(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ウェットエッチング方法、及び、ウェットエッチング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
H01L21/306 R
(21)【出願番号】P 2020078903
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2023-02-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】関家 一馬
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴司
(72)【発明者】
【氏名】下房 大悟
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-070861(JP,A)
【文献】特開平08-153656(JP,A)
【文献】特開2004-330326(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0340250(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0318495(US,A1)
【文献】特開平11-165255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェットエッチング方法であって、
エッチング液供給ノズルから被加工物の被エッチング面にエッチング液を供給するエッチング液供給ステップと、
該被エッチング面上に留まる該エッチング液で該被エッチング面をエッチングするエッチングステップと、
該エッチングステップを実施した後、該被エッチング面上の該エッチング液を被エッチング面上から除去するエッチング液除去ステップと、
を備え、
該エッチング液供給ステップと、該エッチングステップと、該エッチング液除去ステップと、をこの順で、少なくとも複数回繰り返すこととし、
該エッチング液供給ステップを実施した後、
該被加工物の該被エッチング面の面積以上の面積を有し、耐エッチング性を有する押圧面を備えた押圧部材により、
該被加工物の該被エッチング面に供給された該エッチング液を押圧する押圧ステップを更に備え、
該エッチング液供給ステップでは、該被エッチング面の外周縁からこぼれ落ちない量のエッチング液が供給され、
該エッチングステップでは、該押圧部材の該押圧面と該被加工物の該被エッチング面との間に留まるエッチング液で
あって、該エッチング液供給ステップにより供給されるエッチング液の量と等しい量のエッチング液により該被エッチング面をエッチングする、ウェットエッチング方法。
【請求項2】
該押圧面には、放射状に伸びる複数本の溝、又は、突起部を設ける、
ことを特徴とする請求項1に記載のウェットエッチング方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のウェットエッチング方法を実施するウェットエッチング装置であって、
被加工物の被エッチング面を露出させた状態で該被加工物を保持する保持機構と、
該保持機構で保持された該被加工物の該被エッチング面にエッチング液を供給するエッチング液供給機構と、
該被加工物の該被エッチング面上からエッチング液を除去するエッチング液除去機構と、
少なくとも該エッチング液供給機構と該エッチング液除去機構とを制御するコントローラと、を備え、
該コントローラは、
該保持機構で保持された該被加工物に該エッチング液供給機構からエッチング液を供給した後、該被エッチング面上に留まる該エッチング液で該被エッチング面をエッチングし、
次いで該エッチング液除去機構で該被エッチング面上の該エッチング液を該被エッチング面上から除去し、
該エッチング液の供給と該被エッチング面のエッチングと、該エッチング液の該被エッチング面上からの除去と、をこの順で、少なくとも複数回繰り返すように該エッチング液供給機構と該エッチング液除去機構とを制御する、
ことを特徴とするウェットエッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの製造工程におけるウェットエッチング方法、ウェットエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程では、回路形成や洗浄のためにウェーハに対してウェットエッチングが施される。例えば、特許文献1では、エッチング液にウェーハを浸漬させるウェットエッチングが開示され、特許文献2では、スピンナテーブルで保持されたウェーハにノズルからエッチング液供給してエッチングを行う所謂スピンエッチングが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-168633号公報
【文献】特開2015-153989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるような浸漬エッチングでは、エッチング液の交換が行われないため、エッチング槽中で撹拌してもエッチング時間が長くかかる。このため、エッチングの時間短縮が切望されている。
【0005】
一方、特許文献2に開示されるようなスピンエッチングでは、供給したエッチング液の殆どがエッチングには寄与せずに排出されてしまう。このため、エッチング液の使用量の削減が切望されている。
【0006】
本発明は以上の課題に鑑み、エッチングの時間短縮とエッチング液の使用量の削減を可能とする新規なウェットエッチング方法、ウェットエッチング装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
本発明の一態様によれば、
ウェットエッチング方法であって、
エッチング液供給ノズルから被加工物の被エッチング面にエッチング液を供給するエッチング液供給ステップと、
該被エッチング面上に留まる該エッチング液で該被エッチング面をエッチングするエッチングステップと、
該エッチングステップを実施した後、該被エッチング面上の該エッチング液を被エッチング面上から除去するエッチング液除去ステップと、
を備え、
該エッチング液供給ステップと、該エッチングステップと、該エッチング液除去ステップと、をこの順で、少なくとも複数回繰り返す、ウェットエッチング方法とする。
【0009】
また、本発明の一態様によれば、
該エッチング液供給ステップを実施した後、
該被加工物の該被エッチング面の面積以上の面積を有し、耐エッチング性を有する押圧面を備えた押圧部材により、
該被加工物の該被エッチング面に供給された該エッチング液を押圧する押圧ステップを更に備え、
該エッチングステップでは、該押圧部材の該押圧面と該被加工物の該被エッチング面との間に留まるエッチング液で該被エッチング面をエッチングする、こととする。
【0010】
また、本発明の一態様によれば、
被加工物の被エッチング面を露出させた状態で該被加工物を保持する保持機構と、
該保持機構で保持された該被加工物の該被エッチング面にエッチング液を供給するエッチング液供給機構と、
該被加工物の該被エッチング面上からエッチング液を除去するエッチング液除去機構と、
少なくとも該エッチング液供給機構と該エッチング液除去機構とを制御するコントローラと、を備え、
該コントローラは、
該保持機構で保持された該被加工物に該エッチング液供給機構からエッチング液を供給した後、該被エッチング面上に留まる該エッチング液で該被エッチング面をエッチングし、次いで該エッチング液除去機構で該被エッチング面上の該エッチング液を該被エッチング面上から除去し、
該エッチング液の供給と該被エッチング面のエッチングと、該エッチング液の該被エッチング面上からの除去と、をこの順で、少なくとも複数回繰り返すように該エッチング液供給機構と該エッチング液除去機構とを制御する、
ウェットエッチング装置とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、被エッチング面上に留まるエッチング液でエッチングを行うことができ、従来のウェットエッチングと比較してエッチング液の使用量を削減できる。また、被加工物と反応済みのエッチング液は被エッチング面上から除去された後、未使用の新たなエッチング液によるエッチングが行われるため、高いエッチングレート(エッチング速度(単位時間当たりにエッチングされる体積))を確保することができ、エッチング時間の短縮が可能となる。
【0012】
また、本発明の一態様によれば、例えば、被加工物が大径であって、被エッチング面の面積が大きい場合においても、短時間で全面にエッチング液を供給することができ、エッチング時間を短縮することができる。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、コントローラによる自動制御によって複数回のエッチングを繰り返すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ウェットエッチング装置の第一の構成例について説明する図である。
【
図2】エッチング液供給ステップについて説明する図である。
【
図3】エッチングステップについて説明する図である。
【
図4】エッチング液除去ステップについて説明する図である。
【
図5】実施例1のウェットエッチング方法のフローチャートである。
【
図6】局所的にエッチングを行う例について示す図である。
【
図7】ウェットエッチング装置の第二の構成例について説明する図である。
【
図8】エッチング液供給ステップについて説明する図である。
【
図9】押圧部材の一構成例について説明する図である。
【
図11】エッチングステップについて説明する図である。
【
図12】エッチング液除去ステップについて説明する図である。
【
図13】実施例2のウェットエッチング方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
図1に示されるウェットエッチング装置の第一の構成例について説明する。各部の構成は、例示であって特に限定されるものではなく、同等の装置構成を採用することは可能である。
【0016】
ウェットエッチング装置10は、シリコンウェーハなどの被加工物2を保持する保持機構20と、被加工物2の被エッチング面2aにエッチング液を供給するエッチング液供給機構30と、被エッチング面2a上からエッチング液を除去するエッチング液除去機構40と、各種機構を制御するコントローラ50と、を有して構成される。
【0017】
被加工物2は、例えばシリコンウェーハであり、エッチングによりパターニングされることや、洗浄されることが予定されるものである。被加工物2の被エッチング面2aでは、例えばアルミニウムの薄膜がレジストでマスクされており、エッチング液によってアルミニウムが化学腐食される。
【0018】
保持機構20は、被加工物2の下側面となる被保持面2bを保持する保持面22aを有する保持テーブル22と、保持テーブル22を支持する支持台24と、を有して構成される。
【0019】
保持テーブル22の上面は保持面22aとして構成され、被加工物2を負圧により吸引保持する構成とすることや、図示せぬクランプにより被加工物2を保持する構成とすることができ、特に具体的な構成に限定されるものではない。更に、被加工物2を保持できる構成であれば、テーブルの形態でなくてもよく、例えば、被加工物2の外周縁のみを保持する形態などであってもよい。
【0020】
支持台24は、その上端部で保持テーブル22を支持するものであり、図示せぬ回転機構により回転する構成とすることや、回転しない固定の構成とすることができ、特に具体的な構成に限定されるものではない。
【0021】
エッチング液供給機構30は、被加工物2の被エッチング面2aにエッチング液を供給するためのエッチング液供給ノズル32と、エッチング液供給バルブ34と、エッチング液供給バルブ34を介してエッチング液供給ノズル32に接続されるエッチング液供給源36と、を有して構成される。
【0022】
エッチング液供給ノズル32は、その位置が移動しない固定式とする他、図示せぬ移動機構によって移動する構成としてもよく、具体的な構成を限定するものではない。
【0023】
エッチング液供給バルブ34はコントローラ50と接続される。コントローラ50はエッチング液供給バルブ34の開閉制御をすることで、エッチング液供給ノズル32からのエッチング液の供給の開始/停止を制御する。
【0024】
エッチング液は、例えば、エッチング対象がアルミニウムの場合には、リン酸、硝酸、酢酸、水からなる混合液が使用される。また、被加工物2であるシリコンウェーハの洗浄を目的としてエッチングがされる場合には、例えば硫酸、塩酸、アンモニアと過酸化水素水の混合液等がエッチング液として使用される。
【0025】
エッチング液除去機構40は、被加工物2の被エッチング面2aにあるエッチング液を吸引して除去するためのエッチング液吸引ノズル42と、エッチング液吸引ノズル42に吸引力を生じさせるためのポンプ44と、エッチング液吸引ノズル42から吸引したエッチング液を回収する回収槽46と、を有して構成される。
【0026】
ポンプ44はコントローラ50と接続される。コントローラ50はポンプ44の駆動制御をすることで、エッチング液吸引ノズル42によるエッチング液の供給の開始/停止を制御する。
【0027】
エッチング液吸引ノズル42は、その位置が移動しない固定式とする他、図示せぬ移動機構によって移動する構成としてもよく、具体的な構成を限定するものではない。
【0028】
以上の装置構成によりエッチングを行う例について説明する。以下の各ステップは
図5に示すフローチャートに示す順で実行される。
【0029】
<エッチング液供給ステップS1>
図2に示すように、エッチング液供給ノズル32から被加工物2の被エッチング面2aにエッチング液4を供給する。具体的には、コントローラ50がエッチング液供給バルブ34を開いた後、所定時間経過後に閉じることで、エッチング液供給ノズル32から所定の供給量のエッチング液4が被加工物2の被エッチング面2aに供給される。
【0030】
エッチング液の供給量は、被エッチング面2aの外周縁からエッチング液4がこぼれ落ちない量に設定されることが好ましく、これにより、エッチング液4の無駄な使用を避けることができる。
【0031】
<エッチングステップS2>
図3に示すように、被エッチング面2a上に表面張力で留まるエッチング液4で被エッチング面2aをエッチングする。このエッチングステップは所定時間行われる。具体的には、コントローラ50が、エッチング液供給バルブ34を閉じたタイミングをエッチング開始時間とし、そこから時間をカウントし、所定時間経過後にエッチング液除去ステップに移行する。
【0032】
<エッチング液除去ステップS3>
図4に示すように、被エッチング面2a上のエッチング液4を被エッチング面2a上から除去する。具体的には、コントローラ50がポンプ44を所定時間駆動することで、エッチング液吸引ノズル42にてエッチング液4を吸引し、回収槽46へと送り流す。
【0033】
図5に示すように、以上に述べたエッチング液供給ステップS1,エッチングステップS2、エッチング液除去ステップS3が、順に実施される。また、このステップS1~S3を所定の回数繰り返される。なお、エッチング液や被加工物側の被エッチング材の種類によっては、1回のみ行われることとしてもよく、特に限定されるものではない。
【0034】
ステップS1~S3が繰り返される際には、各エッチングステップS2にでは未使用のエッチング液によるエッチングが行われるため、高いエッチングレート(エッチング速度(単位時間当たりにエッチングされる体積))を実現することができる。
【0035】
また、エッチング液除去ステップS3により被エッチング面2aに存在する使用済のエッチング液が除去されるため、エッチングステップS2においては、未使用のエッチング液のみによるエッチングが行われるため、高いエッチングレートを実現することができる。
【0036】
なお、以上の構成のようにエッチング液吸引ノズル42にてエッチング液4を吸引するほか、例えば、保持テーブル22をモーターで高速回転させるスピンナテーブルの構成とすることで、遠心力によりエッチング液4を被エッチング面2aから飛ばすようにして除去することとしてもよい(スピン除去)。この場合、保持テーブル22の周囲を覆う壁を設けるとともに、飛ばされたエッチング液4を回収することが好ましい。
【0037】
この場合、保持機構20にてエッチング液除去機構40の機能を兼ね備えることができ、エッチング液吸引ノズル42、ポンプ44、回収槽46を省略することができる。保持テーブル22が高速回転する際にはエッチング液が飛散するため、保持テーブル22の周囲を取り囲む壁等が設置される。なお、エッチング液吸引ノズル42による吸引と、保持テーブル22の回転が両方行われる構成としてもよい。
【0038】
さらに、
図3に示すように、エッチングは被加工物2の上側の全面に供給されて全面がエッチングされることとする他、
図6に示すように、被加工物2においてエッチングが必要となる特定の箇所にのみエッチング液4が供給されることとし、局所的にエッチングが行われることとしてもよい。
【実施例2】
【0039】
図7及び
図8に示されるウェットエッチング装置の第二の構成例について説明する。各部の構成は、例示であって特に限定されるものではなく、同等の装置構成を採用することは可能である。
【0040】
図7及び
図8に示すように、ウェットエッチング装置110は、シリコンウェーハなどの被加工物2を保持する保持機構120と、被加工物2の被エッチング面2aにエッチング液を供給するエッチング液供給機構130と、被エッチング面2a上からエッチング液を除去するエッチング液除去機構140と、各種機構を制御するコントローラ150と、を有して構成される。
【0041】
保持機構120は、被加工物2の下側面となる被保持面2bを保持する保持面122aを有する保持テーブル122と、保持テーブル122を支持する支持台124と、を有して構成されるものであり、第一の構成例と同様の構成である。
【0042】
エッチング液供給機構130は、被加工物2の被エッチング面2aにエッチング液を供給するためのエッチング液供給ノズル132を備える押圧部材131と、エッチング液供給バルブ134と、エッチング液供給バルブ134を介してエッチング液供給ノズル132に接続されるエッチング液供給源136と、を有して構成される。
【0043】
押圧部材131は板状部材にて構成され、保持テーブル122の保持面122aに対向する押圧面131aを有し、電動アクチュエーター等からなる昇降機構133によって昇降移動する。
【0044】
押圧部材131の中央部には、保持テーブル122の保持面122a側に向けてエッチング液供給ノズル132が設けられ、被加工物2の被エッチング面2aに対しエッチング液4が供給される。エッチング液供給ノズル132の具体的な形態については特に限定されるものではなく、例えば、押圧部材131の押圧面131aに開口する孔にて構成することができる。
【0045】
コントローラ150によりエッチング液供給バルブ134の開閉が制御され、所定の供給量のエッチング液4が被加工物2の被エッチング面2a上に供給される。
【0046】
押圧部材131の押圧面131aの面積は、被エッチング面2aの面積以上に構成され、被エッチング面2a上に供給されたエッチング液4を押し伸ばし、被エッチング面2aの全体にエッチング液4を行き渡らせるように構成される。エッチング液4の供給量は、被エッチング面2aの全体にエッチング液4が行き渡る量に設定される。このように押圧面131aによって押し伸ばす構成とすることで、大径の被加工物2においても短時間で全面にエッチング液4を供給することができる。
【0047】
ここで、
図9に示すように、押圧部材131の押圧面131aには、エッチング液供給バルブ134の位置から放射状に伸びる複数本の溝131bが形成されることとしてもよい。これによれば、溝131bを通じてエッチング液4を流動させ、
図10及び
図11に示すように、被エッチング面2aの全面により短時間でエッチング液4を行き渡らせることができる。この構成は、特に、大径の被加工物2に好適な態様となる。なお、
図9には、エッチング液供給ノズル132とエッチング液吸引ノズル142が示される。
【0048】
また、
図8に示す構成において、押圧部材131は回転可能に構成されることとしてもよい。これにより、エッチング液4を周方向に回転させながら拡げることができる。また、
図9に示すように、押圧部材131の押圧面131aに突起部131cを設けることで、エッチング液4を撹拌することができ、エッチングレート(エッチング速度(単位時間当たりにエッチングされる体積))を向上させることができる。
【0049】
図7及び
図8に示すようにエッチング液除去機構140は、被加工物2の被エッチング面2aにあるエッチング液を吸引して除去するためのエッチング液吸引ノズル142と、エッチング液吸引ノズル142に吸引力を生じさせるためのポンプ144と、エッチング液吸引ノズル142から吸引したエッチング液を回収する回収槽146と、を有して構成される。
【0050】
エッチング液吸引ノズル142は、押圧部材131の中央部から離れた位置において、保持テーブル122の保持面122a側に向けて設けられる。エッチング液吸引ノズル142は、一箇所に設けられることとする他、複数箇所に設けられることとしてもよい。エッチング液吸引ノズル142の具体的な形態については特に限定されるものではなく、本実施形態のように、押圧部材131の押圧面131aに開口する孔にて構成するほか、押圧部材131と別体で構成することもできる。
【0051】
コントローラ150によりポンプ144を駆動してエッチング液吸引ノズル142に吸引力を生じさせることで、エッチング液4が吸引されて回収槽146に回収される。
【0052】
以上の装置構成によりエッチングを行う例について説明する。以下の各ステップは
図13に示すフローチャートに示す順で実行される。
【0053】
<エッチング液供給ステップS11>
図8に示すように、エッチング液供給ノズル132から被加工物2の被エッチング面2aにエッチング液4を供給する。具体的には、コントローラ150がエッチング液供給バルブ134を開いた後、所定時間経過後に閉じることで、エッチング液供給ノズル132から所定の供給量のエッチング液4が被加工物2の被エッチング面2aに供給される。
【0054】
エッチング液の供給量は、被エッチング面2aの外周縁からエッチング液4がこぼれ落ちない程度の量に設定されることが好ましく、これにより、エッチング液4の無駄な使用を避けることができる。
【0055】
<押圧ステップS12>
図10に示すように押圧部材131にて被加工物2の被エッチング面2aにあるエッチング液4を押し伸ばす。具体的には、コントローラ150が昇降機構133を駆動して、押圧部材131の押圧面131aを保持テーブル122側に近づけることで、押圧面131aと被エッチング面2aの間の隙間をエッチング液4で満たすようにし、被エッチング面2aの全面にエッチング液4を行き渡らせる。
【0056】
<エッチングステップS13>
図11に示すように、被エッチング面2a上に行き渡らせたエッチング液4で被エッチング面2aをエッチングする。このエッチングステップは所定時間行われる。具体的には、コントローラ150が、押圧ステップを終了したタイミングをエッチング開始時間とし、そこから時間をカウントし、所定時間経過後にエッチング液除去ステップに移行する。
【0057】
このエッチングステップにおいて、押圧部材131を回転させることとしてもよい。また、このエッチングステップS13は、押圧ステップS12と同時に行われることとしてもよい。
【0058】
<エッチング液除去ステップS14>
図12に示すように、被エッチング面2a上のエッチング液4を被エッチング面2a上から除去する。具体的には、コントローラ150がポンプ144を所定時間駆動することで、エッチング液吸引ノズル142にてエッチング液4を吸引し、回収槽146へと送り流す。
【0059】
エッチング液4の吸引を終了すると、コントローラ150は昇降機構133を駆動して、押圧部材131の押圧面131aを保持テーブル122から遠ざける。
【0060】
図13に示すように、以上に述べたエッチング液供給ステップS11,押圧ステップS12、エッチングステップS13、エッチング液除去ステップS14、が、順に実施される。また、このステップS11~S14を所定の回数繰り返される。なお、エッチング液や被加工物側の被エッチング材の種類によっては、1回のみ行われることとしてもよく、特に限定されるものではない。
【0061】
なお、以上の構成のように、エッチング液吸引ノズル142にてエッチング液4を吸引するほか、例えば、保持テーブル122をモーターで高速回転させるスピンナテーブルの構成とすることで、遠心力によりエッチング液4を被エッチング面2aから飛ばすようにして除去することとしてもよい(スピン除去)。この場合、保持テーブル122の周囲を覆う壁を設けるとともに、飛ばされたエッチング液4を回収することが好ましい。
【0062】
この場合、保持機構120にてエッチング液除去機構140の機能を兼ね備えることができ、エッチング液吸引ノズル142、ポンプ144、回収槽146を省略することができる。保持テーブル122が高速回転する際にはエッチング液が飛散するため、保持テーブル122の周囲を取り囲む壁等が設置される。なお、エッチング液吸引ノズル142による吸引と、保持テーブル122の回転が両方行われる構成としてもよい。
【0063】
以上のようにして本発明を実現することができる。
即ち、
図1乃至5に示すように、
ウェットエッチング方法であって、
エッチング液供給ノズル32から被加工物2の被エッチング面2aにエッチング液4を供給するエッチング液供給ステップS1と、
被エッチング面2a上に留まるエッチング液4で被エッチング面2aをエッチングするエッチングステップS2と、
エッチングステップS2を実施した後、被エッチング面2a上のエッチング液4を被エッチング面2a上から除去するエッチング液除去ステップS3と、
を備え、
エッチング液供給ステップS1と、エッチングステップS2と、エッチング液除去ステップS3と、をこの順で、少なくとも複数回繰り返す、ウェットエッチング方法とするものである。
【0064】
これにより、被エッチング面上に留まるエッチング液でエッチングを行うことができ、従来のウェットエッチングと比較してエッチング液の使用量を削減できる。また、被加工物と反応済みのエッチング液は被エッチング面上から除去された後、未使用の新たなエッチング液によるエッチングが行われるため、高いエッチングレート(エッチング速度(単位時間当たりにエッチングされる体積))を確保することができ、エッチング時間の短縮が可能となる。
【0065】
また、
図8~
図11に示すように、
エッチング液供給ステップS1を実施した後、
被加工物2の被エッチング面2aの面積以上の面積を有し、耐エッチング性を有する押圧面131aを備えた押圧部材131により、
被加工物2の被エッチング面2aに供給されたエッチング液4を押圧する押圧ステップS12を更に備え、
エッチングステップS13では、押圧部材131の押圧面131aと被加工物2の被エッチング面2aとの間に留まるエッチング液4で被エッチング面2aをエッチングする、
こととするものである。
【0066】
これによれば、例えば、被加工物が大径であって、被エッチング面の面積が大きい場合においても、短時間で全面にエッチング液4を供給することができ、エッチング時間を短縮することができる。
【0067】
また、
図1乃至
図4に示すように、
ウェットエッチング方法を実施するウェットエッチング装置10であって、
被加工物2の被エッチング面2aを露出させた状態で被加工物2を保持する保持機構20と、
保持機構20で保持された被加工物2の被エッチング面2aにエッチング液4を供給するエッチング液供給機構30と、
被加工物2の被エッチング面2a上から被加工物2エッチング液4を除去するエッチング液除去機構40と、
少なくともエッチング液供給機構30とエッチング液除去機構40とを制御するコントローラ50と、を備え、
コントローラ50は、
保持機構20で保持された被加工物2にエッチング液供給機構30からエッチング液4を供給した後、被エッチング面2a上に留まるエッチング液4で被エッチング面2aをエッチングし、次いでエッチング液除去機構40で被エッチング面2a上のエッチング液4を被エッチング面2a上から除去し、
エッチング液4の供給と被エッチング面2aのエッチングと、エッチング液4の被エッチング面2a上からの除去と、をこの順で、少なくとも複数回繰り返すようにエッチング液供給機構30とエッチング液除去機構40とを制御する、
ウェットエッチング装置10とするものである。
【0068】
この構成によれば、コントローラによる自動制御によって複数回のエッチングを繰り返すことが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
2 被加工物
2a 被エッチング面
4 エッチング液
10 ウェットエッチング装置
20 保持機構
22 保持テーブル
22a 保持面
24 支持台
30 エッチング液供給機構
32 エッチング液供給ノズル
34 エッチング液供給バルブ
36 エッチング液供給源
40 エッチング液除去機構
42 エッチング液吸引ノズル
44 ポンプ
46 回収槽
50 コントローラ
110 ウェットエッチング装置
120 保持機構
122 保持テーブル
122a 保持面
124 支持台
130 エッチング液供給機構
131 押圧部材
131a 押圧面
131b 溝
131c 突起部
132 エッチング液供給ノズル
133 昇降機構
134 エッチング液供給バルブ
136 エッチング液供給源
140 エッチング液除去機構
142 エッチング液吸引ノズル
144 ポンプ
146 回収槽
150 コントローラ