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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】波長変換部材及び発光装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20240619BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20240619BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240619BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20240619BHJP
   C09K 11/67 20060101ALI20240619BHJP
   C09K 11/61 20060101ALI20240619BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20240619BHJP
   C09K 11/59 20060101ALI20240619BHJP
   C09K 11/56 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
G02B5/20
H01L33/50
C09K11/06 660
C09K11/08 J
C09K11/67
C09K11/61
C09K11/64
C09K11/59
C09K11/56
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020162053
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022054824
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩田 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 浩希
(72)【発明者】
【氏名】蔵本 雅史
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-031446(JP,A)
【文献】特開2008-115225(JP,A)
【文献】特開2016-216706(JP,A)
【文献】特開2019-006861(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110914381(CN,A)
【文献】特開2016-006166(JP,A)
【文献】特開2003-046141(JP,A)
【文献】特開2018-019105(JP,A)
【文献】特開2017-123393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
H01L 33/50
C09K 11/06
C09K 11/08
C09K 11/67
C09K 11/61
C09K 11/64
C09K 11/59
C09K 11/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シッフ塩基配位子と、β-ジケトナト配位子と、希土類金属元素と、を含む希土類金属錯体と、
マンガンを含むフッ化物蛍光体と、
樹脂と、を含み、
前記希土類金属錯体に含まれる希土類金属元素が、Euであり、
前記樹脂100質量部に対して、前記希土類金属錯体を0.25質量部以上0.75質量部以下の範囲内で含み、前記フッ化物蛍光体を5質量部以上15質量部以下の範囲内で含み、
発光ピーク波長が450nmである励起光を照射したときの発光強度を基準強度100%とし、励起光の照射を遮断した時点を基準時とし、基準時から基準強度の36.8%の発光強度になる残光時間が4ms以下である、波長変換部材。
【請求項2】
前記フッ化物蛍光体が、下記式(1)で表される組成を有する、請求項1に記載の波長変換部材。
[M 1-aMn4+ ] (1)
(式(1)中、Aは、アルカリ金属元素及びNH からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素又はイオンであり、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素であり、aは、0<a<0.2を満たす数であり、bは、[M 1-aMn4+ a]で表される錯イオンの電荷の絶対値である。)
【請求項3】
前記フッ化物蛍光体の質量Fに対する前記希土類金属錯体の質量Cの質量比C/Fが0.015以上0.3以下の範囲内である、請求項1又は2に記載の波長変換部材。
【請求項4】
前記樹脂がシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂及びこれらの変性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1から3のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項5】
前記希土類金属錯体と、前記フッ化物蛍光体と、樹脂とを含む、シート状の波長変換シートを含み、
前記波長変換シートの光の入射面又は出射面となる少なくとも一方の面に透光性部材を備えた、請求項1から4のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項6】
前記波長変換シートの光の入射面及び出射面となる両面に前記透光性部材を備えた請求項5に記載の波長変換部材。
【請求項7】
前記波長変換シートと、前記透光性部材と、の間に透光性を有するガスバリア層を備えた、請求項5又は6に記載の波長変換部材。
【請求項8】
前記希土類金属錯体と前記フッ化物蛍光体とは、マイクロカプセルに内包されている、請求項1から7のいずれか1項に波長変換部材。
【請求項9】
前記波長変換部材が、380nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する励起光の照射によって、前記波長変換シートから610nm以上650nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発する、請求項5から7及び請求項5から7を引用する請求項8のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項10】
前記波長変換部材が、励起光の照射により前記フッ化物蛍光体から発した光の発光ピーク波長とは異なる波長範囲に発光ピーク波長を有する第2蛍光体を含み、
前記第2蛍光体が、
Ba、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも1種の元素Mと、Alと、必要に応じてMgと、必要に応じてMnとを組成に含み、Euで賦活されるアルミン酸塩を含む蛍光体、
Ca、Sr及びBaからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属元素Mと、F、Cl及びBrからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲン元素Xを組成に含み、Euで賦活されるハロゲン含有アルカリ土類金属ケイ酸塩を含む蛍光体、
Euで賦活されるβサイアロンを含む蛍光体、
Sr、Ca、Mg及びBaからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属元素Mと、Gaと、Sとを組成に含み、Euで賦活される硫化物を含む蛍光体、及び
量子ドット蛍光体、からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項11】
前記第2蛍光体が、下記式(2)で表される組成を有するアルミン酸塩を含む蛍光体、下記式(3)で表される組成を有するハロゲン含有アルカリ土類金属ケイ酸塩を含む蛍光体、下記式(4)で表される組成を有するβサイアロンを含む蛍光体、下記式(5)で表される組成を有する硫化物を含む蛍光体、及び、第13族元素及び第15族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む化合物半導体である量子ドット蛍光体又は第12族元素及び第16族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む化合物半導体である量子ドット蛍光体、からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項10に記載の波長変換部材。
EuMgMnAlp+t+q+r+1.5s (2)
(式(2)中、Mは、Ba、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、p、q、r、s、及びtは、0.5≦p≦1.0、0≦q≦1.0、0≦r≦0.7、8.5≦s≦13.0、0≦t≦0.5、0.5≦p+t≦1.2、0.1≦r+t≦0.7、0.2≦q+r≦1.0を満たす数である。)
MgSi16 :Eu (3)
(式(3)中、Mは、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属元素であり、Xは、F、Cl及びBrからなる群から選択される少なくとも1種のハロゲン元素である。
Si6-zAl8-z:Eu(0<z<4.2) (4)
Ga:Eu (5)
(式(5)中、Mは、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属元素である。)
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の波長変換部材と、励起光源と、を備えた発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、波長変換部材及び発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(Light Emitting Diode、以下「LED」ともいう。)やレーザーダイオード(Laser Diode、以下「LD」ともいう。)の発光素子を用いる発光装置は、変換効率の高い光源であり、車載用や室内照明用の発光装置、液晶を使った画像表示装置のバックライト光源、イルミネーション、プロジェクター用の光源装置などの広範囲の分野で利用されている。
【0003】
特許文献1には、例えば、LEDを発光素子として用い、蛍光体と樹脂を含む組成物をシート状にした波長変換部材を、発光素子の光取り出し面上に配置した発光装置が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/094832号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蛍光体を含むシートを画像表示装置のバックライトで使用した場合、残光が課題となる。画像表示装置は、液晶自体の応答速度が遅いため、残光の時間が長いと、動きのある画像を表示したときに、残像が残り、画像が切り替わっても赤色が残っているような印象を受ける場合がある。
【0006】
本発明の一態様は、高い輝度を維持しつつ励起光による赤色の発光の残光時間を短くすることができる波長変換部材及び発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、シッフ塩基配位子と、β-ジケトナト配位子と、希土類金属元素と、を含む希土類金属錯体と、マンガンを含むフッ化物蛍光体と、樹脂と、を含み、励起光を照射したときの発光強度を基準強度100%とし、励起光の照射を遮断した時点を基準時とし、基準時から基準強度の36.8%の発光強度になる残光時間が4ms以下である、波長変換部材である。
【0008】
本発明の第二の態様は、前記波長変換部材と、励起光源と、を備えた発光装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、高い輝度を維持しつつ励起光による赤色の発光の残光時間を短くすることができる波長変換部材及び発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るエッジライト型バックライト構造を示す画像表示装置の概略断面図である。
図2】第2実施形態に係る直下型バックライト構造を示す画像表示装置の概略断面図である。
図3】第1実施形態に係る波長変換部材の概略断面図である。
図4】第2実施形態に係る波長変換部材の概略断面図である。
図5】第1実施形態に係る発光装置の概略断面図である。
図6】第1実施形態に係る発光装置の概略斜視図である。
図7】第2実施形態に係る発光装置の概略断面図である。
図8】第2実施形態に係る発光装置の概略平面図である。
図9】第3実施形態に係るバックライト装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る波長変換部材及び発光装置を一実施形態に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具現化するための例示であって、本発明は、以下の波長変換部材及び発光装置に限定されない。なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係は、JIS Z8110に従う。具体的には、380nmから455nmが青紫色、455nmから485nmが青色、485nmから495nmが青緑色、495nmから548nmが緑色、548nmから573nmが黄緑色、573nmから584nmが黄色、584nmから610nmが黄赤色、610nmから780nmが赤色である。また、本明細書において、「シート」、「フィルム」「層」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「フィルム」は、シートとも呼ばれるような部材も含む意味で用いられ、また「シート」はフィルムとも呼ばれ得るような部材も含む意味で用いられる。
【0012】
第1実施形態に係る画像表示装置について図面を用いて説明する。この画像表示装置には、バックライト装置として機能する発光装置及び波長変換部材が含まれる。図1は、第1実施形態に係るエッジライト型バックライト構造を示す画像表示装置の概略断面図である。ただし、説明の便宜上、各シートや発光装置等の部材の大きさ、厚さ等は単なる例示であり誇張して記載している。
【0013】
第1実施形態に係る画像表示装置300は、バックライト装置160と、バックライト装置160の出光側に配置された表示パネル170と、を備えている。画像表示装置300は、画像を表示する表示面300Aを有している。図面において、表示パネル170の表面が表示面300Aとなっている。
【0014】
バックライト装置160は、表示パネル170を背面側から面状に照らすものである。表示パネル170は、バックライト装置160からの光の透過または遮断を画素毎に制御するシャッターとして機能し、表示面に像を表示するように構成されている。
【0015】
表示パネル
表示パネル170は、液晶表示パネルであり、入光側に配置された第1偏光シート140と、出光側に配置された第2偏光シート150と、第1偏光シート140と第2偏光シート150との間に配置された液晶セル145とを備えている。第1偏光シート140、第2偏光シート150は、入射した光を直交する二つの直線偏光成分(S偏光およびP偏光)に分解し、一方の方向(透過軸と平行な方向)に振動する直線偏光成分(例えば、P偏光)を透過させ、前記一方の方向に直交する他方の方向(吸収軸と平行な方向)に振動する直線偏光成分(例えば、S偏光)を吸収する機能を有している。
【0016】
液晶セル145には、一つの画素を形成する領域毎に、電圧の印加がなされ得るように構成されている。そして、電圧印加の有無によって液晶セル145中の液晶分子の配向方向が変化するようになる。一例として、入光側に配置された第1偏光シート140を透過した特定方向の直線偏光成分は、電圧印加がなされた液晶セル145を通過する際にその偏光方向を90°回転させ、その一方で、電圧印加がなされていない液晶セル145を通過する際にその偏光方向を維持する。この場合、液晶セル145への電圧印加の有無によって、第1偏光シート140を透過した特定方向に振動する直線偏光成分を第2偏光シート150に対して透過させ、または第2偏光シート150で吸収して遮断することができる。このようにして、表示パネル170では、バックライト装置160からの光の透過または遮断を画素毎に制御し得るように構成されている。なお、液晶表示パネルの詳細については、種々の公知文献(例えば、「フラットパネルディスプレイ大辞典(内田龍男、内池平樹監修)」2001年工業調査会発行)に記載されており、ここではこれ以上の詳細な説明を省略する。
【0017】
バックライト装置
バックライト装置160は、エッジライト型のバックライト装置として構成され、筐体105と、筐体105上又は筐体105と離れた位置に配置される発光装置110と、発光装置110の側方に配置された導光板115と、導光板115の出光側に配置された拡散シート125と、拡散シート上に配置されたシート状の波長変換部材130と、シート状の波長変換部材130の出光面側に配置されたプリズムシート135と、を備える。筐体105と導光板115との間には反射シート120を備える。バックライト装置160は、筐体105、導光板115、反射シート120、拡散シート125、シート状の波長変換部材130とプリズムシート135、を備えているが、これらのシート等は備えられていなくともよく、これらのシート等が有する機能を他の部材やシート等を一体化することで補うようにしてもよい。本明細書において、「出光側」とは、各部材においてバックライト装置から出射する方向に向かう光が出射される側を意味する。
【0018】
バックライト装置160は、面状に光を発光する発光面を有している。図面において、プリズムシート135の出光面がバックライト装置160の発光面となっている。
【0019】
シート状の波長変換部材130における拡散シート125側の面が入光面となっており、シート状の波長変換部材130におけるプリズムシート135側の面が出光面となっている。シート状の波長変換部材130は後述するシッフ塩基配位子と、β-ジケトナト配位子と、希土類金属元素と、を含む希土類金属錯体と、マンガンを含むフッ化物蛍光体と、樹脂と、を含む波長変換部材をシート状にしたものであってもよい。ただし、発光装置に波長変換部材が設けられる場合はシート状の波長変換部材130を用いなくてもよい。
【0020】
発光装置
発光装置110は、導光板115の入光面側に、導光板115の側面の一辺に沿って線状に並べて配置された多数個の発光素子を用いて構成されている。
【0021】
バックライト装置160においてはシート状の波長変換部材130が配置されていることに伴い、発光装置110は、単一の波長域の光を放出する発光体のみを用いることができる。例えば、発光装置110は、色純度の高い青色光を発する青色発光ダイオードのみを用いることができる。
【0022】
導光板
導光板115は、平面視形状が四角形形状に形成されている。導光板115は、表示パネル170側の一方の主面によって構成された出光面と、出光面に対向するもう一方の主面からなる裏面と、出光面および裏面の間を延びる側面と、を有している。側面のうちの発光装置110側の側面が、発光装置110からの光を受ける入光面となっている。入光面から導光板115内に入射した光は、入光面と、入光面と対向する反対面とを結ぶ方向に光学板内を導光され、出光面から出射される。
【0023】
導光板115を構成する材料としては、優れた機械的強度、光学特性、安定性および加工性等を有するとともに安価に入手可能な材料、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル等の一以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)が好適に使用され得る。なお、必要に応じて、導光板115中に光を拡散させる機能を有する光拡散材を添加することもできる。光拡散材としては、例えば、平均粒径が0.5μm以上100μm以下のシリカ(二酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂等の透明物質からなる粒子を用いることができる。
【0024】
拡散シート
拡散シート125は、導光板115の出光面から出た光を拡散させ均一にシート状の波長変換部材130に入光させる機能を有する。拡散シート125は、光拡散材等を含有させた樹脂を用いる。
【0025】
プリズムシート
プリズムシート135は、シート状の波長変換部材130から出た光を高輝度化する機能を有する。発光装置110から出射された光は導光板115や拡散シート125、シート状の波長変換部材130を通り、プリズムシート135に入光される。プリズムシート135に入光された光は、画像表示装置の表示面300A側に集光し、正面の輝度を向上させることができる。プリズムシート135は1枚に限らず複数枚使用してもよい。
プリズムシート135は例えば鏡面に凹凸が設けられ、プリズムシートの材料と隣り合う材料、例えば第1偏光シート140や空気層との屈折率差等を利用することで正面方向への光取りだし効率を高めることができる。
【0026】
反射シート
反射シート120は、発光装置110から出射された光を導光板115内に入光し、出光面115A側から出射される。その際に、反射シート120は導光板115の裏面から漏れ出した光を反射して、再び導光板115内に入射させる機能を有する。反射シート120は、白色の散乱反射シート、金属等の高い反射率を有する材料からなるシート、高い反射率を有する材料からなる薄膜(例えば金属薄膜)を表面層として含んだシート等から、構成され得る。反射シート120での反射は、正反射(鏡面反射)でもよく、拡散反射でもよい。反射シート120での反射が拡散反射の場合には、当該拡散反射は、等方性拡散反射であってもよいし、異方性拡散反射であってもよい。
【0027】
ただし、導光板115の裏面に凹凸や傾斜を設けることにより反射機能を持たせることで反射シートを省略してもよい。
【0028】
このように、バックライト装置160から出射された光は表示パネル170に設けられた第1偏光シート140に入光され画像表示装置の表示面300Aから出光される。
【0029】
次に第2実施形態に係る画像表示装置について図面を用いて説明する。図2は、第2実施形態に係る直下型バックライト構造を示す画像表示装置の概略断面図である。
第2実施形態に係る画像表示装置300Eは、バックライト装置160Eと、バックライト装置160Eの出光側に配置された表示パネル170と、を備えており、第1実施形態で説明した表示パネル170と同様の構成を備える。
【0030】
バックライト装置160Eは、直下型のバックライト装置として構成され、複数個の発光装置110Eと、複数個の発光装置110Eが配置される筐体105Eと、発光装置110Eと離して配置される拡散シート125Eと、拡散シート上に配置されたシート状の波長変換部材130Eと、シート状の波長変換部材130Eの出光側に配置されたプリズムシート135Eと、を備える。発光装置110Eと拡散シート125Eとの間は空気層が介在していることが好ましいが、導光板115Eを配置してもよい。拡散シート125Eと導光板115Eの間には空気層が介在していてもよい。筐体105Eと導光板115Eとの間には反射シート120Eを備える。バックライト装置160Eは、筐体105E、導光板115E、反射シート120E、拡散シート125E、シート状の波長変換部材130Eとプリズムシート135Eを備えているが、これらの導光板やシート等は備えられていなくともよく、これらのシート等が有する機能を他の部材やシート等を一体化することで補うようにしてもよい。本明細書において、「出光側」とは、各部材においてバックライト装置から出射する方向に向かう光が出射される側を意味する。発光装置110Eは、筐体105Eの一面に形成された反射シート120E上に多数個の発光素子が配置されて構成されている。多数個の発光素子は、導光板115Eの入光面の一辺に沿って線状に並べて配置されていてもよい。
【0031】
反射シート
発光装置110Eから出射された光は導光板115Eを介して拡散シート125Eに入光される。その際に、反射シート120Eは拡散シート125Eで反射された光や、発光装置110Eから直接又は間接に漏れてきた光を、反射シート120Eで反射して、拡散シート125Eに入射させる機能を有する。反射シート120Eは、白色の散乱反射シート、金属等の高い反射率を有する材料からなるシート、高い反射率を有する材料からなる薄膜(例えば金属薄膜)を表面層として含んだシートを用いてよく、筐体105Eに直接又は間接に塗布された層を形成してもよい。
【0032】
このように、バックライト装置160Eから出射された光は表示パネル170に設けられた第1偏光シート140に入光され画像表示装置の表示面300Aから出光される。
【0033】
波長変換部材
画像表示装置300、300Eで使用されるシート状の波長変換部材130、130Eについて説明する。上記においては波長変換部材130、130Eとしてシート状のものとして説明したが、シートに限られないため、波長変換部材として説明する。
【0034】
波長変換部材は、シッフ塩基配位子と、β-ジケトナト配位子と、希土類金属元素と、を含む希土類金属錯体と、マンガンを含むフッ化物蛍光体と、樹脂と、を含み、励起光を照射したときの発光強度を基準強度100%とし、励起光の照射を遮断した時点を基準時とし、基準時から基準強度の36.8%の発光強度になる残光時間が4ms以下である。波長変換部材に使用される希土類金属錯体は、それのみでは高い輝度を維持することが難しい。しかし希土類金属錯体は、シッフ塩基配位子が、発光素子から発せられる光、例えば380nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を吸収し、β-ジケトナト配位子が吸収した光エネルギーの移動効率を向上させて、光エネルギーを希土類金属元素に移動させ、希土類金属元素が発光するため、フッ化物蛍光体よりも残光時間が短くなる。一方でマンガンを含むフッ化物蛍光体は、それのみでは残光が長く、応答速度の速い画像表示装置に使用すると、残像が気になることもある。しかし、マンガンを含むフッ化物蛍光体は、高い光束を有するため、高い輝度を維持することができる。そのため、希土類金属錯体とフッ化物蛍光体とを所定の範囲にすること、つまり残光が残りやすいフッ化物蛍光体の量を減らし、残光の短い希土類金属錯体の量を増やすことで、高い輝度を維持した状態で、基準時から基準強度の36.8%の発光強度での残光時間を4ms以下にすることができる。このように希土類金属錯体とフッ化物蛍光体とを所定の範囲にすることで、高い輝度を維持しつつ励起光による赤色の発光の残光時間を短くすることができる波長変換部材及び発光装置を提供することができる。これにより波長変換部材を用いた発光装置を光源として用いた場合に、動作が早い画像であっても残光の影響を受け難くなり、色再現性が良好な画像を映し出すことが可能となる。残光時間は、例えば発光ピーク波長が450nmである励起光を波長変換部材に照射し、分光光度計(製品名:F-7000、株式会社日立ハイテクノロジーズ)を用いて、励起光の照射を遮断した時点を基準時とし、基準時から波長変換部材から発せられる発光強度の経時変化を測定し、励起光を照射したときの発光強度を基準強度100%とし、基準強度100%に対して36.8%の強度となった時間を測定することによって導き出すことができる。
【0035】
希土類金属錯体
希土類金属錯体は、特開2016-128392号公報、特開2019-31446号公報を参照して用いることができる。
【0036】
希土類金属錯体は、水酸基又はチオール基とアゾメチン誘導体を有するシッフ塩基配位子とβ-ジケトナト配位子と希土類金属元素とを共に有する、希土類金属錯体を提供することができる。
その希土類金属錯体は、マンガンを含むフッ化物蛍光体と共に、波長変換部材として使用することができ、励起光を吸収し、発光する。
【0037】
希土類金属錯体は、より具体的には、下記式(I)、(II)、又は(III)で表される希土類金属錯体が挙げられる。
【0038】
【化8】
【0039】
【化9】
【0040】
【化10】
【0041】
マンガンを含むフッ化物蛍光体
マンガンを含むフッ化物蛍光体は、下記式(1)で表される組成を有することが好ましい。
[M 1-aMn4+ ] (1)
(式(1)中、Aは、アルカリ金属元素及びNH からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素又はイオンであり、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素であり、aは、0<a<0.2を満たす数であり、bは、[M 1-aMn4+ a]で表される錯イオンの電荷の絶対値である。)
【0042】
式(1)中、A(以下、「A元素」又は「Aイオン」とも称する。)好ましくはK、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素又はイオンであり、より好ましくはK、Na及びNH からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素又はイオンであり、更に好ましくはKである。
【0043】
式(1)中、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素(以下、「M元素」とも称する。)であり、Mは、好ましくはSi、Ge、Sn、Ti、Zr及びHfからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素であり、より好ましくはSi、Ge、Ti及びZrからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素であり、更に好ましくはSiである。
【0044】
式(1)中、変数aは、式(1)で表される組成1モル中の賦活元素であるMn4+のモル比を表す。式(1)中、変数aは、0を超えて0.2未満(0<a<0.2)の範囲内の数であり、好ましくは0.005以上0.150以下(0.005≦a≦0.150)の範囲内の数であり、より好ましくは0.010以上0.100以下(0.010≦a≦0.100)の範囲内の数であり、更に好ましくは0.015以上0.090以下(0.015≦a≦0.090)の範囲内の数である。式(I)中、変数bは、[M1-aMn4+ ]で表される錯イオンの電荷の絶対値であり、好ましくは1.5を超えて2.5未満(1.5<b<2.5)の範囲内の数であり、より好ましくは1.8以上2.2以下(1.8≦b≦2.2)の範囲内の数である。
【0045】
フッ化物蛍光体は、レーザー回折粒度分布測定法で測定した体積メジアン径Dmが、1μm以上100μm以下の範囲内であることが好ましく、2μm以上80μm以下の範囲内であることがより好ましく、5μm以上70μm以下の範囲内であることが更に好ましい。フッ化物蛍光体の粒子の体積メジアン径Dmが1μm以上100μm以下の範囲内であれば、希土類金属錯体とともに、フッ化物蛍光体と、樹脂とを含むシート状の波長変換シートを形成し易い。本明細書において、波長変換部材は、シート状の波長変換シートの他に、後述する透光性部材、及び/又は透光性のガスバリア層を含んでいてもよい。
【0046】
マンガンを含むフッ化物蛍光体は、380nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する励起光源からの光によって、610nm以上650nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発することが好ましく、620nm以上640nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発することがより好ましい。フッ化物蛍光体の発光スペクトルにおいて、半値幅は狭いことが好ましく、具体的には10nm以下であることが好ましい。発光スペクトルにおいて、半値幅は、発光スペクトルにおける発光ピークの半値全幅(Full Width at Half Maximum:FWHM)をいい、発光スペクトルにおける発光ピークの最大値の50%の値を示す発光ピークの波長幅をいう。マンガンを含むフッ化物蛍光体は、半値幅が狭い発光ピークを有するので、色純度が高くなり色再現性が良好となる。
【0047】
フッ化物蛍光体の製造方法
フッ化物蛍光体は、例えば、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種のAイオン及びフッ化水素を少なくとも含む第1溶液と、4価のマンガンを含む第1錯イオン及びフッ化水素を少なくとも含む第2溶液と、M元素とフッ素イオンを含む第2錯イオンを少なくとも含む第3溶液とを混合し、フッ化物蛍光体の結晶を析出させて、フッ化物蛍光体を製造することができる。析出したフッ化物蛍光体の結晶は、固液分離した後、洗浄又は乾燥工程を含んでいても良い。洗浄する液体としては、エタノール、イソプロピルアルコール、水、アセトン等が挙げられる。乾燥処理としては、50℃以上110℃以下の温度が挙げられる。フッ化物蛍光体の製造方法は、特開2016-216706号公報や特開2015-199877号公報、特開2016-69576号公報等に記載の製造方法を参照することができる。
【0048】
例えば、バックライトで用いる発光装置において、青色光を発する発光素子と、緑色光を発する緑色蛍光体と、赤色光を発する赤色蛍光体と、を用いることで、広い範囲の発光色を導くことができる。つまりCIE193色度図の色度座標(x、y)において、発光素子のみを光らせたときの青色を示す色度座標と、緑色蛍光体のみを光らせたときの緑色を示す色度座標と、赤色蛍光体のみを光らせたときの赤色を示す色度座標と、をそれぞれ結ぶ直線の範囲内の色を実現することができる。CIE1931色度図の色度座標(x、y)は、CIE(国際照明委員会:Commission Internationale de l’Eclairage)によって規定されている。励起光の照射によって励起された波長変換部材から発せられる光の発光色は、マルチチャンネル分光器と積分球を組み合わせた光計測システムを用いて、発光スペクトルを測定し、この発光スペクトルから色度座標(x、y)を導き出すことができる。
【0049】
希土類金属錯体とフッ化物蛍光体の質量比
波長変換部材中に含まれる、フッ化物蛍光体の質量Fに対する希土類金属錯体の質量Cの質量比C/Fは、0.015以上0.300以下の範囲内であることが好ましい。質量比C/Fは、より好ましくは0.016以上0.200以下の範囲内であり、更に好ましくは0.017以上0.150以下の範囲内であり、より更に好ましくは0.017以上0.120以下の範囲内である。質量比C/Fが0.015以上0.300以下の範囲内であれば、波長変換部材に励起光を照射したときの発光の残光時間を短くすることができ、所望の色調の発光色を得ることができる。波長変換部材が、380nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光により励起されたときに、CIE1931色度図のxy色度座標において、白色を示すことが好ましい。
【0050】
樹脂
樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂及びこれらの変性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を用いることができる。
【0051】
波長変換部材は、樹脂100質量部に対して、希土類金属錯体を、0質量部を超えて2.0質量部以下の範囲内で含み、フッ化物蛍光体を1質量部以上30質量部以下の範囲内で含むことが好ましい。波長変換部材は、樹脂100質量部に対して、希土類金属錯体を、0.10質量部以上1.80質量部以下の範囲内で含むことがより好ましく、0.15質量部以上1.50質量部以下の範囲内で含むことが更に好ましく、0.20質量部以上1.20質量部以下の範囲内で含むことがより更に好ましい。また、波長変換部材は、樹脂100質量部に対して、フッ化物蛍光体を、2質量部以上28質量部以下の範囲内で含むことがより好ましく、3質量部以上25質量部以下の範囲内で含むことが更に好ましく、5質量部以上20質量部以下の範囲内で含むことがより更に好ましい。波長変換部材が、樹脂100質量部に対して、希土類金属錯体を、0質量部を超えて2.0質量部以下の範囲内で含み、フッ化物蛍光体を1質量部以上30質量部以下の範囲内で含む場合は、波長変換部材に励起光を照射したときの発光の残光時間を短くすることができ、所望の色調の発光色を得ることができる。
【0052】
波長変換部材は、希土類金属錯体と、フッ化物蛍光体と、樹脂と、を含む波長変換部材用組成物を製造し、波長変換部材用組成物に含まれる樹脂を硬化させて所望の形に成形されていてもよい。波長変換部材に含まれる希土類金属錯体は、希土類金属錯体の周囲を樹脂等で覆ってマイクロカプセル化し、マイクロカプセルに内包された希土類金属錯体を用いてもよい。また、フッ化物蛍光体は、フッ化物蛍光体の周囲を例えば樹脂等で覆ってマイクロカプセル化し、マイクロカプセルに内包されたフッ化物蛍光体を用いてもよい。希土類金属錯体及びフッ化物蛍光体の周囲にガスバリア性の膜を形成し、その後樹脂等でマイクロカプセル化してもよい。ガスバリア性の膜を作る材料としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、酸化炭化窒化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機物が挙げられる。これらの無機物をCVD法やPVD法によって希土類金属錯体及びフッ化物蛍光体の表面に蒸着してガスバリア性の膜を形成し、その後、周囲をシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂等で覆い、マイクロカプセル化してもよい。波長変換部材用組成物には、光拡散材を含んでいても良い。光拡散材には、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等を用いることができる。
【0053】
波長変換部材は、波長変換シートの光の入射面又は出射面となる少なくとも一方の面に透光性部材を備えてもよい。透光性部材は、波長変換シートの両面に備えていてもよい。波長変換シートは、波長変換部材用組成物を基材に塗布し、樹脂を硬化させてシート状の波長変換シートを形成することができる。また、波長変換部材用組成物をシート状に成形し、樹脂を硬化させて波長変換シートを形成し、波長変換シートを透光性部材に、接着剤を用いて接着してもよい。波長変換シートには、後述する第2蛍光体を含んでいてもよく、光拡散材を含んでいても良い。
【0054】
波長変換シートを形成する方法としては、例えば印刷法、圧縮成形法等が挙げられる。印刷法により波長変換シートを形成する場合は、基材に、波長変換部材用組成物を印刷法により塗布し硬化する。基材は、透光性部材であってもよく、後述するガスバリアフィルムであってもよい。圧縮成形法により波長変換シートを形成する場合は、波長変換部材用組成物を金型に入れ、樹脂を硬化させて波長変換シートを形成することができる。
【0055】
波長変換シートの厚さは、30μm以上800μm以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは50μm以上500μm以下の範囲内である。波長変換シートの厚さが70μm以上400μm以下の範囲内であれば、放熱性を維持した状態で所望の色調の発光色が得られる量のフッ化物蛍光体及び希土類金属錯体を、波長変換シートに含有させることができる。
【0056】
画像表示装置におけるバックライト装置は、既述の各種シートに加えて、ガスバリアフィルムを備えていてもよい。ガスバリアフィルムは、波長変換シートの光の入射面又は出射面の少なくとも一方に配置され、波長変換シートとガスバリアフィルムとは直接又は接着剤を介して接着されていてもよい。波長変換シートの光の入射面及び出射面の少なくとも一方の面に、ガスバリアフィルムを備えていると、波長変換シートに水蒸気や空気が侵入するのをより抑制することができる。これにより、波長変換シートに含まれる希土類金属錯体及びフッ化物蛍光体の劣化を抑制することができ、波長変換部材を用いた発光装置を長寿命化し、耐久性を向上することができる。
【0057】
波長変換部材は、380nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する励起光の照射によって、波長変換シートから610nm以上650nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発するものであることが好ましい。
波長変換部材が、380nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する青色光の照射によって、波長変換シートから610nm以上650nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発するものであると、残光時間の短い赤色光を発することができる。
【0058】
第2蛍光体
波長変換部材は、励起光の照射により前記フッ化物蛍光体から発せられる光の発光ピーク波長とは異なる波長範囲に発光ピーク波長を有する光を発する第2蛍光体を含んでいてもよい。波長変換部材が、第2蛍光体を含む場合には、波長変換部材から発せられる光の色調が異なり、色再現性に優れた発光色が得られる。バックライト装置は白色に発光するものであることが好ましいため、第2蛍光体として緑色発光や赤色発光の蛍光体を用いることが好ましい。
【0059】
第2蛍光体は、Ba、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも1種の元素Mと、Alと、必要に応じてMgと、必要に応じてMnとを組成に含み、Euで賦活されるアルミン酸塩を含む蛍光体、Ca、Sr及びBaからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属元素Mと、F、Cl及びBrからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲン元素Xを組成に含み、Euで賦活されるハロゲン含有アルカリ土類金属ケイ酸塩を含む蛍光体、Euで賦活されるβサイアロンを含む蛍光体、Sr、Ca、Mg及びBaからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属元素Mと、Gaと、Sとを組成に含み、Euで賦活される硫化物を含む蛍光体、及び量子ドット蛍光体、ペロブスカイト、硫化鉛、カルコパイライトからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0060】
第2蛍光体は、下記式(2)で表される組成を有するアルミン酸塩を含む蛍光体、下記式(3)で表される組成を有するハロゲン含有アルカリ土類金属ケイ酸塩を含む蛍光体、下記式(4)で表される組成を有するβサイアロンを含む蛍光体、下記式(5)で表される組成を有する硫化物を含む蛍光体、及び、第13族元素及び第15族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む化合物半導体である量子ドット蛍光体又は第12族元素及び第16族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む化合物半導体である量子ドット蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0061】
EuMgMnAlp+t+q+r+1.5s (2)
(式(2)中、Mは、Ba、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、p、q、r、s、及びtは、0.5≦p≦1.0、0≦q≦1.0、0≦r≦0.7、8.5≦s≦13.0、0≦t≦0.5、0.5≦p+t≦1.2、0.1≦r+t≦0.7、0.2≦q+r≦1.0を満たす数である。)
MgSi16 :Eu (3)
(式(3)中、Mは、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属元素であり、Xは、F、Cl及びBrからなる群から選択される少なくとも1種のハロゲン元素である。
Si6-zAl8-z:Eu(0<z<4.2) (4)
Ga:Eu (5)
(式(5)中、Mは、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属元素である。)
【0062】
第2蛍光体は、380nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光により励起されたときに、励起光よりも長波長側である500nm以上610nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発することが好ましい。波長変換部材は、励起光によって励起されたときに、500nm以上610nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第2蛍光体を含むことによって、白色光を得ることができる。第2蛍光体は、380nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光により励起されたときに発する光の発光ピーク波長が、500nmより大きく600nm以下の範囲内であることがより好ましく、510nm以上570nm以下の範囲内であることが更に好ましい。
【0063】
第2蛍光体は、希土類金属錯体と、フッ化物蛍光体と、樹脂と、ともに、1つの波長変換シート中に含まれていてもよい。第2蛍光体は、樹脂とともに、希土類金属錯体と、フッ化物蛍光体とは別に、他の波長変換シートに含まれていてもよい。本明細書において、希土類金属錯体と、フッ化物蛍光体と、樹脂と、を含む波長変換シートを第1波長変換シートと記載する場合があり、第2蛍光体と樹脂とを含む波長変換シートを第2波長変換シートと記載する場合がある。第1波長変換シートと第2波長変換シートは積層して用いてもよい。透光性部材側から第1波長変換シート、次いで第2波長変換シートの順に積層してもよく、透光性部材側から第2波長変換シート、次いで第1波長変換シートの順に積層してもよい。第1波長変換シートと、第2波長変換シートは、それぞれ複数積層してもよく、第1波長変換シートと第2波長変換シートを交互に複数積層してもよい。
【0064】
第2蛍光体が、希土類金属錯体と、フッ化物蛍光体と、樹脂と、ともに、1つの波長変換シート中に含まれる場合、樹脂100質量部に対して、第2蛍光体を、1質量部以上250質量部以下の範囲内で含むことが好ましく、2質量部以上240質量部以下の範囲内で含むことがより好ましく、3質量部以上230質量部以下の範囲内で含むことが更に好ましい。
【0065】
第2蛍光体が、樹脂とともに、希土類金属錯体及びフッ化物蛍光体とは別に第2波長変換シート中に含まれる場合、樹脂100質量部に対して、第2蛍光体を、1質量部以上250質量部以下の範囲内で含むことが好ましく、2質量部以上240質量部以下の範囲内で含むことがより好ましく、3質量部以上230質量部以下の範囲内で含むことが更に好ましい。
【0066】
発光装置
第1実施形態に係る波長変換部材、第2実施形態に係る波長変換部材、第1実施形態に係る発光装置について説明する。図3は、第1実施形態に係る波長変換部材の概略断面図である。図4は、第2実施形態に係る波長変換部材の概略断面図である。図5は、第1実施形態に係る発光装置の概略断面図である。図6は、第1実施形態に係る発光装置の概略斜視図である。
【0067】
第1実施形態に係る発光装置100は、側面発光型(「サイドビュー型」とも呼ばれる。)であり、第1実施形態に係る画像表示装置に使用することができる。側面発光型の発光装置は薄型であり、これにより画像表示装置の厚みも薄くすることができる。ただし、光出力を向上させるため、側面発光型の発光装置に代えて、上面発光型(「トップビュー型」とも呼ばれる。)の発光装置にすることも可能である。
【0068】
側面発光型の発光装置は、実装方向と主発光方向が互いに垂直である。上面発光型の発光装置は、実装方向と主発光方向が互いに平行である。発光装置の前面視形状、すなわち、主発光方向から見た形状は、適宜選択できるが、矩形状が量産性の観点から好ましい。発光装置が側面発光型である場合には、前面視形状は、長手方向と短手方向を有する長方形状が好ましい。発光装置が上面発光型である場合には、前面視形状は、正方形状であることが好ましい。発光素子及び波長変換部材も、発光装置と同様の前面視形状であることが好ましい。発光装置は、配線基板を含まず、その代わりに発光素子の正負電極又はその正負電極に接合した突起電極を外部接続用の端子として有する、チップ・サイズ・パッケージ(CSP:Chip Size Package)型であってもよい。
【0069】
第1実施形態に係る発光装置100は、励起光源となる発光素子10と、第1実施形態に係る波長変換部材50と、を備える。波長変換部材50は、希土類金属錯体とフッ化物蛍光体と樹脂とを含む波長変換シート20と、ガスバリア層31と基材フィルム32とを備えた透光性のガスバリアフィルム30と、を備える。ガスバリア層31は、波長変換シート20と密着されて配置されている。発光素子10は、基板90の配線91上に導電性部材60を介して、フリップチップ実装されている。基板90は、配線91と、配線91を保持する基体92とを備える。波長変換部材50は、前面視において、発光素子10の全面を覆い隠す大きさである。波長変換シート20の光の入射面20aは、発光素子10の一つの面に導光部材80を介して接着されている。波長変換シート20の光の出射面20bは、ガスバリアフィルム30を介して透光性部材40が備えられている。被覆部材70は、基板90上に形成され、導電性部材60、発光素子10、導光部材80、波長変換シート20、ガスバリアフィルム30及び透光性部材40を含む波長変換部材50の側面を被覆し、導電性部材60、発光素子10、導光部材80及び波長変換部材50の全周囲を包囲している。波長変換部材50の前面と被覆部材70の前面は、実質的に同一面を構成している。
【0070】
第1実施形態に係る波長変換部材50は、波長変換シート20の一方の面にのみガスバリアフィルム30と透光性部材40とを備えるが、第2実施形態に係る波長変換部材50では、波長変換シート20の両面にガスバリアフィルム30と透光性部材40とを備えてもよい。これにより波長変換シートへのガスバリア性が向上するからである。
【0071】
発光素子
発光素子は、少なくとも半導体素子構造を備え、多くの場合に基板を更に備える。発光素子としては、例えばLEDチップが挙げられる。発光素子の前面視形状は、矩形、特に正方形状又は一方向に長い長方形状であることが好ましいが、その他の形状であってもよく、例えば六角形状であれば発光効率を高めることもできる。発光素子若しくはその基板の側面は、上面に対して、垂直であってもよいし、内側又は外側に傾斜していてもよい。発光素子は、同一面側に正負(p,n)電極を有することが好ましい。1つの発光装置に搭載される発光素子の個数は1つでも複数でもよい。複数の発光素子は、電気的に直列又は並列に接続することができる。半導体素子構造は、半導体層の積層体、即ち少なくともn型半導体層とp型半導体層を含み、また活性層をその間に有することが好ましい。半導体素子構造は、正負電極及び/若しくは絶縁膜を含んでもよい。正負電極は、金、銀、錫、白金、ロジウム、チタン、アルミニウム、タングステン、パラジウム、ニッケル又はこれらの合金で構成することができる。絶縁膜は、珪素、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、アルミニウムからなる群より選択される少なくとも一種の元素の酸化物又は窒化物で構成することができる。
【0072】
発光素子は、半導体材料やその混晶比によって、発光素子の発光ピーク波長を紫外域から赤外域まで選択することができる。半導体材料としては、蛍光体を効率良く励起できる短波長の光を発光可能な窒化物半導体を用いることが好ましい。窒化物半導体は、主として一般式InAlGa1-x-yN(x≧0、y≧0、x+y≦1)で表される。発光効率、並びに蛍光体の励起及びその発光との混色関係等の観点から、発光素子の発光ピーク波長は、380nm以上500nm以下の範囲内であり、好ましくは400nm以上480nm以下の範囲内であり、より好ましくは420nm以上475nm以下の範囲内である。このほか、InAlGaAs系半導体、InAlGaP系半導体、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、炭化珪素などを用いることもできる。発光素子の基板は、主として半導体素子構造を構成する半導体の結晶を成長可能な結晶成長用基板であるが、結晶成長用基板から分離した半導体素子構造に接合させる接合用基板であってもよい。基板が透光性を有することで、フリップチップ実装を採用しやすく、また光の取り出し効率を高めやすい。基板の母材としては、サファイア、スピネル、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、シリコン、炭化珪素、ガリウム砒素、ガリウム燐、インジウム燐、硫化亜鉛、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、ダイヤモンドなどが挙げられる。なかでも、サファイアが好ましい。基板の厚さは、例えば0.02mm以上1mm以下の範囲内であり、基板の強度や発光装置の厚さの観点において、0.05mm以上0.3mm以下の範囲内であることが好ましい。
【0073】
基板
基板は、少なくとも、配線と、その配線を保持する基体と、により構成される。このほか、基板は、ソルダーレジスト又はカバーレイなどの絶縁性保護膜を含んでいてもよい。
【0074】
配線
配線は、基体の少なくとも上面(前面)に形成され、基体の内部及び/若しくは側面及び/若しくは下面(後面)にも形成されていてもよい。また、配線は、発光素子が実装される素子接続端子部、外部回路と接続される外部接続端子部、及びこれら端子部間を接続するリード配線部などを有することが好ましい。配線は、銅、鉄、ニッケル、タングステン、クロム、アルミニウム、銀、金、チタン、パラジウム、ロジウム、又はこれらの合金で形成することができる。配線は、金属又は合金の単層でも多層でもよい。特に、放熱性の観点においては銅又は銅合金が好ましい。また、配線の表層には、接合部材の濡れ性及び/若しくは光反射性などの観点から、銀、白金、アルミニウム、ロジウム、金若しくはこれらの合金などの層が設けられていてもよい。
【0075】
基体
基体は、リジッド基板であれば、樹脂若しくは繊維強化樹脂、セラミックス、ガラス、金属、紙などを用いて構成することができる。樹脂若しくは繊維強化樹脂としては、エポキシ、ガラスエポキシ、ビスマレイミドトリアジン、ポリイミドなどが挙げられる。セラミックスとしては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、酸化チタン、窒化チタン、若しくはこれらの混合物等が挙げられる。金属としては、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、銀、金、チタン、若しくはこれらの合金等が挙げられる。基体は、可撓性基板であれば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマー等を用いて構成することができる。なお、これらの基材のうち、特に発光素子の線膨張係数に近い物性を有する基材を使用することが好ましい。
【0076】
導電性部材
導電性部材としては、金、銀、銅等のバンプ、銀、金、銅、プラチナ、アルミニウム、パラジウム等の金属粉末と樹脂バインダを含む金属ペースト、錫-ビスマス系、錫-銅系、錫-銀系、金-錫系などの半田、低融点金属などのろう材の少なくとも一つを用いることができる。
【0077】
導光部材
導光部材は、発光素子と波長変換部材を接着し、発光素子からの光を波長変換部材に導光する部材である。導光部材の母材は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、又はこれらの変性樹脂が挙げられる。これらのうち、シリコーン樹脂及び変性シリコーン樹脂は、耐熱性及び耐光性に優れるため、好ましい。具体的なシリコーン樹脂としては、ジメチルシリコーン樹脂、フェニル-メチルシリコーン樹脂、ジフェニルシリコーン樹脂が挙げられる。また、導光部材を構成する樹脂は、波長変換部材と同様の光拡散材を含有してもよい。
【0078】
被覆部材
被覆部材は、前方への光取り出し効率の観点から、発光素子の発光ピーク波長における光反射率が、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。被覆部材は、白色であることが好ましい。よって、被覆部材は、樹脂中に白色顔料を含有してなることが好ましい。被覆部材は、硬化前には液状の状態を経る。被覆部材は、トランスファ成形、射出成形、圧縮成形、ポッティングなどにより形成することができる。
【0079】
被覆部材の樹脂
被覆部材を構成する樹脂は、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、又はこれらの変性樹脂が挙げられる。なかでも、シリコーン樹脂及び変性シリコーン樹脂は、耐熱性及び耐光性に優れている点で、好ましい。具体的なシリコーン樹脂としては、ジメチルシリコーン樹脂、フェニル-メチルシリコーン樹脂、ジフェニルシリコーン樹脂が挙げられる。また、被覆部材の樹脂は、波長変換部材と同様の光拡散材を含有してもよい。
【0080】
白色顔料
白色顔料は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムのうちの一種を単独で、又はこれらのうちの二種以上を組み合わせて用いることができる。白色顔料の形状は、特に限定されず、不定形若しくは破砕状でもよいが、流動性の観点では球状が好ましい。また、白色顔料の粒径は、例えば0.1μm以上0.5μm以下程度が挙げられるが、光反射や被覆の効果を高めるためには小さいほど好ましい。光反射性の被覆部材中の白色顔料の含有量は、適宜選択できるが、光反射性及び液状時における粘度などの観点から、被覆部材の全体量100質量%中、好ましくは10質量%以上80質量%以下の範囲内であり、より好ましくは20質量%以上70質量%以下の範囲内であり、更に好ましくは30質量%以上60質量%以下の範囲内であり、特に好ましくは50質量%以上65質量%以下の範囲内である。
【0081】
透光性部材
透光性部材は、波長変換シートとは別に設けられる部材であり、波長変換シートを支持する部材であってもよい。波長変換部材は、波長変換シートの光の入射面又は出射面となる少なくとも一方の面に透光性部材を備えていることが好ましい。波長変換部材は、波長変換シートの光の入射面及び出射面の両面に透光性部材を備えていることがより好ましい。波長変換部材が、波長変換シートの光の入射面及び出射面の両面に透光性部材を備えていると、波長変換シートの光の入射面及び出射面の両面から波長変換シートを支持することができ、強度を向上させることができるとともに、波長変換シートに水蒸気や空気が侵入するのを抑制することができる。透光性部材は、ガラスや樹脂のような透光性材料からなる板状体を用いることができる。ガラスとして、例えば、ホウ珪酸ガラス及び石英ガラスから選択することができる。また、樹脂として、例えば、シリコーン樹脂及びエポキシ樹脂から選択することができる。板状の透光性部材の厚さは、製造工程における機械的強度が低下せず、波長変換シートに十分な機械的強度を付与することができる厚さであればよい。また、透光性部材の厚さは、厚すぎると、発光装置の小型化に支障をきたしたり、放熱性が低下したりするので、適切な厚さにすることが好ましい。また、透光性部材には、光拡散を含有させてもよい。透光性部材に光拡散材が含有されていると、波長変換シートから発光色の光の色むら又は輝度むらを抑制することができる。光拡散材には、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等を用いることができる。また、発光面となる透光性部材の上面は平坦な面に限定されず、微細な凹凸を有していてもよい。透光性部材の発光面が微細な凹凸を有していると、発光面からの出射光の散乱を促進させて輝度むらや色むらを更に抑制することが可能となる。
【0082】
ガスバリア層
波長変換部材は、波長変換シートと、透光性部材の間にガスバリア層を備えていることが好ましい。波長変換シートと、透光性部材の間にガスバリア層を備えていると、波長変換シートに水蒸気や空気が侵入するのをより抑制することができ、波長変換シートに含まれる希土類金属錯体及びフッ化物蛍光体の劣化をより抑制することができ、波長変換部材を用いた発光装置をより長寿命化し、耐久性を向上することができる。ガスバリア層は、ガスバリア性を有する水酸基含有高分子化合物、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物及び金属アルコキシド重合物、ガスバリア性を有する無機物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。水酸基含有高分子化合物としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン等が挙げられる。金属アルコキシドとしては、例えば、テトラエトキシシラン(Si(OC)、トリイソプロポキシアルミニウム(Al(O-iso-C)等が挙げられる。金属アルコキシドの加水分解物及び重合物としては、例えばテトラエトキシシランの加水分解物又は重合物としてケイ酸(Si(OH))が挙げられ、トリプロポキシアルミニウムの加水分解物又は重合物として水酸化アルミニウム(Al(OH))が挙げられる。ガスバリア性を有する無機物としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム等が挙げられる。ガスバリア層は、例えばガスバリア性を有する水酸基含有高分子化合物、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物及び金属アルコキシドの重合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む有機物含有層と、無機物からなる無機物含有層の2層が積層されていてもよい。有機物含有層は、水酸基含有高分子化合物、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物及び金属アルコキシドの重合物からなる群から選択される少なくとも1種を、透光性部材又は波長変換シートに塗布し、乾燥させて製造することができる。また、無機物含有層は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び酸化窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の無機物を、物理的気相蒸着(PVD)法又は化学的気相蒸着(CVD)法により、透光性部材又は波長変換シートに蒸着させて製造することができる。ガスバリア層は、有機物含有層と、無機物含有層の2種が積層されていてもよく、波長変換シート側から無機物含有層、次いで有機物含有層の順に積層されていてもよく、波長変換シート側から有機物含有層、次いで無機物含有層の順に積層されていてもよく、有機物含有層及び無機物含有層が複数積層されていてもよく、有機物含有層及び無機物含有層が交互に複数積層されていてもよい。
【0083】
ガスバリア層を有する部材として、ガスバリアフィルムを用いてもよい。ガスバリアフィルムは、例えば基材フィルムと、前述のガスバリア層を備えているものが好ましい。基材フィルムは、樹脂からなるものであることが好ましく、基材フィルムを構成する樹脂材料としては、例えば例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類及びそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル及びポリアリレート樹脂等が挙げられる。ガスバリアフィルムを用いる場合には、波長変換シート側にガスバリア層が配置されることが好ましい。
【0084】
発光装置の製造方法
発光装置の製造方法は、基板90の配線91上の発光素子10をフリップチップ実装する第1工程、波長変換シート20、ガスバリアフィルム30、透光性部材40を積層し、接着して波長変換部材50を形成する第2工程、発光素子10の発光面上に波長変換シート20の光の入射面20aを、導光部材80を介して接着する第3工程、発光素子10及び波長変換部材50を含む側面を光反射性の被覆部材70で被覆し、基板90上に被覆部材70を形成する第4工程、同一基板上に複数の発光素子が載置された集合基板である場合には、基板90及び被覆部材70を切断して、個々の発光装置100を形成する第5工程を含む。具体的には、特開2017-188592号公報に記載の方法によって、発光装置を製造することができる。
【0085】
第2実施形態に係る発光装置について説明する。図7は、第2実施形態に係る発光装置の概略断面図である。図8は、第2実施形態に係る発光装置の概略平面図である。
第2実施形態に係る発光装置200は、上面発光型である。上面発光型の発光装置は第2実施形態に係る画像表示装置に使用することができる。第2実施形態に係る発光装置200は、第1実施形態に係る発光装置100と共通する部材には、同一の符号を付す。第2実施形態に係る発光装置200は、例えば500μm以下の薄い基材93と、配線91A及び91Bを備えた基板90を用いる。また、波長変換部材50は、希土類金属錯体と、フッ化物蛍光体と、樹脂とを含む第1波長変換シート21と、第二蛍光体を含む第2波長変換シート22と、を備え、第1波長変換シート21と、透光性部材40との間にガスバリアフィルム30を備える。ガスバリアフィルム30は、ガスバリア層31と基材フィルム32を備える。第2波長変換シート22の光の入射面は、発光素子10の一つの面に導光部材80を介して接合されている。発光装置200は、薄い基材93を備える基板90を備え、第1波長変換シート21と第2波長変換シート22を積層した波長変換部材50を備え、その他の部材は、発光装置100と共通する。
【0086】
発光装置200の製造方法は、発光装置100の製造方法と共通し、発光装置200の製造方法において、基材93の一部を除去して基材を薄くする工程を含んでいてもよい。
【実施例
【0087】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0088】
希土類金属錯体
下記原料を用いた。
【0089】
シッフ塩基配位子(水酸基とアゾメチン誘導体を有する配位子)(a)
(a1)N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン(Hsalen)[HO-CH-CH=N-(CH-N=CH-C-OH](ベンゼン環は共にオルト置換である。)
(a2)N,N’-ビス(サリチリデン)1,4-ブチレンジアミン(H1,4-salen)[HO-CH-CH=N-(CH-N=CH-C-OH](ベンゼン環は共にオルト置換である。)
(a3)N,N’-ビス(p-ヒドロキシフェニルアセチリデン)1,4-ブチレンジアミン(H1,4-acebn)[HO-CH-C(CH)=N-(CH-N=C(CH)-C-OH](ベンゼン環は共にオルト置換である。)
【0090】
【化11】
【0091】
Β-ジケトナト配位子(b)
(b1)ヘキサフルオロアセチルアセトン(hfa)[CF-CO-CH-CO-CF
1価のアニオンであるβ-ジケトナト配位子を「hfa-」」ともいう。
(b2)ベンゾイルトリフルオロアセトン(btfa)[CF-CO-CH-CO-C
1価のアニオンであるβ-ジケトナト配位子を「btfa」ともいう。
【0092】
【化12】
【0093】
希土類金属元素を含む金属塩(c)
(c1)酢酸ユウロピウム[Eu(CHCOO)(HO)]
(c2)塩化ユウロピウム[EuCl(HO)]その他(D)
ビス[(2-ジフェニルホスホリル)フェニル]エーテル(DPEPO)[(CP(=O)-C-O-C-P(=O)(C
【0094】
希土類金属錯体1:Hsalenとhfaが共に配位したユーロピウムを含む錯体の合成
(c1)酢酸ユウロピウム[Eu(CHCOO)(HO):0.5g]を50mLのエタノールに溶かした。(b1)ヘキサフルオロアセチルアセトン(hfa)[CF-CO-CH-CO-CF:0.9g]を加えて、室温で1時間攪拌した。
(a1)N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン(Hsalen)[HO-C-CH=N-(CH-N=CH-C-OH:0.77g](ベンゼン環は共にオルト置換である)を入れ、室温で24時間攪拌した。攪拌後、沈澱した固体を濾過した。エタノールを減圧留去により取り除き、黄色生成物を得た。エタノールとジクロロメタンとの混合溶媒を用いて再結晶を行い、化学式(VIII)で表される希土類金属錯体1を得た。
【0095】
【化13】
【0096】
希土類金属錯体2:H1,4-salbnとhfaが共に配位したユーロピウムを含む錯体の合成
(c1)酢酸ユウロピウム[5.0g]を40mLの蒸留水に溶かした。(b1)ヘキサフルオロアセチルアセトン(hfa)[8.1g]を加えて、室温で4時間攪拌した。攪拌後、沈澱した固体を濾過した。蒸留水を減圧留去により取り除き、白色生成物を得た。得られた白色生成物1.62gを40mlジエチルエーテルに溶かした。
(a2)N,N’-(サリチリデン)1,4-ブタンジアミン(H1,4-salbn)[HO-C-CH=N-(CH-N=CH-C-OH:1.19g](ベンゼン環は共にオルト置換である)を入れ、室温で24時間攪拌した。沈澱した固体を濾過した。ジエチルエーテルを減圧留去により取り除き、黄色生成物を得た。テトラヒドロフランとヘキサンとの混合溶媒を用いて再結晶を行い、化学式(IX)で表される希土類金属錯体2を得た。
【0097】
【化14】
【0098】
希土類金属錯体3:H1,4-salbnとbtfaが共に配位したユーロピウムを含む錯体の合成
(c2)塩化ユウロピウム[EuCl(HO):2.2g]を30mLのメタノールに溶かした。(b2)ベンゾイルトリフルオロアセトン(btfa)[CF-CO-CH-CO-C:3.9g]を加えて、アンモニア水溶液でpH7に調整し、室温で4時間攪拌した。攪拌後、300mlの純水を入れ12時間攪拌させ沈澱した固体を濾過した。蒸留水を減圧留去により取り除き、白色生成物を得た。得られた白色生成物1.67gを40mlジエチルエーテルに溶かした。
(a2)H1,4-salbn(ベンゼン環は共にオルト置換である)、0.60gを入れ、室温で24時間攪拌した。沈澱した固体を濾過した。ジエチルエーテルを減圧留去により取り除き、黄色生成物を得た。ジエチルエーテル溶媒により再結晶を行うことにより、化学式(X)で表される希土類金属錯体3を得た。
【0099】
【化15】
【0100】
マンガンを含むフッ化物蛍光体
MnFを16.25g秤量し、それを55質量%HF水溶液1000gに溶解して、第1溶液を調製した。またKHFを195.10g秤量し、それを55質量%HF水溶液200gに溶解させて第2溶液を調製した。40質量%HSiF水溶液450gを秤量したものを第3溶液とした。
【0101】
次に第1溶液を、室温で攪拌しながら、約20分かけて第2溶液と第3溶液とをそれぞれ滴下した。得られた沈殿物を固液分離後、IPA(イソプロピルアルコール)洗浄を行い、70℃で10時間乾燥することで、K[Si0.962Mn4+ 0.038]で表される組成を有するマンガンを含むフッ化物蛍光体を作製した。
【0102】
図9は、第3実施形態に係るバックライト装置の概略断面図である。第3実施形態に係るバックライト装置と同様のバックライト装置に後述する実施例の波長変換シートを用いた。このバックライト装置を用いて評価を行った。ただし、第2実施形態に係る直下型バックライト構造における液晶パネルの部分、導光板及び反射シートについては使用していない。また、第3実施形態に係るバックライト装置において、第2実施形態に係る直下型バックライト構造を示す画像表示装置において説明したバックライト装置と共通する部分については説明を省略することもある。
バックライト装置160Eは、発光装置の代わりに複数個の発光素子111と、個々の発光素子111を覆う被覆部材112と、複数個の発光素子111が配置される筐体105Eと、発光素子111と離して配置される拡散シート125Eと、拡散シート125E上に配置されるシート状の波長変換部材130Eと、シート状の波長変換部材130Eの出光側に配置されるプリズムシート135Eと、を備える。発光素子111は、450nmに発光ピーク波長を持つ青色発光の発光素子を用いた。発光素子111はAuからなるバンプを介して筐体105Eにフリップチップ実装している。この発光素子を覆う被覆部材112は、略半球状であり、レンズ効果を奏している。被覆部材112は、シリコーン樹脂を用いている。
シート状の波長変換部材130Eは、蛍光体が混合されたアクリル樹脂からなるシート状の波長変換シートの入射面及び出射面となる両面に所定のフィルムが貼り合わされているものを使用する。所定のフィルムは、透光性部材であり、ポリエチレンテレフタレート(PET)に透光性を有するガスバリア層であるシリカ膜が蒸着されたフィルムである。
【0103】
実施例1
実施例1における波長変換部材130Eは、アクリル樹脂100質量部に対して、希土類金属錯体1を0.25質量部、フッ化物蛍光体を15質量部含む波長変換部材用組成物を用いて波長変換シートを製造した。フッ化物蛍光体の質量Fに対する希土類金属錯体の質量Cの質量比C/Fは0.017であった。
【0104】
実施例2
実施例2における波長変換部材130Eは、アクリル樹脂100質量部に対して、希土類金属錯体1を0.5質量部、フッ化物蛍光体を10質量部含む波長変換部材用組成物を用いて波長変換シートを製造した。フッ化物蛍光体の質量Fに対する希土類金属錯体の質量Cの質量比C/Fは0.05であった。
【0105】
実施例3
実施例3における波長変換部材130Eは、アクリル樹脂100質量部に対して、希土類金属錯体1を0.75質量部、フッ化物蛍光体を5質量部含む波長変換部材用組成物を用いて波長変換シートを製造した。フッ化物蛍光体の質量Fに対する希土類金属錯体の質量Cの質量比C/Fは0.15であった。
【0106】
比較例1
比較例1における波長変換部材130Eは、アクリル樹脂100質量部に対して、希土類金属錯体1は入っておらず、フッ化物蛍光体を20質量部含む波長変換部材用組成物を用いて波長変換シートを製造した。
【0107】
比較例2
比較例2における波長変換部材130Eは、アクリル樹脂100質量部に対して、希土類金属錯体1が1質量部含まれ、フッ化物蛍光体が含まれていない波長変換部材用組成物を用いて波長変換シートを製造した。
【0108】
発光装置の評価
実施例及び比較例の各バックライト装置について、以下の評価を行った。以下の評価は、バックライト装置に10mAの電流を流して測定した。結果を表1に示した。
【0109】
色度座標(x、y)、輝度
バックライト装置について、マルチチャンネル分光器と積分球を組み合わせた光計測システムを用いて、発光スペクトルを測定し、CIE1931色度図の色度座標における色度座標(x、y)及び輝度を求めた。比較例1のバックライト装置の輝度を100%として、実施例及び比較例の各バックライト装置の相対輝度(%)を求めた。
【0110】
残光時間
基準時は、各バックライト装置に備えた発光ピーク波長が450nmである励起光を波長変換部材に照射し、分光光度計(製品名:F-7000、株式会社日立ハイテクノロジーズ)を用いて、励起光の照射を遮断した時点とした。残光時間は、基準時からバックライト装置の波長変換部材から発せられる発光強度の経時変化を測定し、励起光を照射したときの発光強度を基準強度100%とし、基準強度100%に対して36.8%の発光強度となった時間とした。
【0111】
【表1】
【0112】
実施例1から3に係る波長変換部材を用いたバックライト装置は、波長変換シートに、希土類金属錯体とフッ化物蛍光体の両方を含むため、残光時間を4ms以下と短くすることができた。また、実施例1から3に係る波長変換部材を用いたバックライト装置は、比較例1に係る波長変換部材を用いたバックライト装置よりも高い輝度を有していた。そのため、これらのバックライト装置を、液晶を使った画像表示装置に用いた場合、動作が早い画像であっても残光の影響が少なく、色再現性が良好な画像を映し出すことが可能となる。比較例2に係る波長変換部材を用いたバックライト装置は、波長変換シートにフッ化物蛍光体が含まれていないため、残光時間は短くなったが、相対輝度は、実施例1から3に係る波長変換部材を用いたバックライト装置ほど高くならなかった。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本開示の実施形態は、各種照明用光源、車載用光源、ディスプレイ用光源等に有用である。特に、液晶を使った画像表示装置のバックライトユニットに有利に適用できる。本開示の実施形態による発光装置は、モバイル機器の表示装置用のバックライトにも有利である。一般照明用の発光装置、車両用の発光装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0114】
10:発光素子、20:波長変換シート、21:第1波長変換シート、22:第2波長変換シート、30:ガスバリアフィルム、40:透光性部材、50、130、130E:波長変換部材、60:導電性部材、70:被覆部材、80:導光部材、90:基板、100、200:発光装置、105、105E:筐体、110、110E:発光装置、111:発光素子、112:被覆部材、115、115E:導光板、120、120E:反射シート、125、125E:拡散シート、135、135E:プリズムシート、140:第1偏光シート、145:液晶セル、150:第2偏光シート、160、160E:バックライト装置、170:表示パネル、300、300E:画像表示装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9