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特許7506611緑色野菜用品質保持剤および緑色野菜の品質保持方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】緑色野菜用品質保持剤および緑色野菜の品質保持方法
(51)【国際特許分類】
   A23B 7/154 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
A23B7/154
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021003411
(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公開番号】P2022108430
(43)【公開日】2022-07-26
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000103840
【氏名又は名称】オリエンタル酵母工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】山中 佑莉
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 千夏
(72)【発明者】
【氏名】寺本 匡
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-000018(JP,A)
【文献】特開2000-270765(JP,A)
【文献】特開平4-271745(JP,A)
【文献】特開2003-047397(JP,A)
【文献】特開2014-212769(JP,A)
【文献】特開2020-162526(JP,A)
【文献】特開2019-208504(JP,A)
【文献】米国特許第04975293(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B
A23L
CAplus/MEDLINE/AGRICOLA/EMBASE/FSTA/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JST7580/JMEDPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アスコルビン酸塩、(B)α-シクロデキストリン、および(C)グリシンを含有することを特徴とする緑色野菜用品質保持剤。
【請求項2】
(A)アスコルビン酸塩と(B)α-シクロデキストリンとの質量比((A):(B))が、50:1~1:1の範囲である請求項1に記載の品質保持剤。
【請求項3】
緑色野菜に対して、(A)アスコルビン酸塩0.05~10質量%、(B)α-シクロデキストリン0.01~2質量%、および(C)グリシン0.01~5質量%の範囲で含有する溶液として用いられる請求項1または2に記載の品質保持剤。
【請求項4】
緑色野菜100質量%に対して、(A)アスコルビン酸塩0.01~7質量%、(B)α-シクロデキストリン0.002~1質量%、および(C)グリシン0.002~5質量%の範囲で用いられる請求項1または2に記載の品質保持剤。
【請求項5】
アスコルビン酸塩がナトリウム塩である請求項1~4のいずれかに記載の品質保持剤。
【請求項6】
加熱調理前から加熱調理後のいずれかの段階で、緑色野菜または緑色野菜を含有する食品に対し、請求項1~5のいずれかに記載の緑色野菜用品質保持剤を作用させることを特徴とする緑色野菜の品質保持方法。
【請求項7】
加熱調理前から加熱調理後のいずれかの段階で、緑色野菜または緑色野菜を含有する食品に前記緑色野菜用品質保持剤を溶液の形態で作用させ、前記溶液をpH6.0~10.0の範囲に調整する請求項6に記載の品質保持方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑色野菜用品質保持剤およびこれを用いる緑色野菜の品質保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品の保存中における品質の劣化を防ぐべく、様々な検討がなされてきた。
【0003】
例えば、未成熟果実ピューレの色を安定させる技術として、シクロデキストリンを添加する技術(例えば、特許文献1参照)、漬け茄子の本来の天然色を維持する技術として、ミョウバンと、アスコルビン酸やアスコルビン酸ナトリウム、またはナトリウム塩等の酸化防止剤兼pH緩衝剤と、キトサン含有製剤と、シクロデキストリンとを用いる技術(例えば、特許文献2参照)、緑色野菜の緑色の退色を防止する技術として、リゾチーム、グリシン乃至その塩、有機酸乃至その酸性塩、酢酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム等の酸化防止剤、及び炭酸塩を用いる技術(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。
【0004】
上記提案のような技術により、食品の保存中における品質の劣化の防止にある程度の効果が得られている。
【0005】
しかしながら、近年では、廃棄される食品の増加が深刻な状況となっており、また、スーパーやコンビニエンスストアなどでは人手不足による製品の入れ替えに要するコストの増加も懸念されている。そのため、製品の賞味期限の延長が喫緊の課題となっており、従来よりも優れた食品用品質保持剤が求められるようになっている。
【0006】
また、スーパーやコンビニエンスストアなどでは、製品は明るい照明下で陳列されており、総菜など加熱調理した緑色野菜では、その退色や変色が生じやすく、近年求められるレベルでの品質の保持が非常に困難であるという問題もある。
【0007】
したがって、惣菜など加熱調理した緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持することができる緑色野菜用の品質保持剤および品質保持方法の速やかな開発が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-060793号公報
【文献】特開2002-199841号公報
【文献】特開2015-000018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような要望に応え、現状を打破し、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、惣菜など加熱調理した緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持することができる緑色野菜用品質保持剤および緑色野菜の品質保持方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、加熱調理前から加熱調理後のいずれかの段階で緑色野菜または緑色野菜を含有する食品に、(A)アスコルビン酸塩、(B)α-シクロデキストリン、および(C)グリシンを作用させることにより、緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持することができることを知見した。
【0011】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> (A)アスコルビン酸塩、(B)α-シクロデキストリン、および(C)グリシンを含有することを特徴とする緑色野菜用品質保持剤である。
<2> (A)アスコルビン酸塩と(B)α-シクロデキストリンとの質量比((A):(B))が、50:1~1:1の範囲である前記<1>に記載の品質保持剤である。
<3> 緑色野菜に対して、(A)アスコルビン酸塩0.05~10質量%、(B)α-シクロデキストリン0.01~2質量%、および(C)グリシン0.01~5質量%の範囲で含有する溶液として用いられる前記<1>または<2>に記載の品質保持剤である。
<4> 緑色野菜100質量%に対して、(A)アスコルビン酸塩0.01~7質量%、(B)α-シクロデキストリン0.002~1質量%、および(C)グリシン0.002~5質量%の範囲で用いられる前記<1>または<2>に記載の品質保持剤である。
<5> アスコルビン酸塩がナトリウム塩である前記<1>~<4>のいずれかに記載の品質保持剤である。
<6> 加熱調理前から加熱調理後のいずれかの段階で、緑色野菜または緑色野菜を含有する食品に対し、前記<1>~<5>のいずれかに記載の緑色野菜用品質保持剤を作用させることを特徴とする緑色野菜の品質保持方法である。
<7> 加熱調理前から加熱調理後のいずれかの段階で、緑色野菜または緑色野菜を含有する食品に前記緑色野菜用品質保持剤を溶液の形態で作用させ、前記溶液をpH6.0~10.0の範囲に調整する前記<6>に記載の品質保持方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、惣菜など加熱調理した緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持することができる緑色野菜用品質保持剤および緑色野菜の品質保持方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(緑色野菜用品質保持剤)
本発明の緑色野菜用品質保持剤(以下、「品質保持剤」と称することがある。)は、(A)アスコルビン酸塩と、(B)α-シクロデキストリンと、(C)グリシンとを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0014】
<(A)アスコルビン酸塩>
前記アスコルビン酸塩としては、食品用途に使用できるもの(グレード)であれば特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩などが挙げられる。前記アスコルビン酸塩は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記アスコルビン酸塩の中でも、緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持する効果がより優れる点で、アスコルビン酸ナトリウムが好ましい。
前記アスコルビン酸塩は市販されており、市販品を適宜使用することができる。
前記アスコルビン酸塩の前記品質保持剤における含有量としては、特に制限はなく、緑色野菜に対する使用量などに応じて適宜選択することができる。
【0015】
<(B)α-シクロデキストリン>
前記α-シクロデキストリンとしては、食品用途に使用できるもの(グレード)であれば特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記α-シクロデキストリンは市販されており、市販品を適宜使用することができる。
前記α-シクロデキストリンの前記品質保持剤における含有量としては、特に制限はなく、緑色野菜に対する使用量などに応じて適宜選択することができる。
【0016】
<(C)グリシン>
前記グリシンとしては、食品用途に使用できるもの(グレード)であれば特に制限はなく、適宜選択することができる。
前記グリシンは市販されており、市販品を適宜使用することができる。
前記グリシンの前記品質保持剤における含有量としては、特に制限はなく、緑色野菜に対する使用量などに応じて適宜選択することができる。
【0017】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えばそれ自体、静菌作用を有する成分(乳酸、酢酸、クエン酸等の有機酸およびその塩、アラニン等のアミノ酸類、フェルラ酸、グリセリン脂肪酸エステル、エタノール、リゾチーム、カラシ抽出物、ホコッシ抽出物、セイヨウワサビ抽出物、チャ抽出物、カンゾウ油性抽出物、ユッカ抽出物、ローズマリー抽出物等の植物抽出物等)、pH調整剤(乳酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸またはその塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、メタリン酸塩等の縮合リン酸塩等)、pH調整作用・静菌作用・食感改良作用を有する成分(水酸化カルシウム、貝殻カルシウム等)、食塩等の塩類、糖類(単糖類、二糖類、マルトトリオース、オリゴ糖類、デキストリン、糖アルコール等)、蛋白質加水分解物、ペプチド、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、酵素処理レシチン、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム塩等)、増粘多糖類(アラビアガム、キサンタンガム、ウェランガム、タマリンドシードガム、カラギーナン、カードラン、サクシノグリカン、ローカストビーンガム、タラガム、ペクチン、アルギン酸塩、アルギン酸エステル等)、酸化防止剤(アスコルビン酸、トコフェロール類、ローズマリー抽出物、カテキン、茶抽出物)などが挙げられる。前記その他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記品質保持剤は、緑色野菜またはこれを含有する食品の品質保持(色調保持、日持向上)の点で、静菌作用を有する成分およびpH調整剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
前記その他の成分は市販されており、市販品を適宜使用することができる。
前記その他の成分の前記品質保持剤における含有量としては、特に制限はなく、緑色野菜に対する使用量などに応じて適宜選択することができる。
【0018】
<態様>
前記品質保持剤は、前記アスコルビン酸塩と、前記α-シクロデキストリンと、前記グリシンと、必要に応じて前記その他の成分とを同一の包材に含む態様であってもよいし、前記各成分を別々の包材に入れ、使用時に併用する態様であってもよい。
前記品質保持剤の形態としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、粉末、顆粒等の固体、水などの溶媒に溶解させた液体などが挙げられる。
【0019】
<使用>
前記品質保持剤の使用態様としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、液体の形態で用いる態様(以下、「第1の使用態様」と称することがある。)、固体の形態で用いる態様(以下、「第2の使用態様」と称することがある。)などが挙げられる。これらは、いずれか一方の態様のみを用いてもよいし、両者を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
<<第1の使用態様>>
前記第1の使用態様は、前記品質保持剤を含有する液体(溶液)の形態で用いる態様であり、例えば、緑色野菜を前記溶液に浸漬後、緑色野菜を取り出して保存する場合などに用いることができる。
【0021】
-使用量-
前記第1の使用態様における前記品質保持剤の使用量としては、前記(A)アスコルビン酸塩、前記(B)α-シクロデキストリン、および前記(C)グリシンの有効量を含有していれば特に制限はなく、その他の成分の含有量を考慮して適宜選択することができ、例えば、緑色野菜に対して、前記品質保持剤を0.1~10質量%の量で含有する溶液の形態で用いることができる。
【0022】
--(A)アスコルビン酸塩--
前記第1の使用態様における前記アスコルビン酸塩の使用量、即ち緑色野菜を処理する際の処理溶液中のアスコルビン酸塩の濃度としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、通常0.05~10質量%の範囲であり、0.2~5質量%の範囲であることが好ましい。前記好ましい範囲内であると、緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持する効果がより優れる点で、有利である。
【0023】
--(B)α-シクロデキストリン--
前記第1の使用態様における前記α-シクロデキストリンの使用量、即ち緑色野菜を処理する際の処理溶液中のα-シクロデキストリンの濃度としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、通常0.01~2質量%の範囲であり、0.05~1質量%の範囲であることが好ましい。前記好ましい範囲内であると、効率良く緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持する効果がより優れる点で、有利である。
【0024】
--(C)グリシン--
前記第1の使用態様における前記グリシンの使用量、即ち緑色野菜を処理する際の処理溶液中のグリシンの濃度としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、通常0.01~5質量%の範囲であり、0.05~3質量%の範囲であることが好ましい。前記好ましい範囲内であると、緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持する効果がより優れる点で、有利である。
【0025】
前記第1の使用態様における前記(A)アスコルビン酸塩と、前記(B)α-シクロデキストリンとの質量比((A):(B)、以下、「配合比」と称することもある。)としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、通常50:1~1:1の範囲であり、30:1~1:1の範囲であることが好ましく、20:1~2:1の範囲であることがさらに好ましい。前記好ましい範囲内であると、緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持する効果がより優れる点で、有利である。
【0026】
<<第2の使用態様>>
前記第2の使用態様は、前記品質保持剤を粉末、顆粒等の固体の形態で用いる態様であり、例えば、緑色野菜に品質保持剤を直接振りかけて使用する場合などに用いることができる。
【0027】
-使用量-
前記第2の使用態様における前記品質保持剤の使用量としては、前記(A)アスコルビン酸塩、前記(B)α-シクロデキストリン、および前記(C)グリシンの有効量を含有していれば特に制限はなく、その他の成分の含有量を考慮して適宜選択することができる。
【0028】
--(A)アスコルビン酸塩--
前記第2の使用態様における前記アスコルビン酸塩の使用量、即ち緑色野菜を処理する際のアスコルビン酸塩の添加量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、緑色野菜100質量%に対して、通常0.01~7質量%の範囲であり、0.05~5質量%の範囲であることが好ましい。前記好ましい範囲内であると、緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持する効果がより優れる点で、有利である。
【0029】
--(B)α-シクロデキストリン--
前記第2の使用態様における前記α-シクロデキストリンの使用量、即ち緑色野菜を処理する際のα-シクロデキストリンの添加量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、緑色野菜100質量%に対して、通常0.002~1質量%の範囲であり、0.01~0.5質量%の範囲であることが好ましい。前記好ましい範囲内であると、効率良く緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持する効果がより優れる点で、有利である。
【0030】
--(C)グリシン--
前記第2の使用態様における前記グリシンの使用量、即ち緑色野菜を処理する際のグリシンの添加量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、緑色野菜100質量%に対して、通常0.002~5質量%の範囲であり、0.01~3質量%の範囲であることが好ましい。前記好ましい範囲内であると、緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持する効果がより優れる点で、有利である。
【0031】
前記第2の使用態様における前記(A)アスコルビン酸塩と、前記(B)α-シクロデキストリンとの質量比((A):(B)、以下、「添加量比」と称することもある。)としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、通常50:1~1:1の範囲であり、30:1~1:1の範囲であることが好ましく、20:1~3:1の範囲であることがさらに好ましい。前記好ましい範囲内であると、緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持する効果がより優れる点で、有利である。
【0032】
<<使用時期>>
前記品質保持剤を緑色野菜またはこれを含有する食品に作用させる時期としては、特に制限はなく、加熱調理前から加熱調理後のいずれかの段階から適宜選択することができ、加熱調理前、加熱調理中および加熱調理後の少なくともいずれかの時期に作用させることができる。
前記作用させる回数としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、1回であってもよいし、複数回であってもよい。また、前記作用させる時間も適宜選択することができる。
【0033】
<<使用方法>>
前記品質保持剤の使用方法としては、特に制限はなく、緑色野菜またはこれを含有する食品の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、加熱調理前から加熱調理後のいずれかの段階で、緑色野菜またはこれを含有する食品に前記品質保持剤を添加、混合する方法、前記品質保持剤を含有する溶液に緑色野菜またはこれを含有する食品を浸漬する方法、前記品質保持剤を含有する溶液を緑色野菜またはこれを含有する食品に噴霧、塗布または滴下する方法などが挙げられる。
なお、本発明において、加熱調理とは、緑色野菜またはこれを含有する食品に熱を加える調理法全般をいい、例えば、炒める、茹でる、焼く、蒸すまたはこれらの組合せなどが挙げられる。前記加熱調理に用いる手段としては、特に制限はなく、公知の手段を適宜選択することができる。
【0034】
前記品質保持剤は、単独で使用してもよいし、例えば、日持向上剤などのその他の製剤などと共に使用してもよい。
【0035】
<緑色野菜またはこれを含有する食品>
本発明における緑色野菜としては、緑色を有し、加熱調理される野菜であれば特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、インゲン、グリーンピース、ピーマン、シシトウ、ズッキーニ、キュウリ、ゴーヤ、オクラ、エダマメ、ソラマメ、キヌサヤ等の果菜類、アスパラガス、ブロッコリー、ニラ、ほうれん草、チンゲンサイ、フキ、シュンギク、小松菜、菜の花、ノザワナ、わらび、ミツバ、モロヘイヤ、しそ、バジル等の葉茎菜類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記緑色野菜を含有する食品(以下、「惣菜」と称することもある)としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0036】
(緑色野菜の品質保持方法)
本発明の緑色野菜の品質保持方法(以下、「品質保持方法」と称することがある)は、本発明の緑色野菜用品質保持剤を加熱調理前から加熱調理後のいずれかの段階で、緑色野菜または緑色野菜を含有する食品に作用させる。
【0037】
緑色野菜または緑色野菜を含有する食品に前記品質保持剤を作用させる方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、上記した本発明の(緑色野菜用品質保持剤)の<使用>の項目の記載と同様にして行うことができる。
【0038】
前記品質保持剤を溶液の形態で緑色野菜または緑色野菜を含有する食品に作用させる場合には、前記溶液のpHとしては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、通常pH6.0~10.0の範囲であり、pH6.5~9.5の範囲に調整することが好ましい。前記pHを好ましい範囲に調整すると、緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持する効果がより優れる点で、有利である。
なお、本発明において、pHは、20℃におけるpHをいう。
【0039】
前記緑色野菜またはこれを含有する食品は、上記した本発明の(緑色野菜用品質保持剤)の<緑色野菜またはこれを含有する食品>の項目に記載したものと同様である。
なお、前記緑色野菜またはこれを含有する食品は、前記品質保持剤を作用させる以外は、通常の加工処理やレシピなどに従い、調理することができる。
【0040】
本発明の品質保持剤および品質保持方法によれば、加熱調理前から加熱調理後のいずれかの段階で緑色野菜またはこれを含有する食品に品質保持剤を単に作用させるだけで、加熱調理した緑色野菜の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持することができるので、製品価値の低下を防ぐことができ、また、製品の保存期間の延長も可能となる。
【実施例
【0041】
以下、試験例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらの試験例に何ら限定されるものではない。
【0042】
(試験例1)
下記の表1に記載の成分を下記の表1に記載の量で含有する品質保持剤含有水溶液を製造した。前記水溶液のpHは、炭酸ナトリウムでpH8.5に調整した。なお、アスコルビン酸塩の一例として、アスコルビン酸ナトリウムを使用した。
【0043】
<評価>
緑色野菜の一例としてインゲンを用い、以下のようにして加熱調理したインゲンの品質保持効果を試験した。
沸騰した食塩水(1質量%)に冷凍インゲンを投入し、再沸騰後1分間茹でた。室温まで冷却した後、試験例1-1~1-5のいずれかの品質保持剤含有水溶液に茹でたインゲンを入れ(前記水溶液とインゲンとの質量比は、水溶液:インゲン=3:1)、30分間浸漬させた。浸漬後、取り出したインゲンを液切りし、シャーレに入れ、温度10℃、光強度1,000ルクスの条件で保管した。光照射開始から2日後のインゲンの緑色の色調変化を目視にて観察し、以下の4段階で評価した。なお、品質保持剤を用いない以外は同様にしてインゲンを処理した場合を対照とした。結果を下記の表1に示す。
評価基準:
◎ : 調理直後と同程度か、わずかに退色しているが、緑色を呈している。
○ : やや退色しているが、対照より緑色を呈している。
△ : 退色が認められる。
× : 色抜けが認められる。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示したように、(A)アスコルビン酸塩、(B)α-シクロデキストリン、および(C)グリシンを用いることで、加熱調理した緑色野菜の緑色の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持できることが確認された。
【0046】
(試験例2)
下記の表2に記載の成分を下記の表2に記載の量で含有する品質保持剤含有水溶液を製造した。前記水溶液のpHは、炭酸ナトリウムでpH8.5に調整した。なお、アスコルビン酸塩の一例として、アスコルビン酸ナトリウムを使用した。
【0047】
<評価>
試験例2-1~2-3のいずれかの品質保持剤含有水溶液を用いた以外は試験例1と同様にして、インゲンに対する緑色保持効果を評価した。結果を下記の表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表2に示したように、(A)アスコルビン酸塩と(B)α-シクロデキストリンの配合比を変えた場合でも、(A)アスコルビン酸塩、(B)α-シクロデキストリン、および(C)グリシンを用いることで、加熱調理した緑色野菜の緑色の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持できることが確認された。
【0050】
(試験例3)
下記の表3-1~3-2に記載の成分を下記の表3-1~3-2に記載の量で含有する品質保持剤含有水溶液を製造した。前記水溶液のpHは、炭酸ナトリウムでpH8.5に調整した。なお、アスコルビン酸塩の一例として、アスコルビン酸ナトリウムを使用した。
【0051】
<評価>
試験例3-1~3-7のいずれかの品質保持剤含有水溶液を用いた以外は試験例1と同様にして、インゲンに対する緑色保持効果を評価した。結果を下記の表3-1~3-2に示す。
【0052】
【表3-1】
【0053】
【表3-2】
【0054】
表3-1~3-2に示したように、(A)アスコルビン酸塩、(B)α-シクロデキストリン、(C)グリシンを好ましい配合量で用いることで、加熱調理した緑色野菜の緑色の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持できる効果がより優れることが確認された。
【0055】
(試験例4)
下記の表4-1~4-2に記載の成分を下記の表4-1~4-2に記載の割合で含む品質保持剤を調製した。なお、アスコルビン酸塩の一例として、アスコルビン酸ナトリウムを使用した。
【0056】
<評価>
緑色野菜の一例として、インゲンを用い、以下のようにして加熱調理したインゲンの品質保持効果を試験した。
沸騰した食塩水(1質量%)に冷凍インゲンを投入し、再沸騰後1分間茹でた。室温まで冷却した後、試験例4-1~4-7のいずれかの品質保持剤と茹でたインゲンを混合した。混合後のインゲンをシャーレに入れ、温度10℃、光強度1,000ルクスの条件で保管した。光照射開始から2日後のインゲンの緑色の色調変化を目視にて観察し、以下の4段階で評価した。なお、品質保持剤を用いない以外は同様にしてインゲンを処理した場合を対照した。結果を下記の表4-1~4-2に示す。
評価基準:
◎ : 調理直後と同程度か、わずかに退色しているが、緑色を呈している。
○ : やや退色しているが、対照より緑色を呈している。
△ : 退色が認められる。
× : 色抜けが認められる。
【0057】
【表4-1】
【0058】
【表4-2】
【0059】
表4-1~4-2に示したように、(A)アスコルビン酸塩、(B)α-シクロデキストリン、(C)グリシンを好ましい配合量で用いることで、加熱調理した緑色野菜の緑色の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持できる効果がより優れることが確認された。
【0060】
(試験例5)
下記の表5に記載の成分を下記の表5に記載の量で含有する品質保持剤含有水溶液を製造した。前記水溶液のpHを6.5、7.5、8.5、又は9.5に炭酸ナトリウムで調整した。なお、アスコルビン酸塩の一例として、アスコルビン酸ナトリウムを使用した。
【0061】
<評価>
試験例5-1~5-4のいずれかの品質保持剤含有水溶液を用いた以外は試験例1と同様にして、インゲンに対する緑色保持効果を評価した。結果を下記の表5に示す。
【0062】
【表5】
【0063】
表5に示したように、品質保持剤含有水溶液のpHを変えた場合でも、加熱調理した緑色野菜の緑色の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持できることが確認された。
【0064】
(試験例6)
緑色野菜の一例として、インゲン、ブロッコリー、またはグリーンピースを用い、以下のようにして品質保持効果を試験した。
下記の表6-1~6-3に記載の成分を下記の表6-1~6-3に記載の量で含有する品質保持剤含有水溶液を製造した。前記水溶液のpHは、炭酸ナトリウムでpH8.5に調整した。なお、アスコルビン酸塩の一例として、アスコルビン酸ナトリウムを使用した。
【0065】
<評価>
<<インゲンまたはグリーンピース>>
沸騰した食塩水(1質量%)に冷凍インゲンまたは冷凍グリーンピースを投入し、再沸騰後1分間茹でた。室温まで冷却した後、試験例6-1~6-4のいずれかの品質保持剤含有水溶液に茹でたインゲンまたはグリーンピースを入れ(前記水溶液と、インゲンまたはグリーンピースとの質量比は、水溶液:インゲンまたはグリーンピース=3:1)、30分間浸漬させた。浸漬後、取り出したインゲンまたはグリーンピースを液切りし、シャーレに入れ、温度10℃、光強度500ルクスの条件で保管した。光照射開始から3日後のインゲンまたはグリーンピースの緑色の色調変化を目視にて観察し、試験例1と同様の評価基準にて評価した。なお、品質保持剤を用いない以外は同様にしてインゲンまたはグリーンピースを処理した場合を対照とした。結果を下記の表6-1~6-2に示す。
【0066】
<<ブロッコリー>>
冷凍ブロッコリー(ブランチング処理後、冷凍されたもの)を試験例6-5~6-6のいずれかの品質保持剤含有水溶液に入れ(前記水溶液と、ブロッコリーとの質量比は、水溶液:ブロッコリー=3:1)、90分間浸漬させた。浸漬後、取り出したブロッコリーを液切りし、シャーレに入れ、温度10℃、光強度500ルクスの条件で保管した。光照射開始から3日後のブロッコリーの緑色の色調変化を目視にて観察し、試験例1と同様の評価基準にて評価した。なお、品質保持剤を用いない以外は同様にしてブロッコリーを処理した場合を対照とした。結果を下記の表6-3に示す。
【0067】
【表6-1】
【0068】
【表6-2】
【0069】
【表6-3】
【0070】
表6-1~6-3に示したように、加熱調理した種々の緑色野菜の緑色の退色・変色を防止し、色調(緑色)を含むその品質を保持できることが確認された。