(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 9/02056 20220101AFI20240618BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G01B9/02056
G01B11/24 D
(21)【出願番号】P 2020179442
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 和彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隆介
(72)【発明者】
【氏名】大峠 怜也
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-155865(JP,A)
【文献】特開平02-287107(JP,A)
【文献】特開平11-287612(JP,A)
【文献】国際公開第2017/183181(WO,A1)
【文献】特開2005-214653(JP,A)
【文献】特開2010-272655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 9/02- 9/10
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源が発した光を測定の基準となる参照光と測定対象物を経て得られる測定光とに分割する分割部と、
前記参照光の強度又は前記測定光の強度の少なくともいずれかを変化させる
ことにより前記参照光の強度と前記測定光の強度との関係を変化させる光強度変化部と、
前記参照光と前記測定光との干渉により発生した干渉縞を撮影することにより、干渉縞画像データを生成
し、かつ前記参照光が遮光された状態で前記測定光に基づく測定光画像データを生成する撮像部と、
前記参照光の強度
と前記測定光の強度
との関係が異なる複数の状態で前記撮像部が
前記干渉縞を撮影して生成した複数の前記干渉縞画像データのうち、各画素において振幅強度が最小の干渉縞画像データ以外の一以上の干渉縞画像データに基づいて干渉縞の位相を解析することにより、前記測定対象物の測定波面又は透過波面の歪を特定するデータ処理部と、
を有
し、
前記光強度変化部は、前記測定光画像データにおける各画素の位置における光の強度を示す強度分布に基づいて、前記参照光の強度と前記測定光の強度との関係を画素ごとに決定する測定装置。
【請求項2】
前記撮像部は、前記参照光と前記測定光との位相差が異なる複数の状態で、前記参照光と前記測定光との干渉により発生した干渉縞を撮影することにより得られた、複数の前記位相差に対応する複数の前記干渉縞画像データを含む干渉縞画像データセットを生成し、
前記データ処理部は、前記参照光の強度又は前記測定光の強度の少なくともいずれかが異なる複数の状態で前記撮像部が撮影して生成した複数の前記干渉縞画像データセットのうち、各画素において振幅強度が最小の干渉縞画像データセット以外の一以上の干渉縞画像データセットに基づいて干渉縞の位相を解析することにより前記測定波面又は前記透過波面の歪を特定する、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記データ処理部は、前記測定光画像データにおける強度分布に基づいて、前記光強度変化部が前記参照光又は前記測定光の少なくともいずれかの強度を変化させた状態に対応する前記複数の干渉縞画像データのうち、各画素において振幅強度が最小の干渉縞画像データ以外の一以上の干渉縞画像データに基づいて干渉縞の位相を解析することにより前記測定波面又は前記透過波面の歪を特定する、
請求項
1又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記データ処理部は、前記参照光の強度と前記測定光の強度との関係が異なる前記複数の状態で前記撮像部が撮影して生成した前記複数の干渉縞画像データセットのうち振幅強度が最小の干渉縞画像データセット以外の一以上の干渉縞画像データセットに基づいて干渉縞の位相を解析する、
請求項2に記載の測定装置。
【請求項5】
前記データ処理部は、前記複数の画素のそれぞれに対して、前記複数の干渉縞画像データセットのうち振幅強度が最大の干渉縞画像データセットに基づいて位相を解析する、
請求項
4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記光強度変化部は、前記参照光の光路上に設けられた参照光フィルタ、又は前記測定光の光路上に設けられた測定光フィルタの少なくともいずれかを有し、前記参照光フィルタ又は前記測定光フィルタの特性を変化させることにより、前記参照光の強度と前記測定光の強度との関係を変化させる、
請求項1から
5のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記光強度変化部として、前記参照光の光路上に脱着可能な遮光板を有する、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項8】
前記光源が発する光の偏光状態を変化させるλ/2波長板と、
前記λ/2波長板を通過した後の光を前記参照光と、前記参照光と直交する前記測定光とに分割する前記分割部として機能する偏光ビームスプリッタと、
前記光強度変化部として機能し、前記参照光と前記測定光との合成光を偏光させる偏光板と、
を有し、
前記光強度変化部は、前記偏光板の偏光角に基づいて前記参照光の強度と前記測定光の強度との関係を変化させる、
請求項1から
7のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項9】
前記光源が発する光の偏光状態を変化させるλ/2波長板と、
前記λ/2波長板を通過した後の光を前記参照光と、前記参照光と直交する前記測定光とに分割する前記分割部として機能する偏光ビームスプリッタと、
前記参照光と前記測定光との合成光を円偏光にするλ/4波長板と、
前記λ/4波長板を通過した後の光が入射し、それぞれ回転角が異なる複数の偏光板と、
を有し、
前記撮像部は、前記参照光の強度と前記測定光の強度との関係が同一の状態において、前記複数の偏光板を透過した複数の光に基づく複数の前記干渉縞画像データを生成する、
請求項1から
7のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項10】
光源と、
前記光源が発した光を測定の基準となる参照光と測定対象物を経て得られる測定光とに分割する分割部と、
前記参照光の強度又は測定光の強度の少なくともいずれかを変化させる
ことにより前記参照光の強度と前記測定光の強度との関係を変化させる光強度変化部と、
前記参照光と前記測定光との干渉により発生した干渉縞を撮影することにより、干渉縞画像データを生成する撮像部と、
を有する測定装置を用いて前記測定対象物の測定波面又は透過波面の歪を測定する方法であって、
前記参照光が遮光された状態で前記測定光に基づく測定光画像データを生成するステップと、
前記測定光画像データにおける各画素の位置における光の強度を示す強度分布に基づいて、前記参照光の強度又は前記測定光の強度の少なくともいずれかを変化させる
ことにより前記参照光の強度と前記測定光の強度との関係を画素ごとに決定するステップと、
前記参照光の強度
と前記測定光の強度
との関係が異なる複数の状態で前記撮像部に前記干渉縞画像データを生成させるステップと、
前記参照光の強度
と前記測定光の強度
との関係が異なる複数の状態で前記撮像部が
前記干渉縞を撮影して生成した複数の前記干渉縞画像データのうち、各画素において振幅強度が最小の干渉縞画像データ以外の一以上の干渉縞画像データに基づいて干渉縞の位相を解析することにより、前記測定対象物の測定波面又は透過波面の歪を特定するステップと、
を有する測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定の基準となる参照面と測定対象物にレーザを照射して、参照面で反射して生じた参照光と、測定対象物で反射して生じた測定光を干渉させた際に生じる干渉縞を解析して、測定対象物の面形状や透過波面の歪みを測定する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
測定対象物の面の状態(例えば反射率又は表面粗さ)が面内の位置によって異なる場合、干渉縞の振幅が測定対象物の位置によって異なる。その結果、測定対象物の位置によって測定分解能が異なるため、測定対象物の位置によって測定精度が変動してしまうという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、測定対象物における測定位置による測定精度の変動を抑制することができる測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の測定装置は、光源と、前記光源が発した光を測定の基準となる参照光と測定対象物を経て得られる測定光とに分割する分割部と、前記参照光の強度又は前記測定光の強度の少なくともいずれかを変化させる光強度変化部と、前記参照光と前記測定光との干渉により発生した干渉縞を撮影することにより、干渉縞画像データを生成する撮像部と、前記参照光の強度又は前記測定光の強度の少なくともいずれかが異なる複数の状態で前記撮像部が撮影して生成した複数の前記干渉縞画像データのうち、各画素において振幅強度が最小の干渉縞画像データ以外の一以上の干渉縞画像データに基づいて干渉縞の位相を解析することにより、前記測定対象物の測定波面又は透過波面の歪を特定するデータ処理部と、を有する。
【0007】
前記撮像部は、前記参照光と前記測定光との位相差が異なる複数の状態で、前記参照光と前記測定光との干渉により発生した干渉縞を撮影することにより得られた、複数の前記位相差に対応する複数の前記干渉縞画像データを含む干渉縞画像データセットを生成し、前記データ処理部は、前記参照光の強度又は前記測定光の強度の少なくともいずれかが異なる複数の状態で前記撮像部が撮影して生成した複数の前記干渉縞画像データセットのうち、各画素において振幅強度が最小の干渉縞画像データセット以外の一以上の干渉縞画像データセットに基づいて干渉縞の位相を解析することにより前記測定波面又は前記透過波面の歪を特定してもよい。
【0008】
前記撮像部は、前記参照光が遮光された状態で前記測定光に基づく測定光画像データを生成し、前記光強度変化部は、前記測定光画像データにおける強度分布に基づいて、前記参照光又は前記測定光の少なくともいずれかの強度を変化させてもよい。
【0009】
前記データ処理部は、前記測定光画像データにおける強度分布に基づいて、前記光強度変化部が前記参照光又は前記測定光の少なくともいずれかの強度を変化させた状態に対応する前記複数の干渉縞画像データのうち、各画素において振幅強度が最小の干渉縞画像データ以外の一以上の干渉縞画像データに基づいて干渉縞の位相を解析することにより前記測定波面又は前記透過波面の歪を特定してもよい。
【0010】
前記光強度変化部は、前記参照光の強度と前記測定光の強度との関係を変化させ、前記データ処理部は、前記参照光の強度と前記測定光の強度との関係が異なる前記複数の状態で前記撮像部が撮影して生成した前記複数の干渉縞画像データセットのうち振幅強度が最小の干渉縞画像データセット以外の一以上の干渉縞画像データセットに基づいて干渉縞の位相を解析してもよい。
【0011】
前記データ処理部は、前記複数の画素のそれぞれに対して、前記複数の干渉縞画像データセットのうち振幅強度が最大の干渉縞画像データセットに基づいて位相を解析してもよい。
【0012】
前記光強度変化部は、前記参照光の光路上に設けられた参照光フィルタ、又は前記測定光の光路上に設けられた測定光フィルタの少なくともいずれかを有し、前記参照光フィルタ又は前記測定光フィルタの特性を変化させることにより、前記参照光の強度と前記測定光の強度との関係を変化させてもよい。
【0013】
前記測定装置は、前記光強度変化部として、前記参照光の光路上に脱着可能な遮光板を有してもよい。
【0014】
前記測定装置は、前記光源が発する光の偏光状態を変化させるλ/2波長板と、前記λ/2波長板を通過した後の光を前記参照光と、前記参照光と直交する前記測定光とに分割する前記分割部として機能する偏光ビームスプリッタと、前記光強度変化部として機能し、前記参照光と前記測定光との合成光を偏光させる偏光板と、を有し、前記光強度変化部は、前記偏光板の偏光角に基づいて前記参照光の強度と前記測定光の強度との関係を変化させてもよい。
【0015】
前記測定装置は、前記光源が発する光の偏光状態を変化させるλ/2波長板と、前記λ/2波長板を通過した後の光を前記参照光と、前記参照光と直交する前記測定光とに分割する前記分割部として機能する偏光ビームスプリッタと、前記参照光と前記測定光との合成光を円偏光にするλ/4波長板と、前記λ/4波長板を通過した後の光が入射し、それぞれ回転角が異なる複数の偏光板と、を有し、前記撮像部は、前記参照光の強度と前記測定光の強度との関係が同一の状態において、前記複数の偏光板を透過した複数の光に基づく複数の前記干渉縞画像データを生成してもよい。
【0016】
本発明の第2の態様の測定方法は、光源と、前記光源が発した光を測定の基準となる参照光と測定対象物を経て得られる測定光とに分割する分割部と、前記参照光の強度又は測定光の強度の少なくともいずれかを変化させる光強度変化部と、前記参照光と前記測定光との干渉により発生した干渉縞を撮影することにより、干渉縞画像データを生成する撮像部と、を有する測定装置を用いて前記測定対象物の測定波面又は透過波面の歪を測定する方法であって、前記参照光の強度又は前記測定光の強度の少なくともいずれかを変化させるステップと、前記参照光の強度又は前記測定光の強度の少なくともいずれかが異なる複数の状態で前記撮像部に前記干渉縞画像データを生成させるステップと、前記参照光の強度又は前記測定光の強度の少なくともいずれかが異なる複数の状態で前記撮像部が撮影して生成した複数の前記干渉縞画像データのうち、各画素において振幅強度が最小の干渉縞画像データ以外の一以上の干渉縞画像データに基づいて干渉縞の位相を解析することにより、前記測定対象物の測定波面又は透過波面の歪を特定するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、測定対象物における測定位置による測定精度の変動を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】本実施形態に係る測定方法の手順の一例を示す図である。
【
図5】測定装置102を用いる測定方法の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[測定装置の概要]
干渉計を用いて測定対象物の表面の形状を測定する場合、使用するレーザ光の波長λを633nmとすると、干渉縞の輝度の差の最大値はλ/2の316.5nmに相当する。さらに、干渉縞の輝度に対応する位相を解析することで、一つの縞の間の輝度の差に相当するλ/2の間を補間してナノメートル精度の測定ができる。
【0020】
干渉計においては、受光した光強度分布を撮像デバイスによって有限の諧調数のデジタルデータに変換することにより、位相解析に用いる干渉縞画像データが生成される。したがって、撮像デバイスが飽和しない範囲で干渉縞の振幅強度(すなわち、輝度の変化量)が大きければ大きいほど、分割数の多い位相計算結果が得られることから、高い分解能(すなわち高精度)の測定を行うことができる。なお、本明細書において、振幅強度のことを振幅という場合がある。
【0021】
一方、測定対象物の反射率や測定対象物の測定面の表面粗さなどによって、干渉縞の明暗の振幅は変化する。そのため、測定対象物における位置によって干渉縞の振幅は異なるので、干渉縞を解析することにより得られる測定結果の分解能(すなわち測定精度)も、測定対象物の位置によって異なる。干渉計の測定対象範囲内に干渉強度が強い領域と弱い領域が存在すると、干渉強度が強い領域と弱い領域で測定結果にばらつきが発生したり、測定できない領域が発生したりする。
【0022】
このことから、従来の干渉計により測定可能な測定対象物の測定面は、反射光強度が均一に得られる面、すなわち鏡面又は面全体を同一条件で加工した面に限定されていた。さらに、干渉縞の明暗の振幅を測定対象物の測定面全体で十分に確保できるように、参照光と測定光の強度が調整されている必要があった。つまり、従来の干渉計は、測定位置の変化に対するロバスト性が低く、適用範囲が限られていた。
【0023】
これに対して、本実施形態に係る測定装置は、参照光の強度と測定光の強度との関係(又は参照光の強度と測定光の強度との関係)を変化させて、複数の干渉縞画像データセットを生成する。そして、画素ごとに、より振幅の高い干渉縞画像データセットを選択して解析を行うことによって、解析に用いる干渉縞の振幅を十分に大きくすることで、測定精度を向上させることを可能としている。なお、干渉縞画像データセットは、参照光の強度と測定光の強度との関係が同じ状態で、参照光と測定光との位相差が異なる複数の干渉縞を撮影して生成される複数の干渉縞画像データから構成されている。以下、本実施形態に係る測定装置の各種の構成例を説明する。
【0024】
[測定装置の構成]
図1は、第1実施形態に係る測定装置100の構成を示す図である。測定装置100は、光源10と、拡大光学系20と、干渉計30と、結像レンズ40と、撮像デバイス50と、データ処理部60と、を有する。拡大光学系20は、レンズ21と、ピンホール22と、レンズ23とを有する。干渉計30は、参照面31と、測定面32と、NDフィルタ33(NDフィルタ33a及びNDフィルタ33b)と、ビームスプリッタ34とを有する。
【0025】
光源10は光を発する装置であり、例えばレーザ光を発する。拡大光学系20は、光源10が発した光を所定のビーム径に拡大する。拡大光学系20においてビーム径が拡大された光は干渉計30に入射し、ビームスプリッタ34で二つに分割される。ビームスプリッタ34は、光源10が発した光を参照光と測定光とに分割する分割部として機能する。
【0026】
分割された後の第1の光は、NDフィルタ33aを通過してから参照面31において反射してビームスプリッタ34に戻る。また、分割された後の第2の光は、NDフィルタ33bを通過してから測定面32において反射してビームスプリッタ34に戻る。
【0027】
NDフィルタ33aは、参照光の光路上に設けられた参照光フィルタであり、NDフィルタ33bは、測定光の光路上に設けられた測定光フィルタである。NDフィルタ33aは参照光の強度を調整し、NDフィルタ33bは測定光の強度を調整する。NDフィルタ33a及びNDフィルタ33bは、それぞれの特性を変化させることにより、参照光の強度と測定光の強度との関係を変化させることができる。NDフィルタ33a及びNDフィルタ33bは、測定者の操作に基づいて特性を変化させてもよく、データ処理部60による制御に基づいて特性を変化させてもよい。
【0028】
ビームスプリッタ34から参照面31までの距離と、ビームスプリッタ34から測定面32までの距離との差によって、参照光の位相と測定光の位相との間には差がある。ビームスプリッタ34において、位相差がある参照光と測定光とが合波(すなわち光波を合成)されることにより干渉縞が生じる。
【0029】
撮像デバイス50は、結像レンズ40を介して得られる干渉縞画像に基づく干渉縞画像データセットIji(x,y)を生成する。撮像デバイス50は、参照光と測定光との位相差が異なる複数の状態で、測定の基準となる参照面31で反射した参照光と、測定対象物の測定面32で反射して生じる測定光との干渉により発生した干渉縞を撮影することにより、複数の位相差に対応する干渉縞画像データセットを生成する撮像部として機能する。干渉縞画像データセットは、参照光と測定光との位相差が異なる複数の状態で、撮像デバイス50が参照光と測定光との干渉により発生した干渉縞を撮影して得られた複数の干渉縞画像データを含む。
【0030】
データ処理部60は、例えばプロセッサとプログラムを記憶するメモリとを有しており、参照光の強度又は測定光の強度の少なくともいずれかが異なる複数の状態で撮像デバイス50が撮影して生成した複数の干渉縞画像データのうち、各画素において振幅強度が最小の干渉縞画像データ以外の一以上の干渉縞画像データ(例えば、各画素において振幅強度が最大の干渉縞画像データ)に基づいて干渉縞の位相を解析することにより、測定対象物の測定波面又は透過波面の歪を特定する。データ処理部60は、参照光の強度又は測定光の強度の少なくともいずれかが異なる複数の状態で撮像デバイス50が撮影して生成した複数の干渉縞画像データセットのうち、各画素において振幅強度が最小の干渉縞画像データセット以外の一以上の干渉縞画像データセットに基づいて干渉縞の位相を解析することにより、測定対象物の測定波面又は透過波面の歪を特定してもよい。データ処理部60の動作の詳細については後述する。
【0031】
NDフィルタ33a及びNDフィルタ33bは、参照光の強度又は測定光の強度の少なくともいずれかを変化させる光強度変化部として機能する。NDフィルタ33a及びNDフィルタ33bは、参照光の強度と測定光の強度との関係を変化させてもよい。
【0032】
測定装置100を用いた測定方法においては、例えばNDフィルタ33a及びNDフィルタ33bによって参照面31に照射される参照光若しくは測定面32に照射される測定光の少なくともいずれか、又は参照光の強度若しくは測定光の強度の少なくともいずれかが異なる複数の状態で測定が行われる。複数の状態は、例えば、参照光の強度と測定光の強度との関係が異なる複数の状態である。そして、撮像デバイス50が、複数の状態に対応する複数の干渉縞画像データセットを生成する。
【0033】
データ処理部60は、複数の画素のそれぞれに対して、参照光の強度又は測定光の強度の少なくともいずれか異なる複数の状態で撮像デバイス50が撮影して生成した複数の干渉縞画像データセットのうち振幅強度が最小の干渉縞画像データセット以外の一以上の干渉縞画像データセットに基づいて干渉縞の位相を解析することにより測定面32の形状を特定する。
【0034】
データ処理部60は、例えば、複数の画素のそれぞれに対して、複数の干渉縞画像データセットのうち振幅強度が最大の干渉縞画像データセットに基づいて位相を解析する。すなわち、データ処理部60は、それぞれの干渉縞画像データセットにおける干渉縞画像の振幅の分布を算出し、画素ごとに、より振幅の高い干渉縞画像データセットを選択して解析を行うことにより測定対象物の形状を特定する。
【0035】
[測定原理]
以下、測定装置100が測定対象物の形状を測定する原理を説明する。
測定対象物の面上の観測座標(x,y)でバイアスB(x,y)及び振幅A(x,y)を有する干渉縞画像強度分布I(x,y)は、参照光をr(x,y)、測定光をm(x,y)とすると、これらと最終的に得たい情報である位相φ(x,y)との関係は次式(1)で表される。√[r(x,y)・m(x,y)]は振幅分布を示している。
【数1】
【0036】
ここでは、光源10のコヒーレンスが十分に高く、理想的な干渉縞が得られることを想定している。なお、ここで述べた前提とは異なる状態だったとしても、測定装置100の効果は問題なく発揮される。式(1)から、干渉縞画像強度分布I(x,y)は各々の座標(x,y)において、振幅分布√[r(x,y)・m(x,y)]の範囲で、φ(x,y)により位相変調される。その際、干渉縞画像強度分布I(x,y)は有限の階調数を有する撮像デバイス50により画像データとして取得されるため、振幅分布√[r(x,y)・m(x,y)]の値が大きいほど多くの階調数を用いた強度分布が得られて、位相の1周期2πに対する位相φ(x,y)の分割数が多くなる。
【0037】
ここで、干渉縞画像強度分布I(x,y)から位相φ(x,y)及び振幅分布√[r(x,y)・m(x,y)]を算出する方法を説明する。これらを算出する方法として、干渉縞画像データをフーリエ変換することにより、1枚の干渉縞画像データに基づいて振幅分布を算出する方法と、位相シフト法により振幅分布を算出する方法とがある。フーリエ変換を用いる前者の方法においては、フーリエ変換をすることにより観測座標(x,y)における位相を特定した結果に基づいて振幅分布を算出する。
【0038】
位相シフト法により振幅分布を算出する方法においては、例えば参照面31の位置を変化させることにより参照光に対する測定光の位相を想定的にΔφ
iずつシフトさせながら、以下の式(2)で表される干渉縞画像を撮像デバイス50が撮像して、干渉縞画像データセットIi(x,y)を生成する。
【数2】
【0039】
その際、例えば式(3)に示すような干渉縞位相の1周期分(2π)をN等分してN回シフトさせると、データ処理部60は、式(4)に示す演算を行うことで位相φ(x,y)を算出することができる。
【数3】
【数4】
【0040】
電気ノイズ等のランダムノイズなどの影響で干渉縞画像データセットが示す干渉縞画像の振幅にばらつきが発生するため、実質的に有効な階調数が制限される。そのため、Ii(x,y)の強度変化の幅の増減に応じて、式(4)の右辺を演算した結果を形状の特定に利用できる場合の数も増減する。
【0041】
式(4)の左辺の位相φ(x,y)は右辺の値に対応して0から2πの範囲で決定される。したがって、Ii(x,y)の強度変化が大きければ大きいほど右辺の計算結果の場合の数が増えるため、位相φ(x,y)の分割数が増えて、データ処理部60は、値を細かく決定できることになる。すなわち、データ処理部60による形状特定の分解能が増加する。
【0042】
Ii(x,y)を変化させる要素は式(1)の振幅の項A(x,y)であり、振幅A(x,y)は、参照光r(x,y)と測定光m(x,y)によって決まる。したがって、測定装置100を用いて測定対象物の形状を測定する際には、撮像デバイスが飽和しない範囲で強度変化が最も大きい干渉縞画像が得られるように、参照光r(x,y)の強度と測定光m(x,y)の強度とを、NDフィルタ33を用いて減少させる。このようにすることで、参照光の強度又は測定光の強度の少なくともいずれかが変化する。
【0043】
ここで問題となるのが、測定対象物の測定面32のxy座標上での測定光m(x,y)の強度分布が均一でない場合である。不均一な強度分布は、測定対象物の測定面32内に、材質が異なる領域又は異なる加工工程によって作成された領域が存在する場合に生じる。同一加工面であっても、研削加工面で測定面32が粗い場合には、局所的な反射光が強い領域と弱い領域とが発生する場合がある。
【0044】
このような測定対象物を干渉計で測定する場合、測定光m(x,y)が高い領域を基準にして測定光の強度を決定すると、m(x,y)が低いところではA(x,y)の値が小さくなり、測定精度が悪くなる。逆に、m(x,y)が低い領域を基準として測定光の強度を決定してしまうと、m(x,y)が大きい領域では、撮像デバイス50が飽和してしまい、測定精度が低下してしまう。これらの問題を解決するために、本実施形態に係る測定方法では、以下の手順で測定を行う。
【0045】
図2は、本実施形態に係る測定方法の手順の一例を示す図である。まず、データ処理部60は、測定光を任意の強度m
1(x,y)に設定し、複数の異なる位相差に対応する複数の干渉縞画像データを含む干渉縞画像データセットI
1i(x,y)を得る(S11)。次に、データ処理部60は、測定光の強度をm
2(x,y)に変えて、複数の異なる位相差に対応する複数の干渉縞画像データを含む干渉縞画像データセットI
2i(x,y)を得る(S12)。
【0046】
次に、データ処理部60は、干渉縞画像データセットI
1i(x,y)と干渉縞画像データセットI
2i(x,y)のそれぞれについて、振幅A
1(x,y)、A
2(x,y)、位相φ
1(x,y)及びφ
2(x,y)を算出する(S13)。式(3)の条件であれば、データ処理部60は式(5)によりA
j(x,y)を算出することができる。データ処理部60は、式(6)に示す式(4)の逆正接の計算によって位相φ
j(x,y)を得ることができる。ここで、下付き文字の「j」は測定光の強度を変えた場合の干渉縞の振幅及び位相を表す。
【数5】
【数6】
【0047】
次に、データ処理部60は、xy座標上の各点においてA1(x,y)の値とA2(x,y)の値とを比較する(S14)。そして、データ処理部60は、xy座標上の各点において、振幅値が大きい方の干渉縞画像データセットに基づいて算出した位相を選択して、各画素に対応する位相を組み合わせる。データ処理部60は、干渉縞画像に含まれる全ての画素の位相に基づいて測定対象物の形状を特定することで、高い精度で測定対象物の測定波面又は透過波面の歪を特定することができる(S15)。
【0048】
以上の説明においては、測定装置100が測定光の強度を変える場合を例示したが、測定装置100は、参照光の強度をr1(x,y)からr2(x,y)に変えてもよいし、参照光強度及び測定光強度の両方を変えてもよい。
【0049】
また、以上の説明においては、参照光の強度又は測定光の強度を変えて干渉縞を2回撮影する場合を例示したが、干渉縞を撮影する回数は任意である。データ処理部60は、3回以上にわたって取得した干渉縞画像データセットのうち、各画素において最も大きな振幅を得られる干渉縞画像データセットを使って算出した位相の計算結果を選択してもよい。また、データ処理部60は、複数回取得した干渉縞画像データセットに基づいて、振幅の複数の測定値又は複数の推定値の大小の比率などを考慮して重みづけ平均してもよい。
【0050】
[第1変形例]
図3は、参照光の強度と測定光の強度との関係を変化させる方法が測定装置100と異なる測定装置101の構成を示す図である。測定装置101は、レンズ23とビームスプリッタ34との間にNDフィルタ33が設けられている点で、
図1に示した測定装置100と異なる。このように、参照光と測定光を同じ割合で減光してもよい。
【0051】
[第2変形例]
図4は、他の実施形態に係る測定装置102の構成を示す図である。
図4に示す測定装置102は、光強度変化部として、参照光の光路上に脱着可能な遮光板37を有するという点で、
図1に示した測定装置100と異なり、他の点で同じである。
図5は、測定装置102を用いる測定方法の手順を示す図である。
【0052】
図5に示すように、撮像デバイス50は、参照光が遮光された状態で測定光に基づく測定光画像データを生成する。そして、データ処理部60は、
図4に示す遮光板37が参照光路中に配置された状態で得られた測定光のみの強度分布の測定光画像データm
pre(x,y)を取得する(S21)。干渉縞画像の振幅強度分布は、式(1)に示したように参照光の強度と測定光の強度との積の平方根により算出される。したがって、参照光の強度分布r(x,y)が予め特定されていれば、データ処理部60は、測定光の強度がm
pre(x,y)である場合の干渉縞画像の振幅強度分布を推定することができる。その結果、データ処理部60は、推定した振幅強度分布に基づいて、測定面32内で所定の精度の計測を行うのに十分な振幅強度を有するかどうかを判定することができる。さらには、データ処理部60は、測定対象物の測定面32を照射する光の強度をどれだけ増減すると干渉縞画像の振幅強度分布が変化するかを推定することもできる。
【0053】
そこで、データ処理部60は、まず、mpre(x,y)の強度分布に基づいて測定面32を照射する強度S1及び強度S2を画素ごとに決定する(S22)。光強度変化部(例えば、NDフィルタ33a及びNDフィルタ33b)は、測定光画像データにおける強度分布に基づいて、参照光又は測定光の少なくともいずれかの強度を変化させる。光強度変化部は、データ処理部60からの指示に基づいて参照光又は測定光の少なくともいずれかの強度を変化させてもよい。
【0054】
続いて、データ処理部60は、遮光板37を測定光の光路から取り除いた状態で強度S1の光を測定面32に照射している間に撮像デバイス50が撮像した干渉縞画像I1i(x,y)のデータを取得する(S23)。次に、データ処理部60は、mpre(x,y)の強度分布に基づき決定した他の強度S2の光を測定面32に照射している間に撮像デバイス50が撮像した干渉縞画像I2i(x,y)のデータを取得する(S24)。
【0055】
そして、データ処理部60は、測定光画像データにおける強度分布に基づいて、光強度変化部が参照光又は前記測定光の少なくともいずれかの強度を変化させた状態に対応する複数の干渉縞画像データのうち、各画素において振幅強度が最小の干渉縞画像データ以外の一以上の干渉縞画像データ(例えば、各画素において振幅強度が最大の干渉縞画像データ)に基づいて干渉縞の位相を解析することにより測定波面又は透過波面の歪を特定する。具体的には、データ処理部60は、式(6)を用いて、それぞれの干渉縞画像の位相φ1(x,y)、φ2(x,y)を算出する(S25)。データ処理部60は、強度S1及び強度S2のうち、適した光強度により得られた干渉縞画像データセットに基づいて算出した位相の計算結果を画素ごとに選択して合波することにより、測定波面又は透過波面の歪を特定する(S26)。
【0056】
図2で示した測定方法では、データ処理部60は、測定光強度を変えた場合に式(4)に基づく振幅計算をする必要があった。また、
図2で示した測定方法では、データ処理部60は、I
ji(x,y)を取得して振幅の計算結果を得た後でないと、適切な光強度であったか否かを判定できなかった。しかし、
図5に示す測定方法においては、データ処理部60は、最初にm
pre(x,y)を測定することで、測定面32に照射するのに適した光強度を推定できる。したがって、データ処理部60は、測定に適した干渉縞画像を得るために適した参照光の強度と測定光の強度を決定するまでの時間を短縮することができる。
【0057】
[第3変形例]
図6は、他の実施形態に係る測定装置103の構成を示す図である。測定装置103は、
図1に示した測定装置100におけるビームスプリッタ34の代わりに偏光ビームスプリッタ35を有している。そして、測定装置103は、レンズ23と偏光ビームスプリッタ35との間に、光源10が発する光の偏光状態を変化させるλ/2波長板70を有する。また、測定装置103は、偏光ビームスプリッタ35と参照面31との間にλ/4波長板36aを有し、偏光ビームスプリッタ35と測定面32との間にλ/4波長板36bを有する。偏光ビームスプリッタ35は、λ/2波長板を通過した後の光を参照光と、参照光と直交する測定光とに分割する分割部として機能する。
【0058】
また、測定装置103は、偏光ビームスプリッタ35と結像レンズ40との間に偏光板80を有する。偏光板80は、光強度変化部として機能し、参照光と測定光との合成光を偏光させ、偏光角に基づいて参照光の強度と測定光の強度との関係を変化させる。
【0059】
光源10は、直線偏光のレーザ光を発し、当該レーザ光は、λ/2波長板70を透過して偏光面の回転調整がなされる。偏光ビームスプリッタ35は、偏光面の回転調整がなされたレーザ光を参照面31に向かう光と測定対象物の測定面32に向かう光に分割する。そして、分割後の光は、それぞれの光路中に配置したλ/4波長板36a、λ/4波長板36bを往復透過した後に、偏光ビームスプリッタ35により合波される。合波された光は、偏光板80を透過した後に干渉縞を発生させ、撮像デバイス50が干渉縞画像データセットを生成する。
【0060】
本測定方法を用いる場合、参照光と測定光との間の分割強度比を、λ/2波長板70の回転角調整によって調整することができる。また、偏光板80の透過軸の回転調整によっても参照光と測定光の強度比を調整することができる。このように、本測定方法においては参照光の強度と測定光の強度との関係を容易に調整することができるため、簡単かつ高精度に測定対象物の形状を測定することができる。
【0061】
[第4変形例]
図7は、他の実施形態に係る測定装置104の構成を示す図である。
図7に示す測定装置104は、偏光ビームスプリッタ35と結像レンズ40との間にλ/4波長板90を有する点で、
図6に示した測定装置103と異なる。また、結像レンズ40の後段に、ビームスプリッタ95を有しており、ビームスプリッタ95の後段に複数の撮像デバイス50(撮像デバイス50a,50b,50c)を有する点でも測定装置103と異なる。
【0062】
測定装置104においては、参照光と測定光の偏光面を直交させた状態で、偏光ビームスプリッタ35において参照光と測定光が合波された後に、合波された光がλ/4波長板90を透過する。λ/4波長板90は、参照光と測定光との合成光を円偏光にする。合波された光がλ/4波長板90を透過することにより、参照光と測定光の偏光面が互いに逆回りの円偏光になった後に、ビームスプリッタ95によって複数の光に分割される。
図7においては、円偏光後の光が3つに分割される例を示している。
【0063】
分割された光は、3つの光路上に配置された偏光板110a,110b,110cに入射する。偏光板110a,110b,110cは、λ/4波長板90を通過した後の光が入射し、それぞれ回転角が異なる偏光板である。偏光板110a,110b,110cによって干渉縞画像が生成され、撮像デバイス50a,50b,50cがそれぞれの干渉縞画像を取得する。撮像デバイス50a,50b,50cは、参照光の強度と測定光の強度との関係が同一の状態において、複数の偏光板110a,110b,110cを透過した複数の光に基づく複数の干渉縞画像データを生成する。
【0064】
測定装置104の光学系においては、偏光板110a,110b,110cの透過軸の角度によって参照光と測定光の相対的な位相差が決定される。そのため、データ処理部60は、位相が互いにシフトした干渉縞データセットI
i(x,y)(i=1,2,・・・)を同時に取得することができるので、上記の他の測定方法に比べて短時間での測定が可能となる。また、測定装置104の光学系においても、
図6に示した測定装置103と同様に、λ/2波長板70の偏光面の回転調整によって参照光と測定光の分割比を任意に変えることができるため、データ処理部60は、λ/2波長板70を回転させて得られる複数の干渉縞画像データセットを解析することで、高い精度での測定を実現することができる。
【0065】
[第5変形例]
図8は、他の実施形態に係る測定装置105の構成を示す図である。測定装置105は、撮像デバイス50の代わりに偏光撮像デバイス120を有する点で、
図6に示した測定装置103と異なる。偏光撮像デバイス120は、それぞれ偏光の透過軸が異なる複数のマイクロポラライザを含む撮像デバイスである。測定装置105は、このような偏光撮像デバイス120を用いて干渉縞を撮像して得られた複数の干渉縞画像データセットを解析することにより、簡素な光学系で、測定対象物に対してロバストで高精度な測定を実現することができる。
【0066】
[本実施形態に係る測定装置による効果]
以上説明したように、本実施形態に係る測定装置100~105は、参照光の強度又は測定光の強度の少なくともいずれかを変化させる光強度変化部を有しており、データ処理部は、複数の画素のそれぞれに対して、参照光の強度又は測定光の強度の少なくともいずれかが異なる複数の状態で撮影して生成した複数の干渉縞画像データセットのうち振幅強度が最小の干渉縞画像データセット以外の一以上の干渉縞画像データセットに基づいて干渉縞の位相を解析する。測定装置100~105がこのように構成されていることで、測定対象物の測定面32の状態によらず、測定面32における測定位置による測定精度の変動を抑制することができ、ロバスト性の高い高精度な測定を実現できる。
【0067】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0068】
10 光源
20 拡大光学系
21 レンズ
22 ピンホール
23 レンズ
30 干渉計
31 参照面
32 測定面
33 フィルタ
34 ビームスプリッタ
35 偏光ビームスプリッタ
36 波長板
36 波長板
37 遮光板
40 結像レンズ
50 撮像デバイス
60 データ処理部
70 波長板
80 偏光板
90 波長板
95 ビームスプリッタ
100 測定装置
101 測定装置
102 測定装置
103 測定装置
104 測定装置
105 測定装置
110 偏光板
120 偏光撮像デバイス