(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】測定データ処理装置
(51)【国際特許分類】
G01B 3/18 20060101AFI20240618BHJP
G01D 9/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G01B3/18 102
G01D9/00 A
(21)【出願番号】P 2020066937
(22)【出願日】2020-04-02
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】関 政則
(72)【発明者】
【氏名】太田 博之
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-095119(JP,A)
【文献】特開昭63-124907(JP,A)
【文献】特開昭62-285013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 3/00-3/08
3/11-3/56
5/00-5/30
21/00-21/32
G01D 9/00-9/42
15/00-15/34
G06F 17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の同種のワークに対して予め決められた複数の測定対象箇所を測定して得られる測定データを自動分類する測定データ処理装置であって、
1つのワークあたりの測定対象箇所の個数を測定箇所数として設定記憶する測定箇所数記憶部と、
1つのワークあたりの測定データの分類の数をクラスタ数として設定記憶するクラスタ数記憶部と、
測定器から転送されてくる測定データを一時記憶する測定データバッファ部と、
前記測定データバッファ部に記憶された測定データを前記測定箇所数と前記クラスタ数とに基づいてクラスタ分析して、測定データをクラスタに分類するクラスタ分類部と、を備え、
一つ
目のワークについては予め決められた測定対象箇所のすべてを
一回ずつ測定するようにルールが決められていて、
前記クラスタ分類部は、前記予め決められた測定対象箇所のすべてが測定された前記ワークについて得られた測定データを前記測定箇所数と前記クラスタ数とに基づいてクラスタ分析して、前記測定データをクラスタに分類し、
前記クラスタ分類部は、前記測定データバッファ部に新しく入ってきた測定データに対し、当該新しい測定データがどのクラスタの重心に近いかを判断して、当該新しい測定データをクラスタに割り振る
ことを特徴とする測定データ処理装置。
【請求項2】
複数の同種のワークに対して予め決められた複数の測定対象箇所を測定して得られる測定データを自動分類する測定データ処理装置であって、
1つのワークあたりの測定対象箇所の個数を測定箇所数として設定記憶する測定箇所数記憶部と、
1つのワークあたりの測定データの分類の数をクラスタ数として設定記憶するクラスタ数記憶部と、
測定器から転送されてくる測定データを一時記憶する測定データバッファ部と、
前記測定データバッファ部に記憶された測定データを前記測定箇所数と前記クラスタ数とに基づいてクラスタ分析して、測定データをクラスタに分類するクラスタ分類部と、
測定箇所数と分類数とを自動で設定する自動設定部と、を備え、
一つ
目のワークについては予め決められた測定対象箇所のすべてを
一回ずつ測定するようにルールが決められていて、
前記自動設定部は、前記測定データバッファ部に新しく入力された測定データを既にバッファされている測定データに対比して、
前記新しく入力された測定データと、既にバッファされているいずれかの測定データとの差が予め設定された値以下になったとき、
前記測定データバッファ部に記憶されている測定データの数より1つ少ない値を測定箇所数およびクラスタ分類数として設定する
ことを特徴とする測定データ処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の測定データ処理装置において、
前記クラスタ分類部は、クラスタに新しいデータが追加されたら、その新しいデータが追加されたクラスタの重心値を更新する
ことを特徴とする測定データ処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の測定データ処理装置において、
さらに、前記測定データバッファ部に記憶された測定データを整理する測定データ整理部を備え、
前記測定データ整理部は、前記クラスタ分類部でのクラスタ分類に基づいて、前記測定データバッファ部に記憶された測定データをワークごとに仕分けする
ことを特徴とする測定データ処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の測定データ処理装置において、
前記測定データ整理部は、
前記測定データバッファ部に記憶された測定データをワークごとに仕分けするためのブロックを用意し、
一つの前記ブロックは、前記測定箇所数に対応する数の欄を有し、前記欄にワークごとに仕分けされた測定データが格納され、
前記測定データ整理部は、前記クラスタ分析で学習されたクラスタごとの測定データの数をクラスタごとの測定データ数として、前記クラスタ分類部によって新しい測定データが割り振られたクラスタの測定データの数が前記クラスタごとの測定データ数を超えたとき、測定対象が次のワークに移ったと判断して、当該新しい測定データを次のブロックに格納する
ことを特徴とする測定データ処理装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の測定データ処理装置において、
前記測定データ整理部は、測定データごとにワーク番号とクラスタ番号とを付与し、
前記ワーク番号を行番号または列番号とし、
前記クラスタ番号を列番号または行番号として、
測定データをマトリックス状に配列する
ことを特徴とする測定データ処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の測定データ処理装置において、
ユーザに測定箇所数およびクラスタ分類数の少なくとも一方を入力させるユーザーインターフェースを提供する
ことを特徴とする測定データ処理装置
。
【請求項8】
複数の同種のワークに対して予め決められた複数の測定対象箇所を測定して得られる測定データを自動分類する測定データ処理装置にコンピュータを組み込んで、
このコンピュータを、
1つのワークあたりの測定対象箇所の個数を測定箇所数として設定記憶する測定箇所数記憶部と、
1つのワークあたりの測定データの分類の数をクラスタ数として設定記憶するクラスタ数記憶部と、
測定器から転送されてくる測定データを一時記憶する測定データバッファ部と、
前記測定データバッファ部に記憶された測定データを前記測定箇所数と前記クラスタ数とに基づいてクラスタ分析して、測定データをクラスタに分類するクラスタ分類部と、して機能させる測定データ処理プログラムであって、
一つ
目のワークについては予め決められた測定対象箇所のすべてを
一回ずつ測定するようにルールが決められていて、
前記クラスタ分類部は、前記予め決められた測定対象箇所のすべてが測定された前記ワークについて得られた測定データを前記測定箇所数と前記クラスタ数とに基づいてクラスタ分析して、前記測定データをクラスタに分類し、
前記クラスタ分類部は、前記測定データバッファ部に新しく入ってきた測定データに対し、当該新しい測定データがどのクラスタの重心に近いかを判断して、当該新しい測定データをクラスタに割り振る
ことを特徴とする測定データ処理プログラム。
【請求項9】
複数の同種のワークに対して予め決められた複数の測定対象箇所を測定して得られる測定データを自動分類する測定データ処理装置にコンピュータを組み込んで、
このコンピュータを、
1つのワークあたりの測定対象箇所の個数を測定箇所数として設定記憶する測定箇所数記憶部と、
1つのワークあたりの測定データの分類の数をクラスタ数として設定記憶するクラスタ数記憶部と、
測定器から転送されてくる測定データを一時記憶する測定データバッファ部と、
前記測定データバッファ部に記憶された測定データを前記測定箇所数と前記クラスタ数とに基づいてクラスタ分析して、測定データをクラスタに分類するクラスタ分類部と、
測定箇所数と分類数とを自動で設定する自動設定部と、して機能させる測定データ処理プログラムであって、
一つ
目のワークについては予め決められた測定対象箇所のすべてを
一回ずつ測定するようにルールが決められていて、
前記自動設定部は、前記測定データバッファ部に新しく入力された測定データを既にバッファされている測定データに対比して、
前記新しく入力された測定データと、既にバッファされているいずれかの測定データとの差が予め設定された値以下になったとき、
前記測定データバッファ部に記憶されている測定データの数より1つ少ない値を測定箇所数およびクラスタ分類数として設定する
ことを特徴とする測定データ処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定データ処理装置に関し、具体的には、測定データの記録や編集を容易に行うための測定データ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを測定器で測定した結果はコンピュータ等の外部機器に転送(出力)されて記録されるようになっている。そのための測定システムが種々提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
例えば、
図1の測定システムにおいては、ワークWをデジタルマイクロメータ10で測定している。デジタルマイクロメータ10とコンピュータ100とは無線または有線で通信接続されている。ユーザがデジタルマイクロメータ10でワークWを測定し、データ転送ボタン11を押す。すると、測定値がデジタルマイクロメータ10からコンピュータ100に転送(出力)され、コンピュータ100が測定値を記録していく。
【0004】
デジタルマイクロメータ10からコンピュータ100へ転送(出力)された測定値は自動的に記録されていくが、その測定値がどのワークのどの箇所に対応しているものであるか整理されていなければならない。例えば
図1のように5つの段差をもつワークWの場合を考える。ユーザは、ワークWを測定してデータ転送(出力)したら、コンピュータ100の表示画面を見ながらそのデータがどのワークのどの箇所のデータであるか登録していく。
図1の例では、スプレッドシートの所定のセルにデータを記録するようにする。
【0005】
あるいは、測定手順をコンピュータ100に予め登録しておき、ユーザは決められた順番通りに測定を進めていくようにしてもよい。例えば、太い方から順番に測定していき、ひとつのワークWが終わったら次のワークに進むというように測定手順が決まっているとする。この手順通りに測定していけば、自動的に整理された測定データが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平5-59597
【文献】特開2012-48377
【文献】特開2017-49047
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実際の測定作業にあって、ユーザが測定作業もしながらコンピュータ100を操作してデータを編集したりすることになる。一旦ワークWとデジタルマイクロメータ10から手を離し、コンピュータ100のキーボードかマウスを操作しなければならない。これは大変な手間である。
仮に、測定手順を決めていたとしても測定手順や測定箇所を飛ばしてしまうこともあるし、データ転送ボタン11の操作ミスもあり得る。この場合、やはり、ユーザはワークWとデジタルマイクロメータ10から手を離し、コンピュータ100のキーボードかマウスを操作しなければならない。
【0008】
なお、特許文献3(特開2017-49047)には、多数のセンサで取得された膨大な測定データを自動的に分析して、その傾向を提示してくれる推定装置が開示されている。推定装置で得られた分析パターンから測定データの傾向を把握し、この傾向に基づいて、センサ群のなかで寄与が大きいセンサを少数に絞りこむことが提案されている。しかしながら、得られた測定データがどのワークのどの箇所の測定データであるかは1つ1つ整理して入力しておかなければならないという事情は変わらない。
【0009】
測定データの記録や編集を容易に行うための測定データ処理装置が求められている。
【0010】
そこで、本発明の目的は、測定データの記録や編集を容易に行うための測定データ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の測定データ処理装置は、
複数の同種のワークに対して予め決められた複数の測定対象箇所を測定して得られる測定データを自動分類する測定データ処理装置であって、
1つのワークあたりの測定対象箇所の個数を測定箇所数として設定記憶する測定箇所数記憶部と、
1つのワークあたりの測定データの分類の数をクラスタ数として設定記憶するクラスタ数記憶部と、
測定器から転送されてくる測定データを順番に一時記憶する測定データバッファ部と、
前記測定データバッファ部に記憶された測定データを前記測定箇所数と前記クラスタ数とに基づいてクラスタ分析して、測定データをクラスタに分類するクラスタ分類部と、を備える
ことを特徴とする。
【0012】
本発明では、
さらに、前記測定データバッファ部に記憶された測定データを整理する測定データ整理部を備え、
前記測定データ整理部は、前記クラスタ分類部でのクラスタ分類に基づいて、前記測定データバッファ部に記憶された測定データをワークごとに仕分けする
ことが好ましい。
【0013】
本発明では、
ワークのなかで最初に測定する箇所はルールづけされており、
前記測定データ整理部は、測定データごとにワーク番号とクラスタ番号とを付与し、
前記ワーク番号を行番号または列番号とし、
前記クラスタ番号を列番号または行番号として、
測定データをマトリックス状に配列する
ことが好ましい。
【0014】
本発明では、
ユーザに測定箇所数とクラスタ分類数とを入力させるユーザーインターフェースを提供する
ことが好ましい。
【0015】
本発明では、
さらに、測定箇所数と分類数とを自動で設定する自動設定部を備え、
1つ目のワークについては予め決められた測定対象箇所のすべてを1回ずつ測定するようにルールが決められていて、
前記自動設定部は、前記測定データバッファ部に新しく入力された測定データを既にバッファされている測定データに対比して、
前記新しく入力された測定データと、既にバッファされているいずれかの測定データとの差が予め設定された値以下になったとき、
前記測定データバッファ部に記憶されている測定データの数より1つ少ない値を測定箇所数およびクラスタ分類数として設定する
ことが好ましい。
【0016】
本発明の測定データ処理プログラムは、
複数の同種のワークに対して予め決められた複数の測定対象箇所を測定して得られる測定データを自動分類する測定データ処理装置にコンピュータを組み込んで、
このコンピュータを、
1つのワークあたりの測定対象箇所の個数を測定箇所数として設定記憶する測定箇所数記憶部と、
1つのワークあたりの測定データの分類の数をクラスタ数として設定記憶するクラスタ数記憶部と、
測定器から転送されてくる測定データを順番に一時記憶する測定データバッファ部と、
前記測定データバッファ部に記憶された測定データを前記測定箇所数と前記クラスタ数とに基づいてクラスタ分析して、測定データをクラスタに分類するクラスタ分類部と、して機能させる
ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ワークWをデジタルマイクロメータで測定する様子の一例を示す図である。
【
図2】測定データ処理装置の機能ブロック図である。
【
図7】測定データにクラスタ番号を付した状態を例示する図である。
【
図8】測定データにクラスタ番号を付した状態を例示する図である。
【
図9】測定データにクラスタ番号とワーク番号とを付した状態を例示する図である。
【
図10】測定データをマトリックス状に整理した状態の一例を示す図である。
【
図11】ユーザが測定対象箇所を飛ばす場合を考慮した動作例を説明するための図である。
【
図12】ユーザが測定対象箇所を飛ばす場合を考慮した動作例を説明するための図である。
【
図13】ユーザが測定対象箇所を飛ばす場合を考慮した動作例を説明するための図である。
【
図14】
図13をマトリックス状に整理した一例を示す図である。
【
図16】測定対象物(ワーク)の例を示す図である。
【
図18】測定データにクラスタ番号を付した状態を例示する図である。
【
図19】測定データにクラスタ番号を付した状態を例示する図である。
【
図20】ユーザが測定対象箇所を飛ばす場合を考慮した動作例を説明するための図である。
【
図21】ユーザが測定対象箇所を飛ばす場合を考慮した動作例を説明するための図である。
【
図23】分類条件の設定を「自動」とした場合の動作例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の測定システムに係る第1実施形態について説明する。
測定システムの概略構成としては
図1と同じである。測定システムは、測定器10と、コンピュータユニット100と、を具備する。測定器10としては、デジタル式の小型測定器であってもよい。デジタル式の小型測定器としては、デジタルマイクロメータ10や、デジタルノギス、デジタルダイヤルゲージなどがある。図中では、デジタルマイクロメータ10を例示している。ただし、測定器としては、ワークの測定対象箇所の寸法を測定でき、測定データを転送(出力)できればよいのであり、極端な例としては、大型の三次元測定機であってもよい。
【0019】
デジタルマイクロメータ10は、コンピュータユニット100と無線または有線で通信接続されている。デジタルマイクロメータ10はデータ転送ボタン11を有し、データ転送ボタン11が押されると、測定値をコンピュータユニット100に転送(出力)する。
【0020】
測定データ処理装置200としてのコンピュータユニットは、典型的には小型コンピュータであって、コンピュータ本体に入出力機器としてキーボード、マウス、マイク、ディスプレイ、プリンタ、スピーカが内蔵または外付けされている。その他、測定データ処理装置200は、タブレット端末やスマートフォン(携帯型高機能電話機)であってもよい。
【0021】
図2は、測定データ処理装置200の機能ブロック図である。
測定データ処理装置200は、中央制御部(CPU)290とメモリ(ROM、RAM)を有していて、メモリに格納された測定データ処理プログラムを実行することで各機能部の機能を実現するものである。
測定データ処理装置200は、測定データバッファ部250と、分類条件設定記憶部210と、クラスタ分類部260と、測定データ整理部270と、を有する。
分類条件設定記憶部210は、測定箇所数記憶部220と、クラスタ数記憶部230と、分類条件自動設定部240と、を有する。
各機能部の動作については、以降の実施例の説明のなかで説明する。
【0022】
第1実施形態の動作例として、
図3のような測定対象物(ワーク)を次々に測定していく場合を説明する。
このワークは、いわゆるUSBコネクタである。このワークは、やや幅広で細長い直方体形状の胴部があって、この胴部の先端側にはやや偏平な直方体形状のコネクタ端子があり、胴部の基端側にはケーブルを保護するために幅狭のケーブルカバー部が設けられている。そして、コネクタ端子の幅と、胴部の幅と、ケーブルカバー部の幅と、を一箇所ずつ測定するとする。
いま、コネクタ端子の幅を第1測定対象箇所とし、ケーブルカバー部の幅を第2測定対象箇所とし、胴部の幅を第3測定対象箇所とする。なお、第1、第2、第3、という順番は便宜上のもので、順番は重要ではない。ただし、第1、第2、第3測定対象箇所の寸法には設計上明らかな差があるとするものとする。
【0023】
ユーザがワーク(USBコネクタ)を次々に取り替えながら各ワークの第1、第2、第3測定対象箇所を次々に測定して順次測定データを転送(出力)していく。このとき、ユーザが逐一コンピュータを操作したり、測定の順番を気にしたりしなくても、さらには、時々測定対象箇所を飛ばしたりしたとしても、各測定データがどのワークのどの測定対象箇所の測定データであるかが自動的に分類されて整理された状態で登録されるようにしたい。
【0024】
ユーザが測定データ処理装置200を起動すると、測定データ処理装置200は入出力制御部280を介してユーザにメニュー画面を提供する。
図4はメニュー画面の一例を示す図である。
メニュー画面には、本実施形態の自動分類を適用しないデータ収集モードに加えて、本実施形態の自動分類を適用する自動分類モードの選択肢(アイコンやボタン)が表示されている。いま、ユーザが自動分類モードを選択したとする。
【0025】
次に、自動分類モードにおいてユーザに提供される分類条件設定画面の一例を
図5に示す。
分類条件設定画面において、まず、分類条件の設定モードを自動設定とするか手動設定とするかを選択できる。ここでは、分類条件の設定モードを手動設定とする場合を説明する。
(分類条件の設定モードを自動設定とした場合の動作は第3実施形態で説明する。)
【0026】
分類条件の設定モードとして手動設定が選択された場合、分類条件設定記憶部210は、入出力制御部280を介して、ユーザに「分類数」および「測定数」の入力設定を促す。例えば、「手動設定」が選択されたら、分類数と測定数の入力欄をハイライトしたり、カーソルを点滅させたり、音声または表示メッセージで伝えたりして入力を促すようにしてもよい。
【0027】
まず、「測定数」というのは、1つのワークごとに何カ所測定するか、ということである。つまり、「測定数」というのは、1つのワークに定められた測定対象箇所の数のことである。ここでは、測定対象箇所として第1、第2、第3測定対象箇所があるので、「測定数」は「3」である。
【0028】
次に、「分類数」というのは、1つのワークごとに得られる測定データが何種類あるか、ということである。つまり、「分類数」というのは、測定データを類似値ごとに分類(クラスタリング)したときの分類(クラスタ)の数のことである。ここでは、第1、第2、第3測定対象箇所の寸法には明らかな差があって、互いに異なる分類(クラスタ)に分けられるので、「分類数」は「3」である。
【0029】
なお、分類数と測定数とに同じ値を設定するときには、どちらか一方だけ入力されていれば他方はブランクでもよいとしてもよい。或いは、分類数か測定数の一方に値が入力されていて、他方がブランクのときには、自動的に両方に同じ値が設定されるようにしてもよい。
【0030】
このように入力された分類数はクラスタ数記憶部230に記憶される。また、このように入力された測定数は測定箇所数記憶部220に記憶される。ここまでで、分類条件の設定は完了である。
【0031】
分類条件の設定ができたら、ユーザはワークの測定対象箇所を次々に測定して、測定データを測定データ処理装置200に転送(出力)する。測定データ処理装置200は、測定データを順番に測定データバッファ部250に記憶していく。そして、クラスタ分類部260が測定データバッファ部250に記憶された測定データを順次クラスタに分類していく。
【0032】
クラスタ分類部260によるクラスタリング動作(分類動作)を説明する。
クラスタ分類(クラスタ分析)の手法自体はいくつか知られている。ここでは、完全な教師無しのクラスタ分析ではなく、分類数が指定(例えばここでは3)されているので、例えば、k-means法、k-means++法などを適宜適用していただければよい。
【0033】
さて、ユーザは、ワークを測定していくにあたり、最初の一つ目のワークについては決められた測定対象箇所を飛ばさずにすべて一回ずつ測定するとする。ここでは、第1、第2、第3測定対象箇所をデジタルマイクロメータ10で測定して、測定データを測定データ処理装置200に転送(出力)する。
(なお、測定の順番は問わない。)
【0034】
最初のワークの測定値として
図6のように3つの測定データが得られたとする。いま、測定数は「3」に設定されているから、クラスタ分類部260は、3つの測定データが揃ったところでこれら最初の3つの測定データにクラスタ分析を行なう。ここでは、クラスタ分析の対象となる測定データの数と設定された分類数とが同じ値であるから、それぞれの測定データは互いに異なるクラスタ(分類)に分けられる。例えば、
図6の測定データ「12.07」、「16.54」,「10.10」はそれぞれ異なるクラスタ(分類)に分けられる。クラスタ(分類)の識別番号としてクラスタ番号をつけるとする。番号は、数字でもアルファベットでもよく、ここでは、1から始まる数字(自然数)でクラスタ番号をつけるとする。すると、
図7に例示のように、各測定データにクラスタ番号を付すことができる。
【0035】
一つ目のワークの測定が終わったら、ユーザは次のワークを測定していく。測定で得られた測定データは次々と測定データ処理装置200(測定データバッファ部250)に転送(出力)され、測定データは、クラスタ分類部260での分類によって該当するクラスタに分けられていく。クラスタ分類部260は、測定データが新しく入ってきたら、新しい測定データがどのクラスタの重心に近いかを判断して、新しい測定データを順次適切なクラスタに割り振っていく。クラスタに新しいデータが追加されたらクラスタの重心値を更新するようにしてもよい。
【0036】
クラスタ分類部260で測定データがクラスタに分類されるのと並行して、この分類を受けて、測定データ整理部270が測定データを整理する。測定データ整理部270は、測定データバッファ部250に新しく入ってきた測定データがクラスタ分類部260で分類されたことを受けて、新しい測定データにクラスタ番号を付与する。すると、
図8に例示のように、各測定データにクラスタ番号がつけられていく。
【0037】
測定データ整理部270は、さらに、測定データに付されたクラスタ番号に基づいて、測定データをワークごとに区切って、測定データにワーク番号を付す。
いま、測定数が3に設定されているから、測定データ整理部270としては測定データを順番に3つずつの組みに区切っていく。そして、各組みに順番にワーク番号をつけていく。ここでは、1から始まる数字(自然数)でワーク番号をつけるとする。すると、
図9に例示のように、各測定データにはクラスタ番号とワーク番号とが付与される。
【0038】
ワーク番号を行番号とし、クラスタ番号を列番号として測定データをマトリックス状に並べると、
図10のように整理されたデータが得られる。もちろん、ワーク番号を列番号としてクラスタ番号を行番号として、つまり、測定データをマトリックス状に並べてもよい。
【0039】
上記の例では測定データを上から3つずつ(測定数ずつ)に単純に区切ったが、ユーザが測定対象箇所を飛ばしてもよいことを考慮するには例えば次のようにするとよい。
図11を参照されたい。
測定数は3に設定されているのであるから、測定データを格納する欄を3つずつに区切っておく。3つの欄で1ブロックとする。1つのブロックには一つ目のワークと同じように3種類の測定データが入るはずである。
(順不同でよい。)
【0040】
測定データを順番に欄に格納していったときに、1つのブロックのなかに同じ分類のデータが出現したら、それは、測定対象箇所が飛ばされて測定対象が次のワークに移ったということである。
図12を参照されたい。
いま、7番目の測定データ(12.06)がクラスタ番号1に分類され、8番目の測定データ(10.03)がクラスタ番号2に分類されたとする。そして、9番目の測定データ(12.07)が入ってきたとき、9番目の測定データがクラスタ番号1に分類されたとする。
【0041】
もし、測定対象箇所を飛ばさずに測定したとしたら、単純に言って、9個目の測定データは3つ目のワークのどこかの測定データのはずである。しかしながら、3つ目のワーク用に用意されたブロックのなかにおいて、クラスタ番号1の測定データが重複してしまっている。(7番目の測定データ(12.06)と9番目の測定データ(12.07)とは完全に同じではないので、同じワークの同じ箇所を測定して得られたものでもない。)
【0042】
この場合、9番目の測定データ(12.07)は、3つ目のワーク用に用意されたブロックではなく、次のブロックに送られて格納されるとする。
図13を参照されたい。
9番目の測定データ(12.07)は、4つ目のワークの測定データであるとする。つまり、9番目の測定データ(12.07)は、ワーク番号が4でクラスタ番号が1である。
図13をマトリックス状に整理すると
図14のようになる。
【0043】
ここで、付加的機能として、ユーザに測定漏れを注意する機能があってもよい。すなわち、1つのブロックのなかで予定しないクラスタ番号の重複が出現して、1つのブロックの欄がすべて埋められないまま測定データが次のワークのデータであると判定された場合、
図15に例示するような注意メッセージを出すようにしてもよい。(注意メッセージは音声や警告音であってもよい。)
【0044】
ここでユーザに提供する選択メニューとしては、「戻る」と「無視」がある。
「戻る」が選択された場合は、測定データ処理装置200は、先の測定データを1つ削除し、ユーザはワークを1つ戻って、飛ばした箇所を測定する。
なお、ユーザが意図的に測定対象箇所を間引きたい場合もあるので、その場合は、この注意メッセージを「無視」したり、以後の注意は不要としたりする選択肢も提供する。
【0045】
ただ、3つ目のワークにおいて、例えば第1測定対象箇所(クラスタ番号1)を飛ばしたあと、4つ目のワークを測定するときに第1測定対象箇所(クラスタ番号1)から測定を開始してしまうと、測定データ処理装置200はワークが移ったことをうまく認識できない。このような測定対象箇所の飛ばし方をする場合には、ユーザが手動でワークが次に移ったことを測定データ処理装置200に伝える必要がある。なんらかのボタン、フットスイッチ、音声等、手段は種々考えられる。
【0046】
このような構成を備える第1実施形態によれば、測定データがワーク番号とクラスタ番号で整理された測定データが自動的に得られる。ユーザとしては、最初に分類条件を設定しておくだけで、あとは、次々とワークを測定しながら測定データを転送(出力)するだけでよい。
【0047】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、測定数と分類数とが同じ値の場合を説明した。
第2実施形態としては、測定数と分類数とが違う値の場合を説明する。
例えば、
図16に例示のように、コネクタ端子の幅と、胴部の幅と、ケーブルカバー部の幅と、を測定する。
ここで、コネクタ端子の幅を第1測定対象箇所とし、ケーブルカバー部の幅を第2測定対象箇所とする。さらに、胴部の幅を3箇所で測定して、第3測定対象箇所、第4測定対象箇所、第5測定対象箇所とする。コネクタ端子の幅(第1測定対象箇所)、ケーブルカバー部の幅(第2測定対象箇所)、胴部の幅(第3、第4、第5測定対象箇所)の寸法には設計上明らかな差がある。ただし、第3、第4、第5測定対象箇所は同じ胴部の幅であって、設計上は同じ測定値になるとする。
【0048】
この場合の分類条件の設定としては、
図17に例示のように、1つのワークあたり5箇所を測定するので「測定数」は「5」である。
胴部の幅である第3、第4、第5測定対象箇所の測定値は同じクラスタ(分類)になることを考えると、「分類数」は「3」である。
第1実施形態と同様に、ユーザに対し、1つ目のワークについては測定対象箇所を飛ばさないですべて測定することをルールづけておく。
このようにして取得される5つの測定データをクラスタ分類部260で「3つ」のクラスタに分類し、測定データ整理部270により各測定データにクラスタ番号をつける。すると、
図18に例示のように、各測定データにクラスタ番号が付される。
ここでは、コネクタ部の幅(第1測定対象箇所)の測定値にクラスタ番号1、ケーブルカバー部の幅(第2測定対象箇所)の測定値にクラスタ番号3、胴部の幅(第3、4、5測定対象箇所)の測定値にクラスタ番号2が付されている。続けて2つ目のワークを測定すると、
図19に例示のように、2つ目のワークの測定値にもクラスタ番号が付される。(なお、測定対象箇所の測定順は問わない。)
【0049】
ここで、
図20を参照されたい。
例えば、3つ目のワークの測定において、3つ目のワーク用に用意されたブロック中でクラスタ番号1の測定データが2つ出現した場合には、第1実施形態と同じように、重複したデータは次のワークのデータとして格納する。
図21を参照されたい。
【0050】
なお、1つ目のワークについてはすべての測定対象箇所を測定していて、1つのワークあたり、クラスタ番号1の測定データは1つ、クラスタ番号2の測定データは3つ、クラスタ番号3の測定データは1つ、であることがすでに学習されている。したがって、1つのブロックにクラスタ番号1の測定データが2つ出現すれば、測定対象箇所を飛ばして次のワークに移ったことがわかる。同じく、1つのブロックにクラスタ番号3の測定データが2つ出現すれば、測定対象箇所を飛ばして次のワークに移ったことがわかる。そして、1つのブロックにクラスタ番号2の測定データが4つ出現すれば、測定対象箇所を飛ばして次のワークに移ったことがわかる。
【0051】
ただ、3つ目のワークにおいて、第3、第4、第5測定対象箇所(クラスタ番号2)のうちの1つ(例えば第3測定対象箇所)を飛ばしたあと、4つ目のワークを測定するときに、第3、4、5測定対象箇所(クラスタ番号2)のうちの1つ(例えば第4測定対象箇所)から測定を開始してしまうと、本発明はワークが移ったことをうまく認識できない。このような測定対象箇所の飛ばし方をする場合には、ユーザが手動でワークが次に移ったことを測定データ処理装置200に伝える必要がある。
【0052】
このような構成を備える第2実施形態によれば、1つのワーク当たりの測定対象箇所の数とクラスタ(分類)の数とが違っていても、測定データがワーク番号とクラスタ番号で整理された測定データが自動的に得られる。ユーザとしては、最初に分類条件を設定しておくだけで、あとは、次々とワークを測定しながら測定データを転送(出力)するだけでよい。
【0053】
(第3実施形態)
上記第1、第2実施形態では、分類条件(測定数、分類数)を最初に手動で設定するようにしたが、分類条件(測定数、分類数)を自動設定するようにしてもよい。
図22の例では、分類条件の設定は「自動」とし、測定数、分類数の入力欄はグレーアウトしている。
【0054】
分類条件の設定が「自動」である場合、分類条件自動設定部240は次のようにして測定数および分類数を決定する。まず、ユーザに対し、第1、第2実施形態と同様に、1つ目のワークについては測定対象箇所を飛ばさないですべて測定するようにルールを決めておく。ユーザは、1つ目のワークを測定したら次のワークに移っていく。
【0055】
分類条件自動設定部240は、測定データバッファ部250に入ってくる測定データをモニタしている。
このとき、測定データバッファ部250に新しく入力された測定データを既にバッファされている測定データに対比する。
図23を参照されたい。
いま、新しく入力された測定データと、既にバッファされているいずれかの測定データとの差が予め設定された値以下になったとする。
図23でいうと、4つ目の測定データが1つ目の測定データと近似した値である。このとき、分類条件自動設定部240は、測定データバッファ部250に記憶されている測定データの数(ここでは4)より1つ少ない値(ここでは3)を測定数および分類数として設定する。このように測定数と分類数が決まったら、あとの動作は第1実施形態と同じである。
【0056】
近似値と判断するための「予め設定された値」というのはもちろん任意の値に設定されればよい。例えば、デフォルト値として0.1mm以内のように設定しておいて、あとは、ユーザが設定変更できるようにしておいてもよい。
【0057】
分類条件の自動設定は、第1実施形態のように測定数と分類数とが同じである場合には有効であるが、第2実施形態のように測定数と分類数とが違う値のときにはうまくできない。第2実施形態のように測定数と分類数とが違う値のときは手動設定することになる。
【0058】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
上記実施形態の説明では、測定データ処理装置に新たな測定データが入力されたらリアルタイムにクラスタ分類部が測定データをクラスタ分析して、測定データ整理部により測定データがワーク番号とクラスタ番号で整理された測定データが得られるものとした。
もちろん、測定データ処理装置は測定データを測定データバッファ部に順番に格納しておいて、最後にユーザの指示に応じてクラスタ分析およびデータ整理を実行するようにしてもよい。
【0059】
CPUやメモリを配置してコンピュータとして機能できるように構成し、このメモリに所定の測定データ処理プログラムをインストールし、このインストールされたプログラムでCPU等を動作させて、上記実施形態で説明した各機能部としての機能を実現してもよい。測定データ処理プログラムの配布方法としては、不揮発性記録媒体(CD-ROM、メモリカード等)に記録して配布してもよいし、インターネット回線等を介してダウンロードさせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
測定データ処理装置 200
分類条件設定記憶部 210
測定箇所数記憶部 220
クラスタ数記憶部 230
分類条件自動設定部 240
測定データバッファ部 250
クラスタ分類部 260
測定データ整理部 270
入出力制御部 280
中央制御部 290