(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20240618BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
(21)【出願番号】P 2023514632
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(86)【国際出願番号】 JP2022017388
(87)【国際公開番号】W WO2022220199
(87)【国際公開日】2022-10-20
【審査請求日】2024-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2021067838
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【氏名又は名称】比企野 健
(72)【発明者】
【氏名】溝口 昂太郎
(72)【発明者】
【氏名】結城 達也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄介
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-257527(JP,A)
【文献】国際公開第2020/175559(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08G 73/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(D
A)で表されるジアミン(0)を含むジアミン成分を用いて得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(P)を含有することを特徴とする液晶配向剤。
【化1】
(Ar
1、Ar
2は、それぞれ独立して、2価のベンゼン環又はビフェニル構造のいずれかの2価の芳香族基を表し、該芳香族基の任意の水素原子は1価の基で置き換えられてもよい。Wは、*-(CH
2)
m-L-A-*(Lは、-O-C(=O)-又は-C(=O)-O-を表し、Aは-(CH
2)
n-を表す。mは1~6の整数である。nは、1~16の整数である。nが2以上の場合、Aを構成する任意の-CH
2-は、-O-、-C(=O)-、-NH-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C=C-、フェニレン基、又はシクロへキシレン基で置換されていてもよい。また、Wが有する水素原子の一部は、ハロゲン原子、メチル基、トリフルオロメチル基、又はヒドロキシ基で置換されていてもよい。)で表される炭素数4~20の2価の有機基である。*は結合手を表す。)
【請求項2】
前記式(D
A)におけるWが、
*-(CH
2)
p-O-C(=O)-(CH
2)
q-*、
*-(CH
2)
p-O-C(=O)-(CH
2)
q-C(=O)-O-(CH
2)
r-*、
*-(CH
2)
p-C(=O)-O-(CH
2)
q-O-C(=O)-(CH
2)
r-*、
*-(CH
2)
p-O-C(=O)-Q-C(=O)-O-(CH
2)
q-*、
又は*-(CH
2)
p-C(=O)-O-Q-O-C(=O)-(CH
2)
q-*であり、Qはフェニレン基又はシクロヘキシレン基を表し、p、q、rは、それぞれ独立して、1~6の整数である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記pが2~6の整数であり、前記qが2~6の整数であり、前記rが2~6の整数である、請求項2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
前記式(D
A)における-NH
2の結合位置が、酸素原子との結合位置に対してパラ位である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
Ar
1及びAr
2で表される2価の芳香族基が、1,4-フェニレン、1,3-フェニレン、2-メチル-1,4-フェニレン、2-エチル-1,4-フェニレン、2-プロピル-1,4-フェニレン、2-ブチル-1,4-フェニレン、2-イソプロピル-1,4-フェニレン、2-tert-ブチル-1,4-フェニレン、2-メトキシ-1,4-フェニレン、2-エトキシ-1,4-フェニレン、2-プロポキシ-1,4-フェニレン、2-ブトキシ-1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジメチル-1,4-フェニレン、4-メチル-1,3-フェニレン、5-メチル-1,3-フェニレン、4-フルオロ-1,3-フェニレン、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレン、4,4’-ビフェニリレン、2-メチル-4,4’-ビフェニリレン、2-エチル-4,4’-ビフェニリレン、2-プロピル-4,4’-ビフェニリレン、2-ブチル-4,4’-ビフェニリレン、2-tert-ブチル-4,4’-ビフェニリレン、2-メトキシ-4,4’-ビフェニリレン、2-エトキシ-4,4’-ビフェニリレン、2-フルオロ-4,4’-ビフェニリレン、3-メチル-4,4’-ビフェニリレン、3-エチル-4,4’-ビフェニリレン、3-プロピル-4,4’-ビフェニリレン、3-ブチル-4,4’-ビフェニリレン、3-tert-ブチル-4,4’-ビフェニリレン、3-メトキシ-4,4’-ビフェニリレン、3-エトキシ-4,4’-ビフェニリレン、3-フルオロ-4,4’-ビフェニリレン、2,2’-ジメチル-4,4’-ビフェニリレン、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニリレン、3,3’-ビフェニリレン、5-メチル-3,3’-ビフェニリレン、5,5’-ジメチル-3,3’-ビフェニリレンである、請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
前記ジアミン(0)が、下記式(d
A-1)~(d
A-5)からなる群から選ばれるいずれかのジアミンである、請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【化2】
【請求項7】
前記重合体(P)が、前記ジアミン成分と、非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物、又はこれらの誘導体を含有するテトラカルボン酸成分と、の重縮合反応により得られる、請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項8】
前記テトラカルボン酸成分が、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジクロロ-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジフルオロ-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ビス(トリフルオロメチル)-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-8-メチル-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、ビシクロ[2.2.2]オクタ-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,4,6,8-テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン-2:4,6:8-二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメート、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-カルボニルジフタル酸無水物、4,4’-オキシジ(1,4-フェニレン)ビス(フタル酸)二無水物、又は4,4’-メチレンジ(1,4-フェニレン)ビス(フタル酸)二無水物、又はこれらの誘導体を含有する、請求項7に記載の液晶配向剤。
【請求項9】
前記テトラカルボン酸二無水物、又はこれらの誘導体の使用割合が、使用される全テトラカルボン酸成分に対して、10モル%以上である、請求項
7に記載の液晶配向剤。
【請求項10】
前記ジアミン(0)の使用量が、前記ジアミン成分に対して、5モル%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項11】
前記ジアミン成分が、ジアミン(0)以外のその他のジアミンを含み、その他のジアミンが、p-フェニレンジアミン、2,3,5,6-テトラメチル-p-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジメチル-m-フェニレンジアミン、2,5-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジフルオロ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジフルオロ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジアミノビフェニル、2,3’-ジアミノビフェニル、下記式(d
AL-1)~(d
AL-10)で表されるジアミン、1,7-ビス(4-アミノフェノキシ)ヘプタン、1,7-ビス(3-アミノフェノキシ)ヘプタン、1,8-ビス(4-アミノフェノキシ)オクタン、1,8-ビス(3-アミノフェノキシ)オクタン、1,9-ビス(4-アミノフェノキシ)ノナン、1,9-ビス(3-アミノフェノキシ)ノナン、1,10-ビス(4-アミノフェノキシ)デカン、1,10-ビス(3-アミノフェノキシ)デカン、1,11-ビス(4-アミノフェノキシ)ウンデカン、1,11-ビス(3-アミノフェノキシ)ウンデカン、1,12-ビス(4-アミノフェノキシ)ドデカン、1,12-ビス(3-アミノフェノキシ)ドデカン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ジフェニルエーテル、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼン、1,2-ビス(6-アミノ-2-ナフチルオキシ)エタン、1,2-ビス(6-アミノ-2-ナフチル)エタン、6-[2-(4-アミノフェノキシ)エトキシ]-2-ナフチルアミン、1,4-フェニレンビス(4-アミノベンゾエート)、1,4-フェニレンビス(3-アミノベンゾエート)、1,3-フェニレンビス(4-アミノベンゾエート)、1,3-フェニレンビス(3-アミノベンゾエート)、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート、ビス(3-アミノフェニル)テレフタレート、ビス(4-アミノフェニル)イソフタレート、ビス(3-アミノフェニル)イソフタレート;4,4’-ジアミノベンズアニリド、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ウレア、1,3-ビス(4-アミノベンジル)ウレア、1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレア;3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2’-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2’-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)プロパン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノベンジル)ベンゼンである、請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【化3】
【請求項12】
さらに、前記ジアミン(0)を含有しないジアミン成分を用いて得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(B)を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項13】
前記重合体(B)を得るためのジアミン成分が、分子内にウレア結合、アミド結合、カルボキシ基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有するジアミン、下記式(d
AL-1)~(d
AL-10)で表されるジアミン及び、窒素原子含有複素環、第二級アミノ基及び第三級アミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の窒素原子含有構造を有するジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミンを含む、請求項12に記載の液晶配向剤。
【化4】
【請求項14】
前記重合体(B)を得るためのジアミン成分が、2,6-ジアミノピリジン、3,4-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノピリミジン、3,6-ジアミノカルバゾール、N-メチル-3,6-ジアミノカルバゾール、1,4-ビス-(4-アミノフェニル)-ピペラジン、3,6-ジアミノアクリジン、N-エチル-3,6-ジアミノカルバゾール、N-フェニル-3,6-ジアミノカルバゾール、N-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル-3,5-ジアミノベンズアミド、4-[4-[(4-アミノフェノキシ)メチル]-4,5-ジヒドロ-4-メチル-2-オキサゾリル]-ベンゼンアミン、下記式(z-1)~式(z-13)で表されるジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、4,4’-ジアミノジフェニル-N-メチルアミン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-ベンジジン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-N,N’-ジメチルベンジジン、若しくは、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-N,N’-ジメチル-1,4-ベンゼンジアミン、2,4-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノベンジルアルコール、2,4-ジアミノベンジルアルコール、4,6-ジアミノレゾルシノール、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル;2,4-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸、4,4’-ジアミノビフェニル-3-カルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルメタン-3-カルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルエタン-3-カルボン酸、4,4’-ジアミノビフェニル-3,3’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、3,3’-ジアミノビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、3,3’-ジアミノビフェニル-2,4’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルメタン-3,3’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルエタン-3,3’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル-3,3’-ジカルボン酸を含有する、請求項12に記載の液晶配向剤。
【化5】
【化6】
【請求項15】
前記重合体(B)の含有割合が、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100質量部に対して、10~90質量部である、請求項12に記載の液晶配向剤。
【請求項16】
請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶配向剤から得られる液晶配向膜。
【請求項17】
請求項16に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
【請求項18】
下記の工程(1)~(3)を含む、液晶表示素子の製造方法。
工程(1):請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶配向剤を基板上に塗布する工程
工程(2):塗布した前記液晶配向剤を焼成し、膜を得る工程
工程(3):工程(2)で得られた前記膜に配向処理する工程
【請求項19】
前記配向処理が、ラビング処理法又は光配向処理法である、請求項18に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項20】
前記光配向処理法が、一定方向に偏向された放射線を照射する方法であって、前記放射線として、100~800nmの波長を有する紫外線又は可視光線を用いる、請求項
19に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項21】
前記放射線を照射した液晶配向膜に更に加熱処理する工程を含み、前記加熱処理の温度が、50~300℃である、請求項20に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項22】
下記式(1)で表される繰り返し単位(p1)及び該繰り返し単位(p1)のイミド化構造単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有する重合体を含有することを特徴とする液晶配向剤。
【化7】
(式(1)中、X
1は4価の有機基を表す。Y
1は「-Ar
1-O-W-O-Ar
2-」で表される2価の有機基である。
Ar
1、Ar
2は、それぞれ独立して、2価のベンゼン環又はビフェニル構造のいずれかの2価の芳香族基を表し、該芳香族基の任意の水素原子は1価の基で置き換えられてもよい。
Wは、*-(CH
2)
m-L-A-*(Lは、-O-C(=O)-又は-C(=O)-O-を表し、Aは-(CH
2)
n-を表す。
mは1~6の整数である。nは、1~16の整数である。nが2以上の場合、Aを構成する任意の-CH
2-は、-O-、-C(=O)-、-NH-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C=C-、フェニレン基、又はシクロへキシレン基で置換されていてもよい。
また、Wが有する水素原子の一部は、ハロゲン原子、メチル基、トリフルオロメチル基、又はヒドロキシ基で置換されていてもよい。)で表される炭素数4~20の2価の有機基である。*は結合手を表す。
R及びZはそれぞれ独立して水素原子又は1価の有機基を表す。)
【請求項23】
前記重合体が、下記式(D
A)で表されるジアミン(0)を含むジアミン成分を用いて得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(P)である、請求項
22に記載の液晶配向剤。
【化8】
(Ar
1、Ar
2及びWは、請求項
22で定義したとおりである。)
【請求項24】
前記式(D
A)におけるWが、*-(CH
2)
p-O-C(=O)-(CH
2)
q-*、*-(CH
2)
p-O-C(=O)-(CH
2)
q-C(=O)-O-(CH
2)
r-*、*-(CH
2)
p-C(=O)-O-(CH
2)
q-O-C(=O)-(CH
2)
r-*、*-(CH
2)
p-O-C(=O)-Q-C(=O)-O-(CH
2)
q-*、又は*-(CH
2)
p-C(=O)-O-Q-O-C(=O)-(CH
2)
q-*であり、Qはフェニレン基又はシクロヘキシレン基を表し、p、q、rは、それぞれ独立して、1~6の整数である、請求項
23に記載の液晶配向剤。
【請求項25】
前記ジアミン(0)が、下記式(d
A-1)~(d
A-5)からなる群から選ばれるいずれかのジアミンである、請求項
23又は
24に記載の液晶配向剤。
【化9】
(前記式(d
A-1)~(d
A-5)におけるベンゼン環上の水素原子は、1価の置換基で置換されてもよい。)
【請求項26】
前記重合体(P)が、前記ジアミン成分と、非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物、又はこれらの誘導体を含有するテトラカルボン酸成分と、の重縮合反応により得られる、請求項
23又は
24に記載の液晶配向剤。
【請求項27】
前記ジアミン(0)の使用量が、前記ジアミン成分に対して、5モル%以上である、請求項
23又は
24に記載の液晶配向剤。
【請求項28】
さらに、前記ジアミン(0)を含有しないジアミン成分を用いて得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(B)を含有する、請求項
23又は
24に記載の液晶配向剤。
【請求項29】
オキシラニル基、オキセタニル基、ブロックイソシアネート基、オキサゾリン基、シクロカーボネート基、ヒドロキシ基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種の置換基を有する架橋性化合物、並びに重合性不飽和基を有する架橋性化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋性化合物、官能性シラン化合物、金属キレート化合物、硬化促進剤、界面活性剤、酸化防止剤、増感剤、防腐剤、並びに得られる液晶配向膜の誘電率や電気抵抗を調整するための化合物から選ばれる添加剤成分をさらに含有する、請求項
23又は
24に記載の液晶配向剤。
【請求項30】
重合体(P)以外のその他の重合体を更に含有する、請求項
23又は
24に記載の液晶配向剤。
【請求項31】
前記その他の重合体が、前記ジアミン(0)を有しないジアミン成分を用いて得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体、ポリシロキサン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレア、ポリオルガノシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン-マレイン酸無水物)共重合体、ポリ(イソブチレン-マレイン酸無水物)共重合体、ポリ(ビニルエーテル-マレイン酸無水物)共重合体、ポリ(スチレン-フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる重合体である、請求項
30に記載の液晶配向剤。
【請求項32】
請求項
22又は
23に記載の液晶配向剤から得られる液晶配向膜。
【請求項33】
請求項
32に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
【請求項34】
横電界液晶表示素子である、請求項
33に記載の液晶表示素子。
【請求項35】
下記の工程(1)~(3)を含む、液晶表示素子の製造方法。
工程(1):請求項
22又は
23に記載の液晶配向剤を基板上に塗布する工程
工程(2):塗布した前記液晶配向剤を焼成し、膜を得る工程
工程(3):工程(2)で得られた前記膜に配向処理する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、該液晶配向剤から得られた液晶配向膜、及び該液晶配向膜を具備する液晶表示素子、並びにそれらに適した新規なジアミン、及び重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、携帯電話、スマートフォンなどの小型用途から、テレビ用、モニター用などの比較的大型の用途まで幅広く使用されている。また、電極構造や、使用する液晶分子の物性等が異なる種々の駆動方式が開発され、例えば、TN(Twisted Nematic)方式、STN(Super Twisted Nematic)方式、VA(Vertical Alignment)方式、IPS(In-Plane Switching)方式、FFS(Fringe Field Switching)方式等の各種のモードを用いた液晶表示素子が知られている。これらの液晶表示素子は、一般的に、液晶分子の配列状態を制御するために不可欠な液晶配向膜を有する。液晶配向膜の材料としては、耐熱性、機械的強度、液晶との親和性などの各種特性が良好である点から、ポリアミック酸やポリイミドが一般に使用されている。
【0003】
液晶表示素子には、高い表示品位が求められ、例えば、高い電圧保持率を示すことが要求特性の一つとなっている。この目的で、特許文献1には、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン等の、芳香族ジアミンを含有してなる液晶配向膜用組成物が開示されている。また、特許文献2には、2つの芳香環が特定のアルキレン基によって連結されたジアミンとテトラカルボン酸誘導体とを反応させて得られるポリアミック酸等を液晶配向剤の重合体成分として用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本特開平06-194670号公報
【文献】日本特開2014-132326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、液晶表示素子の高性能化に伴い、大画面で高精細な液晶テレビに加えて、車載用、例えば、カーナビゲーションシステムやメーターパネル、監視用カメラや医療用カメラのモニターなどへの適用が検討されている。そのため、液晶表示素子の特に高精細化などの高性能化に対する要求は更に高まっており、液晶配向膜としては液晶表示素子における各種特性を更に良好にできるものが求められている。
【0006】
本発明は、光や温度などの外部刺激により経時的に発生する画像焼き付き(区画及び線の画像焼き付き)、ムラ、又はヨゴレなどの表示不良の発生が抑制される、所謂表示品位の長期信頼性をもたらすための条件となる高い電圧保持率を有する液晶配向膜を形成することを一つの目的とする。また、本発明は、長期交流駆動によって発生する残像(以下、AC残像ともいう)を抑制し、視野角特性の需要に対応できる、低い液晶プレチルト角特性を示す液晶配向膜を形成することができる液晶配向剤、及び該液晶配向膜を具備する液晶表示素子、並びにそれらに適した新規なジアミン、及び重合体を提供することを他の一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を達成するために鋭意研究を行った結果、特定重合体を含有する液晶配向剤が、上記の目的を達成するために有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、下記を要旨とするものである。
下記式(1)で表される繰り返し単位(p1)及び該繰り返し単位(p1)のイミド化構造単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有する重合体を含有することを特徴とする液晶配向剤。
【化1】
(式(1)中、X
1は4価の有機基を表す。Y
1は「-Ar
1-O-W-O-Ar
2-」で表される2価の有機基である。
Ar
1、Ar
2は、それぞれ独立して、2価のベンゼン環又はビフェニル構造のいずれかの2価の芳香族基を表し、該芳香族基の任意の水素原子は1価の基で置き換えられてもよい。
Wは、*-(CH
2)
m-L-A-*(Lは、-O-C(=O)-又は-C(=O)-O-を表し、Aは-(CH
2)
n-を表す。
mは1~6の整数である。nは、1~16の整数である。nが2以上の場合、Aを構成する任意の-CH
2-は、-O-、-C(=O)-、-NH-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C=C-、フェニレン基、又はシクロへキシレン基で置換されていてもよい。
また、Wが有する水素原子の一部は、ハロゲン原子、メチル基、トリフルオロメチル基、又はヒドロキシ基で置換されていてもよい。)で表される炭素数4~20の2価の有機基である。*は結合手を表す。
R及びZはそれぞれ独立して水素原子又は1価の有機基を表す。)
なお、本発明において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、*は結合手を表す。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い電圧保持率を示し、また、残像の発生が抑制され、低い液晶プレチルト角特性を示す液晶配向膜を形成する液晶配向剤、該液晶配向剤から得られた液晶配向膜、該液晶配向膜を備えた高性能な液晶表示素子、及びそれらの製造に使用する新規なジアミン、及び重合体が得られる。
【0010】
本発明の上記効果が得られるメカニズムは必ずしも明らかではないが、ほぼ次のように推定される。まず、後述する特定ジアミンは、芳香族基に酸素原子が結合した構造を有するため、液晶配向膜とした際に、表示不良の原因となるイオン性不純物との相互作用が働き、不純物の拡散を抑えるトラップ現象によって電圧保持率が向上すると考えられる。また、不純物に対する同様のトラップ現象が、特定ジアミンの有するエステル結合にも起こるため、上記効果が得られたと考えられる。更には、特定ジアミンがエステル結合やアルキレン鎖を有することで、配向処理する際の重合体の延伸性が高くなり、高い液晶配向性が得られるため、AC残像の発生が抑制された液晶配向膜が得られるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の横電界液晶表示素子の一例を示す概略部分断面図である。
【
図2】本発明の横電界液晶表示素子の他の例を示す概略部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<液晶配向剤に含有される重合体>
本発明の液晶配向剤は、上記のように、下記式(1)で表される繰り返し単位(p1)及び該繰り返し単位(p1)のイミド化構造単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有する重合体を含有することを特徴とする。
【化2】
(式(1)中、X
1、Y
1、R及びZは、それぞれ上記で定義したとおりである。)
【0013】
上記式(1)におけるY1(「-Ar1-O-W-O-Ar2-」)におけるAr1、W及びAr2は、好ましい態様を含め、後述する式(DA)におけるAr1、W及びAr2と同様である。
上記式(1)における「-N(Z)-Ar1-O-W-O-Ar2-N(Z)-」は、例えば、下記の特定ジアミンを含むジアミン成分を重合体の原料に用いることで形成することが可能になるが、この方法に限定されない。
上記式(1)におけるR、及びZにおける1価の有機基としては、炭素数1~6の1価の炭化水素基、当該炭化水素基のメチレン基を-O-、-S-、-CO-、-COO-、-COS-、-NR3-、-CO-NR3-、-Si(R3)2-(ただし、R3は、水素原子又は炭素数1~6の1価の炭化水素基である。)、-SO2-等で置き換えてなる1価の基A、上記1価の炭化水素基又は上記1価の基Aの炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1個をハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、メルカプト基、ニトロソ基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基、シラノール基、スルフィノ基、ホスフィノ基、カルボキシ基、シアノ基、スルホ基、アシル基等で置換してなる1価の基、複素環を有する1価の基が挙げられる。
上記式(1)におけるR、及びZにおける1価の有機基としては、中でも、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、又はtert-ブトキシカルボニル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基が更に好ましく、メチル基がより一層好ましい。
R及びZは、本発明の効果を好適に得る観点から、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましい。
上記式(1)におけるX1としては、例えば、後述するテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体に由来する4価の有機基が挙げられる。上記X1におけるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体の好ましい態様として、後述の重合体(P)の合成に用いることが出来るテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体の好ましい態様を挙げることが出来る。
【0014】
<特定ジアミン>
本発明の液晶配向剤に含有される重合体は、例えば、下記式(D
A)で表されるジアミン(0)(以下、特定ジアミンともいう。)を含むジアミン成分を用いて得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(P)である。
【化3】
上記式(D
A)において、Ar
1、Ar
2、及びWは、それぞれ上記で定義したとおりである。
【0015】
上記式(DA)において、Wは、*-(CH2)m-L-A-*で表される炭素数4~20の2価の有機基であるが、本発明の効果を好適に得る観点から、炭素数4~18の2価の有機基がより好ましく、4~16の2価の有機基が更に好ましい。
また、上記WにおけるLは、好ましくは、-O-C(=O)-である。Aは、好ましくは、-(CH2)n-(nは1~16の整数である。)、又は-(CH2)n’-(n’は2~16の整数である。)における任意の-CH2-が、-O-、-C(=O)-、-NH-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C=C-、フェニレン基、又はシクロへキシレン基で置換されてなる2価の有機基である。
mは、高い液晶配向性が得られる観点から、2~6の整数がより好ましく、2~4の整数がより好ましく、2又は4の整数であることがさらに好ましい。nは、好ましくは1~13である。また、Wが有する水素原子を置換するハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0016】
上記Wのより好ましい具体例を挙げると、*-(CH2)p-O-C(=O)-(CH2)q-*、*-(CH2)p-O-C(=O)-(CH2)q-C(=O)-O-(CH2)r-、*-(CH2)p-C(=O)-O-(CH2)q-O-C(=O)-(CH2)r-*、*-(CH2)p-O-C(=O)-Q-C(=O)-O-(CH2)q-*(Qはフェニレン基又はシクロヘキシレン基を表す。)、*-(CH2)p-C(=O)-O-Q-O-C(=O)-(CH2)q-*(Qはフェニレン基又はシクロヘキシレン基を表す。)が挙げられる。ここにおいて、pは1~6の整数であり、好ましくは2~6の整数である。qは1~6の整数であり、2~6の整数がより好ましく、2、4又は6の整数であることが更に好ましい。rは1~6の整数であり、好ましくは2~6の整数である。
【0017】
上記式(DA)におけるAr1、Ar2の2価の芳香族の水素原子を置換する1価の基としては、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、炭素数2~10のフルオロアルケニル基、炭素数1~10のフルオロアルコキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルキルオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。なかでも、ハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数1~5のフルオロアルキル基、又は炭素数1~5のフルオロアルコキシ基、が好ましい。
【0018】
Ar1及びAr2で表される2価の芳香族基の好適な例としては、1,4-フェニレン、1,3-フェニレン、2-メチル-1,4-フェニレン、2-エチル-1,4-フェニレン、2-プロピル-1,4-フェニレン、2-ブチル-1,4-フェニレン、2-イソプロピル-1,4-フェニレン、2-tert-ブチル-1,4-フェニレン、2-メトキシ-1,4-フェニレン、2-エトキシ-1,4-フェニレン、2-プロポキシ-1,4-フェニレン、2-ブトキシ-1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジメチル-1,4-フェニレン、4-メチル-1,3-フェニレン、5-メチル-1,3-フェニレン、4-フルオロ-1,3-フェニレン、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレン、4,4’-ビフェニリレン、2-メチル-4,4’-ビフェニリレン、2-エチル-4,4’-ビフェニリレン、2-プロピル-4,4’-ビフェニリレン、2-ブチル-4,4’-ビフェニリレン、2-tert-ブチル-4,4’-ビフェニリレン、2-メトキシ-4,4’-ビフェニリレン、2-エトキシ-4,4’-ビフェニリレン、2-フルオロ-4,4’-ビフェニリレン、3-メチル-4,4’-ビフェニリレン、3-エチル-4,4’-ビフェニリレン、3-プロピル-4,4’-ビフェニリレン、3-ブチル-4,4’-ビフェニリレン、3-tert-ブチル-4,4’-ビフェニリレン、3-メトキシ-4,4’-ビフェニリレン、3-エトキシ-4,4’-ビフェニリレン、3-フルオロ-4,4’-ビフェニリレン、2,2’-ジメチル-4,4’-ビフェニリレン、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニリレン、3,3’-ビフェニリレン、5-メチル-3,3’-ビフェニリレン、5,5’-ジメチル-3,3’-ビフェニリレン等が挙げられる。
【0019】
上記式(D
A)の好ましい例としては、下記式(d
A-1)~(d
A-5)が挙げられる。尚、下記式(d
A-1)~(d
A-5)におけるベンゼン環上の水素原子は、1価の置換基で置換されてもよく、該置換基の好ましい具体例として、上記式(D
A)におけるAr
1、Ar
2の2価の芳香族の水素原子を置換する1価の基で例示した構造が挙げられる。
【化4】
【0020】
(重合体(P))
本発明の液晶配向剤に含有される重合体(P)は、例えば、上記ジアミン(0)を含有するジアミン成分を用いて得られるポリイミド前駆体、又は該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドである。ここにおいて、ポリイミド前駆体は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステルなどのイミド化することによりポリイミドを得ることができる重合体である。
上記重合体(P)のポリイミド前駆体であるポリアミック酸(P’)は、上記ジアミン(0)を含有するジアミン成分とテトラカルボン酸成分との重合反応により得ることができる。上記ジアミン(0)は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
ジアミン(0)の使用量は、全ジアミン成分に対して、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましい。
【0021】
本発明の効果を好適に得る観点から、重合体(P)は、繰り返し単位(p1)と繰り返し単位(p1)のイミド化構造との合計を重合体(P)が有する全繰り返し単位の5モル%以上含むことが好ましく、10モル%以上含むことがより好ましく、20モル%以上がさらに好ましい。なお、ここでの合計においては、繰り返し単位(p1)と繰り返し単位(p1)のイミド化構造とのいずれかが0モル%である場合も含まれる。以下においても合計という場合、構成要素の1又は2以上が0モル%である場合も含まれる。
【0022】
上記ポリアミック酸(P’)の製造に用いられるジアミン成分は、ジアミン(0)以外のジアミン(以下、その他のジアミンともいう。)を含んでいてもよい。上記ジアミン(0)に加えて、その他のジアミンを併用する場合は、ジアミン成分に対するジアミン(0)の使用量は、90モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましい。
【0023】
以下にその他のジアミンの例を挙げるが、これらに限定されるものではない。上記その他のジアミンは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。p-フェニレンジアミン、2,3,5,6-テトラメチル-p-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジメチル-m-フェニレンジアミン、2,5-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジフルオロ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジフルオロ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジアミノビフェニル、2,3’-ジアミノビフェニル、下記式(dAL-1)~(dAL-10)で表されるジアミン、1,7-ビス(4-アミノフェノキシ)ヘプタン、1,7-ビス(3-アミノフェノキシ)ヘプタン、1,8-ビス(4-アミノフェノキシ)オクタン、1,8-ビス(3-アミノフェノキシ)オクタン、1,9-ビス(4-アミノフェノキシ)ノナン、1,9-ビス(3-アミノフェノキシ)ノナン、1,10-ビス(4-アミノフェノキシ)デカン、1,10-ビス(3-アミノフェノキシ)デカン、1,11-ビス(4-アミノフェノキシ)ウンデカン、1,11-ビス(3-アミノフェノキシ)ウンデカン、1,12-ビス(4-アミノフェノキシ)ドデカン、1,12-ビス(3-アミノフェノキシ)ドデカン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ジフェニルエーテル、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼン、1,2-ビス(6-アミノ-2-ナフチルオキシ)エタン、1,2-ビス(6-アミノ-2-ナフチル)エタン、6-[2-(4-アミノフェノキシ)エトキシ]-2-ナフチルアミン、1,4-フェニレンビス(4-アミノベンゾエート)、1,4-フェニレンビス(3-アミノベンゾエート)、1,3-フェニレンビス(4-アミノベンゾエート)、1,3-フェニレンビス(3-アミノベンゾエート)、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート、ビス(3-アミノフェニル)テレフタレート、ビス(4-アミノフェニル)イソフタレート、ビス(3-アミノフェニル)イソフタレート;4,4’-ジアミノアゾベンゼン又はジアミノトランなどの光配向性基を有するジアミン;メタクリル酸2-(2,4-ジアミノフェノキシ)エチル又は2,4-ジアミノ-N,N-ジアリルアニリン等の光重合性基を末端に有するジアミン;1-(4-(2-(2,4-ジアミノフェノキシ)エトキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノン、2-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)フェノキシ)エチル-3,5-ジアミノベンゾエートなどのラジカル重合開始剤機能を有するジアミン;4,4’-ジアミノベンズアニリドなどのアミド結合を有するジアミン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ウレア、1,3-ビス(4-アミノベンジル)ウレア、1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレアなどのウレア結合を有するジアミン;3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2’-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2’-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)プロパン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノベンジル)ベンゼン;2,6-ジアミノピリジン、3,4-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノピリミジン、3,6-ジアミノカルバゾール、N-メチル-3,6-ジアミノカルバゾール、1,4-ビス-(4-アミノフェニル)-ピペラジン、3,6-ジアミノアクリジン、N-エチル-3,6-ジアミノカルバゾール、N-フェニル-3,6-ジアミノカルバゾール、N-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル-3,5-ジアミノベンズアミド、4-[4-[(4-アミノフェノキシ)メチル]-4,5-ジヒドロ-4-メチル-2-オキサゾリル]-ベンゼンアミン、若しくは下記式(z-1)~式(z-13)で表されるジアミンなどの複素環含有ジアミン、又は、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、4,4’-ジアミノジフェニル-N-メチルアミン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-ベンジジン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-N,N’-ジメチルベンジジン、若しくは、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)-N,N’-ジメチル-1,4-ベンゼンジアミンなどのジフェニルアミン構造を有するジアミンに代表される、窒素原子含有複素環、第二級アミノ基及び第三級アミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の窒素原子含有構造(以下、特定の窒素原子含有構造ともいう。)を有するジアミン(但し、加熱によって脱離し、水素原子に置き換わる保護基が結合したアミノ基を分子内に有しない。);2,4-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノベンジルアルコール、2,4-ジアミノベンジルアルコール、4,6-ジアミノレゾルシノール、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル;2,4-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸、4,4’-ジアミノビフェニル-3-カルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルメタン-3-カルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルエタン-3-カルボン酸、4,4’-ジアミノビフェニル-3,3’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノビフェニル-2,2’-ジカルボン酸、3,3’-ジアミノビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、3,3’-ジアミノビフェニル-2,4’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルメタン-3,3’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルエタン-3,3’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル-3,3’-ジカルボン酸などのカルボキシ基を有するジアミン;4-(2-(メチルアミノ)エチル)アニリン、4-(2-アミノエチル)アニリン、1-(4-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチル-1H-インダン-5-アミン、1-(4-アミノフェニル)-2,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-1H-インデン-6-アミン;下記式(5-1)~(5-6)などの基「-N(D)-」(Dは加熱によって脱離し水素原子に置き換わる保護基を表し、好ましくはカルバメート系保護基であり、より好ましくはtert-ブトキシカルボニル基である。)を有するジアミン、コレスタニルオキシ-3,5-ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ-3,5-ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ-2,4-ジアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5-ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5-ジアミノ安息香酸ラノスタニル及び3,6-ビス(4-アミノベンゾイルオキシ)コレスタン等のステロイド骨格を有するジアミン、下記式(V-1)~(V-2)で表されるジアミン;1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テトラメチルジシロキサン等のシロキサン結合を有するジアミン;メタキシリレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、国際公開第2018/117239号に記載の式(Y-1)~(Y-167)のいずれかで表される基に2つのアミノ基が結合したジアミン等。
【0024】
【0025】
【化6】
(Bocは、tert-ブトキシカルボニル基を表す。)
【0026】
【0027】
【0028】
【化9】
上記式(V-1)中、m、nは1~3の整数であり、1≦m+n≦4を満たす。jは0又は1の整数である。X
1は、-(CH
2)
a-(aは1~15の整数である。)、-CONH-、-NHCO-、-CO-N(CH
3)-、-NH-、-O-、-CH
2O-、-CH
2-OCO-、-COO-、又は-OCO-を表す。R
1は、フッ素原子、炭素数1~10のフッ素原子含有アルキル基、炭素数1~10のフッ素原子含有アルコキシ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、及び炭素数2~10のアルコキシアルキル基などの1価の基を表す。上記式(V-2)中、X
2は-O-、-CH
2O-、-CH
2-OCO-、-COO-、又は-OCO-を表す。m、n、X
1、R
1が2つ存在する場合、それぞれ独立して上記定義を有する。
【0029】
上記ジアミン(0)に加えてその他のジアミンを使用する場合、上記その他のジアミンの使用量は、使用される全ジアミン成分に対して、好ましくは10~90モル%であり、より好ましくは20~80モル%である。
上記その他のジアミンの使用量は、重合体(P)の製造に使用される全ジアミン成分に対して、好ましくは10~90モル%であり、より好ましくは20~80モル%である。
【0030】
(テトラカルボン酸成分)
上記ポリアミック酸(P’)を製造する場合、ジアミン成分と反応させるテトラカルボン酸成分は、テトラカルボン酸二無水物だけでなく、テトラカルボン酸、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸ジアルキルエステル、又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライドなどのテトラカルボン酸二無水物の誘導体を用いることもできる。
【0031】
上記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物、又はこれらの誘導体が挙げられる。なかでも、ベンゼン環、シクロブタン環、シクロペンタン環及びシクロヘキサン環よりなる群から選ばれる少なくとも一種の部分構造を有するテトラカルボン酸二無水物又はこれらの誘導体を含むことがより好ましい。特に、シクロブタン環、シクロペンタン環及びシクロヘキサン環よりなる群から選ばれる少なくとも一種の構造を有するテトラカルボン酸二無水物又はこれらの誘導体を含むことが更に好ましい。
なお、芳香族テトラカルボン酸二無水物は、芳香環に結合する少なくとも1つのカルボキシ基を含めて4つのカルボキシ基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。
非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、鎖状炭化水素構造に結合する4つのカルボキシ基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。但し、鎖状炭化水素構造のみで構成されている必要はなく、その一部に脂環式構造や芳香環構造を有していてもよい。
脂環式テトラカルボン酸二無水物は、脂環式構造に結合する少なくとも1つのカルボキシ基を含めて4つのカルボキシ基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。但し、これら4つのカルボキシ基はいずれも芳香環には結合していない。また、脂環式構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状炭化水素構造や芳香環構造を有していてもよい。
【0032】
上記ポリアミック酸(P’)の製造に用いることのできるテトラカルボン酸成分としては、好ましくは、以下のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体(本発明では、これらを総称して特定のテトラカルボン酸誘導体ともいう。)を含む。
1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物等の非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物;1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジクロロ-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジフルオロ-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ビス(トリフルオロメチル)-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-8-メチル-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、ビシクロ[2.2.2]オクタ-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,4,6,8-テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン-2:4,6:8-二無水物等の脂環式テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメート、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-カルボニルジフタル酸無水物、4,4’-オキシジ(1,4-フェニレン)ビス(フタル酸)二無水物、又は4,4’-メチレンジ(1,4-フェニレン)ビス(フタル酸)二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物;そのほか、特開2010-97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物等。
【0033】
上記特定のテトラカルボン酸誘導体の好ましい例としては、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジフルオロ-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ビス(トリフルオロメチル)-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-8-メチル-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、2,4,6,8-テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン-2:4,6:8-二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、又はこれらの誘導体である。
【0034】
上記特定のテトラカルボン酸誘導体の使用割合は、使用される全テトラカルボン酸成分に対して、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、50モル%以上がさらに好ましい。
【0035】
(液晶配向剤)
本発明の液晶配向剤は、例えば、重合体(P)、及び必要に応じて使用されるその他の成分が、好ましくは適当な溶媒中に分散又は溶解してなる液状の組成物である。
本発明の液晶配向剤に含まれる重合体の合計含有量は、形成させようとする塗膜の厚みの設定によっても適宜変更できるが、均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点から1質量%以上が好ましく、溶液の保存安定性の点からは、10質量%以下が好ましい。特に好ましい重合体の合計含有量は、2~8質量%である。
本発明に用いられる重合体(P)の含有量は、液晶配向剤に含有される重合体の合計に対し、1~100質量%が好ましく、10~100質量%がより好ましく、20~100質量%が特に好ましい。
【0036】
本発明の液晶配向剤は、重合体(P)以外のその他の重合体を含有してもよい。その他の重合体の具体例を挙げると、上記重合体(P)に加えて、上記特定ジアミンを有しないジアミン成分を用いて得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(本発明では重合体(B)ともいう。)、ポリシロキサン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレア、ポリオルガノシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン-マレイン酸無水物)共重合体、ポリ(イソブチレン-マレイン酸無水物)共重合体、ポリ(ビニルエーテル-マレイン酸無水物)共重合体、ポリ(スチレン-フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる重合体などが挙げられる。
【0037】
ポリ(スチレン-マレイン酸無水物)共重合体の具体例としては、SMA1000、SMA2000、SMA3000(Cray Valley社製)、GSM301(岐阜セラツク製造所社製)などが挙げられ、ポリ(イソブチレン-マレイン酸無水物)共重合体の具体例としては、イソバン-600(クラレ社製)が挙げられる。ポリ(ビニルエーテル-マレイン酸無水物)共重合体の具体例としては、Gantrez AN-139(メチルビニルエーテル無水マレイン酸樹脂、アシュランド社製)が挙げられる。
なかでも、残留DC由来の残像を少なくする点から、重合体(B)がより好ましい。
上記その他の重合体は、一種を単独で使用してもよく、また二種以上を組み合わせて使用してもよい。その他の重合体の含有割合は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100質量部に対して、90質量部以下が好ましく、10~90質量部がより好ましく、20~80質量部が更に好ましい。
【0038】
(重合体(B))
上記重合体(B)の製造に用いられるテトラカルボン酸成分の具体例は、好ましい具体例を含めて、重合体(P)で例示した化合物と同様の化合物が挙げられる。重合体(B)の製造に用いられるテトラカルボン酸成分は、より好ましくは、ベンゼン環、シクロブタン環、シクロペンタン環及びシクロヘキサン環よりなる群から選ばれる少なくとも一種の部分構造を有するテトラカルボン酸二無水物又はこれらの誘導体を含むことがより好ましく、上記特定のテトラカルボン酸誘導体がさらに好ましく、上記特定のテトラカルボン酸誘導体のより好ましい具体例を用いることが最も好ましい。
また、上記特定のテトラカルボン酸誘導体の使用量は、重合体(B)の製造に使用される全テトラカルボン酸成分に対して、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、50モル%以上がさらに好ましい。
【0039】
重合体(B)を得るためのジアミン成分としては、例えば、上記重合体(P)で例示したジアミンが挙げられる。中でも、分子内にウレア結合、アミド結合、カルボキシ基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有するジアミン、上記式(dAL-1)~(dAL-10)で表されるジアミン及び、上記特定の窒素原子含有構造を有するジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミン(本発明では、これらを特定ジアミン(b)ともいう。)を含むことが好ましい。前記ジアミン成分は、一種のジアミンを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記特定ジアミン(b)を用いる場合、その使用量は、重合体(B)の製造に用いられる全ジアミン成分の10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましい。特定ジアミン(b)以外のジアミンを用いる場合、その使用量は、重合体(B)の製造に用いられる全ジアミン成分の90モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましい。
【0040】
(ポリアミック酸の製造)
ポリアミック酸の製造は、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを有機溶媒中で反応させることにより行われる。ポリアミック酸の製造反応に供されるテトラカルボン酸成分とジアミン成分との使用割合は、ジアミン成分のアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸成分の酸無水物基が0.5~2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.8~1.2当量である。通常の重縮合反応と同様に、このテトラカルボン酸成分の酸無水物基の当量が1当量に近いほど、生成するポリアミック酸の分子量は大きくなる。
ポリアミック酸の製造における反応温度は-20~150℃が好ましく、0~100℃がより好ましい。また、反応時間は0.1~24時間が好ましく、0.5~12時間がより好ましい。ポリアミック酸の製造は任意の濃度で行うことができるがポリアミック酸の濃度は好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、溶媒を追加することもできる。
【0041】
上記有機溶媒の具体例としては、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンが挙げられる。また、重合体の溶媒溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、又はジエチレングリコールモノエチルエーテルなどの溶媒を用いることができる。
【0042】
(ポリアミック酸エスエルの製造)
ポリアミック酸エステルは、例えば、[I]上記の方法で得られたポリアミック酸とエステル化剤とを反応させる方法、[II]テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを反応させる方法、[III]テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミンとを反応させる方法、などの既知の方法によって得ることができる。
【0043】
(ポリイミドの製造)
ポリイミドは、上記ポリアミック酸又はポリアミック酸エステルなどのポリイミド前駆体を閉環(イミド化)させることによりポリイミドを得ることができる。なお、本明細書でいうイミド化率とは、テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体由来のイミド基とカルボキシ基(又はその誘導体)との合計量に占めるイミド基の割合のことである。イミド化率は、必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整できる。
【0044】
ポリイミド前駆体をイミド化させる方法としては、ポリイミド前駆体の溶液をそのまま加熱する熱イミド化又はポリイミド前駆体の溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。
ポリイミド前駆体を溶液中で熱イミド化させる場合の温度は、好ましくは100~400℃であり、より好ましくは120~250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行う方が好ましい。
【0045】
ポリイミド前駆体の触媒イミド化は、ポリイミド前駆体の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、-20~250℃、好ましくは0~180℃で撹拌することにより行うことができる。塩基性触媒の量はアミック酸基の0.5~30モル倍、好ましくは2~20モル倍であり、酸無水物の量はアミック酸基の1~50モル倍、好ましくは3~30モル倍である。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン又はトリオクチルアミンなどを挙げることができ、なかでも、ピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸又は無水ピロメリット酸などを挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
【0046】
ポリイミド前駆体又はポリイミドの反応溶液から、生成したポリイミド前駆体又はポリイミドを回収する場合には、反応溶液を溶媒に投入して沈殿させればよい。沈殿に用いる溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、ベンゼン、水などを挙げることができる。溶媒に投入して沈殿させた重合体は濾過して回収した後、常圧又は減圧下で、常温又は加熱して乾燥することができる。また、回収した重合体を、有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2~10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の溶媒として、例えば、アルコール、ケトン又は炭化水素などが挙げられ、これらのうちから選ばれる3種類以上の溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0047】
本発明におけるポリイミド前駆体やポリイミドを製造するに際して、テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を含むテトラカルボン酸成分、及び上記ジアミンを含むジアミン成分とともに、適当な末端封止剤を用いて末端封止型の重合体を製造してもよい。末端封止型の重合体は、塗膜によって得られる配向膜の膜硬度の向上や、シール剤と配向膜の密着特性の向上という効果を有する。
本発明におけるポリイミド前駆体やポリイミドの末端の例としては、アミノ基、カルボキシ基、酸無水物基又は後述する末端封止剤に由来する基が挙げられる。アミノ基、カルボキシ基、酸無水物基は通常の縮合反応により得るか、又は以下の末端封止剤を用いて末端を封止することにより得ることができる。
【0048】
末端封止剤としては、例えば、無水酢酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3-ヒドロキシフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、3-(3-トリメトキシシリル)プロピル)-3,4-ジヒドロフラン-2,5-ジオン、4,5,6,7-テトラフルオロイソベンゾフラン-1,3-ジオン、4-エチニルフタル酸無水物などの酸無水物;二炭酸ジ-tert-ブチル、二炭酸ジアリルなどの二炭酸ジエステル化合物;アクリロイルクロリド、メタクリロイルクロリド、ニコチン酸クロリドなどのクロロカルボニル化合物;アニリン、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノサリチル酸、5-アミノサリチル酸、6-アミノサリチル酸、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、シクロヘキシルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミンなどのモノアミン化合物;エチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネート、又は、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネ-ト、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネ-トなどの不飽和結合を有するイソシアネートなどを挙げることができる。
末端封止剤の使用割合は、使用するジアミン成分の合計100モル部に対して、0.01~20モル部とすることが好ましく、0.01~10モル部とすることがより好ましい。
【0049】
ポリイミド前駆体及びポリイミドのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~500,000であり、より好ましくは2,000~300,000であり、さらに好ましくは10,000~50,000である。また、Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。かかる分子量範囲にあることで、液晶表示素子の良好な液晶配向性を確保することができる。
【0050】
本発明に係る液晶配向剤に含有される有機溶媒は、重合体(P)や必要に応じて添加されるその他の重合体が均一に溶解するものであれば特に限定されない。例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルラクトアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、テトラメチル尿素、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N-(n-プロピル)-2-ピロリドン、N-イソプロピル-2-ピロリドン、N-(n-ブチル)-2-ピロリドン、N-(t-ブチル)-2-ピロリドン、N-(n-ペンチル)-2-ピロリドン、N-メトキシプロピル-2-ピロリドン、N-エトキシエチル-2-ピロリドン、N-メトキシブチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン(これらを総称して、良溶媒ともいう)などが挙げられる。なかでも、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド又はγ-ブチロラクトンが好ましい。良溶媒の含有量は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の20~99質量%であることが好ましく、20~90質量%がより好ましく、特に好ましいのは、30~80質量%である。
【0051】
また、液晶配向剤に含有される有機溶媒は、上記溶媒に加えて液晶配向剤を塗布する際の塗布性や塗膜の表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒ともいう。)を併用した混合溶媒の使用が好ましい。貧溶媒の具体例を下記するが、これらに限定されない。貧溶媒の含有量は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の1~80質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましく、20~70質量%が特に好ましい。貧溶媒の種類及び含有量は、液晶配向剤の塗布装置、塗布条件、塗布環境などに応じて適宜選択される。
【0052】
貧溶媒としては、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソブチルカルビノール(2,6-ジメチル-4-ヘプタノール)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、3-エトキシブチルアセタート、1-メチルペンチルアセタート、2-エチルブチルアセタート、2-エチルヘキシルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1-(2-ブトキシエトキシ)-2-プロパノール、2-(2-ブトキシエトキシ)-1-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアセタート、ジエチレングリコールアセタート、プロピレングリコールジアセテート、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸シクロヘキシル、酢酸4-メチル-2-ペンチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、乳酸n-ブチル、乳酸イソアミル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジイソブチルケトン(2,6-ジメチル-4-ヘプタノン)などが挙げられる。
【0053】
なかでも、ジイソブチルカルビノール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、又はジイソブチルケトンが好ましい。
【0054】
良溶媒と貧溶媒との好ましい溶媒の組み合わせとしては、N-メチル-2-ピロリドンとエチレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとエチレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールジアセテート、N,N-ジメチルラクトアミドとジイソブチルケトン、N-メチル-2-ピロリドンと3-エトキシプロピオン酸エチル、N-エチル-2-ピロリドンと3-エトキシプロピオン酸エチル、N-メチル-2-ピロリドンと3-エトキシプロピオン酸エチルとジプロピレングリコールモノメチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンと3-エトキシプロピオン酸エチルとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンと3-エトキシプロピオン酸エチルとジエチレングリコールモノプロピルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンと3-エトキシプロピオン酸エチルとジエチレングリコールモノプロピルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、N-エチル-2-ピロリドンとジプロピレングリコールジメチルエーテル、N,N-ジメチルラクトアミドとエチレングリコールモノブチルエーテル、N,N-ジメチルラクトアミドとプロピレングリコールジアセテート、N-エチル-2-ピロリドンとジエチレングリコールジエチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとジエチレングリコールモノエチルエーテルとブチルセロソルブアセテート、N-メチル-2-ピロリドンとジエチレングリコールモノメチルエーテルとブチルセロソルブアセテート、N,N-ジメチルラクトアミドとジエチレングリコールジエチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとジエチレングリコールジエチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとN-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、N-エチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとジイソブチルケトン、N-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとジプロピレングリコールモノメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとプロピレングリコールジアセテート、N-エチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとジプロピレングリコールジメチルエーテル、γ-ブチロラクトンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとジイソブチルケトン、γ-ブチロラクトンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとプロピレングリコールジアセテート、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソブチルケトン、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソプロピルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソブチルカルビノール、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとジプロピレングリコールジメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジプロピレングリコールジメチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジプロピレングリコールモノメチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとジエチレングリコールジエチルエーテルとジプロピレングリコールモノメチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとプロピレングリコールジアセテート、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとジイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドンとN,N-ジメチルラクトアミドとジイソブチルケトン、N-メチル-2-ピロリドンとエチレングリコールモノブチルエーテルとエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、γ-ブチロラクトンとエチレングリコールモノブチルエーテルアセタートとジプロピレングリコールジメチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとエチレングリコールモノブチルエーテルアセタートとプロピレングリコールジメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンと酢酸4-メチル-2-ペンチルとエチレングリコールモノブチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンと酢酸シクロヘキシルと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、シクロヘキサノンとプロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロペンタノンとプロピレングリコールモノメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとシクロヘキサノンとプロピレングリコールモノメチルエーテルなどを挙げることができる。
【0055】
(液晶配向剤)
本発明の液晶配向剤は、上記重合体(P)、上記その他の重合体、及び上記有機溶媒に加えて、それ以外の成分(以下、添加剤成分ともいう。)を含有してもよい。かかる添加剤成分としては、例えば、オキシラニル基、オキセタニル基、ブロックイソシアネート基、オキサゾリン基、シクロカーボネート基、ヒドロキシ基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種の置換基を有する架橋性化合物、並びに重合性不飽和基を有する架橋性化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋性化合物、官能性シラン化合物、金属キレート化合物、硬化促進剤、界面活性剤、酸化防止剤、増感剤、防腐剤、得られる液晶配向膜の誘電率や電気抵抗を調整するための化合物などが挙げられる。
【0056】
上記架橋性化合物の好ましい具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6-テトラグリシジル-2,4-ヘキサンジオール、エピコート828(三菱ケミカル社製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピコート807(三菱ケミカル社製)などのビスフェノールF型エポキシ樹脂、YX-8000(三菱ケミカル社製)などの水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、YX6954BH30(三菱ケミカル社製)などのビフェニル骨格含有エポキシ樹脂、EPPN-201(日本化薬社製)などのフェノールノボラック型エポキシ樹脂、EOCN-102S(日本化薬社製)などの(o,m,p-)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、TEPIC(日産化学社製)などのトリグリシジルイソシアヌレート、セロキサイド2021P(ダイセル化学工業社製)などの脂環式エポキシ樹脂、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、又はN,N,N’,N’-テトラグリシジル-4、4’-ジアミノジフェニルメタンに代表される3級窒素原子を含有する化合物、テトラキス(グリシジルオキシメチル)メタンなどのオキシラニル基を2つ以上有する化合物;WO2011/132751号公報の段落[0170]~[0175]に記載の2個以上のオキセタニル基を2つ以上有する化合物;コロネートAPステーブルM、コロネート2503、2515、2507、2513、2555、ミリオネートMS-50(以上、東ソー社製)、タケネートB-830、B-815N、B-820NSU、B-842N、B-846N、B-870N、B-874N、B-882N(以上、三井化学社製)等のブロックイソシアネート基を有する化合物;2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2’-ビス(5-メチル-2-オキサゾリン)、1,2,4-トリス-(2-オキサゾリニル-2)-ベンゼン、エポクロス(日本触媒社製)のようなオキサゾリン基を有する化合物;WO2011/155577号公報の段落[0025]~[0030]、[0032]に記載のシクロカーボネート基を有する化合物;n,n,n’,n’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アジポアミド、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジヒドロキシメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジヒドロキシメチルフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンなどのヒドロキシ基やアルコキシ基を有する化合物;グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート(1,2-,1,3-体混合物)、グリセリントリス(メタ)アクリレート、グリセロール1,3-ジグリセロラートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートで示される化合物が挙げられる。
上記架橋性化合物の含有量は液晶配向剤に含まれる重合体成分100質量部に対して0.1~30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~20質量部である。
【0057】
上記誘電率や電気抵抗を調整するための化合物としては、3-ピコリルアミンなどの窒素原子含有芳香族複素環を有するモノアミンが挙げられる。窒素原子含有芳香族複素環を有するモノアミンの含有量は液晶配向剤に含まれる重合体成分100質量部に対して0.1~30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~20質量部である。
【0058】
上記官能性シラン化合物の好ましい具体例としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。官能性シラン化合物の含有量は、液晶配向剤に含まれる重合体成分100質量部に対して0.1~30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~20質量部である。
【0059】
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計質量が液晶配向剤の全質量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1~10質量%である。
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えばスピンコート法を用いる場合には、固形分濃度が1.5~4.5質量%であることが特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3~9質量%とし、それにより溶液粘度を12~50mPa・sとすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1~5質量%とし、それにより、溶液粘度を3~15mPa・sとすることが特に好ましい。重合体組成物を調製する際の温度は、好ましくは10~50℃であり、より好ましくは20~30℃である。
【0060】
(液晶配向膜及び液晶表示素子)
本発明に係る液晶表示素子は、上記液晶配向剤を用いて形成した液晶配向膜を具備する。液晶表示素子の動作モードは特に限定せず、例えば、TN型、STN型、垂直配向型(VA-MVA型、VA-PVA型などを含む。)、面内スイッチング型(IPS型、FFS型)、光学補償ベンド型(OCB型)など種々の動作モードに適用することができる。
【0061】
本発明の液晶表示素子は、例えば、以下の工程(1)~(4)を含む方法、工程(1)~(2)及び(4)を含む方法、工程(1)~(3)、(4-2)及び(4-4)を含む方法、又は工程(1)~(3)、(4-3)及び(4-4)を含む方法により製造することができる。
【0062】
<工程(1):液晶配向剤を基板上に塗布する工程>
工程(1)は、液晶配向剤を基板上に塗布する工程である。工程(1)の具体例は以下のとおりである。
パターニングされた透明導電膜が設けられている基板の一面に、液晶配向剤を、例えばロールコーター法、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などの適宜の塗布方法により塗布する。ここで基板の材質としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス、窒化珪素とともに、アクリル、ポリカーボネート等のプラスチック等を用いることもできる。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならば、シリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極にはアルミニウム等の光を反射する材料も使用できる。また、IPS型又はFFS型の液晶表示素子を製造する場合には、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜又は金属膜からなる電極が設けられている基板と、電極が設けられていない対向基板とを用いる。
【0063】
液晶配向剤を基板に塗布し、成膜する方法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット法、又はスプレー法等が挙げられる。なかでも、インクジェット法による塗布、成膜法が好適に使用できる。
【0064】
<工程(2):塗布した液晶配向剤を焼成する工程>
工程(2)は、基板上に塗布した液晶配向剤を焼成し、膜を形成する工程である。工程(2)の具体例は以下のとおりである。
工程(1)において液晶配向剤を基板上に塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブン又はIR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により、溶媒を蒸発させたり、ポリアミック酸の熱イミド化を行ったりすることができる。液晶配向剤を塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択することができ、複数回行ってもよい。液晶配向剤を焼成する温度としては、例えば40~180℃で行うことができる。プロセスを短縮する観点で、40~150℃で行ってもよい。焼成時間としては特に限定されないが、1~10分又は、1~5分が挙げられる。ポリアミック酸の熱イミド化を行う場合には、上記工程の後、例えば150~300℃、又は150~250℃で焼成する工程を追加してもよい。焼成時間としては特に限定されないが、5~40分、又は、5~30分の焼成時間が挙げられる。
焼成後の膜状物の膜厚は、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、5~300nmが好ましく、10~200nmがより好ましい。
【0065】
<工程(3):工程(2)で得られた膜に配向処理する工程>
工程(3)は、場合により、工程(2)で得られた膜に配向処理する工程である。即ち、IPS方式又はFFS方式等の水平配向型の液晶表示素子では該塗膜に対し配向能付与処理を行う。一方、VA方式又はPSAモード等の垂直配向型の液晶表示素子では、形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、該塗膜に対し配向能付与処理を施してもよい。液晶配向膜の配向処理方法としては、ラビング処理法、光配向処理法が挙げられる。光配向処理法としては、上記膜状物の表面に、一定方向に偏光された放射線を照射し、場合により、好ましくは、150~250℃の温度で加熱処理を行い、液晶配向性(液晶配向能ともいう)を付与する方法が挙げられる。放射線としては、100~800nmの波長を有する紫外線又は可視光線を用いることができる。なかでも、好ましくは100~400nm、より好ましくは、200~400nmの波長を有する紫外線である。
【0066】
上記放射線の照射量は、1~10,000mJ/cm2が好ましく、なかでも、100~5,000mJ/cm2がより好ましい。また、放射線を照射する場合、液晶配向性を改善するために、上記膜状物を有する基板を、50~250℃で加熱しながら照射してもよい。このようにして作製した上記液晶配向膜は、液晶分子を一定の方向に安定して配向させることができる。
更に、上記の方法で、偏光された放射線を照射した液晶配向膜に、水や溶媒を用いて、接触処理するか、放射線を照射した液晶配向膜を加熱処理することもできる。
【0067】
上記接触処理に使用する溶媒としては、放射線の照射によって膜状物から生成した分解物を溶解する溶媒であれば、特に限定されるものではない。具体例としては、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、1-メトキシ-2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、ブチルセロソルブ、乳酸エチル、乳酸メチル、ジアセトンアルコール、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸シクロヘキシル等が挙げられる。溶媒は、1種類でも、2種類以上組み合わせてもよい。
【0068】
上記の放射線を照射した塗膜に対する加熱処理の温度は、50~300℃がより好ましく、120~250℃がさらに好ましい。加熱処理の時間としては、それぞれ1~30分とすることが好ましい。
【0069】
<工程(4):液晶セルを作製する工程>
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶組成物を配置する。具体的には以下の2つの方法が挙げられる。
第一の方法は、先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置する。次いで、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶組成物を注入充填して膜面に接触した後、注入孔を封止する。
【0070】
また、第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布し、更に液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶組成物を滴下する。その後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせて液晶組成物を基板の全面に押し広げて膜面に接触させる。次いで、基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化する。いずれの方法による場合でも、更に、用いた液晶組成物が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
なお、塗膜に対してラビング処理を行った場合には、2枚の基板は、各塗膜におけるラビング方向が互いに所定の角度、例えば直交又は逆平行となるように対向配置される。
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂等を用いることができる。液晶組成物としては、特に制限はなく、少なくとも一種の液晶化合物(液晶分子)を含む組成物であって、ネマチック相を呈する液晶組成物(以下、ネマチック液晶ともいう。)、スメクチック相を呈する液晶、又はコレステリック相を呈する液晶組成物を挙げることができ、そのなかでもネマチック液晶が好ましい。また、誘電率異方性が正または負の各種の液晶組成物を用いることができる。なお、以下では、誘電率異方性が正の液晶組成物を、ポジ型液晶ともいい、誘電異方性が負の液晶組成物を、ネガ型液晶ともいう。
上記液晶組成物は、フッ素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、フッ素原子含有基(例えば、トリフルオロメチル基)、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、イソチオシアネート基、複素環、シクロアルカン、シクロアルケン、ステロイド骨格、ベンゼン環、又はナフタレン環を有する液晶化合物を含んでもよく、分子内に液晶性を発現する剛直な部位(メソゲン骨格)を2つ以上有する化合物(例えば、剛直な二つのビフェニル構造、又はターフェニル構造がアルキル基で連結されたバイメソゲン化合物)を含んでもよい。
また、上記液晶組成物は、液晶配向性を向上させる観点から、添加物をさらに含有してもよい。このような添加物は、重合性基を有する化合物などの光重合性モノマー;光学活性な化合物(例:メルク(株)社製のS-811など);酸化防止剤;紫外線吸収剤;色素;消泡剤;重合開始剤;又は重合禁止剤などが挙げられる。
ポジ型液晶としては、メルク社製のZLI-2293、ZLI-4792、MLC-2003、MLC-2041、MLC-3019、又はMLC-7081などが挙げられる。
ネガ型液晶としては、例えばメルク社製のMLC-6608、MLC-6609、MLC-6610、MLC-7026、又はMLC-7026-100などが挙げられる。
また、重合性基を有する化合物を含有する液晶として、メルク社製のMLC-3023が挙げられる。
【0071】
本発明の液晶配向剤は、電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、一対の基板の間に活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により重合する重合性化合物を含む液晶組成物を配置し、電極間に電圧を印加しつつ、活性エネルギー線の照射及び加熱の少なくとも一方により、重合性化合物を重合させる工程を経て製造される液晶表示素子(PSA型液晶表示素子)にも好ましく用いられる。
また、本発明の液晶配向剤は、電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、上記一対の基板の間に活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により重合する重合性基を含む液晶配向膜を配置し、電極間に電圧を印加する工程を経て製造される液晶表示素子(SC-PVAモード型の液晶表示素子)にも好ましく用いられる。
【0072】
<工程(4-2):PSA型液晶表示素子の場合>
重合性化合物を含有する液晶組成物を注入又は滴下する点以外は上記(4)と同様に実施される。重合性化合物としては、例えばアクリレート基やメタクリレート基などの重合性不飽和基を分子内に1個以上有する重合性化合物を挙げることができる。
【0073】
<工程(4-3):SC-PVAモード型の液晶表示素子の場合>
上記(4)と同様にした後、後述する紫外線を照射する工程を経て液晶表示素子を製造する方法を採用してもよい。この方法によれば、上記PSA型液晶表示素子を製造する場合と同様に、少ない光照射量で応答速度に優れた液晶表示素子を得ることができる。重合性基を有する化合物は、上記重合性不飽和基を分子内に1個以上有する化合物であってもよく、その含有量は、全ての重合体成分100質量部に対して0.1~30質量部であることが好ましく、より好ましくは1~20質量部である。また、上記重合性基は液晶配向剤に用いる重合体が有していてもよく、このような重合体としては、例えば上記光重合性基を末端に有するジアミンを含むジアミン成分を反応に用いて得られる重合体が挙げられる。
【0074】
<工程(4-4):紫外線を照射する工程>
上記(4-2)又は(4-3)で得られた一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する。ここで印加する電圧は、例えば5~50Vの直流又は交流とすることができる。また、照射する光としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができるが、300~400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。照射光の光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザーなどを使用することができる。光の照射量は、好ましくは1,000~200,000J/m2であり、より好ましくは1,000~100,000J/m2である。
【0075】
そして、必要に応じて液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより液晶表示素子を得ることができる。液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【0076】
IPSモードにおいて使用される櫛歯電極基板であるIPS基板は、基材と、基材上に形成され、櫛歯状に配置された複数の線状電極と、基材上に線状電極を覆うように形成された液晶配向膜とを有する。
なお、FFSモードにおいて使用される櫛歯電極基板であるFFS基板は、基材と、基材上に形成された面電極と、面電極上に形成された絶縁膜と、絶縁膜上に形成され、櫛歯状に配置された複数の線状電極と、絶縁膜上に線状電極を覆うように形成された液晶配向膜とを有する。
【0077】
図1は、本発明の横電界液晶表示素子の一例を示す概略部分断面図であり、IPSモード液晶表示素子の例である。
図1に例示する横電界液晶表示素子1においては、液晶配向膜2cを具備する櫛歯電極基板2と液晶配向膜4aを具備する対向基板4との間に、液晶3が挟持されている。櫛歯電極基板2は、基材2aと、基材2a上に形成され、櫛歯状に配置された複数の線状電極2bと、基材2a上に線状電極2bを覆うように形成された液晶配向膜2cとを有している。対向基板4は、基材4bと、基材4b上に形成された液晶配向膜4aとを有している。液晶配向膜2cは、例えば、本発明の液晶配向膜である。液晶配向膜4cも同様に本発明の液晶配向膜である。
この横電界液晶表示素子1においては、線状電極2bに電圧が印加されると、電気力線Lで示すように線状電極2b間で電界が発生する。
【0078】
図2は、本発明の横電界液晶表示素子の他の例を示す概略部分断面図であり、FFSモード液晶表示素子の例である。
図2に例示する横電界液晶表示素子1においては、液晶配向膜2hを具備する櫛歯電極基板2と液晶配向膜4aを具備する対向基板4との間に、液晶3が挟持されている。櫛歯電極基板2は、基材2dと、基材2d上に形成された面電極2eと、面電極2e上に形成された絶縁膜2fと、絶縁膜2f上に形成され、櫛歯状に配置された複数の線状電極2gと、絶縁膜2f上に線状電極2gを覆うように形成された液晶配向膜2hとを有している。対向基板4は、基材4bと、基材4b上に形成された液晶配向膜4aとを有している。液晶配向膜2hは、例えば、本発明の液晶配向膜である。液晶配向膜4aも同様に本発明の液晶配向膜である。
この横電界液晶表示素子1においては、面電極2e及び線状電極2gに電圧が印加されると、電気力線Lで示すように面電極2e及び線状電極2g間で電界が発生する。
【実施例】
【0079】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらに限定して解釈されるものではない。使用した化合物の略号及び各物性の測定方法は、以下の通りである。
(有機溶媒)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン、 GBL:γ-ブチロラクトン、
BCS:ブチルセロソルブ、 BCA:ブチルセロソルブアセテート
THF:テトラヒドロフラン、 DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
<粘度の測定>
E型粘度計TVE-22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL、コーンロータTE-1(1°34’、R24)を用いて、温度25℃で測定した。
【0084】
<分子量の測定>
下記の常温GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)装置によって測定し、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド換算値として、Mn及びMwを算出した。
GPC装置:GPC-101(昭和電工社製)、カラム:GPC KD-803、GPC KD-805(昭和電工社製)の直列、カラム温度:50℃、溶離液:N,N-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム一水和物(LiBr・H2O)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10mL/L)、流速:1.0mL/分
検量線作成用標準サンプル:TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量;約900,000、150,000、100,000及び30,000)(東ソー社製)及びポリエチレングリコール(分子量;約12,000、4,000及び1,000)(ポリマーラボラトリー社製)。
【0085】
[モノマーの合成]
DA-1~DA-3は文献等未公開の新規化合物であり、下記モノマー合成例1~3における生成物は1H-NMR分析により同定した。分析条件は下記のとおりである。
装置:BRUKER ADVANCE III-500MHz
測定溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)
基準物質:テトラメチルシラン(TMS)(δ0.0 ppm for 1H)
【0086】
【0087】
2-(4-ニトロフェノキシ)エタノール(30.0g,0.164mol)に対し、THF(120g)及びピリジン(14.0g,0.177mol)を仕込み、氷浴(0℃)で冷却しながら撹拌した。得られた溶液中に、THF(60g)に溶解させたアジピン酸ジクロリド(17.0g,0.0929mol)を滴下し、滴下終了後、室温(25℃)で20分間撹拌し、その後45℃で18時間撹拌した。反応終了後、室温(25℃)へ冷却し、水(540g)を加えて結晶を析出させた。濾過により得られた結晶を乾燥させ、粗結晶(39g)を得た。粗結晶にTHF(300g)を加え70℃で加熱撹拌し、氷浴(0℃)で冷却しながらメタノール(400g)を加えて再結晶させた。これを濾過し、得られた結晶を乾燥させ、DA-1-1を得た(収量:34.0g,0.0713mol,収率88%)。
1H-NMR(500MHz) in DMSO-d6:δ(ppm)=8.19(d,J=9.5Hz,4H),7.16(d,J=9.5Hz,4H),4.37(q,4H),4.34(q,4H),2.33(t,4H),1.54-1.51(m,4H).
【0088】
上記で得られたDA-1-1(29.0g,0.0609mol)に対し、DMF(290g)を加え窒素置換した後、カーボン担持パラジウム(5%Pdカーボン粉末(含水品)Kタイプ、エヌ・イー・ケムキャット社製)(2.32g)を加え再度窒素置換し、水素テドラーバッグを取り付け、50℃で18時間加熱撹拌した。反応終了後、メンブレンフィルターに通してカーボン担持パラジウムを除去後、濾液に水(1000g)を加えて撹拌し結晶を析出させた。これを濾過し、粗結晶(24g)を得た。粗結晶にTHF(92g)を加え50℃で加熱撹拌してスラリー洗浄し、次いで氷浴(0℃)で冷却後、濾過し、得られた結晶を乾燥させ、結晶(22g)を得た。得られた結晶にDMF(66g)を加え50℃で加熱撹拌し、次いで氷浴(0℃)で冷却後、アセトニトリル(88g)を加えて再結晶させた。これを濾過し、得られた結晶を乾燥させ、DA-1を得た(収量:17.0g,0.0408mol,収率67%)。
1H-NMR(500MHz) in DMSO-d6:δ(ppm)=6.65(d,J=9.0Hz,4H),6.49(d,J=9.0Hz,4H),4.60(s,4H),4.26(t,4H),4.01(t,4H),2.33(t,4H),1.56-1.53(m,4H).
【0089】
【0090】
4’-ヒドロキシ-4-ニトロビフェニル(30.0g,0.139mol)に対し、DMF(210g)及び炭酸カリウム(48.0g,0.347mol)を仕込み、80℃で30分間加熱撹拌した。得られた溶液中に、DMF(30g)に溶解させた2-ブロモエタノール(26g,0.208mol)を滴下し、80℃で18時間加熱撹拌した。反応終了後、室温(25℃)へ冷却し、水(480g)を加えて結晶を析出させた。濾過し、得られた結晶を乾燥した。濾物にメタノールを加え、50℃で加熱撹拌してスラリー洗浄し、室温(25℃)へ冷却後、濾過した。濾液を濃縮後、同様の操作にて3次結晶まで取り出し、得られた結晶を乾燥させ、DA-2-1を得た(収量:31.0g,0.120mol,収率86%)。
1H-NMR(500MHz) in DMSO-d6:δ(ppm)=8.27(d,J=8.5Hz,2H),7.92(d,J=9.0Hz,2H),7.76(d,J=8.5Hz,2H),7.09(d,J=9.0Hz,2H),4.89(t,1H),4.09-4.06(m,2H),3.76-3.73(m,2H).
【0091】
上記で得られたDA-2-1(26.0g,0.100mol)に対し、THF(230g)及びピリジン(8.20g,0.104mol)を仕込み、氷浴(0℃)で冷却しながら撹拌した。この溶液中に、THF(26g)に溶解させたアジピン酸ジクロリド(9.9g,0.0541mol)を滴下し、滴下終了後、室温(25℃)で5時間撹拌し、その後45℃で1時間撹拌した。反応終了後、室温(25℃)へ冷却し、水(765g)を加えて結晶を析出させた。これを濾過し、得られた結晶を乾燥して粗結晶(29g)を得た。粗結晶にTHF(290g)を加え60℃で加熱撹拌した後、氷浴(0℃)で冷却しながらメタノール(290g)を加えて再結晶させた。これを濾過し、得られた結晶を乾燥させ、DA-2-2を得た(収量:24.0g,0.0382mol,収率76%)。
1H-NMR(500MHz) in DMSO-d6:δ(ppm)=8.25(d,J=9.0Hz,4H),7.90(d,J=8.5Hz,4H),7.74(d,J=8.5Hz,4H),7.09(d,J=8.5Hz,4H),4.37(t,4H),4.25(t,4H),2.34(t,4H),1.57-1.54(m,4H).
【0092】
上記で得られたDA-2-2(25.0g,0.0398mol)に対し、DMF(490g)を加え窒素置換した後、カーボン担持パラジウム(5%Pdカーボン粉末(含水品)Kタイプ、エヌ・イー・ケムキャット社製)(2.00g)を加え再度窒素置換し、水素テドラーバッグを取り付け室温(25℃)で48時間撹拌した。反応終了後、メンブレンフィルターに通しカーボン担持パラジウムを除去後、濾液を濃縮し結晶が析出し始めるまで濾液を濃縮した(DMFの残量:140g程度)。これを55℃で加熱撹拌・全溶解させ、室温(25℃)に冷却し、アセトニトリル(80g)を加え結晶を析出させた。これを濾過し、得られた結晶を乾燥させ、DA-2を得た(収量:20.0g,0.0352mol,収率88%)。
1H-NMR(500MHz) in DMSO-d
6:δ(ppm)=7.43(d,J=9.0Hz,4H),7.27(d,J=8.5Hz,4H),6.93(d,J=8.5Hz,4H),6.61(d,J=8.5Hz,4H),5.10(s,4H),4.33(t,4H),4.17(t,4H),2.33(t,4H),1.56-1.54(m,4H).
<モノマー合成例3:DA-3の合成>
【化15】
2-(4-ニトロフェノキシ)エタノール(35.7g,0.195mol)に対し、THF(180g)及びピリジン(18.4g,0.232mol)を仕込み、氷浴(0℃)で冷却しながら撹拌した。得られた溶液中に、THF(60g)に溶解させたスベリン酸ジクロリド(19.6g,0.0929mol)を滴下し、滴下終了後、室温(25℃)で20分間撹拌し、その後45℃で18時間撹拌した。反応終了後、室温(25℃)へ冷却し、水(400g)を加えて結晶を析出させた。濾過により得られた結晶を乾燥させ、粗結晶(35g)を得た。粗結晶にTHF(180g)を加え70℃で加熱撹拌し、氷浴(0℃)で冷却しながらメタノール(400g)を加えて再結晶させた。これを濾過し、得られた結晶を乾燥させ、DA-3-1を得た(収量:30.9g,0.0613mol,収率66%)。
1H-NMR(500MHz) in DMSO-d
6:δ(ppm)=8.19(d,J=9.5Hz,4H),7.17(d,J=9.5Hz,4H),4.38-4.34(m,8H),2.28(t,4H),1.48-1.45(m,4H),1.25-1.23(m,4H).
上記で得られたDA-3-1(30.9g,0.0613mol)に対し、THF(770g)を加え窒素置換した後、カーボン担持パラジウム(5%Pdカーボン粉末(含水品)Kタイプ、エヌ・イー・ケムキャット社製)(3.1g)を加え再度窒素置換し、水素テドラーバッグを取り付け、45℃で24時間加熱撹拌した。反応終了後、メンブレンフィルターに通してカーボン担持パラジウムを除去後、濾液を濃縮した後、撹拌しながらイソプロピルアルコール(240g)を加え、結晶を析出させた。これを濾過し、得られた結晶を乾燥させ、DA-3を得た(収量:24.9g,0.0560mol,収率91%)。
1H-NMR(500MHz) in DMSO-d
6:δ(ppm)=6.66(d,J=9.0Hz,4H),6.50(d,J=9.0Hz,4H),4.61(s,4H),4.26(t,4H),4.01(t,4H),2.31-2.28(m,4H),1.51-1.47(m,4H)、1.28-1.24(m、4H).
【0093】
[重合体の合成]
<合成例1>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-1(2.29g、5.50mmol)及びNMP(16.8g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-1(1.15g、5.27mmol)及びNMP(8.10g)を加えて、50℃で18時間撹拌することで、固形分濃度12質量%のポリアミック酸(A-1)の溶液(粘度:239mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは10,094、Mwは33,198であった。
【0094】
<合成例2>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-1(2.54g、6.10mmol)及びNMP(18.6g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-2(1.14g、5.81mmol)及びNMP(8.00g)を加えて、室温で18時間撹拌することで、固形分濃度12質量%のポリアミック酸(A-2)の溶液(粘度:241mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは12,332、Mwは46,258であった。
【0095】
<合成例3>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-1(3.12g、7.50mmol)及びNMP(22.9g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-3(1.60g、7.14mmol)及びNMP(10.8g)を加えて、40℃で18時間撹拌することで、固形分濃度12質量%のポリアミック酸(A-3)の溶液(粘度:282mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは10,704、Mwは39,144であった。
【0096】
<合成例4>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-3(2.58g、5.80mmol)及びNMP(23.2g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-3(1.21g、5.40mmol)及びNMP(4.4g)を加えて、40℃で18時間撹拌することで、固形分濃度12質量%のポリアミック酸(A-4)の溶液(粘度:190mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは10,832、Mwは43,395であった。
【0097】
<合成例5>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-1(2.27g、5.44mmol)、DA-6(0.390g、1.36mmol)及びNMP(19.5g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-3(1.45g、6.46mmol)及びNMP(10.1g)を加えて、40℃で18時間撹拌することで、固形分濃度12質量%のポリアミック酸(A-5)の溶液(粘度:327mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは10,534、Mwは37,647であった。
【0098】
<合成例6>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-1(1.46g、3.50mmol)、DA-6(1.00g、3.50mmol)及びNMP(18.0g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-3(1.48g、6.58mmol)及びNMP(10.8g)を加えて、40℃で18時間撹拌することで、固形分濃度12質量%のポリアミック酸(A-6)の溶液(粘度:225mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは10,400、Mwは25,285であった。
【0099】
<合成例7>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-1(0.73g、1.75mmol)、DA-6(1.50g、5.24mmol)及びNMP(20.1g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-3(1.47g、6.56mmol)及びNMP(6.9g)を加えて、40℃で18時間撹拌することで、固形分濃度12質量%のポリアミック酸(A-7)の溶液(粘度:236mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは10,634、Mwは31,097であった。
【0100】
<合成例8>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-3(0.80g、1.80mmol)、DA-6(1.55g、5.41mmol)及びNMP(21.1g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-3(1.52g、6.78mmol)及びNMP(7.0g)を加えて、40℃で18時間撹拌することで、固形分濃度12質量%のポリアミック酸(A-8)の溶液(粘度:209mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは9,900、Mwは28,856であった。
【0101】
<合成例9>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-1(1.67g、4.01mmol)、DA-4(0.98g、4.01mmol)及びNMP(23.8g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-1(1.63g、7.47mmol)及びNMP(7.6g)を加えて、50℃で18時間撹拌することで、固形分濃度12質量%のポリアミック酸(A-9)の溶液(粘度:300mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは9,351、Mwは31,020であった。
【0102】
<合成例10>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-2(2.50g、4.40mmol)及びNMP(19.6g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-1(0.873g、4.00mmol)及びNMP(5.10g)を加えて、50℃で18時間撹拌することで、固形分濃度12質量%のポリアミック酸(A-10)の溶液(粘度:231mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは9,716、Mwは25,390であった。
【0103】
<合成例11>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-2(2.79g、4.90mmol)及びNMP(20.4g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-2(0.88g、4.49mmol)及びNMP(6.35g)を加えて、室温で18時間撹拌することで、固形分濃度12質量%のポリアミック酸(A-11)の溶液(粘度:230mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは11,774、Mwは32,286であった。
【0104】
<合成例12>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-6(3.72g、13.0mmol)及びNMP(31.3g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-2(2.37g、12.1mmol)及びNMP(13.4g)を加えて、室温で18時間撹拌することで、固形分濃度12質量%のポリアミック酸(A-12)の溶液(粘度:229mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは10,585、Mwは27,581であった。
【0105】
<合成例13>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-7(2.46g、6.40mmol)及びNMP(18.0g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-2(1.23g、6.26mmol)及びNMP(8.40g)を加えて、室温で18時間撹拌することで、固形分濃度12質量%のポリアミック酸(A-13)の溶液(粘度:292mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは16,511、Mwは60,289であった。
【0106】
<合成例14>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-5(2.07g、8.01mmol)及びNMP(18.6g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-1(1.65g、7.56mmol)及びNMP(14.8g)を加えて、50℃で18時間撹拌することで、固形分濃度10質量%のポリアミック酸(A-14)の溶液(粘度:115mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは12,045、Mwは27,326であった。
【0107】
<合成例15>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-6(3.72g、13.0mmol)及びNMP(37.3g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-1(2.64g、12.1mmol)及びNMP(9.30g)を加えて、50℃で18時間撹拌することで、固形分濃度12質量%のポリアミック酸(A-15)の溶液(粘度:278mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは10,832、Mwは43,395であった。
【0108】
<合成例16>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-7(3.08g、8.00mmol)及びNMP(22.6g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-1(1.61g、7.36mmol)及びNMP(11.8g)を加えて、50℃で18時間撹拌することで、固形分濃度12質量%のポリアミック酸(A-16)の溶液(粘度:256mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは10,700、Mwは37,763であった。
【0109】
<合成例17>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-6(2.29g、8.00mmol)及びNMP(16.8g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-3(1.69g、7.52mmol)及びNMP(12.4g)を加えて、40℃で18時間撹拌することで、固形分濃度12質量%のポリアミック酸(A-17)の溶液(粘度:240mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは11,482、Mwは38,490であった。
【0110】
<合成例18>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-7(2.69g、7.00mmol)及びNMP(19.7g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-3(1.54g、6.86mmol)及びNMP(10.1g)を加えて、40℃で18時間撹拌することで、固形分濃度12質量%のポリアミック酸(A-18)の溶液(粘度:283mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは13,087、Mwは45,255であった。
【0111】
<合成例19>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-8(1.28g、6.42mmol)、DA-10(0.32g、1.61mmol)及びNMP(14.3g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-2(1.49g、7.60mmol)及びNMP(13.3g)を加えて、室温で18時間撹拌することで、固形分濃度10質量%のポリアミック酸(A-19)の溶液(粘度:125mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは11,120、Mwは41,992であった。
【0112】
<合成例20>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの100mL四つ口フラスコに、DA-8(2.99g、15.0mmol)、DA-9(2.11g、5.01mmol)、DA-10(0.99g、4.99mmol)及びNMP(44.6g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-2(4.51g、23.0mmol)及びNMP(15.4g)を加えて、室温で18時間撹拌することで、固形分濃度15質量%のポリアミック酸(A-20)の溶液(粘度:592mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは12,080、Mwは32,115であった。
【0113】
<合成例21>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの100mL四つ口フラスコに、DA-8(5.42g、27.2mmol)、DA-10(1.35g、6.80mmol)及びNMP(64.5g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-2(1.53g、7.82mmol)及びNMP(10.2g)を加えて、室温で0.5時間撹拌した。その後、この溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-4(6.38g、25.5mmol)及びNMP(8.50g)を加えて、50℃で18時間撹拌することで、固形分濃度15質量%のポリアミック酸(A-21)の溶液(粘度:1,250mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは15,100、Mwは54,900であった。
【0114】
<合成例22>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-4(0.98g、4.00mmol)、DA-8(0.78g、4.00mmol)及びNMP(10.1g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-4(1.50g、6.00mmol)及びNMP(8.50g)を加えて、50℃で2時間撹拌した。その後、この溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-5(0.49g、1.68mmol)及びNMP(2.80g)を加えて、50℃で18時間撹拌することで、固形分濃度15質量%のポリアミック酸(A-22)の溶液(粘度:315mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは9,491、Mwは26,134であった。
【0115】
<合成例23>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの100mL四つ口フラスコに、DA-4(2.81g、11.5mmol)、DA-8(2.29g、11.5mmol)及びNMP(45.9g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-4(2.88g、11.5mmol)及びNMP(15.4g)を加えて、50℃で2時間撹拌した。その後、この溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-5(2.86g、9.72mmol)及びNMP(2.8g)を加えて、50℃で18時間撹拌することで、固形分濃度15質量%のポリアミック酸(A-23)の溶液(粘度:298mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは8,290、Mwは22,181であった。
【0116】
<合成例24>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの100mL四つ口フラスコに、DA-4(2.81g、11.5mmol)、DA-8(2.29g、11.5mmol)及びNMP(45.9g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-6(2.58g、11.5mmol)及びNMP(10.4g)を加えて、室温で2時間撹拌した。その後、この溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-5(2.87g、9.72mmol)及びNMP(3.3g)を加えて、50℃で18時間撹拌することで、固形分濃度15質量%のポリアミック酸(A-24)の溶液(粘度:300mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは9,018、Mwは27,228であった。
【0117】
<合成例25>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの100mL四つ口フラスコに、DA-8(4.14g、20.8mmol)、DA-10(1.03g、5.19mmol)及びNMP(46.6g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-2(2.20g、11.4mmol)及びNMP(7.50g)を加えて、室温で0.5時間撹拌した。その後、この溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-4(3.25g、13.0mmol)及びNMP(6.20g)を加えて、50℃で18時間撹拌することで、固形分濃度15質量%のポリアミック酸(A-25)の溶液(粘度:535mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは10,218、Mwは29,128であった。
【0118】
<合成例26>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの100mL四つ口フラスコに、DA-8(5.42g、27.2mmol)、DA-10(1.35g、6.80mmol)及びNMP(64.5g)を加えて、窒素を送りながら室温で撹拌して溶解させた。得られたジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-2(1.48g、7.55mmol)及びNMP(10.2g)を加えて、室温で0.5時間撹拌した。その後、この溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-4(6.38g、25.5mmol)及びNMP(8.50g)を加えて、50℃で18時間撹拌することで、固形分濃度15質量%のポリアミック酸(A-26)の溶液(粘度:530mPa・s)を得た。このポリアミック酸のMnは9,982、Mwは28,927であった。
【0119】
上記合成例1~26において使用したテトラカルボン酸成分及びジアミン成分の種類及び量を表1に示す。
【表1】
【0120】
[液晶配向剤の調製]
<実施例1>
合成例2で得られたポリアミック酸(A-2)の溶液(3.90g)に、NMP(0.17g)、GBL(5.53g)、BCS(1.80g)、及びBCA(0.60g)を加え、室温で2時間撹拌することで、重合体固形分と各溶媒の質量比(重合体固形分:NMP:GBL:BCS:BCA)が4:30:46:15:5となる液晶配向剤(AL-1)を得た。
【0121】
<実施例2~6、及び比較例1~6>
使用するポリアミック酸溶液を表2に示すように変更した点以外は上記実施例1と同様に実施することで、実施例2~6である液晶配向剤AL-2~AL-6及び比較例1~6である液晶配向剤AL-C1~AL-C6を得た。
【0122】
<実施例7>
合成例3で得られたポリアミック酸(A-3)の溶液(0.90g)に、合成例21で得られたポリアミック酸(A-21)の溶液(2.88g)、NMP(4.68g)、BCS(3.00g)、及びAD-1(1質量%NMP溶液、0.54g)を加え、室温で2時間撹拌することで、重合体の質量比((A-3):(A-15))が20:80であり、重合体固形分と各溶媒の質量比(重合体固形分:NMP:BCS)が4.5:70.5:25であり、重合体100質量部に対してAD-1の配合割合が1質量部となる液晶配向剤(AL-7)を得た。
【0123】
<実施例8~18、及び比較例7~10>
使用するポリアミック酸溶液、溶媒、及び添加剤の種類や量を表2に示すように変更した点以外は上記実施例7と同様に操作することで、実施例8~18である液晶配向剤AL-8~AL-18及び比較例7~10である液晶配向剤AL-C7~AL-C10を得た。
【0124】
【0125】
表2中、括弧内の数値は、重合体成分の合計100質量部に対する、各重合体及び添加剤の割合(質量部)を表す。
【0126】
[液晶セルの作製]
<ネガ液晶用FFS駆動液晶セルの作製>
FFSモード液晶表示素子の構成を備えたネガ液晶用液晶セルを作製した。
始めに、電極付きの基板を準備した。基板は、30mm×35mmの大きさで、厚さが0.7mmのガラス基板を用いた。基板上には第1層目として対向電極を構成する、ベタ状のパターンを備えたITO電極が形成され、第1層目の対向電極の上には第2層目として、CVD(化学蒸着)法によりSiN(窒化珪素)膜が形成されていた。第2層目のSiN膜は、層間絶縁膜として機能する膜厚が300nmのものを用いた。第2層目のSiN膜の上には、第3層目としてITO膜をパターニングして形成された櫛歯状の画素電極が配置され、第1画素及び第2画素の2つの画素が形成されていた。各画素のサイズは、縦10mmで横約5mmであった。このとき、第1層目の対向電極と第3層目の画素電極とは、第2層目のSiN膜の作用により電気的に絶縁されていた。
【0127】
第3層目の画素電極は、中央部分が内角160°で屈曲した幅3μmの電極要素が6μmの間隔を開けて平行になるように複数配列された櫛歯形状を有しており、1つの画素は、複数の電極要素の屈曲部を結ぶ線を境に第1領域と第2領域を有していた。
各画素の第1領域と第2領域とを比較すると、それらを構成する画素電極の電極要素の形成方向が異なるものとなっていた。すなわち、複数の画素電極要素の屈曲部を結ぶ線を基準とした場合、画素の第1領域では画素電極の電極要素が時計回りに80°の角度をなすように形成され、画素の第2領域では画素電極の電極要素が反時計回りに80°の角度をなすように形成されていた。すなわち、各画素の第1領域と第2領域とでは、画素電極と対向電極との間の電圧印加によって誘起される液晶の、基板面内での回転動作(インプレーン・スイッチング)の方向が互いに逆方向となるように構成されていた。
【0128】
次に、上記で得られた液晶配向剤を孔径1.0μmのフィルターで濾過した後、準備された上記電極付き基板の表面に、スピンコート法にて塗布した。80℃のホットプレート上で2分間乾燥させた後、230℃の赤外線加熱炉で20分間焼成を行い、膜厚60nmのポリイミド膜を得た。このポリイミド膜をレーヨン布(Hyperflex社製HY-5318)でラビング配向処理(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:1000rpm、移動速度:20mm/sec、押し込み長:0.4mm、ラビング方向:第3層目の画素電極の上記複数の画素電極要素の屈曲部を結ぶ線に対して180°の方向)した後、純水中にて1分間超音波照射をして洗浄を行い、エアブローにて水滴を除去した。その後、80℃で10分間乾燥して、液晶配向膜付き基板を得た。対向基板として、裏面にITO電極が形成されている、高さ4μmの柱状スペーサーを有するガラス基板にも、上記と同様に処理して、配向処理が施された液晶配向膜付き基板を得た。これら2枚の液晶配向膜付き基板を1組とし、片方の基板上に液晶注入口を残した形でシール剤(三井化学社製 XN-1500T)を印刷し、もう1枚の基板を、液晶配向膜面が向き合い、ラビング方向が逆平行になるようにして張り合わせた。その後、150℃で60分間の加熱処理を行い、シール剤を硬化させて、セルギャップが4μmの空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、ネガ型液晶MLC-7026-100(メルク社製)を注入し、注入口を封止して、ネガ液晶用FFS方式の液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを120℃で1時間加熱し、23℃で一晩放置してから評価に使用した。
【0129】
<ポジ液晶用FFS駆動液晶セルの作製>
FFSモード液晶表示素子の構成を備えたポジ液晶用液晶セルを作製した。
電極付きの基板は、上記ネガ液晶用FFS駆動液晶セルと同様のものを用いた。
電極付きの基板におけるラビング方向を第3層目の画素電極の上記複数の画素電極要素の屈曲部を結ぶ線に対して90°の方向に変更した点と、減圧注入法によって注入する液晶をポジ型液晶MLC-3019(メルク社製)に変更した点以外はネガ液晶用FFS駆動液晶セルの作製方法と同様に操作することで、ポジ液晶用FFS方式の液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを120℃で1時間加熱し、23℃で一晩放置してから評価に使用した。
【0130】
<プレチルト角及び電圧保持率評価用のネガ液晶用液晶セルの作製>
始めに電極付きの基板を準備した。基板は、30mm×40mmの大きさで、厚さが0.7mmのガラス基板である。基板上には膜厚35nmのITO電極が形成されており、電極は間隔が縦40mm、横10mmのストライプパターン状のものを用いた。
次に、上記で得られた液晶配向剤を孔径1.0μmのフィルターで濾過した後、準備された上記電極付き基板に、スピンコート法にて塗布した。80℃のホットプレート上で2分間乾燥させた後、230℃の赤外線加熱炉で20分間焼成を行い、膜厚60nmの塗膜を形成させて液晶配向膜付き基板を得た。この液晶配向膜をレーヨン布(Hyperflex社製HY-5318)でラビング配向処理(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:1000rpm、移動速度:20mm/sec、押し込み長:0.4mm)した後、純水中にて1分間超音波照射をして洗浄を行い、エアブローにて水滴を除去した後、80℃で10分間乾燥して液晶配向膜付き基板を得た。この液晶配向膜付き基板を2枚用意し、その1枚の液晶配向膜面上に粒径4μmの球状スペーサーを散布した後、液晶注入口を残して周囲にシール剤(三井化学社製 XN-1500T)を印刷し、もう1枚の基板をラビング方向が逆方向、かつ膜面が向き合うようにして張り合わせた。その後、150℃で60分間の加熱処理を行い、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、ネガ型液晶MLC-7026-100(メルク社製)を注入し、注入口を封止して液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを120℃で1時間加熱し、23℃で一晩放置してから各評価に用いた。
【0131】
<プレチルト角及び電圧保持率評価用のポジ液晶用液晶セルの作製>
電極付きの基板は、上記プレチルト角及び電圧保持率評価用のネガ液晶用液晶セルと同様のものを用いた。減圧注入法によって注入する液晶をポジ型液晶MLC-3019(メルク社製)に変更した点以外はプレチルト角及び電圧保持率評価用のネガ液晶用液晶セルの作製方法と同様に操作することで、ポジ液晶用の液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを120℃で1時間加熱し、23℃で一晩放置してから評価に使用した。
【0132】
[液晶セルの特性評価]
前記で作製したFFS駆動液晶セル、及びプレチルト角及び電圧保持率評価用液晶セルの特性を以下のようにして評価した。
<バックライト耐性試験後の電圧保持率の評価>
上記電圧保持率評価用液晶セルを、表面温度が50℃の高輝度バックライト(光源:LED、輝度:30000cd/m2)の照射下で96時間放置した。次いで、液晶セルに60℃の温度で1Vの電圧を60μsec印加し、167msec後の電圧を測定して、電圧がどのくらい保持できているかを電圧保持率として算出した。電圧保持率の値が高いほど良好である。具体的には、ネガ液晶用液晶セルを用いた場合には、電圧保持率が54%以上となる場合は「○」、54%より小さくなる場合には「×」として評価した。ポジ液晶用液晶セルを用いた場合には、電圧保持率が85%以上となる場合は「○」、85%より小さくなる場合には「×」として評価した。なお、液晶表示素子の電気特性の1つである電圧保持率が上昇すると、液晶表示素子の表示不良の1つである線焼き付きが発生しにくくなることが知られている。
【0133】
<長期交流駆動による残像評価>
上記で作製したFFS駆動液晶セルを用い、高輝度バックライト(光源:LED、輝度:30000cd/m2)の照射下、周波数30Hzで±5.5Vの交流電圧を96時間印加した。その後、FFS駆動液晶セルの画素電極と対向電極との間をショートさせた状態にし、そのまま室温に一日放置した。
放置の後、FFS駆動液晶セルを偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に設置し、電圧無印加の状態でバックライトを点灯させておき、透過光の輝度が最も小さくなるようにFFS駆動液晶セルルの配置角度を調整した。そして、第1画素の第2領域が最も暗くなる角度から第1画素の第1領域が最も暗くなる角度まで液晶セルを回転させたときの回転角度を角度Δとして算出した。第2画素でも同様に、第2領域と第1領域とを比較し同様の角度Δを算出した。
この角度Δが0.1°以下であるとき、残像特性に優れている、即ち「○」とし、0.1°よりも大きい場合は「×」と定義して評価を行った。
【0134】
<視野角特性の評価>
オプトメトリクス社製AxoScanミュラーマトリクスポーラリメーターを用い、上記プレチルト角評価用液晶セル内のプレチルト角を測定した。視野角特性は、プレチルト角の値が低いほど良好である。具体的には、プレチルト角が1.7°以下となる場合は「○」、1.7°より大きくなる場合には「×」として評価した。
【0135】
上記実施例1~15、及び比較例1~9の各液晶配向剤を使用したネガ液晶用液晶セルの電圧保持率、残像評価及び視野角特性の評価結果を表3に示す。
【表3】
【0136】
表3に示されるように、特定ジアミンDA-1~DA-3を含むジアミン成分を用いた液晶配向剤から得られる実施例1~15の液晶配向膜を使用した液晶表示素子は、電圧保持率、残像特性及び視野角特性のすべてが良好であった。
【0137】
上記実施例16~18、及び比較例9、10の各液晶配向剤を使用したポジ液晶用液晶セルの電圧保持率、残像評価及び視野角特性の評価結果を表4に示す。
【表4】
【0138】
表4に示されるように、特定ジアミンDA-1~DA-3を含むジアミン成分を用いた液晶配向剤から得られる実施例16~18の液晶配向膜を使用した液晶表示素子は、電圧保持率、残像特性及び視野角特性のすべてが良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の液晶配向剤から得られる液晶配向膜は、各種の動作モードの液晶表示素子に広く使用されるが、例えば、位相差フィルム用の液晶配向膜、走査アンテナや液晶アレイアンテナ用の液晶配向膜又は透過散乱型の液晶調光素子用としての液晶配向膜に用いることもできる。
【0140】
本発明の液晶表示素子は、種々の機能を有する装置に有効に適用することができ、例えば、液晶テレビ、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、各種モニター、インフォメーションディスプレイなどに用いることができる。
【符号の説明】
【0141】
1:横電界液晶表示素子、 2:櫛歯電極基板、 2a、4b、2d:基材、 2b、2g:線状電極、 2c、2h、4a:液晶配向膜、 2e:面電極、 2f:絶縁膜、 3:液晶、 4:対向基板、 L:電気力線
【0142】
なお、2021年4月13日に出願された日本特許出願2021-067838号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。