(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】送信装置及び受信装置、並びにチップ
(51)【国際特許分類】
H04L 1/08 20060101AFI20240619BHJP
H04L 1/00 20060101ALI20240619BHJP
H04L 1/04 20060101ALI20240619BHJP
H04L 27/26 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
H04L1/08
H04L1/00 B
H04L1/04
H04L27/26 113
(21)【出願番号】P 2019220950
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100143568
【氏名又は名称】英 貢
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 宏明
(72)【発明者】
【氏名】竹内 知明
(72)【発明者】
【氏名】神原 浩平
(72)【発明者】
【氏名】岡野 正寛
(72)【発明者】
【氏名】川島 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】井地口 朋也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明彦
(72)【発明者】
【氏名】蔀 拓也
(72)【発明者】
【氏名】白井 規之
(72)【発明者】
【氏名】中戸川 剛
(72)【発明者】
【氏名】土田 健一
【審査官】谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-078556(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0119919(US,A1)
【文献】国際公開第2018/008427(WO,A1)
【文献】特開2011-086985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 1/00-1/08
H04L 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上デジタル放送方式における低遅延伝送チャンネルのキャリアを多重したOFDM信号を生成して送信する送信装置であって、
前記低遅延伝送チャンネルを第1及び第2のセグメント領域に分け、各セグメント領域を用いて伝送するデータに対しそれぞれ第1及び第2の
LDPC符号化処理を施した誤り訂正ブロックを生成する符号化器と、
前記
第1及び第2のLDPC符号化処理を施した各セグメント領域を用いて伝送する誤り訂正ブロックに対しそれぞれDBPSK変調を施したLLchキャリアを第1及び第2のLLchキャリアとして生成するDBPSK変調部と、
受信側でキャリア合成によるダイバーシティ効果をもたらすために、前記第1のLLchキャリアについては前記第1のセグメント領域内で、前記第2のLLchキャリアについては第2のセグメント領域内で、シンボル方向に同内容の誤り訂正ブロックのLLchキャリアを予め定めた本数の範囲内で選択的に割り当てることを許容して、1本以上8本以下のLLchキャリアを出力するLLchキャリア合成用割当部と、
前記1本以上8本以下のLLchキャリアを多重したOFDM信号を生成して送信するOFDM変調部と、を備え
、
前記符号化器は、
前記低遅延伝送チャンネルに割り当てられる所定数のセグメントのうち、中央の部分受信帯域とする前記第1のセグメント領域を用いて伝送するデータに対して第1のLDPC符号化率の前記第1のLDPC符号化処理を施す第1のLDPC符号化手段と、
前記低遅延伝送チャンネルに割り当てられる所定数のセグメントのうち、前記部分受信帯域以外の非部分受信帯域とする前記第2のセグメント領域を用いて伝送するデータに対して第2のLDPC符号化率の前記第2のLDPC符号化処理を施す第2のLDPC符号化手段と、を備え、
前記第1のLDPC符号化処理と前記第2のLDPC符号化処理によるそれぞれの符号長は同一符号長とし、
前記第1のLDPC符号化率は、0.1以上0.2未満で構成され、前記第2のLDPC符号化率は、0.8以上1.0未満で構成されていることを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記第1のLDPC符号化率は144/1224で構成され、前記第2のLDPC符号化率は1016/1224で構成されていることを特徴とする、請求項
1に記載の送信装置。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の送信装置からOFDM変調信号を受信してOFDM復調処理を施すOFDM復調部と、
前記OFDM復調後の信号から前記第1のLLchキャリアと前記第2のLL
chキャリアのうち少なくとも一方のLL
chキャリアを1本以上8本以下の範囲内で抽出し、1本のLL
chキャリアのみを抽出したときは当該1本のLL
chキャリアを出力し、複数本のLL
chキャリアを抽出したときは選択的にキャリア合成した1本のLL
chキャリアを出力するLLchキャリア抽出・合成部と、
前記LLchキャリア抽出・合成部を経て得られるLLchキャリアについてDBPSK復調を施しLLchシンボルを抽出するDBPSK復調部と、
前記DBPSK復調部により抽出されたLLchシンボルについてLDPC符号に基づく復号処理を行って前記送信装置から伝送されたデータに対応するビット列を復元する復号器と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項4】
前記復号器は、前記符号化器により前記第1のLDPC符号化処理を施して符号化したデータを
前記第1のLDPC符号化率の検査行列を用いてLDPC復号する手段と、前記符号化器により前記第2のLDPC符号化処理を施して符号化したデータを
前記第2のLDPC符号化率の検査行列を用いてLDPC復号する手段と、を備えることを特徴とする、請求項
3に記載の受信装置。
【請求項5】
請求項1
又は2に記載の送信装置
を備えることを特徴とするチップ。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の受信装置を備えることを特徴とするチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星放送及び地上放送並びに固定通信及び移動通信の技術分野に関するものであり、特に、次世代地上放送における低遅延伝送チャンネル(LLch:Low Latency Channel)のデジタルデータの送信装置及び受信装置、並びにチップに関する。
【背景技術】
【0002】
現行の地上デジタル放送方式ISDB-Tでは、AC(Auxiliary Channel)を用いたデータ伝送が可能であり、ACを用いた低遅延伝送が求められる緊急地震速報の伝送方式がARIB-STD B31で規定されている。ISDB-Tによる地上デジタル放送は、1チャンネル分の周波数帯域幅(約6MHz)を13セグメントに分けてデータ伝送可能とするが、AC伝送は、その13セグメントの中央1セグメント(8キャリア)を用いて低遅延伝送を実現するものとなっており、誤り訂正符号として差集合巡回符号(273,191)が採用されている。
【0003】
図8(a),(b)は、それぞれ従来技術の地上デジタル放送方式ISDB-TにおけるAC伝送データの送信装置100及び受信装置200の概略構成を示すブロック図である。
【0004】
送信装置100は、差集合巡回符号化部101、DBPSK変調部102、及びOFDM変調部103を備える。
【0005】
差集合巡回符号化部101は、差集合巡回符号化部101は入力されるAC伝送データに対して、差集合巡回符号(273,191)による誤り訂正処理を施し、誤り訂正パリティが付加されたAC伝送データを生成してDBPSK変調部102に出力する。
【0006】
DBPSK変調部102は、差集合巡回符号化部101による誤り訂正パリティが付加されたAC伝送データに対して、DBPSK(Differential Phase Shift Keying)変調によるシンボルマッピングを経てACキャリアを生成し、OFDM変調部103に出力する。
【0007】
OFDM変調部103は、ACキャリアと、3階層のデータキャリアと、伝送制御信号であるTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)キャリアとを直交周波数分割多重してOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調信号を生成し、外部に出力する。尚、OFDM変調部103は、13セグメントの中央1セグメント(8キャリア)を用いて、その8キャリアで同内容のACキャリアを伝送する。
【0008】
受信装置200は、OFDM復調部201、ACキャリア抽出部202、DBPSK復調部203、及び差集合巡回符号復号部204を備える。
【0009】
OFDM復調部201は、送信装置100から送信されたOFDM変調信号を受信してOFDM復調処理を施し、OFDM復調後の信号をACキャリア抽出部202に出力する。
【0010】
ACキャリア抽出部202は、外部からのAC指定に基づき、OFDM復調後の信号からACキャリアを抽出し、DBPSK復調部203に出力する。
【0011】
DBPSK復調部203は、ACキャリア抽出部202を経て得られるACキャリアについて、DBPSKに基づくシンボルデマッピングを経てDBPSK復調してACシンボルを抽出し、差集合巡回符号復号部204に出力する。
【0012】
差集合巡回符号復号部204は、抽出されたACシンボルから、尤度判定に基づき誤り訂正パリティが付加されたAC伝送データを再構成し、差集合巡回符号(273,191)に基づく復号処理を行って送信側のAC伝送データに対応する出力ビット列を復元し、外部に出力する。
【0013】
このように、現行の地上デジタル放送方式ISDB-TにおけるAC伝送は、13セグメントの中央1セグメント(8キャリア)を用いて低遅延伝送を実現するものとなっており、誤り訂正符号として差集合巡回符号(273,191)が採用されている。
【0014】
ところで、信号対雑音比に対する周波数利用効率の理論的な上限値はシャノン限界と呼ばれる。本願明細書では、変調信号が達成可能な通信容量を便宜的にシャノン限界とする。そして、4K・8Kスーパーハイビジョン衛星放送の伝送方式を規定するARIB STD-B44では、デジタル伝送の誤り訂正符号としてLDPC符号が採用されている(例えば、非特許文献1参照)。LDPC符号は、非常に疎な検査行列H(検査行列の要素が0と1からなり、且つ1の数が非常に少ない)により定義される線形符号である。
【0015】
LDPC符号は、適切な検査行列を用いることにより、一般的には符号長を大きくすればするほどシャノン限界に迫る伝送特性が得られる強力な誤り訂正符号であり、次世代の地上デジタル放送方式においても、デジタル伝送の誤り訂正符号としてLDPC符号を用いることが検討されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0016】
そして、次世代の地上デジタル放送方式では、1チャンネル分の周波数帯域幅(約6MHz)を35セグメントに分けてデータ伝送可能とし、FFTポイント数として8K,16K,32Kの3種類が想定され、主信号を為すデータキャリアに対しては、内符号にLDPC符号、外符号にBCHを用いることが検討されている。
【0017】
ただし、次世代の地上デジタル放送方式においては、ACの代わりにデジタルデータの低遅延伝送を目的としたLLchを設定し、OFDM信号に多重する1階層として割り当てることが検討されている。LLchの誤り訂正方式の具体的な構成についは、未だ検討段階にある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【文献】“高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式 標準規格 ARIB STD-B44 2.1版、平成28年3月25日改定、一般社団法人 電波産業会(ARIB)
【文献】中村円香、“次世代地上放送の実現に向けた研究開発”、NHK技研 R&D No.158 2016年8月35日、 [online]、[令和1年11月11日検索]、インターネット〈https://www.nhk.or.jp/strl/publica/rd/rd158/PDF/P28-35.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述したように、現行の地上デジタル放送方式ISDB-Tでは、緊急地震速報等の低遅延伝送が求められる用途のために、ACを用いたデータ伝送が可能であるが、そのAC伝送を行う送信装置側では、白色雑音に対する耐性を強くするため、中央1セグメント(8キャリア)は同じ内容のデータを伝送しており、このため、AC伝送されたデータを受信する受信装置側では、ダイバーシティ効果が得られる。一方で、そのAC伝送は、低遅延伝送とはいえ1フレーム(231.336ms,mode=3,GI=1/8の場合)分の伝送遅延が生じるものとなっており、より低遅延伝送することを可能とする技法が求められている。
【0020】
また、現行の地上デジタル放送方式ISDB-TにおけるAC伝送は、TMCC伝送と同じく、誤り訂正符号として差集合巡回符号(273,191)が採用されている。この差集合巡回符号は、比較的短い符号で優れた性能を有するが、符号化率を任意に変更できないため、用途に応じた符号の調整又は選択ができない(即ち、用途に応じて白色雑音に対する耐性と伝送遅延のバランスを取る調整又は選択ができない)。例えば低遅延伝送が求められる用途としては、緊急地震速報以外にも、各事業者が要望する任意の音声の伝送等がある。このため、これらの種々の用途に応じて、白色雑音に対する耐性を犠牲にして、伝送遅延をより少なくする等の調整又は選択を可能する技法が望まれる。
【0021】
そこで、次世代の地上デジタル放送方式において、ACの代わりにデジタルデータの低遅延伝送を目的としたLLchの誤り訂正方式としてLDPC符号の採用が想定される。LDPC符号は、優れた伝送性能を有するだけでなく、符号化率を可変設定することが可能であることから、用途に応じて白色雑音に対する耐性と伝送遅延のバランスを取る調整又は選択が可能となる。一方で、LDPC符号は、符号長を大きくすればするほどシャノン限界に迫る伝送特性が得られるという性質を有するが、符号長を大きくすればするほど伝送遅延が大きくなるという問題がある。
【0022】
このため、LLchの誤り訂正方式としてLDPC符号を採用するとしても、従来のAC伝送より低遅延化を実現しつつ白色雑音に対する耐性を向上させた上で低遅延化と白色雑音に対する耐性とのバランスを調整又は選択可能とする技法が求められる。
【0023】
本発明の目的は、上述の問題に鑑みて、地上デジタル放送方式における低遅延伝送チャンネル(LLch)のデータ伝送について、より低遅延化を実現しつつ白色雑音に対する耐性を向上させた上で低遅延化と白色雑音に対する耐性とのバランスを調整又は選択可能とする送信装置及び受信装置、並びにチップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明による送信装置は、地上デジタル放送方式における低遅延伝送チャンネルのキャリアを多重したOFDM信号を生成して送信する送信装置であって、前記低遅延伝送チャンネルを第1及び第2のセグメント領域に分け、各セグメント領域を用いて伝送するデータに対しそれぞれ第1及び第2のLDPC符号化処理を施した誤り訂正ブロックを生成する符号化器と、前記第1及び第2のLDPC符号化処理を施した各セグメント領域を用いて伝送する誤り訂正ブロックに対しそれぞれDBPSK変調を施したLLchキャリアを第1及び第2のLLchキャリアとして生成するDBPSK変調部と、受信側でキャリア合成によるダイバーシティ効果をもたらすために、前記第1のLLchキャリアについては前記第1のセグメント領域内で、前記第2のLLchキャリアについては第2のセグメント領域内で、シンボル方向に同内容の誤り訂正ブロックのLLchキャリアを予め定めた本数の範囲内で選択的に割り当てることを許容して、1本以上8本以下のLLchキャリアを出力するLLchキャリア合成用割当部と、前記1本以上8本以下のLLchキャリアを多重したOFDM信号を生成して送信するOFDM変調部と、を備え、前記符号化器は、前記低遅延伝送チャンネルに割り当てられる所定数のセグメントのうち、中央の部分受信帯域とする前記第1のセグメント領域を用いて伝送するデータに対して第1のLDPC符号化率の前記第1のLDPC符号化処理を施す第1のLDPC符号化手段と、前記低遅延伝送チャンネルに割り当てられる所定数のセグメントのうち、前記部分受信帯域以外の非部分受信帯域とする前記第2のセグメント領域を用いて伝送するデータに対して第2のLDPC符号化率の前記第2のLDPC符号化処理を施す第2のLDPC符号化手段と、を備え、前記第1のLDPC符号化処理と前記第2のLDPC符号化処理によるそれぞれの符号長は同一符号長とし、前記第1のLDPC符号化率は、0.1以上0.2未満で構成され、前記第2のLDPC符号化率は、0.8以上1.0未満で構成されていることを特徴とする。
【0026】
また、本発明による送信装置において、前記第1のLDPC符号化率は144/1224で構成され、前記第2のLDPC符号化率は1016/1224で構成されていることを特徴とする。
【0027】
更に、本発明による受信装置は、本発明の送信装置からOFDM変調信号を受信してOFDM復調処理を施すOFDM復調部と、前記OFDM復調後の信号から前記第1のLLchキャリアと前記第2のLLchキャリアのうち少なくとも一方のLLchキャリアを1本以上8本以下の範囲内で抽出し、1本のLLchキャリアのみを抽出したときは当該1本のLLchキャリアを出力し、複数本のLLchキャリアを抽出したときは選択的にキャリア合成した1本のLLchキャリアを出力するLLchキャリア抽出・合成部と、前記LLchキャリア抽出・合成部を経て得られるLLchキャリアについてDBPSK復調を施しLLchシンボルを抽出するDBPSK復調部と、前記DBPSK復調部により抽出されたLLchシンボルについてLDPC符号に基づく復号処理を行って前記送信装置から伝送されたデータに対応するビット列を復元する復号器と、を備えることを特徴とする。
【0028】
また、本発明による受信装置において、前記復号器は、前記符号化器により前記第1のLDPC符号化処理を施して符号化したデータを前記第1のLDPC符号化率の検査行列を用いてLDPC復号する手段と、前記符号化器により前記第2のLDPC符号化処理を施して符号化したデータを前記第2のLDPC符号化率の検査行列を用いてLDPC復号する手段と、を備えることを特徴とする。
【0029】
更に、本発明によるチップは、本発明による送信装置を備えることを特徴とする。
更に、本発明によるチップは、本発明による受信装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、次世代の地上デジタル放送における低遅延伝送チャンネル(LLch)の伝送について、現行の地上デジタル放送ISDB-TのAC伝送と比較して、大幅に遅延量を削減すると共に、誤り訂正符号にLDPC符号を用いることで雑音耐性も向上させた上で低遅延化と白色雑音に対する耐性とのバランスを調整又は選択可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による一実施例の低遅延伝送チャンネル(LLch)伝送データの送信装置の主要な構成要素のみを概略的に示すブロック図である。
【
図2】本発明による一実施例の低遅延伝送チャンネル(LLch)伝送データの受信装置の主要な構成要素のみを概略的に示すブロック図である。
【
図3】(a),(b)は、それぞれ本発明による低遅延伝送チャンネルに割り当てられる所定数のセグメントのうち、中央の部分受信帯域とする第1のセグメント領域を用いて伝送するデータ(L0ch伝送データ)に対して形成する符号長1224ビットのLDPC符号に係る一実施例のLDPC符号化率144/1224の誤り訂正ブロックの構成と、低遅延伝送チャンネルに割り当てられる所定数のセグメントのうち、部分受信帯域以外の非部分受信帯域とする第2のセグメント領域を用いて伝送するデータ(L1ch伝送データ)に対して形成する符号長1224ビットのLDPC符号に係る一実施例のLDPC符号化率1016/1224の誤り訂正ブロックの構成を示す図である。
【
図4】本発明によるL0ch伝送データのビット割り当てとして、LLchキャリアに関するOFDMフレームの構成(FFTポイント数として16kFFT時)を示す図である。
【
図5】(a),(b),(c)は、本発明によるL0ch伝送データのビット割り当てとして、FFTポイント数毎のLLchキャリアに関するOFDMフレームの構成を簡易的に示す図である。
【
図6】本発明によるL1ch伝送データのビット割り当てとして、LLchキャリアに関するOFDMフレームの構成(FFTポイント数として16kFFT時)を示す図である。
【
図7】本発明によるL0ch伝送データにおける調整又は選択可能とする雑音耐性と伝送遅延の特性を示す図である。
【
図8】(a),(b)は、それぞれ従来技術の地上デジタル放送方式ISDB-TにおけるAC伝送データの送信装置及び受信装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して、本発明による一実施例の低遅延伝送チャンネル(LLch)伝送データの送信装置1及び受信装置2を説明する。本発明による一実施例の伝送システムは、次世代地上放送伝送方式を想定した
図1に示す送信装置1、及び
図2に示す受信装置2から構成され、次世代地上放送伝送方式で用いる低遅延伝送チャンネル(LLch)伝送データの誤り訂正方式としてLDPC符号を採用し、尚且つ、2種類のセグメント領域に分けて、それぞれに前方誤り訂正符号として最適化したものとなっている。
【0033】
まず、
図1を参照して、本発明による一実施例の送信装置1について説明する。
【0034】
〔送信装置〕
図1は、本発明による一実施例の低遅延伝送チャンネル(LLch)伝送データの送信装置1の主要な構成要素のみを概略的に示すブロック図である。送信装置1は、符号化器10(第1のLDPC符号化部11、及び第2のLDPC符号化部12)、DBPSK変調部13、LLchキャリア合成用割当部14、LLchキャリア合成数制御部15、及びOFDM変調部16を備える。そして、送信装置1は、LLch伝送データを2種類のセグメント領域に分けて送信するように構成され、後述する
図3に示した誤り訂正ブロックの信号を生成してからOFDM変調信号を生成するまでの一連の処理を行う。また、送信装置1は、LLch伝送データの変調方式及び符号化率といった伝送に関するパラメータをTMCC信号に含めて伝送する形態とすることができるが、本例では、LLch伝送データの変調方式及び符号化率については、
図1に示す送信装置1及び
図2に示す受信装置2の送受間で予め定めておき、受信装置2がTMCC信号の復調・復号処理を経ることなく、LLch伝送データの復調・復号処理を行う例を説明する。
【0035】
尚、次世代の地上デジタル放送方式においては、ACの代わりにデジタルデータの低遅延伝送を目的としたLLchを設定し、OFDM信号に多重する1階層として割り当てることが想定されている。このため、
図1に示す送信装置1は、主信号を為すデータキャリア及び伝送制御信号であるTMCCキャリアとは独立して、LLch伝送データの搬送波を為すLLchキャリアを直交周波数分割多重してOFDM変調信号を生成するものとしている。従って、LLchキャリアは、TMCCキャリアと同様に、主信号を為すデータキャリアとは独立して、受信装置2に対し伝送することが可能である。
【0036】
そして、
図1に例示する送信装置1は、LLchに割り当てられる所定数のセグメント(35セグメント)のうち、中央の部分受信帯域とする第1のセグメント領域(9セグメント)を用いて伝送するデータ(L0ch伝送データ)に対して第1のLDPC符号化率144/1224の検査行列Hを用いて第1のLDPC符号化処理を施す第1のLDPC符号化部11と、当該部分受信帯域以外の非部分受信帯域とする第2のセグメント領域(26セグメント)を用いて伝送するデータ(L1ch伝送データ)に対して第2のLDPC符号化率1016/1224の検査行列を用いて第2のLDPC符号化処理を施す第2のLDPC符号化部12と、を備える符号化器10を有する。以後、
図1に示す送信装置1の各構成要素について説明する。
【0037】
第1のLDPC符号化部11は、LLchの中央の部分受信帯域とする第1のセグメント領域(9セグメント)を用いて伝送するL0ch伝送データのビット列(144ビットの情報ビット)を入力して、第1のLDPC符号化率144/1224の検査行列Hを用いて第1のLDPC符号化処理を施し、LDPCパリティが付加されたL0ch伝送データを有する誤り訂正ブロックを構成し、DBPSK変調部13に出力する。
【0038】
尚、第1のLDPC符号化部11は、検査行列の部分行列で予め指定する順序で、LDPCパリティのビット入れ替えを行うパリティインターリーブ機能を有する構成とすることができる。
【0039】
第2のLDPC符号化部12は、LLchの非部分受信帯域とする第2のセグメント領域(26セグメント)を用いて伝送するL1ch伝送データのビット列(1016ビットの情報ビット)を入力して、第2のLDPC符号化率1016/1224の検査行列Hを用いて第2のLDPC符号化処理を施し、LDPCパリティが付加されたL1ch伝送データを有する誤り訂正ブロックを構成し、DBPSK変調部13に出力する。尚、本例の第2のLDPC符号化部12は、LDPCパリティのビット入れ替えを行うパリティインターリーブ機能を有する構成とすることができる。
【0040】
図3(a)は、本発明による低遅延伝送チャンネルに割り当てられる所定数のセグメント(35セグメント)のうち、中央の部分受信帯域とする第1のセグメント領域(9セグメント)を用いて伝送するデータ(L0ch伝送データ)に対して形成する符号長1224ビットのLDPC符号に係る一実施例のLDPC符号化率144/1224の誤り訂正ブロックの構成を示す図である。また、
図3(b)は、本発明による低遅延伝送チャンネルに割り当てられる所定数のセグメント(35セグメント)のうち、部分受信帯域以外の非部分受信帯域とする第2のセグメント領域(26セグメント)を用いて伝送するデータ(L1ch伝送データ)に対して形成する符号長1224ビットのLDPC符号に係る一実施例のLDPC符号化率1016/1224の誤り訂正ブロックの構成を示す図である。
【0041】
図3(a),(b)にそれぞれ示すように、第1のLDPC符号化部11における第1のLDPC符号化率144/1224によるL0ch伝送データの誤り訂正ブロックと、第2のLDPC符号化部12における第2のLDPC符号化率1016/1224によるL1ch伝送データの誤り訂正ブロックは、それぞれのLDPC符号化率に応じて入力ビット列を所定の長さに区切ることで構成される。例えば、
図3(a)に示すLDPC符号化率144/1224の誤り訂正ブロックについては、L0ch伝送データの入力ビット列は、情報ビット長として144ビット毎に区切られ、都度、後続する機能ブロックに出力される。
【0042】
また、各誤り訂正ブロックのいずれの符号長について、いずれもLDPC符号に基づく符号長1224ビットとし、誤り訂正ブロックの符号長単位を共通化して不必要な処理負担を軽減させている。更に、一般にLDPC符号は、1000ビット以上の符号長とすることでターボ符号よりも性能が向上することが知られており、一方で、低遅延伝送とするためにはできる限り短い符号長とすることが好ましため、1224ビットの符号としている。また、L0chでは9セグメントとすることから1セグメントあたり8本のキャリアであることを考慮して72の倍数として定めている。この条件を満たす符号長としては、1224ビットとする以外にも、より低遅延伝送とするには、1008ビット、1080ビット、又は1152ビット等の選択肢があるが、差集合巡回符号又はリードソロモン符号よりも性能向上を図ることは元より、確実にターボ符号よりも性能が向上する構成として1224ビットを選定している。
【0043】
また、L0ch伝送データの第1のLDPC符号化率は、緊急地震速報の伝送を考慮すると極めて低CN比でも受信可能とすることが求められることから、0.1以上0.2未満とし、このため、
図3(a)に示すように、144ビットの情報ビットで構成している。また、L1ch伝送データの第2のLDPC符号化率は、音声の伝送を考慮すると伝送データのビットレートが48kbpsを満たすことが求められることから、0.8以上1.0未満とし、このため、
図3(b)に示すように、1016ビットの情報ビットで構成している。このように、本発明に係る送信装置1は、用途に応じたLDPC符号化率を適用できるように、2種類のセグメント領域に分けており、用途に応じて適切な符号化率を選定している。
【0044】
DBPSK変調部13は、それぞれLDPCパリティが付加されたL0ch伝送データ及びL1ch伝送データの誤り訂正ブロックに対して、DBPSK変調によるシンボルマッピングを経てLLchキャリアを生成し、LLchキャリア合成用割当部14に出力する。
【0045】
LLchキャリア合成用割当部14は、詳細は後述するが、受信装置2側でキャリア合成によるダイバーシティ効果をもたらすために、LLchキャリア合成数制御部15からのキャリア割り当て本数の指示に従い、LLchキャリアとして、L0キャリアについては第1のセグメント領域(9セグメント)内で、L1キャリアについては第2のセグメント領域(26セグメント)内で、シンボル方向に同内容の誤り訂正ブロックのLLchキャリアを予め定めた本数の範囲内(例えば1本、2本、4本、及び8本のうちいずれかの本数)で選択的に割り当てることを許容して、1本以上8本以下のLLchキャリアをOFDM変調部16に出力する。
【0046】
LLchキャリア合成数制御部15は、LLchキャリア合成用割当部14に対して、受信装置2側でキャリア合成によるダイバーシティ効果をもたらすために、キャリア割り当て本数の指示を行う機能部である。このキャリア割り当て本数は、本発明を利用する利用者が任意に指定できるものであり、例えば、キャリア割り当て本数を1,2,4,8本の4パターンから選択可能とするときに、TMCC信号を用いてキャリア割り当て本数を受信装置2側に伝送することができ、この場合、TMCC信号の空き領域に当該4パターンを伝送するためには2ビットの割り当てで済む。ただし、TMCC信号を利用して、受信装置2側に伝送する形態としてもよいが、本例では、
図1に示す送信装置1及び
図2に示す受信装置2の送受間で予め定めておき、受信装置2がTMCC信号の復調・復号処理を経ることなく、LLch伝送データの復調・復号処理を行うことができるものとしている。
【0047】
OFDM変調部16は、1本以上のLLchキャリアと、3階層のデータキャリアと、伝送制御信号であるTMCCキャリアとを直交周波数分割多重してOFDM変調信号を生成し、外部に出力する。
【0048】
次に、
図2を参照して、本発明による一実施例の受信装置2について説明する。
【0049】
〔受信装置〕
図2は、本発明による一実施例の低遅延伝送チャンネル(LLch)伝送データの受信装置2の主要な構成要素のみを概略的に示すブロック図である。
図2に示す受信装置2は、OFDM復調部21、LLchキャリア抽出・合成部22、DBPSK復調部23、及びLDPC復号部24を備えている。本例では、LLch伝送データの変調方式及び符号化率については、
図1に示す送信装置1及び
図2に示す受信装置2の送受間で予め定めておき、受信装置2がTMCC信号の復調・復号処理を経ることなく、LLch伝送データの復調・復号処理を行う例を説明する。ただし、LLch伝送データの変調方式及び符号化率といった伝送に関するパラメータをTMCC信号に含めて伝送し、受信装置2がTMCC信号の復調・復号処理を経て、LLch伝送データの復調・復号処理を行う形態としてもよい。
【0050】
OFDM復調部21は、送信装置1から送信されたOFDM変調信号を受信してOFDM復調処理を施し、OFDM復調後の信号をLLchキャリア抽出・合成部22に出力する。
【0051】
LLchキャリア抽出・合成部22は、外部からのL0ch又はL1ch(或いはL0chとL1chの双方)の指定に基づき、更には、上述した「キャリア割り当て本数」以内の本数とする「キャリア合成数」の指定に基づき、OFDM復調後の信号からL0chとL1chのLLchキャリアのうち少なくとも一方のLLchキャリアを1本以上8本以下の範囲内で抽出し、1本のLLchキャリアのみを抽出したときは当該1本のLLchキャリアを、複数本のLLchキャリアを抽出したときは選択的にキャリア合成した1本のLLchキャリアを、DBPSK復調部23に出力する。例えば、「キャリア割り当て本数」が8本として、L0chキャリアが8本割り当てられているときに、「キャリア合成数」としては、この8本全部を用いてキャリア合成することもできるし、8本のうち2本をキャリア合成することもできるし、1本のみを抽出する形態とすることができる。
【0052】
DBPSK復調部23は、LLchキャリア抽出・合成部22を経て得られるLLchキャリアについて、DBPSKに基づくシンボルデマッピングを経てDBPSK復調を施しL0ch又はL1chのLLchシンボルを抽出し、LDPC復号部24に出力する。
【0053】
LDPC復号部24は、抽出されたL0ch又はL1ch(或いはL0chとL1chの双方)のLLchシンボルについて、対応する検査行列を用いた尤度判定に基づいて、誤り訂正パリティが付加されたLLch伝送データを再構成し、LDPC符号に基づく復号処理を行って送信側のL0ch又はL1ch(或いはL0chとL1chの双方)のLLch伝送データに対応するビット列を復元し、出力ビット列として外部に出力する。
【0054】
即ち、LDPC復号部24は、符号化器10における第1のLDPC符号化部11により第1のLDPC符号化処理を施して符号化したデータを第1のLDPC符号化率144/1224の検査行列を用いてLDPC復号する手段と、符号化器10における第2のLDPC符号化部12により第2のLDPC符号化処理を施して符号化したデータを第2のLDPC符号化率1016/1224の検査行列を用いてLDPC復号する手段と、を備える復号器として構成される。
【0055】
〔LLchキャリア合成用の割り当て〕
上述したように、送信装置1は、LLchキャリア合成用割当部14により、受信装置2側でキャリア合成によるダイバーシティ効果をもたらすために、LLchキャリア合成数制御部15からのキャリア割り当て本数の指示に従い、LLchキャリアとして、L0キャリアについては第1のセグメント領域(9セグメント)内で、L1キャリアについては第2のセグメント領域(26セグメント)内で、シンボル方向に同内容の誤り訂正ブロックのLLchキャリアを1本、2本、4本、及び8本のうちいずれかの本数で割り当てる。
【0056】
以下、
図4乃至
図6を参照して、LLchキャリア合成用の割り当てについて詳細に説明する。
【0057】
(L0chキャリア合成用の割り当て)
まず、
図4は、本発明によるL0ch伝送データのビット割り当てとして、LLchキャリアに関するOFDMフレームの構成(FFTポイント数として16kFFT時)を示す図である。尚、16kFFT時では、1セグメントあたりDBPSKのLLchキャリア本数は8本である。L0ch伝送データのキャリアであるL0キャリアは、
図4に示すように、LLchに割り当てられる35セグメントのうち、中央の部分受信帯域とする9セグメントを用いて伝送される。LLchのOFDMフレーム先頭は、TMCC信号と同様に、常に(毎フレーム)、DBPSKの差動復調基準の信号が35セグメントの全てに割り当てられる。以後、各LLchキャリアは1シンボル前の信号を用いたDBPSK変調に基づいて割り当てられる。
【0058】
そして、
図3(a)に示すL0ch伝送データ(1誤り訂正ブロックに相当する。)の各ビット(DBPSKであるため1シンボルは1ビットに対応する。)が、16kFFT時では、当該誤り訂正ブロックの先頭から、シンボル番号“1”~“17”における9セグメント分のL0chのセグメント領域内(セグメント番号“0”~“8”)で、シンボル番号“1”のセグメント番号“8”から“7”に向かう図示→のキャリア方向に割り当てられると次段のシンボル番号“2”に移行して、同じくキャリア方向に割り当てられることが繰り返される。従って、16kFFT時の1誤り訂正ブロックは、1本のL0キャリアとして、144ビットの情報ビットが2シンボル×9セグメント分(1セグメントあたりキャリア本数は8本)で収まり、1080ビットのLDPCパリティが15シンボル×9セグメント分で収まる。2本目のL0キャリアとして、L0chキャリア合成用に更に誤り訂正ブロックのビットを割り当てられる時には、シンボル番号“18”~“34”における9セグメント分のL0chのセグメント領域内(セグメント番号“0”~“8”)で、シンボル番号“18”のセグメント番号“8”から図示→のキャリア方向に割り当てられ、続いて次段のシンボル番号“19”に移行して、同じくキャリア方向に割り当てられることが繰り返される。このため、
図4に示す16kFFT時では、2本のL0キャリアが伝送された場合、受信装置2側でその全てを受信してキャリア合成すると、キャリア合成しない場合と比較して2倍の伝送遅延が生じる。以後、L0キャリアの伝送本数を2倍とし、受信装置2側でその全てを受信してキャリア合成すると、伝送遅延も更に2倍となる。
【0059】
尚、上述した
図4では、16kFFT(1セグメントあたりLLchキャリア8本)時のL0chキャリアに関するOFDMフレームの構成を示したが、8kFFT(1セグメントあたりLLchキャリア4本)時、及び32kFFT(1セグメントあたりLLchキャリア16本)の場合も同様に、複数本のL0キャリアを伝送できる。
【0060】
図5(a),(b),(c)は、本発明によるL0ch伝送データのビット割り当てとして、FFTポイント数毎のLLchキャリアに関するOFDMフレームの構成を簡易的に示す図である。
図5(a)は、上述した
図4に示す16kFFT時のOFDMフレームを簡略図示したものであり、17シンボル期間×9セグメント領域で1誤り訂正ブロックを伝送することができる。
図5(b)は、8kFFT時のOFDMフレームを簡略図示したものであり、34シンボル期間×9セグメント領域で1誤り訂正ブロックを伝送することができる。
図5(c)は、32kFFT時のOFDMフレームを簡略図示したものであり、8.5シンボル期間×9セグメント領域で1誤り訂正ブロックを伝送することができる。
図5から理解されるように、16kFFT時、及び8kFFT時の場合、L0キャリアの本数が2倍になればぴったり2倍の遅延時間となる。32kFFT時の場合も、L0キャリアの本数が2倍になれば略2倍の遅延時間となる。
【0061】
(L0chキャリア合成用の割り当て)
まず、
図4は、本発明によるL0ch伝送データのビット割り当てとして、LLchキャリアに関するOFDMフレームの構成(FFTポイント数として16kFFT時)を示す図である。尚、16kFFT時では、1セグメントあたりDBPSKのLLchキャリア本数は8本である。L0ch伝送データのキャリアであるL0キャリアは、
図4に示すように、LLchに割り当てられる35セグメントのうち、中央の部分受信帯域とする9セグメントを用いて伝送される。LLchのOFDMフレーム先頭は、TMCC信号と同様に、常に(毎フレーム)、DBPSKの差動復調基準の信号が35セグメントの全てに割り当てられる。以後、各LLchキャリアは1シンボル前の信号を用いたDBPSK変調に基づいて割り当てられる。
【0062】
(L1chキャリア合成用の割り当て)
図6は、本発明によるL1ch伝送データのビット割り当てとして、LLchキャリアに関するOFDMフレームの構成(FFTポイント数として16kFFT時)を示す図である。L1ch伝送データのキャリアであるL1キャリアは、
図6に示すように、LLchに割り当てられる35セグメントのうち、中央の部分受信帯域とする9セグメント以外の非部分受信帯域とする26セグメントを用いて伝送される。前述したように、LLchのOFDMフレーム先頭は、TMCC信号と同様に、常に(毎フレーム)、DBPSKの差動復調基準の信号が35セグメントの全てに割り当てられ、以後、各LLchキャリアは1シンボル前の信号を用いたDBPSK変調に基づいて割り当てられる。
【0063】
そして、
図3(b)に示すL1ch伝送データ(1誤り訂正ブロックに相当する。)の各ビット(DBPSKであるため1シンボルは1ビットに対応する。)が、16kFFT時では、当該誤り訂正ブロックの先頭から、シンボル番号“1”~“6”における26セグメント分のL1chのセグメント領域内(セグメント番号“9”~“34”)で、シンボル番号“1”のセグメント番号“34”から“10”に向かう図示→のキャリア方向に割り当てられると、その次はシンボル番号“1”のセグメント番号“9”から“33”に向かう図示→のキャリア方向に割り当てられ、続いて、次段のシンボル番号“2”に移行して、同じくキャリア方向に割り当てられることが繰り返される。従って、16kFFT時の1誤り訂正ブロックは、1本のL1キャリアとして、1016ビットの情報ビットが5シンボル×略26(25.4)セグメント分(1セグメントあたりキャリア本数は8本)で収まり、208ビットのLDPCパリティが1シンボル×26セグメント分で収まる。2本目のL0キャリアとして、L0chキャリア合成用に更に誤り訂正ブロックのビットを割り当てられる時には、L1chのセグメント領域内で、シンボル番号“6”のセグメント番号“29”から図示→のキャリア方向に割り当てられ、続いて次段のシンボル番号“7”に移行して、同じくキャリア方向に割り当てられることが繰り返される。このため、
図6に示す16kFFT時では、2本のL1キャリアが伝送された場合、受信装置2側でその全てを受信してキャリア合成すると、キャリア合成しない場合と比較して略2倍の伝送遅延が生じる。以後、L1キャリアの伝送本数を2倍とし、受信装置2側でその全てを受信してキャリア合成すると、伝送遅延も更に略2倍となる。
【0064】
尚、上述した
図6では、16kFFT(1セグメントあたりLLchキャリア8本)時のL1chキャリアに関するOFDMフレームの構成を示したが、8kFFT(1セグメントあたりLLchキャリア4本)時、及び32kFFT(1セグメントあたりLLchキャリア16本)の場合も同様に、複数本のL1キャリアを伝送できる。
【0065】
このように、送信装置1は、LLchのセグメント領域を2種類に分け、尚且つそれぞれのセグメント領域で異なるLDPC符号化率を用いるLDPC符号を適用したLLch伝送データとし、加えて受信装置2側でダイバーシティ効果を調整又は選択的に利用可能とする複数本のLLchキャリアを伝送可能とした。これにより、低遅延化を実現しつつ白色雑音に対する耐性を向上させた上で低遅延化と白色雑音に対する耐性とのバランスを調整又は選択可能となる。
【0066】
つまり、受信装置2は、LLchのキャリア合成数を任意に選択し、設定することが可能になる。
【0067】
本発明に係る低遅延化と白色雑音に対する耐性、並びにそのバランス調整が可能になった点について、
図7を参照して説明する。
図7は、本発明によるL0ch伝送データにおける調整又は選択可能とする雑音耐性と伝送遅延の特性を示す図である。
【0068】
図7には、
図3(a)に示すL0ch伝送データを例に、BER=1.0E-7を満たすS/Nに対する、伝送遅延の関係を示している。比較のため、
図7において、従来技術(ISDB-T)と、本発明に係る構成のいずれにおいても、mode=3,ガードインターバル比(GI)=1/8とした。また、従来技術(ISDB-T)のACキャリアは1セグメントあたり8本とし差集合巡回符号のBP復号の特性値とした。そして、本発明に係る構成については、8kFFT時(1セグメント当たり4本のL0chキャリア)のDBPSK変調とした。
【0069】
図7から理解されるように、本発明に係る構成は、キャリア合成を行わない場合でも、従来技術(ISDB-T)よりS/Nが向上し、4本のキャリア合成を行ってよりS/Nを向上させる態様でも伝送遅延を大幅に小さくすることができる。また、図示していないが、本発明の構成において8本のキャリア合成を行った場合でも、伝送遅延は約200ms(4本の2倍)程度となり、従来技術(ISDB-T)では230ms程度の伝送遅延となっていることから、従来技術(ISDB-T)よりも伝送遅延を低下させることができる。
【0070】
そして、本発明に係る構成は、キャリア合成の本数を調整又は選択可能としていることから、用途に応じて伝送遅延と雑音耐性の調整又は選択も可能となり、汎用性及び利便性が向上するようになる。
【0071】
また、次世代の地上デジタル放送方式では、主信号を為すデータキャリアに用いるLDPC符号の符号長は、69120ビット(高画質伝送)、或いは17280ビット(簡易伝送)が検討されているが、本発明によるL0ch伝送データ及びL1ch伝送データにおける符号長は1224ビットとしていることから、主信号に対して極めて低遅延伝送が実現されることが理解される。
【0072】
従って、送信装置1及び受信装置2は、低遅延化を実現しつつ白色雑音に対する耐性を向上させた上で低遅延化と白色雑音に対する耐性とのバランスを調整又は選択可能となる。
【0073】
上述した実施例に関して、符号化器10及び復号器(LDPC復号部24)、並びに送信装置1及び受信装置2の各々は、1つ又は複数のチップで構成することができる。
【0074】
また、上述した実施例に関して、符号化器10及び復号器(LDPC復号部24)、並びに送信装置1及び受信装置2として機能するコンピュータを構成し、符号化器10及び復号器(LDPC復号部24)、並びに送信装置1及び受信装置2の各手段を機能させるためのプログラムを好適に用いることができる。具体的には、各手段を制御するための制御部をコンピュータ内の中央演算処理装置(CPU)で構成でき、且つ、各手段を動作させるのに必要となるプログラムを適宜記憶する記憶部を少なくとも1つのメモリで構成させることができる。即ち、そのようなコンピュータに、CPUによって該プログラムを実行させることにより、上述した各手段の有する機能を実現させることができる。更に、各手段の有する機能を実現させるためのプログラムを、前述の記憶部(メモリ)の所定の領域に格納させることができる。そのような記憶部は、装置内部のRAM又はROMなどで構成させることができ、或いは又、外部記憶装置(例えば、ハードディスク)で構成させることもできる。また、そのようなプログラムは、コンピュータで利用されるOS上のソフトウェア(ROM又は外部記憶装置に格納される)の一部で構成させることができる。更に、そのようなコンピュータに、各手段として機能させるためのプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記録することができる。また、上述した各手段をハードウェア又はソフトウェアの一部として構成させ、各々を組み合わせて実現させることもできる。
【0075】
上述の実施例については代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換することができることは当業者に明らかである。例えば、LDPC符号化と組み合わされる場合の他の誤り訂正符号化として、BCH符号化以外に、リードソロモン符号化などのブロック符号化のみならず、畳込み符号化であってもよく、又は他のLDPC符号化を組み合わせても良い。従って、本発明は、上述の実施例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明による符号化器及び復号器、並びに送信装置及び受信装置は、低遅延伝送を要するOFDM方式の伝送システムにおいて有用である。
【符号の説明】
【0077】
1 送信装置
10 符号化器
11 第1のLDPC符号化部
12 第2のLDPC符号化部
13 DBPSK変調部
14 LLchキャリア合成数制御部
15 LLchキャリア合成用割当部
16 OFDM変調部
21 OFDM復調部
22 LLchキャリア抽出・合成部
23 DBPSK復調部
24 LDPC復号部(復号器)
100 従来の送信装置
101 差集合巡回符号化部
102 DBPSK変調部
103 OFDM変調部
200 従来の受信装置
201 OFDM復調部
202 ACキャリア抽出部
203 DBPSK復調部
204 差集合巡回符号復号部