リニアガイド27bの上面及び+X側の面に対向して、左右対称であるが可動子23aと同様の断面L字状の磁石ユニット(又はコイルユニット)から成り、固定子25bとともに、Y軸リニアモータ29Bを構成する可動子23bが配置されている。リニアガイド27bの上面及び+X側の面にそれぞれ対向して、可動子23bの下面及び-X側の面には、エアベアリングがそれぞれ固定され、特に、可動子23bの-X側の面に固定されたエアベアリングとして、真空予圧型のエアベアリングが用いられている。この真空予圧型のエアベアリングによって、可動子23bとリニアガイド27bとの間のX軸方向のクリアランス(隙間、ギャップ)が一定の値に維持される。
【0070】
可動子23bの上面と、連結部材24dの底面との間には、前述と同様、Xガイド19と該Xガイド19に非接触で係合するスライド部材21とによって構成される一軸ガイド装置が2つ設けられている。
【0071】
可動ステージ24は、+X側と-X側の各2つ(合計4つ)の一軸ガイド装置を介して、可動子23a、23bによって下方から支持され、可動子23a、23b上でX軸方向に移動可能である。このため、前述した第1駆動装置20Aにより、スライダ10がX軸方向に駆動された際に、その駆動力の反力が固定子26a、26bが設けられた可動ステージ24に作用し、可動ステージ24はスライダ10とは反対方向に運動量保存則に従って移動する。すなわち、スライダ10に対するX軸方向の駆動力の反力に起因する振動の発生が、可動ステージ24の移動によって防止(あるいは効果的に抑制)される。すなわち、可動ステージ24が、スライダ10のX軸方向の移動に際し、カウンタマスとして機能する。ただし、可動ステージ24を、必ずしもカウンタマスとして機能させる必要はない。なお、スライダ10は、可動ステージ24に対してY軸方向に微小移動するのみなので特に設けていないが、可動ステージ24に対してスライダ10をY軸方向に駆動する駆動力に起因する振動の発生を防止(あるいは効果的に抑制)するためのカウンタマスを設けても良い。
【0072】
Y軸リニアモータ29Aは、可動子23aと固定子25aとの間の電磁相互作用により可動子23aをY軸方向に駆動する駆動力(電磁力)を発生し、Y軸リニアモータ29Bは、可動子23bと固定子25bとの間の電磁相互作用により可動子23bをY軸方向に駆動する駆動力(電磁力)を発生する。
【0073】
Y軸リニアモータ29A、29Bが発生するY軸方向の駆動力は、+X側と-X側の各2つの一軸ガイド装置を介して、可動ステージ24に作用する。これにより、可動ステージ24と一体的に、スライダ10が、Y軸方向に駆動される。すなわち、本実施形態では、可動ステージ24と、4つの一軸ガイド装置と、一対のY軸リニアモータ29A、29Bとによって、スライダ10をY軸方向に駆動する第2駆動装置20B(図9参照)が構成されている。
【0074】
本実施形態では、一対のY軸リニアモータ29A、29Bは、定盤12とは物理的に分離されているとともに、3つの除振装置14によって振動的にも分離されている。なお、一対のY軸リニアモータ29A、29Bの固定子25a、25bがそれぞれ設けられたリニアガイド27a、27bを、ベースフレーム16に対してY軸方向に移動可能な構成にして、スライダ10のY軸方向の駆動時におけるカウンタマスとして機能させても良い。
【0075】
計測ユニット40は、図4に示されるように、-Y側の面に底部が開口した切り欠き状の空所42aが形成されたユニット本体42と、その空所42a内に基端部が挿入された状態でユニット本体42に接続された前述のマーク検出系MDSと、マーク検出系MDSの先端の鏡筒部41をユニット本体42に接続する接続機構43とを有している。
【0076】
接続機構43は、鏡筒部41を不図示の取付部材を介して背面側(+Y側)で支持する支持プレート44と、支持プレート44をそれぞれの一端部で支持し他端部がユニット本体42の底面に固定された一対の支持アーム45a、45bとを含む。
【0077】
本実施形態では、スライダ10上に保持されているウエハ上面には、感応剤(レジスト)が塗布さているのに対応して、マーク検出系MDSとして、レジストを感光させない波長の検出ビームを用いるものが用いられる。マーク検出系MDSとして、例えばウエハ上に塗布されているレジストを感光させないブロードバンドな検出光束を対象マークに照射し、その対象マークからの反射光により受光面に結像された対象マークの像と不図示の指標(内部に設けられた指標板上の指標パターン)の像とを撮像素子(CCD等)を用いて撮像し、それらの撮像信号を出力する画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系が用いられている。マーク検出系MDSからの撮像信号は、信号処理装置49(図4では不図示、図9参照)を介して制御装置60に供給されるようになっている(図9参照)。マーク検出系MDSは、光学系の焦点位置を調整するアライメントオートフォーカス機能を有している。
【0078】
鏡筒部41と支持プレート44との間に、図4に示されるように、概略二等辺三角形状のヘッド取付部材51が配置されている。ヘッド取付部材51には、図4のY軸方向に貫通する開口部が形成され、この開口部内に挿入された取付部材(不図示)を介して、鏡筒部41が、支持プレート44に取付けられている(固定されている)。また、ヘッド取付部材51も、その裏面が支持プレート44に固定されている。このようにして、鏡筒部41(マーク検出系MDS)とヘッド取付部材51と支持プレート44とが、一対の支持アーム45a、45bを介してユニット本体42と一体化されている。
【0079】
ユニット本体42の内部には、マーク検出系MDSから検出信号として出力される撮像信号を処理して検出中心に対する対象マークの位置情報を算出し、制御装置60に出力する前述の信号処理装置49などが配置されている。ユニット本体42は、ベースフレーム16上に設置された-Y側から見て門型の支持フレーム46上に、複数、例えば3つの除振装置48を介して下方から3点支持されている。各除振装置48は、能動型振動分離システム(いわゆるAVIS(Active Vibration Isolation System))であり、加速度計、変位センサ(例えば静電容量センサなど)、及びアクチュエータ(例えばボイスコイルモータなど)、並びにエアダンパ又は油圧式のダンパなどの機械式のダンパ等を備え、除振装置48は、比較的高周波の振動を、機械式のダンパによって減衰させることができるとともに、アクチュエータにより除振(制振)することができる。したがって、各除振装置48は、比較的高周波の振動が、支持フレーム46とユニット本体42との間で伝達するのを回避することができる。
【0080】
なお、マーク検出系MDSとしては、FIA系に限らず、例えばコヒーレントな検出光を対象マークに照射し、その対象マークから発生する2つの回折光(例えば同次数の回折光、あるいは同方向に回折する回折光)を干渉させて検出して検出信号を出力する回折光干渉型のアライメント検出系を、FIA系に代えて用いても良い。あるいは、回折光干渉型のアライメント系をFIA系とともに用い、2つの対象マークを同時に検出しても良い。さらに、マーク検出系MDSとして、スライダ10を所定方向に移動している間、対象マークに対して、計測光を所定方向に走査させるビームスキャン型のアライメント系を用いても良い。また、本実施形態では、マーク検出系MDSが、アライメントオートフォーカス機能を有しているものとしたが、これに代えて、あるいはこれに加えて、計測ユニット40が、焦点位置検出系、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示されるものと同様の構成の斜入射方式の多点焦点位置検出系を、備えていても良い。
【0081】
第1位置計測システム30は、図5(B)及び図6に示されるように、定盤12の上面に形成された凹部内に配置され、定盤12に固定されたヘッド部32を有する。ヘッド部32は、上面がスライダ10の下面(グレーティングRG1の形成面)に対向している。ヘッド部32の上面とスライダ10の下面との間に所定のクリアランス(隙間、ギャップ)、例えば数mm程度のクリアランスが形成されている。
【0082】
第1位置計測システム30は、図9に示されるように、エンコーダシステム33と、レーザ干渉計システム35とを備えている。エンコーダシステム33は、ヘッド部32からスライダ10の下面の計測部(グレーティングRG1の形成面)に複数のビームを照射するとともに、スライダ10の下面の計測部からの複数の戻りビーム(例えば、グレーティングRG1からの複数の回折ビーム)を受光して、スライダ10の位置情報を取得可能である。エンコーダシステム33は、スライダ10のX軸方向の位置を計測するXリニアエンコーダ33x、スライダ10のY軸方向の位置を計測する一対のYリニアエンコーダ33ya、33ybを含む。エンコーダシステム33では、例えば米国特許第7,238,931号明細書、及び米国特許出願公開第2007/288,121号明細書などに開示されるエンコーダヘッド(以下、適宜ヘッドと略述する)と同様の構成の回折干渉型のヘッドが用いられている。なお、ヘッドは、光源及び受光系(光検出器を含む)、並びに光学系を含むが、本実施形態では、これらのうち、少なくとも光学系がグレーティングRG1に対向してヘッド部32の筐体内部に配置されていれば良く、光源及び受光系の少なくとも一方は、ヘッド部32の筐体外部に配置されていても良い。
【0083】
図7(A)には、ヘッド部32が斜視図にて示されており、図7(B)には、ヘッド部32の上面を+Z方向から見た平面図が示されている。エンコーダシステム33は、スライダ10のX軸方向の位置を1つのXヘッド37xで計測し、Y軸方向の位置を一対のYヘッド37ya、37ybで計測する(図7(B)参照)。すなわち、グレーティングRG1のX回折格子を用いてスライダ10のX軸方向の位置を計測するXヘッド37xによって、前述のXリニアエンコーダ33xが構成され、グレーティングRG1のY回折格子を用いてスライダ10のY軸方向の位置を計測する一対のYヘッド37ya、37ybによって、一対のYリニアエンコーダ33ya、33ybが構成されている。
【0084】
図7(A)及び図7(B)に示されるように、Xヘッド37xは、ヘッド部32の中心を通るX軸に平行な直線LX上で、ヘッド部32の中心を通るY軸に平行な直線CLから等距離にある2点(図7(B)の白丸参照)から、計測ビームLBx、LBx図7(A)中に実線で示されている)を、グレーティングRG1上の同一の照射点に照射する。計測ビームLBx、LBxの照射点、すなわちXヘッド37xの検出点(図7(B)中の符号DP参照)は、マーク検出系MDSの検出中心にX軸方向及びY軸方向の位置が一致している。
【0085】
ここで、計測ビームLBx、LBxは、光源からのビームが不図示の偏光ビームスプリッタによって偏光分離されたもので、計測ビームLBx、LBxがグレーティングRG1に照射されると、これらの計測ビームLBx、LBxのX回折格子で回折された所定次数、例えば1次回折ビーム(第1回折ビーム)が、それぞれ、不図示のレンズ、四分の一波長板を介して反射ミラーで折り返され、四分の一波長板を2回通過することで偏光方向が90度回転され、元の光路を通って偏光ビームスプリッタに再度入射し、同軸に合成された後、計測ビームLBx、LBxの1次回折ビーム同士の干渉光が、不図示の光検出器によって受光されることで、スライダ10のX軸方向の位置が計測される。
【0086】
図7(B)に示されるように、一対のYヘッド37ya、37ybそれぞれは、直線CLの+X側、-X側に配置されている。Yヘッド37yaは、図7(A)及び図7(B)に示されるように、直線LYa上で直線LXからの距離が等しい2点(図7(B)の白丸参照)から、グレーティングRG1上の共通の照射点に図7(A)においてそれぞれ破線で示される計測ビームLBya,LByaを照射する。計測ビームLBya,LByaの照射点、すなわちYヘッド37yaの検出点が、図7(B)に符号DPyaで示されている。
【0087】
Yヘッド37ybは、直線CLに関して、Yヘッド37yaの計測ビームLBya,LByaの射出点に対称な2点(図7(B)の白丸参照)から、計測ビームLByb,LBybを、グレーティングRG1上の共通の照射点DPybに照射する。図7(B)に示されるように、Yヘッド37ya、37ybそれぞれの検出点DPya、DPybは、X軸に平行な直線LX上に配置される。
【0088】
計測ビームLBya,LByaも、同一のビームが偏光ビームスプリッタによって偏光分離されたもので、これらの計測ビームLBya,LByaのY回折格子による所定次数、例えば1次回折ビーム(第2回折ビーム)同士の干渉光が、上述と同様にして、不図示の光検出器で光電検出されることで、スライダ10のY軸方向の位置が計測される。計測ビームLByb,LBybについても、計測ビームLBya,LByaと同様に、1次回折ビーム(第2回折ビーム)同士の干渉光が、不図示の光検出器で光電検出されることで、スライダ10のY軸方向の位置が計測される。
【0089】
ここで、制御装置60は、スライダ10のY軸方向の位置を、2つのYヘッド37ya、37ybの計測値の平均に基づいて決定する。したがって、本実施形態では、スライダ10のY軸方向の位置は、検出点DPya、DPybの中点DPを実質的な計測点として計測される。中点DPは、計測ビームLBx,LBXのグレーティングRG1上の照射点と一致する。
【0090】
すなわち、本実施形態では、スライダ10のX軸方向及びY軸方向の位置情報の計測に関して、共通の検出点を有し、この検出点のXY平面内で位置が、マーク検出系MDSの検出中心に、例えばnmレベルで一致するように、制御装置60によって、3つの除振装置14のアクチュエータがリアルタイムで制御される。この、3つの除振装置14のアクチュエータの制御は、第2位置計測システム50によって計測されるマーク検出系MDS(計測ユニット40)と定盤12との相対的な位置情報に基づいて、行われる。したがって、本実施形態では、制御装置60は、エンコーダシステム33を用いることで、スライダ10上に載置されたウエハW上のアライメントマークを計測する際、スライダ10のXY平面内の位置情報の計測を、常にマーク検出系MDSの検出中心の直下(スライダ10の裏面側)で行うことができる。また、制御装置60は、一対のYヘッド37ya、37ybの計測値の差に基づいて、スライダ10のθz方向の回転量を計測する。
【0091】
レーザ干渉計システム35は、スライダ10の下面の計測部(グレーティングRG1の形成された面)に測長ビームを入射させるとともに、その戻りビーム(例えば、グレーティングRG1の形成された面からの反射光)を受光して、スライダ10の位置情報を取得可能である。レーザ干渉計システム35は、図7(A)に示されるように、4本の測長ビームLBz、LBz、LBz、LBzを、スライダ10の下面(グレーティングRG1の形成された面)に入射させる。レーザ干渉計システム35は、これら4本の測長ビームLBz、LBz、LBz、LBzそれぞれを照射するレーザ干渉計35a~35d(図9参照)を備えている。本実施形態では、レーザ干渉計35a~35dにより、4つのZヘッドが構成されている。
【0092】
レーザ干渉計システム35では、図7(A)及び図7(B)に示されるように、4本の測長ビームLBz、LBz、LBz、LBzが、検出点DPを中心とし、X軸に平行な2辺とY軸に平行な2辺とを有する正方形の各頂点に相当する4点からZ軸に平行に射出される。この場合、測長ビームLBz、LBzの射出点(照射点)は直線LYa上で直線LXから等距離にあり、残りの測長ビームLBz、LBzの射出点(照射点)は、直線LYb上で直線LXから等距離にある。本実施形態では、グレーティングRG1の形成された面は、レーザ干渉計システム35からの各測長ビームの反射面をも兼ねる。制御装置60は、レーザ干渉計システム35を用いて、スライダ10のZ軸方向の位置、θx方向及びθy方向の回転量の情報を計測する。なお、上述した説明から明らかなように、スライダ10は、Z軸、θx及びθyの各方向に関しては、定盤12に対して前述した駆動システム20によって積極的に駆動されることはないが、底面の4隅に配置された4つのエアベアリング18によって定盤12上に浮上支持されているため、実際には、スライダ10は、Z軸、θx及びθyの各方向に関して定盤12上でその位置が変化する。すなわち、スライダ10は、実際には、Z軸、θx及びθyの各方向に関して定盤12に対して可動である。特に、スライダ10のθx及びθyの各方向の変位は、エンコーダシステム33の計測誤差(アッベ誤差)を生じさせる。かかる点を考慮して、第1位置計測システム30(レーザ干渉計システム35)により、スライダ10のZ軸、θx及びθyの各方向の位置情報を計測することとしている。
【0093】
なお、スライダ10のZ軸方向の位置、θx方向及びθy方向の回転量の情報の計測のためには、グレーティングRG1の形成された面上の異なる3点にビームを入射させることができれば足りるので、Zヘッド、例えばレーザ干渉計は、3つあれば良い。なお、スライダ10の下面にグレーティングRG1を保護するための保護ガラスを設け、保護ガラスの表面にエンコーダシステム33からの各計測ビームを透過させ、レーザ干渉計システム35からの各測長ビームの透過を阻止する、波長選択フィルタを設けても良い。
【0094】
以上の説明からわかるように、制御装置60は、第1位置計測システム30のエンコーダシステム33及びレーザ干渉計システム35を用いることで、スライダ10の6自由度方向の位置を計測することができる。この場合、エンコーダシステム33では、計測ビームの空気中での光路長が極短く、かつXヘッド73xからグレーティングRG1に照射される2つの計測ビームLBx、LBxの光路長同士、Yヘッド37yaからグレーティングRG1に照射される2つの計測ビームLBya,LByaの光路長同士、及びYヘッド37ybからグレーティングRG1に照射される計測ビームLByb,LBybの光路長同士が、互いにほぼ等しいため、空気揺らぎの影響が殆ど無視できる。したがって、エンコーダシステム33により、スライダ10のXY平面内(θz方向も含む)の位置情報を高精度に計測できる。また、エンコーダシステム33によるX軸方向、及びY軸方向の実質的なグレーティングRG1上の検出点、及びレーザ干渉計システム35によるZ軸方向のスライダ10下面上の検出点は、それぞれマーク検出系MDSの検出中心にXY平面内で一致するので、検出点とマーク検出系MDSの検出中心とのXY平面内のずれに起因するいわゆるアッベ誤差の発生が実質的に無視できる程度に抑制される。したがって、制御装置60は、第1位置計測システム30を用いることで、検出点とマーク検出系MDSの検出中心とのXY平面内のずれに起因するアッベ誤差なく、スライダ10のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置を高精度に計測できる。
【0095】
しかし、マーク検出系MDSの光軸AX1に平行なZ軸方向に関しては、ウエハWの表面の位置で、エンコーダシステム33によってスライダ10のXY平面内の位置情報を計測しているわけではない、すなわちグレーティングRG1の配置面とウエハWの表面とのZ位置が一致しているわけではない。したがって、グレーティングRG1(すなわち、スライダ10)がXY平面に対して傾斜している場合、エンコーダシステム33の各エンコーダの計測値に基づいて、スライダ10を位置決めすると、結果的に、グレーティングRG1の配置面とウエハWの表面とのZ位置の差ΔZ(すなわちエンコーダシステム33による検出点とマーク検出系MDSによる検出中心(検出点)とのZ軸方向の位置ずれ)に起因して、グレーティングRG1のXY平面に対する傾斜に応じた位置決め誤差(一種のアッベ誤差)が生じてしまう。しかるに、この位置決め誤差(位置制御誤差)は、差ΔZと、ピッチング量θx、ローリング量θyとを用いて、簡単な演算で求めることができ、これをオフセットとし、そのオフセット分だけエンコーダシステム33(の各エンコーダ)の計測値を補正した補正後の位置情報に基づいて、スライダ10を位置決めすることで、上記の一種のアッベ誤差の影響を受けることがなくなる。あるいは、エンコーダシステム33(の各エンコーダ)の計測値を補正する代わりに、上記のオフセットに基づいて、スライダ10を位置決めすべき目標位置などのスライダを動かすための1つ、又は複数の情報を補正しても良い。
【0096】
なお、グレーティングRG1(すなわち、スライダ10)がXY平面に対して傾斜している場合、その傾斜に起因する位置決め誤差が生じないように、ヘッド部32を動かしても良い。すなわち、第1位置計測システム30(例えば、干渉計システム35)によりグレーティングRG1(すなわち、スライダ10)がXY平面に対して傾斜していることが計測された場合には、第1位置計測システム30を用いて取得される位置情報に基づいて、ヘッド部32を保持している定盤12を動かしても良い。定盤12は、上述したように、除振装置14を用いて移動することができる。
【0097】
また、グレーティングRG1(すなわち、スライダ10)がXY平面に対して傾斜している場合、その傾斜に起因する位置決め誤差に基づき、マーク検出系MDSを用いて取得されるマークの位置情報を補正しても良い。
【0098】
第2位置計測システム50は、図4図5(A)及び図5(B)に示されるように、前述のヘッド取付部材51の長手方向の一端部と他端部の下面にそれぞれ設けられた一対のヘッド部52A、52Bと、ヘッド部52A、52Bに対向して配置されたスケール部材54A、54Bとを有する。スケール部材54A、54Bの上面は、ウエハホルダWHに保持されたウエハWの表面と同一高さとされている。スケール部材54A、54Bそれぞれの上面には、反射型の2次元グレーティングRG2a、RG2bが形成されている。2次元グレーティング(以下、グレーティングと略記する)RG2a、RG2bは、ともに、X軸方向を周期方向とする反射型回折格子(X回折格子)と、Y軸方向を周期方向とする反射型回折格子(Y回折格子)と、を含む。X回折格子及びY回折格子の格子線のピッチは、例えば1μmと設定されている。
【0099】
スケール部材54A、54Bは、熱膨張率が低い材料、例えば前述したゼロ膨張材料から成り、図5(A)及び図5(B)に示されるように、支持部材56をそれぞれ介して定盤12上に固定されている。本実施形態では、グレーティングRG2a、RG2bと、ヘッド部52A、52Bとが、数mm程度のギャップを隔てて対向するように、スケール部材54A、54B及び支持部材56の寸法が定められている。
【0100】
図8に示されるように、ヘッド取付部材51の+X側の端部の下面に固定された一方のヘッド部52Aは、同一の筐体の内部に収容された、X軸及びZ軸方向を計測方向とするXZヘッド58Xと、Y軸及びZ軸方向を計測方向とするYZヘッド58Yとを含む。XZヘッド58X(より正確には、XZヘッド58Xが発する計測ビームのグレーティングRG2a上の照射点)と、YZヘッド58Y(より正確には、YZヘッド58Yが発する計測ビームの2次元グレーティングRG2a上の照射点)とは、同一のY軸に平行な直線上に配置されている。
【0101】
他方のヘッド部52Bは、マーク検出系MDSの光軸AX1を通るY軸に平行な直線(以下、基準軸と呼ぶ)LVに関してヘッド部52Aと対称に配置されているが、ヘッド部52Aと同様に構成されている。すなわち、ヘッド部52Bは、基準軸LVに関してXZヘッド58X、YZヘッド58Yと対称に配置されたXZヘッド58X、YZヘッド58Yとを有し、XZヘッド58X、YZヘッド58YのそれぞれからグレーティングRG2b上に照射される計測ビームの照射点は、同一のY軸に平行な直線上に設定される。
【0102】
XZヘッド58X1及び58X、並びにYZヘッド58Y1及び58Yのそれぞれとしては、例えば米国特許第7,561,280号明細書に開示される変位計測センサヘッドと同様の構成のエンコーダヘッドを用いることができる。
【0103】
ヘッド部52A,52Bは、それぞれスケール部材54A、54Bを用いて、グレーティングRG2a、RG2bのX軸方向の位置(X位置)及びZ軸方向の位置(Z位置)を計測するXZリニアエンコーダ、及びY軸方向の位置(Y位置)及びZ位置を計測するYZリニアエンコーダを構成する。ここで、グレーティングRG2a、RG2bは、定盤12上に支持部材56をそれぞれ介して固定されたスケール部材54A、54Bの上面に形成されており、ヘッド部52A,52Bは、マーク検出系MDSと一体のヘッド取付部材51に設けられている。この結果、ヘッド部52A,52Bは、マーク検出系MDSに対する定盤12の位置(マーク検出系MDSと定盤12との位置関係)を計測する。以下では、便宜上、XZリニアエンコーダ、YZリニアエンコーダを、XZヘッド58X1、58X、YZヘッド58Y1、58Yとそれぞれ同一の符号を用いて、XZリニアエンコーダ58X1、58X、及びYZリニアエンコーダ58Y1、58Yと表記する(図9参照)。
【0104】
本実施形態では、XZリニアエンコーダ58X1とYZリニアエンコーダ58Y1とによって、定盤12のマーク検出系MDSに対するX軸、Y軸、Z軸、及びθxの各方向に関する位置情報を計測する4軸エンコーダ58が構成される(図9参照)。同様に、XZリニアエンコーダ58XとYZリニアエンコーダ58Yとによって、定盤12のマーク検出系MDSに対するX軸、Y軸、Z軸、及びθxの各方向に関する位置情報を計測する4軸エンコーダ58が構成される(図9参照)。この場合、4軸エンコーダ58、58でそれぞれ計測される定盤12のマーク検出系MDSに対するZ軸方向に関する位置情報に基づいて、定盤12のマーク検出系MDSに対するθy方向に関する位置情報が求められ(計測され)、4軸エンコーダ58、58でそれぞれ計測される定盤12のマーク検出系MDSに対するY軸方向に関する位置情報に基づいて、定盤12のマーク検出系MDSに対するθz方向に関する位置情報が求められる(計測される)。
【0105】
したがって、4軸エンコーダ58と4軸エンコーダ58とによって、定盤12のマーク検出系MDSに対する6自由度方向の位置情報、すなわちマーク検出系MDSと定盤12との6自由度方向に関する相対位置の情報を計測する第2位置計測システム50が構成される。第2位置計測システム50によって計測されるマーク検出系MDSと定盤12との6自由度方向に関する相対位置の情報は、制御装置60に常時供給されており、制御装置60は、この相対位置の情報に基づいて、第1位置計測システム30の検出点が、マーク検出系MDSの検出中心に対して、所望の位置関係になるように、具体的には、第1位置計測システム30の検出点が、マーク検出系MDSの検出中心とXY平面内の位置が例えばnmレベルで一致し、かつスライダ10上のウエハWの表面がマーク検出系MDSの検出位置に一致するように、3つの除振装置14のアクチュエータをリアルタイムで制御している。このとき、例えば基準軸LVに、前述した直線CLが一致する。なお、第1位置計測システム30の検出点が、マーク検出系MDSの検出中心に対して、所望の位置関係になるように制御可能であれば、第2位置計測システム50は、6自由度のすべての方向で相対位置の情報を計測できなくても良い。
【0106】
前述の第1位置計測システム30の説明と上記の第2位置計測システム50との説明から明らかなように、計測装置100では、第1位置計測システム30と第2位置計測システム50とによって、マーク検出系MDSに対するスライダ10の6自由度方向の位置情報を計測する位置計測系が構成されている。
【0107】
図9には、本実施形態に係る計測装置100の制御系を中心的に構成する制御装置60の入出力関係を示すブロック図が示されている。制御装置60は、ワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等を含み、計測装置100の構成各部を統括制御する。図9に示されるように、計測装置100は、図4に示される構成部分とともにチャンバ101内に一部が配置されたウエハ搬送系70を備えている。ウエハ搬送系70は、前述の通り、例えば水平多関節型ロボットから成る。
【0108】
次に、上述のようにして構成された本実施形態に係る計測装置100において、1ロットのウエハを処理する際の一連の動作について、制御装置60の処理アルゴリズムに対応する図10のフローチャートに基づいて説明する。
【0109】
前提として、計測装置100の計測対象であるウエハWは300ミリウエハであり、ウエハW上には、前層以前の露光により、複数、例えばI個(一例としてI=98)のショット領域と呼ばれる区画領域(以下、ショットと呼ぶ)がマトリクス状の配置で形成され、各ショットを取り囲むストリートライン又は各ショット内部のストリートライン(1ショット複数チップ取りの場合)の上には、複数種類のマーク、例えばサーチアライメント用のサーチアライメントマーク(サーチマーク)、ファインアライメント用のウエハアライメントマーク(ウエハマーク)などが設けられているものとする。この複数種類のマークはショットとともに形成される。本実施形態では、サーチマーク及びウエハマークとして、2次元マークが用いられるものとする。
【0110】
また、計測装置100は、マーク検出系MDSによるマーク検出条件が互いに異なる複数の計測モードを設定可能であるものとする。複数の計測モードとして、一例として、全ウエハに対し全ショットについて各1つのウエハマークを検出するAモード、及びロット内の最初の所定枚数のウエハについては全てのショットについて複数のウエハマークを検出し、そのウエハマークの検出結果に応じて、ロット内の残りのウエハについて、ショット毎に検出対象となるウエハマーク決定し、その決定したウエハマークを検出するBモードと、を設定可能であるものとする。
【0111】
また、計測装置100のオペレータにより、予めウエハWに対するアライメント計測に必要な情報が不図示の入力装置を介して入力され、制御装置60のメモリ内に記憶されているものとする。ここで、アライメント計測に必要な情報としては、ウエハWの厚さ情報、ウエハホルダWHのフラットネス情報、ウエハW上のショット及びアライメントマークの配置の設計情報などの各種情報が含まれる。なお、計測モードの設定情報は、例えば、オペレータにより、不図示の入力装置を介して予め入力されているものとする。
【0112】
図10のフローチャートに対応する処理アルゴリズムがスタートするのは、例えばオペレータ又はホストコンピュータ2000から計測開始が指示されたときである。このとき、1ロットに含まれる複数のウエハ(例えば、25枚のウエハ)は、計測装置100のチャンバ101内の所定位置にあるウエハキャリア内に収納されているものとする。これに限らず、計測装置100のよる計測処理と並行して1ロットのウエハのそれぞれを計測装置100内に順次搬入することとしても良い。例えば、ロボット516、搬送部材524及び搬送部材526等を制御する計測システム制御装置530の管理の下、所定のFOUP520内の1ロットのウエハを、ロボット516によって順次取り出し、搬送部材524によって、計測装置100との所定の受け渡し位置まで搬送することとしても良い。この場合、図10のフローチャートに対応する処理アルゴリズムがスタートするのは、計測システム制御装置530によって制御装置60及びロボット516に搬送開始の指令がなされたときとなる。
【0113】
なお、露光装置200と計測システム500が接続されている場合には、露光装置200の露光制御装置220から、ホストコンピュータ2000を介さずに、計測システム制御装置530に計測開始が指示されても良い。
【0114】
なお、計測装置100は、バーコードリーダ(不図示)を備えており、ウエハ搬送系70図9参照)によるウエハの搬送中に、バーコードリーダにより、各ウエハの識別情報、例えばウエハ番号、ロット番号などの読み取りが適宜行われる。以下では、説明の簡略化のため、バーコードリーダを用いた各ウエハの識別情報の読み取りに関する説明は省略する。なお、計測装置100のそれぞれが、バーコードリーダを備えていなくても良い。例えば、搬送システム521にバーコードリーダを配置しても良い。
【0115】
まず、ステップS102でロット内のウエハの番号を示すカウンタのカウント値iを1に初期化する(i←1)。
【0116】
次のステップS104で、ウエハWを、スライダ10上にロードする。このウエハWのロードは、制御装置60の管理の下、ウエハ搬送系70とスライダ10上の上下動部材とによって行われる。具体的には、ウエハ搬送系70によりウエハWがウエハキャリア(又は受け渡し位置)からローディングポジションにあるスライダ10の上方に搬送され、駆動装置13により上下動部材が所定量上昇駆動されることで、ウエハWが上下動部材に渡される。そして、ウエハ搬送系70がスライダ10の上方から退避した後、駆動装置13により上下動部材が下降駆動されることで、ウエハWがスライダ10上のウエハホルダWH上に載置される。そして、バキュームポンプ11がオンにされ、スライダ10上にロードされたウエハWがウエハホルダWHで真空吸着される。なお、計測装置100のよる計測処理と並行して1ロットに含まれる複数のウエハのそれぞれを計測装置100内に順次搬入する場合、上記のウエハのロードに先立って、ロボット516によって、所定のFOUP520内の複数のウエハが、1枚ずつロボット516によって順次取り出され、ロボット516から搬送部材524に渡され、搬送部材524によって計測装置100との所定の受け渡し位置まで搬送され、ウエハ搬送系70に渡されることになる。
【0117】
次のステップS106では、ウエハWのZ軸方向の位置(Z位置)を調整する。このZ位置の調整に先立って、制御装置60により、第2位置計測システム50によって計測されるマーク検出系MDSと定盤12とのZ軸方向、θy方向、θx方向に関する相対的な位置情報に基づいて、3つの除振装置14のエアマウントの内圧(除振装置14が発生するZ軸方向の駆動力)が制御され、定盤12は、その上面が、XY平面に平行になり、Z位置が所定の基準位置となるように設定されている。ウエハWは厚さが一様であると考えられる。したがって、ステップS106では、制御装置60は、メモリ内のウエハWの厚さ情報に基づいて、マーク検出系MDSによるオートフォーカス機能により光学系の焦点位置を調整可能な範囲にウエハW表面が設定されるように、3つの除振装置14が発生するZ軸方向の駆動力、例えばエアマウントの内圧(圧縮空気の量)を調整して、定盤12をZ軸方向に駆動し、ウエハW表面のZ位置を調整する。なお、計測ユニット40が焦点位置検出系を備えている場合には、制御装置60は、焦点位置検出系の検出結果(出力)に基づいてウエハ表面のZ位置調整を行うこととしても良い。例えば、マーク検出系MDSが、先端部の光学素子(対物光学素子)を介してウエハW表面のZ軸方向の位置を検出する焦点位置検出系を備えていても良い。また、焦点位置検出系の検出結果に基づくウエハWの表面のZ位置の調整は、除振装置14を使って定盤12を動かして、定盤12とともにスライダ10を動かすことによって行なうことができる。なお、スライダ10を、XY平面内の方向のみならず、Z軸方向、θx方向及びθy方向にも駆動可能な構成の駆動システム20を採用し、その駆動システム20を使ってスライダ10を動かしても良い。なお、ウエハ表面のZ位置調整は、ウエハ表面の傾斜調整を含んでいても良い。ウエハ表面の傾斜を調整するために駆動システム20を用いることによって、グレーティングRG1の配置面とウエハWの表面とのZ位置の差ΔZに起因する誤差(一種のアッベ誤差)が生じる可能性がある場合には、上述したような対策の少なくとも1つを実行すれば良い。
【0118】
次のステップS108では、ウエハWのサーチアライメントを行う。具体的には、例えば、ウエハW中心に関してほぼ対称に周辺部に位置する少なくとも2つのサーチマークをマーク検出系MDSを用いて検出する。制御装置60は、駆動システム20によるスライダ10の駆動を制御して、それぞれのサーチマークをマーク検出系MDSの検出領域(検出視野)内に位置決めしつつ、第1位置計測システム30による計測情報及び第2位置計測システム50による計測情報を取得し、マーク検出系MDSを用いてウエハWに形成されたサーチマークを検出した時の検出信号と、第1位置計測システム30による計測情報(及び第2位置計測システム50による計測情報)とに基づいて、各サーチマークの位置情報を求める。
【0119】
より具体的には、制御装置60は、信号処理装置49から出力されるマーク検出系MDSの検出結果(検出信号から求まるマーク検出系MDSの検出中心(指標中心)と各サーチマークとの相対位置関係)と、各サーチマーク検出時の第1位置計測システム30の計測値(及び第2位置計測システム50の計測値と)に基づいて、2つのサーチマークの基準座標系上の位置座標を求める。すなわち、制御装置60は、マーク検出系MDSの検出信号から求まるマーク検出系MDSの検出中心(指標中心)と各サーチマークとの相対位置関係、各サーチマーク検出時の第1位置計測システム30の計測値、及び第2位置計測システム50の計測値に基づいて、2つのサーチマークの基準座標系上の位置座標を求める。ここで、基準座標系は、第1位置計測システム30の測長軸によって規定される直交座標系である。
【0120】
しかる後、2つのサーチマークの位置座標からウエハWの残留回転誤差を算出し、この回転誤差がほぼ零となるようにスライダ10を微小回転させる。これにより、ウエハWのサーチアライメントが終了する。なお、ウエハWは、実際にはプリアライメントが行われた状態でスライダ10上にロードされるので、ウエハWの中心位置ずれは無視できるほど小さく、残留回転誤差は非常に小さい。
【0121】
次のステップS110では、設定された計測モードがAモードであるか否かを判断する。そして、このステップS110における判断が肯定された場合、すなわちAモードが設定されている場合には、ステップS112に進む。
【0122】
ステップS112では、全ウエハに対するアライメント計測(全ショット1点計測、言い換えれば、全ショットEGA計測)、すなわち98個のショットのそれぞれについて、1つのウエハマークを計測する。具体的には、制御装置60は、前述したサーチアライメント時における各サーチマークの位置座標の計測と同様にして、ウエハW上のウエハマークの基準座標系上における位置座標、すなわち、ショットの位置座標を求める。ただし、この場合、サーチアライメント時とは異なり、ショットの位置座標の算出に際しては、第2位置計測システム50の計測情報を、必ず用いる。その理由は、前述したように、制御装置60により、第2位置計測システム50の計測情報に基づいて、第1位置計測システム30の検出点が、マーク検出系MDSの検出中心とXY平面内の位置が例えばnmレベルで一致し、かつスライダ10上のウエハWの表面がマーク検出系MDSの検出位置に一致するように、3つの除振装置14のアクチュエータがリアルタイムで制御されている。しかし、ウエハマークの検出時において、第1位置計測システム30の検出点が、マーク検出系MDSの検出中心とXY平面内の位置が例えばnmレベルで一致している補償はないので、両者の位置ずれ量をオフセットとして考慮して、ショットの位置座標を算出する必要があるからである。例えば、上記オフセットを用いて、マーク検出系MDSの検出結果又は第1位置計測システム30の計測値を補正することで、算出されるウエハW上のウエハマークの基準座標系上における位置座標を補正することができる。
【0123】
ここで、この全ショット1点計測に際して、制御装置60は、第1位置計測システム30の計測情報及び第2位置計測システム50の計測情報に基づいて、スライダ10(ウエハW)を、駆動システム20を介してX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方の方向に移動し、ウエハマークを、マーク検出系MDSの検出領域内に位置決めする。すなわち、ステップ・アンド・リピート方式でスライダ10をXY平面内でマーク検出系MDSに対して移動して、全ショット1点計測が行われる。
【0124】
なお、計測ユニット40が焦点位置検出系を備えている場合には、ステップS106での説明と同様に、制御装置60は、焦点位置検出系の検出結果(出力)に基づいてウエハ表面のZ位置の調整を行っても良い。
【0125】
ステップS112の全ウエハに対するアライメント計測(全ショット1点計測)に際して、スライダ10がXY平面内で移動されると、その移動に伴い、定盤12に偏荷重が作用するが、本実施形態では、制御装置60が、第1位置計測システム30の計測情報に含まれるスライダのX、Y座標位置に応じて、偏荷重の影響が相殺されるように3つの除振装置14を個別にフィードフォワード制御し、それぞれの除振装置14が発生するZ軸方向の駆動力を個別に制御する。なお、制御装置60は、第1位置計測システム30の計測情報を用いることなく、スライダ10の既知の移動経路の情報に基づいて、定盤12に作用する偏荷重を予測し、偏荷重の影響が相殺されるように3つの除振装置14を個別にフィードフォワード制御しても良い。また、本実施形態では、ウエハホルダWHのウエハ保持面(ピンチャックの多数のピンの上端面で規定される面)の凹凸の情報(以下、ホルダフラットネス情報と呼ばれる)は、予め実験等で求められているので、アライメント計測(例えば全ショット1点計測)に際して、スライダ10を移動する際に、制御装置60は、そのホルダフラットネス情報に基づいて、ウエハW表面の計測対象のウエハマークを含む領域が、マーク検出系MDSの光学系の焦点深度の範囲内に迅速に位置するように、3つの除振装置14をフィードフォワード制御することで、定盤12のZ位置を微調整する。なお、上述の定盤12に作用する偏荷重の影響を相殺するためのフィードフォワード制御及びホルダフラットネス情報に基づくフィードフォワード制御のいずれか一方、又は両方は実行しなくても良い。
【0126】
なお、マーク検出系MDSの倍率の調整が可能である場合には、サーチアライメントに際しては、低倍率に設定し、アライメント計測に際しては、高倍率に設定することにしても良い。また、スライダ10上にロードされたウエハWの中心位置ずれ、及び残留回転誤差が無視できるほど小さい場合には、ステップS108を省いても良い。
【0127】
ステップS112における全ショット1点計測において、後述するEGA演算で用いられる、基準座標系におけるサンプルショット領域(サンプルショット)の位置座標の実測値が検出されることとなる。サンプルショットとは、ウエハW上の全てのショットのうち、後述するEGA演算で用いられるものとして、予め定められた特定の複数(少なくとも3つ)のショットを指す。なお、全ショット1点計測では、ウエハW上の全ショットがサンプルショットとなる。ステップS112の後、ステップS124に進む。
【0128】
この一方、ステップS110における判断が否定された場合、すなわちBモードが設定されている場合には、ステップS114に移行し、カウント値iが所定数K(Kは、1<K<Iを満足する自然数で、予め定められた数、例えば4である)より小さいか否かを判断する。なお、カウント値iは、後述するステップS128でインクリメントされる。そして、このステップS114における判断が肯定された場合には、ステップS120に移行し、全ショット多点計測を行う。ここで、全ショット多点計測とは、ウエハW上の全てのショットについて、それぞれ複数のウエハマークを計測することを意味する。計測対象となる複数のウエハマークは、予め定められている。例えば、ショットの形状(理想格子からの形状誤差)を統計演算により求めることができる配置の複数のウエハマークを計測対象としても良い。計測の手順は、計測対象のマークの数が異なる点を除いて、ステップS112における全ショット1点計測の場合と同様であるので、詳細説明は省略する。ステップS120の後、ステップS124に移行する。
【0129】
一方、ステップS114における判断が否定された場合には、ステップS116に移行し、カウント値iがK+1より小さいか否かを判断する。ここで、このステップS116における判断が肯定されるのは、カウント値iがi≧Kかつi<k+1の場合であるから、i=Kの場合となる。
【0130】
ステップS116の判断が肯定された場合には、ステップS118に進み、それまでに計測が行われたK-1枚(例えばK=4の場合は3枚)のウエハWに対するウエハマークの検出結果に基づいて、ショット毎に計測対象とすべきウエハマークを決定する。具体的には、ショット毎に、1つのウエハマークの検出で十分か、複数のウエハマークを検出すべきかを決定する。後者の場合、どのウエハマークを検出対象とするかも決定する。例えば、ショット毎に複数のウエハマークそれぞれの実測位置と設計位置との差(絶対値)を求め、その差の最大値と最小値との差が、ある閾値を超えるか否かで、ショット毎に、複数のウエハマークを検出すべきか、1つのウエハマークの検出で十分か、を決定する。前者の場合、例えば実測位置と設計位置との差(絶対値)が最大となるウエハマークと最小となるウエハマークが含まれるように、検出すべきウエハマークが決定される。ステップS118の後、ステップS122に進む。
【0131】
一方、ステップS116における判断が否定された場合には、ステップS122に移行する。ここで、ステップS116における判断が否定されるのは、カウント値iが、K+1≦iを満たす場合であり、必ず、その前に、カウント値i=KとなってステップS118でショット毎に計測対象とすべきウエハマークが決定されている。
【0132】
ステップS122では、ステップS118でショット毎に決定された計測対象とすべきウエハマークを計測する。計測の手順は、計測対象のマークの数が異なる点を除いて、ステップS112における全ショット1点計測の場合と同様であるので、詳細説明は省略する。ステップS122の後、ステップS124に移行する。
【0133】
これまでの説明からわかるように、Bモードの場合、ロット内の第1枚目から第K-1枚目(例えば第3枚目)までのウエハに対しては、全ショット多点計測が行われ、K枚目(例えば第4枚目)から第I枚目(例えば第25枚目)までのウエハに対しては、最初のK-1枚(例えば3枚)のウエハの全ショット多点計測の結果に基づいて、ショット毎に決定されたウエハマークの計測が行われることとなる。
【0134】
ステップS124では、ステップS112、ステップS120及びステップS122のいずれかのステップで計測したウエハマークの位置情報を用いて、EGA演算を行う。EGA演算とは、上述のウエハマークの計測(EGA計測)の後、サンプルショットの位置座標の設計値と実測値との差のデータに基づいて、最小二乗法等の統計演算を用いて、ショットの位置座標と、そのショットの位置座標の補正量との関係を表現するモデル式の係数を求める統計演算を意味する。
【0135】
本実施形態では、一例として、次のモデル式が、ショットの位置座標の設計値からの補正量の算出に用いられる。
【0136】
【数1】
【0137】
ここで、dx、dyは、ショットの位置座標の設計値からのX軸方向,Y軸方向の補正量であり、X、Yは、ウエハWの中心を原点とするウエハ座標系におけるショットの設計上の位置座標である。すなわち、上記式(1)は、ウエハの中心を原点とするウエハ座標系における各ショットの設計上の位置座標X、Yに関する多項式であり、その位置座標X、Yと、そのショットの位置座標の補正量(アライメント補正成分)dx、dyとの関係を表現するモデル式となっている。なお、本実施形態では、前述したサーチアライメントにより、基準座標系とウエハ座標系との回転がキャンセルされるため、以下では、基準座標系と、ウエハ座標系を特に区別せず、すべて基準座標系であるものとして説明する。
【0138】
モデル式(1)を用いれば、ウエハWのショットの位置座標X,Yから、そのショットの位置座標の補正量を求めることができる。ただし、この補正量を算出するためには、係数a0、a1、…、b0、b1、…を求める必要がある。EGA計測の後、そのサンプルショットの位置座標の設計値と実測値との差のデータに基づいて、最小二乗法等の統計演算を用いて、上記式(1)の係数a0、a1、…、b0、b1、…を求める。
【0139】
モデル式(1)の係数a0、a1、…、b0、b1、…を決定後、係数決定後のモデル式(1)にウエハ座標系における各ショット(区画領域)の設計上の位置座標X、Yを代入して、各ショットの位置座標の補正量dx、dyを求めることで、ウエハW上の複数のショット(区画領域)の真の配列(変形成分として、線形成分のみならず、非線形成分まで含む)を求めることができる。
【0140】
ところで、既に露光が行われたウエハWの場合、それまでのプロセスの影響により、計測結果として得られる検出信号の波形が、全てのウエハマークについて良好であるとは限らない。かかる計測結果(検出信号の波形)が不良なウエハマークの位置を、上記のEGA演算に含めると、その計測結果(検出信号の波形)が不良なウエハマークの位置誤差が、係数a0、a1、…、b0、b1、…の算出結果に悪影響を与える。
【0141】
そこで、本実施形態では、信号処理装置49が、計測結果が良好なウエハマークの計測結果のみを、制御装置60に送り、制御装置60は、計測結果を受信した全てのウエハマークの位置を用いて、上述のEGA演算を実行するようになっている。なお、上記式(1)の多項式の次数に特に制限はない。制御装置60は、EGA演算の結果を、ウエハの識別情報(例えばウエハ番号、ロット番号)に対応づけて、アライメント履歴データファイルとして、内部又は外部の記憶装置に記憶する。なお、アライメント履歴データファイルに、EGA演算の結果以外の情報(例えば、EGA演算に用いられたマークの情報)が含まれても良い。
【0142】
ステップS124のEGA演算が終了すると、ステップS126に進み、ウエハWをスライダ10上からアンロードする。このアンロードは、制御装置60の管理の下、ステップS104におけるロードの手順と逆の手順で、ウエハ搬送系70とスライダ10上の上下動部材とによって行われる。なお、計測装置100のよる計測処理と並行して1ロットのウエハのそれぞれを計測装置100内に順次搬入し、計測装置100から順次搬出する場合、計測を終えたウエハWは、ウエハ搬送系70によって搬送部材526に渡され、搬送部材526によって前述のアンロード側ウエハ受け渡し位置まで搬送された後、ロボット516によって所定のFOPU520内に戻されることとなる。
【0143】
次のステップS128では、カウンタのカウント値iを1インクリメント(i←i+1)した後、ステップS130に進んで、カウント値iがロット内のウエハの総数Iより大きいか否かを判断する。そして、このステップS130における判断が否定された場合には、ロット内の全てのウエハに対する処理が終了していないと判断して、ステップS104に戻り、以降ステップS130における判断が肯定されるまで、ステップS104~ステップS130までの処理(判断を含む)を繰り返す。
【0144】
そして、ステップS130における判断が肯定されると、ロット内の全てのウエハに対して処理が終了したと判断して、本ルーチンの一連の処理を終了する。
【0145】
これまでの説明からわかるように、計測装置100によると、アライメント計測に際し、ウエハW上のI個(例えば98個)のショットのそれぞれについて、少なくとも各1つのウエハマークの位置情報(座標位置情報)が計測され、この位置情報を用い、最小二乗法等の統計演算により、上記式(1)の係数a0、a1、…、b0、b1、…が求められる。したがって、ウエハグリッドの変形成分を、線形成分のみならず、非線形成分まで、正確に求めることが可能になる。ここで、ウエハグリッドとは、ショットマップ(ウエハW上に形成されたショットの配列に関するデータ)に従って配列されたウエハW上のショットの中心を結んで形成される格子を意味する。ショットの位置座標の補正量(アライメント補正成分)dx、dyを、複数のショットについて求めることは、ウエハグリッドの変形成分を求めることに他ならない。なお、本明細書では、ウエハグリッドを「グリッド」と略記し、あるいは「ショット領域(又はショット)の配列」とも記述している。
【0146】
本実施形態に係る計測システム500では、3台の計測装置100~100によって、前述したフローチャートに沿った計測処理を、並行して行なうことができる。すなわち、計測装置100~100によって、ウエハキャリア内に収納された各1ロットのウエハ、合計3ロットのウエハに対して、実質的に1ロットのウエハに対する計測処理時間で、各ウエハの全てのショットに対して少なくとも1つのウエハマークの位置計測が可能となり、ウエハグリッドの変形成分を、線形成分のみならず、非線形成分まで、正確に求めることが可能になる。なお、計測処理と並行して、各計測装置100に対するウエハの搬入及び各計測装置100からの計測済みのウエハの搬出を行う場合にも、3つのロードポート514のそれぞれに搬入された3つのFOUP520内部の各1ロット、合計3ロットのウエハに対して、並行して処理をおこなうことができ、3ロットのウエハに対して、実質的に1ロットのウエハに対する処理時間で、各ウエハの全てのショットに対して少なくとも1つのウエハマークの位置計測が可能となり、ウエハグリッドの変形成分を、線形成分のみならず、非線形成分まで、正確に求めることが可能になる。
【0147】
求められた各ウエハのウエハグリッドの情報、例えば、求められた各ウエハのウエハグリッドの変形成分のデータ(係数a0、a1、…、b0、b1、…を決定後のモデル式(1)のデータ)は、計測装置100の制御装置60によって、各ウエハのアライメント履歴データファイルの一部として、計測システム制御装置530に送信される。計測システム制御装置530は、受信した各ウエハのウエハグリッドの情報、例えば受信した各ウエハのウエハグリッドの変形成分のデータ(係数a0、a1、…、b0、b1、…を決定後のモデル式(1)のデータ)を含むアライメント履歴データファイルを、例えばウエハ毎に内部の記憶装置に記憶する。
【0148】
計測システム制御装置530は、1ロットに含まれるすべてのウエハの計測が終了すると、そのロットに含まれる複数のウエハそれぞれの、ウエハグリッドの情報(アライメント履歴データファイル)をホストコンピュータ2000に送信する。言うまでもないが、計測システム500から送信されるウエハグリッドの情報(アライメント履歴データファイル)には、ウエハグリッドの非線形成分のデータも含まれている。
【0149】
なお、計測装置100の制御装置60を、LAN1500を介してホストコンピュータ2000に接続し、ウエハグリッドの情報(アライメント履歴データファイル)を、計測システム制御装置530を介さずに制御装置60からホストコンピュータ2000に送信しても良い。
【0150】
また、上記実施形態においては、計測システム500からウエハグリッドの情報を、送信(出力)するようにしているが、計測システムから送信される情報(データ)は、これに限られず、例えば計測装置100で計測された複数のウエハマークの座標位置情報を、各ウエハのアライメント履歴データの少なくとも一部として、送信(出力)するようにしても良い。
【0151】
基板処理システム1000の一部を構成する露光装置200は、一例としてステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(スキャナ)である。図11には、露光装置200のチャンバ内の構成部分が一部省略して示されている。
【0152】
露光装置200は、図11に示されるように、照明系IOP、レチクルRを保持するレチクルステージRST、レチクルRに形成されたパターンの像を感応剤(レジスト)が塗布されたウエハW上に投影する投影ユニットPU、ウエハWを保持してXY平面内を移動するウエハステージWST、及びこれらの制御系等を備えている。露光装置200は、前述のマーク検出系MDSの光軸AX1と平行なZ軸方向の光軸AXを有する投影光学系PLを備えている。
【0153】
照明系IOPは、光源、及び光源に送光光学系を介して接続された照明光学系を含み、レチクルブラインド(マスキングシステム)で設定(制限)されたレチクルR上でX軸方向(図11における紙面直交方向)に細長く伸びるスリット状の照明領域IARを、照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。照明系IOPの構成は、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されている。ここで、照明光ILとして、一例として、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられる。
【0154】
レチクルステージRSTは、照明系IOPの図11における下方に配置されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系211(図11では不図示、図12参照)によって、不図示のレチクルステージ定盤上を、水平面(XY平面)内で微小駆動可能であるとともに、走査方向(図11における紙面内左右方向であるY軸方向)に所定ストローク範囲で駆動可能となっている。
【0155】
レチクルステージRST上には、-Z側の面(パターン面)にパターン領域と、該パターン領域との位置関係が既知の複数のマークと、が形成されたレチクルRが載置されている。レチクルステージRSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)214によって、移動鏡212(又はレチクルステージRSTの端面に形成された反射面)を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出されている。レチクル干渉計214の計測情報は、露光制御装置220(図12参照)に供給される。なお、上述したレチクルステージRSTのXY平面内の位置情報は、レチクルレーザ干渉計214に代えて、エンコーダにより計測を行っても良い。
【0156】
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの図11における下方に配置されている。投影ユニットPUは、鏡筒240と、鏡筒240内に保持された投影光学系PLとを含む。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する。レチクルRは、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致するように配置され、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハWは、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置される。このため、照明系IOPからの照明光ILによってレチクルR上の照明領域IARが照明されると、レチクルRを通過した照明光ILにより、その照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、投影光学系PLを介して、照明領域IARに共役なウエハW上の領域(以下、露光領域とも呼ぶ)IAに形成される。そして、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域IA(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動させることで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。
【0157】
投影光学系PLとしては、一例としてZ軸方向と平行な光軸AXに沿って配列される複数枚、例えば10~20枚程度の屈折光学素子(レンズ素子)のみから成る屈折系が用いられている。この投影光学系PLを構成する複数枚のレンズ素子のうち、物体面側(レチクルR側)の複数枚のレンズ素子は、不図示の駆動素子、例えばピエゾ素子などによって、Z軸方向(投影光学系PLの光軸方向)にシフト駆動、及びXY面に対する傾斜方向(すなわちθx方向及びθy方向)に駆動可能な可動レンズとなっている。そして、結像特性補正コントローラ248(図11では不図示、図12参照)が、露光制御装置220からの指示に基づき、各駆動素子に対する印加電圧を独立して調整することにより、各可動レンズが個別に駆動され、投影光学系PLの種々の結像特性(倍率、歪曲収差、非点収差、コマ収差、像面湾曲など)が調整されるようになっている。なお、可動レンズの移動に代えて、あるいはこれに加えて、鏡筒240の内部の隣接する特定のレンズ素子間に気密室を設け、該気密室内の気体の圧力を結像特性補正コントローラ248が制御する構成にしても良いし、照明光ILの中心波長を結像特性補正コントローラ248がシフトできる構成を採用しても良い。これらの構成によっても、投影光学系PLの結像特性の調整が可能である。
【0158】
ウエハステージWSTは、平面モータ又はリニアモータ等を含むステージ駆動系224(図11では、便宜上ブロックにて示されている)によって、ウエハステージ定盤222上をX軸方向、Y軸方向に所定ストロークで駆動されるとともに、Z軸方向、θx方向、θy方向、及びθz方向に微小駆動される。ウエハステージWST上に、ウエハWが、ウエハホルダ(不図示)を介して真空吸着等によって保持されている。本実施形態では、ウエハホルダは、300mmウエハを吸着保持することができるものとする。なお、ウエハステージWSTに代えて、X軸方向、Y軸方向及びθz方向に移動する第1ステージと、該第1ステージ上でZ軸方向、θx方向及びθy方向に微動する第2ステージとを備える、ステージ装置を用いることもできる。なお、ウエハステージWSTとウエハステージWSTのウエハホルダのいずれか一方、又は両方を、「第2基板保持部材」と呼んでも良い。
【0159】
ウエハステージWSTのXY平面内の位置情報(回転情報(ヨーイング量(θz方向の回転量θz)、ピッチング量(θx方向の回転量θx)、ローリング量(θy方向の回転量θy))を含む)は、レーザ干渉計システム(以下、干渉計システムと略記する)218によって、移動鏡216(又はウエハステージWSTの端面に形成された反射面)を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。なお、ウエハステージWSTのXY平面内の位置情報は、干渉計システム218に代えて、エンコーダシステムにより計測を行っても良い。
【0160】
干渉計システム218の計測情報は、露光制御装置220に供給される(図12参照)。露光制御装置220は、干渉計システム218の計測情報に基づいて、ステージ駆動系224を介してウエハステージWSTのXY平面内の位置(θz方向の回転を含む)を制御する。
【0161】
また、図11では図示が省略されているが、ウエハWの表面のZ軸方向の位置及び傾斜量は、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示される斜入射方式の多点焦点位置検出系から成るフォーカスセンサAFS(図12参照)によって計測される。このフォーカスセンサAFSの計測情報も露光制御装置220に供給される(図12参照)。
【0162】
また、ウエハステージWST上には、その表面がウエハWの表面と同じ高さである基準板FPが固定されている。この基準板FPの表面には、アライメント検出系ASのベースライン計測等に用いられる第1基準マーク、及び後述するレチクルアライメント検出系で検出される一対の第2基準マークなどが形成されている。
【0163】
投影ユニットPUの鏡筒240の側面には、ウエハWに形成されたアライメントマーク又は第1基準マークを検出するアライメント検出系ASが設けられている。アライメント検出系ASとして、一例としてハロゲンランプ等のブロードバンド(広帯域)光でマークを照明し、このマークの画像を画像処理することによってマーク位置を計測する画像処理方式の結像式アライメントセンサの一種であるFIA(Field Image Alignment)系が用いられている。なお、画像処理方式のアライメント検出系ASに代えて、あるいはアライメント検出系ASとともに、回折光干渉型のアライメント系を用いても良い。
【0164】
露光装置200では、さらに、レチクルステージRSTの上方に、レチクルステージRSTに載置されたレチクルR上の同一Y位置にある一対のレチクルマークを同時に検出可能な一対のレチクルアライメント検出系213(図11では不図示、図12参照)がX軸方向に所定距離隔てて設けられている。レチクルアライメント検出系213によるマークの検出結果は、露光制御装置220に供給されている。
【0165】
図12には、露光制御装置220の入出力関係がブロック図にて示されている。図12に示されるように、露光装置200は、上記構成各部の他、露光制御装置220に接続された、ウエハを搬送するウエハ搬送系270等を備えている。露光制御装置220は、マイクロコンピュータ又はワークステーション等を含み、上記構成各部を含む装置全体を統括的に制御する。ウエハ搬送系270は、例えば水平多関節型ロボットから成る。
【0166】
図1に戻り、C/D300は、図示は省略されているが、例えばウエハに対する感応剤(レジスト)の塗布を行う塗布部と、ウエハの現像が可能な現像部と、プリベーク(PB)及び現像前ベーク(post-exposure bake:PEB)を行うベーク部と、ウエハ搬送系(以下、便宜上、C/D内搬送系と呼ぶ)と、を備えている。C/D300は、さらに、ウエハを温調できる温調部330を備えている。温調部330は、通常、冷却部であり、例えばクールプレートと呼ばれる平坦なプレート(温調装置)を備えている。クールプレートは、例えば冷却水の循環等により冷却される。この他、ペルチェ効果による電子冷却を利用する場合もある。
【0167】
重ね合わせ計測器400は、C/D300で現像が終了したウエハW上に各ショットとともに形成された重ね合わせ計測マーク(レジストレーションマーク)を構成する下層の露光の際に転写された第1マークと現行層の露光の際に転写された第2マークそれぞれの像(レジスト像)の相対的な位置関係を計測することで、重ね合わせずれを計測する。ここで、第1マーク像と対応する第2マーク像との組として、例えば外ボックスマークとこの内側に配置された内ボックスマークとから成るボックス・イン・ボックスマークのレジスト像などを用いることができる。
【0168】
解析装置3000は、ホストコンピュータ2000からの指示に応じて、種々の解析、演算を行う。一例を挙げれば、解析装置3000は、例えば重ね合わせ計測器400からの重ね合わせずれの計測結果に基づいて、所定のプログラムに従った演算を行なって、露光装置200にフィードバックするための補正値を算出する。
【0169】
本実施形態に係る基板処理システム1000では、計測装置100と同様、露光装置200及びC/D300は、いずれもバーコードリーダ(不図示)を備えており、ウエハ搬送系270(図12参照)及びC/D内搬送系(不図示)のそれぞれによるウエハの搬送中に、バーコードリーダにより、各ウエハの識別情報、例えばウエハ番号、ロット番号などの読み取りが適宜行われる。以下では、説明の簡略化のため、バーコードリーダを用いた各ウエハの識別情報の読み取りに関する説明は省略する。
【0170】
基板処理システム1000では、計測システム500と、露光装置200及びC/D300を含むリソグラフィシステムとのそれぞれにより、多数のウエハが連続して処理される。基板処理システム1000では、計測システム500による前述した計測対象のウエハに対する前述した計測処理と、計測システム500による計測が終了したウエハに対するリソグラフィシステムによる処理と、は、互いに独立して行われる。このため、計測システム500による計測が終了したウエハに対してリソグラフィシステムによる処理が行われるという制約はあるが、基板処理システム全体としてのスループットが最大となるように、全体の処理シーケンスを定めることができる。
【0171】
以下、露光装置200及びC/D300を含むリソグラフィシステムにより、多数のウエハを連続的に処理する場合の動作の流れについて説明する。
【0172】
まず、C/D内搬送系(例えばスカラーロボット)により、C/D300のチャンバ内に配置されたウエハキャリアから第1枚目のウエハ(Wとする)が取り出され、塗布部に搬入される。これにより、塗布部によりレジストの塗布が開始される。レジストの塗布が終了すると、C/D内搬送系は、ウエハWを塗布部から取り出してベーク部に搬入する。これにより、ベーク部でウエハWの加熱処理(PB)が開始される。そして、ウエハのPBが終了すると、C/D内搬送系により、ウエハWがベーク部から取り出され温調部330内に搬入される。これにより、温調部330内部のクールプレートでウエハWの冷却が開始される。この冷却は、露光装置200内で影響のない温度、一般的には、例えば20~25℃の範囲で定められる露光装置200の空調系の目標温度を目標温度として行われる。通常、温調部330内に搬入された時点では、ウエハの温度は目標温度に対して±0.3[℃]の範囲内にあるが、温調部330により目標温度±10[mK]の範囲に温調される。
【0173】
そして、温調部330内で冷却(温調)が終了すると、そのウエハWは、C/D内搬送系により、C/D300と露光装置200との間に設けられた基板受け渡し部のロード側基板載置部に載置される。
【0174】
C/D300内では、上記と同様の一連のウエハに対するレジスト塗布、PB、冷却、及びこれらの一連の処理に伴う上記のウエハの搬送動作が順次繰り返し行われ、ウエハが順次ロード側基板載置部に載置される。なお、実際には、C/D300のチャンバ内に、塗布部及びC/D内搬送系をそれぞれ2つ以上設けることにより、複数枚のウエハに対する並行処理が可能であり、露光前処理に要する時間の短縮が可能になる。
【0175】
前述のロード側基板載置部に載置されたウエハWは、ウエハ搬送系270により、露光装置200内部の所定の待機位置まで搬送される。ただし、第1枚目のウエハWは、待機位置で待機すること無く、直ちに露光制御装置220によって、ウエハステージWST上にロードされる。このウエハのロードは、露光制御装置220により、前述した計測装置100で行われたと同様にして、ウエハステージWST上の不図示の上下動部材とウエハ搬送系270とを用いて行われる。ロード後、ウエハステージWST上のウエハに対して、アライメント検出系ASを用いて前述と同様のサーチアライメント、及び例えば3~16程度のショットをアライメントショットとするEGA方式のウエハライメントが行われる。このEGA方式のウエハライメントに際し、露光装置200の露光制御装置220には、露光装置200におけるウエハアライメント及び露光の対象となるウエハ(対象ウエハ)の、アライメント履歴データファイルが、対象ウエハの識別情報(例えばウエハ番号、ロット番号)などとともにホストコンピュータ2000から提供される。露光装置200がホストコンピュータ2000から取得したアライメント履歴データには、計測システム500で計測された各ウエハのウエハグリッドの情報が含まれており、露光制御装置220は、所定の準備作業の後、取得したアライメント履歴データに含まれる計測モードの情報に応じて、後述するようなウエハアライメントを行う。なお、ホストコンピュータ2000を介さずに、露光制御装置220と計測システム制御装置530とが、アライメント履歴データなどのやりとりを行っても良い。
【0176】
ここで、ウエハアライメントの具体的な説明に先立って、露光装置200で、3~16程度のショットをアライメントショットとするEGA方式のウエハライメントが行われる理由について説明する。
【0177】
計測装置100により求められたウエハWのショットの位置座標の補正量(上記式(1)の係数a0、a1、…、b0、b1、…)は、例えば露光装置200によりウエハWを露光する際の露光位置に対するウエハの位置合わせに用いられる。しかるに、露光装置200により計測装置100で位置座標の補正量が計測されたウエハWは、前述したように計測装置100のスライダ10からアンロードされた後、FOUP520内に収納され、そのFOUP520が、OHTその他の搬送系により、C/D300に搬入される。そして、そのウエハWは、C/D300によってレジストが塗布された後、露光のため、露光装置200のウエハステージWST上にロードされる。この場合において、スライダ10上のウエハホルダWHと、露光装置200のウエハステージWST上のウエハホルダとは、仮に同一タイプのウエハホルダが用いられていたとしても、ウエハホルダの個体差によりウエハWの保持状態が異なる。このため、せっかく、計測装置100でウエハWのショットの位置座標の補正量(上記式(1)の係数a0、a1、…、b0、b1、…)を求めていても、その係数a0、a1、…、b0、b1、…の全てをそのまま用いることはできない。しかるに、ウエハホルダ毎にウエハWの保持状態が異なることで影響を受けるのは、ショットの位置座標の補正量の1次以下の低次成分(線形成分)であり、2次以上の高次成分は殆ど影響を受けないものと考えられる。その理由は、2次以上の高次成分は、主としてプロセスに起因するウエハWの変形に起因して生じる成分であると考えられ、ウエハホルダによるウエハの保持状態とは無関係な成分であると考えて差し支えないからである。
【0178】
かかる考えに基づけば、計測装置100により、時間を掛けてウエハWについて求めた高次成分の係数a、a、……、a、……、及びb、b、……、b、……は、露光装置200でのウエハWの位置座標の補正量の高次成分の係数としてもそのまま用いることが可能である。したがって、露光装置200のウエハステージWST上では、ウエハWの位置座標の補正量の線形成分を求めるための簡易なEGA計測(例えば3~16個程度のウエハマークの計測)を行うだけで足りるのである。
【0179】
まず、対象ウエハのアライメント履歴データファイルにモードAの情報が含まれている場合について説明する。この場合には、アライメント履歴データに含まれる、計測装置100によって位置情報が計測された(補正量の算出にマークの位置情報が用いられた)ウエハマークの中からアライメントショット数に対応する数のウエハマークを選択して、検出対象とし、その検出対象のウエハマークをアライメント検出系ASを用いて検出し、その検出結果と検出時のウエハステージWSTの位置(干渉計システム218による計測情報)とに基づいて、検出対象の各ウエハマークの位置情報を求め、その位置情報を用いて、EGA演算を行い、次式(2)の各係数を求める。
【0180】
【数2】
【0181】
そして、露光制御装置220は、ここで求めた係数(c、c、c、d、d、d)を、対象ウエハのウエハグリッドの変形成分のデータに含まれる係数(a、a、a、b、b、b)と置き換え、置き換え後の係数を含む次式(3)で表されるウエハの中心を原点とするウエハ座標系における各ショットの設計上の位置座標X、Yに関する多項式を用いて、各ショットの位置座標の補正量(アライメント補正成分)dx、dyを求め、この補正量に基づいて、ウエハグリッドを補正するための、各ショットの露光に際しての露光位置(レチクルパターンの投影位置)に対する位置合わせのための目標位置(以下、便宜上、位置決め目標位置と呼ぶ)を決定する。なお、本実施形態では、静止露光方式ではなく、走査露光方式で露光が行われるが、便宜上、位置決め目標位置と称している。
【0182】
【数3】
【0183】
なお、露光装置200でも、サーチアライメントにより、ウエハステージWSTの移動を規定する基準座標系(ステージ座標系)とウエハ座標系との回転がキャンセルされるため、基準座標系とウエハ座標系を特に区別する必要はない。
【0184】
次に、対象ウエハのアライメント履歴データファイルにBモードの情報が含まれている場合について説明する。この場合は、露光制御装置220は、上述のAモードの情報が含まれている場合と同様の手順に従ってウエハグリッドを補正するための、各ショットの位置決め目標位置を決定する。ただし、この場合、アライメント履歴データには、いくつかのショットについての複数のウエハマークと、残りのショットについて各1つのウエハマークとのうち、検出信号が良好であったウエハマークが、補正量の算出にマークの位置情報が用いられたウエハマークとして含まれている。
【0185】
そこで、露光制御装置220は、上述の各ショットの位置決め目標位置の決定に加え、上記のいくつかのショットについての複数のウエハマークの中からショット形状を求めるのに必要な数のウエハマークを選択し、それらのウエハマークの位置情報(実測値)を用いて、例えば米国特許第6,876,946号明細書に開示されている[数7]のモデル式に最小自乗法を適用する統計演算(ショット内多点EGA演算とも呼ばれる)を行い、ショット形状を求める。具体的には、上記米国特許第6,876,946号明細書に開示されている[数7]のモデル式中の10個のパラメータのうち、チップローテーション(θ)、チップの直交度誤差(w)、並びにx方向のチップスケーリング(rx)及びy方向のチップスケーリング(ry)を求める。なお、ショット内多点EGA演算に関しては、上記米国特許に詳細に開示されているので、詳細説明は省略する。
【0186】
そして、露光制御装置220は、その位置決め目標位置に従ってウエハステージWSTを位置制御しつつ、ウエハW上の各ショットに対してステップ・アンド・スキャン方式で露光を行う。ここで、ショット内多点EGA計測によりショット形状も求めていた場合には、走査露光中に、求めたショット形状に合わせてレチクルRのパターンの投影光学系PLによる投影像が変形するように、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの相対走査角度、走査速度比、レチクルステージRST及びウエハステージWSTの少なくとも一方の投影光学系に対する相対位置、投影光学系PLの結像特性(収差)、及び照明光(露光光)ILの波長の少なくとも1つを、調整する。ここで、投影光学系PLの結像特性(収差)の調整及び照明光ILの中心波長の調整は、露光制御装置220により結像特性補正コントローラ248を介して行われる。
【0187】
そして、ウエハステージWST上のウエハ(この場合ウエハW)に対する露光が終了する前に、2枚目のウエハWが、C/D内搬送系により基板受け渡し部のロード側基板載置部に載置され、ウエハ搬送系270により露光装置200内部の所定の待機位置まで搬送され、その待機位置で待機することになる。
【0188】
そして、ウエハWの露光が終了すると、ウエハステージ上でウエハWとウエハWとが交換され、交換後のウエハWに対して、前述と同様のウエハアライメント及び露光が行われる。なお、ウエハWの待機位置までの搬送が、ウエハステージ上のウエハ(この場合ウエハW)に対する露光が終了するまでに終わらない場合には、ウエハステージが露光済みのウエハを保持したまま待機位置の近傍で待機することになる。
【0189】
上記の交換後のウエハWに対するウエハアライメントと並行してウエハ搬送系270により露光済みのウエハWが基板受け渡し部のアンロード側基板載置部に搬送される。
【0190】
前述の如くして、ウエハ搬送系270により、基板受け渡し部のアンロード側基板載置部に載置された露光済みのウエハは、C/D内搬送系によりベーク部内に搬入され、該ベーク部内のベーキング装置によりPEBが行われる。ベーク部内には、複数枚のウエハを同時に収容可能である。
【0191】
一方、PEBが終了したウエハは、C/D内搬送系によりベーク部から取り出され、現像部内に搬入され、該現像部内の現像装置により現像が開始される。
【0192】
そして、ウエハの現像が終了すると、そのウエハは、C/D内搬送系により現像部から取り出され、搬入時に用いられたFOUP520又はこれとは異なるウエハキャリア内の所定の収納段に搬入される。以降、C/D300内では、露光済みの第2枚目以降のウエハに対して、ウエハWと同様の手順で、PEB、現像、及びウエハの搬送が繰り返し行われることとなる。
【0193】
以上説明したように、本実施形態に係る基板処理システム1000によると、前述した簡易なEGA計測及び露光を含む露光装置200による対象ウエハの処理動作とは独立して、計測システム500の計測装置100により対象ウエハのアライメント計測を行うことができ、露光装置200によるウエハ処理のスループットを殆ど低下させることがない、効率的な処理が可能になる。また、基板処理システム1000の全体としても、計測システム500の計測装置100により計測処理が事前に行われたあるロットのウエハに対する露光装置200によるアライメント及び露光処理と、計測システム500の計測装置100による別のロットのウエハに対する計測処理と、を、並行して行なうようにすることで、ウエハ処理のスループットを殆ど低下させることがない、効率的な処理が可能になる。しかも、計測システム500の計測装置100では、全ショットをサンプルショットとする全ショットEGAを、露光装置200のあるロットのウエハに対するウエハアライメント及び露光の動作と並行して、別のロットのウエハに対して行なうことができる。
【0194】
また、計測システム500の計測装置100では、全ショットをサンプルショットとする全ショットEGA又は少なくとも一部のショットについての多点EGAを含む全ショットEGA(以下、モードの設定に応じたアライメント計測と総称する)を、ウエハ処理の前工程のプロセス処理(エッチング、酸化・拡散、成膜、イオン注入、平坦化(CMP)など)が終了した同一ロットのウエハに対する露光装置200によるウエハアライメント及び露光の動作に先立って行い、アライメント計測により得られた各ウエハについて、ウエハグリッドの情報(例えば、ウエハグリッドの変形成分のデータ)を含むアライメント履歴データを取得する。取得された各ウエハについてのアライメント履歴データは、ウエハ毎に計測システム制御装置530によって内部の記憶装置に記憶される。したがって、露光装置200では、計測システム制御装置530を使って求めた、対象ウエハについてウエハグリッドの情報を含むアライメント履歴データを有効活用して、その対象ウエハに対してウエハアライメント及び露光を行なうことができる。すなわち、本実施形態に係る基板処理システム1000では、計測システム500の計測装置100における事前計測処理で得られた対象ウエハについての、ウエハグリッドの情報(例えば、ウエハグリッドの変形成分のデータ)を含むアライメント履歴データが、露光装置200に実質的にフィードフォワード的に転送(提供)されていると言える。
【0195】
また、計測装置100における事前計測処理における全ショットEGAで得られたモデル式における高次成分の係数は、露光装置200においてもそのまま採用することができるので、露光装置200では、数ショットをアライメントショットとするアライメント計測を行って上記モデル式の低次成分の係数を求めるのみで、この低次成分の係数と、計測装置100で取得された高次成分の係数とを用いることで、モデル式(1)の低次成分の係数(未定係数)のみならず、高次成分の係数(未定係数)も確定することができ、この未定係数が確定したモデル式(1)(すなわち、上式(3))とウエハ上の複数のショットの配列の設計値(X,Y)とを用いて、各ショットの設計上の位置からの補正量を求めることができ、これにより、露光装置200でモデル式(1)の低次及び高次成分の係数を求めた場合と同様の精度の良い補正量の取得が可能となる。そして、この補正量とウエハ上の複数のショットの配列の設計値とに基づいて、各ショットの露光の際の位置決め目標位置の算出が可能になる。したがって、この目標位置に従ってウエハステージWSTの位置を制御することで、各ショットを露光位置(レチクルパターンの投影位置)に対して精度良く位置合わせすることができる。これにより、露光装置200のスループットを低下させることなく、露光の際のレチクルのパターンの像とウエハ上の各ショット領域に形成されたパターンとの重ね合わせ精度の向上が可能になる。
【0196】
また、本実施形態に係る計測装置100によると、制御装置60は、駆動システム20によるスライダ10の移動を制御しつつ、第1位置計測システム30、及び第2位置計測システム50を用いて、定盤12に対するスライダ10の位置情報、及びマーク検出系MDSと定盤12との相対的な位置情報を取得するとともに、マーク検出系MDSを用いてウエハWに形成された複数のマークの位置情報を求めている。したがって、計測装置100によると、ウエハWに形成された複数のマークの位置情報を、精度良く求めることができる。
【0197】
また、本実施形態に係る計測装置100によると、制御装置60は、第2位置計測システム50による計測情報(定盤12とマーク検出系MDSとの相対的な位置情報)を常時取得し、マーク検出系MDSの検出中心と定盤12に対するスライダ10の6自由度方向の位置情報を検出する第1位置計測システムの計測点との位置関係がnmレベルで所望の関係に維持されるように、3つの除振装置14(のアクチュエータ)を介して定盤12の6自由度方向の位置をリアルタイムで制御している。また、制御装置60は、駆動システム20によるスライダ10の駆動を制御しつつ、第1位置計測システム30による計測情報(定盤12に対するスライダ10の位置情報)及び第2位置計測システム50による計測情報(定盤12とマーク検出系MDSとの相対的な位置情報)を取得し、マーク検出系MDSを用いてウエハWに形成されたマークを検出した時の検出信号と、マーク検出系MDSを用いてウエハWに形成されたマークを検出した時に得られる第1位置計測システム30による計測情報と、マーク検出系MDSを用いてウエハWに形成されたマークを検出した時に得られる第2位置計測システム50による計測情報とに基づいて、複数のウエハマークの位置情報を求める。したがって、計測装置100によると、ウエハWに形成された複数のマークの位置情報を、精度良く求めることができる。
【0198】
なお、例えば、計測されたマークの位置情報を用いてEGA演算を行なうことなく、計測されたマークの位置情報に基づいて、露光の際のウエハW(ウエハステージWST)の位置制御を行なう場合などには、例えば上記の第2位置計測システム50による計測情報を、マークの位置情報の算出には用いなくても良い。ただし、この場合には、マーク検出系MDSを用いてウエハWに形成されたマークを検出した時に得られる第2位置計測システム50による計測情報を、オフセットして用いて、例えばウエハW(ウエハステージWST)の位置決め目標値などウエハWを移動させるための情報を補正することとすれば良い。あるいは、上記のオフセットを考慮して、露光時におけるレチクルR(レチクルステージRST)の移動を制御することとしても良い。
【0199】
また、本実施形態に係る計測装置100によると、ウエハWが載置され保持されるスライダ10の6自由度方向の位置情報を計測する第1位置計測システム30は、少なくともウエハW上のウエハマークを、マーク検出系MDSで検出するため、スライダ10が移動する範囲では、ヘッド部32から計測ビームをグレーティングRG1に照射し続けることができる。したがって、第1位置計測システム30は、マーク検出のためにスライダ10が移動するXY平面内の全範囲で、連続して、その位置情報の計測が可能である。したがって、例えば計測装置100の製造段階(半導体製造工場の内での装置の立ち上げ段階を含む)において、第1位置計測システム30の測長軸によって規定される直交座標系(基準座標系)の原点出しを行うことで、スライダ10の絶対位置、ひいてはスライダ10の位置情報とマーク検出系MDSの検出結果とから求められる、スライダ10上に保持されたウエハW上のマーク(サーチマーク、ウエハマークに限らず、その他のマーク、例えば重ね合わせ計測マーク(レジストレーションマーク)なども含む)の絶対位置を、基準座標系上で管理することが可能である。なお、本明細書で「絶対位置」とは、基準座標系上における座標位置を意味する。
【0200】
これまでの説明から明らかなように、本実施形態に係る基板処理システム1000では、計測システム500を備えていることにより、仮に、露光装置200が所定時間(要求される高いスループットを維持するために許容される時間)内に、ウエハの位置座標の補正量の線形成分を求めるための簡易なEGA計測(例えば、アライメント検出系ASを用いた3~16個程度のウエハマークの位置情報の取得)を行なう機能しか備えていない場合であっても、その簡易なEGA計測を行なってウエハグリッドの変形の低次成分と、計測システム500によって事前に求められた例えば全点EGAによって求められたウエハグリッドの変形の高次成分とを用いて、ウエハグリッドの変形を高精度に求めることができる。したがって、計測システム500により、露光装置200のグリッド補正機能を実質的に向上させることができる。したがって、最先端のグリッド補正機能を有しない露光装置により、ウエハに対して高スループットで、あるいはスループットを低下させることなく、高精度な露光が可能になる。
【0201】
なお、上記実施形態に係る基板処理システム1000では、計測装置100、C/D300及び露光装置200が、バーコードリーダを備えている場合について説明したが、バーコードリーダに代えて、無線ICタグであるRFIDタグの書込/読出装置を備えていても良い。かかる場合には、各ウエハにRFIDタグを取り付け、計測装置100が書込/読出装置を用いてウエハ毎に前述したアライメント履歴データをRFIDタグに書き込み、他の装置、例えば露光装置200が、書込/読出装置を用いて対象ウエハのRFIDタグからアライメント履歴データを読み出すことで、前述した対象ウエハについてのアライメント履歴データのフィードフォワード転送を、簡単に実現できる。
【0202】
また、上記実施形態に係る基板処理システム1000では、露光装置200が上記モデル式の1次以下の低次成分の係数を求め、この低次成分の係数と、計測装置100で取得された上記モデル式の2次以上の高次成分の係数とを用いる場合について説明した。しかしながら、これに限らず、例えば上記モデル式の2次以下の成分の係数を露光装置200内でのアライメントマークの検出結果から求め、この2次以下の成分の係数と、計測装置100で取得された上記モデル式の3次以上の高次成分の係数とを用いても良い。あるいは、例えば上記モデル式の3次以下の成分の係数を露光装置200内でのアライメントマークの検出結果から求め、この3次以下の成分の係数と、計測装置100で取得された上記モデル式の4次以上の高次成分の係数とを用いても良い。すなわち、上記モデル式の(N-1)次(Nは2以上の整数)以下の成分の係数を露光装置200内でのアライメントマークの検出結果から求め、この(N-1)次以下の成分の係数と、計測装置100で取得された上記モデル式のN次以上の高次成分の係数とを用いても良い。
【0203】
なお、上記実施形態では、計測装置100が、ウエハ座標系(基準座標系に一致)における各ショットの設計上の位置座標X、Yと、そのショットの位置座標の補正量(アライメント補正成分)dx、dyとの関係を表現するモデル式(1)の2次以上の高次成分の係数a、a、a…及びb、b、b…、並びに1次以下の低次成分の係数a、a、a、b、b、bも求めることとしたが、露光装置200で低次成分の係数が求められるので、計測装置100では、低次成分の係数を必ずしも求めなくても良い。
【0204】
なお、上記実施形態では、計測装置100においてBモードが設定され、ウエハ上のいくつかのショットについての複数のウエハマークの位置情報が計測されていた場合に、露光装置200では、ショット内多点EGA演算により、チップローテーション(θ)、チップの直交度誤差(w)、並びにx方向のチップスケーリング(rx)及びy方向のチップスケーリング(ry)を求め、これによりショットの形状を求めていた。しかしながら、これに限らず、例えば、計測装置100においてAモードが設定され、ウエハ上の全てのショットに各1つのウエハマークの位置情報が計測されていた場合であっても、露光装置200は、ショットの変形(ショットの形状変化)を推定することは可能である。以下、これについて説明する。
【0205】
ウエハW上のウエハグリッドは、プロセスに起因して変形するものであり、個々のショットも、このプロセスによって幾分変形するが、その変形は、ウエハグリッドの変形に沿ったものになると考えられる。ウエハグリッドの変動成分は、以下に示される互いに独立した4つの変動成分に分けることができ、各変動成分は、以下に示すショットの変形をもたらす。
(1)dxのX軸方向に関する変動成分
X軸方向の倍率の変化
(2)dxのY軸方向に関する変動成分
Y軸に対する回転
(3)dyのX軸方向に関する変動成分
Y軸方向の倍率の変化
(4)dyのY軸方向に関する変動成分
X軸に対する回転
【0206】
そこで、本実施形態では、上記(1)~(4)の変動成分を算出し、その変動成分に基づいて、ウエハW上のショットの変形を推定する。
【0207】
ところで、ショットの変形を推定する方法には、大別して以下に示す2つの方法がある。(A)係数(未定係数)確定後の式(3)をX、Yについて偏微分した値に従ってショットを変形する。(B)ウエハグリッドを、1次のモデル式に近似して、そのモデル式の係数に従って、ショットを変形する。ここで、ウエハグリッドは、係数(未定係数)確定後の式(3)に、各ショットの設計上の位置座標X、Yをそれぞれ代入して、ウエハ上の複数のショット領域の配列の設計値からの補正量(ショットの位置座標の補正量dx、dy)、すなわちウエハグリッドの変形成分を求め、その補正量と、ショットの位置座標の設計値とを用いて算出することができる。
【0208】
以下では、(A)の推定方法によってショットの形状を補正する方法を、高次偏微分補正といい、(B)の推定方法によってショットの形状を補正する方法を、1次近似補正と呼ぶ。同じウエハグリッドであっても、(A)の方法を用いた場合と(B)の方法を用いた場合とでは、ショットの変形状態が異なったものとなる。
【0209】
図13(A)、図13(B)には、高次偏微分補正と1次近似補正との違いの一例が概略的に示されている。ここで、説明を簡単にするために、ウエハグリッドにおけるY成分dy=b6・X3となっているとする。図13(A)には、高次偏微分補正により、補正された3つのショットが示されている。高次偏微分補正を行った場合、各ショットのY軸に対する回転は、dy=b6・X3の偏微分、dy’=3b6・X2に従うようになる。この場合、3つのショットのうち、中央のショットは、変形量が0となる。一方、図13(B)には、1次近似補正により、補正された3つのショットが示されている。1次近似補正では、改めて1次のモデル式でEGA方式のアライメントを行って、そのモデル式におけるY軸に対する回転に関係がある1次の係数を用いて、ショット形状を補正する。この1次近似補正を行った場合、図13(B)に示されるように、3つのショットのうち、中央のショットも1次変形しており、全体として、各ショットの変形は、均一になる。
【0210】
図13(A)、図13(B)に示されるように、高次偏微分補正では、ショットの変形は、そのショット周辺のウエハグリッドに沿った局所的なものとなるのに対し、1次近似補正では、ウエハWのすべてのショットの変形が均一なものとなる。例えば、いずれの方法を選択するかを、露光レシピで指定可能とし、ユーザが、製造する半導体の要求仕様に応じて適宜選択できるようにしても良い。かかるショットの変形の推定が行われた場合も、前述と同様、露光制御装置220は、走査露光中に、求めたショット形状(ショットの変形の推定により求められたショットの形状)に合わせてレチクルRのパターンの投影光学系PLによる投影像が変形するように、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの相対走査角度、走査速度比、レチクルステージRST及びウエハステージWSTの少なくとも一方の投影光学系に対する相対位置、投影光学系PLの結像特性(収差)、及び照明光(露光光)ILの波長の少なくとも1つを、調整する。
【0211】
なお、本実施形態に係る基板処理システム1000において、計測装置100の計測ユニット40が、前述の多点焦点位置検出系を備えている場合には、計測装置100により、ウエハアライメント計測とともにウエハWのフラットネス計測(フォーカスマッピングとも呼ばれる)を行うこととしても良い。この場合、そのフラットネス計測の結果を用いることで、露光装置200によりフラットネス計測を行うこと無く、露光時のウエハWのフォーカス・レベリング制御が可能となる。
【0212】
また、計測システム500の計測装置100、100、及び100の少なくとも1つを、他の計測装置と異なる機能の計測装置としても良い。例えば、1つの計測装置を、ウエハ表面の凹凸(フラットネス)計測を行なう多点焦点位置検出系を備えた計測装置としても良いし、ウエハ形状測定装置としても良い。また、計測システム500は、計測装置を2台、あるいは4台以上備えていても良い。
【0213】
なお、上記実施形態では、対象が300mmウエハであるものとしたが、これに限らず、直径450mmの450mmウエハであっても良い。露光装置200とは別に、計測装置100によってウエハアライメントを行うことができるので、450mmウエハであっても、露光処理のスループットの低下を招くこと無く、例えば全点EGA計測などが可能になる。
【0214】
なお、上記実施形態では、説明の簡略化のため、計測装置100の計測モードとしてAモードとBモードとのいずれかが設定されるものとしたが、Bモードは設定できなくても良い。また、ロット内の全てのウエハ上の全ショットについて2以上の第1の数のウエハマークを検出するCモード、及びロット内の全てのウエハについて、一部のショット、例えばウエハの周辺部に位置する予め定められたショットについては2以上の第2の数のウエハマークを検出し、残りのショットについては各1つのウエハマークを検出するモード(Dモードと呼ぶ)などを設けても良い。さらに、ロット内の最初の所定枚数のウエハについてのウエハマークの検出結果に応じて、ロット内の残りのウエハについては、Aモード、Cモード、Dモードのいずれかを選択するEモードを設けても良い。
【0215】
また、計測装置100の計測モードとして、ロット内の全てのウエハについて、一部のショット、例えば、9割又は8割の数のショットの1つ以上のウエハマークを計測したり、ウエハの中央部に位置するショットについては、一つ間隔をあけたショットの1つ以上のウエハマークを計測しても良い。
【0216】
なお、上記実施形態に係る計測装置100では、グレーティングRG1、RG2a、RG2bそれぞれが、X軸方向及びY軸方向を周期方向とする場合について説明したが、これに限らず、第1位置計測システム30、第2位置計測システム50のそれぞれが備える格子部(2次元グレーティング)は、XY平面内で互いに交差する2方向を周期方向としていれば良い。
【0217】
また、上記実施形態で説明した計測装置100の構成は一例にすぎない。例えば、計測装置は、ベース部材(定盤12)に対して移動可能なステージ(スライダ10)を有し、該ステージに保持された基板(ウエハ)上の複数のマークの位置情報を計測できる構成であれば良い。したがって、計測装置は、例えば第1位置計測システム30と第2位置計測システム50とを、必ずしも備えている必要はない。
【0218】
また、上記実施形態で説明した第1位置計測システム30のヘッド部32の構成、及び検出点の配置などは一例に過ぎないことは勿論である。例えば、マーク検出系MDSの検出点と、ヘッド部32の検出中心とは、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方で、位置が一致していなくても良い。また、第1位置計測システム30のヘッド部とグレーティングRG1(格子部)との配置は反対でも良い。すなわち、スライダ10にヘッド部が設けられ、定盤12に格子部が設けられていても良い。また、第1位置計測システム30は、エンコーダシステム33とレーザ干渉計システム35とを必ずしも備えている必要はなく、エンコーダシステムのみによって第1位置計測システム30を構成しても良い。ヘッド部からスライダ10のグレーティングRG1にビームを照射し、グレーティングからの戻りビーム(回折ビーム)を受光して定盤12に対するスライダ10の6自由度方向の位置情報を計測するエンコーダシステムにより、第1位置計測システムを構成しても良い。この場合において、ヘッド部のヘッドの構成は特に問わない。例えば、グレーティングRG1上の所定点に対してX軸方向に同一距離離れた2点に検出ビームを照射する一対のXZヘッドと、所定点に対してY軸方向に同一距離離れた2点に検出ビームを照射する一対のYZヘッドとを設けても良いし、あるいは、グレーティングRG1のX軸方向に離れた2つの点にそれぞれ検出ビームを照射する一対の3次元ヘッドと、上記2つの点とは、Y軸方向の位置が異なる点に検出ビームを照射するXZヘッド又はYZヘッドとを設けても良い。第1位置計測システム30は、定盤12に対するスライダ10の6自由度方向の位置情報を必ずしも計測できる必要はなく、例えばX、Y、θz方向の位置情報を計測できるのみであっても良い。また、定盤12に対するスライダ10の位置情報を計測する第1位置計測システムが、定盤12とスライダ10との間に配置されていても良い。また、スライダ10の前述した絶対位置を計測するために用いられる第1計測システムは、前述のヘッド部からスライダ10のグレーティングRG1にビームを照射するエンコーダシステムを必ずしも備えている必要はなく、定盤12に対するスライダ10の6自由度方向又は水平面内の3自由度方向の位置情報を計測する干渉計システムその他の計測装置によって構成しても良い。
【0219】
同様に、上記実施形態で説明した第2位置計測システム50の構成は、一例に過ぎない。例えば、ヘッド部52A、52Bが、定盤12側に固定され、スケール54A、54Bがマーク検出系MDSと一体的に設けられていても良い。また、第2位置計測システム50が、一対のヘッド部52A、52Bを備えている場合について例示したが、これに限らず、第2位置計測システム50は、ヘッド部を1つのみ備えていても良いし、3つ以上備えていても良い。いずれにしても、第2位置計測システム50によって、定盤12とマーク検出系MDSとの、6自由度方向の位置関係を計測できることが望ましい。ただし、第2位置計測システム50は、必ずしも、6自由度方向全ての位置関係を計測できなくても良い。
【0220】
なお、上記実施形態では、スライダ10が、複数のエアベアリング18によって定盤12上に浮上支持され、スライダ10をX軸方向に駆動する第1駆動装置20Aと、スライダ10を第1駆動装置20Aと一体でY軸方向に駆動する第2駆動装置20Bとを含んで、スライダ10を定盤12に対して非接触状態で駆動する駆動システム20が構成された場合について説明した。しかし、これに限らず、駆動システム20として、スライダ10を、定盤12上で6自由度方向に駆動する構成の駆動システムを採用しても良い。かかる駆動システムを、一例として磁気浮上型の平面モータによって構成しても良い。かかる場合には、エアベアリング18は不要になる。なお、計測装置100は、除振装置14とは別に、定盤12を駆動する駆動システムを備えていても良い。
【0221】
また、上述の実施形態においては、計測システム500は、キャリアシステム510としてEFEMシステムを備えていたが、EFEMシステムの替わりにY軸方向に沿って複数(例えば、3つ)のキャリア(FOUPなど)を保管可能な、キャリア保管装置を設置しても良い。この場合、計測システム500は、複数の計測装置100のそれぞれに隣接して設けられた複数のロードポートと、キャリア保管装置と複数のロードポートの載置部との間でキャリア(FOUPなど)の受け渡しを行うキャリア搬送装置を備えていても良い。
【0222】
《第2の実施形態》
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態では、基板処理システム1000の計測システム500を用いたウエハグリッドの変動管理、及び重ね合わせ計測について説明する。
【0223】
上述したように、計測装置100は第1位置計測システム30を備えているので、第1位置計測システム30の測長軸によって規定される直交座標系(基準座標系)の原点出しを行うことで、スライダ10の絶対位置、ひいてはスライダ10の位置情報とマーク検出系MDSの検出結果とから求められる、スライダ10上に保持されたウエハW上のウエハマーク、例えば重ね合わせ計測マーク(レジストレーションマーク)の絶対位置を、基準座標系上で管理することが可能である。すなわち、計測装置100を、重ね合わせ計測器400として機能させることもできる。
【0224】
《ウエハグリッドの変動管理》
次に、計測装置を用いる露光装置起因のウエハグリッドの管理方法を、基板処理システム1000に適用した場合を例として説明する。図14には、この場合のウエハグリッドの管理方法における処理の流れが概略的に示されている。
【0225】
まず、ステップS202において、露光装置200により、あるロットに含まれるベアウエハ(便宜上、ウエハWとする)に対して、製品レチクルRを用いて、ステップ・アンド・スキャン方式で露光が行われる。ここで、レチクルRには、そのパターン面に矩形のパターン領域とともに、その周囲の領域又はパターン領域内部(1ショット複数チップ取りの場合)に、マーク(ウエハ上に転写されるとウエハマークとなる)などが形成されているものとする。ここで、ウエハWは、未露光のウエハであり、その表面にはC/D300によってレジストが塗布されている。したがって、ウエハWの露光に際しては、アライメントは行われず、設計値に基づいて、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとが、露光制御装置220によって駆動制御される。このステップS202の露光により、ウエハW表面のレジスト層には、マトリクス状に配置されたI個(例えば98個)の矩形のパターン領域と各ショットとの位置関係が設計上既知の各ショットに対応するマークとの転写像(潜像)が形成される。
【0226】
次に、ステップS204において、その露光済みのウエハWは、ウエハステージWSTからアンロードされ、C/D300の現像部内に搬入される。具体的には、ウエハWは、ウエハ搬送系270により搬送され、C/D300と露光装置200との間に設けられた基板受け渡し部のアンロード側基板載置部に載置される。そして、ウエハWは、C/D内搬送系により、C/D300の現像部内に搬入される。
【0227】
次に、ステップS206において、ウエハWは、C/D300の現像部の現像装置により現像される。この現像後、ウエハW上には、マトリクス状に配置されたI個(例えば98個)の矩形のショットと各ショットとの位置関係が設計上既知の各ショットに対応するウエハマークのレジスト像(以下、適宜ウエハマークと略記する)が形成される。
【0228】
次に、ステップS208において、現像済みウエハWを含む、あるロットの複数のウエハが収容されたFOUPが、C/D300から取り出されて、上述のOHTなどを用いて、計測システム500のロードポート514に載置される。すなわち、C/D300から取り出されたFOUP内のウエハWは、現像処理後に行われるプロセス処理(エッチング処理、又はエッチング処理後の成膜処理(スパッタ処理、CVD処理、熱酸化処理の少なくとも一つを含む))が施される前に、計測システム500に搬送される。FOUPに収容されたウエハWは、ロボット516などを用いてFOUPから取り出され、搬送システム521などを用いて、計測装置100のスライダ10上にロードされる。
【0229】
なお、以下では、FOUPに収容されている複数のウエハのうちの1枚を、ウエハWとして説明するが、同様の処理を、FOUPに収容されている複数のウエハのすべて、又は一部に行って良い。
【0230】
次に、ステップS210において、計測装置100により、現像済みのウエハWに対して前述した全ショット1点計測が行われ、各ウエハマークの絶対位置座標が求められる。すなわち、制御装置60は、スライダ10の位置情報を、第1位置計測システム30(及び第2位置計測システム50)を用いて計測しつつ、マーク検出系MDSを用いてI個(例えば98個)のショットそれぞれに対応するI個のウエハマークをそれぞれ検出し、I個のウエハマークそれぞれの検出結果とI個のウエハマークそれぞれの検出時のスライダ10の絶対位置座標(X,Y)とに基づいて、ウエハW上のI個のショットそれぞれに対応するI個のウエハマークの絶対位置座標(X、Y)を、求める。このとき、制御装置60は、第1位置計測システム30によって計測されるスライダ10のθx方向及びθy方向の計測値に基づいて、第1位置計測システム30のX軸方向及びY軸方向アッベ誤差、及び第2位置計測システム50のX軸方向及びY軸方向の計測値を、オフセットとして、I個のウエハマークの絶対位置座標(X、Y)を求める。なお、ステップ210においては、全ショット1点計測が望ましいが、一部のショットのウエハマークの検出を行わなくても良い。
【0231】
次に、ステップS212において、制御装置60により、求めたI個のマークの絶対位置座標を用いて、ウエハW上のI個のショットの配列(ウエハグリッド)の変動情報が求められる。例えば、制御装置60は、ウエハマークとショット中心との既知の位置関係に基づいて、I個のウエハマークの絶対位置座標からI個のショットそれぞれの絶対位置座標(X、Y)の実測値を求め、このI個のショットそれぞれの絶対位置座標(X、Y)の実測値と各ショットの位置座標(X、Y)の設計値との差のデータに基づいて、最小二乗法等の統計演算を用いて、前述した式(1)の係数a0、a1、…、b0、b1、…を求める。ここで、求めた係数a0、a1、…、b0、b1、…を式(1)に代入して、係数確定後の式(1)を、ウエハグリッドの変動情報として、計測システム500の内部のメモリ(例えば制御装置60の記憶装置、あるいは計測システム制御装置530内部の記憶装置)、又は外部の記憶装置に記憶する。
【0232】
あるいは、制御装置60は、ウエハマークとショット中心との既知の位置関係に基づいて、I個のウエハマークの絶対位置座標からI個のショットそれぞれの絶対位置座標(X、Y)の実測値を求め、このI個のショットそれぞれの絶対位置座標(X、Y)の実測値と各ショットの位置座標(X、Y)の設計値との差のデータから成るマップを作成し、このマップをウエハグリッドの変動情報としても良い。
【0233】
また、I個のショットそれぞれの絶対位置座標(X、Y)の実測値を、ウエハグリッドの変動情報としても良い。
【0234】
これにより、いつでも、ウエハグリッドの設計値からの変動量を求めて、その変動量を管理することが可能になる。
【0235】
次のステップS214は、必要に応じてなされる。ステップS214において、制御装置60は、ステップS210で求めたウエハグリッドの設計値からの変動情報を、メモリ(又は計測システム制御装置530の記憶装置)内に事前に記憶されている、基準となるウエハグリッドの変動情報と比較し、その差を求める。例えば、その基準となるウエハグリッドの変動からの、ウエハグリッドの変動量を求める。このステップS214の処理により、異なる露光装置間でのステージグリッドの誤差などに起因して生じるショット配列の誤差、又は同一の露光装置の異なる時点間のステージグリッドの誤差などに起因して生じるショット配列の誤差を管理することが可能になる。
【0236】
前者の場合、ステップS214の処理に先立って、露光装置200とは異なるスキャニング・ステッパでレチクルRを用いてウエハWとは別のロットのベアウエハ上に対して、前述のステップS202と同様にして露光が行われ、その露光済みのウエハに対して、ステップS204~S212と同様の処理が行われることで、基準となるウエハグリッドの変動情報が求められ、メモリ(又は計測システム制御装置530の記憶装置)内に記憶されている。
【0237】
後者の場合、ステップS214の処理に先立って、ウエハWと同じロットに含まれる、あるいはウエハWと別のロットに含まれる、ウエハWとは別のウエハに対して、前述のステップS202と同様にして、露光装置200でレチクルRを用いた露光が行われ、そのウエハに対してステップS203~S212と同様の処理が行われることで、基準となるウエハグリッドの変動情報が求められ、メモリ(又は計測システム制御装置530の記憶装置)内に記憶されている。
【0238】
なお、ウエハWのウエハグリッドの変動情報の取得に用いられた計測装置100は、基準となるウエハグリッドの変動情報の取得に用いられた計測装置100と同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0239】
上述の説明から明らかなように、本実施形態に係る管理方法では、基準ウエハを用いること無く、装置起因のウエハグリッドの変動を管理することができる。このため、基準ウエハを用いる場合の以下の様な不都合が生じるのを回避できる。
【0240】
すなわち、基準ウエハによる運用は、基準ウエハを複数の露光装置で使いまわすことになるため、取り合いになる。基準ウエハは、通常1枚だけでなく複数枚作製されるため、基準ウエハ同士の個体差を保証する必要がある。また、基準ウエハは破損することもあるし、使っているうちに劣化することもある。さらに、基準ウエハを用いるウエハグリッドの管理方法では、基準ウエハ表面にレジストを塗布して露光し、その後必要な処理が済んだらレジストを剥離して基準ウエハを洗浄する。このプロセスを繰り返すことで表面が傷んでくることもある。また、基準ウエハの裏面にもウエハホルダが有するチャック部材(ピンチャックなど)の痕がつき、これが基準ウエハの吸着歪を発生させ、ウエハグリッドを歪ませてしまう。
【0241】
一方、基準ウエハを用いないことにより、次のようなメリットがある。
a. 基準ウエハの空きやシリアル番号を気にすることなく、ウエハグリッドの変動を計測したい(補正を行いたい)時に計測(補正)を実効可能となる。
b. 基準ウエハの代わりにベアウエハを使えるため、品質管理を手軽に実行可能となる。
c. 製品ショットマップ・製品レチクルでウエハグリッドの管理が可能となる。すなわち、製品レチクルについている重ね計測用マークやアライメントマークを使ってウエハグリッドの管理をすることが可能となる。この結果、品質管理用の専用レチクルが不要となる。また、製品ショットマップそのもので品質管理が可能となり、さらには、場所依存誤差のみならず、スキャン速度や加速度、その他製品露光動作で生じる全ての誤差要因によって生じるウエハグリッドの変動量を計測できるので、この計測結果に基づいて、補正を行うことで、次に説明する、基準ウエハを用いるグリッド管理に伴う一種の妥協を一切排除することが可能になる。
a. グリッドの誤差とは座標依存であり、場所が同じなら同じ誤差を持つ。マークの位置を計測し、グリッド誤差の補正を行ったポイントの近くなら、誤差も小さいものと考えられる。
b. スキャン速度あるいはスキャン加速度などの誤差は、グリッド誤差を生じさせない。仮に、グリッド誤差を生じさせるとしても、その誤差は、スキャンの都度変化するものではないので、一度の調整で足り、定期的にメンテナンスする必要は無い。
【0242】
なお、ステップ212で求めたウエハWのウエハグリッドの情報を、露光装置200に提供(フィードバック)し、ウエハWが含まれるロットの後に、ウエハWとは別のロットに含まれるベアウエハを露光装置200でレチクルRを用いて、露光処理するときに、第1層のウエハグリッドの変動(設計値からのずれ)が小さくなるように、露光装置200のステージWSTの移動の制御などを行っても良い。すなわち、ステップ212で求めたウエハWのウエハグリッドの情報を用いて、別のロットに含まれるベアウエハに対して各ショットを露光するときの位置決め目標位置を決めて良い。
【0243】
また、ステップ210において、ウエハWの上の全ショットについて2以上のウエハマークの絶対位置座標を取得し、各ショットの形状と大きさに関する情報が取得できる場合には、その情報を露光装置200に提供(フィードバック)し、各ショットの形状と大きさが所望状態となるように、結像特性補正コントローラ248を制御したり、レチクルステージRSTの速度と方向の少なくとも一方を制御したりしても良い。
【0244】
また、第2の層(第1の層を下層とする上層)の露光処理を行うために、ウエハWが各種プロセス(エッチング処理及び成膜処理を含む)を経てC/D装置300(又は別のC/D装置)に搬入される直前に、ウエハWのウエハグリッドの変動情報を取得しても良い。この場合、第1実施形態で説明したように、取得されたウエハグリッドの変動情報を含むウエハWのアライメント履歴データを、第2の層の露光処理を行う露光装置200、又は別の露光装置に提供(フィードフォワード)にしても良いし、ウエハWのウエハグリッドの変動情報を露光装置200に提供(フィードバック)し、ウエハWが含まれるロットの後に、ウエハWとは別のロットに含まれるベアウエハを露光装置200でレチクルRを用いて露光処理するときに用いても良い。
【0245】
《重ね合わせ計測》
次に、計測装置を用いる重ね合わせ計測方法を、基板処理システム1000に適用した場合を例として説明する。図15には、この場合の重ね計測方法における処理の流れが概略的に示されている。
【0246】
まず、ステップS302において、あるロットに含まれるウエハ(ウエハW11とする)がC/D300に搬入され、C/D300の塗布部において、露光装置200、又は露光装置200とは異なる露光装置、例えばスキャナ又はステッパにより第1の層(下層)の露光が行われたウエハW11にレジストの塗布が行われる。レジスト塗布前のウエハW11には、下層の露光により、複数、例えばI個(Iは例えば98)のショットとともに、ショットとの設計上の位置関係が既知のウエハマーク及び重ね合わせずれ計測用の第1マーク(正確には、第1マークのレジスト像(適宜、第1マーク像とも称する))が、それぞれのショットに対応して形成されている。この場合、I個の第1マーク像それぞれの設計上の位置関係も既知である。
【0247】
次に、ステップS304において、レジストが塗布されたウエハW11が、前述したウエハWと同様の所定の処理過程を経て、露光装置200のウエハステージWST上にロードされる。具体的には、ウエハW11は、ベーク部で加熱処理(PB)、温調部330での温調などが行われた後、ウエハステージWST上にロードされる。
【0248】
次に、ステップS306において、露光装置200の露光制御装置220により、ウエハステージWST上のウエハW11に対して、アライメント検出系ASを用いて前述と同様のサーチアライメント、及び例えば3~16程度のショットをアライメントショットとするEGA方式のウエハライメントが行われる。
【0249】
なお、ステップS302に先だって、第1実施形態で説明したように、計測システム500の計測装置100でウエハW11のウエハグリッドの情報が求められ、露光装置200の露光制御装置220に提供されている。
【0250】
次に、ステップS308において、露光制御装置220により、ウエハアライメントの結果に基づき、前述の式(3)で表される各ショットの位置座標の補正量(アライメント補正成分)dx、dyが求められ、この補正量に基づいて、ウエハグリッドを補正するための、各ショットの露光に際しての位置決め目標位置が決定される。
【0251】
なお、ステップ302に先だって、計測システム500の計測装置100でウエハW11のウエハグリッドの情報を求めずに、アライメント検出系ASを用いた、例えば3~16程度のショットをアライメントショットとするEGA方式のウエハライメントの結果だけで、各ショットの露光に際しての位置決め目標位置を決定しても良い。
【0252】
次に、ステップS310において、露光装置200により、その位置決め目標位置に従ってウエハステージWSTを位置制御しつつ、ウエハW11上の各ショットに対してステップ・アンド・スキャン方式で第2の層(第1の層を下層とする上層)の露光が行われる。このとき、露光装置200は、ウエハW11上の第1マーク像に対応して第2マークが形成されたレチクル(便宜上、レチクルR11とする)を用いて露光を行う。したがって、この第2の層の露光により、ウエハW11上のI個のショットに対してレチクルR11のパターン領域が重ね合わせて転写されるとともに、I個の第1マークの位置関係に対応する位置関係で配置されたI個の第2マークの転写像が形成される。
【0253】
次に、ステップS312において、第2の層の露光が終了したウエハW11は、前述の露光済みのウエハWと同様の処理過程を経て、C/D300の現像部内に搬入される。具体的には、ウエハW11は、ウエハ搬送系270により基板受け渡し部のアンロード側基板載置部に搬送され、C/D内搬送系によりアンロード側基板載置部からC/D300のベーク部内に搬入され、該ベーク部内のベーキング装置によりPEBが行われる。PEBが終了したウエハW11は、C/D内搬送系によりベーク部から取り出され、現像部内に搬入される。
【0254】
次に、ステップS314において、現像部内の現像装置により、複数の第2マークの転写像が形成されたウエハW11が、現像される。この現像により、ウエハW11上には、I個のショットとともに、第1マーク像と対応する第2マーク像との組が、I個、所定の位置関係で形成され、重ね合わせ計測に際しての計測対象の基板となる。すなわち、このようにして重ね合わせ計測に際しての計測対象となる基板(重ね合わせ計測対象基板)が作製される。ここで、第1マーク像と対応する第2マーク像との組として、例えば外ボックスマークとこの内側に配置された内ボックスマークとから成るボックス・イン・ボックスマークのレジスト像などを用いることができる。
【0255】
次に、ステップS316において、現像済みのウエハW11(重ね合わせ計測対象の基板)を含む、あるロットの複数のウエハが収容されたFOUPが、C/D300から取り出されて、上述のOHTなどを用いて、計測システム500のロードポート514に載置される。すなわち、C/D300から取り出されたFOUP内のウエハW11は、現像処理後に行われるプロセス処理(エッチング処理、又はエッチング処理後の成膜処理(スパッタ処理、CVD処理、熱酸化処理の少なくとも一つを含む))が施される前に、計測システム500に搬送される。FOUPに収容されたウエハW11は、ロボット516などを用いてFOUPから取り出され、搬送システム521などを用いて、計測装置100に搬送される。
【0256】
なお、以下では、FOUPに収容されている複数のウエハのうちの1枚を、ウエハW11として説明するが、同様の処理を、FOUPに収容されている複数のウエハのすべて、又は一部に行っても良い。
【0257】
次にステップS318において、計測装置100により、搬送された現像済みのウエハW11(重ね合わせ計測対象基板)が、前述した手順でスライダ10上にロードされ、I組の第1マーク像と第2マーク像それぞれのXY平面内の絶対位置座標が次のようにして求められる。すなわち、制御装置60は、スライダ10の位置情報を、第1位置計測システム30(及び第2位置計測システム50)を用いて計測しつつ、マーク検出系MDSを用いてウエハW11上のI個の第1マーク像とI個の第2マーク像をそれぞれ検出し、I個の第1マーク像とI個の第2マーク像それぞれの検出結果とそれぞれのマーク像の検出時のスライダ10の絶対位置座標(X、Y)とに基づいて、ウエハW11上のI個の第1マーク像とI個の第2マーク像それぞれのXY平面内の絶対位置座標を求める。このとき、制御装置60は、第1位置計測システム30によって計測されるスライダ10のθx方向及びθy方向の計測値に基づいて、第1位置計測システム30のX軸方向及びY軸方向アッベ誤差、及び第2位置計測システム50のX軸方向及びY軸方向の計測値を、オフセットとして、I個の第1マーク像とI個の第2マーク像それぞれのXY平面内の絶対位置座標を求める。
【0258】
なお、ステップS318において、I個よりも少ないK個の第1マーク像の絶対位置座標と、K個の第2マーク像の絶対位置座標を求めても良い。
【0259】
次にステップS320において、制御装置60により、相互に組を成す第1マーク像の絶対位置座標と第2マーク像の絶対位置座標とに基づいて、第1の層と第2の層との重ね合わせ誤差(重ね合わせずれ)が求められる。
【0260】
次にステップS322において、制御装置60により、I個の第1マーク像の絶対位置座標とI個の第2マーク像の絶対位置座標とに基づいて、重ね合わせ誤差が、第1の層の露光と、第2の層の露光とのいずれに主として起因するかが、例えば次のようにして判断される。すなわち、制御装置60は、第1マーク像の絶対位置座標の設計上の位置座標からのずれ量(ΔX1,ΔY1)(i=1~I)と、第2マーク像の絶対位置座標の設計上の位置座標からのずれ量(ΔX2,ΔY2)(i=1~I)とを求め、ΔX1、ΔX2、ΔY1、ΔY2それぞれについてi=1~Iの総和ΣX1、ΣX2、ΣY1、ΣY2を求める。そして、制御装置60は、ΣX1>ΣX2かつΣY1>ΣY2の場合、重ね合わせ誤差は、X軸方向及びY軸方向のいずれについても第1の層の露光に主として起因すると判断し、ΣX1<ΣX2かつΣY1<ΣY2の場合、重ね合わせ誤差は、X軸方向及びY軸方向のいずれについても第2の層の露光に主として起因すると判断する。また、制御装置60は、ΣX1>ΣX2かつΣY1<ΣY2の場合、重ね合わせ誤差は、X軸方向については第1の層の露光に主として起因し、かつY軸方向については第2の層の露光に主として起因すると判断し、ΣX1<ΣX2かつΣY1>ΣY2の場合、重ね合わせ誤差は、X軸方向については第2の層の露光に主として起因し、かつY軸方向については第1の層の露光に主として起因すると判断する。
【0261】
なお、上記の判断方法は一例であり、要は、制御装置60は、I個の第1マーク像の絶対位置座標とI個の第2マーク像の絶対位置座標とに基づいて、重ね合わせ誤差が、第1の層の露光と、第2の層の露光とのいずれに主として起因するかを判断するのであれば、その具体的な判断方法は特に問わない。
【0262】
上述の重ね合わせ計測方法により得られたウエハW11の重ね合わせ誤差(重ね合わせずれ)のデータ、及び重ね合わせ誤差が第1の層の露光と第2の層の露光とのいずれに主として起因するかの判断結果のデータは、制御装置60、あるいは計測システム制御装置530によって第1の層の露光を行った露光装置と第2の層の露光を行なった露光装置200の少なくとも一方にフィードバックされることになる。
【0263】
例えば、重ね合わせ誤差の主要因が第1の層の露光である場合には、それらのデータを第1の層を行った露光装置にフィードバックしても良い。そして、その露光装置で、ウエハW11を含むロットとは別のロットに含まれるウエハに対して、ウエハW11の第1の層と同様の露光処理を行う場合に、フィードバックされたデータに基づいて、第2の層との重ね合わせ誤差が小さくなるように位置決め目標位置を決めて良い。
【0264】
また、重ね合わせ誤差の主要因が第2の層の露光である場合には、それらのデータを第2の層を行った露光装置200にフィードバックしても良い。そして、露光装置200で、ウエハW11を含むロットとは別のロットに含まれるウエハに対して、ウエハW11の第2の層と同様の露光処理を行う場合に、フィードバックされたデータに基づいて、第1の層との重ね合わせ誤差が小さくなるように位置決め目標位置を決めて良い。
【0265】
なお、データのフィードバックはホストコンピュータ2000を介して行っても良い。
【0266】
また、ステップ318において、ウエハW11の上の全ショットについて2以上のマークの絶対位置座標を取得し、第1の層の各ショットの形状と大きさに関する第1情報、及び第2の層の各ショットの形状と大きさに関する第2情報とが取得できる場合には、第1情報を、第1の層を露光した露光装置に提供(フィードバック)し、第2情報を第2の層を露光した露光装置200に提供(フィードバック)しても良い。この場合、第2の層の各ショットの形状と大きさが所望状態となるように、結像特性補正コントローラ248を制御したり、レチクルステージRSTの速度と方向の少なくとも一方を制御したりしても良い。
【0267】
なお、上述の説明においては、第1マーク像の絶対位置座標と第2マーク像の絶対位置座標とに基づいて、第1の層と第2の層との重ね合わせ誤差(重ね合わせずれ)を求めているが、第1マーク像の絶対位置座標のデータと第2マーク像の絶対位置座標のデータを、第1の層と第2の層の重ね合わせ誤差(第1の層と第2の層の位置ずれ)の情報として、計測システム500から出力しても良い。この場合、計測システム500から出力されたデータを、第1の層の露光を行なった露光装置(露光装置200又は別の露光装置)と第2の層の露光を行った露光装置200との少なくとも一方に提供(フィードバック)しても良い。
【0268】
また、第1マーク像の絶対位置座標と第2マーク像の絶対位置座標とに基づいて、相互に組を成す第1マーク像と第2マーク像との位置ずれをそれぞれ求め、それらの位置ずれのデータを、第1の層と第2の層の重ね合わせ誤差(第1の層と第2の層の位置ずれ)の情報として、計測システム500から出力しても良い。この場合も、計測システム500から出力されたデータを、第1の層の露光を行なった露光装置(露光装置200又は別の露光装置)と第2の層の露光を行った露光装置200との少なくとも一方に提供(フィードバック)しても良い。
【0269】
上述の説明から明らかなように、本第2の実施形態に係る、基板処理システム1000で行われる重ね合わせ計測方法によると、計測システム500は、第1マーク像の絶対位置座標と第2マーク像の絶対位置座標とをそれぞれ計測することができ、これらの絶対位置座標に基づいて、重ね合わせ誤差を計測することができる。また、その重ね合わせ誤差が、下層の露光に主として起因するのか、上層の露光に主として起因するのを、特定することができるという、従来にない優れた効果を得ることができる。
【0270】
なお、上述の説明では、第1の層と第2の層の重ね合わせ誤差を求めるために、重ね合わせずれ計測用のマーク(第1マーク像、第2マーク像)を用いたが、ウエハマーク(アライメントマーク)を用いても良い。すなわち、第1の層のI個のウエハマークの絶対位置座標と、第2の層のI個のウエハマークの絶対位置座標とから、第1の層と第2の層との重ね合わせ誤差を求めても良い。
【0271】
なお、上記ステップS320において、第1の層と第2の層との重ね合わせ誤差(重ね合わせずれ)が求められているので、ステップS322は、必要に応じて実行すれば良い。
【0272】
また、上述の説明では、第2の層の露光処理後に、計測システム500の計測装置100で、現像済のウエハW11の第1マーク像(又は、第1層のウエハマーク)の絶対位置座標と第2マーク像(又は第2の層のウエハマーク)の絶対位置座標を取得しているが、第1の層の露光処理後であって、第2の層の露光処理前に、現像済のウエハW11の第1マーク像(又は、第1層のウエハマーク)の絶対位置座標を計測システム500の計測装置100で取得し、第2の層の露光処理後に、現像済のウエハW11の第2マーク像(又は、第2層のウエハマーク)の絶対位置座標を計測システム500の計測装置100で取得しても良い。この場合、第1の層と第2の層の重ね合わせ誤差は、計測システム500(制御装置60、530)で求めても良いし、別の装置(例えば、ホストコンピュータ2000)で求めても良い。また、第1マーク像(又は、第1層のウエハマーク)の絶対位置座標の取得に用いられる計測装置100と、第2マーク像(又は、第2層のウエハマーク)の絶対位置座標の取得に用いられる計測装置100とが異なっていても良い。
【0273】
また、第2の層の次の層の露光処理を行うために、ウエハW11が各種プロセス(エッチング処理及び成膜処理を含む)を経てC/D装置300(又は別のC/D装置)に搬入される直前に、ウエハW11を計測システム500に搬入し、計測システム500の計測装置100で、ウエハW11の第1マーク像(又は、第1層のウエハマーク)の絶対位置座標と第2マーク像(又は第2の層のウエハマーク)の絶対位置座標の両方、又はウエハW11の第2マーク像(又は、第2層のウエハマーク)の絶対位置座標を取得しても良い。この場合も、第1の層と第2の層との重ね合わせ誤差(第1の層と第2の層と位置ずれ)を計測システム500で求めて良いし、計測システム500で取得された絶対位置座標の情報を計測システム500から提供し、別の装置(例えば、ホストコンピュータ2000)で第1の層と第2の層との重ね合わせ誤差(第1の層と第2の層と位置ずれ)を求めて良い。また、計測システム500で求められた第1の層と第2の層との重ね合わせ誤差(第1の層と第2の層と位置ずれ)の情報、あるいは計測システム500で取得された絶対位置座標の情報を露光装置200、又は別の露光装置に提供しても良い。
【0274】
なお、上述の説明では、計測システム500で第1の層と第2の層の重ね合わせ誤差の情報を取得しているが、これに限られず、第m層(下層、mは1以上の整数)と第n層(上層、nは、mよりも大きい、2以上の整数)の重ね合わせ誤差を取得しても良い。この場合、第n層が第m層の次の層でなくても良い。
【0275】
なお、上記第2実施形態において、上述のウエハグリッドの変動管理に用いられる計測装置100と、重ね合わせ計測に用いられる計測装置100とが異なっていても良い。
【0276】
なお、上記第2の実施形態に係る基板処理システム1000では、上述のウエハグリッドの変動管理と重ね合わせ計測の両方を行っているが、いずれか一方を行うだけでも良い。
【0277】
また、上記第2の実施形態に係る基板処理システム1000において、計測システム500は、露光装置200、及びC/D300のいずれともインライン接続されていないが、露光装置200とC/D装置300の一方、又は両方とインライン接続されていても良い。例えば、C/D装置300が、露光装置200と計測システム500との間に配置されるように、C/D装置300と計測システム500とをインライン接続しても良い。あるいは、露光装置200とC/D装置300との間に配置されるように、計測システム500を、露光装置200とC/D装置300の両方にインライン接続しても良い。この場合、計測システム500は、キャリアシステム510を備えていなくても良い。
【0278】
また、上記第1及び第2の実施形態では、計測システム500が複数の計測装置100を備えていなくても良い。すなわち、計測システム500が計測装置を1台、例えば計測装置100のみを備えていても良い。
【0279】
なお、上記第1及び第2の実施形態(以下、上記各実施形態と略記する)では、計測装置100(i=1~4のいずれか)が、備えるマーク検出系MDSの検出信号を処理する信号処理装置49が、マーク検出系MDSの検出結果として得られる検出信号の波形が良好なウエハマークの計測結果のみを、制御装置60に送ることで、制御装置60によりそれらのウエハマークの計測結果を用いてEGA演算が行われる結果、露光制御装置220によりマーク検出系MDSによる検出結果として得られる検出信号の波形が良好な複数のウエハマークの中から選択したウエハマークの位置情報の一部の位置情報を用いてEGA演算が行われる場合について説明した。しかしながら、これに限らず、信号処理装置49は、マーク検出系MDSの検出結果として得られる検出信号の波形が不良なウエハマークを除いた残りのウエハマークの計測結果を、制御装置60に送ることとしても良い。また、マーク検出系MDSによる検出結果として得られる検出信号が良好か否かの判断を、信号処理装置49に代わりに制御装置60が行っても良く、この場合も、制御装置60は、その検出信号が良好と判断したウエハマークあるいはその検出信号が不良と判断したウエハマークを除く残りのウエハマークの計測結果のみを用いて、前述のEGA演算を行う。そして、露光制御装置220が、制御装置60によるEGA演算に用いられたウエハマークの計測結果から選択した一部のウエハマークの計測結果を用いて前述のEGA演算を行うことが望ましい。
【0280】
なお、上記各実施形態では、露光装置200にC/D300がインライン接続されている場合について説明したが、C/D300に代えて、基板(ウエハ)上に感応剤(レジスト)を塗布する塗布装置(コータ)が露光装置200にインライン接続されていても良い。この場合、露光後のウエハは、露光装置に対してインライン接続されていない現像装置(デベロッパ)に搬入されることになる。あるいは、C/D300に代えて、露光後の基板(ウエハ)を現像する現像装置(デベロッパ)が露光装置200にインライン接続されていても良い。この場合、別の場所で予めレジストが塗布されたウエハが、露光装置に搬入されることになる。
【0281】
上記各実施形態では、露光装置が、スキャニング・ステッパである場合について説明したが、これに限らず、露光装置は、ステッパなどの静止型露光装置であっても良いし、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置であっても良い。さらに、例えば米国特許第6,590,634号明細書、米国特許第5,969,441号明細書、米国特許第6,208,407号明細書などに開示されているように、複数のウエハステージを備えたマルチステージ型の露光装置にも上記実施形態を適用できる。また、露光装置は、前述した液体(水)を介さずにウエハWの露光を行うドライタイプの露光装置に限らず、例えば、欧州特許出願公開第1420298号明細書、国際公開第2004/055803号、国際公開第2004/057590号、米国特許出願公開第2006/0231206号明細書、米国特許出願公開第2005/0280791号明細書、米国特許第6,952,253号明細書などに記載されている液体を介して基板を露光する液浸型の露光装置であっても良い。また、露光装置は半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置などであっても良い。
【0282】
半導体デバイスは、上記各実施形態に係る基板処理システムの一部を構成する露光装置で、パターンが形成されたレチクル(マスク)を用いて感光物体を露光するとともに、露光された感光物体を現像するリソグラフィステップを経て製造される。この場合、高集積度のデバイスを歩留り良く製造することができる。
【0283】
なお、半導体デバイスの製造プロセスが、リソグラフィステップの他に、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクル(マスク)を製作するステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を含んでいても良い。
【符号の説明】
【0284】
10…スライダ、12…定盤、14…除振装置、16…ベースフレーム、18…エアベアリング、20…駆動システム、20A…第1駆動装置、20B…第2駆動装置、22a,22b…可動子、23a,23b…可動子、24…可動ステージ、25a,25b…固定子、26a,26b…固定子、28A,28B…X軸リニアモータ、29A,29B…Y軸リニアモータ、30…第1位置計測システム、32…ヘッド部、33…エンコーダシステム、35a~35d…レーザ干渉計、37x…Xヘッド、37ya,37yb…Yヘッド、40…計測ユニット、48…除振装置、50…第2位置計測システム、52A,52B…ヘッド部、58X,58X…XZヘッド、58Y,58Y…YZヘッド、60…制御装置、70…ウエハ搬送系、530…計測システム制御装置、100…計測装置、200…露光装置、300…C/D、330…温調部、500…計測システム、510…EFEMシステム、512…EFEM本体、514…ロードポート、516…ロボット、521…搬送システム、524…ロード搬送部材、526…アンロード搬送部材、1000…基板処理システム、MDS…マーク検出系、RG1…グレーティング、RG2a,RG2b…グレーティング、W…ウエハ、WST…ウエハステージ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16