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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20240619BHJP
   H01L 21/50 20060101ALI20240619BHJP
   H01L 33/62 20100101ALI20240619BHJP
   H01L 33/58 20100101ALN20240619BHJP
   H01L 33/50 20100101ALN20240619BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
H01L21/50 C
H01L33/62
H01L33/58
H01L33/50
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022056683
(22)【出願日】2022-03-30
(65)【公開番号】P2023148579
(43)【公開日】2023-10-13
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】萬藤 元章
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-059739(JP,A)
【文献】特開2011-096961(JP,A)
【文献】特開2015-154031(JP,A)
【文献】特開2009-190882(JP,A)
【文献】特開2020-096151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 21/50
H01L 33/62
H01L 33/58
H01L 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1支持体、および、それぞれの下面が前記第1支持体に一時的に固定された複数の半導体素子を有する半導体素子集合体を準備する工程(A)と、
複数の開口を有する支持構造体を準備する工程であって、前記複数の開口のそれぞれには液体の支持媒体が配置されている、工程(B)と、
前記複数の開口のそれぞれに、前記第1支持体に一時的に固定された前記複数の半導体素子のうち対応する1つを配置して前記複数の半導体素子を前記支持媒体に浸漬させる工程(C)と、
前記複数の半導体素子を前記支持媒体に浸漬させた状態で、冷却により前記支持媒体を固化させる工程(D)と、
前記工程(D)の後、前記複数の半導体素子から前記第1支持体を分離する工程(E)と、
前記工程(E)の後、加熱により前記支持媒体を液化させることによって、前記複数の開口の配置に対応した、前記複数の半導体素子の配列を得る工程(F)と
を備え
前記支持構造体は、
複数の第1開口が設けられた上面を有する第1フレーム部材と、
複数の貫通孔を有する第2フレーム部材であって、前記第1フレーム部材の前記複数の第1開口に前記複数の貫通孔が重なるようにして前記第1フレーム部材の前記上面上に配置された第2フレーム部材と
を含み、
前記工程(F)は、前記支持媒体を液化させた後に、前記第1フレーム部材および前記第2フレーム部材の少なくとも一方を前記第1フレーム部材の前記上面に平行に移動させて前記複数の半導体素子をそれぞれ前記複数の貫通孔の内側面に接触させることにより、前記半導体素子を整列させる工程(F2)を含み、
前記複数の半導体素子、前記複数の第1開口および前記複数の貫通孔は、前記第1フレーム部材の前記上面に垂直に見た上面視において矩形状を有しており、
前記工程(F2)は、前記複数の第1開口の矩形状の対角方向に沿った、前記第1フレーム部材および前記第2フレーム部材間の相対移動により、前記複数の半導体素子を前記対角方向に移動させる工程(F3)を含み、
前記工程(F3)は、
前記複数の第1開口の矩形状の第1の辺に沿った、前記第1フレーム部材および前記第2フレーム部材間の第1の相対移動の工程と、
前記第1の辺に直交する第2の辺に沿った、前記第1フレーム部材および前記第2フレーム部材間の第2の相対移動の工程と
を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記工程(F2)の後、
前記複数の半導体素子の前記下面に、粘着性の表面を有する第2支持体を貼り付ける工程(H)をさらに備える、請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
第1支持体、および、それぞれの下面が前記第1支持体に一時的に固定された複数の半導体素子を有する半導体素子集合体を準備する工程(A)と、
複数の開口を有する支持構造体を準備する工程であって、前記複数の開口のそれぞれには液体の支持媒体が配置されている、工程(B)と、
前記複数の開口のそれぞれに、前記第1支持体に一時的に固定された前記複数の半導体素子のうち対応する1つを配置して前記複数の半導体素子を前記支持媒体に浸漬させる工程(C)と、
前記複数の半導体素子を前記支持媒体に浸漬させた状態で、冷却により前記支持媒体を固化させる工程(D)と、
前記工程(D)の後、前記複数の半導体素子から前記第1支持体を分離する工程(E)と、
前記工程(E)の後、加熱により前記支持媒体を液化させることによって、前記複数の開口の配置に対応した、前記複数の半導体素子の配列を得る工程(F)と
を備え
前記支持構造体は、
複数の第1開口が設けられた上面を有する第1フレーム部材と、
複数の貫通孔を有する第2フレーム部材であって、前記第1フレーム部材の前記複数の第1開口に前記複数の貫通孔が重なるようにして前記第1フレーム部材の前記上面上に配置された第2フレーム部材と
を含み、
前記工程(F)は、前記支持媒体を液化させた後に、前記第1フレーム部材および前記第2フレーム部材の少なくとも一方を前記第1フレーム部材の前記上面に平行に移動させて前記複数の半導体素子をそれぞれ前記複数の貫通孔の内側面に接触させることにより、前記半導体素子を整列させる工程(F2)を含み、
前記工程(F2)の後、
前記複数の半導体素子の前記下面に、粘着性の表面を有する第2支持体を貼り付ける工程(H)をさらに備える、半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記複数の半導体素子、前記複数の第1開口および前記複数の貫通孔は、前記第1フレーム部材の前記上面に垂直に見た上面視において矩形状を有しており、
前記工程(F2)は、前記複数の第1開口の矩形状の対角方向に沿った、前記第1フレーム部材および前記第2フレーム部材間の相対移動により、前記複数の半導体素子を前記対角方向に移動させる工程(F3)を含む、請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記支持構造体は、前記第2フレーム部材の、前記第1フレーム部材と対向する下面とは反対側の上面に配置された非粘着層を有する、請求項2から4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記複数の半導体素子のそれぞれは、前記下面とは反対側に位置する上面を有する発光素子であり、
前記工程(H)の後に、複数の前記発光素子の上面の上方に透光性部材を配置する工程(I)をさらに備える、請求項2から5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記工程(I)の後に、互いに隣り合う2つの前記発光素子の間の位置で前記透光性部材を切断することにより、1以上の前記発光素子を含む光源を得る工程(J)をさらに備える、請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記工程(B)は、
多孔質の支持部材上に前記支持構造体を配置する工程(B1)と、
前記支持構造体の前記複数の開口の内部に液体の前記支持媒体を配置する工程(B2)と
を含み、
前記工程(F)は、前記支持部材を介して、液化された前記支持媒体を前記複数の開口の内部から排出させる工程(F1)を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記支持部材の前記支持構造体側の表面は、粗面である、請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第2フレーム部材は、前記第1フレーム部材よりも厚い、請求項1から9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記工程(E)の後に、前記複数の半導体素子の前記下面を覆うように前記支持構造体上に押さえ板を配置する工程(G)をさらに備え、
前記支持構造体上に前記押さえ板を配置した状態で前記工程(F2)を実行する、請求項1から10のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記押さえ板の、前記複数の半導体素子の前記下面と対向する表面は、粗面である、請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記押さえ板は、前記複数の半導体素子の前記下面と対向する側に導電膜を有する、請求項11または12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記工程(E)と前記工程(F)との間に、前記複数の半導体素子の前記下面を覆うように前記支持構造体上に押さえ板を配置する工程(G)をさらに備え、
前記支持構造体上に前記押さえ板を配置した状態で前記工程(F)を実行する、請求項1から10のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を含む半導体装置の製造においては、複数の半導体素子を相異なる支持体の間で(例えば複数の粘着テープの間で)載せ換える場面が存在する。このとき、複数の半導体素子を第1の支持体から第2の支持体に一括して移動させることもある(以下、このような工程を「転写」と呼ぶことがある)。
【0003】
下記の特許文献1は、冷却による水分の凝結および凍結を利用した、複数の半導体チップの転写方法を開示している。特許文献1に記載の技術は、氷を介した固定により、半導体チップの裏面からのフィルムの剥離を容易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2019-536264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
相異なる支持体の間で複数の半導体素子を効率よく載せ換えられると有益である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態による半導体装置の製造方法は、第1支持体、および、それぞれの下面が前記第1支持体に一時的に固定された複数の半導体素子を有する半導体素子集合体を準備する工程(A)と、複数の開口を有する支持構造体を準備する工程であって、前記複数の開口のそれぞれには液体の支持媒体が配置されている、工程(B)と、前記複数の開口のそれぞれに、前記第1支持体に一時的に固定された前記複数の半導体素子のうち対応する1つを配置して前記複数の半導体素子を前記支持媒体に浸漬させる工程(C)と、前記複数の半導体素子を前記支持媒体に浸漬させた状態で、冷却により前記支持媒体を固化させる工程(D)と、前記工程(D)の後、前記複数の半導体素子から前記第1支持体を分離する工程(E)と、前記工程(E)の後、加熱により前記支持媒体を液化させることによって、前記複数の開口の配置に対応した、前記複数の半導体素子の配列を得る工程(F)とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の実施形態によれば、複数の半導体素子の転写が容易となり、半導体装置の製造をより効率的に行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示のある実施形態による半導体装置の例示的な製造方法の概略を示すフローチャートである。
図2】本開示のある実施形態による半導体装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
図3】本開示のある実施形態による半導体装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
図4】本開示のある実施形態による半導体装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
図5】本開示のある実施形態による半導体装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
図6】本開示のある実施形態による半導体装置の製造方法に適用可能な、付加的な工程を説明するための模式的な断面図である。
図7】本開示のある実施形態による半導体装置の製造方法に適用可能な、付加的な工程を説明するための模式的な断面図である。
図8】本開示のある実施形態による半導体装置の製造方法に適用可能な、付加的な工程を説明するための模式的な断面図である。
図9】本開示のある実施形態による半導体装置の製造方法に適用可能な、付加的な工程を説明するための模式的な断面図である。
図10】本開示のある実施形態による半導体装置の製造方法に適用可能な、付加的な工程を説明するための模式的な断面図である。
図11】本開示のある実施形態による半導体装置の製造方法に適用可能な、付加的な工程を説明するための模式的な断面図である。
図12】本開示の他のある実施形態による半導体装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
図13】本開示の他のある実施形態による半導体装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
図14】本開示の他のある実施形態による半導体装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
図15】本開示の他のある実施形態による半導体装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
図16】第1フレーム部材に対する第2フレーム部材の相対的なスライド移動の第1の例を説明する模式的な上面図である。
図17】第1フレーム部材に対する第2フレーム部材の相対的なスライド移動の第1の例を説明する模式的な上面図である。
図18】第1フレーム部材に対する第2フレーム部材の相対的なスライド移動の第2の例を説明する模式的な上面図である。
図19】第1フレーム部材に対する第2フレーム部材の相対的なスライド移動の第2の例を説明する模式的な上面図である。
図20】本開示の他のある実施形態による半導体装置の製造方法に適用可能な、付加的な工程を説明するための模式的な断面図である。
図21】本開示の他のある実施形態による半導体装置の製造方法に適用可能な、付加的な工程を説明するための模式的な断面図である。
図22】支持構造体のさらに他の例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を詳細に説明する。以下の実施形態は、例示であり、本開示による半導体装置の製造方法は、以下の実施形態に限られない。例えば、以下の実施形態で示される数値、形状、材料、ステップ、そのステップの順序などは、あくまでも一例であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の改変が可能である。以下に説明する各実施形態は、あくまでも例示であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の組み合わせが可能である。
【0010】
図面が示す構成要素の寸法、形状などは、分かりやすさのために誇張されている場合があり、実際の半導体装置における寸法、形状および構成要素間の大小関係を反映していない場合がある。また、図面が過度に複雑になることを避けるために、一部の要素の図示を省略することがある。以下では、切断面の後方にある部分の図示を省略した、切断面のみを示す端面図を断面図として示して本開示の実施形態を説明する場合がある。
【0011】
以下の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素を共通の参照符号で示し、説明を省略することがある。以下の説明では、特定の方向または位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」およびそれらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。しかしながら、それらの用語は、参照した図面における相対的な方向または位置の分かりやすさのために用いているに過ぎない。参照した図面における「上」、「下」などの用語による相対的な方向または位置の関係が同一であれば、本開示以外の図面、実際の製品、製造装置などにおいて、参照した図面と同一の配置でなくてもよい。本開示において「平行」とは、特に他の言及がない限り、2つの直線、辺、面などが0°から±5°程度の範囲にある場合を含む。また、本開示において「垂直」または「直交」とは、特に他の言及がない限り、2つの直線、辺、面などが90°から±5°程度の範囲にある場合を含む。
【0012】
図1は、本開示のある実施形態による半導体装置の例示的な製造方法の概略を示すフローチャートである。図1に例示する製造方法は、第1支持体に一時的に固定された複数の半導体素子を有する半導体素子集合体を準備する工程(ステップS1)と、複数の開口のそれぞれに液体の支持媒体が配置された支持構造体を準備する工程(ステップS2)と、半導体素子を開口内の支持媒体にそれぞれ浸漬させる工程(ステップS3)と、冷却により支持媒体を固化させる工程(ステップS4)と、支持媒体の固化後、複数の半導体素子から第1支持体を分離する工程(ステップS5)と、第1支持体の分離後、加熱により支持媒体を液化させることによって、開口の配置に対応した、複数の半導体素子の配列を得る工程(ステップS6)とを含む。半導体装置の製造方法は、これらの工程により完結している必要はなく、後述するように、半導体装置は、複数の半導体素子の配列を得た後にさらに他の工程が実行されることにより完成され得る。
【0013】
以下では、半導体装置として、発光素子をその一部に含む発光装置を例にとり、それら発光装置の例示的な製造方法を説明する。以下の説明から明らかになるように、本開示の実施形態は、発光装置の製造に限定されず、半導体素子を含む種々の装置の製造に適用可能である。
【0014】
(半導体素子集合体を準備する工程)
まず、図2に示すように、半導体素子集合体を準備する(図1のステップS1)。図2に示す半導体素子集合体100は、第1支持体110と、第1支持体110の上面110aに配置された複数の半導体素子120とを含む。なお、図2には、説明の便宜のために、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を示す矢印をあわせて図示している。本開示の他の図面においてもこれらの方向を示す矢印を図示することがある。
【0015】
第1支持体110の例は、ダイシングテープおよびバックグラインドテープに代表される樹脂テープである。図2に示す例において、第1支持体110は、支持層111と、支持層111上の接着層112とを有する。支持層111の材料の例は、ポリオレフィンなどの樹脂である。接着層112の材料としては、例えば、アクリル樹脂を用いることができる。
【0016】
図2に示す例では、半導体素子120として複数の発光素子が第1支持体110の接着層112上に固定されている。複数の発光素子のそれぞれは、例えば、LEDのベアチップであり得る。図2に例示する構成において、半導体素子120は、上面120aと、上面120aの反対側の下面120bとを有する。この例では、半導体素子120は、上面120aとは反対側に一対の電極20を有しており、半導体素子120の下面120bは、電極20の下面20bをその一部に含んでいる。複数の発光素子は、樹脂などによりベアチップを封止する、いわゆるLEDパッケージの態様で第1支持体110上に配置されてもよい。
【0017】
図2に示す例において、複数の半導体素子120のそれぞれは、下面120bを接着層112に対向させた状態で第1支持体110に支持されている。言い換えれば、各半導体素子120の下面120bは、第1支持体110に固定されている。電極20のおおむね全体が接着層112に埋め込まれることにより、半導体素子120の下面120bの全体が接着層112の表面に接することもあり得る。第1支持体110の接着層112による半導体素子120の固定は、一時的な固定である。
【0018】
第1支持体110上の複数の半導体素子120の配置は、一次元であってもよいし、二次元であってもよい。半導体素子集合体100は、樹脂テープと、割断後の半導体ウェーハとを含む構造体であり得る。その場合、半導体素子集合体100は、第1支持体110上に数十個から数千個の半導体素子120を含み得る。図2では、複数の半導体素子120のうち、図のX方向に沿って配置された3つを代表して示している。なお、第1支持体110上の複数の半導体素子120の配置が一定間隔である必要はない。
【0019】
(支持構造体を準備する工程)
本実施形態では、半導体素子集合体に加えて、複数の開口を有する支持構造体を準備する(図1のステップS2)。半導体素子集合体の準備および支持構造体の準備は、いずれが先であってもよい。
【0020】
図3に示す例では、支持部材300の上面300a上に支持構造体200を配置している。図3に模式的に示すように、支持構造体200は、複数の開口200hを有する。本開示の典型的な実施形態において、これら複数の開口200hは、所定の間隔で支持構造体200に設けられる。例えば、複数の開口200hの配置は、半導体素子集合体100中の複数の半導体素子120の配置に対応している。
【0021】
各開口200hの上面視におけるサイズは、半導体素子120のうちの1つを開口200hの内部に配置可能なサイズである。例えば、半導体素子120の上面120aが正方形状を有する場合、開口200hは、一辺の長さが上面120aの正方形状の一辺よりも大きな正方形状の上面視形状を有し得る。上面120aの正方形状の一辺の長さが例えば450~460μmの範囲である場合、開口200hは、上面視において一辺の長さが600μm程度の正方形状を有し得る。
【0022】
図3に示す例において、支持構造体200は、支持部材300によって支持されている。図3に例示する構成において、支持部材300は、ポーラス板310、および冷却プレート320を積層した構造を有する。ポーラス板310は、冷却プレート320上に位置し、上面310aを有する。支持構造体200は、ポーラス板310の上面310a上に配置される。ポーラス板310は、多孔質金属材料または多孔質セラミックスから構成され、連続気泡構造を含む板状の部材である。
【0023】
図3に模式的に示すように、ここでは、支持構造体200の複数の開口200hのそれぞれは、ポーラス板310の上面310aに達している。すなわち、この例では、各開口200hは、支持構造体200に設けられた貫通孔である。ただし、支持構造体200の複数の開口200hは、貫通孔の態様に限定されない。開口200hは、底を有する穴部の態様であってもかまわない。本明細書において、「開口」は、底を有する穴部と、貫通孔との両方を包含する用語として使用される。
【0024】
本実施形態では、図3に示すように、各開口200hの内部に支持媒体140が配置される。すなわち、支持構造体200の準備の工程は、多孔質の支持部材(ここではポーラス板310をその一部に含む支持部材300)上に支持構造体200を配置する工程と、支持構造体200の複数の開口200hの内部に液体の支持媒体140を配置する工程とを含み得る。
【0025】
支持構造体200の準備の工程において、支持媒体140は、液体の状態にある。液体の支持媒体140の典型例は、純水である。純水に代えて、水とアルコールの混合物(例えばエタノール水溶液)などを支持媒体140に適用することも可能である。水に混合される物質が水よりも低い沸点を有すると、後の工程において支持媒体140を除去する際に有益である。
【0026】
液体の支持媒体140は、支持部材300上への支持構造体200の配置後に、支持構造体200の開口200hに注入されることにより各開口200h内に配置され得る。あるいは、支持部材300の上面300a上に液体の支持媒体140をあらかじめ配置してから、支持部材300上に支持構造体200を配置することにより、液体の支持媒体140が各開口200h内に配置されてもよい。液体の支持媒体140は、各開口200hの全体を満たしていてもよいし、開口200hの容積よりも小さな体積で各開口200hの内側に配置されてもよい。あるいは、図3に模式的に示すように、支持構造体200の上面200aの上側に盛り上がる形状で複数の開口200hに配置されてもよい。
【0027】
(半導体素子を開口内の支持媒体にそれぞれ浸漬させる工程)
次に、支持構造体の対応する開口内の支持媒体に第1支持体上の半導体素子を浸漬させる(図1のステップS3)。この工程では、半導体素子120の上面120aを液体の支持媒体140に対向させた状態で、半導体素子集合体100を支持部材300に向かって下降させる。
【0028】
半導体素子集合体100の下降により、図4に示すように、支持構造体200の複数の開口200hのそれぞれに、複数の半導体素子120のうち対応する1つを配置できる。各開口200h内に液体の支持媒体140が配置されているので、支持構造体200の開口200h内への半導体素子120の配置により、半導体素子集合体100のうち半導体素子120を開口200h内の液体の支持媒体140に浸漬させることができる。本実施形態では、液体の支持媒体140への浸漬が、複数の半導体素子120が第1支持体110に一時的に支持された状態で実行される。そのため、複数の半導体素子120を容易に各開口200h内に配置できる。また、複数の半導体素子120が第1支持体110に一時的に支持された状態であるので、液体の支持媒体140中で半導体素子120が移動することを抑制しながら、半導体素子120を各開口200h内に配置できる。なお、支持構造体200の複数の開口200hのそれぞれに、半導体素子集合体100の対応する半導体素子120を配置してから、開口200hの内部を液体の支持媒体140で満たしてもよい。
【0029】
(冷却により支持媒体を固化させる工程)
次に、冷却によって、液体の支持媒体140を固化させる(図1のステップS4)。支持媒体140の固化は、半導体素子集合体100の半導体素子120を液体の支持媒体140に浸漬させた状態で実行される。
【0030】
図4から理解されるように、液体の支持媒体140に浸漬された半導体素子120のそれぞれは、対応する開口200hの形状を規定する内側面200cにより、XY面内における移動が規制された状態にある。すなわち、第1支持体110上における配置をほぼ維持したままの状態で、各半導体素子120の周囲の支持媒体140を固化させることができる。
【0031】
支持媒体140の冷却は、冷却プレート320を利用して実行できる。例えば、冷却プレート320は、ポーラス板310の下面310bに対向する上面320aの側に、冷媒を循環可能な流路FL1を有する。冷却プレート320の流路FL1内の冷媒の循環により、ポーラス板310を介して、開口200h内の支持媒体140を冷却できる。
【0032】
(複数の半導体素子から第1支持体を分離する工程)
支持媒体140の固化後、複数の半導体素子120から第1支持体110を分離する(図1のステップS5)。ここでは、図5に模式的に示すように、第1支持体110としての樹脂テープを半導体素子120の下面120bから剥離している。第1支持体110の剥離に先立ち、紫外線の照射などによる、接着層112の粘着力の低下が実行され得る。
【0033】
ここでは、各開口200h内の半導体素子120は、固化された支持媒体140により、支持部材300上の位置が固定された状態にある。そのため、第1支持体110上の配置を維持したまま、第1支持体110を半導体素子120から分離できる。図2から理解されるように、半導体素子集合体100に含まれる各半導体素子120の電極20の下面20bは、第1支持体110と接した状態にある。第1支持体110の除去により、各半導体素子120の電極20の下面20bは、図5に示すように、固化された支持媒体140から露出される。
【0034】
(支持媒体を液化させて複数の半導体素子の配列を得る工程)
第1支持体110の分離後、加熱により支持媒体140を液化させる。支持媒体140の液化により、支持構造体200の開口200hの配置に対応した、複数の半導体素子120の配列を得ることができる(図1のステップS6)。例えば、冷却プレート320の流路FL1内に60℃程度の温水などを循環させることにより、支持媒体140の温度を上昇させることができる。支持媒体140の加熱は、周囲の温度を上昇させることにより実行されてもよいし、支持構造体200および支持部材300をヒータなどで加熱することにより実行されてもよい。このとき、支持媒体140を蒸発させることにより、各開口200h内の半導体素子120を乾燥させてもよい。
【0035】
以上に説明したように、本実施形態によれば、液体の支持媒体140の固化により、複数の半導体素子120が支持構造体200の開口200h内に保持された状態で半導体素子120からの第1支持体110の分離が実行される。そのため、半導体素子集合体100から第1支持体110を容易に除去できる。
【0036】
その後、支持媒体140を再び液体とすることにより、支持構造体200の開口200hの配置に応じた、複数の半導体素子120の配列を得ることができる。言い換えれば、半導体素子120のサイズに対する開口200hのマージンの範囲で、複数の半導体素子120を一括して並べることができる。
【0037】
加熱による支持媒体140の液化は、複数の半導体素子120が開口200h内に配置された状態で実行され得る。そのため、液化に伴う、支持媒体140の体積の変化に起因して半導体素子120が移動することによる半導体素子120の間隔のばらつきを抑制可能である。このように、本実施形態によれば、第1支持体110の除去後の製造工程で半導体素子120を再配列させる工程を省略できるなど、工程の複雑化を回避できる。
【0038】
第1支持体110の分離後、加熱により支持媒体140を液化させる前に、支持構造体200の開口200h内の複数の半導体素子120を覆う部材を支持構造体200上に配置してもよい。図6に示す例では、複数の半導体素子120の下面120bを覆うようにして支持構造体200の上面200a上に押さえ板400を配置している。
【0039】
すなわち、この例では、支持媒体140の液化により、所定の配列を有する複数の半導体素子120を開口200h内に得る工程は、支持構造体200上に押さえ板400を配置した状態で実行される。複数の半導体素子120の下面120bを押さえ板400で覆った状態で支持媒体140を液化させることにより、液化された支持媒体140中で半導体素子120が浮くなど、開口200hの内部での半導体素子120の移動を抑制し得る。
【0040】
押さえ板400には、適度な剛性を有する部材を利用できる。例えば、適当な厚さを有する、金属、セラミックスまたは樹脂などの板材を押さえ板400に適用できる。あるいは、耐熱ガラスから形成された部材を押さえ板400に利用してもよい。透明な部材を押さえ板400に用いることにより、押さえ板400を介して、開口200h内の半導体素子120を観察可能になる。
【0041】
押さえ板400の下面400b(複数の半導体素子120の下面120bと対向する表面)が粗面であると有益である。押さえ板400の表面のうち、半導体素子120に対向させられる下面400bが粗面であることにより、押さえ板400への半導体素子120の付着を抑制できる。なお、本明細書において、「粗面」は、基本的に、ISO 25178で規定される算術平均高さSaが0.5μm以上10μm以下であるような面を指す。
【0042】
押さえ板は、半導体素子120に対向させられる下面400b側に導電膜を有していてもよい。図7に示す例では、複数の半導体素子120の下面120bを覆うように押さえ板400Aを支持構造体200の上面200a上に配置している。図7に模式的に示すように、押さえ板400Aは、複数の半導体素子120の下面120bと対向させられる側に導電膜420を有する。押さえ板が導電膜420を有することにより、帯電による、押さえ板への半導体素子120の付着を抑制できる。導電膜420の例は、銅膜、アルミニウム膜、導電性フッ素樹脂膜、導電性DLC(Diamond Like Carbon)膜などである。
【0043】
(複数の半導体素子の下面に第2支持体を貼り付ける工程)
図8に示すように、各開口200h内において固化された支持媒体140に保持された半導体素子120の下面120bに、ダイシングテープなどの、粘着性の表面を有する第2支持体800を貼りつけてもよい。その後、支持媒体140を再び液体として、支持構造体200上から半導体素子120ごと第2支持体800を分離することにより、第1支持体110上の配置と同じ配置を有する、複数の半導体素子120のアレイを第2支持体800上に得ることができる。いわば複数の半導体素子120を“整列”させた状態で第2支持体800に一括して転写できる。
【0044】
第2支持体800の表面の接着力は、第1支持体110の接着層112の接着力よりも小さくてもよい。その後の工程において、半導体素子120を第2支持体800から取り外しやすくできるからである。
【0045】
このように、開口200h内の液体の支持媒体140を固化した後に再び液体とすることにより、複数の半導体素子120を支持構造体200の開口200hの配置に対応した配置で第2支持体800上に一括して転写できる。すなわち、開口200h内に保持された複数の半導体素子120の配置を維持したままの半導体素子120の転写を容易に実行し得る。言い換えれば、複数の半導体素子120をいわば整列させた状態で一括して第2支持体800上に転写できる。
【0046】
粘着性の表面を有するシート状の部材を第2支持体800に適用して支持構造体200の上面200aおよび半導体素子120の下面120bに貼りつけ、開口200hから半導体素子120を取り出すことに代えて、例えばコレットを利用したピックアップにより、半導体素子120を他の支持体上に載せ替えてもよい。この場合も、支持構造体200に保持された複数の半導体素子120が開口200hの配置に対応した所定の配列を有するので、本開示の実施形態は、例えばコレットを利用した半導体素子120のピックアップにも有利である。また、接着性を有する支持体上からの半導体素子120のピックアップではないので、コレットを有利に適用できる。本開示の実施形態は、一括した転写でなくとも、第1支持体110から別の支持体への、複数の半導体素子120の所定の配列での移動に有利に適用し得る。
【0047】
(複数の半導体素子の上面の上方に透光性部材を配置する工程)
複数の半導体素子120を第2支持体800などの他の支持体上に移した後、各半導体素子120の上面120aの上方に透光性部材を配置してもよい。ここでは、図9に模式的に示すように、下面150bに複数の凹部50rを有する板状の透光性部材150Sを第2支持体800上の半導体素子120にかぶせている。透光性部材150Sは、蛍光体のような波長変換材料を含有していてもよい。
【0048】
透光性部材150Sの複数の凹部50rは、透光性部材150Sの下面150bの、第2支持体800上の複数の半導体素子120の配置に応じた位置に設けられる。なお、透光性部材が複数の凹部50rを有することは、本開示の実施形態において必須ではない。
【0049】
複数の半導体素子120を覆うようにして半導体素子120の上方に透光性部材150Sを配置する前に、各半導体素子120の上面120a上、および/または、各凹部50rの底(半導体素子120の上面120aに対向させられる部分)に、透光性の接着剤160を配置しておいてもよい。半導体素子120と透光性部材150Sとの間に配置された接着剤160は、半導体素子120の上面120aの上方への透光性部材150Sの配置後に、光照射または加熱により硬化される。なお、透光性部材150S自体が、接着性を有する部材である場合には、半導体素子120と透光性部材150Sとの間への接着剤160の配置を省略することができる。
【0050】
(隣り合う半導体素子の間の位置で透光性部材を切断する工程)
半導体素子120の上面120aの上方への透光性部材150Sの配置後に、切断により、透光性部材150Sを複数の部分に分離してもよい。例えばダイシング装置により、第2支持体800上において互いに隣り合う2つの半導体素子120の間の位置で透光性部材150Sを切断する。切断によって分割された透光性部材150Sのそれぞれは、対応する半導体素子120の少なくとも上面120aを覆う透光性部材150を構成する。この切断の工程により、図10に示すように、それぞれが、透光性部材150と、半導体素子120としての発光素子とを含む複数の光源500を得ることができる。
【0051】
本開示の実施形態によれば、複数の半導体素子120が所定の配列で第2支持体800上に配置されるので、複数の半導体素子120の整列のための工程を別個に設ける必要が無い。そのため、製造コストを低減して、それぞれが1以上の半導体素子を含む半導体装置(例えば発光装置)を効率的に提供できる。整列された状態で複数の半導体素子120が第2支持体800上に固定されているので、切断位置を決めるためのアラインメントに要する時間も短縮し得る。なお、1つの透光性部材150に対して2以上の半導体素子が対応するように透光性部材150Sを分割してもよい。この場合、例えば、それぞれが2以上の発光素子を含む複数の発光装置を効率的に製造し得る。
【0052】
粘着性の表面を有する部材(例えばダイシングテープ)を第2支持体800に適用する場合、図11に例示するように、支持構造体200の上面200aに非粘着層230を配置してもよい。支持構造体200が上面200a側に非粘着層230を有することにより、支持構造体200からの第2支持体800の分離を容易とできる。本明細書において、「非粘着」は、それ自身が粘着性を有しないのみでなく、粘着性を有する他の部材に対して剥離が容易である性質を指す。非粘着層230の例は、剥離剤のコーティング、または、ポリエチレンテレフタラートなどの支持フィルム上にシリコーン樹脂などの易剥離性コートを施した離形フィルムである。剥離剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるフッ素樹脂などを用い得る。
【0053】
冷却により固化された支持媒体140を再び液体とした後、液体の支持媒体140を開口200hの内部から排出しながら、あるいは、開口200hの内部から排出した後に、第2支持体800の貼り付けなどの次の工程を実行してもよい。以下に説明するように、液化された支持媒体140の開口200hからの排出は、支持部材300を介した排出であってもよい。
【0054】
例えば図3に模式的に示すように、支持部材300の冷却プレート320は、冷媒を流すための流路FL1に加えて、真空引きのための流路FL2をも有し得る。流路FL2を介した真空引きにより、ポーラス板310を介して、上面310a上の支持媒体140を流路FL2内に吸引できる。吸引により、液化された支持媒体140を開口200hの内部からより早く除去し、半導体素子120を乾燥できる。開口200hの内部からの支持媒体140の排出後、支持構造体200に保持された、複数の半導体素子120の配列を得ることができる。
【0055】
上述したように、液体の支持媒体140への半導体素子120の浸漬の工程の前には、支持構造体200の各開口200hの内部への支持媒体140の配置が実行される(図3参照)。各開口200hの内部への支持媒体140の配置は、図3中に太い矢印で模式的に示すように、冷却プレート320の流路FL2から、ポーラス板310の内部を通してポーラス板310の上面310a側に液体の支持媒体140を供給することにより実行されてもよい。
【0056】
このように、流路FL2に、液体の支持媒体140を支持構造体200の各開口200hの内部に供給する機能を持たせることも可能である。流路FL2に分岐を設け、流路FL2の接続先をバルブによって切り替えることにより、流路FL2の機能を液体の支持媒体140の排出および供給の間で切り替え可能である。
【0057】
支持部材300の支持構造体200側の表面が粗面であると、液体の支持媒体140に対する支持部材300の濡れ性を向上させ得るので有益である。上述の例では、ポーラス板310の上面310aが支持部材300の支持構造体200側の表面に対応し、粗面であり得る。ポーラス板310の上面310aは、例えば、0.5μm以上5μm以下の範囲の算術平均高さSaを有し得る。
【0058】
液体の支持媒体140に対する濡れ性の向上により、支持構造体200の開口200h内を支持媒体140で満たしやすくなる。特に、支持構造体200が上面200a側に非粘着層230を有する場合、支持媒体140がはじかれるようになり、支持構造体200の上面200a側から液体の支持媒体140を開口200h内に注入しにくくなる場合がある。そのような場合でも、支持部材300の支持構造体200側の表面が粗面であると、平坦面である場合と比較して、開口200h内への液体の支持媒体140の注入が容易になり得る。
【0059】
なお、支持部材300上に配置される支持構造体200は、例えば400系ステンレス鋼から形成され得る。支持構造体200は、磁石などを利用した電磁チャックにより支持部材300上に一時的に固定され得る。
【0060】
以下、図面を参照しながら、本開示の他のある実施形態による例示的な製造方法を説明する。上述の実施形態では、複数の開口200hの設けられた支持構造体200の開口200h内に半導体素子120を配置している。以下に詳細に説明するように、支持構造体200に代えて、可動部を有する部材を支持構造体として利用してもよい。
【0061】
図12に示すように、本実施形態では、支持構造体200に代えて、複数の第1開口210hが設けられた上面210aを有する第1フレーム部材210と、複数の貫通孔220hを有する第2フレーム部材220とを含む支持構造体200Aを使用する。第2フレーム部材220は、第1フレーム部材210の上面210a上に配置される。
【0062】
図12に示す例では、第1フレーム部材210は、図3図8図11を参照しながら説明した例と同様に、支持部材300上に配置されている。第1フレーム部材210は、支持部材300の上面300a(ここではポーラス板310の上面310aに一致)に対向する下面210bと、下面210bとは反対側に位置する上面210aとを有する。また、第1フレーム部材210は、これらの面に加えて、少なくとも、第1開口210hの形状を規定する1以上の内側面210cを有する。各第1開口210hは、下面210b側が閉塞された穴部の態様で第1フレーム部材210に設けられてもよいし、図12に示すように、上面210a側から支持部材300の上面300aに達する貫通孔の態様で第1フレーム部材210に設けられてもよい。第1フレーム部材210は、電磁チャックにより支持部材300の上面300a上に一時的に固定され得る。
【0063】
第2フレーム部材220は、第1フレーム部材210の上面210aに対向する下面220bと、下面220bとは反対側に位置する上面220aと、貫通孔220hの形状を規定する1以上の内側面220cとを有する。図12に示すように、第2フレーム部材220は、第1フレーム部材210の複数の第1開口210hに複数の貫通孔220hが重なるようにして第1フレーム部材210の上面210a上に配置される。
【0064】
図12に例示する構成において、第2フレーム部材220の各貫通孔220hの内側面220cは、第1フレーム部材210の対応する第1開口210hの内側面210cに整合している。すなわち、この例では、第2フレーム部材220の貫通孔220hのそれぞれは、第1フレーム部材210の対応する第1開口210hと重なることにより、支持構造体200Aにおいて第1開口210hに連通する1つの開口200Ahを形成している。なお、本実施形態において、上面視における貫通孔220hの形状が第1開口210hの形状に一致していることは、必須ではない。上面視において、貫通孔220hは、第1開口210hを内側に包含するような、より大きなサイズを有していてもよい。
【0065】
第2フレーム部材220は、第1フレーム部材210の上面210aに平行な面内において第1フレーム部材210に対してスライド自在に上面210aに上に配置される。すなわち、支持構造体200Aにおいて、第2フレーム部材220は、第1フレーム部材210に対して相対的に移動可能な態様で第1フレーム部材210に支持される。
【0066】
第2フレーム部材220は、第1フレーム部材210よりも大きな厚さを有し得る。図12に示す例において、実線の両矢印T2で示す、第2フレーム部材220の厚さは、実線の両矢印T1で示す、第1フレーム部材210の厚さよりも大きい。第1フレーム部材210が例えば50~100μmの範囲の厚さを有することに対し、第2フレーム部材220は、例えば110~150μmの厚さを有し得る。支持構造体200Aにおいて第1フレーム部材210の上側に位置する第2フレーム部材220の厚さを相対的に大きくすることにより、重力による第2フレーム部材220のたわみを抑制し得る。
【0067】
なお、半導体素子120としての発光素子は、サファイア基板などの透光性基板と、透光性基板上の半導体積層体とを有し得る。この場合、透光性基板の厚さが、半導体素子120の厚さの大部分を占める。発光素子中の透光性基板の厚さは、第1フレーム部材210の厚さよりも大きく、第1フレーム部材210および第2フレーム部材220全体の厚さよりも小さい。発光素子中の透光性基板は、例えば140~150μmの範囲の厚さを有し得る。
【0068】
ここでは、半導体素子120の準備の後、図13に示すように、開口200Ahの内部を液体の支持媒体140で満たし、複数の開口200Ahのそれぞれに、複数の半導体素子120のうち対応する1つを配置している。すなわち、半導体素子集合体100の各半導体素子120を、支持構造体200Aの複数の開口200Ahのうち対応する1つの内部の支持媒体140に浸漬させている。
【0069】
液体の支持媒体140への半導体素子120の浸漬後、上述の実施形態と同様に、半導体素子120を支持媒体140に浸漬させた状態で、冷却によって支持媒体140を固化させる。また、支持媒体140の固化の後、図14に示すように、半導体素子集合体100の複数の半導体素子120から第1支持体110を分離する。その後、加熱により支持媒体140を液化させる。
【0070】
本実施形態では、支持媒体140の液化後に、第1フレーム部材210および第2フレーム部材220の少なくとも一方を第1フレーム部材210の上面210aに平行に移動させる。ここでは、第1フレーム部材210が磁力などにより支持部材300に一時的に固定された状態であるので、第2フレーム部材220を第1フレーム部材210の上面210a上で所定の方向、例えば図15に示すように、図の-X方向にスライドさせる。なお、支持媒体140を除去した後に、第1フレーム部材210および第2フレーム部材220の少なくとも一方を第1フレーム部材210の上面210aに平行に移動させてもよい。
【0071】
第1フレーム部材210に対する第2フレーム部材220の相対的な移動により、半導体素子120の側面120cが第2フレーム部材220の内側面220cに接触する。その後、第2フレーム部材220の-X方向への移動に伴い、第2フレーム部材220の内側面220cに押されることにより、半導体素子120が各開口200Ahの内部で-X方向に移動する。
【0072】
半導体素子120の移動は、半導体素子120の側面120cが第1フレーム部材210の内側面210cに接触したところで終了する。各開口200Ahの内部での半導体素子120の移動により、複数の半導体素子120の配置を第1フレーム部材210の第1開口210hの配置に揃えることができる。
【0073】
本実施形態によれば、複数の半導体素子120をそれぞれ第2フレーム部材220の複数の貫通孔220hの内側面220cに接触させることにより、半導体素子120を整列させることが可能である。このように、第1フレーム部材210および第2フレーム部材220の少なくとも一方のスライド移動を利用することにより、複数の半導体素子120を一斉に移動させ整列できる。したがって、複数の開口(例えば第1フレーム部材210の第1開口210h)の配置に対応した、複数の半導体素子120の配列をより確実に得ることが可能である。
【0074】
第1フレーム部材210上での第2フレーム部材220のスライド移動は、流路FL2を介した真空引きを実行しながら、実行されてもよい。複数の半導体素子120をポーラス板310の上面310aに吸着させながら第2フレーム部材220の移動を実行することにより、第2フレーム部材220に押された半導体素子120が第1フレーム部材210に乗りあがってしまうことを回避し得る。
【0075】
ここで、第1フレーム部材210に対する第2フレーム部材220の相対的なスライド移動の例を説明する。図16は、支持構造体200Aに形成された複数の開口200Ahのうちの1つと、その内部に配置された半導体素子120とを取り出して模式的に示す。図16に示す第1の例では、開口200Ahは、第1フレーム部材210の上面210aに垂直に見た上面視において矩形状を有している。すなわち、複数の第1開口210hのそれぞれ、および、複数の貫通孔220hのそれぞれの上面視形状は、ここでは、矩形状である。また、この例では、半導体素子120の下面120bも上面視において矩形状を有している。
【0076】
複数の半導体素子120から第1支持体110を分離して支持媒体140を液化させた後、図17に模式的に示すように、第1フレーム部材210の上面210a上で第2フレーム部材220を第1フレーム部材210に対してスライドさせる。この例では、第2フレーム部材220の移動の方向は、第1フレーム部材210の第1開口210hの矩形状の対角に平行である。
【0077】
第1開口210hの矩形状の対角方向に沿った、第2フレーム部材220の移動により、第1開口210h内の半導体素子120の矩形状の2辺が、第2フレーム部材220の貫通孔220hの矩形状の2辺と接触する。第1フレーム部材210に対する第2フレーム部材220の移動により、貫通孔220hを規定する内側面220cに押された半導体素子120は、第1開口210hの内部で図の-X方向に移動する。すなわち、半導体素子120は、第1開口210hの内部で第1開口210hの矩形状の第1の角部C1から、第1の角部C1に対向する第2の角部C2に向かって、矩形状の対角方向に移動する。
【0078】
第2フレーム部材220の移動に伴う半導体素子120の移動は、半導体素子120の矩形状の他の2辺が、第1開口210hの矩形状の第2の角部C2を形成する2辺に接触するまで実行される。言い換えれば、第1フレーム部材210および第2フレーム部材220間の相対移動は、第1開口210hおよび貫通孔220hの重なりの形状が、半導体素子120の矩形状におおむね一致したところで終了する。
【0079】
第2フレーム部材220の移動に伴う半導体素子120の移動は、支持構造体200Aの各開口200Ahの内部で一斉に生じる。本実施形態によれば、第1フレーム部材210および第2フレーム部材220間の相対移動を利用して複数の半導体素子120を所定の配列に整列できる。本例のように第1フレーム部材210の第1開口210hおよび第2フレーム部材220の貫通孔220hが矩形状を有する場合には、矩形状の角部を各半導体素子120の位置決めに利用できる。
【0080】
第1フレーム部材210上の第2フレーム部材220の移動は、図16および図17に示す第1の例のような単一の方向に限定されない。図18および図19は、第1フレーム部材210に対する第2フレーム部材220の相対的なスライド移動の第2の例を示す。ここでは、第1の例と同様に、第1フレーム部材210の第1開口210h、第2フレーム部材220の貫通孔220h、および、半導体素子120の下面120bのいずれもが、上面視において矩形状を有すると仮定している。
【0081】
第2の例においても、第2フレーム部材220の移動により、支持構造体200Aの開口200Ah内の半導体素子120を、第1の例と同様に第1開口210hの矩形状の対角方向に移動させる。ただし、この例では、半導体素子120をXY面内のある方向に沿って移動させた後、他のある方向に沿って移動させる。すなわち、XY面内での半導体素子120の移動が二段階で実行される点で第1の例と異なる。
【0082】
ここでは、第1開口210hの矩形状を規定する辺は、図のX方向またはY方向のいずれかに平行である。まず、第1開口210hの矩形状の第1の辺21Sに沿って第2フレーム部材220を第1フレーム部材210上で移動させる。図18に示す例では、第1フレーム部材210に対して第2フレーム部材220を図の-X方向に相対的に移動させている。図の-X方向への第2フレーム部材220の移動により、貫通孔220hの内側面220cに押された半導体素子120も図の-X方向に移動させられる。
【0083】
続けて、第1の辺S21に垂直な、第1開口210hの矩形状の第2の辺S22に沿って第2フレーム部材220を第1フレーム部材210上で移動させる。ここでは、図19に示すように、第1フレーム部材210に対して第2フレーム部材220を図の-Y方向に相対的に移動させている。図の-Y方向への第2フレーム部材220の移動により、貫通孔220hの内側面220cに押された半導体素子120も図の-Y方向に移動させられる。その結果、第1の例と同様に、第1開口210hの矩形状および貫通孔220hの矩形状の角部を利用して、各半導体素子120を位置決めできる。
【0084】
このように、各半導体素子120の第1の方向への移動と第2の方向への移動とを順次に実行することにより、第1および第2の方向の両方に関して効果的な位置決めを実現できる。第1の例と同様に、第2の例によっても、第1フレーム部材210および第2フレーム部材220間の相対移動を利用して複数の半導体素子120を所定の配列に整列可能である。
【0085】
図6を参照しながら説明した例と同様に、複数の半導体素子120からの第1支持体110の分離後、支持媒体140の液化の前に、支持構造体200A上に押さえ板400を配置してもよい。この場合、支持媒体140の液化および開口200Ah内部からの排出は、支持構造体200A上への押さえ板400の配置後に実行され得る。流路FL2を介した支持媒体140の吸引を利用することにより、支持構造体200A上に押さえ板400を配置した状態であっても、開口200Ah内の半導体素子120を乾燥させやすい。
【0086】
図20に示す例では、支持構造体200Aに保持された複数の半導体素子120を押さえ板400で覆った状態で、第1フレーム部材210に対する第2フレーム部材220の移動による、半導体素子120の整列を実行している。第2フレーム部材220の相対的な移動による、半導体素子120の整列は、開口200Ah内部からの支持媒体140の排出後に実行されてもよい。第1フレーム部材210に対する第2フレーム部材220の相対的な移動に先立ち、複数の半導体素子120の下面120bを押さえ板400で覆っておくことにより、第1フレーム部材210および第2フレーム部材220の少なくとも一方の移動に起因する、整列時の半導体素子120の浮き上がりの発生を押さえ板400によって抑制できる。
【0087】
この場合も、押さえ板400の下面400bが粗面であると、押さえ板400への半導体素子120の付着を抑制できるので有益である。なお、本実施形態では、各半導体素子120が第1フレーム部材210および第2フレーム部材220によって保持されている。そのため、支持構造体200Aから押さえ板400を分離した際に押さえ板400とともに半導体素子120まで持ち上がってしまうことが生じにくいという利点もある。
【0088】
図21に示すように、押さえ板400に代えて、複数の半導体素子120の下面120bと対向させられる側に導電膜420を有する押さえ板400Aを使用してもよい。押さえ板が導電膜420を有することにより、帯電による、押さえ板への半導体素子120の付着を抑制できる。
【0089】
図22は、支持構造体のさらに他の例を示す。図22に示す支持構造体200Bは、第1フレーム部材210および第2フレーム部材220Bの積層構造を有する。第2フレーム部材220Bは、第1フレーム部材210の上面210aと対向する下面220bと、下面220bとは反対側の上面220aとを有する。支持構造体200Bは、第2フレーム部材220Bの上面220aに配置された、上述の非粘着層230と同様の非粘着層230Bを有する。
【0090】
第1フレーム部材210および第2フレーム部材220間の相対移動によって複数の半導体素子120の所定の配列を得た後、半導体素子120の下面120bには、粘着性の第2支持体800が貼り付けられ得る。第2フレーム部材220Bが上面220a側に非粘着層230Bを有することにより、第2フレーム部材220Bの全体を覆うようにして、複数の半導体素子120の下面120bと、第2フレーム部材220Bとの両方に第2支持体800を貼りつけた場合であっても、第2フレーム部材220Bから第2支持体800を剥離しやすい。すなわち、第2フレーム部材220Bの上面220aへの非粘着層230の配置は、複数の半導体素子120の第2支持体800への一括した転写を容易にする。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本開示の実施形態は、発光装置の製造に限定されず、半導体素子を含む種々の装置の製造に適用可能である。本開示の実施形態は、複数の半導体素子の所定の配置での一括した転写を容易にするので、本開示の実施形態によれば、それぞれが半導体素子を含む複数の半導体装置をより効率的に製造可能である。
【符号の説明】
【0092】
100…半導体素子集合体、110…第1支持体、120…半導体素子、140…支持媒体、200…支持構造体、200h…開口、500…(半導体装置としての)光源
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