(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】加工システム
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20240618BHJP
【FI】
B23K26/00 J
(21)【出願番号】P 2022518551
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 JP2020018298
(87)【国際公開番号】W WO2021220477
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(72)【発明者】
【氏名】江上 茂樹
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-223672(JP,A)
【文献】特開2019-039830(JP,A)
【文献】特開2010-192570(JP,A)
【文献】特開2004-063406(JP,A)
【文献】特表2022-541400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を回転可能に保持する保持装置と、
前記保持装置を回転させる回転装置と、
前記保持装置が保持した前記物体にエネルギビームを照射するビーム照射装置と、
前記物体
の表面を計測する物体計測装置と、
前記物体計測装置によって
取得された前記物体に関する情報と、前記回転装置の回転軸の情報とに基づいて、前記ビーム照射装置及び前記回転装置のうち少なくとも一方を制御する制御装置と
を備え、
前記ビーム照射装置からのエネルギビームを前記保持装置に保持された前記物体に照射することにより前記物体を加工する
加工システム。
【請求項2】
前記回転軸の情報は、前記物体計測装置による計測結果に基づいて取得される
請求項1に記載の加工システム。
【請求項3】
前記物体計測装置は、前記物体に光を照射することで前記物体の表面を計測する
請求項1又は2に記載の加工システム。
【請求項4】
前記物体計測装置は、前記物体から反射する光を検出することで前記物体の表面を計測する
請求項3に記載の加工システム。
【請求項5】
前記物体計測装置は、光干渉法により前記物体の表面を計測する
請求項4に記載の加工システム。
【請求項6】
前記物体計測装置は、光切断法またはタイム・オブ・フライト法により前記物体の表面を計測する
請求項4に記載の加工システム。
【請求項7】
前記物体計測装置は、前記物体の表面
の3次元
形状を計測する
請求項1から
6のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項8】
前記物体計測装置は、前記エネルギビームとは異なる計測光を照射することで前記物体の表面を計測する
請求項3から7のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項9】
前記物体計測装置は、前記物体の計測のために前記ビーム照射装置によって前記エネルギビームを照射することなく、前記物体の表面の形状を計測する
請求項1から8のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項10】
前記物体計測装置は、前記ビーム照射装置によって前記エネルギビームを照射することなく、前記物体の表面を計測する
請求項1から9のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記物体の加工が完了する前に前記回転軸の情報を取得する
請求項1から10のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項12】
前記制御装置は、前記物体の加工が行われる前に前記回転軸の情報を取得する、
請求項11に記載の加工システム。
【請求項13】
前記制御装置は、前記物体の加工が行われている間に前記回転軸の情報を取得する、
請求項11に記載の加工システム。
【請求項14】
前記物体に関する情報は、前記物体の表面の形状に関する情報を含む
請求項1から13のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項15】
前記回転軸の情報は、前記回転軸と前記物体とのずれ
に関する情報を含む
請求項1
から14のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項16】
前記
ずれに関する情報は、前記回転軸と前記物体の中心軸との角度関係
及び位置関係の少なくとも一方を含む
請求項
15に記載の加工システム。
【請求項17】
前記回転軸の情報は、ステージに対する前記回転装置の組み付け誤差及び前記回転軸の方向と前記エネルギビームの走査方向とのずれの少なくとも一方に関する情報を含む
請求項1から16のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項18】
前記制御装置は、前記ビーム照射装置による前記エネルギビームの照射位置を制御する
請求項1から
17のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項19】
前記制御装置は、前記ビーム照射装置による前記エネルギビームの照射位置を前記回転軸と交差する方向に変える
請求項
18に記載の加工システム。
【請求項20】
前記ビーム照射装置は、前記物体の表面上の照射位置に、前記表面の前記照射位置での法線と交差する方向から前記エネルギビームを照射する
請求項1から
19のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項21】
前記照射位置に照射される前記エネルギビームの進行方向に沿った照射軸と前記法線とのなす角度は60度以上である
請求項
20に記載の加工システム。
【請求項22】
前記エネルギビームの前記照射位置は、前記回転軸と交差する方向で変更可能である
請求項
20又は
21に記載の加工システム。
【請求項23】
前記ビーム照射装置が前記物体に前記エネルギビームを照射する第1期間における前記エネルギビームの照射位置に対して、前記第1期間よりも後の第2期間における前記照射位置は前記回転軸に近い
請求項1から
22のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項24】
前記ビーム照射装置からの前記エネルギビームを計測するビーム計測装置をさらに備える
請求項1から
23のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項25】
前記ビーム計測装置は、前記エネルギビームの強度分布を計測する
請求項
24に記載の加工システム。
【請求項26】
前記ビーム計測装置は、前記エネルギビームの第1集光位置の強度分布及び前記第1集光位置と異なる第2集光位置の強度分布を計測する
請求項25に記載の加工システム。
【請求項27】
前記制御装置は、前記ビーム計測装置の計測結果に基づいて、前記エネルギビームの照射位置を制御する
請求項
25又は26に記載の加工システム。
【請求項28】
前記制御装置は、前記ビーム計測装置の計測結果に基づいて、前記エネルギビームが進行する方向を制御する
請求項
25から27のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項29】
前記ビーム照射装置は、前記ビーム照射装置に対する前記エネルギビームの照射位置及び前記ビーム照射装置からの前記エネルギビームの進行方向のうち少なくとも一方を変えるビーム照射状態変更装置を備える
請求項
27又は
28に記載の加工システム。
【請求項30】
前記ビーム照射装置は、前記エネルギビームの開き角を変更する開き角変更装置を備え、
前記制御装置は、前記ビーム計測装置の計測結果に基づいて、前記開き角を制御する
請求項
25から
29のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項31】
前記ビーム照射装置は、前記開き角変更装置を第1開き角変更装置とするとき、前記エネルギビームの進行方向に沿った照射軸を含む第1面での前記エネルギビームの第1開き角と、前記照射軸を含み前記第1面と交差する第2面の前記エネルギビームの第2開き角とのうち少なくとも一方を変更する第2開き角変更装置を備え、
前記制御装置は、前記ビーム計測装置の計測結果に基づいて、前記第1開き角及び前記第2開き角のうち少なくとも一方を制御する
請求項
30に記載の加工システム。
【請求項32】
前記ビーム照射装置は、前記エネルギビームを集光する集光光学系と、前記集光光学系の入射瞳でのビーム断面の直径のうち最大値をとる方向を前記集光光学系の光軸廻りで変更するビーム回転部材とを備える
請求項
24から
31のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項33】
前記ビーム計測装置は、前記エネルギビームが進行する方向における第1位置で前記エネルギビームを計測し、前記進行する方向において前記第1位置と異なる第2位置で前記エネルギビームを計測する
請求項
24から
32のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項34】
前記ビーム計測装置は、前記エネルギビームが進行する方向を計測する
請求項
24から
33のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項35】
前記ビーム計測装置は、前記エネルギビームが進行する方向における第1位置で前記エネルギビームを計測し、前記進行する方向において前記第1位置と異なる第2位置で前記エネルギビームを計測し、
前記エネルギビームが進行する方向と交差する方向における前記第1及び第2位置に基づいて、前記エネルギビームが進行する方向を計測する
請求項
34に記載の加工システム。
【請求項36】
前記ビーム計測装置によって計測された前記エネルギビームが進行する方向に基づいて、前記エネルギビームの照射位置を制御する
請求項
34又は
35に記載の加工システム。
【請求項37】
前記ビーム計測装置によって計測された前記エネルギビームが進行する方向に基づいて、前記エネルギビームが進行する方向を制御する
請求項
34から
36のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項38】
前記ビーム計測装置は、前記エネルギビームが進行する方向と交差する面内で前記エネルギビームが通過する位置を計測する
請求項
24から
37のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項39】
前記ビーム照射装置からの前記エネルギビームが進行する方向に沿った照射軸と、前記物体計測装置の計測軸とは同じ方向成分を含む
請求項1から38のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項40】
前記ビーム照射装置からの前記エネルギビームが進行する方向に沿った照射軸と、前記物体計測装置の計測軸とは平行である
請求項1から39のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項41】
前記ビーム照射装置からの前記エネルギビームが進行する方向に沿った照射軸と、前記物体計測装置の計測軸とは一致していない
請求項1から
40のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項42】
前記ビーム照射装置からの前記エネルギビームが進行する方向に沿った照射軸と、前記物体計測装置の計測軸とは一致している
請求項1から
40のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項43】
前記制御装置は、前記物体計測装置によって前記物体が計測された後に前記物体を回転させるように前記回転装置を制御し、
前記物体計測装置は、前記回転装置によって回転された前記物体
の表面を計測する
請求項1から
39のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項44】
前記回転装置によって回転された前記物体上における計測範囲は、前記回転装置によって回転される前の前記物体上における計測範囲と一部重畳する
請求項
43に記載の加工システム。
【請求項45】
前記物体計測装置は、前記回転装置によって回転している前記物体を計測する
請求項1から
41のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項46】
前記ビーム照射装置からの前記エネルギビームを計測するビーム計測装置と、
前記ビーム照射装置及び前記ビーム計測装置のうち少なくとも一方を移動させる移動装置と
をさらに備え、
前記制御装置は、
前記ビーム計測装置が前記ビーム照射装置からの前記エネルギビームを計測できるように、前記ビーム照射装置及び前記ビーム計測装置のうちの少なくとも一方を移動させ、
前記物体計測装置によって前記ビーム計測装置の少なくとも一部を計測できるように、前記ビーム照射装置及び前記ビーム計測装置のうちの少なくとも一方を移動させる
請求項1から
45のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項47】
前記ビーム照射装置からの前記エネルギビームを計測するビーム計測装置と、
前記ビーム照射装置の位置及び前記ビーム計測装置の位置のうち少なくとも一方を移動させる移動装置と
前記ビーム照射装置の位置及び前記ビーム計測装置の位置のうち少なくとも一方に関する情報を取得する取得装置と、
をさらに備え、
前記制御装置は、
前記ビーム照射装置が前記ビーム計測装置の少なくとも一部に前記エネルギビームを照射できる照射可能位置に、前記ビーム照射装置及び前記ビーム計測装置のうち少なくとも一方を移動し、
前記照射可能位置に移動した前記ビーム照射装置の位置及び前記ビーム計測装置の位置のうち少なくとも一方に関する照射位置情報を、前記取得装置を用いて取得し、
前記照射位置情報に基づいて、前記ビーム照射装置の位置及び前記ビーム計測装置の位置のうち少なくとも一方を制御する
請求項1から
46のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項48】
前記ビーム照射装置からの前記エネルギビームを計測するビーム計測装置と、
前記ビーム照射装置及び前記ビーム計測装置のうち少なくとも一方を移動させる移動装置と
前記ビーム照射装置の位置及び前記ビーム計測装置の位置のうち少なくとも一方に関する情報を取得する取得装置と、
をさらに備え、
前記制御装置は、
前記物体計測装置が前記ビーム計測装置の少なくとも一部を計測できる計測可能位置に、前記ビーム照射装置及び前記ビーム計測装置のうち少なくとも一方を移動し、
前記計測可能位置に移動した前記ビーム照射装置の位置及び前記ビーム計測装置の位置のうち少なくとも一方に関する計測位置情報を、前記取得装置を用いて取得し、
前記計測位置情報に基づいて、前記ビーム照射装置の位置及び前記ビーム計測装置の位置のうち少なくとも一方を制御する
請求項1から
47のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項49】
物体を回転可能に保持することと、
回転装置を用いて、前記保持
した物体を回転させることと、
ビーム照射装置から、前記保持した前記物体にエネルギビームを照射することと、
前記物体
の表面を計測することと、
前記物体
の表面を計測することによって
取得された前記物体に関する情報と、前記回転装置の回転軸の情報とに基づいて、前記ビーム照射装置及び前記回転装置のうち少なくとも一方を制御することと
をふくみ、
前記エネルギビームを、保持された前記物体に照射することにより前記物体を加工する
加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギビームで物体を加工可能な加工システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザ光を物体に照射することで物体を加工する加工システムが記載されている。この種の加工システムでは、物体を適切に加工することが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によれば、物体を回転可能に保持する保持装置と、前記保持装置を回転させる回転装置と、前記保持装置が保持した前記物体にエネルギビームを照射するビーム照射装置と、前記物体を計測する物体計測装置と、前記物体計測装置によって計測された前記物体に関する情報と、前記回転装置の回転軸の情報とに基づいて、前記ビーム照射装置及び前記回転装置のうち少なくとも一方を制御する制御装置とを備え、前記ビーム照射装置からのエネルギビームを前記保持装置に保持された前記物体に照射することにより前記物体を加工する加工システムが提供される。
【0005】
第2の態様によれば、物体を回転可能に保持する保持装置と、前記保持装置を回転させる回転装置と、前記保持装置が保持した前記物体にエネルギビームを照射するビーム照射装置と、前記物体を計測する物体計測装置と、前記物体計測装置によって計測された前記物体と、前記回転装置の回転軸とのずれに基づいて、前記ビーム照射装置及び前記回転装置のうち少なくとも一方を制御する制御装置とを備え、前記ビーム照射装置からのエネルギビームを前記保持装置に保持された前記物体に照射することにより前記物体を加工する加工システムが提供される。
【0006】
第3の態様によれば、物体を回転可能に保持する保持装置と、前記保持装置を回転させる回転装置と、前記保持装置が保持した前記物体にエネルギビームを照射するビーム照射装置と、前記物体を計測する物体計測装置と、前記物体計測装置によって計測された前記物体に関する情報と、前記回転装置の位置及び姿勢の少なくとも一方の情報とに基づいて、前記ビーム照射装置及び前記回転装置のうち少なくとも一方を制御する制御装置とを備え、前記ビーム照射装置からのエネルギビームを前記保持装置に保持された前記物体に照射することにより前記物体を加工する加工システムが提供される。
【0007】
第4の態様によれば、物体を回転可能に保持する保持装置と、前記保持装置を回転させる回転装置と、前記保持装置が保持した前記物体にエネルギビームを照射するビーム照射装置と、前記ビーム照射装置からの前記エネルギビームを計測するビーム計測装置と、前記ビーム計測装置によって計測された前記エネルギビームに関する情報に基づいて、前記ビーム照射装置を制御する制御装置とを備え、前記ビーム照射装置からのエネルギビームを前記保持装置に保持された前記物体に照射することにより前記物体を加工する加工システムが提供される。
【0008】
第5の態様によれば、物体を回転可能に保持する保持装置と、前記保持装置を回転させる回転装置と、前記保持装置が保持した前記物体にエネルギビームを照射するビーム照射装置と、前記物体を計測する物体計測装置と、前記ビーム照射装置からの前記エネルギビームを計測するビーム計測装置と、前記ビーム照射装置及び前記ビーム計測装置のうち少なくとも一方を移動させる移動装置と、少なくとも前記移動装置を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記ビーム計測装置が前記ビーム照射装置からの前記エネルギビームを計測できる位置となるように、前記ビーム照射装置及び前記ビーム計測装置のうちの少なくとも一方を移動させ、前記物体計測装置によって前記ビーム計測装置の少なくとも一部を計測できる位置となるように、前記ビーム照射装置及び前記ビーム計測装置のうちの少なくとも一方を移動させる加工システムが提供される。
【0009】
第6の態様によれば、物体を回転可能に保持する保持装置と、前記保持装置を回転させる回転装置と、前記保持装置が保持した前記物体にエネルギビームを照射するビーム照射装置と、前記物体を計測する物体計測装置と、前記ビーム照射装置からの前記エネルギビームを計測するビーム計測装置と、前記ビーム照射装置及び前記ビーム計測装置のうち少なくとも一方を移動させる移動装置と、前記ビーム照射装置の位置及び前記ビーム計測装置の位置のうち少なくとも一方に関する情報を取得する取得装置と、少なくとも前記移動装置を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記ビーム照射装置が前記ビーム計測装置の少なくとも一部に前記エネルギビームを照射できる照射可能位置に、前記ビーム照射装置及び前記ビーム計測装置のうち少なくとも一方を移動し、前記照射可能位置に移動した前記ビーム照射装置の位置及び前記ビーム計測装置の位置うち少なくとも一方に関する照射位置情報を、前記取得装置を用いて取得し、前記照射位置情報に基づいて、前記ビーム照射装置の位置及び前記ビーム計測装置の位置のうち少なくとも一方を制御する加工システムが提供される。
【0010】
第7の態様によれば、物体を回転可能に保持する保持装置と、前記保持装置を回転させる回転装置と、前記保持装置が保持した前記物体にエネルギビームを照射するビーム照射装置と、前記物体を計測する物体計測装置と、前記ビーム照射装置からの前記エネルギビームを計測するビーム計測装置と、前記ビーム照射装置及び前記ビーム計測装置のうち少なくとも一方を移動させる移動装置と、前記ビーム照射装置の位置及び前記ビーム計測装置の位置のうち少なくとも一方に関する情報を取得する取得装置と、少なくとも前記移動装置を制御する制御装置と備え、前記制御装置は、前記物体計測装置が前記ビーム計測装置の少なくとも一部を計測できる計測可能位置に、前記ビーム照射装置及び前記ビーム計測装置のうち少なくとも一方を移動し、前記計測可能位置に移動した前記ビーム照射装置の位置及び前記ビーム計測装置の位置のうち少なくとも一方に関する計測位置情報を、前記取得装置を用いて取得し、前記計測位置情報に基づいて、前記ビーム照射装置の位置及び前記ビーム計測装置の位置のうち少なくとも一方を制御する加工システムが提供される。
【0011】
第8の態様によれば、物体を回転可能に保持する保持装置と、前記保持装置を回転させる回転装置と、前記保持装置が保持した前記物体にエネルギビームを照射するビーム照射装置と、前記物体の表面の3次元形状を計測する物体計測装置と、前記物体計測装置の計測結果に基づいて、前記ビーム照射装置及び前記回転装置のうち少なくとも一方を制御する制御装置とを備え、前記ビーム照射装置からのエネルギビームを前記保持装置に保持された前記物体に照射することにより前記物体を加工する加工システムが提供される。
【0012】
第9の態様によれば、物体を保持する保持装置と、前記保持装置を回転させる回転装置と、前記保持装置が保持した前記物体にエネルギビームを照射するビーム照射装置と、前記物体を計測する物体計測装置と、前記物体計測装置による前記物体の計測結果に基づいて、前記ビーム照射装置を制御する制御装置とを備え、前記ビーム照射装置は、前記ビーム照射装置が前記物体に前記エネルギビームを照射する期間中に、前記物体の表面上での前記エネルギビームの照射位置を、前記物体の表面に沿って変更し、前記制御装置は、前記エネルギビームによる加工跡を含む前記物体の計測結果に基づいて、前記ビーム照射装置を制御する加工システムが提供される。
【0013】
第10の態様によれば、物体を保持する保持装置と、前記保持装置を回転させる回転装置と、前記保持装置が保持した前記物体にエネルギビームを照射するビーム照射装置と、前記物体を計測する物体計測装置と、前記物体計測装置による前記物体の計測結果に基づいて、前記ビーム照射装置及び前記回転装置の少なくとも一方を制御する制御装置と、前記回転装置を移動させる移動装置とを備え、前記物体計測装置は、前記移動装置が前記回転装置を一の方向に沿って移動させる都度、前記物体を計測し、前記制御装置は、前記ビーム照射装置が前記物体に前記エネルギビームを照射する照射期間中に、前記物体計測装置による前記物体の計測結果に基づいて、前記ビーム照射装置及び前記移動装置の少なくとも一方を制御する加工システムが提供される。
【0014】
第11の態様によれば、物体を保持する保持装置と、前記保持装置を回転させる回転装置と、前記保持装置が保持した前記物体にエネルギビームを照射するビーム照射装置と、前記物体を計測する物体計測装置と、前記物体計測装置による前記物体の計測結果に基づいて、前記ビーム照射装置及び前記回転装置の少なくとも一方を制御する制御装置とを備え、前記物体計測装置は、前記回転装置が前記物体を所定回転角度だけ回転させる都度、前記物体を計測し、前記制御装置は、前記物体計測装置による前記物体の計測結果に基づいて、前記ビーム照射装置を制御する加工システムが提供される。
【0015】
第12の態様によれば、物体を保持する保持装置と、前記保持装置を回転させる回転装置と、前記保持装置が保持した前記物体にエネルギビームを照射するビーム照射装置と、前記物体を計測する物体計測装置と、前記物体計測装置による前記物体の計測結果に基づいて、前記ビーム照射装置及び前記回転装置の少なくとも一方を制御する制御装置と、前記回転装置に設けられ、前記ビーム照射装置からの前記エネルギビームを計測するビーム計測装置とを備える加工システムが提供される。
【0016】
第13の態様によれば、物体を回転可能に保持する保持装置と、前記保持装置を回転させる回転装置と、前記保持装置が保持した前記物体にエネルギビームを照射するビーム照射装置と、前記物体を計測する物体計測装置と、前記物体上に照射される前記エネルギビームの照射位置を変更する変更装置と、前記回転装置及び前記変更装置のうち少なくとも一方を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記物体計測装置によって計測された前記物体に関する情報に基づいて、前記保持装置を回転させ且つ前記照射位置を変更するように前記回転装置及び前記変更装置を制御し、前記ビーム照射装置からのエネルギビームを前記保持装置に保持された前記物体に照射することにより前記物体を加工する加工システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施形態の加工システムの外観を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の加工システムのシステム構成を示すシステム構成図である。
【
図3】
図3(a)から
図3(c)のそれぞれは、ワークに対して行われる除去加工の様子を示す断面図である。
【
図4】
図4は、照射光学系の構成を示す断面図である。
【
図5】
図5は、回転装置の構成を示す断面図である。
【
図6】
図6は、計測装置の構造を示す平面図である。
【
図7】
図7は、計測装置の構造を示す断面図である。
【
図8】
図8は、加工動作の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、加工中のワークを示す斜視図である。
【
図10】
図10は、ワークに照射される加工光を示す断面図である。
【
図11】
図11は、ワークに照射される加工光の他の例を示す断面図である。
【
図12】
図12は、ワークに照射される加工光の他の例を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、第1の軸情報生成動作の流れを示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、テストワークの計測結果の一例であるテストワークの高さ像を示す平面図である。
【
図17】
図17(a)は、回転軸が延びる方向とステージの移動方向とが平行になる(或いは、一致する)理想的なテストワークを示す上面図であり、
図17(b)は、
図17(a)に示すテストワークの計測結果に相当する高さ像を示す平面図であり、
図17(c)は、回転軸が延びる方向とステージの移動方向とが平行にならない(或いは、一致しない)テストワークを示す上面図であり、
図17(d)は、
図17(c)に示すテストワークの計測結果に相当する高さ像を示す平面図である。
【
図18】
図18は、第1の軸情報生成動作の他の例の流れを示すフローチャートである。
【
図19】
図19(a)は、回転軸が延びる方向とステージの移動方向とが平行になる(或いは、一致する)理想的なテストワークの計測結果に相当する高さ像を示す平面図であり、
図19(b)は、回転軸が延びる方向とステージの移動方向とが平行にならない(或いは、一致しない)テストワークの計測結果に相当する高さ像を示す平面図である。
【
図20】
図20は、第2の軸情報生成動作の流れを示すフローチャートである。
【
図21】
図21(a)は、回転軸が延びる方向と加工光の走査方向とが平行になる(或いは、一致する)理想的なテストワークを示す上面図であり、
図21(b)は、
図21(a)に示すテストワークの計測結果に相当する高さ像を示す平面図であり、
図21(c)は、回転軸が延びる方向と加工光の走査方向とが平行にならない(或いは、一致しない)テストワークを示す上面図であり、
図21(d)は、
図21(c)に示すテストワークの計測結果に相当する高さ像を示す平面図である。
【
図22】
図22(a)及び
図22(b)のそれぞれは、チャッキング誤差が生じているワークを示す上面図である。
【
図23】
図23は、第3の軸情報生成動作(特に、偏心誤差情報を生成する動作)の流れを示すフローチャートである。
【
図24】
図24は、中心軸が回転軸と一致する理想的なワークが回転する様子を示す断面図である。
【
図25】
図25は、
図24に示すワークの端点のZ軸方向における位置とワークの回転角度との関係を示すグラフである。
【
図26】
図26は、中心軸が回転軸と平行であるものの一致しないワークが回転する様子を示す断面図である。
【
図27】
図27は、
図26に示すワークの端点のZ軸方向における位置とワークの回転角度との関係を示すグラフである。
【
図28】
図28は、中心軸が回転軸と平行であるものの一致しないワークが回転する様子を示す断面図である。
【
図29】
図29は、
図28に示すワークの端点のZ軸方向における位置とワークの回転角度との関係を示すグラフである。
【
図30】
図30は、偏心誤差情報に基づいて制御される加工光ELの照射位置の一例を示す断面図である。
【
図31】
図31は、第3の軸情報生成動作(特に、偏角誤差情報を生成する動作)の流れを示すフローチャートである。
【
図32】
図32は、偏角誤差が生じているワークを示す上面図である。
【
図33】
図33(a)は、加工ヘッドが加工光を計測装置に照射する様子を示す断面図であり、
図33(b)は、加工ヘッドが加工光を計測装置に照射する様子を示す平面図であり、
図33(c)は、計測装置が備える受光素子による加工光の受光結果を示すグラフである。
【
図35】
図35(a)は、回転軸に対してねじれの方向からワークに照射される加工光を示す断面図であり、
図35(b)は、開き角が制御された加工光を示す断面図である。
【
図36】
図36は、加工光を計測する計測装置を示す断面図である。
【
図37】
図37は、加工光を計測する計測装置を示す断面図である。
【
図38】
図38は、加工光を計測する計測装置を示す断面図である。
【
図39】
図39は、加工光を計測する計測装置を示す断面図である。
【
図40】
図40(a)は、相対ベースライン、加工ベースライン及び計測ベースラインの一例を示す断面図であり、
図40(b)は、相対ベースライン、加工ベースライン及び計測ベースラインの一例を示す平面図である。
【
図41】
図41は、第1変形例の加工システムの外観を模式的に示す斜視図である。
【
図42】
図42は、第2変形例の加工システムの外観を模式的に示す斜視図である。
【
図43】
図43は、第2変形例の加工システムのシステム構成を示すシステム構成図である。
【
図44】
図44は、第2変形例の照射光学系の構成を示す断面図である。
【
図45】
図45は、第3変形例の加工システムの外観を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、加工システムの実施形態について説明する。以下では、エネルギビームの一具体例である加工光ELを用いてワークWを加工する加工システムSYSを用いて、加工システム及び計測部材の実施形態を説明する。但し、本発明が以下に説明する実施形態に限定されることはない。
【0019】
また、以下の説明では、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸から定義されるXYZ直交座標系を用いて、加工システムSYSを構成する各種構成要素の位置関係について説明する。尚、以下の説明では、説明の便宜上、X軸方向及びY軸方向のそれぞれが水平方向(つまり、水平面内の所定方向)であり、Z軸方向が鉛直方向(つまり、水平面に直交する方向であり、実質的には上下方向)であるものとする。また、X軸、Y軸及びZ軸周りの回転方向(言い換えれば、傾斜方向)を、それぞれ、θX方向、θY方向及びθZ方向と称する。ここで、Z軸方向を重力方向としてもよい。また、XY平面を水平方向としてもよい。
【0020】
(1)加工システムSYSの構造
初めに、
図1及び
図2を参照しながら、本実施形態の加工システムSYSの構造について説明する。
図1は、本実施形態の加工システムSYSの外観を模式的に示す斜視図である。
図2は、本実施形態の加工システムSYSのシステム構成を示すシステム構成図である。
【0021】
図1及び
図2に示すように、加工システムSYSは、加工装置1と、計測装置2と、ステージ装置3と、制御装置4とを備えている。加工装置1、計測装置2及びステージ装置3は、筐体5に収容されている。但し、加工装置1、計測装置2及びステージ装置3は、筐体5に収容されていなくてもよい。つまり、加工システムSYSは、加工装置1、計測装置2及びステージ装置3を収容する筐体5を備えていなくてもよい。尚、
図1においては、X軸方向に関して加工装置1よりも計測装置2の方が回転装置35側に設けられているが、その逆の配置でもよい。
【0022】
加工装置1は、制御装置4の制御下で、ワークWを加工可能である。ワークWは、加工装置1によって加工される物体である。ワークWは、例えば、金属であってもよいし、合金(例えば、ジュラルミン等)であってもよいし、半導体(例えば、シリコン)であってもよいし、樹脂であってもよいし、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)等の複合材料であってもよいし、ガラスであってもよいし、セラミックスであってもよいし、それ以外の任意の材料から構成される物体であってもよい。
【0023】
加工装置1は、ワークWに加工光ELを照射して、ワークWの一部を除去する除去加工を行ってもよい。除去加工は、平面加工、円筒加工、穴あけ加工、平滑化加工、切断加工、及び、任意の文字若しくは任意のパターンを形成する(言い換えれば、刻む)彫刻加工(言い換えれば、刻印加工)の少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0024】
ここで、
図3(a)から
図3(c)のそれぞれを参照しながら、加工光ELを用いた除去加工の一例について説明する。
図3(a)から
図3(c)のそれぞれは、ワークWに対して行われる除去加工の様子を示す断面図である。
図3(a)に示すように、加工装置1は、ワークWの表面に設定(言い換えれば、形成)される目標照射領域EAに対して加工光ELを照射する。目標照射領域EAに加工光ELが照射されると、ワークWのうち目標照射領域EA及び目標照射領域EAと近接する部分に、加工光ELのエネルギが伝達される。加工光ELのエネルギに起因した熱が伝達されると、加工光ELのエネルギに起因した熱によって、ワークWのうち目標照射領域EA及び目標照射領域EAと近接する部分を構成する材料が溶融する。溶融した材料は、液滴となって飛散する。或いは、溶融した材料は、加工光ELのエネルギに起因した熱によって蒸発する。その結果、ワークWのうち目標照射領域EA及び目標照射領域EAと近接する部分が除去される。つまり、
図3(b)に示すように、ワークWの表面に凹部(言い換えれば、溝部)が形成される。この場合、加工装置1は、いわゆる熱加工の原理を利用して、ワークWを加工しているといえる。更に、加工装置1は、後述するガルバノミラー1214を用いて、ワークWの表面上で目標照射領域EAを移動させる。つまり、加工装置1は、加工光ELでワークWの表面を走査する。その結果、
図3(c)に示すように、加工光ELの走査軌跡(つまり、目標照射領域EAの移動軌跡)に沿って、ワークWの表面が少なくとも部分的に除去される。このため、加工装置1は、除去加工したい領域に対応する所望の走査軌跡に沿って加工光ELにワークWの表面上を走査させることで、ワークWのうち除去加工したい部分を適切に除去することができる。
【0025】
一方で、加工光ELの特性によっては、加工装置1は、非熱加工(例えば、アブレーション加工)の原理を利用して、ワークWを加工することも可能である。つまり、加工装置1は、ワークWに対して非熱加工(例えば、アブレーション加工)を行ってもよい。例えば、発光時間がピコ秒以下(或いは、場合によっては、ナノ秒又はフェムト秒以下)のパルス光が加工光ELとして用いられると、ワークWのうち目標照射領域EA及び目標照射領域EAと近接する部分を構成する材料は、瞬時に蒸発及び飛散する。尚、発光時間がピコ秒以下(或いは、場合によっては、ナノ秒又はフェムト秒以下)のパルス光が加工光ELとして用いられる場合、ワークWのうち目標照射領域EA及び目標照射領域EAと近接する部分を構成する材料は、溶融状態を経ずに昇華することもある。このため、加工光ELのエネルギに起因した熱によるワークWへの影響を極力抑制しながら、ワークWの表面に凹部(言い換えれば、溝部)が形成可能となる。
【0026】
除去加工を行う場合には、加工装置1は、リブレット構造をワークW上に形成してもよい。リブレット構造は、ワークWの表面の流体に対する抵抗(特に、摩擦抵抗及び乱流摩擦抵抗の少なくとも一方)を低減可能な構造であってもよい。リブレット構造は、流体とワークWの表面とが相対的に移動するときに発生する騒音を低減可能な構造を含んでいてもよい。リブレット構造は、例えば、ワークWの表面に沿った第1の方向(例えば、Y軸方向)に沿って延びる溝が、ワークWの表面に沿っており且つ第1の方向に交差する第2方向(例えば、X軸方向)に沿って複数配列された構造を含んでいてもよい。
【0027】
除去加工を行う場合には、加工装置1は、ワークWの表面上に、任意の形状を有する任意の構造を形成してもよい。任意の構造の一例として、ワークWの表面上の流体の流れに対して渦を発生させる構造があげられる。任意の構造の他の一例として、ワークWの表面に疎水性を与えるための構造があげられる。任意の構造の他の一例としては、規則的又は不規則的に形成されたマイクロ・ナノメートルオーダの微細テクスチャ構造(典型的には凹凸構造)があげられる。このような微細テクスチャ構造は、流体(気体及び/又は液体)による抵抗を低減させる機能を有するサメ肌構造及びディンプル構造の少なくとも一方を含んでいてもよい。微細なテクスチャ構造は、撥液機能及びセルフクリーニング機能の少なくとも一方を有する(例えば、ロータス効果を有する)ハスの葉表面構造を含んでいてもよい。微細なテクスチャ構造は、液体輸送機能を有する微細突起構造(米国特許公開第2017/0044002号公報参照)、親液性機能を有する凹凸構造、防汚機能を有する凹凸構造、反射率低減機能及び撥液機能の少なくとも一方を有するモスアイ構造、特定波長の光のみを干渉で強めて構造色を呈する凹凸構造、ファンデルワールス力を利用した接着機能を有するピラーアレイ構造、空力騒音低減機能を有する凹凸構造、液滴捕集機能を有するハニカム構造、並びに、表面上に形成される層との密着性を向上させる凹凸構造等の少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0028】
再び
図1及び
図2において、ワークWを加工するために、加工装置1は、加工光源11と、加工ヘッド12と、ヘッド駆動系13と、位置計測装置14とを備える。
【0029】
加工光源11は、例えば、赤外光、可視光、紫外光及び極端紫外光のうちの少なくとも一つを、加工光ELとして射出する。但し、加工光ELとして、その他の種類の光が用いられてもよい。加工光ELは、パルス光(つまり、複数のパルスビーム)を含んでいてもよい。加工光ELは、レーザ光であってもよい。この場合、加工光源11は、レーザ光源(例えば、レーザダイオード(LD:Laser Diode)等の半導体レーザ)を含んでいてもよい。レーザ光源は、ファイバ・レーザ、CO2レーザ、YAGレーザ及びエキシマレーザ等の少なくとも一つを含んでいてもよい。但し、加工光ELはレーザ光でなくてもよい。加工光源11は、任意の光源(例えば、LED(Light Emitting Diode)及び放電ランプ等の少なくとも一つ)を含んでいてもよい。
【0030】
加工ヘッド12は、加工光源11からの加工光ELを、ワークWに照射する。このため、加工ヘッド12は、ビーム照射装置と称されてもよい。
図1に示す例では、加工ヘッド12の下方に、ワークWを載置可能なステージ32が配置される。このため、加工ヘッド12は、加工ヘッド12から下方に向けて加工光ELを射出することで、加工光ELをワークWに照射する。加工光ELをワークWに照射するために、加工ヘッド12は、照射光学系121を備える。以下、
図4を参照しながら、照射光学系121について説明する。
図4は、照射光学系121の構造を模式的に示す断面図である。
【0031】
図4に示すように、照射光学系121は、例えば、集光位置変更光学系1210と、開き角変更光学系1211と、楕円率変更光学系1212と、光回転光学系1213と、ガルバノミラー1214と、fθレンズ1215とを備える。但し、照射光学系121は、集光位置変更光学系1210、開き角変更光学系1211、楕円率変更光学系1212及び光回転光学系1213のうちの少なくとも一つを備えていなくてもよい。
【0032】
集光位置変更光学系1210は、加工光ELの集光位置(つまり、加工光ELの収斂位置)を、加工光ELの進行方向に沿って変更可能な光学部材である。集光位置変更光学系1210は、例えば、加工光ELの進行方向に沿って並ぶ複数枚のレンズを含んでいてもよい。この場合、複数枚のレンズのうちの少なくとも一つがその光軸方向に沿って移動することで、加工光ELの集光位置が変更されてもよい。
【0033】
開き角変更光学系1211は、加工ヘッド12から射出される加工光ELの開き角を変更可能な光学部材である。本実施形態における「加工光ELの開き角」は、加工光ELの最も外側の光線がなす角度を意味していてもよい。或いは、本実施形態における「加工光ELの開き角」は、加工光ELの最も外側の光線と、加工光ELの主光線とがなす角度を意味していてもよい。この場合、開き角変更光学系1211は、実質的には、照射光学系121の開口数を変更しているとみなしてもよい。尚、開き角変更光学系1211は、開き角変更装置と称されてもよい。
【0034】
楕円率変更光学系1212は、加工ヘッド12から射出される加工光ELの楕円率を変更可能な光学部材である。具体的には、楕円率変更光学系1212は、加工光ELの進行方向に沿った照射軸EXに交差する面内における加工光ELのスポットの楕円率を変更する。例えば、楕円率変更光学系1212は、直交する二つの方向で屈折力が異なる光学部材(例えば、トーリックレンズ及びシリンドリカルレンズ等の少なくとも一つ)を備え、当該光学部材を光軸廻り又は光軸と平行な軸廻りに回転させることで楕円率を変更してもよい。例えば、楕円率変更光学系1212は、複数の光学部材を備え、当該複数の光学部材の光軸方向の間隔等を変更することで楕円率を変更してもよい。ここで、複数の光学部材のうち少なくとも一つは、光軸に関して非対称な屈折力を有する光学部材であってもよい。尚、照射軸EXは、典型的には、加工光ELの主光線に沿って延びる軸である。加工光ELの主光線は、加工光ELの進行方向と交差する第1の断面における光量重心と、進行方向と交差する面であって第1の断面とは異なる第2の断面における光量重心とを結ぶ線であってもよい。
図4に示す例では、照射軸EXがfθレンズ1215の光軸AXに平行であるが、照射軸EXがfθレンズ1215の光軸AXに対して傾斜していてもよい。
図4に示す例では、照射軸EXがZ軸に平行であるが、照射軸EXがZ軸に対して傾斜していてもよい。
【0035】
尚、楕円率を変更することは、照射軸EXを含む第1面内での加工光ELの開き角と、照射軸EXを含み且つ第1面と交差する第2面内での加工光ELの開き角との少なくとも一方を変更することと実質的には等価であるとみなしてもよい。このため、楕円率変更光学系1212は、開き角変更光学系又は開き角変更装置と称されてもよい。この場合、上述した開き角変更光学系1211が、楕円率変更光学系1212の少なくとも一部として機能してもよい。
【0036】
光回転光学系1213は、照射軸EXに交差する面内において、加工光ELのスポットを、光軸AX廻りに(特に、照射軸EX廻りに)回転可能な光学部材である。本実施形態では、光回転光学系1213は、fθレンズ1215の入射瞳面での加工光ELのスポット(つまり、加工光ELの断面)の直径のうち最大値をとる方向を光軸AX廻りに(特に、照射軸EX廻りに)回転させる。つまり、光回転光学系1213は、fθレンズ1215の入射瞳面での加工光ELのスポット(つまり、加工光ELの断面)の直径が最大になる方向を光軸AX廻りに(特に、照射軸EX廻りに)回転させる。この場合、光回転光学系1213は、fθレンズ1215の入射瞳面での加工光ELのスポットの長軸の方向又は短軸の方向を光軸AX廻りに(特に、照射軸EX廻りに)回転させているとみなしてもよい。例えば、光回転光学系1213は、光軸廻りに回転可能な光学部材を備え、当該光学部材を光軸周りに回転させることで、加工光ELのスポットを回転させてもよい。このような光学部材は、ビームローテータと称されてもよい。このため、光回転光学系1213は、ビーム回転部材と称されてもよい。尚、楕円率変更光学系1212と光回転光学系1213とは兼用されていてもよい。
【0037】
集光位置変更光学系1210、開き角変更光学系1211、楕円率変更光学系1212及び光回転光学系1213を通過した加工光ELは、ガルバノミラー1214に入射する。ガルバノミラー1214は、加工光ELを偏向する(つまり、加工光ELの射出角度を変更する)ことで、ガルバノミラー1214からの加工光ELの射出方向を変更する。このため、ガルバノミラー1214は、ビーム偏向装置と称されてもよい。尚、
図4は、ガルバノミラー1214からの加工光ELの射出方向が、YZ平面内において変更されている例を示している。ガルバノミラー1214は、ガルバノミラー1214からの加工光ELの射出方向を変更することで、加工ヘッド12に対する加工光ELの照射位置(例えば、ワークWの表面上での加工光ELの照射位置)を変更してもよい。つまり、ガルバノミラー1214は、加工光ELを偏向することで、加工光ELの照射位置を変更(つまり、移動)してもよい。このため、ガルバノミラー1214は、ビーム照射位置変更装置と称されてもよい。尚、
図4は、加工光ELの照射位置が、Y軸方向において変更されている例を示している。また、ガルバノミラー1214は、ガルバノミラー1214からの加工光ELの射出方向を変更することで、加工ヘッド12からの加工光ELの進行方向(つまり、照射軸EXの延びる方向)を変更してもよい。つまり、ガルバノミラー1214は、加工光ELの照射位置及び進行方向の少なくとも一方を変更してもよい。このため、ガルバノミラー1214は、照射位置及び進行方向の少なくとも一方を含む加工光ELの照射状態を変更可能なビーム照射状態変更装置と称されてもよい。
【0038】
ガルバノミラー1214は、例えば、X走査ミラー1214Xと、Y走査ミラー1214Yとを含む。X走査ミラー1214X及びY走査ミラー1214Yのそれぞれは、各ミラーに入射する加工光ELの光路に対する角度が変更可能な傾斜角可変ミラーである。X走査ミラー1214Xは、加工光ELをY走査ミラー1214Yに向けて反射する。X走査ミラー1214Xは、Y軸に沿った回転軸周りに揺動又は回転可能である。X走査ミラー1214Xの揺動又は回転により、加工光ELは、ワークWの表面をX軸方向に沿って走査する。X走査ミラー1214Xの揺動又は回転により、目標照射領域EAは、ワークWの表面上をX軸方向に沿って移動する。Y走査ミラー1214Yは、加工光ELをfθレンズ1215に向けて反射する。Y走査ミラー1214Yは、X軸に沿った回転軸周りに揺動又は回転可能である。Y走査ミラー1214Yの揺動又は回転により、加工光ELは、ワークWの表面をY軸方向に沿って走査する。Y走査ミラー1214Yの揺動又は回転により、目標照射領域EAは、ワークWの表面上をY軸方向に沿って移動する。
【0039】
このようなガルバノミラー1214により、加工光ELは、加工ヘッド12を基準に定まる加工ショット領域PSAを走査可能となる。つまり、ガルバノミラー1214により、目標照射領域EAは、加工ヘッド12を基準に定まる加工ショット領域PSA内で移動可能となる。尚、加工ショット領域PSAは、加工ヘッド12とワークWとの位置関係を固定した状態で(つまり、変更することなく)加工装置1による加工が行われる領域(言い換えれば、範囲)を示す。典型的には、加工ショット領域PSAは、加工ヘッド12とワークWとの位置関係を固定した状態でガルバノミラー1214によって偏向される加工光ELが走査可能な最大範囲と一致する又は当該範囲よりも狭い領域になるように設定される。加工ショット領域PSAがワークWのうちの加工したい部分よりも小さい場合には、ワークW上のある部分に設定された加工ショット領域PSAを加工光ELで走査することでワークW上のある部分を加工する動作と、加工ヘッド12とワークWとの相対的な位置関係を変更することでワークW上での加工ショット領域PSAの位置を変更する動作とが繰り返される。
【0040】
尚、照射光学系121は、ガルバノミラー1214に加えて又は代えて、加工光ELを偏向可能な(つまり、加工光ELの射出方向及び照射位置の少なくとも一方を変更可能な)任意の光学部材を備えていてもよい。このような光学部材の一例として、角度が異なる複数の反射面を有するポリゴンミラーがあげられる。ポリゴンミラーは、加工光ELが一の反射面に照射されている期間中に当該一の反射面に対する加工光ELの入射角度を変更し且つ加工光ELが照射される反射面を複数の反射面の間で切り替えるように回転可能である。また、照射光学系121は、偏光光学部材を有する戻り光低減光学系を備えていてもよい。
【0041】
fθレンズ1215は、ガルバノミラー1214からの加工光ELをワークWに向けて射出するための光学系である。特に、fθレンズ1215は、ガルバノミラー1214からの加工光ELを、fθレンズ1215の光軸AXと交差する集光面に集光可能な光学素子である。このため、fθレンズ1215は、集光光学系と称されてもよい。fθレンズ1215の集光面は、fθレンズ1215の射出側に設定されてもよい。fθレンズ1215の集光面は、例えば、ワークWの表面に設定されてもよい。この場合、fθレンズ1215は、ガルバノミラー1214からの加工光ELを、ワークWの表面に集光可能である。
【0042】
再び
図1及び
図2において、ヘッド駆動系13は、制御装置4の制御下で、加工ヘッド12、ひいては照射光学系121を、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿って移動させる。このため、ヘッド駆動系13は、移動装置と称されてもよい。
図1は、ヘッド駆動系13が加工ヘッド12をZ軸方向に沿って移動させる例を示している。この場合、ヘッド駆動系13は、例えば、Z軸方向に沿って延びるZスライダ部材131を備えていてもよい。Zスライダ部材131は、防振装置を介して後述する定盤31上に配置される支持フレーム6に配置されている。支持フレーム6は、例えば、防振装置を介して定盤31上に配置され且つZ軸方向に沿って延びる一対の脚部材61と、一対の脚部材61の上端部を連結するように一対の脚部材61上に配置され且つX軸方向に沿って延びる梁部材62とを備えていてもよい。Zスライダ部材131は、例えば、Z軸方向に沿って延びる支持部材63を介して、梁部材62に配置される。Zスライダ部材131には、加工ヘッド12が、Zスライダ部材131に沿って移動可能となるように接続されている。
【0043】
加工ヘッド12が移動すると、加工ヘッド12と後述するステージ32との位置関係が変わる。更に、加工ヘッド12が移動すると、加工ヘッド12とステージ32上に配置された後述する回転装置35との位置関係が変わる。更に、加工ヘッド12が移動すると、加工ヘッド12と回転装置35が保持するワークWとの位置関係が変わる。従って、加工ヘッド12を移動させることは、加工ヘッド12とステージ32、回転装置35及びワークWのそれぞれとの位置関係を変更することと等価であるとみなしてもよい。また、加工ヘッド12が移動すると、ワークWの表面における加工光ELの照射位置がワークWの表面に対して移動する。つまり、ワークWの表面における加工光ELの照射位置がワークWの表面上で変わる。従って、加工ヘッド12を移動させることは、ワークWの表面における加工光ELの照射位置を変更することと等価であるとみなしてもよい。
【0044】
位置計測装置14は、加工ヘッド12の位置を計測可能(言い換えれば、検出可能)である。つまり、位置計測装置14は、加工ヘッド12の位置に関する情報を取得可能な装置である。位置計測装置14は、例えば、エンコーダ及びレーザ干渉計の少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0045】
計測装置2は、制御装置4の制御下で、ワークWを計測可能である。尚、計測装置2は、ワークWという物体を計測するため、物体計測装置又はワーク計測装置と称されてもよい。ワークWを計測するために、計測装置2は、計測ヘッド21と、ヘッド駆動系22と、位置計測装置23とを備える。
【0046】
計測ヘッド21は、制御装置4の制御下で、ワークWを計測可能である。本実施形態では、計測ヘッド21は、ワークWの表面を3次元計測する。つまり、計測ヘッド21は、ワークWの表面の3次元形状を計測する。このため、計測ヘッド21は、ワークWの表面の3次元形状を計測可能な3次元計測装置211を備えていてもよい。計測ヘッド21によるワークWの計測結果(つまり、3次元計測装置211によるワークWの計測結果)に関するワーク計測情報は、計測ヘッド21から制御装置4に出力される。制御装置4は、ワーク計測情報に基づいて、加工システムSYSの動作を制御する。具体的には、制御装置4は、ワーク計測情報に基づいて、加工システムSYSがワークWを適切に加工することができるように加工システムSYS(例えば、加工装置1、計測装置2及びステージ装置3の少なくとも一つ)を制御する。尚、計測装置2、計測ヘッド21又は3次元形状計測装置211は、ワークWの表面の3次元形状に関するワーク計測情報を取得するため、物体情報取得装置又はワーク情報取得装置と称されてもよい。
【0047】
3次元計測装置211は、ワークWを非接触計測してもよい。例えば、3次元計測装置211は、光学的にワークWを計測してもよい。つまり、3次元計測装置211は、計測光等の任意の計測ビームを用いてワークWを計測してもよい。例えば、3次元計測装置211は、ワークWの表面にスリット光を投影すると共に投影されたスリット光の形状を計測する光切断法を用いて、ワークWを計測してもよい。例えば、3次元計測装置211は、ワークWを介した白色光とワークWを介していない白色光との干渉パターンを計測する白色干渉法を用いて、ワークWを計測してもよい。例えば、3次元計測装置211は、ワークWの表面に光パターンを投影し、投影されたパターンの形状を計測するパターン投影法、ワークWの表面に光を投射し且つ投射された光が戻ってくるまでの時間からワークWまでの距離を測定する動作を、ワークW上の複数の位置で行うタイム・オブ・フライト法、モアレトポグラフィ法(具体的には、格子照射法若しくは格子投影法)、ホログラフィック干渉法、オートコリメーション法、ステレオ法、非点収差法、臨界角法、ナイフエッジ法、干渉計測法、及び、共焦点法の少なくとも一つを用いて、ワークWを計測してもよい。例えば、3次元計測装置211は、照明光で照明されたワークWを撮像することでワークWを計測してもよい。いずれの場合においても、3次元計測装置211は、計測光ML(例えば、スリット光、白色光又は照明光)を射出する光源と、計測光MLが照射されたワークWからの光(例えば、計測光の反射光)を受光する受光器とを備えていてもよい。尚、3次元計測器211は、ワークWを接触計測してもよい。
【0048】
計測ヘッド21は、計測ショット領域MSAを単位としてワークWを計測する。計測ショット領域MSAは、計測ヘッド21とワークWとの位置関係を固定した状態で(つまり、変更することなく)計測ヘッド21による計測が行われる領域(言い換えれば、範囲)を示す。典型的には、計測ショット領域MSAは、計測ヘッド21とワークWとの位置関係を固定した状態で(つまり、変更することなく)計測ヘッド21が計測光MLを照射可能な最大範囲と一致する又は当該範囲よりも狭い領域になるように設定される。尚、計測ショット領域MSAは、計測ヘッド21の計測可能範囲、計測可能フィールドと称されてもよい。
【0049】
図1に示す例では、計測ヘッド21は、計測ヘッド21の計測軸MXが、加工光ELの進行方向に沿った照射軸EXと一致しないように、加工ヘッド12に対して位置合わせされている。
図1に示す例では、計測軸MXは、照射軸EXと平行である。尚、計測軸MXは、例えば、計測ヘッド21が備える光学系の光軸に沿って延びる軸であってもよい。計測軸MXは、例えば、計測ヘッド21からの計測光MLの主光線に沿って延びる軸であってもよい。尚、後述する第1変形例で説明するように、計測軸MXは照射軸EXと平行でなくてもよい。
【0050】
ヘッド駆動系22は、制御装置4の制御下で、計測ヘッド21を、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿って移動させる。このため、ヘッド駆動系22は、移動装置と称されてもよい。
図1は、ヘッド駆動系22が計測ヘッド21をZ軸方向に沿って移動させる例を示している。この場合、ヘッド駆動系22は、例えば、Z軸方向に沿って延びるZスライダ部材221を備えていてもよい。Zスライダ部材221は、Z軸方向に延びる支持部材64を介して、梁部材62に配置されていてもよい。Zスライダ部材221には、計測ヘッド21が、Zスライダ部材221に沿って移動可能となるように接続されている。
【0051】
計測ヘッド21が移動すると、計測ヘッド21とステージ32、回転装置35及びワークWのそれぞれとの位置関係が変わる。従って、計測ヘッド21を移動させることは、計測ヘッド21とステージ32、回転装置35及びワークWのそれぞれとの位置関係を変更することと等価であるとみなしてもよい。
【0052】
位置計測装置23は、計測ヘッド21の位置を計測可能(言い換えれば、検出可能)である。つまり、位置計測装置23は、計測ヘッド21の位置に関する情報を取得可能な装置である。位置計測装置23は、例えば、エンコーダ及びレーザ干渉計の少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0053】
ステージ装置3は、定盤31と、ステージ32と、ステージ駆動系33と、位置計測装置34と、回転装置35と、計測装置36とを備える。
【0054】
定盤31は、筐体5の底面上(或いは、筐体5が載置される床面等の支持面上)に配置される。定盤31上には、ステージ32が配置される。筐体5の底面或いは筐体5が載置される床面等の支持面と定盤31との間には、定盤31の振動のステージ32への伝達を低減するための不図示の防振装置が設置されていてもよい。更に、定盤31上には、上述した支持フレーム6が配置されていてもよい。
【0055】
ステージ32は、ワークWが載置可能な載置装置である。ステージ32は、ステージ32に載置されたワークWを保持可能であってもよい。或いは、ステージ32は、ステージ32に載置されたワークWを保持可能でなくてもよい。このとき、ワークWは、クランプレスでステージ32に載置されていてもよい。
【0056】
本実施形態では、ステージ32に回転装置35が配置される。回転装置35は、後に詳述するように、ワークWを回転可能に保持する保持装置であるチャック353を回転させる装置である。このため、本実施形態では、ワークWは、ステージ32に載置されてもよいし、チャック353を介して回転装置35によって保持されてもよい。加工ヘッド12は、ステージ32に載置されたワークWに加工光ELを照射してもよいし、回転装置35によって保持されたワークWに加工光ELを照射してもよい。計測ヘッド21は、ステージ32に載置されたワークWを計測してもよいし、回転装置35によって保持されたワークWを計測してもよい。以下では、特段の説明がない場合は、ワークWは、回転装置35によって保持されているものとする。尚、回転装置35がワークWを保持するチャック353を回転させることから、回転装置35はワークWを回転させる装置とみなしてもよい。
【0057】
ステージ駆動系33は、制御装置4の制御下で、ステージ32を移動させる。このため、ステージ駆動系33は、移動装置と称されてもよい。ステージ32が移動すると、ステージ32に配置された回転装置35もまたステージ32と共に移動する。また、ステージ32が移動すると、ステージ32に載置された又はステージ32上の回転装置35に保持されたワークWもまたステージ32と共に移動する。ステージ駆動系33は、例えば、X軸、Y軸、Z軸、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿ってステージ32を移動させる。
図1に示す例では、ステージ駆動系33は、X軸及びY軸のそれぞれに沿ってステージ32を移動させる。つまり、
図1に示す例では、ステージ駆動系33は、加工光EL及び計測光MLの夫々の進行方向に交差するXY平面に沿った方向に沿ってステージ32を移動させる。この場合、ステージ駆動系33は、例えば、X軸方向に沿って延びるXスライド部材331(
図1に示す例では、互いに平行に設けられた二つのXスライド部材331)と、Y軸方向に沿って延びるYスライド部材332(
図1に示す例では、一つのYスライド部材332)とを備えていてもよい。二つのXスライド部材331は、Y軸方向に沿って並ぶように定盤31上に配置される。Yスライド部材332は、二つのXスライド部材331に沿って移動可能となるように、二つのXスライド部材331に接続される。ステージ32は、Yスライド部材332に沿って移動可能となるようにYスライド部材332に接続される。尚、
図1の例ではXスライド部材331が複数設けられているが、Xスライド部材は一つであってもよい。また、ステージ32は、定盤31上にエアベアリングで浮上支持される構成であってもよい。
【0058】
ステージ32が移動すると、ステージ32、回転装置35及びワークWのそれぞれと加工ヘッド12及び計測ヘッド21のそれぞれとの位置関係が変わる。従って、ステージ32を移動させることは、ステージ32、回転装置35及びワークWのそれぞれと加工ヘッド12及び計測ヘッド21のそれぞれとの位置関係を変更することと等価であるとみなしてもよい。また、ステージ32が移動すると、ワークWの表面における加工光ELの照射位置がワークWの表面に対して移動する。つまり、ワークWの表面における加工光ELの照射位置がワークWの表面上で変わる。従って、ステージ32を移動させることは、ワークWの表面における加工光ELの照射位置を変更することと等価であるとみなしてもよい。
【0059】
位置計測装置34は、ステージ32の位置を計測可能(言い換えれば、検出可能)である。つまり、位置計測装置34は、ステージ32の位置に関する情報を取得可能な装置である。位置計測装置34は、例えば、エンコーダ及びレーザ干渉計の少なくとも一つを含んでいてもよい。位置計測装置34がステージ32の位置に関する情報を取得可能であることから、位置計測装置34をステージ位置情報取得装置と称してもよい。
【0060】
回転装置35は、上述したように、ワークWを回転可能に保持する保持装置であるチャック353を回転させる装置である。ここで、回転装置35の構成について、
図5を参照しながら説明する。
図5は、回転装置35の構成を示す断面図である。
【0061】
図5に示すように、回転装置35は、支持フレーム351と、回転モータ352とを備えている。支持フレーム351は、ステージ32上に配置されている。回転モータ352は、支持フレーム351によって支持されている。回転モータ352は、回転シャフト3521を回転させるように動作する。回転シャフト3521は、重力方向と交差する方向(
図5に示す例では、X軸方向)に沿って延びる部材であってもよい。つまり、
図5に示す例では、回転モータ352は、X軸方向に沿って延びる回転シャフト3521を、X軸方向に沿って延びる回転軸3522周りに回転させている。尚、回転軸3522は、回転シャフト3521の回転中心を通過し且つ回転シャフト3521に沿って延びる軸である。しかしながら、回転シャフト3521は、X軸方向とは異なる方向に沿って延びていてもよい。回転モータ352は、X軸方向とは異なる方向に沿って延びる回転シャフト3521を、X軸方向とは異なる方向に沿って延びる回転軸3522廻りに回転させてもよい。尚、回転シャフト3521は、その回転軸3522のX軸に対する角度(例えば、XZ平面内の角度、XY平面内の角度)が変更可能となるように設けられてもよい。つまり、回転シャフト3521は、θz方向及びθy方向の少なくとも一方で可動であってもよい。また、
図5では不図示ではあるが、回転装置35は、回転モータ352の回転角度或いは回転シャフト3521の回転角度を検出するためのロータリーエンコーダを備えており、その出力は制御装置4に出力される。このロータリーエンコーダを、回転装置の回転角を検出可能な回転検出装置と称してもよい。
【0062】
回転シャフト3521には、チャック353が連結されている。チャック353は、ワークWを保持可能な保持装置である。
図5に示す例では、チャック353は、チャック353の保持面3531に接触したワークWを、チャック353が備える複数の爪3532を用いて挟み込むことで、ワークWを保持している。特に、
図5に示す例では、回転シャフト3521がX軸方向に延びているため、チャック353は、X軸に交差するYZ平面に沿った保持面3531に接触したワークWを、X軸方向に沿って延びる複数の爪3532を用いて挟み込むことで、ワークWを保持している。但し、チャック353がワークWを保持する方法が
図5に示す方法に限定されることはない。
【0063】
回転モータ352は、回転シャフト3521を回転させることで、回転シャフト3521に連結されたチャック353を回転軸3522廻りに回転させる。その結果、チャック353が保持するワークWもまた、回転軸3522廻りに回転する。このため、回転装置35は、チャック353が保持するワークWを回転させることが可能な主軸台として機能可能であるとも言える。
図5に示す例では、回転装置35は、ワークWをX軸廻りに回転させる。
【0064】
再び
図1及び
図2において、計測装置36は、加工ヘッド12からの加工光ELを計測可能な装置である。このため、計測装置36は、ビーム計測装置と称されてもよい。更に、計測装置36の少なくとも一部は、計測ヘッド21によって計測可能である。この場合、計測装置36の少なくとも一部は、計測ヘッド21によって計測可能なマーク(或いは指標)として機能しているとみなしてもよい。計測装置36による加工光ELの計測結果に関する加工光計測情報及び計測ヘッド21による計測装置36の計測結果に関するマーク計測情報のそれぞれは、計測ヘッド21から制御装置4に出力される。制御装置4は、加工光計測情報及びマーカ計測情報の少なくとも一方に基づいて、加工システムSYSの動作を制御する。具体的には、制御装置4は、加工光計測情報及びマーカ計測情報の少なくとも一方に基づいて、加工システムSYSがワークWを適切に加工することができるように加工システムSYS(例えば、加工装置1、計測装置2及びステージ装置3の少なくとも一つ)を制御する。
【0065】
ここで、
図6から
図7を参照しながら、計測装置36の構造について説明する。
図6は、計測装置36の構造を示す平面図である。
図7は、計測装置36の構造を示す断面図である。尚、
図7は、
図6のVI-VI’断面図に相当する。
【0066】
図6及び
図7に示すように(更には、上述した
図5に示すように)、計測装置36は、回転装置35に配置されている(つまり、設けられている)。
図5から
図7に示す例では、計測装置36は、回転装置35の支持フレーム351に配置されている。計測装置36が加工光ELを計測し且つ計測ヘッド21が計測装置36の少なくとも一部を計測するため、計測装置36は、支持フレーム351の上面3511(つまり、加工ヘッド12及び計測ヘッド21を向いた面)に配置されていてもよい。但し、計測装置36は、支持フレーム351の上面とは異なる面に配置されていてもよい。計測装置36は、支持フレーム351とは異なる部材に配置されていてもよい。例えば、計測装置36は、ステージ32に配置されていてもよい。計測装置36の少なくとも一部は、支持フレーム351から取り外し可能であってもよい。或いは、計測装置36は、支持フレーム351と一体化されていてもよい。また、複数の計測装置36が支持フレーム351に配置されていてもよい。尚、計測装置36は、チャック353に配置されていてもよい。チャック353に複数の計測装置36が配置されていてもよい。
【0067】
図6及び
図7に示すように、計測装置36は、ビーム通過部材361と、受光素子362とを備える。ビーム通過部材361は、XY平面に沿った板状の部材である。XY平面内でのビーム通過部材361の形状は矩形であるが、その他の任意の形状(例えば、円形又は楕円形)であってもよい。尚、ビーム通過部材361は平板状であるが、曲がった形状であってもよい。ビーム通過部材361の一辺のサイズは、例えば、数mmから十数mmであるが、その他のサイズであってもよい。受光素子362は、XY平面に沿って広がる受光面3621を備える。XY平面内での受光面3621の形状は矩形であるが、その他の任意の形状(例えば、円形又は楕円形)であってもよい。受光面3621の一辺のサイズは、ビーム通過部材361の一辺のサイズと同一であってもよいし、ビーム通過部材361の一辺のサイズよりも小さくてもよいし、ビーム通過部材361の一辺のサイズよりも大きくてもよい。
【0068】
ビーム通過部材361と受光素子362とは、支持フレーム351に形成された窪み3512(つまり、凹部)の内部に配置されている。つまり、ビーム通過部材361と受光素子362とは、支持フレーム351の上面3511から-Z側に窪んだ窪み3512に配置されている。但し、ビーム通過部材361及び受光素子362の少なくとも一方は、窪み3512とは異なる位置に配置されていてもよい。
【0069】
窪み3512内において、ビーム通過部材361は、受光素子362の上方に配置される。つまり、ビーム通過部材361は、受光素子362よりも加工ヘッド12及び計測ヘッド21により近い位置に配置される。この場合、
図7に示すように、ビーム通過部材361の表面(具体的には、加工ヘッド12及び計測ヘッド21側を向いた表面であり、+Z側の表面)は、上面3511よりも下方に位置していてもよい。その結果、計測装置36が支持フレーム351の表面から突き出ることがないがゆえに、ワークW等が計測装置36(特に、ビーム通過部材361)に誤って接触してしまう可能性が小さくなる。その結果、ワークW等がビーム通過部材361に接触することに起因してビーム通過部材361が破損及び/又は汚染する可能性が小さくなる。但し、ビーム通過部材361の表面は、上面3511と同じ高さに位置していてもよいし、上面3511よりも上方に位置していてもよい。
【0070】
ビーム通過部材361は、ガラス基板3611と、ガラス基板3611の表面の少なくとも一部に形成された減衰膜3612とを含む。減衰膜3612は、減衰膜3612に入射する加工光ELを減衰可能な部材である。尚、本実施形態における「減衰膜3612による加工光ELの減衰」は、減衰膜3612を通過した加工光ELの強度を減衰膜3612に入射した加工光ELの強度よりも小さくすることのみならず、減衰膜3612に入射した加工光ELを遮光する(つまり、遮蔽する)ことを含んでいてもよい。従って、加工光ELが減衰膜3612に入射した場合には、減衰膜3612によって減衰された加工光ELが減衰膜3612を介して受光素子362に入射するか、又は、加工光ELが減衰膜3612によって遮光されることで加工光ELが受光素子362に入射することはない。尚、減衰膜3612は、クロム膜又は酸化クロム膜で形成されていてもよい。
【0071】
減衰膜3612には、少なくとも一つの開口363が形成されている。
図6から
図7に示す例では、減衰膜3612には、複数の開口363が形成されている。開口363は、減衰膜3612をZ軸方向において貫通する貫通孔である。このため、加工光ELが減衰膜3612に形成された開口363に入射した場合には、加工光ELは、開口363を介してビーム通過部材361を通過する。つまり、加工光ELは、減衰膜3612によって減衰又は遮光されることなく、開口363を介して受光素子362に入射する。
【0072】
このように、ガラス基板3611のうち減衰膜3612が形成された部分(つまり、開口363が形成されていない部分)は、加工光ELを減衰させる減衰領域364として機能する。一方で、ガラス基板3611のうち減衰膜3612が形成されていない部分(つまり、開口363が形成されている部分)は、加工光ELを通過させる通過領域365として機能する。この際、通過領域365は、通過領域365を通過する加工光ELを減衰させない。但し、通過領域365は、通過領域365を通過する加工光ELを減衰させてもよい。つまり、通過領域365は、通過領域365に入射した加工光ELの全て(つまり、100%)が通過する領域でなくてもよく、通過領域365に入射した加工光ELの一部が通過する領域であってもよい。但し、通過領域365による加工光ELの減衰率は、減衰領域364による加工光ELの減衰率よりも小さい。減衰領域364は、典型的には、通過領域365と隣接して配置される。つまり、通過領域365は、減衰領域364の中に配置される。
【0073】
計測装置36が支持フレーム3511に配置されている(つまり、回転装置35に配置されている)ため、減衰領域364及び通過領域365のそれぞれと回転装置35との位置関係は、固定される。つまり、減衰領域364及び通過領域365のそれぞれと回転装置35との位置関係は、制御装置4にとって既知である所定の関係となる。
【0074】
開口363によって形成される通過領域365は、減衰膜3612の表面に沿った平面(典型的には、XY平面)内において所定の形状を有するマーク(つまり、パターン)366を形成していてもよい。このマーク366は、計測ヘッド21によって計測可能なマークとして機能可能である。
【0075】
例えば、
図6に示すように、ビーム通過部材361には、スリット形状を有するマーク366(このマーク366を、スリットマークと称してもよい)が形成されていてもよい。スリット形状を有するマーク366は、減衰膜3612の表面に沿った平面内において単一の線状(例えば、スリット状)の形状を有する通過領域365によって形成されるマークである。
図6に示す例では、ビーム通過部材361には、X軸及びY軸のそれぞれに対する角度が異なる複数のマーク366が形成されている。但し、ビーム通過部材361には、その他の形状を有するマーク366が形成されていてもよい。例えば、ビーム通過部材361には、それぞれが一の方向に沿って延び且つ一の方向に交差する他の方向に沿って配列される複数の線状の通過領域365によって形成されるマーク366(このマーク366を、ファインマークと称してもよい)が形成されていてもよい。例えば、ビーム通過部材361には、減衰膜3612の表面に沿った平面内において矩形の形状を有する通過領域365によって形成されるマーク366(このマーク366を、矩形マークと称してもよい)である。例えば、ビーム通過部材361には、それぞれが第1の方向に沿って延び且つ第1の方向に交差する第2の方向に沿って配列される複数の線状の通過領域365と、それぞれが第1の方向に交差する第3の方向に沿って延び且つ第3の方向に交差する第4の方向に沿って配列される複数の線状の通過領域365とによって形成されるマーク366(このマーク366を、クロスマークと称してもよい)が形成されていてもよい。例えば、ビーム通過部材361には、それぞれが第5の方向に沿って延び且つ第5の方向に直交する第6の方向に沿って離れた二つの第1の線状の通過領域365と、第5の方向に対して傾斜した(つまり、斜めに交差する)第7の方向に沿って延びる第2の線状の通過領域365とによって形成されるマーク(このマーク366を、サーチマークと称してもよい)が形成されていてもよい。
【0076】
受光素子362は、通過領域365(つまり、開口363)を介して受光素子362に入射してきた加工光ELを受光面3621で受光可能な(例えば、検出可能な)受光部である。受光素子362は、通過領域365(つまり、開口363)を通過した加工光ELを受光面3621で受光可能な受光部である。受光部の一例として、受光した加工光ELを光電変換可能な光電変換器があげられる。
【0077】
ビーム通過部材361に複数の通過領域365が形成されている場合には、受光素子362は、複数の通過領域365のそれぞれを介して受光素子362に入射してきた加工光ELを受光面3621で受光可能であってもよい。尚、受光面3621は、光電変換素子の1つの光電変換面で形成されていてもよい。例えば、受光素子362は、第1の通過領域365を介して受光素子362に入射してきた加工光ELを、受光面3621の第1の部分で受光可能であってもよい。例えば、受光素子362は、第2の通過領域365を介して受光素子362に入射してきた加工光ELを、受光面3621の第2の部分で受光可能であってもよい。このように、本実施形態では、計測装置36は、複数の通過領域365にそれぞれ対応する複数の受光素子362を備えていなくてもよい。計測装置36は、複数の通過領域365に共通の受光素子362を備えていればよい。但し、計測装置36は、複数の通過領域365にそれぞれ対応する複数の受光素子362を備えていてもよい。
【0078】
通過領域365を介して受光素子362が加工光ELを受光する場合には、加工光ELの集光位置は、ビーム通過部材361の通過領域365に又はその近傍に設定されていてもよい。一方で、加工光ELでワークWが加工される場合には、加工光ELの集光位置は、ワークWの表面又はその近傍に設定されていてもよい。このため、制御装置4は、フォーカス変更光学系1210を制御することで、加工光ELの集光位置を適切な位置に設定してもよい。
【0079】
加工光ELの照射によってワークWが加工されることを考慮すれば、加工光ELの照射によって計測装置36の少なくとも一部もまた加工(実質的には、破壊)されてしまう可能性がある。このため、計測装置36に照射される加工光ELの強度(例えば、受光素子362の受光面3621における単位面積あたりのエネルギ量)が、ワークWを加工するためにワークWに照射される加工光ELの強度(例えば、ワークWの表面における単位面積当たりのエネルギ量)よりも小さくなるように、加工光ELの強度(例えば、加工光ELの進行方向に交差する面内で単位面積当たりのエネルギ量)が制御されてもよい。例えば、制御装置4は、加工光源11を制御することで、加工光ELの強度を小さくしてもよい。例えば、制御装置4は、加工光源11の射出側に配置される減光部材(不図示)を制御することで、加工光ELの強度を小さくしてもよい。
【0080】
受光素子362の受光結果は、受光素子362に入射した加工光ELの状態に関する情報を含む。例えば、受光素子362の受光結果は、受光素子362に入射した加工光ELの強度(具体的には、XY平面に交差する面内での強度)に関する情報を含む。より具体的には、受光素子362の受光結果は、XY平面に沿った面内における加工光ELの強度分布に関する情報を含む。受光素子362の受光結果は、上述した加工光計測情報として制御装置4に出力される。加えて、上述したように、マーク366が計測ヘッド21によって計測される場合には、計測ヘッド21によるマーク366の計測結果が、上述したマーク計測情報として制御装置4に出力される。
【0081】
再び
図1及び
図2において、制御装置4は、加工システムSYSの動作を制御する。例えば、制御装置4は、ワークWの加工条件を設定すると共に、設定した加工条件に従ってワークWが加工されるように加工装置1、計測装置2及びステージ装置3の少なくとも一つを制御してもよい。
【0082】
制御装置4は、加工システムSYSの動作を制御する。制御装置4は、例えば、演算装置と、記憶装置とを備えていてもよい。演算装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)の少なくとも一方を含んでいてもよい。記憶装置は、例えば、メモリを含んでいてもよい。制御装置4は、演算装置がコンピュータプログラムを実行することで、加工システムSYSの動作を制御する装置として機能する。このコンピュータプログラムは、制御装置4が行うべき後述する動作を演算装置に行わせる(つまり、実行させる)ためのコンピュータプログラムである。つまり、このコンピュータプログラムは、加工システムSYSに後述する動作を行わせるように制御装置4を機能させるためのコンピュータプログラムである。演算装置が実行するコンピュータプログラムは、制御装置4が備える記憶装置(つまり、記録媒体)に記録されていてもよいし、制御装置4に内蔵された又は制御装置4に外付け可能な任意の記憶媒体(例えば、ハードディスクや半導体メモリ)に記録されていてもよい。或いは、演算装置は、実行するべきコンピュータプログラムを、ネットワークインタフェースを介して、制御装置4の外部の装置からダウンロードしてもよい。
【0083】
制御装置4は、加工システムSYSの内部に設けられていなくてもよい。例えば、制御装置4は、加工システムSYS外にサーバ等として設けられていてもよい。この場合、制御装置4と加工システムSYSとは、有線及び/又は無線のネットワーク(或いは、データバス及び/又は通信回線)で接続されていてもよい。有線のネットワークとして、例えばIEEE1394、RS-232x、RS-422、RS-423、RS-485及びUSBの少なくとも一つに代表されるシリアルバス方式のインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。有線のネットワークとして、パラレルバス方式のインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。有線のネットワークとして、10BASE-T、100BASE-TX及び1000BASE-Tの少なくとも一つに代表されるイーサネット(登録商標)に準拠したインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。無線のネットワークとして、電波を用いたネットワークが用いられてもよい。電波を用いたネットワークの一例として、IEEE802.1xに準拠したネットワーク(例えば、無線LAN及びBluetooth(登録商標)の少なくとも一方)があげられる。無線のネットワークとして、赤外線を用いたネットワークが用いられてもよい。無線のネットワークとして、光通信を用いたネットワークが用いられてもよい。この場合、制御装置4と加工システムSYSとはネットワークを介して各種の情報の送受信が可能となるように構成されていてもよい。また、制御装置4は、ネットワークを介して加工システムSYSにコマンドや制御パラメータ等の情報を送信可能であってもよい。加工システムSYSは、制御装置4からのコマンドや制御パラメータ等の情報を、上記ネットワークを介して受信する受信装置を備えていてもよい。加工システムSYSは、制御装置4に対してコマンドや制御パラメータ等の情報を、上記ネットワークを介して送信する送信装置(つまり、制御装置4に対して情報を出力する出力装置)を備えていてもよい。或いは、制御装置4が行う処理のうちの一部を行う第1制御装置が加工システムSYSの内部に設けられている一方で、制御装置4が行う処理のうちの他の一部を行う第2制御装置が加工システムSYSの外部に設けられていてもよい。
【0084】
尚、制御装置4が実行するコンピュータプログラムを記録する記録媒体としては、CD-ROM、CD-R、CD-RWやフレキシブルディスク、MO、DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-R、DVD+R、DVD-RW、DVD+RW及びBlu-ray(登録商標)等の光ディスク、磁気テープ等の磁気媒体、光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ、及び、その他プログラムを格納可能な任意の媒体の少なくとも一つが用いられてもよい。記録媒体には、コンピュータプログラムを記録可能な機器(例えば、コンピュータプログラムがソフトウェア及びファームウェア等の少なくとも一方の形態で実行可能な状態に実装された汎用機器又は専用機器)が含まれていてもよい。更に、コンピュータプログラムに含まれる各処理や機能は、制御装置4(つまり、コンピュータ)がコンピュータプログラムを実行することで制御装置4内に実現される論理的な処理ブロックによって実現されてもよいし、制御装置4が備える所定のゲートアレイ(FPGA、ASIC)等のハードウェアによって実現されてもよいし、論理的な処理ブロックとハードウェアの一部の要素を実現する部分的ハードウェアモジュールとが混在する形式で実現してもよい。
【0085】
(2)加工システムSYSの動作
続いて、加工システムSYSの動作について説明する。上述したように、加工システムSYSは、加工光ELを用いてワークWの表面の少なくとも一部を加工するための加工動作を行う。更に、加工システムSYSは、加工動作を行う前に(或いは、加工動作を終了した後に又は加工動作を行っている最中に)、計測装置2を用いて、回転装置35の回転軸3522に関する回転軸情報を生成するための軸情報生成動作を行う。更に、加工システムSYSは、加工動作を行う前に(或いは、加工動作を終了した後に又は加工動作を行っている最中に)、計測装置36を用いて、加工光ELの状態に関する光状態情報を生成するための光状態情報生成動作を行う。更に、加工システムSYSは、加工動作を行う前に(或いは、加工動作を終了した後に又は加工動作を行っている最中に)、計測装置36を用いて、加工装置1の加工原点POと計測装置2の計測原点MOとに関する原点情報を生成するための原点情報動作を行う。このため、以下では、加工動作と、軸情報生成動作と、光状態情報生成動作と、原点情報生成動作とについて順に説明する。
【0086】
尚、以下では、説明の便宜上、チャック353に保持された円柱形状を有するワークWを加工する場合に行われる加工動作、軸情報生成動作、光状態情報生成動作及び原点情報生成動作について説明する。但し、円柱形状とは異なる形状を有するワークWに対して、加工動作、軸情報生成動作、光状態情報生成動作及び原点情報生成動作が行われてもよい。チャック353に保持されていない(つまり、ステージ32に載置されている)ワークWに対して、加工動作、光状態情報生成動作及び原点情報生成動作が行われてもよい。
【0087】
(2-1)加工動作
はじめに、
図8を参照しながら、加工光ELを用いてワークWの表面の少なくとも一部を加工するための加工動作について説明する。
図8は、加工動作の流れを示すフローチャートである。
【0088】
図8に示すように、まず、計測ヘッド21は、チャック353に保持されているワークWを計測する(ステップS11)。この場合、計測ヘッド21は、回転装置35によって回転しているワークWを計測してもよい。つまり、計測ヘッド21は、回転装置35がワークWを回転させている期間の少なくとも一部においてワークWを計測してもよい。或いは、計測ヘッド21は、静止しているワークWを計測してもよい。計測ヘッド21が静止しているワークWを計測する場合には、回転装置35は、計測ヘッド21がワークWの表面のうち計測ショット領域MSAが設定されている計測対象部分を計測する都度、ワークWの表面のうちの計測ヘッド21が未だ計測していない新たな計測対象部分が計測ショット領域MSAに含まれるように、ワークWを所定角度だけ回転させてもよい。つまり、加工システムSYSは、計測ヘッド21によるワークWの計測と、回転装置35によるワークWの回転とを交互に行ってもよい。具体的には、計測ヘッド21は、ワークWの表面の第1の計測対象部分に計測ショット領域MSAが設定されている状態で、ワークWの表面の第1の計測対象部分を計測する。その後、回転装置35は、制御装置4の制御下で、ワークWの表面の第1の計測対象部分とは異なる第2の計測対象部分に計測ショット領域MSAが設定されるように、ワークWを所定角度だけ回転させる。その後、計測ヘッド21は、ワークWの表面の第2の計測対象部分に計測ショット領域MSAが設定されている状態で、ワークWの表面の第2の計測対象部分を計測する。以降、同様の動作が繰り返される。その結果、計測ヘッド21は、ワークWの表面を細分化(区画化又はセグメント化)することで得られる複数の計測対象部分を順に計測することができる。この際、回転装置35がワークWを回転させた後に計測ショット領域MSAが設定されている計測対象部分は、回転装置35がワークWを回転させる前に計測ショット領域MSAが設定されていた計測対象部分と、部分的に重複していてもよい。つまり、回転装置35がワークWを回転させた後に計測ヘッド21が計測する予定の計測対象部分は、回転装置35がワークWを回転させる前に計測ヘッド21が既に計測した計測対象部分と、部分的に重複していてもよい。但し、回転装置35がワークWを回転させた後に計測ショット領域MSAが設定されている計測対象部分は、回転装置35がワークWを回転させる前に計測ショット領域MSAが設定されていた計測対象部分と重複していなくてもよい。つまり、回転装置35がワークWを回転させた後に計測ヘッド21が計測する予定の計測対象部分は、回転装置35がワークWを回転させる前に計測ヘッド21が既に計測した計測対象部分と重複していなくてもよい。
【0089】
また、計測ヘッド21が静止しているワークWを計測する場合には、ステージ32は、計測ヘッド21がワークWの表面のうち計測ショット領域MSAが設定されている計測対象部分を計測する都度、ワークWの表面のうちの計測ヘッド21が未だ計測していない新たな計測対象部分が計測ショット領域MSAに含まれるように、ワークWを所定移動量だけ移動させてもよい。このときのワークWの移動方向は、回転装置35の回転軸3522に平行な方向であってもよい。尚、ワークWの移動方向は、回転軸3522と交差する方向であってもよい。このように、加工システムSYSは、計測ヘッド21によるワークWの計測と、ステージ32によるワークWの移動とを交互に行ってもよい。
【0090】
その後、制御装置4は、ステップS11における計測ヘッド21によるワークWの計測結果に関するワーク計測情報に基づいて、ワークWの加工条件を設定する(ステップS12)。加工条件は、例えば、加工光ELに関する条件を含んでいてもよい。加工光ELに関する条件は、例えば、加工光ELの強度、加工光ELの照射タイミング及び加工光ELの照射時間の少なくとも一つに関する条件を含んでいてもよい。加工条件は、例えば、加工ヘッド12の移動に関する条件を含んでいてもよい。加工ヘッド21の移動に関する条件は、例えば、加工ヘッド12の移動速度、加工ヘッド12の移動タイミング及び加工ヘッド12の移動量の少なくとも一つに関する条件を含んでいてもよい。加工条件は、例えば、ステージ32の移動に関する条件を含んでいてもよい。ステージ32の移動に関する条件は、例えば、ステージ32の移動速度、ステージ32の移動タイミング及びステージ32の移動量の少なくとも一つに関する条件を含んでいてもよい。加工条件は、例えば、回転装置35によるワークWの回転に関する条件を含んでいてもよい。ワークWの回転に関する条件は、例えば、ワークWの回転速度、ワークWの回転タイミング及びワークWの回転量(つまり、回転角度)の少なくとも一つに関する条件を含んでいてもよい。
【0091】
その後、加工システムSYSは、ステップS12で設定された加工条件に従ってワークWを加工する(ステップS13)。つまり、加工ヘッド12は、ステップS12で設定された加工条件に従って加工光ELをワークWに照射し且つ移動する。ステージ32は、ステップS12で設定された加工条件に従って移動する。回転装置35は、ステップS12で設定された加工条件に従ってワークWを回転させる。
【0092】
加工ヘッド12は、回転装置35によって回転しているワークWに加工光ELを照射することで、ワークWを加工してもよい。つまり、加工ヘッド12は、回転装置35がワークWを回転させている期間の少なくとも一部においてワークWに加工光ELを照射することで、ワークWを加工してもよい。或いは、加工ヘッド12は、静止しているワークWに加工光ELを照射することで、ワークWを加工してもよい。加工ヘッド12が静止しているワークWに加工光ELを照射する場合には、回転装置35は、加工ヘッド12がワークWの表面のうち加工ショット領域PSAに含まれている加工対象部分を加工する都度、ワークWの表面のうちの加工ヘッド12が未だ加工していない新たな加工対象部分が加工ショット領域PSAに含まれるように、ワークWを所定角度だけ回転させてもよい。つまり、加工システムSYSは、加工ヘッド12によるワークWの加工(つまり、加工ヘッド12による加工光ELのワークWに対する照射)と、回転装置35によるワークWの回転とを交互に行ってもよい。具体的には、加工ヘッド12は、ワークWの表面の第1の加工対象部分に加工ショット領域PSAが設定されている状態で、ワークWの表面の第1の加工対象部分に加工光ELを照射することで、第1の加工対象部分を加工する。その後、回転装置35は、制御装置4の制御下で、ワークWの表面の第1の加工対象部分とは異なる第2の加工対象部分に加工ショット領域PSAが設定されるように、ワークWを所定角度だけ回転させる。その後、加工ヘッド12は、ワークWの表面の第2の加工対象部分に加工ショット領域PSAが設定されている状態で、ワークWの表面の第2の加工対象部分に加工光ELを照射することで、第2の加工対象部分を加工する。以降、同様の動作が繰り返される。その結果、加工ヘッド12は、ワークWの表面を細分化(区画化、セグメント化)することで得られる複数の加工対象部分を順に加工することができる。また、このとき、制御装置4は、ワークWの表面の第1の加工対象部分とは異なる第2の加工対象部分に加工ショット領域PSAが設定されるように、ワークWを所定移動量だけ移動させてもよい。このときのワークWの移動方向は、典型的には回転装置35の回転軸3522に沿った方向であるが、回転軸3522と交差する方向であってもよい。
【0093】
いずれの場合においても、加工システムSYSは、加工光ELでワークWの表面を加工するために、ワークWを回転装置35で回転させている(より具体的には、ワークWを保持するチャック353を回転装置35で回転させている)。この場合、加工システムSYSは、加工光ELでワークWの表面を旋盤加工しているとみなしてもよい。加工光ELがレーザ光である場合には、加工システムSYSは、加工光ELでワークWの表面をレーザ旋盤加工しているとみなしてもよい。
【0094】
回転装置35がワークWを回転させることで、加工中のワークWを示す斜視図である
図9に示すように、加工ヘッド12は、ワークWの表面のうち円周方向に沿って広がる帯状の領域Wbを加工することができる。この場合、加工システムSYSは、帯状の領域Wbを加工する動作を、ワークWと加工光ELとを相対移動させながら繰り返してもよい。つまり、加工システムSYSは、ワークWと加工光ELとを相対移動させながら、ワークWの表面を加工光ELで加工してもよい。加工システムSYSは、ワークWの表面における加工光ELの照射位置をワークWの表面に対して移動させながら、ワークWの表面の帯状領域Wbを加工光ELで加工してもよい。具体的には、
図9に示すように、加工システムSYSは、ワークWの表面における加工光ELの照射位置を、回転軸3522と平行に移動させながら、ワークWの表面の帯状領域Wbを加工光ELで加工してもよい。つまり、加工システムSYSは、回転装置35を用いてワークWを回転させることでワークWの表面の帯状領域Wbを加工光ELで加工する動作と、回転装置35によるワークWの回転を停止した状態でワークWの表面における加工光ELの照射位置を回転軸3522と平行に移動させる動作とを交互に行ってもよい。その結果、加工システムSYSは、ワークWの全体(或いは、ワークWの表面のうち加工光ELで加工するべき部分)を加工することができる。尚、加工光ELの照射位置を回転軸3522と平行に移動させる動作は、加工光ELの照射位置を回転軸3522と文字通り平行にさせる動作のみならず、加工光ELの照射位置を回転軸3522と厳密には平行でないものの実質的には平行とみなしても支障がない方向に移動させる動作をも含む。
【0095】
上述したように、加工ヘッド12は、Z軸方向に沿って進行する加工光ELをワークWに照射している。つまり、加工ヘッド12は、照射軸EXがZ軸に平行になる加工光ELをワークWに照射している。この場合、ワークWに照射される加工光ELを示す断面図である
図10に示すように、加工ヘッド12は、回転装置35の回転軸3522(つまり、ワークWの中心軸CS)に交差する方向から、ワークWに加工光ELを照射してもよい。つまり、加工ヘッド12は、照射軸EXが回転軸3522に交差する加工光ELをワークWに照射してもよい。この場合、加工ヘッド12がワークWの上方に配置されているため、加工ヘッド12は、ワークWの上面(つまり、加工ヘッド12側を向いている面)に加工光ELを照射してもよい。つまり、加工ヘッド12は、ワークWの表面のある部分に、当該ある部分の法線NLに沿った方向から加工光ELを照射してもよい。
【0096】
或いは、ワークWに照射される加工光ELの他の例を示す断面図である
図11に示すように、加工ヘッド12は、回転装置35の回転軸3522(つまり、ワークWの中心軸CS)に対してねじれの方向から、ワークWに加工光ELを照射してもよい。つまり、加工ヘッド12は、照射軸EXが回転軸3522に対してねじれの関係にある加工光ELをワークWに照射してもよい。尚、回転軸3522に対するねじれの方向は、回転軸3522とねじれの位置にある軸に沿った方向と称してもよい。この場合、加工ヘッド12は、典型的には、ワークWの表面のある部分に、当該ある部分の法線NLに交差する方向から加工光ELを照射することになる。例えば、加工ヘッド12は、ワークWの表面のある部分に、当該ある部分の法線NLとなす角度が0度よりも大きくなる照射軸EXに沿って進行する加工光ELを照射してもよい。例えば、加工ヘッド12は、ワークWの表面のある部分に、当該ある部分の法線NLとなす角度が30度よりも大きくなる照射軸EXに沿って進行する加工光ELを照射してもよい。例えば、加工ヘッド12は、ワークWの表面のある部分に、当該ある部分の法線NLとなす角度が60度よりも大きくなる照射軸EXに沿って進行する加工光ELを照射してもよい。例えば、加工ヘッド12は、ワークWの表面のある部分に、当該ある部分の法線NLとなす角度が70度よりも大きくなる照射軸EXに沿って進行する加工光ELを照射してもよい。例えば、加工ヘッド12は、ワークWの表面のある部分に、当該ある部分の法線NLとなす角度が80度よりも大きくなる照射軸EXに沿って進行する加工光ELを照射してもよい。例えば、加工ヘッド12は、ワークWの表面のある部分に、当該ある部分の法線NLとなす角度が90度となる照射軸EXに沿って進行する加工光ELを照射してもよい。尚、
図11は、加工ヘッド12が、ワークWの表面のある部分に、当該ある部分の法線NLとなす角度が90度となる照射軸EXに沿って進行する加工光ELを照射する例を示している。
【0097】
回転軸3522に対してねじれの方向からワークWに加工光ELを照射する場合には、加工システムSYSは、加工光ELの照射位置を、回転軸3522に交差する方向に沿って変更してもよい。ワークWの形状が円柱形状であるため、回転軸3522に交差する方向(つまり、ワークWの中心軸CSに交差する方向)は、ワークWの径方向に相当する。このため、加工システムSYSは、加工光ELの照射位置を、ワークWの径方向に沿って変更してもよい。尚、回転軸3522に交差する方向からワークWに加工光ELを照射する場合においても、加工システムSYSは、加工光ELの照射位置を、回転軸3522に交差する方向に沿って変更してもよい。
【0098】
例えば、
図11に示すように、加工システムSYSは、加工光ELの照射位置(この場合、照射位置は集光位置を意味していてもよい、以下同じ)を、回転軸3522に交差し且つ照射軸EXに交差するY軸方向に沿って変更してもよい。この場合、加工システムSYSは、加工光ELの照射位置が回転軸3522に近づくように、加工光ELの照射位置をY軸方向に沿って変更してもよい。例えば、加工システムSYSは、第1期間における加工光ELの照射位置に対して、第1期間よりも後の第2期間における加工光ELの照射位置が回転軸3522に近くなるように、加工光ELの照射位置をY軸方向に沿って変更してもよい。
図11に示す例では、加工システムSYSは、加工光ELの照射位置が+Y側に向かって移動するように、加工光ELの照射位置をY軸方向に沿って変更してもよい。
【0099】
例えば、
図11に示すように、加工システムSYSは、加工光ELの照射位置を、回転軸3522に交差し且つ照射軸EXに沿ったZ軸方向に沿って変更してもよい。この場合、照射位置の変更に伴い、ワークWの表面に照射される加工光ELのデフォーカス量が変わる。その結果、照射位置の変更に伴い、ワークWの表面に照射される加工光ELのフルエンスが変わる。一例として、ワークWの加工を開始したばかりのタイミングでは、加工システムSYSは、フルエンスが相対的に高い加工光ELがワークWの表面に照射されるように、加工光ELの照射位置を変更してもよい。典型的には、加工光ELの集光位置がワークWの表面に位置している場合にフルエンスが最も高くなるため、加工システムSYSは、加工光ELの集光位置がワークWの表面に位置するように、加工光ELの照射位置を変更してもよい。その結果、1回の加工光ELの照射によるワークWの加工量が相対的に多くなる。このため、加工システムSYSは、ワークWの粗加工を相対的に速く行うことができる。一方で、ワークWの仕上げ加工をするタイミングでは、1回の加工光ELの照射によるワークWの加工量を相対的に少なくすることでワークWの加工量を微細に調整するために、加工システムSYSは、フルエンスが相対的に低い加工光ELがワークWの表面に照射されるように、加工光ELの照射位置を変更してもよい。典型的には、加工システムSYSは、加工光ELの集光位置がワークWの表面から離れるように(つまり、デフォーカスされた加工光ELがワークWの表面に照射されるように)、加工光ELの照射位置を変更してもよい。或いは、加工システムSYSは、フルエンスが相対的に低い加工光ELがワークWの表面に照射されるように、加工光ELの強度を低くしてもよい。
【0100】
上述した
図10及び
図11は、チャック353がワークWを保持する際にワークWが接触するチャック353の保持面3531(YZ平面に沿った面であり、
図5参照)と平行な面に交差するワークWの表面(例えば、円柱形上のワークWの側面)に対して加工ヘッド12が加工光ELを照射する例を示している。つまり、
図10及び
図11は、回転軸3522に沿って延びるワークWの表面に対して加工ヘッド12が加工光ELを照射する例を示している。一方で、ワークWに照射される加工光ELの他の例を示す斜視図である
図12に示すように、回転軸3522に交差するワークWの表面Wsに対して加工ヘッド12が加工光ELを照射してもよい。ここで、加工光ELは、回転軸3522の方向(X方向)と直交する方向からワークWの表面Wsに照射されてもよい。加工光ELは、回転軸3522の方向(X方向)と直交はしないが交差する方向からワークWの表面Wsに照射されてもよい。加工光ELは、回転軸3522の方向とねじれの位置にある方向からワークWの表面Wsに照射されてもよい。また、加工光ELは、回転軸3522の方向からワークWの表面Wsに照射されてもよい。
【0101】
ワークWに加工光ELが照射された場合には、加工光ELの照射に起因して発生する光がワークWから射出される可能性がある。加工光ELの照射に起因して発生する光は、例えば、ワークWからの加工光ELの反射光、ワークWからの加工光ELの散乱光及びワークWを介した加工光ELの通過光のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。或いは、ワークWに向かって進行する加工光ELの少なくとも一部が、ワークWに照射されることなくそのままワークWを超えて進行する可能性がある。この場合、ステージ装置3は、加工光ELの照射に起因して発生する光及び加工光ELのうちワークWに照射されなかった光部分(以降、この両者をまとめて、“不要光”と称する)を終端可能なビームダンパ37を備えていてもよい。ビームダンパ37の一例が
図13に示されている。
図13に示すように、ビームダンパ37は、ワークWの表面における加工光ELの照射位置に関して加工ヘッド12とは反対側に配置される(つまり、設けられる)。
図13に示す例では、ビームダンパ37は、ワークWの表面における加工光ELの照射位置よりも-Z側に配置される部分を有する。ビームダンパ37は、不要光が照射される照射面371を備える。このため、照射面371は、不要光の光路上に配置される。照射面371は、不要光を吸収してもよいし、散乱させてもよい。この際、照射面371に照射された不要光が加工ヘッド12に戻る可能性を低くするために、照射面371は、加工光ELの照射軸EXに対して傾斜するように配置されていてもよい。例えば、照射面371は、照射面371と照射軸EXとがなす角度が鋭角になるように配置されてもよい。また、照射面371は平面でなくてもよい。例えば、照射面371は、凸面及び凹面等の少なくとも一つを含む曲面であってもよい。尚、ビームダンパ37の照射面371は、加工光ELの集光位置から離れた位置に設けられていてもよい。ビームダンパ37は、ステージ32上に取り付けられていてもよいし、ステージ32とは異なる部材(例えば、定盤31及び筐体5の少なくとも一方)に取り付けられていてもよい。
【0102】
再び
図8において、加工光ELによって加工されたワークWの表面は、計測ヘッド21によって計測される(ステップS14)。この際、計測ヘッド21によるワークWの計測は、加工ヘッド12によるワークWの加工と並行して行われてもよい。具体的には、計測ヘッド21は、加工ヘッド12がワークWの表面の第1部分に加工光ELを照射している期間の少なくとも一部に、加工光ELによって既に加工されたワークWの表面の第2部分を計測してもよい。或いは、計測ヘッド21によるワークWの計測は、加工ヘッド12によるワークWの加工を停止した状態で行われてもよい。
【0103】
その後、制御装置4は、ステップS14における計測ヘッド21によるワークWの計測結果に関するワーク計測情報に基づいて、ワークWの加工量が適切であるか否かを判定する(ステップS15)。つまり、制御装置4は、ステップS12で設定された加工条件に基づくワークWの加工量が、予め定めた又は想定していた適切な量であるか否かを判定する。
【0104】
ステップS15における判定の結果、ワークWの加工量が適切でないと判定された場合には(ステップS15:No)、制御装置4は、ステップS14における計測ヘッド21によるワークWの計測結果に関するワーク計測情報に基づいて、ワークWの加工量が適切になるように、加工条件を再設定する(ステップS16)。他方で、ステップS15における判定の結果、ワークWの加工量が適切であると判定された場合には(ステップS15:Yes)、制御装置4は、加工条件を再設定しなくてもよい。その後、加工システムSYSは、ステップS13からステップS16までの動作を、ワークWの加工が完了するまで繰り返す(ステップS17)。
【0105】
このように、本実施形態では、加工システムSYSは、ステップS11において、加工前のワークWを事前計測し、ステップS13において、ワークWの事前計測結果に基づいてワークWを加工し、ステップS14において、加工後のワークWを事後計測し、ステップS16において、ワークWの事後計測の結果に基づいて加工条件を再設定する。このため、加工システムSYSは、ワークWを適切に加工することができる。特に、加工システムSYSは、加工ヘッド12及び計測ヘッド21の双方を備えているため、ワークWをチャック353から取り外すことなく、ステップS11からステップS17までの動作を行うことができる。
【0106】
(2-2)軸情報生成動作
続いて、計測装置2を用いて、回転装置35の回転軸3522に関する回転軸情報を生成するための軸情報生成動作について説明する。本実施形態では、加工システムSYSは、第1の軸情報生成動作から第3の軸情報生成動作のうちの少なくとも一つを行ってもよい。第1の軸情報生成動作は、回転軸3522が延びる方向とステージ32の移動方向とのずれに関する組み付け誤差情報を、回転軸情報として生成するための動作である。以下の説明では、回転軸3522が延びる方向とステージ32の移動方向とのずれを、“組み付け誤差(つまり、ステージ32に対する回転装置35の組み付け誤差)”と称する。第2の軸情報生成動作は、回転軸3522が延びる方向とガルバノミラー1214によるワークWの表面における加工光ELの照射位置の移動方向(つまり、加工光ELの走査方向)とのずれに関する走査誤差情報を、回転軸情報として生成するための動作である。以下の説明では、回転軸3522が延びる方向とガルバノミラー1214による加工光ELの走査方向とのずれを、“走査誤差”と称する。第3の軸情報生成動作は、回転軸3522とチャック353が保持しているワークWとのずれに関するチャッキング誤差情報を、回転軸情報として生成するための動作である。以下の説明では、回転軸3522とチャック353が保持しているワークWとのずれを、“チャッキング誤差”と称する。以下、第1から第3の軸情報生成動作について順に説明する。
【0107】
尚、回転軸情報は、回転軸3522の位置及び姿勢の少なくとも一方(ひいては、回転装置35の位置及び姿勢の少なくとも一方)に関する情報であるとみなしてもよい。例えば、組み付け誤差情報は、ステージ32の移動方向に対する回転軸3522の位置及び姿勢の少なくとも一方(ひいては、回転装置35の位置及び姿勢の少なくとも一方)に関する情報であるとみなしてもよい。例えば、走査誤差情報は、加工光ELの操作方向に対する回転軸3522の位置及び姿勢の少なくとも一方(ひいては、回転装置35の位置及び姿勢の少なくとも一方)に関する情報であるとみなしてもよい。例えば、チャッキング誤差情報は、ワークWに対する回転軸3522の位置及び姿勢の少なくとも一方(ひいては、回転装置35の位置及び姿勢の少なくとも一方)に関する情報であるとみなしてもよい。この場合、制御装置4は、ワークWを加工するために、回転軸3522の位置及び姿勢の少なくとも一方(ひいては、回転装置35の位置及び姿勢の少なくとも一方)に関する情報に基づいて、加工装置1(例えば、加工ヘッド12)及びステージ装置3(例えば、回転装置35)の少なくとも一方を制御しているとみなしてもよい。
【0108】
(2-2-1)第1の軸情報生成動作(組み付け誤差)
はじめに、回転軸3522が延びる方向とステージ32の移動方向とのずれである組み付け誤差に関する組み付け誤差情報を生成するための第1の軸情報生成動作について説明する。理想的には、回転軸3522が延びる方向は、ステージ32の移動方向と平行になる(或いは、一致する)。例えば、本実施形態では、回転軸3522がX軸方向に沿って延びる軸であるため、回転軸3522が延びる方向は、ステージ32の位置を制御するために用いられるステージ座標系におけるX軸と平行になる(或いは、一致する)。しかしながら、実際には、回転装置35をステージ32に配置するときの組み付け精度又はチャック353を回転シャフト352に取り付けるときの組み付け精度に起因して、回転軸3522が延びる方向がステージ32の移動方向と平行にならない(或いは、一致しない)可能性がある。また、ステージ32の移動精度に起因して、回転軸3522が延びる方向がステージ32の移動方向と平行にならない(或いは、一致しない)可能性がある。そこで、加工システムSYSは、第1の軸情報生成動作を行うことで、このような回転軸3522が延びる方向とステージ32の移動方向とのずれ(つまり、組み付け誤差)に関する組み付け誤差情報を生成する。以下、
図14を参照しながら、第1の軸情報生成動作について説明する。
図14は、第1の軸情報生成動作の流れを示すフローチャートである。
【0109】
図14に示すように、第1の軸情報生成動作を行うためのテスト用のワーク(以降、“テストワークWt”と称する)がチャック353によって保持される(ステップS21)。このとき、テストワークWtは、テストワークWtの中心軸CStが回転軸3522と一致するように、チャック353によって保持される。尚、テストワークWtとして、真円度及び真直度が既知であるワークを用いることができる。
【0110】
テストワークWtは、例えば、計測装置2によるテストワークWtの計測結果からテストワークWtの中心軸CStを算出できる形状を有するワークである。このようなテストワークWtの一例として、円柱形状を有するテストワークWtがあげられる。
図15に円柱形状を有するテストワークWtの計測装置2による計測結果の一例であるテストワークWtの高さ像を示す。
図15並びに後述する
図17(b)、
図17(d)、
図19、
図21(b)、及び
図21(d)の高さ像においては、濃淡が高さ情報を表しており、色の薄い部分がその部分の高さが高いこと(+Z軸側)を表しており、色の薄い部分がその部分の高さが低いこと(+Z軸側)を表している。
図15に示すように、テストワークWtの高さ像は、中心軸CStに沿った部分が、中心軸CStに沿った部分以外の他の部分よりも高くなるようにテストワークWtが写り込んだ像となる。テストワークWtの形状が理想的な円柱形状であるため、制御装置4は、計測装置2によるテストワークWtの計測結果から、テストワークWtの中心軸CStを算出することができる。算出した中心軸CStは、回転軸3522として利用可能である。なぜならば、上述したように、テストワークWtは、テストワークWtの中心軸CStが回転軸3522と一致するように、チャック353によって保持されるからである。尚、加工対象となるワークWがテストワークWtとして利用可能である場合には、ステップS21において、テストワークWtに代えてワークWがチャック353によって保持されてもよい。
【0111】
その後、加工システムSYSは、計測装置2を用いてテストワークWtの一部を計測する動作(ステップS22)と、ステージ32を移動させる動作(ステップS24)とを、テストワークWtの一部を計測する動作が必要回数行われるまで繰り返す。具体的には、例えば、テストワークWtを示す上面図である
図16に示すように、計測装置2は、テストワークWtの表面の第1の計測対象部分Wt11に計測ショット領域MSAを設定し、第1の計測対象部分Wt11を計測する。その後、加工システムSYSは、一の方向に沿ってステージ32を移動させる。例えば、加工システムSYSは、回転軸3522が本来延びるべき方向に平行な一の方向に沿ってステージ32を移動させる。例えば、回転軸3522が本来X軸方向に沿って延びるべきである場合には、加工システムSYSは、ステージ座標系のX軸方向に沿ってステージ32を移動させる。ステージ32の移動に伴って、計測ショット領域MSAがテストワークWtの表面上を移動する。この際、加工システムSYSは、テストワークWtの表面上で第1の計測対象部分Wt11に隣接する第2の計測対象部分Wt12に計測ショット領域MSAが設定されるように、ステージ32を移動させる。その後、計測装置2は、第2の計測対象部分Wt12を計測する。以降、同様の動作が、テストワークWtの一部を計測する動作が必要回数行われるまで繰り返される(ステップS23)。
【0112】
その後、制御装置4は、ステップS22におけるテストワークWtの計測結果に基づいて、組み付け誤差情報を生成する(ステップS25)。ここで、
図17(a)から
図17(d)を参照しながら、組み付け誤差情報を生成する動作について説明する。
【0113】
図17(a)は、回転軸3522が延びる方向(つまり、中心軸CStが延びる方向)とステージ32の移動方向とが平行になる(或いは、一致する)理想的なテストワークWtを示している。このテストワークWtの計測結果に相当する高さ像は、
図17(b)に示されている。この高さ像は、テストワークWtの複数回の計測結果に相当する複数の像を、計測ショット領域MSAの移動方向に沿ってつなげることで生成される像に相当する。
図17(b)に示すように、制御装置4は、高さ像に写り込んだテストワークWtに基づいて、回転軸3522(中心軸CSt)を算出することができる。つまり、制御装置4は、回転軸3522に関する情報を取得することができる。更に、計測ショット領域MSAがステージ32の移動に伴って移動しているがゆえに、テストワークWtの高さ像は、ステージ32の移動方向に沿って延びる像となる。従って、制御装置4は、高さ像そのものに基づいて、ステージ32の移動方向を算出することができる。具体的には、制御装置4は、テストワークWtの複数回の計測結果に相当する複数の像をつないだ方向(例えば、高さ像の長手方向)を、ステージ32の移動方向として算出してもよい。
図17(b)に示す例では、回転軸3522が延びる方向とステージ32の移動方向とが平行になる(或いは、一致する)ため、制御装置4が算出した回転軸3522が延びる方向と制御装置4が算出したステージ32の移動方向とが平行になる(或いは、一致する)。
【0114】
一方で、
図17(c)は、回転軸3522が延びる方向(つまり、中心軸CStが延びる方向)とステージ32の移動方向とが平行にならない(或いは、一致しない)テストワークWtを示している。このテストワークWtの計測結果に相当する高さ像は、
図17(d)に示されている。
図17(d)に示すように、この場合には、制御装置4が算出した回転軸3522が延びる方向と制御装置4が算出したステージ32の移動方向とが平行にならない(或いは、一致しない)。
【0115】
このため、制御装置4は、回転軸3522が延びる方向とステージ32の移動方向との関係(特に、ずれ)を算出することができる。その結果、制御装置4は、回転軸3522が延びる方向とステージ32の移動方向とのずれに関する組み付け誤差情報を生成することができる。
【0116】
尚、上述した
図17の例では、制御装置4は、テストワークWtの計測結果に相当する高さ像を用いて、回転軸3522(中心軸CSt)を算出している。しかしながら、制御装置4は、それに加えて又は代えて、テストワークWtの輪郭を用いて回転軸3522(中心軸CSt)を算出してもよい。この場合、制御装置4は、テストワークWtの輪郭のうちX軸方向に延びる二辺の中線を、回転軸3522(中心軸CSt)として算出してもよい。このとき、後述するように、加工システムSYSは、テストワークWtの一部を計測する動作と、回転軸3522が本来延びるべき方向に交差する他の方向(例えば、Y軸方向)に沿ってステージ32を移動させる動作とを繰り返してもよい。
【0117】
また、組み付け誤差情報は、チャック353の回転シャフト352に対する組付け誤差に関する情報も含んでいる。この場合、加工システムSYSは、上述した
図14の手順を実施した後に、所定角度(例えば60度)だけ回転装置35を回転させ、
図14の手順を実施してもよい。制御装置4は、このような手順を所定回数繰り返し(例えば6回繰り返し、この場合回転シャフト352の回転角度が0度、60度、120度、180度、240度、300度になるごとに
図14の手順を行う)、所定回数行われた
図14の手順の結果を平均化することで、組み付け誤差による中心軸CStのずれを算出してもよい。尚、このようテストワークWtを回転させて計測することを複数回繰り返すことにより、テストワークWtの自重たわみによる影響を組み付け誤差と切り分けることができる。
【0118】
生成された組み付け誤差情報は、上述した加工動作を行うために制御装置4によって参照されてもよい。つまり、組み付け誤差情報は、加工光ELをワークWに照射することでワークWを加工する加工期間中に、制御装置4によって参照されてもよい。具体的には、制御装置4は、組み付け誤差情報に基づいて、回転軸3522が延びる方向とステージ32の移動方向とのずれが生じている場合であっても、回転軸3522が延びる方向とステージ32の移動方向とのずれが生じていない場合と同様にワークWを加工することができるように、加工システムSYSを制御してもよい。例えば、制御装置4は、組み付け誤差情報に基づいて、回転軸3522が延びる方向とステージ32の移動方向とのずれが生じている場合であっても、回転軸3522が延びる方向とステージ32の移動方向とのずれが生じていない場合と同様に加工光ELの照射位置がワークWの表面上を移動するように、加工ヘッド12(特に、ガルバノミラー1214)及びステージ32の少なくとも一方を制御してもよい。典型的には、制御装置4は、組み付け誤差情報に基づいて、ワークWの表面における加工光ELの照射位置が、回転軸3522が延びる方向に沿って移動するように、加工ヘッド12(特に、ガルバノミラー1214)及びステージ32の少なくとも一方を制御してもよい。その結果、組み付け誤差情報を用いない場合と比較して、加工システムSYSは、ワークWをより高精度に加工することができる。尚、加工光ELをワークWに照射することでワークWを加工する加工期間中に制御装置4が組み付け誤差情報を参照するために、第1の軸情報生成動作は加工動作よりも先に行われていてもよい。
【0119】
組み付け誤差情報に基づいて制御装置4が加工ヘッド12(特に、ガルバノミラー1214)及びステージ32の少なくとも一方を制御することに加えて又は代えて、組み付け誤差情報に基づいて、回転装置35がステージ32に組付け直されてもよい。典型的には、回転軸3522が延びる方向とステージ32の移動方向とが平行になる(或いは、一致する)ように、回転装置35がステージ32に組付け直されてもよい。この場合、回転軸3522が延びる方向とステージ32の移動方向とのずれがなくなるため、加工システムSYSは、ワークWをより高精度に加工することができる。
【0120】
尚、上述した説明では、組み付け誤差情報を生成するために、加工システムSYSは、テストワークWtの一部を計測する動作と、回転軸3522が本来延びるべき方向に平行な一の方向(上述の例では、X軸方向)に沿ってステージ32を移動させる動作とを繰り返している。しかしながら、加工システムSYSは、テストワークWtの一部を計測する動作と、回転軸3522が本来延びるべき方向に交差する他の方向(例えば、Y軸方向)に沿ってステージ32を移動させる動作とを繰り返してもよい。この場合も、制御装置4は、回転軸3522が延びる方向とステージ32の移動方向とのずれに関する組み付け誤差情報を生成することができる。
【0121】
また、上述した説明では、テストワークWtは、テストワークWtの中心軸CStが回転軸3522と一致するように、チャック353によって保持される。しかしながら、現実的には、テストワークWtの中心軸CStが回転軸3522と常に一致するようにチャック353がテストワークWtを保持できない可能性がある。そこで、
図14に示す第1の軸情報生成動作が終了する都度、チャック353がテストワークWtを保持し直してもよい。つまり、
図14に示す第1の軸情報生成動作が終了する都度、チャック353からテストワークWtが取り外され、その後、テストワークWtがチャック353に再度保持されてもよい。チャック353がテストワークWtを保持し直した後に、加工システムSYSは、
図14に示す第1の軸情報生成動作を再度行ってもよい。その結果、複数回行われる第1の軸情報生成動作により、複数の組み付け誤差が算出される。制御装置4は、このように算出される複数の組み付け誤差に基づいて組み付け誤差情報を生成してもよい。例えば、制御装置4は、複数の組み付け誤差の平均値に関する組み付け誤差情報を生成してもよい。その結果、テストワークWtの中心軸CStが回転軸3522と一致しないことで生ずる影響が低減される。
【0122】
また、回転軸3522が延びる方向とステージ32の移動方向とのずれは、回転軸3522とステージ32の走り面とのずれと等価であるとみなしてもよい。このため、組み付け誤差は、ステージ走り誤差と称されてもよい。このように組み付け誤差がステージ走り誤差と等価であるとみなしてもよいことを考慮すれば、加工システムSYSは、
図14に示す動作に加えて又は代えて、
図18に示す動作を行うことで、組み付け誤差情報(つまり、ステージ走り誤差に関するステージ走り誤差情報)を生成してもよい。
【0123】
具体的には、
図18に示すように、テストワークWtがチャック353によって保持される(ステップS31)尚、加工対象となるワークWがテストワークWtとして利用可能である場合には、ステップS31において、テストワークWtに代えてワークWがチャック353によって保持されてもよい。
【0124】
その後、加工システムSYSは、テストワークWtの表面の複数部分を加工する。具体的には、まず、加工システムSYSは、テストワークWtの表面の第1の加工対象部分に加工ショット領域PSAを設定し、第1の加工対象部分の少なくとも一部を加工する(ステップS32)。その後、加工システムSYSは、一の方向に沿ってステージ32を移動させる。例えば、加工システムSYSは、回転軸3522が本来延びるべき方向に平行な一の方向に沿ってステージ32を移動させる(ステップS33)。例えば、回転軸3522が本来X軸方向に沿って延びるべき場合には、加工システムSYSは、ステージ座標系のX軸方向に沿ってステージ32を移動させる。ステージ32の移動に伴って、加工ショット領域PSAがテストワークWtの表面上を移動する。この際、加工システムSYSは、テストワークWtの表面上で第1の加工対象部分とは異なる第2の加工対象部分に加工ショット領域PSAが設定されるように、ステージ32を移動させる。その後、加工システムSYSは、第2の加工対象部分の少なくとも一部を加工する(ステップS34)。この際、第2の加工対象部分の少なくとも一部を加工するときの加工ショット領域PSA内での加工光ELの照射位置は、第1の加工対象部分の少なくとも一部を加工するときの加工ショット領域PSA内での加工光ELの照射位置と同じである。このため、第2の加工対象部分における加工跡は、第1の加工対象部分における加工跡から、ステップS33におけるステージ32の移動方向に沿って、ステップS33におけるステージ32の移動量だけ離れた位置に存在する。尚、
図18は、テストワークWtの表面の二つの部分が加工される例を示しているが、テストワークWtの表面の三つ以上の部分が加工されてもよい。
【0125】
その後、計測装置2は、テストワークWtの表面(特に、ステップS32及びS34において加工された部分であり、加工跡)を計測する(ステップS35)。
【0126】
その後、制御装置4は、ステップS35におけるテストワークWtの計測結果に基づいて、組み付け誤差情報を生成する(ステップS36)。ここで、
図19(a)から
図19(b)を参照しながら、組み付け誤差情報を生成する動作について説明する。
【0127】
図19(a)は、回転軸3522が延びる方向とステージ32の移動方向とが平行になる(或いは、一致する)理想的なテストワークWtの計測結果に相当する高さ像を示す。
図19(a)に示すように、制御装置4は、高さ像に写り込んだテストワークWtに基づいて、回転軸3522を算出することができる。更に、上述したように、複数の加工跡は、ステージ32の移動方向に沿って離れている。このため、制御装置4は、高さ像に写り込んでいる複数の加工跡の相対的な位置関係に基づいて、ステージ32の移動方向を算出することができる。具体的には、制御装置4は、複数の加工跡を結ぶ線に沿った方向を、ステージ32の移動方向として算出してもよい。
図19(a)に示す例では、回転軸3522が延びる方向とステージ32の移動方向とが平行になる(或いは、一致する)ため、制御装置4が算出した回転軸3522が延びる方向と制御装置4が算出したステージ32の移動方向とが平行になる(或いは、一致する)。
【0128】
一方で、
図19(b)は、回転軸3522が延びる方向とステージ32の移動方向とが平行にならない(或いは、一致しない)テストワークWtの計測結果に相当する高さ像を示す。
図19(b)に示すように、この場合には、制御装置4が算出した回転軸3522が延びる方向と制御装置4が算出したステージ32の移動方向とが平行にならない(或いは、一致しない)。
【0129】
このため、制御装置4は、回転軸3522が延びる方向とステージ32の移動方向との関係(特に、ずれ)を算出することができる。その結果、制御装置4は、回転軸3522が延びる方向とステージ32の移動方向とのずれに関する組み付け誤差情報を生成することができる。
【0130】
(2-2-2)第2の軸情報生成動作(走査誤差)
続いて、回転軸3522が延びる方向とガルバノミラー1214による加工光ELの走査方向とのずれである走査誤差に関する走査誤差情報を生成するための第2の軸情報生成動作について説明する。理想的には、回転軸3522が延びる方向は、加工光ELの走査方向と平行になる(或いは、一致する)。例えば、本実施形態では、回転軸3522がX軸方向に沿って延びる軸であるため、回転軸3522が延びる方向は、ガルバノミラー1214が備えるX走査ミラー1214Xによる加工光ELの走査方向と平行になる(或いは、一致する)。しかしながら、実際には、回転装置35をステージ32に配置するときの組み付け精度又はチャック353を回転シャフト352に取り付けるときの組み付け精度に起因して、回転軸3522が延びる方向がガルバノミラー1214による加工光ELの走査方向と平行にならない(或いは、一致しない)可能性がある。また、ガルバノミラー1214の組み付け誤差或いは走査精度に起因して、回転軸3522が延びる方向が加工光ELの走査方向と平行にならない(或いは、一致しない)可能性がある。そこで、加工システムSYSは、第2の軸情報生成動作を行うことで、このような回転軸3522が延びる方向と加工光ELの走査方向とのずれ(つまり、走査誤差)に関する走査誤差情報を生成する。尚、回転軸3522が延びる方向がガルバノミラー1214による加工光ELの走査方向と平行である場合には、第2の軸情報生成動作を省略してもよい。以下、
図20を参照しながら、第2の軸情報生成動作について説明する。
図20は、第2の軸情報生成動作の流れを示すフローチャートである。
【0131】
図20に示すように、第2の軸情報生成動作を行うためのテストワークWtがチャック353によって保持される(ステップS41)。このとき、テストワークWtは、テストワークWtの中心軸CStが回転軸3522と一致するように、チャック353によって保持される。尚、第2の軸情報生成動作を行うためのテストワークWtは、第1の軸情報生成動作を行うためのテストワークWtと同一であってもよい。加工対象となるワークWがテストワークWtとして利用可能である場合には、ステップS41において、テストワークWtに代えてワークWがチャック353によって保持されてもよい。
【0132】
その後、加工システムSYSは、ガルバノミラー1214を用いて加工光ELを偏向することで、テストワークWtの表面に直線状の溝GV(
図21(a)等参照)を形成する(ステップS42)。具体的には、例えば、加工システムSYSは、回転軸3522が本来延びるべき方向に平行な一の方向に沿って加工光ELの照射位置がテストワークWtの表面上で移動するようにガルバノミラー1214を制御することで、テストワークWtの表面に一の方向に沿って延びる直線状の溝GVを形成する。例えば、回転軸3522が本来X軸方向に沿って延びるべき場合には、加工システムSYSは、X走査ミラー1214Xを制御することで、テストワークWtの表面にX軸方向に沿って延びる直線状の溝GVを形成する。溝GVを形成するためにテストワークWtに加工光ELが照射されている期間中は、加工ヘッド12及びステージ32は移動しない。
【0133】
その後、計測装置2は、テストワークWtの表面(特に、ステップS42において直線状の溝GVが形成された部分であり、加工跡)を計測する(ステップS43)。
【0134】
その後、制御装置4は、ステップS42におけるテストワークWtの計測結果に基づいて、走査誤差情報を生成する(ステップS44)。ここで、
図21(a)から
図21(d)を参照しながら、走査誤差情報を生成する動作について説明する。
【0135】
図21(a)は、回転軸3522が延びる方向(つまり、中心軸CStが延びる方向)と加工光ELの走査方向とが平行になる(或いは、一致する)理想的なテストワークWtを示している。このテストワークWtの計測結果に相当する高さ像は、
図21(b)に示されている。
図21(b)に示すように、制御装置4は、高さ像に写り込んだテストワークWtに基づいて、回転軸3522(中心軸CSt)を算出することができる。更に、制御装置4は、高さ像に写り込んだ溝GVが延びる方向に基づいて、加工光ELの走査方向を算出することができる。なぜならば、溝GVは、加工光ELの走査方向に沿って延びるがゆえに、溝GVが延びる方向は、加工光ELの走査方向と同じになるからである。
図21(b)に示す例では、回転軸3522が延びる方向と加工光ELの走査方向とが平行になる(或いは、一致する)ため、制御装置4が算出した回転軸3522が延びる方向と制御装置4が算出した加工光ELの走査方向とが平行になる(或いは、一致する)。
【0136】
一方で、
図21(c)は、回転軸3522が延びる方向と加工光ELの走査方向とが平行にならない(或いは、一致しない)テストワークWtを示している。このテストワークWtの計測結果に相当する高さ像は、
図21(d)に示されている。
図21(d)に示すように、この場合には、制御装置4が算出した回転軸3522が延びる方向と制御装置4が算出した加工光ELの走査方向とが平行にならない(或いは、一致しない)。
【0137】
このため、制御装置4は、回転軸3522が延びる方向と加工光ELの走査方向との関係(特に、ずれ)を算出することができる。その結果、制御装置4は、回転軸3522が延びる方向と加工光ELの走査方向とのずれに関する走査誤差情報を生成することができる。
【0138】
尚、上述した
図21の例では、制御装置4は、テストワークWtの計測結果に相当する高さ像を用いて、回転軸3522(中心軸CSt)を算出している。しかしながら、制御装置4は、それに加えて/或いは代えて、テストワークWtの輪郭を用いて回転軸3522(中心軸CSt)を算出してもよい。この場合、制御装置4は、テストワークWtの輪郭のうちX軸方向に延びる二辺の中線を、回転軸3522(中心軸CSt)として算出してもよい。このとき、後述するように、加工システムSYSは、テストワークWtの一部を計測する動作と、回転軸3522が本来延びるべき方向に交差する他の方向(例えば、Y軸方向)に沿ってステージ32を移動させる動作とを繰り返してもよい。
【0139】
また、加工システムSYSは、上述した
図20の手順を実施した後に、所定角度(例えば60度)だけ回転装置35を回転させ、
図20の手順を実施してもよい。制御装置4は、このような手順を所定回数繰り返し(例えば6回繰り返し、この場合回転シャフト352の回転角度が0度、60度、120度、180度、240度、300度になるごとに
図20の手順を行う)、所定回数行われた
図20の手順の結果を平均化することで、走査誤差情報を算出してもよい。
【0140】
尚、加工システムSYSは、上述した
図20の手順を実施した後に、チャック353からテストワークWtを取り外して、再度チャック353によって保持させてから、
図20の手順を実施してもよい。
【0141】
生成された走査誤差情報は、上述した加工動作を行うために制御装置4によって参照されてもよい。つまり、走査誤差情報は、加工光ELをワークWに照射することでワークWを加工する加工期間中に、制御装置4によって参照されてもよい。具体的には、制御装置4は、走査誤差情報に基づいて、回転軸3522が延びる方向と加工光ELの走査方向とのずれが生じている場合であっても、回転軸3522が延びる方向と加工光ELの走査方向とのずれが生じていない場合と同様にワークWを加工することができるように、加工システムSYSを制御してもよい。例えば、制御装置4は、走査誤差情報に基づいて、回転軸3522が延びる方向と加工光ELの走査方向とのずれが生じている場合であっても、回転軸3522が延びる方向と加工光ELの走査方向とのずれが生じていない場合と同様に加工光ELの照射位置がワークWの表面上を移動するように、加工ヘッド12(特に、ガルバノミラー1214)及びステージ32の少なくとも一方を制御してもよい。典型的には、制御装置4は、走査誤差情報に基づいて、ワークWの表面における加工光ELの照射位置が、回転軸3522が延びる方向に沿って移動するように、加工ヘッド12(特に、ガルバノミラー1214)及びステージ32の少なくとも一方を制御してもよい。尚、加工中にステージ32が移動しないような場合には、制御装置4は、加工ヘッド12(特に、ガルバノミラー1214)を制御してもよい。その結果、走査誤差情報を用いない場合と比較して、加工システムSYSは、ワークWをより高精度に加工することができる。尚、加工光ELをワークWに照射することでワークWを加工する加工期間中に制御装置4が走査誤差情報を参照するために、第2の軸情報生成動作は加工動作よりも先に行われていてもよい。
【0142】
尚、上述した説明では、走査誤差情報を生成するために、加工システムSYSは、回転軸3522が本来延びるべき方向に平行な一の方向に沿って加工光ELの照射位置が移動するようにガルバノミラー1214を制御している。しかしながら、加工システムSYSは、回転軸3522が本来延びるべき方向に交差する他の方向に沿って加工光ELの照射位置が移動するように、ガルバノミラー1214を制御してもよい。例えば、加工システムSYSは、Y走査ミラー1214Yを制御することで、テストワークWtの表面にY軸方向に沿って延びる直線状の溝GVを形成してもよい。この場合も、制御装置4は、回転軸3522が延びる方向と加工光ELの走査方向とのずれに関する走査誤差情報を生成することができる。
【0143】
また、上述した説明では、テストワークWtは、テストワークWtの中心軸CStが回転軸3522と一致するように、チャック353によって保持される。しかしながら、現実的には、テストワークWtの中心軸CStが回転軸3522と常に一致するようにチャック353がテストワークWtを保持できない可能性があることは上述したとおりである。そこで、
図20に示す第2の軸情報生成動作が終了する都度、チャック353がテストワークWtを保持し直してもよい。つまり、
図20に示す第2の軸情報生成動作が終了する都度、チャック353からテストワークWtが取り外され、その後、テストワークWtがチャック353に再度保持されてもよい。チャック353がテストワークWtを保持し直した後に、加工システムSYSは、
図20に示す第2の軸情報生成動作を再度行ってもよい。その結果、複数回行われる第2の軸情報生成動作により、複数の走査誤差が算出される。制御装置4は、このように算出される複数の走査誤差に基づいて走査誤差情報を生成してもよい。例えば、制御装置4は、複数の走査誤差の平均値に関する走査誤差情報を生成してもよい。その結果、テストワークWtの中心軸CStが回転軸3522と一致しないことで生ずる影響が低減される。
【0144】
(2-2-3)第3の軸情報生成動作(チャッキング誤差)
続いて、回転軸3522とチャック353が保持しているワークWとのずれであるチャッキング誤差に関するチャッキング誤差情報を生成する第3の軸情報生成動作について説明する。理想的には、チャック353は、回転軸3522がワークWの中心軸CSと一致するようにワークWを保持する。しかしながら、チャック353に対するワークWの取り付け精度等に起因して、チャック353は、回転軸3522が中心軸CSと一致するようにワークWを保持することができない可能性がある。例えば、チャッキング誤差が生じているワークWを示す上面図である
図22(a)に示すように、チャック353は、回転軸3522が中心軸CSと平行であるものの一致しないというチャッキング誤差が生じている状態でワークWを保持する可能性がある。例えば、チャッキング誤差が生じているワークWを示す上面図である
図22(b)に示すように、チャック353は、回転軸3522が中心軸CSと平行でないというチャッキング誤差が生じている状態でワークWを保持する可能性がある。尚、説明の便宜上、回転軸3522が中心軸CSと平行であるものの一致しないというチャッキング誤差を、“偏心誤差”と称する。偏心誤差は、回転軸3522と中心軸CSとの位置関係に関する誤差であるとみなしてもよい。また、回転軸3522が中心軸CSと平行でないというチャッキング誤差を、“偏角誤差”と称する。偏角誤差は、回転軸3522と中心軸CSとの角度関係に関する誤差であるとみなしてもよい。このため、加工システムSYSは、第3の軸情報生成動作を行うことで、偏心誤差に関する偏心誤差情報を、チャッキング誤差情報として生成してもよい。加工システムSYSは、第3の軸情報生成動作を行うことで、偏角誤差に関する偏角誤差情報を、チャッキング誤差情報として生成してもよい。以降、偏心誤差情報を生成するための動作と、偏角誤差情報を生成するための動作とについて順に説明する。
【0145】
(2-2-3-1)偏心誤差情報を生成する動作
初めに、
図23を参照しながら、偏心誤差情報を生成するための動作について説明する。
図23は、偏心誤差情報を生成するための動作の流れを示すフローチャートである。
【0146】
図23に示すように、ワークWがチャック353によって保持される(ステップS51)。その後、加工システムSYSは、計測装置2を用いてワークWの少なくとも一部を計測する動作(ステップS52)と、回転装置35を用いてワークWを所定角度だけ回転させる動作(ステップS54)とを、ワークWが所定角度よりも大きい必要角度だけ回転するまで繰り返す。例えば、必要角度は、例えば、少なくとも360度であってもよい。つまり、加工システムSYSは、計測装置2を用いてワークWの少なくとも一部を計測する動作(ステップS52)と、回転装置35を用いてワークWを回転させる動作(ステップS54)とを、ワークWが少なくとも1回転するまで繰り返す。ここで、必要角度は、360度以上であってもよいし、360度未満であってもよい。尚、ステップS52からステップS54までの動作が行われている期間中は、加工ヘッド12は移動しなくてもよい。
【0147】
その後、制御装置4は、ステップS52におけるワークWの計測結果に基づいて、偏心誤差情報を生成する(ステップS55)。ここで、
図24から
図29を参照しながら、偏心誤差情報を生成する動作について説明する。
【0148】
図24は、中心軸CSが回転軸3522と一致する理想的なワークWが回転する様子を示す断面図である。
図24に示すように、中心軸CSが回転軸3522と一致する場合には、回転装置35によってワークWが回転したとしても、ワークWの表面のうち回転軸3522に交差する一の方向における端に位置する端点(端部分)の一の方向における位置が変動することはない。以下では、説明の便宜上、端点として、ワークWの表面のうち回転軸3522に交差するZ軸方向における端に位置する端点PZを用いて説明を進める。この場合、
図24に示すワークWの端点PZのZ軸方向における位置とワークWの回転角度θとの関係を示すグラフである
図25に示すように、回転装置35によってワークWが回転したとしても、端点PZのZ軸方向における位置(つまり、高さ)が変動することはない。つまり、端点PZのZ軸方向における位置(つまり、高さ)は、回転角度θに関係なく一定の値となる。
【0149】
一方で、
図26は、中心軸CSが回転軸3522と平行であるものの一致しないワークWが回転する様子を示す断面図である。
図26に示すように、中心軸CSが回転軸3522と一致しない場合には、回転装置35によってワークWが回転すると、ワークWの表面のうち回転軸3522に交差する一の方向における端部を構成する端点の一の方向における位置が、ワークWの回転に合わせて変動する。具体的には、
図26に示すワークWの端点PZのZ軸方向における位置とワークWの回転角度θとの関係を示すグラフである
図27に示すように、回転装置35によってワークWが回転すると、端点PZのZ軸方向における位置(つまり、高さ)は、ワークWの回転に合わせて正弦波状に変動する。つまり、端点PZのZ軸方向における位置は、回転角度θに応じて正弦波状に変化する値となる。このとき、端点PZのZ軸方向における位置の変動量(つまり、端点PZのZ軸方向における位置の最大値と最小値との差分)は、中心軸CSと回転軸3522との間の距離に相当する偏心誤差の量が大きくなるほど大きくなる。
【0150】
図28もまた、
図26と同様に、中心軸CSが回転軸3522と平行であるものの一致しないワークWが回転する様子を示す断面図である。但し、
図28に示す例では、回転角度θがゼロ度となっている状況下で端点PZが回転軸3522からZ軸方向のみならずZ軸方向に交差するY軸方向においても離れているという点で、回転角度θがゼロ度となっている状況下で端点PZが回転軸3522からZ軸方向のみに離れている
図26に示す例と異なる。この場合、
図28に示すワークWの端点PZのZ軸方向における位置とワークWの回転角度θとの関係を示すグラフである
図29に示すように、回転装置35によってワークWが回転すると、端点PZのZ軸方向における位置(つまり、高さ)は、ワークWの回転に合わせて正弦波状に変動する。但し、
図29に示す端点PZのZ軸方向における位置の変動は、
図29に示す端点PZのZ軸方向における位置の変動と比較して、変動の位相が異なるという点で異なっている。
【0151】
このため、制御装置4は、計測装置2によるワークWの計測結果に基づいて、ワークWの端点PZのZ軸方向における位置とワークWの回転角度θとの関係を算出することで、偏心誤差を算出することができる。具体的には、制御装置4は、端点PZのZ軸方向における位置と回転角度θとの関係に基づいて、端点PZのZ軸方向における位置の変動量を算出し、当該変動量から中心軸CSと回転軸3522との間の距離(つまり、偏心誤差)を算出することができる。更には、制御装置4は、端点PZのZ軸方向における位置と回転角度θとの関係に基づいて、端点PZのZ軸方向における位置の変動の位相を算出し、当該位相からワークWの回転角度θに応じたワークWの状態(具体的には、回転軸3522に対してワークWの中心軸CSが位置している方向に関する情報)を算出することができる。つまり、制御装置4は、ワークWの中心軸CSと回転軸3522とのずれである偏心誤差に関する偏心誤差情報を生成することができる。
【0152】
尚、制御装置4は、ワークWの輪郭から回転軸3522を求め、求められた回転軸3522の変位から偏心誤差を求めてもよい。
【0153】
生成された偏心誤差情報は、上述した加工動作を行うために制御装置4によって参照されてもよい。つまり、偏心誤差情報は、加工光ELをワークWに照射することでワークWを加工する加工期間中に、制御装置4によって参照されてもよい。具体的には、制御装置4は、偏心誤差情報に基づいて、偏心誤差が生じている場合であっても、偏心誤差が生じていない場合と同様にワークWを加工することができるように、加工システムSYSを制御してもよい。例えば、制御装置4は、偏心誤差情報に基づいて、偏心誤差が生じている場合であっても、偏心誤差が生じていない場合と同様にワークWの表面に加工光ELが照射されるように、加工光ELの照射位置を制御してもよい。尚、加工光ELをワークWに照射することでワークWを加工する加工期間中に制御装置4が偏心誤差情報を参照するために、偏心誤差情報の生成動作は加工動作よりも先に行われていてもよい。
【0154】
偏心誤差情報に基づいて制御される加工光ELの照射位置の一例が
図30に示されている。
図30は、回転軸3522に対してねじれの方向からワークWの端点(具体的には、回転軸3522に交差するY軸方向における端に位置する端点PY)に加工光ELが照射される例を示している。
図30に示すように、偏心誤差が生じている場合には、ワークWの回転に合わせて端点PYのY軸方向における位置が変動する。この場合、制御装置4は、端点PYに加工光ELが照射されるように、Y軸方向に沿って加工光ELの照射位置(この場合、集光位置)を制御してもよい。例えば、制御装置7は、ガルバノミラー1214を制御することで、Y軸方向に沿って加工光ELの照射位置(この場合、集光位置)を制御してもよい。その結果、偏心誤差情報を用いない場合と比較して、加工システムSYSは、ワークWをより高精度に加工することができる。
【0155】
(2-2-3-2)偏角誤差情報を生成する動作
続いて、
図31を参照しながら、偏角誤差情報を生成するための動作について説明する。
図31は、偏角誤差情報を生成するための動作の流れを示すフローチャートである。
【0156】
図31に示すように、加工システムSYSは、偏心誤差情報を生成する動作でも行われる上述したステップS51からステップS54の動作を行う。但し、加工システムSYSは、上述したステップS51からステップS54の動作を、ワークWの異なる複数の位置(例えば、二つの位置)において行う。具体的には、偏角誤差が生じているワークWを示す上面図である
図32に示すように、加工システムSYSは、計測装置2を用いてワークWの第1の計測対象部分W21を計測する動作(ステップS52)と、回転装置35を用いてワークWを所定角度だけ回転させる動作(ステップS54)とを、ワークWが必要角度だけ回転するまで繰り返す(ステップS53)。つまり、加工システムSYSは、第1の計測対象部分W21が存在するワークWの第1位置P1において、ステップS51からステップS54の動作を行う。その後、加工システムSYSは、ステージ32を回転軸3522に沿って移動させる。この際、加工システムSYSは、計測装置2がワークWの第2の計測対象部分W22を計測することができるように、ステージ32を移動させる(ステップS62)。ステージ32が回転軸3522に沿って移動しているため、回転軸3522に沿った方向における第2の計測対象部分W22の位置は、回転軸3522に沿った方向における第1の計測対象部分W21の位置とは異なる。その後、加工システムSYSは、計測装置2を用いてワークWの第2の計測対象部分W22を計測する動作(ステップS52)と、回転装置35を用いてワークWを所定角度だけ回転させる動作(ステップS54)とを、ワークWが必要角度だけ回転するまで繰り返す(ステップS53)。つまり、加工システムSYSは、第2の計測対象部分W22が存在するワークWの第2位置P2において、ステップS51からステップS54の動作を行う。以上の動作が、ワークWの他の位置においてステップS51からステップS54の動作を行う必要がないと判定されるまで繰り返される(ステップS61)。
【0157】
その後、制御装置4は、ステップS52におけるワークWの計測結果に基づいて、偏角誤差情報を生成する(ステップS63)。具体的には、制御装置4は、ステップS52におけるワークWの計測結果に基づいて、回転軸3522に沿って異なる複数の位置のそれぞれにおける偏心誤差を算出する。例えば、
図32に示すように、制御装置4は、第1の位置P1における偏心誤差と、第2の位置P2における偏心誤差を算出する。その後、制御装置4は、算出した複数の偏心誤差に基づいて、偏角誤差(例えば、中心軸CSと回転軸3522とがなす角度)を算出する。つまり、制御装置4は、ワークWの中心軸CSと回転軸3522とのずれである偏角誤差に関する偏角誤差情報を生成することができる。
【0158】
生成された偏角誤差情報は、上述した加工動作を行うために制御装置4によって参照されてもよい。尚、偏角誤差情報を用いた制御方法は、偏心誤差情報を用いた制御方法と同じであってもよいため、その詳細な説明を省略する。その結果、偏角誤差情報を用いない場合と比較して、加工システムSYSは、ワークWをより高精度に加工することができる。尚、加工光ELをワークWに照射することでワークWを加工する加工期間中に制御装置4が偏角誤差情報を参照するために、偏角誤差情報の生成動作は加工動作よりも先に行われていてもよい。
【0159】
また、第3の軸情報生成動作と同様の動作によって組み付け誤差情報(特に、チャック353を回転シャフト352に取り付けるときの組み付け誤差)が生成されてもよい。
【0160】
(2-3)光状態情報生成動作
続いて、計測装置36を用いて加工光ELの状態に関する光状態情報を生成するための光状態情報生成動作について説明する。本実施形態では、光状態情報は、例えば、加工光ELの照射軸EXに対する角度方向の強度分布に関する強度分布情報を含んでいてもよい。光状態情報は、例えば、加工光ELの進行方向に関する進行方向情報を含んでいてもよい。光状態情報は、例えば、加工光ELの進行方向と交差する面内で加工光ELが通過する位置に関する通過位置情報を含んでいてもよい。このため、以下では、強度分布情報を生成する動作と、進行方向情報を生成する動作と、通過位置情報を生成する動作とについて順に説明する。
【0161】
(2-3-1)強度分布情報を生成する動作
はじめに、加工光ELの照射軸EXに対する角度方向の強度分布に関する強度分布情報を生成する動作について説明する。
【0162】
強度分布情報を生成するために、加工システムSYSは、計測装置36を用いて加工光ELの強度分布を計測する。以下、
図33(a)から
図33(c)を参照しながら、計測装置36を用いて加工光ELの強度分布を計測する動作について説明する。
図33(a)は、加工ヘッド12が加工光ELを計測装置36に照射する様子を示す断面図であり、
図33(b)は、加工ヘッド12が加工光ELを計測装置36に照射する様子を示す平面図であり、
図33(c)は、計測装置36が備える受光素子362による加工光ELの受光結果を示すグラフである。
【0163】
図33(a)及び
図33(b)に示すように、制御装置4は、ステージ駆動系33を制御することで、加工光ELが通過可能な通過領域365を構成するマーク366に加工ヘッド12が加工光ELを照射可能となる位置にステージ32を移動させる(つまり、計測装置36が配置されている回転装置35を移動させる)。つまり、制御装置4は、マーク366が加工ショット領域PSA内に位置するように、ステージ32を移動させる。この際、制御装置4は、ステージ32に加えて又は代えて、加工ヘッド12を移動させてもよい。その後、制御装置4は、マーク366に対して加工光ELを照射するように加工ヘッド12を照射する。
【0164】
この際、
図33(a)及び
図33(b)に示すように、加工ヘッド12は、制御装置4の制御下で、ガルバノミラー1214を用いて加工光ELを偏向することで、加工光ELに計測装置36の表面の少なくとも一部(具体的には、マーク366が形成されている部分を含む面)を走査させる。特に、加工ヘッド12は、XY平面に沿った面内において加工光EL(より具体的には、加工光ELの目標照射領域EA)がマーク366を構成する通過領域365を横切るように、加工光ELに計測装置36の表面の少なくとも一部を走査させる。尚、制御装置4の制御下でステージ32を移動させることにより、加工光ELに計測装置36の表面の少なくとも一部を走査させてもよい。
【0165】
その結果、加工光ELが計測装置36の表面の少なくとも一部を走査している期間中のあるタイミングで加工光ELがマーク366に照射されることになる。つまり、加工光ELが計測装置36の表面の少なくとも一部を走査している期間中のあるタイミングで加工光ELが受光素子362によって受光される。その結果、制御装置4は、
図33(c)に示すように、加工光ELがマーク366を構成する通過領域365に照射されていない期間中の加工光ELの強度と比較して、加工光ELの少なくとも一部が通過領域365に照射されている期間中の加工光ELの強度が大きくなっていることを示す受光信号を、加工光ELの受光結果に相当する加工光計測情報として取得する。つまり、制御装置4は、加工光ELの強度分布に関する情報を、加工光計測情報として取得することができる。この場合、計測装置36は、加工光ELの強度分布を計測しているとも言える。尚、
図33(c)の横軸である時間(受光タイミング)は、加工光ELと計測装置36との走査方向(Y軸方向)に沿った相対的な位置に読み替えることができる。
【0166】
加工システムSYSは、加工光ELを計測する動作を、加工光ELの進行方向に沿った照射軸EXに沿った方向において計測装置36と加工ヘッド12との相対的な位置関係を変更しながら繰り返す。具体的には、制御装置4は、加工ヘッド12に対する計測装置36の位置が第1の位置となるように、加工ヘッド12及びステージ32の少なくとも一方を移動させる。その後、計測装置36は、加工光ELを計測する。その後、制御装置4は、加工ヘッド12に対する計測装置36の位置が、照射軸EXに沿った方向において第1の位置とは異なる第2の位置となるように、加工ヘッド12及びステージ32の少なくとも一方を移動させる。典型的には、制御装置4は、照射軸EXに沿って(
図33(a)に示す例では、Z軸方向に沿って)加工ヘッド12及びステージ32の少なくとも一方を移動させる。その後、計測装置36は、加工光ELを計測する。つまり、計測装置36は、照射軸EXに沿った方向(つまり、加工光ELが進行する方向)における第1の位置で加工光ELを計測し、照射軸EXに沿った方向(つまり、加工光ELが進行する方向)において第1の位置とは異なる第2の位置で加工光ELを計測する。ここで、照射軸EXに沿った方向における加工光ELの集光位置と計測装置36との距離の変更は、集光位置変更光学系1210による変更であってもよい。
【0167】
その後、制御装置4は、加工光計測情報に基づいて、加工光ELの強度分布に関する強度分布情報を生成する。具体的には、加工光計測情報は、ビーム通過部材361の表面上における加工光ELの強度分布を示している。ここで、加工光ELを計測する動作は、照射軸EXに沿った方向において計測装置36と加工ヘッド12との相対的な位置関係を変更しながら繰り返される。このため、加工光ELを示す断面図である
図34に示すように、加工光計測情報は、照射軸EXに交差すると共に照射軸EXに沿った方向における位置が異なる複数の面PN上における加工光ELの強度分布を示している。制御装置4は、照射軸EXに沿った方向における位置が異なる複数の面PN上における加工光ELの強度分布を合成して、合成された3次元的な強度分布から加工光ELの照射軸EXに対する角度方向の強度分布に関する強度分布情報を生成してもよい。或いは、制御装置4は、照射軸EXに沿った方向における位置が異なる複数の面上における加工光ELの強度分布に基づいて、複数の面の間における加工光ELの強度分布PNを推定する(言い換えれば、補完する)して、加工光ELの照射軸EXに対する角度方向の強度分布に関する強度分布情報を生成してもよい。
【0168】
或いは、加工システムSYSは、加工光ELを計測する際に、照射軸EXに沿った方向において計測装置36と加工ヘッド12との相対的な位置関係を変更しなくてもよい。具体的には、制御装置4は、照射軸EXに沿った方向において加工光ELの集光位置がマーク366を構成する通過領域365から離れるように、加工光ELの集光位置と計測装置36との相対的な位置関係を制御してもよい。つまり、制御装置4は、照射軸EXに沿った方向において加工光ELの集光位置とは異なる位置において計測装置36が加工光ELを計測するように、加工光ELの集光位置と計測装置36との相対的な位置関係を制御してもよい。言い換えれば、制御装置4は、デフォーカスされた加工光ELがマーク366に照射されるように、加工光ELの集光位置と計測装置36との相対的な位置関係を制御してもよい。
【0169】
その後、制御装置4は、加工光計測情報に基づいて、加工光ELの強度分布に関する強度分布情報を生成する。具体的には、加工光計測情報は、受光素子362の受光面3621上における加工光ELの強度分布を示していることは上述したとおりである。更に、照射軸EXに沿った方向における加工光ELの集光位置と計測装置36との間の距離(いわゆる、デフォーカス量)は、制御装置4にとって既知の情報である。なぜならば、制御装置4は、照射軸EXに沿った方向において加工光ELの集光位置がマーク366を構成する通過領域365から離れるように、加工光ELの集光位置と計測装置36との相対的な位置関係を制御しているからである。その結果、制御装置4は、加工光計測情報が示す加工光ELの強度分布とデフォーカス量とに基づいて、照射軸EXに沿った方向における位置が異なる複数の面上における加工光ELの強度分布を推定する(言い換えれば、補完する)ことができる。つまり、制御装置4は、加工光ELの照射軸EXに対する角度方向の強度分布に関する強度分布情報を生成することができる。
【0170】
生成された強度分布情報は、上述した加工動作を行うために制御装置4によって参照されてもよい。つまり、強度分布情報は、加工光ELをワークWに照射することでワークWを加工する加工期間中に、制御装置4によって参照されてもよい。尚、加工光ELをワークWに照射することでワークWを加工する加工期間中に制御装置4が強度分布情報を参照するために、強度分布情報の生成動作は加工動作よりも先に行われていてもよい。
【0171】
例えば、制御装置4は、強度分布情報に基づいて、ワークWの所望位置に加工光ELが照射されるように、加工光ELの照射位置及び加工光ELの進行方向の少なくとも一方を制御してもよい。この場合、制御装置4は、ガルバノミラー1214を制御することで、加工光ELの照射位置及び加工光ELの進行方向の少なくとも一方を制御してもよい。
【0172】
例えば、制御装置4は、強度分布情報に基づいて加工光ELの開き角を算出し、算出した開き角に基づいて、加工光ELの開き角が所望の角度となるように、加工光ELの開き角を制御してもよい。この場合、制御装置4は、開き角変更光学系1211を制御することで、加工光ELの開き角を制御してもよい。このような開き角の制御は、例えば、回転軸3522に対してねじれの方向からワークWに加工光ELが照射される場合に行われてもよい。例えば、回転軸3522に対してねじれの方向からワークWに照射される加工光ELを示す断面図である
図35(a)に示すように、加工光ELの開き角が大きい場合には、加工光ELは、ワークWの表面のうちの加工光ELを照射するべき部分のみならず、ワークWの表面のうちの加工光ELを照射するべきでない部分にまで意図せず照射されてしまう可能性がある。つまり、ワークWの表面のうちの加工光ELを照射するべきでない部分にまで加工光ELが意図せず照射されてしまう可能性がある。そこで、開き角が制御された加工光ELを示す断面図である
図35(b)に示すように、制御装置4は、加工光ELの開き角を小さくしてもよい。その結果、ワークWの表面のうちの加工光ELを照射するべきでない部分に加工光ELが照射される可能性が低減される。
【0173】
また、制御装置4は、開き角変更光学系1211による加工光ELの開き角変更動作を行った後に、強度分布情報の生成動作を行ってもよい。制御装置4は、この生成動作で得られた強度分布情報に基づいて、加工光ELの開き角を制御してもよい。
【0174】
尚、加工ヘッド12は、制御装置4の制御下で、長手方向が異なる複数のスリット形状を有するマーク366に加工光ELを照射してもよい。例えば、加工ヘッド12は、制御装置4の制御下で、長手方向が交差する(典型的には、直交する)複数のマーク366に加工光ELを照射してもよい。この場合、制御装置4は、加工光計測情報に基づいて、加工光ELの楕円率を算出することができる。制御装置4は、算出した楕円率に基づいて、加工光ELの楕円率が所望の楕円率となるように、加工光ELの楕円率を制御してもよい。この場合、制御装置4は、楕円率変更光学系1212を制御することで、加工光ELの楕円率を制御してもよい。また、制御装置4は、算出した楕円率に基づいて、fθレンズ1215の入射瞳面での加工光ELのスポットの直径のうち最大値をとる方向が所望方向となるように、加工光ELを光軸AX廻りに(特に、照射軸EX廻りに)回転させてもよい。この場合、制御装置4は、光回転光学系1213を制御することで、加工光ELを光軸AX廻りに(特に、照射軸EX廻りに)回転させてもよい。尚、制御装置4は、光回転光学系1213による加工光の楕円率変更動作を行った後に、強度分布情報の生成動作を行ってもよい。制御装置4は、この生成動作で得られた強度分布情報に基づいて、加工光ELの楕円率を制御してもよい。
【0175】
(2-3-2)進行方向情報を生成する動作
続いて、加工光ELの進行方向(つまり、照射軸EXの延びる方向)に関する進行方向情報を生成する動作について説明する。進行方向情報を生成するために、加工システムSYSは、計測装置36を用いて加工光ELを計測する。
【0176】
具体的には、加工光ELを計測する計測装置36を示す断面図である
図36に示すように、制御装置4は、加工ヘッド12から加工光ELが射出されている期間中に、計測装置36が加工光ELを計測できるように(つまり、受光素子362が加工光ELを受光できるように)、ステージ32を移動させる(つまり、計測装置36が配置されている回転装置35を移動させる)。この際、加工ヘッド12は、ガルバノミラー1214を用いて加工光ELを偏向しなくてもよい。制御装置4は、計測装置36が加工光ELを計測したときのステージ32の位置(つまり、計測装置36の位置)に関する情報を、位置計測装置34から取得する。
【0177】
その後、制御装置4は、計測対象である加工光ELの進行方向がZ軸に沿った方向である(つまり、照射軸EXがZ軸に沿っている)と仮定した上で、照射軸EXに沿った方向(つまり、Z軸方向)に沿ってステージ32を移動させる。つまり、制御装置4は、照射軸EXに沿った方向(つまり、Z軸方向)に沿って計測装置36を移動させる。尚、制御装置4は、ステージ32をZ軸方向に移動させることに代えて又は加えて、加工ヘッド12をZ軸方向に移動させてもよい。その結果、計測装置36は、前回加工光ELを計測した位置と照射軸EXに沿った方向(つまり、Z軸方向)において異なる位置から、加工光ELを再び計測する。つまり、計測装置36は、照射軸EXに沿った方向(つまり、Z軸方向)における第1の位置で加工光ELを計測し、照射軸EXに沿った方向(つまり、Z軸方向)において第1の位置とは異なる第2の位置で加工光ELを計測する。この際、計測対象である加工光ELの進行方向が実際にZ軸に沿った方向である場合には、照射軸EXに沿った方向(つまり、Z軸方向)に沿って計測装置36が移動しても、計測装置36は、加工光ELを計測することができる。一方で、加工光ELを計測する計測装置36を示す断面図である
図37に示すように、計測対象である加工光ELの進行方向が実際にはZ軸に沿った方向ではない(つまり、加工光ELの進行方向がZ軸に対して傾斜している)場合には、照射軸EXに沿った方向(つまり、Z軸方向)に沿って計測装置36が移動するだけでは、計測装置36は、加工光ELを計測することができない可能性がある。このため、加工光ELを計測する計測装置36を示す断面図である
図38に示すように、制御装置4は、計測装置36が加工光ELを計測できるように(つまり、受光素子362が加工光ELを受光できるように)、照射軸EXに沿った方向(つまり、Z軸方向)に加えて、照射軸EXに交差する方向(例えば、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方)に沿ってステージ32を移動させてもよい。制御装置4は、計測装置36が加工光ELを計測したときのステージ32の位置(つまり、計測装置36の位置)に関する情報を、位置計測装置34から取得する。
【0178】
その後、制御装置4は、計測装置36が加工光ELを計測したときの計測装置36の位置に関する情報に基づいて、加工光ELの進行方向に関する進行方向情報を生成する。具体的には、制御装置4は、照射軸EXに沿った方向(つまり、Z軸方向)に沿って計測装置36を移動させる前に計測装置36が加工光ELを計測したときの計測装置36の位置(以下、“第1計測位置”と称する)に関する情報と、照射軸EXに沿った方向(つまり、Z軸方向)に沿って計測装置36を移動させた後に計測装置36が加工光ELを計測したときの計測装置36の位置(以下、“第2計測位置”と称する)に関する情報とに基づいて、進行方向情報を生成する。例えば、制御装置4は、照射軸EXに交差する方向(例えば、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方)における第1及び第2計測位置に基づいて、進行方向情報を生成してもよい。具体的には、照射軸EXに交差する方向(例えば、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方)において第1計測位置と第2計測位置とが同じ位置にある場合には、加工光ELの進行方向は、Z軸に沿った方向であると推定される。一方で、照射軸EXに交差する方向(例えば、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方)において第1計測位置と第2計測位置とが異なる位置にある場合には、加工光ELの進行方向は、Z軸に対して傾斜した方向であると推定される。この場合、加工光ELの進行方向のZ軸に対する傾斜量は、照射軸EXに交差する方向(例えば、X軸方向及びY軸方向の少なくとも一方)における第1及び第2計測位置の間の距離と、照射軸EXに沿った方向(つまり、Z軸方向)における第1及び第2計測位置の間の距離とから算出可能である。このように、制御装置4は、進行方向情報を生成する。
【0179】
生成された進行方向情報は、上述した加工動作を行うために制御装置4によって参照されてもよい。つまり、進行方向情報は、加工光ELをワークWに照射することでワークWを加工する加工期間中に、制御装置4によって参照されてもよい。例えば、制御装置4は、進行方向情報に基づいて、ワークWの所望位置に加工光ELが照射されるように、加工光ELの照射位置及び加工光ELの進行方向の少なくとも一方を制御してもよい。この場合、制御装置4は、ガルバノミラー1214を制御することで、加工光ELの照射位置及び加工光ELの進行方向の少なくとも一方を制御してもよい。尚、加工光ELの照射位置及び加工光ELの進行方向を制御するために、ガルバノミラー1214として米国特許出願公開第2018/0169788号明細書に開示される装置を用いてもよい。また、加工光ELをワークWに照射することでワークWを加工する加工期間中に制御装置4が進行方向情報を参照するために、進行方向情報の生成動作は加工動作よりも先に行われていてもよい。
【0180】
(2-3-3)通過位置情報を生成する動作
続いて、加工光ELの進行方向と交差する面内で加工光ELが通過する位置に関する通過位置情報を生成する動作について説明する。通過位置情報を生成するために、加工システムSYSは、計測装置36を用いて加工光ELを計測する。
【0181】
具体的には、加工光ELを計測する計測装置36を示す断面図である
図39に示すように、制御装置4は、加工ヘッド12に対する加工光ELの照射位置が複数個所に設定されるように、加工ヘッド12を制御する。この場合、制御装置4は、例えば、ガルバノミラー1214を用いて加工光ELを偏向することで、加工ヘッド12に対する加工光ELの照射位置を変更してもよい。例えば、制御装置4は、加工ヘッド12に対する加工光ELの照射位置を第1の照射位置IP#1に設定するように、加工ヘッド12を制御してもよい。加工ヘッド12に対する加工光ELの照射位置が第1の照射位置IP#1となる期間中に、計測装置36は、加工光ELを計測する。制御装置4は、第1の照射位置IP#1に照射された加工光ELを計測装置36が計測したときのステージ32の位置(つまり、計測装置36の位置)に関する情報を、位置計測装置34から取得する。その後、制御装置4は、加工ヘッド12に対する加工光ELの照射位置を第2の照射位置IP#2に設定するように、加工ヘッド12を制御してもよい。第2の照射位置IP#2は、例えば、加工光ELの進行方向と交差する面(例えば、XY平面に沿った面)に沿った方向において、第1の照射位置IP#1とは異なる。加工ヘッド12に対する加工光ELの照射位置が第2の照射位置IP#2となる期間中に、計測装置36は、加工光ELを計測する。制御装置4は、第2の照射位置IP#2に照射された加工光ELを計測装置36が計測したときのステージ32の位置(つまり、計測装置36の位置)に関する情報を、位置計測装置34から取得する。
【0182】
計測装置36は、複数のマーク366を介して、複数の照射位置に照射される加工光ELを計測してもよい。例えば、計測装置36は、第1のマーク366(例えば、
図39中のマーク366#1)を介して、第1の照射位置IP#1に照射される加工光ELを計測してもよい。例えば、計測装置36は、第2のマーク366(例えば、
図39中のマーク366#2)を介して、第2の照射位置IP#2に照射される加工光ELを計測してもよい。この場合、計測装置36は、複数の照射位置に照射される加工光ELを計測する期間中に、加工光ELの進行方向と交差する面(例えば、XY平面に沿った面)内において移動しなくてもよい。但し、計測装置36は、複数の照射位置に照射される加工光ELを計測する期間の少なくとも一部において、加工光ELの進行方向と交差する面(例えば、XY平面に沿った面)内において移動してもよい。
【0183】
或いは、計測装置36は、単一のマーク366を介して、複数の照射位置に照射される加工光ELを計測してもよい。例えば、制御装置4は、マーク366が第1の照射位置IP#1に位置するように、ステージ32(つまり、計測装置36)を第1のステージ位置に移動させてもよい。マーク366が第1の照射位置IP#1に位置する期間中に、計測装置366は、マーク366を介して、第1の照射位置IP#1に照射される加工光ELを計測する。その後、制御装置4は、マーク366が第2の照射位置IP#2に位置するように、ステージ32(つまり、計測装置36)を第1のステージ位置とは異なる第2のステージ位置に移動させてもよい。マーク366が第2の照射位置IP#2に位置する期間中に、計測装置366は、マーク366を介して、第2の照射位置IP#2に照射される加工光ELを計測する。
【0184】
その後、制御装置4は、計測装置36が加工光ELを計測したときの計測装置36の位置に関する情報に基づいて、加工光ELの進行方向と交差する面内で加工光ELが通過する位置に関する通過位置情報を生成する。生成された通過位置情報は、上述した加工動作を行うために制御装置4によって参照されてもよい。つまり、通過位置情報は、加工光ELをワークWに照射することでワークWを加工する加工期間中に、制御装置4によって参照されてもよい。例えば、制御装置4は、通過位置情報に基づいて、ワークWの所望位置に加工光ELが照射されるように、加工光ELの照射位置及び加工光ELの進行方向の少なくとも一方を制御してもよい。この場合、制御装置4は、ガルバノミラー1214を制御することで、加工光ELの照射位置及び加工光ELの進行方向の少なくとも一方を制御してもよい。尚、加工光ELをワークWに照射することでワークWを加工する加工期間中に制御装置4が通過位置情報を参照するために、通過位置情報の生成動作は加工動作よりも先に行われていてもよい。
【0185】
複数の照射位置に照射される加工光ELを計測するために複数のマーク366が用いられる場合には、複数のマーク366の位置関係と回転軸3522とは、所定の関係にあってもよい。つまり、複数のマーク366と回転軸3522との相対的な位置関係は、制御装置4にとって既知の情報であってもよい。この場合、制御装置4は、通過位置情報と、複数のマーク366と回転軸3522との相対的な位置関係に関する情報とに基づいて、回転軸3522と加工光ELの照射位置との関係を特定することができる。その結果、制御装置4は、回転軸3522廻りに回転するワークWの所望位置に加工光ELを照射することができる。
【0186】
複数の照射位置に照射される加工光ELを計測するために単一のマーク366が用いられる場合には、ステージ32が移動することは上述したとおりである。この場合、ステージ32の移動面(つまり、ステージ32が移動する、加工光ELの進行方向に交差する面)と回転軸3522とは、所定の関係にあってもよい。つまり、ステージ32の移動面と回転軸3522との相対的な位置関係は、制御装置4にとって既知の情報であってもよい。この場合、制御装置4は、通過位置情報と、ステージ32の移動面と回転軸3522との相対的な位置関係に関する情報とに基づいて、回転軸3522と加工光ELの照射位置との関係を特定することができる。その結果、制御装置4は、回転軸3522廻りに回転するワークWの所望位置に加工光ELを照射することができる。
【0187】
(2-4)原点情報生成動作
続いて、計測装置36を用いて加工装置1の加工原点POと計測装置2の計測原点MOとに関する原点情報を生成するための原点情報動作について説明する。原点情報は、加工原点POと計測原点MOとの間の距離に関する情報を含んでいてもよい。原点情報は、加工システムSYSの装置原点AO(例えば、ステージ32の位置を制御するために用いられるステージ座標系の原点)と加工原点POとの間の距離に関する情報を含んでいてもよい。原点情報は、装置原点AOと計測原点MOとの間の距離に関する情報を含んでいてもよい。加工原点POは、加工ショット領域PSAの中心とステージ32の基準位置(例えば、中心)とが一致し且つ加工光ELの集光位置がステージ32の表面に一致する場合のステージ32の位置に相当する。計測原点MOは、計測ショット領域MSAの中心とステージ32の基準位置(例えば、中心)とが一致し且つ計測光MLの集光位置がステージ32の表面に一致する場合のステージ32の位置に相当する。
【0188】
尚、以下の説明では、加工原点POと計測原点MOとの間の距離は、“相対ベースラインBLrlt”と称し、装置原点AOと加工原点POとの間の距離は、“加工ベースラインBLprc”と称し、装置原点AOと計測原点MOとの間の距離は、“計測ベースラインBLmsr”と称する。相対ベースラインBLrlt、加工ベースラインBLprc及び計測ベースラインBLmsrの一例が、
図40(a)及び
図40(b)に示されている。
図40(a)及び
図40(b)に示すように、相対ベースラインBLrltは、X軸方向における加工原点POと計測原点POとの間の距離に相当する成分ΔXrltと、Y軸方向における加工原点POと計測原点POとの間の距離に相当する成分ΔYrltと、Z軸方向における加工原点POと計測原点POとの間の距離に相当する成分ΔZrltとの少なくとも一つを含んでいてもよい。加工ベースラインBLprcは、X軸方向における装置原点AOと加工原点POとの間の距離に相当する成分ΔXprcと、Y軸方向における装置原点AOと加工原点POとの間の距離に相当する成分ΔYprcと、Z軸方向における装置原点AOと加工原点POとの間の距離に相当する成分ΔZprcとの少なくとも一つを含んでいてもよい。計測ベースラインBLmsrは、X軸方向における装置原点AOと計測原点MOとの間の距離に相当する成分ΔXmsrと、Y軸方向における装置原点AOと計測原点MOとの間の距離に相当する成分ΔYmsrと、Z軸方向における装置原点AOと計測原点MOとの間の距離に相当する成分ΔZmsrとの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0189】
原点情報を生成するために、制御装置4は、装置原点AOを設定してもよい。但し、原点情報が装置原点AOに関する情報を含んでいない場合には、制御装置4は、装置原点AOを設定しなくてもよい。装置原点AOを設定するために、制御装置4は、装置原点AOを定義するために回転装置35(或いは、ステージ32等のその他の部材)に形成された基準マークを計測するように、計測ヘッド21を制御する。本実施形態では、装置原点AOは、基準マークに対して所定の位置関係を有する位置に設定される。この場合、制御装置4は、基準マークを計測ヘッド21が計測したときのステージ32の位置に関する情報を位置計測装置34から取得する。その後、制御装置4は、取得したステージ32の位置と所定の位置関係を有する位置を、装置原点AOに設定してもよい。
【0190】
その後、制御装置4は、加工原点PO及び計測原点MOのそれぞれの位置を算出する。
【0191】
計測原点MOの位置を算出するために、制御装置4は、計測ヘッド21によるマーク366の計測結果を取得する。具体的には、制御装置4は、ステージ駆動系33を制御することで、計測装置36の基準(例えば、マーク366)が計測ショット領域MSAの中心に位置するように、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに沿ってステージ32を移動させる(つまり、計測装置36を移動させる)。更に、制御装置4は、計測光MLの集光位置が回転装置35の表面(具体的には、回転装置35に配置された計測装置36の表面)に一致するように、Z軸方向に沿ってステージ32を移動させる。この際、制御装置4は、ヘッド駆動系22を制御することで計測ヘッド21を移動させてもよいし、計測ヘッド21を移動させなくてもよい。その後、計測ヘッド21は、マーク366を計測する。更に、制御装置4は、計測ヘッド21がマーク366を計測した時点でのステージ32の位置(つまり、計測装置36の位置)を位置計測装置34から取得する。ここで取得したステージ32の位置は、計測原点MOの位置に対応する。従って、制御装置4は、計測ヘッド21がマーク366を計測した時点でのステージ32の位置と装置原点AOとの間の距離を算出し、算出した距離に基づいて計測ベースラインBLmsrを算出することができる。制御装置4は、計測ヘッド21がマーク366を計測した時点でのステージ32の位置と後述する方法で位置が算出される加工原点POとの間の距離を算出し、算出した距離に基づいて相対ベースラインBLrltを算出することができる。
【0192】
相対ベースラインBLrlt及び計測ベースラインBLmsrの少なくとも一方が算出された後には、制御装置4は、計測ヘッド21がワークW等を計測する期間中に、相対ベースラインBLrlt及び計測ベースラインBLmsrの少なくとも一方に基づいてステージ32及び計測ヘッド21の少なくとも一方を移動させてもよい。つまり、制御装置4は、計測ヘッド21がワークW等を計測する期間中に、相対ベースラインBLrlt及び計測ベースラインBLmsrの少なくとも一方に基づいてステージ32及び計測ヘッド21の少なくとも一方の位置を制御してもよい。その結果、計測ショット領域MSAは、装置原点AOを基準とするステージ座標系内の適切な位置に設定可能となる。つまり、加工システムSYSaは、計測装置2によるワークWの適切な計測結果に基づいて、ワークWを適切に加工することができる。
【0193】
続いて、加工原点POの位置を算出するために、制御装置4は、マーク366を構成する通過領域365を介した加工光ELの計測装置36による計測結果(つまり、加工光計測情報)を取得する。具体的には、制御装置4は、ステージ駆動系33を制御することで、計測装置36の基準(例えば、マーク366)が加工ショット領域PSAの中心に位置するように、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに沿ってステージ32を移動させる(つまり、計測装置36を移動させる)。更に、制御装置4は、加工光ELの集光位置が回転装置35の表面(具体的には、回転装置35に配置された計測装置36の表面)に一致するように、Z軸方向に沿ってステージ32を移動させる。この際、制御装置4は、ヘッド駆動系13を制御することで加工ヘッド12を移動させてもよいし、加工ヘッド12を移動させなくてもよい。その後、加工ヘッド12は、マーク366に加工光ELを照射する。その結果、受光素子362は、マーク366を構成する通過領域365を介した加工光ELを受光する。制御装置4は、受光素子362が加工光ELを受光した時点でのステージ32の位置(つまり、計測装置36の位置)を位置計測装置34から取得する。ここで取得したステージ32の位置は、加工原点POの位置に対応する。従って、制御装置4は、受光素子362がマーク366を介した加工光ELを受光した時点でのステージ32の位置と装置原点AOとの間の距離を算出し、算出した距離に基づいて加工ベースラインBLprcを算出することができる。制御装置4は、受光素子362がマーク366を介した加工光ELを受光した時点でのステージ32の位置と上述した方法で位置が算出される計測原点MOとの間の距離を算出し、算出した距離に基づいて相対ベースラインBLrltを算出することができる。
【0194】
相対ベースラインBLrlt及び加工ベースラインBLprcの少なくとも一方が算出された後には、制御装置4は、加工ヘッド12がワークW等を加工する期間中に、相対ベースラインBLrlt及び加工ベースラインBLprcの少なくとも一方に基づいてステージ32及び加工ヘッド12の少なくとも一方を移動させてもよい。つまり、制御装置4は、加工ヘッド12がワークW等を加工する期間中に、相対ベースラインBLrlt及び加工ベースラインBLprcの少なくとも一方に基づいてステージ32及び加工ヘッド12の少なくとも一方の位置を制御してもよい。その結果、加工ショット領域PSAは、装置原点AOを基準とするステージ座標系内の適切な位置に設定可能となる。つまり、加工システムSYSaは、ワークWを適切に加工することができる。
【0195】
(3)加工システムSYSの技術的効果
以上説明した加工システムSYSは、加工光ELを用いてワークWを適切に加工することができる。更に、加工システムSYSは、計測光MLを用いてワークWを適切に計測することができる。
【0196】
特に、加工システムSYSは、計測光MLを用いて上述した回転軸情報を生成し、回転軸情報に基づいてワークWを加工することができる。このため、加工システムSYSは、回転軸情報を用いることなくワークWを加工する場合と比較して、回転するように保持されたワークWを適切に加工することができる。
【0197】
更に、加工システムSYSは、計測装置36を用いて上述した光状態情報を生成し、光状態情報に基づいてワークWを加工することができる。このため、加工システムSYSは、光状態情報を用いることなくワークWを加工する場合と比較して、加工光ELを用いてワークWを適切に加工することができる。
【0198】
更に、加工システムSYSは、計測装置36を用いて上述した原点情報を生成し、原点情報に基づいてワークWを加工することができる。このため、加工システムSYSは、原点情報を用いることなくワークWを加工する場合と比較して、加工光ELを用いてワークWを適切に加工することができる。
【0199】
(4)変形例
続いて、加工システムSYSの変形例について説明する。
【0200】
(4-1)第1変形例
初めに、
図41を参照しながら、第1変形例の加工システムSYS(以降、第1変形例の加工システムSYSを、“加工システムSYSa”と称する)について説明する。
図41は、第1変形例の加工システムSYSaの外観を模式的に示す斜視図である。
【0201】
図41に示すように、第1変形例の加工システムSYSaは、計測ヘッド21の計測軸MXが、加工光ELの進行方向に沿った照射軸EXと交差するという点で、計測軸MXが照射軸EXと平行になる上述した加工システムSYSとは異なる。尚、
図41に示す例では、照射軸EXがZ軸に平行であるが、照射軸EXがZ軸に対して傾斜していてもよい。また、
図41に示す例では、計測軸MXがZ軸に対して傾斜しているが、計測軸EXがZ軸に平行であってもよい。加工システムSYSaのその他の特徴は、加工システムSYSと同一であってもよい。
【0202】
(4-2)第2変形例
続いて、
図42を参照しながら、第2変形例の加工システムSYS(以降、第2変形例の加工システムSYSを、“加工システムSYSb”と称する)について説明する。
図42は、第2変形例の加工システムSYSbの外観を模式的に示す斜視図である。
【0203】
図42に示すように、第2変形例の加工システムSYSbは、計測ヘッド21の計測軸MXが、加工光ELの進行方向に沿った照射軸EXと一致しているという点で、計測軸MXが照射軸EXと一致しない上述した加工システムSYSとは異なる。この場合、第2変形例の加工システムSYSbのシステム構成を示すシステム構成図である
図43に示すように、加工システムSYSbは、加工システムSYSと比較して、加工装置1に代えて加工装置1bを備えているという点で異なる。更に、加工システムSYSbは、加工システムSYSと比較して、計測装置2を備えていなくてもよいという点で異なる。加工システムSYSbのその他の特徴は、加工システムSYSと同一であってもよい。加工装置1bは、加工装置1と比較して、加工ヘッド12に代えて加工ヘッド12bを備えているという点で異なる。加工装置1bのその他の特徴は、加工装置1と同一であってもよい。加工ヘッド12bは、加工ヘッド12と比較して、照射光学系121に代えて照射光学系121bを備えているという点で異なっている。更に、加工ヘッド12bは、加工ヘッド12と比較して、3次元計測装置211を備えているという点で異なっている。加工ヘッド12bのその他の特徴は、加工ヘッド12と同一であってもよい。
【0204】
照射光学系121bの構造が
図44に示されている。
図44に示すように、照射光学系121bは、照射光学系121と比較して、合成光学系1216bを備えている。照射光学系121bのその他の特徴は、照射光学系121と同一であってもよい。合成光学系1216cは、集光位置変更光学系1210、開き角変更光学系1211、楕円率変更光学系1212及び光回転光学系1213を通過した加工光ELと、3次元計測装置211からの計測光MLを合成する。例えば、加工光ELと計測光MLとを合成するために、合成光学系1216bは、偏光ビームスプリッタを備えていてもよい。偏光ビームスプリッタに入射してくる加工光EL及び計測光MLのいずれか一方は、偏光ビームスプリッタの偏光分離面で反射されてもよい。偏光ビームスプリッタに入射してくる加工光EL及び計測光MLのいずれか他方は、偏光ビームスプリッタの偏光分離面を通過してもよい。その結果、偏光ビームスプリッタは、偏光ビームスプリッタに異なる方向から入射してくる加工光EL及び計測光MLを、同じ方向に向けて(具体的には、ガルバノミラー1214に向けて)射出する。このため、加工光ELの照射軸EXと計測光MLの計測軸MXとが一致する。ここで、加工光ELの照射軸EXと計測光MLの計測軸MXとが一致していなくてもよい(つまり、互いに平行で若干横ずれしている関係であってもよい)。また、加工光ELと計測光MLの合成及び分離を、偏光ビームスプリッタではなく、ダイクロイックミラーで行ってもよい。この場合、加工光ELと計測光MLとの波長は互いに異なっていてもよい。
【0205】
尚、加工システムSYSbは、計測装置2を備えていてもよい。
【0206】
(4-3)第3変形例
続いて、
図45を参照しながら、第3変形例の加工システムSYS(以降、第3変形例の加工システムSYSを、“加工システムSYSc”と称する)について説明する。
図45は、第3変形例の加工システムSYScの外観を模式的に示す斜視図である。
【0207】
図45に示すように、第3変形例の加工システムSYScは、回転シャフト3521が重力方向に沿って延びているという点で、回転シャフト3521が重力方向に交差する方向に沿って延びている上述した加工システムSYSとは異なる。加工システムSYScは、回転軸3522が重力方向に沿って延びているという点で、回転軸3522が重力方向に交差する方向に沿って延びている上述した加工システムSYSとは異なる。加工システムSYSaのその他の特徴は、加工システムSYSと同一であってもよい。
【0208】
(4-4)その他の変形例
上述した説明では、加工システムSYSは、加工光ELをワークWに照射することでワークWを加工している。しかしながら、加工システムSYSは、任意のエネルギビームをワークWに照射することで、ワークWを加工してもよい。この場合、加工システムSYSは、加工光源11に加えて又は代えて、任意のエネルギビームを照射可能なビーム源を備えていてもよい。任意のエネルギビームの一例として、荷電粒子ビーム及び電磁波等の少なくとも一方があげられる。荷電粒子ビームの一例として、電子ビーム及びイオンビーム等の少なくとも一方があげられる。
【0209】
上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。上述の各実施形態の要件のうちの一部が用いられなくてもよい。上述の各実施形態の要件は、適宜他の実施形態の要件と置き換えることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態で引用した装置等に関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0210】
また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う加工システムもまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0211】
1 加工装置
11 加工ヘッド
2 計測装置
3 ステージ装置
32 ステージ
35 回転装置
3521 回転シャフト
3522 回転軸
36 計測装置
361 ビーム通過部材
362 受光素子
363 開口
364 減衰領域
365 通過領域
366 マーク
EL 加工光
ML 計測光
W ワーク
SYS 加工システム