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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】光加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/067 20060101AFI20240618BHJP
   B23K 26/03 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B23K26/067
B23K26/03
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2022558672
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2020040446
(87)【国際公開番号】W WO2022091253
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(72)【発明者】
【氏名】須藤 健太
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-214431(JP,A)
【文献】国際公開第94/29069(WO,A1)
【文献】特開2007-14989(JP,A)
【文献】特開昭62-126630(JP,A)
【文献】国際公開第2005/084874(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射する第1光束を複数の光束を含む第2光束に分割する分割光学系と、
前記分割光学系に入射する前記第1光束の光路上、及び前記分割光学系から射出する前記第2光束に含まれる前記複数の光束の光路上の少なくとも一方に配置された変倍光学系と、
前記第2光束を集光させる集光光学系と、
前記分割光学系と前記集光光学系との間の前記第2光束の光路上に配置され、前記第2光束に含まれる前記複数の光束を反射する揺動可能な反射面を有する反射装置と、
を備え、
前記集光光学系からの前記第2光束で物体を加工する、光加工装置。
【請求項2】
請求項に記載の光加工装置において、
前記反射装置の前記反射面は、前記集光光学系により集光面上に集光される前記第2光束に含まれる複数の光束のそれぞれの集光部が並ぶ第1方向と交差する第2方向に沿って前記それぞれの集光部が移動するように揺動する、光加工装置。
【請求項3】
請求項に記載の光加工装置において、
前記分割光学系は、前記それぞれの集光部が、前記第1方向に並ぶように前記第1光束を分割する、光加工装置。
【請求項4】
請求項から請求項までのいずれか一項に記載の光加工装置において、
前記分割光学系から射出される前記第2光束に含まれる前記複数の光束のうち、互いに隣り合う2つの光束のそれぞれの進行方向に沿った軸同士の成す角度は鋭角である、光加工装置。
【請求項5】
請求項から請求項までのいずれか一項に記載の光加工装置において、
前記変倍光学系は、前記分割光学系に入射する前記第1光束の光路上に配置された第1変倍光学系と、前記分割光学系と前記反射装置の間における前記第2光束に含まれる前記複数の光束の光路上に配置された第2変倍光学系を含み、前記第1変倍光学系および前記第2変倍光学系の変倍により、前記集光光学系から射出される前記第2光束に含まれる前記複数の光束のそれぞれの光束の開き角と、前記集光光学系により集光面上に集光される前記第2光束に含まれる前記複数の光束のそれぞれの集光部の間隔とを、独立して変化させる、光加工装置。
【請求項6】
請求項に記載の光加工装置において、
前記第2変倍光学系は、アフォーカル系である、光加工装置。
【請求項7】
請求項から請求項までのいずれか一項に記載の光加工装置において、
前記変倍光学系は、前記分割光学系と前記反射装置の間における前記第2光束に含まれる前記複数の光束の光路上に配置され、変倍により、前記集光光学系から射出される前記第2光束に含まれる前記複数の光束のそれぞれの光束の開き角を変化させるとともに、前記集光光学系により集光面上に集光される前記第2光束に含まれる前記複数の光束のそれぞれの光束の集光部の間隔を変化させる、光加工装置。
【請求項8】
請求項に記載の光加工装置において、
前記変倍光学系はアフォーカル系である、光加工装置。
【請求項9】
請求項から請求項までのいずれか一項に記載の光加工装置において、
前記変倍光学系は、前記分割光学系に入射する前記第1光束の光路上に配置され、変倍により、前記分割光学系に入射する前記第1光束の径を変化させる、光加工装置。
【請求項10】
請求項から請求項までのいずれか一項に記載の光加工装置において、
前記分割光学系は、回折光学素子を含む、光加工装置。
【請求項11】
請求項から請求項までのいずれか一項に記載の光加工装置において、
前記分割光学系は、反射部材を含む、光加工装置。
【請求項12】
請求項から請求項11までのいずれか一項に記載の光加工装置において、
前記分割光学系に入射する前記第1光束を射出する光源装置をさらに備える、光加工装置。
【請求項13】
請求項から請求項12までのいずれか一項に記載の光加工装置において、
前記分割光学系からの前記第2光束と、前記第2光束とは異なる第3光束とを合成させる合成光学系を備え、
前記集光光学系は、前記合成光学系からの前記第2光束に含まれる前記複数の光束と前記第3光束とをそれぞれ集光させる、光加工装置。
【請求項14】
請求項13に記載の光加工装置において、
前記第2光束と前記第3光束とは、波長の異なる光束であり、
前記合成光学系は、ダイクロイックミラーまたはダイクロイックプリズムを含む、光加工装置。
【請求項15】
請求項13または請求項14に記載の光加工装置において、
前記合成光学系と前記集光光学系を介して前記第3光束を物体に照射し、前記集光光学系および前記合成光学系を介して検出した、前記第3光束の前記物体からの戻り光である第4光束に基づいて、前記物体の位置を検出する位置検出部をさらに備える、光加工装置。
【請求項16】
請求項から請求項15までのいずれか一項に記載の光加工装置において、
前記集光光学系からの前記第2光束が前記物体に照射されるように前記物体を支持する試料台をさらに備える、光加工装置。
【請求項17】
請求項1に記載の光加工装置において、
前記第2光束に含まれる前記複数の光束は、3つ以上の光束であり、
前記集光光学系は、前記分割光学系からの前記3つ以上の光束をそれぞれ集光させる、光加工装置。
【請求項18】
請求項17に記載の光加工装置において、
前記分割光学系は、前記集光光学系により集光面上に集光される前記3つ以上の光束のそれぞれの集光部が、所定方向に並ぶように前記第1光束を分割する、光加工装置。
【請求項19】
請求項17または請求項18に記載の光加工装置において、
前記分割光学系から射出される前記第2光束に含まれる前記3つ以上の光束のうち、互いに隣り合う2つの光束のそれぞれの進行方向に沿った軸同士の成す角度は鋭角である、光加工装置。
【請求項20】
請求項17から請求項19までのいずれか一項に記載の光加工装置において、
前記変倍光学系は、前記分割光学系に入射する前記第1光束の光路上に配置された第1変倍光学系と、前記分割光学系から射出する前記第2光束に含まれる前記複数の光束の光路上に配置された第2変倍光学系を含み、前記第1変倍光学系および前記第2変倍光学系の変倍により、前記集光光学系から射出される前記第2光束に含まれる前記複数の光束のそれぞれの光束の開き角と、前記集光光学系により集光面上に集光される前記第2光束に含まれる前記複数の光束のそれぞれの集光部の間隔とを、独立して変化させる、光加工装置。
【請求項21】
請求項20に記載の光加工装置において、
前記第2変倍光学系は、アフォーカル系である、光加工装置。
【請求項22】
請求項17から請求項19までのいずれか一項に記載の光加工装置において、
前記変倍光学系は、前記分割光学系から射出する前記第2光束に含まれる前記複数の光束の光路上に配置され、変倍により、前記集光光学系から射出される前記第2光束に含まれる前記複数の光束のそれぞれの光束の開き角を変化させるとともに、前記集光光学系により集光面上に集光される前記第2光束に含まれる前記複数の光束のそれぞれの光束の集光部の間隔を変化させる、光加工装置。
【請求項23】
請求項22に記載の光加工装置において、
前記変倍光学系はアフォーカル系である、光加工装置。
【請求項24】
請求項17から請求項19までのいずれか一項に記載の光加工装置において、
前記変倍光学系は、前記分割光学系に入射する前記第1光束の光路上に配置され、変倍により、前記分割光学系に入射する前記第1光束の径を変化させる、光加工装置。
【請求項25】
請求項17から請求項24までのいずれか一項に記載の光加工装置において、
前記分割光学系は、回折光学素子を含む、光加工装置。
【請求項26】
請求項17から請求項24までのいずれか一項に記載の光加工装置において、
前記分割光学系は、反射部材を含む、光加工装置。
【請求項27】
請求項17から請求項26までのいずれか一項に記載の光加工装置において、
前記分割光学系に入射する前記第1光束を射出する光源装置をさらに備える、光加工装置。
【請求項28】
請求項17から請求項27までのいずれか一項に記載の光加工装置において、
前記分割光学系からの前記第2光束と、前記第2光束とは異なる第3光束とを合成させる合成光学系を備え、
前記集光光学系は、前記合成光学系からの前記第2光束に含まれる前記複数の光束と前記第3光束とをそれぞれ集光させる、光加工装置。
【請求項29】
請求項28に記載の光加工装置において、
前記第2光束と前記第3光束とは、波長の異なる光束であり、
前記合成光学系は、ダイクロイックミラーまたはダイクロイックプリズムを含む、光加工装置。
【請求項30】
請求項28または請求項29に記載の光加工装置において、
前記合成光学系と前記集光光学系を介して前記第3光束を物体に照射し、前記集光光学系および前記合成光学系を介して検出した、前記第3光束の前記物体からの戻り光である第4光束に基づいて、前記物体の位置を検出する位置検出部をさらに備える、光加工装置。
【請求項31】
請求項17から請求項30までのいずれか一項に記載の光加工装置において、
前記集光光学系からの前記第2光束が前記物体に照射されるように前記物体を支持する試料台をさらに備える、光加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物体を加工可能な加工装置として、特許文献1には、物体の表面にレーザー光線を照射して構造を形成する加工装置が記載されている。この種の加工装置には、物体に構造を適切に形成することが要求されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第4994639号明細書
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によると、光加工装置は、入射する第1光束を複数の光束を含む第2光束に分割する分割光学系と、前記分割光学系に入射する前記第1光束の光路上、及び前記分割光学系から射出する前記第2光束に含まれる前記複数の光束の光路上の少なくとも一方に配置された変倍光学系と、前記第2光束を集光させる集光光学系と、を備え、前記集光光学系からの前記第2光束で物体を加工する。
第2の態様によると、光加工装置は、第1の態様の光加工装置において、前記分割光学系と前記集光光学系との間の前記第2光束の光路上に配置され、前記第2光束に含まれる前記複数の光束を反射する揺動可能な反射面を有する反射装置をさらに備える。
第3の態様によると、光加工装置は、第1の態様の光加工装置において、前記第2光束に含まれる前記複数の光束は、3つ以上の光束であり、前記集光光学系は、前記分割光学系からの前記3つ以上の光束をそれぞれ集光させる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】第1実施形態の光加工装置の構成を概略的に示す図。
図2】分割光学系により分割される光束の一例を示す図。
図3】第2変倍光学系に入射する光束、および第2変倍光学系から射出する光束を示す図。
図4】集光光学系により集光面に集光される第2光束を示す概念図。
図5】第1実施形態の光加工装置を用いて物体上に形成したリブレット構造の一例を示す斜視図。
図6】分割光学系の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書において、「変倍光学系」とは、光学系を構成する光学部材の移動により、光学系の横倍率、角倍率の少なくとも一方が変化する光学系をいう。従って、変倍光学系には、光学部材の移動により焦点距離が変化するズームレンズおよびバリフォーカルレンズ、または光学部材の移動により角倍率が変化する光学系も含まれる。この角倍率が変化する光学系は、アフォーカル系を保ったまま角倍率が変化していてもよい。
【0007】
(第1実施形態の光加工装置)
図1は、第1実施形態の光加工装置1の構成を概略的に示す図である。図1および後述する各図に矢印で示したX方向、Y方向およびZ方向はそれぞれ直交する方向であるとともに、X方向、Y方向およびZ方向のそれぞれは各図において同一の方向を示している。また、図1に矢印で示したXZ方向は、上述したX方向とZ方向との中間の方向であり、すなわちY方向と直交し、X方向およびZ方向からそれぞれ45°離れた方向を示している。以下では、各矢印の示す方向を、それぞれ+X方向、+Y方向、+Z方向、および+XZ方向と呼ぶ。また、X方向の位置をX位置、Y方向の位置をY位置、Z方向の位置をZ位置と呼ぶ。
【0008】
第1実施形態の光加工装置1は、第1変倍光学系11、分割光学系14、第2変倍光学系19、第1反射部材24、集光光学系27、および反射装置22等を含む装置である。光加工装置1は、光源装置10から供給される光を、被加工物である物体Wの表面(被加工面WS)に照射する。
【0009】
レーザー等の光源装置10からは、一例として、直径D0の概ね平行光、すなわち開き角(発散角または収束角)がほぼ0である第1光束L1が供給される。ここで光束の直径とは、例えばガウス分布型の断面強度分布を持つ光束においては、強度がピーク強度の1/eとなる範囲の全幅である。供給された直径D0の第1光束L1は、-Z方向に進行して第1変倍光学系11に導入される。
【0010】
第1変倍光学系11は、一例として第1鏡筒12と4枚のレンズ13a~13dを含むアフォーカル系の変倍光学系である。第1鏡筒12は、前群レンズ13a、13bと後群レンズ13c、13dとをそれぞれZ方向に移動させる。これにより、第1変倍光学系11の全体としての角倍率が変化する。
【0011】
第1変倍光学系11がアフォーカル系であるとき、第1変倍光学系11に入射した略平行光である第1光束L1は、第1変倍光学系11によりその直径が拡大または縮小され、直径D1となって第1変倍光学系11から射出される。そして、第1変倍光学系11の前群レンズ13a、13bと後群レンズ13c、13dのZ位置を変更することにより、第1光束L1の直径D1が変化する。
【0012】
第1変倍光学系11から射出された直径D1の第1光束L1は、分割光学系14に入射する。従って、第1変倍光学系11は、分割光学系14に入射する第1光束L1の光路上に配置されているということができる。
【0013】
図2は、分割光学系14により分割される光束の一例を示す図である。分割光学系14は、一例として、透光基板15上に、一例として1次元の透光性の回折格子である位相型回折格子である回折光学素子16が形成されたものである。回折光学素子16は一例としてY方向に延びる格子がX方向に周期的に配列されたものである。なお、回折光学素子16に設けられる凹凸パターン(位相パターン)は1次元パターンには限定されない。例えば、米国特許第5,580,300号公報に開示されるような2次元の凹凸パターン(位相パターン)を持つ位相型回折光学素子であってもよい。また、回折光学素子16は振幅型回折光学素子であってもよい。
【0014】
+Z方向に進行する第1光束L1は、回折光学素子16により回折されX方向に分割される。このうち直進光である実線で示した0次回折光L22は+Z方向に進行する。破線で示した+1次回折光L23は+Z方向から+X方向に角度φ2だけ離れた方向に進行する。そして、点線で示した-1次回折光L21は+Z方向から-X方向に角度φ1だけ離れた方向に進行する。
【0015】
なお、回折光学素子16からは、これらに加えて±2次以上の高次の回折光が発生しても良い。
以下では、0次回折光L22、+1次回折光L23、-1次回折光L21、±2次以上の高次の回折光を総称して、あるいは個々に、第2光束L2とも呼ぶ。また、これらの回折光が第2変倍光学系19を通過した後の各回折光(L22a、L23a、L21a等)、および集光光学系27を通過した後の各回折光(L22b、L23b、L21b等)についても総称して、あるいは個々に、第2光束L2とも呼ぶ。
すなわち、第2光束L2には、その進行方向に垂直な断面の中に、例えば0次回折光L22、+1次回折光L23、-1次回折光L21を含む3つ以上の光束が含まれている。
【0016】
0次回折光L22の進行方向と-1次回折光L21の進行方向とが成す角度φ1は、一例として0°より大きく、かつ90°未満である。同様に0次回折光L22の進行方向と+1次回折光L23の進行方向とが成す角度φ2は、一例として0°より大きく、かつ90°未満である。±2次光以上の高次回折光を含めても、分割光学系14から射出される第2光束L2に含まれる3つ以上の光束(0次回折光L22、+1次回折光L23、-1次回折光L21等)のうち、互いに隣り合う2つの光束のそれぞれの進行方向に沿った軸同士の成す角度は鋭角となっている。
【0017】
以下、再び図1を参照して説明する。
分割光学系14により分割された複数の光束を含む第2光束L2は、一例としてダイクロイックビームスプリッターから成る合成光学系17に入射する。合成光学系17は、分割光学系14から入射する第2光束L2と、位置検出部18から入射する2点鎖線で示した第3光束L3とを合流(合成)させ、第2変倍光学系19に向けて射出する光学系である。
【0018】
一例として、第2光束L2は波長λ2の光であり、第3光束L3は波長λ2とは異なる波長λ3の光であり、合成光学系17のダイクロイック面17aは、波長λ2の第2光束L2を透過し、波長λ3の第3光束L3を反射する。また、後述するように、第3光束L3は物体Wで反射または散乱して、第4光束L4となって第2変倍光学系19側から合成光学系17に入射する。合成光学系17は、第2変倍光学系19側から入射した第4光束L4を位置検出部18に導く。位置検出部18については後述する。
【0019】
合成光学系17は、上述したダイクロイックビームスプリッターに限られるものではなく、ダイクロイックミラーを有する平板ガラスにより構成されていても良い。あるいは、第2光束L2と第3光束L3との偏光面同士が相互に概ね直交する直線偏光光である場合には、偏光ビームスプリッタを用いても良い。
【0020】
分割光学系14を射出し、さらに合成光学系17を通過した第2光束L2は、第2変倍光学系19に入射する。従って、第2変倍光学系19は、分割光学系14から射出する第2光束L2の光路上に配置されているということができる。
なお、合成光学系17により第2光束L2と合流した第3光束L3も、第2光束L2とともに、第2変倍光学系19に入射する。
【0021】
第2変倍光学系19は、一例として第2鏡筒20と4枚のレンズ21a~21dを含むアフォーカル系の変倍光学系である。第2鏡筒20は、前群レンズ21a、21bと後群レンズ21c、21dとをそれぞれZ方向に移動させる。これにより、第2変倍光学系19の全体としての角倍率が変化する。
【0022】
図3は、第2変倍光学系19に入射する第2光束と、第2変倍光学系から射出する第2光束を示す図である。上述したとおり、第2変倍光学系19に入射する第2光束L2のうち、0次回折光L22の進行方向は+Z方向である。そして、-1次回折光L21の進行方向は+Z方向から-X方向に角度φ1だけ離れた方向であり、+1次回折光L23の進行方向は+Z方向から+X方向に角度φ2だけ離れた方向である。入射する第2光束L21、L22、L23の直径は、いずれもD1である。
【0023】
第2変倍光学系19に入射した第2光束L21、L22、L23は、それぞれ第2光束L21a、L22a、L23aとなって、第2変倍光学系19から射出する。入射した0次回折光L22に対応する0次回折光L22aは+Z方向に射出される。入射した-1次回折光L21に対応する-1次回折光L21aは+Z方向から-X方向に角度φ3だけ離れた方向に射出される。入射した+1次回折光L23に対応する+1次回折光L23aは+Z方向から角度φ4だけ+X方向に離れた方向に射出される。射出される第2光束L21a、L22a、L23aの直径は、いずれもD2である。
【0024】
第2変倍光学系19の角倍率の変化により、上述した角度φ3、角度φ4、および直径D2が変化する。第2変倍光学系19はアフォーカル系であるので、第2変倍光学系19の角倍率が変化しても、射出される第2光束L21a、L22a、L23aの開き角は変化しない。
【0025】
なお、図3においては図示を省略したが、第2変倍光学系19から射出する±2次以上の回折光についても、その進行方向の+Z方向からの角度は異なるが、上述した+1次回折光L23aおよび-1次回折光L21aと同様である。さらに、第3光束L3も、第2変倍光学系19により、直径、あるいはさらに開き角または進行方向が変化する。
【0026】
なお、以下の説明においても、第2光束L2には±2次以上の回折光も含まれている。ただし、±2次以上の回折光については、その進行方向の+Z方向からのずれ角が+1次回折光L23aおよび-1次回折光L21aと異なるだけで、それ以外の振る舞いについては+1次回折光L23aおよび-1次回折光L21aと同様であるため、説明を省略する。
【0027】
以下、再び図1を参照して説明する。
第2変倍光学系19を射出した第2光束L21a、L22a、L23a、および不図示±2次以上回折光は、反射装置22に設けられている反射面23に入射する。反射面23は、一例として、XZ方向とY方向とに平行な面に沿って配置された平面である。+Z方向に進行して反射面23に入射した第2光束L22aは、反射面23により+X方向に反射される。
【0028】
+Z方向から角度φ3だけ-X方向に離れた方向に進行して反射面23に入射した第2光束L21aは、反射面23により+X方向から角度φ3だけ-Z方向に離れた方向に反射される。また、+Z方向から角度φ4だけ+X方向に離れた方向に進行して反射面23に入射した第2光束L23aは、反射面23により+X方向から角度φ4だけ+Z方向に離れた方向に反射される。
【0029】
反射面23は、反射装置22を介して駆動部材24により、一例としてXZ方向を回転中心として、所定角度の範囲内で揺動可能に保持されている。反射装置22、反射面23、および駆動部材24として、一例として、いわゆるガルバノミラーを用いても良い。反射面23がXZ方向を回転中心として所定の角度範囲内で揺動すると、反射面23により反射された第2光束L21a、L22a、L23aのそれぞれの進行方向は、上述した方向から上記の所定の角度の2倍の角度だけ±Y方向に離れた2つの方向の間で変化(揺動)する。なお、第2光束の射出角度を能動的に変更するための構成としては、ガルバノミラーには限定されず、例えばポリゴンミラーやAOD(音響光学偏向器)を用いてもよい。
【0030】
反射面23により反射された第2光束L21a、L22a、L23aは、第2反射装置25に設けられている第2反射面26に入射する。第2反射面26は、一例として、XZ方向とY方向とに平行な面に沿って配置された平面であり、上述した+X方向を中心とする方向に進行して第2反射面26に入射した第2光束L21a、L22a、L23aの進行方向を、+Z方向を中心とする各方向に反射する。
第2反射装置25は揺動可能に保持される必要は無く、光加工装置1の全体に対して固定されて保持されていればよい。なお、第2反射装置25が揺動可能に保持されていてもよい。
【0031】
第2反射面26により反射された第2光束L21a、L22a、L23aは、集光光学系27に入射する。第2光束L21a、L22a、L23aは、集光光学系27により、それぞれが収束光束である第2光束L21b、L22b、L23bに変換される。そして集光面CPにおいて、第2光束L21bは集光部S1に、第2光束L22bは集光部S2に、第2光束L23bは集光部S3に、それぞれ集光する。
【0032】
集光光学系27は、一例として3枚のレンズ27a~27cを含み、そのうちの1枚のレンズ27bは、焦点位置変更部材28に保持されている。焦点位置変更部材28によりレンズ27bをZ方向に移動することにより、集光光学系27の焦点位置(集光面CPの位置)を調整することができる。なお、集光光学系27を構成する複数のレンズのうちの少なくとも一部をZ方向に移動させて焦点位置を変更する構成に代えて、或いは加えて、合成光学系17と集光光学系27との間の第2光束及び/又は第3光束の光路に、光の進行方向に沿って移動可能な光学部材(典型的にはレンズ)を設ける構成としてもよい。
【0033】
図4は、集光光学系27により集光面CPに集光される第2光束L21b~L23bを示す概念図である。なお、図4では、簡略化のために集光光学系27を1枚のレンズで示している。また、図4には反射面23が配置される面MPを示すとともに、第2反射面26の記載を省略している。このため、図4においては、反射面23から射出される第2光束L21a~L23aは、+Z方向を中心とする方向に進行するものとして示している。第2光束L21a~L23aの直径は、上述したとおり、いずれもD2である。
【0034】
上述したとおり、集光光学系27に入射した第2光束L21a~L23aは、集光光学系27の屈折力により、それぞれが収束光である第2光束L21b~L23bに変換され、X方向に並ぶ3つの集光部S1~S3にそれぞれ集光する。また、第3光束L3も、集光光学系27により集光面CP上の第2集光部S10に集光される。
【0035】
第2光束L21b~L23bの開き角θは、集光光学系27の焦点距離fを用いた式(1)により決まる。
2×f×sin(θ) = D2 ・・・(1)
第2光束L21a~L23aの直径は、いずれもD2であり等しいので、第2光束L21b~L23bの開き角θも、それぞれ等しい角度になる。
【0036】
集光面CPにおける3つの集光部S1~S3の直径D3は、第2光束L2の波長λ2と、開き角θを用いて、式(2)で表される。
D3 = 2×λ2/{π×sin(θ)} ・・・(2)
【0037】
第2変倍光学系19の角倍率を変更することにより、第2光束L21a~L23aの直径D2が変化するため、第2光束L21b~L23bの開き角θを変更することができる。この結果、式(2)より、3つの集光部S1~S3の直径D3を変更することができる。
【0038】
なお、第1変倍光学系11の角倍率を変更することにより、同様に第2光束L21a~L23aの直径D2を変更することができる。第1変倍光学系11の角倍率を変更すると第1変倍光学系11を射出する第1光束L1の直径D1が変更され、第2変倍光学系19を射出する第2光束L21a~L23aの直径D2は、第1光束L1の直径D1に比例するためである。
【0039】
従って、第1変倍光学系11の角倍率を変更することによっても、第2光束L21b~L23bの開き角θを変更し、3つの集光部S1~S3の直径D3を変更することができる。
【0040】
集光光学系27は一例として、いわゆるfθレンズ系である。なお、集光光学系27の射影特性はfθには限定されない。集光光学系27の射影特性がfθの場合、集光面CPにおける集光光学系27の光軸AXから集光部S1~S3までの距離は、反射面23を射出した第2光束L21a~L23aのそれぞれの進行方向の+Z方向からのずれ角度に比例する。
第2光束L22aは、反射面23から+Z方向に進行するため、集光光学系27で集光された第2光束L22bの集光部S2のX方向の位置は、光軸AXと一致している。
【0041】
第2光束L21aは、反射面23から+Z方向に対して角度φ3だけ-X方向に離れた方向に進行するため、集光部S1のX方向の位置は、光軸AXから-X方向に距離P1離れた位置となる。また、第2光束L23aは、反射面23から+Z方向に対して角度φ4だけ+X方向に離れた方向に進行するため、集光部S3のX方向の位置は、光軸AXから+X方向に距離P2離れた位置となる。距離P1および距離P2は、集光部S1~S3のX方向の間隔であるということもできるため、以下では、距離P1、距離P2を、それぞれ間隔P1、間隔P2とも呼ぶ。
【0042】
距離P1は角度φ3に集光光学系27の焦点距離を乗じた値であり、距離P2は角度φ4に集光光学系27の焦点距離を乗じた値である。上述したように、角度φ3および角度φ4は、第2変倍光学系19の角倍率を変更することにより、変更することができる。従って、第2変倍光学系19の角倍率を変更することにより、複数の集光部S1~S3のX方向の間隔P1、P2を変更することができる。
【0043】
以上を纏めると、第1変倍光学系11の角倍率を変更することにより、第2光束L21b~L23bの開き角θを変更し、複数の集光部S1~S3の直径D3を変更することができる。また、第2変倍光学系19の角倍率を変更することにより、第2光束L21b~L23bの開き角θを変更し、複数の集光部S1~S3の直径D3を変更することができるとともに、複数の集光部S1~S3のX方向の間隔P1、P2を変更することができる。
【0044】
換言すれば、第2変倍光学系19の角倍率を変更することにより、複数の集光部S1~S3のX方向の間隔P1、P2を所望の値に変更することができる。これに伴って、第2光束L21b~L23bの開き角θも変更されるが、第2光束L21b~L23bの開き角θは、第1変倍光学系11の角倍率を変更することにより、所望の値に設定することができる。従って、第1変倍光学系11および第2変倍光学系19の変倍により、集光光学系27から射出される複数の第2光束L21b~L23bの開き角θと、集光面CP上に集光される複数の集光部S1~S3のX方向の間隔P1、P2とを、独立して変化させることができる。
【0045】
上述したように反射装置22の反射面23がXZ方向を回転中心として所定の角度範囲内で揺動すると、反射面23で反射された第2光束L2の進行方向は、概ね+X方向である上述した方向を中心として、所定の角度の2倍の角度だけ±Y方向に揺動する。従って、反射装置22の反射面23が揺動すると、複数の集光部S1~S3は、集光面CP上でY方向に揺動(移動)する。
【0046】
第1実施形態の光加工装置1においては、集光面CPに集光する複数の第2光束L2のそれぞれの集光部S1~S3を、X方向に並べて形成する。これは、換言すれば、分割光学系14が、第1光束L1を、集光面CPにおいてX方向に並んだ複数の集光部S1~S3に集光するように複数の第2光束L2に分割しているともいえる。
【0047】
また、反射装置22の反射面23は、X方向と交差するY方向に沿って、それぞれの集光部S1~S3が集光面CP上を移動するように揺動するともいえる。
X方向を第1方向と呼ぶこともでき、Y方向を第2方向と呼ぶこともできる。
【0048】
集光面CPには、被加工物である物体Wの被加工面WSが配置される。第1実施形態の光加工装置1は、物体Wを保持し、ガイド30上をX方向に移動する試料台29を有している。
物体Wおよび試料台29を所定のX位置に配置した状態で、反射装置22の反射面23をXZ方向を回転中心として所定の角度範囲内で揺動させることにより、複数の集光部S1~S3のそれぞれを、物体Wの被加工面WS上でY方向に移動(走査)させることができる。
【0049】
図5は、第1実施形態の光加工装置1を用いて物体Wの被加工面WS上に形成したリブレット構造の一例を示す斜視図である。リブレット構造の形成に際しては、被加工面WSを集光面CPに一致して配置した状態で、集光面CP上でX方向に並ぶ複数の集光部S1~S3を集光面CP上でY方向に走査する。これにより、被加工面WS上に、それぞれがY方向に延び、X方向に周期的に配置された、例えば3本の凹部RSを含む凹部群SGを形成することができる。なお、凹部RSを溝と称してもよい。
【0050】
そして、物体Wおよび試料台29のX位置を順次移動させつつ、複数回に渡って集光部S1~S3を集光面CP上でY方向に走査することにより、被加工面WS上に多数の凹部RSから成るリブレット構造を形成することができる。ここで、リブレット構造は、多数の凸部PS又は凹凸部から成るとみなしてもよい。物体Wおよび試料台29のX位置の移動は、概ね等速でX方向に移動する連続的な移動であっても良い。
【0051】
それぞれの凹部RSは、加工光である第2光束L2の照射により、金属等の物体Wの被加工面WSの一部を融解・蒸発或いは昇華させることにより形成しても良い。あるいは、金属等の物体Wの被加工面WS上に配置した金属等の粉体を第2光束L2の照射により溶解し、固化させることにより凸部を形成することで、凸部と凸部との間に凹部を形成しても良い。あるいは物体Wの被加工面WS上の塗布膜を第2光束L2の照射により融解・蒸発或いは昇華させることにより凹部を形成しても良い。
【0052】
なお、集光面CP上でX方向に並ぶ複数の集光部S1~S3の数は、上述した3個に限られるわけではなく、2個以上の任意の数で良い。
第1実施形態の光加工装置1においては、集光面CP上にX方向に並ぶ複数の集光部S1~S3を形成し、これらの複数個の集光部S1~S3を一括してY方向に移動(走査)して、物体Wの被加工面WSを加工するため、1つの集光部を走査して加工する場合に比べて、加工速度を向上させることができる。
【0053】
また、第1実施形態の光加工装置1においては、集光面CP上にX方向に並ぶ複数の集光部Sのそれぞれの直径D3(或いは集光面CPへ向かう第2光束L21b~L23bの開き角θ)と、X方向の間隔P1、P2を変更することができるため、物体Wの被加工面WSに加工するそれぞれの凹部RSの幅(或いは凸部PSの幅)や、複数の凹部RSのX方向の間隔(或いは複数の凸部PSのX方向の間隔)、凹部RSの幅と凸部PSとの比率を、自在に変更することができる。従って、物体Wの用途等に応じて、被加工面WSに複数種類の構造を形成することができる。
【0054】
一例として、集光面CPへ向かう第2光束L21b~L23bの開き角θを変更して、リブレット構造の凹部RSの斜面の傾き(凸部PSの斜面の傾き)を変えることができる。なお、Y方向に延びた凹部RSを加工するときに、集光部SをY方向に移動させて加工した後に、その集光部Sの位置をX方向に移動させ、その後に集光部SをY方向に移動させて加工してもよい。このとき、集光部SのX方向への移動量は集光部の直径D3よりも小さい量であってもよい。
【0055】
位置検出部18から射出され、合成光学系17により第2光束L2と合流(合成)された第3光束L3は、第2光束L2と同様に、第2変倍光学系19、反射面23、第2反射面26、および集光光学系27を経て、集光面CP上の第2集光部S10に集光される。そして、第3光束L3は、集光面CPに配置されている物体Wの被加工面WSに照射される。被加工面WSに照射された第3光束L3は、被加工面WSで反射または散乱され、その少なくとも一部が第4光束L4となり、第3光束L3と概ね同様の光路を第3光束L3とは逆行して、合成光学系17に戻る。
【0056】
第4光束L4は、合成光学系17のダイクロイック面17aで反射され、位置検出部18へと導かれ、位置検出部18により受光される。
位置検出部18は、受光した第4光束L4に基づいて、物体Wの例えばZ方向の位置を検出する。位置検出部18は、例えば干渉計を含んでいても良い。このような位置検出部として、日本国特許第5231883号に開示される三次元形状計測装置を適用してもよい。
あるいは、位置検出部18は、物体Wの被加工面WS上の所定形状の部分のX方向、またはY方向の位置を検出するものであっても良い。
【0057】
第1変倍光学系11、第2変倍光学系19、アフォーカル系に限られるわけではなく、焦点距離が変化するいわゆるズームレンズ系、またはバリフォーカル系であっても良い。この場合には、第1変倍光学系11または第2変倍光学系19の変倍に伴い、第1変倍光学系11または第2変倍光学系19から射出される光束の直径だけでなく、開き角も変化する。
【0058】
また、第1変倍光学系11、第2変倍光学系19、および集光光学系27を構成するレンズの枚数は、上述した枚数に限られるわけではなく、それぞれ任意の枚数のレンズを有するものであっても良い。あるいは、第1変倍光学系11、第2変倍光学系19、および集光光学系27の少なくとも1つは、ミラーまたはプリズム等の反射光学部材を含む反射光学系や反射屈折光学系であっても良い。なお、第1変倍光学系11、第2変倍光学系19、および集光光学系27の少なくとも1つは、回折型光学系であってもよい。
【0059】
上述した例では、合成光学系17は、分割光学系14と第2変倍光学系19との間に配置されていたが、第2変倍光学系19の内部、或いは第2変倍光学系19と反射装置22との間に配置されていてもよい。なお、第3光束L3を集光面CP上で移動させる必要がない場合には、合成光学系は反射装置22の集光面CP側に配置されていてもよい。
【0060】
なお、光加工装置1は、第1変倍光学系11または第2変倍光学系19のうちの一方を有していなくても良い。上述したように、光加工装置1が第2変倍光学系19を備えている場合には、第2変倍光学系19を変倍することにより、第2光束L21b~L23bの開き角θを変更できるとともに、複数の集光部S1~S3のX方向の間隔P1、P2を変更することができる。また、光加工装置1が第1変倍光学系11を備えている場合には、第1変倍光学系11を変倍することにより、第2光束L21b~L23bの開き角θを変更することができる。
【0061】
試料台29は、保持した物体WをX方向およびY方向に移動させるものであっても良い。この場合には、反射装置22および反射面23を揺動させる代わりに、試料台29により物体Wを集光部S1~S3に対して移動させることにより、物体Wの被加工面WS内での集光部S1~S3の相対位置を、Y方向に移動(走査)させることができる。従って、この場合には、光加工装置1は反射装置22および反射面23を有しなくても良い。
【0062】
以上の説明においては、第2反射装置25および第2反射面26は光加工装置1の全体に対して固定されているものとしたが、第2反射装置25および第2反射面26は、Y方向を回転中心として、所定の角度範囲内で揺動しても良い。これにより、集光部S1~S3を集光面CP上でX方向に移動(走査)することもできる。
【0063】
この場合、集光面CPにおける複数の集光部S1~S3は、集光面CP上でY方向に並んで形成される。また、反射面23の揺動により、集光部S1~S3は集光面CP上をX方向に移動(走査)する。従って、この場合には、光加工装置1は物体Wを保持しX方向に移動させる試料台29を有しなくても良い。
【0064】
以上の説明においては、分割光学系14は第1光束L1をX方向に複数の第2光束L2に分割し、反射装置22および反射面23はXZ方向を回転中心として所定の角度範囲内で揺動するものとした。しかしこれに限らず、分割光学系14は第1光束L1をY方向に複数の第2光束L2に分割し、反射装置22および反射面23はY方向を回転中心として所定の角度範囲内で揺動するものであっても良い。
【0065】
分割光学系14は、必ずしも複数の集光部S1~S3が集光面CP上でX方向またはY方向に並ぶように第1光束L1を分割しなくても良い。代わりに、集光面CP上での複数の集光部S1~S3のX位置またはY位置がそれぞれ異なるように第1光束L1を第2光束L2分割しても良い。
また、分割光学系14は、第1光束L1を2つの第2光束L2に分割するものであっても良い。
【0066】
光加工装置1は、光源装置10を有していなくても良く、例えば、光加工装置1の外部に設けられている光源から光ファイバー等の導光部材を経由して第1光束L1の供給を受けるものであっても良い。
【0067】
分割光学系14は、上述した回折光学素子16を有する構成に限られるわけではなく、第1光束L1を相互に進行方向が所定の角度だけ離れた複数の第2光束L2に分割するものであれば、どのような光学系であっても良い。
【0068】
図6に、分割光学系14の他の一例として、反射部材を含む分割光学系14aを示す。分割光学系14aにおいては、偏光ビームスプリッタ41により入射した第1光束L1は、反射面41aを透過するP偏光の第1光束L11と、反射面41aで反射されるS偏光の第1光束L12とに分割される。
【0069】
偏光ビームスプリッタ41を透過したP偏光の第1光束L1は1/4波長板42により円偏光に変換され、反射鏡43で反射される。そして再度1/4波長板42を透過してS偏光に変換され、偏光ビームスプリッタ41の反射面41aで反射され、第2光束L21として分割光学系14aから射出される。
【0070】
偏光ビームスプリッタ41で反射されたS偏光の第1光束L2は1/4波長板44により円偏光に変換され、反射鏡45で反射される。そして再度1/4波長板44を透過してP偏光に変換され、偏光ビームスプリッタ41を透過して、第2光束L22として分割光学系14aから射出される。
【0071】
このとき、反射鏡43の反射面と反射鏡45の反射面とを、直交する方向から僅かにずらして配置することにより、第2光束L21と第2光束L22との進行方向は例えば角度差φ1だけずれたものとなる。
図6に示した構成では、第2光束L21と第2光束L22の進行方向は概ね-X方向であるが、不図示の折り曲げミラーを配置することで、第2光束L21と第2光束L22の進行方向を、上記の角度差φ1を保ったまま概ね+Z方向に変換させても良い。
【0072】
分割光学系14aから射出される光束は、第2光束L21と第2L22の2本であるが、複数の分割光学系14aを直列に配置することにより、1本の第光束L1をさらに多くの第2光束L2に分割しても良い。複数の分割光学系14aを直列に配置する場合には、それらの間に1/4波長板を配置して、1つの分割光学系14aから射出された第2光束L21と第2L22を円偏光に変換しても良い。
【0073】
(第1実施形態の光加工装置の効果)
(1)以上で説明した第1実施形態の光加工装置1は、入射する第1光束L1を複数の光束(L21、L22、L23)を含む第2光束L2に分割する分割光学系14と、分割光学系14に入射する第1光束L1の光路上、及び分割光学系14から射出する第2光束L2に含まれる複数の光束の光路上の少なくとも一方に配置された変倍光学系(11、19)と、第2光束L2を集光させる集光光学系27と、を備え、集光光学系27からの第2光束L2で物体Wを加工する。
この構成により、物体Wの被加工面WSに複数の集光部S1~S3を形成することができとともに、変倍光学系(11、19)を変倍することにより、集光部S1~S3に集光するそれぞれの第2光束L21b~L23bの開き角θを変更することができる。
従って、被加工面WS上の複数個所の加工を同時に行うことができる、処理能力の高い光加工装置1を実現することができる。また、集光部S1~S3の直径D3を変更(調整)可能、すなわち被加工面WSの加工領域の寸法の変更が容易な光加工装置1を実現することができる。
【0074】
(2)光加工装置1は、さらに、分割光学系14と集光光学系27との間の第2光束L2の光路上に配置され、第2光束L2に含まれる複数の光束を反射する揺動可能な反射面23を有する反射装置22を備えていても良い。
この構成においては、反射面23の揺動により、被加工面WS上に形成される複数の集光部S1~S3を、被加工面WS上で移動(走査)させることができる。これにより、より処理能力の高い光加工装置1を実現することができる。
【0075】
(3)光加工装置1において、第2光束L2に含まれる複数の光束を3つ以上の光束(L21、L22、L23)であり、集光光学系27は、分割光学系14からの3つ以上の光束をそれぞれ集光させる構成とすることができる。
この構成により、被加工面WS上の3カ所以上の箇所の加工を同時に行うことができ、一層処理能力の高い光加工装置1を実現することができる。
【0076】
本発明は以上の内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。本実施形態は、上記した態様の全て又は一部を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1:光加工装置、10:光源装置、11:第1変倍光学系、14:分割光学系、17:合成光学系、L1:第1光束、L2:第2光束、L3:第3光束、18:位置検出部、22:反射装置、23:反射面、27:集光光学系、CP:集光面、29:試料台、30:ガイド、W:物体、WS:被加工面
図1
図2
図3
図4
図5
図6